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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】光撮像デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20250117BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20250117BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/06
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541820
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2023050072
(87)【国際公開番号】W WO2023143878
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22305089.9
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524108721
【氏名又は名称】アビーライト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブール,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】フルニエ,マリー
(72)【発明者】
【氏名】カオルシ,バレンティーナ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA05
2G043KA09
2H052AA08
2H052AA09
2H052AC15
2H052AC26
2H052AC27
2H052AC34
2H052AD03
2H052AF14
(57)【要約】
試料(Ech)を分析するのに適している光撮像デバイス(1)であって、-空間コヒーレント光ビーム(L)を放出するのに適している光源(LS)と、-焦点面(BFP)にこの光ビーム(L)を集束させるのに適している光リレー素子(OR)と、-この焦点面に後焦点面(BFP)を有するレンズ系(MO)であって、この光ビームを視準し、視準光ビーム(CL)を形成するのに適しているレンズ系(MO)と、-この視準光ビームが試料を照明し、試料光(FL)の放出をトリガーするように、試料面(SP)にこの試料を保持するのに適している試料ホルダー(SH)と、-所定のフレーム露出時間でこの試料光の像を取得するのに適している画素化光検出器(Det)とを含み、このデバイスは、この光ビーム(L)の光路で、この光リレー素子の上流に光学的に配置されている、-この後焦点面に集束されている複数のサブビーム(SB1、SB2、SB3)をこの光ビームから形成し、試料面で干渉し、干渉パターン(IF)を形成するのに適している光構成素子(LSE)と、-各制御可能シフトがこれらのサブビームに対して同一であるように、このフレーム露出時間内で、この試料面におけるこれらのサブビームの位置の複数の制御可能シフトを誘導するのに適している走査素子(SE)とを更に含む、光撮像デバイス(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(Ech)を分析するのに適している光撮像デバイス(1)であって、
-空間コヒーレント光ビーム(L)を放出するのに適している光源(LS)と、
-焦点面(BFP)に前記光ビーム(L)を集束させるのに適している光リレー素子(OR)と、
-前記焦点面に後焦点面(BFP)を有するレンズ系(MO)であって、前記光ビームを視準し、視準光ビーム(CL)を形成するのに適しているレンズ系(MO)と、
-前記視準光ビームが前記試料を照明し、試料光(FL)の放出をトリガーするように、試料面(SP)に前記試料を保持するのに適している試料ホルダー(SH)と、
-所定のフレーム露出時間で前記試料光の像を取得するのに適している画素化光検出器(Det)と
を含み、
前記デバイスは、前記光ビーム(L)の光路で、前記光リレー素子の上流に光学的に配置されている、
-前記後焦点面に集束されている複数のサブビーム(SB1、SB2、SB3)を前記光ビームから形成し、前記試料面で干渉し、干渉パターン(IF)を形成するのに適している光構成素子(LSE)と、
-各制御可能シフトが前記サブビームに対して同一であるように、及び前記フレーム露出時間にわたる前記試料面における前記サブビームの平均が、所定の視野にわたって均一に投影されている前記干渉パターンに対応するように、前記フレーム露出時間内で、前記試料面における前記サブビームの位置の複数の制御可能シフトを誘導するのに適している走査素子(SE)と
を更に含む、光撮像デバイス(1)。
【請求項2】
前記光構成素子は、前記走査素子の後の下流に光学的に配置されているデジタルマイクロミラーデバイス又は空間光変調器である、請求項1に記載の光撮像デバイス。
【請求項3】
前記光構成素子は、
-前記光ビームを前記サブビーム(SB1、SB2、SB3)に分割するのに適しているビーム分割器(BS)と、
-前記少なくとも1つのサブビームに制御位相シフトを誘導し、従って、いわゆる位相シフトサブビームを形成し、前記干渉パターンの縞をシフトするのに適している、少なくとも1つのサブビームの光路に配置されている位相遅延素子(PS)と
を含む、請求項1に記載の光撮像デバイス。
【請求項4】
前記光構成素子は、複数の光ファイバー素子(F1、F2、F3)を更に含み、各光ファイバー素子は、前記光ファイバー素子のいわゆる下流端部(DE1、DE2、DE3)に各サブビームを導くのに適しており、前記下流端部は、前記後焦点面と光学的に共役されている前記顕微鏡デバイスの瞳面(PP)に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項5】
前記瞳面の拡大像を形成するのに適している、前記サブビームの前記光路に二重テレセントリックズーム(DTZ)を含み、前記ズームの倍率の制御変更は、前記後焦点面における各サブビームの間の距離Δを変更する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項6】
前記位相遅延素子は、前記位相シフトサブビームを導く前記光ファイバー素子又は複数の光ファイバー素子に接続されているファイバー位相シフターである、請求項3~5のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項7】
前記ビーム分割器は、前記光ビームを2つのサブビームに分割するのに適している、請求項3~6のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項8】
前記ビーム分割器は、前記光ビームを少なくとも3つのサブビームに分割するのに適している、請求項3~6のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項9】
前記光ファイバー素子のうち少なくとも2つは各々、
-各サブビームを導く一次光ファイバー(PF2、PF3)と、
-前記一次光ファイバーに接続されている制御可能ファイバースイッチ(FS)と、
-前記瞳面に配置されている下流開口部を各々有する複数の二次光ファイバー(2a、2b、2c;3a、3b、3c)であって、前記制御可能ファイバースイッチは、選択ファイバーと呼ばれる前記複数の二次光ファイバーのうち1つに前記各サブビームを結合するのに適しており、前記選択ファイバーの前記下流開口部は、前記光ファイバー素子の前記下流端部を形成する複数の二次光ファイバー(2a、2b、2c;3a、3b、3c)と
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項10】
前記走査素子(SE)は、前記後焦点面(BFP)と光学的に共役されている面に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項11】
前記試料は、蛍光を発し、前記視準光ビームは、前記試料のフルオロフォアによって蛍光の放出をトリガーし、前記蛍光は、前記試料光である、請求項1~10のいずれか一項に記載の光撮像デバイス。
【請求項12】
試料を分析する方法であって、
A.空間コヒーレント光ビームを放出するステップと、
B.前記光ビームから、複数のサブビームを形成するステップと、
C.焦点面に前記サブビーム(L)を集束させるステップと、
D.前記サブビームを視準し、視準光ビーム(CL)を形成するステップと、
E.前記視準光ビームを前記試料に照明し、試料光(FL)の放出をトリガーし、前記サブビームは、試料面で干渉し、干渉パターンを形成するステップと、
F.前記試料面における前記サブビームの位置の複数の制御可能シフトを誘導するステップであって、前記試料面における各サブビームの間の角度は、前記複数の制御可能シフトに対して同一であるステップと、
G.画素化光検出器を用いて、所定のフレーム露出時間で前記試料光の像を取得するステップであって、前記複数の制御可能シフトを、前記フレーム露出時間内で誘導するステップと
を含む方法。
【請求項13】
複数回及び毎回、前記干渉パターンの縞を変更し、ステップF及びGを繰り返し、前記変更縞に関連する前記試料光の像を取得することである後のステップHを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光撮像デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
単一分子特定顕微鏡法(SMLM)は、単一蛍光分子の放出を達成するために、分子の確率的放出の遅延に基づいている。平均で毎回、観測顕微鏡の焦点体積にわずか1つの活性(即ち、放出)分子があるような方法で調整された放射照度を用いて、蛍光分子を含む試料を照明する。SMLMによって取得された像は、点広がり関数(PSF)と呼ばれる像スポットを提示し、各スポットは、分子の像を表す。PSFから、アルゴリズムを用いてスポットの中心を判定することによって分子の位置を測定することができる。この位置を、顕微鏡の回折限界分解能よりも非常に優れていることができる精度で判定することができる。高空間分解能(最高10nm)を有する最終超解像度像を得るために、この確率過程を数万個の像に対して繰り返す。例えば、Lelek et.al,Single-molecule localization microscopy,Nature Reviews Method Primers,vol.1,39,2021におけるLelekらは、SMLMの基本原理(例えば、異なるタイプの分子標識化、PSFの位置の判定、及びPSFの特定から超解像度像を再構成する処理)を記載している。
【0003】
更に、Mailfert et.al,A Theoretical High-Density Nanoscopy Study Leads to the Design of UNLOC,vol.113,3,2018におけるMailfertらは、PSFを判定するために使用されるアルゴリズムを開示している。特に、Mailfertらは、高密度の蛍光分子を有する試料に対してより高い空間分解能を得るために最適化されているアルゴリズムに関連している。特に、アルゴリズムは、超解像度像を再構成する場合に不正確な特定を除去することができるように、各蛍光分子に対する検出の確率及び特定の不確実性を評価する。
【0004】
しかし、高空間分解能は、分子検出に左右され、その結果、単一蛍光分子の密度に左右される。特に、密度が高ければ高いほど、分子を検出及び特定するのが一層困難になり、(試料ドリフト及び重なりPSFなどのアーチファクトのために)像の質が一層低くなる。一方、単一蛍光分子の密度が低ければ低いほど、空間分解能が高くなる。
【0005】
更に、殆どのSMLM技法は、試料を照明するためにガウス形状照明を使用する。しかし、ガウス形状照明は、不均一励起を与え、利用できる視野を制限する。「Mau et al.,Fast wide field scan provides tunable and uniform illumination optimizing super-resolution microscopy on large fields,Nature Communications,vol.12,3077,2021」におけるMauらは、均一照明を達成する方法を開示している。システムは、ASTER(調整可能励起領域用の適応走査)と呼ばれ、図1に例示される。システムは、ガウス光ビームを放出するレーザー源LSを含む。ガウスビームを、2つの検流計走査ミラーGMに集束させ、試料面における照明を制御する。光ビームを、顕微鏡MSPの対物レンズMOの後焦点面BFPに筒レンズLSによって集束させる。光ビームが後焦点面に光ビームの位置を保持する一方、ミラーに加えられる角度シフトは、後焦点面BFPの同様な角度シフト、及び試料面におけるビームの位置シフトを誘導する。次に、ラスター走査又はアルキメデスらせんなどの既定のパターンにおけるガウスビーム位置の高速走査は、カメラフレーム露出時間にわたって平均化される場合、視野にわたって全均一照明を生成する。図1のシステムは、不均一励起を与える従来のガウス形状照明を用いたシステムに比べて、PSFの中心の判定の精度の増加、より広い視野及びより高い効率を可能にする。
【0006】
図1のシステムは、所定の視野にわたって均一照明(即ち、平頂)を生成するための適切な解決策を提供する。
【0007】
一方、全視野にわたって均一照明を構造照明技法に与えるための解決策は、まだ足りない。実際に、構造照明技法の大部分は、初期光ビームのガウス性質のために不均一であり、又は初期光ビームの電力の大部分を失う照明を与える(例えば、ガウスビームの中心部の拡大)。他の均一化方法は、幾つかの特定の撮像技法に適合しない。例えば、多モードファイバーを用いたビームの均一化は、出力光ビームの多数の入射角をもたらし、全内部反射蛍光(TIRF)撮像に適合しない。
【0008】
本発明は、先行技術の特定の問題を軽減することが狙いである。このために、本発明の目的は、対物レンズの後焦点面に集束されている複数のサブビームを照明光ビームから形成し、試料面で干渉し、干渉パターンを形成するのに適している光構成素子を更に含む、図1のデバイスと同様な光撮像デバイスである。走査素子と併せた光構成素子による本発明のデバイスは、広い視野にわたって均一である構造照明を与える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lelek et.al,Single-molecule localization microscopy,Nature Reviews Method Primers,vol.1,39,2021
【非特許文献2】Mailfert et.al,A Theoretical High-Density Nanoscopy Study Leads to the Design of UNLOC,vol.113,3,2018
【非特許文献3】Mau et al.,Fast wide field scan provides tunable and uniform illumination optimizing super-resolution microscopy on large fields,Nature Communications,vol.12,3077,2021
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、試料を分析するのに適している光撮像デバイスであって、
-空間コヒーレント光ビームを放出するのに適している光源と、
-焦点面に光ビームを集束させるのに適している光リレー素子と、
-焦点面に後焦点面を有するレンズ系であって、光ビームを視準し、視準光ビームを形成するのに適しているレンズ系と、
-視準光ビームが試料を照明し、試料光の放出をトリガーするように、試料面に試料を保持するのに適している試料ホルダーと、
-所定のフレーム露出時間で試料光の像を取得するのに適している画素化光検出器と
を含み、
-デバイスは、光ビームの光路で、光リレー素子の上流に光学的に配置されている、
-後焦点面に集束されている複数のサブビームを光ビームから形成し、試料面で干渉し、干渉パターンを形成するのに適している光構成素子と、
-各制御可能シフトがサブビームに対して同一であるように、及びフレーム露出時間にわたる試料面におけるサブビームの平均が、所定の視野にわたって均一に投影されている干渉パターンに対応するように、フレーム露出時間内で、試料面におけるサブビームの位置の複数の制御可能シフトを誘導するのに適している走査素子と
を更に含む、光撮像デバイスである。
【0011】
本発明の実施形態によれば、光構成素子は、走査素子の後の下流に光学的に配置されているデジタルマイクロミラーデバイス又は空間光変調器である。
【0012】
代わりに、別の実施形態によれば、光構成素子は、
-光ビームをサブビームに分割するのに適しているビーム分割器と、
-少なくとも1つのサブビームに制御位相シフトを誘導し、従って、いわゆる位相シフトサブビームを形成し、干渉パターンの縞をシフトするのに適している、少なくとも1つのサブビームの光路に配置されている位相遅延素子と
を含む。好ましくは、位相遅延素子は、位相シフトサブビームを導く光ファイバー素子又は複数の光ファイバー素子に接続されているファイバー位相シフターである。
【0013】
好ましくは、この実施形態において、光構成素子は、複数の光ファイバー素子を更に含み、各光ファイバー素子は、光ファイバー素子のいわゆる下流端部に各サブビームを導くのに適しており、下流端部は、後焦点面と光学的に共役されている顕微鏡デバイスの瞳面に配置されている。好ましくは、デバイスは、瞳面の拡大像を形成するのに適している、サブビームの光路に二重テレセントリックズームを含み、ズームの倍率の制御変更は、後焦点面における各サブビームの間の距離Δを変更する。
【0014】
実施形態によれば、ビーム分割器は、光ビームを2つのサブビームに分割するのに適している。
【0015】
別の実施形態によれば、ビーム分割器は、光ビームを少なくとも3つのサブビームに分割するのに適している。好ましくは、この実施形態において、光ファイバー素子のうち少なくとも2つは各々、
-各サブビームを導く一次光ファイバーと、
-一次光ファイバーに接続されている制御可能ファイバースイッチと、
-瞳面に配置されている下流開口部を各々有する複数の二次光ファイバーであって、制御可能ファイバースイッチは、選択ファイバーと呼ばれる複数の二次光ファイバーのうち1つに各サブビームを結合するのに適しており、選択ファイバーの下流開口部は、光ファイバー素子の下流端部を形成する複数の二次光ファイバーと
を含む。
【0016】
好ましくは、走査素子は、後焦点面と光学的に共役されている面に配置されている。
【0017】
実施形態によれば、試料は、蛍光を発し、視準光ビームは、試料のフルオロフォアによって蛍光の放出をトリガーし、蛍光は、試料光である。
【0018】
本発明の別の目的は、試料を分析する方法であって、
-空間コヒーレント光ビームを放出するステップと、
-光ビームから、複数のサブビームを形成するステップと、
-焦点面にサブビームを集束させるステップと、
-サブビームを視準し、視準光ビームを形成するステップと、
-視準光ビームを試料に照明し、試料光の放出をトリガーし、サブビームは、試料面で干渉し、干渉パターンを形成するステップと、
-試料面におけるサブビームの位置の複数の制御可能シフトを誘導するステップであって、試料面における各サブビームの間の角度は、複数の制御可能シフトに対して同一であるステップと、
-画素化光検出器を用いて、所定のフレーム露出時間で試料光の像を取得するステップであって、複数の制御可能シフトを、フレーム露出時間内で誘導するステップと
を含む方法である。
【0019】
本発明の方法は、好ましくは、複数回及び毎回、干渉パターンの縞を変更し、ステップF及びGを繰り返し、変更縞に関連する試料光の像を取得することである後のステップHを含む。
【0020】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例として与えられ、それぞれ示す添付図面を参照して行われる説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】先行技術によるASTERデバイスである。
図2A】本発明の第1の実施形態による光撮像デバイスである。
図2B】本発明の第2の実施形態による光撮像デバイスである。
図3A】本発明の実施形態によるデバイスである。
図3B】本発明の実施形態によるデバイスの瞳面の正面図(上)及び側面図(下)である。
図3C】本発明の実施形態によるデバイスでの後焦点面におけるサブビーム及び試料面における干渉パターンの配置である。
図3D】本発明の実施形態によるデバイスで全視野を覆うために必要な走査のステップである。
図4A】本発明の実施形態によるデバイスである。
図4B】本発明の実施形態によるデバイスでの後焦点面におけるサブビーム及び試料面における干渉パターンの配置である。
図4C】本発明の実施形態によるデバイスで全視野を覆うために必要な走査のステップである。
図5】本発明の実施形態によるデバイスである。
図6】本発明による方法である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面において、他に指示がない限り、素子は、原寸に比例していない。
【0023】
図2Aは、試料Echを分析するのに適している、本発明の第1の実施形態による光撮像デバイス1を例示する。このデバイス1は、図1の先行技術デバイス(ASTERデバイス)の進展である。従って、図1のASTERデバイスのように、本発明のデバイス1は、空間コヒーレント光ビームLを放出するのに適している光源LSを含む。光源は典型的に、試料に含まれる分子を標識するために使用されるフルオロフォアの励起波長に対応する波長を有する光ビームLを放出するレーザーである。好ましい実施形態によれば、光ビームLは、均一構造照明を達成するのに必要な走査を単純化するためにガウス形状照明プロファイルを有する(更に参照)。
【0024】
更に、デバイス1は、光リレー素子ORと、少なくとも1つのレンズを含む後焦点面BFPを有するレンズ系MOとを含む光学系を含む。光リレー素子OR(典型的に、筒レンズ)は、レンズ系MOが光ビームを視準し、視準光ビームCLを形成するように、レンズ系MOの後焦点面BFPに光ビームLに集束させるのに適している。好ましい実施形態において、顕微鏡は、倒立顕微鏡である。
【0025】
試料ホルダーSH(典型的に、カバースリップ)は、視準光ビームが試料を照明するように、試料面SPに試料Echを保持するのに適している。次に、試料は、試料光FLを再放出する。撮像試料の性質によって、試料光FLは異なる。第1の実施形態によれば、試料は、蛍光を発し、視準光ビームは、試料のフルオロフォアによって(試料光に対応する)蛍光FLの放出をトリガーする。第1の実施形態において、レンズ系は、顕微鏡対物レンズである。第2の実施形態によれば、試料は、視準光ビームを部分的に反射し又は後方散乱させ、試料光FLを形成する。第2の実施形態において、デバイス1は、例えば、試料の表面を特性化するのに適している。
【0026】
単純化のために、本発明の第1の実施形態による明細書の残りについて説明する。しかし、当業者は、後述の特性が本発明の第2の実施形態にも含まれることを理解している。
【0027】
画素化光検出器Detは、所定のフレーム露出時間で蛍光の像を取得するのに適している。図2Aに示す例として、光検出器Detを、光ビームLに対して試料ホルダーの下流に光学的に配置する。別の実施形態において、蛍光を、逆対物レンズMOを介して収集し、光リレー素子ORによって視準するように、光検出器Detを配置する。この実施形態において、例えば、二色性ミラーを介して、光ビームLと蛍光との間の分離を行う。
【0028】
更に、デバイス1は、対物レンズMOの後焦点面BFPと光学的に共役された面に配置された走査素子SE(典型的に、2つの検流計走査ミラー)を含む。この光学的共役を達成するために、一例として、デバイス1は、走査素子の面に、光源LSを出た光ビームを集束させる第1のレンズL1を含み、走査素子を出た光ビームを視準する第2のレンズL2を含む。後焦点面BFPの面を走査素子の面に共役させるための、当業者に明らかな他の構成を、実施することができる。上述のように、検流計走査ミラーSEに加えられる角度シフトは、対物レンズMOの後焦点面BFPの同様な角度シフト、及び試料面SPにおける光ビームLの位置シフトを誘導する。
【0029】
図1のASTERデバイスに対する違いとして、本発明のデバイスは、光リレー素子ORの上流に光学的に配置された光構成素子LSEを含み、光構成素子LSEは、後焦点面BFPに集束される複数のサブビームSB1、SB2、SB3を光ビームLから形成するのに適している。これらのサブビームは、図2Aに示されていないけれども、例えば、図3A図3C図4A図4B又は図5で見ることができる。実施形態において、光構成素子は、光ビームLを少なくとも2つのサブビーム(例えば、図3A図4Aを参照)に分割するように設計されている。別の実施形態において、光構成素子は、光ビームLを2つよりも多いサブビーム(例えば、3つ、図5を参照)に分割するように設計されている。これらのサブビームは、試料面SPで干渉し、この面SPに干渉パターンIFを形成する。本発明の第1の実施形態において、光構成素子LSEを、走査素子SEの上流に光学的に配置する。図2Bに例示される本発明の第2の実施形態において、光構成素子を、走査素子SEの下流に光学的に配置する。
【0030】
光構成素子の存在を考えると、走査素子SEは、光検出器Detのフレーム露出時間内で、後焦点面BFPにおけるサブビームの複数の制御可能傾斜、従って、試料面におけるサブビームの位置の複数のシフトを誘導するのに適している。光構成素子LSEは、試料面SPに特定の制御干渉パターンIFを生成するように設計されている。
【0031】
重要なのは、走査素子SEは、サブビームを傾斜させ、サブビーム及び後焦点面BFPに対する同一の角度シフト、及びサブビームに対する試料面における同一の位置シフトを誘導する。従って、走査素子による傾斜は、試料面SPにおける各サブビームの間の角度を変えない。これは、試料面SPにおけるサブビームの位置のシフトが干渉パターンIFの縞を変更しないことを意味し、試料面SPで全視野にわたってシフトする同一の構造照明をもたらす。従って、走査素子を介して、サブビームは、光検出器Detのフレーム露出時間内で、全視野又は所定の視野と呼ばれるこの視野の一部を走査する。この走査は、試料面で時間平均励起プロファイルを生じさせる。この平均励起プロファイルは、走査素子を介してサブビームによって走査されるX-Y領域によって規定される、デバイスの視野にわたって均一に投影される干渉パターンに対応する。走査素子SEによって誘導される走査は典型的に、ラスター走査又はアルキメデスらせん、又は全均一構造照明を与えるために当業者に知られている任意のタイプの走査である。
【0032】
本発明のデバイス1は、広い視野にわたって均一構造照明を生成するための素晴らしい解決策を提供する。
【0033】
図2Aの例示において、デバイス1は、システムの実行可能性及び小型化のために、任意選択的な多数のミラーを含む。更に、デバイスは、二重テレセントリックズームDTZの倍率を介して光ビームLの直径を変更するのに適している光ビームLの光路に任意選択的な二重テレセントリックズームDTZを含む。より正確には、光構成素子の存在を考えると、ズームDTZの倍率の制御変更は、後焦点面における各サブビームの間の距離Δを変更し、従って、試料面における干渉パターンの縞間距離を変更する(更に図3C又は図5を参照)。
【0034】
図3Aは、本発明のデバイス1の好ましい実施形態を例示する。この好ましい実施形態において、光構成素子LSEは、この光ビームをサブビームに分割するのに適しているビーム分割器BSを含む。限定されない例として、ビーム分割器を、2つの対向するハーフプリズムによって形成する。更に、光構成素子LSEは、少なくとも1つのサブビームの光路に配置された位相遅延素子PSを含む。この位相遅延素子PSは、少なくとも1つのサブビームに制御位相シフト(以下、シフトサブビーム)を誘導し、従って、干渉パターンの縞をシフトするのに適している。限定されない例として、位相遅延素子PSは、ファイバー伸長器、圧電素子、制御可能量によってシフトサブビーム又はサブビームの位相をシフトする電気光学変調器又は音響光学変調器である。シフトサブビームの位相のシフトは、干渉パターン自体の構造でなく、試料面における干渉パターンIFの縞をシフトするだけである。本発明において、位相遅延素子PSは、構造照明の均一化を達成する前に、干渉パターンの縞をシフトしない。換言すれば、固定縞を有する所定の干渉パターンで所定の視野にわたってサブビームを走査し、次に、干渉パターンの縞をシフトし、走査を繰り返す。これを、数回繰り返すことができる。これは、試料の異なる領域の照明、従って、試料の異なるフルオロフォアの励起を可能にする。限定されない例として、図3Aに例示の好ましい実施形態において、デバイス1は、各サブビーム用の位相遅延素子PSを含む。
【0035】
好ましくは、図3Aの実施形態において、光構成素子は、複数の光ファイバー素子F1、F2、F3を更に含む。これらの光ファイバー素子F1、F2、F3は、光ファイバー素子のいわゆる下流端部DE1、DE2、DE3に各サブビームSB1、SB2、SB3を導くのに適している。各サブビームを後焦点面BFPに集束させることを保証するために、下流端部を、後焦点面BFPと光学的に共役されたデバイス1の瞳面PPに配置する。図3Aの実施形態において、好ましくは、位相遅延素子は、位相シフトサブビームを導く各光ファイバー素子に接続されたファイバー位相シフターである。この実施形態は、試料面における干渉パターンIFのより単純な制御及びよりロバストなアーキテクチャを可能にする。
【0036】
好ましくは、図3Aの実施形態において、ファイバー素子F2及びF3は各々、
-各サブビームSB2、SB3を導く一次光ファイバーPF2、PF3と、
-一次光ファイバーに接続されている制御可能ファイバースイッチFSと、
-瞳面PPに配置されている下流開口部を各々有する複数の二次光ファイバー2a、2b、2c;3a、3b、3cと
を含む。
【0037】
図3Aの実施形態において、制御可能ファイバースイッチFSは、選択ファイバーと呼ばれる二次光ファイバーのうち1つに各サブビームを結合するのに適している。従って、選択ファイバーの下流開口部は、光ファイバー素子の下流端部を形成する。下流開口部は、瞳面における所定の位置に配置されている。図3Bは、二次光ファイバー2a、2b、2c;3a、3b、3cの下流開口部及び光ファイバー素子F1の下流端部を含む瞳面PPの正面図(上)及び側面図(下)を概略的に例示する。この例示は、一例として与えられ、下流開口部の他の構成を本発明で選択することができる。
【0038】
制御可能ファイバースイッチFS及び複数の二次光ファイバーによって、瞳面PPの垂直及び水平軸で、従って、後焦点面BFPで、サブビームの異なる配置を自由に選択することができる。これは、制御可能ファイバースイッチFSが、試料面SPにおける干渉パターンIFを容易に変更することができることを意味する。ファイバースイッチは、後焦点面BFPに集束される試料面における干渉パターンIFの数を変更するために選択サブビーム又は複数のサブビームを「遮断する」こともできる。更に、これは、試料面SPにおける干渉パターンIFを変更する。この構成は、光ファイバーの配列を使用するので、更に一層ロバストであり、不整合に左右されない。
【0039】
図3Aの実施形態において、デバイス1は、この例で倍率-1の二重テレセントリック系である任意選択的な光学系RSを含む。この系RSは、二次像面に瞳面PPの倒立像を形成する。二次像面に配置された偏光子Polによって、サブビームがデバイス1の任意の他の光学部品を通る前に、サブビームを所定の向きに偏光させることができる。
【0040】
更に、図3Aの実施形態のデバイスは、サブビームの光路に任意選択的な上述の二重テレセントリックズームDTZを含む。図3Aの実施形態において、ズームDTZは、走査素子SE(例えば、検流計ミラー)に、系RSによって中継される瞳面PPの拡大像を形成する。従って、ズームDTZは、倍率の制御を介して、後焦点面BFPにおける各サブビームの間の距離Δを変更するのに適している。走査素子SEは、サブビームが、共役試料面SPCと呼ばれる試料面と光学的に共役された面で干渉し、その面SPCに干渉パターンIFを形成するように、ズームDTZを出たサブビームを反射する又は透過させる。この共役試料面SPCを、試料面SPに複数のレンズ及び/又はミラーによって撮像する。図3Aの矢印によって例示のように、走査素子SEは、面SPC(従って、試料面SP)でサブビームの位置をシフトし、全視野にわたって走査し、時間平均構造均一照明を生成するのに適している。
【0041】
代わりに、別の実施形態において、走査素子SEを、ズームDTZの上流に光学的に配置する。しかし、走査素子SEをズームDTZの下流に光学的に配置する図3Aに例示の構成は、例えば、検流計ミラーの傾斜のために、サブビームの一部がズームのレンズによって収集されないことを防止するのに好ましい。
【0042】
図3A図3C及び図3Dは、後焦点面における2つのサブビームSB1、SB2の間の距離Δが比較的長い(即ち、高倍率のズームDTZ)本発明の実施形態において、サブビームの光路、後焦点面BFPにおけるサブビームの位置及び試料面SPにおけるサブビームの干渉パターンをそれぞれ例示する。同様に、図4A図4B及び図4Cは、比較的短い距離Δ(即ち、低倍率のズームDTZ)、従って長い縞間距離を有する本発明の実施形態において、それぞれ図3A図3C及び図3Dと同じ素子を例示する。
【0043】
より詳細には、図3C及び図4Bは、後焦点面BFPにおけるサブビーム及び試料面SPにおける干渉パターンIFの配置を概略的に例示する。
【0044】
比較的長い距離Δのために、図3Cの実施形態において、試料面SPにおける干渉パターンIFは、回折限界縞間距離を有し、照明の領域は、比較的小さい。図4Bの実施形態において、距離Δは、比較的より短いので、干渉パターンIFの縞間距離は、比較的より長く(即ち、回折限界でない)、照明の領域は、比較的より大きい。両方の実施形態において、光ビームがガウス強度プロファイルを有する場合、干渉パターンの縞は、ガウス包絡線を有する。
【0045】
図3D及び図4Cは、デバイスの視野にわたって描かれた矢印によって、フレーム露出時間内で全視野を覆い、時間平均均一構造照明を達成するために必要な走査のステップを概略的に例示する。照明のより小さい領域を考えると、図3A図3C及び図3Dの実施形態において、全視野を覆うために必要なステップの数は、図4A図4B及び図4Cにおけるステップの数よりも多い。
【0046】
従って、図4A図4B及び図4Cの実施形態は、視野のより速い走査を可能にする一方、図3A図3C及び図3Dの実施形態は、より小さい縞を可能にし、従って、構造照明撮像でより高い空間分解能をもたらす。
【0047】
図5は、ファイバースイッチFSが瞳面PPで3つのサブビームを透過させる、図3Aの好ましい実施形態の変型例を概略的に例示する。この実施形態において、面SPC及び試料面における干渉パターンは、スポットの配列である。この実施形態は、構造マルチスポット照明を用いて深度共焦点顕微鏡法を実現することに関心がある。ズームDTZの倍率の効果を、図5に例示する。破線のサブビームSB1、SB3は、実線のサブビームSB1、SB3よりも大きいズームDTZの倍率の下で(即ち、より重要な距離Δで)サブビームの位置を表す。倍率の変更は、干渉パターンIFを変更する。面SPCの近くに描かれた矢印は、所定の視野にわたって構造照明の均一化のために使用される走査素子SEによって誘導されるサブビームの変位を表す。
【0048】
本発明の別の実施形態において、図3Aに例示の実施形態と異なるのは、光構成素子は、走査素子の後の下流に光学的に配置されているデジタルマイクロミラーデバイス又は空間光変調器である。
【0049】
図6は、本発明による試料を分析する方法を例示する。この方法は、本発明のデバイス1によって実施されるのに適している。方法は、空間コヒーレント光ビームLを放出することである第1のステップ1を含む。このステップを、光源LSによって実現する。次に、ステップBで、光構成素子LSEは、光ビームから複数のサブビームSB1、SB2、SB3を形成する。次に、ステップCで、光リレー素子ORは、後焦点面にサブビームを集束させる。ステップDで、顕微鏡対物レンズMOは、サブビームを視準し、視準光ビームCLを形成する。ステップEで、視準光ビームは、試料を照明し、試料光FLの放出をトリガーし、サブビームは、試料面で干渉し、干渉パターンIFを形成する。次に、ステップFで、走査素子SEは、試料面におけるサブビームの位置の複数の制御可能シフトを誘導する。このステップFで、試料面における各サブビームの間の角度は、複数の制御可能シフトに対して同一である。図6の方法の最終ステップGで、画素化光検出器Detは、所定のフレーム露出時間で試料光の像を取得する。ステップFで、制御可能シフトを、このフレーム露出時間内で誘導する。上述のように、ステップFを異なる順序で実行することができる前又は後に、ステップBを実行することができるけれども、両方のステップB及びFは、ステップAとステップGとの間で必然的に実行される。
【0050】
本発明の方法は、広い視野にわたって均一構造照明を生成するための素晴らしい解決策を提供する。
【0051】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、複数回及び毎回、干渉パターンIFの縞を変更し、ステップF及びGを繰り返し、変更縞に関連するこの試料光の像を取得することである後のステップHを含む。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【国際調査報告】