(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】鋳造材料の皮膜用のコールドスプレーシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 24/08 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
C23C24/08 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541831
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2023061205
(87)【国際公開番号】W WO2023147321
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ニローファー ナビリ テラーニ
(72)【発明者】
【氏名】サルミスタ ダス
(72)【発明者】
【氏名】スザンヌ ハウプト
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート エドワード ヒッキー
(72)【発明者】
【氏名】サゾル クマール ダス
(72)【発明者】
【氏名】ラジーブ ジー.カマット
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アンソニー ゲーンスバウアー
(72)【発明者】
【氏名】モニカ カプール
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA10
4K044BB01
4K044BB11
4K044BC01
4K044CA23
4K044CA25
4K044CA29
(57)【要約】
金属基材を加工処理する方法は、金属基材を受容することと、金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって金属粒子を付加的に堆積させて、金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することとを含み得る。方法は、任意選択で、金属粒子を堆積させてコールドスプレー皮膜を成形した後、または金属粒子を堆積させてコールドスプレー皮膜を成形する前に、金属基材を圧延することを含み得る。方法は、任意選択で、コールドスプレーの前に金属基材を加熱することを含み得る。金属加工システムは、金属基材上に金属粒子を付加的に堆積させるためのコールドスプレーシステム、及び金属基材をさらに加工処理するための少なくとも1つの機器を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材を加工処理する方法であって、
前記金属基材に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することと、
圧延機を用いて前記コールドスプレー皮膜を有する前記金属基材を圧延することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記金属基材は、連続鋳造金属製品、または直接チル鋳造工程から成形された鋳塊を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属粒子の前記堆積を制御することは、前記厚さが60~100μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記金属粒子を前記金属基材の鋳造方向に対して垂直な方向に付加的に堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属基材をコールドスプレーする前に、前記金属基材を加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属基材を加熱することは、
上流工程の作業からの残留熱を使用して前記金属基材を加熱すること、または
専用ヒータを用いて前記金属基材を加熱すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属基材は、5xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、6xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、または7xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材のうちの少なくとも1つを含み、前記コールドスプレー皮膜の前記金属粒子は、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属粒子を前記金属基材に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが前記金属基材の厚さよりも薄くなるように前記金属の前記堆積を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
金属基材を加工処理する方法であって、
圧延機を用いて前記金属基材を圧延することと、
前記圧延された金属基材に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記圧延された金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記金属基材を圧延することは、前記金属基材を熱間圧延することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記金属粒子の前記堆積を制御することは、前記厚さが60~100μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記金属粒子を前記金属基材全体で前記金属基材の鋳造方向に対して垂直な方向に付加的に堆積させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記金属基材は、5xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、6xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、または7xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材のうちの少なくとも1つを含み、前記コールドスプレー皮膜の前記金属粒子は、6xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記金属粒子を前記金属基材に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが前記金属基材の厚さよりも薄くなるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
コールドスプレーの前に前記金属基材を加熱することをさらに含み、
前記金属基材を加熱することは、
上流工程の作業からの残留熱を使用して前記金属基材を加熱すること、または
専用ヒータを用いて前記金属基材を加熱すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
金属基材を加工処理する方法であって、
コールドスプレーシステムで前記金属基材を受容することであって、前記金属基材は加熱された金属基材である、前記受容することと、
前記金属基材に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記金属基材を受容することは、連続鋳造金属基材、または直接チル鋳造によって成形された鋳塊を受容することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記金属基材の幅全体に前記金属粒子を付加的に堆積させることと、前記コールドスプレー皮膜の厚さが前記金属基材の厚さよりも薄くなるように前記金属粒子の前記堆積を制御することとを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記コールドスプレーシステムで前記金属基材を受容する前に、前記金属基材を加熱することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記金属粒子を付加的に堆積させる前に、前記金属基材は、前記金属基材を加熱するための上流工程の作業からの残留熱、または前記金属基材を加熱するための専用ヒータのうちの少なくとも1つを使用して加熱される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
金属基材に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するように構成されたコールドスプレーシステムと、
前記コールドスプレーシステムから下流工程にあり、前記コールドスプレー皮膜を有する前記金属基材を圧延するように構成された圧延機と、
を含む、金属加工システム。
【請求項25】
前記コールドスプレーシステムから上流工程にあり、前記金属基材を鋳造するように構成された連続鋳造装置をさらに含む、請求項24に記載の金属加工システム。
【請求項26】
前記圧延機は熱間圧延機である、請求項24に記載の金属加工システム。
【請求項27】
前記コールドスプレーシステムは、前記金属基材に前記金属基材の幅全体に前記金属粒子を付加的に堆積させるように構成される、請求項24に記載の金属加工システム。
【請求項28】
前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記コールドスプレーシステムを制御するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項24に記載の金属加工システム。
【請求項29】
前記コントローラは、前記コールドスプレーシステムのノズルの線形速度、または前記コールドスプレー皮膜として堆積する前記金属粒子の粉体供給速度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記コールドスプレーシステムを制御するように構成される、請求項28に記載の金属加工システム。
【請求項30】
金属基材に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するように構成されたコールドスプレーシステムと、
前記コールドスプレーシステムから上流工程にあり、前記コールドスプレーシステムによる前記金属粒子の前記堆積の前に前記金属基材を圧延するように構成された圧延機と、
を含む、金属加工システム。
【請求項31】
前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記コールドスプレーシステムを制御するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項30に記載の金属加工システム。
【請求項32】
前記コントローラは、前記コールドスプレーシステムのノズルの線形速度、または前記コールドスプレー皮膜として堆積する前記金属粒子の粉体供給速度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記コールドスプレーシステムを制御するように構成される、請求項31に記載の金属加工システム。
【請求項33】
加熱された金属基材を受容するように構成されたコールドスプレーシステムを含む金属加工システムであって、前記コールドスプレーシステムは、前記加熱された金属基材に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するように構成される、前記金属加工システム。
【請求項34】
前記コールドスプレーシステムから下流工程にあり、前記コールドスプレー皮膜を有する前記金属基材を圧延するように構成された圧延機をさらに含む、請求項33に記載の金属加工システム。
【請求項35】
前記コールドスプレーシステムは、前記金属基材に前記金属基材の幅全体に前記金属粒子を付加的に堆積させるように構成される、請求項33に記載の金属加工システム。
【請求項36】
前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記コールドスプレーシステムを制御するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項33に記載の金属加工システム。
【請求項37】
前記コントローラは、前記コールドスプレーシステムのノズルの線形速度、または前記コールドスプレー皮膜として堆積する前記金属粒子の粉体供給速度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記コールドスプレーシステムを制御するように構成される、請求項33に記載の金属加工システム。
【請求項38】
前記コールドスプレーシステムは、約400℃~約500℃の範囲にある温度で前記金属基材を受容するように構成される、請求項33に記載の金属加工システム。
【請求項39】
前記コールドスプレーシステムから上流工程にあり、前記金属基材に少なくとも残留熱を供給するように構成された少なくとも1つの機器をさらに含む、請求項33に記載の金属加工システム。
【請求項40】
前記少なくとも1つの機器は、鋳造装置、温間もしくは熱間圧延機、連続焼なまし固溶化熱処理システム、またはヒータのうちの少なくとも1つを含む、請求項39に記載の金属加工システム。
【請求項41】
請求項1、10、または18のいずれか1項に記載の方法によって成形された金属製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2022年1月25日に出願され、COLD SPRAY SYSTEMS AND METHODS FOR COATING CAST MATERIALSと題された米国仮特許出願第63/267,128号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用されている。
【0002】
本出願は、概して、冶金学に関し、より具体的には、皮膜を鋳造材料上に塗布するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属の連続鋳造では、従来の技術による除去またはマスクが困難な表面不具合を有する鋳造製品になることが多く、これらのような表面不具合の存在により、それらのような製品の潜在的な用途が制限される。さらに、それらのような表面不具合を面削仕上げまたは表面除去によって除去すると、時間とコストの両方の観点から工程の損失が起こる。したがって、表面が改善された連続鋳造材料を製造するための技術が不足している。
【発明の概要】
【0004】
本特許の適用を受ける実施形態は、この発明の概要ではなく、下記の特許請求の範囲によって規定される。この発明の概要は、様々な実施形態の高レベルの概要であり、下記の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明される概念の一部を紹介する。この発明の概要は、特許を請求する主題の重要または必須の特徴を特定することを意図しておらず、また、特許を請求する主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。この主題は、本特許の明細書全体、いずれかまたはすべての図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
特定の実施形態によれば、金属基材を加工処理する方法は、金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって金属粒子を付加的に堆積させて、金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することを含む。方法は、圧延機を用いてコールドスプレー皮膜を有する金属基材を圧延することを含む。
【0006】
様々な実施形態によれば、金属基材を加工処理する方法は、圧延機を用いて金属基材を圧延することと、圧延された金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって金属粒子を付加的に堆積させて、圧延された金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、加熱された金属基材を加工処理する方法は、加熱された金属基材をコールドスプレーシステムで受容することと、金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって金属粒子を付加的に堆積させて、金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することとを含む。
【0008】
様々な実施形態によれば、金属加工システムは、金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって金属粒子を付加的に堆積させて、金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するためのコールドスプレーシステムを含む。金属加工システムは、コールドスプレーシステムから上流工程または下流工程に圧延機を含み得る。
【0009】
特定の実施形態によれば、金属加工システムは、金属基材を加熱するためのヒータ、及びヒータから下流工程にコールドスプレーシステムを含み、コールドスプレーシステムは、加熱された金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって金属粒子を付加的に堆積させて、金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するためのものである。
【0010】
本明細書に説明される様々な実施態様は、追加のシステム、方法、特徴、及び利点を含み得、これらは、必ずしも本明細書で明示的に開示できないが、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討すれば、当業者にとって明らかであろう。すべてのこのようなシステム、方法、特徴、及び利点が、本開示の中に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0011】
本明細書は以下の添付図面を参照する。異なる図において同様の参照番号の使用は、同様または類似の構成要素を示すことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態による、コールドスプレーシステムを備えた金属加工システムを示す。
【
図2】
図1の金属加工システムによって加工処理されており、
図1のボックス2から取られた金属基材の一部を示す。
【
図3】実施形態による、
図1の金属加工システムを用いて金属基材をコールドスプレーする工程を示す。
【
図4】実施形態による、
図1の金属加工システムを用いて金属基材をコールドスプレーする別の工程を示す。
【
図5】実施形態による、金属基材を加工処理する方法を示す。
【
図6】実施形態による、金属基材を加工処理する別の方法を示す。
【
図7】実施形態による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図8】実施形態による、圧延後の
図7のコールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図9】実施形態による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図10】実施形態による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図11】実施形態による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図12】実施形態による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図13】実施形態による、圧延後の
図11の金属基材の別の画像である。
【
図14】実施形態による、圧延後のコールドスプレー皮膜を備えた金属基材の表面粗さを示すチャートである。
【
図15】実施形態による、圧延後のコールドスプレー皮膜を備えた金属基材の曲げ角度を示すチャートである。
【
図16】コールドスプレー皮膜なしの金属基材の24時間後かつ圧延後の粒界腐食の画像である。
【
図17】実施形態による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の圧延後の24時間後の粒界腐食の画像である。
【
図18】
図16の金属基材の圧延後の48時間後の粒界腐食の画像である。
【
図19】
図17の金属基材の曝露後の48時間後の粒界腐食の画像である。
【
図20】A~Cは、実施形態によるコールドスプレー皮膜を備えた金属基材の画像である。
【
図21】コールドスプレー皮膜のない金属基材と比較した、実施形態によるコールドスプレー皮膜の有る金属基材を示す。
【
図22】コールドスプレー皮膜のない金属基材と比較した、実施形態によるコールドスプレー皮膜の有る金属基材を示す。
【
図23】A~Bは、コールドスプレー皮膜のない金属基材の腐食と比較した、実施形態によるコールドスプレー皮膜の有る金属基材の腐食を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、金属基材上にコールドスプレー皮膜を形成するためのコールドスプレーシステム及び方法だけでなく、コールドスプレー皮膜を備えた金属製品も説明される。本明細書で説明されるシステム及び方法は、いずれの金属にも使用できるが、これらは特にアルミニウムまたはアルミニウム合金に有用であり得る。有利なことに、コールドスプレー皮膜は、連続鋳造後、直接チル鋳造後、圧延前、圧延後などの金属加工処理中に金属基材上に堆積し得る。いくつかの態様では、加熱表面上に塗布されたコールドスプレー皮膜は、機械的及び/または化学的結合によって境界面を作成して、使用中の金属製品に継続的な保護を提供し得、この金属製品は、「溶融鋳込み」を使用して成形された製品と同様であり得、商標名FUSION(商標)(Novelis,Inc.,Atlanta,US)と称されることもでき、例えば、米国特許第7,472,740号に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用されている。様々な実施形態では、コールドスプレー皮膜は、機械的特性を低下させることなく、金属基材の表面上の浸出物及び/または他の不具合を隠蔽し得ることにより、金属基材を消費者向け製品、外部製品、及び/または他の高品質製品(本明細書では「クラスA」製品と呼ばれる)に使用することが可能になる。いくつかの実施形態では、コールドスプレー皮膜は、金属基材の表面の色、曲げ性、及び/または耐食性を改善することを含むがこれに限定されない、金属基材の特性を改善し得る。コールドスプレー皮膜は、直接チルまたは連続鋳造製品などの製品に塗布され得ると、面削仕上げを回避することまたは最小にすること、表面近くの微細構造を改善すること、及び/または最終的なゲージ特性を改善することによって生産性を高め得る。本明細書で提供されるシステム及び方法により、他の様々な利益及び利点が実現され得、上述の利点は限定的であると見なされるべきではない。
【0014】
図1~
図4は、様々な実施形態による、金属基材102を加工処理するためのものであり、コールドスプレーシステム104を含む、金属加工システム100の一例を示す。特定の実施形態では、以下で詳細に説明されるように、コールドスプレーシステム104に加えて、金属加工システム100は、金属基材102をさらに加工処理するための1つまたは複数の追加のシステムまたは機器142を含み得る。
【0015】
図1に例示されるように、金属基材102は、対向する表面106、108を含み、
図1の実施形態では、加工処理(または鋳造)方向110内で加工処理されている。金属基材102は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタン系材料、チタン合金、銅、銅系材料、複合材料、複合材料で使用されるシート、または任意の他の適切な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な材料であってもよい。モノリシック材料、ならびに非モノリシック材料、例えば、ロールボンド材料、クラッド合金、クラッド層、複合材料(例えば、限定されないが、炭素繊維含有材料など)、または他の様々な材料もまた、本明細書に記載される方法及び製品で有用であり得る。特定の実施形態では、金属基材102は、アルミニウム合金、例えば、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金である。非限定的な一例では、金属基材102は、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金のうちの少なくとも1つである。
【0016】
非限定的な例として、本明細書に記載される方法及び製品で使用する例示的な1xxx合金は、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199を含むことができる。
【0017】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する2xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199を含むことができる。
【0018】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する3xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065を含むことができる。
【0019】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する4xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147を含み得る。
【0020】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する5xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を含み得る。
【0021】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する6xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を含み得る。
【0022】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する7xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を含み得る。
【0023】
本明細書に記載される方法及び製品で使用する8xxxシリーズの合金の非限定的な例は、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、またはAA8093を含み得る。
【0024】
図1及び
図2に例示される実施形態では、金属基材102は連続鋳造金属シートであるが、他の実施形態では、金属基材102は、要望通り、鋳塊、ビレット、他の鋳造製品、プレート、シェート(shate)、シート、及び/または他の圧延製品を含むがこれらに限定されない、要望通り他のタイプの基材であってもよい。非限定的な一例では、金属基材102は、直接チル鋳造によって成形された鋳塊である。
【0025】
一般にコールドスプレーシステム104は、金属基材102の少なくとも1つの表面上に厚さ122を有するコールドスプレー皮膜116(
図2参照)を形成する粒子114を堆積させるためのノズル112を含む。図示の実施形態では、コールドスプレーシステム104は、コールドスプレー皮膜116が表面106上にあるように表面106上に粒子114を堆積させるが、他の実施形態では、コールドスプレーシステム104は、要望通り、表面108上、または表面106、108の両方の上に粒子114を堆積させ得る。またコールドスプレーシステム104は、粒子114の供給を受けるための粒子(または粉体)フィーダ118、及び金属基材102上で粒子114を加速させるために使用されるガスを加熱するためのヒータ120を含み得る。
【0026】
粒子フィーダ118は、粒子114の供給を受けてよく、粒子114をノズル112に供給する。特定の実施形態では、粒子フィーダ118を制御して、粒子114がノズル112に供給される速度を制御することにより、粒子114が金属基材102上にコールドスプレーされる速度、及びコールドスプレー皮膜116の厚さ122が制御され得る。粒子114は、要望通りコールドスプレーに適した様々なタイプの粉体材料であってもよく、特定の実施形態では、粒子114は、アルミニウム合金を含むがこれに限定されない金属である。非限定的な一例では、粒子114は、6xxxシリーズのアルミニウム合金である。非限定的な一例では、粒子114として使用される金属の少なくとも1つの特徴または特性は、金属基材102の金属とは異なり得る。非限定的な一例では、粒子114として使用される金属は、金属基材102の金属の硬さよりも高い硬さを有し得る。粒子114は、要望通り様々な直径を有してもよく、特定の実施形態では、直径は、0μm超~約100μm、例えば0μm超~約50μm、例えば約5μm~約50μmであってもよい。いくつかの実施形態では、粒子114として使用される材料のタイプ(例えば、特定のアルミニウム合金)及び/または粒子114のサイズを制御して、コールドスプレー皮膜116の厚さ122を制御し得る。
【0027】
ヒータ120は、ガスを受容し、そのガスを所望の温度まで加熱するための様々な適切な装置または機構であり得る。ガスは、空気、窒素、ヘリウム、及び/または他のガス、またはガスの組み合わせを含むがこれらに限定されない、必要に応じてコールドスプレーに適した様々なタイプのガスであってよい。いくつかの実施形態では、ガスの圧力は、コールドスプレーシステム104が高圧コールドスプレーシステムまたは低圧コールドスプレーシステムであるように制御され得る。特定の実施形態では、ヒータ120を制御して、ガスが加熱される温度を制御してもよい。
【0028】
ノズル112は、コールドスプレー工程中に金属基材102上に粒子114をスプレーするのに適した様々なタイプのノズルであり得る。コールドスプレー工程中、ノズル112は金属基材102上でスキャンして、または横切って、金属基材102上に粒子114をスプレーし、コールドスプレー皮膜116を形成し、ノズル112はコールドスプレー皮膜116の厚さ122を制御するための様々な堆積コントロールを含み得る。ノズル112の堆積コントロールは、ノズル112と金属基材102との間の距離、横断方向(例えば、鋳造方向110に平行または鋳造方向110に垂直)、線形速度、金属基材102上の所与の領域にわたるパス回数、及び/またはスキャンステップ(隣接するパス間の距離)を含み得るが、これらに限定されない。
【0029】
コールドスプレー工程中、粒子フィーダ118は、粒子114をノズル112に供給し、ヒータ120からの加熱されたガスをノズル112に供給することで、粒子114を高速に加速し、次いで金属基材102上にスプレーする。金属基材102との衝突時に、粒子114は、断熱加熱を受け、塑性的に変形することで、金属基材102に機械的に付着して、コールドスプレー皮膜116を形成する。特定の実施形態では、以下で詳細に説明されるように、金属基材102はコールドスプレー工程の前に任意選択で加熱され得、加熱された金属基材102をコールドスプレーすることにより、機械的及び化学的結合の両方によって境界面が作成され得る。
【0030】
上述のように、コールドスプレーシステム104の1つ以上の制御パラメータは、コールドスプレー皮膜116が金属基材102の表面上の浸出物及び/または他の不具合を覆う厚さ122を有するように制御され得る。
図2に示される厚さ122は、見やすくするために誇張されており、金属基材102に対する特定の厚さ122を推論することを意図したものではない。非限定的な一例では、コールドスプレーシステム104は、コールドスプレー皮膜116の厚さ122が約20μm~約300μm、例えば約30μm~約200μm、例えば約30μm~約150μm、例えば約30μm~約100μm、または例えば約60μm~約100μmであるように制御され得る。いくつかの実施形態では、コールドスプレーシステム104は、コールドスプレー皮膜116の厚さ122が金属基材102の厚さよりも薄くなるように制御される。加工処理中に制御され得るコールドスプレーシステム104のパラメータの非限定的な例は、粒子114を加速するために使用されるガスのタイプ、粒子を加速するために使用されるガス圧、ヒータ120がガスを加熱する温度、粒子114として使用される材料のタイプ、粒子114の直径またはサイズ、粒子フィーダ118からの粒子114の供給速度、ノズル112のタイプ、金属基材102の表面に対するノズル112の角度、ノズル112と金属基材102との間の距離、金属基材102上でのノズル112の線形速度、金属基材102上でのノズル112の横断方向、ノズル112のパス回数、及び/またはスキャンステップを含むが、これらに限定されない。
【0031】
図3及び
図4は、コールドスプレーシステム104を使用して金属基材102上に粒子114をコールドスプレーして、表面106上にコールドスプレー皮膜116を形成するパターンの非限定的な2つの例を示す。
図3はノズル112の第一スプレー経路124Aを示し、
図4はノズル112の第二スプレー経路124Bを示す。
図3では、第一スプレー経路124Aは鋳造方向110に垂直な横断方向(または表面106に沿った短手方向126)にあり、スキャンステップ128は第一距離(例えば、1mm)である。
図4では、第二スプレー経路124Bは鋳造方向110に平行であり、スキャンステップ128は第一距離よりも大きい第二距離(例えば、3mm)である。様々な他のスプレーパターン及び/またはスプレー経路はコールドスプレーシステム104によって必要に応じて利用され、所望の厚さ122を有するコールドスプレー皮膜116を設け得る。
【0032】
図1を参照すると、特定の実施形態では、コールドスプレーシステム104に加えて、金属加工システム100は、少なくとも1つの追加の加工処理機器142を任意選択で含む。図示の実施形態では、追加の加工処理機器142は圧延機のワークスタンド130であるが、他の実施形態では、追加のタイプの加工処理機器は、必要に応じて金属加工システム100と共に利用され得る。加工処理機器の非限定的な例は、金属基材102を鋳造するための機器、均質化のための機器、熱間圧延用の機器、冷間圧延用の機器、固溶化熱処理用の機器、時効用の機器、コイル成形用の機器、せん断用の機器、スタンピング用の機器、成形用の機器、及び/または圧延成形用の機器を含み得るが、これらに限定されない。さらに、機器142は、鋳造方向110でコールドスプレーシステム104から下流工程にあるように示されるが、他の実施形態では、そうである必要はなく、いくつかの任意選択の実施形態では、コールドスプレーシステム104は、2つの機器142の間に設けられてもよい。非限定的な一例として、コールドスプレーシステム104は、第一機器142としてヒータまたは炉からすぐ下流で、かつ第二機器として圧延機のワークスタンドからすぐ上流に設けられ得る。特定の実施形態では、コールドスプレーシステム104が金属基材102上にコールドスプレー皮膜116のための粒子114を堆積させるが、それでも金属基材102が上流の工程から温められているように、コールドスプレーシステム104は他の機器に対して様々な位置にあってもよい。それらのような実施形態では、金属基材102は、別個のヒータによって加熱される必要はない。言い換えれば、金属基材102は、加熱することによって、及び/または上流工程の作業からの残留熱を利用することによって、コールドスプレー皮膜116を成形するのに適している温められた、加熱された、または熱くなった材料であってもよい。それらのような上流工程の作業の非限定的な例は、鋳造、温間または熱間圧延、インターアニーリング、連続焼なまし固溶化熱処理、それらの組み合わせ、及び/または必要に応じて他の上流工程の作業を含み得るが、これらに限定されない。
【0033】
図5及び
図6は、コールドスプレーシステム104によるコールドスプレーが少なくとも1つの追加の金属加工処理技術と併せて行われる2つの金属加工処理工程を示す。
図5はコールドスプレー及び圧延を含む様々な実施形態による金属加工処理工程500の非限定的な例を示し、
図6は加熱及びコールドスプレーを含む、実施形態による金属加工処理工程600の非限定的な例を示す。
【0034】
図5を参照すると、ブロック501では、工程500は、金属基材102を受容し、コールドスプレーシステム104を使用して金属基材102をコールドスプレーすることで、金属基材102の表面の少なくとも1つ(例えば、表面106)の上にコールドスプレー皮膜116を形成することを含む。特定の実施形態では、ブロック501は、コールドスプレーシステム104を制御してコールドスプレー皮膜116の厚さ122を制御することを含む。それらのような実施形態では、ブロック501は、コールドスプレー皮膜116が金属基材102の表面上の浸出物及び/または他の不具合を覆うのに十分な厚さ122を含むように、コールドスプレーシステム104を制御することを含み得る。非限定的ないくつかの実施形態では、コールドスプレーシステム104を制御することは、厚さ122が約20μm~約300μm、例えば約30μm~約200μm、例えば約30μm~約150μm、例えば約30μm~約100μm、または例えば約60μm~約100μmであるように、コールドスプレーシステム104を制御することを含む。任意選択で、ブロック501ではコールドスプレーシステム104を制御することは、粒子114を加速するために使用されるガスのタイプ、粒子を加速するために使用されるガス圧、ヒータ120がガスを加熱する温度、粒子114として使用される材料のタイプ、粒子114の直径またはサイズ、粒子フィーダ118からの粒子114の供給速度、ノズル112のタイプ、金属基材102の表面に対するノズル112の角度、ノズル112と金属基材102との間の距離、金属基材102上でのノズル112の線形速度、金属基材102上でのノズル112の横断方向、ノズル112のパス回数、及び/またはスキャンステップを制御することを含み得るが、これに限定されない。
【0035】
ブロック503では、工程は、圧延機を使用して、コールドスプレー皮膜116を備えた金属基材102を圧延することを含む。非限定的な一実施形態では、ブロック503は、熱間圧延機を使用して圧延し、ゲージが3mm~200mmの間(例えば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、またはその間のいずれか)の熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または熱間圧延シートを成形することを含み得る。非限定的な別の実施形態として、ブロック503は、冷間圧延機を使用して圧延して、約0.5~10mmの間、例えば約0.7~6.5mmの間のゲージを有する冷間圧延シートを成形することを含み得る。任意選択で、冷間圧延製品は、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8.0mm、8.5mm、9.0mm、9.5mm、または10.0mmのゲージを有し得る。
【0036】
任意選択で、工程500は、ブロック501ではコールドスプレーの前、及び/またはブロック503では圧延後、1つ以上の加工処理ステップまたは技術を含み得る。非限定的な一例では、工程は、コールドスプレーの前に金属基材102を連続鋳造すること、またはコールドスプレーの前に金属基材102として鋳塊を直接チル鋳造することを含み得る。非限定的な別の例では、工程は、コールドスプレーの前に金属基材102を圧延すること、及び/またはコールドスプレーの前に金属基材102を加熱する、または均質化することを含み得る。
【0037】
特定の実施形態では、コールドスプレー皮膜116で浸出物を隠蔽することに加えて、工程500に従ってコールドスプレー皮膜116を塗布した後に金属基材102を圧延することにより、コールドスプレー皮膜116を成形する粒子114の間の付着だけでなく、粒子114と金属基材102との間の付着も改善され得る。またコールドスプレー皮膜116の塗布後に金属基材102を圧延すると、コールドスプレー皮膜116中の間隙率が最小になり得る、または低下し得るため、後続の加工処理のための及び/または最終製品としてのコールドスプレー皮膜116の特性が改善され得る。
【0038】
図6を参照すると、ブロック601では、工程600は、金属基材102を加熱すること、及び/または加熱された金属基材102を受容することを含む。ブロック601では、金属基材102を加熱すること、及び/または加熱された金属基材102を受容することは、上流工程の作業または機器からの残留熱を使用すること(及び/または上流工程の作業からの残留熱から加熱される金属基材102を受容すること)を含み得、及び/またはブロック601での金属基材102の加熱はヒータを使用して金属基材を加熱することを含み得る。非限定的な例として、鋳造、圧延、及び/または連続焼なまし固溶化熱処理などの上流工程は、コールドスプレー用に金属基材102を加熱するのに適した残留熱を金属基材102に供給し得る。さらに、または代わりに、専用のヒータまたは加熱システムは、コールドスプレー前に金属基材102を加熱してもよい。非限定的な一例では、金属基材102を加熱することは、金属基材102を約400℃~約500℃、例えば、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、または約500℃の範囲の温度まで加熱することを含む。非限定的な別の例では、金属基材102を加熱することは、任意選択で、コールドスプレー後の金属基材102の温度が約250℃~約400℃、例えば、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃であるように金属基材102を加熱することを含む。
【0039】
ブロック601で実行された加熱の後、工程600は、ブロック603で加熱された金属基材102をコールドスプレーすることを含む。ブロック603は、工程500のブロック501と実質的に同様である。工程500と同様に、工程600は、ブロック601の前及び/またはブロック604の後に1つまたは複数の追加の加工処理ステップを任意選択で含む。
【0040】
特定の実施形態では、コールドスプレー皮膜116を用いて浸出物を隠蔽することに加えて、工程600に従ってコールドスプレー皮膜116を塗布する前に金属基材102を加熱することにより、コールドスプレー皮膜116と金属基材102との間の化学的及び/または機械的結合による境界面が作成され得る。化学的及び機械的結合とのそのような境界面は、使用中の(例えば、最終製品として)金属基材102に改善された保護を提供し得る。
【0041】
図7及び
図8は、AA6061合金粒子714によって形成されたコールドスプレー皮膜716を有するAA6111合金金属基材702を示す拡大画像である。
図7は圧延前のコールドスプレー皮膜716を備えた金属基材702を示し、
図8は圧延後かつ熱処理後のコールドスプレー皮膜716を備えた金属基材702を示す。
図7に示されるように、圧延されなければ、コールドスプレー皮膜716は、コールドスプレー皮膜716を形成する粒子714の間に様々な寸法の間隙率734を含み得る。比較により、
図8に示されるように、コールドスプレー皮膜716を備えた金属基材702の圧延及び熱処理は、そのような間隙率734を除去し得る、または実質的に除去し得ることにより、コールドスプレー皮膜716の特性が改善され得る。
【0042】
図9~
図19は、本明細書に記載の方法による、コールドスプレー皮膜を備えた金属基材の特性を示す画像及びチャートである。これらの例では、サンプル1~4(本明細書では、それぞれ「S1」、「S2」、「S3」、及び「S4」と略される)はそれぞれ、連続鋳造AA6111合金金属基材902、及びAA6061合金粒子で形成されたコールドスプレー皮膜を金属基材902の一方の側に含んだ。金属基材902の反対側は、コールドスプレーされなかった。S1~4のそれぞれも、コールドスプレー前の金属基材の温度が420℃~500℃であるように加熱された。これらの例の対照基材938(以降本明細書では「対照」)は、鋳放しAA6111合金金属基材であった。
【0043】
S1では、コールドスプレーシステムのノズルを鋳造方向に垂直な方向に750mm/sの線形速度、スキャンステップ1mm、そして粒子フィーダの速度1RPMで移動させることによって、コールドスプレー皮膜916Aを金属基材902に塗布した。
図9は、金属基材902上にあり、いずれかの圧延前のコールドスプレー皮膜916Aを示す。この実施形態では、コールドスプレー皮膜916Aの厚さ122は、18μm~43μmの範囲であり、平均厚さ33μmを有した。
【0044】
S2では、コールドスプレーシステムのノズルを鋳造方向に垂直な方向に250mm/sの線形速度、スキャンステップ1mm、そして粒子フィーダの速度1.4RPMで移動させることによって、コールドスプレー皮膜916Bを金属基材902に塗布した。
図10は、金属基材902上にあり、いずれかの圧延前のコールドスプレー皮膜916Bを示す。この実施形態では、コールドスプレー皮膜916Bの厚さ122は、72μm~172μmの範囲であり、平均厚さ126μmを有した。
【0045】
S3では、コールドスプレーシステムのノズルを鋳造方向に平行な方向に250mm/sの線形速度、スキャンステップ1mm、そして粒子フィーダの速度1.4RPMで移動させることによって、コールドスプレー皮膜916Cを金属基材902に塗布した。
図11は、金属基材902上にあり、いずれかの圧延前のコールドスプレー皮膜916Cを示す。この実施形態では、コールドスプレー皮膜916Cの厚さ122は、87μm~203μmの範囲であり、平均厚さ149μmを有した。
【0046】
S4では、コールドスプレーシステムのノズルを鋳造方向に平行な方向に150mm/sの線形速度、スキャンステップ3mm、そして粒子フィーダの速度4RPMで移動させることによって、コールドスプレー皮膜916Dを金属基材902に塗布した。
図12は、金属基材902上にあり、いずれかの圧延前のコールドスプレー皮膜916Dを示す。この実施形態では、コールドスプレー皮膜916Dの厚さ122は、120μm~293μmの範囲であり、平均厚さ200μmを有した。
【0047】
図9~
図12を比較することによって示されるように、S1に従って制御されたコールドスプレーシステムは厚さ122の最も薄いコールドスプレー皮膜916Aを生成し、S4に従って制御されたコールドスプレーシステムは厚さの最も厚いコールドスプレー皮膜916Dを生成した。
【0048】
図13は圧延後のS3を示す。この図に示されるように、コールドスプレー皮膜916Cと金属基材902との間の境界面にある浸出物936は、コールドスプレー皮膜916Cによって覆われて、隠蔽された。コールドスプレー皮膜916がなければ、浸出物936は、金属基材902の外面上に存在し、除去を必要とし、及び/または金属基材902の使用を内部または構造用途に限定したであろう。
【0049】
図14は、S1-4の圧延後の表面粗さ(Sa)を対照と比較して示すチャートである。S1-4及び対照のそれぞれについて、コールドスプレー側と非コールドスプレー側との両方の上で表面粗さを測定した。またS1~S4及び対照を、ASTM B557に従って材料強度及び伸びについても試験したが、S1~S4のコールドスプレー皮膜は材料強度または伸びに大きな影響を示さなかった。それらのような結果は、コールドスプレー皮膜により金属基材の特性が劣化しなかったことを示す。
【0050】
特定の実施形態では、
図9~
図14に示されるように、浸出物をマスクして金属基材の一部の特性を維持することに加えて、コールドスプレー皮膜は、被覆される金属基材の特性を改善し得る。非限定的ないくつかの例として、コールドスプレー皮膜は、曲げ性、腐食性能(例えば、耐食性)、及び/または色品質を改善し得る。
【0051】
非限定的な例として、本明細書に記載のコールドスプレー皮膜は、5182アルミニウム合金を含むがこれに限定されない5xxxシリーズのアルミニウム合金上で使用されて、それらのような合金の熱処理または熱間圧延後の酸化マグネシウム形成による表面の色の変化を改善し得る。
【0052】
非限定的な別の例として、
図15は、VDA-238-100に従って試験した場合の圧延後のS1-4及び対照の曲げ角度を示す。
図15に示されるように、S1(最小厚のコールドスプレー皮膜)及びS2(鋳造方向に垂直に塗布された中間の厚さのコールドスプレー皮膜)は、両方とも対照と比較して曲げ性能を改善した。
【0053】
非限定的なさらなる例として、
図16~
図19は、対照を化学物質に曝露した後の24時間後(
図16)、S2を同じ化学物質に曝露した後の24時間後(
図17)、対照を同じ化学物質に曝露した後の48時間後(
図18)、及びS2を同じ化学物質に曝露した後の48時間後(
図19)の粒界腐食性能を示す上面ビューの画像である。
図16及び
図18は、24時間後及び48時間後の両方での対照における粒界腐食940を示す。比較すると、S2では粒界腐食940の領域が著しく減少し、コールドスプレー皮膜なしの基材と比較して、コールドスプレー皮膜が耐食性を改善したことが示された。
【0054】
図20A~Cは、実施形態によるコールドスプレー皮膜を備えた金属基材の部分画像であり、基材とコールドスプレー皮膜との間で達成される良好な付着を示す。
図20A~Cのそれぞれは、同じ圧延作業後の金属基材を示す。
図20Aは、AA6061合金粒子で形成されたコールドスプレー皮膜2016Aを備えた5xxxアルミニウム合金基材2002Aを示す。
図20Bは、AA6061合金粒子で形成されたコールドスプレー皮膜2016Aを備えた6xxxアルミニウム合金基材2002Aを示す。
図20Cは、AA6061合金粒子で形成されたコールドスプレー皮膜2016Aを備えた7xxxアルミニウム合金基材2002Aを示す。
図20Aでは、コールドスプレー皮膜2016Aは厚さ約30μmを有した。
図20Bでは、コールドスプレー皮膜2016Bは厚さ約45μmを有した。
図20Cでは、コールドスプレー皮膜2016Cは厚さ約40μmを有した。
【0055】
図21は、コールドスプレー皮膜のない金属基材2102Bと比較した、実施形態によるコールドスプレー皮膜の有る金属基材2102Aの例を示す。
図21では、金属基材2102A~Bの両方は同じ5xxxアルミニウム合金であり、金属基材2102Aは6xxxアルミニウム粒子で形成されたコールドスプレー皮膜をさらに含んだ。金属基材2102Aを金属基材2102Bと比較することによって示されるように、コールドスプレー皮膜の有る金属基材2102Aは、コールドスプレー皮膜のない金属基材2102Bと比較して視覚的により明るい外観を有した。
【0056】
図22は、コールドスプレー皮膜のない金属基材2202Bと比較した、実施形態によるコールドスプレー皮膜の有る金属基材2202Aの例を示す。
図22では、金属基材2202A~Bの両方は同じ7xxxアルミニウム合金であり、金属基材2202Aは6xxxアルミニウム粒子で形成されたコールドスプレー皮膜をさらに含んだ。金属基材2202Aを金属基材2202Bと比較することによって示されるように、コールドスプレー皮膜の有る金属基材2102Aは、コールドスプレー皮膜のない金属基材2102Bと比較して視覚的により明るい外観を有した。
【0057】
図23A~Bは、コールドスプレー皮膜のない金属基材2302Bの腐食と比較した、実施形態によるコールドスプレー皮膜の有る金属基材2302Aの腐食を示す。
図23A~Bでは、金属基材2302A~Bの両方は同じ7xxxアルミニウム合金であり、金属基材2302Aは6xxxアルミニウム粒子で形成されたコールドスプレー皮膜をさらに含んだ。ISO11846B試験を用いて、金属基材2302A~Bの両方について腐食試験を実施した。金属基材2302A~Bを比較することによって示されるように、金属基材2302B(コールドスプレー皮膜なし)は概して腐食2340を受けたが、金属基材2302A(コールドスプレー皮膜あり)は概して受けなかった。
【0058】
本明細書で説明される技法により、他の様々な利益及び利点が実現され得、上述の利点は限定的であると見なされるべきではない。
【0059】
上述のように、本明細書に記載のコールドスプレー皮膜を備えた金属製品は、様々な製品に使用されることができ、特にクラスAの製品に有用であり得る。いくつかの例では、金属製品は、自動車用途、ならびに他の航空機、及び鉄道用途などの輸送用途、または任意の他の所望の用途に使用され得る。例えば、コールドスプレー皮膜を備えた本開示の金属製品を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネル等の自動車構造部品を加工し得る。また、本明細書に説明される、コールドスプレー皮膜を備えた金属製品及び方法は、例えば、外部パネル及び内部パネルを加工するために、航空機用途または鉄道車両用途でも使用され得る。
【0060】
本明細書に記載されている、コールドスプレー皮膜を備えた金属製品及び方法は、電子機器の用途にも使用できる。例えば、本明細書に説明される、コールドスプレー皮膜を備えた金属製品及び方法を使用して、携帯電話及びタブレットコンピューターを含む電子デバイスの筐体を加工し得る。いくつかの例では、コールドスプレー皮膜を備えた金属製品を使用して、携帯電話(例えば、スマートフォン)のアウターケーシング、タブレットボトムシャーシ、及び他の携帯電子機器の筐体を加工し得る。
【0061】
例示
本明細書に記載された概念による、様々な例示的な実施形態のさらなる説明を提供する「例示」として明示的に列挙された少なくともいくつかを含む、例示的な実施形態の集合体が以下に提供される。これらの例示は、相互に排他的、網羅的、または限定的であることを意図するものではなく、本開示は、これらの例の例示に限定されるのではなく、むしろ発行された特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の全ての実現可能な修正形態及び変形形態を包含する。
【0062】
例示1.金属基材を加工処理する方法であって、前記金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することと、前記コールドスプレー皮膜を有する前記金属基材を圧延機で圧延することとを含む、前記方法。
【0063】
例示2.前記金属基材は、連続鋳造金属製品、または直接チル鋳造工程から成形された鋳塊を含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0064】
例示3.前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0065】
例示4.前記金属粒子の前記堆積を制御することは、前記厚さが60~100μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0066】
例示5.前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記金属粒子を前記金属基材の鋳造方向に対して垂直な方向に付加的に堆積させることを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0067】
例示6.前記金属基材をコールドスプレーする前に、前記金属基材を加熱することをさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0068】
例示7.前記金属基材を加熱することは、上流工程の作業からの残留熱を使用して前記金属基材を加熱すること、または専用ヒータを用いて前記金属基材を加熱することのうちの少なくとも1つを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0069】
例示8.前記金属基材は、5xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、6xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、または7xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材のうちの少なくとも1つを含み、前記コールドスプレー皮膜の前記金属粒子は、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金のうちの少なくとも1つを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0070】
例示9.前記金属粒子を前記金属基材上に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが前記金属基材の厚さよりも薄くなるように前記金属の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0071】
例示10.金属基材を加工処理する方法であって、圧延機を用いて前記金属基材を圧延することと、前記圧延された金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記圧延された金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することとを含む、前記方法。
【0072】
例示11.前記金属基材を圧延することは、前記金属基材を熱間圧延することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0073】
例示12.前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0074】
例示13.前記金属粒子の前記堆積を制御することは、前記厚さが60~100μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0075】
例示14.前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記金属粒子を前記金属基材全体で前記金属基材の鋳造方向に対して垂直な方向に付加的に堆積させることを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0076】
例示15.前記金属基材は、5xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、6xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材、または7xxxシリーズのアルミニウム合金金属基材のうちの少なくとも1つを含み、前記コールドスプレー皮膜の前記金属粒子は6xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0077】
例示16.前記金属粒子を前記金属基材上に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが前記金属基材の厚さよりも薄くなるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0078】
例示17.コールドスプレー前に前記金属基材を加熱することをさらに含み、前記金属基材を加熱することは、上流工程の作業からの残留熱を使用して前記金属基材を加熱すること、または専用ヒータを用いて前記金属基材を加熱することのうちの少なくとも1つを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0079】
例示18.金属基材を加工処理する方法であって、前記金属基材をコールドスプレーシステムで受容することであって、前記金属基材は加熱された金属基材である、前記受容することと、前記金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成することとを含む、前記方法。
【0080】
例示19.前記金属基材を受容することは、連続鋳造金属基材、または直接チル鋳造によって成形された鋳塊を受容することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0081】
例示20.前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記金属粒子を前記金属基材の幅にわたって付加的に堆積させることと、前記コールドスプレー皮膜の厚さが前記金属基材の厚さよりも薄くなるように前記金属粒子の前記堆積を制御することとを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0082】
例示21.前記金属粒子を付加的に堆積させて前記コールドスプレー皮膜を生成することは、前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記金属粒子の前記堆積を制御することを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0083】
例示22.前記コールドスプレーシステムで前記金属基材を受容する前に、前記金属基材を加熱することをさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0084】
例示23.前記金属粒子を付加的に堆積させる前に、前記金属基材は、前記金属基材を加熱するための上流工程の作業からの残留熱、または前記金属基材を加熱するための専用ヒータのうちの少なくとも1つを使用して加熱される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0085】
例示24.金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するように構成されたコールドスプレーシステム、及び前記コールドスプレーシステムから下流工程にあり、前記コールドスプレー皮膜を有する前記金属基材を圧延するように構成された圧延機を含む、金属加工システム。
【0086】
例示25.前記コールドスプレーシステムから上流工程にあり、前記金属基材を鋳造するように構成された連続鋳造装置をさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0087】
例示26.前記圧延機は熱間圧延機である、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0088】
例示27.前記コールドスプレーシステムは、前記金属基材上で前記金属基材の幅にわたって前記金属粒子を付加的に堆積させるように構成される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0089】
例示28.前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記コールドスプレーシステムを制御するように構成されたコントローラをさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0090】
例示29.前記コントローラは、前記コールドスプレーシステムのノズルの線形速度、または前記コールドスプレー皮膜として堆積する前記金属粒子の粉体供給速度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記コールドスプレーシステムを制御するように構成される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0091】
例示30.金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するように構成されたコールドスプレーシステム、及び前記コールドスプレーシステムから上流工程にあり、前記コールドスプレーシステムによる前記金属粒子の前記堆積の前に前記金属基材を圧延するように構成された圧延機を含む、金属加工システム。
【0092】
例示31.前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記コールドスプレーシステムを制御するように構成されたコントローラをさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0093】
例示32.前記コントローラは、前記コールドスプレーシステムのノズルの線形速度、または前記コールドスプレー皮膜として堆積する前記金属粒子の粉体供給速度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記コールドスプレーシステムを制御するように構成される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0094】
例示33.加熱された金属基材を受容するように構成されたコールドスプレーシステムを含む金属加工システムであって、前記コールドスプレーシステムは、前記加熱された金属基材上に金属粒子をコールドスプレーすることによって前記金属粒子を付加的に堆積させて、前記金属基材に付着したコールドスプレー皮膜を生成するように構成される、前記金属加工システム。
【0095】
例示34.前記コールドスプレーシステムから下流工程にあり、前記コールドスプレー皮膜を有する前記金属基材を圧延するように構成された圧延機をさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0096】
例示35.前記コールドスプレーシステムは、前記金属基材上で前記金属基材の幅にわたって前記金属粒子を付加的に堆積させるように構成される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0097】
例示36.前記コールドスプレー皮膜の厚さが30~200μm(両端を含む)であるように前記コールドスプレーシステムを制御するように構成されたコントローラをさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0098】
例示37.前記コントローラは、前記コールドスプレーシステムのノズルの線形速度、または前記コールドスプレー皮膜として堆積する前記金属粒子の粉体供給速度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記コールドスプレーシステムを制御するように構成される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0099】
例示38.前記コールドスプレーシステムは、約400℃~約500℃の範囲にある温度で前記金属基材を受容するように構成される、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0100】
例示39.前記コールドスプレーシステムから上流工程にあり、前記金属基材に少なくとも残留熱を供給するように構成された少なくとも1つの機器をさらに含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0101】
例示40.前記少なくとも1つの機器は、鋳造装置、温間もしくは熱間圧延機、連続焼なまし固溶化熱処理システム、またはヒータのうちの少なくとも1つを含む、先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の金属加工システム。
【0102】
例示41.先行または後続の例示または例示の組み合わせのいずれかに記載の方法によって形成された金属製品。
【0103】
実施形態の主題は、法定要件を満たすために特異性をもって本明細書に説明されているが、この説明は、必ずしも特許請求の範囲を限定することを意図していない。特許を請求する主題は、他の方法で具現化されてよく、異なる要素またはステップを含んでよく、他の既存のまたは将来の技術と併せて使用されてよい。この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に記載されるときを除き、様々なステップまたは要素の間の特定の順序または配置を暗示するとして解釈するべきではない。「上」、「下」、「上部」、「底部」、「左」、「右」、「前部」、及び「後部」などの方向の参照は、とりわけ構成要素及び方向が参照している1つの図(または複数の図)中に例示され、説明される向きを参照することを意図している。本開示全体を通して、文字を伴う参照数字は、要素の特定の具体例を指し、文字が付随しない参照数字は、要素を一般的にまたは集合的に指す。したがって、一実施例として(図示せず)、デバイス「12A」は、まとめてデバイス「12」と称される場合があり、そのうちの任意の1つは総称的にデバイス「12」と称される場合がある、デバイス類の具体例を指す。図面及び説明において、同様の数字は同様の要素を表すことを意図している。本明細書で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈によって特に明確に指示されない限り、単数形及び複数形の参照を含む。
【0104】
本明細書において、「系」または「7xxx」などの、AA番号及び他の関連する記号によって識別される合金に対する言及がなされる。アルミニウム及びその合金の命名及び識別に最も一般に使用される番号名称体系の理解については、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」(両方ともアルミニウム協会により発行された)を参照のこと。
【0105】
本明細書で使用する場合、プレートは全般的に厚さが約15mm超である。例えば、プレートとは、厚さが約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超または約100mm超であるアルミニウム製品を指してよい。
【0106】
本明細書で使用する場合、シェート(シートプレートとも言う)は全般的に、厚さが約4mm~約15mmである。例えば、シェートは、厚さが約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmであってよい。
【0107】
本明細書で使用する場合、シートは全般的に、厚さが約4mm未満であるアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満、(例えば、約0.2mm)の厚みを有し得る。
【0108】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製品」、「鋳造製品」、「鋳造アルミニウム合金製品」などの用語は、互換可能であり、竪型半連続鋳造(竪型半連続同時鋳造を含む)、半連続鋳造、連続鋳造(例えば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造法によって製造された製品を指す。
【0109】
本明細書に開示されるすべての範囲は、それらに包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値1と最大値10の間の任意の及びすべての部分範囲(1及び10を含む)を含むとみなされるべきである。すなわち、すべての部分範囲は、1以上の最小値、例えば、1~6.1で開始され、且つ10以下の最大値、例えば、5.5~10で終了する。特に明記しない限り、元素の組成量を指す場合の「最大」という表現は、その元素が任意であり、その特定の元素のゼロパーセント組成を含むことを意味する。特に明記されていない限り、全ての組成パーセンテージは重量パーセント(wt.%)である。
【0110】
上述の態様は、実施態様の可能な例に過ぎず、単に、本開示の原理の明確な理解のために記載されている。本開示の主旨及び原理から実質的に逸脱することなく、上述の実施形態(複数可)に、多くの変形及び修正を加えてもよい。そのような全ての修正及び変形は、本開示の範囲内で本明細書に含まれることが意図され、要素またはステップの個々の態様または組み合わせに対する全ての考えられる請求項は、本開示によって立証されることが意図される。さらに、特定の用語が本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるが、それらは一般的及び説明的な意味だけで使用されており、記載した実施形態、また以下の特許請求の範囲を制限する目的ではない。
【国際調査報告】