(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ノットレスアンカーの一時的縫合糸捕捉
(51)【国際特許分類】
A61B 17/92 20060101AFI20250117BHJP
A61B 17/86 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61B17/92
A61B17/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541847
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2023050608
(87)【国際公開番号】W WO2023135197
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ガリゲス・グラント
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL44
4C160LL53
4C160LL59
(57)【要約】
ノットレスアンカーの一時的縫合糸捕捉のための多様な例示的なデバイス、システム、及び方法が提供される。概して、挿入器ツールは、軟部組織修復外科的手技におけるノットレスアンカー挿入のために構成されている。挿入器ツールは、アンカーを患者の骨内に挿入して、骨に対して軟部組織を固定するように構成されている。軟部組織に結合された縫合糸は、アンカーの外面とアンカーが位置付けられている骨の穴を画定する骨表面との間に捕捉されることによって骨に対して固定される。挿入器ツール及びアンカーは、アンカーが骨穴内に固定される前に、アンカー及び挿入器ツールに対して縫合糸を一時的に捕捉及び係止するために互いに協働するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用システムであって、
骨穴内に埋め込まれるように構成されたアンカーであって、その中に形成された一対のスロットを有する、アンカーと、
外側シャフト及び内側シャフトを含む挿入器ツールであって、前記アンカーが前記挿入器ツールに解放可能に結合されるように構成されている、挿入器ツールと、を備え、
前記アンカーが前記挿入器ツールに解放可能に結合されている状態で、前記内側シャフトは、前記内側シャフトが前記一対のスロットを閉塞する第1の位置、及び前記内側シャフトが前記一対のスロットを閉塞しない第2の位置のうちの1つに選択的にあるように構成され、
前記第2の位置にある前記内側シャフトは、前記アンカー及び前記外側シャフトを越えて遠位に延在するように構成され、その後、前記外側シャフトは、前記内側シャフトに対して遠位方向に軸方向に並進し、それによって前記アンカーを前記骨穴内へと前記遠位方向に軸方向に並進させるように構成されている、外科用システム。
【請求項2】
前記アンカーが、縫合糸が、前記アンカーの前記スロットを通って延在し、前記内側シャフトの縫合糸保持チャネル内に設置されている状態で、前記縫合糸に解放可能に結合されるように構成され、
前記縫合糸が、前記内側シャフトが前記第1の位置にある状態で、前記アンカーに対して係止位置にあり、
前記内側シャフトが前記第1の位置から前記第2の位置に変化することが、前記縫合糸を前記アンカーに対して前記係止位置から係止解除位置に移動させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の位置にある前記内側シャフトが前記遠位方向に軸方向に並進することが、前記縫合糸を前記スロットから押し出すように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記縫合糸を更に備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記スロットの各々が、開放遠位端及び閉鎖近位端を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記内側シャフトが前記第2の位置から前記第1の位置に変化することが、前記スロットを通って延在する縫合糸を付勢して前記スロット内で近位に移動させるように構成され、
前記内側シャフトが遠位方向に軸方向に並進することが、前記縫合糸を前記スロット内で遠位に移動させ、前記スロットの前記開放遠位端から出すように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記スロットの各々がL字形状を有するか、又は前記スロットの各々が螺旋形状を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記内側シャフトが一対の遠位アームを有し、
前記アンカーが一対の遠位アームを有し、
前記内側シャフトが前記第1の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは、前記アンカーの前記遠位アームから位置合わせされず、
前記内側シャフトが前記第2の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは、前記アンカーの前記遠位アームと位置合わせされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記内側シャフトが一対の遠位アームを有し、
前記内側シャフトが前記第1の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは前記アンカーの前記スロットと位置合わせされ、
前記内側シャフトが前記第2の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは、前記アンカーの前記スロットから位置合わせされていない、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の位置において、前記内側シャフトが、前記アンカーを越えて遠位に延在しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記外側シャフトの並進の後に、前記外側シャフト及び前記内側シャフトが、前記骨穴内の前記アンカーに対して近位方向に軸方向に同時に並進するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
外科用システムであって、
骨穴に埋め込まれるように構成されたアンカーであって、間に一対のスロットを画定する一対の遠位アームを有する、アンカーと、
前記アンカーの内側ルーメン内に設置されるように構成された内側シャフトであって、一対の遠位アームを有し、前記アンカーが、前記内側シャフトが前記アンカーの前記内側ルーメン内にある状態で前記内側シャフトに対して回転するように構成され、その結果、前記内側シャフトの前記遠位アームが、前記アンカーの前記遠位アームと位置合わせされ、前記アンカーの前記スロットから位置合わせされていない状態から、前記アンカーの前記遠位アームから位置合わせされず、前記アンカーの前記スロットと位置合わせされている状態へと変化する、内側シャフトと、
前記内側シャフト及び前記アンカーに対して遠位に長手方向に並進し、それによって前記アンカーを前記骨穴内に遠位に移動させるように構成された外側シャフトと、を備える、外科用システム。
【請求項13】
前記内側シャフトが、前記外側シャフトが前記内側シャフト及び前記アンカーに対して遠位に長手方向に並進される前に、前記骨穴内に長手方向に移動するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記内側シャフトの前記長手方向移動が、前記アンカーの前記スロット内に設置された縫合糸を前記スロットから押し出し、前記骨穴内に押し込むように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記アンカーが、縫合糸が、前記アンカーの前記スロットを通って延在し、前記内側シャフトの縫合糸保持チャネル内に設置されている状態で、前記縫合糸に解放可能に結合されるように構成され、
前記縫合糸が、前記内側シャフトの前記遠位アームが、前記アンカーの前記遠位アームから位置合わせされず、前記アンカーの前記スロットと位置合わせされている状態で、前記アンカーに対して係止位置にあり、
前記縫合糸が、前記内側シャフトの前記遠位アームが、前記アンカーの前記遠位アームと位置合わせされ、前記アンカーの前記スロットから位置合わせされない状態で、前記アンカーに対して係止解除位置にある、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記縫合糸を更に備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記外側シャフトの遠位並進の前に、前記外側シャフトの遠位端が、前記アンカーの前記内側ルーメン内に位置決めされた前記内側シャフトを有する前記アンカーの近位端に当接する、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ノットレスアンカーの一時的縫合糸捕捉に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な傷害及び症状が、軟部組織損傷の修復、又は骨及び/若しくは周辺組織への軟部組織の再付着を必要とする。例えば、別の方法で健康な組織が骨から剥離されてしまった場合、例えば、関節唇が関節窩から剥離した場合(肩関節不安定性)は、適切な位置における治癒を生じさせるために、組織を骨に再付着させる手術を必要とすることが多い。これらの外科的修復を実施するために、数多くのデバイス及び方法が開発されてきた。より良い結果をもたらす方法のいくつかは、縫合糸アンカーなどの縫合固定部材の使用を含むものであり、この縫合糸固定部材は通常、縫合糸取り付け機構を有するアンカー本体と、縫合糸アンカーを組織若しくは骨の中に、又は組織若しくは骨に隣接して保持するための、組織又は骨係合機構とを有している。特定の傷害に応じて、縫合糸の1つ又は2つ以上のセグメントに連結された、あるいは縫合糸の1つ又は2つ以上のセグメントで相互に連結された1つ又は2つ以上の縫合糸アンカーが、修復を実施するために使用され得る。
【0003】
単一の種類の組織の大部分において断裂が生じる場合にもまた、外科手術が必要となることがある。そのような組織の断裂を修復するために、1つ又は2つ以上の縫合糸アンカーとともに縫合糸を使用することもできる。縫合糸は、修復手技の間に外科医によって結ばれた結び目を用いて、あるいは、外科医が外科手術の間に結び目を結ぶことを必要とせずに、1つ又は2つ以上のアンカーと1つ又は2つ以上の縫合糸とが接続され、かつ張力付与され得る「ノットレス(knotless)」デバイス及び方法を用いて、縫合糸アンカー及び組織に締結することができる。ノットレス式の固定は、内視鏡又は関節鏡による修復など、低侵襲外科手術に特に有用なものである。低侵襲外科手術では、外科医は、小径のカニューレ、内視鏡チューブを通して、又は別の方法で経皮的に挿入された器具を使用して、外科部位において縫合糸を遠隔式で操作するので、結ぶプロセスは困難でかつ時間を要するものとなり得る。更に、結び目自体が周囲の組織を刺激する可能性がある。しかしながら、ノットレスアンカーは軟部組織を骨に再付着させるのに非常に有効であり得るが、アンカーの大きさが小さいことと、患者の解剖学的構造とが、骨穴を位置決めし、アンカーを骨穴内に挿入することを困難にし得る。追加的に、挑戦的な角度及び関節空間の緊密な性質のために、穴の可視化が困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ノットレスアンカーのための改善されたデバイス、システム、及び方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、ノットレスアンカーの一時的縫合糸捕捉のためのデバイス、システム、及び方法が提供される。
【0006】
一態様では、外科用システムが提供され、一実施形態では、外科用システムは、アンカー及び挿入器ツールを含む。アンカーは、骨穴内に埋め込まれるように構成され、アンカーは、その中に形成された一対のスロットを有する。挿入器ツールは、外側シャフトと、内側シャフトとを含む。アンカーは、挿入器ツールに解放可能に結合されるように構成されている。アンカーが挿入器ツールに解放可能に結合されている状態で、内側シャフトは、内側シャフトが一対のスロットを閉塞する第1の位置、及び内側シャフトが一対のスロットを閉塞しない第2の位置のうちの1つに選択的にあるように構成されている。第2の位置にある内側シャフトは、アンカー及び外側シャフトを越えて遠位に延在するように構成され、その後、外側シャフトは、内側シャフトに対して遠位方向に軸方向に並進し、それによってアンカーを骨穴内へと遠位方向に軸方向に並進させるように構成されている。
【0007】
外科用システムは、任意の数の点で異なり得る。例えば、アンカーは、縫合糸が、アンカーのスロットを通って延在し、内側シャフトの縫合糸保持チャネル内に設置されている状態で、縫合糸に解放可能に結合されるように構成することができ、縫合糸は、内側シャフトが第1の位置にある状態でアンカーに対して係止位置にあることができ、内側シャフトが第1の位置から第2の位置に変化する内側シャフトは、縫合糸をアンカーに対して係止位置から係止解除位置に移動させるように構成され得る。第2の位置にある内側シャフトが遠位方向に軸方向に並進することは、縫合糸をスロットから押し出すように構成され得る。外科用システムはまた、縫合糸を含むこともできる。
【0008】
なおも別の例では、スロットの各々は、開放遠位端及び閉鎖近位端を有し得る。内側シャフトが第2の位置から第1の位置に変化することは、スロットを通って延在する縫合糸を付勢してスロット内で近位に移動させるように構成され得、内側シャフトが遠位方向に軸方向に並進することは、縫合糸をスロット内で遠位に移動させてスロットの開放遠位端から出すように構成され得る。スロットの各々は、L字形状を有することができるか、又はスロットの各々は、螺旋形状を有することができる。
【0009】
更に別の例では、内側シャフトは、一対の遠位アームを有することができ、アンカーは、一対の遠位アームを有することができ、内側シャフトが第1の位置にある状態で、内側シャフトの遠位アームは、アンカーの遠位アームから位置合わせされることがなく、内側シャフトが第2の位置にある状態で、内側シャフトの遠位アームは、アンカーの遠位アームと位置合わせされることができる。
【0010】
更に別の例では、内側シャフトは、一対の遠位アームを有することができ、内側シャフトが第1の位置にある状態で、内側シャフトの遠位アームは、アンカーのスロットと位置合わせされることができ、内側シャフトが第2の位置にある状態で、内側シャフトの遠位アームは、アンカーのスロットから位置合わせされていない。
【0011】
別の例では、第1の位置において、内側シャフトは、アンカーを越えて遠位方向に延びることができない。
【0012】
更に別の例では、外側シャフトの並進の後に、外側シャフト及び内側シャフトは、骨穴内のアンカーに対して近位方向に軸方向に同時に並進するように構成され得る。
【0013】
別の例では、外側シャフトの遠位方向への並進の前に、外側シャフトの遠位端は、アンカーの内側ルーメン内に位置決めされた内側シャフトを有するアンカーの近位端に当接することができる。
【0014】
別の実施形態では、外科用システムは、アンカーと、内側シャフトと、外側シャフトと、を含む。アンカーは、骨穴内に埋め込まれるように構成され、またアンカーは、間に一対のスロットを画定する一対の遠位アームを有する。内側シャフトは、アンカーの内側ルーメン内に設置されるように構成され、内側シャフトは、一対の遠位アームを有し、アンカーは、内側シャフトがアンカーの内側ルーメン内にある状態で内側シャフトに対して回転するように構成され、その結果、内側シャフトの遠位アームが、アンカーの遠位アームと位置合わせされ、アンカーのスロットから位置合わせされていない状態から、アンカーの遠位アームから位置合わせされず、アンカーのスロットと位置合わせされている状態へと変化する。外側シャフトは、内側シャフト及びアンカーに対して遠位方向に長手方向に並進し、それによってアンカーを骨穴内に遠位方向に移動させるように構成されている。
【0015】
外科用システムは、任意の数の変形を有することができる。例えば、内側シャフトは、外側シャフトが内側シャフト及びアンカーに対して遠位に長手方向に並進される前に、骨穴内に長手方向に移動するように構成され得る。内側シャフトの長手方向移動は、アンカーのスロット内に設置された縫合糸をスロットから押し出し、骨穴内に押し込むように構成され得る。
【0016】
別の例では、アンカーは、縫合糸が、アンカーのスロットを通って延在し、内側シャフトの縫合糸保持チャネル内に設置されている状態で、縫合糸に解放可能に結合されるように構成することができ、縫合糸は、内側シャフトの遠位アームがアンカーの遠位アームから位置合わせされず、アンカーのスロットと位置合わせされている状態で、アンカーに対して係止位置にあり得、縫合糸は、内側シャフトの遠位アームがアンカーの遠位アームと位置合わせされ、アンカーのスロットから位置合わせされていない状態で、アンカーに対して係止解除位置にあり得る。外科用システムはまた、縫合糸を含むこともできる。
【0017】
更に別の例では、外側シャフトの並進の前に、外側シャフトの遠位端は、アンカーの内側ルーメン内に位置決めされた内側シャフトを有するアンカーの近位端に当接することができる。
【0018】
更に別の例では、スロットの各々はL字形状を有することができるか、又はスロットの各々は螺旋形状を有することができる。
【0019】
別の態様では、外科的方法が提供され、一実施形態では、本方法は、挿入器ツールの外側シャフト及び挿入器ツールに解放可能に結合されたアンカーを挿入器ツールの内側シャフトに対して回転させることを含む。外側シャフト及びアンカーの回転により、アンカーのスロットを通って延在する縫合糸が係止位置から係止解除位置に移動する。外側シャフト及びアンカーの回転により、縫合糸がスロットから押し出され、骨穴に押し込まれる。外科的方法はまた、外側シャフト及びアンカーの回転後に、外側シャフトを内側シャフトに対して遠位に長手方向に並進させ、それによってアンカーを骨穴内に押し込んでアンカーを骨穴内に固定することを含む。
【0020】
外科的方法は、任意の数の点で異なり得る。例えば、外側シャフト及びアンカーの回転は、第1の方向におけるものであり得、外科的方法はまた、外側シャフト及びアンカーの第1の方向における回転の前に、外側シャフト及びアンカーを第1の方向とは反対である第2の方向に回転させることを含むことができ、外側シャフト及びアンカーの第2の方向における回転は、内側シャフトに対するものとすることができ、外側シャフト及びアンカーの第2の方向における回転は、アンカーのスロットを通って延在する縫合糸を係止解除位置から係止位置に移動させることができる。外側シャフト及びアンカーの第1の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーのスロットと位置合わせされている状態から、アンカーのスロットと位置合わせされていない状態へと変化させることができ、外側シャフト及びアンカーの第2の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーのスロットから位置合わせされていない状態から、アンカーのスロットと位置合わせされている状態へと変化させることができる。外側シャフト及びアンカーの第1の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーの遠位アームと位置合わせされていない状態から、アンカーの遠位アームと位置合わせされている状態へと変化させることができ、外側シャフト及びアンカーの第2の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーの遠位アームと位置合わせされている状態から、アンカーの遠位アームから位置合わせされていない状態へと変化させることができる。
【0021】
別の例では、外側シャフト及びアンカーの第1の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーのスロットと位置合わせされている状態から、アンカーのスロットから位置合わせされていない状態へと変化させることができる。外側シャフト及びアンカーの第1の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーの遠位アームと位置合わせされていない状態から、アンカーの遠位アームと位置合わせされている状態へと変化させることができ、外側シャフト及びアンカーの第2の方向における回転は、内側シャフトの遠位アームを、アンカーの遠位アームと位置合わせされている状態から、アンカーの遠位アームから位置合わせされていない状態へと変化させることができる。
【0022】
更に別の例では、内側シャフトは、外側シャフト及びアンカーの回転中及び外側シャフトの長手方向への並進中に、アンカーの内側ルーメン内に位置決めすることができる。
【0023】
更に別の例では、外科的方法はまた、外側シャフトの軸方向の並進の後に、内側シャフトが骨穴から取り外され、アンカー及び縫合糸が骨穴に留まるように、外側シャフト及び内側シャフトをアンカーに対して近位に長手方向に並進させることを含み得る。
【0024】
更に別の例では、スロットの各々はL字形状を有することができるか、又はスロットの各々は螺旋形状を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
【
図1】縫合糸アンカーが解放可能に結合された挿入器ツールの一実施形態の側面図である。
【
図2】
図1の挿入器ツール及びアンカーの別の側面図である。
【
図3】
図1の挿入器ツール及びアンカーの斜視図である。
【
図4】
図1のアンカー及び遠位部分の挿入器ツールの斜視図である。
【
図5】挿入器ツールの係止機構が係止位置にある、
図1の挿入器ツールの一部分の斜視図である。
【
図6】係止機構が係止解除位置にある、
図5の挿入器ツールの一部分の斜視図である。
【
図7】挿入器ツールの打撃キャップの打撃後の
図6の挿入器ツールの一部分の斜視図である。
【
図8】アンカーと、縫合糸が解放可能に結合され、挿入器ツールの内側シャフトが第1の位置にある、
図1の挿入器ツールの遠位部分との側面図である。
【
図9】挿入器ツールの内側シャフトが第2の位置にある、
図8の挿入器ツールのアンカー、縫合糸、及び遠位部分の側面図である。
【
図10】
図1の挿入器ツールの近位部分の側面図である。
【
図11】中に形成された穴を有する骨の側面概略図である。
【
図12】
図11の骨穴の外側に隣接して位置決めされた
図1の挿入器ツール及びアンカーの側面図である。
【
図13】挿入器ツールの内側シャフト及び縫合糸が骨穴内に前進された、
図12の挿入器ツール及びアンカーの側面図である。
【
図14】骨穴内に固定された
図13のアンカー及び縫合糸の側面図である。
【
図15】
図1の挿入器ツールの遠位部分及び挿入器ツールに解放可能に結合された縫合糸アンカーの別の実施形態の斜視図である。
【
図16】縫合糸アンカーの更に別の実施形態の斜視図である。
【
図18】縫合糸及び挿入器ツールの内側シャフトがアンカーに対して遠位に前進させられている、
図17のアンカー及び縫合糸の側面図である。
【
図19】
図1の挿入器ツールの遠位部分及び挿入器ツールに解放可能に結合された縫合糸アンカーの更に別の実施形態の斜視図である。
【
図20】アンカーと、
図8の縫合糸が解放可能に結合され、挿入器ツールの内側シャフトが第1の位置にある、
図19の挿入器ツールの遠位部分との側面図である。
【
図21】
図11の骨穴の外側に隣接して位置決めされた
図20の挿入器ツール、縫合糸、及びアンカーの側面図である。
【
図22】縫合糸及び挿入器ツールの内側シャフトが骨穴内へと前進させられている、
図21のアンカー及び縫合糸の側面図である。
【
図23】骨穴内に固定された
図22のアンカー及び縫合糸の側面図である。
【
図24】挿入器ツールの内側シャフトの別の実施形態、及び挿入器ツールに解放可能に結合された縫合糸アンカーの別の実施形態の部分透過側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本明細書で開示するデバイス及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に図示されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に図示されるデバイス、システム、及び方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。例示的な一実施形態に関連して図示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0027】
更に、本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。追加的に、開示されるシステム、デバイス、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される限りにおいて、そのような寸法は、そのようなシステム、デバイス、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、そのような直線寸法及び円寸法に相当する寸法を、任意の幾何学的形状について容易に判定することができる点が認識されるであろう。システム及びデバイス、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及びデバイスが内部で使用される対象の解剖学的構造、システム及びデバイスが使用される構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及びデバイスが使用される方法及び手技に依存し得る。
【0028】
ノットレスアンカーの一時的縫合糸捕捉のための多様な例示的なデバイス、システム、及び方法が提供される。概して、挿入器ツールは、軟部組織修復外科的手技におけるノットレスアンカー挿入のために構成されている。挿入器ツールは、アンカーを患者の骨内に挿入して、骨に対して軟部組織を固定するように構成されている。軟部組織に結合された縫合糸は、アンカーの外面とアンカーが位置付けられている骨の穴を画定する骨表面との間に捕捉されることによって骨に対して固定される。したがって、アンカーは、ノットを必要とせずに縫合糸を所定の位置に固定することを可能にし、これは、小さな縫合糸直径、関節空間における限定された作業領域、湿潤外科環境、並びに/又は挑戦的な角度及び関節空間の緊密な性質のために外科部位での限定された視覚化のために、手術中に時間がかかり、かつ/又は実行が困難であり得る。
【0029】
挿入器ツールは、縫合糸及びアンカーの各々が解放可能に結合されるように構成されており、縫合糸及びアンカーが解放可能に結合されて、縫合糸及びアンカーを骨穴に挿入する。挿入器ツールは、アンカーが骨穴に固定される前に、縫合糸を骨穴内に位置付けるように構成されている。例示的な実施形態では、挿入器ツールは、縫合糸を解放可能に保持するように構成された縫合糸保持チャネルを含み、アンカーは、縫合糸を解放可能に着座させるように構成された一対のスロットを含む。縫合糸保持チャネル及び一対のスロットは、アンカーが骨穴内に固定される前に、アンカー及び挿入器ツールに対して縫合糸を一時的に捕捉及び係止するために互いに協働するように構成されている。したがって、アンカー及び縫合糸は、縫合糸がアンカー又は挿入器ツールから外れることなく、アンカーが固定される骨に対する定位置に一体として前進させることができる。挿入器ツールは、アンカーが骨穴内に固定される前に、アンカー及び縫合糸が骨に対して所定の位置に配された後、アンカーに対して移動して、縫合糸をアンカー及び挿入器ツールに対して係止解除するように構成されている。縫合糸が係止解除されている状態で、挿入器ツールを使用して縫合糸を骨穴内に押し込み、その後、アンカーを骨穴内に前進させることができる。したがって、アンカーが縫合糸を骨穴内に固定する前に、縫合糸に張力をかけて骨穴内に位置決めすることができる。更に、縫合糸を解放可能に着座させるための一対のスロットをアンカーが含むことは、アンカーの材料を低減するのに役立ち、これは、特に骨が制限される領域において、アンカーの負担、骨の弱化、及び骨の解剖学的構造の破壊を限定することになり得る。
【0030】
例示的な実施形態では、縫合糸は、アンカーが骨穴へと前進され、骨穴に固定される前及び後にU字形状を有する。U字形状では、縫合糸の脚部の各々は、アンカーの対向する側面に沿って長手方向に延在し、脚部を接続する縫合糸の中間部分は、アンカーの遠位端の周りをループするように、アンカーの遠位端に沿って延在する。アンカーに対する縫合糸のU字形構成は、アンカーが骨に対して所定の位置に縫合糸を固定するように押圧する縫合糸の長さを最大化し得、これは、治癒を容易にするために、縫合糸に結合された軟部組織が骨に対して定位置に留まることを確実にするのに役立ち得る。
【0031】
挿入器ツールは、例えば、マレット、ハンマー、又は他のツールを用いて挿入具ツールに打ちつけることによって、アンカーを骨穴内に遠位方向に長手方向で並進させることによって、アンカーを骨穴内に前進させるように構成されており、それによって、アンカーの外面と骨穴を画定する骨表面との間に縫合糸を捕捉する。アンカーが骨内に挿入された後、挿入器ツールは、縫合糸がアンカー及び骨内に残っている状態で患者の身体から取り外されるように、近位方向に長手方向で並進されるように構成されている。挿入器ツールをその長手方向軸に沿って長手方向に並進させることによって、挿入器ツールを縫合糸及びアンカーから分離することは、ツールをその長手方向軸の周りで回転させることを含む、埋め込まれたアンカーからツールを分離する他の方法よりも時間がかからない可能性があり、かつ/又はユーザが加える必要がある力が少なくて済み得る。取り外しのために挿入器ツールを長手方向に並進させることとは異なり、取り外しのためにツールを回転させることは、アンカーが回転したり、かつ/又は意図しない軸外の負荷がかかる可能性があり、これにより、アンカーを骨にしっかりと位置決めすることができなくなり、かつ/又は縫合糸及び/若しくはアンカーへの損傷を引き起こす可能性がある。
【0032】
本明細書に記載のシステム、デバイス、及び方法は、例えば、肩、膝、又は股関節などの関節における組織修復外科的手技において、軟部組織修復のための様々な外科手術において適用可能である。
【0033】
図1~
図3は、挿入器ツール100(本明細書では「挿入器」とも呼ばれる)の一実施形態を示す。挿入器ツール100は、軟組織修復外科的手技におけるノットレスアンカーの挿入に使用するように構成されている。一般に、挿入器ツール100は、アンカー102を患者の骨に挿入して、骨に対して軟部組織を固定するように構成されている。
図4に示すように、内側ルーメン102iは、アンカー102がカニューレ状になるようにアンカー102を通って延在している。複数の骨係合表面特徴部102fが、アンカー102の外面上に形成される。骨係合表面特徴部102fは、アンカー102を骨内に保持するために骨に係合するように、例えば、アンカー102が位置付けられている骨の穴を画定する骨の表面に係合するように、構成されている。骨係合表面特徴部102fは、アンカーの長手方向長さに沿った異なる軸方向位置でアンカー102の周りに円周方向に各々が延在する、複数のリブを含む。しかしながら、骨係合表面特徴部102fは、複数の棘又はアンカーの外面上に形成された他の形態の突出部などの別の構成を有し得る。骨係合表面特徴部102fはまた、骨に対して縫合糸を固定するのを助けるために、縫合糸を骨に対して係合するように構成されている。
【0034】
図4に示すように、アンカー102は、その中に形成された一対の対向するスロット104を含む。以下で更に説明するように、スロット104は、その中に縫合糸を解放可能に着座させるように構成されている。また、以下に更に説明するように、アンカー102及び内側シャフト110は、互いに協働して、縫合糸がスロット104内に設置及び捕捉されている状態で仮囲い部を形成するように構成されている。
【0035】
スロット104は互いに独立しており、互いに交差していない。各スロット104は、アンカー102の遠位端から近位に延在し、アンカー102の内側ルーメン102iと連通し、またアンカー102の遠位端において内側ルーメン102iの遠位開口部と連通する。各スロット104は、アンカー102の長手方向軸102aに対して横方向に延在する。アンカー102が挿入器ツール100に解放可能に結合されている状態で、アンカー102の長手方向軸102aは、挿入器ツール100の長手方向軸100aと同軸であり、長手方向軸100aは、挿入器ツール100の外側シャフト108及び内側シャフト110のそれぞれの長手方向軸でもある。したがって、スロット104は、挿入器ツール100、外側シャフト108、及び内側シャフト110の長手方向軸100aに対して横方向に延在する。
【0036】
この図示された実施形態における各スロット104は螺旋形状を有し、スロット104はアンカー102の周りに部分的に螺旋状に延在する。スロット104は、同じ方向に螺旋を描く。この図示された実施形態では、スロット104は、遠位から近位の方向に反時計回りに螺旋状になっているが、代わりに、遠位から近位の方向に時計回りに螺旋状になっていてもよい。
【0037】
アンカー102内のスロット104はそれぞれ、アンカーの骨係合特徴部102fに対して完全に遠位に位置する。したがって、スロット104は、骨係合特徴部102fの骨との係合に干渉しない。したがって、アンカー102は、骨係合特徴部102fは含むがスロット104は含まない近位部分を有し、またスロット104は含むが骨係合特徴部102fは含まない遠位部分を有する。
【0038】
アンカー102は、スロット104の間に位置する一対の対向する遠位アーム102mを含む。したがって、アンカーの遠位アーム102mは、スロット104は含むが骨係合特徴部102fは含まないアンカー102の遠位部分に位置する。
【0039】
アンカー102は、吸収性又は非吸収性のものとすることができる。アンカー102は、様々な材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(Polyether ether ketone、PEEK)、ポリ乳酸又はポリラクチド(Polylactic acid又はpolylactide、PLA)、BIOCRYL(登録商標)、BIOCRYL(登録商標)、RAPIDE(登録商標)、チタン、セラミック、炭素繊維、ステンレス鋼などのうちのいずれかから作製され得る。アンカー102は、様々な技術によって、例えば、機械加工、成形、金属射出成形、オーバーモールド、又は成形後機械加工などの成形後プロセスによって、形成され得る。
【0040】
挿入器100はハンドル106を含む。ハンドル106は、挿入器100の使用中に手で保持されるように構成されている。ロボット外科的実装では、ハンドル106は、ロボット外科用システムの機械的部材によって保持され得る。ハンドル106は、この図示されている実施形態では、概して円筒形で、遠位に先細の形状を有するが、様々な形状のうちのいずれかを有し得る。
【0041】
挿入器100の外側シャフト108は、ハンドル106から遠位に延在し、挿入器100の内側シャフト110(本明細書では「挿入器シャフト」とも呼ばれる)も、ハンドル106から遠位に延在する。ハンドル106は、内部を通って延在する内側ルーメンを有する。外側シャフト108及び内側シャフト110は、ハンドル106の内側ルーメン内に位置決めされ、ハンドル106の内側ルーメンから出て遠位に延在する。外側シャフト108及び内側シャフト110の一方若しくは両方の近位端が、ハンドル106の内側ルーメン内に位置していてもよいか、又は外側シャフト108及び内側シャフト110の一方若しくは両方が、ハンドル106を越えて近位に延在してもよく、その結果、外側シャフト108及び内側シャフト110のそれぞれの近位端がハンドル106の近位に位置するようにする。例えば、この図示の実施形態のように、内側シャフト110の近位端は、ハンドル106に取り付けることができ、本明細書では「プッシュチューブ」とも呼ばれる外側シャフト108の近位端は、ハンドル106の内側ルーメン内に位置することができる。別の例では、内側シャフト110の近位端は、ハンドル106に取り付けることができ、外側シャフト108の近位端は、ハンドル106の近位に位置することができる。
【0042】
この図示の実施形態におけるハンドル106は、対向する側面、例えば、その左側及び右側にファセット106fを含む。ファセット106fは、ユーザの把持及び微細なモータの運動を助けるように構成されている。
【0043】
この図示の実施形態におけるハンドル106は、縫合糸を所望の張力で所望の位置に保つために、縫合糸を解放可能に保持するように構成された縫合糸保持部材を含む。縫合糸は、従来、止血鉗子を使用して保持される。縫合糸保持部材を含む挿入器ツール100は、縫合糸のために止血鉗子を使用する必要性を排除することができる。縫合糸保持部材は、ハンドル106の遠位端に位置するが、上述のように、他の場所に位置してもよい。
【0044】
縫合糸保持部材の様々な実施形態が、例えば、参照によってその全容が本明細書に組み込まれる、2021年11月4日発行の米国特許公開第2021/0338223号、発明の名称「Knotless Anchor Insertion」に更に記載されている。この図示された実施形態における縫合糸保持部材は、ハンドル106の対向する側面(例えば、左右の側面)上に一対の溝107a、107bを含む。ハンドル106の対向する側面に縫合糸保持部材を提供することは、左利き及び右利きのユーザによる挿入器ツール100の使用に適応するのに役立ち得、かつ/又は挿入器ツール100が保持されている向き、及びハンドル106への縫合糸のアプローチの角度に関係なく、縫合糸保持部材のうちの1つと縫合糸が係合することを容易にし得る。しかしながら、挿入器ツール100は、例えば、ハンドルの左側又は右側のいずれかに1つの縫合糸保持部材のみを含むことができる。
【0045】
縫合糸保持溝のうちの第1の縫合糸保持溝107aは、ハンドル106と、ハンドル106に固定的に取り付けられた第1のエラストマークリート109aとの間に画定される。縫合糸保持溝のうちの第2の縫合糸保持溝107bは、ハンドル106と、ハンドル106に固定的に取り付けられた第2のエラストマークリート109bとの間に画定される。第1のエラストマークリート109a及び第2のエラストマークリート109bは各々、ゴム又は他のポリマーなどのエラストマー材料から作製される。ハンドル106は、ポリカーボネートなどのプラスチック若しくは他のプラスチック、金属(例えば、ステンレス鋼、チタンなど)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、又は他の生体適合性材料などの剛性の非エラストマー材料から作製される。したがって、溝107a、107bは各々、エラストマー材料と剛性材料との間の接合部に位置する。第1のエラストマークリート109a及び第2のエラストマークリート109bのエラストマー材料は、関連する溝107a、107bの幅を動的に増加させて、その中に設置されている縫合糸のサイズ及び形状に調整して、縫合糸を溝107a、107bにしっかりと保持し、エラストマー材料と剛性材料との間で把持することを可能にする。したがって、縫合糸保持部材は、自己調整される。異なる縫合糸は、異なるサイズ及び形状を有し、第1のエラストマークリート109a及び第2のエラストマークリート109bは各々、その中に設置されている縫合糸の特定のサイズ及び形状に動的に適応するように構成されている。縫合糸が溝107a、107bにしっかりと保持されていることは、縫合糸が縫合糸保持部材によって保持されている間、縫合糸の張力が、例えば、減少することなく維持されるのに役立ち得る。縫合糸が溝107a、107bから解放されると、エラストマークリート109a、109bはもはや縫合糸を把持しなくなり、したがってエラストマー材料がその元の構成に弾性的に戻るのにつれて、その元のより小さな幅に戻ることが可能になる。
【0046】
縫合糸保持部材は、ハンドル106及びエラストマークリート109a、109bによって画定される挿入器ツール100のハンマーヘッド形状部分に位置する。ハンドル106の近位表面によって画定されたハンマーヘッド形状部分の近位表面と、エラストマークリート109a、109bの各々の近位とは、半径方向外向きに延在し、遠位に先細になる。この先細りは、縫合糸を、関連する溝107a、107bを収容するために、ハンドル106の近位表面に沿ってエラストマークリート109a、109bのうちの1つに向かって付勢するように構成されている。エラストマークリート109a、109bの各々は、関連する溝107a、107bに面する傾斜縁を有し、これはまた、縫合糸を溝107a、107b内に付勢するのに役立ち得る。
【0047】
本体100はまた、ハンドル106から近位に延在する打撃キャップ112を含む。打撃キャップ112の遠位端は、挿入の初期構成においてプッシュチューブ108の近位端に当接しており、これは、打撃キャップ112に加えられた遠位力のプッシュチューブ108への伝達を最大化し、それによってプッシュチューブ108を効率的に遠位に前進させて、アンカー102を骨穴内に遠位に前進させるのを助けることができる。しかしながら、打撃キャップの遠位端は、プッシュチューブの近位端の近位に、ある距離だけ離間されてもよいか、又は打撃キャップ112は、プッシュチューブ108と一体的に形成されてもよい。打撃キャップ112は、その近位表面112sがマレット、ハンマー、又は他のツールで打撃されるように構成されている。この図示された実施形態における近位表面112sは、凸状に湾曲しており、これは、打撃キャップ112を打撃するユーザにより多くのフィードバック(平坦な表面と比較して)を提供し得る。打撃キャップ112は、しかしながら、平坦な表面を有することができ、これは、打撃キャップ112の均一な打撃、ひいては、打撃キャップ112からプッシュチューブ108への遠位力の均一な伝達を容易にし得る。
【0048】
打撃キャップ112は、この図示された実施形態では六葉状の形状を有するが、円形、卵形、三葉状、四葉状、五葉状、正方形、長方形などの別の形状を有してもよい。
【0049】
打撃キャップ112の近位表面112sは、マレット、ハンマー、又は他のツールによる打撃のために露出されている。他の実施形態では、挿入器ツールは、打撃キャップと、打撃キャップの少なくとも打撃面を覆うか、又は隠すように構成された保護部材と、を含み得る。保護部材は、打撃キャップの早期打撃、及び/又は打撃キャップの意図しない遠位移動、したがって、挿入器ツールに結合されたアンカーの意図しない遠位前進を防止するのに役立ち得る。一部の実施形態では、保護部材は、打撃キャップを完全に覆うか、又は隠すことができる。保護部材の様々な実施形態が、例えば、前述した2021年11月4日発行の米国特許公開第2021/0338223号、発明の名称「Knotless Anchor Insertion」に更に記載されている。
【0050】
以下で更に説明するように、打撃キャップ112は、回転されて外側シャフト108及びアンカー102を内側シャフト110に対して移動させるように構成されたノブとして構成されている。
【0051】
他の実施形態では、外側シャフト108及びアンカー102を移動させるように構成されている回転可能なノブの代わりに、外側シャフト108及びアンカー102の移動を引き起こすために押し下げられるように構成されている、ハンドル106にある押し下げ可能なボタンなどの別の機構を使用することができる。別の例では、ハンドル106にあるレバーは、外側シャフト108及びアンカー102の移動を引き起こすために移動されるように構成され得る。
【0052】
内側ルーメンは、外側シャフト108がカニューレ状になるように外側シャフト108を通って延在する。
図1~
図4に示される挿入器100の初期構成では、内側シャフト110は、アンカー102の内側ルーメン102i内及び外側シャフト108の内側ルーメン内に設置されている。以下で更に説明するように、内側シャフト110は、縫合糸の操作を容易にするために外側シャフト108及びアンカー102を越えて遠位方向に延びるように構成されており、アンカー102及び外側シャフト108はそれぞれ、アンカー102の骨穴内への送達を容易にするために内側シャフト110に対して移動可能であるように構成されている。
【0053】
外側シャフト108の遠位端108dは、アンカー102の近位端102pの近位に位置する。例示的な実施形態では、
図4に示されるように、外側シャフトの遠位端108dは、挿入器の初期構成ではアンカーの近位端102pに当接し、これは、外側シャフト108及びアンカー102を越えて遠位に内側シャフト110を延在させることを容易にすることができ、また、プッシュチューブ108に加えられた遠位力のアンカー102への伝達を最大化し、それによってアンカー102を骨穴内に効率的に遠位に前進させるのを助けることができる。アンカー102の近位端102pは、外側シャフト108の遠位端108dにおける嵌合特徴部(
図4では不明瞭)に解放可能に嵌合するように構成された嵌合要素(
図4では不明瞭)を含む。嵌合要素と嵌合特徴部との嵌合は、アンカー102が骨に埋め込まれた後まで、アンカー102と外側シャフト108とを一緒に解放可能に保持するように構成され、これは、以下で更に説明するように、内側シャフトが外側シャフト108及びアンカー102を越えて遠位方向に延在することを容易にする。嵌合要素及び嵌合特徴部は、様々な構成を有することができる。例えば、嵌合要素及び嵌合特徴部のうちの一方は、1つ又は2つ以上の凹部を含むことができ、嵌合要素及び嵌合特徴部のうちの他方は、1つ又は2つ以上の凹部のうちの1つに解放可能に着座するようにそれぞれ構成された1つ又は2つ以上の突出部を含むことができる。突出部の各々の形状及びサイズは、突出部が解放可能に設置されている凹部の形状及びサイズに対応し、例えば、突出部及び凹部は各々、突出部が凹部に解放可能にスナップ留めされるように半球形状を有する。
【0054】
外側シャフト108は、遠位方向に先細になり、外側シャフト108の遠位端108dを画定する遠位ノブ108kを含む。ノブ108kの遠位の先細りは、外側シャフト108の遠位部分が外側シャフト108の遠位端108dよりも大きい直径を有することを可能にし、その結果、外側シャフト108の遠位端108dにおけるより小さい直径は、その近位端102pにおけるアンカー102の直径に対応し、これは、外側シャフト108がアンカー102に解放可能に嵌合し、遠位方向の力をアンカー102に効率的に加えるのに役立ち得る。
【0055】
挿入器ツール100は、係止機構118が係止位置にあるときに外側シャフト108が内側シャフト110に対して遠位方向に移動できないように、外側シャフト108を係止するように構成された係止機構118を含む。
図1~
図3及び
図5は、係止位置にある係止機構118を示している。
図6及び
図7は、外側シャフト108が内側シャフト110に対して遠位に移動するように構成されている係止解除位置にある、係止機構118を示している。係止機構118は、外側シャフト108、内側シャフト110、打撃キャップ112、及びハンドル106に対して摺動することによって、係止位置から係止解除位置に移動するように構成されている。係止機構118の摺動移動は、外側シャフト108及び内側シャフト110の長手方向軸に実質的に垂直な横方向の移動である。係止機構118の初期位置は、内側シャフト110に対する外側シャフト108の早期の遠位並進を防止するのを助けるための係止位置であり、したがって、内側シャフト110に対するアンカー102の早期の遠位前進を防止するのに役立つ。
【0056】
係止機構118は、その側面上に凹部118dを含む。凹部118dは、指を係止機構118のどこに置くべきかを伝えるように構成されている。凹部面は、係止機構118を係止位置から係止解除位置に押すために指を配置することができる押し面として構成されている。凹部118dの曲率は、係止解除位置にある係止機構118に隣接するハンドル106の曲率と一致する。凹部118d及びハンドル106の一致する湾曲は、係止機構118が係止解除位置に完全に移動したことをユーザに示すように構成されている。
【0057】
係止機構118は、その中に形成された鍵穴120を含み、その中で外側シャフト108及び打撃キャップ112がそれぞれ移動するように構成されている。鍵穴120は、縮小直径部分120a及び拡大直径部分120bを含む。係止機構118が係止位置にある状態で、外側シャフト108は、縮小直径部分120aを通って延在し、打撃キャップ112は、鍵穴120の近位に位置する。縮小直径部分120aの直径は、少なくとも端部キャップ112の遠位端における打撃キャップ112の直径よりも小さい。したがって、打撃キャップ112は、鍵穴120内に遠位に移動することができず、それによって、打撃キャップ112の近位表面112sが打撃されることによって外側シャフト108が遠位に移動することを防止する。係止機構118が係止解除位置にある状態で、外側シャフト108は、拡大直径部分120bを通って延在し、打撃キャップ112は、鍵穴120の近位に位置する。拡大直径部分120bの直径は、少なくとも打撃キャップ112の遠位端における打撃キャップ112の直径よりも大きい。したがって、打撃キャップ112は、鍵穴120内に遠位に移動することができ、それによって、打撃キャップ112の近位表面112sが打撃されることによって外側シャフト108が遠位に移動することを可能にする。拡大直径部分120bの直径は、近位表面112sを含む打撃キャップ112の頭部の直径よりも小さいため、それによって打撃キャップ112の遠位表面が鍵穴120の周りで係止機構118に当接するため、打撃キャップ112が鍵穴120を完全に通過することを防止する。
図7は、打撃キャップ112が打撃された後に打撃キャップ112の遠位表面が鍵穴120の周りの係止機構118に当接している、係止解除位置にある係止機構118を示している。
【0058】
この図示された実施形態における係止機構118は、挿入器ツール100から解放可能ではない。他の実施形態では、係止機構は、挿入器ツール100から解放可能である。係止機構の様々な実施形態が、例えば、前述した2021年11月4日発行の米国特許公開第2021/0338223号、発明の名称「Knotless Anchor Insertion」に更に記載されている。
【0059】
図4に示されるように、内側シャフトの遠位端はフォークを画定する。内側シャフト110は、その間に縫合糸保持チャネル124を画定する一対の対向する遠位アーム122を含む。縫合糸保持チャネル124は、開放遠位端及び閉鎖近位端を有する。縫合糸保持チャネル124は、以下で更に説明するように、縫合糸がアンカー102のスロット104を通って延在する状態で、縫合糸をその中に解放可能に保持するように構成されている。
図4にも示されるように、アンカー102が挿入器100に結合され、挿入器100が初期構成にある状態で、縫合糸保持チャネル124は、アンカー102内、例えばアンカー102の内側ルーメン102i内に位置し、外側シャフト108の遠位に位置するが、アンカー102の遠位には位置しない。
【0060】
挿入器ツール若しくはアンカーに結合される開口、アイレット、又は他の開口部への挿入のために縫合糸(複数可)を折り畳む必要がないため、縫合糸保持チャネル124は、他のタイプの挿入器ツールを用いる場合よりも、より多くの縫合糸及び/又はより大きな直径の縫合糸(複数可)を挿入器100に結合することを可能にし得る。
【0061】
縫合糸保持チャネル124は、この図示の実施形態では実質的に一定の直径を有するが、例えば、縫合糸保持チャネル124の近位部分が縫合糸保持チャネルの遠位部分よりも大きな直径を有する、縫合糸保持チャネル124の遠位部分が縫合糸保持チャネルの近位部分よりも大きな直径を有する、又は他の異なる直径など、異なる部分が異なる直径を有してもよい。当業者であれば、直径値などの値が正確に同じでなくてもよく、それにもかかわらず、測定機器の製造公差及び感度などの1つ又は2つ以上の理由のうちのいずれかのために実質的に同じと見なされることを理解するであろう。
【0062】
図8及び
図9は、縫合糸126を内側シャフトの縫合糸保持チャネル124及びアンカーのスロット104内に設置することによって縫合糸126を挿入器ツール100及びアンカー102に結合する一実施形態を示す。例示的な実施形態では、縫合糸126は、ユーザによって挿入器ツール100及びアンカー102に結合され、これにより、ユーザは、実行される外科的手技に適した特定のサイズ及びタイプの縫合糸を選択し、1つ又は2つ以上の縫合糸を使用するかどうかを選択することができる。
図8及び
図9は、単一の縫合糸126を挿入器ツール100及びアンカー102に結合するところを示す。
【0063】
図4及び
図8に示すように、挿入器100が初期構成にある状態で、内側シャフト110の遠位アーム122の各々は、アンカー102の遠位アーム102mのうちの1つと位置合わせされ、また内側シャフトの遠位アーム122は、アンカーのスロット104と位置合わせされていない。内側シャフト110及びアンカー102が互いに対してこの相対位置にある状態では、スロット104の各々の遠位端は開放されており、閉塞されていない。したがって、縫合糸126は、
図8に示されるように、スロット104の中へ摺動されるか、又は別様に移動され、縫合糸保持チャネル124内に位置決めされることができる。縫合糸126の脚部126gは、アンカー102及び外側シャフト108の外側に延在し、脚部126gの間の縫合糸126の中間部分は、スロット104の遠位部分及び縫合糸保持チャネル124の遠位部分にある。縫合糸126は、アンカーの遠位端の周りをループするようにアンカーの遠位端に沿って延在する。縫合糸126は、スロット104内に直接摺動されてもよいか、又は縫合糸126は、最初に、内側シャフト110がアンカー102を越えて遠位に延在する状態で縫合糸保持チャネル124内に設置され得、次いで、外側シャフト108及びアンカー102は、内側シャフト110に対して遠位に移動され、縫合糸126をスロット104内に移動させる。
【0064】
縫合糸126の中間部分がスロット104及び縫合糸保持チャネル124内にある状態で、外側シャフト108及びアンカー102は、内側シャフト110に対して長手方向軸100aを中心に回転される。ノブ112は、
図10の矢印128によって示されるように、第1の方向に回転されて、内側シャフト110に対して外側シャフト108及びアンカー102を回転させるように構成されている。アンカー102が外側シャフト108に解放可能に嵌合されることにより、アンカー102は外側シャフト108と一体として回転することが可能になる。ノブ112、外側シャフト108、及びアンカー102は、この図示された実施形態では反時計回りに回転されるが、それに代わって時計回りに回転されてもよい。外側シャフト108及びアンカー102は、例えば、ノブ112を約90°回転させることによって、約90°回転させられるが、それによって、内側シャフトのアーム122は、アンカーのスロット104に対して最大妨害位置に配される。当業者であれば、値が正確に等しくなくてもよく、それにもかかわらず、測定機器の製造公差又は感度などの1つ又は2つ以上の理由のうちのいずれかのためにおおよそ等しいと見なされることを理解するであろう。
【0065】
挿入器ツール100は、ノブ112の回転位置を示し、したがって、内側シャフト110に対するアンカー102及び外側シャフト108の回転位置を示すように構成されたインジケータを含むことができる。インジケータは、アンカー102が患者の体内に位置するときに患者の体外に位置するように構成され、それによってアンカー102及び/又は外側シャフト108が患者の体内で現在見えていない場合であっても、アンカー102及び外側シャフト108の回転位置をユーザが容易に決定することを可能にする。インジケータは、様々な構成を有することができる。例えば、インジケータは、ノブ112上の第1のマーキングと、ハンドル106及び/又は係止機構118上の第2のマーキングと、を含むことができる。第1及び第2のマーキングは、ドット、線、数字、文字、矢印、又は他のマークなど、様々な構成のうちのいずれかを有することができる。第1及び第2のマーキングは、初期構成において挿入器ツール100と位置合わせされていない。ノブ112が回転するにつれて、第1及び第2のマーキングは、位置合わせに向かって移動する。第1及び第2のマーキングの位置合わせは、ノブ112、したがって、アンカー102及び外側シャフト108が90°回転されたことを示す。別の例では、インジケータは、ハンドル106及び/又は係止機構118の対応する停止表面に当接するように構成されたノブ112の停止表面を含むことができる。停止表面が互いに当接すると、ノブ112は、第1の方向に更に回転することができず、それによって内側シャフト110がアンカー102に対して適切な回転位置にあり、縫合糸126が定位置に係止されていることを示す。
【0066】
内側シャフト110に対するアンカー102の回転は、
図9に示すように、内側シャフトの遠位アーム122をアンカーの遠位アーム102mから位置合わせせず、アンカーのスロット104と位置合わせする。アンカー102の回転によって、内側シャフトの遠位アーム122は、スロット104及び縫合糸保持チャネル124内で近位に縫合糸126を押すことになり、その結果、
図8(回転前)及び
図9(回転後)に示されるように、縫合糸126の中間部分はアンカーの回転前よりも近位に位置する。内側シャフト110の遠位アーム122は、スロット104を効果的に閉塞することによって、スロット104内に縫合糸126を係止する。それによって内側シャフト110及びアンカー102は、縫合糸保持チャネル124内に設置され、かつスロット104を通って延在する、縫合糸のための仮囲い部を形成することができる。係止された縫合糸126は、アンカー102、内側シャフト110、及び外側シャフト108に対して固定位置にある。
【0067】
代替的には、アンカー102及び外側シャフト108を内側シャフト110に対して回転させる代わりに、内側シャフト110をアンカー102及び外側シャフト108に対して回転させることもできる。
【0068】
図11~
図14は、挿入器ツールを使用して縫合糸アンカーを骨に挿入する方法の一実施形態を示す。本方法は、
図1~
図10の挿入器ツール100及びアンカー102に関して説明されるが、他の挿入器ツール及びアンカーを用いて同様に実施することができる。
【0069】
縫合糸126がインサータ100及びアンカー102に結合されている状態で、挿入器100は、縫合糸126及びアンカー102を骨132の穴130に挿入するために使用される。挿入器100を使用して縫合糸126及びアンカー102を骨穴130に挿入する例示的な実施形態では、当業者には理解されるように、ドリル又は他の骨除去ツールを患者の体内に挿入して、
図11に示すように骨132に骨穴130が形成される。当業者によって更に理解されるように、患者の皮膚に形成された開口部、例えば、切開部内に位置付けられたカニューレを介して、ドリル又は他の骨除去ツールを患者の身体内に前進させ、次いで、患者の身体から取り外すことができる。次いで、カニューレは、挿入器の骨穴130に向かう遠位前進のためのガイドとして機能することができる。
【0070】
骨穴130が形成される前又は形成された後に、縫合糸126は、上記で議論され、
図9に示されるように、アンカー102に結合され、係止される。縫合糸126がアンカー102、内側シャフト110、及び外側シャフト108に対して所定の位置に固定されるようにアンカー102に結合及び係止されている状態で、挿入器100は、患者の体内に遠位に前進され、骨穴130に対して位置決めされる。したがって、縫合糸126及びアンカー102は、縫合糸126がアンカー102から落下するリスクなしに、互いに対して予想可能な固定位置にありながら、体外から骨穴130に対して所定の位置にジップライン化(ziplined)され得る。したがって、縫合糸126は、手術中に再装填される必要も、患者の体外で再装填される必要もなく、挿入器100は、まず縫合糸の再装填を可能にするために患者の身体から取り外される。
【0071】
アンカー102及びインサータ100が骨穴130に対して位置決めされている状態で、縫合糸126は、アンカー102及び外側シャフト108が、縫合糸126を所定の位置に係止するために上述したのとは反対に内側シャフト110に対して回転させられることによって係止解除される。したがって、内側シャフト110は、ノブ112を第2の反対方向、例えば時計回りに回転させて、アンカー102及び外側シャフト108を内側シャフト110に対して回転させることによって、
図9の位置から
図8の位置に変更される。アンカー102が内側シャフト110に対して第2の方向に回転することにより、内側シャフトの遠位アーム122は、アンカーの遠位アーム102mと再び位置合わせされ、アンカーのスロット104から再び位置合わせされなくなる。
図12は、骨穴130に対して位置決めされた挿入器100及びアンカー102と、内側シャフト110を第2の方向に回転させた後の係止解除位置にある縫合糸126と、を示す。ノブ112の連続的な回転は、内側シャフト110がアンカー102及び外側シャフト108を越えて遠位に延在するように、外側シャフト108及びアンカー102を内側シャフト110に対して近位に移動させる。アンカー102が外側シャフト108に解放可能に嵌合されることにより、アンカー102は外側シャフト108と一体として移動することが可能になる。
図13に示されるように、ノブ112が回転させられるにつれて、骨穴130の口に対してアンカー108に下向き(遠位)の軸方向圧力が印加されると、内側シャフト110は、骨穴130の中に延在することができるであろう。(内側シャフト110は、内側シャフト110及び骨132に対する縫合糸の位置をより良く示すために、
図13において長手方向断面で示されている)。
【0072】
アンカー102を越えた内側シャフト110の遠位方向の延在が、縫合糸126を、それに対応してスロット104から遠位方向に押し出し、骨穴130内に押し込むようにする。内側シャフト110が骨穴130の中に移動すると、縫合糸126は、内側シャフトの遠位アーム122によって画定されたフォークの近位端に当接し、その結果、内側シャフト110の継続的な遠位前進は、縫合糸126も遠位に移動させ、骨穴130の中に移動させることになる。したがって、縫合糸126は、アンカー102が骨穴130に固定される前に骨穴130内に位置決めされる。言い換えれば、内側シャフトの縫合糸保持チャネル124及びアンカーのスロット104内に設置された縫合糸126は、アンカー102の遠位の骨穴130内に位置決めされることができ、それによって縫合糸126が骨穴130内にすでに位置決めされている状態でアンカー102が骨穴130内に遠位に前進することができる。骨穴130の底面は、骨132に対して内側シャフト110を停止させる停止面として作用することができる。挿入器100が骨穴130内に位置決めされている状態では骨穴130の内部を視覚化することができず、したがって、停止部として作用する骨穴130の底面は、挿入器100が骨穴130内で可能な限り遠位に前進していることを確実にするのに役立つことができ、アンカーの近位端が骨穴130の近位端と同一平面又はほとんど同一平面にある状態で、アンカー102が骨穴130に固定されることを確実にするのに役立ち得る。
【0073】
縫合糸126が骨穴130内に位置決めされ、内側シャフト110の遠位部分が骨穴130内に位置決めされている状態で、内側シャフト110に対してアンカー102を遠位に前進させる前に、縫合糸126は、所望に応じて張力をかけることができる。縫合糸126は、例えば、縫合糸126の脚部126gを引っ張ることによって、アンカー102に対して(また内側シャフト110及び外側シャフト108に対して)摺動させることができ、それにより、縫合糸126に望ましく張力をかけることができ、したがって、縫合糸126に結び付けられるか、又は別様に取り付けられた軟組織を、アンカー102が固定される骨132に対して望ましく位置決めすることができる。
図13に示すように、骨穴130内に位置決めされた縫合糸126は、U字形状を有する。アンカー102が骨穴130内に挿入される前に縫合糸126がU字形状を有することにより、縫合糸126は、アンカー102が骨穴130内に挿入された後に、アンカー102の対向する側に沿って長手方向に延在する縫合糸の2つの脚部126gの各々と、アンカーの遠位先端の周りをループするようにアンカーの遠位端に沿って延在する脚部126を接続する縫合糸126の中間部分と、を有することが可能となる。
【0074】
縫合糸126が骨穴130内に位置決めされ、内側シャフト110の遠位部分が骨穴130内に位置決めされ、縫合糸126が所望の張力にある状態で、係止機構118は、係止位置から係止解除位置に移動される。ここで、外側シャフト108は、打撃キャップ112に対する打撃に応答して、内側シャフト110に対して遠位に自由に移動する。
【0075】
縫合糸126が骨穴130内に位置決めされ、内側シャフト110の遠位部分が骨穴130内に位置決めされ、縫合糸126が所望の張力にあり、係止機構118が係止解除位置にある状態で、アンカー102は、アンカー102を内側シャフト110に対して遠位方向に長手方向に並進させることによって骨穴130内に遠位に前進させられる。言い換えれば、アンカー102は、挿入器100の長手方向軸100aに沿って軸方向に押される。打撃キャップ112は、外側チューブ108を内側シャフト110に対して遠位に移動させ、アンカー102を内側シャフト110に対して遠位に移動させ、骨穴130内に遠位に前進させるために、マレット、ハンマー、又は他のツールで打たれる。打撃キャップ112は、アンカー102を骨穴130内に完全に前進させるために1つ又は2つ以上打たれ得る。骨穴130内のアンカー102は、縫合糸126、例えば、その脚部126gを、アンカー102の外面と骨穴130を画定する内部骨表面との間に捕捉する。
【0076】
アンカー102が骨穴130に挿入された後、外側シャフト108及び内側シャフト110を含む挿入器100は、近位方向に長手方向に並進され、例えば、挿入器100の長手方向軸100aに沿って軸方向に引っ張られて、アンカー102及び縫合糸126が骨132内に残っている状態で患者の身体から取り外される。アンカー102は骨132内に固定されており、したがって、外側シャフト108が近位に移動されるときに骨穴130内に留まることができるので、外側シャフト108の近位移動は、アンカー102の嵌合要素及び外側シャフト108の嵌合特徴部を解放する。
図14は、挿入器100の除去後に遠位方向に前進して骨穴130内に位置決めされたアンカー102を示す。縫合糸126は、内側シャフト110を骨穴130から近位の引っ張ることに応答して、内側シャフトの縫合糸保持チャネル124を自動的に出る。縫合糸126の尾部は、必要に応じてトリミングすることができる。
【0077】
図15は、アンカー202の別の実施形態を図示する。アンカー202は、挿入器ツール100に結合されている状態で
図15に示されているが、アンカー202は、他の挿入器ツールとともに同様に使用することができる。挿入器ツール100は、
図4の挿入器ツールの位置と同様に、
図15の初期構成で示されている。アンカー202は、アンカー202の一対の対向するスロット204がアンカー102の一対の対向するスロット104と異なる構成を有することを除いて、
図1~
図4、
図8、
図9、及び
図12~
図14のアンカー102と同様に構成され、使用される。この図示された実施形態では、各スロット204はL字形状を有する。各スロット204は、アンカー202の開放遠位端から近位に延在する開放遠位端を伴う垂直アームを有し、また垂直アームの近位端から側方に延在する水平アームを有する。垂直アームは、挿入器の長手方向軸100aに対して実質的に平行であり、したがって、それと同軸のアンカーの長手方向軸に対して実質的に平行であり、水平アームは、挿入器の長手方向軸100a及びアンカーの長手方向軸に対して横行する(この図示された実施形態では実質的に垂直である)。当業者は、これら軸が正確に平行でなくてもよく、あるいは正確に垂直でなくてもよいが、それにもかかわらず、測定機器の製造公差及び感度などの1つ又は2つ以上の理由のうちのいずれかのために、実質的に平行であるか、あるいは実質的に垂直であると見なされることを理解するであろう。水平アームは、垂直アームよりも幅広であり、これは、縫合糸が設置及び捕捉されるための十分な空間を提供することによって、スロット204内、例えば、その水平アーム内に縫合糸を係止するのに役立ち得る。
【0078】
図16は、アンカー302の別の実施形態を図示する。アンカー302は、アンカー302の一対の対向するスロット304がアンカー102の一対の対向するスロット104とは異なる構成を有することを除いて、挿入器ツール100又は他の挿入器ツールとの使用を含めて、
図1~
図4、
図8、
図9、及び
図12~
図14のアンカー102と同様に構成され、使用される。この図示された実施形態では、各スロット304は、
図15のスロット204と同様のL字形状を有する。しかしながら、この図示された実施形態では、各スロットの垂直アーム及び水平アームは同じ幅を有する。
【0079】
図17は、縫合糸126が固定されたアンカー302及び内側シャフト110を示す。縫合糸126は、縫合糸保持チャネル124内に設置され、スロット304を通って延在し、縫合糸126は、スロット304の水平アーム内に位置決めされる。内側シャフト110のアーム122は、スロット304を閉塞している。
図18は、アンカー302が縫合糸126を係止解除するために回転され、縫合糸126をスロット304から押し出すために外側シャフト108とともにアンカー302に対して近位に移動された後の、
図17のアンカー302、内側シャフト110、及び縫合糸126を示す。アンカー302は、
図17及び
図18において
図1~
図3の挿入器ツール100とともに示されているが、他の挿入器ツールとともに同様に使用することができる。また、アンカー302は、
図17及び
図18において
図12~
図14の縫合糸126とともに示されているが、他の縫合糸とともに同様に使用することができる。
【0080】
図19は、アンカー402の別の実施形態を図示する。アンカー402は、挿入器ツール100に結合されている状態で
図19に示されているが、アンカー402は、他の挿入器ツールと同様に使用することができる。挿入器ツール100は、
図4の挿入器ツールの位置と同様に、
図19の初期構成で示されている。アンカー402は、アンカー402の一対の対向するスロット404がアンカー102の一対の対向するスロット104と異なる構成を有することを除いて、
図1~
図4、
図8、
図9、及び
図12~
図14のアンカー102と同様に構成され、使用される。この図示された実施形態では、各スロット404は切欠きを含む。切欠きは、骨係合特徴部402fを含まないアンカー402の遠位部分に形成され、アンカー402の対向する遠位アーム402mによって画定される。
【0081】
各スロット404は、遠位縫合糸ガイド溝404gと、近位カットアウト404cと、遠位縫合糸ガイド溝404gと近位カットアウト404cとを接続するチャネル404hと、を含む。各遠位縫合糸ガイド溝404gは、アンカーの遠位アーム402mの遠位端において対向するウイングによって画定される。ウイングは各々、V字形状を画定するように半径方向外向きに延在している。したがって、各縫合糸ガイド溝404gはV字形状をなし、「V」の先端は近位に向いている。各カットアウト404cは、その対応する縫合糸ガイド溝404gの遠位に位置する。この図示された実施形態におけるカットアウト404cはそれぞれ、正方形及び三角形によって画定される五角形の形状を有し、三角形は、正方形に対して遠位にあり、遠位に向いているが、カットアウト404cは、他の形状、例えば、涙滴形状、ダイヤモンド形状などを有することができる。
【0082】
一般に、スロット404は、その中に縫合糸を受容するように構成されている。縫合糸は、縫合糸ガイド溝404gを通って遠位に移動してチャネル404hに入り、次いでカットアウト404cに入ることができる。縫合糸ガイド溝404g及びカットアウト404cはそれぞれ、チャネル404hの幅よりも大きい幅を有し、これは、例えば、挿入器ツールの内側シャフトを用いて縫合糸を遠位に押すことによって、アンカー402からの縫合糸の分離の所望の時間の前に、縫合糸がカットアウト404cから遠位に移動することを防止しないとしても妨害することによって、縫合糸をカットアウト404c内に保持するのに役立ち得る。
【0083】
縫合糸ガイド溝404gは、アームのウイングの内側表面に係合する縫合糸をその中に受容するように構成されている。次に、縫合糸をウイングの内側表面に沿って近位方向に摺動させて、縫合糸を各縫合糸ガイド溝404gの頂点まで、例えば溝のV字形状の点まで案内することができる。縫合糸は、ウイングの内側表面のうちのいずれかに沿って摺動することができる。縫合糸は、長手方向チャネル404hに入るように近位に摺動され続ける。したがって、縫合糸ガイド溝404g内の近位方向への縫合糸の移動は、縫合糸をチャネル404hに進入させる。縫合糸をチャネル404h内で近位方向に移動させ続けると、縫合糸がカットアウト404cに入る。カットアウト404cの閉鎖近位端は、カットアウト404c内の縫合糸のための停止面として作用するが、いくつかの実施形態では、縫合糸は、カットアウト404c内に位置決めされてもよいが、一方又は両方の停止面に当接しなくてもよい。以下で更に説明するように、カットアウト404c内に受容され、カットアウト404cを通って延在する縫合糸は、カットアウト404cから遠位に押し出され、次にチャネル404hを通って遠位に押し出され、次に縫合糸ガイド溝404gから遠位に押し出され得る。以下で説明するように、アンカー402の遠位アーム402mは、縫合糸がチャネル404hに入って通過するときに半径方向外向きに広がるように構成することができ、また縫合糸がチャネル404hを出てカットアウト404c又は縫合糸ガイド溝404gに入った後に半径方向内向きに広がるように構成され得る。
【0084】
アンカー402の遠位アーム402mは、ピンセットアームと同様に、互いに対して前後に跳ね返るように構成されている。遠位アーム402mの互いに対する移動は、チャネル404hの幅を変化させて、カットアウト404c内への縫合糸の設置及びカットアウト404cからの縫合糸の除去を容易にするように構成されている。
図19は、チャネル404hの幅が最小である静止構成にあるアーム402mを示す。遠位アーム402mは、静止構成から、チャネル404hの幅が増加するようにアーム402mが半径方向外向きに移動される拡張構成に移動するように構成されている。チャネル404hの拡張された幅は、縫合糸がカットアウト404cに入るための、及び縫合糸がカットアウト404cから出るためのより多くの空間を提供する。アーム402mは、静止構成に付勢され、その結果、アーム402mは、縫合糸がカットアウト404cの中へと近位方向に、又はカットアウト404cの外へと遠位方向に前進するのに応答して、静止構成から拡張構成に動的に移動するように構成され、その結果、アーム402mは、縫合糸が縫合糸ガイド溝404gから出てカットアウト404cの中へと近位に前進するのに応答して、拡張構成から静止構成に動的に移動するように構成され、その結果、アーム402mは、縫合糸がカットアウト404cから出て縫合糸ガイド溝404gの中へと遠位に前進するのに応答して、静止構成から拡張構成に動的に移動するように構成されている。
【0085】
代替的には、アンカー402の遠位アーム402mは、互いに対して前後に跳ね返るように構成されなくてもよい。このような実施形態において、縫合糸の圧縮性は、縫合糸がチャネル404hを通って移動することを可能にするのに十分であり得る。
【0086】
図20は、スロット404内に設置された縫合糸126を示す。アンカー402は、挿入器ツール100及び縫合糸126に結合されている状態で
図20に示されているが、アンカー402は、他の挿入器ツール及び縫合糸と同様に使用することができる。
図20の挿入器ツール100は初期構成にあり、内側シャフト110の遠位アーム122の各々はアンカー402の遠位アーム402mのうちの1つと位置合わせされ、内側シャフトの遠位アーム122は、アンカーのスロット404から位置合わせされていない。
【0087】
図21~
図23は、挿入器ツール100を使用して縫合糸アンカー402を骨132に挿入する方法の一実施形態を示す。この方法は、
図1~
図10の挿入器ツール100、
図11~
図14の骨132及び骨穴130、
図12~
図14の縫合糸126、並びに
図18のアンカー402に関して説明されるが、他の挿入器ツール、骨、骨穴、縫合糸、及びアンカーを用いても同様に実施することができる。
【0088】
縫合糸126が挿入器100及びアンカー402に結合されている状態で、挿入器100は、上述のように形成され得る骨穴130に縫合糸126及びアンカー402を挿入するために使用される。骨穴130が形成される前又は後に、縫合糸126は、
図20に示されるようにアンカー402に結合される。次に、縫合糸126は、アンカー102及び縫合糸126に関して上述したものと同様にアンカー402に係止され、外側シャフト108及びアンカー402は、内側シャフトのアーム122をアンカー402のスロット404と位置合わせされるように回転される。
【0089】
縫合糸126がアンカー402、内側シャフト110、及び外側シャフト108に対して所定の位置に固定されるようにアンカー402に結合及び係止されている状態で、挿入器100は、患者の体内に遠位に前進され、骨穴130に対して位置決めされる。したがって、縫合糸126及びアンカー402は、縫合糸126がアンカー402から落下するリスクなしに、互いに対して予想可能な固定位置にありながら、患者の体外から骨穴130に対して所定の位置にジップライン化(ziplined)され得る。
【0090】
アンカー402及び挿入器100が骨穴130に対して位置決めされている状態で、縫合糸126は、縫合糸126を定位置に係止するために上述したのとは反対にアンカー402を内側シャフト110に対して回転させることによって、例えば、挿入器100のノブ112を回転させてアンカー402及び外側シャフト108を回転させることによって、係止解除される。アンカー402が内側シャフト110に対して第2の方向に回転することにより、内側シャフトの遠位アーム122は、アンカーの遠位アーム402mと再び位置合わせされ、アンカーのスロット404から再び位置合わせされなくなる。
図21は、骨穴130に対して位置決めされた挿入器100及びアンカー402と、アンカー402を第2の方向に回転させた後の係止解除位置にある縫合糸126と、を示す。内側シャフト110は次いで、アンカー102に関して上述したのと同様に、
図22に示すように骨穴130内に位置決めされる。
【0091】
内側シャフト110が骨穴130内に移動することにより、縫合糸126は対応してスロット404から遠位側に押し出されて骨穴130内に押し込まれる。内側シャフト110が骨穴130の中に前進すると、縫合糸126は、内側シャフトの遠位アーム122によって画定されたフォークの近位端に当接し、その結果、内側シャフト110の継続的な遠位前進は、縫合糸126も遠位に移動させ、骨穴130の中に移動させることになる。したがって、縫合糸126は、アンカー402が骨穴130に固定される前に骨穴130内に位置決めされる。言い換えれば、内側シャフトの縫合糸保持チャネル124及びアンカーのスロット404内に設置された縫合糸126は、アンカー402の遠位の骨穴130内に位置決めされることができ、それによって縫合糸126が骨穴130内にすでに位置決めされている状態でアンカー402が骨穴130内に遠位に前進することができる。骨穴130の底面は、上述したように、内側シャフト110を停止させる停止面として作用することができる。
【0092】
縫合糸126が骨穴130内に位置決めされ、内側シャフト110の遠位部分が骨穴130内に位置決めされている状態で、内側シャフト110に対してアンカー402を遠位に前進させる前に、縫合糸126は、上述のように、張力をかけることができる。
図22の骨穴130内に位置決めされた縫合糸126は、上述したようにU字形状を有する。
【0093】
縫合糸126が骨穴130内に位置決めされ、内側シャフト110の遠位部分が骨穴130内に位置決めされ、縫合糸126が所望の張力にある状態で、係止機構118は、係止位置から係止解除位置に移動される。ここで、外側シャフト108は、打撃キャップ112に対する打撃に応答して、内側シャフト110に対して自由に移動する。
【0094】
縫合糸126が骨穴130内に位置決めされ、内側シャフト110の遠位部分が骨穴130内に位置決めされ、縫合糸126が所望の張力にあり、係止機構118が係止解除位置にある状態で、アンカー402は、アンカー402を内側シャフト110に対して遠位方向に長手方向に並進させることによって骨穴130内に遠位に前進させられる。言い換えれば、アンカー402は、挿入器100の長手方向軸100aに沿って軸方向に押される。打撃キャップ112は、外側チューブ108を内側シャフト110に対して遠位に移動させ、アンカー402を内側シャフト110に対して遠位に移動させ、骨穴130内に遠位に前進させるために、マレット、ハンマー、又は他のツールで打たれる。打撃キャップ112は、アンカー402を骨穴130内に完全に前進させるために1つ又は2つ以上打たれ得る。骨穴130内のアンカー402は、縫合糸126、例えば、その脚部126gを、アンカー402の外面と骨穴130を画定する内部骨表面との間に捕捉する。
【0095】
アンカー402が骨穴130に挿入された後、外側シャフト108及び内側シャフト110を含む挿入器100は、近位方向に長手方向に並進され、例えば、挿入器100の長手方向軸100aに沿って軸方向に引っ張られて、アンカー402及び縫合糸126が骨132内に残っている状態で患者の身体から取り外される。
図23は、挿入器100の除去後に遠位方向に前進して骨穴130内に位置決めされたアンカー402を示す。縫合糸126は、内側シャフト110を骨穴130から近位の引っ張ることに応答して、内側シャフトの縫合糸保持チャネル124を自動的に出る。縫合糸126の尾部は、必要に応じてトリミングすることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、挿入器ツールの外側シャフト及びアンカーは、挿入器ツールに解放可能に結合されたアンカーと協働して縫合糸のための仮囲い部を形成するために回転されない。そのような実施形態では、挿入器ツールの内側シャフトは、縫合糸をアンカーで骨内に固定する前に縫合糸捕捉を容易にするために、挿入器ツール及び挿入器ツールに解放可能に結合されたアンカーの同軸の長手方向軸に沿って軸方向に移動するように構成されている。そのような実施形態では、挿入器ツールの打撃キャップは、回転するように構成されている必要はない。非回転式打撃キャップの様々な実施形態が、前述した2021年11月4日公開の米国特許公開第2021/0338223号、発明の名称「Knotless Anchor Insertion」に記載されている。
【0097】
図24は、挿入器ツールの別の実施形態及びアンカー502の別の実施形態を示す。
図24の挿入器ツールは、挿入器ツールの内側シャフト510が挿入器ツールの同軸の長手方向軸500a、502aに沿って軸方向に移動するように構成され、アンカー502が挿入器ツールに解放可能に結合されて、縫合糸126をアンカー502で骨に固定する前に縫合糸126の捕捉を容易にすることを除いて、
図1~
図3の挿入器ツール100と同様に構成され、使用される。
図8及び
図9の縫合糸126が
図24に示されているが、別の縫合糸を使用することもできる。内側シャフト510はまた、縫合糸126をアンカーのスロット504から押し出すために遠位に前進させられる必要がない。追加的に、この図示された実施形態における内側シャフト510は、単一の遠位アーム522のみを含む。単一の遠位アーム522は、2つの遠位アームが必要とされないように、アンカーのスロット504内に縫合糸126を効果的に捕捉することができる。
【0098】
アンカー502は、アンカー502が単一のスロット504を含むことを除いて、
図1~
図4、
図8、
図9、及び
図12~
図14のアンカー102と同様に構成され、使用される。
図24には示されていないが、アンカー502は骨係合特徴部を含む。この図示された実施形態では、スロット504は、アンカー502に形成された近位方向に傾斜した切欠きとして形成される。
【0099】
挿入器ツール及びアンカー502は、概して、上述の挿入器ツール及びアンカーと同様に使用される。縫合糸126は、上述した実施形態と同様に、アンカー502が患者の体内に前進する前にアンカー502のスロット504内に設置されるように構成されている。しかしながら、この図示の実施形態では、縫合糸126がスロット504内に設置されている状態で、内側シャフト510は、遠位方向に軸方向に移動して、内側シャフト510の遠位アーム522がスロット504と位置合わせされている状態で縫合糸126をスロット504内に捕捉して係止するように構成されている。遠位位置にある内側シャフト510は、上述のものと同様に、スロット504が縫合糸126をその中に捕捉及び係止するのを妨害する。内側シャフト510は、アンカー502が骨穴の中へ遠位に前進させられる前に、アンカー502を越えて遠位に位置しない。代わりに、アンカー502が骨穴内に遠位に前進させられた後、内側シャフト510は、アンカー502及び縫合糸126が骨穴内に固定されたままである間に、アンカー502内から内側シャフト510を除去するために、例えば、挿入器ツールの残りの部分を用いて、近位方向に軸方向に移動させられる。内側シャフト510は、アンカー502が患者の体内に前進させられた後、かつアンカー502が骨穴内に固定される前に近位に移動させられて、縫合糸126が引っ張られることを可能にすることができる。
【0100】
当業者は、上述した実施形態に基づくデバイス、システム、及び方法の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0101】
本開示は、本明細書で提供される開示全体の文脈内で、例示のみを目的として上で説明された。本開示の全体的な範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内の修正を行い得ることが理解されよう。
【0102】
〔実施の態様〕
(1) 外科用システムであって、
骨穴内に埋め込まれるように構成されたアンカーであって、その中に形成された一対のスロットを有する、アンカーと、
外側シャフト及び内側シャフトを含む挿入器ツールであって、前記アンカーが前記挿入器ツールに解放可能に結合されるように構成されている、挿入器ツールと、を備え、
前記アンカーが前記挿入器ツールに解放可能に結合されている状態で、前記内側シャフトは、前記内側シャフトが前記一対のスロットを閉塞する第1の位置、及び前記内側シャフトが前記一対のスロットを閉塞しない第2の位置のうちの1つに選択的にあるように構成され、
前記第2の位置にある前記内側シャフトは、前記アンカー及び前記外側シャフトを越えて遠位に延在するように構成され、その後、前記外側シャフトは、前記内側シャフトに対して遠位方向に軸方向に並進し、それによって前記アンカーを前記骨穴内へと前記遠位方向に軸方向に並進させるように構成されている、外科用システム。
(2) 前記アンカーが、縫合糸が、前記アンカーの前記スロットを通って延在し、前記内側シャフトの縫合糸保持チャネル内に設置されている状態で、前記縫合糸に解放可能に結合されるように構成され、
前記縫合糸が、前記内側シャフトが前記第1の位置にある状態で、前記アンカーに対して係止位置にあり、
前記内側シャフトが前記第1の位置から前記第2の位置に変化することが、前記縫合糸を前記アンカーに対して前記係止位置から係止解除位置に移動させるように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記第2の位置にある前記内側シャフトが前記遠位方向に軸方向に並進することが、前記縫合糸を前記スロットから押し出すように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記縫合糸を更に備える、実施態様2に記載のシステム。
(5) 前記スロットの各々が、開放遠位端及び閉鎖近位端を有する、実施態様1に記載のシステム。
【0103】
(6) 前記内側シャフトが前記第2の位置から前記第1の位置に変化することが、前記スロットを通って延在する縫合糸を付勢して前記スロット内で近位に移動させるように構成され、
前記内側シャフトが遠位方向に軸方向に並進することが、前記縫合糸を前記スロット内で遠位に移動させ、前記スロットの前記開放遠位端から出すように構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記スロットの各々がL字形状を有するか、又は前記スロットの各々が螺旋形状を有する、実施態様5に記載のシステム。
(8) 前記内側シャフトが一対の遠位アームを有し、
前記アンカーが一対の遠位アームを有し、
前記内側シャフトが前記第1の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは、前記アンカーの前記遠位アームから位置合わせされず、
前記内側シャフトが前記第2の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは、前記アンカーの前記遠位アームと位置合わせされる、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記内側シャフトが一対の遠位アームを有し、
前記内側シャフトが前記第1の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは前記アンカーの前記スロットと位置合わせされ、
前記内側シャフトが前記第2の位置にある状態で、前記内側シャフトの前記遠位アームは、前記アンカーの前記スロットから位置合わせされていない、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記第1の位置において、前記内側シャフトが、前記アンカーを越えて遠位に延在しない、実施態様1に記載のシステム。
【0104】
(11) 前記外側シャフトの並進の後に、前記外側シャフト及び前記内側シャフトが、前記骨穴内の前記アンカーに対して近位方向に軸方向に同時に並進するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(12) 外科用システムであって、
骨穴に埋め込まれるように構成されたアンカーであって、間に一対のスロットを画定する一対の遠位アームを有する、アンカーと、
前記アンカーの内側ルーメン内に設置されるように構成された内側シャフトであって、一対の遠位アームを有し、前記アンカーが、前記内側シャフトが前記アンカーの前記内側ルーメン内にある状態で前記内側シャフトに対して回転するように構成され、その結果、前記内側シャフトの前記遠位アームが、前記アンカーの前記遠位アームと位置合わせされ、前記アンカーの前記スロットから位置合わせされていない状態から、前記アンカーの前記遠位アームから位置合わせされず、前記アンカーの前記スロットと位置合わせされている状態へと変化する、内側シャフトと、
前記内側シャフト及び前記アンカーに対して遠位に長手方向に並進し、それによって前記アンカーを前記骨穴内に遠位に移動させるように構成された外側シャフトと、を備える、外科用システム。
(13) 前記内側シャフトが、前記外側シャフトが前記内側シャフト及び前記アンカーに対して遠位に長手方向に並進される前に、前記骨穴内に長手方向に移動するように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記内側シャフトの前記長手方向移動が、前記アンカーの前記スロット内に設置された縫合糸を前記スロットから押し出し、前記骨穴内に押し込むように構成されている、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記アンカーが、縫合糸が、前記アンカーの前記スロットを通って延在し、前記内側シャフトの縫合糸保持チャネル内に設置されている状態で、前記縫合糸に解放可能に結合されるように構成され、
前記縫合糸が、前記内側シャフトの前記遠位アームが、前記アンカーの前記遠位アームから位置合わせされず、前記アンカーの前記スロットと位置合わせされている状態で、前記アンカーに対して係止位置にあり、
前記縫合糸が、前記内側シャフトの前記遠位アームが、前記アンカーの前記遠位アームと位置合わせされ、前記アンカーの前記スロットから位置合わせされない状態で、前記アンカーに対して係止解除位置にある、実施態様12に記載のシステム。
【0105】
(16) 前記縫合糸を更に備える、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記外側シャフトの遠位並進の前に、前記外側シャフトの遠位端が、前記アンカーの前記内側ルーメン内に位置決めされた前記内側シャフトを有する前記アンカーの近位端に当接する、実施態様12に記載のシステム。
(18) 外科的方法であって、
挿入器ツールの外側シャフト及び前記挿入器ツールに解放可能に結合されたアンカーを前記挿入器ツールの内側シャフトに対して回転させることであって、前記外側シャフト及び前記アンカーの回転が、前記アンカーのスロットを通って延在する縫合糸を係止位置から係止解除位置に移動させ、前記外側シャフト及び前記アンカーの前記回転が、前記縫合糸を前記スロットから押し出し、骨穴内に押し込む、回転させることと、
前記外側シャフト及び前記アンカーの前記回転後に、前記外側シャフトを前記内側シャフトに対して遠位に長手方向に並進させ、それによって前記アンカーを前記骨穴内に押し込んで前記アンカーをその中に固定することと、を含む、外科的方法。
(19) 前記外側シャフト及び前記アンカーの前記回転が、第1の方向におけるものであり、
前記方法が、前記外側シャフト及び前記アンカーの前記第1の方向における前記回転の前に、前記外側シャフト及び前記アンカーを前記第1の方向とは反対である第2の方向に回転させることを更に含み、前記外側シャフト及び前記アンカーの前記第2の方向における前記回転が、前記内側シャフトに対するものであり、また前記外側シャフト及び前記アンカーの前記第2の方向における前記回転が、前記アンカーのスロットを通って延在する前記縫合糸を前記係止解除位置から前記係止位置に移動させる、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記外側シャフト及び前記アンカーの前記第1の方向における前記回転が、前記内側シャフトの遠位アームを、前記アンカーの前記スロットと位置合わせされている状態から、前記アンカーの前記スロットから位置合わされていない状態へと変化させる、実施態様18に記載の方法。
【国際調査報告】