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特表2025-502232二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20250117BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541894
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2022106078
(87)【国際公開番号】W WO2024011620
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲潔▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】王 冠
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE22
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ01
(57)【要約】
二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。前記二次電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含み、正極シートは、正極活性材料を含み、負極シートは、負極活性材料を含み、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、電解液は、第1の有機溶媒と、膜形成添加剤とを含み、膜形成添加剤は、正極活性材料及び/又は負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置され、セパレータの空隙率をε%とし、電解液の総質量に対する膜形成添加剤の質量百分率含有量をb%とし、電解液の25℃における粘度値をc(mPa・s)とする場合、二次電池は、4≦(b*ε)/c≦240を満たす。本願は、二次電池の急速充放電性能及びサイクル寿命を改善することができる。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活性材料を含む正極シートと、
負極活性材料を含む負極シートと、
前記正極シートと前記負極シートとの間に設けられるセパレータと、
第1の有機溶媒と、前記正極活性材料及び/又は前記負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置される膜形成添加剤とを含む電解液と、を備え、
前記セパレータの空隙率をε%とし、前記電解液の総質量に対する前記膜形成添加剤の質量百分率含有量をb%とし、25℃における前記電解液の粘度値をc(mPa・s)とする場合、
4≦(b*ε)/c≦240を満たし、選択可能に、4≦(b*ε)/c≦180を満たす二次電池。
【請求項2】
条件(1)乃至条件(3)のうちの少なくとも1つをさらに満たす、請求項1に記載の二次電池。
(1)25≦ε≦55であり、選択可能に、30≦ε≦50である。
(2)0.1≦b≦8であり、選択可能に、0.1≦b≦6である。
(3)1≦c≦6であり、選択可能に、2≦c≦5である。
【請求項3】
前記電解液の総質量に対する前記第1の有機溶媒の質量百分率含有量をa%とする場合、
前記二次電池は、2≦c+2*a%≦8をさらに満たす請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
60≦a≦90であり、選択可能に、65≦a≦85である請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1の有機溶媒は、線状カーボネート系溶媒、カルボン酸エステル系溶媒及びニトリル系溶媒のうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記線状カーボネート系溶媒は、エチルメチルカーボネートEMC、ジエチルカーボネートDEC、ジメチルカーボネートDMC及びメチルプロピルカーボネートMPCのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記カルボン酸エステル系溶媒は、酢酸エチルEA、酢酸メチルMA、プロピオン酸エチルEP、ギ酸メチルMF、酪酸エチルEB、酢酸ブチルBA、プロピオン酸メチルMP、酪酸メチルMB、酪酸プロピルPB、及び酪酸ブチルBBのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記ニトリル系溶媒は、アセトニトリルAN、グルタロニトリルGLN及びアジポニトリルADNのうちの1種類又は複数種類を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記膜形成用添加剤は、
前記負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置される負極膜形成添加剤であって、前記電解液の総質量に対する前記負極膜形成添加剤の質量百分率含有量をb1%とする負極膜形成添加剤と、
前記正極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置される正極膜形成添加剤であって、前記電解液の総質量に対する前記正極膜形成添加剤の質量百分率含有量をb2%とする正極膜形成添加剤と、を含み、
前記二次電池は、1≦b2/b1≦60を満たし、選択可能に、1≦b2/b1≦40を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
0.01≦b1≦1.5及び/又は0.1≦b2≦7である、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極膜形成添加剤は、ホウ素含有リチウム塩、リン含有リチウム塩及び硫黄含有リチウム塩のうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記リン含有リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、フルオロリン酸リチウムLiPOF及びリン酸リチウムLiPOのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記硫黄含有リチウム塩は、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、硫酸リチウムLiSO、スルファミン酸リチウムLiSONHのうちの1種類又は複数種類を含む、請求項6又は7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記正極膜形成添加剤は、カーボネート系添加剤及び/又は硫酸エステル系添加剤を含み、
選択可能に、前記カーボネート系添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、さらに選択可能に、前記環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロピレンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1種類又は複数種類を含み、前記炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの1種類又は複数種類を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記電解液は、リチウム塩をさらに含み、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiTFSIのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、電解液の総質量に対する前記リチウム塩の質量百分率含有量をd%とし、5%≦d≦25%であり、さらに選択可能に、10%≦d≦20%である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記セパレータは、基材層と、前記基材層の表面に設けられるコーティング層とを含み、前記基材層の基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミドのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、前記コーティング層は、セラミックコーティング層及び/又はポリマーコーティング層を含み、
選択可能に、前記セラミックコーティング層におけるセラミック粒子は、SiO、Al、AlOOH、CaO、TiO、MgO、ZnO、ZrO、Mg(OH)及びBaSOのうちの1種類又は複数種類を含み、
前記ポリマーコーティング層のポリマー材料は、ポリエチレンPE、ポリプロピレンPP、ポリパラフェニレンテレフタルアミドPPTA、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、ポリアクリロニトリルPAN、ポリイミドPI及びポリアミドPAのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池を備える電池モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の電池モジュールを備える電池パック。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池、請求項12に記載の電池モジュール又は請求項13に記載の電池パックを備える電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池分野に関し、特に、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、容量が高く、寿命が長いなどの特性を有するため、例えば携帯電話、ノートパソコン、電動スクータ、電気自動車、電動飛行機、電動船、電動玩具自動車、電動玩具船、電動玩具飛行機及び電動工具などの電子機器に広く適用されている。
【0003】
電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、二次電池の性能に対する要求もますます厳しくなり、例えば、優れた急速充放電性能とサイクル寿命を有することが要求されるため、二次電池の急速充放電性能とサイクル寿命に対する改善も早急に解決すべき問題である。
【発明の概要】
【0004】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することにある。
【0005】
本願の第1の態様は、二次電池を提供し、前記二次電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを備え、正極シートは、正極活性材料を含み、負極シートは、負極活性材料を含み、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、電解液は、第1の有機溶媒と、膜形成添加剤とを備え、膜形成添加剤は、正極活性材料及び/又は負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置され、セパレータの空隙率をε%とし、電解液の総質量に対する膜形成添加剤の質量百分率含有量をb%とし、25℃における電解液の粘度値をc(mPa・s)とする場合、二次電池は、4≦(b*ε)/c≦240を満たし、選択可能に4≦(b*ε)/c≦180を満たす。
【0006】
これにより、本願ではセパレータの空隙率、電解液の粘度値及び膜形成添加剤の上記範囲を満たすように調整し、固相物質移動及び液相物質移動におけるリチウムイオンの移動速度を総合的に調整することにより、リチウムイオンの平均移動速度を改善し、二次電池の急速充電能力を向上させることができる。また、膜形成添加剤は、電解液の粘度を調整して、液相におけるリチウムイオンの移動速度をさらに調整することができるだけでなく、活性材料の表面に保護層を形成して、活性材料の表面を不動態化し、活性材料の表面と電解液との間で副反応が発生するリスクを低減させ、活性材料の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル寿命を向上させることができる。ここで、膜形成添加剤、特にリチウム塩系添加剤は、負極活性材料の表面に形成された固体電解質界面膜が比較的小さいインピーダンスを有し、リチウムイオンの挿入と脱離により有利である。
【0007】
任意の実施形態において、二次電池は、条件(1)乃至条件(3)のうちの少なくとも1つをさらに満たす。(1)25≦ε≦55であり、選択可能に、30≦ε≦50である。(2)0.1≦b≦8であり、選択可能に、0.1≦b≦6である。(3)1≦c≦6であり、選択可能に、2≦c≦5である。
【0008】
これにより、本願のセパレータの空隙率が上記範囲にある場合、セパレータの空隙率が小さすぎず、その液体透過性が良好であり、リチウムイオン透過能力が強く、リチウムイオンがセパレータを介して隣接する活性材料に移動することに有利であり、二次電池の急速充電能力をさらに改善することができる。膜形成添加剤の質量百分率含有量が上記範囲にある場合、膜形成添加剤は、活性材料と膜形成反応を起こし、緻密で均一な膜層を形成することができる。これにより、活性材料に対して良好な保護を行うとともに、膜形成添加剤、例えばリチウム塩系添加剤は、小さな膜形成インピーダンスを有するSEI膜を形成することが可能であり、寿命とパワーを両立させることができる。電解液の粘度値が上記範囲にある場合、電解液の粘度が大きすぎず、そのイオン導電率が相対的に高く、イオン伝送速度の改善に有利であり、二次電池の急速充電能力を向上させることができる。また、電解液の粘度が上記範囲にある場合、電解液と正負極シートとの相溶性が相対的に良く、正負極シートにおける活性材料との副反応が発生しにくいため、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。
【0009】
任意の実施形態において、電解液の総質量に対する第1の有機溶媒の質量百分率含有量をa%とする場合、二次電池は、2≦c+2*a%≦8をさらに満たす。
【0010】
これにより、本願では、第1の有機溶媒の質量百分率含有量を調整することにより、電解液の粘度を適切な範囲内に調整することが可能であり、且つ膜形成過程において安定な界面膜を形成させ、活性材料表面を完全に被覆することができる。
【0011】
任意の実施形態において、60≦a≦90であり、選択可能に、65≦a≦85である。
【0012】
任意の実施形態において、第1の有機溶媒は、線状カーボネート系溶媒、カルボン酸エステル系溶媒及びニトリル系溶媒のうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、線状カーボネート系溶媒は、エチルメチルカーボネートEMC、ジエチルカーボネートDEC、ジメチルカーボネートDMC及びメチルプロピルカーボネートMPCのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、カルボン酸エステル系溶媒は、酢酸エチルEA、酢酸メチルMA、プロピオン酸エチルEP、ギ酸メチルMF、酪酸エチルEB、酢酸ブチルBA、プロピオン酸メチルMP、酪酸メチルMB、酪酸プロピルPB、及び酪酸ブチルBBのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、ニトリル系溶媒は、アセトニトリルAN、グルタロニトリルGLN及びアジポニトリルADNのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0013】
これにより、本願の上記溶媒の粘度が低いため、電解液全体の粘度範囲を適切な範囲内に調整することができる。また、第1の有機溶媒が2種類以上を含む場合、電解液の粘度及びイオン導電率を相乗的に調整することができ、且つ複数種類の溶媒が膜形成反応に関与することが可能であるため、膜層構造が複数種類の成分を含み、界面膜の安定性を向上させることができる。
【0014】
任意の実施形態において、膜形成用添加剤は、負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置される負極膜形成添加剤であって、電解液の総質量に対する負極膜形成添加剤の質量百分率含有量をb1%とする負極膜形成添加剤と、正極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置される正極膜形成添加剤であって、電解液の総質量に対する正極膜形成添加剤の質量百分率含有量をb2%とする正極膜形成添加剤と、を含み、二次電池は、1≦b2/b1≦60を満たし、選択可能に、1≦b2/b1≦40を満たす。
【0015】
これにより、本願では、負極膜形成添加剤及び正極膜形成添加剤の含有量が上記式を満たすように調整すると、電解液が負極活性材料の表面にSEI膜を形成し、正極活性材料の表面にCEI膜を形成することができる。また、2種類の膜層の界面インピーダンスが相対的に低く、動力学的活性がよく、二次電池における電荷移動インピーダンスが小さいため、リチウムイオンの急速移動に有利であり、二次電池の急速充電性能を改善することができる。
【0016】
任意の実施形態において、0.01≦b1≦1.5及び/又は0.1≦b2≦7である。膜形成添加剤が上記範囲にあると、活性材料の表面に緻密で安定な界面膜を形成することが可能であり、活性材料を十分に保護し、活性材料の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル安定性を確保することができる。
【0017】
任意の実施形態において、負極膜形成用添加剤は、ホウ素含有リチウム塩、リン含有リチウム塩及び硫黄含有リチウム塩のうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、リン含有リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、フルオロリン酸リチウムLiPOF及びリン酸リチウムLiPOのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、硫黄含有リチウム塩は、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、硫酸リチウムLiSO、スルファミン酸リチウムLiSONHのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0018】
これにより、本願のホウ素含有リチウム塩は、負極活性材料の表面に構造が安定でインピーダンス値が比較的小さいSEI膜を形成することが可能であり、二次電池の高低温性能を改善することができる。リン含有リチウム塩は、負極活性材料の表面にLiPO及びLiF成分に富むSEI膜を形成することができる。当該SEI膜は低い界面インピーダンスを有し、二次電池のサイクル性能を顕著に改善することができる。硫黄含有リチウム塩は、負極活性材料の表面に緻密で安定なSEI膜を形成することが可能であり、負極活性材料に対する保護性能をさらに改善することができる。
【0019】
任意の実施形態において、正極膜形成添加剤は、カーボネート系添加剤及び/又は硫酸エステル系添加剤を含み、選択可能に、カーボネート系添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、さらに選択可能に、環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロピレンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1種類又は複数種類を含み、炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0020】
これにより、本願のカーボネート系添加剤は、強い誘電率を有し、リチウム塩をより大きく溶解することで、リチウム塩がリチウムイオンをより容易に解離させ、電解液の導電率を向上させ、第1の有機溶媒と互いに配合することにより、電解液の誘電率及び粘度をよりよく調整して、二次電池のイオン導電率を向上させ、二次電池の電気化学ウィンドウをより向上させることができる。硫酸エステル系添加剤は、緻密で安定な膜層を形成することが可能であり、活性材料に対して良好な保護作用を奏することができる。
【0021】
任意の実施形態において、電解液は、リチウム塩をさらに含み、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiTFSIのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、電解液の総質量に対するリチウム塩の質量百分率含有量をd%とし、5%≦d≦25%であり、さらに選択可能に、10%≦d≦20%である。リチウム塩はリチウムイオンとアニオン基とが複合したものであると見なされ、電解液に対し重要な影響を与える。上記リチウム塩は、熱安定性を有し、高い導電率を有する。
【0022】
任意の実施形態において、セパレータは、基材層と、基材層の表面に設けられるコーティング層とを含み、基材層の基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミドのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、コーティング層は、セラミックコーティング層及び/又はポリマーコーティング層を含み、選択可能に、セラミックコーティング層におけるセラミック粒子は、SiO、Al、AlOOH、CaO、TiO、MgO、ZnO、ZrO、Mg(OH)及びBaSOのうちの1種類又は複数種類を含み、ポリマーコーティング層のポリマー材料は、ポリエチレンPE、ポリプロピレンPP、ポリパラフェニレンテレフタルアミドPPTA、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、ポリアクリロニトリルPAN、ポリイミドPI及びポリアミドPAのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0023】
これにより、本願の基材層のリチウムイオンに対する透過率が良好であり、リチウムイオンの移動に有利であり、基材層の表面にコーティング層が設けられ、コーティング層はセパレータの機械的特性をさらに向上させることができる。
【0024】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様のいずれか1つの実施形態に係る二次電池を備える電池モジュールをさらに提供する。
【0025】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様の実施形態に係る電池モジュールを備える電池パックをさらに提供する。
【0026】
本願の第4の態様は、本願の第1の態様のいずれか1つの実施形態に係る二次電池、本願の第2の態様の実施形態に係る電池モジュール、又は本願の第3の態様の実施形態に係る電池パックを備える電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、本願の実施例において使用される必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明される図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をせずに、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0028】
図1】本願の二次電池の一つの実施形態の模式図である。
【0029】
図2図1の二次電池の実施形態の分解模式図。
【0030】
図3】本願の電池モジュールの一つの実施形態の模式図である。
【0031】
図4】本願の電池パックの一つの実施形態の模式図である。
【0032】
図5図4に示す電池パックの実施形態の分解模式図である。
【0033】
図6】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一つの実施形態の模式図である。
【0034】
図面は、必ずしも実際のスケールで描かれていない。
【0035】
符号の説明は、以下の通りである。
【0036】
1 電池パック
2 上部筐体
3 下部筐体
4 電池モジュール
【0037】
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
【0038】
53 カバープレート
【0039】
6 電力消費装置
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。ただし、不要な詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためのものである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0041】
本願に開示された「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定の範囲は一つの下限及び一つの上限を選択することにより限定され、選択された下限及び上限は、特に範囲の境界を限定する。このような方式で限定する範囲は、エンド値を含み又はエンド値を含まず、かつ任意に組み合わせることができ、即ち任意の下限は任意の上限と組み合わせて一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対し60~120及び80~110の範囲を列挙すれば、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2、及び最大範囲値3、4及び5を列挙すると、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5という範囲は全て予想される。本願において、他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、a~bの間の任意の実数組合せの縮約表現を示し、ここでa及びbは、いずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は本明細書において全て「0~5」の間の全ての実数が列挙されることを示し、「0~5」はこれらの数値の組み合わせの縮約表現である。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、該パラメータが例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることが開示されていることに相当する。
【0042】
特に説明しない限り、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成することができる。特に説明しない限り、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成することができる。
【0043】
特に説明しない限り、本願の全てのステップを順に行うことができ、ランダムに行うこともでき、好ましく順に行う。例えば、方法がステップ(a)及び(b)を含むとは、方法が順に行うステップ(a)及び(b)を含むことができ、順に行うステップ(b)及び(a)を含むこともできることを示す。例えば、方法が更にステップ(c)を含むことができるとは、ステップ(c)が任意の順序で方法に加えることができ、例えば、方法がステップ(a)、(b)及び(c)を含むことができ、ステップ(a)、(c)及び(b)を含むこともでき、更にステップ(c)、(a)及び(b)などを含むことができることを示す。
【0044】
特に説明しない限り、本願に言及された「備える」及び「含む」は開放式であり、密閉式であってもよい。例えば、「備える」及び「含む」は、更に列挙されない他の成分を備えるか又は含むことができ、列挙された成分のみを備えるか又は含むこともできることを示す。
【0045】
特に説明しない限り、本願において、「又は」との用語は包括的である。例えば、「A又はB」とのフレーズは「A、B、又はA及びBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれかの条件はいずれも「A又はB」との条件を満たす。Aは真(又は存在)でありかつBは偽(又は存在しない)であり、Aは偽(又は存在しない)であり、Bは真(又は存在)であり、或いはAとBはいずれも真(又は存在)である。
【0046】
本願において、「複数」、「複数種類類」という用語は、2つ又は2種類以上を指す。
【0047】
本願において、二次電池は、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池又はマグネシウムイオン電池などを含むことができるが、本願の実施例は、これらに対し限定されない。
【0048】
二次電池は、正極シート、負極シート及びセパレータからなる電極アセンブリと、電解液とを含む。二次電池は、主に金属イオンが正極シートと負極シートとの間を移動することで作動し、正極シートは正極活性材料を含み、負極シートは負極活性材料を含む。本明細書において、金属イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオンなどであってもよく、次に金属イオンをリチウムイオンとしてその充電プロセスを説明する。
【0049】
二次電池の充電プロセスにおいて、電極動力学プロセスは、通常、(1)リチウムイオンが正極活性材料から脱離し、電解質相に移動するリチウムイオン脱離ステップと、(2):電解液中の溶媒和リチウムイオンが負極活性材料表面に拡散して伝達する電解質相における液相物質移動ステップと、(3)初回充電時に溶媒和リチウムイオンが負極活性材料表面に吸着して反応し、固体電解質界面(SEI)膜を形成し、後続の充電過程において溶媒和リチウムイオンがSEI膜表面に吸着し、脱溶媒和過程を経た後にリチウムイオンが負極活性材料表面に達する表面変換ステップと、(4)リチウムイオンが負極活性材料表面から電子を得てリチウム挿入生成物を形成する電荷交換ステップと、(5)リチウム挿入生成物が負極活性材料表面から内部に固相拡散し、充電過程を完了するリチウム挿入生成物の固相物質移動ステップとを含む。
【0050】
充電倍率の向上に伴い、充放電過程において、リチウムイオンが正極活性材料から迅速に脱離して負極活性材料に挿入されることが要求され、且つリチウムイオンが負極活性材料から迅速に脱離して正極活性材料に挿入されることが要求され、この過程において、リチウムイオンの固相物質移動及び液相物質移動は共にリチウムイオン移動速度に影響を与える制約要素であり、二次電池の急速充電性能に顕著な影響を与える。また、充放電過程において、活性材料表面と電解質との間で副反応が生じ、活性材料の構造が破壊されて寿命が著しく短くなり、二次電池のサイクル寿命が低下するおそれがある。
【0051】
そこで、発明者らは、二次電池を改良し、固相物質移動及び液相物質移動におけるリチウムイオンの移動速度を向上させることにより、二次電池の急速充電性能を向上させると共に、活性材料の表面を保護することにより、活性材料の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル安定性を向上させ、二次電池のサイクル寿命を向上させる二次電池を提案する。次に、本願の技術案を詳細に説明する。
【0052】
二次電池
【0053】
第1の態様によれば、本願は、二次電池を提供する。二次電池は、充電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池の放電後に充電により活性材料を活性化させて使用し続けることができる電池をいう。
【0054】
前記二次電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含み、正極シートは、正極活性材料を含み、負極シートは、負極活性材料を含み、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、電解液は、第1の有機溶媒と、膜形成添加剤とを含み、膜形成添加剤は、正極活性材料及び/又は負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置され、セパレータの空隙率をε%とし、電解液の総質量に対する膜形成添加剤の質量百分率含有量をb%とし、電解液の25℃における粘度値をc(mPa・s)とすると、二次電池は、4≦(b*ε)/c≦240を満たす。
【0055】
メカニズムは明らかではないが、本願が二次電池の急速充電性能及びサイクル寿命の改善を両立できる理由を以下のように推測している。
【0056】
リチウムイオンが正極シートから負極シートに移動する過程において、まず、正極シートからセパレータに移動し、その後、セパレータから負極シートに移動する必要がある。よって、セパレータの空隙率は、リチウムイオンの移動速度に対し一定の影響を与えるため、本願では、セパレータの空隙率を本願で制御される変数の1つとする。
【0057】
液相物質移動過程において、リチウムイオンが電解液中を移動し、電解液の粘度がリチウムイオンの移動速度に対し一定の影響を与え、その粘度が小さいほど、リチウムイオンの移動に有利であるため、電解液の粘度がリチウムイオンの移動速度に対し一定の影響を与え、それを本願で制御される別の変数とする。第1の有機溶媒が電解液の主成分として、電解液の粘度に対し顕著な影響を与えるため、第1の有機溶媒を選択することにより電解液の粘度を調整することができる。当然ながら、膜形成添加剤も電解液の粘度に対し一定の影響を与えるため、電解液は、第1の有機溶媒を選択した上で、膜形成添加剤の質量百分率含有量を制御することにより、電解液の最終粘度を決定することができる。電解液の粘度が適切な範囲内にあると、セパレータを良好に浸潤させることができる。二次電池の充放電過程において、電解液の迅速な還流に寄与し、リチウムイオンの迅速な輸送に寄与する。
【0058】
本願では、セパレータの空隙率、電解液の粘度値及び膜形成添加剤が上記範囲を満たすように調整し、固相物質移動及び液相物質移動におけるリチウムイオンの移動速度を総合的に調整することにより、リチウムイオンの平均移動速度を改善し、二次電池の急速充電能力を向上させることができる。また、膜形成添加剤は、電解液の粘度を調整して、液相におけるリチウムイオンの移動速度をさらに調整することができるだけでなく、活性材料の表面に保護層を形成して、活性材料の表面を不動態化し、活性材料の表面と電解液との間で副反応が発生するリスクを低減し、活性材料の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル寿命を向上させることができる。ここで、膜形成添加剤、特にリチウム塩系添加剤は、負極活性材料の表面において形成された固体電解質界面膜(Solid Electrolyte Interface:SEI膜)が、比較的小さいインピーダンスを有し、リチウムイオンの挿入と脱離により有利である。もちろん、膜形成添加剤は、エステル系添加剤等の他の種類の添加剤を用いてもよい。
【0059】
選択可能に、4≦(b*ε)/c≦180であり、例示的に、(b*ε)/cは、4、5、8、10、12、15、18、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、160、170、180、190、200、210、220又は240であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、25≦ε≦55である。
【0061】
セパレータの空隙率が上記範囲にある場合、セパレータの空隙率が小さすぎず、その液体透過性が良好であり、リチウムイオン透過能力が強く、リチウムイオンがセパレータを介して隣接する活性材料に移動することに有利であり、二次電池の急速充電能力をさらに改善することができる。セパレータの空隙率が大きすぎず、正極シートと負極シートとが直接接触して短絡を引き起こすリスクを低減し、且つセパレータが良好な力学性能を有し、二次電池の内部にデンドライトが形成された場合でも、セパレータが破壊されて短絡を引き起こしにくく、二次電池の安全性能を確保することができる。好ましくは、30≦ε≦50であり、例示的に、セパレータの空隙率ε%は、25%、28%、30%、32%、35%、38%、40%、42%、45%、46%、48%、50%、52%、53%、54%又は55%であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、0.1≦b≦8である。
【0063】
膜形成添加剤の質量百分率含有量が上記範囲にある場合、膜形成添加剤は、活性材料と膜形成反応を起こし、緻密で均一な膜層を形成することができる。これにより、活性材料に対して良好な保護を行うとともに、膜形成添加剤、例えばリチウム塩系添加剤は、小さな膜形成インピーダンスを有するSEI膜を形成することが可能であり、寿命とパワーを両立させることができる。好ましくは、0.1≦b≦6であり、例示的に、膜形成添加剤の質量百分率含有量b%は、0.1%、0.5%、0.8%、1%、1.5%、1.8%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%又は8%であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、1≦c≦6である。
【0065】
電解液の粘度値が上記範囲にある場合、電解液の粘度が大きすぎず、そのイオン導電率が相対的に高く、イオン伝送速度の改善に有利であり、二次電池の急速充電能力を向上させることができる。また、電解液の粘度が上記範囲にある場合、電解液と正負極シートとの相溶性が相対的に良く、正負極シートにおける活性材料との副反応が発生しにくいため、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。好ましくは、2≦c≦5であり、例示的に、電解液の粘度c(mPa・s)は、1mPa・s、1.5mPa・s、2mPa・s、2.5mPa・s、3mPa・s、3.5mPa・s、4mPa・s、4.5mPa・s、5mPa・s、5.5mPa・s又は6mPa・sであってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、電解液の総質量に対する第1の有機溶媒の質量百分率含有量は、aで示され、二次電池は、2≦c+2*a%≦8をさらに満たす。
【0067】
第1の有機溶媒の質量百分率含有量を調整することにより、電解液の粘度を適切な範囲内に調整することが可能であり、膜形成過程において安定な界面膜を形成させ、活性材料表面を完全に被覆することができる。例示的に、c+2*a%は、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5又は8であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、60≦a≦90であり、好ましくは、65≦a≦85である。例示的に、電解液の総質量に対する第1の有機溶媒の質量百分率含有量a%は、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記第1の有機溶媒は、線状カーボネート系溶媒、カルボン酸エステル系溶媒及びニトリル系溶媒のうちの1種類又は複数種類を含む。上記溶媒の粘度が低いため、電解液全体の粘度範囲を適切な範囲内に調整することができる。また、第1の有機溶媒が2種類以上を含む場合、電解液の粘度及びイオン導電率を相乗的に調整することができ、且つ複数種類の溶媒が膜形成反応に関与することが可能であるため、膜層構造が複数種類の成分を含み、界面膜の安定性を向上させることができる。
【0070】
線状カーボネート系溶媒の例として、前記線状カーボネート系溶媒は、エチルメチルカーボネートEMC、ジエチルカーボネートDEC、ジメチルカーボネートDMC及びメチルプロピルカーボネートMPCのうちの1種類又は複数種類を含む。上記線状カーボネート系溶媒は、相対的に低い粘度を有し、イオン導電率に有利であり、且つ高い電気化学的安定性を有し、その電気化学ウィンドウが高い。
【0071】
カルボン酸エステル系溶媒の例として、前記カルボン酸エステル系溶媒は、酢酸エチルEA、酢酸メチルMA、プロピオン酸エチルEP、ギ酸メチルMF、酪酸エチルEB、酢酸ブチルBA、プロピオン酸メチルMP、酪酸メチルMB、酪酸プロピルPB及び酪酸ブチルBBのうちの1種類又は複数種類を含む。カルボン酸エステル系溶媒は比較的低い粘度を有し、複数種類のカルボン酸エステル系溶媒を組み合わせて用いると、電解液により低い表面張力を持たせることができる。
【0072】
ニトリル系溶媒の例として、前記ニトリル系溶媒は、アセトニトリルAN、グルタロニトリルGLN及びアジポニトリルADNのうちの1種類又は複数種類を含む。上記ニトリル系溶媒は、比較的低い粘度及び比較的高い誘電率を有するため、リチウムイオンの移動速度の向上に有利であり、且つ該ニトリル系溶媒の安定性が高いため、活性材料表面と副反応しにくく、活性材料の構造安定性を保証し、二次電池のサイクル安定性を保証することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、電解液は第2の有機溶媒をさらに含んでもよく、第2の有機溶媒はエーテル系溶媒などを含んでもよい。エーテル系溶媒も比較的低い粘度を有するため、電解液全体の粘度をさらに改善することに有利である。また、エーテル系溶媒により、二次電池におけるリチウムが充放電サイクル過程において良好な形態構造を保持し、二次電池のサイクル安定性を改善し、二次電池のサイクル寿命を向上させることに有利である。
【0074】
エーテル系溶媒の例として、前記エーテル系溶媒はエーテル等を含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、膜形成添加剤は、負極膜形成添加剤と正極膜形成添加剤とを含み、負極膜形成添加剤は、前記負極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置され、前記負極膜形成添加剤の前記電解液の総質量に対する質量百分率含有量は、b1%であり、正極膜形成添加剤は、前記正極活性材料の表面に界面膜を形成するように配置され、前記正極膜形成添加剤の前記電解液の総質量に対する質量百分率含有量は、b2%であり、前記二次電池は、1≦b2/b1≦60を満たす。
【0076】
負極膜形成添加剤は、負極活性材料の表面で膜形成反応を発生させることで、負極活性材料の表面にSEI膜を形成することができ、SEI膜が負極活性材料の表面をその場で被覆するため、負極活性材料の構造を安定化させ、負極活性材料と電解液との持続的な副反応のリスクを低減させ、負極活性材料の電気化学性能を保証することができ、また、負極膜形成添加剤はリチウム塩系添加剤を含んでもよく、負極に形成されたSEI膜が小さいインピーダンスを有するため、リチウムイオンの挿入と脱離により有利である。
【0077】
正極膜形成添加剤は、正極活性材料の表面で膜形成反応を発生させることで、正極活性材料の表面に正極固体電解質界面膜(Catheode Electrolyte Interphase:CEI膜)を形成することができる。CEI膜がその場で正極活性材料の表面を被覆するため、正極活性材料の構造を安定させることができるだけでなく、電解液の分解により電解液が正極活性材料を腐食して正極活性材料中の遷移金属を溶出させるリスクを低減させ、さらに正極活性材料を保護し、正極活性材料の電気化学性能を保証することができる。
【0078】
本願では、CEI膜及びSEI膜は、界面膜と総称される。
【0079】
本願では、負極膜形成添加剤及び正極膜形成添加剤の含有量が上記式を満たすように調整すると、電解液が負極活性材料の表面にSEI膜を形成し、正極活性材料の表面にCEI膜を形成することができる。また、2種類の膜層の界面インピーダンスが相対的に低く、動力学的活性がよく、二次電池における電荷移動インピーダンスが小さいため、リチウムイオンの急速移動に有利であり、二次電池の急速充電性能を改善することができる。好ましくは、1≦b2/b1≦40であり、例示的に、b2/b1は、1、2、3、5、8、10、15、20、22、25、28、30、32、35、40、42、45、48、50、52、55、58又は60であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、0.01≦b1≦1.5である。
【0081】
負極膜形成添加剤が上記範囲にあると、負極活性材料の表面に緻密で安定なSEI膜を形成することが可能であり、負極活性材料を十分に保護し、負極活性材料の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル安定性を確保することができる。好ましくは、0.1≦b1≦1.2である。例示的に、負極膜形成添加剤の質量百分率含有量b1%は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、0.8%、1%、1.2%、1.3%又は1.5%であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、0.1≦b2≦7である。
【0083】
正極膜形成添加剤が上記範囲にあると、正極活性材料の表面に緻密で安定なCEI膜を形成することが可能であり、正極活性材料を十分に保護し、正極活性材料の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル安定性を確保することができる。好ましくは、0.5≦b2≦5である。例示的に、正極膜形成添加剤の質量百分率含有量b2%は、0.1%、0.5%、0.8%、1%、1.2%、1.3%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%又は7%であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。
【0084】
負極膜形成添加剤の例としては、負極膜形成添加剤は、ホウ素含有リチウム塩、リン含有リチウム塩及び硫黄含有リチウム塩のうちのいずれか1種類又は複数種類を含むことができる。
【0085】
ホウ素含有リチウム塩は、B原子を中心原子とするリチウム塩として、アルコキシ基、o-ジフェノール、o-ヒドロキシ基、カルボン酸等に配位してアニオン錯体を形成することができる。アニオン錯体は、主に大π共役構造であり、中心イオンの負電荷分布が比較的分散し、その電荷が非局在であるとともに、アニオン半径が大きいため、アニオンが有機溶媒においてリチウムイオンと結合力の強いイオン対を形成しにくく、その溶解性が比較的良好である。アニオン錯体において電子吸引基が多くなるほど、アニオン構造が安定し、リチウムイオンの電解液における溶解度が高くなり、電解液の導電率の改善に有利である。また、ホウ素含有リチウム塩は、負極活性材料の表面において性能に優れたSEI膜を形成することができる。SEI膜は有機溶媒不溶性を有し、有機電解液中に安定的に存在することが可能であるため、電解液中の溶媒分子が負極活性材料に挿入されることを効果的に低減し、負極活性材料の構造安定性を確保し、さらに二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0086】
リン含有リチウム塩添加剤は、相対的に大きいアニオン基を有し、高いイオン導電率を有するため、電解液の動力学的性能をさらに改善することに有利であり、且つリン含有リチウム塩添加剤は、正極活性材料の表面にCEI膜を形成することができ、その形成されたCEI膜は、高いリチウムイオン導通性を有するため、電解質の持続的な分解を顕著に抑制し、正極活性材料における遷移金属イオンの溶出を減少させ、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。また、リン含有リチウム塩添加剤は、負極活性材料の表面にSEI膜を形成することもでき、それは低い界面インピーダンスを有するため、電池のサイクル性能を顕著に改善することができる。
【0087】
硫黄含有リチウム塩添加剤は、耐酸化性に優れ、熱安定性が高く、電解質中の水に敏感でないため、副反応を起こしにくい。且つ、硫黄含有リチウム塩添加剤の導電率が相対的に高いため、リチウムイオンの移動速度の向上に有利であり、電解液の動力学性能を向上させることができる。
【0088】
ホウ素含有リチウム塩の例としては、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジシュウ酸ホウ酸リチウム(LiB(C、LiBOBと略称される)及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiC、LiDFOBと略称される)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。さらに、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウム(LiB(C、LiBOBと略称される)、及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiC、LiDFOBと略称される)の組成物を含む。
【0089】
テトラフルオロホウ酸リチウムLiBFが電解液中の有機溶媒、例えばカーボネート系溶媒又は添加剤と組み合わせて使用される場合、テトラフルオロホウ酸リチウムからなる系の粘度が相対的に低く、リチウムイオンの放出に有利であり、電解液中の導電率を向上させる。テトラフルオロホウ酸リチウムにより形成されたSEI膜は、厚さが比較的に均一であり、動力学的活性が比較的によく、二次電池における電荷移動インピーダンスが比較的に小さいため、二次電池の低温性能を顕著に改善することが可能である。SEI膜は、熱分解しにくく、高温における性能が比較的に安定であるため、二次電池の高温性能を顕著に改善することができる。
【0090】
ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのいずれか一方は、正極シートにおける正極集電体に対する不動態化作用を有するため、正極集電体との副反応による正極集電体の腐食のリスクを低減させ、正極シートの構造安定性を向上させることができる。また、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのいずれか一方を含む電解液は、酸性物質が発生しにくく、正極集電体が腐食されるリスクをより低減することもできる。ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBは、正極活性材料との相溶性がよく、リチウムイオンの移動に有利であり、負極活性材料の表面に有効なSEI膜を形成し、負極活性材料に対する保護性能を向上させることができる。
【0091】
テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジシュウ酸ホウ酸リチウム(LiBOB)及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiDFOB)を組み合わせて使用すると、三者によって形成されたSEI膜の構成成分が多く、SEI膜の構造がより安定し、且つ構造の安定性を保証した上で、SEI膜の相対的に小さいインピーダンス値を保証し、二次電池の低温性能を保証することができる。
【0092】
本願の二次電池が上記ホウ素含有リチウム塩を含む場合、負極活性材料の表面において、構造が安定であり、且つインピーダンス値が比較的小さいSEI膜を形成し、二次電池の高低温性能を改善することができる。
【0093】
リン含有リチウム塩の例としては、リン含有リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、フルオロリン酸リチウムLiPOF及びリン酸リチウムLiPOのうちの1種類類又は複数種類を含むことができる。
【0094】
上記リン含有リチウム塩が無機リン酸リチウム塩であり、負極活性材料の表面においてLiPOとLiF成分に富むSEI膜を形成することができ、当該SEI膜が低い界面インピーダンスを有するため、二次電池のサイクル性能を顕著に改善することができる。また、二次電池の初期充電過程において、正極の膜形成に関与し、安定かつ低インピーダンスのCEI膜を形成することができ、該CEI膜は、電解質の酸化分解を効果的に低減することができ、例えば、電解質における炭酸エステル溶媒と正極活性材料表面との副反応を効果的に低減することができ、これにより、電解質の構造安定性を確保し、正極活性材料の破壊を緩和し、二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0095】
硫黄含有リチウム塩の例としては、硫黄含有リチウム塩は、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、硫酸リチウムLiSO及びスルファミン酸リチウムLiSONHのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0096】
上記硫黄含有リチウム塩は、負極活性材料の表面において緻密で安定なSEI膜を形成することが可能であり、負極活性材料に対する保護性能をさらに改善することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記正極膜形成添加剤は、カーボネート系添加剤及び/又は硫酸エステル系添加剤を含む。
【0098】
前記カーボネート系添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含む。上記カーボネート系添加剤は、緻密で安定な膜層を形成することが可能であり、活性材料に対して良好な保護作用を奏することができる。また、上記カーボネート系添加剤は、強い誘電率を有し、リチウム塩をより大きく溶解することで、リチウム塩がリチウムイオンをより容易に解離させ、電解液の導電率を向上させ、第1の有機溶媒と互いに配合することにより、電解液の誘電率及び粘度をよりよく調整して、二次電池のイオン導電率を向上させ、二次電池の電気化学ウィンドウをより向上させることができる。
【0099】
前記硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、さらに、前記環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロピレンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1種類又は複数種類を含み、前記炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの1種類又は複数種類を含む。上記硫酸エステル系添加剤は、緻密で安定な膜層を形成することが可能であり、活性材料に対して良好な保護作用を奏することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、電解液は、リチウム塩をさらに含んでもよい。リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiTFSIのうちの少なくとも1種類を含む。
【0101】
リチウム塩は、リチウムイオンとアニオン基とが複合したものであると見なされ、電解液に対し重要な影響を与える。上記リチウム塩は、熱安定性を有し、高い導電率を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、電解液の総質量に対するリチウム塩の質量百分率含有量は、d%で示され、5%≦d≦25%であり、さらに好ましくは、10%≦d≦20%である。
【0103】
リチウム塩の質量百分率含有量が上記範囲にある場合、リチウムイオンの迅速な移動に有利である一方、リチウム塩は他の物質と共に活性材料の表面に界面膜を形成し、活性材料を安定化させることができる。好ましくは、10%≦d≦20%であり、例示的に、リチウム塩の質量百分率含有量d%は、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、13%、15%、16%、18%、20%、21%、22%、24%又は25%であってもよく、又は上記のいずれか2つの数値範囲内であってもよい。
【0104】
本願の電解液は、本分野の通常の方法に従って作製することができる。例えば、前記添加剤、前記溶媒、前記電解質塩等を均一に混合して電解液を得ることができる。各物質の添加順序は特に限定されず、例えば、前記添加剤、前記電解質塩等を前記非水溶媒に加えて均一に混合し、非水電解液を得ることができる。
【0105】
本願において、電解液における各成分及びその含有量は、本分野の既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
【0106】
なお、本願の電解液のテスト時に、新鮮に作製された電解液を直接取得してもよく、二次電池から電解液を取得してもよい。二次電池から電解液を取得する一つの例示的な方法は、二次電池を放電カットオフ電圧(安全のために、一般的に電池を完全放電状態にする)まで放電した後、遠心処理を行い、その後、適量の遠心処理により得られた液体を非水電解液として取り出すステップを含む。二次電池の注液口から非水電解液を直接取得してもよい。
【0107】
[正極シート]
【0108】
いくつかの実施例において、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極膜層とを含む。例えば、正極集電体は、自体厚さ方向において対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0109】
前記正極膜層は、正極活性材料を含み、前記正極活性材料は当該分野で公知の二次電池用の正極活性材料を採用することができる。例えば、前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれらの変性化合物のうちの少なくとも1種類を含んでいてもよい。リチウム遷移金属酸化物は、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びそれらの変性化合物のうちの少なくとも1種類である。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、及びこれらの変性化合物の少なくとも1種類を含むことができる。本願はこれらの材料に限定されるものではなく、他の二次電池の正極活性材料として用いられる従来の公知の材料を用いることができる。これらの正極活性材料は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
いくつかの実施例において、正極活性材料はLiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cを含み、ここで、M及びNはそれぞれ独立してCo、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選ばれるいずれか1種類であり、且つ0≦y≦1、0≦x<1、0≦z≦1、x+y+z≦1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≦1である。正極活性材料にホウ素含有リチウム塩を配合して用いると、ホウ素含有リチウム塩中のB原子が正極活性材料中のO原子と結合しやすくなるため、正極活性材料の電荷移動抵抗を低減させ、正極活性材料相におけるリチウムイオンの拡散抵抗を低減させる。従って、非水電解液に適切な含有量のテトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムが含まれる場合、低コバルト又は無コバルト正極活性材料は、顕著に改善されたリチウムイオン拡散速度を有するため、低コバルト又は無コバルト正極活性材料の相内のリチウムイオンがタイムリーに表面に補充され、低コバルト又は無コバルト正極活性材料の表面の過脱リチウムを回避し、低コバルト又は無コバルト正極活性材料の結晶構造を安定させることができる。低コバルト又は無コバルト正極活性材料の結晶構造がより安定であるため、低コバルト又は無コバルト正極活性材料の表面における過脱リチウムの発生により、正極活性材料の構造的性質、化学的性質又は電気化学的性質が不安定になるなどの問題、例えば、正極活性材料の不可逆的な歪み、格子欠陥が増加する問題の発生確率を大幅に低減することができる。
【0111】
LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cは、本分野の従来の方法に従って作製することができる。例示的な作製方法は、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素前駆体、N元素前駆体を混合した後に焼結したことを含む。焼結雰囲気は、酸素を含む雰囲気、例えば、空気雰囲気又は酸素雰囲気であってもよい。焼結雰囲気のO濃度は、例えば70%~100%である。焼結温度及び焼結時間は、実際の状況に応じて調整することができる。
【0112】
一例として、リチウム源は、酸化リチウム(LiO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)、酢酸リチウム(CHCOOLi)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)及び硝酸リチウム(LiNO)のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。一例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。一例として、コバルト源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト及び酢酸コバルトのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。一例として、マンガン源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。一例として、アルミニウム源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム及び酢酸アルミニウムのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。一例として、M元素前駆体は、M元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水酸化物及び酢酸化合物のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。一例として、N元素の前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫化リチウム、硫化アンモニウム及び単体硫黄のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、分子式LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cの層状材料の質量百分率含有量は80%~99%である。例えば、分子式がLiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cである層状材料の質量百分率含有量は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は以上の任意の数値からなる範囲であってもよい。好ましくは、分子式がLiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cである層状材料の質量百分率含有量は、85%~99%、90%~99%、95%~99%、80%~98%、85%~98%、90%~98%、95%~98%、80%~97%、85%~97%、90%~97%又は95%~97%である。
【0114】
いくつかの実施例において、正極膜層は、必要に応じて正極導電剤を含んでもよい。本願では、正極導電剤の種類は特に限定されず、一例として、正極導電剤は、超伝導性カーボン、導電性グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選ばれる1種類又は複数種類の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、正極導電剤の質量百分率含有量は5%以下である。
【0115】
いくつかの実施例において、正極膜層は、必要に応じて正極接着剤を含んでもよい。本願では、正極接着剤の種類は特に限定されず、一例として、正極接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート系樹脂から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、正極接着剤の質量百分率含有量は5%以下である。
【0116】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔の例としては、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層とを含むことができる。一例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選ばれる1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選ばれる1種類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。
【0117】
正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスして形成される。正極スラリーは、通常、正極活性材料、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤及び任意の他の成分を溶媒に分散させ、均一に撹拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
【0118】
[負極シート]
【0119】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、負極活性材料を含む負極膜層とを含む。
【0120】
一例として、負極集電体は、自体厚み方向において対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0121】
いくつかの実施形態では、負極活性材料は、当該分野で公知の電池用負極活性材料を採用することができる。一例として、負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウム及びリチウムアルミニウム合金などのうちの少なくとも1種類を含むことができる。前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合物、シリコン窒素複合物及びシリコン合金から選ばれる少なくとも1種類であってもよい。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物及びスズ合金から選ばれる少なくとも1種類であってもよい。しかし、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活性材料として使用可能な他の従来の材料を用いてもよい。これらの負極活性材料は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
いくつかの実施例において、負極膜層は、必要に応じて負極接着剤を含んでもよい。本願では、負極接着剤の種類は特に限定されず、一例として、負極接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、負極接着剤の質量百分率含有量は5%以下である。
【0123】
いくつかの実施例において、負極膜層は、必要に応じて負極導電剤を含んでもよい。本願では、負極導電剤の種類は特に限定されず、一例として、負極導電剤は、超伝導性カーボン、導電性グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選ばれる1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、負極導電剤の質量百分率含有量は5%以下である。
【0124】
いくつかの実施例において、負極膜層は、必要に応じて他の助剤を含んでもよい。一例として、他の助剤は、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、他の助剤の質量百分率含有量は2%以下である。
【0125】
いくつかの実施例において、負極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔の例としては、銅箔や銅合金箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層とを含むことができる。一例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選ばれる1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選ばれる1種類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。
【0126】
負極膜層は、通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスして形成される。負極スラリーは、通常、負極活性材料、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、他の選択可能な助剤を溶媒に分散させ、均一に撹拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。
【0127】
負極シートは、負極膜層以外の他の付加機能層を排除しない。例えば、いくつかの実施例では、負極シートは、負極膜層の表面を覆う保護層をさらに含む。
【0128】
[セパレータ]
【0129】
いくつかの実施形態では、二次電池は、セパレータをさらに含む。本願では、セパレータの種類は特に限定されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記セパレータは、基材層と、基材層の表面に設けられるコーティング層とを含み、基材層の基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド及びポリアミドのうちの1種類又は複数種類を含み、コーティング層は、セラミックコーティング層及び/又はポリマーコーティング層を含む。
【0131】
基材層のリチウムイオンに対する透過率がよく、リチウムイオンの移動に有利であり、基材層の表面にコーティング層が設けられ、コーティング層はセパレータの機械的特性をさらに向上させることができる。
【0132】
好ましくは、セラミックコーティング層におけるセラミック粒子は、SiO、Al、AlOOH、CaO、TiO、MgO、ZnO、ZrO、Mg(OH)及びBaSOのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0133】
好ましくは、ポリマーコーティング層のポリマー材料は、ポリエチレンPE、ポリプロピレンPP、ポリパラフェニレンテレフタルアミドPPTA、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、ポリアクリロニトリルPAN、ポリイミドPI及びポリアミドPAのうちの1種類又は複数種類を含む。ポリマーコーティング層は、基材層と同じ又は異なる材質を選択することができる。ポリマーコーティング層と基材層との厚さは異なってもよく、好ましくは、ポリマーコーティング層の厚さは基材層の厚さよりも小さい。
【0134】
他の実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種類であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよいが、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよいが、特に限定されない。
【0135】
いくつかの実施形態では、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を有していてもよい。該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いられる。
【0137】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装はソフトパック、例えばバグ式ソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックでもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0138】
本願では、二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例として角型構造の二次電池5である。
【0139】
いくつかの実施例では、図1及び図2に示すように、外装は、ハウジング51及びカバープレート53を含んでもよい。ハウジング51は、底板と、底板に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とが囲んで収容キャビティを形成する。ハウジング51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、収容キャビティを閉塞するように開口を覆設する。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容キャビティにパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に含浸されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0140】
本願の二次電池の作製方法は公知である。いくつかの実施例では、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。一例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを形成し、電極アセンブリを外装に置き、乾燥後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得ることができる。
【0141】
本願のいくつかの実施例では、本願に係る二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0142】
図3は、一例としての電池モジュール4の模式図である。図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並んで設けられていてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締結具により固定してもよい。
【0143】
選択可能に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するケースをさらに備えてもよい。
【0144】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0145】
図4及び図5は、一例としての電池パック1の模式図である。図4及び図5に示すように、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックスに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3を覆い、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0146】
電力消費装置
【0147】
第2の態様では、本願は、本願の二次電池、電池モジュール、及び電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。二次電池、電池モジュール及び電池パックは、電力消費装置の電源として用いられてもよいし、電力消費装置のエネルギー貯蔵手段として用いられてもよい。電力消費装置は、移動機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0148】
電力消費装置は、その使用ニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0149】
図6は、一例としての電力消費装置の模式図である。この電力消費装置6は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該電力消費装置の高出力及び高エネルギー密度に対する要求を満たすために、電池パック1又は電池モジュールを採用することができる。
【0150】
他の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。この電力消費装置は、一般に薄型化が求められており、二次電池を電源として用いることができる。
【0151】
実施例
【0152】
以下の実施例は、本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に解釈的に説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に記載された全ての部、百分率、及び比がいずれも質量に基づいて算出されたものであり、かつ実施例で使用された全ての試薬を購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、かつさらなる処理を必要とせず直接使用可能であり、また、実施例で使用された装置をいずれも購入して取得することができる。
【0153】
実施例1
【0154】
1.正極シートの作製
【0155】
正極集電体として、厚さ12μmのアルミニウム箔を用いた。
【0156】
正極活性材料LiNi0.65Co0.07Mn0.28、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.4:1.1で適量の溶媒であるNMP中で十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、正極シートを得た。
【0157】
2、負極シートの作製
【0158】
負極集電体として厚さ8μmの銅箔を用いた。
【0159】
負極活性材料である黒鉛、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(SuperP)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の溶媒で脱イオン水に十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、負極シートを得た。
【0160】
3、セパレータ
【0161】
セパレータとして多孔質ポリエチレン(PE)フィルムを用いた。
【0162】
4、電解液の作製
【0163】
含水量が10ppm未満の環境下で、非水有機溶媒であるエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比1:1:1で混合して電解液溶媒を得た後、混合後の溶媒に添加剤等を溶解し、リチウム塩濃度が1mol/Lの電解液を調製した。電解液の具体的な含有物質については、下記表を参照する。
【0164】
5、二次電池の作製
【0165】
上記正極シート、セパレータ、負極シートをこの順に積層し、セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置して隔離作用を果たし、次に巻回して電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装ケースに置き、乾燥後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、リチウムイオン電池を得る。
【0166】
【0167】
実施例2
【0168】
実施例2-1乃至実施例2-8
【0169】
二次電池は、「セパレータ」の空隙率ε%を調整し、且つ4≦(b*ε)/c≦240であること以外、実施例1と類似の方法で類似して調製した。具体的なパラメータは表1~表3を参照する。
【0170】
比較例
【0171】
比較例1及び比較例2
【0172】
二次電池は、「セパレータ」の空隙率ε%を調整したこと以外、実施例1と類似の方法で類似して調製した。具体的なパラメータは表1~表3を参照する。
【0173】
実施例3
【0174】
実施例3-1乃至実施例3-7
【0175】
二次電池は、「負極膜形成添加剤」の質量百分率含有量b1%を調整したこと以外、実施例1と類似の方法で類似して調製した。具体的なパラメータは表1~表3に示す。
【0176】
実施例4
【0177】
実施例4-1乃至実施例4-7
【0178】
二次電池は、「正極膜形成添加剤」の質量百分率含有量b2%を調整したこと以外、実施例1と類似の方法で類似して調製した。具体的なパラメータは表1~表3を参照する。
【0179】
実施例5
【0180】
実施例5-1乃至実施例5-3
【0181】
二次電池は、「第1の有機溶媒」の質量百分率含有量a%を調整したこと以外、実施例1と類似の方法で類似して調製した。具体的なパラメータは表1~表3を参照する。
【0182】
【表1】
【0183】
表1において、b1=b11+b12+b13である。
【0184】
【表2】
【0185】
表2において、b2=b21+b22である。
【0186】
【表3】
【0187】
表3において、b=b1+b2である。
【0188】
テスト部
【0189】
1.セパレータの空隙率ε%の測定方法
【0190】
GB/T24586に従って、ガス置換法を用いて測定した。空隙率ε=(V1-V2)/V1*100%である。ただし、V1はサンプルの見かけ体積、V2はサンプルの真の体積である。
【0191】
2.電解液中の各成分の含有量の測定方法
【0192】
新鮮に作製された電解液を取り、二次電池から電解液を取得した後、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等のような方法の1種類又は複数種類を採用して電解液の成分の測定を行ってもよい。
【0193】
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS):GB/T-9722-2006/GB/T6041-2002に従って、ガスクロマトグラフィー及び質量分析を組み合わせて採用し、ガスクロマトグラフィーによりサンプル中の各成分を分離した後、各成分を質量分析においてフラグメントイオンに細分化し、質量電荷比(m/z)で分離して特定の質量スペクトル図を形成し、電解液中の各有機成分の定性分析を取得し、その後、電解液中の各有機成分をクロマトグラフィーカラムにおいて分離して各成分の検出信号スペクトルを生成し、保持時間により成分定性を行い、標準に合わせ、ピーク面積を校正して定量を実現し、電解液中の有機成分の定量テスト分析を取得する。
【0194】
イオンクロマトグラフィー(IC):JY/T-020に従い、イオンクロマトグラフィーにより電解液中のリチウム塩及びリチウム塩添加剤のアニオンを検出して定量する。
【0195】
核磁気共鳴分光法(NMR):JY/T0578-2020に従い、電解液中の成分の定性分析及び定量分析を取得する。
【0196】
3.電解液の25℃における粘度c(mPa・s)のテスト方法
【0197】
一定温度において、回転子がサンプル中で一定回転数で回転し続けるときに受けるせん断力によりバネがトルクを発生させ、トルクが粘度に比例することで粘度値が得られる。具体的には、ブルックフィールド(DV-2TLV)粘度計を用いて完成品の電解液の粘度をテストする。環境温度を25℃とし、環境湿度を80%未満とするように制御し、30mLの電解液を取り、その温度を25℃の水浴鍋に少なくとも30min恒温に保ち、回転子をサンプルカップに入れ、サンプルをカップ口から約0.3cmのところまで入れ、接続された粘度計を起動し、70RPMの回転速度を選択してテストし、10個のデータ点を収集し、複数点の平均値を求める。
【0198】
4、二次電池のサイクル性能テスト
【0199】
45℃で二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧充電を継続し、この時、二次電池が満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、1回目の充電容量とする。二次電池を5min静置した後、1Cの定電流で2.8Vまで放電し、これが1サイクルの充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、1回目の放電容量とする。二次電池を上記方法に従ってサイクル充放電のテストを行い、毎回サイクルした後の放電容量を記録した。二次電池の25℃での600回サイクルした容量維持率(%)=600回サイクル後の放電容量/1回目の放電容量×100%。
【0200】
5.二次電池の急速充電性能
【0201】
25℃で、上記作製された二次電池を0.33Cの定電流で充電カットオフ電圧4.4Vまで充電し、その後、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、5min静置し、さらに0.33Cの定電流で放電カットオフ電圧2.8Vまで放電し、その実際の容量をC0として記録した。
【0202】
その後、二次電池を順に0.5C0、1C0、1.5C0、2C0、2.5C0、3C0、3.5C0、4C0、4.5C0の定電流で全電池充電カットオフ電圧4.4V又は0Vの負極カットオフ電位(先に達したものを基準とする)まで充電し、毎回充電完了後に1C0で全電池放電カットオフ電圧2.8Vまで放電する必要があり、異なる充電倍率で10%、20%、30%…80%のSOC(State of Charge、充電状態)まで充電した時に対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態での倍率-負極電位曲線を描き、線形フィッティングした後に異なるSOC状態での負極電位が0Vである時に対応する充電倍率を得、該充電倍率が該SOC状態での充電ウィンドウであり、それぞれC10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記し、式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%に基づいて該二次電池が10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間Tを算出する。充電時間Tが短いほど、二次電池の急速充電性能が優れていることを示す。
【0203】
テスト結果
【0204】
二次電池のサイクル性能及び急速充電性能の改善における本願の作用を表4に示す。
【0205】
【表4】
【0206】
表4から分かるように、比較例1のセパレータの空隙率が小さすぎると、セパレータを通過する過程におけるリチウムイオンの移動速度が小さくなり、二次電池の急速充電能力が悪くなる可能性がある。二次電池のセパレータの空隙率と膜形成添加剤の質量百分率含有量を相乗的に調整することにより、リチウムイオンの固相伝送速度を調節することができる。電解液の粘度を調整することにより、リチウムイオンの液相伝送速度を調節することができる。比較例2に比べて、実施例1~実施例2-8では、4≦(b*ε)/c≦240、特に4≦(b*ε)/c≦180となるように、セパレータの空隙率、膜形成添加剤の質量百分率含有量及び電解液の粘度を相乗的に調節することにより、リチウムイオンの固相及び液相における総合伝送速度を顕著に改善し、二次電池の急速充電能力を改善することができる。また、電解液中の添加剤により負極活性材料の表面に膜を形成することで、負極活性材料に対する保護性能を向上させ、二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0207】
実施例3-1乃至実施例3-7では、負極膜形成添加剤の質量百分率含有量b1%を調整することにより、1≦b2/b1≦60の場合、特に1≦b2/b1≦40の場合、負極活性材料に対する保護能力を調節して、二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0208】
実施例4-1乃至実施例4-7では、正極膜形成添加剤の質量百分率含有量b1%を調整することにより、1≦b2/b1≦60の場合、特に1≦b2/b1≦40の場合、正極活性材料に対する保護能力を調節して、二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0209】
実施例5-1及び実施例5-3では、第1の有機溶媒の質量百分率含有量a%を調整することにより、2≦c+2*a%≦8である場合、リチウムイオンの全体移動速度を調整して、二次電池の動力学性能を改善することができる。
【0210】
好ましい実施例を参照して本願を説明したが、本願の範囲を逸脱しない場合、種々の改良が可能であり、又はそのうちの部材を等価物で置き換えてもよい。特に、構造的な矛盾がない限り、各実施例に言及された各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。本願は、以上に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての技術案を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】