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特表2025-502239負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20250117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250117BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 D
H01M4/587
H01M4/133
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541915
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2022105821
(87)【国際公開番号】W WO2024011539
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】呉啓凡
(72)【発明者】
【氏名】董暁斌
(72)【発明者】
【氏名】張明
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA14
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB09
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA23
5H050EA24
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
本願は、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。当該負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面に位置する負極膜層とを含み、負極膜層は、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を含み、第1の負極活性材料粒子は、複数の吸着孔を含み、第1の負極活性材料粒子のタップ密度は、0.4g/cm~1.4g/cmであり、ここで、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差dは、3μm≦d≦19μmを満たし、負極膜層の圧密度PDは、0.8g/cm≦PD≦1.4g/cmを満たす。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一方の表面に位置する負極膜層であって、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を含み、前記第1の負極活性材料粒子は、複数の吸着孔を含み、前記第1の負極活性材料粒子のタップ密度は、0.4g/cm~1.4g/cmであり、選択可能に0.6g/cm~1.0g/cmである負極膜層と、を備え、
前記第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差dは、3μm≦d≦19μmを満たし、
前記負極膜層の圧密度PDは、0.8g/cm≦PD≦1.4g/cm、選択可能に、1.0g/cm≦PD≦1.2g/cmを満たす、負極シート。
【請求項2】
前記第1の負極活性材料粒子のメディアン径D50は、4μm~50μmであり、選択可能に4μm~25μmであり、
前記第2の負極活性材料粒子のメディアン径D50は、1μm~40μmであり、選択可能に1μm~20μmである、請求項1に記載の負極シート。
【請求項3】
前記第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、前記第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は5%~95%であり、選択可能に70%~95%である、請求項1又は2に記載の負極シート。
【請求項4】
前記負極シートの伸び率Eは、0.1%≦E≦0.2%、選択可能に、0.1%≦E≦0.15%を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載の負極シート。
【請求項5】
前記負極膜層の片面塗布重量CWは、2mg/cm~13mg/cmであり、選択可能に5mg/cm~12mg/cmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の負極シート。
【請求項6】
前記負極膜層は、30%≦P≦60%、選択可能に45%≦P≦55%を満たし、
ここで、P=[1-CW/(d*PA)]*100%であり、d=d/(1+E)であり、CWは前記負極膜層の片面塗布重量を示し、PAは片面の前記負極膜層の真密度を示し、Eは前記負極シートの伸び率を示し、dは片面の前記負極膜層の厚さを示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の負極シート。
【請求項7】
前記第1の負極活性材料粒子は、以下の少なくとも1つを満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載の負極シート。
(1)前記吸着孔の孔径は、0.1nm~16nmであり、選択可能に1nm~7nmである。
(2)前記第1の負極活性材料粒子の比表面積は、1m/g~40m/gであり、選択可能に、1.5m/g-10m/gである。
(3)前記第1の負極活性材料粒子の(002)面の面間隔は、0.34nm~0.45nmであり、選択可能に0.35nm~0.4nmである。
(4)前記第1の負極活性材料粒子の真密度は、1.3g/cm~2.0g/cmであり、選択可能に1.4g/cm~1.8g/cmである。
【請求項8】
前記第1の負極活性材料粒子は、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズから選択される1種類又は複数種類であり、前記第2の負極活性材料粒子は、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズから選択される1種類又は複数種類である、請求項1から7のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項9】
前記第1の負極活性材料粒子は、不規則的な形状及び/又は微小球状を有し、前記第2の負極活性材料粒子は、不規則的な形状及び/又は微小球状を有し、
選択可能に、前記第1の負極活性材料粒子及び前記第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、不規則的な形状を有する前記第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は5%~95%であり、選択可能に、70%~95%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の負極シート。
【請求項10】
前記第1の負極活性材料粒子は、不規則的な形状のハードカーボン粒子から選択され、前記第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、前記第1の負極活性材料粒子及び前記第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、前記第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、70%~95%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の負極シート。
【請求項11】
前記第1の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、前記第1の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、10μm~50μmであり、
前記第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、前記第2の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、5μm~40μmであり、
ここで、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、前記第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、5%~95%であり、選択可能に70%~95%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の負極シート、
【請求項12】
前記負極膜層の圧密度PDは、1.0g/cm≦PD≦1.2g/cmを満たし、
前記負極膜層は、30%≦P≦60%、選択可能に45%≦P≦55%を満たし、
ここで、P=[1-CW/(d*PA)]*100%であり、d=d/(1+E)であり、CWは前記負極膜層の片面塗布重量を示し、PAは片面の前記負極膜層の真密度を示し、Eは前記負極シートの伸び率を示し、dは片面の前記負極膜層の厚さを示す、請求項10又は11に記載の負極シート。
【請求項13】
前記負極膜層は、スリップ増量成分を更に含み、前記スリップ増量成分の質量に対する、前記第1の負極活性材料粒子と前記第2の負極活性材料粒子との質量の和の比は、100:2~100:1であり、前記スリップ増量成分は、人造黒鉛、天然黒鉛、グラフェンのうちの1種類又は複数種類を含む、請求項10又は11に記載の負極シート。
【請求項14】
前記負極膜層は、フレキシブル接着剤を更に含み、前記フレキシブル接着剤は、スチレンアクリルエマルジョン、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ化ビニリデンとアクリル酸エステル類の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムのうちの1種類又は複数種類を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の負極シート。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の負極シートを含む二次電池。
【請求項16】
請求項15に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項18】
請求項15に記載の二次電池、請求項16に記載の電池モジュール又は請求項17に記載の電池パックから選択される少なくとも1種類を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池の技術分野に関し、特に、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーと環境問題の日々の顕在化に伴い、新エネルギー産業がますます注目されている。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル性能が良いなどの特徴を有するため、近年重要な新エネルギー貯蔵装置として広く用いられている。しかしながら、リチウムイオン電池に関連する活物質資源が希少であり、電池のコストが高止まりし、且つ、関連する資源の枯渇などの深刻な問題に直面するため、他の低コスト金属イオンの二次電池系の開発が求められている。
【0003】
ナトリウムイオン電池は、コストが低く、資源が豊富で、リチウムイオン電池の製造プロセスに類似しているなどの利点を有するため、近年の人気の研究方向となっている。
【0004】
しかしながら、現在のナトリウムイオン電池の正負極材料の低い1グラムあたりの容量と電圧プラットフォームの制限により、ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と比べてエネルギー密度が常に大きな差があり、実際に商業化の応用を実現することができない。また、ナトリウムイオン電池の初回クーロン効率及び倍率性能も向上する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度及び倍率性能を効果的に向上させることができる負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することを目的とする。
【0006】
本願の第1の態様は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面に位置する負極膜層であって、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を含み、第1の負極活性材料粒子は、複数の吸着孔を含み、第1の負極活性材料粒子のタップ密度は、0.4g/cm~1.4g/cmであり、選択可能に0.6g/cm~1.0g/cmである負極膜層と、を備え、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差dは、3μm≦d≦19μmを満たし、負極膜層の圧密度PDは、0.8g/cm≦PD≦1.4g/cm、選択可能に、1.0g/cm≦PD≦1.2g/cmを満たす、負極シートを提供する。
【0007】
これにより、本願は、上記条件を満たす第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とを調合することにより、負極膜層に高い圧密度を備えさせつつ、負極膜層内部に高い気孔率を備えさせることができる。具体的には、第1の負極活性材料粒子は複数の吸着孔を含み、且つタップ密度が上記の適切な範囲にあり、冷間プレスされても、第1の負極活性材料粒子の内部に十分な数量の吸着孔を有することができる。これにより、Naは、充電中に第1の負極活性材料粒子に円滑に吸着され、かつ、放電中に円滑に脱離される。更に、第1の負極活性材料粒子のメディアン径と第2の負極活性材料粒子のメジアン径との差が上記の適切な範囲内である場合、第2の負極活性材料粒子が複数の第1の負極活性材料粒子間の空隙に充填されることに有利であり、これにより、負極活性材料粒子は高い嵩密度を備え、更に、冷間プレスされた後の負極膜層は適切な圧密度を備える。これにより、負極膜層における負極活性材料粒子が緊密に接触されることにより、負極シートにおける電子及びナトリウムイオンの伝送性能を向上させ、更にナトリウムイオン電池の倍率性能を向上させることができる。
【0008】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子のメディアン径D50は、4μm~50μmであり、選択可能に4μm~25μmであり、前記第2の負極活性材料粒子のメディアン径D50は、1μm~40μmであり、選択可能に1μm~20μmである。
【0009】
50、D50が適切な範囲内にあると、一方では、D50とD50との差が本願で規定される範囲内であることを制御するのに有利であり、これにより、第2の負極活性材料粒子が複数の第1の負極活性材料粒子の間の空隙に充填されることに有利であり、更に、負極膜層の圧密度を向上させるのに有利であり、他方では、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の粒子内部に良好な電子及びナトリウムイオンの伝送性能を備えさせることができるだけでなく、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子が低い粒子界面抵抗を備えることができる。これにより、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池が高いエネルギー密度と低いインピーダンスを備えることを許容し、ナトリウムイオン電池が高容量、良好な倍率性能及びサイクル性能を備えることができる。
【0010】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は5%~95%であり、選択可能に70%~95%である。
【0011】
第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子との質量百分率含有量が上記の適切な範囲内にある場合、第2の負極活性材料粒子が複数の第1の負極活性材料粒子の空隙に充填されることを確保しつつ、負極活性材料粒子が適切な比表面積を備えることができる。これにより、負極膜層の圧密度を向上させながら、粒子間の接触面積を向上させ、粒子間の伝送経路を改善し、粒子間の切断ブリッジの発生を回避し、ナトリウムイオン電池が高いエネルギー密度とサイクル性能を備えることができる。
【0012】
いずれの実施形態においても、負極シートの伸び率Eは、0.1%≦E≦0.2%、選択可能に、0.1%≦E≦0.15%を満たす。
【0013】
本願の第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が適切な範囲内にある場合、負極活性材料粒子が高い嵩密度を備えることができる。したがって、嵩密度が低い負極活性材料粒子と比べて、同じ冷間プレスのパラメータである場合、本願の負極シートはより低い伸び率を備えることができる。
【0014】
いずれの実施形態においても、負極膜層の片面塗布重量CWは、2mg/cm~13mg/cmであり、選択可能に5mg/cm~12mg/cmである。
【0015】
負極膜層の片面塗布重量が上記の適切な範囲内にあると、負極膜層の厚さを適切な範囲内に制御するのに有利である。これにより、電子及びナトリウムイオンが負極シートにおいて適切な移動経路を備えることができるだけでなく、負極シートが適切な容量を備えることができる。したがって、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池に良好な倍率性能と高いエネルギー密度を具備させることができる。
【0016】
いずれの実施形態においても、負極膜層は、30%≦P≦60%、選択可能に45%≦P≦55%を満たし、ここで、P=[1-CW/(d*PA)]*100%であり、d=d/(1+E)であり、CWは負極膜層の片面塗布重量を示し、PAは片面の負極膜層の真密度を示し、Eは負極シートの伸び率を示し、dは片面の負極膜層の厚さを示す。
【0017】
負極膜層のパラメータPが上記条件を満たす場合、負極膜層の圧密度が大きくなることは、主に負極活性材料粒子の嵩密度が大きくなることによって実現され、負極膜層の気孔率に対し顕著な影響を与えないと考えられる。これにより、負極膜層の圧密度を向上させるだけでなく、負極膜層の電解液濡れ性を維持することができ、二次電池が高いエネルギー密度と良好な倍率性能を備えることを保証することができる。
【0018】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子において、吸着孔の孔径は0.1nm~16nmであり、選択可能に1nm~7nmである。吸着孔の孔径分布が上記適切な範囲内にある場合、Naの吸着及び脱離に有利であり、更に二次電池の倍率性能を向上させるのに有利である。
【0019】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子の比表面積は、1m/g~40m/gであり、選択可能に、1.5m/g~10m/gである。第1の負極活性材料粒子の比表面積が適切な範囲内にある場合、負極シートが良好なナトリウムイオンの伝送性能を備えるだけでなく、固体電解質界面(solid electrolyte interface、SEI)膜による活性イオンの損失を低減することができる。これにより、ナトリウムイオン電池の初回クーロン効率を保証することができる。
【0020】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子の(002)面の面間隔は0.34nm~0.45nmであり、選択可能に0.35nm~0.4nmである。第1の負極活性材料粒子の面間隔が適切な範囲内にあることにより、Naを円滑に挿入及び脱離させることができ、ナトリウムイオン電池の倍率性能を向上させることができる。
【0021】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子の真密度は1.3g/cm~2.0g/cmであり、選択可能に1.4g/cm~1.8g/cmである。第1の負極活性材料粒子の真密度が上記範囲内にあり、且つタップ密度が本願で限定される範囲内にある場合、第1の負極活性材料粒子に十分な数量の吸着孔が含まれていると考えられる。これにより、Naが円滑に吸着及び脱離でき、更にナトリウムイオン電池が良好な倍率性能を備えることができる。
【0022】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子は、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズから選択される1種類又は複数種類であり、前記第2の負極活性材料粒子は、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズから選択される1種類又は複数種類である。上記の種類の材料から選択される粒子生産プロセスは成熟しており、加工することで、本願の条件を満たす第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を容易に得ることができる。
【0023】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子は、不規則的な形状及び/又は微小球状を有し、第2の負極活性材料粒子は、不規則的な形状及び/又は微小球状を有する。
【0024】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、不規則的な形状を有する前記第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は5%~95%であり、選択可能に、70%~95%である。
【0025】
第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が本願の範囲内にある場合、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の形態にも関わらず、負極膜層は高い圧密度を備えることができる。これにより、負極シートのプロセスの柔軟性を向上させ、ナトリウムイオン電池に高いエネルギー密度を備えさせることができる。
【0026】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子は、不規則的な形状のハードカーボン粒子から選択され、第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、70%~95%である。
【0027】
第2の負極活性材料粒子が微小球状のハードカーボン粒子である場合、複数の第1の負極活性材料粒子の間の空隙に充填することができるだけでなく、負極膜層の圧密度、負極活性材料粒子に対する接着剤の付着力及び負極膜層の導電性能を向上させることができ、更に一定の滑り作用を発揮し、負極膜層の圧密度を更に向上させることができる。第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子との割合が適切な範囲内にあると、負極活性材料粒子が適切な比表面積を備え、それによって、負極活性材料粒子表面が適量の電気化学反応の活性点を有し、ナトリウムイオン電池のクーロン効率を保証することができる。
【0028】
いずれの実施形態においても、第1の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、第1の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、10μm~50μmであり、第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、第2の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、5μm~40μmであり、ここで、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、5%~95%であり、選択可能に70%~95%である。
【0029】
微小球状のハードカーボン粒子自体が高い嵩密度を備えた上で、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子のメディアン径が上記範囲を満たすと、負極活性材料粒子の嵩密度をより向上させることができる。更に、微小球状の第2の負極活性材料粒子は、穴埋めの作用と滑り作用とを同時に発揮することもでき、これにより、負極膜層の圧密度を著しく向上させることができる。したがって、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度、倍率性能及びサイクル安定性を顕著に向上させることができる。
【0030】
いずれの実施形態においても、負極膜層の圧密度PDは、1.0g/cm≦PD≦1.2g/cmを満たし、負極膜層は、30%≦P≦60%、選択可能に45%≦P≦55%を満たし、ここで、P=[1-CW/(d*PA)]*100%であり、d=d/(1+E)であり、CWは負極膜層の片面塗布重量を示し、PAは片面の負極膜層の真密度を示し、Eは負極シートの伸び率を示し、dは片面の負極膜層の厚さを示す。
【0031】
負極膜層のパラメータPが上記条件を満たす場合、負極膜層の圧密度が大きくなることは、主に負極活性材料粒子の嵩密度が大きくなることによって実現されると考えられる。したがって、ハードカーボン粒子は、歪みや滑りを発生することなく、負極膜層に高い圧密度を備えさせることができる。これにより、ナトリウムイオン電池にハードカーボン材料を適用することが可能となり、ナトリウムイオン電池に広い応用の将来性を持たせることができる。
【0032】
いずれの実施形態においても、負極膜層は、スリップ増量成分を更に含み、前記スリップ増量成分の質量に対する、前記第1の負極活性材料粒子と前記第2の負極活性材料粒子との質量の和の比は、100:2~100:1であり、前記スリップ増量成分は、人造黒鉛、天然黒鉛、グラフェンのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0033】
負極膜層が少量のスリップ増量成分を備えると、冷間プレスの過程において、スリップ増量成分が滑り作用を発揮することができ、それにより、負極膜層の圧密度を更に向上させることができる。また、上記スリップ増量成分は、良好な導電性能を更に有し、負極シートに応用される場合、更に負極シートの電子伝送性能を向上させることができる。
【0034】
いずれの実施形態においても、負極膜層は、フレキシブル接着剤を更に含み、フレキシブル接着剤は、スチレンアクリルエマルジョン、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ化ビニリデンとアクリル酸エステル類の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0035】
負極膜層は、上記フレキシブル接着剤を含み、良好な可撓性を有することができる。これにより、負極膜層が、冷間プレスの過程において、より小さな応力を有することができ、負極シートがより低い伸び率を備えることができる。これにより、負極膜層の圧密度をより向上させ、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0036】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様の負極シートを含む二次電池を提供する。
【0037】
本願の二次電池は、本願の第1の態様の負極シートを含むことにより、高いエネルギー密度と良好な倍率性能を備えることができる。
【0038】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0039】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0040】
本願の第5の態様は、本願の第2の態様の二次電池、本願の第3の態様の電池モジュール、又は本願の第4の態様の電池パックから選択される少なくとも1つを含む、電力消費装置を提供する。
【0041】
本願の電池モジュール、電池パック、電力消費装置は、本願の二次電池を備えるため、少なくとも上記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本願の一実施形態に係る負極シートの伸び率テストの模式図である。
図2】本願の一実施形態に係る二次電池の模式図である。
図3図2に示す本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
図4】本願の一実施形態に係る電池モジュールの模式図である。
図5】本願の一実施形態に係る電池パックの模式図である。
図6図5に示す本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
図7】本願の一実施形態に係る二次電池を電源として用いる電力消費装置の模式図である。
図8】本願の実施例1に係る負極シートの走査型電子顕微鏡写真(SEM図)である。 符号説明 1電池パック、2上筐体、3下筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53カバープレート
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本願の負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不要な詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避けて、当業者が容易に理解しやすいためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0044】
本願において開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、1つの下限及び1つの上限を選定することによって限定され、選定された下限及び上限は、特別な範囲の境界を限定している。このように限定される範囲は、端値を含む又は端値を含まない範囲であってもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲を列挙すれば、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解できる。また、最小範囲値1及び2と、最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、以下の範囲は、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の全てが予想されてもよい。本願において、その他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbまでの間の任意の実数の組み合わせの略語であり、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書において「0~5」の間の全ての実数を列挙していることを示し、「0~5」は、これらの数値の組合せの略語である。また、あるパラメータが2以上の整数であると表記すると、当該パラメータが、例えば、整数である2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることが開示されていることに相当する。
【0045】
特に説明がない場合、本願の全ての実施形態及び選択可能的な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成してもよい。
【0046】
特に説明がない場合、本願のすべての技術的特徴及び選択可能的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成してもよい。
【0047】
特に説明しない場合、本願の全てのステップを順に行うことができ、ランダムに行うこともでき、好ましくは順に行う。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むとは、前記方法が順に行うステップ(a)及び(b)を含むことができ、順に行うステップ(b)及び(a)を含むこともできることを示す。例えば、前記方法が更にステップ(c)を含むことができるとは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に加えることができることを示す。例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含むことができ、ステップ(a)、(c)及び(b)を含むこともでき、更にステップ(c)、(a)及び(b)などを含むことができる。
【0048】
特に説明しない場合、本願に言及された「有する」、「備える」及び「含む」は開放式であり、閉鎖式であってもよい。例えば、前記「有する」、「備える」及び「含む」は、列挙されない他の成分を更に有する、備えるか又は含むことができ、列挙された成分のみを備えるか又は含むことができることを示す。
【0049】
特に説明しない場合、本願において、「又は」との用語は包括的である。例えば、「A又はB」とのフレーズは「A、B、又はA及びBの両方」を表す。より具体的には、Aは真(又は存在)でありかつBは偽(又は存在しない)である条件、Aは偽(又は存在しない)でありかつBは真(又は存在)である条件、或いはAとBはいずれも真(又は存在)である条件のいずれかの条件はいずれも「A又はB」との条件を満たす。
【0050】
ナトリウムイオン電池のエネルギー密度及び倍率性能を向上させるために、ナトリウムイオン電池の負極活性材料を選択することが重要である。
【0051】
発明者らは、鋭意検討した結果、リチウムイオン電池のリチウム挿入反応と異なり、充電過程において、ナトリウムイオン電池の負極は、Naの挿入が発生するだけでなく、負極活性材料のNaへの吸着も発生することを見出した。複数の吸着孔を有する負極活性材料粒子を選択することにより、長期サイクルの過程において、Naが負極に対し円滑に挿入及び脱離し、負極の容量の発揮を保証することができることを見出した。しかし、複数の吸着孔を有する負極活性材料粒子が負極膜層に調製された後、負極膜層の圧密度が低くなるので、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度に影響を与えるだけでなく、負極シートにおける電子及びナトリウムイオンの伝送経路が長くなることを招き、それによって、負極シートにおける電子及びナトリウムイオンの伝送性能を低下させ、更にナトリウムイオン電池の倍率性能を悪化させることができる。
【0052】
これに基づいて、発明者らは、鋭意研究及び大量の実験を行って、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提案する。
【0053】
負極シート
【0054】
本願の第1の態様は、負極集電体及び負極膜層を含む負極シートを提供する。この負極膜層は、負極集電体の少なくとも一方の表面に位置し、負極膜層は、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を含み、第1の負極活性材料粒子は、複数の吸着孔を含み、第1の負極活性材料粒子のタップ密度は、0.4g/cm~1.4g/cmであり、選択可能に、0.6g/cm~1.0g/cmである。ここで、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子のメディアン径の差dは、3μm≦d≦19μm、3μm≦d≦15μm、3μm≦d≦10μm、3μm≦d≦5μm、5μm≦d≦19μm、5μm≦d≦15μm、5μm≦d≦10μm、10μm≦d≦19μm、10μm≦d≦15μm、又は15μm≦d≦19μmという関係を満たす。負極膜層の圧密度PDは、0.8g/cm≦PD≦1.4g/cm、0.8g/cm≦PD≦1.2g/cm、0.8g/cm≦PD≦1.0g/cm、1.0g/cm≦PD≦1.4g/cm、又は1.0g/cm≦PD≦1.2g/cmを満たす。
【0055】
メカニズムは明らかではないが、本願の発明者は、意外にも、本願の負極膜層に上記条件を満たす第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を含み、2種類の負極活性材料粒子を調合させることにより、負極膜層が、高い圧密度を備えると同時に、負極膜層の内部に高い気孔率を有することを発見した。これにより、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池に高いエネルギー密度と良好な倍率性能を備えさせることができる。
【0056】
具体的には、いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、第1の負極活性材料粒子は複数の吸着孔を備え、且つタップ密度が上記の適切な範囲内にあり、冷間プレスされても、第1の負極活性材料粒子の内部に十分な数量の吸着孔を有することができる。これにより、Naは、充電中に第1の負極活性材料粒子に円滑に吸着され、かつ、放電中に円滑に脱離される。更に、第1の負極活性材料粒子のメディアン径と第2の負極活性材料粒子のメジアン径との差が上記の適切な範囲内である場合、第2の負極活性材料粒子が複数の第1の負極活性材料粒子間の空隙に充填されることに有利であり、これにより、負極活性材料粒子は高い嵩密度を備え、更に、冷間プレスされた後の負極膜層は適切な圧密度を備える。これにより、負極膜層における負極活性材料粒子が緊密に接触されることにより、負極シートにおける電子及びナトリウムイオンの伝送性能を向上させ、更にナトリウムイオン電池の倍率性能を向上させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、4μm~50μmであってもよく、選択可能に4μm~25μmであり、第2の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、1μm~40μmであってもよく、選択可能に1μm~20μmである。例えば、D50は、4μm、8μm、10μm、15μm、20μm、25μm、35μm、45μm、50μm又は上記の任意の数値からなる範囲内であってもよく、D50は、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm又は上記の任意の数値からなる範囲内であってもよい。
【0058】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、D50、D50が上記適切な範囲にあることにより、負極膜層の圧密度の向上に有利であるだけでなく、粒子間の接触の向上及びナトリウムイオン電池のインピーダンスの低下に有利である。一方では、D50、D50が上記の適切な範囲内にあると、D50とD50との差が本願で規定される範囲内であることを制御するのに有利であり、これにより、第2の負極活性材料粒子が複数の第1の負極活性材料粒子の間の空隙に充填されることに有利であり、更に、負極膜層の圧密度を向上させるのに有利であり、他方では、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は適切な粒子径を有することで、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の粒子内部に良好な電子及びナトリウムイオンの伝送性能を備えさせることができるだけでなく、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子が低い粒子界面抵抗を備えることができる。これにより、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池が高いエネルギー密度と低いインピーダンスを備えることを許容し、ナトリウムイオン電池が高容量、良好な倍率性能及びサイクル性能を備えることができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、5%~95%であってもよく、選択可能に70%~95%であってもよい。例えば、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は上記の任意の数値からなる範囲内であってもよい。
【0060】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子との質量百分率含有量が上記の適切な範囲内にある場合、第2の負極活性材料粒子が複数の第1の負極活性材料粒子の空隙に充填されることを確保しつつ、負極活性材料粒子が適切な比表面積を備えることができる。これにより、負極膜層の圧密度を向上させながら、粒子間の接触面積を向上させ、粒子間の伝送経路を改善し、粒子間の切断ブリッジの発生を回避し、ナトリウムイオン電池が高いエネルギー密度とサイクル性能を備えることができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、負極シートの伸び率Eは、0.1%≦E≦0.2%を満たし、選択可能に、0.1%≦E≦0.15%を満たすことができる。例えば、Eは、0.1%、0.12%、0.15%、0.18%、0.2%又は上記の任意の数値からなる範囲内であってもよい。
【0062】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、本願の第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が適切な範囲内にある場合、負極活性材料粒子が高い嵩密度を備えることができる。したがって、嵩密度が低い負極活性材料粒子と比べて、同じ冷間プレスのパラメータである場合、本願の負極シートはより低い伸び率を備えることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、負極膜層の片面塗布重量CWは、2mg/cm~13mg/cmであってもよく、選択可能に5mg/cm~12mg/cmである。例えば、CWは、2mg/cm、5mg/cm、8mg/cm、10mg/cm、12mg/cm、13mg/cm又は上記の任意の数値からなる範囲内であってもよい。
【0064】
上記負極膜層の片面塗布重量は、単位面積内において、片面負極膜層に塗布された負極スラリー中の固形分含有量を示すことができ、その数値は片面負極膜層の面密度と等しくてもよい。
【0065】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、負極膜層の片面塗布重量が上記の適切な範囲内にあると、負極膜層の厚さを適切な範囲内に制御するのに有利である。これにより、電子及びナトリウムイオンが負極シートにおいて適切な移動経路を備えることができるだけでなく、負極シートが適切な容量を備えることができる。したがって、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池に良好な倍率性能と高いエネルギー密度を具備させることができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、30%≦P≦60%を満たすことができる。選択可能に、45%≦P≦55%である。
【0067】
ここで、P=[1-CW/(d*PA)]*100%であり、d=d/(1+E)であり、CWは、負極膜層の片面塗布重量を示し、PAは、片面負極膜層の真密度を示し、PA=1/(Σx/ρ)の式により算出でき、ここで、xは、負極膜層を構成する第i種類の成分の負極膜層における質量割合を示し、ρは、第i種類の成分の密度を示し、Eは、負極シートの伸び率を示し、dは、片面負極膜層の厚さを示す。
【0068】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、発明者らは、意外にも、負極膜層のパラメータPが上記条件を満たす場合、負極膜層の圧密度が大きくなることは、主に負極活性材料粒子の嵩密度が大きくなることによって実現され、負極膜層の気孔率に対し顕著な影響を与えないことを見出した。これにより、負極膜層の圧密度を向上させるだけでなく、負極膜層の電解液濡れ性を維持することができ、二次電池が高いエネルギー密度と良好な倍率性能を備えることを保証することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子では、吸着孔の孔径は0.1nm~16nmであってもよく、選択可能に1nm~7nmであってもよい。吸着孔の孔径分布が上記の適切な範囲内にある場合、Naの吸着及び脱離に有利であり、二次電池の倍率性能を向上させるのに有利である。
【0070】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子の比表面積は、1m/g~40m/gであってもよく、選択可能に1.5m/g~10m/gであってもよい。第1の負極活性材料粒子の比表面積が適切な範囲内である場合、負極シートが良好なナトリウムイオン伝送性能を備えるだけでなく、固体電解質界面(solid electrolyte interface、SEI)膜による活性イオンの損失を低減することができる。これにより、ナトリウムイオン電池の初回クーロン効率を保証することができる。
【0071】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子の(002)面の面間隔は、0.34nm~0.45nmであってもよく、選択可能に0.35nm~0.4nmであってもよい。第1の負極活性材料粒子の面間隔が適切な範囲内にあると、Naを円滑に挿入及び脱離させることができ、ナトリウムイオン電池の倍率性能を向上させることができる。
【0072】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子の真密度は、1.3g/cm~2.0g/cmであってもよく、選択可能に1.4g/cm~1.8g/cmである。第1の負極活性材料粒子の真密度が上記範囲内にあり、且つタップ密度が本願で限定される範囲内にある場合、第1の負極活性材料粒子に十分な数量の吸着孔が含まれていると考えられる。これにより、Naが円滑に吸着及び脱離でき、ナトリウムイオン電池が良好な倍率性能を備えることができる。
【0073】
本願では、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の材質が限定されない。いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子は、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)のうちの1種類又は複数種類であってもよく、上記第2の負極活性材料粒子は、ハードカーボン、ソフトカーボン、MCMBのうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0074】
上記の種類の材料から選択される粒子生産プロセスは成熟しており、加工することで、本願の条件を満たす第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を容易に得ることができる。
【0075】
本願では、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の形態が限定されない。いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子は、不規則的な形状及び/又は微小球状を有してもよく、第2の負極活性材料粒子は、不規則的な形状及び/又は微小球状を有してもよい。
【0076】
選択可能に、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、不規則的な形状を有する第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、5%~95%であってもよく、選択可能に、70%~95%であってもよい。
【0077】
第1の負極活性材料粒子の形態と第2の負極活性材料粒子の形態とは同じであってもよく、異なってもよい。
【0078】
本願の負極シートにおいて、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が本願の範囲内にある場合、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の形態にも関わらず、負極膜層は高い圧密度を備えることができる。これにより、負極シートのプロセスの柔軟性を向上させ、ナトリウムイオン電池に高いエネルギー密度を備えさせることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、いずれもハードカーボン粒子であってもよい。
【0080】
発明者らは、検討した結果、ハードカーボン材料は、低い貯蔵電圧、高い容量及び良好なサイクル安定性を有することを発見した。また、ハードカーボン材料の出所が豊富であり、調製プロセスが簡単である。より重要なことは、ハードカーボン粒子自体の格子間隔が大きく、多孔であり、本願の第1の負極活性材料粒子の理想的な選択である。通常のハードカーボン材料自体は硬度が大きく、冷間プレス過程において歪み及び滑りがほとんど発生せず、負極膜層に適用される場合、負極膜層の圧密度は通常低いが、本願の負極膜層において、粒子径が小さい第2の負極活性材料粒子は、第1の負極活性材料粒子の空隙を充填ことができ、第1の負極活性材料粒子は変形する必要がなく、負極膜層に高い圧密度を備えさせることもできる。したがって、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子がいずれもハードカーボン粒子である場合、本願の負極シートがナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池のコストを低減し、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度、倍率性能及びサイクル安定性を向上させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子は、不規則的な形状のハードカーボン粒子から選択されてもよく、第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択されてもよく、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、70%~95%であってもよい。
【0082】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、第2の負極活性材料粒子が微小球状のハードカーボン粒子である場合、複数の第1の負極活性材料粒子の間の空隙に充填することができるだけでなく、負極膜層の圧密度、負極活性材料粒子に対する接着剤の付着力及び負極膜層の導電性能を向上させることができ、更に一定の滑り作用を発揮し、負極膜層の圧密度を更に向上させることができる。第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子との割合が適切な範囲内にあると、負極活性材料粒子が適切な比表面積を備え、それによって、負極活性材料粒子表面が適量の電気化学反応の活性点を有し、ナトリウムイオン電池のクーロン効率を保証することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、第1の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、第1の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、10μm~50μmであり、第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子から選択され、第2の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、5μm~40μmであり、ここで、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子の総質量に対して、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量は、5%~95%であってもよく、選択可能に70%~95%であってもよい。
【0084】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、微小球状のハードカーボン粒子自体が高い嵩密度を備えた上で、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子のメディアン径が上記範囲を満たすと、負極活性材料粒子の嵩密度をより向上させることができる。更に、微小球状の第2の負極活性材料粒子は、穴埋めの作用と滑り作用とを同時に発揮することもでき、これにより、負極膜層の圧密度を著しく向上させることができる。したがって、本願の負極シートは、ナトリウムイオン電池に適用されると、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度、倍率性能及びサイクル安定性を顕著に向上させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、いずれもハードカーボン粒子であってもよい。負極膜層の圧密度PDは、1.0g/cm≦PD≦1.2g/cmを満たすことができ、負極膜層は、30%≦P≦60%を満たすことができ、選択可能に、45%≦P≦55%であり、ここで、P=[1-CW/(d*PA)]*100%、d=d/(1+E)であり、CWは、負極膜層の片面塗布重量を示し、PAは、片面負極膜層の真密度を示し、PA=1/(Σx/ρ)との式により、算出され、ここで、xは、負極膜層を構成する第i種類の成分の負極膜層における質量割合を示し、ρは、第i種類の成分の密度を示し、Eは、負極シートの伸び率を示し、dは、片面負極膜層の厚さを示す。
【0086】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、負極膜層のパラメータPが上記条件を満たす場合、負極膜層の圧密度が大きくなることは、主に負極活性材料粒子の嵩密度が大きくなることによって実現されると考えられる。したがって、ハードカーボン粒子は、歪みや滑りを発生することなく、負極膜層に高い圧密度を備えさせることができる。これにより、ナトリウムイオン電池にハードカーボン材料を適用することが可能となり、ナトリウムイオン電池に広い応用の将来性を持たせることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、スリップ増量成分を更に含んでもよく、上記スリップ増量成分の質量に対する第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子との質量の和の比は、100:2~100:1であってもよく、スリップ増量成分は、人造黒鉛、天然黒鉛、グラフェンのうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0088】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、負極膜層が少量のスリップ増量成分を備えると、冷間プレスの過程において、スリップ増量成分が滑り作用を発揮することができ、それにより、負極膜層の圧密度を更に向上させることができる。また、上記スリップ増量成分は、良好な導電性能を更に有し、負極シートに応用される場合、更に負極シートの電子伝送性能を向上させることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、フレキシブル接着剤を更に含んでもよく、フレキシブル接着剤は、スチレンアクリルエマルジョン、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ化ビニリデンとアクリル酸エステル類の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0090】
いかなる理論又は解釈に限定されるものではないが、負極膜層は、上記フレキシブル接着剤を含み、良好な可撓性を有することができる。これにより、負極膜層は、冷間プレスの過程において、より小さな応力を有することができ、負極活性材料粒子がより堆積しやすくなり、且つ負極シートがより低い伸び率を備えることができる。これにより、負極膜層の圧密度をより向上させ、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0091】
なお、本願に係る各負極膜層パラメータは、いずれも片側負極膜層のパラメータ範囲を指す。負極膜層が負極集電体の両面に設けられている場合、いずれか一方の負極膜層パラメータが本願を満たすと、本願の保護範囲内にあると考えられる。
【0092】
本願における第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、種々の方法により得ることができ、ここで限定されないが、例えば、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、市販又は自家製で取得することができる。
【0093】
一例として、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、不規則的な形状を有するハードカーボン粒子であってもよく、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、ヤシ殻を300℃で置いてヤシ殻に対して予備炭素化処理を行う工程と、ダブルロール成型機(Double-roll Machine)で予備炭素化処理後のヤシ殻を直径2mm程度の粒子に粉砕し、篩分により不純物を除去する工程と、400℃~800℃で粒子を熱処理し、必要に応じてハロゲン又はハロゲン化水素ガスを導入して灰分を除去し、ボールミリング加工しやすい粒子を得る工程と、粒子に対してボールミリングを行い、Dv50=50μm/40μm/25μm/20μm/9μm/5μm/3μm/1μmの炭素粒子である工程と、ボールミリング後の粒子を不活性雰囲気中に置き、温度を1150℃に保持して、ボールミリング後の粒子を炭素化させ、必要に応じて、アセチレンガスを導入して、ボールミリング後の粒子に対して気相成長における炭素被覆を行うことで、不規則的な形状を有する第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を調製する工程とによって調製することができる。
【0094】
他の例として、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、微小球状のハードカーボン粒子であってもよい。第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、以下の工程により調製される。澱粉及び/又はリグニンを200℃以下で脱水炭化して、初めの形態が固定された予備炭素化粒子(例えば、製紙のためのリグニン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉から得られた予備炭素化粒子Dv50がそれぞれ50μm、25μm、10μm、6μmであり、形態が球形又は略球形である)を得、必要に応じて、澱粉及び/又はリグニンに、N、P、S、ハロゲンを含む塩類又はポリマー類脱水剤、例えば、アンモニウム塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、過硫酸塩、ハロゲン化物又は上記塩類のポリマーを加え、400~800℃で予備炭素化粒子を熱処理して、ボールミリング又は気流粉砕により粉砕されやすい炭化粒子を得る工程と、ボールミリング又は気流粉砕により上記炭化粒子を粉砕し、更に球形又はカレット形態に近い他の粒度の粒子(例えば、粒子径25μmの馬鈴薯澱粉炭素粒子を1次ボールミルで形態を依然として球形に接近するように20μmまで粉砕し、3次ボールミリングで形態をカレット形態に接近するように5μmまで粉砕する。粒子径が6μmの米澱粉を1次ボールミリングで形態を依然として球形に接近するように5μmまで粉砕し、3次ボールミリングで形態をカレット形態に接近するように1.5μm粒子まで粉砕する。粒子径が10μmのトウモロコシ澱粉炭素粒子を気流粉砕で1μmのカレット形態炭素粒子を得ることができる)を得る工程と、上記粒子を不活性雰囲気中に置き、温度を1150℃に保つことで、ボールミリング後の粒子を炭素化させ、必要におじて、アセチレンガスを導入して、ボールミリング後の粒子に対して気相成長における炭素被覆を行うことにより、微小球状を有する第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を調製する工程と、を備える。
【0095】
本願において、タップ密度は、本分野で周知の意味を有し、本分野において既知の方法で測定することができる。例えば、標準GB/T5162-2006及びGB/T24533-2009を参照して、粉体タップ密度テスター(例えば、丹東百特BT-310)を用いてテストすることができる。
【0096】
本願において、メディアン径は、本分野で周知の意味を有し、粒子の累積粒度分布百分率が50%に達した場合に対応する粒子径を示すことができる。メディアン径は、本分野において既知の方法及び装置により測定することができる。例えば、GB/T19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照して、レーザー粒度分析計(例えば、英国Mastersizer2000E)を用いて測定することができる。
【0097】
本願において、負極膜層の圧密度は、本分野で周知の意味を有し、本分野において既知の方法により測定することができる。例えば、負極シートが冷間プレスされた後、プレス機により、それぞれ面積Sのスラリーが完全に塗布されたウエハとスラリーが塗布されていないウエハとが若干打ち抜かれ、それぞれ秤量されて平均質量W、Wが得られ、それぞれ計測されて平均厚さT、Tが得られ、負極膜層の圧密度PD=(W-W)/(T-T)/Sが得られる。
【0098】
本願において、負極シートの伸び率Eは、本分野で周知の意味を有し、負極シートの冷間プレスの前後での機械方向の長さの変化率を示すことができる。伸び率Eは、本分野において既知の方法及び機器を用いて測定することができる。一例として、図1に示すように、長さが2mの塗布、乾燥された負極シートを取り、2つのマーク点A、Aを選択し、A、Aの接続線と負極シートの長さ方向とが平行であり、定規でマーク点AとAの間の距離を正確に測定してLと表記し、負極シートを一定の圧力で冷間プレスした後、AとAの間の距離を測定して、Lと表記すると、E=(L-L)/Lとなる。
【0099】
本願において、負極膜層の片面塗布重量は、本分野で周知の意味を有し、本分野において周知の方法で測定することができる。例えば、負極シートが冷間プレスされた後、プレス機により、それぞれ面積Sのスラリーが完全に塗布されたウエハとスラリーが塗布されていないウエハとが若干打ち抜かれ、それぞれ秤量して平均質量M、Mが得られ、負極シートの片面塗布重量CW=(M-M)/nSとなり、ここで、nは負極膜層の数を示し、負極シートが片面塗布である場合、n=1であり、負極シートが両面塗布である場合、n=2である。
【0100】
本願において、片面負極膜層の厚さdは、マイクロメータにより測定することができる。例えば、負極シートが冷間プレスされた後、マイクロメータを用いて負極シートの厚さdを測定し、負極シート表面の負極膜層を掻き取り、溶剤で洗浄した後、更にマイクロメータで負極集電体の厚さdを測定し、d=(d-d)/nであり、ここで、nは負極膜層の数を示し、負極シートが片面塗布である場合、n=1であり、負極シートが両面塗布である場合、n=2である。
【0101】
本願において、負極材料の吸着孔の孔径及び孔径分布は、本術分野で周知の意味を有し、本分野において既知の方法で測定することができる。例えば、比表面積分析装置(例えばTristarII3020M)により測定することができる。
【0102】
本願において、負極活性材料粒子の比表面積は、本分野で周知の意味を有し、本分野において既知の方法で測定することができる。例えば、比表面積分析装置(例えば、TristarII3020M)を用いて、窒素吸着/脱離法により負極活性材料の比表面積を測定することができる。
【0103】
本願において、面間隔は、本分野で周知の意味を有し、本分野において既知の方法で測定することができる。例えば、X線回折法(例えばEquinox100)で負極活性材料粒子を分析することにより得ることができる。
【0104】
本願において、負極活性材料粒子の真密度は、本分野で周知の意味を有し、本分野において既知の方法で測定することができる。例えば、真密度テスター(例えば、AccuPycII1340)を用いて測定することができる。
【0105】
なお、本願に係る二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0106】
二次電池
【0107】
本願の第2の態様は、二次電池を提供する。いくつかの実施形態では、ナトリウムイオン電池であってもよい。
【0108】
一般的に、二次電池は、正極シート、負極シート、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程において、活性イオンが正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、同時にイオンを通過させることができる。
【0109】
[正極シート]
【0110】
正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた正極膜層とを含み、上記正極膜層は、本願の第1の態様の正極活性材料を含む。
【0111】
一例として、正極集電体は、自身の厚み方向において対向する両面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する両面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0112】
いくつかの実施形態では、上記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)上に形成することで形成することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、二次電池がナトリウムイオン電池である場合に、正極活性材料は、本分野で周知のナトリウムイオン電池に用いられる正極活性材料を採用することができる。正極活性材料は、一例として、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。ここで、正極活物質は、ナトリウム鉄複合酸化物(NaFeO)、ナトリウムコバルト複合酸化物(NaCoO)、ナトリウムクロム複合酸化物(NaCrO)、ナトリウムマンガン複合酸化物(NaMnO)、ナトリウムニッケル複合酸化物(NaNiO)、ナトリウムニッケルチタン複合酸化物(NaNi1/2Ti1/2)、ナトリウムニッケルマンガン複合酸化物(NaNi1/2Mn1/2)、ナトリウム鉄マンガン複合酸化物(Na2/3Fe1/3Mn2/3)、ナトリウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NaNi1/3Co1/3Mn1/3)、ナトリウム鉄リン酸化合物(NaFePO)、ナトリウムマンガンリン酸化合物(NaMnPO)、ナトリウムコバルトリン酸化合物(NaCoPO)、紺青系材料、ポリアニオン材料(リン酸塩、フツリン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩)などが挙げられるが、本願はこれらの材料に限定されるものではなく、本願は他のナトリウムイオン電池正極活物質として使用可能な従来の公知の材料を用いてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、正極膜層は、接着剤を更に含んでもよい。一例として、上記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体及び含フッ素アクリレート樹脂のうちの少なくとも1種類を含んでもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、正極膜層は更に導電剤を含んでもよい。一例として、上記導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種類を含んでもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、正極シートを調製するための上記の成分、例えば、正極活性材料、導電剤、接着剤及び任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを形成する工程と、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、正極シートを得る工程とにより、正極シートを調製することができる。
【0117】
[負極シート]
【0118】
本願の二次電池において、負極シートは、本願の第1の態様の負極シートを含む。
【0119】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた負極膜層とを含み、上記負極膜層は、負極活性材料を含む。
【0120】
一例として、負極集電体は、自身の厚み方向において対向する両面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する両面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0121】
いくつかの実施形態において、上記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔シートとして銅箔やアルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基材の少なくとも一方の表面に形成された金属層とを含んでいてもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)上に形成することにより形成することができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、必要に応じて、負極膜層は更に導電剤を含んでもよい。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、必要に応じて、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を更に含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態において、上記の負極シートを調製するための成分、例えば第1の負極活性材料粒子、第2の負極活性材料粒子、選択可能的なスリップ増量成分、導電剤、接着剤及び任意の他の成分などを溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させて、負極スラリーを形成する工程と、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、負極シートを得る工程とにより、負極シートを調製することができる。
【0125】
[電解質]
【0126】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願の電解質の種類は特に限定されず、ニーズに応じて選択することができる。電解質は、例えば、液状、ゲル状又は全固体状であってもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、上記電解質は、電解液を使用する。上記電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、NaPF、NaClO、NaBCl、NaSOCF及びNa(CH)CSOのうちの1種類又は複数種類である。
【0129】
いくつかの実施形態では、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、フルオロ炭酸エチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1、4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記電解液は、必要に応じて、更に添加剤を含んでもよい。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤と正極成膜添加剤を含んでもよく、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などの、電池の一部の性能を改善する添加剤を含んでもよい。
【0131】
[セパレータ]
【0132】
いくつかの実施形態では、二次電池は、セパレータを更に含む。本願のセパレータの種類は特に限定されず、任意の周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造分離膜を選択することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種類である。セパレータは、単層フィルムであってもよく、複数層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが複数層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよく、異なってもよく、特に限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層プロセスによって電極アセンブリを調製することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を含み得る。当該外装は、上述電極アセンブリ及び電解質の封止に用いられる。
【0136】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、例えば硬質プラスチックケース、アルミケース、スチールケースなどのハードケースであってもよい。二次電池の外装は、例えばバグソフトパッケージなどのソフトパッケージであってもよい。ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0137】
本願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図2は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0138】
いくつかの実施形態では、図3を参照すると、外装は、ケース51とカバープレート53とを含み得る。ケース51は、底板と、底板に接続された側板とを含み、底板と側板とが囲まれて収容キャビティが形成される。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、上記収容キャビティを封止ように上記開口にカバーすることができる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内に封止される。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際のニーズに応じて選択することができる。
【0139】
電池モジュール及び電池パック
【0140】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、1つ又は複数であってもよく、当業者は、電池モジュールの適用及び容量に応じて具体的な数を選択することができる。
【0141】
図4は、一例としての電池モジュール4である。図4を参照して、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並んで設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列されてもよい。更に、この複数の二次電池5は締結具により固定されてもよい。
【0142】
選択可能に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを更に含み、複数の二次電池5は、収容空間に収容される。
【0143】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、1つ又は複数であってもよく、当業者は、電池パックの適用及び容量に応じて具体的な数を選択することができる。
【0144】
図5及び図6は、一例としての電池パック1である。図5及び図6を参照して、電池パック1に、電池ボックスと、電池ボックスに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上筐体2と下筐体3とを含み、上筐体2は、下筐体3に蓋設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間が形成される。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0145】
電力消費装置
また、本願は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を更に提供する。上記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、上記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、上記電力消費装置のエネルギー貯蔵手段として用いられてもよい。上記電力消費装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶、及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これに限定されない。
【0146】
上記電力消費装置としては、その使用ニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0147】
図7は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置による二次電池への高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0148】
別の例示的な装置として、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般的に、薄型化が求められており、電源として二次電池を採用することができる。
【0149】
実施例
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願に対する限定であると理解できない。実施例に具体的な技術又は条件を明記しない場合、本分野における文献に記載された技術又は条件又は取扱説明書に従って行われる。使用された試薬又は器具に、製造業者が明記されていない場合、いずれも市販により通常の製品が取得される。
【0150】
実施例1
1)正極シートの調製
正極活性材料であるナトリウムニッケルマンガン複合酸化物(NaNi1/2Mn1/2)、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比92:5:3で適量のN-メチルピロリドン(NMP)中で十分に撹拌混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを厚さ13μmの正極集電体アルミニウム箔上に塗布し、100℃で乾燥した後、プレスして正極シートを得る。
【0151】
2)負極シートの調製
負極活性材料粒子、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンアクリルエマルジョン、増粘剤であるヒドロキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を重量比94:1:4:1で適量の脱イオン水に十分に撹拌混合し、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを厚さ8μmの負極集電体銅箔の両面に塗布し、100℃で乾燥させた後、プレスして負極シートを得る。
【0152】
ここで、負極活性材料粒子は、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子を含み、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子は、いずれも不規則的な形状を有するハードカーボン粒子であり、第1の負極活性材料のメジアン径D50は、25μmであり、第1の負極活性材料粒子のメジアン径D50は、22μmである。負極活性材料粒子の総質量に対して第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量Qは70%である。負極シートの片面塗布重量CWは8mg/cmである。
【0153】
3)セパレータ
ポリエチレンPEセパレータ(celgard)を用いる。
【0154】
4)電解液の調製
等体積のエチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)を均一に混合して有機溶媒を得た後、NaPFを上記有機溶媒に均一に溶解して電解液を得、ここで、NaPFの濃度は1mol/Lである。
【0155】
5).電池の調製
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、上記電解液を加えてから封止し、ナトリウムイオン電池を得る。
【0156】
実施例2~14
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整して、実施例2~14のナトリウムイオン電池を調製する。
【0157】
実施例15~実施例22
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50、及びQを調整して、実施例15~22のナトリウムイオン電池を調製する。
【0158】
実施例23~26
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50、及びQを調整し、更に負極スラリーにスリップ増量成分を別に添加して、実施例23~26のナトリウムイオン電池を調製する。
【0159】
実施例27~29
実施例1の調製方法に基づいて、負極シートのCWを調整し、実施例27~29のナトリウムイオン電池を調製する。
【0160】
実施例30
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第2の負極活性材料粒子を微小球状のハードカーボン粒子に置き換えて、実施例30のナトリウムイオン電池を調製する。
【0161】
実施例31
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第1の負極活性材料粒子、第2の負極活性材料粒子をいずれも微小球状ハードカーボン粒子に置き換えて、実施例31のナトリウムイオン電池を調製する。
【0162】
実施例32
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第1の負極活性材料粒子を微小球状のハードカーボン粒子に置き換えて、実施例32のナトリウムイオン電池を調製する。
【0163】
実施例33
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第2の負極活性材料粒子を不規則形状を有するソフトカーボン粒子に置き換えて、実施例33のナトリウムイオン電池を調製する。
【0164】
実施例34
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第2の負極活性材料粒子を球形に類似するMCMB粒子に置き換えて、実施例34のナトリウムイオン電池を調製する。
【0165】
実施例35
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第1の負極活性材料粒子を不規則的な形状を有するソフトカーボン粒子に置き換えて、実施例35のナトリウムイオン電池を調製する。
【0166】
実施例36
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整し、第1の負極活性材料粒子を球形に類似するMCMB粒子に置き換えて、実施例36のナトリウムイオン電池を調製する。
【0167】
実施例37~41
実施例1の調製方法に基づいて、D50、D50、及び負極シートに用いられる接着剤の種類を調整して、実施例37~41のナトリウムイオン電池を調製する。ここで、実施例37の負極シートに用いられる接着剤はスチレンブタジエンゴムSBRであり、実施例38の負極シートに用いられる接着剤は水素化ニトリルゴムであり、実施例39の負極シートに用いられる接着剤はフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体であり、実施例40の負極シートに用いられる接着剤はフッ化ビニリデンとアクリル酸エステル類との共重合体であり、実施例41の負極シートに用いられる接着剤はポリテトラフルオロエチレンである。
【0168】
実施例42~45
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50、及び第1の負極活性材料粒子のタップ密度を調整して、実施例32~45のナトリウムイオン電池を調製する。
【0169】
比較例1
実施例1の調製方法に基づき、負極活性材料粒子を、メジアン径が5μmの不規則的な形状を有するハードカーボン粒子に置き換えて、比較例1のナトリウムイオン電池を調製する。
【0170】
比較例2
実施例1の調製方法に基づき、負極活性材料粒子を、メジアン径が5μmの微小球状のハードカーボン粒子に置き換えて、比較例2のナトリウムイオン電池を調製する。
【0171】
比較例3
実施例1の調製方法に基づき、D50、D50を調整して、比較例3のナトリウムイオン電池を調製する。
【0172】
上記実施例1~45、比較例1~3の負極シートの関連調製パラメータは下記表1に示される。ここで、Qは、負極活性材料粒子の総質量に対する第1の負極活性材料粒子の質量割合を示し、Qは、負極活性材料粒子の総質量に対する第2の負極活性材料粒子の質量割合を示し、Qは、スリップ増量成分と負極活性材料粒子との質量比を示す。第1の負極活性材料粒子のタップ密度ρ、D50、D50は、本明細書に記載の方法に従ってテストすることができ、d、PAは本明細書に記載の方法に従って算出することができる。
【0173】
上記実施例1~45、比較例1~3の負極シートの関連テストパラメータは、以下の表2に示す。ここで、CW、d、E、PDは、本明細書に記載の方法に従ってテストすることができ、Pは本明細書に記載の方法に従って計算することができる。
【0174】
実施例1の負極シートに対してSEMテストを行い、得られたSEM画像を図8に示す。
【0175】
実施例1~45と比較例1~3の負極シートの調製パラメータ
【表1】
【0176】
実施例1~45と比較例1~3の負極シートのテストパラメータ
【表2】
【0177】
また、上記実施例1~45及び比較例1~3で得られたナトリウムイオン電池に対して性能テストを行った。テスト結果を下記表3に示す。
【0178】
(1)エネルギー密度テスト
25℃で、0.33C倍率で電圧が4.2Vになるまで定電流充電し、その後、4.2Vで電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、この時、二次電池が満充電状態に達し、その後、5min静置し、0.33C倍率で電圧が2.5Vになるまで定電流放電し、更に5min静置し、二次電池が0.5C倍率で定電流放電する時の容量と電圧プラットフォームを記録し、最後に二次電池の質量を測定する。
【0179】
二次電池のエネルギー密度(Wh/kg)=(二次電池が0.33C倍率で定電流放電する時の容量×二次電池が0.33C倍率で定電流放電する時の電圧プラットフォーム)/二次電池の質量。
【0180】
(2)(サイクル寿命テスト)
25℃で、二次電池を1/3Cで4.2Vまで定電流充電し、更に4.2V定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、更に1/3Cで2.8Vまで放電し、得られた容量を初期容量Cとした。上記の同一の電池に対して以上のステップを繰り返し、同時にn回目のサイクル後の電池の放電容量Cを記録する場合、各サイクル後の電池容量維持率P=C/C*100%であり、P≦80%の場合に対応する最小n値を二次電池のサイクル寿命とする。
【0181】
実施例1~45と比較例1~3の性能テスト結果
【表3】
【0182】
実施例1~実施例6をまとめると、第1の負極活性材料粒子のメディアン径が変わらない場合、第2の負極活性材料粒子のメディアン径が小さくなるにつれて、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が大きくなり、対応的に、負極活性材料粒子の嵩密度も大きくなることがわかる。図8に示すように、メジアン径が小さい第2の負極活性材料粒子は、第1の負極活性材料粒子間の空隙に充填することができ、これにより、負極膜層は、高い圧密度を備えることができる。実施例7~実施例11をまとめると、第2の負極活性材料粒子のメディアン径が変わらない場合、第1の負極活性材料粒子のメディアン径が大きくなるにつれて、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が大きくなり、対応的に、負極活性材料粒子の嵩密度も大きくなることがわかる。これにより、負極膜層も高い圧密度を備えることができる。実施例4、10、12乃至13及び実施例1、7、14、19をまとめると、第1の負極活性材料粒子のメディアン径と第2の負極活性材料粒子のメジアン径との差が一定である場合、第1の負極活性材料粒子及び第2の負極活性材料粒子のメディアン径は、いずれも負極膜層の圧密度に対して一定の影響を与えることがわかる。実施例1~14、19をまとめると、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が本願の範囲内にある場合、いずれも負極膜層の圧密度を効果的に向上させ、且つ負極膜層のパラメータPを適切な範囲に維持することができることがわかる。これにより、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル寿命を向上させることができる。
【0183】
実施例15~実施例22をまとめると、第1の負極活性材料粒子の質量百分率含有量Qの低下に伴って、負極膜層の圧密度がほぼ増加してから減少する傾向にあることがわかる。これは、Qが高い場合、第2の負極活性材料の質量百分率含有量Qが相対的に低く、混合後の嵩密度の改善に限界があり、冷間プレス後の圧密度の増大に限界があるため、負極膜層の圧密度が低いからである。Qが低い場合、Qが相対的に高く、第2の負極活性材料粒子が第1の負極活性材料粒子の空隙に充填された後、過剰な第2の負極活性材料粒子がある。この部分の第2の負極活性材料粒子は、冷間プレスされても、圧密度が増大しにくく、且つ第2の負極活性材料粒子のメディアン径が小さいため、負極膜層の圧密度が低くなる。Q、Qの含有量が適切な範囲内にある場合、負極膜層の圧密度を効果的に向上させるだけでなく、負極膜層に対応するパラメータPを適切な範囲内に維持することができ、ナトリウムイオン電池は高いエネルギー密度と長いサイクル寿命を兼ね備えることができる。
【0184】
実施例19、23~26をまとめると、負極スラリーにスリップ増量成分を添加する場合、負極膜層の圧密度を更に向上させることができることがわかる。これは、スリップ増量成分が負極シートの冷間プレス過程において滑り作用を発揮することができるので、第2の負極活性材料粒子が第1の負極活性材料粒子間の空隙により十分に充填されるからである。実施例23、26をまとめると、スリップ増量成分の添加量の増大に伴い、負極膜層のタップ密度は増大しているが、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度の差が大きくないことがわかる。これは、スリップ増量成分自体にナトリウムイオンが挿入しにくく、スリップ増量成分が負極膜層の圧密度を向上させると同時に、負極膜層の1グラムあたりの理論容量を低下させるからである。
【0185】
実施例19、27~29をまとめると、負極膜層の片面塗布重量は、負極膜層の圧密度にあまり影響を与えないことがわかる。第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメジアン径の差が本願の範囲内にある場合、異なる片面塗布重量を有する負極膜層は、いずれも高い圧密度と適切なパラメータPを有し、かつ長サイクル寿命を有することができる。
【0186】
実施例19、30~32をまとめると、第1の負極活性材料粒子及び第2の活性材料粒子の少なくとも一方が微小球状のハードカーボン粒子である場合、負極膜層の圧密度をより向上させることができることがわかる。
【0187】
実施例33~実施例36をまとめると、ソフトカーボン及びMCMBと比べて、ナトリウムイオン電池に対して、ハードカーボンは、より高い1グラムあたりの理論容量及びサイクル安定性を有することがわかる。
【0188】
実施例19、37~41をまとめると、通常の負極接着剤SBRと比べて、フレキシブル接着剤は、負極膜層の圧密度を向上させ、ナトリウムイオン電池の長期サイクル性能を改善し、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル寿命を向上させることができることがわかる。
【0189】
実施例19、42~45をまとめると、第1の負極活性材料粒子のタップ密度の増大に伴い、負極膜層の圧密度も増大することがわかる。
【0190】
これに対して、比較例1と2は、負極活性材料粒子としてメディアン径が5μmのハードカーボン粒子のみを用いたものであり、負極膜層の圧密度が低い。これにより、負極シートは、低いエネルギー密度を有するだけでなく、長い電子及びナトリウムイオンの伝送経路を有するため、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル寿命が低い。比較例3では、メディアン径の異なる負極活性材料粒子を用いて調合したが、比較例3では、第1の負極活性材料粒子と第2の負極活性材料粒子とのメディアン径の差が本願の規定の範囲内よりも低く、負極膜層の圧密度の向上に限界があった。従って、比較例3のナトリウムイオン電池は、エネルギー密度及びサイクル寿命も良くない。
【0191】
なお、本願は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示のみであり、本願の技術案において技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏する実施形態は、いずれも本願の技術的範囲に含まれる。その他、本願の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態に対して当業者が想到できる各種変形を実施でき、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本願の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】