IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チルドレンズ ホスピタル メディカル センターの特許一覧

特表2025-502241オルガノイド組成物を使用する腸傷害修復方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】オルガノイド組成物を使用する腸傷害修復方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/545 20150101AFI20250117BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20250117BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20250117BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20250117BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 35/38 20150101ALI20250117BHJP
   A61K 35/54 20150101ALI20250117BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20250117BHJP
   A61K 35/15 20250101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K35/545
C12N5/077 ZNA
C12N5/071
C12N5/078
A61P1/04
A61K35/38
A61K35/54
A61K35/36
A61K35/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541924
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 US2023060687
(87)【国際公開番号】W WO2023137467
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/299,842
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ポーリング、ホリー、エム.
(72)【発明者】
【氏名】スンダラム、ナンビラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムラス、マイケル、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ、ジェームス、マコーマック
(72)【発明者】
【氏名】マヘ、マキシム、ミカエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB48
4C087BB50
4C087BB57
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA23
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA60
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA68
(57)【要約】
腸傷害及び損傷の治療のための、オルガノイド組成物及びその使用方法が、本明細書で開示されている。方法は、上皮及び間葉系構成要素の両方を含む、幹細胞由来オルガノイドに由来する細胞組成物の管腔内投与を含む。投与された細胞は、レシピエントの腸組織の適切な領域への安定した生着を示す。幹細胞由来オルガノイドから存在する複数の細胞型の組み込みは、腸傷害のより完全な治癒をもたらす。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸損傷の治療を必要とする対象において前記腸損傷を治療する方法であって、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離されている解離細胞集団を前記対象の前記腸の管腔壁に投与することを含み、前記腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された前記細胞集団が、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含み、前記対象の前記腸が、小腸及び/又は結腸を含む、方法。
【請求項2】
前記解離細胞集団を前記対象の前記腸の前記管腔壁に投与することが、前記細胞集団を、前記腸損傷によって影響を受けた前記腸の管腔の位置に投与することを含み、任意選択で、前記位置が、前記腸損傷によって影響を受けた前記腸に直接隣接するか又はその近くであり、任意選択で、前記管腔壁の表面に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解離細胞集団が、細胞懸濁液として前記対象の前記腸の前記管腔壁に投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記解離細胞集団を前記対象の前記腸の前記管腔壁に投与することが、前記細胞集団を経腸カテーテル、経鼻カテーテル、又は浣腸によって投与することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚体内胚葉細胞から選択される前駆細胞に由来している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、前記対象に対して同種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、前記対象から単離された細胞に由来しており、前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、前記対象に対して自家である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、前記対象から単離された前記細胞に由来する人工多能性幹細胞に由来している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象から単離された前記細胞が、前記対象からの皮膚線維芽細胞又は末梢血単核細胞(PBMC)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記解離細胞集団が、前記腸及び/又は結腸オルガノイドの酵素的解離及び/又は機械的解離によって調製される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
酵素的解離が、前記腸及び/又は結腸オルガノイドを、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせで解離させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
機械的解離が、前記腸及び/又は結腸オルガノイドを、連続的により狭くなる径のチャネルに通すことを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージが、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、若しくは95%であるか、又は約それらであるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージが、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、若しくは15%であるか、又は約それらであるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記解離細胞集団が、影響を受けた腸表面積1mm当たり50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、若しくは10000細胞であるか、又は約それらである濃度、あるいは前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の1mm当たりの任意の細胞量で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記解離細胞集団は、前記腸損傷の改善が観察されるまで複数回にわたって前記対象に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記解離細胞集団が、前記対象に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記解離細胞集団の細胞が、前記対象の前記腸の粘膜及び筋層に組み込む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象の前記腸に組み込まれた前記解離細胞集団の細胞が、それらの腸及び/又は結腸の領域性を維持する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象の前記腸に組み込まれた前記解離細胞集団の細胞又はその亜集団が、平滑筋アクチン(SMA)陽性平滑筋細胞型に分化する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記解離細胞集団が、前記対象の前記腸に組み込み、前記腸損傷の治癒を促進する増殖マーカーKI67+(MKI67+)増殖性細胞を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記解離細胞集団が、投与後にインタクトな腸バリアの形成を促進する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記解離細胞集団が、前記腸損傷によって影響を受けた前記対象の前記腸の前記管腔壁の表面積の少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、若しくは50%、又は前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージの表面積に組み込む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記腸損傷が、腸潰瘍を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記腸損傷が、化学的及び/又は機械的である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記腸損傷が、胃腸の病気に関連する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記胃腸の病気が、クローン病、潰瘍性大腸炎、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又は他の薬剤に関連する腸疾患、放射線誘発性腸疾患、及び結核などの病原性感染に関連する腸疾患から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、哺乳動物のものである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、ヒトのものである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、ヒトである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドを解離させて、前記解離細胞集団を作製することを更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記解離細胞集団が、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の多細胞断片の形態であるか、又は少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の多細胞断片の形態である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドをインビトロで、任意選択で多能性幹細胞から産生することを更に含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法における使用のための、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団。
【請求項36】
上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む解離細胞集団を含む、細胞懸濁液。
【請求項37】
前記間葉系細胞型が、ビメンチン(VIM)及び/又はエラスチンミクロフィブリルインターフェーサ1(EMILIN1)を発現し、前記上皮細胞型が、E-カドヘリン(CDH1)及び/又は尾側型ホメオボックス2(CDX2)を発現する、請求項36に記載の細胞懸濁液。
【請求項38】
前記解離細胞集団が、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離され、前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む、請求項36又は37に記載の細胞懸濁液。
【請求項39】
前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚体内胚葉細胞から選択される前駆細胞に由来している、請求項38に記載の細胞懸濁液。
【請求項40】
前記細胞懸濁液又は前記腸及び/若しくは結腸オルガノイドが、対象に対して同種である、請求項35~39のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項41】
前記細胞懸濁液又は前記腸及び/若しくは結腸オルガノイドが、対象からの細胞に由来しており、前記腸及び/又は結腸オルガノイドが、前記対象に対して自家である、請求項35~40のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項42】
前記細胞懸濁液又は前記腸及び/若しくは結腸オルガノイドが、前記対象から単離された前記細胞に由来する人工多能性幹細胞に由来している、請求項41に記載の細胞懸濁液。
【請求項43】
前記解離細胞集団が、前記腸及び/又は結腸オルガノイドの酵素的解離及び/又は機械的解離によって調製される、請求項35~42のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項44】
酵素的解離が、前記腸及び/又は結腸オルガノイドを、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせで解離させることを含む、請求項43に記載の細胞懸濁液。
【請求項45】
機械的解離が、前記腸及び/又は結腸オルガノイドを、連続的により狭くなる径のチャネルに通すことを含む、請求項43又は44に記載の細胞懸濁液。
【請求項46】
前記解離細胞集団が、MKI67+増殖性細胞を含む、請求項35~45のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項47】
前記解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージが、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、若しくは95%、又は前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージである、請求項35~46のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項48】
前記解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージが、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、若しくは15%以下、又は前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージである、請求項35~47のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項49】
前記細胞懸濁液中の前記解離細胞集団の濃度が、約10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mL、又は前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度である、請求項35~48のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項50】
前記解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞の濃度が、約10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mL、又は前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度である、請求項35~49のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項51】
前記解離細胞集団が、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の多細胞断片の形態、又は少なくともそれらの多細胞断片の形態、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージである、請求項35~49のいずれか一項に記載の細胞懸濁液。
【請求項52】
有効量の請求項35~51のいずれか一項に記載の細胞懸濁液と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項53】
腸損傷の前記治療における使用のための、請求項35~51のいずれか一項に記載の細胞懸濁液又は請求項52に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府が支援する研究開発に関する声明)
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与されたU01 DK103117及びNIH P30 DK078292の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に対してある特定の権利を有する。
【0002】
(配列表の参照)
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。配列表は、CHMC63_045WO.xmlという名称のファイルとして提供され、2023年1月12日に作成され、最終更新され、サイズは6021バイトである。電子的な配列表の形式は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(発明の分野)
本開示の態様は、概して、腸損傷の治療のためのオルガノイド組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
広範な腸疾患が、腸組織の潰瘍形成に関連している。腸潰瘍をもたらす及び/又は腸潰瘍に関連する一般的な適応症としては、クローン病、潰瘍性大腸炎、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug、NSAID)及び他の薬剤に関連する腸疾患、放射線誘発性腸疾患、並びに結核を含む病原性感染に関連するものが挙げられる。しかしながら、原因が不明な腸管の慢性潰瘍も報告されている。腸潰瘍の検出は、カプセル内視鏡検査及びバルーン内視鏡検査などの内視鏡的アプローチの使用によって改善されてきたが、これらの潰瘍の治療のための簡単なアプローチが依然として欠如している。いくつかの状況では、関連する副作用を伴う疑わしい薬剤の使用の終了後に改善が見られる場合があるが、進行した場合には外科的切除が必要な場合がある。腸の非治癒性潰瘍領域をもたらす慢性腸損傷は、完全な回復治療の選択肢が現在欠如しているので、臨床上の難題をもたらしている。したがって、腸の潰瘍形成及び傷害の異なる兆候に広く適用可能であり、長く持続する効果を有する療法に対する持続する必要性がある。
【0005】
一般に、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍と称される消化性潰瘍疾患(Peptic Ulcer Disease、PUD)は、小腸上皮のびらんを特徴とする慢性の潜在的に生命を脅かす状態である。一般に、細菌又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の過剰使用によって引き起こされたPUDは、一般集団の最大10%に影響を及ぼし、最大10%の死亡率を有する。H.Pyloriの治療における最近の進歩及びNSAIDのより注意深い使用は、PUDの発生率を減少させたが、全体的な死亡率は減少しなかった。実際に、高い死亡率を伴う特発性出血性潰瘍の発生率が増加している。PUDの治療計画はますます複雑になってきており、新規な治療法の進歩の機会を指摘している。H.Pyloriの抗生物質耐性が増加しており、従来の薬理学的治療は、潰瘍領域を健康な組織状態に完全に回復させることなく、多数の有害な副作用をもたらす可能性がある。これらの患者のために利用可能な治療モダリティを広げるため、並びに特発性出血性潰瘍を有する患者のための治療を開発するために、新規の治療戦略を開発することが重要である。これらの戦略の開発はまた、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び慢性の潰瘍障害を含む他の主要な状態の管理及び治療に拡張される可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書の開示は、腸オルガノイド、結腸オルガノイド、又はその両方に由来する解離細胞集団又は組成物、並びに対象における腸損傷を治療するためのそれらを使用する方法に関する。これらの腸オルガノイド及び結腸オルガノイドは、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞に由来し、その結果、オルガノイドは、小腸及び結腸に通常見られる多くの細胞型から構成され、特に上皮及び間葉系細胞型の両方を含む。解離細胞集団又は組成物は、腸オルガノイド及び結腸オルガノイドの解離又は断片化により作製され、いくつかの実施形態では、解離細胞集団又は組成物は、腸オルガノイド又は結腸オルガノイドの断片を表す生細胞の凝集塊(本明細書において「断片」とも称される)から全体又は大部分が構成される。解離細胞集団又は組成物は、対象の腸の管腔壁に投与され、これは、様々なアプローチにより行われ得る。解離細胞集団又は組成物中の間葉系細胞の存在は、対象の腸への優れた生着、及び対象における腸損傷の治癒をもたらす。
【0007】
腸損傷の治療を必要とする対象において腸損傷を治療する方法が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離されている解離細胞集団を、対象の腸の管腔壁に投与することを含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む。いくつかの実施形態では、対象の腸は、小腸及び/又は結腸を含む。
【0008】
腸損傷の治療を必要とする対象において腸損傷を治療する方法も、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む腸及び/又は結腸オルガノイドを産生すること、腸及び/又は結腸オルガノイドを解離させて上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む細胞集団を作製すること、並びに細胞集団を対象の腸の管腔に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象の腸は、小腸及び/又は結腸を含む。
【0009】
胃腸の病気の治療を必要とする対象において胃腸の病気を治療する方法における使用のための、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離される解離細胞集団も、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、解離細胞集団を、対象の腸の管腔壁に投与することを含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む。いくつかの実施形態では、対象の腸は、小腸及び/又は結腸を含む。
【0010】
上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む解離細胞集団を含む細胞懸濁液も、本明細書で開示されている。本明細書で開示されている細胞懸濁液又は解離細胞集団のうちのいずれかを含む医薬製剤も、本明細書で開示されている。
【0011】
本明細書で提供される本開示の実施形態は、以下の番号が付された実施形態によって説明される。
1.腸損傷の治療を必要とする対象において腸損傷を治療する方法であって、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離されている解離細胞集団を対象の腸の管腔壁に投与することを含み、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された細胞集団が、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含み、対象の腸が、小腸及び/又は結腸を含む、方法。
2.解離細胞集団を対象の腸の管腔壁に投与することが、細胞集団を、腸損傷によって影響を受けた腸の管腔の位置に投与することを含み、任意選択で、位置が、腸損傷によって影響を受けた腸に直接隣接するか又はその近くであり、任意選択で、管腔壁の表面に投与される、実施形態1に記載の方法。
3.解離細胞集団が、細胞懸濁液として対象の腸の管腔壁に投与される、実施形態1又は2に記載の方法。
4.解離細胞集団を対象の腸の管腔壁に投与することが、細胞集団を経腸カテーテル、経鼻カテーテル、又は浣腸によって投与することを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.腸及び/又は結腸オルガノイドが、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚体内胚葉細胞から選択される前駆細胞に由来している、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.腸及び/又は結腸オルガノイドが、対象に対して同種である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.腸及び/又は結腸オルガノイドが、対象から単離された細胞に由来しており、腸及び/又は結腸オルガノイドが、対象に対して自家である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
8.腸及び/又は結腸オルガノイドが、対象から単離された細胞に由来する人工多能性幹細胞に由来している、実施形態7に記載の方法。
9.対象から単離された細胞が、対象からの皮膚線維芽細胞又は末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を含む、実施形態8に記載の方法。
10.解離細胞集団が、腸及び/又は結腸オルガノイドの酵素的解離及び/又は機械的解離によって調製される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.酵素的解離が、腸及び/又は結腸オルガノイドを、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせで解離させることを含む、実施形態10に記載の方法。
12.機械的解離が、腸及び/又は結腸オルガノイドを、連続的により狭くなる径のチャネルに通すことを含む、実施形態10又は11に記載の方法。
13.解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージが、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、若しくは95%であるか、又は約それらであるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージが、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、若しくは15%であるか、又は約それらであるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.解離細胞集団が、影響を受けた腸表面積1mm当たり50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、若しくは10000細胞であるか、又は約それらである濃度、あるいは前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の1mm当たりの任意の細胞量で投与される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.解離細胞集団が、腸損傷の改善が観察されるまで複数回にわたって対象に投与される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.解離細胞集団が、対象に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回投与される、実施形態16に記載の方法。
18.解離細胞集団の細胞が、対象の腸の粘膜及び筋層に組み込む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.対象の腸に組み込まれた解離細胞集団の細胞が、それらの腸及び/又は結腸の領域性を維持する、実施形態18に記載の方法。
20.対象の腸に組み込まれた解離細胞集団の細胞又はその亜集団が、平滑筋アクチン(smooth muscle actin、SMA)陽性平滑筋細胞型に分化する、実施形態18又は19に記載の方法。
21.解離細胞集団が、対象の腸に組み込み、腸損傷の治癒を促進する増殖マーカーKI67+(Marker of Proliferation KI67+、MKI67+)増殖性細胞を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.解離細胞集団が、投与後にインタクトな腸バリアの形成を促進する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.解離細胞集団が、腸損傷によって影響を受けた対象の腸の管腔壁の表面積の少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、若しくは50%、又は前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージの表面積に組み込む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
24.腸損傷が、腸潰瘍を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.腸損傷が、化学的及び/又は機械的である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.腸損傷が、胃腸の病気に関連する、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
27.胃腸の病気が、クローン病、潰瘍性大腸炎、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又は他の薬剤に関連する腸疾患、放射線誘発性腸疾患、及び結核などの病原性感染に関連する腸疾患から選択される、実施形態26に記載の方法。
28.腸及び/又は結腸オルガノイドが、哺乳動物のものである、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
29.腸及び/又は結腸オルガノイドが、ヒトのものである、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.対象が哺乳動物である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
31.対象がヒトである、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.腸及び/又は結腸オルガノイドを解離させて、解離細胞集団を作製することを更に含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
33.解離細胞集団が、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の多細胞断片の形態であるか、又は少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の多細胞断片の形態である、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
34.腸及び/又は結腸オルガノイドをインビトロで、任意選択で多能性幹細胞から産生することを更に含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
35.実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法における使用のための、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団。
36.上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む解離細胞集団を含む、細胞懸濁液。
37.間葉系細胞型が、ビメンチン(VIM)及び/又はエラスチンミクロフィブリルインターフェーサ1(elastin microfibril interfacer 1、EMILIN1)を発現し、上皮細胞型が、E-カドヘリン(CDH1)及び/又は尾側型ホメオボックス2(caudal type homeobox 2、CDX2)を発現する、実施形態36に記載の細胞懸濁液。
38.解離細胞集団が腸及び/又は結腸オルガノイドから解離され、腸及び/又は結腸オルガノイドが上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む、実施形態36又は37に記載の細胞懸濁液。
39.腸及び/又は結腸オルガノイドが、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚体内胚葉細胞から選択される前駆細胞に由来している、実施形態38に記載の細胞懸濁液。
40.細胞懸濁液又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドが、対象に対して同種である、実施形態35~39のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
41.細胞懸濁液又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドが、対象からの細胞に由来しており、腸及び/又は結腸オルガノイドが、対象に対して自家である、実施形態35~40のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
42.細胞懸濁液又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドが、対象から単離された細胞に由来する人工多能性幹細胞に由来している、実施形態41に記載の細胞懸濁液。
43.解離細胞集団が、腸及び/又は結腸オルガノイドの酵素的解離及び/又は機械的解離によって調製される、実施形態35~42のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
44.酵素的解離が、腸及び/又は結腸オルガノイドを、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせで解離させることを含む、実施形態43に記載の細胞懸濁液。
45.機械的解離が、腸及び/又は結腸オルガノイドを、連続的により狭くなる径のチャネルに通すことを含む、実施形態43又は44に記載の細胞懸濁液。
46.解離細胞集団が、MKI67+増殖性細胞を含む、実施形態35~45のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
47.解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージが、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、若しくは95%、又は前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージである、実施形態35~46のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
48.解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージが、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、若しくは15%以下、又は前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージである、実施形態35~47のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
49.細胞懸濁液中の解離細胞集団の濃度が、約10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mL、又は前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度である、実施形態35~48のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
50.解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞の濃度が、約10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mL、又は前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度である、実施形態35~49のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
51.解離細胞集団が、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の多細胞断片の形態、又は少なくともそれらの多細胞断片の形態、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージである、実施形態35~49のいずれか1つに記載の細胞懸濁液。
52.有効量の実施形態35~51のいずれか1つに記載の細胞懸濁液と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
53.腸損傷の治療における使用のための、実施形態35~51のいずれか1つに記載の細胞懸濁液又は実施形態52に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書に記載の特徴に加えて、追加の特徴及び変形例は、以下の図面及び例示的な実施形態の説明から容易に明らかになるであろう。これらの図面は実施形態を描画しており、範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
図1A】損傷した腸のインビボでの組織再生に寄与する、解離されたHIOの実施形態を描画する。図1Aは、実験設計の概略の実施形態を描画する。
図1B-G】損傷した腸のインビボでの組織再生に寄与する、解離されたHIOの実施形態を描画する。図1Bは、採取された再シードしたループの明視野(左パネル)及びGFP(右パネル)画像を描画する。生存-GFPの存在により、術後10週でループ内に取り込まれたGFP-HIO断片を実証している。黒色及び白色の破線は、ループの外周を示す。GFP画像の白色破線内の破線は、ループ内の生存-GFP発現領域の外周を示す。スケールバー=1mm。図1Cは、図1Bに写っている、ループ内の生存-GFP発現領域の定量化の実施形態を描画する。生存-GFPを発現するループ表面積の、全ループのパーセンテージとしてのバイオリンプロット、n=7。図1Dは、図1Bに写っている、生存-GFPが存在する切開された領域内のヒト細胞に対する免疫染色の実施形態を描画する。図1Eは、断片化されたエンテロイドを用いて再シードした、採取されたループの明視野画像(左)及びGFP画像(右)の実施形態を描画する。生存-GFPの存在により、術後10週でループ内に取り込まれたGFP-エンテロイド断片を実証している。黒色及び白色の破線は、ループの外周を示す。スケールバー=1mm。図1Fは、図1Eに写っている、ループ内の生存-GFP発現領域の定量化の実施形態を描画する。生存-GFPを発現するループ表面積の、全ループのパーセンテージとしてのバイオリンプロット、n=7。図1Gは、図1Eで生存-GFPが存在する切開された領域内のヒト細胞に対する免疫染色の実施形態を描画する。
図1H】損傷した腸のインビボでの組織再生に寄与する、解離されたHIOの実施形態を描画する。図1Hは、ヒト特異的マーカー(KU80)及び核(ヘマトキシリン)について染色された、損傷したシャムループの代表的なタイルスキャンの実施形態を描画し、スケールバー=0.5cm、n=3。ヒト起源の細胞は、シャムループの組織全体にわたって観察されなかった。
図2A-D】図2Aは、ヒト特異的マーカー(KU80)及び核(ヘマトキシリン)について染色された、損傷及び再シードしたループの代表的なタイルスキャンの実施形態を描画し、スケールバー=0.5cm、n=7。ヒト起源の細胞は、再シードしたループ全体にわたって観察された。図2Bは、図2Aにおける粘膜及び筋層領域の高倍率画像の実施形態を描画し、スケールバー=100μm。図2Cは、アクチンアルファ2、平滑筋(Actin Alpha 2、ACTA2)、GFP、及び核(DAPI)について染色された、シャム手術したループ及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画し、スケールバー=50μm、両グループともn=3。図2Dは、チューブリンベータ3クラスIII(Tubulin Beta 3 Class III、TUBB3)及び核(ヘマトキシリン)について染色された、シャム手術したループ及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画し、スケールバー=50μm、両グループともn=3。矢じりは、ラット宿主からの神経束を示す。
図3A】遺伝子編集後に正常な核型を保持するH1-GFP細胞株の実施形態を描画する。Gバンドの核型分析により、GFP挿入後のH1胚性幹細胞株の正常な(46、XY)核型を実証している。
図3B】合格結果を示す、GFP挿入後のH1胚性幹細胞株のショートタンデムリピート分析の電気泳動図の実施形態を描画する。
図4】粘膜切除手術中の重要な工程の写真の実施形態を描画する。パネルAは、ループ創出及び吻合を描画し、矢じりは吻合部位を指し示す。パネルBは、遠位端がブルドッグクランプで閉じられている間に、開いた近位端からループを化学的に損傷することを描画する。パネルCは、歯科用侵入型フロッサーでループを機械的に損傷することを描画する。パネルDは、遠位端が吸収性縫合糸で閉じられている間に、近位開口部からループを再シードすることを描画し、矢じりは吸収性縫合糸を指し示す。パネルEは、エンドツーサイドのループの得られた解剖学的構造を描画し、破線の白色の輪郭はループ構造を示す。
図5】急性経壁腸損傷モデルの実施形態を描画する。パネルAは、健康なラット空腸(左)及び新たに損傷したラット空腸ループ(右)の代表的なヘマトキシリン及びエオシン染色切片を描画し、スケールバー=50μm、両グループともn=3。パネルBは、健康な空腸(左)及び新たに損傷した空腸ループ右)の代表的な走査型電子顕微鏡写真を描画する。スケールバー=100μm。上皮は、化学的及び機械的損傷モデルに起因して、筋層に目に見える分裂を伴って大部分が剥がれている。
図6A】術後10週をエンドポイントとする粘膜切除手順に関連する生存率の実施形態を描画する。図6Aは、術後10週をエンドポイントとする粘膜切除手順に関するカプラン・マイヤー曲線の実施形態を描画する。シャム/培地再シードn=3、断片化されたHIO再シードn=17(11)、及び断片化されたエンテロイド再シードn=12(8)の合計32の手順を実行した。図6Bは、術後10週のエンドツーサイドのブラインドループの代表的な採取時画像の実施形態を描画する。
図6B】術後10週をエンドポイントとする粘膜切除手順に関連する生存率の実施形態を描画する。図6Aは、術後10週をエンドポイントとする粘膜切除手順に関するカプラン・マイヤー曲線の実施形態を描画する。シャム/培地再シードn=3、断片化されたHIO再シードn=17(11)、及び断片化されたエンテロイド再シードn=12(8)の合計32の手順を実行した。図6Bは、術後10週のエンドツーサイドのブラインドループの代表的な採取時画像の実施形態を描画する。
図7A】経時的に幹細胞ニッチを再生するHIOの初期ループ生着の実施形態を描画する。図7Aは、ヒト特異的マーカー(KU80)及び核(ヘマトキシリン)について染色された培地単独若しくは断片HIO(上パネル)、又は上皮マーカー(CDH1)、増殖マーカー(MKI67)、及び核(DAPI)(下パネル)で再シードした7日後のループの代表的な画像の実施形態を描画する。生着したヒトの寄与物は、解離されたHIOで再シードしたループのみであった。両グループともn=4。図7Bは、増殖マーカー(MKI67)、上皮マーカー(CDH1)、幹細胞活性の代理マーカー(OLFM4)、及びテロサイトマーカー(F3)について染色された、10週間後の対照ヒト空腸及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画する。両グループともn=3。全てのスケールバー=100μm。
図7B】経時的に幹細胞ニッチを再生するHIOの初期ループ生着の実施形態を描画する。図7Aは、ヒト特異的マーカー(KU80)及び核(ヘマトキシリン)について染色された培地単独若しくは断片HIO(上パネル)、又は上皮マーカー(CDH1)、増殖マーカー(MKI67)、及び核(DAPI)(下パネル)で再シードした7日後のループの代表的な画像の実施形態を描画する。生着したヒトの寄与物は、解離されたHIOで再シードしたループのみであった。両グループともn=4。図7Bは、増殖マーカー(MKI67)、上皮マーカー(CDH1)、幹細胞活性の代理マーカー(OLFM4)、及びテロサイトマーカー(F3)について染色された、10週間後の対照ヒト空腸及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画する。両グループともn=3。全てのスケールバー=100μm。
図8A】生着したHIOの領域同一性が維持されていることを示す画像の実施形態を描画する。図8Aは、近位腸上皮転写因子(GATA4)及び上皮(CDH1)(左パネル)、パネート細胞マーカー(DEFA5)(中央パネル)、並びに炭水化物消化に関与する酵素(SI)(右パネル)について染色された、ヒト空腸及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画する。図8Bは、遠位回腸及び結腸に存在するDNA結合タンパク質(SATB2)、コロノサイトマーカー(MS4A12)、及び結腸ムチン(MUC5B)について染色された、ヒト結腸及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画する。全てのスケールバー=100μm、全グループn=3。
図8B】生着したHIOの領域同一性が維持されていることを示す画像の実施形態を描画する。図8Aは、近位腸上皮転写因子(GATA4)及び上皮(CDH1)(左パネル)、パネート細胞マーカー(DEFA5)(中央パネル)、並びに炭水化物消化に関与する酵素(SI)(右パネル)について染色された、ヒト空腸及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画する。図8Bは、遠位回腸及び結腸に存在するDNA結合タンパク質(SATB2)、コロノサイトマーカー(MS4A12)、及び結腸ムチン(MUC5B)について染色された、ヒト結腸及び再シードしたループの代表的な画像の実施形態を描画する。全てのスケールバー=100μm、全グループn=3。
図9A-D】再シードしたループの新生上皮が化学刺激に応答することを示すデータの実施形態を描画する。図9Aは、ウッシングアッセイのためにスライダに取り付けられた健康なラット空腸(ループの近位)の代表的な明視野(左パネル)及び生存GFP(右パネル)画像の実施形態を描画し、破線円=サイダー(sider)の開口部。図9Bは、ウッシングアッセイのためにスライダに達した再シードしたループの代表的な明視野(左パネル)及び生存GFP(右パネル)画像の実施形態を描画し、破線円=スライダの開口部。GFPの発現により、セグメントの再シードの成功及び細胞の起源を検証する。図9C図9Dは、健康な空腸(図9C)及びGFP+再シードしたループ(図9D)を使用した、ウッシングチャンバ実験において測定された短絡電流(Isc)の代表的な時間経過の実施形態を描画する。
図9E-H】再シードしたループの新生上皮が化学刺激に応答することを示すデータの実施形態を描画する。図9Eは、10μMのフォルスコリン、100μMのIBMX、及び100μMのブメタニドに応答した、Iscの計算された変化のグラフの実施形態を描画する。図9Fは、健康なラット空腸及びGFP+再シードしたループのベースライン経上皮電気抵抗のグラフの実施形態を描画する。図9Gは、3時間にわたる健康なラット空腸及びGFP+再シードしたループのFITC-デキストラン透過性のグラフの実施形態を描画する(上の線はループである)。図9Hは、図9Gのグラフから計算されたFITCフラックスの実施形態を描画する。ウィルコクソン符号順位検定を使用して、図9E図9F、及び図9Hにおけるグループ間の統計的有意性を求めた。両グループともn=5。
図10A-D】再シードのためのインビトロでのHIO及びエンテロイド断片化、並びに細胞数の決定の実施形態を描画する。図10Aは、インタクトなHIO(左パネル)及び25Gで終わる一連のニードルを通して剪断することによって作製されたHIO断片(右パネル)の代表的な明視野及びGFP画像の実施形態を描画する。スケールバー=500μm。図10Bは、図10Aと同じであるが、HIOの代わりにエンテロイドを使用したものを描画する。図10Cは、解離されたHIO又はエンテロイドの自動細胞計数の定量化中に取得された代表的な明視野画像の実施形態を描画する。図10Dは、単一核調製物から計算されたHIO又はエンテロイド当たりの平均の細胞数のグラフの実施形態を描画する。n=3のHIO及びn=4のエンテロイド調製物。
図11A-B】HIOの実施形態が、それらの宿主内で生体内分布を示さなかったことを描画する。図11Aは、ヒト特異的マーカー(KU80、茶色)及び核(ヘマトキシリン、青色)について染色された、術後10週での組織の代表的な画像の実施形態を描画する。移植されたHIOでは、主にKU80+細胞が存在するが、シードした粘膜切除手順を受けたラットの様々な器官では、KU80+細胞は観察されなかった。スケールバー=100μm。図11Bは、図11Aに示されるように、ラットから収集された器官に対するAlu PCRからのCt値のドットプロットの実施形態を描画する。点線は、陽性シグナル(ヒト細胞の存在)についてのCt値の閾値を示す。白丸は、未定値又は40より大きいCtを示す。ヒト細胞の存在の範囲内に入るデータ点はなかった。グループ当たりn=3。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多能性幹細胞から生成された腸オルガノイド又は結腸オルガノイドからの解離細胞を使用する、腸の再構成及び傷害修復のための臨床的に意義のある方法及びプロトコルが、本明細書で開示されている。ヒト多能性幹細胞に由来するヒト腸オルガノイド(human intestinal organoid、HIO)及びヒト結腸オルガノイド(human colonic organoid、HCO)などの腸オルガノイド又は結腸オルガノイドから解離された細胞は、インビボで宿主の腸の損傷したループ内に生着し、再生に寄与し、粘膜及び筋層の両方を再構成することができる。慢性の屈折性腸疾患のための新しい治療戦略は経壁再生能を必要とするので、臨床的観点から、このデータは刺激的である。本明細書で開示されているように、器官表面積の実質的な生着が10週以内に達成され(エンテロイドを使用した場合のわずか1.68%と比較して、10週後に表面積で16.93%の平均生着)、腸オルガノイド又は結腸オルガノイドのシード材料が経時的に排除され又は洗い流されず、上皮のみのシード材料よりも効率的であることを示す。
【0014】
以前の研究では、Yuiらが、エンテロイド(すなわち、上皮のみを含み間葉を含まない成体腸組織に由来するオルガノイド様構造体)を使用した場合、移植後4週で、大腸炎マウスにおけるドナー細胞の生着/増殖速度を、マウス当たり0.02%細胞又は約100細胞として報告している。いくつかの類似の報告もまた、腸及び結腸の治癒に寄与するエンテロイドの能力を実証しているが、効率はほとんど報告されていない。ごく最近では、Sugimotoらが、マウス結腸内での回腸エンテロイドの生着を実証した。
【0015】
本明細書の開示は、潜在的な細胞療法としてインビボでの腸修復を達成するための、上皮及び間葉の両方を含む多系統シード材料を使用する最初の報告である。ここでの方法は、上皮幹細胞ニッチが、天然組織が機能していないか又は損傷を受けた領域において、シード材料によって排他的に生成されることを可能にする。取り込まれると、上皮幹細胞コンパートメントは10週までに再出現し、生着したHIO断片の領域同一性は保持された。ループの新生上皮は機能的であり、エクスビボでの生理学的ウッシングチャンバアッセイで観察されるように、適切なバリア完全性を伴って化学刺激に応答した。腸(gut)のより多様で特異的な領域を表す多能性幹細胞由来のオルガノイドを使用して、プラットフォームを、結腸のような胃腸管の追加の領域に拡張することができる。
【0016】
特にヒトのための多能性幹細胞由来のオルガノイド技術は、過去10年間にわたって組織工学の状況を変えてきた。組織工学の基本的な目標は、生成された材料が、損傷した組織又は器官全体を機能的に回復又は改善する能力にある。インビボでの腸の経壁傷害モデルを使用して、腸オルガノイドの治療能力を調査した。hPSCからデノボで生成されたHIOは、上皮及び間葉系構成要素の両方を含む。異種移植前臨床損傷モデルでは、管腔由来の解離されたHIOは、再生プロセス中に生着し、増殖することが実証された。粘膜層の回復が観察されただけでなく、筋層全体にわたって著しい取り込みも観察された。更なる分析により、小腸領域化の恒常的再生及び保持のための上皮幹細胞/前駆体系の再出現が明らかになった。エクスビボでの生理学的読み取りを通して観察されたように、新生上皮は化学刺激に応答し、その透過性は健康な隣接する宿主の腸と同様であった。これらの知見は、完全な回復治療の選択肢が現在欠如している慢性非治癒性潰瘍性腸傷害を治療するための、HIOの治療的使用のための興味深い概念実証を提供する。
【0017】
腸損傷を治癒するための2つの潜在的な細胞療法の供給源は、エンテロイド及びヒト腸オルガノイド(HIO)である。エンテロイドは、インビトロで、患者の腸又は移植されたHIOから単離された陰窩に由来する上皮のみの構造体である。それらは、全ての分化した上皮細胞サブタイプ、例えば、エンテロサイト、杯細胞、パネート細胞、及び腸内分泌細胞を含み得るが、それらは、ヒト腸に存在する間葉系、神経系、及び免疫コンパートメントを欠く。いくつかのエビデンスは、エンテロイドを使用して、損傷した腸上皮を置き換えることができることを示すが、それらは、経壁傷害に完全に対処することはできない。エンテロイドとは異なり、HIOは、子宮内の胎児腸組織の分化を促進する同じ小分子成長因子を使用して、ヒト多能性幹細胞の段階的分化を介して生成される。HIOは、上皮及び間葉系細胞型の両方を含み、これらは移植の際に積層構造を形成する。生着及び成熟のためのバイオリアクターとして免疫無防備状態の宿主を利用して、移植されたHIOは、陰窩/絨毛軸、血管系、粘膜筋板、並びに内輪及び外縦平滑筋層の両方を含む、ヒト腸を連想させる構造体に発生する。前臨床のげっ歯類損傷モデルにおいて、エンテロイド及びHIOの両方が損傷した腸を再生する能力が調査された。
【0018】
オルガノイド又はエンテロイドを作製する方法は、米国特許第9,719,068号及び同第10,174,289号、並びにPCT公開第WO2015/183920号、同第WO2016/061464号、同第WO2017/192997号、同第WO2018/085615号、同第WO2018/085622号、同第WO2018/085623号、同第WO2018/226267号、同第WO2018/106628号、同第WO2018/200481号、同第WO2018/191673号、同第WO2019/074793号、同第WO2019/126626号、同第WO2020/056158号、同第WO2020/023245号、同第WO2020/160371号、同第WO2020/243613号、同第WO2021/030373号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0019】
定義
以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面では、文脈上別段の指示がない限り、典型的には、類似の記号は類似の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された例解的な実施形態は、限定することを意味するものではない。本明細書に提示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に一般に記載され、図に例解される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、及び設計することができ、それらは全て、本明細書に明示的に企図されることが容易に理解されよう。
【0020】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって本開示に照らして閲読されると、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の目的のために、次の用語を以下に説明する。
【0021】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0022】
「約」は、参照する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量又は長さに対し10%と同程度に変動する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量又は長さを意味する。
【0023】
本明細書全体を通して、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」という言葉は、記載された工程若しくは要素又は工程若しくは要素のグループを包含することを意味するが、いかなる他の工程若しくは要素又は工程若しくは要素のグループも排除しないことを意味することが理解されよう。「からなる(consisting of)」とは、「からなる」という語句に続くものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在しなくてもよいことを示す。「本質的にからなる(consisting essentially of)」とは、この語句の後に列挙されたあらゆる要素の包含を意味しており、この列挙された要素に関して本開示で明示される活性若しくは作用を妨げない又はこの活性若しくは作用に寄与しない他の要素に限定される。したがって、「本質的にからなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、列挙された要素の活性若しくは作用に実質的な影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよく、又は存在しなくてもよいことを示す。
【0024】
本明細書で使用される「個体」、「対象」、又は「患者」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類、又はトリ、例えば、ニワトリ、並びに任意の他の脊椎動物又は無脊椎動物を意味する。「哺乳動物」という用語は、通常の生物学的意味で使用される。したがって、これには、具体的には、サル(simian)(チンパンジー、類人猿、サル(monkey))及びヒトを含む霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される「有効量」又は「有効用量」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、観察可能な効果をもたらす記述された組成物又は化合物のその量を指す。現在開示されている主題の活性組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象及び/又は用途に対して所望の応答を達成するのに有効である活性組成物又は化合物の量を投与するために変えることができる。選択される投与量レベルは、組成物の活性、配合物、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療される状態の重症度、並びに治療される対象の身体的状態及び病歴が挙げられるが、これらに限定されない様々な要因に依存するであろう。いくつかの実施形態では、最小用量が投与され、用量制限毒性がない場合、用量は最小有効量に増量される。本明細書では、有効用量の決定及び調整、並びにそのような調整をいつどのように行うかの評価が企図されている。
【0026】
本明細書で使用される「機能」及び「機能的」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、生物学的、酵素的、又は治療的機能を指す。
【0027】
本明細書で使用される「阻害する」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、生物学的活性の減少又は防止を指すことができる。減少は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは100%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるパーセンテージ、あるいは前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内にある量であり得る。本明細書で使用される場合、「遅延」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、生物学的事象の、そうでない場合に予想されるよりも遅い時間への遅れ、延期、又は先送りを指す。遅延は、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、若しくは約それら以下であるパーセンテージ、又は前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内にある量の遅延であり得る。阻害及び遅延という用語は、必ずしも100%の阻害又は遅延を示すとは限らない。部分的な阻害又は遅延が実現され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、(1)最初に産生されたとき(自然界及び/又は実験環境で)に、それが関連付けられた構成要素の少なくともいくつかから分離された、かつ/又は(2)人間の手によって産生、調製、及び/若しくは製造された、物質及び/又は実体を指す。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に関連していた他の構成要素の10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、実質的に100%、若しくは100%と等しいか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるもの(又は前述の値を含む及び/又はまたがる範囲)から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、実質的に100%、若しくは100%純粋であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下(又は前述の値を含む及び/又はまたがる範囲)である。本明細書で使用される場合、「単離された」物質は、「純粋」であり得る(例えば、他の構成要素を実質的に含まない)。本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、多細胞生物又は組織に含まれない細胞を指してもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「インビボ」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を与えられ、組織抽出物又は死んだ生物とは対照的に、生きている生物、通常は動物、ヒトを含む哺乳動物、及び植物内での方法の実行を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「エクスビボ」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を与えられ、自然条件のほとんど変化のない生体外での方法の実行を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を与えられ、生物学的条件の外、例えばペトリ皿又は試験管内での方法の実行を指す。
【0032】
本明細書で使用される「核酸」又は「核酸分子」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)又はリボ核酸(ribonucleic acid、RNA)などのポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、自然に細胞内に現れるもの、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)によって生成された断片、及びライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用のうちのいずれかによって産生された断片を指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNA及びRNAなど)であるモノマー、又は天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドのエナンチオマー形態)、又は両方の組み合わせから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分及び/又はピリミジン若しくはプリン塩基部分に変化を有することができる。糖修飾には、例えば、1つ以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、及びアジド基による置き換えが含まれるか、又は糖をエーテル若しくはエステルとして官能化することができる。更に、糖部分全体を、アザ糖及び炭素環式糖類似体などの立体的並びに電子的に類似した構造に置き換えることができる。塩基部分の修飾の例としては、アルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリン若しくはピリミジン、又は他の周知の複素環式置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合又はそのような結合の類似体によって結合することができる。ホスホジエステル結合の類似体としては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、又はホスホルアミデートが挙げられる。「核酸分子」という用語はまた、いわゆる「ペプチド核酸」を含み、これは、ポリアミド骨格に結合した天然に存在する又は修飾された核酸塩基を含む。核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれかであり得る。「オリゴヌクレオチド」は、核酸と互換的に使用することができ、二本鎖若しくは一本鎖のDNA又はRNAのいずれかを指すことができる。核酸は、様々な生物学的システムにおける核酸の増幅及び/又は発現に使用することができる核酸ベクター又は核酸構築物(例えば、プラスミド、ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バクテリオファージ、コスミド、フォスミド、ファージミド、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome、BAC)、酵母人工染色体(yeast artificial chromosome、YAC)、又はヒト人工染色体(human artificial chromosome、HAC))中に含有され得る。典型的には、ベクター又は構築物はまた、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インデューサー、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、複製起点、クローニング部位、多重クローニング部位、制限酵素部位、エピトープ、レポーター遺伝子、選択マーカー、抗生物質選択マーカー、標的化配列、ペプチド精製タグ、若しくはアクセサリー遺伝子、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されないエレメントも含有するであろう。
【0033】
核酸又は核酸分子は、異なるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする1つ以上の配列を含むことができる。これらの1つ以上の配列は、同じ核酸若しくは核酸分子内で隣接して、あるいは例えば、リンカー、リピート、若しくは制限酵素部位間の余分な核酸と、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、若しくは300個の塩基長であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、若しくは約それら以下であるか、又は前述の長さのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の長さである任意の他の配列と、結合することができる。本明細書で使用される核酸に関する「下流」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、核酸が二本鎖である場合、コード化配列(センス鎖)を含有する鎖上の前の配列の3’末端の後ろにある配列を指す。本明細書で使用される核酸に関する「上流」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、核酸が二本鎖である場合、コード化配列(センス鎖)を含有する鎖上の後続の配列の5’末端の前にある配列を指す。本明細書で使用される核酸に関する「グループ化」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、直接、あるいは例えば、リンカー、リピート、若しくは制限酵素部位間の余分な核酸、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、若しくは300個の塩基長であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、若しくは約それら以下であるか、又は前述の長さのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の長さである任意の他の配列とのいずれかで近接して生じるが、一般に、機能的若しくは触媒的ポリペプチド、タンパク質、又はタンパク質ドメインをコードする間にある配列とは生じない、2つ以上の配列を指す。
【0034】
本明細書に記載の核酸は、核酸塩基を含む。一次、標準、天然、又は未修飾の塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、及びウラシルである。他の核酸塩基としては、プリン、ピリミジン、修飾された核酸塩基、5-メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、イノシン、7-メチルグアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ブロモウラシル、イソグアニン、イソシトシン、アミノアリル塩基、色素標識塩基、蛍光塩基、又はビオチン標識塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸から構成される高分子を指す。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質の多くの機能は当該技術分野において知られており、酵素、構造、輸送、防御、ホルモン、又はシグナル伝達が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、常にではないが、多くの場合、核酸テンプレートを使用してリボソーム複合体によって生物学的に産生されるが、化学合成も利用できる。核酸テンプレートを操作することにより、2つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の置換、欠失、短縮、付加、複製、又は融合などのペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質変異を実行することができる。2つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質のこれらの融合は、同じ分子内で隣接して、あるいは、例えば、リンカー、リピート、エピトープ、若しくはタグ間の余分なアミノ酸、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、若しくは300個の塩基長であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の長さのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の長さである任意の他の配列と結合することができる。本明細書で使用されるポリペプチドに関する「下流」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、前の配列のC末端の後ろにある配列を指す。本明細書で使用されるポリペプチドに関する「上流」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、後続の配列のN末端の前にある配列を指す。
【0036】
本明細書で使用される任意の所与の物質、化合物、又は材料の「純度」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、予想される存在量と比較した物質、化合物、又は材料の実際の存在量を指す。例えば、物質、化合物、又は材料は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%純粋であり得、その間の全ての小数を含む。純度は、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、脂質、細胞膜、細胞破片、小分子、分解産物、溶媒、担体、ビヒクル、若しくは汚染物質、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない望ましくない不純物の影響を受ける場合がある。いくつかの実施形態では、物質、化合物、又は材料は、宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸、プラスミドDNA、汚染ウイルス、プロテアソーム、宿主細胞培養構成要素、プロセス関連構成要素、マイコプラズマ、発熱物質、細菌内毒素、及び外来性感染性因子を実質的に含まない。純度は、電気泳動、SDS-PAGE、キャピラリ電気泳動、PCR、rtPCR、qPCR、クロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)、分光法、UV-可視分光法、赤外線分光法、質量分析法、核磁気共鳴、重量測定、若しくは滴定、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない技術を使用して測定することができる。
【0037】
本明細書で使用される任意の所与の物質、化合物、又は材料の「収率」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、予想される総量に対する物質、化合物、又は材料の実際の総量を指す。例えば、物質、化合物、又は材料の収率は、予想される総量の80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、若しくは100%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であり、その間の全ての小数を含む。収率は、反応又はプロセスの効率、望ましくない副反応、分解、投入物質、化合物、若しくは材料の品質、又は生産の任意の工程中での所望の物質、化合物、若しくは材料の損失によって影響を受ける場合がある。
【0038】
本明細書で使用される「腸オルガノイド」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、生物の小腸の多くの特性を提示する三次元細胞構造体を指す。いくつかの実施形態では、腸オルガノイドは、ヒト細胞に由来するものに関し、ヒト小腸の特性を示す。しかしながら、他の哺乳動物からの腸オルガノイドも包含される。本明細書で使用される腸オルガノイドは、多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞)又はその中間体(例えば、胚体内胚葉)に由来し、ここで、多能性幹細胞を胚体内胚葉、次いで後腸内胚葉(スフェロイドの形態であってもよい)、最終的に腸オルガノイドに分化させるプロセスは、天然に発生した腸に似た組成、構造、及び機能を有する細胞構造体をもたらす。本明細書で使用される腸オルガノイドと、成体腸上皮に由来する細胞構造体であるエンテロイドと、非多能性成体腸幹細胞から作製される他のいわゆるオルガノイドとの間の著しい差異は、本明細書で使用される腸オルガノイドが上皮及び間葉の両方を含むことである。間葉は上皮に対して重要な支持的役割を果たし、腸オルガノイドの生存能力及び頑強な機能を大幅に増強する。本明細書で使用される腸オルガノイドは、正常な腸に非常に似た上皮絨毛様巻き込みを有する管腔、及び蠕動挙動を示し得る。多能性幹細胞からの分化プロセスの結果として、本明細書で使用される腸オルガノイドはまた、エンテロサイト、杯細胞、パネート細胞、及び腸内分泌細胞を含む特殊化された腸細胞型も含む。本明細書での使用に好適な腸オルガノイドの実施形態を開示する参考文献としては、国際公開第2011/140441号、同第2016/061464号、同第2018/200481号、同第2020/160371号、及び同第2021/030373号が挙げられ、これらの各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
本明細書で使用される「結腸オルガノイド」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、生物の結腸の多くの特性を提示する三次元細胞構造体を指す。いくつかの実施形態では、結腸オルガノイドは、ヒト細胞に由来するものに関し、ヒト結腸の特性を示す。しかしながら、他の哺乳動物からの結腸オルガノイドも包含される。本明細書で使用される結腸オルガノイドは、多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞)又はその中間体(例えば、胚体内胚葉)に由来し、ここで、多能性幹細胞を胚体内胚葉、次いで後腸内胚葉(スフェロイドの形態であってもよい)、最終的に結腸オルガノイドに分化させるプロセスは、天然に発生した結腸に似た組成、構造、及び機能を有する構造体をもたらす。本明細書で使用される結腸オルガノイドと、成体結腸上皮に由来する細胞構造体であるコロノイドと、非多能性成体結腸幹細胞から作製される他のいわゆるオルガノイドとの間の著しい差異は、本明細書で使用される結腸オルガノイドが上皮及び間葉の両方を含むことである。間葉は上皮に対して重要な支持的役割を果たし、結腸オルガノイドの生存能力及び頑強な機能を大幅に増強する。本明細書で使用される結腸オルガノイドは、陰窩を有するが、絨毛様構造を実質的に含まない管腔を示し得る。多能性幹細胞からの分化プロセスの結果として、本明細書で使用される結腸オルガノイドはまた、多数の杯細胞(腸オルガノイドと比較して)及び結腸腸内分泌細胞を含む特殊化された結腸細胞型を含むが、パネート細胞を実質的に含まない。本明細書での使用に好適な結腸オルガノイドの実施形態を開示する参考文献としては、国際公開第2018/106628号が挙げられ、それは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
本明細書で使用される「断片化」、「断片化された」、「解離」、及び「解離された」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、解離されたオルガノイドの全て又は大部分がインタクトかつ健康な細胞を含むように、細胞を過度に剪断又は損傷することなく、単一細胞及び生存可能な多細胞構造体、断片、又は凝集塊の集団を作製するためのオルガノイド又は他の三次元多細胞構造体の部分的又は完全な断片化又は解離を指す。したがって、「断片化された」などは、一般に、例えば、遊離した細胞内内容物又は非生存小胞などの単一細胞の非生存細胞内構成要素又は断片を指さないが、これらの構成要素は、細胞の自然なアポトーシス又はオルガノイドの解離中の意図しない損傷によって断片化されたオルガノイド組成物の実施形態において存在し得る。オルガノイドの断片化又は解離は、当該技術分野において一般的に知られている様々な方法で行うことができる。断片化又は解離のプロセスは、得られた細胞の一部が、単一細胞としてではなく、小さい多細胞凝集塊/断片として見出されるようなものであり得る。単一細胞間で多細胞凝集塊/断片を含む解離細胞の集団が、本明細書での使用のために企図される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団又は組成物は、多細胞凝集塊/断片として排他的に存在する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団又は組成物は、多細胞凝集塊/断片を含まない単一細胞として排他的に存在する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団又は組成物は、主に(例えば、細胞の70%、80%、又は90%超)多細胞凝集塊/断片であり、比較的少ない単一細胞を含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団又は組成物は、単一細胞及び多細胞凝集塊/断片の混合物として存在する。
【0041】
本明細書で使用される「酵素的解離」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、1つ以上の酵素の触媒活性を使用するオルガノイド又は他の三次元多細胞構造体の断片化又は解離を指す。当該技術分野において一般的に周知のプロセスである酵素的解離は、通常、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシン)、又は表面若しくは細胞間結合への付着に関与する他の分子に特異的な酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)の使用を含む。
【0042】
本明細書で使用される「機械的解離」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、機械的力を使用するオルガノイド又は他の三次元多細胞構造体の断片化又は解離を指す。当該技術分野において一般的に周知のプロセスである機械的解離は、例えば、ピペット、ニードル、マイクロ流体チャネルなどの形態であってもよい狭い径のチャネルを通した粉砕によって達成されてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「多細胞凝集塊」、「細胞の凝集塊」、「多細胞断片」、「多細胞オルガノイド断片」などの用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、天然に産生される細胞外マトリックスなどの付着力によって収集される細胞を指し、一般に、これらの細胞の収集物は、単一の実体として(例えば、水性懸濁液内を)移動する。これらの多細胞凝集塊又はオルガノイド断片は、本明細書に記載されるように、古典的な酵素的及び/又は機械的解離手段によるオルガノイド及び/又はエンテロイドの解離によって生成される。したがって、当業者は、これらの解離手段によって生成された多細胞凝集塊/断片のおよそのパラメータ(例えば、凝集塊/断片当たりの細胞数、サイズ、直径、体積、最大寸法など)を求めることができる。例えば、機械的解離のために使用される狭い径のチャネルの径サイズは、凝集塊/断片の得られるサイズに影響を及ぼし得る。これらのパラメータは、顕微鏡法又はフローサイトメトリーなどの従来の方法によって定量化することができる。また本明細書で考察されるように、これらの「多細胞断片」は、オルガノイドなどのより大きい三次元細胞構造体の断片化又は分化に由来する生細胞のグループを指し、細胞以下の構成要素を指さないが、これらの細胞以下の構成要素は、より大きい三次元細胞構造体の断片化又は解離の方法に起因して組成物中に存在し得る。
【0044】
本明細書の開示に適用されるように、オルガノイド及び/又はエンテロイドの解離から作製された多細胞凝集塊/断片は、凝集塊/断片当たりの細胞数に関して定量化することができる。いくつかの実施形態では、多細胞凝集塊/断片は、10、10、10、10、若しくは10細胞であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の細胞数のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞数、例えば、10~10細胞、10~10細胞、10~10細胞、又は10~10細胞である細胞数を含み得る。いくつかの実施形態において本明細書で開示されているものに適用されるように、オルガノイド及び/又はエンテロイドの解離から作製される多細胞凝集塊/断片は、多細胞凝集塊/断片のおよその直径(又はより一般的には、不規則に細胞化された凝集塊/断片の最大寸法の長さ)に関して定量化することができる。いくつかの実施形態では、多細胞凝集塊/断片は、直径(又は最大寸法の長さ)が、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、若しくは400μmであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の長さのうちの任意の2つによって定義される範囲の間の任意の直径(又は最大寸法の長さ)、例えば、100~400μm、100~250μm、150~300μm、200~400μm、又は200~250μmである、およその直径及び/又は最大寸法を有し得る。
【0045】
本明細書で使用される「粘膜」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、胃腸管の最も内側の層を指す。上皮は、粘膜の最も内側の層であり、上皮細胞及び杯細胞などの他の特殊化された細胞が見出される場所である。上皮はまた、腸の絨毛構造を形成する。上皮は、固有層と呼ばれる結合組織、及び平滑筋の薄層によって囲まれている。
【0046】
本明細書で使用される「筋層」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、胃腸管の筋固有層を指す。筋層は、腸及び結腸の蠕動挙動を調節し、発生中の新生腸管の間葉層に由来する。
【0047】
本明細書で使用される「領域性」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、ある細胞型から別の細胞型を区別する品質及び特徴を指す。腸及び結腸(及び他の胃腸器官)の文脈において、両方の器官は、同じ胚体内胚葉に由来するが、早期の特定化は、2つの器官及びそれらの機能に相応する構成細胞の適切な発生及び分化をもたらす。その結果、腸組織は、結腸組織とは異なる領域性を示す。本明細書で示されるように、腸傷害モデルにおいて生着のために使用される腸及び結腸オルガノイドは、異なる器官(例えば、宿主結腸組織への腸オルガノイド又は宿主腸組織への結腸オルガノイド)の細胞層への取り込み後であっても、それぞれの品質を保持する。
【0048】
本明細書で使用される「腸バリア」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、栄養素の交換を依然として可能にしながら、胃腸管の管腔内内容物を周囲の組織及び循環系から分離する細胞性及び粘膜バリアを指す。このバリアは、上皮の細胞間の細胞内接合によって媒介される。腸損傷中、このバリアは破壊され得、腸の異常な機能、潜在的に病原性微生物又は抗原の身体への通過、並びに血液及び分子の管腔への漏出をもたらす。
【0049】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、用いられる投与量及び濃度で曝露されている細胞若しくは哺乳動物に対して無毒であるか、又は許容可能なレベルの毒性を有する担体、賦形剤、及び/又は安定剤を指す。本明細書で使用される「薬学的に許容される」「希釈剤」、「賦形剤」、及び/又は「担体」は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、ヒト、ネコ、イヌ、又は他の脊椎動物宿主への投与と適合性のある、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。典型的には、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/又は担体は、ヒト並びにネコ及びイヌなどの非ヒト哺乳動物を含む動物で使用するために、連邦政府、州政府の規制当局、若しくは他の規制当局によって承認されたか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に列挙された希釈剤、賦形剤、及び/又は担体である。希釈剤、賦形剤、及び/又は「担体」という用語は、医薬組成物が投与される際に用いられる希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指すことができる。そのような医薬希釈剤、賦形剤、及び/又は担体は、石油、動物、植物又は合成由来のものを含む、水及び油などの無菌液体であり得る。水、生理食塩水、並びにデキストロース及びグリセロールの水溶液は、特に注射可能な溶液用に、液体希釈剤、賦形剤、及び/又は担体として用いることができる。好適な医薬希釈剤及び/又は賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。生理学的に許容される担体の非限定的な例は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体はまた、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、アミノ酸、グルコース、マンノース、又はデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などの非イオン性界面活性剤、及びPLURONICS(登録商標)のうちの1つ以上を含み得る。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤、増量剤、乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、徐放性製剤などの形態をとることができる。製剤は、典型的には、投与様式に適合している。
【0050】
抗凍結剤は、大きい氷の結晶の形成を防止することによって、低温凍結保存の効率及び収率を改善するための、細胞組成物添加剤である。抗凍結剤としては、DMSO、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トレハロース、ホルムアミド、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、グリセロール3-リン酸、プロリン、ソルビトール、ジエチルグリコール、スクロース、トリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、又はヒドロキシエチルデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。抗凍結剤は、細胞の解凍後の生存率を高めるための栄養素(例えば、アルブミン、血清、ウシ血清、ウシ胎児血清[fetal calf serum、FCS])などの他の構成要素を含む凍結保存培地の一部として使用され得る。これらの凍結保存培地において、少なくとも1つの抗凍結剤は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下である濃度、あるいは前述の数のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出され得る。
【0051】
望ましい特性を有する追加の賦形剤としては、保存剤、アジュバント、安定剤、溶媒、緩衝液、希釈剤、可溶化剤、洗浄剤、界面活性剤、キレート剤、抗酸化剤、アルコール、ケトン、アルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid、EDTA)、クエン酸、塩、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム糖、デキストロース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、セルロース、血清、アミノ酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチルフェノールエトキシレート、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、ゼラチン、エステル、エーテル、2-フェノキシエタノール、尿素、又はビタミン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの賦形剤は、血清、アルブミン、オボアルブミン、抗生物質、不活性化剤、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、β-プロピオラクトン、ゼラチン、細胞破片、核酸、ペプチド、アミノ酸、又は成長培地構成要素又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、製造プロセスからの残留量又は汚染物質であり得る。賦形剤の量は、0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%w/wであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、若しくは約それら以下であるパーセンテージ、又は前述の数のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の重量パーセンテージで組成物中に見出され得る。
【0052】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、鎮痛剤、治療剤、他の材料などを含むがこれらに限定されない、組成物又は賦形剤の比較的非毒性の無機及び有機酸又は塩基付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例としては、塩酸及び硫酸などの鉱酸に由来するもの、及びエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸に由来するものが挙げられる。塩の形成のために好適な無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩が挙げられる。塩はまた、非毒性であり、そのような塩を形成するのに十分強いものを含む、好適な有機塩基で形成され得る。例えば、そのような有機塩基のクラスには、メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンを含む、モノ-、ジ-、及びトリアルキルアミン、モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミンを含む、モノ-、ジ-、又はトリヒドロキシアルキルアミン、グリシン、アルギニン、及びリジンを含む、アミノ酸、グアニジン、N-メチルグルコサミン、N-メチルグルカミン、L-グルタミン、N-メチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、N-ベンジルフェネチルアミン、トリヒドロキシメチルアミノエタンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0053】
適切な製剤は、選択した投与経路によって異なる。本明細書に記載の化合物の製剤及び投与のための技法は、当業者に知られている。化合物を投与する複数の技法が、経腸、経口、直腸、局所、舌下、口腔、耳内、硬膜外、皮内、エアロゾル、非経口送達(筋肉内、皮下、動脈内、静脈内を含む)、門脈内、関節内、皮内、腹膜、髄内注射、髄腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射を含む当該技術分野に存在し、これらに限定されない。医薬組成物は、一般に、特定の意図された投与経路に合わせて調整されるであろう。
【0054】
本明細書で使用される場合、「担体」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、細胞、組織及び/又は身体器官への化合物の通過、送達、及び/又は取り込みを促進する化合物、粒子、固体、半固体、液体、又は希釈剤を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、薬理学的活性を欠くが薬学的に必要又は望ましい場合がある医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤を使用して、その質量が製造及び/又は投与するには小さすぎる強力な薬物のバルクを増加させることができる。それはまた、注射、摂取又は吸入によって投与される薬物の溶解のための液体であり得る。当該技術分野における希釈剤の一般的な形態は、ヒトの血液の組成を模倣するリン酸緩衝生理食塩水などであるが、これに限定されない緩衝水溶液である。
【0056】
本明細書の開示は、多くの実施形態を説明するために肯定的な言葉を使用している。本開示はまた、物質若しくは材料、方法工程及び条件、プロトコル、又は手順などの、主題が完全に又は部分的に除外される実施形態を含む。
【0057】
本明細書で使用される「w/w%」又は「重量/重量%」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、組成物の全重量に対する成分又は薬剤の重量に100を掛けたものに関して表されたパーセンテージを指す。本明細書で使用される「v/v%」又は「体積/体積%」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、組成物の全液体体積に対する化合物、物質、成分又は薬剤の液体体積に100を掛けたものに関して表されたパーセンテージを指す。
【0058】
幹細胞
本明細書で使用される「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られている)という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、胚性及び胚外細胞型へと分化することができる幹細胞である。そのような細胞は、完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は、卵子及び精子細胞の融合から産生される。受精卵の最初の数分割によって産生される細胞も全能性である。
【0059】
本明細書で使用される「胚性幹細胞(embryonic stem cell、ESC)」という用語は、一般にES細胞とも略され、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、多能性であり、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する細胞を指す。本開示の目的のために、「ESC」という用語は、胚性生殖細胞を包含するために広義で使用される場合がある。
【0060】
本明細書で使用される「多能性幹細胞(pluripotent stem cell、PSC)」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、身体のほぼ全ての細胞型、すなわち、内胚葉(胃内壁、胃腸管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、及び外胚葉(表皮組織及び神経系)を含む3つの胚葉(胚上皮)のうちのいずれかに由来する細胞へと分化することができる任意の細胞を包含する。PSCは、着床前胚盤胞の内部細胞塊細胞の子孫であり得るか、又はある特定の遺伝子の発現を強制することによって、非多能性細胞、例えば成体体細胞の誘導によって得られてもよい。多能性幹細胞は、任意の好適な供給源に由来し得る。多能性幹細胞の供給源の例には、ヒト、げっ歯類、ブタ、及びウシを含む哺乳動物の供給源が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPSC)」という用語は、一般にiPS細胞とも略され、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、ある特定の遺伝子の「強制」発現を誘導することによって、成体体細胞などの通常は非多能性細胞から人工的に導かれる多能性幹細胞の一種を指す。理論的には、人工多能性幹細胞は、任意のタイプの成体体細胞から再プログラムすることができる。典型的には、単離することが比較的容易である体細胞を使用して、iPSCへと再プログラムする。例えば、皮膚線維芽細胞は皮膚生検によって対象から単離することができ、末梢血単核細胞は対象の末梢血から単離することができる。hiPSCは、ヒトiPSCを指す。当該技術分野において知られているいくつかの方法では、iPSCは、ある特定の幹細胞関連遺伝子の、成体線維芽細胞などの非多能性細胞へのトランスフェクションによって導かれ得る。トランスフェクションは、レトロウイルス又はレンチウイルスなどのウイルスを使用してウイルス形質導入によって達成され得る。トランスフェクトされた遺伝子は、マスター転写調節因子Oct-3/4(POU5F1)及びSox2を含み得るが、他の遺伝子も誘導の効率を向上させ得る。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞は、形態学的及び生化学的に多能性幹細胞と同様になり始め、典型的には、形態学的選択、倍加時間、又はレポーター遺伝子及び抗生物質性選択によって単離される。本明細書で使用される場合、iPSCは、第一世代iPSC、マウスにおける第二世代iPSC、及びヒト人工多能性幹細胞を含む。いくつかの方法では、4つの極めて重要な遺伝子であるOct3/4、Sox2、Klf4、及びc-Mycを使用して多能性幹細胞にヒト線維芽細胞を形質転換するためにレトロウイルス系が使用される。他の方法では、体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、及びLIN28で形質転換するためにレンチウイルス系が使用される。iPSCにおいて発現が誘導される遺伝子としては、Oct-3/4(POU5F1)、Sox遺伝子ファミリーのある特定のメンバー(例えば、Soxl、Sox2、Sox3、及びSox15)、Klfファミリーのある特定のメンバー(例えば、Klfl、Klf2、Klf4、及びKlf5)、Mycファミリーのある特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、及びN-myc)、Nanog、LIN28、Tert、Fbx15、ERas、ECAT15-1、ECAT15-2、Tcl1、β-カテニン、ECAT1、Esg1、Dnmt3L、ECAT8、Gdf3、Fth117、Sal14、Rex1、UTF1、Stella、Stat3、Grb2、Prdm14、Nr5a1、Nr5a2、若しくはE-カドヘリン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される「前駆細胞」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、本明細書に記載の方法で使用することができる任意の細胞を包含し、方法を通じて、1つ以上の前駆細胞は、それ自体を再生するか、又は1つ以上の特殊化された細胞型へと分化する能力を獲得する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性であるか、又は多能性になる能力を有する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性を獲得するために外部因子(例えば、成長因子)の処理に供される。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、全能性(totipotent)(又は全能性(omnipotent))幹細胞、多能性幹細胞(人工又は非人工)、多分化能性(multipotent)幹細胞、少能性(oligopotent)幹細胞、及び単能性幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、胚、乳児、小児、又は成人由来であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、遺伝子操作又はタンパク質/ペプチド処理を介して多能性が付与されるような処理に供される体細胞であり得る。前駆細胞としては、胚性幹細胞(ESC)、胚性がん腫細胞(embryonic carcinoma cell、EC)、及び胚盤葉上層幹細胞(epiblast stem cell、EpiSC)が挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つの工程は、多能性であるか又は多能性になるように誘導され得る幹細胞を得ることである。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は胚性幹細胞に由来し、また、この胚性幹細胞は哺乳動物初期胚の全能性細胞に由来し、インビトロで無限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期段階の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を導くための方法は、当該技術分野において周知である。ヒト胚性幹細胞H9(Human embryonic stem cells H9、H9-hESC)は、本出願に記載の例示的な実施形態で使用されるが、本明細書に記載の方法及び系が、任意の幹細胞に適用可能であることが当業者によって理解されるであろう。
【0064】
本開示による実施形態において使用され得る追加の幹細胞としては、National Stem Cell Bank(NSCB)、University of California,San Francisco(UCSF)のHuman Embryonic Stem Cell Research Centerによってホストされるデータベース、Wi Cell Research InstituteのWISCセルバンク、University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC)、Novocell,Inc.(San Diego,Calif.)、Cellartis AB(Goteborg,Sweden)、ES Cell International Pte Ltd(Singapore)、Israel Institute of Technologyのテクニオン(Haifa,Israel)、並びにPrinceton University及びUniversity of PennsylvaniaによってホストされるStem Cell Databaseによって提供されるか、又はそれらに記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。本開示による実施形態において使用され得る例示的な胚性幹細胞としては、SA01(SA001)、SA02(SA002)、ES01(HES-1)、ES02(HES-2)、ES03(HES-3)、ES04(HES-4)、ES05(HES-5)、ES06(HES-6)、BG01(BGN-01)、BG02(BGN-02)、BG03(BGN-03)、TE03(13)、TE04(14)、TE06(16)、UCOl(HSF1)、UC06(HSF6)、WA01(HI)、WA07(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なヒト多能性細胞株としては、TkDA3-4、1231A3、317-D6、317-A4、CDH1、5-T-3、3-34-1、NAFLD27、NAFLD77、NAFLD150、WD90、WD91、WD92、L20012、C213、1383D6、FF、又は317-12細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
発生生物学では、細胞分化は、より特殊化されていない細胞がより特殊化された細胞型になるプロセスである。本明細書で使用される場合、「有向分化」という用語は、より特殊化されていない細胞が特定の特殊化された標的細胞型になるプロセスを記載する。特殊化された標的細胞型の特殊性は、最初の細胞の運命を定義又は改変するために使用することができる、任意の適用可能な方法によって決定することができる。例示的な方法としては、遺伝子操作、化学処理、タンパク質処理、及び核酸処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態では、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子を輸送し、胚性幹細胞と実質的に同一のiPSCをもたらすことができる。アデノウイルスは、それ自体の遺伝子を標的の宿主のうちのいずれとも組み合わせないため、腫瘍を創出する危険性が排除される。いくつかの実施形態では、iPSCを生成するために非ウイルスベースの技術が用いられる。いくつかの実施形態では、非常に低い効率ではあるが、いずれのウイルストランスフェクション系も全く使用せずに、プラスミドを介して再プログラミングを達成することができる。他の実施形態では、タンパク質の直接送達を使用してiPSCを生成し、したがってウイルス又は遺伝子修飾の必要性を排除する。いくつかの実施形態では、マウスiPSCの生成は、同様の方法論を使用して可能である:ポリアルギニンアンカーを介して細胞に運ばれるある特定のタンパク質による細胞の繰り返し処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの実施形態では、低酸素条件下で体細胞をFGF2で処理することによって多能性誘導遺伝子の発現を増加させることもできる。
【0067】
本明細書で使用される「胚体内胚葉」又は「DE」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、腸管並びに食道、胃、小腸、結腸、肝臓、及び膵臓を含む結果として生じる胃腸器官を生じる発生細胞型を指す。前方DEは、前腸、並びに肝臓及び膵臓を含むそれに関連する器官を形成し、後方DEは、中腸及び後腸を形成し、これは、小腸及び大腸、並びに泌尿生殖器系の部を形成する。DEのマーカーとしては、SOX17及びFOXA2が挙げられる。発生中、Wnt及びFGFシグナル伝達経路は、DEの前方パターン形成と後方パターン形成との間の領域化を確立する。多能性幹細胞は、アクチビンA、アクチビンB、又はノーダルなどの1つ以上のトランスフォーミング成長因子β(transforming growth factor β、TGFβ)成長因子ファミリーメンバーとともに多能性幹細胞を培養することによって、胚体内胚葉に分化させることができる。以前に調査されたように、胚体内胚葉は、下流の胃腸器官に似た三次元オルガノイド構造体に分化することができる。
【0068】
本明細書で使用される「フィーダ細胞」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、成長因子を培地に分泌するか、又は細胞表面に表示することなどによって、多能性幹細胞の成長を支援する細胞を指す。フィーダ細胞は一般に付着細胞であり、成長が停止する場合もある。例えば、フィーダ細胞は、照射(例えば、ガンマ線)、マイトマイシン-C処理、電気パルス、又は穏やかな化学固定(例えば、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドによる)によって成長が停止される。しかしながら、フィーダ細胞は、必ずしも成長を停止するとは限らない。フィーダ細胞は、成長因子の分泌、細胞表面への成長因子の表示、培養培地の無害化、又は細胞外マトリックスタンパク質の合成などの目的に役立ち得る。いくつかの実施形態では、フィーダ細胞は、支持された標的幹細胞に対して同種又は異種であり、これは、下流の用途に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、フィーダ細胞は、マウス細胞である。いくつかの実施形態では、フィーダ細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、フィーダ細胞は、マウス線維芽細胞、マウス胚性線維芽細胞、マウスSTO細胞、マウス3T3細胞、マウスSNL 76/7細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト前皮線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト脂肪間葉系細胞、ヒト骨髄間葉系細胞、ヒト羊膜間葉系細胞、ヒト羊膜上皮細胞、ヒト臍帯間葉系細胞、ヒト胎児筋細胞、ヒト胎児線維芽細胞、又はヒト成人ファロピウス管上皮細胞である。いくつかの実施形態では、フィーダ細胞から調製された馴化培地は、フィーダ細胞共培養の代わりに、又はフィーダ細胞共培養と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、フィーダ細胞は、標的幹細胞の増殖中には使用されない。
【0069】
腸及び結腸オルガノイド並びに作る方法
本明細書で開示されている腸及び結腸オルガノイドは、多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞)又はその中間体(例えば、胚体内胚葉)からの分化プロセスによって産生され、腸又は結腸の特殊化された細胞型とともに、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む。腸及び結腸オルガノイドを作るための例示的な方法は、米国特許第9,719,068号及び同第10,174,289号、並びにPCT国際公開第WO2016/061464号、同第WO2018/106628号、同第WO2018/200481号、同第WO2019/126626号、同第WO2020/160371号、同第WO2021/030373号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、腸及び結腸オルガノイドは、胚体内胚葉細胞の培養によって分化する。これらの胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉を、ノーダル、アクチビン、及び/又は成長因子のTGFβスーパーファミリーのBMPサブグループと接触させることによって、多能性細胞から分化させることができる。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞を、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB、BMP4、又はそれらの任意の組み合わせと接触させて、多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させる。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞をアクチビンAと接触させて、多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させる。
【0071】
胚体内胚葉をFGF/Wnt誘導性後方内胚葉パターニングに更に供して、後腸特異化に向けることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、腸及び結腸オルガノイドを産生するために、まず、胚体内胚葉をWntシグナル伝達経路活性化因子及びFGFシグナル伝達経路活性化因子と接触させて、胚体内胚葉を後腸内胚葉に後方化する。この培養プロセス中、後腸内胚葉は単層として成長するが、懸濁液中で後腸スフェロイドと呼ばれる細胞の凝集塊として自発的に出芽する。いくつかの実施形態では、Wntシグナル伝達経路活性化因子は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、若しくはWnt16、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Wntシグナル伝達経路活性化因子は、Wnt3aである。いくつかの実施形態では、Wntシグナル伝達経路活性化因子は、Wntシグナル伝達経路活性化因子として作用するグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(glycogen synthase kinase-3、GSK3)阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、GSK3阻害剤は、CHIR99021である。いくつかの実施形態では、FGFシグナル伝達経路活性化因子は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15(FGF19、FGF15/FGF19)、FGF16、FGF17、FGF18、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、FGFシグナル伝達経路活性化因子は、FGF4である。産生された後腸内胚葉及び後腸スフェロイドは、CDX2+間葉に囲まれたCDX2+分極上皮を含み、前腸内胚葉を示すAlb及びPdx1を欠く。
【0073】
懸濁液中で操作され、三次元培養のために基底膜マトリックス(例えば、マトリゲル)中に包埋され得る後腸内胚葉又は後腸スフェロイドの形成後、BMPシグナル伝達経路は、異なる領域型の腸の形成を調節する。後腸段階後のBMPシグナル伝達の阻害は、近位腸細胞の運命(十二指腸/空腸)を促進する。後腸段階後のBMPシグナル伝達の活性化は、より遠位の腸細胞の運命(盲腸/結腸)を促進する。いくつかの実施形態では、後腸内胚葉をBMPシグナル伝達経路活性化因子と接触させて、後腸内胚葉を腸オルガノイドに分化させる。いくつかの実施形態では、後腸内胚葉をBMPシグナル伝達経路阻害剤と接触させて、後腸内胚葉を結腸オルガノイドに分化させる。いくつかの実施形態では、BMPシグナル伝達経路活性化因子は、BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、BMP11、BMP15、IDE1、若しくはIDE2、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、BMPシグナル伝達経路活性化因子は、BMP2を含む。いくつかの実施形態では、BMPシグナル伝達経路阻害剤は、ノギン、RepSox、LY364947、LDN193189、若しくはSB431542、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、BMPシグナル伝達経路阻害剤は、ノギンを含む。
【0074】
解離されたオルガノイド組成物
上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む解離細胞集団を含む細胞懸濁液が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は腸及び/又は結腸オルガノイドから解離され、腸及び/又は結腸オルガノイドは上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む。いくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドは、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚体内胚葉細胞から選択される前駆細胞に由来している。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドは、対象に対して同種である。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドは、対象からの細胞に由来しており、腸及び/又は結腸オルガノイドは、対象に対して自家である。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドは、対象から単離された細胞に由来する人工多能性幹細胞に由来している。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、腸及び/又は結腸オルガノイドの酵素的解離及び/又は機械的解離によって調製される。いくつかの実施形態では、酵素的解離は、腸及び/又は結腸オルガノイドを、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせで解離させることを含む。いくつかの実施形態では、機械的解離は、腸及び/又は結腸オルガノイドを、連続的により狭くなる径のチャネルに通すことを含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、MKI67+増殖性細胞を含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージは、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、若しくは95%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージ、例えば、10~50%、40~80%、70~95%、85~95%、又は30~95%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージは、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、若しくは95%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、85~95%、85~90%、90~95%、又は88~92%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の細胞の残りのパーセンテージは、上皮細胞型から構成される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージは、0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、若しくは75%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージ、例えば、0~75%、0~25%、0~15%、5~25%、5~15%、10~50%、又は50~75%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージは、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、若しくは15%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、5~15%、5~10%、10~15%、又は8~12%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の細胞の残りのパーセンテージは、間葉系細胞型から構成される。
【0075】
いくつかの実施形態では、細胞懸濁液中の解離細胞集団の濃度は、10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mLであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度、例えば、10~1011、10~10、10~1011、又は10~1010細胞/mLである。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞濃度は、10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mLであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度、例えば、10~1011、10~10、10~1011、又は10~1010細胞/mLである。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞濃度は、10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mLであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度、例えば、10~1011、10~10、10~1011、又は10~1010細胞/mLである。
【0076】
いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、解離細胞集団中の総細胞の30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、30~100%、50~100%、75~100%、90~100%、30~75%、又は50~95%であるパーセンテージの多細胞断片から構成される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の多細胞断片の形態である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の多細胞断片の形態である。
【0077】
いくつかの実施形態では、解離細胞集団の間葉系細胞型は、ビメンチン(VIM)及び/又はエラスチンミクロフィブリルインターフェーサ1(EMILIN1)を発現する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団の上皮細胞型は、E-カドヘリン(CDH1)及び/又は尾側型ホメオボックス2(CDX2)を発現する。
【0078】
有効量の本明細書で開示されている細胞懸濁液及び/又は解離細胞集団のいずれかと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む医薬組成物も、本明細書で開示されている。
【0079】
使用方法
いくつかの実施形態では、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む、本明細書で開示されているような、又はそうでなければ当該技術分野において知られている腸及び結腸オルガノイドが、本明細書で開示されている腸損傷を修復する方法において使用される。
【0080】
本明細書で提供されるように、方法は、腸損傷を治療することを対象とする。腸損傷の治療は、損傷した腸組織の健康な状態への回復若しくは緩和、又は腸損傷の進行若しくは発生の遅延、阻害、予防、若しくは抑止を包含する。また、腸損傷に関連する1つ以上の症候の改善も包含される。本明細書において、腸損傷は、腸組織の傷害(injured)を受けた状態を指す場合があり、これは、必ずしもではないが、機械的及び/又は化学的傷害(insult)に起因する場合があり、必ずしもではないが、腸組織のアポトーシス及び/又は壊死挙動に関連する場合がある。他の形態の腸損傷及びその症候も想定される。
【0081】
腸損傷の治療を必要とする対象において腸損傷を治療する方法が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団を、対象の腸の管腔壁に投与することを含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団の間葉系細胞型は、ビメンチン(VIM)及び/又はエラスチンミクロフィブリルインターフェーサ1(EMILIN1)を発現する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団の上皮細胞型は、E-カドヘリン(CDH1)及び/又は尾側型ホメオボックス2(CDX2)を発現する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージは、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、若しくは95%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは先行するパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージ、例えば、10~50%、40~80%、70~95%、85%~95%、又は30~95%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞のパーセンテージは、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、若しくは95%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、85~95%、85~90%、90~95%、又は88~92%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の細胞の残りのパーセンテージは、上皮細胞型から構成される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージは、0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、若しくは75%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内のパーセンテージ、例えば、0~75%、0~25%、0~15%、5~25%、5~15%、10~50%、又は50~75%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞のパーセンテージは、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、若しくは15%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、5~15%、5~10%、10~15%、又は8~12%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の細胞の残りのパーセンテージは、間葉系細胞型から構成される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、細胞懸濁液として投与される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液中の解離細胞集団の濃度は、10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mLであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度、例えば、10~1011、10~10、10~1011、又は10~1010細胞/mLである。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の間葉系細胞型である細胞濃度は、10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mLであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度、例えば、10~1011、10~10、10~1011、又は10~1010細胞/mLである。いくつかの実施形態では、解離細胞集団中の上皮細胞型である細胞濃度は、10、10、10、10、10、1010、若しくは1011細胞/mLであるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の濃度のうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意の細胞濃度、例えば、10~1011、10~10、10~1011、又は10~1010細胞/mLである。いくつかの実施形態では、ここで企図される対象の腸は、小腸及び/又は結腸を含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団を対象の腸の管腔壁に投与することは、細胞集団を、腸損傷によって影響を受けた腸の管腔の位置に投与することを含む。いくつかの実施形態では、位置は、腸損傷によって影響を受けた腸に直接隣接するか又はその近くである。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、管腔壁の表面に投与される。
【0082】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、解離細胞集団は、細胞懸濁液として対象の腸の管腔壁に投与される。いくつかの実施形態では、懸濁液は生理食塩水又は乳酸リンゲル溶液などの等張溶液中にある。いくつかの実施形態では、細胞集団を対象の腸の管腔壁に投与することは、非侵襲性又は低侵襲性プロセスによって細胞集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、経腸カテーテル、経鼻カテーテル、又は浣腸によって投与される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、直接管腔内注射によって投与される。
【0083】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドは、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚体内胚葉細胞から選択される前駆細胞に由来している。腸及び/又は結腸オルガノイドにおいて、対象に対して同種である。いくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドは、対象から単離された細胞に由来している。いくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドは、対象に対して自家である。いくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドは、対象から単離された細胞に由来する人工多能性幹細胞に由来している。いくつかの実施形態では、対象から単離された細胞は、多能性再プログラミングに適した任意の細胞であり得る。使用される多能性再プログラミングに適した一般的な細胞としては、皮膚線維芽細胞又は末梢血単核細胞(PBMC)が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象から単離された細胞は、対象からの皮膚線維芽細胞又はPBMCを含む。
【0084】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団は、腸及び/又は結腸オルガノイドの酵素的解離及び/又は機械的解離によって調製される。いくつかの実施形態では、酵素的解離は、腸及び/又は結腸オルガノイドを、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、若しくはそれらの任意の組み合わせ、又はそうでなければ当該技術分野において知られている任意の他の細胞解離酵素若しくは試薬で解離させることを含む。いくつかの実施形態では、機械的解離は、腸及び/又は結腸オルガノイドを、連続的により狭くなる径のチャネルに通すことを含む。いくつかの実施形態では、チャネルは、ニードル、マイクロ流体チャネル、毛細管、又はチューブであってもよい。いくつかの実施形態では、連続的により狭くなる径のチャネルは、18ゲージ、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージ、23ゲージ、若しくは25ゲージチャネル、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、連続的により狭くなる径のチャネルは、18ゲージ、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージ、23ゲージ、及び25ゲージチャネル、あるいは前述のゲージチャネルのうちのいずれか1つ、2つ、若しくは3つを含む又は欠く一連のチャネルを含む。いくつかの実施形態では、連続的により狭くなる径のチャネルは、18ゲージチャネルを含むか、及び/又はそれから始まる。いくつかの実施形態では、連続的により狭くなる径のチャネルは、20ゲージチャネルを含む。いくつかの実施形態では、連続的により狭くなる径のチャネルは、25ゲージチャネルを含むか、及び/又はそれで終わる。いくつかの実施形態では、連続的により狭くなる径のチャネルは、18ゲージ、20ゲージ、及び25ゲージチャネルを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。
【0085】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団は、影響を受けた腸表面積1mm当たり50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、若しくは10000細胞であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の1mm当たりの任意の細胞量、例えば、1mm当たり50~10000細胞、1mm当たり50~5000細胞、1mm当たり50~1000細胞、1mm当たり5000~10000細胞、1mm当たり2000~8000細胞、又は1mm当たり500~5000細胞である濃度で対象に投与される。影響を受けた腸の表面積は、当業者による従来の方法を通じて、例えば、腸の外表面又は内表面のいずれかを巨視的に測定することによって求めることができ、ここで、絨毛突起による表面積の見かけの増加は無視又は考慮され得る。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、腸損傷の改善が観察されるまで複数回にわたって対象に投与される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下である回数にわたって、対象に投与される。
【0086】
.本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、解離細胞集団の細胞は、対象の腸の粘膜及び筋層に組み込む。いくつかの実施形態では、対象の腸に組み込まれた解離細胞集団の細胞は、それらの腸及び/又は結腸の領域性を維持する。いくつかの実施形態では、対象の腸に組み込まれた解離細胞集団の細胞又はその亜集団は、平滑筋アクチン(SMA)陽性平滑筋細胞型に分化する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、対象の腸に組み込み、腸損傷の治癒を促進する増殖マーカーKI67+(MKI67+)増殖性細胞を含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、対象への投与後に、対象の腸における腸バリアを改善する。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、対象への投与後に、対象の腸におけるインタクトな腸バリアの形成を促進する。いくつかの実施形態では、対象の腸に組み込む解離細胞集団のパーセンテージは、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、若しくは95%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、又は先行する値のうちの任意の2つによって定義される範囲、例えば、10~50%、40~80%、70~95%、又は30~95%である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団の細胞は、対象の腸の管腔壁の全表面積若しくは損傷した表面積の10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、若しくは50%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の表面積の任意のパーセンテージ、例えば、表面積の10%~50%、表面積の10%~25%、表面積の25%~50%、又は表面積の15%~35%である、対象の腸の管腔壁の表面積に組み込む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団からの細胞で構成される修復された腸組織のパーセンテージは、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは99%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、50~99%、50~75%、50~60%、75~99%、又は65~85%である。
【0087】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書で開示されている方法を使用して、腸損傷の治療を必要とする対象において腸損傷を治療する。いくつかの実施形態では、腸損傷は、腸潰瘍を含む。いくつかの実施形態では、腸潰瘍は、血液又はタンパク質の腸の管腔への漏出に関連し得る。いくつかの実施形態では、腸損傷は、化学的及び/又は機械的である。いくつかの実施形態では、腸損傷は、胃腸の病気に関連する。いくつかの実施形態では、胃腸の病気は、クローン病、潰瘍性大腸炎、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又は他の薬剤に関連する腸疾患、放射線誘発性腸疾患、及び結核などの病原性感染に関連する腸疾患から選択される。
【0088】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、腸及び/若しくは結腸オルガノイド又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団は、哺乳動物のものである。いくつかの実施形態では、腸及び/若しくは結腸オルガノイド又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団は、ヒトのものである。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0089】
本明細書で開示されている方法のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む腸及び/若しくは結腸オルガノイドを作製すること、並びに/又は腸及び/若しくは結腸オルガノイドを解離させて、上皮細胞型及び間葉系細胞型を含む解離細胞集団を作製することを更に含む。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、解離細胞集団中の総細胞の30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%であるか、約それらであるか、少なくともそれらであるか、少なくとも約それらであるか、それら以下であるか、又は約それら以下であるか、あるいは前述のパーセンテージのうちの任意の2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、30~100%、50~100%、75~100%、90~100%、30~75%、又は50~95%であるパーセンテージの多細胞断片から構成される。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の多細胞断片の形態である。いくつかの実施形態では、解離細胞集団は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の多細胞断片の形態である。いくつかの実施形態では、腸及び/又は結腸オルガノイドは、多能性幹細胞から産生される。腸及び/又は結腸オルガノイドは、本明細書で開示されている方法、又はそうでなければ当該技術分野において知られている方法によって産生されてもよい。
【0090】
本明細書で記載されるように、胃腸の病気の治療を必要とする対象において胃腸の病気を治療する方法における使用のための、腸及び/又は結腸オルガノイドから解離された解離細胞集団、並びにその医薬組成物も、本明細書で開示されている。
【0091】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の、有効量の解離細胞集団若しくは組成物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、若しくはそれらの組み合わせとを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる医薬組成物に関する。本明細書に記載の医薬組成物は、ヒト及び/又は獣医学の用途に好適である。
【0092】
腸損傷の治療における使用のための、本明細書で提供される細胞懸濁液又は医薬組成物も、本明細書で開示されている。
【実施例
【0093】
本明細書で考察される実施形態のいくつかの態様は、以下の実施例で更に詳細に開示されており、これらは、本開示の範囲を限定することを決して意図するものではない。当業者は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されているように、多くの他の実施形態も本開示の範囲内に収まることを理解するであろう。
【0094】
実施例1.腸傷害修復のための解離されたHIOの投与
初期発生及び小腸特異化を模倣するように成長因子を操作することによる、多能性幹細胞からのヒト腸オルガノイド(HIO)の生成は、以前に記載されている(Spence et al.Nature.(2011)470:105-109、McCracken et al.Nat.Protoc.(2011)6:1920-1928、Watson et al.Nat.Med.(2014)20:1310-1314)。分化の際に、HIOは、全ての主要な細胞型を含む複雑な上皮層だけでなく、免疫無防備状態の宿主に移植された場合に、機能的な積層構造を形成する間葉系構成要素も生じる。本明細書では、インビトロでのHIOの治療可能性を評価した。緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFPを構成的に発現するように改変されたH1胚性幹細胞株を、損傷した腸の前臨床モデルにおける下流異種移植片分析を容易にするために使用した。しかしながら、他の多能性幹細胞、例えば、他の胚性幹細胞及び人工多能性幹細胞)が使用され得ることが想定される。H1細胞におけるGFPの構成的発現は、それらの核型に干渉しないことが確認された(図3A)。改変された細胞株を使用前に特徴付け、品質管理基準に合格することを見極めた(図3A図3B)。免疫無防備状態のRag1及びIl2gノックアウト(Rag1 and Il2g knockout、RRG)ラットを宿主対象として利用して、遠位小腸のブラインドセグメントを外科的に創出し、その後、解離されたHIO又は移植されたHIOに由来するエンテロイドでの即時再シードの間に化学的及び機械的傷害を受けた(図1A)。実行した外科的手順は、ブラインドエンドツーサイド「Y」セグメント又はループをもたらし、これは、セグメントが宿主の腸管に遠位に排出し得るように、吸収性縫合糸で結ばれた(図4、パネルA~E)。この吸収性縫合糸を使用することにより、HIO保持、上皮の回復、及び生着が起こるための短いウィンドウをもたらした。続いて、腸排出及び管腔内容物露出のより生理学的な状態が生じた。傷害は、健康なラット空腸と比較した場合に、組織学的に及びトポグラフィ顕微鏡写真によって観察されるように、露出した間葉を有する上皮が主に剥がれた腸のセグメントをもたらした(図5、パネルA~B)。この手順を受けたいくつかのラットにおいて、1週間以内の早期死亡が観察された。合計で、ラットの68~70%が術後10週の時点まで生存した(図6A)。これは、獣医学的剖検によって示されるように、主に敗血症に起因し、管腔細菌に曝露された場合に、有効な上皮バリア及びトランスロケーションを再確立することができないループにおける傷害の重症度におそらく起因した。
【0095】
術後10週の時点で、ループを採取し、評価した(図6B)。培地単独で再シードしたシャムループでは、治癒が組織学的に観察された。ヒト特異的マーカー、Ku自己抗原、80kDa(Ku autoantigen,80kDa、KU80)についての免疫組織化学は、シャムループにおいて検出されず、ヒト細胞内容物の不在を示した(図1H)。観察された治癒は、小腸が固有の回復能力を有すること、並びに上皮の回復及びバリア機能の再確立は、時間が与えられた場合に起こり得ることを例解した。しかしながら、解離されたGFP HIOで再シードしたループでは、生存-GFPを発現する領域が観察され、ループの表面積の平均16.93%を構成した(図1B図1C)。KU80についての免疫組織化学では、再シードしたループの切開されたGFP+領域内への安定したヒト細胞取り込みを明らかにした(図1D)。KU80+細胞は、腸の厚さ全体にわたって観察された。断片化されたGFPエンテロイドで再シードしたループでは、生存-GFPを発現する領域も観察されたが、それらは著しくより小さく、平均してループの表面積の1.68%しか占めなかった(図1E図1F)。再び、ヒト細胞取り込みが、エンテロイド断片で再シードしたループの切開されたGFP+領域内で観察され、安定性は、生存-GFP発現観察に従って減少した(図1G)。ここでは、KU80+細胞の生着は、腸上皮に限定された。これらの実験を実行する際に、上皮細胞数のみの間で識別するのではなく、細胞の総数に対して再シードされた細胞含量を標準化した(図10A図10D)。細胞療法の供給源としてのHIO及びエンテロイドの両方の有効性を比較した後、細胞の供給源としての断片化されたHIOの使用のみを継続したが、これは、それらの生着効率の増加、その全層にわたる腸の回復への寄与の拡大、したがって臨床用途のより大きい可能性のためである。
【0096】
断片化されたGFP HIOで再シードしたループ内のヒト細胞の寄与の程度を更に実証するために、ヒトマーカーKU80について染色されたGFP+ループの領域に対してタイルスキャンを実行した(図2A)。ヒト細胞の寄与は、粘膜及び筋層内で観察され、これは、適切な輪走及び縦走筋層の整列を示した(図2B)。筋層のヒト化は、GFP及びアクチンアルファ2、平滑筋(ACTA2)の両方に対する免疫染色によって更に強調され、繊維は、シャム(細胞内容物のない培地で再シードしたループ)及び再シードしたループの両方において垂直に示されたが、GFPの存在は、再シードしたループにおいてのみ観察された(図2C)。臨床的に、これは、粘膜を越えて損傷をもたらす状態(例えば、非治癒性潰瘍及び瘻孔形成性クローン病)に対する潜在的な細胞療法の用途を広げるので、重要な特徴である。
【0097】
宿主の神経支配及び運動性を含む様々な機能を担う腸神経系(enteric nervous system、ENS)に関する腸傷害モデルへのHIOの生着の効果を評価した。腸筋神経叢が2つの新たに形成されたヒト筋層の界面に残っているか否か、又はそれが細胞増殖及びリモデリングプロセス中に置き換えられた否かを評価した。間葉を含む追加の細胞型を含む本明細書のHIOではなく、上皮のみ又はエンテロイド構造体を使用した場合のENSに対する筋層ヒト化に対する効果は未知であったので、これは考慮すべき重要な一面であった。汎ニューロンマーカーであるチューブリンベータ3クラスIII(TUBB3)に対する免疫染色により、宿主の神経支配がヒト細胞の再構成後に置き換えられなかったことが確認され、このことは、その機能も保存されていることを示唆している(図2D)。
【0098】
実施例2.再シードしたHIOは、傷害治癒中に早期生着を受け、領域性を維持する
再シードしたHIOによって10週までに腸治癒への著しい寄与が観察されているので、生着のより早期段階を評価するために、7日の時点で追加の実験を実行した。KU80についての免疫組織化学では、再び、シャムループにおけるヒト細胞の寄与の不在を明らかにしたが、ヒト細胞の寄与は、7日目で、再シードしたループの上皮及び間葉の両方において見出された(図7A)。シャムループにおける上皮構造化のレベルは、再シードしたループにおいて観察されたものほど広範囲ではなかった。更に、増殖マーカーKI67(MKI67)に対する免疫染色により、シャム手術ループでは、7日の時点での治癒の主な機構が、活発に循環しかつMKI67+である細胞がほとんどない遊走に起因したことを明らかにした(図7B、左パネル)。しかしながら、再シードしたループでは、MKI67+細胞がより広く観察され、HIO断片が腸の初期生着及び回復中に積極的な役割を果たすことを示した(図7B、右パネル)。
【0099】
次に、生着したHIOの再生プロセスが、恒常的再生のための上皮幹/前駆体系の後期再構築をもたらすか否かを、タンパク質発現によって判定した。ループにおけるMKI67に対する免疫染色は、ヒト空腸対照と同様のありふれた増殖性帯状分布を示した(図7B)。腸における幹細胞及び前駆細胞に関連する抗アポトーシスタンパク質、オルファクトメジン4(OLFM4)の発現は、ヒト空腸対照において観察される発現パターンと同様に、ループの陰窩様領域内に限定されることが観察された(図7B)。凝固因子III、組織因子(F3)によってマーキングされるように、腸の幹細胞及び上皮へのニッチシグナルの重要な供給源である上皮下テロサイトはまた、ループ及びヒト空腸対照内で同様に上皮に隣接して局在することが観察された(図7B)。まとめると、これらのデータは、HIO由来の新生上皮における上皮幹細胞コンパートメント及びニッチの再出現を支持する。
【0100】
その後、ループのHIO新生上皮の小腸運命が保存されたか否かを、タンパク質発現によって調べた。近位領域マーカー、GATA結合タンパク質4(GATA binding protein 4、GATA4)に対する免疫染色により、ヒト空腸対照と同様に、ループにおける陽性発現を明らかにした(図8A、左パネル)。抗菌ペプチドであるデフェンシンアルファ5(Defensin Alpha 5、DEFA5)発現によって実証されるように、小腸クリプトに局在する特殊化された分泌細胞であるパネート細胞が検出され、ヒト空腸対照において観察されるように、ループにおいて陰窩様構造体に局在した(図8A、中央パネル)。小腸内の炭水化物消化に関与する酵素、スクラーゼイソマルターゼ(Sucrase Isomaltase、S1)も観察され、ヒト空腸対照においても見られるように、ループの刷子縁に局在した(図8A、右パネル)。更なる検証として、より遠位の小腸及び結腸に限定されたタンパク質の発現も調査した。遠位領域マーカー、DNA結合タンパク質SATBホメオボックス2(SATB Homeobox 2、SATB2)に対する免疫染色は、ループでは観察されなかったが、ヒト結腸対照の上皮全体に存在することが見出された(図8B、左パネル)。主にコロノサイトの頂端膜に局在するカルシウムチャネルである膜貫通4ドメインA12(Membrane Spanning 4-Domains A12、MS4A12)は、ループでは観察されなかったが、ヒト結腸対照の上皮全体に存在した(図8B、中央パネル)。結腸全体にわたるゲル形成粘液であるムチン5B(MUC5B)もループには存在しなかったが、ヒト結腸対照の杯細胞では観察された(図8B、右パネル)。まとめると、遠位マーカーの不在とともに近位腸マーカーの正のタンパク質発現は、ループのHIO新生上皮の領域性が、HIO断片の生着及び拡大中に維持されたことを示唆する。
【0101】
実施例3.再シードしたHIOの生着は、インタクトな上皮バリアを形成する
機能的洞察を得るために、ウッシングチャンバアッセイを、生存-GFP発現ループ領域及び健康なラット空腸の上皮に対して術後10週に実行した(吻合部位の近位及びループの外側)(図9A図9B)。電気物理的特性を連続的に記録しながら、上皮を一連の化学刺激に曝露した。ループ及びラット空腸上皮の両方は、リアルタイム記録で観察されるように、フォルスコリン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine、IBMX)、及びブメタニドでのチャレンジに対して応答性であった(図9C図9D)。能動イオン輸送の反映である短絡電流(Isc)の変化は、両グループに適用された各化合物の知られている作用方法と一致した。このことは、新生上皮におけるイオンチャネルの適切な環状アデノシン一リン酸調節及び機能が起こっていたことを実証した。更に、生存-GFP発現領域である新生上皮は、健康なラット空腸と比較した場合、フォルスコリン及びIBMXの両方に対してより高い感受性を実証した。ラット空腸の経上皮電気抵抗(transepithelial electrical resistance、TEER)のベースライン読み取り値をそれらの確立された範囲内で、測定し、観察した(図9F)。筋層及び漿膜層を伴わない抵抗値は、ラットの小腸について20~45Ωcmであることが以前に実証されている。成人のヒト小腸の場合、TEER値は、以前に50~100Ωcmであると報告されている。ループのTEER値のいくつかは成人のヒト小腸に対して確立されたTEER範囲内に入るが、他のものはより低いことが観察された。この差異は、生着に使用されたHIOの知られている胎児状態又は宿主の管腔内容物とのヒト上皮相互作用の結果と関連し得る。
【0102】
ループの新生上皮の完全性及び安定性を更に評価するために、傍細胞透過性を評価した。フルオレセインイソチオシアネート(Fluorescein isothiocyanate、FITC)-デキストランを各標本の頂端チャンバに添加し、経時的な蛍光強度の評価のために30分ごとに側底チャンバからサンプルを収集した(図9G)。このデータセットから、FITC-デキストランフラックス値を計算し、グループ間の差は観察されなかった(図9H)。これは、ループの新生上皮が治癒プロセス中に十分なバリアを確立したことを示す。
【0103】
実施例4.H1細胞の生体内分布及び潜在的増殖
細胞療法として断片化されたHIOを受けたラット内のH1 GFP細胞の生体内分布及び潜在的増殖を調査した。術後10週のラットからの様々なオフターゲット器官からサンプルを収集した。脳、結腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、及び小腸の部分を、組織学及びPCRのために収集した。採取された器官のいずれにおいても、肉眼的異常及び腫瘍形成は観察されなかった。2mmの組織厚にわたる連続切片にわたってのヒトマーカーKU80に対する免疫染色の場合、KU80+細胞は、移植されたHIO陽性対照においてのみ観察された(図11A図11D)。ヒト細胞の存在を更に調査するために、AluベースのリアルタイムPCRのゴールドスタンダードを実行して、ヒトをげっ歯類細胞から識別した。有意性の閾値を求めるために、知られているヒトgDNAサンプルに対して滴定を実行し、細胞当量に関連付け戻した(表1)。次いで、H1 GFP細胞株及び様々なオフターゲット器官を含む実験サンプルを行った。Ctのデータ点は、ヒト細胞の存在のCt値閾値未満では見出されず(図11B)、これは、実験設定内でヒト細胞の生体内分布がほとんどないか全くないことを示唆している。
【0104】
実施例4.方法論
ヒト組織:ヒト組織の収集は、治験審査委員会の事前承認を得て実行した。病理学的に正常な成人のヒト小腸及び結腸の外科的サンプルを、14歳~25歳の肥満又は修正/切除手順を受けている患者から得た。インフォームドコンセント又は同意を、必要に応じて、全ての患者及び/又は親/法的養育者から得た。病理学的に正常な結腸の追加の匿名化サンプルを、Discover Together Biobank of Cincinnati Children’s Hospital Medical Centerを介して得た。全てのヒト組織を、施設の倫理ガイドラインに従って利用した。
【0105】
ラット:全ての動物手順及び実験は、施設の実験動物委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の事前承認を得て実行した。雄及び雌の両方を、実験に利用した。3~6ヶ月齢のRag1及びIl2rg遺伝子欠失(RRG)を有する成体免疫不全ラットを、粘膜切除術実験に使用した(Transgenesis Rat ImmunoPhenomic Platform、Nantes、Franceのファウンダー、自家育種)。ラットをバリア動物飼育場に収容し、実験動物の取り扱いに関するNIH基準(NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って人道的に取り扱った。RRGラットに、標準的なオートクレーブ処理した飼料を主に与え、フルコナゾール(0.1mg/mL、NorthStar Rx、LLC)を補充した水ボトルを提供した。餌及び水の両方を、手術の前後に自由に与えた。単回用量のカルプロフェン(5mg/kg)を、粘膜切除手順の最後に疼痛管理のために投与した。ラットを疼痛及び苦痛の兆候について術後3日間毎日モニターし、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。
【0106】
H1-GFP細胞株の生成:CRISPR/Cas9を、改変された以前に公開された試薬を使用して、市販のH1ヒト胚性幹細胞(hESC、WiCell Research Institute,Inc.)のAAVS1セーフハーバー部位への緑色蛍光タンパク質(GFP)配列の導入のために使用した。簡潔に述べると、AAVS1遺伝子座を標的とするための、検証されたガイドRNA配列(5’-GGGGCCACTAGGGACAGGAT-3’、配列番号1)をコードする一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(single-stranded donor oligonucleotide、ssODN)を、Cincinnati Children’s Medical Center Transgenic Coreによって生成されたpSpCas9(BB)-2A-GFP(PX458M、Addgene#48138)の改変バージョンであるPX458M-HF(これは、最適化されたシングルガイドRNAを保有する)にアニールし、サブクローニングした。TransIT-LT1トランスフェクション試薬を製造業者の推奨に従って使用して、10μMのY-276323を含有するmTeSR1(登録商標)培地中で、hESC適合マトリゲル(登録商標)コーティングしたプレート(Corning(登録商標))でトランスフェクションを実行した。トランスフェクションの4時間後、培地を除去し、10μMのY-27632を含有するマウス胚性線維芽細胞(mouse embryonic fibroblast、MEF)馴化hESC培地(DMEM/F12、20%ノックアウト血清代替物(knockout serum replacement、KOSR)、0.1mMの非必須アミノ酸(nonessential amino acid、NEAA)、2mMのL-グルタミン、0.1mMのβ-メルカプトエタノール、及び4ng/mLのbFGF)と置き換え、毎日培地をMEF馴化hESC培地と交換した。トランスフェクションの2日後に、細胞の単一細胞懸濁液をAccutase(登録商標)(StemCell Technologies(登録商標))を用いて生成し、Geneticin(登録商標)(G418)選択のためにおよそ10,000細胞/cmの密度で再播種した。トランスフェクションの3日後から始めて、G418選択(100μg/mL)を8日間実行し、その後、mTeSR1を使用して毎日フィードを実行した。2週間後、Accutaseを使用して残存するG418耐性コロニーを採取し、CloneR(登録商標)サプリメント(StemCell Technologies)を含むmTeSR(登録商標)にクローニング密度で播種した。回復したクローンを手動で取り出し、mTeSR1(登録商標)培地中で増殖させ、遺伝子型決定に供した。AAVS1遺伝子座における2A-NeoR-CAG-GFPカセットの正確に標的化された挿入を、PCR、サンガー配列決定、コピー数分析、及びGFP発現によって実行した。この細胞株を、全ての実験で使用した。毎月のマイコプラズマ試験を、MycoAlert Plus Detection Kit及びControl Set(Lonza#LT07-705及びLT07-518)を使用して、全ての細胞培養物に対して実行したところ、結果は一貫して陰性であった。
【0107】
ヒト腸オルガノイドの生成:ヒト腸オルガノイド(HIO)を、以前に記載されたように生成し、維持した(Watson et al.Nature Medicine(2014)20:1310-1314、Spence et al.Nature(2011)470:105-109、McCracken et al.Nature Protocols(2011)6:1920-1928)。簡潔に述べると、H1-GFP細胞を、マトリゲル(登録商標)(BD Biosciences(登録商標))でコーティングした6ウェルNunclon(登録商標)表面プレート(Nunc(登録商標))中、フィーダフリー条件で増殖させ、mTeSR1(登録商標)培地(StemCell Technologies(登録商標))中で維持した。胚体内胚葉(definitive endoderm、DE)誘導のために、細胞を、Accutase(登録商標)(StemCell Technologies(登録商標))を用いて生成した単一細胞懸濁液として継代し、24ウェルNunc(登録商標)プレートにおよそ100,000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞をmTeSR1(登録商標)培地中で2日間増殖させた後、100ng/mLのアクチビンAで3日間処理した。次いで、DEを、100ng/mLのFGF4(R&D Systems(登録商標))及び3μMのCHIRON99021(CHIR99021、Tocris(登録商標))とともに、後腸誘導培地(RPMI1640、100x NEAA、2%透析ウシ胎児血清(dialyzed fetal calf serum、dFCS))で処理して、中後腸スフェロイドを誘導した。次いで、スフェロイドを成長因子低減(Growth Factor Reduced、GFR)マトリゲル(登録商標)に播種し、100ng/mLのEGF(R&D Systems)を補充した腸成長培地(Advanced DMEM/F12、N2サプリメント、B27サプリメント、15mMのHEPES、2mMのL-グルタミン、ペニシリン-ストレプトマイシン)中で維持して、HIOを生成した。培地を週2回交換し、HIOを14日目に新しいマトリゲル(登録商標)に再播種した。HIOを、28~34日目の間に外科的移植に利用した。
【0108】
移植されたヒト腸オルガノイドからのエンテロイドの生成:以前に記載されているように(40)、陰窩を、移植されたHIOから単離した。簡潔に述べると、HIO組織のセグメントを、SYLGARD184(Dow)コーティングしたペトリ皿にピン留めし、穏やかにこすり取って絨毛を除去し、2mMのキレート化緩衝液で洗浄した後、2mMのキレート化緩衝液中で30分間インキュベートした。次いで、陰窩を放出させるために、組織を再び穏やかにこすり取った。陰窩を含むキレート化緩衝液をペトリ皿から取り出し、150μmのナイロンメッシュを通して濾過し、50gで5分間、4℃でスピンダウンして、細胞培養で使用するために陰窩をペレット化した。陰窩をマトリゲル(Corning)に播種し、IntesiCult培地(STEMCELL Technologies)を使用してエンテロイドを生成した。培地を週2回交換し、継代を7~10日ごとに行った。
【0109】
粘膜切除手術手順:粘膜切除手順は、以前に公開された研究からここでの目的のために最適化した(Avansino et al.Surgery(2006)140:423-434)。
【0110】
ループ創出:手順の1日前に、飼料を除去し、ラットをGelDiet76A(ClearHO)に置き、術後7日継続した後、飼料に戻した。ラットを2%吸入イソフルラン(Butler Schein)で麻酔し、それらの腹部を剃毛し、イソプロピルアルコール及びポビドンヨードでコーティングしたスワブを使用して無菌様式で準備した。およそ3cmの正中線開腹術を行った。単回用量のピペラシリン及びタゾバクタム(100mg/kg)を、5mLシリンジに取り付けられた18G鈍端フィルニードルを使用して腹腔内に投与した。次いで、盲腸を特定し、37℃に加温した生理食塩水を使用して腸を摘出して、手順全体を通して組織の水分を維持した。腸の好適なストレッチ(約2~3cm)を、ブラインドループ創出のために最初に特定した。ループを創出するために、必要に応じてハサミ及びボビーペンを使用して、ループになるものの近位端の腸及び腸間膜をトランスフェクトした。次いで、ハサミを使用してブラインドループの遠位端を部分的に切断した。吻合を、完全にトランスフェクトされた腸の開放端とブラインドループの部分的に切断された遠位端との間で、7-0絹製縫合糸(PERMA-HAND、Ethicon)を使用して、単純な結節様式で実行した。これは、ラットに対して完全な連続性を確立し、ブラインドループの遠位接続を維持する。
【0111】
傷害創出:ブルドッグクランプをブラインドループの遠位端に適用して、連続する腸への流れを遮断した。最初に、化学的損傷を誘発させた。カニューレを備えた20mLシリンジを使用して、ループを、37℃に加温した生理食塩水で2分間洗い流した。次いで、カニューレを備えた20mLシリンジを使用して、ループを、37℃に加温した生理食塩水中の1mMのジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)で2分間洗い流した。その後、ループを再び加温した生理食塩水で洗い流した後に、カニューレを備えた20mLシリンジを使用して、37℃に加温した5mMの等張エチレンジアミン四酢酸(EDTA)緩衝液で10分間洗い流した。およそ50mLのEDTA溶液を、10分間にわたる洗い流しのために使用した。この一連の洗い流しを繰り返し、次いで、最後の洗い流しは、37℃に加温した生理食塩水で行った。機械的損傷を誘発するために、適切な直径の歯科用侵入型ブラシフロッサーを、入れる及び出すの間にわずかに捻って、3回挿入及び除去した。傷害の創出後、ブルドッグクランプを取り外し、ブラインドループの遠位端を、4-0吸収性ChromicGut縫合糸(ETHILON、Ethicon)を使用して、縫合した。
【0112】
ループの再シード:ループを、解離されたHIO又は細胞内容物を含まない培地で再シードした。構造体を断片化するために、HIOをそれらの培地中に収集し、プールした。次いで、HIOを、18G鈍端フィルニードルを取り付けたシリンジに引き込み、18Gニードルを20Gニードルと交換し、シリンジの内容物を24ウェルプレートのウェルに排出した。このプロセスを、25Gで終わる、より小さいニードルを順次使用して繰り返した(図10A)。次いで、HIO断片を、カニューレを備えた1mLシリンジに引き込み、調製した腸ループ内に置いた。同じプロセスはまた、エンテロイドを用いて行うこともできる(図10B)。図10Cは、HIO又はエンテロイドから解離された細胞の明視野画像を示す。解離のために使用した元のHIO又はエンテロイド構造体を構成する細胞のおよその数を図10Dに示す。解離されたHIOで再シードするために、腸の長さ4mm当たりおよそ100,000細胞を使用した。再シード後、カニューレを除去する際、ループの近位端を、5-0絹製縫合糸(PERMA-HAND、Ethicon)を使用して閉じた。次いで、腸を腹腔内に注意深く戻した。切開部を閉じるために、筋肉を、4-0コーティング吸収性縫合糸(VICRYL RAPIDE、Ethicon)を使用して、連続様式で縫合した。次いで、皮膚を、4-0コーティング吸収性縫合糸(VICRYL RAPIDE、Ethicon)を使用して、再び埋没結節様式で閉じた。単回用量のカルプロフェン(5mg/kg)を、手順の最後に疼痛管理のために投与した。組織を、治癒プロセス中の初期時点として術後7日に採取し、長期回復時点として術後10週に採取した。
【0113】
インビトロでのHIO細胞の定量化:核を、Minute Detergent Free Nuclei Isolation Kit(Invent Biotechnologies,Inc.)を製造業者のガイドラインに従って使用して、HIOから単離した。十分な細胞量を得るために、構造体を単離のためにプールした。4つの28日目(d28)のHIOを、1回の核単離のためにプールした。完了直後に、核を、TC20(Bio-Rad Laboratories,Inc.)を使用して自動的に定量化した。次いで、総数を4で割り、HIO当たりの細胞数を求めた。
【0114】
走査型電子顕微鏡法:健康なラット空腸及び新たに損傷したラット空腸のセグメントを、0.175Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液pH7.4中の3%グルタルアルデヒド中で一晩固定した。次いで、サンプルを緩衝液ですすぎ、4℃で1時間、0.175Mのカコジル酸緩衝液中の1%四酸化オスミウムで後固定した。別の緩衝液ですすいだ後、サンプルを、脱水のために段階的エタノール系列(25%、50%、75%、95%、3×100%)に通した。次いで、標本をEM CPD300(Leica(登録商標))中で臨界点乾燥させ、スタブマウントし、EM ACE600(Leica(登録商標))を使用して60/40金/パラジウムで10nm厚にスパッタコーティングした。SU8010透過型電子顕微鏡(Hitachi(登録商標))を使用してサンプルを撮像した。
【0115】
組織処理及び免疫染色:サンプルを採取し、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde、PFA)中で一晩固定し、処理し、パラフィンブロックに包埋した。切片を脱パラフィン化し、ヘマトキシリン及びエオシンで直ちに染色するか、又は抗原回復に供し、抗体染色した。抗体インキュベーションは、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)中の1%ウシ血清アルブミン中、4℃で一晩行った。抗体及びそれらのそれぞれの希釈を表3に列挙する。Vectastain ABCシステムを増幅のために使用し、ジアミノベンジジン基質キットをシグナル検出のために使用した(Vector Laboratories(登録商標))。リリー-マイヤーヘマトキシリン(Agilent Technologies(登録商標))を対比染色として使用した。生体内分布のために、連続切片を作り、10枚目ごとのスライドを2mmの組織厚にわたって染色した。
【0116】
【表1】
【0117】
Ct値に関連するヒトDNA含量の滴定及び腫瘍原性に使用される細胞存在の当量。
【0118】
【表2】
【0119】
HIOの生成のために使用されたH1 GFP細胞株におけるヒトDNA含量の滴定及びそれらの関連するCt値。再シード材料として使用される断片化されたHIOを用いた粘膜切除手順を受けたラットの主要器官全体にわたるPCRによるヒトDNA含量の定量化。未定のCt値は、サーモサイクラーの感度に従って40を超える。29の決定されたCt閾値未満である値は見出されず、したがって、ヒト細胞の存在はサンプル内に見出されなかった。
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
画像取得:手術画像を、MC170HDカメラ(Leica Microsystems(登録商標))を装備したM80顕微鏡を使用して取得した。採取された構造体の全体画像を、V40 ThinQ(LG Electronics(登録商標))を使用して取得した。採取を、DCF7000 Tカメラ(Leica Microsystems(登録商標))を装備したM165FC顕微鏡を使用して実行した。スライドを、Eclipse Ti顕微鏡(Nikon Corporation(登録商標))を使用して撮像し、後続の分析を、Nikon Element Imaging Software(Nikon Corporation(登録商標))を使用して実行した。
【0123】
エクスビボでの上皮の特徴及び透過性:新たに採取した健康な空腸及び再シードしたループの上皮を、以前に報告されたように(Clarke,Am.J.Physiol.J.Gastrointest.Liver Physiol.(2009)296:G1151-1166、Giles et al.Nat.Med.(2017)23:829-838、Poling et al.Nat.Biomed.Eng.(2018)2:429-442)、漿膜筋層ストリッピングと同様の技法により注意深く切開した。サンプルを開き、切開を氷冷クレブス緩衝液(117mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.2mMのMgCl、1.2mMのNaHPO、25mMのNaHCO、2.5mMのCaCl、11mMのグルコース)中で行った。次いで、全層組織セグメントを、硬化したSylgard(Electron Microscopy Sciences)を含むディッシュにピン留めした。再シードしたループは、更なる切開及びウッシングチャンバアッセイでの使用の前に、GFP陽性であることを確認した。次いで、Dumont#5及び#7鉗子をVannasハサミ(Fine Science Tools,Inc.)とともに使用して、漿膜筋層組織を上皮から顕微切開した。全体の組織完全性を、外観の均一性について立体鏡の底部照明を使用して評価し、任意の損傷した領域を除去した。切開後、いくらかの残存上皮下粘膜が残った。次いで、最小量の取り扱いで、上皮の中心部分を、ウッシング装置(Physiologic Instruments)のヘミチャンバ間に取り付けるために配置した。0.031cmの組織を、アッセイ全体を通して37℃で5mLの酸素化クレブス緩衝液に曝露した。経上皮電位差は、3MのKCl中に3.75%寒天を含む塩橋に固定された2対の電極で検出した。電極をVVC MC8電圧クランプ増幅器(Physiologic Instruments)に接続した。スライダをチャンバ間に取り付ける直前に、電極電位差及び流体抵抗値をゼロに補正した。30分間で、平衡を確立させた。次いで、組織を0mVで電圧クランプし、短絡電流(Isc)を連続的に測定しながら、化学刺激(10μMのフォルスコリン、100μMのIBMX、及び100μMのブメタニド)を適用した。FITC-デキストラン透過性については、2.2mg/mLのFITC-デキストランを頂端側に添加し、サンプルを側底側から30分ごとに3時間取り、サンプルにわたる圧力を維持するために側底側において同量の新たな改変クレブス緩衝液を置き換えた。全ての水性サンプルを収集したら、それらをプレートリーダー(Synergy2、BioTek)を用いて定量化した。
【0124】
ヒト特異的Alu PCRプライマー及びプローブ:ヒトDNAの検出を、以前記載されたプライマー及びプローブを使用して行った。簡潔に述べると、Alu PCRを、再シードした粘膜切除術のラットからの様々な器官から抽出したgDNA及びH1 GFP細胞株に対して実行した。フォワードプライマーは、ヒト特異的Alu配列の上流にアニールするように設計し(5’-TGGTGGCTCTCTCCTGTAAT-3’、配列番号2)、リバースプライマーは、ヒト特異的Alu配列内に主にアニールするように設計し(5’-GATCTCGGCTCACTGCAAC-3’、配列番号3)、その結果、96塩基対アンプリコンが得られる。プローブは、2つのプライマー間に結合するように設計した(5’-TGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACC-3’、配列番号4)hAlu特異的配列のクエンチャー-MGB-6FAM上流。プライマー及びプローブは、Integrated DNA Technologiesから特別注文した。
【0125】
Alu PCR:定量的リアルタイムPCRを、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用して、200ngの標的テンプレートgDNAに対して実行した。各サンプルを、OneStepサーモサイクラー(Applied Biosystems)を使用して、3連で配列決定した。10倍の連続希釈(200ng~0ng)のhDNA(Millipore Sigma)及びH1 GFP細胞を各PCRプレートに添加することによって、標準曲線を生成した。QunatoStudioソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、標準値に基づいてヒト細胞の存在に関する交差閾値(Ct)値を計算した。
【0126】
データ表現、統計、及び再現性:バー成長については、データは平均±標準偏差で表され、全ての個々のデータ点が表されている。バイオリンプロットについては、破線は平均及び四分位範囲を示し、全ての個々のデータ点が表されている。対応のあるデータの2つのグループを比較する統計については、ウィルコクソン符号順位検定を実行した。対応のないデータを比較する統計については、スチューデントt検定を実行した。統計的有意性のカットオフはp<0.05であり、信頼区間は95%であった。
【0127】
前述の実施形態の少なくともいくつかでは、一実施形態で使用される1つ以上の要素は、そのような置き換えが技術的に実現可能ではない場合を除いて、別の実施形態で互換的に使用することができる。当業者は、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び構造に対して、様々な他の省略、付加、及び改変を行うことができることを理解されよう。全てのそのような改変及び変更は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本主題の範囲内に含まれることが意図されている。
【0128】
本明細書における実質的に全ての複数及び/又は単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数から単数へと、及び/又は単数から複数へと言い換えることができる。明確にするために、様々な単数/複数の置き換えを本明細書において明確に説明することができる。
【0129】
一般的に、本明細書、及び特に添付された特許請求の範囲(例えば、添付された特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、一般に「オープンな」用語として意図されている(例えば、用語「含む(including)」は、典型的には「含むがこれに限定されない」と解釈され、用語「有する(having)」は、典型的には「少なくとも有する」と解釈され、用語「含む(include)」は、典型的には「含むがこれに限定されない」と解釈されるなど)ことを当業者は理解するであろう。導入される請求項の記述の具体的な数が意図されている場合には、そのような意図は、特許請求の範囲で明示的に記述され、そのような記述が存在しない場合には、そのような意図は存在しないことを当業者は更に理解するであろう。例えば、理解の補助として、下記の添付された特許請求の範囲は、請求項の記述を導入するために、導入的語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかしながら、そのような語句の使用は、典型的には、同じ請求項が導入的語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても(例えば、「a」及び/又は「an」は、典型的には「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈される)、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記述の導入が、そのような導入された請求項の記述を含む任意の特定の請求項を、ただ1つのそのような記述を含む実施形態に限定することを意味すると解釈され、同じことが、請求項の記述を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。加えて、導入された請求項の記述の特定の数が明示的に記述されている場合でも、そのような記述が、典型的には、少なくとも記述された数を意味する(例えば、他の修飾語句なしでの「2つの記述」という単なる記述は、少なくとも2つの記述又は2つ以上の記述を意味する)と解釈されることを当業者は認識するであろう。更に、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つなど」に類似する慣習が使用される場合では、一般に、そのような構文は、当業者がこの慣習を理解するであろう意味を意図する(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステムなどを含むがこれらに限定されないであろう)。「A、B、又はCのうちの少なくとも1つなど」に類似する慣習が使用される場合では、一般に、そのような構文は、当業者がこの慣習を理解するであろう意味が意図される(例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」には、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステムなどを含むがこれらに限定されないであろう)。明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する実質的に任意の離接語及び/又は離接語句も、典型的には、用語のうちの1つ、用語のいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図すると理解されることを当業者は更に理解するであろう。例えば、「A又はB」という語句は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0130】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループによって説明されている場合、それによって、本開示は、マーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループによっても説明されることを当業者は認識するであろう。
【0131】
当業者に理解され得るように、文書として記述するという観点などのあらゆる目的のために、本明細書で開示されている全ての範囲は、あらゆる可能な部分範囲及びそれらの部分範囲の組み合わせも包含する。あらゆる列挙されている範囲を、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分解される同じ範囲を十分に説明して可能にすると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲を、下3分の1、中3分の1及び上3分の1などに容易に分解することができる。当業者にも理解され得るように、「最大」、「少なくとも」、「超」、「未満」などの全ての言葉は、記述される数を含み、本明細書で考察されるように後に部分範囲に分解され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解され得るように、範囲は各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つの項目を有するグループは、1、2、又は3つの項目を有するグループを指す。同様に、1~5つの項目を有するグループは、1、2、3、4、又は5つの項目を有するグループを指し、以下同様である。
【0132】
本明細書では様々な態様及び実施形態が開示されているが、当業者には他の態様及び実施形態が明らかであるであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は例解の目的のためであり、限定することを意図されておらず、真の範囲及び趣旨は下記の特許請求の範囲で示される。
【0133】
公開及び未公開の出願、特許、及び文献の参照を含むがこれらに限定されない、本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、本明細書の一部となる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する範囲まで、本明細書は、そのような矛盾する資料に優先する、及び/又は優先することを意図している。
【0134】
参考文献
H Vallicelli,C.et al.Small bowel emergency surgery:literature’s review.World journal of emergency surgery:WJES 6,1(2011).
Watson,C.L.et al.An in vivo model of human small intestine using pluripotent stem cells.Nature medicine 20,1310-1314(2014).
Singh,A.et al.Evaluation of transplantation sites for human intestinal organoids.PloS one 15,e0237885(2020).
Menoret,S.et al.Generation of Immunodeficient Rats With Rag1 and Il2rg Gene Deletions and Human Tissue Grafting Models.Transplantation 102,1271-1278(2018).
Tait,I.S.,Evans,G.S.,Flint,N.&Campbell,F.C.Colonic mucosal replacement by syngeneic small intestinal stem cell transplantation.American journal of surgery 167,67-72(1994).
Allard,J.et al.Immunohistochemical toolkit for tracking and quantifying xenotransplanted human stem cells.Regenerative medicine 9,437-452(2014).
Qin,X.Why is damage limited to the mucosa in ulcerative colitis but transmural in Crohn’s disease? World J Gastrointest Pathophysiol 4,63-64(2013).
Avansino,J.R.,Chen,D.C.,Hoagland,V.D.,Woolman,J.D.&Stelzner,M.Orthotopic transplantation of intestinal mucosal organoids in rodents.Surgery 140,423-434(2006).
Vannucchi,M.G.The Telocytes:Ten Years after Their Introduction in the Scientific Literature.An Update on Their Morphology,Distribution,and Potential Roles in the Gut.Int J Mol Sci 21(2020).
Kinchen,J.et al.Structural Remodeling of the Human Colonic Mesenchyme in Inflammatory Bowel Disease.Cell 175,372-386 e317(2018).
Thompson,C.A.et al.GATA4 Is Sufficient to Establish Jejunal Versus Ileal Identity in the Small Intestine.Cell Mol Gastroenterol Hepatol 3,422-446(2017).
Bykov,V.L.[Paneth cells:history of discovery,structural and functional characteristics and the role in the maintenance of homeostasis in the small intestine].Morfologiia 145,67-80(2014).
Galand,G.Brush border membrane sucrase-isomaltase,maltase-glucoamylase and trehalase in mammals.Comparative development,effects of glucocorticoids,molecular mechanisms,and phylogenetic implications.Comp Biochem Physiol B 94,1-11(1989).
Munera,J.O.et al.Differentiation of Human Pluripotent Stem Cells into Colonic Organoids via Transient Activation of BMP Signaling.Cell Stem Cell 21,51-64 e56(2017).
Koslowski,M.,Sahin,U.,Dhaene,K.,Huber,C.&Tureci,O.MS4A12 is a colon-selective store-operated calcium channel promoting malignant cell processes.Cancer research 68,3458-3466(2008).
van Klinken,B.J.et al.MUC5B is the prominent mucin in human gallbladder and is also expressed in a subset of colonic goblet cells.Am J Physiol 274,G871-878(1998).
Clarke,L.L.A guide to Ussing chamber studies of mouse intestine.American journal of physiology.Gastrointestinal and liver physiology 296,G1151-1166(2009).
Ma,T.Y.,Hollander,D.,Bhalla,D.,Nguyen,H.&Krugliak,P.IEC-18,a nontransformed small intestinal cell line for studying epithelial permeability.J Lab Clin Med 120,329-341(1992).
Srinivasan,B.et al.TEER measurement techniques for in vitro barrier model systems.J Lab Autom 20,107-126(2015).
Finkbeiner,S.R.et al.Transcriptome-wide Analysis Reveals Hallmarks of Human Intestine Development and Maturation In Vitro and In Vivo.Stem cell reports(2015).
Yui,S.et al.Functional engraftment of colon epithelium expanded in vitro from a single adult Lgr5(+)stem cell.Nature medicine 18,618-623(2012).
Nakamura,T.& Watanabe,M.Intestinal stem cell transplantation.J Gastroenterol 52,151-157(2017).
Fukuda,M.et al.Small intestinal stem cell identity is maintained with functional Paneth cells in heterotopically grafted epithelium onto the colon.Genes & development 28,1752-1757(2014).
Fordham,R.P.et al.Transplantation of expanded fetal intestinal progenitors contributes to colon regeneration after injury.Cell Stem Cell 13,734-744(2013).
Sugimoto,S.et al.Reconstruction of the Human Colon Epithelium In Vivo.Cell Stem Cell 22,171-176 e175(2018).
Khalil,H.A.et al.Intestinal epithelial replacement by transplantation of cultured murine and human cells into the small intestine.PloS one 14,e0216326(2019).
Agopian,V.G.,Chen,D.C.,Avansino,J.R.& Stelzner,M.Intestinal stem cell organoid transplantation generates neomucosa in dogs.J Gastrointest Surg 13,971-982(2009).
Sugimoto,S.et al.An organoid-based organ-repurposing approach to treat short bowel syndrome.Nature(2021).
Tsai,Y.H.et al.In vitro patterning of pluripotent stem cell-derived intestine recapitulates in vivo human development.Development 144,1045-1055(2017).
Oceguera-Yanez,F.et al.Engineering the AAVS1 locus for consistent and scalable transgene expression in human iPSCs and their differentiated derivatives.Methods 101,43-55(2016).
Ran,F.A.et al.Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system.Nature protocols 8,2281-2308(2013).
Chen,B.et al.Dynamic imaging of genomic loci in living human cells by an optimized CRISPR/Cas system.Cell 155,1479-1491(2013).
Spence,J.R.et al.Directed differentiation of human pluripotent stem cells into intestinal tissue in vitro.Nature 470,105-109(2011).
McCracken,K.W.,Howell,J.C.,Wells,J.M.& Spence,J.R.Generating human intestinal tissue from pluripotent stem cells in vitro.Nature protocols 6,1920-1928(2011).
Giles,D.A.et al.Thermoneutral housing exacerbates nonalcoholic fatty liver disease in mice and allows for sex-independent disease modeling.Nature medicine 23,829-838(2017).
Poling,H.M.et al.Mechanically induced development and maturation of human intestinal organoids in vivo.Nat Biomed Eng 2,429-442(2018).
Lanas,A.,ChanF.K.L.,Peptic ulcer disease.Lancet 390,613-624(2017).
Kuna,G.L.et al.,Peptic Ulcer Disease:A Brief Review of Conventional Therapy and Herbal Treatment Options.J Clin Med 8,(2019).
Wong,L.et al.,High incidence of mortality and recurrent bleeding in patients with Helicobacter pylori-negative idiopathic bleeding ulcers.Gastroenterology 137,525-531(2009).
Singh,A.,Poling,H.M.,Spence J.R.,Wells,J.M.,Helmrath,M.A.,Gastrointestinal organoids:a next-generation tool for modeling human development.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 319,G375-G381(2020).
Sugimoto,S.,et al.,An organoid-based organ-repurposing approach to treat short bowel syndrome.Nature,(2021).
Mahe,M.M.,Sundaram,N.,Watson,C.L.,Shroyer,N.F.,Helmrath,M.A.,Establishment of human epithelial enteroids and colonoids from whole tissue and biopsy.J Vis Exp,(2015).
図1A
図1B-G】
図1H
図2A-D】
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A-D】
図9E-H】
図10A-D】
図11A-B】
【配列表】
2025502241000001.xml
【国際調査報告】