(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20250117BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20250117BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20250117BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541953
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2022105827
(87)【国際公開番号】W WO2024011541
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 慧玲
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲潔▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 彬
(72)【発明者】
【氏名】黄 磊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 翠平
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029DJ09
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
本出願は、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。前記二次電池は、正極膜層を含む正極シート、負極膜層を含む負極シート、電解液及び固体電解質を含み、固体電解質は、正極膜層及び/又は負極膜層の表面に設けられ且つポリマーマトリックス及び第1の添加剤を含み、第1の添加剤は、正極膜層及び/又は負極膜層の表面に界面膜を形成するように配置され、ここで、固体電解質の総質量に対するポリマーマトリックスの質量百分率をA%とし、固体電解質の総質量に対する第1の添加剤の質量百分率をB%とし、二次電池は、0.1≦B/A≦19を満たす。本出願は、固体電解質と液体電解質とを組み合わせて使用することにより、固体電解質の利点と液体電解質の利点とを両立させ、二次電池の動力学性能、安全性能及びサイクル性能を改善できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
正極膜層を含む正極シートと、
負極膜層を含む負極シートと、
電解液と、
前記正極膜層及び/又は前記負極膜層の表面に設けられ、ポリマーマトリックス及び第1の添加剤を含み、前記第1の添加剤が前記正極膜層及び/又は前記負極膜層の表面に界面膜を形成するように配置される、固体電解質と、を含み、
前記固体電解質の総質量に対する前記ポリマーマトリックスの質量百分率をA%とし、
前記固体電解質の総質量に対する前記第1の添加剤の質量百分率をB%とし、
前記二次電池は、0.1≦B/A≦19、好ましくは、0.5≦B/A≦10を満たす、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、5≦A≦99、及び/又は0.1≦B≦95を満たす、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の添加剤は、
前記固体電解質の総質量に対する質量百分率がB1%であるホウ素含有リチウム塩と、
前記固体電解質の総質量に対する質量百分率がB2%である負極成膜添加剤と、を含み、
前記二次電池は、0.002≦B1/B2≦10を満たす、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記二次電池は、0.1≦B1≦50、及び/又は0.1≦B2≦50を満たす、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記ホウ素含有リチウム塩の分子式はLiBF
aO
bC
cP
dであり、分子式の中で、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4であり、
好ましくは、前記ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF
4、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBのうちの一種類類又は複数種類を含む、請求項3又は4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極成膜添加剤は、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤及び亜硫酸エステル系添加剤のうちの一種類類又は複数種類を含む、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記炭酸エステル系添加剤は、環状炭酸エステル溶媒及び/又は鎖状炭酸エステル溶媒を含み、好ましくは、前記環状炭酸エステル溶媒は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含み、前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートVAのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、好ましくは、前記環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンサルトンFPSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は前記炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記亜硫酸エステル系添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解液は、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がM1%である環状炭酸エステル溶媒と、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がM2%である鎖状炭酸エステル溶媒と、含み、
前記二次電池は、10
-3≦M1/M2≦2を満たし、好ましい範囲が0.1≦M1/M2≦1であり、
好ましくは、1≦M1≦20、及び/又は、50≦M2≦85である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は二種類類以上を含み、及び/又は、
前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートVA、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBC、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの一種類類又は複数種類を含む、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記電解液は、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がD1%である電解液成膜添加剤と、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がD2%であるリチウム塩と、を含み、
前記二次電池は、0.2≦E/(D1+D2)≦2.95を満たし、式の中で、Eが電解液の粘度を表し、その単位がmPa・sである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、
前記正極膜層の圧縮密度をP1g/cm
3とし、
前記正極膜層の厚さをh1μmとし、
前記二次電池は、5≦h1
*P1/m≦250を満たす、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、
前記負極膜層の圧縮密度をP2g/cm
3とし、
前記負極膜層の厚さをh2μmとし、
前記二次電池は、25≦h2
*P2/m≦245を満たす、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の二次電池を備える、電池モジュール。
【請求項14】
請求項13に記載の電池モジュールを備える、電池パック。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュール、又は請求項14に記載の電池パック、を備える、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、容量が高く、寿命が長い等の特性を有するため、電子機器、例えば、携帯電話、ノートパソコン、電動自転車、電気自動車、電動飛行機、電動船舶、電動玩具自動車、電動玩具船舶、電動玩具飛行機、電動工具等に広く用いられている。電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、二次電池の性能への要求もますます厳しくなっている。
【0003】
しかしながら、二次電池の性能を改善する場合、二次電池の安全性能とサイクル性能と動力学性能とを両立させることは難しい。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することにある。
【0005】
本出願の第1の態様は、二次電池を提供し、前記二次電池は、正極膜層を含む正極シート、負極膜層を含む負極シート、電解液及び固体電解質を含み、固体電解質は、正極膜層及び/又は負極膜層の表面に設けられ且つポリマーマトリックス及び第1の添加剤を含み、第1の添加剤は、正極膜層及び/又は負極膜層の表面に界面膜を形成するように配置され、ここで、固体電解質の総質量に対するポリマーマトリックスの質量百分率をA%とし、固体電解質の総質量に対する第1の添加剤の質量百分率をB%とし、二次電池は、0.1≦B/A≦19を満たし、好ましくは、0.5≦B/A≦10である。
【0006】
これにより、本出願の固体電解質におけるポリマーマトリックスは、一定の粘着性を有し、固体電解質を活物質の表面に付着させる。固体電解質は、優れた熱安定性及び化学的安定性を有し、二次電池の充放電過程において良好なサイクル安定性を保持し、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。固体電解質はさらに広い安定電気化学窓を有し、広い安定電気化学窓は、充放電過程において電解質と正負極が不良な界面反応しにくいことを確保するため、二次電池の内部抵抗を低下させ、発熱を減少させ、二次電池の安全性能と耐用寿命を向上させることができる。また、第1の添加剤は、活物質表面に形成された界面膜が厚すぎず、金属イオンの伝送に有利であり、且つ界面膜のインピーダンスが低く、二次電池の動力学性能の向上に有利である。固体電解質と液体電解質を組み合わせて使用することにより、固体電解質の利点と液体電解質の利点とを両立させ、二次電池の動力学性能、安全性能及びサイクル性能を改善することができる。
【0007】
いずれかの実施形態において、二次電池は、5≦A≦99、及び/又は0.1≦B≦95を満たす。ポリマーマトリックスの質量百分率が上記範囲にあると、ポリマーマトリックスと活物質との間の粘着力を確保することができ、二次電池の充放電過程において、固体電解質が活物質表面から脱落しにくい。第1の添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、第1の添加剤が正極膜層及び/又は負極膜層に均一且つ安定な界面膜を形成し、且つ界面膜のインピーダンスが相対的に低くなり、二次電池の動力学性能の向上に有利である。
【0008】
いずれかの実施形態において、第1の添加剤は、固体電解質の総質量に対する質量百分率がB1%であるホウ素含有リチウム塩と、固体電解質の総質量に対する質量百分率がB2%である負極成膜添加剤とを含み、ここで、二次電池は、0.002≦B1/B2≦10を満たす。本出願の負極成膜添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、負極成膜添加剤とホウ素含有リチウム塩が共に均一且つ安定なSEI膜を形成することを確保し、負極活物質に対する保護性能をさらに向上させることができる。
【0009】
いずれかの実施形態において、二次電池は、0.1≦B1≦50、及び/又は0.1≦B2≦50を満たす。
【0010】
いずれかの実施形態において、ホウ素含有リチウム塩の分子式はLiBFaObCcPdであり、分子式の中で、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4であり、好ましくは、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0011】
これにより、本出願のテトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBが配合されて使用され、三者により形成されたSEI膜の構成成分が多く、SEI膜の構造がより安定的である。また、構造が安定したことを確保した上で、SEI膜の相対的に小さいインピーダンス値を確保して、二次電池の低温性能を確保することができる。
【0012】
いずれかの実施形態において、負極成膜添加剤は、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤及び亜硫酸エステル系添加剤のうちの一種類類又は複数種類を含む。本出願の負極成膜添加剤及びホウ素含有リチウム塩は配合して、負極活物質の表面に共同でSEI膜を形成し、且つ複数の成分が共同でSEI膜の表面に成膜されてSEI膜の膜層構造を豊かにし、SEI膜の構造安定性を向上させる。
【0013】
いずれかの実施形態において、炭酸エステル系添加剤は、環状炭酸エステル溶媒及び/又は鎖状炭酸エステル溶媒を含み、好ましくは、環状炭酸エステル溶媒は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含み、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートVAのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、好ましくは、環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンサルトンFPSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は亜硫酸エステル系添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む。
【0014】
いずれかの実施形態において、電解液は、電解液の総質量に対する質量百分率がM1%である環状炭酸エステル溶媒と、電解液の総質量に対する質量百分率がM2%である鎖状炭酸エステル溶媒とを含み、ここで、二次電池は、10-3≦M1/M2≦2、好ましい範囲が0.1≦M1/M2≦1、好ましくは、1≦M1≦20、及び/又は50≦M2≦85を満たす。本出願の環状炭酸エステル溶媒及び鎖状炭酸エステル溶媒の質量百分率が上記範囲にあると、電解液のイオン伝導度をより一層向上させることができる。
【0015】
いずれかの実施形態において、環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートVA、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBC、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0016】
いずれかの実施形態において、電解液は、電解液の総質量に対する質量百分率がD1%である電解液成膜添加剤と、電解液の総質量に対する質量百分率がD2%であるリチウム塩と、を含み、二次電池は、0.2≦E/(D1+D2)≦2.95を満たし、式中、Eは電解液の粘度を示し、その単位はmPa・sである。
【0017】
二次電池が上記式を満たす場合、電解液の動力学性能の向上に有利である。例えば、相対的に高い含有量のリチウム塩及び電解液成膜添加剤を添加する場合、電解液の粘度が向上し、電解液と固体電解質との協力に有利であり、電解液成膜添加剤が固体電解質を介して活物質表面により成膜されやすくなる。電解液に鎖状炭酸エステル溶媒が協力する場合、電解液の粘度が低い範囲にあることをさらに制御することができ、リチウムイオンの移動に有利であり、電解液の動力学性能を確保する。
【0018】
いずれかの実施形態において、固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、正極膜層の圧縮密度をP1 g/cm3とし、正極膜層の厚さをh1 μmとし、二次電池が5≦h1*P1/m≦250を満たす。本出願の二次電池が上記範囲を満たす場合、ポリマースラリーは、活物質に対して良好な被覆を果たし、界面の保護作用を果たす。この限定関係において、ポリマースラリーの拡散経路は適宜であり、ポリマースラリーの粘度に適合し、ポリマースラリーの活物質への拡散に有利であり、且つ適宜な圧縮密度に適合するため、正極膜層の空隙率が適宜であり、ポリマースラリーが活物質の空隙に拡散するのに有利であり、これにより、ポリマースラリーによって形成される固体電解質と活物質との結合程度が強くなり、固体電解質と活物質界面のインピーダンスが相対的に低くなる。
【0019】
いずれかの実施形態において、固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、負極膜層の圧縮密度をP2g/cm3とし、負極膜層の厚さをh2μmとし、二次電池が25≦h2*P2/m≦245を満たす。本出願の二次電池が上記範囲を満たす場合、ポリマースラリーは、活物質に対して良好な被覆を果たし、ポリマースラリーの拡散経路は適宜であり、ポリマースラリーの粘度に適合し、ポリマースラリーの活物質への拡散に有利であり、且つ適宜な圧縮密度に適合するため、負極膜層の空隙率が適宜であり、ポリマースラリーが活物質の空隙に拡散するのに有利であり、これにより、ポリマースラリーによって形成される固体電解質と活物質との結合程度が強くなり、固体電解質と活物質界面のインピーダンスが相対的に低くなる。
【0020】
本出願の第2の態様は、本出願の第1の態様のいずれかの実施形態に係る二次電池を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0021】
本出願の第3の態様は、本出願の第2の態様の実施形態に係る電池モジュールを含む電池パックをさらに提供する。
【0022】
本出願の第4の態様は、本出願の第1の態様のいずれかの実施形態の二次電池、本出願の第2の態様の実施形態の電池モジュール、又は本出願の第3の態様の実施形態の電池パックを含む、電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本出願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。以下に説明された図面は本出願のいくつかの実施例のみであることは明確である。当業者であれば、創造的労働をしない前提であっても、図面に基づいて他の図面をさらに得ることができる。
【0024】
【
図1】本出願の二次電池の一つの実施形態の模式図である。
【
図2】
図1の二次電池の実施形態の分解模式図である。
【
図3】本出願の電池モジュールの一つの実施形態の模式図である。
【
図4】本出願の電池パックの一つの実施形態の模式図である。
【
図5】
図4に示す電池パックの実施形態の分解模式図である。
【
図6】本出願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一つの実施形態の模式図である。 図面は、必ずしも実際の比率で描かれていない。
【0025】
符号の説明
1、電池パック;2、上部筐体;3、下部筐体;4、電池モジュール;5、二次電池;51、ケース;52、電極アセンブリ;53、カバープレート;6、電力消費装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。しかし、必要でない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要でなく冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本出願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0027】
本出願において開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で規定され、所定範囲は、1つの下限及び1つの上限を選定することによって規定され、選定された下限及び上限は、特別な範囲の境界を限定している。このように限定される範囲は、端値を含む又は端値を含まない範囲であってもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲を挙げられると、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2と、最大範囲値3、4及び5が挙げられた場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲は、全て予想されてもよい。本出願において、他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの略語で表され、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書において全て「0~5」の間の全ての実数を挙げることを示し、「0~5」は、これらの数値の組合せの略語である。また、あるパラメータが2以上(≧2)の整数であると表記すると、当該パラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当している。
【0028】
特に説明がない限り、本出願のすべての実施形態及び選択可能的な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成してもよい。また、このような技術案は、本出願の開示内容に含まれると考えられる。
【0029】
特に説明がない限り、本出願のすべての工程は、順に行われてもよいし、ランダムに行われてもよいが、順に行われることが好ましい。例えば、上記方法が工程(a)及び(b)を含むことは、上記方法が順に行われる工程(a)及び(b)を含むことであってもよく、順に行われる工程(b)及び(a)を含むことであってもよいことを表す。例えば、上記方法が工程(c)をさらに含んでもよいと言及する場合、工程(c)は、任意の順序で上記方法に加えられてもよいことを表す。例えば、上記方法は、工程(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、工程(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、工程(c)、(a)及び(b)等を含んでもよい。
【0030】
特に説明がない限り、本出願に記載されている「備える」及び「含む」は、開放式であることを意味し、また、閉鎖式であってもよい。例えば、上記の「備える」及び上記「含む」は、挙げられていない他の成分をさらに「備える」又は「含む」こと、又は挙げられている成分のみを「備える」又は「含む」ことを表すことができる。
【0031】
特に説明がない限り、本出願において、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれの条件も満たされる。Aが真(又は存在)であり且つBが偽(又は存在しない)であり、Aが偽(又は存在しない)であり且つBが真(又は存在する)であり、又はAとBの両方が真である(又は存在する)。
【0032】
本出願において、用語「複数」、「複数種類」は、2つ又は2つ以上を意味する。
【0033】
二次電池は、容量が高く、寿命が長い等の特性を有するため、広く使用されている。新しいエネルギー産業の発展に伴い、二次電池の電気性能及び信頼性に対してより高い要求を提出した。二次電池のエネルギー密度及び電池容量等が向上したものの、二次電池には安全問題が発生する可能性があり、例えば、高容量の二次電池の充放電過程において、二次電池の内部に蓄積された熱によりセパレータが破壊されて陰陽極が接触し、急激な酸化還元反応による燃焼等の現象を引き起こす可能性がある。液体電解質自体の安全性の問題のため、二次電池の開発が制限されており、より安全性の高い二次電池の開発が重要である。
【0034】
これに基づいて、発明者らは、固体電解質を用いて極シートの表面に被膜保護処理を行い、固体電解質が液体電解液より高い熱安定性及び化学的安定性を有し、且つ固体電解質が極シートの表面に設けられるため、セパレータが破損しても、陰陽極が直接接触することを回避できず、高い安全性を有することを発見した。次に、固体電解質は、広い電気化学窓を有するため、界面副反応の生成を効果的に低減し、二次電池のサイクル寿命を改善するとともに、良好な電気化学的安定性を有させ、より高い充電電圧の正極活物質をマッチングできるため、高いエネルギー密度を有する。しかし、固体電解質と活物質との間の界面は固-固界面であり、固体電解質と活物質との間の有効接触が弱く、固体物質における金属イオンの輸送の動力学が低くなるため、界面のインピーダンスが大きい。
【0035】
そこで、発明者らは、二次電池について鋭意研究を行った結果、固体電解質と電解液とを組み合わせて使用することにより、固体電解質に特定の物質を増加させて、活物質に対する保護性能を向上させ、固体電解質と活物質との間のインピーダンスを低下させて、動力学性能を向上させるとともに、相対的な低粘度の電解液を組み合わせ、電解液の動力学性能を向上させ、これにより、二次電池の動力学性能、安全性能及びサイクル性能を総合的に改善できることを見出した。次に、本出願の技術案について詳細に説明する。
【0036】
二次電池
【0037】
第1の態様によれば、本出願は、二次電池を提供する。二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池の放電後に充電により活物質を活性化させて使用を継続することができる電池である。
【0038】
前記二次電池は、正極シートと、負極シートと、電解液と、固体電解質とを含み、正極シートは正極膜層を含み、負極シートは負極膜層を含み、固体電解質は前記正極膜層及び前記負極膜層の少なくとも一方の表面に設けられ、前記固体電解質はポリマーマトリックス及び第1の添加剤を含み、前記第1の添加剤は前記正極膜層及び/又は前記負極膜層の表面に界面膜を形成するように配置され、ここで、前記固体電解質の総質量に対する前記ポリマーマトリックスの質量百分率をA%とし、前記固体電解質の総質量に対する前記第1の添加剤の質量百分率をB%とし、前記二次電池は、0.5≦B/A≦19を満たす。
【0039】
メカニズムは明らかではないが、本出願の二次電池は、二次電池の動力学性能、安全性能及びサイクル性能を総合的に改善することができる。
【0040】
発明者らは、本出願の作用メカニズムを以下のように推測した。
【0041】
固体電解質は正極膜層に設けられてもよく、正極膜層は正極活物質を含み、即ち、固体電解質が正極活物質に設けられ、固体電解質における第1の添加剤と正極活物質とが成膜反応を発生することができ、正極活物質表面に正極固体電解質界面膜であるCEI膜を形成することができる。固体電解質は、負極膜層に設けられてもよく、即ち、固体電解質は負極活物質に設けられ、固体電解質における第1の添加剤と負極活物質とが成膜反応を発生することができ、負極活物質表面に固体電解質界面膜(Solid Electrolyte Interphase、SEI膜)が形成される。あるいは、固体電解質は、正極膜層及び負極膜層に設けられてもよく、即ち、固体電解質は正極活物質に設けられ、且つ負極活物質に設けられている。本出願において、CEI膜及びSEI膜は、界面膜と総称される。
【0042】
固体電解質は、活物質に設けられ、固体電解質におけるポリマーマトリックスは一定の粘着性を有するため、固体電解質を活物質の表面に付着させる。固体電解質は、優れた熱安定性及び化学的安定性を有し、二次電池の充放電過程において良好なサイクル安定性を保持し、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。固体電解質はさらに広い安定電気化学窓を有し、広い安定電気化学窓は、充放電過程において電解質と正負極が不良な界面反応しにくいことを確保するため、二次電池の内部抵抗を低下させ、発熱を減少させて、二次電池の安全性能と耐用寿命を向上させることができる。
【0043】
ポリマーマトリックスは一般的に多孔状構造であり、その孔径が小さく、第1の添加剤及びポリマーマトリックスが固体電解質を形成する場合、第1の添加剤はポリマーマトリックスの孔に充填され、第1の添加剤のポリマーマトリックスの中での分散は均一であり、ポリマーマトリックスにおける基は第1の添加剤における金属イオン、例えばリチウムイオンと錯体配位作用を起こし、ポリマーマトリックスの不規則なブラウン運動過程に伴って、金属イオンがポリマーマトリックス上で配位及び配位解離の作用を繰り返し、リチウムイオンの伝達を実現する。成膜に用いる第1の添加剤が固体電解質に設けられているため、第1の添加剤の使用量が少なく、第1の添加剤を導入することによる水分含有量を低減でき、二次電池内部での副反応のリスクを低減できる。
【0044】
二次電池は、電解液を注入した後、電解液が正極シート及び負極シートに浸潤し、固体電解質は、電解液で浸潤される場合、それに含まれる第1の添加剤が電解液に溶解し、溶解した第1の添加剤が活物質の表面に界面膜をより形成しやすく、活物質に対して良好な保護作用を果たし、且つ第1の添加剤が活物質表面に形成された界面膜が厚すぎず、金属イオンの輸送に有利であり、且つ界面膜のインピーダンスが低く、二次電池の動力学性能を向上させるのに有利である。また、固体電解質は、電解液における溶媒と正負極シートとの接触による副反応のリスクを低減させるため、電解液の分解の可能性を低減することもできる。
【0045】
二次電池の充電過程において、金属イオンがリチウムイオンであることを例として説明し、動力学過程は、通常、リチウムイオンが正極活物質から脱離し、電解質相に移動し、電解液における溶媒和リチウムイオンが負極活物質表面に拡散して伝達され、リチウムイオンが負極活物質表面から電子を得て、負極活物質の内部に拡散する工程を含む。本出願は、リチウムイオンが正極活物質から電解質相に脱離する過程において、正極活物質表面のCEI膜が薄く、その移動障壁が相対的に低く、電解液が液体電解質としてその粘度が相対的に低く、イオン伝導率が高いため、リチウムイオンが電解液から負極活物質に移動する過程において、その移動障壁が相対的に低く、負極活物質表面のSEI膜が薄く、リチウムイオンがSEI膜から負極活物質の内部に移動する移動障壁も相対的に低いため、リチウムイオンの動力学過程全体における移動障壁が低く、必要エネルギーが少なく、リチウムイオンの急速な移動に有利であり、二次電池は動力学性能が比較的良好になる。
【0046】
本出願は、固体電解質と液体電解質を組み合わせて使用することにより、固体電解質の利点と液体電解質の利点とを両立させ、二次電池の動力学性能、安全性能及びサイクル性能を改善できる。
【0047】
[固体電解質]
【0048】
固体電解質は、ポリマーマトリックスと、第1の添加剤とを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリエチレンオキシドPEO、ポリウレタンPU、ポリメチルメタクリレートPMMA、ポリアクリロニトリルPAN、ポリフッ化ビニリデンPVDF、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)P(VDF-HFP)、ポリプロピレンカーボネートPPC及びポリカーボネートPC、ポリ塩化ビニルPVC、ポリエチレンカーボネートPEC、ポリ乳酸PLA、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、及び特徴官能基含有ブレンド物及びコポリマーのうちの一種類類又は複数種類を含み、特徴官能基は電子吸引基を含み、例示的に、電子吸引基は、フッ素原子F、窒素原子N、硫黄原子S、カルボニル-C=O、ニトリル基-CN及びスルホニル-S=O等の極性原子又は極性基を有する高分子ポリマーのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0049】
ブレンド物は、材料の物理的及び化学的性質を調整するものであり、例えばPVDF-HFP/ポリエチルメタクリレートPEMA、PEO/PVDF、PVDF-HFP/ポリ酢酸ビニルPVAc、PVC/PMMA、PVDF-HFP/PMMA、PVDF-HFP/PAN等の各種ブレンド系であり、コポリマー系はPEO-ポリスチレンPSt、ポリジメチルシロキサン(PDMS)-PEO、PEGMA-MMA-IBVE、PEO-PMMA、POEM-PBMA、PPG-PEG-PPG、MMA-AN-BA等を含む。
【0050】
前記ポリマーマトリックスは良好な機械的特性を有し、且つ形成された固体電解質の柔靱性が良く、活物質と安定な良好な電極電解質界面を形成できる。また、上記ポリマーマトリックスポリマーの分子鎖セグメントは熱運動の能力を有し、温度の上昇に伴って分子セグメントの熱運動が激しくなり、ポリマーマトリックスはリチウムイオンを伝導する能力を有し、金属イオン、例えばリチウムイオンが特徴原子及び基と配位-解離-配位する過程を絶えず発生することに有利であり、これによりポリマーマトリックスの分子鎖内部又は分子鎖の間でのリチウムイオンの輸送が実現され、形成された固体電解質は高いイオン伝導率を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、固体電解質の総質量に対して、ポリマーマトリックスの質量百分率A%は、5≦A≦99である。ポリマーマトリックスの質量百分率が上記範囲にあると、ポリマーマトリックスと活物質との間の粘着力を確保することができ、二次電池の充放電過程において、固体電解質が活物質表面から脱落しにくい。好ましくは、5≦A≦70である。例示的に、ポリマーマトリックスの質量百分率A%は、5%、10%、15%、25%、35%、45%、55%、65%、70%、90%、95%又は99%であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1の添加剤は、正極膜層及び/又は負極膜層の表面に界面膜を形成するために用いられてもよい。第1の添加剤の質量百分率B%は、固体電解質の総質量に対して、0.1≦B≦95である。
【0053】
第1の添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、第1の添加剤が正極膜層及び/又は負極膜層に均一且つ安定な界面膜を形成し、且つ界面膜のインピーダンスが相対的に低くなり、二次電池の動力学性能の向上に有利である。好ましくは、10≦B≦95である。例示的に、第1の添加剤の質量百分率B%は、0.1%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は95%であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1の添加剤は、リチウムイオンの円滑な移動を確保するために、導電性リチウム塩を含んでもよい。導電性リチウム塩は、ホウ素含有リチウム塩を選択することができる。ホウ素含有リチウム塩はポリマーマトリックスとの相溶性がよく、ホウ素含有リチウム塩の添加はポリマーマトリックスのガラス転移温度をある程度低下させ、ポリマーマトリックスの機械的強度及びアモルファス相の安定温度を向上させることができる。ホウ素含有リチウム塩は、アニオン基が大きく、リチウムイオンを解離しやすいため、リチウムイオンの溶解度を確保して、ポリマー電解質のイオン伝導率を向上させる。
【0055】
いくつかの実施形態において、ホウ素含有リチウム塩の分子式は、LiBFaObCcPdであり、分子式中、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4である。
【0056】
B原子は酸素を含むシュウ酸類配位子と結合することができる。結合後の生成物は優れた熱安定性を有し、負極活物質の表面に性能に優れたSEI膜を形成しやすいため、負極活物質の構造安定性を確保して、二次電池のサイクル性能を改善することができる。もちろん、B原子はハロゲン原子、特にフッ素原子と結合してもよい。フッ素原子は、電子吸引の誘導効果が強く、その熱安定性及び化学的安定性が高い。また、リチウムイオンの電解液への溶解度が高く、リチウムイオンの溶解度を確保し、電解液の導電率を確保することができる。
【0057】
例として、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C2O4)2、LiBOBと略称する)及びリチウムビスフルオロオキサレートボレート(LiBC2O4F2、略称LiDFOB)のうちの一種類類又は複数種類を含む。さらに、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C2O4)2、LiBOBと略称する)とリチウムビスフルオロオキサレートボレート(LiBC2O4F2、略称LiDFOB)との組成物を含む。
【0058】
テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)は、電解液における有機溶媒、例えば炭酸エステル系溶媒又は添加剤と組み合わせて使用する場合、テトラフルオロホウ酸リチウムからなる系の粘度が相対的に低く、リチウムイオンの放出に有利であり、これにより、電解液における電気伝導度が向上する。テトラフルオロホウ酸リチウムにより形成されたSEI膜の厚さが均一であり、動力学的活性が良く、二次電池における電荷移動抵抗が小さく、これにより、二次電池の低温性能を顕著に改善できる。SEI膜が熱分解しにくく、高温での性能が安定であるため、二次電池の高温性能を顕著に改善することができる。
【0059】
リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBのいずれかは、正極シートにおける正極集電体に対するパッシベーション作用を有し、正極集電体と副反応して正極集電体を腐食させるリスクを低減し、正極シートの構造安定性を向上させることができる。また、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBのいずれかを含む電解液は、酸性物質を生じにくく、正極集電体が腐食されるリスクをさらに低減することもできる。リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBは、正極活物質との相溶性がよく、リチウムイオンの移動に有利であり、負極活物質の表面に有効なSEI膜を形成し、負極活物質に対する保護性能を向上させることができる。
【0060】
テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBを組み合わせて使用することにより、三者によって形成されるSEI膜の構成成分が多く、SEI膜の構造がより安定的である。また、構造が安定したことを確保した上で、SEI膜の相対的に小さいインピーダンス値を確保して、二次電池の低温性能を確保することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、固体電解質の総質量に対して、ホウ素含有リチウム塩の質量百分率をB1%とし、0.1≦B1≦50である。
【0062】
ホウ素含有リチウム塩の質量百分率が上記範囲にあると、固体電解質のイオン伝導能力を確保することができる。また、正極集電体に対する良好な保護作用を奏し、且つ負極活物質に対して良好な保護作用を奏することができる。例示的に、ホウ素含有リチウム塩の質量百分率B1%は、0.1%、0.5%、1%、2%、10%、20%、25%又は50%等であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、導電性リチウム塩は、イオン伝導性リチウム塩をさらに含んでもよい。イオン伝導性リチウム塩は、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiPF6、ジフルオロリン酸リチウムLiPO2F2、ジフルオロビスオキサレートホスフェートLiDODFP、テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムLiDFBP、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩LiFSI、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、フルオロスルホン酸リチウムLiSO3F、硝酸リチウムLiNO3、過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムLiSbF6、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsF6のうちの一種類類又は複数種類を含む。前記イオン伝導性リチウム塩は、解離度が相対的に高く、その伝導率が高く、リチウムイオンの移動に有利である。
【0064】
いくつかの実施形態において、第1の添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよい。負極成膜添加剤は、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤及び亜硫酸エステル系添加剤のうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0065】
負極成膜添加剤とホウ素含有リチウム塩との協力により、負極活物質の表面に共にSEI膜が形成され、複数の成分が共にSEI膜の表面に成膜してSEI膜の膜層構造を豊富にし、SEI膜の構造安定性を向上させることができる。さらに、負極成膜添加剤は、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤、亜硫酸エステル系添加剤及びフルオロシュウ酸リン酸リチウム塩のうちの少なくとも二種類を含み、それから形成されるSEI膜の組成が豊富であり、その構造安定性がより高い。
【0066】
固体電解質の総質量に対して、負極成膜添加剤の質量百分率はB2%とし、0.1≦B2≦50である。
【0067】
負極成膜添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、負極成膜添加剤が均一且つ安定なSEI膜を形成することを確保し、負極活物質に対する保護性能をさらに向上させることができる。例示的に、負極成膜添加剤の質量百分率B2%は、0.1%、0.5%、1%、2%、10%、20%、25%又は50%等であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、0.002≦B1/B2≦9である。
【0069】
負極成膜添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、負極成膜添加剤とホウ素含有リチウム塩とが共に均一且つ安定なSEI膜を形成することを確保し、負極活物質に対する保護性能をさらに向上させることができる。例示的に、B1/B2は、0.002、0.2、0.5、1、2、5又は9等であってもよい。
【0070】
例として、炭酸エステル系添加剤は、環状炭酸エステル系添加剤及び/又は直鎖炭酸エステル系添加剤を含む。さらに、前記環状炭酸エステル系添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含む。前記直鎖状炭酸エステル系添加剤は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートVAのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0071】
例として、硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含む。さらに、前記環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンサルトンFPSのうちの一種類類又は複数種類を含む。前記炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0072】
例として、亜硫酸エステル系添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、固体電解質は、ポリマーマトリックスと第1の添加剤等との相溶性を高めるように、溶媒、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの少なくとも一種類をさらに含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、固体電解質は、固体電解質のイオン伝導率及びリチウムイオン移動量を向上させるために、助剤、例えば可塑剤、イオン液体等をさらに含んでもよく、電極電解質界面の界面適合性を改善することができる。例示的に、可塑剤は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC等であってもよい。
【0075】
固体電解質は、ポリマーマトリックス、第1の添加剤等を均一に混合した後にポリマースラリーを形成し、溶液注入法により極シート表面に塗布して転写し、硬化して成膜する方法を採用することができる。
【0076】
[電解液]
【0077】
電解液は正極シートと負極シートとの間で金属イオンを伝導する役割を果たす。本出願の電解液は本分野で既知の二次電池に用いられる電解液を採用することができる。電解液は、リチウム塩及び有機溶媒を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、リチウム塩は、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiPF6、ジフルオロリン酸リチウムLiPO2F2、ジフルオロビスオキサレートホスフェートLiDODFP、テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムLiDFBP、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩LiFSI、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、フルオロスルホン酸リチウムLiSO3F、硝酸リチウムLiNO3、過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムLiSbF6、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsF6から選択される一種類類又は複数種類の少なくとも一種類である。電解液の総質量に対して、リチウム塩の質量百分率をD2%とした。
【0079】
さらに、1≦D2≦25であり、リチウム塩が上記の範囲内にあると、電解液に十分なリチウム源を提供してイオン通路を形成するとともに、電解液が高いイオン伝導を有する。
【0080】
例示的に、D2は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、19、20、21、22、23又は25であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、炭酸エステル溶媒を含み得、炭酸エステル溶媒は、環状炭酸エステル溶媒と、鎖状炭酸エステル溶媒とを含む。環状炭酸エステル溶媒と鎖状炭酸エステル溶媒とを組み合わせて使用することにより、電解液は高誘電率と低粘度を有し、電解液のイオン伝導率を向上させることができ、且つ、電解液の電気化学的安定性が高く、電気化学窓が著しく向上する。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記電解液の総質量に対する環状炭酸エステル溶媒の質量百分率をM1%とし、前記電解液の総質量に対する鎖状炭酸エステル溶媒の質量百分率をM2%とし、10-3≦M1/M2≦2である。
【0083】
環状炭酸エステル溶媒及び鎖状炭酸エステル溶媒の質量百分率が上記範囲にあると、電解液のイオン伝導度をより一層向上させることができる。好ましくは、0.1≦M1/M2≦1であり、例示的に、M1/M2は、0.001、0.01、0.1、0.2、0.5、0.7、0.9又は1であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0084】
例として、環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0085】
さらに、1≦M1≦20である。環状炭酸エステル溶媒の質量百分率が上記範囲にあると、リチウムイオンの解離が促進され、リチウムイオンの溶解度が高くなり、電解液のイオン伝導度をより向上させることができる。例示的に、M1は、1、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0086】
例として、前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートVA、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBC、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【0087】
さらに、50≦M2≦85である。鎖状炭酸エステル溶媒の質量百分率が上記範囲である場合、電解液に低い粘度を提供することができ、リチウムイオンの円滑な移動に有利であり、電解液の動力学性能を向上させる。例示的に、M2は、50、52、55、56、58、60、62、65、66、68又は85であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、有機溶剤はエーテル系溶剤をさらに含んでもよい。エーテル系溶剤は低い粘度を有するため、電解液のイオン伝導率を高くすることができ、電解液におけるリチウムイオンが循環過程において良好な形態構造を保持する。エーテル系溶媒は、例えば、エチルエーテル、ポリメトキシエーテル等を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、有機溶媒はニトリル系溶媒をさらに含んでもよい。ニトリル系溶媒は高い安定性を有するため、電解液全体の安定性を向上させることができる。例示的に、ニトリル系溶媒は、アジポニトリル、グルタロニトリル等を含んでもよい。
【0090】
もちろん、有機溶剤は、スルホン系溶剤等の他のタイプの溶剤を含んでもよい。
【0091】
例示的に、有機溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、フルオロ炭酸エチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから選択される少なくとも一種類である。
【0092】
いくつかの実施形態において、電解液は、電解液添加剤をさらに含んでもよい。例えば、電解液添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤等の電解液成膜添加剤を含んでもよく、電池の一部の性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能又は低温性能を改善する添加剤等を含んでもよい。例えば、負極成膜添加剤は、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤及び亜硫酸エステル系添加剤のうちの一種類類又は複数種類を含む。電解液成膜添加剤の具体的な種類は、固体電解質に対して説明した通りであり、ここでは説明を省略する。電解液の総質量に対する電解液成膜添加剤の質量百分率をD1%とした。
【0093】
好ましくは、10-3≦D1≦10である。D1が上記範囲にあると、活物質の表面に界面膜が十分に形成されることを確保し、活物質に対する保護作用を向上させることができる。好ましくは、0.1≦D1≦10である。例示的に、D1は、10-3、10-2、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよく、又は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、二次電池は、0.2≦E/(D2+D1)≦2.95をさらに満たし、式中、Eは電解液の粘度を表し、その単位はmPa・sである。
【0095】
二次電池が上記式を満たす場合、電解液の動力学性能の向上に有利である。例えば、相対的に高い含有量のリチウム塩及び電解液成膜添加剤を添加する場合、電解液の粘度が向上し、電解液と固体電解質との協力に有利であり、電解液成膜添加剤が固体電解質を介して活物質表面により成膜されやすくなる。電解液に鎖状炭酸エステル溶媒が協力する場合、電解液の粘度が低い範囲にあることをさらに制御し、リチウムイオンの移動に有利であり、電解液の動力学性能を確保することができる。例示的に、E/(D2+D1)は、0.2、0.25、0.28、1、1.2、1.5、1.8、2、2.5又は2.95であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0096】
さらに、0.1≦E≦8である。例示的に、Eは、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、7又は8であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。Eが上記範囲にあると、電解液の粘度が適切な範囲内に調整されることができるため、リチウムイオンの移動に有利である。
【0097】
[正極シート]
【0098】
いくつかの実施形態において、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた正極膜層とを含む。例えば、正極集電体は、自身の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の二つの表面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0099】
いくつかの実施形態において、固体電解質を正極膜層の表面、即ち、正極膜層の正極集電体から離れた表面に設けることにより、正極シートに対して良好な保護作用を果たすため、正極シートの構造安定性を確保し、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、固体電解質の溶液における固体質量百分率が液体質量に対する百分率をmとし、前記正極膜層の圧縮密度をP1 g/cm3とし、前記正極膜層の厚さをh1 μmとし、二次電池は、5≦h1*P1/m≦250を満たす。
【0101】
固体電解質における固形物は、ポリマーマトリックス、ホウ素含有リチウム塩等を含み、固体電解質に対する質量百分率は、固体電解質の溶液の固体質量含有量である。固体電解液における液状物質、例えば溶媒などは、固体電解質の質量百分含有量に対して固体電解質の液体質量含有量である。溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率はmである。
【0102】
本出願において、材料の圧縮密度は、本分野で周知の意味であり、本分野で知られている機器及び方法で試験することができる。例えば、標準GB/T24533-2009を参照して、電子圧試験機(例えばUTM7305型)により試験することができる。例示的な試験方法は、材料1gを秤量し、底面積が1.327cm2の金型に入れ、2000kg(20000Nに相当)に加圧し、30秒間保圧した後、圧力を脱圧し、10sを保持し、次に、材料の20000Nの作用力での圧縮密度を記録して計算した。
【0103】
二次電池が上記範囲を満たす場合、ポリマースラリーは、活物質に対して良好な被覆を果たし、界面の保護作用を果たす。この限定関係において、ポリマースラリーの拡散経路は適宜であり、ポリマースラリーの粘度に適合し、ポリマースラリーの活物質中への拡散に有利であり、且つ適宜な圧縮密度に適合するため、正極膜層の空隙率が適宜であり、ポリマースラリーが活物質の空隙に拡散するのに有利であり、これにより、ポリマースラリーによって形成される固体電解質と活物質との結合程度が強くなり、固体電解質と活物質界面のインピーダンスが相対的に低くなる。好ましくは、100≦h1×P1/m≦250である。例示的に、h1*P1/mは、0.4、0.8、1、2、3、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、110、120、150、160、170、180、190、200、220、250、260、280、又は300であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0104】
さらに、1≦m≦50である。mは、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0105】
さらに、10≦h1≦300である。h1は、10、20、50、60、80、100、120、150、180、200、220、250、280、300であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0106】
さらに、0.1≦P1≦5である。P1は、0.1、0.5、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0107】
前記正極膜層は、正極活物質を含み、正極活物質は、本分野で既知の二次電池用正極活物質を採用し得る。例えば、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの改質化合物の少なくとも一方を含んでいてもよい。例示的なリチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びこれらの改質化合物のうちの少なくとも一種類を含むことができる。例示的なオリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、及びこれらの改質化合物のうちの少なくとも一種類が挙げられる。本出願はこれらの材料に限定されず、二次電池正極活物質として用いられる従来既知の他の材料を用いてもよい。これらの正極活物質は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
いくつかの実施例において、正極活物質は、LiNixCoyMnzM1-x-y-zO2又はLiNiaCobAlcN1-a-b-cO2を含み、ここで、M及びNは、それぞれ独立して、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選択されるいずれか一種類であり、0≦y≦1、0≦x<1、0≦z≦1、x+y+z≦1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≦1である。正極活物質がホウ素含有リチウム塩と組み合わせて使用すると、ホウ素含有リチウム塩におけるB原子が正極活物質におけるO原子と結合しやすくなるため、正極活物質の電荷移動抵抗が低下し、正極活物質のバルク内でのリチウムイオンの拡散抵抗が低下する。したがって、非水電解液に適切な含有量のテトラフルオロホウ酸リチウム及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートを含有する場合、低コバルト又はコバルト無正極活物質は、リチウムイオンの拡散速度を顕著に改善し、低コバルト又はコバルトの正極活物質のバルク内のリチウムイオンが表面にタイムリーに補充され、低コバルト又はコバルトの正極活物質の表面がリチウムを脱離し過ぎることを回避するため、低コバルト又はコバルトの正極活物質の結晶構造を安定化させることができる。低コバルト又はコバルト無正極活物質は、結晶構造がより安定しているため、低コバルト又はコバルト無正極活物質の表面にリチウム脱離が発生することにより正極活物質の構造的性質、化学的性質又は電気化学的性質が不安定になる等の問題が発生する確率、例えば、正極活物質の不可逆的な歪み及び格子欠陥の増加の問題を大幅に低減することができる。
【0109】
LiNixCoyMnzM1-x-y-zO2或LiNiaCobAlcN1-a-b-cO2は、本分野で既知の普通の方法によって製造された。例示的な製造方法は、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素前駆体、N元素前駆体を混合して焼結して得られる。焼結雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、空気雰囲気又は酸素ガス雰囲気とすることができる。焼結雰囲気のO2濃度は、例えば、70%~100%である。焼結温度及び焼結時間は、実際の状況に応じて調節することができる。
【0110】
例として、リチウム源は、酸化リチウム(Li2O)、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)及び硝酸リチウム(LiNO3)のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、コバルト源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト及び酢酸コバルトのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例示として、マンガン源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例示として、アルミニウム源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム及び酢酸アルミニウムのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、M元素の前駆体は、M元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水酸化水素化合物及び酢酸化合物のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、N元素の前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫化リチウム、硫化アンモニウム及び単体硫黄のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に対して、分子式は、LiNixCoyMnzM1-x-y-zO2又はLiNiaCobAlcN1-a-b-cO2の層状材料の質量百分率が80~99%である。例えば、分子式がLiNixCoyMnzM1-x-y-zO2又はLiNiaCobAlcN1-a-b-cO2の層状材料の質量百分率は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であってもよく、又はそれ以上の任意の数値からなる範囲であってもよい。好ましくは、分子式は、LiNixCoyMnzM1-x-y-zO2又はLiNiaCobAlcN1-a-b-cO2の層状材料の質量百分率が85%~99%、90%~99%、95%~99%、80%~98%、85%~98%、90%~98%、95%~98%、80%~97%、85%~97%、90%~97%又は95%~97%である。
【0112】
いくつかの実施例において、正極膜層は、好ましくは、正極導電剤をさらに含んでもよい。本出願は、正極導電剤の種類を特に限定しない。例として、正極導電剤は、超伝導炭素、導電性グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケチェンブラック、炭素点、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に対して、正極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0113】
いくつかの実施例において、正極膜層は、好ましくは、正極結着剤をさらに含んでもよい。本出願は、正極結着剤の種類を特に限定しない。例として、正極結着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元コポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元コポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー及び含フッ素アクリレート系樹脂から選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に対して、正極結着剤の質量百分率は5%以下である。
【0114】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例としては、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでもよい。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。
【0115】
正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスしてなる。正極スラリーは、通常、正極活物質と、選択可能な導電剤と、選択可能な結着剤と、任意の他の成分とを溶媒に分散させ、均一に撹拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
【0116】
本出願の電解液は、本分野の通常の方法に従って調製されることができる。例えば、添加剤、溶媒、電解質塩等を均一に混合して、電解液を得ることができる。各材料の添加順序は特に制限されず、例えば、添加剤、電解質塩等を非水溶媒に加えて均一に混合し、非水電解液を得ることができる。
【0117】
本出願において、電解液における各成分及びその含有量は、本分野で既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフ-質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
【0118】
なお、本出願の電解液試験において、新たに調製した電解液をそのまま取り出してもよく、二次電池から電解液を取り出してもよい。二次電池から電解液を取得する一つの例示的な方法は、二次電池を放電終止電圧まで放電し(安全のために、一般的に電池を満放電状態にしてから)遠心処理を行い、その後遠心処理から得られた適量の液体が非水電解液である。二次電池の注液口から直接非水電解液を取得してもよい。
【0119】
[負極シート]
【0120】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0121】
例として、負極集電体は、自身の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0122】
いくつかの実施形態において、固体電解質は、負極膜層の表面、即ち、負極膜層の負極集電体から離れた表面に設けられ、負極シートに対して良好な保護作用を果たすため、負極シートの構造安定性を確保し、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、前記負極膜層の20000Nの作用力における圧縮密度をP2g/cm3とし、前記負極膜層の厚さをh2μmとし、二次電池は、25≦h2×P2/m≦245を満たす。
【0124】
二次電池が上記範囲を満たす場合、ポリマースラリーは、活物質に対して良好な被覆を果たし、ポリマースラリーの粘度に適合し、ポリマースラリーの活物質中への拡散に有利であり、且つ適宜な圧縮密度に適合するため、負極膜層の空隙率が適宜であり、ポリマースラリーが活物質の空隙に拡散するのに有利であり、これにより、ポリマースラリーによって形成される固体電解質と活物質との結合程度が強くなり、固体電解質と活物質界面のインピーダンスが相対的に低くなる。好ましくは、50≦h2*P2/m≦200である。例示的に、h2*P2/mは、0.04、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.8、1、2、3、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、110、120、150、160、170、180、190、又は200であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0125】
さらに、1≦m≦50である。mは、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0126】
さらに、10≦h2≦300である。h2は、10、20、50、60、80、100、120、150、180、200、220、250、280、300であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0127】
さらに、1≦P2≦5である。P2は、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5又は5であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、負極活物質は、本分野で既知の電池用負極活物質を採用することができる。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウム及びリチウムアルミニウム合金等のうちの少なくとも一種類を含んでもよい。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合物、ケイ素窒素複合物及びケイ素合金から選択される少なくとも一種類であってもよい。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸素化合物及びスズ合金から選択される少なくとも一種類である。ただし、本出願はこれらの材料に限定されず、電池負極活物質として用いられる他の材料を用いてもよい。これらの負極活物質は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
いくつかの実施例において、負極膜層は、好ましくは、負極結着剤をさらに含んでもよい。本出願は、負極結着剤の種類を特に限定しない。例として、負極結着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PSMA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される一種類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に対して、負極結着剤の質量百分率は5%以下である。
【0130】
いくつかの実施例において、負極膜層は、好ましくは、負極導電剤をさらに含んでもよい。本出願は、負極導電剤の種類を特に限定しない。例として、負極導電剤は、超伝導炭素、導電性グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケチェンブラック、炭素点、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に対して、負極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0131】
いくつかの実施例において、負極膜層は、さらに他の助剤を含んでもよい。例として、他の助剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等の増粘剤を含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に対して、他の助剤の質量百分率は2%以下である。
【0132】
いくつかの実施例において、負極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用することができる。金属箔の例としては、銅箔や銅合金箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでもよい。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選択される一種類類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。
【0133】
負極膜層は、通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスしてなる。負極スラリーは、通常、負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な結着剤、選択可能な他の助剤を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これに限定されない。
【0134】
負極シートは、負極膜層以外の他の付加機能層を排除しない。例えば、いくつかの実施例において、負極シートは、負極膜層の表面を覆う保護層をさらに含む。
【0135】
本出願において、物質の質量百分率の測定方法は、本分野で既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフ-質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
【0136】
[セパレータ]
【0137】
いくつかの実施形態において、二次電池は、セパレータをさらに含む。本出願のセパレータの種類は特に限定されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の既知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0138】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも一種類である。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一でも異なっていてもよく、特に制限されない。
【0139】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回工程又は積層工程によって電極アセンブリとすることができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含み得る。外装は、上記電極アセンブリ及び電解質の封止に用いられる。
【0141】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミケース、スチールケース等のハードケースであってもよい。二次電池の外装はソフトバッグ、例えばバグソフトバッグであってもよい。ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよい。プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0142】
本出願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、方形又は他の任意の形状であってもよい。
図1は、例としての角型構造の二次電池5である。
【0143】
いくつかの実施例において、
図1及び
図2に示すように、外装は、ケース51及びカバープレート53を含むことができる。ケース51は、底板と、底板に接続された側板とを含み、底板と側板とが囲まれて収容室を形成する。ケース51は、収容室と連通する開口部を有し、カバープレート53は、収容室を塞ぐように開口部を塞ぐ。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層工程により電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容室に封入される。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一種類類又は複数種類であってもよく、要求に応じて調節されてもよい。
【0144】
本出願の二次電池の製造方法は既知である。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回工程又は積層工程により電極アセンブリを形成し、電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形等の工程を経て、二次電池を得ることができる。
【0145】
本出願のいくつかの実施例において、本出願に係る二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用及び容量に応じて調節されてもよい。
【0146】
図3は、例としての電池モジュール4の模式図である。
図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並んで設けられていてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置されてもよい。さらに、この複数の二次電池5を留め具により固定してもよい。
【0147】
好ましくは、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含み、複数の二次電池5は、収容空間に収容される。
【0148】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調節されてもよい。
【0149】
図4及び
図5は、一つの例としての電池パック1の模式図である。
図4及び
図5に示すように、電池パック1には、電池箱と、電池箱に設けられた複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池箱は、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3を蓋し、電池モジュール4を収容するための閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池箱に配置されてもよい。
【0150】
電力消費装置
【0151】
第2の態様によれば、本出願は、電力消費装置を提供し、電力消費装置は、本出願の二次電池、電池モジュール及び電池パックのうちの少なくとも一種類を含む。二次電池、電池モジュール及び電池パックは、電力消費装置の電源として用いられてもよいし、電力消費装置のエネルギー貯蔵手段として用いられてもよい。電力消費装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電車、船舶、及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0152】
電力消費装置は、その必要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0153】
図6は、例としての電力消費装置の模式図である。この電力消費装置6は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車等である。この電力消費装置の高出力及び高エネルギー密度に対する要求を満たすために、電池パック1又は電池モジュールを採用することができる。
【0154】
別の例として、電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。この電力消費装置は、通常、薄型化が求められており、電源として二次電池を採用することができる。
【0155】
実施例
【0156】
以下の実施例は本出願の内容をより具体的に説明したが、これらの実施例は例示的な説明に過ぎず、本出願の開示内容の範囲内で種々の修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。以下の実施例において報告されているすべての部、百分率、及び比率は、特記しない限り、すべて質量基準に基づくものである。また、実施例において使用されるすべての試薬は、市販されているか、又は従来の方法に従って合成されてもよい。また、さらなる処理を必要とせずにそのまま使用することができる。また、実施例において使用される装置は、いずれも市販されている。
【0157】
実施例1
【0158】
1、正極シートの製造
【0159】
正極集電体として、厚さ12μmのアルミニウム箔を用いた。
【0160】
正極活物質であるLiNi0.6Co0.2Mn2O2、導電剤であるカーボンブラック、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.4:1.1で適量の溶剤NMPの中で十分に撹拌混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、正極膜層を得た。
【0161】
ポリマーマトリックスP(VDF-HFP)、ホウ素含有リチウム塩(LiBOB)及びリチウム塩LiTFSIを均一に撹拌してポリマースラリーを形成し、真空脱泡した後、溶液を正極膜層に打設して塗布し、5℃~35℃で、0.1%~30%の湿度環境下で12時間放置し、相転移して硬化させて固体電解質を形成した。
【0162】
2、負極シートの製造
【0163】
負極集電体として、厚さ8μmの銅箔を用いた。
【0164】
負極活物質である黒鉛、結着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(SuperP)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の溶剤脱イオン水の中で十分に撹拌混合し、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、負極膜層を得た。
【0165】
ポリマーマトリックスP(VDF-HFP)、ホウ素含有リチウム塩(LiBF4)及びリチウム塩LiTFSIを真空脱泡した後、負極膜層上に塗布し、5℃~35℃で、0.1%~30%の湿度環境下で12時間放置し、硬化して固体電解質を形成した。
【0166】
3、セパレータ
【0167】
セパレータとしては、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムを用いた。
【0168】
4、電解液の製造
【0169】
含水量が10ppm未満の環境下で、非水有機溶媒であるエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比1:1:1で混合して電解液溶媒を得た後、混合した溶媒にリチウム塩を溶解し、リチウム塩濃度が1mol/Lの電解液とした。
【0170】
5、二次電池の製造
【0171】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、セパレータを正極シートと負極シートとの間にセパレータとして作用させた後、捲回して電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装缶に置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形等の工程を経て、リチウムイオン電池を得る。
【0172】
実施例2
【0173】
実施例2-1~実施例2-12の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造された。実施例1と異なる点としては、実施例2-1~実施例2-12が、第1の添加剤及びポリマーマトリックスの質量百分率を調整したことである。
【0174】
比較例1及び比較例2
【0175】
比較例1及び比較例2の二次電池は、実施例1と同類似の方法で製造された。実施例1と異なる点としては、比較例1及び比較例2は、第1の添加剤及びポリマーマトリックスの質量百分率を調整したことである。実施例1、実施例2及び比較例のデータを表1に示
す。
【0176】
【0177】
実施例3
【0178】
実施例3-1~実施例3-5の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造された。実施例1と異なる点としては、実施例3-1~実施例3-5が、ホウ素含有リチウム塩の質量百分率B1%を調整したことである。実施例1及び実施例3のデータを表2に示す。
【0179】
【0180】
実施例4
【0181】
実施例4-1~実施例4-7の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造された。実施例1と異なる点としては、実施例4-1~実施例4-7が、電解液成膜添加剤の質量百分率D1%を調整したことである。実施例1及び実施例4のデータを表3に示す。
【0182】
【0183】
実施例5
【0184】
実施例5-1~実施例5-8の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造された。実施例1と異なる点としては、実施例5-1~実施例5-8が、正極膜層の圧縮密度P1等のパラメータを調整したことである。実施例1及び実施例5のデータを表4に示す。
【0185】
【0186】
実施例6
【0187】
実施例6-1~実施例6-6の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造された。実施例1と異なる点としては、実施例6-1~実施例6-6は、負極膜層の圧縮密度P2等のパラメータを調整したことである。実施例6-1~実施例6-6のデータを表5に示す。
【0188】
【0189】
試験部分
【0190】
1、正極シート/負極シートのパラメータの試験
【0191】
1.1 正極膜層/負極膜層の厚さの試験
【0192】
テントウサンドマイクロメータを使用して正極シートの厚さ方向に沿って少なくとも12個の異なる位置の正極シートの厚さを測定し、平均値を正極シートの厚さh1とし、その後、正極集電体の厚さを減算して正極膜層の厚さとする。
【0193】
テントウサンドマイクロメータを使用して負極シートの厚さ方向に沿って少なくとも12個の異なる位置の負極シートの厚さを測定し、平均値を負極シートの厚さh2とし、その後、負極集電体の厚さを減算して負極膜層の厚さとする。
【0194】
1.2 正極膜層/負極膜層の圧縮密度Pの試験
【0195】
上記製造した負極活物質試料を一定量取り、UTM7305型電子圧力試験機の底面積が1.327cm2の金型に入れ、2000kg(20000Nに相当)に加圧し、30秒間保圧した後、脱圧し、10s保持した後、負極活物質の20000Nの作用力での粉体の圧縮密度を記録して計算した。試験基準はGB/T24533-2009に準拠した。
【0196】
上記製造した正極活物質試料を一定量取り、UTM7305型電子圧力試験機の底面積が1.327cm2の金型に入れ、2000kg(20000Nに相当)に加圧し、30秒間保圧した後、脱圧し、10s保持した後、正極活物質の20000Nの作用力での粉体の圧縮密度を記録して計算した。試験基準はGB/T24533-2009に準拠した。
【0197】
2、電解液の粘度の試験
【0198】
適量の電解液試料を取って試料カップ及びローターを順に洗浄した後、適量の電解液を取って試料カップに置き、被検温度の25℃まで恒温し、DV-2TLVの粘度計(計算式はFSR=TK*SMC*10000/RPM)を使用し、電解液及び有機溶剤を固定して18#ローター、70r/min回転数を選択し、Multi Point Average(複数点の平均値)のデータ収集モードを選択し、自動に記録して検出した。試験基準は、GB/T10247-2008に準拠した。
【0199】
3、二次電池の性能の試験
【0200】
3.1 二次電池のサイクル性能の試験
【0201】
(1)二次電池の常温サイクル性能の試験
【0202】
25℃で二次電池を1Cの定電流で4.4Vまで充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧で充電を継続し、この時、二次電池は満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、即ち1サイクル目の充電容量である。二次電池を5min静置した後、1Cの定電流で2.8Vに放電し、これは一つのサイクルの充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、即ち1サイクル目の放電容量である。二次電池を上記方法に従ってサイクル充放電試験を行い、毎回サイクルした後の放電容量を記録した。二次電池の25℃で600回サイクルした容量維持率(%)=600回サイクルした後の放電容量/1サイクル目の放電容量×100%。
【0203】
3.2 二次電池の安全性能の試験
【0204】
25℃で二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧で充電を継続し、この時、二次電池は満充電状態である。満充電状態の二次電池を密封の良好な高温箱に置き、5℃/minで100℃まで昇温し、1時間保持した後、5℃/minで105℃まで昇温し、30分間保持した後、5℃/minの昇温速度で5℃上昇させたごとに30min保持し、二次電池が失効するまで、二次電池の失効前の最高温度Tmaxを記録した。Tmaxが高いほど、二次電池の熱箱安全性能が良好である。
【0205】
試験結果の信頼性を確保するために、上記各試験は、少なくとも3つの平行試料を用いて試験し、平均値を試験結果とすることができる。
【0206】
3.3 二次電池セルの直流抵抗DCRの試験
【0207】
25℃、DCR試験:まず容量試験を行い、具体的な操作手順として、二次電池を定電流充放電試験計により25℃の温度で2時間静置し、0.33Cレートで4.4Vまで充電した後、電流が0.05C未満になるまで定電圧で充電し、5min静置した後、2.8Vまで放電し、この時の放電容量を記録して二次電池の初期容量とした。その後、電池残電量を調整し(SOCで表し、式は電池残電量/初期電量×100%)、試験DCRを行い、まず、0.33Cで電池を4.4Vまで満充電し、電流が0.05C未満まで定電圧で4.4Vに充電し、その後、0.05Cで1h満放電し、定電流で放電して二次電池を50%SOCまで調整し、この時、二次電池の電圧をU1とし、二次電池を4Cの電流I1で30秒間定電流で放電し、0.1秒のサンプリングを採用し、放電末期電圧をU2とした。二次電池の50%SOCでの放電直流内部抵抗は、二次電池の初期直流内部抵抗を表し、二次電池の初期直流内部抵抗(mΩ)=(U1-U2)/I1である。
【0208】
試験結果
【0209】
本出願は、二次電池のサイクル性能、安全性能及び動力学性能を改善する上での作用を表6~表10に示す。
【0210】
【0211】
表6から分かるように、固体電解質が極シートに付着することにより、二次電池の安全性能が改善されるが、比較例1と比較例2から分かるように、リチウムイオンの界面伝送の動力学が悪く、界面インピーダンスが大きい。実施例1~実施例2-12は、固体電解質におけるポリマーマトリックス及び第1の添加剤の質量百分率が適切な範囲内、例えば0.1≦B/A≦19、好ましくは、0.5≦B/A≦10となるように制御することにより、二次電池のインピーダンスを顕著に改善し、その動力学性能を向上させることができ、且つ二次電池のサイクル性能及び安全性能も改善することができる。
【0212】
【0213】
表7から分かるように、第1の添加剤におけるホウ素含有リチウム塩と負極成膜添加剤の質量百分率の比を調節することにより、二次電池の性能を調節することができ、特に0.002≦B1/B2≦10であると、二次電池のサイクル性能及び動力学性能が明らかに改善される。
【0214】
【0215】
表8から分かるように、電解液における電解液成膜添加剤及びリチウム塩の質量百分率と、電解液の粘度との相関関係を調整することにより、二次電池の性能を調節することができ、特に0.2≦E/(D1+D2)≦2.95であると、二次電池のサイクル性能及び動力学性能が明らかに改善される。
【0216】
【0217】
表9から分かるように、正極膜層と固体電解質との相関関係を調整することにより、固体電解質の正極膜層に対する防護力を調整して、二次電池の性能を調節することができ、特に、5≦h1*P1/m≦250、好ましくは、70≦h1*P1/m≦250であると、二次電池のサイクル性能及び動力学性能が明らかに改善される。
【0218】
【0219】
表10から分かるように、負極膜層と固体電解質との相関関係を調整することにより、固体電解質の負極膜層に対する防護力を調整することにより、二次電池の性能を調節することができ、特に、5≦h1*P1/m≦250、好ましくは、25≦h2*P2/m≦245であると、二次電池のサイクル性能及び動力学性能が明らかに改善される。
【0220】
以上、好ましい実施例を参照して本出願を説明したが、本出願の範囲を逸脱することなく、種々の改良が可能であり、そのうちの一部の構成要素を等価物で置き換えてもよい。特に、構造的な矛盾がない限り、各実施例に言及された各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。本出願は、以上に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての態様を含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
正極膜層を含む正極シートと、
負極膜層を含む負極シートと、
電解液と、
前記正極膜層及び/又は前記負極膜層の表面に設けられ、ポリマーマトリックス及び第1の添加剤を含み、前記第1の添加剤が前記正極膜層及び/又は前記負極膜層の表面に界面膜を形成するように配置される、固体電解質と、を含み、
前記固体電解質の総質量に対する前記ポリマーマトリックスの質量百分率をA%とし、
前記固体電解質の総質量に対する前記第1の添加剤の質量百分率をB%とし、
前記二次電池は、0.1≦B/A≦19、好ましくは、0.5≦B/A≦10を満たす、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、5≦A≦99、及び/又は0.1≦B≦95を満たす、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の添加剤は、
前記固体電解質の総質量に対する質量百分率がB1%であるホウ素含有リチウム塩と、
前記固体電解質の総質量に対する質量百分率がB2%である負極成膜添加剤と、を含み、
前記二次電池は、0.002≦B1/B2≦10を満たす、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記二次電池は、0.1≦B1≦50、及び/又は0.1≦B2≦50を満たす、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記ホウ素含有リチウム塩の分子式はLiBF
aO
bC
cP
dであり、分子式の中で、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4であり、
好ましくは、前記ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF
4、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びリチウムビスフルオロオキサレートボレートLiDFOBのうちの一種類類又は複数種類を含む、
請求項3に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極成膜添加剤は、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤及び亜硫酸エステル系添加剤のうちの一種類類又は複数種類を含む、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記炭酸エステル系添加剤は、環状炭酸エステル溶媒及び/又は鎖状炭酸エステル溶媒を含み、好ましくは、前記環状炭酸エステル溶媒は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含み、前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネート
PCのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、好ましくは、前記環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンサルトンFPSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は前記炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記亜硫酸エステル系添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解液は、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がM1%である環状炭酸エステル溶媒と、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がM2%である鎖状炭酸エステル溶媒と、含み、
前記二次電池は、10
-3≦M1/M2≦2を満たし、好ましい範囲が0.1≦M1/M2≦1であり、
好ましくは、1≦M1≦20、及び/又は、50≦M2≦85である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は二種類類以上を含み、及び/又は、
前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネート
PC、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、
及びメチルブチルカーボネートMBC
のうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、
酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの一種類類又は複数種類を含む、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記電解液は、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がD1%である電解液成膜添加剤と、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がD2%であるリチウム塩と、を含み、
前記二次電池は、0.2≦E/(D1+D2)≦2.95を満たし、式の中で、Eが電解液の粘度を表し、その単位がmPa・sである、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、
前記正極膜層の圧縮密度をP1g/cm
3とし、
前記正極膜層の厚さをh1μmとし、
前記二次電池は、5≦h1
*P1/m≦250を満たす、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記固体電解質の溶液における固体質量含有量が液体質量含有量に対する百分率をmとし、
前記負極膜層の圧縮密度をP2g/cm
3とし、
前記負極膜層の厚さをh2μmとし、
前記二次電池は、25≦h2
*P2/m≦245を満たす、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池を備える、電池モジュール。
【請求項14】
請求項13に記載の電池モジュールを備える、電池パック。
【請求項15】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュール、又は請求項14に記載の電池パック、を備える、電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
いずれかの実施形態において、炭酸エステル系添加剤は、環状炭酸エステル溶媒及び/又は鎖状炭酸エステル溶媒を含み、好ましくは、環状炭酸エステル溶媒は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含み、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートPCのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含み、好ましくは、環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンサルトンFPSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は亜硫酸エステル系添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
いずれかの実施形態において、環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートPC、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、及びメチルブチルカーボネートMBCのうちの一種類類又は複数種類を含み、及び/又は、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
例として、炭酸エステル系添加剤は、環状炭酸エステル系添加剤及び/又は直鎖炭酸エステル系添加剤を含む。さらに、前記環状炭酸エステル系添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの一種類類又は複数種類を含む。前記直鎖状炭酸エステル系添加剤は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートPCのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
例として、前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートPC、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBCのうちの一種類類又は複数種類を含み、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの一種類類又は複数種類を含む。
【国際調査報告】