(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】シュワン細胞特異的プロモーター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20250117BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250117BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/09 110
A61K48/00
A61P25/00
A61P43/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542010
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-04
(86)【国際出願番号】 KR2023000569
(87)【国際公開番号】W WO2023136624
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0005303
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516355531
【氏名又は名称】ツールゲン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TOOLGEN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ドン ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒェリム
(72)【発明者】
【氏名】オー、ヒェ-キュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ベオム セオク
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ゴ、ナン イェオン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジャエ ヨウン
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZB211
(57)【要約】
本発明は、シュワン細胞特異的プロモーター及びその使用に関する。より具体的には、本発明は、シュワン細胞で特異的に機能する人工的に改変されたミニマルプロモーターに関するものであり、人工的に改変されたミニマルプロモーターは、MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ又はP0)プロモーターに由来する。また、本発明は、シュワン細胞特異的プロモーターを使用したベクター、及び、それを使用してシュワン細胞関連疾患を治療するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3;配列番号4;配列番号8;配列番号9;配列番号13;配列番号14;及び、配列番号3、4、8、9、13、及び14のうちの1つと少なくとも90%以上の相同性を有する配列
から選択される配列を有するシュワン細胞特異的プロモーター。
【請求項2】
シュワン細胞特異的プロモーター;及び
目的遺伝子
を備え、
前記シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3;配列番号4;配列番号8;配列番号9;配列番号13;配列番号14;及び、配列番号3、4、8、9、13、及び14のうちの1つと少なくとも90%以上の相同性を有する配列からなる群から選択される配列を有し、
前記目的遺伝子は、シュワン細胞で発現するように構成された遺伝子、又は、シュワン細胞で発現するように構成されたタンパク質をコードする核酸であり、
前記目的遺伝子は、前記シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されている、
シュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項3】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターである、
請求項2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項4】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス(retroviral(retrovirus))ベクター、レンチウイルス(lentiviral(lentivirus))ベクター、アデノウイルス(adenoviral(adenovirus))ベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral(adeno-associated virus):AAV)ベクター、ワクシニアウイルス(vaccinia viral(vaccinia virus))ベクター、ポックスウイルス(poxviral(poxvirus))ベクター、及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral(herpes simplex virus))ベクターからなる群から選択される1つ又は複数のウイルスベクターである、
請求項3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項5】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、1つ又は複数の調節/制御エレメントを備える、
請求項2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項6】
前記調節/制御エレメントは、エンハンサー、人工イントロン、ポリアデニル化シグナル、及び/又はWPREである、
請求項5に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項7】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記ポリアデニル化シグナルを備え、
前記ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAである、
請求項6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項8】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記人工イントロン及び前記WPREを備え、
前記人工イントロンは、MVMイントロンであり、
前記WPREは、WPRE3である、
請求項6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項9】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記人工イントロン、前記WPRE、及び前記ポリアデニル化シグナルを備え、
前記人工イントロンは、MVMイントロンであり、
前記WPREは、WPRE3であり、
前記ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAである、
請求項6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項10】
前記目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に操作するために使用されるタンパク質をコードする核酸である、
請求項2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項11】
遺伝子を人工的に操作するための前記タンパク質は、Casタンパク質である、
請求項10に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項12】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質である、
請求項11に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項13】
前記Cas9タンパク質は、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)タンパク質、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)タンパク質、又はスタフィロコッカス・アウリクラーリスCas9(SauriCas9)タンパク質である、
請求項12に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項14】
前記目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患を治療すること(の治療)に関連付けられた遺伝子である、
請求項2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項15】
前記シュワン細胞に関連する疾患を治療することに関連付けられた前記遺伝子は、Cx32(コネキシン32)遺伝子、SH3TC2(SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2)遺伝子、MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ)遺伝子、EGR2(初期増殖応答2)遺伝子、GDAP1(ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1)遺伝子、NDRG1(N-Myc下流調節1)遺伝子、又はPMP22(末梢ミエリンタンパク質22)遺伝子である、
請求項14に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項16】
請求項10に記載の発現ベクターを備える組成物であって、
前記発現ベクターは、Cas9タンパク質をコードする核酸を有し、
前記組成物は更に、ガイドRNA又は前記ガイドRNAをコードする核酸を備える、
組成物。
【請求項17】
前記ガイドRNAは、シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす遺伝子を標的とし、
前記シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす前記遺伝子は、Cx32(コネキシン32)遺伝子、SH3TC2(SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2)遺伝子、MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ)遺伝子、EGR2(初期増殖応答2)遺伝子、GDAP1(ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1)遺伝子、NDRG1(N-Myc下流調節1)遺伝子、又はPMP22(末梢ミエリンタンパク質22)遺伝子である、
請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シュワン細胞特異的プロモーター及びその使用に関する。より具体的には、本開示は、シュワン細胞で特異的に機能する人工的に改変されたミニマルプロモーターに関する。人工的に改変されたミニマルプロモーターは、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ又はP0)のプロモーターに由来する。追加的に、本開示は、シュワン細胞特異的プロモーターを使用したベクター、及び、それを使用してシュワン細胞に関連する疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シュワン細胞(以降、SCと略記)又は神経髄鞘細胞(neurolemmocyte)は、末梢神経系の基本的なグリア細胞である。グリア細胞はニューロンをサポートする。ミエリンを持つ軸索では、シュワン細胞がミエリン鞘を形成する。脊椎動物の神経系はミエリン鞘によって絶縁されており、これにより軸索の膜容量が維持される。
【0003】
シャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth:CMT)病は遺伝的疾患である。シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病は、手足の筋肉が徐々に弱まる病気である。これは、末梢神経系でミエリン鞘の形成を担うシュワン細胞の異常から起こる。CMT病の病型のうち、シャルコー・マリー・トゥース1A型(Charcot-Marie-Tooth type 1A:CMT1A)は、末梢神経系で最も頻繁に発生する遺伝的疾患のうちの1つである。
【0004】
CMT1Aは全てのCMT症例の半分より多くを占め、CMT1症例のおよそ70%を占め、CMTの発生率は1/2500人である。CMT1Aは、筋肉の衰弱及び喪失、反射神経の低下、末梢性感覚障害、手足の変形、神経伝導速度(nerve conduction velocity:NCV)の低下、及び、タマネギ様構造の形成を伴う肥大性節性脱髄及び再ミエリン化などの病理学的性質を引き起こす。
【0005】
近年、CMT1Aなどのシュワン細胞機能障害によって引き起こされる疾患に対して遺伝子療法技術が適用されている。シュワン細胞を標的とする遺伝子療法技術は、CMT病に加えて、運動ニューロン疾患(motor neuron disease:MND)などのシュワン細胞に関連する他の多くの疾患に適用することができ、遺伝的要因以外の要因によって引き起こされる疾患にも適用することができる。これらの疾患のほとんどの原因はそれぞれ異なり、ほとんど理解されていないため、ウイルスベクターを使用してこれらの疾患を標的とすることが有益であるかもしれない。CMTのような脱髄性ニューロパシーを含むシュワン細胞随伴疾患の治療成績を改善するには、依然として、これらの病気を標的とする方法を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的の1つは、シュワン細胞特異的プロモーターを提供することである。
【0007】
本開示の別の目的は、シュワン細胞特異的発現ベクターを提供することである。
【0008】
本開示の更に別の目的は、シュワン細胞特異的発現ベクターを使用してシュワン細胞に関連する疾患を治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、シュワン細胞特異的プロモーターを提供する。
【0010】
シュワン細胞特異的プロモーターは、以下から選択される配列を含んでよい。
【0011】
配列番号3;配列番号4;配列番号8;配列番号9;配列番号13;配列番号14;及び、配列番号3、4、8、9、13、及び14のうちの1つと少なくとも70%の相同性を有する配列。
【0012】
本開示は、シュワン細胞特異的発現ベクターを提供する。
【0013】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター;及び目的遺伝子を含んでよい。
【0014】
目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0015】
シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3;配列番号4;配列番号8;配列番号9;配列番号13;配列番号14;及び、配列番号3、4、8、9、13、及び14のうちの1つと少なくとも70%の相同性を有する配列から選択される配列を含んでよい。
【0016】
目的遺伝子は、シュワン細胞で発現するように構成された遺伝子、又は、シュワン細胞で発現させるタンパク質をコードする核酸であってよい。本明細書では、目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質をコードする核酸であってよい。例えば、遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質は、Casタンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease:ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transctiption activator-like effector nuclease:TALEN)であってよい。本明細書では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質であってよい。例えば、Cas9タンパク質は、化膿連鎖球菌Cas9(Streptococcus pyogenes Cas9:SpCas9)タンパク質、黄色ブドウ球菌Cas9(Staphylococcus aureus Cas9:SaCas9)タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニCas9(Campylobacter jejuni Cas9:CjCas9)タンパク質、又はスタフィロコッカス・アウリクラーリスCas9(Staphylococcus auricularis Cas9:SauriCas9)タンパク質であってよい。本明細書では、遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする遺伝子を発現させて、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子を編集することができる。これを使用することによって、タンパク質は、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子へのノックアウト効果を誘発することができる。
【0017】
また、目的遺伝子がシュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子の役割を果たすので、必要に応じて、本開示のプロモーターを使用してシュワン細胞で目的遺伝子を過剰発現させることができる。
【0018】
一例では、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、コネキシン32(connexin32:Cx32)遺伝子、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3 domain and tetratricopeptide repeat 2:SH3TC2)遺伝子、ミエリンタンパク質ゼロ(myelin protein zero:MPZ)遺伝子、初期増殖応答2(early growth response 2:EGR2)遺伝子、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(ganglioside induced differentiation associated protein 1:GDAP1)遺伝子、N-Myc下流調節1(N-Myc downstream regulated 1:NDRG1)遺伝子、又は末梢ミエリンタンパク質22(peripheral myelin protein 22:PMP22)遺伝子であってよい。疾患治療効果を得るために、必要に応じて遺伝子をノックアウト又は過剰発現させることができる。
【0019】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターを含んでよい。本明細書では、ウイルスベクターは、レトロウイルス(retroviral(retrovirus))ベクター、レンチウイルス(lentiviral(lentivirus))ベクター、アデノウイルス(adenoviral(adenovirus))ベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral(adeno-associated virus):AAV)ベクター、ワクシニアウイルス(vaccinia viral(vaccinia virus))ベクター、ポックスウイルス(poxviral(poxvirus))ベクター、及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral(herpes simplex virus))ベクターからなる群から選択される1つ又は複数のウイルスベクターであってよい。
【0020】
シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、1つ又は複数の調節/制御エレメントを含んでよい。本明細書では、調節/制御エレメントは、エンハンサー、人工イントロン、ポリアデニル化シグナル、及び/又はWPREであってよい。別の例では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、ポリアデニル化シグナルを含んでよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。更に別の例では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、人工イントロン及びWPREを含んでよい。本明細書では、人工イントロンはMVMイントロンであってよく、WPREはWPRE3であってよい。更に別の例では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、人工イントロン、WPRE、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。本明細書では、人工イントロンはMVMイントロンであってよく、WPREはWPRE3であってよく、ポリアデニル化シグナルはsynpA又はSV40pAであってよい。
【0021】
本開示は、シュワン細胞特異的発現ベクターを含む組成物を提供する。
【0022】
組成物は、上述したシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。
【0023】
本開示は、シュワン細胞に関連付けられた疾患を治療する方法を提供する。
【0024】
方法は、対象に組成物を導入(又は送達)することを含んでよい。
【0025】
組成物は、シュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。本明細書では、シュワン細胞特異的発現ベクターは上述した通りである。
【0026】
対象は、シュワン細胞に関連付けられた疾患を持つヒト又は非ヒト動物であってよい。
(有利な効果)
【0027】
本開示は、シュワン細胞特異的プロモーター及びその使用に関する。本明細書に開示する技術を通じて、シュワン細胞特異的プロモーターを含むベクター及びその使用を提供することができる。また、シュワン細胞特異的プロモーターを含むベクターを使用して、シュワン細胞に関連する疾患を治療するための医薬組成物及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ラットシュワン細胞株における改変されたMPZプロモーターによるCas9の発現を示すグラフである。
【0029】
【
図2】ラットシュワン細胞株における改変されたMPZプロモーターの制御下でのCas9の発現による、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0030】
【
図3】ヒトシュワン細胞株における改変されたMPZプロモーターによるCas9の発現を示すグラフである。
【0031】
【
図4】S16細胞における、改変されたMPZプロモーターの制御下でのCas9の発現、及び、最適化されたsgRNAベクターの発現による、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0032】
【
図5】RT4細胞における、改変されたMPZプロモーターの制御下でのCas9の発現、及び、最適化されたsgRNAベクターの発現による、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0033】
【
図6】S16細胞における他のポリAベクター及び改変されたMPZプロモーターによるCas9の発現による、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0034】
【
図7】シングルAAVパッケージングが可能な小型SauriCas9、最適化されたエレメント(Intron、WPRE)、及びRT4細胞における改変されたMPZプロモーターの組み合わせによる、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0035】
【
図8】RT4-D6P2T細胞株における改変されたMPZプロモーターの制御下でのCas9の発現による、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0036】
【
図9】異なる配列を持つsgRNA(表1)を使用した、RT4-D6P2T細胞株における改変されたMPZプロモーターの制御下でのCas9の発現による、標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を示すグラフである。
【0037】
【
図10】RT4-D6P2T細胞株における改変されたMPZプロモーターによるtdTomatoの発現を示すグラフである。
【0038】
【
図11】RT4-D6P2T細胞株へのpAAV-tdTomato関連ベクターの形質転換のレベルを示すグラフである。
【0039】
【
図12】
図12と
図13は、pmp22-TATA領域を標的とするsgRNA(表1)を発現させるベクターを、EFSプロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクター及びIE200プロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクターと共にラットの尾静脈にコトランスフェクトした後の、ラットの坐骨神経、腰神経、及び肝臓における遺伝子編集効率(インデル(indel))を示すグラフである。
【
図13】
図12と
図13は、pmp22-TATA領域を標的とするsgRNA(表1)を発現させるベクターを、EFSプロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクター及びIE200プロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクターと共にラットの尾静脈にコトランスフェクトした後の、ラットの坐骨神経、腰神経、及び肝臓における遺伝子編集効率(インデル(indel))を示すグラフである。 (最良の形態)
【0040】
用語の定義
【0041】
本明細書で使用する用語の定義は以下の通りである。
【0042】
約
【0043】
本明細書で使用する「約」という用語は、基準となる数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、又は長さに応じて30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%変化する数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを意味する。
【0044】
ベクター
【0045】
「ベクター」という用語は、特に指定しない限り、細胞内に遺伝子材料を輸送することができる全ての物質をまとめて指す。例えば、ベクターは、遺伝子材料、すなわち、細胞で発現させる目的遺伝子又は目的核酸、更に詳しくは、CRISPR/CasシステムのCasタンパク質をコードする核酸、又は、シュワン細胞の機能に関与するタンパク質をコードする核酸を含む非ウイルスベクター又はウイルスベクターであってよいが、ベクターはこれらに限定されない。これらの用語は当業者によって認識される全ての意味を含み、文脈に応じて適宜解釈されてよい。
【0046】
ガイドRNA
【0047】
「ガイドRNA」という用語は、標的核酸に含まれる特定の配列をCRISPR/Cas9複合体に認識させる機能を有するRNAを指す。ガイドRNAの組成物は、機能的に、1)足場部分、及び、2)ガイドドメイン部分に大別されてよい。足場部分は、Cas9タンパク質と相互作用し、Cas9タンパク質に結合して複合体を形成する部分である。足場部分は、Cas9タンパク質が由来する微生物の種類によって決まる。ガイドドメイン部分は、標的核酸における所定の長さのヌクレオチド配列部分に相補的に結合することができる部分である。ガイドドメイン部分は、人工的に改変され得る配列であり、目的の標的ヌクレオチド配列によって決まる。また、これらの用語は、当業者によって認識される全ての意味を含み、文脈に応じて適宜解釈されてよい。
【0048】
機能可能に連結された
【0049】
「機能可能に連結された」という用語は、特定の構成要素が別の構成要素と機能的な関係で並べられ、それにより、特定の構成要素が意図した通りに機能できるように、特定の構成要素が別の構成要素に接続されていることを意味する。例えば、プロモーター配列がタンパク質Aをコードする配列に機能可能に連結されているとき、この用語は、プロモーターがタンパク質Aをコードする配列に連結されて、タンパク質Aをコードする配列を細胞で転写する及び/又は発現させることを意味する。また、これらの用語は、当業者によって認識される全ての意味を含み、文脈に応じて適宜解釈されてよい。
【0050】
改変された
【0051】
「改変された」又は「人工的に改変された」という用語は、改変された又は人工的に改変された物質及び分子を、その組成が自然界に既に存在する物質及び分子と区別するために使用される。この用語は、その組成が自然界に既に存在する物質及び分子に対して人工的な改質が行われたことを意味する。例えば、「人工的に改変されたMPZプロモーター」とは、自然界に存在するMPZプロモーターを人工的に改質することによって得られるMPZプロモーターを指す。この場合、自然界に存在するMPZプロモーターの幾つかの配列が欠失する及び/又は他の配列で置換される可能性があるが、改変はこれに限定されない。また、これらの用語は、当業者によって認識される全ての意味を含み、文脈に応じて適宜解釈されてよい。
【0052】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で説明するものと同様又は同等の方法及び材料を本開示の実践又は試験で使用してよいが、適切な方法及び材料については後述する。本明細書で言及する全ての出版物、特許、及び他の参考文献が、全体として参照によって組み込まれる。追加的に、材料、方法、例、及び実験は一例に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0053】
以降、本開示について説明する。
【0054】
近年、CMT1Aなどのシュワン細胞機能障害によって引き起こされる疾患を治療するための遺伝子療法技術が開発された。この遺伝子療法には、ウイルスベクターなどのベクター系が使用される。ベクター系の主な特徴は、シュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させるプロモーターを含むことである。
【0055】
現在、様々な研究者がシュワン細胞特異的プロモーターを開発している。特に、シュワン細胞で特異的に発現させるMPZプロモーターが使用される。Kleopas A.Kleopaら(国際特許出願公開WO2020/245169)は、CMT病を治療するために、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターに機能可能に連結されたGJB1遺伝子を含むウイルスベクターを開発した。このとき、MPZプロモーターとしては、1.2kbの全長プロモーターが使用されるか、又は、MPZ遺伝子の開始コドンの上流に存在する410bpの部分配列を含むミニMPZプロモーターが使用された。このように、MPZプロモーターはシュワン細胞特異的プロモーターとして使用される。
【0056】
一般に、ウイルスベクター系を使用した遺伝子療法の場合、ウイルスベクター系の容量には限りがある。容量はウイルスのパッケージング容量に応じて少なくとも2kb~50kbの範囲にあってよく、ウイルスの型に応じて変化してよい。従って、限られた容量を効果的に使用するには、小型プロモーターを使用する必要がある。
【0057】
従って、本発明者は、MPZプロモーターを使用して、シュワン細胞に対して特異的により高い発現効率を示し、且つ、より小さいサイズを有する、シュワン細胞特異的プロモーターを開発した。
【0058】
1.シュワン細胞特異的プロモーター
【0059】
一態様では、本開示は、シュワン細胞特異的プロモーターに関する。シュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞で特異的に機能するプロモーターである。これは、シュワン細胞特異的プロモーターを使用すると、シュワン細胞特異的プロモーターによって、シュワン細胞における目的遺伝子(例えば、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結された目的の遺伝子又はタンパク質をコードする核酸)の発現が他の細胞と比べて増加することを意味する。シュワン細胞特異的プロモーターは、上述したように、MPZプロモーターに由来する。特に、シュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーターに由来する人工的に改変されたプロモーターである。このとき、MPZプロモーターは、ヒト又はラットのMPZ遺伝子のプロモーターであってよい。ラットMPZ遺伝子のプロモーター(以降、ラットMPZプロモーターと呼ぶ)は、以下の核酸配列を有する:GTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCC-3'(配列番号1)。
【0060】
ヒトMPZ遺伝子のプロモーター(以降、ヒトMPZプロモーターと呼ぶ)は、以下の核酸配列を有する:5'-ACTATGCCTGGCATAAACTTCATTTATTAAAGTTTATTTTGTCTTTAATCTCTCATATAACTTAGTCTTCCTGATATTGCAGCTGTGTGTGCCCCTCTTTTGTACTCCCAGCATTTTGTTCATTACTAAAGGAAGTGTCATGGCTTATTATACTTGATTGTTGATGGGTTTGTCCTCTGATCTTCCCATCTCCACCTCCCCAAACCAAATTTTCAACTCCTTGCTGGAAGGACTTAATTTTTATTCCTCTCTCTATTACCTGCATTCTCATACTTTACATATTGCTGGCACTTAATACAATTTTGTAGCCTTGAAATAAATTGAAATGGACTTAAACAGCAGCATGAAGCACTGAAGGACTTCTTGACAAACGGAAAGGTCAGGGGCTTCTTGCCTGGAAATAGTCCAGTGGAGAAAAACTTCTGTCTGGGAAGAATCGCACAGGATGAAGGGAGGTGCGGGGAAAAAAACTCCCATAGGACTTGGTCATCTCAAGAAGTCTGTAATGCAGCCCACATTAGAGGAGATAACAGGGGATATCCTATTTTCAGAGTTCTCTGGGGGAAACCTCCCTCTAGTTCCTAGGGCTGTGAGGCAGCCTCTCTCAGGCAAGGAGGCTGAGGAGAAATCCCTTTTTATGGCCTTTAAATTGAGGTTCCATATCTATCCCTCAGAGAAGTGTGTCTGTGTCCCTGTTTTTGTCCCTCTCCCTCACCACCCCCCACAACATTCCAGCCTGGGGCAGGGGGAGGCCAGTGGACACAAAGCCCTCTGTGTATGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAG-3'(配列番号2)。
【0061】
より具体的には、シュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたMPZプロモーターであってよい。
【0062】
シュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。
【0063】
シュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーターの3'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの3'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。
【0064】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0065】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(transcription start site:TSS)を含んでよい。
【0066】
シュワン細胞特異的プロモーターは更に、5'末端にイントロンエンハンサー(intronic enhancer:IE)を含んでよい。このとき、IEは、Egr2及びSox10結合部位を含んでよい。IEは、MPZ遺伝子のイントロン1領域に存在するEgr2及びSox10結合部位を含む領域であってよい。IEの配列長は、1~100bp、100~200bp、200~300bp、又は300~400bpの範囲にあってよい。
【0067】
シュワン細胞特異的プロモーターは更に、3'末端にイントロンエンハンサー(IE)を含んでよい。このとき、IEは、Egr2及びSox10結合部位を含んでよい。IEは、MPZ遺伝子のイントロン1領域に存在するEgr2及びSox10結合部位を含む領域であってよい。IEの配列長は、1~100bp、100~200bp、200~300bp、又は300~400bpの範囲にあってよい。
【0068】
1-1.シュワン細胞特異的プロモーター(1)
【0069】
一実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターであってよい。
【0070】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。好ましくは、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。好ましくは、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの配列長は、200~300bpの範囲にあってよい。
【0071】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0072】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(TSS)を含んでよい。
【0073】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3に示す長さ300bpのヌクレオチド配列:5'-GCCTCACCCCACCCCAACATTCCAACCTAGGGTAGGGGGAGGTCAGTATACACAAAGCCCTCTGTGTAAGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCCCTACCCAGAGTATACAATGCCCCTTCTGCTCCATGCCCCTGCCACCCTCCCCACCACCTCTCAATTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTCACTGGCTCAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGATCCAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCC-3'(配列番号3)を含んでよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでよい。
【0074】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号4に示す長さ200bpのヌクレオチド配列:5'-CAGAGTATACAATGCCCCTTCTGCTCCATGCCCCTGCCACCCTCCCCACCACCTCTCAATTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTCACTGGCTCAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGATCCAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCC-3'(配列番号4)を含んでよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号4に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでよい。
【0075】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターであってよい。
【0076】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。好ましくは、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。好ましくは、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの配列長は、200~300bpの範囲にあってよい。
【0077】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0078】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(TSS)を含んでよい。
【0079】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5に示す長さ300bpのヌクレオチド配列:5'-GTCCCTCTCCCTCACCACCCCCCACAACATTCCAGCCTGGGGCAGGGGGAGGCCAGTGGACACAAAGCCCTCTGTGTATGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAG-3'(配列番号5)を含んでよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでよい。
【0080】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号6に示す長さ200bpのヌクレオチド配列:5'-CCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAG-3'(配列番号6)を含んでよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号6に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでよい。
【0081】
1-2.シュワン細胞特異的プロモーター(2)
【0082】
一実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターを含み、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの5'末端に配置されるIEを含む。
【0083】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。好ましくは、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。好ましくは、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの配列長は、200~300bpの範囲にあってよい。
【0084】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0085】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(TSS)を含んでよい。
【0086】
IEは、Egr2及びSox10結合部位を含んでよい。IEは、MPZ遺伝子のイントロン1領域に存在するEgr2及びSox10結合部位を含む領域であってよい。IEの配列長は、1~100bp、100~200bp、200~300bp、又は300~400bpの範囲にあってよい。好ましくは、IEの配列長は100~200bpの範囲にあってよく、より好ましくは、IEの配列長は117bpであってよい。別の実施形態では、IEは、配列番号7に示す長さ117bpのヌクレオチド配列:5'-GACAATGAGACTTTGTTTGGTCGCCTCCTCCTAAAGAACAGAAAAGTCTATAATTGTTCCTCCCCAGAGCCAGCCCACACACATAGACTGCCTGGGATGACTCTCCCTGTGTGGGCG-3'(配列番号7)を含んでよい。代替的に、IEは、配列番号7に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでよい。
【0087】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号7に示す長さ117bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号3に示す長さ300bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたラットMPZプロモーターの5'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8に示すヌクレオチド配列:5'-GACAATGAGACTTTGTTTGGTCGCCTCCTCCTAAAGAACAGAAAAGTCTATAATTGTTCCTCCCCAGAGCCAGCCCACACACATAGACTGCCTGGGATGACTCTCCCTGTGTGGGCGGCCTCACCCCACCCCAACATTCCAACCTAGGGTAGGGGGAGGTCAGTATACACAAAGCCCTCTGTGTAAGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCCCTACCCAGAGTATACAATGCCCCTTCTGCTCCATGCCCCTGCCACCCTCCCCACCACCTCTCAATTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTCACTGGCTCAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGATCCAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCC-3'(配列番号8)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は417bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0088】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号7に示す長さ117bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号4に示す長さ200bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたラットMPZプロモーターの5'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号9に示すヌクレオチド配列:5'-GACAATGAGACTTTGTTTGGTCGCCTCCTCCTAAAGAACAGAAAAGTCTATAATTGTTCCTCCCCAGAGCCAGCCCACACACATAGACTGCCTGGGATGACTCTCCCTGTGTGGGCGCAGAGTATACAATGCCCCTTCTGCTCCATGCCCCTGCCACCCTCCCCACCACCTCTCAATTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTCACTGGCTCAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGATCCAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCC-3'(配列番号9)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は317bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号9に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0089】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターを含み、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの5'末端に配置されるIEを含む。
【0090】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。好ましくは、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。好ましくは、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの配列長は、200~300bpの範囲にあってよい。
【0091】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0092】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(TSS)を含んでよい。
【0093】
IEは、Egr2及びSox10結合部位を含んでよい。IEは、MPZ遺伝子のイントロン1領域に存在するEgr2及びSox10結合部位を含む領域であってよい。IEの配列長は、1~100bp、100~200bp、200~300bp、又は300~400bpの範囲にあってよい。好ましくは、IEの配列長は100~200bpの範囲にあってよく、より好ましくは、IEの配列長は123bpであってよい。更に別の実施形態では、IEは、配列番号10に示す長さ123bpのヌクレオチド配列:5'-GACAATGGAACTTTGTTTGGTTGCCACCTCCCCCTCCTGTAGAACAAAAAGGTCTACAGTTGCCCCTCCCTGGGGCCAGCCCACACACATAGTCTCTCTGGAATGACCTTCCTTGTGTGGGTA-3'(配列番号10)を含んでよい。代替的に、IEは、配列番号10に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでよい。
【0094】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号10に示す長さ123bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号5に示す長さ300bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの5'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11に示すヌクレオチド配列:5'-GACAATGGAACTTTGTTTGGTTGCCACCTCCCCCTCCTGTAGAACAAAAAGGTCTACAGTTGCCCCTCCCTGGGGCCAGCCCACACACATAGTCTCTCTGGAATGACCTTCCTTGTGTGGGTAGTCCCTCTCCCTCACCACCCCCCACAACATTCCAGCCTGGGGCAGGGGGAGGCCAGTGGACACAAAGCCCTCTGTGTATGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAG-3'(配列番号11)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は423bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0095】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号10に示す長さ123bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号6に示す長さ200bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの5'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号12に示すヌクレオチド配列:5'-GACAATGGAACTTTGTTTGGTTGCCACCTCCCCCTCCTGTAGAACAAAAAGGTCTACAGTTGCCCCTCCCTGGGGCCAGCCCACACACATAGTCTCTCTGGAATGACCTTCCTTGTGTGGGTACCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAG-3'(配列番号12)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は323bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号12に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0096】
1-3.シュワン細胞特異的プロモーター(3)
【0097】
一実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターを含み、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの3'末端に配置されるIEを含む。
【0098】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。好ましくは、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。好ましくは、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの配列長は、200~300bpの範囲にあってよい。
【0099】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0100】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(TSS)を含んでよい。
【0101】
IEは、Egr2及びSox10結合部位を含んでよい。IEは、MPZ遺伝子のイントロン1領域に存在するEgr2及びSox10結合部位を含む領域であってよい。IEの配列長は、1~100bp、100~200bp、200~300bp、又は300~400bpの範囲にあってよい。好ましくは、IEの配列長は100~200bpの範囲にあってよく、より好ましくは、IEの配列長は117bpであってよい。別の実施形態では、IEは、配列番号7に示す長さ117bpのヌクレオチド配列であってよい。代替的に、IEは、配列番号7に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0102】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号7に示す長さ117bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号3に示す長さ300bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたラットMPZプロモーターの3'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13に示すヌクレオチド配列:5'-GCCTCACCCCACCCCAACATTCCAACCTAGGGTAGGGGGAGGTCAGTATACACAAAGCCCTCTGTGTAAGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCCCTACCCAGAGTATACAATGCCCCTTCTGCTCCATGCCCCTGCCACCCTCCCCACCACCTCTCAATTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTCACTGGCTCAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGATCCAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCCGACAATGAGACTTTGTTTGGTCGCCTCCTCCTAAAGAACAGAAAAGTCTATAATTGTTCCTCCCCAGAGCCAGCCCACACACATAGACTGCCTGGGATGACTCTCCCTGTGTGGGCG-3'(配列番号13)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は417bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0103】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号7に示す長さ117bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号4に示す長さ200bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたラットMPZプロモーターの3'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号14に示すヌクレオチド配列:5'-CAGAGTATACAATGCCCCTTCTGCTCCATGCCCCTGCCACCCTCCCCACCACCTCTCAATTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTCACTGGCTCAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGATCCAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGAAAACACCACTCAGTTCCTTGTCCCCCGCTCTCTCCACCCCACAGACGCTCTGGGCCGACAATGAGACTTTGTTTGGTCGCCTCCTCCTAAAGAACAGAAAAGTCTATAATTGTTCCTCCCCAGAGCCAGCCCACACACATAGACTGCCTGGGATGACTCTCCCTGTGTGGGCG-3'(配列番号14)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は317bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号14に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0104】
一実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターを含み、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの3'末端に配置されるIEを含む。
【0105】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの5'末端における幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターであってよい。このとき、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが1~100bp、100~200bp、200~300bp、300~400bp、400~500bp、500~600bp、600~700bp、700~800bp、又は800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。好ましくは、MPZプロモーターの5'末端における欠失しているヌクレオチド配列は、長さが800~900bpの範囲にあるヌクレオチド配列であってよい。このとき、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの配列長は、100~1000bp、100~900bp、100~800bp、100~700bp、100~600bp、100~500bp、100~400bp、100~300bp、又は100~200bpの範囲にあってよい。好ましくは、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの配列長は、200~300bpの範囲にあってよい。
【0106】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス又はCAATボックスを含んでよい。
【0107】
シュワン細胞特異的プロモーターは、転写開始部位(TSS)を含んでよい。
【0108】
IEは、Egr2及びSox10結合部位を含んでよい。IEは、MPZ遺伝子のイントロン1領域に存在するEgr2及びSox10結合部位を含む領域であってよい。IEの配列長は、1~100bp、100~200bp、200~300bp、又は300~400bpの範囲にあってよい。好ましくは、IEの配列長は100~200bpの範囲にあってよく、より好ましくは、IEの配列長は123bpであってよい。更に別の実施形態では、IEは、配列番号10に示す長さ123bpのヌクレオチド配列であってよい。代替的に、IEは、配列番号10に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0109】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号10に示す長さ123bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号5に示す長さ300bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの3'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15に示すヌクレオチド配列:5'-GTCCCTCTCCCTCACCACCCCCCACAACATTCCAGCCTGGGGCAGGGGGAGGCCAGTGGACACAAAGCCCTCTGTGTATGGGGTGGTATGTGTCCCCCCACCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAGGACAATGGAACTTTGTTTGGTTGCCACCTCCCCCTCCTGTAGAACAAAAAGGTCTACAGTTGCCCCTCCCTGGGGCCAGCCCACACACATAGTCTCTCTGGAATGACCTTCCTTGTGTGGGTA-3'(配列番号15)を含んでよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は423bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0110】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号10に示す長さ123bpのヌクレオチド配列を有するIEが、配列番号6に示す長さ200bpのヌクレオチド配列を有する人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの3'末端に接続されている形態であってよく、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号16に示すヌクレオチド配列:5'-CCCCTCCACCCAGACTATACAATGCCCCTTCTGCTCCCTGCACTCTGCCCCCCTCCCCACCACCTCTCAACTGCACATGCCAGGCTGCAATTGGTTACTGGCTGAGGACAGCCCCCTCATGCTGGGGCCCTAGGGGATTTTAAGCAGGTTCCAGGAACCCCCCGTTCAGTTCCTGGTCCCCCACTTTCTCAACCCCACAGGACAATGGAACTTTGTTTGGTTGCCACCTCCCCCTCCTGTAGAACAAAAAGGTCTACAGTTGCCCCTCCCTGGGGCCAGCCCACACACATAGTCTCTCTGGAATGACCTTCCTTGTGTGGGTA-3'(配列番号16)からなってよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は323bpであってよい。代替的に、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号16に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0111】
1-4.シュワン細胞特異的プロモーターの利点1-短い長さ及び高い発現率
【0112】
本開示のシュワン細胞特異的プロモーターには、既知のMPZプロモーターよりも長さが短いという利点がある。この利点は、遺伝子を発現させるためにベクター内にプロモーターを配置すると、より短いプロモーターがより長いプロモーターよりもサイズの点で有利であるという事実に見られる。
【0113】
追加的に、シュワン細胞特異的プロモーターには、既知のMPZプロモーターより高い発現率を有するという利点がある。実験例1の実験では、シュワン細胞特異的プロモーターの高い発現率が確認された。換言すると、本開示のシュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞特異的プロモーターの長さが既知のMPZプロモーターの長さより短いにもかかわらず、より高い発現率を示す。
【0114】
別の実施形態では、ユーザが導入したい全ての構成を1つのベクターに載せることが有用である。このとき、概して、一般的な発現カセット(具体的にはプロモーター配列)のサイズ制約が特に重要である。例えば、シュワン細胞特異的プロモーターは、プロモーターのサイズが相対的にコンパクトなので、より大きいMPZプロモーターより有利である。これにより、シュワン細胞特異的プロモーターは、限られたサイズのベクターで使用すると、より効率的になる。
【0115】
更に別の実施形態では、既知のMPZプロモーターは、ヒト又はラットのMPZ遺伝子のプロモーターであってよい。長さが1000~1200bpの範囲にある配列は概して、既知のMPZプロモーターに使用される。
【0116】
更に別の実施形態では、配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号8;配列番号9;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;及び、配列番号3、4、5、6、8、9、11、12、13、14、15、及び16のうちの1つと少なくとも90%の相同性を有する配列から選択される配列を有するシュワン細胞特異的プロモーターの長さは、200~420bpの範囲にある。シュワン細胞特異的プロモーターの長さは、既知のMPZプロモーターの長さの50%以下であってよい。具体的には、シュワン細胞特異的プロモーターの長さが200bp、300bp、又は317bpであるとき、その長さは既知のMPZプロモーターの長さの30%以下に相当してよい。
【0117】
更に別の実施形態では、配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号8;配列番号9;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;及び、配列番号3、4、5、6、8、9、11、12、13、14、15、及び16のうちの1つと少なくとも90%の相同性を有する配列から選択される配列を有するシュワン細胞特異的プロモーターは、既知のMPZプロモーターの長さの少なくとも半分の長さであるにもかかわらず、既知のMPZプロモーターより高い発現量を示す。また、更に別の実施形態では、実験例1-4を通じて、シュワン細胞特異的プロモーターが既知のMPZプロモーターよりおよそ1.5~2倍高い目的タンパク質の発現率を達成できることが確認された。
【0118】
従って、ベクターのサイズ制約がある場合、配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号8;配列番号9;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;及び、配列番号3、4、5、6、8、9、11、12、13、14、15、及び16のうちの1つと少なくとも90%の相同性を有する配列から選択される配列を有するシュワン細胞特異的プロモーターは、既知のMPZプロモーターより効率的に使用され得る。
【0119】
1-5.シュワン細胞特異的プロモーターの利点2-シュワン細胞における特異的発現
【0120】
本開示のプロモーターには、シュワン細胞で目的タンパク質を特異的に発現させることができるという利点(特徴)がある。すなわち、シュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞で有意な発現を引き起こし、且つ、非シュワン細胞で低い発現を引き起こすか又は全く発現を引き起こさないプロモーターである。
【0121】
一実施形態では、体内で目的遺伝子を発現させるためのベクターを全身投与で注入してよい。このとき、目的遺伝子は、特定の種類の組織又は細胞に対して特異的に発現させる必要がある。
【0122】
遺伝子を特異的に発現させるよう意図された組織又は細胞以外の組織又は細胞で目的遺伝子を発現させると、遺伝子発現で試みた望ましい効果とは逆に、予測不可能な副作用が増加する可能性があるかもしれない。換言すると、特定の組織又は細胞で目的遺伝子をより良く選択的に発現させるプロモーターを使用する必要がある。
【0123】
例えば、プロモーターを使用してシュワン細胞で目的遺伝子を特異的に発現させるとき、本開示のシュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞に非特異的なプロモーターより効果的である。
【0124】
別の実施形態では、目的遺伝子を発現させるためのベクターを含む組成物を遺伝子療法として使用してよい。インビボで遺伝子療法を使用した治療の方法の更に別の実施形態では、対象の体に遺伝子療法を直接適用して特定の組織又は細胞で目的遺伝子を発現させる方法がある。このとき、ベクターは体内の血液を通り抜け、目的組織に加えて肝臓などの組織を通過する。従って、効果的な遺伝子療法のためには、目的組織(例えば、肝臓)以外の組織で低い遺伝子発現を示し、且つ、目的組織で特異的に最も効果的な発現を示すことが遺伝子療法にとって好ましい。本開示のプロモーターは、神経系組織で目的遺伝子を効果的に発現させることができるシュワン細胞特異的プロモーターである。
【0125】
更に別の実施形態では、本開示で後述するプロモーターを使用してシュワン細胞で目的遺伝子を特異的に発現させるとき、シュワン細胞におけるタンパク質発現率は既知のシュワン細胞特異的プロモーターより高く、非シュワン細胞におけるタンパク質発現率は既知のシュワン細胞特異的プロモーターより相対的に低い。
【0126】
配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号8;配列番号9;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;又は、配列番号3、4、5、6、8、9、11、12、13、14、15、及び16のうちの1つと少なくとも90%の相同性を有する配列から選択される配列を有するシュワン細胞特異的プロモーター。
【0127】
しかしながら、上に開示したシュワン細胞特異的プロモーターの例は例に過ぎず、これらに限定されない。
【0128】
2.シュワン細胞特異的発現ベクター
【0129】
一態様では、本開示はシュワン細胞特異的発現ベクターに関する。シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーターを含む。シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した各構成と同じ性質及び構造を有する。シュワン細胞特異的発現ベクターとは、シュワン細胞で特異的に発現させたベクターを指す。これは、シュワン細胞特異的発現ベクターに含まれるシュワン細胞特異的プロモーターによってベクターがシュワン細胞で特異的に機能することを意味する。
【0130】
より具体的には、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター及び目的遺伝子を含んでよい。
【0131】
シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した各構成と同じ性質及び構造を有する。
【0132】
目的遺伝子は、シュワン細胞で発現するように構成された遺伝子であってよい。また、目的遺伝子は、シュワン細胞で発現するように構成された目的タンパク質をコードする核酸であってよい。
【0133】
シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、調節/制御エレメントを選択的に含んでよい。このとき、調節/制御構成要素は、ベクターに含まれる目的遺伝子に機能可能に連結されてよい。調節/制御構成要素は、エンハンサー、人工イントロン、終結シグナル、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site:IRES)、WPRE、スプライスアクセプター、2A配列、及び/又は複製起点を含んでよいが、これらに限定されない。
【0134】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターであってよい。本明細書では、ウイルスベクターは、レトロウイルス(retroviral(retrovirus))ベクター、レンチウイルス(lentiviral(lentivirus))ベクター、アデノウイルス(adenoviral(adenovirus))ベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral(adeno-associated virus):AAV)ベクター、ワクシニアウイルス(vaccinia viral(vaccinia virus))ベクター、ポックスウイルス(poxviral(poxvirus))ベクター、及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral(herpes simplex virus))ベクターからなる群から選択される1つ又は複数のウイルスベクターであってよい。このとき、非ウイルスベクターは、プラスミド、ファージ、ネイキッドDNA、DNA複合体、mRNA(転写物)、又はPCRアンプリコンであってよいが、これらに限定されない。例えば、プラスミドは、pcDNAシリーズ、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ、及びpUC19からなる群から選択されるいずれかであってよい。
【0135】
2-1.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(1)
【0136】
一実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター及び目的遺伝子を含んでよい。
目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0137】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターであってよい。別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3又は4に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3又は4に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0138】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの5'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8又は9に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8又は9に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0139】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの3'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13又は14に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0140】
目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子であってよい。
例えば、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、コネキシン32(Cx32)遺伝子、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)遺伝子、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子、初期増殖応答2(EGR2)遺伝子、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)遺伝子、N-Myc下流調節1(NDRG1)遺伝子、又は末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)遺伝子であってよいが、これらに限定されない。
【0141】
目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸であってよい。例えば、遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質は、Casタンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease:ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)であってよいが、これらに限定されない。本明細書では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質であってよいが、これらに限定されない。
【0142】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクターであってよい。本明細書では、ウイルスベクターは、レトロウイルス(retroviral(retrovirus))ベクター、レンチウイルス(lentiviral(lentivirus))ベクター、アデノウイルス(adenoviral(adenovirus))ベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral(adeno-associated virus):AAV)ベクター、ワクシニアウイルス(vaccinia viral(vaccinia virus))ベクター、ポックスウイルス(poxviral(poxvirus))ベクター、及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral(herpes simplex virus))ベクターからなる群から選択される1つ又は複数のウイルスベクターであってよい。
【0143】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3又は4に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、Cas9タンパク質は、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)タンパク質、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)タンパク質、又はスタフィロコッカス・アウリクラーリスCas9(SauriCas9)タンパク質であってよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0144】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8又は9に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9(CjCas9)タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0145】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9(CjCas9)タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0146】
2-2.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(2)
【0147】
一実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター及び目的遺伝子を含んでよい。
目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0148】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターであってよい。別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5又は6に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5又は6に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0149】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの5'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11又は12に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11又は12に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0150】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの3'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15又は16に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0151】
目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子であってよい。例えば、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、Cx32遺伝子、SH3TC2遺伝子、MPZ遺伝子、EGR2遺伝子、GDAP1遺伝子、NDRG1遺伝子、又はPMP22遺伝子であってよいが、これらに限定されない。
【0152】
目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸であってよい。例えば、遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質は、Casタンパク質、ZFN、又はTALENであってよいが、これらに限定されない。本明細書では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質であってよいが、これらに限定されない。
【0153】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクターであってよい。このとき、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターからなる群から選択される1つ又は複数であってよい。
【0154】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5又は6に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0155】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11又は12に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0156】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0157】
2-3.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(3)
【0158】
一実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、目的遺伝子、及び調節/制御エレメントを含んでよい。
このとき、目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0159】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターであってよい。別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3又は4に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3又は4に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0160】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの5'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8又は9に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8又は9に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0161】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ラットMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたラットMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたラットMPZプロモーターの3'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13又は14に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0162】
目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子であってよい。例えば、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、Cx32遺伝子、SH3TC2遺伝子、MPZ遺伝子、EGR2遺伝子、GDAP1遺伝子、NDRG1遺伝子、又はPMP22遺伝子であってよいが、これらに限定されない。
【0163】
目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸であってよい。例えば、遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質は、Casタンパク質、ZFN、又はTALENであってよいが、これらに限定されない。本明細書では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質であってよいが、これらに限定されない。
【0164】
調節/制御エレメントは、ポリアデニル化シグナル、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(Woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element:WPRE)、及び/又は人工イントロンであってよい。
【0165】
このとき、ポリアデニル化シグナルは、ウシ増殖ホルモンポリアデニル化(bovine growth hormone polyadenylation:BGHA)シグナル、合成ポリアデニル化(synthetic polyadenylation:synpA)シグナル、又はシミアンウイルス40ポリアデニル化(simian virus 40 polyadenylation signal:SV40pA)シグナルであってよいが、これらに限定されない。更に別の実施形態では、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列:5'-tgctttatttgtaaccattataagctgcaataaacaagttaacaacaacaattgcattcattttatgtttcaggttcagggggagatgtgggaggttttttaaa-3'(配列番号17)を有してよい。更に別の実施形態では、SV40pAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列:5'-AAGAGGTAAGGGTTTAAGGGATGGTTGGTTGGTGGGGTATTAATGTTTAATTACCTGGAGCACCTGCCTGAAATCACTTTTTTTCAGGTTGG-3'(配列番号18)を有してよい。
【0166】
このとき、WPREは、ガンマ、アルファ、及びベータエレメントから選択される1つ又は複数のエレメントを有してよい。更に別の実施形態では、WPREは、ガンマ及びアルファエレメントを含むWPRE3であってよく、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列:5'-AATCAACCTCTGGATTACAAAATTTGTGAAAGATTGACTGGTATTCTTAACTATGTTGCTCCTTTTACGCTATGTGGATACGCTGCTTTAATGCCTTTGTATCATGCTATTGCTTCCCGTATGGCTTTCATTTTCTCCTCCTTGTATAAATCCTGGTTAGTTCTTGCCACGGCGGAACTCATCGCCGCCTGCCTTGCCCGCTGCTGGACAGGGGCTCGGCTGTTGGGCACTGACAATTCCGTGGTGT-3'(配列番号19)を有してよい。更に別の実施形態では、WPREは、ガンマ、アルファ、及びベータエレメントを含んでよい。このとき、WPREは、配列番号20に示すヌクレオチド配列:5'-AATCAACCTCTGGATTACAAAATTTGTGAAAGATTGACTGGTATTCTTAACTATGTTGCTCCTTTTACGCTATGTGGATACGCTGCTTTAATGCCTTTGTATCATGCTATTGCTTCCCGTATGGCTTTCATTTTCTCCTCCTTGTATAAATCCTGGTTGCTGTCTCTTTATGAGGAGTTGTGGCCCGTTGTCAGGCAACGTGGCGTGGTGTGCACTGTGTTTGCTGACGCAACCCCCACTGGTTGGGGCATTGCCACCACCTGTCAGCTCCTTTCCGGGACTTTCGCTTTCCCCCTCCCTATTGCCACGGCGGAACTCATCGCCGCCTGCCTTGCCCGCTGCTGGACAGGGGCTCGGCTGTTGGGCACTGACAATTCCGTGGTGTTGTCGGGGAAGCTGACGTCCTTTCCATGGCTGCTCGCCTGTGTTGCCACCTGGATTCTGCGCGGGACGTCCTTCTGCTACGTCCCTTCGGCCCTCAATCCAGCGGACCTTCCTTCCCGCGGCCTGCTGCCGGCTCTGCGGCCTCTTCCGCGTCTTCGCCTTCGCCCTCAGACGAGTCGGATCTCCCTTTGGGCCGCCTCCCCGCCTG-3'(配列番号20)を有してよい。
【0167】
このとき、人工イントロンを使用してシュワン細胞特異的発現ベクターにおける目的遺伝子の発現を改善してよい。更に別の実施形態では、人工イントロンは、マウス微小ウイルス(minute virus of mice:MVM)イントロンであってよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列:5'-AAGAGGTAAGGGTTTAAGGGATGGTTGGTTGGTGGGGTATTAATGTTTAATTACCTGGAGCACCTGCCTGAAATCACTTTTTTTCAGGTTGG-3'(配列番号21)を有してよい。
【0168】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクターであってよい。このとき、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターからなる群から選択される1つ又は複数のウイルスベクターであってよい。
【0169】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。更に別の実施形態では、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0170】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及びWPREを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0171】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及び人工イントロンを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、人工イントロンは、MVMイントロンであってよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0172】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、WPRE、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。更に別の実施形態では、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸及びポリアデニル化シグナルの間に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0173】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、人工イントロン、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。このとき、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0174】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、人工イントロン、及びWPREを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0175】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、人工イントロン、WPRE、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3、4、8、9、13、又は14に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。このとき、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、WPREの3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0176】
2-4.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(4)
【0177】
一実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、目的遺伝子、及び調節/制御エレメントを含んでよい。
このとき、目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0178】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターであってよい。別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5又は6に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5又は6に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0179】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの5'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11又は12に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号11又は12に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0180】
シュワン細胞特異的プロモーターは、ヒトMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失している人工的に改変されたヒトMPZプロモーターを含んでよく、人工的に改変されたヒトMPZプロモーターの3'末端に配置されるIEを含んでよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号15又は16に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、例えば、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、又は95%~100%の配列同一性又は配列類似性を有するヌクレオチド配列を有してよい。
【0181】
目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子であってよい。例えば、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、Cx32遺伝子、SH3TC2遺伝子、MPZ遺伝子、EGR2遺伝子、GDAP1遺伝子、NDRG1遺伝子、又はPMP22遺伝子であってよいが、これらに限定されない。
【0182】
目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質をコードする核酸であってよい。例えば、遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質は、Casタンパク質、ZFN、又はTALENであってよいが、これらに限定されない。本明細書では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質であってよいが、これらに限定されない。
【0183】
調節/制御エレメントは、ポリアデニル化シグナル、WPRE、及び/又は人工イントロンであってよい。
【0184】
このとき、ポリアデニル化シグナルは、ウシ増殖ホルモンポリアデニル化シグナル、合成ポリアデニル化シグナル、又はシミアンウイルス40ポリアデニル化シグナルであってよいが、これらに限定されない。このとき、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。
【0185】
このとき、WPREは、ガンマ、アルファ、及びベータエレメントから選択される1つ又は複数のエレメントを有してよい。更に別の実施形態では、WPREは、ガンマ及びアルファエレメントを含むWPRE3であってよく、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、WPREは、ガンマ、アルファ、及びベータエレメントを含んでよい。このとき、WPREは、配列番号20に示すヌクレオチド配列を有してよい。
【0186】
このとき、人工イントロンを使用してシュワン細胞特異的発現ベクターにおける目的遺伝子の発現を改善してよい。更に別の実施形態では、人工イントロンは、マウス微小ウイルス(MVM)イントロンであってよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。
【0187】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクターであってよい。このとき、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターからなる群から選択される1つ又は複数のベクターであってよい。
【0188】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。更に別の実施形態では、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0189】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及びWPREを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0190】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及び人工イントロンを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、人工イントロンは、MVMイントロンであってよい。このとき、MVMは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0191】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、WPRE、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質を含んでよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAを含んでよい。このとき、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸及びポリアデニル化シグナルの間に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0192】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、人工イントロン、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質を含んでよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。このとき、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0193】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、人工イントロン、及びWPREを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質であってよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0194】
更に別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、人工イントロン、WPRE、及びポリアデニル化シグナルを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。このとき、シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号5、6、11、12、15、又は16に示すヌクレオチド配列を有してよい。本明細書では、Cas9タンパク質は、SpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質、CjCas9タンパク質、又はSauriCas9タンパク質を含んでよい。このとき、MVMイントロンは、配列番号21に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、MVMイントロンは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸の間に位置してよい。このとき、WPREは、WPRE3であってよい。このとき、WPRE3は、配列番号19に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、WPREは、Cas9タンパク質をコードする核酸の3'末端に位置してよい。本明細書では、ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAであってよい。このとき、SV40pAは、配列番号17に示すヌクレオチド配列を有してよい。更に別の実施形態では、synpAは、配列番号18に示すヌクレオチド配列を有してよい。このとき、ポリアデニル化シグナルは、WPREの3'末端に位置してよい。このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)であってよい。
【0195】
しかしながら、上に開示したシュワン細胞特異的発現ベクターの例は例に過ぎず、これらに限定されない。
【0196】
3.目的タンパク質のシュワン細胞特異的発現の方法
【0197】
本開示で開示する一態様は、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させる方法に関する。この方法では、シュワン細胞特異的発現ベクターを使用する。より具体的には、方法は、目的タンパク質をコードする核酸(又は目的遺伝子)を含むシュワン細胞特異的発現ベクターをシュワン細胞に導入(又は移入)して、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させる方法である。このとき、シュワン細胞は、ヒトシュワン細胞又は非ヒト動物シュワン細胞であってよい。方法は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実行され得る。このとき、インビボとは、シュワン細胞を含むヒトの体、又は非ヒト動物の体の環境を指してよい。シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した発現ベクターと同じであり、同セクションで説明した各構成と同じ性質及び構造を有する。
【0198】
3-1.シュワン細胞で目的タンパク質を特異的に発現させる方法例(1)
【0199】
一実施形態では、方法は、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させる方法であってよい。このとき、方法は、シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入を含んでよい。
【0200】
別の実施形態では、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及び目的タンパク質をコードする核酸(又は目的遺伝子)を含んでよい。
このとき、目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0201】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した発現ベクターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。また、シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。また、目的遺伝子は、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した遺伝子と同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0202】
シュワン細胞は、ヒトシュワン細胞又は非ヒト動物シュワン細胞であってよい。
【0203】
シュワン細胞は、ヒト又は非ヒト動物から得られるシュワン細胞であってよい。
【0204】
シュワン細胞は、ヒトの体内又は非ヒト動物の体内に存在するシュワン細胞であってよい。
【0205】
シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入は、エレクトロポレーション法、遺伝子銃、ソノポレーション、マグネトフェクション法、ナノ粒子法、及び/又は一時的細胞圧縮又は圧迫法を使用して実行されてよい。また、シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入は、カチオン性リポソーム法、酢酸リチウム-DMSO、脂質媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine:PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、及び/又はナノ粒子媒介性拡散輸送(Panyam et al.,Adv Drug Deliv Rev.2012 Sep 13.pii:S0169-409X(12)00283-9.doi:10.1016/j.addr.2012.09.023を参照)を使用して実行されてよいが、これらに限定されない。
【0206】
シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実行されてよい。
【0207】
シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入を行った結果として、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させてよい。このとき、シュワン細胞における目的タンパク質の発現は、シュワン細胞特異的発現ベクターによる処置の前と比べて有意に増加する可能性がある。
【0208】
更に別の実施形態では、方法は、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させる方法であってよい。このとき、方法は、シュワン細胞特異的発現ベクターでの処理、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入を含んでよい。シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、及びCas9タンパク質をコードする核酸を含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2-1.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(1)」及び「2-2.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(2)」で上述した幾つかの実施形態の中から選択されるものであってよい。このとき、シュワン細胞は、ヒトシュワン細胞であってよい。このとき、方法は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実行されてよい。また、方法は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸での処置、又はガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸のシュワン細胞への導入を含んでよい。
【0209】
3-2.シュワン細胞で目的タンパク質を特異的に発現させる方法例(2)
【0210】
一実施形態では、方法は、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させる方法であってよい。このとき、方法は、シュワン細胞特異的発現ベクターでの処理、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入を含んでよい。
【0211】
このとき、シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、目的タンパク質をコードする核酸(又は目的遺伝子)、及び調節/制御エレメントを含んでよい。
このとき、目的遺伝子は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。
【0212】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した発現ベクターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。また、シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。また、目的遺伝子及び調節/制御エレメントは、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した遺伝子及び調節/制御エレメントと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0213】
シュワン細胞は、ヒトシュワン細胞又は非ヒト動物シュワン細胞であってよい。
【0214】
シュワン細胞は、ヒト又は非ヒト動物から得られるシュワン細胞であってよい。
【0215】
シュワン細胞は、ヒトの体又は非ヒト動物の体に存在するシュワン細胞であってよい。
【0216】
シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入は、エレクトロポレーション法、遺伝子銃、ソノポレーション、マグネトフェクション法、ナノ粒子法、及び/又は一時的細胞圧縮又は圧迫法を使用して実行されてよい。また、シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入は、カチオン性リポソーム法、酢酸リチウム-DMSO、脂質媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、及び/又はナノ粒子媒介性拡散輸送(Panyam et al.,Adv Drug Deliv Rev.2012 Sep 13.pii:S0169-409X(12)00283-9.doi:10.1016/j.addr.2012.09.023を参照)を使用して実行されてよいが、これらに限定されない。
【0217】
シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実行されてよい。
【0218】
シュワン細胞特異的発現ベクターでの処置、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入を行った結果として、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させてよい。このとき、シュワン細胞における目的タンパク質の発現は、シュワン細胞特異的発現ベクターによる処置の前と比べて有意に増加する可能性がある。
【0219】
更に別の実施形態では、方法は、シュワン細胞で目的タンパク質を発現させる方法であってよい。このとき、方法は、シュワン細胞特異的発現ベクターでの処理、又はシュワン細胞へのシュワン細胞特異的発現ベクターの導入を含んでよい。シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞特異的プロモーター、Cas9タンパク質をコードする核酸、及び調節/制御エレメントを含んでよい。このとき、Cas9タンパク質をコードする核酸は、シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されてよい。シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2-3.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(3)」及び「2-4.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(4)」で上述した幾つかの実施形態の中から選択されるものであってよい。このとき、シュワン細胞は、ヒトシュワン細胞であってよい。このとき、方法は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実行されてよい。また、方法は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸での処理、又はガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸のシュワン細胞への導入を含んでよい。
【0220】
しかしながら、上に開示した目的タンパク質のシュワン細胞特異的発現の方法の例は例に過ぎず、これらに限定されない。
【0221】
4.シュワン細胞に関連する疾患の治療における使用
【0222】
4-1.組成物
【0223】
本開示で開示する一態様は、シュワン細胞に関連する疾患を治療するための組成物に関する。組成物は、シュワン細胞特異的発現ベクターを含む。シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した発現ベクターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子、及び/又はシュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸を目的遺伝子として含んでよい。従って、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子、及び/又はシュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸を使用することによってシュワン細胞に関連する疾患を治療するために組成物を使用してよい。
【0224】
より具体的には、組成物は、以下を含むシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。
【0225】
シュワン細胞特異的プロモーター;及び
【0226】
目的遺伝子。
【0227】
シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0228】
このとき、一実施形態では、目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質をコードする核酸であってよい。例えば、遺伝子を人工的に改変するために使用されるタンパク質は、Casタンパク質、ZFN、又はTALENであってよいが、これらに限定されない。本明細書では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質であってよいが、これらに限定されない。これを使用することによって、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子へのノックアウト効果を達成してよい。
【0229】
また、目的遺伝子がシュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子の役割を果たすので、必要に応じて、本開示のプロモーターを使用してシュワン細胞で目的遺伝子を過剰発現させてよい。
【0230】
シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、コネキシン32(Cx32)遺伝子、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)遺伝子、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子、初期増殖応答2(EGR2)遺伝子、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)遺伝子、N-Myc下流調節1(NDRG1)遺伝子、又は末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)遺伝子であってよい。疾患治療効果を得るために、必要に応じて遺伝子をノックアウト又は過剰発現させてよい。
【0231】
シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、調節/制御エレメントを含んでよい。このとき、調節/制御構成要素は、ベクターに含まれる目的遺伝子に機能可能に連結されてよい。調節/制御構成要素は、エンハンサー、人工イントロン、終結シグナル、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)、スプライスアクセプター、2A配列、及び/又は複製起点であってよいが、これらに限定されない。
【0232】
シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸をシュワン細胞特異的発現ベクターが含むとき、組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。このとき、ガイドRNAは、シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす遺伝子を標的としてよい。別の実施形態では、ガイドRNAは、ポリT部分が除去されている足場部分を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAのガイドドメインは、pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列であってよい。
【0233】
4-1-1.組成物例(1)
【0234】
一実施形態では、組成物は、以下を含むシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。
【0235】
シュワン細胞特異的プロモーター;及び
【0236】
Cas9タンパク質をコードする核酸。
【0237】
シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0238】
組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。
【0239】
別の実施形態では、組成物は、セクション「2-1.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(1)」及び「2-2.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(2)」で上述した幾つかの実施形態の中から選択される1つのシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。このとき、組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAは、ポリT部分が除去されている足場部分を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAのガイドドメインは、pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列であってよい。
【0240】
4-1-2.組成物例(2)
【0241】
一実施形態では、組成物は、以下を含むシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。
【0242】
シュワン細胞特異的プロモーター;
【0243】
Cas9タンパク質をコードする核酸;及び
【0244】
調節/制御エレメント。
【0245】
シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0246】
組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。
【0247】
別の実施形態では、組成物は、セクション「2-3.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(3)」及び「2-4.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(4)」で上述した幾つかの実施形態の中から選択される1つのシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。このとき、組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAは、ポリT部分が除去されている足場部分を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAのガイドドメインは、pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列であってよい。
【0248】
4-2.治療方法
【0249】
本開示で開示する一態様は、シュワン細胞に関連する疾患を治療する方法に関する。この方法では、シュワン細胞特異的発現ベクターを含む組成物を使用する。シュワン細胞特異的発現ベクターは、セクション「2.シュワン細胞特異的発現ベクター」で上述した発現ベクターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。シュワン細胞特異的発現ベクターは、シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子、及び/又はシュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする核酸をベクターに含まれる目的遺伝子として含んでよい。従って、この組成物を使用することによってシュワン細胞に関連する疾患を治療してよい。
【0250】
方法は、対象に組成物を導入(又は投与)することを含んでよい。
【0251】
このとき、対象は、シュワン細胞に関連する疾患を持つヒト又は非ヒト動物であってよい。組成物は、セクション「4-1.組成物」で上述した組成物と同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。例えば、シュワン細胞に関連する疾患は、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病又は運動ニューロン疾患(MND)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0252】
このとき、対象への組成物の導入(又は投与)は、注射、輸血、インプランテーション、又はトランスプランテーションによって実行されてよい。このとき、対象への組成物の導入(又は投与)は、網膜下、皮下、皮内、眼内、硝子体内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ内、又は腹腔内といった投与経路から選択されるいずれか1つの投与経路を通じて実行されてよい。
【0253】
4-2-1.治療方法例(1)
【0254】
一実施形態では、治療方法は、対象に組成物を導入又は投与することを含んでよい。
【0255】
このとき、組成物は、以下を含むシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。
【0256】
シュワン細胞特異的プロモーター;及び
【0257】
Cas9タンパク質をコードする核酸。
【0258】
シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0259】
組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。別の実施形態では、ガイドRNAは、ポリT部分が除去されている足場部分を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAのガイドドメインは、pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列であってよい。
【0260】
対象は、シュワン細胞に関連付けられた疾患を持つヒト又は非ヒト動物であってよい。
【0261】
更に別の実施形態では、治療方法は、シュワン細胞に関連する疾患を有する被験者に組成物を導入(投与)することを含んでよい。このとき、組成物は、セクション「2-1.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(1)」及び「2-2.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(2)」で上述した実施形態の中から選択される1つのシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。このとき、組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。このとき、シュワン細胞に関連する疾患は、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病であってよい。
【0262】
4-2-2.治療方法例(2)
【0263】
一実施形態では、治療方法は、対象に組成物を導入又は投与することを含んでよい。
【0264】
このとき、組成物は、以下を含むシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。
【0265】
シュワン細胞特異的プロモーター;
【0266】
Cas9タンパク質をコードする核酸;及び
【0267】
調節/制御エレメント。
【0268】
シュワン細胞特異的プロモーターは、セクション「1.シュワン細胞特異的プロモーター」で上述したプロモーターと同じであり、同セクションで説明した構成と同じ性質及び構造を有する。
【0269】
組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。別の実施形態では、ガイドRNAは、ポリT部分が除去されている足場部分を含んでよい。更に別の実施形態では、ガイドRNAのガイドドメインは、pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列であってよい。
【0270】
対象は、シュワン細胞に関連する疾患を持つヒト又は非ヒト動物であってよい。
【0271】
更に別の実施形態では、治療方法は、シュワン細胞に関連する疾患を有する被験者に組成物を導入(投与)することを含んでよい。このとき、組成物は、セクション「2-3.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(3)」及び「2-4.シュワン細胞特異的発現ベクターの例(4)」で上述した実施形態の中から選択される1つのシュワン細胞特異的発現ベクターを含んでよい。このとき、組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含んでよい。このとき、シュワン細胞に関連する疾患は、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病であってよい。
【0272】
しかしながら、上に開示した組成物及び治療方法の例は例に過ぎず、これらに限定されない。
【0273】
以降、本明細書で提供する本開示の考えられる実施形態を列挙する。この段落で提供する以下の実施形態は開示の例に過ぎない。従って、本明細書で提供する発明を、以下の例に限定されるものとして解釈することはできない。例番号と共に提供する簡単な説明は、単にそれぞれの例を区別するための便宜上のものであり、本明細書で開示する開示に対する限定として解釈することはできない。
【0274】
開示の考えられる例
【0275】
シュワン細胞特異的プロモーター
【0276】
例1、シュワン細胞特異的プロモーター
【0277】
配列長が300~500bpの範囲にある人工プロモーター又は改変されたプロモーターである、シュワン細胞特異的プロモーター。
【0278】
例2、プロモーターの長さの限定
【0279】
シュワン細胞特異的プロモーターの配列長は、300~350bpの範囲にある、例1に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0280】
例3、MPZプロモーター由来
【0281】
シュワン細胞特異的プロモーターは、既知のヒト又ラットのMPZプロモーターの改変されたバージョンである、例1及び2のいずれか一方に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0282】
例4、MPZプロモーターの改変の限定
【0283】
シュワン細胞特異的プロモーターは、既知のヒト又ラットのMPZプロモーターの幾つかのヌクレオチド配列が欠失しているか、又は、既知のヒト又ラットのMPZプロモーターのどちらかの末端(5'及び3')にIE配列が追加されている、人工的に改変されたシュワン細胞特異的プロモーターである、例1から3のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0284】
例5、TATAボックス、CAATボックス、又はTSSへの限定
【0285】
シュワン細胞特異的プロモーターは、TATAボックス、CAATボックス、又は転写開始部位(TSS)を含む、例1から4のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0286】
例6、プロモーター配列の限定(短い形態)
【0287】
シュワン細胞特異的プロモーターは、以下から選択される配列を有する、例1から5のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的プロモーター:
【0288】
配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;及び、配列番号3、4、5、及び6のうちの1つと少なくとも90%の相同性を有する配列。
【0289】
例7、配列長300bpへの限定
【0290】
シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3に示す配列、又は、配列番号3と少なくとも90%の相同性を有する配列を有する、例6に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0291】
例8、プロモーターへのIE追加
【0292】
シュワン細胞特異的プロモーターは更に、3'又は5'末端にイントロンエンハンサー(IE)を含む、例1から7のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0293】
例9、IE配列の限定
【0294】
IEの配列は、配列番号7に示す配列、又は、配列番号7と少なくとも90%の相同性を有する配列である、例8に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0295】
例10、配列の限定(IE追加形態)
【0296】
シュワン細胞特異的プロモーターは、以下から選択される配列からなる、例8及び9のいずれか一方に記載のシュワン細胞特異的プロモーター:
【0297】
配列番号8;配列番号9;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;及び、配列番号8、9、11、12、13、14、15、及び16のうちの1つと少なくとも90%の相同性を有する配列。
【0298】
例11、配列長417bpへの限定1
【0299】
シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号8に示す配列、又は、配列番号8と少なくとも90%の相同性を有する配列からなる、例10に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0300】
例12、配列長417bpへの限定2
【0301】
シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号9に示す配列、又は、配列番号9と少なくとも90%の相同性を有する配列からなる、例10に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0302】
例13、配列長317bpへの限定
【0303】
シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号13に示す配列、又は、配列番号13と少なくとも90%の相同性を有する配列からなる、例10に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0304】
例14、3倍の長さの違いの強調
【0305】
シュワン細胞特異的プロモーターの長さは、既知のMPZプロモーターの長さの3分の1以下である、例7から13のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【0306】
シュワン細胞特異的発現ベクター
【0307】
例15、シュワン細胞特異的プロモーターの含有
【0308】
例1から14のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的プロモーターを含むシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0309】
例16、目的遺伝子の含有
【0310】
シュワン細胞特異的発現ベクターは更に目的遺伝子を含み、目的遺伝子はシュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されている、例15に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0311】
例17、目的遺伝子の限定(シュワン細胞に関連する疾患の治療)
【0312】
目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患の治療に関連付けられた遺伝子である、例16に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0313】
例18、シュワン細胞に関連する疾患の限定
【0314】
シュワン細胞に関連する疾患に関連付けられた遺伝子は、コネキシン32(Cx32)遺伝子、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)遺伝子、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子、初期増殖応答2(EGR2)遺伝子、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)遺伝子、N-Myc下流調節1(NDRG1)遺伝子、又は末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)遺伝子である、例17に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0315】
例19、目的遺伝子の限定(遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質)
【0316】
目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質をコードする遺伝子である、例16に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0317】
例20、遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質の限定
【0318】
遺伝子を人工的に改変するためのタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、Cas12f1タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である、例19に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0319】
例21、調節/制御エレメントの含有
【0320】
シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、調節/制御エレメントを含む、例15から20のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的発現。
【0321】
例22、調節/制御エレメントの例
【0322】
調節/制御エレメントは、ポリアデニル化シグナル、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、及び人工イントロンから選択される1つ又は複数を含む、例21に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0323】
例23、ポリアデニル化シグナルの限定
【0324】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ増殖ホルモンポリアデニル化(BGHA)シグナル、合成ポリアデニル化(synpA)シグナル、又はシミアンウイルス40ポリアデニル化(SV40pA)シグナルである、例22に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0325】
例24、SV40pA及びsynpA配列の限定
【0326】
SV40pAは、配列番号17、及び、配列番号17と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列から選択されるいずれか1つを有する、又は、synpAは、配列番号18、及び、配列番号18と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列から選択されるいずれか1つを有する、例23に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0327】
例25、WRPEの限定
【0328】
WPREは、ガンマ、アルファ、及びベータエレメントから選択される1つ又は複数を含む、例22に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0329】
例26、WRPE配列の限定
【0330】
WPREは、配列番号19;配列番号20;及び、配列番号19又は配列番号20と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列を有する、例25に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0331】
例27、人工イントロンの限定
【0332】
人工イントロンは、シュワン細胞特異的発現ベクターにおける目的遺伝子の発現を改善するためのものである、例22に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0333】
例28、人工イントロン配列の限定
【0334】
人工イントロンは、配列番号21のヌクレオチド配列、及び、配列番号21と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列を有する、例27に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0335】
例29、ベクターの限定
【0336】
シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクターである、例15から28のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0337】
例30、ベクターの種類の限定
【0338】
ウイルスベクターは、レトロウイルス(retroviral(retrovirus))ベクター、レンチウイルス(lentiviral(lentivirus))ベクター、アデノウイルス(adenoviral(adenovirus))ベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral(adeno-associated virus):AAV)ベクター、ワクシニアウイルス(vaccinia viral(vaccinia virus))ベクター、ポックスウイルス(poxviral(poxvirus))ベクター、及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral(herpes simplex virus))ベクターからなる群から選択されるウイルスベクターである、例29に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【0339】
シュワン細胞特異的発現ベクターを含む組成物
【0340】
例31、シュワン細胞特異的発現ベクターを含む組成物
【0341】
例15から30のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的発現ベクターを含む組成物。
【0342】
例32、遺伝子を人工的に改変するための組成物
【0343】
目的遺伝子は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、Cas12f1タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードする核酸である、例31に記載の組成物。
【0344】
例33、ガイドRNAの追加
【0345】
組成物は更に、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含む、例32に記載の組成物。
【0346】
例34、ガイドRNAの性質
【0347】
ガイドRNAは、シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす遺伝子を標的とする、例33に記載の組成物。
【0348】
例35、標的遺伝子の限定
【0349】
シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす遺伝子は、コネキシン32(Cx32)遺伝子、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)遺伝子、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子、初期増殖応答2(EGR2)遺伝子、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)遺伝子、N-Myc下流調節1(NDRG1)遺伝子、又は末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)遺伝子である、例34に記載の組成物。
【0350】
例36、担体の追加
【0351】
組成物は、結合剤(例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース、又はゼラチン);賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、コーンスターチ又はサツマイモのデンプン);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、又はポリエチレングリコールワックス);甘味料;芳香剤;シロップ;液体担体(例えば、脂肪油);滅菌水溶液;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;注射用エステル(例えば、オレイン酸エチル);懸濁剤;乳剤;凍結乾燥製剤;局所製剤;安定剤;緩衝剤;動物油;植物油;ワックス;パラフィン;デンプン;トラガカント;セルロース誘導体;ポリエチレングリコール;シリコン;ベントナイト;シリカ;タルク;酸化亜鉛;及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数を含む薬学的に許容される担体を含む、例31から34のいずれか1つに記載の組成物。
【0352】
例37、治療のための組成物
【0353】
シュワン細胞に関連する疾患を治療するために使用されるか、又は、治療するように意図される、例31から36のいずれか1つに記載の組成物。
【0354】
シュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させるための方法
【0355】
例38、シュワン細胞特異的発現ベクターを使用する方法
【0356】
例15から30のいずれか1つに記載のシュワン細胞特異的発現ベクターを使用してシュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させる方法。
【0357】
例39、細胞にベクターを送達する方法の追加
【0358】
シュワン細胞にシュワン細胞特異的発現ベクターを導入又は送達することを含む、例38に記載のシュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させる方法。
【0359】
例40、送達方法の限定
【0360】
シュワン細胞にシュワン細胞特異的発現ベクターを導入又は送達する方法は、カチオン性リポソーム法、酢酸リチウム-DMSO、脂質媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、ナノ粒子媒介性拡散輸送、エレクトロポレーション法、遺伝子銃、ソノポレーション、マグネトフェクション法、ナノ粒子法、及び/又は一時的細胞圧縮又は圧迫法によって実行される、例39に記載のシュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させる方法。
【0361】
例41、シュワン細胞の限定
【0362】
シュワン細胞は、ヒトシュワン細胞又は非ヒト動物シュワン細胞である、例38から40のいずれか1つに記載のシュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させる方法。
【0363】
例42、インビボなどの実験環境の限定
【0364】
シュワン細胞にシュワン細胞特異的発現ベクターを導入又は送達することは、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実行される、例38から41のいずれか1つに記載のシュワン細胞で目的遺伝子又は目的タンパク質を特異的に発現させる方法。
【0365】
シュワン細胞に関連する疾患の治療における使用
【0366】
例43、治療方法
【0367】
例31から37のいずれか1つに記載の組成物を対象に導入(又は投与)することを含む、シュワン細胞に関連する疾患を治療するための方法。
【0368】
例44、投与方法の限定
【0369】
対象への組成物の導入(又は投与)は、注射、輸血、インプランテーション、又はトランスプランテーションといった方法によって実行される、例44に記載のシュワン細胞に関連する疾患を治療するための方法。
【0370】
例45、投与経路の限定
【0371】
対象への組成物の投与は、網膜下、皮下、皮内、眼内、硝子体内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ内、又は腹腔内といった投与経路から選択される任意の投与経路で実行される、例43及び44のいずれか一方に記載のシュワン細胞に関連する疾患を治療するための方法。
【0372】
例46、疾患の限定
【0373】
シュワン細胞に関連する疾患は、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病又は運動ニューロン疾患(MND)である、例43から45のいずれか1つに記載のシュワン細胞に関連する疾患を治療するための方法。
【0374】
開示の形態
【0375】
以下では、実験例を通じて本開示について詳細に説明する。
【0376】
これらの実験例は単に本開示を更に詳しく例示するためのものであり、本開示の範囲がこれらの実験例によって限定されないことは当業者にとって明らかである。
【0377】
実験例
【0378】
実験方法
【0379】
1.プラスミド生成
【0380】
ギブソンアセンブリを使用したクローニングによってpAAV-SpCas9関連ベクターを構築した。AAV2又はAAV9の逆方向タンデムリピート(inverted tandem repeat:ITR)間にコドン最適化SpCas9又はコドン最適化SauriCas9配列、及び、比較対象となる目的プロモーター配列(配列番号3、7、8、13、及び32)のそれぞれを配置することによってベクターを構築した。そして、比較対象となる目的プロモーター配列のそれぞれは、Cas9の上流にあった。比較対象となるプロモーター配列は、300bpの小型MPZプロモーター(sMPZプロモーター、配列番号3);117bpのegr2/sox10結合部位(イントロンエンハンサー又はIE、配列番号7)がsMPZプロモーターの上流に追加されたプロモーター(配列番号8);117bpのegr2/sox10結合部位がsMPZプロモーターの下流に追加されたプロモーター(配列番号13);sMPZプロモーターの5'末端の部分がIEと交換されたプロモーター(配列番号9);又は、全ての組織で高い発現率を有することが以前から知られている(シュワン細胞に非特異的な)EFSプロモーターといったバリエーションを含んでいた。
【0381】
構築したベクターに基づき、ギブソンアセンブリを使用して、BGHAの代わりにsynpA及びsv40pAを含むベクターを更に構築した。EPSプロモーターは、以下の核酸配列を有していた:5'-GGGCAGAGCGCACATCGCCCACAGTCCCCGAGAAGTTGGGGGGAGGGGTCGGCAATTGATCCGGTGCCTAGAGAAGGTGGCGCGGGGTAAACTGGGAAAGTGATGTCGTGTACTGGCTCCGCCTTTTTCCCGAGGGTGGGGGAGAACCGTATATAAGTGCAGTAGTCGCCGTGAACGTTCTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAG-3'(配列番号32)。
【0382】
逆方向タンデムリピート(ITR)間のU6プロモーター及びsgRNA(未改質又はsf改質)配列を運ぶpAAV-U6-sgRNAベクターを構築した。BspQI部位を使用したオリゴクローニングによって、pmp22-TATAのSpCas9特異的ガイドRNA(表1のガイドRNA1又はガイドRNA2)を産生した。
【0383】
SauriCas9を試験するために、ITR間に配置されたSauriCas9及びsgRNA配列の両方を含むpAAV-SauriCas9-U6-sgRNAベクターの形態でシングルベクターを構築した。このとき、これらのベクターでは、SauriCas9の上流に比較対象となるプロモーターのそれぞれを配置し、プロモーター及びSauriCas9配列のそれぞれの間にmvmイントロンを置き、SauriCas9及びsv40pAの間にWPRE-ショートを配置した。また、活性が証明されている黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)のバックボーンとして、sgRNAバックボーンを使用した。BspQI部位を使用したオリゴクローニングによって、pmp22-TATAのSauriCas9特異的ガイドRNA(表1)を産生した。
【0384】
また、ギブソンアセンブリを使用したクローニングによって、pAAV-tdTomato関連ベクターを構築した。AAV9の逆方向タンデムリピート(ITR)間にコドン最適化tdTomato配列、及び、比較対象となる目的プロモーター配列(配列番号1、3、及び9)のそれぞれを配置することによってベクターを構築した。そして、tdTomatoの上流に比較対象となる目的プロモーター配列のそれぞれを配置した。比較対象となる目的プロモーター配列は、300bpの小型MPZプロモーター(sMPZプロモーター、配列番号3));sMPZプロモーターの5'末端の部分がIEと交換されたプロモーター(配列番号9);及び既知のMPZプロモーター(配列番号1)といったバリエーションを含んでいた。tdTomatoは、以下の核酸配列を有していた:TGAACTTCGAGGACGGCGGTCTGGTGACCGTGACCCAGGACTCCTCCCTGCAGGACGGCACGCTGATCTACAAGGTGAAGATGCGCGGCACCAACTTCCCCCCCGACGGCCCCGTAATGCAGAAGAAGACCATGGGCTGGGAGGCCTCCACCGAGCGCCTGTACCCCCGCGACGGCGTGCTGAAGGGCGAGATCCACCAGGCCCTGAAGCTGAAGGACGGCGGCCACTACCTGGTGGAGTTCAAGACCATCTACATGGCCAAGAAGCCCGTGCAACTGCCCGGCTACTACTACGTGGACACCAAGCTGGACATCACCTCCCACAACGAGGACTACACCATCGTGGAACAGTACGAGCGCTCCGAGGGCCGCCACCACCTGTTCCTGTACGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAG-3'(配列番号33)。
【0385】
【0386】
2.細胞培養及びCRISPR/Cas9(又はtdTomato)トランスフェクション
【0387】
10%ウシ胎仔血清(WelGene)及び1Xペニシリン/ストレプトマイシン(WelGene)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium:DMEM)(WelGene)で毎週継代培養することによって、ヒトシュワン様細胞株(sNF02.2)(CRL-2885、ATCC)、S16細胞株(CRL-2941、ATCC)、及びRT4細胞株(CRL2768、ATCC)を維持した。
【0388】
pAAV-SpCas9関連ベクター及びpAAV-U6-sgRNA関連ベクターをそれぞれ0.1pmolの濃度でヒトシュワン様細胞(sNF02.2)にコトランスフェクトした。Neonトランスフェクション(Thermo Fisher)を使用し、10μlチップ、1400V、20ms、及び2パルスという条件で1.5×105個の細胞を置くことによってトランスフェクションを実行した。フォルスコリンを2.5μMの濃度で加えて細胞を処置し、トランスフェクションの5日後に細胞ペレットを得て、Quick DNA/RNA Miniprep Kit(ZYMO RESEARCH)を使用してRNAを抽出した。
【0389】
pAAV-SpCas9関連ベクター及びpAAV-U6-sgRNA関連ベクターをそれぞれ0.1pmolの濃度でS16細胞にコトランスフェクトした。10μlチップ、1400V、20ms、及び2パルスという条件で1.5×105個の細胞を置くことによってトランスフェクションを実行した。トランスフェクションの3日後に細胞ペレットを得て、Quick DNA/RNA Miniprep Kit(ZYMO RESEARCH)を使用してRNAを抽出した。
【0390】
pAAV-SpCas9関連ベクター及びpAAV-U6-sgRNA関連ベクターをそれぞれ0.1pmolの濃度でRT4-D6P2T細胞にコトランスフェクトした。10μlチップ、1400V、20ms、及び2パルスという条件で1.5×105個の細胞を置くことによってトランスフェクションを実行した。トランスフェクションの3日後に細胞ペレットを得て、Quick DNA/RNA Miniprep Kit(ZYMO RESEARCH)を使用してRNAを抽出した。
【0391】
RT4-D6P2T細胞を12ウェルプレートに1ウェルあたり5×105個の細胞密度で播種した。AAVストックを解凍し、1細胞あたり1×104に希釈した。合計100μlのAAVを1細胞あたり1×104の濃度でプレートの各ウェルに追加し、次いで3日間培養した。次に、ゲノムDNAを抽出し、次いでPCRで標的上(on-target)の部位を増幅した。次世代シーケンシングのために、シーケンシングプライマーに特定のアダプター及びTruSeq HT Dual Indexプライマーを取り付けることによってPCRを更に実行した。その後、ペアシーケンシングリードを使用することによって、標的上のゲノム位置における挿入又は欠失(インデル)(insertion or deletion(indel))の定量分析を通じてガイドRNA1(配列番号22)及びガイドRNA2(配列番号34)の活性を評価した。
【0392】
RT4-D6P2T細胞懸濁液を6.25×105個/mlの細胞密度で作り、各ウェルに800ulの細胞懸濁液を接種した。細胞を1ウェル(12ウェルプレート)あたり5×105個の細胞密度で分配し培養した。pAAV-tdTomato関連ベクターを1細胞あたり1×106の濃度で構築した。100μlのpAAV-tdTomato関連ベクターにより細胞を1細胞あたり1×106gcの密度で処置し、次いで培養した。Quick DNA/RNA Miniprep Kit(ZYMO RESEARCH)を使用して培養細胞からDNA及びRNAを抽出した。代替的に、培養細胞を1.5mLのチューブに置き、次いで4℃の温度で2分間9000rpmで遠心分離した。遠心分離による上清を除去し、1mLのFACS緩衝液を追加して細胞を洗浄した。細胞を4℃の温度で2分間9000rpmで遠心分離した。上清を吸引し、300ulのFACS緩衝液に再懸濁した。次に、FACSデバイスで分析を実行した。pAAV-SpCas9関連ベクター及びpAAV-U6-sgRNA関連ベクターをそれぞれ0.1pmolの濃度でRT4細胞にコトランスフェクトした。代替的に、pAAV-SauriCas9-U6-sgRNA関連ベクターを0.2pmolの濃度でRT4細胞にトランスフェクトした。10μlチップ、1400V、20ms、及び2パルスという条件で2×105個の細胞を置くことによってトランスフェクションを実行した。トランスフェクションの3日後に細胞ペレットを得て、Quick DNA/RNA Miniprep Kit(ZYMO RESEARCH)を使用してDNA及びRNAを抽出した。
【0393】
pAAV-SpCas9関連ベクター及びpAAV-U6-sgRNA関連ベクターを1:1で混合して合計1×1014vg/kgとし、麻酔をかけた実験動物(ラット)の尾静脈に投与した。4週間後、実験動物(ラット)を殺処分し、次いでその肝臓、坐骨神経、及び腰神経を採取した。そこから、Quick DNA/RNA Miniprep Kit(ZYMO RESEARCH)を使用してDNA及びRNAを抽出した。
【0394】
3.リアルタイムPCR(qRT-PCR)
【0395】
抽出したRNAを合計量100~1000ngに調節し、次いでcDNA Reverse Transcriptionキット(Thermo Fisher)を使用してcDNAを製造するためにそのRNAを使用した。製造業者のプロトコル(Thermo Fisher)に従ってSYBR Green Master Mixと共に10~15ngのcDNAを使用して、QuantStudio3装置でqRT-PCRを実行した。CT値を使用してSpCas9の発現量を計算し、hGAPDH及びrGAPDHを内部コントロールとして使用した。使用したプライマーを表2に示す。
【0396】
【0397】
4.インデル分析(標的とするディープシーケンシング)
【0398】
抽出したゲノムDNA及びプライマー(表3)を使用して標的上の部位を増幅し、次いでillumine TrueSeqアダプター(Illumina)を使用してさらなるPCRでサンプルごとにバーコードを作成した。PCR精製キット(Intronbio)を使用して各サンプルを精製した。サンプルを等モル比でプールした後、Miseq及びTrueSeq(HT)デュアルインデックスシステム(Illumina)を使用してペアシーケンシングを実行して、シーケンシングリードを産生した。CRISPR/RGEN Tools(www.rgenome.net)のCas9-Analyzerツールを使用して、生成したリードを分析して、標的上のゲノム位置における挿入又は欠失(インデル)リードを定量的に計算した。これにより、ベクターを介した遺伝子編集効率を比較及び評価することが可能になった。
【0399】
【0400】
5.統計
【0401】
統計分析にはスチューデントのt検定を使用した。有意差は、*がp<0.05を意味し、**がp<0.01を意味し、***がp<0.001を意味することを意味する。
【0402】
実験結果
【0403】
実験例1。ラットシュワン細胞株及びラットシュワン様細胞株における改変されたMPZプロモーターの効果
【0404】
実験例1-1。ラットシュワン細胞株における効果-S16細胞
【0405】
ラットMPZ遺伝子の転写開始部位(TSS)及びTATAボックスを含む小型MPZプロモーター(sMPZ、配列番号3)を改変するために、sMPZプロモーターの上流に117bpのイントロンエンハンサー(IE、配列番号7)が追加されたプロモーター(IE-sMPZ、配列番号8)に従ってSpCas9を発現させるベクター;sMPZプロモーターの下流にIEが追加されたプロモーター(sMPZ-IE、配列番号13)に従ってSpCas9を発現させるベクター;及び、sMPZプロモーターの5'末端の部分がIEと交換されたプロモーター(IE200、配列番号9)に従ってSpCas9を発現させるベクターを構築した。IEは、主要なegr2/sox10結合部位としてMPZ遺伝子の最初のイントロン内に配置した。その後、pmp22-TATA領域を標的とするsgRNA(表1に示すガイドRNA1)を発現させるベクターをシュワン細胞株であるS16細胞にコトランスフェクトし、次いでSpCas9の発現及び遺伝子編集効率を試験した。
【0406】
【0407】
図1は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをS16細胞にコトランスフェクトした後のCas9発現を確認した結果を示す(N=3-4)。
図2は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをS16細胞にコトランスフェクトした後のpmp22-TATA標的の遺伝子編集効率(B)を検証した結果を示す(N=3-4)。このとき、NTは非トランスフェクションを意味し;sMPZは小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;IEはイントロンエンハンサー(配列番号7)を意味し;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味し;IE-sMPZは改変されたプロモーター(配列番号8)を意味し;且つ、sMPZ-IEは改変されたプロモーター(配列番号13)を意味する。*、p<0.05 vs sMPZ;**、p<0.01 vs sMPZ。
【0408】
図1に示すように、sMPZプロモーターベクター、IE200ベクター、IE-sMPZベクター、及びsMPZ-IEプロモーターベクターをトランスフェクトした細胞では、SpCas9の発現及びpmp22-TATA標的部位におけるインデルの発生が確認された。換言すると、本開示の全てのプロモーターが目的遺伝子を効果的に発現させる可能性がある。特に、IE200、IE-sMPZ、及びsMPZ-IEプロモーターベクターをトランスフェクトした細胞では、sMPZプロモーターベクターをトランスフェクトした細胞よりもSpCas9の発現がおよそ2~4倍高かった(
図1)。
【0409】
更に、発現したSpCas9を介する遺伝子編集効果については、pmp22-TATA標的部位で発生するインデルが2倍以上増加した(
図2)。
【0410】
実験例1-2。ラットシュワン様細胞における効果-RT4-D6P2T細胞
【0411】
本発明者は、実験例1-1で使用したS16細胞に加えて、別のシュワン様細胞株であるRT4-D6P2Tを使用して、本開示のプロモーターの有効性を確認した。
【0412】
sMPZプロモーター、IE200プロモーター、IE-sMPZプロモーター、及びsMPZ-IEプロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクター、及び、pmp22-TATA領域を標的とするsgRNA(表1に示すガイドRNA1)を発現させるベクターをシュワン様細胞株であるRT4-D6P2T細胞にコトランスフェクトした。その後、遺伝子編集効率を試験した。
【0413】
結果を
図8に示す。
図8は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをRT4-D6P2T細胞にコトランスフェクトした後のpmp22-TATA標的の遺伝子編集効率を検証した結果を示す。このとき、NTは非トランスフェクションを意味し;rMPZは小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;IEはイントロンエンハンサー(配列番号7)を意味し;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味し;IE-sMPZは改変されたプロモーター(配列番号8)を意味し;且つ、sMPZ-IEは改変されたプロモーター(配列番号13)を意味する。**又は***は、sMpz300における遺伝子編集効率がIE200、IE-sMpz、及びsMpz-IEにおける遺伝子編集効率とは有意に異なっていたことを意味する。
【0414】
実験の結果として、sMPZプロモーターベクター、IE200ベクター、IE-sMPZベクター、及びsMPZ-IEプロモーターベクターをトランスフェクトした細胞では、pmp22-TATA標的部位におけるインデルの発生が観察された。特に、IE200、IE-sMPZ、及びsMPZ-IEプロモーターベクターをトランスフェクトした細胞では、sMPZプロモーターベクターをトランスフェクトした細胞と比べてpmp22-TATA標的部位で2倍以上のインデルが発生することが確認された。この実験結果は、本開示のプロモーターがシュワン細胞及びシュワン様細胞で標的タンパク質を効果的に発現させる可能性があることを示す。
【0415】
実験例1-3。長さの異なる標的配列を持つガイドRNAの使用
【0416】
本発明者は、IE200プロモーターの制御下で発現したSpCas9及びガイドRNAを利用した。このようにして、発明者は、長さの異なる標的配列に対する遺伝子編集効率、及び、発現したCRISPRシステムが適切に機能するかどうかを確認した。
【0417】
最後に、IE200プロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクター、及び、pmp22-TATA領域を標的とするsgRNA(表1に示すガイドRNA1又はガイドRNA2)を発現させるベクターをシュワン様細胞株であるRT4-D6P2T細胞にコトランスフェクトした。その後、遺伝子編集効率を試験した。このとき、ガイドRNA1は20ヌクレオチドのガイドドメイン(pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列)を有し、ガイドRNA2は19ヌクレオチドのガイドドメイン(pmp22遺伝子の部分配列に結合する配列)を有していた。
【0418】
結果を
図9に示す。
図9は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをRT4-D6P2T細胞にコトランスフェクトした後のpmp22-TATA標的の遺伝子編集効率を検証した結果を示す。このとき、IE200は、改変されたプロモーター(配列番号9)であった。IE200+ガイドRNA1は、IE200用のpAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びガイドRNA1用のpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをコトランスフェクトした後のケースを意味する。IE200+ガイドRNA2は、IE200用のpAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びガイドRNA2用のpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをコトランスフェクトした後のケースを意味する。
【0419】
実験の結果として、ガイドRNA1及びガイドRNA2を使用すると、同様のレベルの遺伝子編集効率が確認され、発現したCRISPRシステムが効果的に機能することが示された(
図9)。
【0420】
この実験結果は、本開示の改変されたMPZプロモーターの制御下で発現したSpCas9が遺伝子編集機能を効果的に実行することを示した。
【0421】
実験例1-4。tdTomato(蛍光タンパク質)の発現率
【0422】
本発明者は、目的タンパク質としての蛍光タンパク質の発現量を確認することも試みた。
【0423】
sMPZプロモーター(300bp)、IE200プロモーター(317bp)、及び既知のMPZプロモーター(1000bp)の制御下でtdTomatoを発現させるベクターをシュワン様細胞株であるRT4-D6P2T細胞にトランスフェクトして、tdTomatoの発現量(蛍光強度)を試験した。
【0424】
結果を
図10及び
図11に示す。
図10は、pAAV-tdTomato発現ベクターをRT4-D6P2T細胞にトランスフェクトした後の蛍光タンパク質(tdTomato)の発現量(蛍光強度)の結果を示す。このとき、MPZ1000はMPZプロモーター(配列番号1)を意味し;MPZ300は小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;且つ、IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味する。***は、MPZ1000における発現率がIE200及びMpz300における遺伝子編集効率とは有意に異なっていたことを意味する。
図11は、pAAV-tdTomato発現ベクターをRT4-D6P2T細胞にトランスフェクトした後の均一な細胞形質転換を確認した結果を示す。このとき、MPZ1000はMPZプロモーター(配列番号1)を意味し;MPZ300は小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;且つ、IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味する。
【0425】
図11に示すように、本開示のsMPZプロモーター及びIE200プロモーターと同様の効率で既知のMPZプロモーターを細胞に形質転換した。このとき、vgはベクターゲノムを意味し、dgは二倍体ゲノムを意味する。
【0426】
図10に示すように、本開示のsMPZプロモーター及びIE200プロモーターは、既知のMPZプロモーターよりも蛍光タンパク質の発現において高い効率を示した。一般に、長さ1000bpの既知のMPZプロモーターを使用すると、結果的に目的タンパク質の発現効率がより高くなることが予想された。しかしながら、実験の結果として、既知のMPZプロモーターの長さのおよそ3分の1の長さである本開示のプロモーターは、蛍光タンパク質に発現においてはるかに高い効率を示すことが確認された。特に、IE200プロモーターは、既知のMPZプロモーターと比べて目的タンパク質の発現量が2倍より多いことを示した。
【0427】
この実験結果は、本開示のシュワン細胞特異的プロモーターが、既知のMPZプロモーターよりも長さがはるかに短いにもかかわらず、既知のMPZプロモーターよりはるかに高い効率でシュワン細胞における目的タンパク質の発現を有意に向上させる可能性があることを実証した。
【0428】
実験例2。ヒトシュワン細胞株における改変されたMPZプロモーターの効果
【0429】
本発明者は、ヒトシュワン細胞における本開示のシュワン細胞特異的プロモーターの効果を確認しようと試みた。
【0430】
pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをヒトシュワン細胞株であるsNF02.2にコトランスフェクトした後のCas9発現を検証した。
【0431】
結果を
図3に示す。
図3は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをヒトシュワン細胞株であるsNF02.2にコトランスフェクトした後のCas9発現を検証した結果を示す。Cas9発現を平均値で表した(N=3)。このとき、NTは非トランスフェクションを意味し;sMPZは小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味し;IE-sMPZは改変されたプロモーター(配列番号8)を意味し;且つ、sMPZ-IEは改変されたプロモーター(配列番号13)を意味する。
【0432】
図3に示すように、本開示のシュワン細胞特異的プロモーターがNF02.2細胞でSpCas9を効果的に発現させることが確認された。特に、本開示の3つの改変されたプロモーターのうち、IE200プロモーターによるSpCas9発現率が最も高いことが確認された(
図3)。
【0433】
この実験結果は、本開示のプロモーターがヒトシュワン細胞においても目的タンパク質を効果的に発現させることができることを示す。換言すると、これは、本開示のシュワン細胞特異的プロモーターがヒトの遺伝子編集及び疾患治療などの目的に使用され得ることを示唆する。
【0434】
実験例3。発現系に対するさらなる改質
【0435】
本発明者は、改変されたMPZプロモーターを使用してCRISPRシステムを活性化することによって遺伝子編集効果を確認する実験に焦点を当てた。このプロセスでは、Cas9タンパク質又はgRNAの発現効率を改善するためにさらなる改質エレメントを検討した。
【0436】
実験例3-1。最適化されたさらなる発現系の具体例1:目的タンパク質へのポリAの追加
【0437】
本発明者は、より小さいサイズの他の種類のベクターにおける改変されたMPZプロモーターの効果をチェックすることも試みた。AAVベクターのパッケージング容量を考慮して、ウシ増殖ホルモンポリA(BGHA、225bp)よりもサイズが小さい合成ポリA(synpA、49bp)又はシミアンウイルス40ポリA(sv40pA、104bp、配列番号17)に基づくベクターを使用し、次いでこれらのベクターにおける遺伝子編集効率を評価した。
【0438】
結果を
図6に示す。
図6は、pAAV-SpCas9発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをS16細胞にコトランスフェクトした後の標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を検証した結果を示す(N=3)。このとき、NTは非トランスフェクションを意味し;sMPZは小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味し;synpAは合成ポリA(49bp、配列番号18)を意味し;且つ、sv40pAはシミアンウイルス40ポリA(104bp、配列番号17)を意味する。***、p<0.001 vs sMPZ_synpA。
【0439】
合成ポリA(synpA、49bp)又はシミアンウイルス40ポリA(sv40pA、104bp、配列番号17)に基づくベクターを使用すると、S16細胞でIE200プロモーターによるCas9発現の効率の増加が確認された(
図6)。この実験結果は、本開示のシュワン細胞特異的プロモーターが小型ベクターでの使用に適している可能性があることを示す。
【0440】
実験例3-2。最適化されたさらなる発現系の具体例2:目的タンパク質へのWPRE(人工イントロン)の追加
【0441】
次に、SpCas9より小さく、且つ、シングルAAVとして産生され得る、SauriCas9ベースのベクターを使用して、RT4細胞でIE200の効果を追加的に試験した。
【0442】
結果を
図7に示す。
図7は、シングルpAAV-Sauri-Cas9-U6-sgRNA発現ベクターをRT4細胞にトランスフェクトした後の標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を検証した結果を示す(N=3)。このとき、NTは非トランスフェクションを意味し;sMPZは小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味し;且つ、MWはmvmイントロン+WPRE-ショートを意味する。***、p<0.001 vs sMPZ-MW。
【0443】
sMPZを使用してSauriCas9を発現させるsMPZベクターと比べると、mvmイントロン及びWPREなどの最適化エレメントを追加したsMPZ-MWベクターを使用した場合、表1に示すように、SauriCas9が標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率が増加した。この結果は、これらの最適化エレメント及び改変されたMPZプロモーターを組み合わせたベクターで遺伝子編集効率が有意に増加したことを示す(
図7)。特に、これは、様々な最適化エレメントと組み合わせて使用した場合でも、IE200プロモーターが他の改変されたMPZプロモーターより優れた効率を示したことを示す。また、これは、改変されたMPZプロモーターが、デュアルAAV又はシングルAAVに適用可能な全ての種類のCas9をシュワン細胞で発現させることができることを実証する。
【0444】
実験例3-3。最適化されたさらなる発現系の具体例3:ポリTを除去したgRNA発現ベクター
【0445】
改変されたプロモーターのうち、効率が最も高くてサイズが最も小さいことからAAVとの互換性がより高いIE200を使用して、さらなる検証を実施した。特に、IE200を遺伝子編集用の他の最適化エレメントと組み合わせて使用した場合のさらなる改善効果を確認するための研究を実施した。U6プロモーターによって推進されるsgRNA発現を向上させるためにsgRNA足場からポリTを除去することによってsf改質ベクターなどのベクターを作成し、次いでこれらの実験のためにそのベクターをS16細胞にコトランスフェクトした。
【0446】
結果を
図4及び
図5に示す。
図4は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sf改質-sgRNA発現ベクターをS16細胞にコトランスフェクトした後の標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を検証した結果を示す(N=3-6)。
図5は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sf改質-sgRNA発現ベクターをRT4細胞にコトランスフェクトした後の標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を検証した結果を示す(N=3-6)。このとき、NTは非トランスフェクションを意味し;sMPZは小型MPZコアプロモーター(配列番号3)を意味し;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)を意味し;且つ、Sf改質はsgRNAバックボーンの足場改質を意味する。*、p<0.05 vs sMPZ(
図4及び
図5)又はsMPZ+sf改質(
図4);**、p<0.01 vs sMPZ(
図4及び
図5)又はsMPZ+sf改質(
図4);***、p<0.001 vs sMPZ+sf改質(
図4)。
【0447】
結果として、IE200プロモーターをsf改質ベクターと併用すると、様々な投与量条件下で遺伝子編集効率が更に増加することが確認された(
図4)。別の種類のラットシュワン細胞であるRT4細胞でも同様に、このさらなる効果が確認された(
図5)。
【0448】
実験例4。実験動物(ラット)における改変されたMPZプロモーターの効果
【0449】
更に、本発明者は、本開示のプロモーターがシュワン細胞に対してより特異的な効果を有するかどうかを動物実験を通じて確認しようと試みた。換言すると、静脈内に投与されたCRISPR組成物が肝臓のような組織を通過し、神経組織でより特異的な発現を示す可能性があるかどうかが確認された。
【0450】
麻酔薬で実験動物(SDラット)に麻酔をかけた後、反射症状をチェックして、その動物に麻酔がかかっているかどうかを確かめた。次に、麻酔にかかった動物を較正フレームに置いた。pmp22-TATA領域を標的とするsgRNA(表1のガイドRNA1)を発現させるベクターを、EFSプロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクター及びIE200プロモーターの制御下でSpCas9を発現させるベクターと共に、実験動物(ラット)の尾静脈からコトランスフェクトした。
【0451】
4週間後、動物を殺処分し、肝臓、シュワン細胞が集まる坐骨神経、及びシュワン細胞が集まる腰神経を採取した。その後、採取した組織又は細胞からゲノムDNAを調整し、遺伝子編集効率を試験した。
【0452】
結果を
図12及び
図13に示す。
図12は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをラットの尾静脈に注入した後の坐骨神経及び腰神経における標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を検証した結果を示す。このとき、EFSはEFSプロモーター(配列番号32)であり;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)であった。
図13は、pAAV-SpCas9-BHGA発現ベクター及びpAAV-U6-sgRNA発現ベクターをラットの尾静脈に注入した後の肝臓における標的とするpmp22-TATAの遺伝子編集効率を検証した結果を示す。このとき、EFSはEFSプロモーター(配列番号32)であり;IE200は改変されたプロモーター(配列番号9)であった。
【0453】
本発明者は、改変されたMPZプロモーターが神経細胞で目的タンパク質を特異的に発現させるかどうかを確認しようと試みた。特に、神経細胞以外の細胞のうち肝細胞を対照として使用して、神経細胞における特異的発現を確認した。これは、静脈内注射の場合、投与された物質のほとんどが全身投与システムで肝臓組織を通過せざるを得ないという事実を本発明者が考慮したからである。
【0454】
従って、実験例6ではベクターをラットの尾静脈から注入したので、注入されたベクターのほとんどが肝臓に移動するであろうと予想された。従って、神経細胞に対して特異的なプロモーターを使用した場合であっても肝臓におけるCas9発現及びインデル効率が十分であることが予想された。
【0455】
従って、本発明者は、肝臓細胞と比べて神経細胞における改変されたMPZプロモーターのインデル効率が他のプロモーターのインデル効率より高いかどうかを判断し、それによって本開示のプロモーターが神経細胞に対してより特異的であるかどうかを確認しようと試みた。このとき、全ての組織で高い発現率を有することが知られているEFSプロモーターを、改変されたMPZプロモーターと比較するためのプロモーターとして使用した。
【0456】
結果として、EFSプロモーターは、肝臓組織で45%近くの遺伝子編集効率(
図13)を示し、神経細胞でおよそ10%の遺伝子編集効率(
図12)を示した。換言すると、神経細胞は、肝臓細胞と比べて約5分の1の効果しか示さなかった。
【0457】
これに対して、本開示の改変されたMPZプロモーターであるIE200を使用すると、肝臓組織における遺伝子編集効率が約15%(
図13)であり、神経細胞における効率が約6%~8%(
図12)であった。すなわち、神経細胞は、肝細胞と比べて約半分の効果を示した。換言すると、これは、本開示の改変されたMPZプロモーターが、神経細胞でより特異的に目的タンパク質を発現させたことを意味する。
【0458】
これらの結果は、神経細胞に対して特異的に遺伝子編集が必要であるとき、他のプロモーターよりも、改変されたMPZプロモーターの使用が好ましいことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0459】
本開示は、シュワン細胞で特異的に機能する人工的に操作されたミニマルプロモーターに関する。人工的に操作されたミニマルプロモーターは、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ又はP0)のプロモーターに由来する。
【0460】
[項目1]
配列番号3;配列番号4;配列番号8;配列番号9;配列番号13;配列番号14;及び、配列番号3、4、8、9、13、及び14のうちの1つと少なくとも90%以上の相同性を有する配列
から選択される配列を有するシュワン細胞特異的プロモーター。
[項目2]
シュワン細胞特異的プロモーター;及び
目的遺伝子
を備え、
前記シュワン細胞特異的プロモーターは、配列番号3;配列番号4;配列番号8;配列番号9;配列番号13;配列番号14;及び、配列番号3、4、8、9、13、及び14のうちの1つと少なくとも90%以上の相同性を有する配列からなる群から選択される配列を有し、
前記目的遺伝子は、シュワン細胞で発現するように構成された遺伝子、又は、シュワン細胞で発現するように構成されたタンパク質をコードする核酸であり、
前記目的遺伝子は、前記シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されている、
シュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目3]
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターである、
項目2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目4]
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス(retroviral(retrovirus))ベクター、レンチウイルス(lentiviral(lentivirus))ベクター、アデノウイルス(adenoviral(adenovirus))ベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral(adeno-associated virus):AAV)ベクター、ワクシニアウイルス(vaccinia viral(vaccinia virus))ベクター、ポックスウイルス(poxviral(poxvirus))ベクター、及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral(herpes simplex virus))ベクターからなる群から選択される1つ又は複数のウイルスベクターである、
項目3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目5]
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、1つ又は複数の調節/制御エレメントを備える、
項目2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目6]
前記調節/制御エレメントは、エンハンサー、人工イントロン、ポリアデニル化シグナル、及び/又はWPREである、
項目5に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目7]
シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記ポリアデニル化シグナルを備え、
前記ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAである、
項目6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目8]
シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記人工イントロン及び前記WPREを備え、
前記人工イントロンは、MVMイントロンであり、
前記WPREは、WPRE3である、
項目6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目9]
シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記人工イントロン、前記WPRE、及び前記ポリアデニル化シグナルを備え、
前記人工イントロンは、MVMイントロンであり、
前記WPREは、WPRE3であり、
前記ポリアデニル化シグナルは、synpA又はSV40pAである、
項目6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目10]
前記目的遺伝子は、シュワン細胞で遺伝子を人工的に操作するために使用されるタンパク質をコードする核酸である、
項目2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目11]
遺伝子を人工的に操作するための前記タンパク質は、Casタンパク質である、
項目10に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目12]
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas12a1(Cpf1)タンパク質、又はCas12f1タンパク質である、
項目11に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目13]
前記Cas9タンパク質は、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)タンパク質、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)タンパク質、又はスタフィロコッカス・アウリクラーリスCas9(SauriCas9)タンパク質である、
項目12に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目14]
前記目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患を治療すること(の治療)に関連付けられた遺伝子である、
項目2に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目15]
前記シュワン細胞に関連する疾患を治療することに関連付けられた前記遺伝子は、Cx32(コネキシン32)遺伝子、SH3TC2(SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2)遺伝子、MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ)遺伝子、EGR2(初期増殖応答2)遺伝子、GDAP1(ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1)遺伝子、NDRG1(N-Myc下流調節1)遺伝子、又はPMP22(末梢ミエリンタンパク質22)遺伝子である、
項目14に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
[項目16]
項目10に記載の発現ベクターを備える組成物であって、
前記発現ベクターは、Cas9タンパク質をコードする核酸を有し、
前記組成物は更に、ガイドRNA又は前記ガイドRNAをコードする核酸を備える、
組成物。
[項目17]
前記ガイドRNAは、シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす遺伝子を標的とし、
前記シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす前記遺伝子は、Cx32(コネキシン32)遺伝子、SH3TC2(SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2)遺伝子、MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ)遺伝子、EGR2(初期増殖応答2)遺伝子、GDAP1(ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1)遺伝子、NDRG1(N-Myc下流調節1)遺伝子、又はPMP22(末梢ミエリンタンパク質22)遺伝子である、
項目16に記載の組成物。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4;配列番号8;配列番号9;
配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14
;配列番号15;及び、配列番号16から選択される
ヌクレオチド配列を
備えるシュワン細胞特異的プロモーター
であって、
前記シュワン細胞特異的プロモーターの長さは、200bp~500bpの範囲にある、
シュワン細胞特異的プロモーター。
【請求項2】
前記シュワン細胞特異的プロモーターの前記ヌクレオチド配列は、配列番号8;配列番号9;配列番号13;及び配列番号14から選択される配列である、
請求項1に記載のシュワン細胞特異的プロモーター。
【請求項3】
シュワン細胞特異的プロモーター;及び
目的遺伝子
を備え、
前記シュワン細胞特異的プロモーターは
、配列番号4;配列番号8;配列番号9;
配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14
;配列番号15;及び、配列番号16からなる群から選択される配列を
備え、
前記シュワン細胞特異的プロモーターの長さは、200bp~500bpの範囲にあり、
前記目的遺伝子は、シュワン細胞で発現するように構成され
ているか、又は、シュワン細胞で
遺伝子を操作することができるタンパク質をコードする核酸であり、
前記目的遺伝子は、前記シュワン細胞特異的プロモーターに機能可能に連結されている、
シュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項4】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターである、
請求項
3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項5】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは更に、1つ又は複数の調節
エレメントを備える、
請求項
3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項6】
前記調節
エレメントは、エンハンサー、人工イントロン、ポリアデニル化シグナル、及び
ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)からなる群から選択される1つ又は複数のエレメントである、
請求項5に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項7】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記ポリアデニル化シグナルを備え、
前記ポリアデニル化シグナルは、
合成ポリアデニル化(synpA)シグナル又はシミアンウイルス40ポリアデニル化(SV40pA)シグナルである、
請求項6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項8】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記人工イントロン及び前記WPREを備え、
前記人工イントロンは、
マウス微小ウイルス(MVM)イントロンであり、
前記WPREは、WPRE3である、
請求項6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項9】
前記シュワン細胞特異的発現ベクターは、前記人工イントロン、前記WPRE、及び前記ポリアデニル化シグナルを備え、
前記人工イントロンは、
マウス微小ウイルス(MVM)イントロンであり、
前記WPREは、WPRE3であり、
前記ポリアデニル化シグナルは、
合成ポリアデニル化(synpA)シグナル又は
シミアンウイルス40ポリアデニル化(SV40pA)シグナルである、
請求項6に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項10】
遺伝子を人工的に操作する
ことができる前記タンパク質は、Casタンパク質である、
請求項
3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項11】
前記目的遺伝子は、シュワン細胞に関連する疾患を治療すること
に関連付けられた遺伝子である、
請求項
3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項12】
前記シュワン細胞特異的プロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号8;配列番号9;配列番号13;及び配列番号14から選択される配列である、
請求項3に記載のシュワン細胞特異的発現ベクター。
【請求項13】
請求項10に記載の
シュワン細胞特異的発現ベクター
、及び、ガイドRNA、又は前記Casタンパク質と複合体を形成することができる前記ガイドRNAをコードする核酸を備える組成物
。
【請求項14】
前記ガイドRNAは、シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす遺伝子を標的とし、
前記シュワン細胞に関連する疾患を引き起こす前記遺伝子は、Cx32(コネキシン32)遺伝子、SH3TC2(SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2)遺伝子、MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ)遺伝子、EGR2(初期増殖応答2)遺伝子、GDAP1(ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1)遺伝子、NDRG1(N-Myc下流調節1)遺伝子、又はPMP22(末梢ミエリンタンパク質22)遺伝子である、
請求項
13に記載の組成物。
【国際調査報告】