(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】真空グリッパ、グリッパへの漏れを検知する方法ならびにグリッパを使用した自動化されたプロセスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20250117BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20250117BHJP
H01M 10/04 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
B25J15/06 A
H01L21/68 B
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542072
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2022085629
(87)【国際公開番号】W WO2023138841
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500258868
【氏名又は名称】ピアブ アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ファーク,アンダース
(72)【発明者】
【氏名】ノードストロム,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
5H028
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707FS01
3C707KV15
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3C707MT09
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5F131AA02
5F131AA10
5F131CA18
5F131DA33
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5F131JA23
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5F131KB43
5F131KB45
5H028BB18
(57)【要約】
漏れ検知が強化された吸引領域を有する真空グリッパ、そのような真空グリッパ内への周囲の流体の漏れを検知する方法、グリッパ内への周囲の流体の漏れを検知する方法、およびシート形成された対象物を真空グリッパと係合させることを含む自動化された動作が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート形成された対象物(100)をつかみ、
内部1次真空チャンバ(25)と、
前記1次真空チャンバ(25)を真空源(17)に接続するための開口部(15)と、
グリッパ本体内の圧力を感知するように構成された圧力センサ(33)に接続するための開口部(30)と、
シート形成された対象物(100)と係合するための吸引領域(A2,A1)と、
前記吸引領域(A1,A2)に設けられた少なくとも1つの吸引孔(3)と
を有する本体(20)を備える真空グリッパ(10)において
前記本体(20)が、流量制限部(37)を介して前記1次真空チャンバ(25)と流体連通している2次内部真空チャンバ(35)をさらに備え、
前記少なくとも1つの吸引孔(3)が、前記2次内部真空チャンバ(35)の吸引領域(A2)に設けられ、
前記流量制限部(37)の断面積のサイズが、前記少なくとも1つの吸引孔(3)のうちの1つの穴の断面積のサイズと同様であり、圧力センサ(33)に接続するための前記開口部(30)が、前記2次内部真空チャンバ(35)内に設けられる
ことを特徴とする
真空グリッパ(10)。
【請求項2】
前記流量制限部(37)の断面積のサイズが、前記少なくとも1つの吸引孔(3)のうちの1つの穴の断面積のサイズ以下である、請求項1に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項3】
前記真空源(17)がエジェクタであり、好ましくは前記グリッパ本体(20)に取り付けられている、請求項1または2に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項4】
前記2次内部真空チャンバ(35)および前記1次真空チャンバ(25)と流体連通する流路(38)を有し、前記流路が、前記吸引領域(A1およびA2)の表面にそれぞれ設けられた2つの開口部(39)を有し、前記流路(38)が、前記開口部(39)および前記流路(38)の封止時に流量制限部(37)を形成することができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項5】
前記吸引領域(A1,A2)を本質的に覆う圧縮性発泡シート(50)をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項6】
前記圧縮性発泡シート(50)が、前記2次内部真空チャンバ(35)の前記吸引領域(A2)の1つ以上の穴(3)に対応する1つ以上の穴(53)を有し、好ましくは、前記発泡シート(50)が、交換可能であるように接着剤によって前記吸引領域(A1,A2)に取り付けられる、請求項5に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項7】
前記発泡シート(50)を本質的に覆い、前記2次内部真空チャンバ(35)の前記吸引領域(A2)の穴(3)に対応する1つ以上の穴(63)を有する補強シート(60)をさらに備え、好ましくは、前記補強シートが、交換可能であるように接着剤によって前記発泡シート(50)に取り付けられる、請求項5または6に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項8】
前記多孔性発泡シート(50)が、所望の吸引孔(3)および/または開口部(39)を覆って密封するための接着性の非浸透性裏材(65)を有する、請求項5または6に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項9】
前記1次真空チャンバ(25)の前記吸引領域(A1)が、多数の吸引孔(3)を有し、好ましくは、前記穴が、前記1次真空チャンバ(25)の前記吸引領域(A1)にわたって均一に分布している、請求項1から8のいずれか一項に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項10】
前記2次内部真空チャンバ(35)の前記吸引領域(A2)が、多数の吸引孔(3)を有し、好ましくは、前記穴が、前記2次内部真空チャンバ(35)の前記吸引領域(A2)にわたって均一に分布している、請求項1から9のいずれか一項に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項11】
前記流量制限部(37)の断面積のサイズが、前記2次内部真空チャンバ(35)の前記吸引領域(A2)にわたって分布する前記多数の吸引孔(3)のうちの最小の穴(3)の断面積のサイズ以下である、請求項10に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項12】
各々が流量制限部(37)を介して前記1次真空チャンバ(25)に接続され、各々が少なくとも1つの吸引孔(3)を有する吸引領域(A2)を有する1つ以上の追加の2次内部真空チャンバ(35)を備え、前記流量制限部(37)の断面積が、前記それぞれの吸引領域(A2)に設けられた前記少なくとも1つの吸引孔(3)のうちの1つの穴(3)の断面積に相当する、請求項1から11のいずれか一項に記載の真空グリッパ(10)。
【請求項13】
シート形成された対象物(100)をつかむための真空グリッパ(10)内への周囲の流体の漏れを検知する方法であって、
シート形成された対象物(100)を真空グリッパ(10)と係合させるステップと、
前記シート形成された対象物(100)が前記真空グリッパ(10)と係合している間に、前記グリッパ(10)の内部真空チャンバ(35)内の圧力を、前記内部真空チャンバ(35)に接続された圧力センサ(33)を使用して監視するステップと、
監視された前記圧力を所定の所望の圧力と比較するステップと、
所定の許容可能な最大圧力よりも高い監視圧力を確定するステップと
を含む方法において、
前記グリッパ(10)が、1次内部真空チャンバ(25)と2次内部真空チャンバ(35)とを備え、前記チャンバが、流量制限部(37)を介して互いに流体接続され、監視された前記圧力が、前記2次内部真空チャンバ(35)内の圧力であることを特徴とする、
方法。
【請求項14】
前記所定の許容可能な最大圧力よりも高いと前記グリッパ(10)の前記2次内部真空チャンバ(35)内の監視された圧力が確定された場合、前記方法が中断される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
多数のシート(100)を互いに積み重ねる積載動作において、前記積載動作が、好ましくは自動化されている、請求項1に記載のグリッパの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空グリッパに関し、より詳細には、漏れ検知が強化された吸引領域を有する真空グリッパ、そのような真空グリッパ内への周囲の流体の漏れを検知する方法、および例えば積載動作などシート形成された対象物を真空グリッパと係合させることを含む自動化されたプロセスにおける真空グリッパの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
吸引グリッパは、真空グリッパとも呼ばれ、当分野で知られており、例えば、基本的に平坦な表面を有するシート形成された対象物を持ち上げるために従来から使用されている。1つのタイプの吸引グリッパは、真空源に接続された内部真空チャンバと処理されるべき対象物と係合するその吸引領域内にいくつかの吸引孔とを有するハウジングを備え、これらの穴は、グリッパ内の真空チャンバと流体接続している。
【0003】
グリッパによって係合されるべき対象物がグリッパの吸着面と適切に位置合わせされない場合に問題が生じる可能性がある。そのような場合、特に自動化された動作では、対象物は、意図しない向きで、以前に放出された対象物上に積み重ねられるなどして放出される可能性がある。別の問題は、グリッパによって係合されるべき対象物の一部または領域がしわをつけられるかまたは折り畳まれている場合に生じ得る。これは、例えば、結果として得られた積層内に不均一な積層および/または望ましくない隙間をもたらす可能性がある。
【0004】
対象物の不正確な位置合わせ、またはしわがつけられたまたは折り畳まれた対象物の領域を検知できることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題の一方または両方を克服する真空グリッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、請求項1のプリアンブルの、シート形成された対象物100をつかみ、内部1次真空チャンバ25と内部1次真空チャンバ25を真空源17に接続するための開口部15とグリッパ本体20内の圧力を感知するように構成された圧力センサ33に接続するための開口部30とシート形成された対象物100と係合するための吸引領域A2、A1と吸引領域A1、A2に設けられた少なくとも1つの吸引孔3とを有する本体20を備える、真空グリッパ10について、上記の目的は、本体20が流量制限部37を介して内部1次真空チャンバ25と流体連通している2次内部真空チャンバ35をさらに備え、前記少なくとも1つの吸引孔3が2次内部真空チャンバ35の吸引領域A2に設けられ、流量制限部37の断面積のサイズが少なくとも1つの穴3のうちの1つの穴の断面積のサイズと同様であり、圧力センサ33に接続するための開口部30が2次内部真空チャンバ35内に設けられるということで特徴付けられた特徴によって達成されている。したがって、圧力センサ33は、グリッパ本体20の2次内部真空チャンバ35内の圧力を感知するように構成される。
【0007】
したがって、一態様では、本発明は、上述の真空グリッパに関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、シート形成された対象物100をつかむための真空グリッパ10内への周囲の流体の漏れを検知する方法であって、シート形成された対象物100を真空グリッパ10と係合させるステップと、シート形成された対象物100が真空グリッパ10と係合している間に、グリッパ10の内部真空チャンバ35内の圧力を内部真空チャンバ35に接続された圧力センサ33を使用して監視するステップと、監視された圧力を所定の所望の圧力と比較するステップと、所定の許容可能な最大圧力よりも高い監視圧力を確定するステップとを含み、グリッパ10が、1次内部真空チャンバ25と、2次内部真空チャンバ35とを備え、それらチャンバが、流量制限部37を介して互いに流体接続され、監視された圧力が、2次内部真空チャンバ35内の圧力である、方法に関する。
【0009】
好ましい実施形態では、所定の許容可能な最大圧力よりも高いとグリッパ10の2次内部真空チャンバ35内の監視された圧力が確定された場合、本発明の方法は中断される。
【0010】
本発明の方法および本発明の真空グリッパは、好ましくは、多数のシート形成された対象物100を互いの上に積層する用途など、シート形成された対象物100を係合させることを含む自動化された動作において使用することができる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0012】
本明細書で使用される「流量制限部」という用語は、1次真空チャンバ25を2次真空チャンバ35と流体接続する開放通路を指すことを意図している。1次真空チャンバ25を2次真空チャンバ35と流体接続するために、開放通路は常に開いているべきであり、通路を閉じるためなどの可動部品を備えてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】吸引領域A1、A2を有するグリッパ本体20を備える本発明によるグリッパ10の実施形態を示す。
図3Aに示すように、
図1のグリッパは、多数の吸引孔3が設けられた1次真空チャンバ25と、多数の吸引孔3が各々設けられた2つの2次真空チャンバ35とを有する。
図1に示すグリッパはまた、エジェクタ17と、圧力センサ33に接続するための2つの開口部30とを備える。
図1では、1つの接続部および圧力センサ33のみが示されており、もう一方の接続部および圧力センサ33は、説明のために取り除かれている。
図1はまた、多数の穴53および非浸透性接着裏材65を有する圧縮性発泡シート50と、このシートはグリッパ10の吸引領域A1、A2に取り付けることができ、多数の穴63を有する補強シート60と、このシートは圧縮性発泡シート50に取り付けることができ、グリッパによって係合される2つの高感度部70を有するシート形成された対象物100とを示す。
【
図2】
図1のグリッパのエジェクタ17に接続された開口部15を有する、
図1のグリッパ10のグリッパ本体20を示す。
【
図3A】
図2のグリッパ本体20の断面A-Aに沿った図を示し、多数の吸引孔3が設けられた1次真空チャンバ25と、多数の吸引孔3が各々設けられた2つの2次真空チャンバ35とを見ることができる。
図2に示す開口部15は1次真空チャンバ25に入り、
図2に示す開口部30はそれぞれの2次真空チャンバ35に入る。
【
図3B】
図3Aに示すグリッパ本体20の断面B-Bに沿った断面図を示す。2つの2次チャンバ35の排気中に、流量制限部37ならびに穴39および流路38をそれぞれ通る流体の流れは、
図3Bに矢印で示されている。
【
図4】吸引領域A1、A2を示す、
図2に示すグリッパ本体20の底面図である。
図4はまた、開口部39および流路38の詳細
図Cを示しており、関連する2次チャンバ35の排気中に、流路38を介して穴39を通って流れる流体の流れは、断面B-Bに沿った図において実線矢印で示されている。
【
図5】
図4のグリッパ本体20の断面C-Cに沿った図および詳細
図Dを示し、
図5の左2次チャンバ35の排気中の流体の流れが実線矢印で示されている。
【
図6】グリッパ本体20、圧縮性発泡シート50、および補強シート60の下方からの斜視図である。
【
図7】グリッパ10が対象物100を係合した底面図を示し、対象物の高感度部70は、補強シート60に設けられた穴63のうちの1つを覆わないように折り畳まれており、補強シートの穴63は、グリッパ本体の下にある吸引領域A2に設けられた対応する穴3と位置合わせされている。周囲の流体は、補強シート60のこの覆われていない穴63から流れ、穴63から発泡シート50の対応する下にある穴53にさらに流入し、穴53からグリッパ本体の吸引領域A2の下にある穴3にさらに流入し、それによって前記穴3が設けられている2次真空チャンバ35に入る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、真空グリッパ10内の1次真空チャンバ25から2次真空チャンバ35を分離し、流量制限部37によってそれぞれ2つの分離された真空チャンバ間の流体連通を制限することに基づいており、1次真空チャンバは真空源に接続されている。2次真空チャンバ35と1次真空チャンバ25との間の流体連通は、流量制限部37を介した連通に制限される。2次真空チャンバに対応する吸引領域A2は、1つ以上の吸引孔3を有する。流量制限部の断面積を適切に選択することにより、グリッパの動作中の2次真空チャンバ35内の圧力は、単に吸引領域A2の単一の吸引孔3が被係合対象物100によって覆われていないにすぎない場合でも1次真空チャンバ内の圧力よりも著しく高くなる。2次真空チャンバ35に接続され、前記チャンバ内の圧力を感知するように構成された圧力センサ33は、2次真空チャンバ35内の高い圧力を感知する。流量制限部の断面積は、一般に、少なくとも1つの穴3のうちの1つの穴の断面積の±50%、典型的には±25%、好ましくは±10%の範囲内にあると考えられる。
【0015】
本発明の吸引領域A2は、好ましくは、対象物の取り扱い中に屈曲性を増強するのに適した部分などの対象物100の高感度部70と接触し係合するために使用される。対象物100は、複数のそのような高感度部70を有する。したがって、一実施形態では、本発明のグリッパは複数の吸引領域A2を有し、そのような追加の吸引領域A2の各々は、対応する追加の流量制限部37を介して1次真空チャンバ25と連通する追加の2次真空チャンバ35に対応する。
【0016】
本発明のグリッパ10の一実施形態では、1次真空チャンバ25は、吸引領域A1に1つ以上の吸引孔3を有する。そのような実施形態では、吸引領域A1が、通常、グリッパに吸引力の大部分を供給する。したがって、そのような実施形態では、吸引領域A1は、吸引領域A2よりも大きいことが多い。また、そのような実施形態では、吸引領域A2に設けられた吸引孔3の断面積は、通常、吸引領域A1に設けられた吸引孔3の断面積よりも小さい。
【0017】
代替的な実施形態では、グリッパ10の1次真空チャンバ25は吸引孔3を有さず、代わりに、真空源17が接続されている1次真空チャンバは、ある数の2次真空チャンバ35と相当する数の流量制限部37を介して流体接続しているだけである。このような実施形態では、グリッパの吸引領域は、2次真空チャンバ35の数に対応した数の吸引領域A2を備えるだけである。
【0018】
原則として、所与の内部2次真空チャンバ35に対して、とりわけ、より信頼性の高い動作および漏れの検知に対するより良好な感度のために、複数の流量制限部37が設けられ得るが、各1つの内部2次真空チャンバ35に対してただ1つの流量制限部37が設けられることが好ましい。
【0019】
内部2次真空チャンバ35の数は、1次真空チャンバ25の数と比較して全体の容積が大きくなりすぎない限り原則として限定されず、圧力センサの数を適度に少なく保つことができる。例えば、内部2次真空チャンバ35の数は、2、3、4、5、6、7、8または9チャンバなど、1~10の範囲内が考えられる。一般に、1つ、2つまたは3つの内部2次真空チャンバ35を有する実施形態が好ましい。
【0020】
各内部2次真空チャンバ35に対して、前記内部2次真空チャンバ内の圧力を感知するために、圧力センサ33が設けられている。例えば冗長性のために、任意の所与の内部2次真空チャンバに複数の圧力センサ33を設けることができるが、本発明の真空グリッパ10の複雑さを低減するために、各内部2次真空チャンバ35にただ1つの圧力センサが設けられることが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態では、グリッパは、2次内部真空チャンバ35および1次真空チャンバ25と流体連通している流路38を有する。流路は、グリッパの吸引領域の表面に設けられた2つの開口部39を有し、その開口部39の一方は2次内部チャンバ35に入り、開口部39の他方は1次真空チャンバ25に入る。閉鎖手段によって開口部39および流路38を閉鎖すると、流路38および閉鎖手段を備えた流量制限部37が形成される。開口部39の閉鎖は、例えば、不浸透性部分が開口部39を覆うように配置することができる不浸透性部分を有する接着シートによって達成することができる。そのような流路38および穴39は、
図3、
図4および
図5により詳細に示されている。流路38および穴39を有するそのような実施形態は、積層造形によって製造されることに特に適している。また、そのような実施形態は、流路38、および場合によっては穴39を単に拡大することなどによって、流量制限部37のその後の調整をより容易にすることが可能となる。また、そのような制限部37は、単に閉鎖手段を取り外すことならびに流路38および穴39を検査することによって、例えば制限部37の汚染または目詰まりの可能性のための検査および清掃をより容易にすることが可能となる。流路38は、1つ以上の交換可能な部分(図示せず)を備えることができ、その1つ以上の部分を特定のより小さいまたはより大きい断面積を有する別の部分と交換するだけで流路38の断面積を調整することを可能にする。
【0022】
非浸透性接着シート65は、例えば、グリッパをわずかに異なる形状の対象物と係合するように適合させるため、および/またはグリッパの吸引領域の表面に設けられた1つ以上の開口部39を閉鎖するためなど、グリッパの全体的な吸引領域に設けられた吸引孔3のパターンを変更するために、吸引面の所望の穴3を閉鎖するための手段として使用することができる。理解されるように、そのようなシートは、グリッパの所望の有効な穴3に対応する開口部を有する。
【0023】
圧縮性発泡シート50は、例えば、グリッパの特定の限定された可撓性を実現するために、例えば、取り扱い対象の水平方向に向けられた対象物とグリッパの水平方向の位置合わせにおける小さな非平行の不完全さに対する交差を提供するために、および/または、一般に反応しやすい対象物100および/または反応しやすい表面を有する対象物100がグリッパ10によって取り扱われる場合などに、対象物100とのより扱いやすく柔軟で曲げやすい接触を提供するために、グリッパと共に使用することができる。発泡シート50の取り付けおよび交換の容易さを向上させるために、前記シートは、好ましくは接着層を備える。接着層は、発泡シート50の不浸透性裏材65上に設けられることが好ましい。発泡シート50の不浸透性裏材65は、好ましくは、上述の接着シートとして機能することができる。発泡シート50は、2次内部真空チャンバ35の吸引領域A2の1つ以上の穴3に対応する1つ以上の穴53を有する。また、吸引領域A1が存在する場合、発泡シート50は、1次内部真空チャンバ25の吸引領域A1の1つ以上の穴3に対応する1つ以上の穴53を有する。圧縮性発泡シートの発泡体の材料は重要ではない。適切な材料は、例えばEPDMなどのエチレンプロピレンゴムである。発泡シート50の厚さおよび材料は、対象物100と係合するときに実質的に圧縮され得るように選択されるべきである。
【0024】
圧縮性発泡シート50と共に、好ましくは補強シート60が使用される。補強シートは、基本的に発泡シートを覆うべきである。補強シートは、2次内部真空チャンバ35の吸引領域A2の穴3に対応する1つ以上の穴63を有する。好ましくは、補強シートは、例えば交換可能であるように、接着層によって発泡シート50に取り付けられる。補強シート60の材料は重要ではなく、取り扱う対象物の材料と適合するように選択することができる。一例として、補強シートに一般的に適した材料はポリカーボネート(PC)である。
【0025】
補強シート60はまた、吸引領域A2内の所望の吸引孔3および対応する穴53を閉鎖するために使用することができる。それにより、1つの補強シート60を吸引領域A2内の他の所望の吸引孔3および対応する穴53を閉鎖する別の補強シート60と交換することによって、本発明のグリッパは、わずかに異なる幾何学的形状を有する、および/または高感度部70の異なる位置を有する対象物をつかむように都合よく適応させることができる。
【0026】
好ましい実施形態では、グリッパ本体20は、吸引領域A1、A2の周りに隆起周辺部(図示せず)、吸引領域A1、A2の周辺部に沿った隆起案内要素(図示せず)を有するか、または吸引領域A1、A2は、グリッパ本体20の底部の凹部(図示せず)に収容されて、前記凹部に圧縮性発泡シート50および補強シート60を収容することができる。そのような隆起周辺部、隆起案内要素、または凹部により、圧縮性発泡シート50および補強シート60のグリッパ本体20への位置合わせをより容易にすることが可能となる。
【0027】
原則として、所与の単一の2次内部真空チャンバ35に複数の流量制限部37を使用することができる。しかしながら、このような実施形態は好ましくない。
【0028】
本発明の真空グリッパ10は、好ましくは一点の真空接続部15を有するだけである。
【0029】
真空源17として、好ましくは、
図1に示すようなエジェクタが使用される。エジェクタが真空源として使用される場合、そのようなエジェクタは、好ましくは、グリッパ本体20などグリッパ10に取り付けられる。インジェクタなどの分散した真空源を使用することにより、グリッパへの真空の開始と終了は、中央真空源が使用されているときと比較してはるかに迅速に達成することができる。また、グリッパに近い分散した真空源を使用することによって、真空チューブが本質的に必要とされないため、排気される体積が減少する。
【0030】
好ましい実施形態では、圧力センサ33は、
図1に示すような真空スイッチの形態をとる。真空スイッチは、真空スイッチが接続されている2次内部真空チャンバ35内の圧力が所定の許容可能な最大圧力よりも高い場合に信号を供給するように構成されることが好ましい。このようにして生成された信号は、周囲の流体の前記2次内部真空チャンバ35内への漏れが検知されたことに対応する。
【0031】
2次内部真空チャンバ35は比較的小さくしておくことが好ましいが、それは、漏れがある場合、大きな容積を有するチャンバよりも小さな容積を有するチャンバで圧力がより迅速かつより明瞭に影響を受けるからである。これにより、1つの穴3を通り前記チャンバに流体が漏れることによる2次内部真空チャンバ35内の圧力変化をより確実に検知することができる。
【0032】
本発明のグリッパ10は、シート100、特に高感度部70を有するシートなどのシート形成された対象物の取り扱いに適している。対象物100の高感度部70は、例えば、対象物100の残りの部分の厚さと比較して厚さが減少した部分であってもよい。一例として、約5~15μmの範囲内で減少した厚さは、本発明のグリッパでうまく処理されている。本発明のグリッパは、好ましくは自動化されたプロセスにおいて、シートを互いに積み重ねて使用するのに特に適している。シートは、例えば、電極、電極アセンブリ、膜電極アセンブリの一部を形成することができる。
【0033】
本発明のグリッパによって取り扱うことができるシート形成された対象物100の他の例は、電池絶縁膜などの電気絶縁膜または箔、炭素繊維シート、例えばソーラーパネル用のウェハのシリコンウェハまたはシート、および薄いラベルである。
【0034】
シート形成された対象物100は、通常可撓性がある。
【0035】
シート形成された対象物100は、典型的には、最大2mm、好ましくは1mm以下、例えば5μm~500μmの厚さを有することができる。
【0036】
シート形成された対象物100は、プラスチックもしくはゴムなどのポリマー材料、または金属材料、またはそれらの組み合わせで作ることができる。
【0037】
例えば自動化された動作において2次内部真空チャンバ35内で高すぎる圧力が検知された場合、これは典型的には、シート形成された対象物100の高感度部70がグリッパの吸引領域A2と正しく位置合わせされていないこと、および/またはグリッパと現在係合しているシート形成された対象物100の高感度部70にしわまたは折り畳みが存在すること、または高感度部70の角などの部分が、周囲の流体により対象物100を移動させる間に周囲の流体、典型的には周囲空気の相対的な作用などによって、対象物100の取り扱い中に曲げられる可能性があるため、
図7に示すように、吸引面A2の1つ以上の穴3が高感度部70によってもはや覆われないことに起因し得る。2次内部真空チャンバ35内で高すぎる圧力が検知されると、自動化された動作は停止されることが好ましい。自動化された動作が停止されたとき、オペレータは、正しく位置合わせされていない、しわがついた、折り畳まれた、または他の欠陥のあるシートを都合よく取り除き、その後、自動化されたプロセスを再開または継続することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 真空グリッパ
100 係合されるシート形成された対象物
20 真空グリッパ本体
25 内部1次真空チャンバ
15 1次真空チャンバを真空に接続するための開口部
17 真空源
30 圧力センサに接続するための開口部
33 圧力センサ
A2 2次内部真空チャンバの吸引領域
A1 1次真空チャンバの吸引領域
3 吸引孔
35 2次内部真空チャンバ
37 流量制限部
38 流路
39 流路への吸引領域の開口部
50 圧縮性発泡シート
53 (発泡シート50の)1つ以上の穴
60 補強シート
63 (補強シート60の)1つ以上の穴
65 非浸透性裏材
70 シート形成された対象物100の高感度部
【国際調査報告】