(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】非水電解質、二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20250117BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20250117BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20250117BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250117BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542086
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2022106063
(87)【国際公開番号】W WO2024011611
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】郭潔
(72)【発明者】
【氏名】呉則利
(72)【発明者】
【氏名】韓昌隆
(72)【発明者】
【氏名】王冠
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本願は、非水電解質、二次電池及び電力消費装置を提供する。前記非水電解質は、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類を含み、ホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、A1%であり、リン含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、A2%であり、硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、A3%であり、非水電解質は、0<A1+A2+A3≦3であることを満たす。本願は、二次電池のサイクル性能及び動力学的性能を改善することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類を含む非水電解質であって、
前記ホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、A1%であり、
前記リン含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、A2%であり、
前記硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、A3%であり、
前記非水電解質は、0<A1+A2+A3≦3であり、選択可能に0.01≦A1+A2+A3≦2であることを満たす、
非水電解質。
【請求項2】
前記非水電解質は、条件(1)乃至条件(3)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の非水電解質。
(1)0<A1≦2.4である。
(2)0<A2≦2.1である。
(3)0<A3≦2.1である。
【請求項3】
前記ホウ素含有リチウム塩添加剤は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOB、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF
4及びリチウムビスオキサレートボレートLiBOBのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は
前記リン含有リチウム塩添加剤は、ジフルオロリン酸リチウムLiPO
2F
2、フルオロリン酸リチウムLi
2PO
3F及びリン酸リチウムLi
3PO
4のうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は
前記硫黄含有リチウム塩添加剤は、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO
3、硫酸リチウムLi
2SO
4及びスルファミン酸リチウムLiSO
3NH
2のうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1又は2に記載の非水電解質。
【請求項4】
前記非水電解質は、負極活物質の表面に界面膜を形成するように構成される負極成膜添加剤を更に含み、
前記負極成膜添加剤の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、B%であり、
前記非水電解質は、2≦B/(A1+A2+A3)≦60であり、選択可能に、3≦B/(A1+A2+A3)≦50であることを満たす、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水電解質。
【請求項5】
前記負極成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤及び/又は非ガス状成膜添加剤を含み、
選択可能に、前記負極成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤及び非ガス状成膜添加剤を含み、
前記ガス状成膜添加剤の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、C%であり、
前記非ガス状成膜添加剤の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、D%であり、
前記非水電解質は、0.005≦C
*D≦20であり、選択可能に0.01≦C
*D≦15であることを満たす、
請求項4に記載の非水電解質。
【請求項6】
前記ガス状成膜添加剤は、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、二酸化窒素、三酸化二窒素、三酸化リン及び五酸化リンのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記ガス状成膜添加剤は、一酸化炭素及び二酸化炭素を含み、
前記一酸化炭素の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、C1%であり、
前記二酸化炭素の質量百分率は、前記非水電解質の総質量に基づいて、C2%であり、
前記非水電解質は、0.01≦C2/C1≦60であり、選択可能に0.1≦C2/C1≦40であることを満たす、
請求項5に記載の非水電解質。
【請求項7】
10
-6≦C1≦0.1であり、及び/又は10
-6≦C2≦0.5である、請求項6に記載の非水電解質。
【請求項8】
前記非ガス状成膜添加剤は、炭酸エステル類添加剤、硫酸エステル類添加剤及び亜硫酸エステル類添加剤のうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記炭酸エステル類添加剤は、環状炭酸エステル類添加剤及び/又は線状炭酸エステル類添加剤を含み、更に、前記環状炭酸エステル類添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、前記線状炭酸エステル類添加剤は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートVAのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記硫酸エステル類添加剤は、環状スルホン酸エステル類添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル類添加剤を含み、更に、前記環状スルホン酸エステル類添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1種類又は複数種類を含み、前記炭化水素基硫酸エステル類添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能に、前記亜硫酸エステル類添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の非水電解質。
【請求項9】
0<D≦7である、
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の非水電解質。
【請求項10】
正極活物質を含む正極シートと、
負極活物質を含む負極シートと、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の非水電解質と、を備える、
二次電池。
【請求項11】
前記正極活物質の分子式は、LiNi
xCo
yM
1-x-yであり、分子式において、MはMn、Fe、Mg、Al、Cu及びTiのうちの1種類又は複数種類を示し、x≧0.5、0≦y≦0.2、x+y≦1である、
請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の二次電池を備える、
電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池の分野に関し、特に、非水電解質、二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、容量が高く、寿命が長いなどの特性を有するため、電子機器、例えば、携帯電話、ノートパソコン、電動スクータ、電気自動車、電動飛行機、電気船舶、電動玩具自動車、電動玩具船舶、電動玩具飛行機、電動工具などに広く応用されている。
【0003】
電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、二次電池の性能への要求もますます厳しくなっている。二次電池の性能を向上させるために、二次電池内の材料、例えば電解質を最適化することが一般的である。電解質は、二次電池における金属イオンの伝導媒体として、二次電池の性能に対して無視できない影響を有する。
【0004】
しかしながら、現在、改良された電解質が二次電池に応用される場合、二次電池は使用過程においてサイクル性能と動力学的性能とを同時に改善することができない。
【発明の概要】
【0005】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非水電解質、二次電池及び電力消費装置を提供することにある。
【0006】
本願の第1の態様は、二次電池用の非水電解質を提供し、前記非水電解質は、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類を含み、ホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、A1%であり、リン含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、A2%であり、硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、A3%であり、非水電解質は、0<A1+A2+A3≦3であり、選択可能に0.01≦A1+A2+A3≦2であることを満たす。
【0007】
これにより、本願は、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記式を満たすように制御されることにより、ホウ素含有リチウム塩添加剤及びリン含有リチウム塩添加剤が共にCEI膜の形成に関与でき、CEI膜の構造組成が豊富であり、その膜層が緻密で均一であり、正極活物質に対して良好な保護作用を奏することができ、且つ電解質の分解を効果的に低減し、電解質の性能が安定することを保証して、二次電池のサイクル安定性を向上させ;また、CEI膜の界面インピーダンスが相対的に低いため、二次電池の動力学的性能の向上に有利である。ホウ素含有リチウム塩添加剤と硫黄含有リチウム塩添加剤との協同作用により、ホウ素含有リチウム塩添加剤は、正極集電体に対して不動態化作用を果たし、硫黄含有リチウム塩添加剤による正極集電体への腐食のリスクを低減し、これにより、二次電池のサイクル安定性を更に改善することができる。ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類の協同作用により、電解液の導電率を改善して、二次電池の動力学的性能を更に改善することができる。また、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類の協同作用により、負極活物質表面にSEI膜を共に形成することができ、SEI膜の構造組成が豊富であり、その膜層が緻密で均一であり、負極活物質に対して保護作用を効果的に果たし、且つ、SEI膜の界面インピーダンスが相対的に低いため、二次電池の動力学的性能を効果的に向上させることができる。
【0008】
任意の実施形態において、非水電解質は、条件(1)乃至条件(3)のうちの少なくとも1つを満たす。(1)0<A1≦2.4である。(2)0<A2≦2.1である。(3)0<A3≦2.1である。ホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、ホウ素含有リチウム塩添加剤が正極活物質及び/又は負極活物質の表面に界面膜を十分に形成することを保証し、これにより、正極活物質及び/又は負極活物質に対して良好な保護を行い、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。リン含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、リン含有リチウム塩添加剤が正極活物質及び/又は負極活物質の表面に界面膜を十分に形成することを保証して、正極活物質及び/又は負極活物質に対して良好な保護を行い、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。硫黄含有リチウム塩添加剤の含有量が上記範囲にあると、電解液の安定性を確保することができる。
【0009】
任意の実施形態において、ホウ素含有リチウム塩添加剤は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOB、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4及びリチウムビスオキサレートボレートLiBOBのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、リン含有リチウム塩添加剤は、ジフルオロリン酸リチウムLiPO2F2、フルオロリン酸リチウムLi2PO3F及びリン酸リチウムLi3PO4のうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、硫黄含有リチウム塩添加剤は、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO3、硫酸リチウムLi2SO4及びスルファミン酸リチウムLiSO3NH2のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0010】
任意の実施形態において、非水電解質は、負極活物質の表面に界面膜を形成するように構成される負極成膜添加剤を更に含み、負極成膜添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、B%であり、非水電解質は、2≦B/(A1+A2+A3)≦60であり、選択可能に、3≦B/(A1+A2+A3)≦50であることを満たす。
【0011】
これにより、本願のホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有添加剤は、共に作用することで、一方では負極成膜添加剤と共にSEI膜を形成し、SEI膜の構造組成及びインピーダンスを改善し、二次電池のサイクル性能を向上させ、他方では正極成膜添加剤として正極活物質を保護し、負極成膜添加剤と協同して二次電池の界面特性を改善して、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0012】
任意の実施形態において、負極成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤及び/又は非ガス状成膜添加剤を含み、選択可能に、負極成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤及び非ガス状成膜添加剤を含み、ガス状成膜添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、C%であり、非ガス状成膜添加剤の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、D%であり、非水電解質は、0.005≦C*D≦20であり、選択可能に0.01≦C*D≦15であることを満たす。
【0013】
これにより、本願は、ガス状成膜添加剤及び非ガス状成膜添加剤の質量百分率が上記範囲にあるように制御することにより、SEI膜の構造を更に改善して、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0014】
任意の実施形態において、ガス状成膜添加剤は、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、二酸化窒素、三酸化二窒素、三酸化リン及び五酸化リンのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、ガス状成膜添加剤は、一酸化炭素及び二酸化炭素を含み、一酸化炭素の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、C1%であり、二酸化炭素の質量百分率は、非水電解質の総質量に基づいて、C2%であり、非水電解質は、0.01≦C2/C1≦60であり、選択可能に0.1≦C2/C1≦40であることを満たす。
【0015】
これにより、本願は、一酸化炭素と二酸化炭素の質量百分率の比が上記範囲にあるように制御することにより、SEI膜の組成構造を効果的に改善し、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。
【0016】
任意の実施形態において、10-6≦C1≦0.1であり、及び/又は10-6≦C2≦0.5である。
【0017】
任意の実施形態において、非ガス状成膜添加剤は、炭酸エステル類添加剤、硫酸エステル類添加剤及び亜硫酸エステル類添加剤のうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、炭酸エステル類添加剤は、環状炭酸エステル類添加剤及び/又は線状炭酸エステル類添加剤を含み、更に、環状炭酸エステル類添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、線状炭酸エステル類添加剤は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC及びメチルアリルカーボネートMAC及びポリカーボネートVAのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、硫酸エステル類添加剤は、環状スルホン酸エステル類添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル類添加剤を含み、更に、環状スルホン酸エステル類添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1種類又は複数種類を含み、炭化水素基硫酸エステル類添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、亜硫酸エステル類添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む。
【0018】
これにより、本願の非ガス状成膜添加剤は、負極活物質の表面にSEI膜を形成することができ、且つSEI膜の表面に複数の成分が共に成膜することによりSEI膜の膜層構造を豊かにすると共に、SEI膜の構造安定性を向上させることができる。
【0019】
任意の実施形態において、0<D≦7である。
【0020】
本願の第2の態様は、正極シートと、負極シートと、本願の第1の態様のいずれか一つの実施形態に係る非水電解質とを含む二次電池であって、正極シートが正極活物質を含み、負極シートが負極活物質を含む、二次電池を更に提供する。
【0021】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様に係る二次電池を含む電力消費装置を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本願の実施例において必要とされる図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わずに、図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
【
図2】
図1の二次電池の実施形態の分解模式図である。
【
図3】本願の電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図4】本願の電池パックの一実施形態の模式図である。
【
図5】
図4に示す電池パックの実施形態の分解模式図である。
【
図6】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一実施形態の模式図である。 図面は、必ずしも実際の比率で描かれていない。 なお、符号の説明は以下の通りである。 1電池パック;2上筐体;3下筐体;4電池モジュール; 5二次電池;51ケース;52電極アセンブリ; 53カバープレート; 6電力消費装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願の電解質、二次電池及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。しかし、必要でない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要でなく冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0024】
本願において開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で規定され、所定範囲は、1つの下限及び1つの上限を選定することによって規定され、選定された下限及び上限は、特別な範囲の境界を限定している。このように限定される範囲は、端値を含む又は端値を含まない範囲であってもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲を挙げられると、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2と、最大範囲値3、4及び5が挙げられた場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲は、全て予想されてもよい。本願において、他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの略語で表され、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書において全て「0~5」の間の全ての実数を挙げることを示し、「0~5」は、これらの数値の組合せの略語である。また、あるパラメータが2以上(≧2)の整数であると表記すると、当該パラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当している。
【0025】
特に説明しない場合、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成可能である。特に説明しない場合、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成可能である。
【0026】
特に説明がない限り、本願のすべての工程は、順に行われてもよいし、ランダムに行われてもよいが、順に行われることが好ましい。例えば、上記方法が工程(a)及び(b)を含むことは、上記方法が順に行われる工程(a)及び(b)を含むことであってもよく、順に行われる工程(b)及び(a)を含むことであってもよいことを表す。例えば、上記方法が工程(c)をさらに含んでもよいと言及する場合、工程(c)は、任意の順序で上記方法に加えられてもよいことを表す。例えば、上記方法は、工程(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、工程(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、工程(c)、(a)及び(b)等を含んでもよい。
【0027】
特に説明がない限り、本願に記載されている「備える」及び「含む」は、開放式であることを意味し、また、閉鎖式であってもよい。例えば、上記の「備える」及び上記「含む」は、挙げられていない他の成分をさらに「備える」又は「含む」こと、又は挙げられている成分のみを「備える」又は「含む」ことを表すことができる。
【0028】
特に説明がない限り、本願において、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれの条件も満たされる。Aが真(又は存在)であり且つBが偽(又は存在しない)であり、Aが偽(又は存在しない)であり且つBが真(又は存在する)であり、又はAとBの両方が真である(又は存在する)。
【0029】
本願において、「複数」、「複数種類」との用語は、2つ又は2種類以上を指す。
【0030】
二次電池の応用及び普及に伴い、その総合性能がますます注目されている。正極活物質は、リチウム挿入化合物及び活性リチウムイオンの供給者として、その材料構造の安定性がリチウムイオン電池の全体性能に直接的に影響を与えている。長期の充放電過程において、正極材料がリチウムイオンを絶えずに脱離/挿入する過程において、材料自体の構造を破壊することは避けられず、リチウム挿入位置の破壊が直接的に不可逆的な容量損失を招く。また、正極活物質が電解質と副反応を起こしやすくなり、材料自体の構造がより破壊される。正極活物質を三元系材料として説明すると、三元系材料は、マンガン、コバルト及びニッケル元素を含み、ニッケル元素は材料の比容量を向上させることができ、コバルト元素はカチオン混合サイト占有を減少させ、三元系材料の結晶構造を安定化させることができ、マンガン元素は材料コストを低減させ、材料の構造安定性及び安全性を向上させることができるが、正極活物質のリチウム脱離過程において、ニッケル元素は+2価から+4価まで酸化され、高い酸化性を有する四価のニッケルは電解質と副反応を起こしやすく、これにより活物質の構造が破壊され、電池容量が減衰されている。
【0031】
上記問題に鑑み、発明者らは、正極活物質を保護するという観点から、正極活物質の構造安定性を確保することを考慮して、非水電解質を改良し、非水電解質にホウ素含有リチウム塩添加剤を添加する。ホウ素含有リチウム塩添加剤は、正極活物質の表面に正極固体電解質界面膜(Cathode Electrolyte Interface、CEI膜)を形成し、正極活物質に対して保護作用を果たすことができるが、発明者らが更に検討したところ、ホウ素含有リチウム塩添加剤により形成されたCEI膜の膜均一性が悪く、正極活物質に対して良好な保護作用を奏せず、正極活物質が著しく破壊される可能性があるため、二次電池のサイクル性能を低下させることを見出した。また、CEI膜の保護性能を向上させるために、ホウ素含有リチウム塩添加剤の濃度を増加させることが考えられるが、このように形成されたCEI膜のインピーダンス値が高すぎて、二次電池の動力学的性能を悪化させる可能性がある。
【0032】
本願の発明者らは、多くの研究を行った後、意外にも、非水電解質がホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤を同時に含む場合、三者は、共に正極活物質の表面に緻密で均一なCEI膜を形成することができ、CEI膜が正極活物質に対して良好な保護作用を果たし、且つCEI膜のインピーダンスが低いことにより、二次電池のサイクル性能及び動力学的性能を総合的に向上させることができることを見出した。次に、本願の技術案について詳細に説明する。
非水電解質
【0033】
第1の態様によれば、本願は、非水電解質を提供する。非水電解質は二次電池の重要な組成部分であり、二次電池の正極シートと負極シートとの間にリチウムイオンなどの金属イオンを輸送する役割を果たす。
【0034】
前記非水電解質は、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類を含み、非水電解質の総質量に基づいて、電解液の総質量に対するホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率がA1%であり、非水電解質の総質量に基づいて、電解液の総質量に対するリン含有リチウム塩添加剤の質量百分率がA2%であり、非水電解質の総質量に基づいて、電解液の総質量に対する硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率がA3%であり、非水電解質が0<A1+A2+A3≦3を満たす。
【0035】
選択可能に、前記非水電解質は、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤を含む。
【0036】
メカニズムは明らかではないが、本願の非水電解質が二次電池に適用された場合、二次電池のサイクル性能と動力学的性能とを同時に向上させることができる。発明者らは、反応のメカニズムが以下のように推測される。
【0037】
ホウ素含有リチウム塩は、B原子を中心原子とするリチウム塩として、アルコキシ基、o-ジフェノール、o-ヒドロキシ基、カルボン酸などに配位してアニオン錯体を形成し、アニオン錯体は主に非局在化π共役(delocalized π bond)構造であり、中心イオンの負電荷分布が比較的分散し、その電荷が非局在化であり、また、アニオン半径が大きく、アニオンが有機溶媒中でリチウムイオンと結合力の強いイオン対を形成しにくく、その溶解性が比較的良い。アニオン錯体において電子吸引基が多くなるほど、アニオン構造が安定化になり、リチウムイオンの非水電解質への溶解度が高くなり、非水電解質の導電率の改善に有利であり、これにより、非水電解質の動力学的性能を改善して、二次電池の動力学的性能を改善することに有利である。また、高電位の場合、ホウ素含有リチウム塩は正極集電体を不動態化し、正極集電体に対して良好な保護作用を奏することができる。また、ホウ素含有リチウム塩は、正極活物質の表面にCEI膜を形成することができ、CEI膜の形成は、正極活物質の非水電解質に対する持続的な酸化分解を効果的に減少させ、正極活物質に対して良好な保護作用を果たし、正極活物質のサイクル安定性を改善するとともに、電解質の分解を低減し、電解質の安定性を確保することができる。また、ホウ素含有リチウム塩は、負極活物質の表面に、性能に優れた固体電解質界面膜(SoliD Electrolyte Interface、SEI膜)を形成することもできる。SEI膜は、有機溶媒に対して不溶性を有し、有機電解液中に安定に存在できることで、電解液中の溶媒分子が負極活物質に挿入されることを効果的に低減することができるため、負極活物質の構造安定性を確保し、ひいては二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0038】
リン含有リチウム塩添加剤は、相対的に大きいアニオン基を有し、高いイオン導電率を有するため、電解液の動力学的性能をより向上させるのに有利である。また、リン含有リチウム塩添加剤は、正極活物質表面にCEI膜を形成することができ、その形成されたCEI膜は高いリチウムイオン伝導性を有するため、電解質の持続的な分解を顕著に抑制し、正極活物質中の移転金属イオンの溶出を減少させるため、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。また、リン含有リチウム塩添加剤は、負極活物質の表面にSEI膜を形成することもでき、それが低い界面インピーダンスを有するため、電池のサイクル性能を著しく改善することができる。
【0039】
硫黄含有リチウム塩添加剤は、耐酸化性が高く、熱安定性が高く、電解質中の水に対して敏感ではなく、副反応を起こしにくい。また、硫黄含有リチウム塩添加剤の導電率が相対的に高いため、リチウムイオンの移転速度を向上させ、電解液の動力学的性能を向上させることに有利である。しかし、硫黄含有リチウム塩添加剤を単独で使用する場合、正極集電体に対して腐食作用があり、二次電池の電気化学的性能を悪化させる。
【0040】
本願は、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記式を満たすように制御されることにより、ホウ素含有リチウム塩添加剤及びリン含有リチウム塩添加剤が共にCEI膜の形成に関与でき、CEI膜の構造組成が豊富であり、その膜層が緻密で均一であり、正極活物質に対して良好な保護作用を奏することができ、且つ電解質の分解を効果的に低減し、電解質の性能が安定することを保証し、これにより二次電池のサイクル安定性を向上させ、また、CEI膜の界面インピーダンスが相対的に低いため、二次電池の動力学的性能の向上に有利である。ホウ素含有リチウム塩添加剤と硫黄含有リチウム塩添加剤との協同作用により、ホウ素含有リチウム塩添加剤は、正極集電体に対して不動態化作用を果たし、硫黄含有リチウム塩添加剤による正極集電体の腐食のリスクを低減して、二次電池のサイクル安定性を更に改善することができる。ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類の協同作用、特に3種類の協同作用により、電解液の導電率を改善して、二次電池の動力学的性能を更に改善することができる。また、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤のうちの少なくとも2種類の協同作用、特に3種類の協同作用により、負極活物質表面にSEI膜を共に形成することができ、SEI膜の構造組成が豊富であり、その膜層が緻密で均一であり、負極活物質に対して効果的に保護作用を果たし、また、SEI膜の界面インピーダンスが相対的に低いため、二次電池の動力学的性能を効果的に向上させることができる。選択可能に、0<A1+A2+A3≦2であり、例示的に、A1+A2+A3は、0.5、1、1.2、1.5、1.8、2、2.2、2.5、2.8又は3であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、ホウ素含有リチウム塩添加剤は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOB、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4及びリチウムビスオキサレートボレートLiBOBのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0042】
B原子は、酸素を含むシュウ酸類配位子と結合することができるため、結合後の生成物は優れた熱安定性を有し、正極活物質及び/又は負極活物質の表面に性能に優れた界面膜を形成しやすく、正極活物質及び/又は負極活物質の構造安定性を確保し、更に二次電池のサイクル性能を改善することができる。もちろん、B原子は、ハロゲン原子、特にフッ素原子と結合してもよく、フッ素原子の電子吸引誘導効果が強く、その熱安定性及び化学的安定性が高く、且つリチウムイオンの電解液への溶解度が高いため、リチウムイオンの溶解度を確保し、電解液の導電率を確保することができる。
【0043】
テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4は、電解質中の有機溶媒、例えば炭酸エステル類溶媒又は添加剤と協同して使用する場合、テトラフルオロホウ酸リチウムからなるシステムの粘度が相対的に低く、リチウムイオンの放出に有利であり、これにより、電解液中の導電率が向上する。テトラフルオロホウ酸リチウムにより形成されたSEI膜の厚さが比較的均一であり、動力学的活性が良く、二次電池における電荷移転のインピーダンスが小さいことで、二次電池の低温性能を顕著に改善でき、SEI膜が熱分解しにくく、高温における性能が比較的安定であるため、二次電池の高温性能を顕著に改善することができる。
【0044】
リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOBのうちのいずれか一つは、正極シートにおける正極集電体に対する不動態化作用を有し、正極集電体と副反応して正極集電体を腐食させるリスクを低減させ、正極シートの構造安定性を向上させることができる。また、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOBのうちのいずれか一つを含む電解液は、酸性物質を生じにくく、正極集電体が腐食されるリスクを更に低減することもできる。リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOBは、正極活物質との相溶性がよく、リチウムイオンの移転に有利であり、正極活物質及び/又は負極活物質の表面に性能に優れた界面膜を形成し、正極活物質及び/又は負極活物質に対する保護性能を向上させることができる。
【0045】
テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、リチウムビスオキサレートボレートLiBOB及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiDFOBを協同して使用すると、三者は正極活物質の表面にCEI膜を形成することができ、CEI膜は正極活物質の電解質に対する分解を効果的に減少させることができる。三者は更に負極活物質の表面にSEI膜を形成することができ、SEI膜はリチウムイオンの輸送を向上させ且つ電解質の継続的な還元分解を減少させることができるため、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、0<A1≦2.4である。
【0047】
ホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、ホウ素含有リチウム塩添加剤が正極活物質及び/又は負極活物質の表面に界面膜を十分に形成することを保証し、正極活物質及び/又は負極活物質に対して良好な保護を行って、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。例示的に、ホウ素含有リチウム塩添加剤の質量百分率A1%は、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%又は2.4%、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、リン含有リチウム塩添加剤は、ジフルオロリン酸リチウムLiPO2F2、フルオロリン酸リチウムLi2PO3F及びリン酸リチウムLi3PO4のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0049】
上記リン含有リチウム塩添加剤は、無機リン酸リチウム塩であり、二次電池の初期充電過程において、正極の成膜に関与でき、安定な且つ低いインピーダンスのCEI膜を形成することができる。当該CEI膜は、電解質の酸化分解を効果的に減少させることができ、例えば、電解質中の炭酸エステル溶媒と正極活物質表面との副反応を効果的に減少させることができ、これにより、電解質の構造安定性を確保し、且つ正極活物質が破壊されることを緩和し、二次電池のサイクル性能を改善することができる。また、上記リン含有リチウム塩は、負極活物質の表面にLixPOyFz及びLiF成分に富むSEI膜を形成することができる。当該SEI膜は低い界面インピーダンスを有し、二次電池のサイクル性能を顕著に改善することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、0<A2≦2.1である。
【0051】
リン含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記範囲にあると、リン含有リチウム塩添加剤が正極活物質及び/又は負極活物質の表面に界面膜を十分に形成することを確保することができ、正極活物質及び/又は負極活物質に対し良好な保護を行って、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。例示的に、リン含有リチウム塩添加剤の質量百分率A2%は、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%又は2.1%、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、硫黄含有リチウム塩添加剤は、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO3、硫酸リチウムLi2SO4及びスルファミン酸リチウムLiSO3NH2のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0053】
上記硫黄含有リチウム塩添加剤及びホウ素含有リチウム塩添加剤並びにリン含有リチウム塩添加剤が共に使用される場合、電解液の導電率及び安定性を顕著に改善することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、0<A3≦2.1である。
【0055】
硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率が上記範囲であると、電解液の安定性を確保することができる。例示的に、硫黄含有リチウム塩添加剤の質量百分率A3%は、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%又は2.1%であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、非水電解質は、負極成膜添加剤を更に含み、負極成膜添加剤は、負極活物質の表面に界面膜を形成するように構成され、非水電解質の総質量に基づいて、負極成膜添加剤の質量百分率はB%であり、非水電解質は、2≦B/(A1+A2+A3)≦60を満たす。
【0057】
非水電解質が二次電池に適用される場合、負極成膜添加剤は主に負極活物質の表面にSEI膜を形成し、SEI膜はイオン伝導体として金属イオンを通過させることができ、金属イオンはSEI膜を介して挿入及び脱出され、二次電池の充放電を実現することができるが、同時に電子絶縁体としても電子が通過するリスクを低減することができる。また、SEI膜は、有機溶媒に対して不溶性を有し、有機電解質溶媒中に安定的に存在することができ、且つ溶媒分子が当該層膜をほとんど通過することができず、溶媒分子の共挿入を効果的に低減し、溶媒分子の共挿入による負極活物質の破壊を低減して、活物質のサイクル性能及び耐用年数を改善することができる。
【0058】
ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有添加剤は、共に作用することで、一方では負極成膜添加剤と共にSEI膜を形成し、SEI膜の構造組成及びインピーダンスを改善し、二次電池のサイクル性能を向上させ、他方では正極成膜添加剤として正極活物質を保護し、負極成膜添加剤と協同して二次電池の界面特性を改善して、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。特に、その比が上記範囲にあると、電解質の導電率を確保した上で、正負極活物質に対し良好な保護作用を奏することができる。選択可能に、3≦B/(A1+A2+A3)≦50であり、例示的に、B/(A1+A2+A3)は、2、3、5、6、8、10、12、15、18、20、22、25、28、30、32、35、40、45、50、55又は60、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、0.005≦B≦7である。例示的に、負極成膜添加剤の質量百分率B%は、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、6%又は7%、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、負極成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤及び/又は非ガス状成膜添加剤を含む。選択可能に、負極成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤及び非ガス状成膜添加剤を含む。非水電解質の総質量に基づいて、ガス状成膜添加剤の質量百分率はC%であり、非水電解質の総質量に基づいて、非ガス状成膜添加剤の質量百分率はD%であり、非水電解質は、0.005≦C*D≦20を満たす。
【0061】
ガス状成膜添加剤は、電解質が活物質の表面に安定的なSEI膜を形成することを促進することができる。SEI膜は、主に炭酸リチウムを含み、その性能がより安定し、負極活物質の表面への効果的な不動態化を実現し、二次電池の電力及びサイクル寿命を改善することができる。
【0062】
非ガス状成膜添加剤は、ガス状成膜添加剤と共に負極活物質の表面にSEI膜を形成することができ、SEI膜の膜層構造は緻密で均一であり、両者の共同使用は、相互の消耗を低減するとともに、二次電池のサイクル性能を相乗的に改善することができる。本願は、ガス状成膜添加剤及び非ガス状成膜添加剤の質量百分率が上記範囲にあるように制御することにより、SEI膜の構造を更に改善し、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。選択可能に、0.01≦C*D≦15である。例示的に、C*Dは、0.05、0.01、0.02、0.05、0.1、0.12、0.15、0.2、0.3、0.35、0.4、0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18又は20、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、0<D≦7である。選択可能に、0<D≦6である。例示的に、非ガス状成膜添加剤の質量百分率D%は、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%又は7%、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0064】
ガス状成膜添加剤の例としては、ガス状成膜添加剤は、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、二酸化窒素、三酸化二窒素、三酸化リン、五酸化リンのうちの1種類又は2種類以上を含む。上記ガス状成膜添加剤は、SEI膜の形成を促進し、SEI膜の構造を改善することができる。
【0065】
更に、ガス状成膜添加剤は、一酸化炭素及び二酸化炭素を含み、非水電解質の総質量に基づいて、一酸化炭素の質量百分率がC1%であり、非水電解質の総質量に基づいて、二酸化炭素の質量百分率がC2%であり、非水電解質が0.01≦C2/C1≦60を満たす。
【0066】
二酸化炭素及び一酸化炭素は、負極活物質の表面の不動態化を実現し、炭酸リチウムリッチなSEI膜を形成し、二次電池の電力及びサイクル寿命を改善することができる。また、二酸化炭素が負極活物質表面の成膜反応に直接関与し、一酸化炭素が二次電池システムから放出された酸素ガスを吸収し、二酸化炭素を生成し、二酸化炭素の濃度を向上させることで、二酸化炭素が負極活物質表面の成膜反応に更に関与することができる。二酸化炭素と一酸化炭素との相互作用により、電解質が活物質表面で副反応を起こすリスクを低減して、電解質の安定性を向上させることができる。一酸化炭素と二酸化炭素との質量百分率の比が上記範囲にあるように制御することにより、SEI膜の組成構造を効果的に改善して、二次電池のサイクル安定性を改善することができる。選択可能に、0.1≦C2/C1≦40である。例示的に、C2/C1は、0.01、00.01、0.02、0.05、0.1、0.12、0.15、0.2、0.3、0.35、0.4、0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、28、30、32、35、38、30、42、45、50、55、58又は60、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0067】
更に、10-6≦C1≦0.1である。選択可能に、5*10-6≦C1≦0.08ppmである。
【0068】
例示的に、一酸化炭素の質量百分率C1%は、10-4%、2*10-4%、5*10-4%、8*10-4%、10-3%、1.5*10-3%、2*10-3%、2.5*10-3%、3*10-3%、3.5*10-3%、4*10-3%、4.5*10-3%、5*10-3%、5.5*10-3%、6*10-3%、7*10-3%、7.5*10-3%、8*10-3%、8.5*10-3%、9*10-3%、9.5*10-3%、10-2%、2*10-2%、3*10-2%、4*10-2%、5*10-2%、6*10-2%、7*10-2%、8*10-2%、9*10-2%又は0.1%、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0069】
更に、10-6≦C2≦0.5である。選択可能に、5*10-6≦C2≦0.4である。
【0070】
例示的には、二酸化炭素の質量百分率C2%は、10-4%、5*10-4%、8*10-4%、10-3%、2*10-3%、2.5*10-3%、3*10-3%、3.5*10-3%、4*10-3%、4.5*10-3%、5*10-3%、5.5*10-3%、6*10-3%、7*10-3%、7.5*10-3%、8*10-3%、8.5*10-3%、9*10-3%、9.5*10-3%、10-2%、2*10-2%、5*10-2%、6*10-2%、8*10-2%、10-1%、1.1*10-1%、1.2*10-1%、1.5*10-1%、1.8*10-1%、2*10-1%、2.2*10-1%、2.5*10-1%、2.8*10-1%、3*10-1%、3.2*10-1%、3.8*10-1%、4*10-1%、4.2*10-1%、4.5*10-1%、4.8*10-1%又は0.5%、或いは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0071】
非ガス状成膜添加剤の例として、非ガス状成膜添加剤は、炭酸エステル類添加剤、硫酸エステル類添加剤及び亜硫酸エステル類添加剤のうちの1種類又は複数種類を含む。非ガス状成膜添加剤は、負極活物質の表面にSEI膜を形成し、且つSEI膜の表面に複数の成分が共に成膜することで、SEI膜の膜層構造を豊かにすると共に、SEI膜の構造安定性を向上させることができる。
【0072】
例示的に、炭酸エステル類添加剤は、環状炭酸エステル類添加剤及び/又は線状炭酸エステル類添加剤を含み、選択可能に、環状炭酸エステル類添加剤は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVECおよびジオクチルカーボネートCCのうちの1種類または複数種類を含み、線状炭酸エステル類添加剤は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPCおよびメチルアリルカーボネートMACおよびポリカーボネートVAのうちの1種類または複数種類を含む。環状炭酸エステル類添加剤は、より高い誘電率を有し、リチウム塩をできるだけ溶解させることで、リチウム塩がより容易にリチウムイオンを解離させ、電解液の導電率を向上させることができる。線状炭酸エステル類添加剤は比較的低い粘度を有し、リチウムイオンの移転速度を向上させることができる。
【0073】
例示的に、硫酸エステル類添加剤は、環状スルホン酸エステル類添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル類添加剤を含み、更に、環状スルホン酸エステル類添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1種類または複数種類を含み、炭化水素基硫酸エステル類添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDESおよび硫酸ジメチルDMSのうちの1種類または複数種類を含む。
【0074】
例示的に、亜硫酸エステル類添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又はビニル亜硫酸ビニルエチレンVESを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、非水電解質は、有機溶剤を更に含む。有機溶剤は、更に、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、エチルメチルカーボネートEMC、ジエチルカーボネートDEC、ジメチルカーボネートDMC、ジプロピルカーボネートDPC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、ブチレンカーボネートBC、ギ酸メチルMF、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、酢酸プロピルPA、プロピオン酸メチルMP、プロピオン酸エチルEP、プロピオン酸プロピルPP、酪酸メチルMB、酪酸エチルEB、1,4-ブチロラクトンGBL、スルホランSF、ジメチルスルホンMSM、メチルエチルスルホンEMS及びジエチルスルホンESEから選択される少なくとも1種類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。
【0076】
本願の電解液は、本分野の通常の方法に従って調製することができる。例えば、添加剤、溶媒、電解質塩等を均一に混合し、電解液を得ることができる。各材料の添加順序は特に制限されず、例えば、添加剤、電解質塩などを非水溶媒に添加して均一に混合して、非水電解液を得ることができる。
【0077】
本願において、電解液中の各成分及びその含有量は、本分野において既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
【0078】
なお、本願の電解液をテストする場合、新たに調製した電解液をそのまま取得してもよく、二次電池から電解液を取得してもよい。二次電池から電解液を取得する一つの例示的な方法は、二次電池を放電カットオフ電圧まで放電し(安全のために、一般的に電池を満放電状態にする)、遠心処理を行い、その後適量の遠心処理により得られた液体を非水電解液とするステップを含む。二次電池の注液口から直接非水電解液を取得してもよい。
二次電池
【0079】
第2の態様によれば、本願は、二次電池を更に提供する。
【0080】
二次電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解質とを含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられる。電解質は、本願の第1の態様のいずれか一つの実施形態に係る電解質を用いることができる。上記電解質を採用することにより、二次電池のサイクル性能及び動力学的性能を向上させることができる。
[正極シート]
【0081】
いくつかの実施例において、正極シートは、正極集電体と正極集電体の少なくとも一つの表面に設置された正極膜層とを含む。例えば、正極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設けられている。
【0082】
正極膜層は、正極活物質を含み、正極活物質は本分野で公知の二次電池に用いられる正極活物質を採用することができる。例えば、正極活物質はリチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びそのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含むことができる。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びそのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含むことができる。本願は、これらの材料に限定されず、二次電池の正極活物質として用いられる従来の公知の他の材料を使用することができる。これらの正極活物質は1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
いくつかの実施例において、正極活物質は、LiNixCoyM1-x-yO2を含み、ここで、Mは、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選択されるいずれか1種類であり、0≦y≦1、0≦x<1、x+y+z≦1である。正極活物質とホウ素含有リチウム塩と組み合わせて使用すると、ホウ素含有リチウム塩中のB原子が正極活物質中のO原子と結合しやすくなり、正極活物質の電荷移転のインピーダンスを低減させ、正極活物質のバルク内でのリチウムイオンの拡散抵抗を低減させることができる。したがって、非水電解液に適切な含有量のテトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムを含有する場合、低コバルト又は無コバルトの正極活物質が顕著に改善されたリチウムイオン拡散速度を有することができ、低コバルト又は無コバルトの正極活物質のバルク内のリチウムイオンが表面にタイムリーに補充することができ、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の表面にリチウムが過度に脱離されることを回避することができ、これにより低コバルト又は無コバルトの正極活物質の結晶構造を安定させることができる。低コバルト又は無コバルトの正極活物質の結晶構造がより安定するため、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の表面に過度なリチウム脱離が発生することにより正極活物質の構造的性質、化学的性質又は電気化学的性質が不安定になるなどの問題、例えば、正極活物質の不可逆的な歪み及び格子欠陥が増加するという問題が発生する確率を大幅に低減させることができる。
【0084】
LiNixCoyM1-x-yO2は、本分野の通常の方法に従って調製することができる。例示的な調製方法としては、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素前駆体、N元素前駆体を混合して焼結することである。焼結雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、空気雰囲気または酸素ガス雰囲気とすることができる。焼結雰囲気のO2濃度は、例えば、70%~100%である。焼結温度及び焼結時間は、実際の状況に応じて調節することができる。
【0085】
例として、リチウム源は、酸化リチウム(Li2O)、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)及び硝酸リチウム(LiNO3)のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。例として、コバルト源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト及び酢酸コバルトのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。例として、マンガン源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。例として、アルミニウム源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム及び酢酸アルミニウムのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。例として、M元素前駆体は、M元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水酸化合物及び酢酸化合物のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。例として、N元素の前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫化リチウム、硫化アンモニウム及び単体硫黄のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、分子式がLiNixCoyM1-x-yO2である層状材料の質量百分率は80%~99%である。例えば、分子式がLiNixCoyM1-x-yO2である層状材料の質量百分率は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であってもよく、又は以上の任意の数値からなる範囲であってもよい。選択可能に、分子式がLiNixCoyM1-x-yO2である層状材料の質量百分率は、85%~99%、90%~99%、95%~99%、80%~98%、85%~98%、90%~98%、95%~98%、80%~97%、85%~97%、90%~97%、又は95%~97%であってもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、正極活物質は、分子式がLiNixCoyM1-x-yである化合物を含み、式中、Mは、Mn、Fe、Mg、Al、Cu及びTiのうちの1種類又は複数種類を表し、x≧0.5、0≦y≦0.2、x+y≦1である。上記正極活物質は、高電圧で材料表面のリチウム欠乏状態が正極活物質の表面の相変化、Li/Niミキシング、酸素放出等を招きやすく、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤は、正極活物質の表面を不動態化することができ、且つ金属カチオン、例えば、Al3+及びNi2+と結合することができ、Li/Niのミキシング及びアルミニウム箔の不動態化を改善することができる。更に、CO2及びCOは、負極活物質の表面に良好に成膜され、高い電圧での正極活物質から放出された酸素ガスを同時に吸収して、二次電池のサイクル寿命を改善することができる。
【0088】
いくつかの実施例において、正極膜層は、選択可能に正極導電剤をさらに含んでもよい。本願において、正極導電剤の種類は特に限定されないが、例として、正極導電剤は、超伝導性カーボン、導電性グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、正極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0089】
いくつかの実施例において、正極膜層は、選択可能に正極接着剤をさらに含んでもよい。本願において、正極接着剤の種類は特に限定されないが、例として、正極接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体および含フッ素アクリレート系樹脂から選択される1種類または複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、正極接着剤の質量百分率は5%以下である。
【0090】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用することができる。金属箔片の例としては、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでもよく、例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよく、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。
【0091】
正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスしてなる。正極スラリーは、通常、正極活物質と、選択可能な導電剤と、選択可能な接着剤と、任意の他の成分とを溶媒に分散させ、均一に撹拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
[負極シート]
【0092】
負極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも一つの表面に設置された負極膜層とを含み、負極膜層は負極活物質を含む。
【0093】
例として、負極集電体は、その自身の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設けられている。
【0094】
いくつかの実施形態において、負極活物質は、本分野で公知の電池に用いられる負極活物質を採用することができる。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウム及びリチウムアルミニウム合金等のうちの少なくとも1種類を含むことができる。珪素系材料は、単体珪素、珪素酸化物、珪素炭素複合体、珪素窒素複合体及び珪素合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物及びスズ合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。しかしながら、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活物質として用いられる従来の他の材料を使用することができる。これらの負極活物質は1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
いくつかの実施例において、負極膜層は、選択可能に負極接着剤をさらに含んでもよい。本願において、負極接着剤の種類は、特に限定されないが、例として、負極接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMMA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される1種類以上の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、負極接着剤の質量百分率は5%以下である。
【0096】
いくつかの実施例において、負極膜層は、選択可能に負極導電剤をさらに含んでもよい。本願において、負極導電剤の種類は特に限定されないが、例として、負極導電剤は、超伝導性炭素、導電性グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択される1種類または複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、負極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0097】
いくつかの実施例において、負極膜層は、選択可能に他の助剤をさらに含んでもよい。例としては、他の助剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等の増粘剤を含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、他の助剤の質量百分率は2%以下である。
【0098】
いくつかの実施例において、負極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用することができる。金属箔片の例としては、銅箔や銅合金箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでもよく、例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよく、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。
【0099】
負極膜層は、通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスしてなる。負極スラリーは、通常、負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、その他の選択可能な助剤を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)または脱イオン水であってもよいが、これに限定されない。
【0100】
負極シートは、負極膜層以外の他の付加機能層を排除しない。例えば、いくつかの実施例において、負極シートは、負極膜層の表面に覆われた保護層を更に含む。
[セパレータ]
【0101】
いくつかの実施形態において、二次電池は、セパレータを更に含む。本願のセパレータの種類は特に限定されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種類である。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよいが、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよいが、特に限定されない。
【0103】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを調製することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、上記電極アッセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、ハードケースであってもよく、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどである。二次電池の外装はソフトパッケージであってもよく、例えばバグ式ソフトパッケージである。ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよい。プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられることができる。
【0106】
本願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は、例示的な角形構造の二次電池5である。
【0107】
いくつかの実施例において、
図1及び
図2に示すように、外装は、ケース51及びカバープレート53を含むことができる。ケース51は、底板と、底板に接続された側板とを含み、底板と側板とが囲まれて収容室が形成される。ケース51は、収容室と連通する開口部を有し、カバープレート53は、収容室を閉鎖するように開口部を覆う。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容室に封入される。電解液には、電極アセンブリ52が浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数量は、1つ又は複数であってもよく、ニーズに応じて調節されてもよい。
【0108】
本願の二次電池の調製方法は公知である。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回工程又は積層プロセスにより電極アセンブリを形成し、電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得ることができる。
【0109】
本願のいくつかの実施例において、本願に係る二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数量は、複数であってもよく、具体的な数量は、電池モジュールの応用及び容量に応じて調節されてもよい。
【0110】
図3は、一例としての電池モジュール4の模式図である。
図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並んで設けられていてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列されてもよい。更に、この複数の二次電池5が締め具により固定されてもよい。
【0111】
選択可能に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを更に含み、複数の二次電池5は、収容空間に収容されている。
【0112】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数量は、電池パックの応用及び容量に応じて調節されてもよい。
【0113】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1の模式図である。
図4及び
図5に示すように、電池パック1に、電池筐と、電池筐に設けられた複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池筐は、上筐体2と下筐体3とを含み、上筐体2は、下筐体3に覆われており、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成している。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池筐に配列されてもよい。
電力消費装置
【0114】
第2の態様において、本願は、本願の二次電池、電池モジュール、及び電池パックのうちの少なくとも1種類を含む電力消費装置を提供する。二次電池、電池モジュール及び電池パックは、電力消費装置の電源として用いられてもよく、電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。電力消費装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0115】
電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0116】
図6は、一例としての電力消費装置の模式図である。当該電力消費装置6は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置の高電力及び高エネルギー密度への需要を満たすために、電池パック1又は電池モジュールを採用することができる。
【0117】
他の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該電力消費装置は、通常薄型化が求められ、二次電池を電源として採用することができる。
実施例
【0118】
以下の実施例は、本願の開示する内容をより具体的に説明する。これらの実施例は単に解釈的に説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に記載された全ての部、百分率、及び比はいずれも質量に基づいたものであり、かつ実施例で使用された全ての試薬を購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、かつ更に処理する必要とせず直接使用可能である。また、実施例で使用された装置をいずれも購入して取得することができる。
実施例1
1.正極シートの調製
【0119】
正極集電体として、厚さ12μmのアルミニウム箔を用いる。
【0120】
正極活物質であるLiNi0.65Co0.07Mn0.28、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.4:1.1で適量の溶剤NMP中で十分に撹拌混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、正極シートを得た。
2.負極シートの調製
【0121】
負極集電体として、厚さ8μmの銅箔を用いる。
【0122】
負極活物質である黒鉛、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の溶剤である脱イオン水中で十分に撹拌混合し、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、負極シートを得た。
3.セパレータ
【0123】
セパレータとしては、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムを用いる。
4.電解液の調製
【0124】
含水量が10ppm未満の環境下で、非水有機溶媒であるエチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジエチルカーボネートとを体積比1:1:1で混合して電解液溶媒を得た後、添加剤等を混合した溶媒に溶解し、リチウム塩の濃度が1mol/Lの電解液に調製した。電解液の具体的に含まれる物質は、以下の表を参照する。
5.二次電池の調製
【0125】
上記正極シートとセパレータと負極シートとを順に積層し、セパレータを正極シートと負極シートとの間に介在させ、隔離作用を果たした後、巻回して電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装ケースに置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形などの工程を経て、リチウムイオン電池を得る。
実施例2
実施例2-1乃至実施例2-3
【0126】
「ホウ素含有リチウム塩添加剤」の質量百分率A1を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
実施例2-4乃至実施例2-5
【0127】
「ホウ素含有リチウム塩添加剤」の種類を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
実施例2-6乃至実施例2-8
【0128】
「リン含有リチウム塩添加剤」の質量百分率A2を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
実施例2-9
【0129】
「リン含有リチウム塩添加剤」の種類を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
実施例2-10乃至実施例2-12
【0130】
「硫黄含有リチウム塩添加剤」の質量百分率A3を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
実施例2-13
【0131】
「硫黄含有リチウム塩添加剤」の種類を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
比較例
【0132】
比較例1にホウ素含有リチウム塩添加剤が添加されていなかった以外は、実施例1と類似の方法で比較例1の二次電池を類似して調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
【0133】
比較例2にリン含有リチウム塩添加剤が添加されていなかった以外は、実施例1と類似の方法で比較例2の二次電池を類似して調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
【0134】
比較例3に硫黄含有リチウム塩添加剤が添加されていなかった以外は、実施例1と類似の方法で比較例3の二次電池を類似して調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
【0135】
「ホウ素含有リチウム塩添加剤」の質量百分率を調整し、且つA1+A2+A3>3である以外は、実施例1と類似の方法で比較例4の二次電池を類似して調製した。具体的なパラメータは表1を参照する。
【0136】
【0137】
「負極成膜添加剤」の質量百分率Bを調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を類似して調製した。具体的なパラメータは表2乃至表4を参照する。
実施例3-6乃至実施例3-8
【0138】
「負極成膜添加剤」の種類を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を類似して調製した。具体的なパラメータは表2乃至表4を参照する。
実施例3-9乃至実施例3-15
【0139】
「負極成膜添加剤」の種類を調整し、ガス状成膜添加剤を添加した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を類似して調製した。
【0140】
電解液における添加剤がガス状成膜添加剤を更に含む場合、まず、非ガス状成膜添加剤を添加し、非ガス状成膜添加剤を添加した後、注液機に-0.07MPa乃至-0.1MPaの真空度(真空度は、実際の圧力と大気圧との差を指す)で0.5~3分間真空引きし、その後、ガス状成膜添加剤を注入する。具体的なパラメータは表2乃至表4を参照する。
実施例3-16乃至実施例3-22
【0141】
ガス状成膜添加剤中の一酸化炭素と二酸化炭素との質量比C2/C1を調整した以外は、実施例1と類似の方法で二次電池を類似して調製した。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
表4において、A=A1+A2+A3であり、即ち、Aは、ホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤の総質量百分率を表す。
【0146】
C=C1+C2であり、即ち、Cは、ガス状成膜添加剤の総質量百分率を表す。
【0147】
D=D1+D2+D3であり、即ち、Dは、非ガス状成膜添加剤の総質量百分率を表す。
【0148】
B=C+Dであり、即ち、Bは、負極成膜添加剤の総質量百分率を表す。
テスト部分
【0149】
1.電解質中の各成分の含有量のテスト方法
【0150】
新たに調製した電解液を取得してもよく、二次電池から電解液を取得してもよい。次に、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等の方法のうちの1種類又は複数種類を用いて電解液成分の測定を行ってもよい。
【0151】
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS):GB/T-9722-2006/GB/T6041-2002に従って、ガスクロマトグラフィー及び質量分析を組み合わせて採用し、ガスクロマトグラフィーによりサンプル中の各成分を分離した後、各成分を質量分析においてフラグメントイオンに細分化し、質量電荷比(m/z)で分離して特定の質量スペクトル図を形成し、電解液中の各有機成分の定性分析を取得し、その後、電解液中の各有機成分をクロマトグラフィーカラムにおいて分離して各成分の検出信号スペクトルを生成し、保持時間により成分定性を行い、標準に合わせ、ピーク面積を校正して定量を実現し、電解液中の有機成分の定量テスト分析を取得する。
【0152】
イオンクロマトグラフィー(IC):JY/T-020に従い、イオンクロマトグラフィーにより電解液中のリチウム塩及びリチウム塩添加剤のアニオンを検出して定量する。
【0153】
核磁気共鳴分光法(NMR):JY/T0578-2020に従い、電解液中の成分の定性分析及び定量分析を取得する。
2.二次電池の性能テスト
2.1二次電池の45℃におけるサイクル性能テスト
【0154】
45℃で二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧充電を継続し、この時、二次電池は満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、1回目の充電容量である。二次電池を5min静置した後、1Cの定電流で2.8Vまで放電し、これは1サイクルの充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、1回目の放電容量である。二次電池を上記方法に従ってサイクル充放電のテストを行い、毎回サイクルした後の放電容量を記録した。二次電池の25℃での600回サイクルした容量維持率(%)=600回サイクル後の放電容量/1回目の放電容量×100%。
2.2動力学的性能
【0155】
2.1から、45℃でサイクルした二次電池を取り出し、0.1Cで3.7Vまで充電し、その後、PRS340/11-119-11ブラウングローブボックス中で二次電池を解体し、正極シート及び負極シートを取り、ジメチルカーボネートDMCを用いて電極シートを洗浄し、その後、電極シートを23mm*34mm2の大きさの角形シートに打ち抜き、その後、電極シート-セパレータ-電極シートの順で専用のアルミニウムプラスチックフィルムに置き、ピペットガンで1MのLiPF6 EC/EMC/DEC=3/5/2の電解液を取り、300マイクロリットル注入し、その後、簡易な封止機でパッケージングして、正極-正極&負極-負極の対称電池に組み立て、その後、上海辰華電気化学ワークステーションで25℃、500kHz-30mHzの頻度、頻度の点数73の交流インピーダンスをテストした後、インピーダンスの実部を横座標とし、虚部の負の数を縦座標としてプロットし、図中の谷底位置に対応する横座標Rct(電荷伝達抵抗)に基づいて、陰陽極の動力学の良否を表す。
テスト結果
【0156】
二次電池のサイクル性能及び動力学的性能の改善に対して本願の作用を表5及び表6に示す。
【0157】
【0158】
表5から分かるように、比較例1乃至3に比べて、実施例1から実施例2-13は、非水電解質にホウ素含有リチウム塩添加剤、リン含有リチウム塩添加剤及び硫黄含有リチウム塩添加剤を添加し、0<A1+A2+A3≦3である場合、特に0.01≦A1+A2+A3≦2である場合、三者が正負極活物質の表面に良好な保護を形成することができ、正極活物質及び負極活物質の安定性を確保し、二次電池のサイクル性能を改善することに有利であり、且つ活物質の表面に形成された界面膜が緻密で均一であり、且つそのインピーダンスが比較的小さく、二次電池の動力学的性能の改善に有利である。A1+A2+A3>3である場合(実施例2-3、実施例2-8又は実施例2-12)、活物質の表面に形成された界面膜が厚すぎる恐れがあり、界面のインピーダンスが高くなり、二次電池の動力学的性能を良好に改善できない。
【0159】
【0160】
表6から分かるように、実施例3-1乃至実施例3-8は、負極成膜添加剤の使用量を調節することにより、負極活物質に対する保護性能を改善することができるが、負極成膜添加剤の使用量の増大に伴い、負極活物質の表面の界面インピーダンスが増大して、動力学的性能がやや低下する。
【0161】
実施例3-9乃至実施例3-22は、電解質にガス状成膜添加剤を添加することにより、ガス状成膜添加剤と非ガス状成膜添加剤とが相乗的に作用し、負極活物質に対する保護性能を更に改善することができ、且つ負極活物質の表面に形成されたSEI膜の界面インピーダンスが低く、二次電池の動力学的性能を更に改善することができる。
【0162】
以上、好ましい実施例を参照して本願を説明したが、本願の範囲を逸脱しない場合、種々の改良が可能であり、又はそのうちの一部の構成要素を等価物で置き換えてもよい。特に、構造的な矛盾がない限り、各実施例に言及された各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。本願は、以上に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての態様を含む。
【国際調査報告】