(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ヘリカーゼプリマーゼ阻害剤の固体結晶形態及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 277/38 20060101AFI20250117BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07D277/38 CSP
A61K31/426
A61P43/00 111
A61P31/22
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542125
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2023050883
(87)【国際公開番号】W WO2023135303
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518332170
【氏名又は名称】イノベーティブ モレキュールズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】INNOVATIVE MOLECULES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】クレイマン、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ゲゲ、クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC82
4C086FA03
4C086GA03
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZB33
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ヘリカーゼプライマーゼ阻害剤として有用な化合物の固体結晶形態、その組成物、その製造方法、ならびに単純ヘルペス感染症及びヘルペス媒介性疾患の治療におけるその使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、Xは、
【化2】
から選択され、
Yは、CH
3及びCD
3から選択される。]
で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、共結晶、水和物もしくは溶媒和物の結晶形態。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物において、
Xは、
【化3】
であり、
Yは、CH
3及びCD
3から選択され;
前記結晶形態は、前記化合物の塩酸塩、水和物もしくは溶媒和物の形態で存在する、請求項1記載の結晶形態。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、
下記構造:
【化4】
を有する化合物IM-250、及び
下記構造:
【化5】
を有する化合物IM-315、
から選択される、化合物、又はその薬学的に許容される塩、共結晶、水和物もしくは溶媒和物の結晶形態であって、
前記化合物IM-315の結晶形態は、197℃(±5℃)の融点を有する、
請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
前記化合物IM-250及び化合物IM-315が、下記結晶形態から選択され、
1.54Åの波長のCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される、X線粉末ディフラクトグラムが、
IM-250遊離塩基形態I: 9.2、13.7及び18.7度、
IM-250遊離塩基形態III: 9.7、12.3及び15.6度、
IM-315: 6.4、12.5及び18.3度、
において、特徴的なピーク(±0.2度2θ)を含む、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項5】
前記化合物IM-250が塩として存在し、下記構造を有する塩形態から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形態:
【化6】
【請求項6】
塩酸塩として存在し、
塩酸及び(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミドが1:1のモル比で存在する、請求項2又は5に記載の結晶形態。
【請求項7】
1.54Åの波長のCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される、X線粉末ディフラクトグラムが、下記ピーク(±0.2度2θ):
IM-250塩酸塩: 13.7、17.0、17.7、19.8、21.8及び22.8、
IM-250ナパジシレート塩: 9.1、14.5、15.6、18.1、19.1及び20.9、
の少なくとも4つを含む、請求項5又は6に記載の結晶形態。
【請求項8】
上記化合物が、下記構造:
【化7】
を有し、
1.54Åの波長のCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される、X線粉末ディフラクトグラムが、9.3、13.7及び18.6度において特徴的なピーク(±0.2度2θ)を含む、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項9】
上記化合物が、下記構造:
【化8】
を有し、
1.54Åの波長のCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される、X線粉末ディフラクトグラムが、13.8、17.8及び21.8度において特徴的なピーク(±0.2度2θ)を含む、請求項1又は2に記載の結晶形態。
【請求項10】
図1、3、5、7、8、10、14又は17に示されるXRPDパターンを実質的に有する、請求項3~9のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項11】
治療有効量の請求項1~10のいずれか一項に記載の式(I)の結晶形態と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
神経組織及び神経におけるヘルペスウイルスの潜在状態の治療又は除去を含み、ヘルペス感染又は単純ヘルペス脳炎(HSE)などの当該感染に伴う重篤な影響の再発及び再活性化の予防及び治療を含む、単純ヘルペス感染又は媒介性疾患の予防及び治療に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
下記構造:
【化9】
の固体化合物、
又は前記固体化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、水和物又は溶媒和物の製造方法であって、
(a)化合物P2b:
【化10】
を化合物:
【化11】
と接触させる工程、
(b)化合物P2c:
【化12】
を化合物P2d:
【化13】
を形成するのに十分な条件下で、Rh
2(OAc)
4、tert-ブチルカルバミン酸、酸化マグネシウム及び(ジアセトキシ)ヨードベンゼンと接触させる工程、
(c)下記構造:
【化14】
を有する化合物IM-250を形成するのに十分な条件下で化合物P2dを脱保護する工程、及び
(d)任意に、前記化合物IM-250を、その薬学的に許容される塩、共結晶、水和物又は溶媒和物に変換する工程、
を含む、方法。
【請求項14】
前記化合物P2d:
【化15】
は、塩酸で脱保護され、化合物IM-250塩酸塩:
【化16】
で表される塩酸塩を形成する、又は
前記化合物P2dは、1,5-ナフタレンジスルホン酸四水和物で脱保護され、化合物IM-250ナパジシレート塩:
【化17】
で表されるナパジシレート塩を形成する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固体化合物及び塩の重水素化類似体を得るための重水素化の工程をさらに含み、前記重水素化類似体が下記構造:
【化18】
を有する、又はその共結晶、水和物もしくは溶媒和物である、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリカーゼプライマーゼ阻害剤として有用な抗ウイルス化合物の固体結晶形態、その組成物、その製造方法、ならびに単純ヘルペス感染症及びヘルペス媒介性疾患の治療におけるその使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染症のパンデミックは、古代から人類を悩ませ、口唇ヘルペス及び陰部ヘルペスなどの皮膚粘膜感染症を引き起こしてきた。疾患症状はしばしば日常活動を妨げ、時にHSV感染は特に新生児、高齢者、及び移植もしくは癌患者、又は遺伝性免疫不全症候群もしくは疾患を有する患者などの免疫不全患者集団において、生命を脅かす疾患(脳炎)又は視力を損なう疾患(角膜炎)の原因である。感染後、アルファヘルペスウイルス科は宿主のニューロン中において潜伏状態で生存し、周期的に再活性化し、しばしば患者にとって重大な心理社会的苦痛をもたらす。現在、治療法は入手できない。
これまでのところ、特異的又は非特異的な作用機序を有するワクチン、インターロイキン、インターフェロン、治療用タンパク質、抗体、免疫調節薬及び低分子薬物は、治療の第一選択としてのヌクレオシド系薬剤アシクロビル、バラシクロビル及びファムシクロビルに代わる有効性又は必要とされる安全性プロファイルのいずれかを欠いていた。
【0003】
既知のアミノチアゾール(例、プリテリビル、HN0037)は、今日開発されている最も強力な薬剤である。これらの抗ウイルス剤はヘルペスウイルスヘリカーゼプライマーゼを阻害することによって作用し、ヌクレオシド系薬物と比較して、インビトロで低い耐性率及び動物モデルにおいて優れた効力を示すが、標的外炭酸脱水酵素活性、ニューロン組織及び脳への浸透の減少、並びに異常な薬物動態プロファイルによって開発が妨げられる。
【0004】
ヘルペスウイルスは神経栄養性ウイルスであり、感染後、それらがニューロン組織に入って定着し、宿主のニューロンにおける潜伏形態及び永続的ニューロン曝露の生存のためのヘルペスウイルスの持続的存在をもたらす手段となる。潜在型のヘルペスウイルスによるそのような永続的なニューロン曝露は、患者に重大な心理社会的苦痛をもたらすことが多い、ヘルペス感染を再発し、周期的に再活性化する生涯リスクの理由である。このようなニューロンヘルペスウイルス曝露は、さらに、ヘルペスウイルス脳炎(又は単純ヘルペス脳炎;HSE)の原因であり、これは、HSV-1再活性化後の顔面の末梢部位から、又は神経軸索に沿ったニューロン組織から脳へのヘルペスウイルスの伝播によって引き起こされると考えられる。ウイルスは三叉神経の神経節又は神経組織に休眠しており、HSEを引き起こす脳へのアクセスを獲得する。従って、神経組織及び神経中の(休止状態の)ヘルペスウイルスもまた治療及び排除することを可能にする高活性抗ウイルス薬を提供すること、並びにそれと共に、ヘルペス感染の再発及び再活性化、又はHSEのような重篤な影響さえも回避することが重要である。例えば、既知のアミノチアゾールとして知られている抗ウイルス薬は神経組織に侵入したり、血液脳関門を通過して脳に侵入したりするのに十分な効力を有さず、ヘルペスウイルスの潜伏型又は休眠型、さらにはHSEを治療するための効果的かつ根絶的な治癒を提供することができない。
【0005】
本特許出願は、より適切な薬物動態及び安定性プロファイルを有する抗ウイルスアミノチアゾール化合物の新規な固体結晶形態を開示する(例えば、改善された溶解性及び生物学的利用能により、神経組織及び脳への抗ウイルス薬化合物のより高い通過を可能にする)。さらに、抗ウイルス性アミノチアゾール化合物の新規な固体結晶形態は、改善された化合物安定性及び改善された生物学的利用能によって特徴付けられ、それらを医薬開発及び医薬としての使用により適したものにする。
【0006】
[先行技術]
先行技術から、抗ウイルス化合物として使用するための一般式(A)のアミノチアゾールは公知である。
【化1】
【0007】
特に、特許文献1及び特許文献2は、Xがスルホンアミド部分であるアミノチアゾール(A)を開示している。両方の文献は、以下の構造を有する化合物を記載しており、この化合物は、特許文献1の実施例8及び特許文献2の実施例87に記載の方法を用いて、184℃の融点を有する黄色固体の形態で調製することができる。
【化2】
【0008】
特許文献3は、Xがスルファニミン、スルフィンイミドアミド、スルホキシイミン又はスルホキシイミドアミドである式(A)のチアゾリルアミドを記載している。
【0009】
特許文献4は、特許文献3による化合物の鏡像異性体を記載している。
【0010】
特許文献5は、癌を治療するための腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における、特許文献3及び特許文献4によるアミノチアゾール化合物の新規な使用を記載している。
【0011】
特許文献6は、特許文献3及び特許文献4による化合物の重水素化類似体を記載している。
【0012】
非特許文献1には、上記の先行技術に記載されている様々な抗ウイルス性ヘリカーゼプライマーゼ阻害剤化合物を用いた実験試験結果が記載されている。
【0013】
全てのこれらの特許出願において、本明細書で定義される式(A)に従う固体結晶形態は記載又は言及されていない。特に、前記文献は、いかなる特定の塩又は固体形態も特定していない。
【化3】
【0014】
溶解度、溶解速度、生物学的利用能、吸湿性、香味、現像性及び物理的/化学的安定性などのいくつかの特性は、結晶化又は塩形成によって変更することができる。
【0015】
多数の薬学的に許容される対イオンの利用可能性、薬学的に許容される対イオンの性質と対応する塩の最終特性との間の相関の欠如を考慮すると、塩選択プロセスは困難であり、その結果は、先験的に予測不可能である。
【0016】
式(A)の化合物の製造、取扱い、貯蔵及び薬学的特性の改善を得ることを最終目的として、活性化合物の吸湿性又は生物学的利用能などの他の重要なパラメータに悪影響を及ぼすことなく、改善された物理化学的及び薬学的特性を有する式(A)の抗ウイルス化合物の結晶性(塩)形態を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2003/007946
【特許文献2】WO2001/047904
【特許文献3】WO2017/174640
【特許文献4】WO2019/068817
【特許文献5】WO2020/109389
【特許文献6】WO2022/090409
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】publication of Gege et al., “A helicase-primase drug candidate with sufficient target tissue exposure affects latent neural herpes simplex virus infections”; Sci. Transl. Med. 2021;13:eabf8668
【非特許文献2】Foster in Trends Pharmacol. Sci. 1984:5;524
【非特許文献3】Comp. Biochem. Physiol. 1998;119A:725
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
[要約]
本発明は、下記式(I)の抗ウイルスヘリカーゼプライマーゼ阻害剤化合物、又はその薬学的に許容される塩、共結晶、水和物若しくは溶媒和物の新規な固体形態に関する。
【化4】
[式中、Xは、
【化5】
から選択され、Yは、CH
3及びCD
3から選択される。]
【0020】
これらの新規形態は、例えば、単純ヘルペス媒介性障害に罹患しているヒト患者を治療するために有用である。本開示による新規な固体形態は、単純ヘルペスウイルス感染症及び疾患を治療するための医薬を調製するのに有用であり得る。本開示による新規な固体形態は、ヘリカーゼプライマーゼ阻害剤として使用することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、下記化学構造を有する遊離塩基化合物の新規固体形態を対象とする。
【化6】
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、下記化学構造を有する塩酸塩の新規な固体形態を対象とする。
【化7】
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、下記化学構造を有する遊離塩基化合物の新規重水素化固体形態を対象とする。
【化8】
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、下記化学構造を有する塩酸塩の新規な固体形態を対象とする。
【化9】
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、下記化学構造を有するナパジシレート塩の新規な固体形態を対象とする。
【化10】
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示は、下記化学構造を有する新規な固体形態を対象とする。
【化11】
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示は、下記化学構造を有する新規な固体形態を対象とする。
【化12】
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示は、これらの新規な固体形態を調製するための方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】IM-250遊離塩基形態IのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【
図2】IM-250遊離塩基形態Iの熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量計(DSC)サーモグラムの組み合わせを示す。
【
図3】IM-250遊離塩基形態IIIのXRPDパターンを示す。
【
図4】IM-250遊離塩基形態IIIのTGA及びDSCサーモグラムの組み合わせを示す。
【
図5】IM-250塩酸塩のXRPDパターンを示す。
【
図6】IM-250塩酸塩のTGA及びDSCサーモグラムの組み合わせを示す。
【
図7】エタノールから結晶化した場合のIM-250塩酸塩のXRPDパターンを示す。
【
図8】IM-250ナパジシレートのXRPDパターンを示している。
【
図9】IM-250ナパジシレートのTGAとDSCの組合せサーモグラムを示す。
【
図11】IM-315のDSCサーモグラムを示す。
【
図12】マウスPKにおける種々の固体形態のIM-250の経時的な血中濃度の図を示す。
【
図13】非ストレス試料(最下部)及び40℃/75%RH及び60℃で2週間及び4週間保存した試料のIM-250遊離塩基形態Iからの重ね合わされたXRPDプロファイル(正規化スケール)を示す。
【
図14】重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250)のXRPDパターンを示す。
【
図15】重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250)のTGAサーモグラムを示す。
【
図16】重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250)のDSCサーモグラムを示す。
【
図17】重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図18】重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)のTGA及びDSCサーモグラムの組み合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[詳細な説明]
以下の説明では、本開示の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、特定の具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者は、本開示がこれらの詳細な記載事項なしに実施され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態の以下の説明は、本開示が特許請求される主題の例示と見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲を図示される特定の実施形態に限定することを意図していないことを理解してなされている。本開示全体にわたって使用される見出しは、便宜上、提供されるにすぎないもので、いかなる形でも特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。任意の見出しの下に示される実施形態は、任意の他の見出しの下に示される実施形態と組み合わせることができる。
【0031】
[定義]
文脈上そうでなければならない場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」及び「含むこと(comprising)」などのその変形は、開放的で包括的な意味、即ち、「含むが、これに限定されない」という意味で解釈される。
【0032】
本明細書を通して、「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」という言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成又は特質が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書における表現「一実施形態における(in one embodiment)」又は「実施形態における(in an embodiment)」の全てが、必ずしも同様の実施形態について記載されてはいない。
【0033】
さらに、特別な特徴、構造又は特質は1以上の実施形態において任意の適当な方法で組み合わせられ得る。
【0034】
本明細書を通して「結晶形態」と言及する実施形態は、本明細書に開示される式(I)の結晶、塩、共結晶、水和物及び/又は溶媒和物を含む。
【0035】
本発明の意味における「重水素化」、「重水素標識された」、「重水素置換された」又は「重水素化された」は、式(I)の化合物の1つ又は複数の水素原子が重水素(「D」によって表される2H)によって置き換えられることを意味する。
【0036】
式(I)のいくつかの化合物において、残基YはCD3を表す。驚くべきことに、そのような重水素化アミノチアゾール化合物は哺乳動物、例えばヒトに投与された場合、それぞれの非重水素化化合物と比較して、代謝に対する抵抗性の増加を示し、従って式(I)の化合物の半減期を増加させるのに有用であることが見出された。例えば、非特許文献2を参照。このような重水素化アミノチアゾール化合物は当該技術分野で周知の手段によって、例えば、1個以上の水素が重水素によって置き換えられた出発物質を使用することによって合成される(詳しくは、実験セクションを参照)。
【0037】
本開示の重水素標識又は置換された治療化合物は驚くべきことに、吸収、分布、代謝及び排泄(ADME)に関連するDMPK(薬物代謝及び薬物動態)特性が改善されていることが判明した。重水素による置換はより高い代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期、減少した投与量要件、及び/又は治療指数の改善に起因する特定の治療上の利点をもたらすことが判明した。
【0038】
重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義され得る。本開示の化合物において、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定又は放射性同位体を表すことを意味する。特に明記しない限り、ある位置が「H」又は「水素」として具体的に指定される場合、その位置は、その天然存在量の同位体組成(約99.98%水素)で水素を有すると理解される。従って、本開示の化合物において、重水素(D)として具体的に指定される任意の原子は、少なくとも50%の同位体純度、好ましくは少なくとも95%の同位体純度、より好ましくは少なくとも99%の同位体純度を有する重水素を表すことを意味する。
【0039】
重水素取り込みの割合は、マススペクトロスコピー(ピークエリア)などの多数の従来の方法を用いた定量的解析によって、又は化合物中の内標準又は他の非重水素化1Hシグナルからのシグナルと比較して、特異的重水素化部位の残りの残留1H-NMRシグナルを定量することによって得ることができる。
【0040】
合成に使用される化学物質の起源に応じて、合成された化合物において、天然同位体存在量のいくらかの変動が生じることが認識されるのであろう。従って、本発明の化合物の非重水素化類似体の調製物は、本質的に少量の重水素化アイソトポログを含有する。天然に豊富な安定な水素及び炭素同位体の濃度は、この変化にもかかわらず、本発明の化合物の安定な同位体置換の程度と比較して、小さく、重要ではない。例えば、非特許文献3を参照。
【0041】
水素によって通常占有される特定の位置における「同位体濃縮係数」という用語は、その位置における重水素の存在量とその位置における重水素の天然の存在量との間の比を指す。例えば、3500の同位体濃縮係数は、特定の位置での重水素の量が重水素の天然存在量の3500倍であるか、又は化合物の52.5%が特定の位置で重水素を有する(即ち、所与の位置で52.5%の重水素取り込み)ことを意味する。地球の海洋中の重水素の存在量は、6500個の水素原子中におよそ1個の原子である(約154ppm)。従って、重水素は地球上の海洋中のすべての天然水素原子の約0.015%(重量基準で0.030%)を占め、その存在量はある種類の天然水から別の種類の天然水にわずかに変化する。
【0042】
本開示の重水素化化合物は、好ましくは少なくとも6300の同位体濃縮係数によって、又は少なくとも95%の重水素化度によって特徴付けられる。より好ましくは、少なくとも6500の同位体濃縮係数によって、又は少なくとも98%の重水素化度によって特徴付けられる。
【0043】
本明細書に与えられる任意の式又は構造は、また、さらなる同位体標識原子をさらに含む化合物を表すことも意図される。本開示の化合物に組み込むことができる追加の同位体としては、例えば、水素の同位体、並びに3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F及び35Sなどであるが、これらに限定されずに、炭素、窒素、酸素及びフッ素の同位体を挙げることができる。本開示はさらに、3H、13C及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれた様々な同位体標識化合物を含む。そのような同位体標識化合物は代謝研究、反応動態研究、検出又はイメージング技術、例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)又は薬物もしくは基質組織分布アッセイ又は患者の放射性処置を含む単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)において有用であり得る。本開示の同位体標識化合物及びそのプロドラッグは、一般に、スキーム又は以下に記載される実施例及び調製において開示される手順を、容易に利用可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬に置き換えることによって実施することによって調製することができる。
【0044】
「薬学的に許容される賦形剤」は限定されるものではないが、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、及び/又は乳化剤、又は米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品局(EMA)、又はヒトもしくは家畜における使用のために許容されるものとして他の国内対応物によって承認されている上記の1つ以上の組み合わせを含む。
【0045】
「医薬組成物」とは、本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)の製剤、及び哺乳動物、例えば、ヒトへの生物学的に活性な化合物の送達のために当該技術分野で一般に認められている媒体(投与形態)を指す。そのような媒体は、そのための全ての薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0046】
「有効量」という用語は、投与される場合、治療される障害、疾患、又は状態の感染症又は1つもしくは複数の症状の発症を予防するか、又はある程度軽減するのに十分な化合物の量を含むことを意味する。「有効量」という用語はまた、研究者、獣医師、医師、又は臨床医によって求められる、細胞、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発するのに十分な化合物の量を指す。
【0047】
「予防」又は「予防すること」又は「予防法」は、疾患又は状態の臨床症状を発症させない感染、疾患又は状態の任意の治療を意味する。
【0048】
化合物は、いくつかの実施形態では、感染、疾患、又は状態のリスクがあるか、又は家族歴を有する対象(ヒトを含む)に投与され得る。
【0049】
疾患の「治療」及び「処置」には、以下のものが含まれる:
(1)疾患を発症するリスクを予防又は低減すること、即ち、疾患に曝される可能性又は疾患の素因を有するが、まだ疾患の症状を経験又は発現していない対象において、疾患の臨床症状を発症させないようにすること、
(2)疾患を抑制すること、即ち、疾患又はその臨床症状の発症を阻止又は軽減すること、
(3)疾患を緩和(治癒)すること、即ち疾患又はその臨床症状を退縮させること、及び
(4)疾患によって引き起こされる症状や障害を改善又は緩和すること。
【0050】
「対象」又は「患者」という用語は、治療、観察又は実験の対象であるか、又は対象となる哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療及び/又は獣医学的用途において有用であり得る。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物(又は患者)である。いくつかの実施形態では、対象(又は患者)がヒト、飼育動物(例えば、イヌ及びネコ)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタ)、及び/又は実験動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ブタ、ウサギ、イヌ、及びサル)である。いくつかの実施形態では、対象(又は患者)はヒトである。「それを必要とするヒト(又は患者)」とは、特定の治療から利益を得る感染症又は疾患もしくは状態を有し得るか、又は有することが疑われるヒトを意味し、例えば、本出願に従って本明細書に開示される化合物で治療される。
本明細書における値又はパラメータの「約」への言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(及び記載する)。例えば、「約x」に言及する説明は、「x」の説明を含む。また、単数形「a」及び「the」は文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、「化合物」への言及は複数のそのような化合物を含み、「アッセイ」への言及は、1つ以上のアッセイ及び当業者に公知のその等価物への言及を含む。
【0051】
「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」は、獣医学的又はヒトの薬学的使用に適した薬学的組成物を調製するのに有用な化合物、塩、組成物、剤形及び他の材料を指す。
【0052】
用語「実質的に示される」は、例えば、XRPDパターン、DSCサーモグラム、又はTGAサーモグラムに言及する場合、本明細書に示されるものと必ずしも同一ではないが、当業者によって考慮される場合、実験誤差又は逸脱の限界内に入るパターン、サーモグラム、又はスペクトルを含む。
【0053】
「薬学的に許容される塩」という用語は、無機塩基又は酸及び有機塩基又は酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を指す。本開示の化合物が1つ以上の酸性又は塩基性基を含有する場合、本開示はまた、それらの対応する薬学的又は毒物学的に許容される塩、特にそれらの薬学的に利用可能な塩を含む。従って、酸性基を含有する本開示の化合物はこれらの基上に存在することができ、本開示に従って、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩として使用することができる。そのような塩のより正確な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はアンモニアもしくは有機アミンとの塩、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンもしくはアミノ酸が挙げられる。1つ以上の塩基性基、即ち、プロトン化され得る基を含有する本開示の化合物は存在することができ、本開示に従って、無機又は有機酸とのそれらの付加塩の形態で使用することができる。好適な酸の例としては、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、及び当業者に公知のその他の酸を含む。本開示の化合物が分子中に酸性基及び塩基性基を同時に含有する場合、本開示はまた、言及した塩形態に加えて、内部塩又はベタイン(両性イオン)も含む。
【0054】
それぞれの塩は例えば、これらを、溶媒もしくは分散剤中で有機もしくは無機の酸もしくは塩基と接触させることによって、又はアニオン交換もしくは他の塩とのカチオン交換によって、当業者に公知の慣用の方法によって得ることができる。本開示はまた、低い生理学的適合性のために、医薬における使用に直接適していないが、例えば、化学反応のための中間体として、又は薬学的に許容される塩の調製のために使用することができる、本開示の化合物のすべての塩を含む。
【0055】
一般に、式(I)の化合物の塩形成は、従来の結晶化方法によって実施することができる。好ましくは、結晶化が式(I)の化合物を水混和性溶媒又は溶媒混合物と接触させ、それぞれの塩を形成するために選択された酸又は塩基を添加することによって実施される。得られた結晶化塩は、例えば濾過、洗浄及び乾燥を含む通常の方法によって単離される。
【0056】
さらに、本開示の化合物は溶媒和物、例えば、溶媒和水、又は薬学的に許容される溶媒和物、例えば、アルコール、特にエタノールを含む形態で存在し得る。「溶媒和物」は、溶媒と化合物との相互作用によって形成される。溶媒が水である場合、「溶媒和物」は「水和物」である。本開示の塩も溶媒和物を含み得ることが理解される。
【0057】
本明細書で定義される式(I)による化合物の塩及び溶媒形成に適した溶媒は、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、アルコール、例えば、特に、メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロパノール)等、アルデヒド、ケトン、特に、アセトン等、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はジオキサン、エステル、例えば、酢酸エチル、又はアルカン、例えば、特に、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はシクロヘキサン等及び水、ならびにそれらの混合物を含む。
【0058】
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩もしくは混合物の光学異性体、ラセミ体又は他の混合物が提供される。必要に応じて、異性体は、当技術分野で周知の方法、例えば液体クロマトグラフィーによって分離することができる。これらの状況において、単一の鏡像異性体又はジアステレオマー、即ち光学的に活性な形態は、不斉合成又は分割によって得ることができる。分割は例えば、分割剤の存在下での結晶化、又は、例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラム又はキラル超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)カラムを使用するクロマトグラフィーなどの従来の方法によって達成することができる。
【0059】
「立体異性体」は同じ結合によって結合された同じ原子から構成されるが、交換可能ではない異なる三次元構造を有する化合物を指す。「鏡像異性体」という用語は少なくとも80%(即ち、少なくとも90%の1つの鏡像異性体及び最大で10%の他の鏡像異性体)、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%の光学純度又は鏡像異性体過剰率(当技術分野における通常の方法によって決定される)を有する、個々の光学活性形態の本発明の化合物を意味する。
【0060】
本明細書に開示される化合物及びそれらの薬学的に許容される塩は、不斉中心を含み得、従って、絶対立体化学に関して、I-又は(S)-として定義され得る鏡像異性体、ジアステレオマー及び他の立体異性体形態を生じ得る。本発明は、全てのそのような可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学活性(+)及び(-)又は(R)-及び(S)異性体はキラルシントン又はキラル試薬を用いて調製することができ、又は従来の技術、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶を用いて分割することができる。個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術としては、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えばHPLCもしくはSFCを使用するラセミ体(又は塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割が挙げられる。
【0061】
[式(I)の化合物の固体形態]
結晶形態及び実質的に純粋な形態を含む、式(I)の化合物の固体形態は、医薬組成物における活性成分としての使用に適した、生物学的利用能及び安定性の利点を提供し得る。驚くべきことに、例えば、IM-250塩酸塩は、良好な物理的及び化学的安定性、良好な水溶性及び良好な生物学的利用能などの有利な物理的特性を示すが、非吸湿性である。医薬品原薬又は有効成分の結晶構造の変動は、医薬品又は有効成分の溶解速度(生物学的利用能等に影響を及ぼす可能性がある)、製造性(取扱いの容易さ、既知の強度の用量を一貫して調製する能力)及び安定性(例えば熱安定性、貯蔵寿命等)に影響を及ぼす可能性がある。そのような変形は、錠剤及びカプセルを含む溶液又は固体経口剤形態などの、異なる剤形態又は送達剤形態における医薬組成物の調製又は製剤に影響を及ぼし得る。非結晶又は非晶質形態などの他の形態と比較して、特定の結晶形態は、所望の又は適切な吸湿性、粒径制御、溶解速度の改善、溶解度、純度、物理的及び化学的安定性、製造可能性、収率及び/又はプロセス制御を提供し得る。従って、式(I)の化合物の固体(結晶性)形態は、化合物の製造プロセス、化合物の製剤形態の安定性又は貯蔵性、化合物の原薬の安定性又は貯蔵性、及び/又は活性薬剤としての化合物の生物学的利用能及び/又は安定性を改善するなどの利点を提供し得る。
【0062】
ある種の溶媒及び/又はプロセスの使用は本明細書に記載される式(I)の化合物の異なる固体形態を生成することが見出されており、これは、上記の1つ又は複数の好ましい特徴を示し得る。本明細書に記載される固体形態の調製方法及びこれらの固体形態の特徴付けは、以下に詳細に記載される。
【0063】
特定の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態などの新規な固体形態が開示される。
【0064】
本発明は、特に以下の実施形態に関する:
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態では、Xは
【化13】
から選択される。
【0065】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせた、より好ましい実施形態において、Xは
【化14】
である。
【0066】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わされた好ましい実施形態において、Yは、CH3及びCD3から選択される。
【0067】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わされる、より好ましい実施形態において、YはCH3である。
【0068】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組合せた、さらに好ましい実施形態において、Xは、
【化15】
から選択され、一方、Yは、CH
3又はCD
3である。
【0069】
上記又は以下の実施形態のいずれかと組合せたさらなる実施形態において、Xは
【化16】
より選択され、YはCD
3であるが、それと共に、下記一般式を有する化合物を排除する。
【化17】
【0070】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態は、以下の構造:
【化18】
を有する式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、共結晶、水和物もしくは溶媒和物の固体(結晶)形態に関する。
【0071】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせた別の好ましい実施形態は、下記構造:
【化19】
を有する式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、共結晶、水和物もしくは溶媒和物の固体(結晶)形態に関する。
【0072】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせた別の好ましい実施形態は、下記構造:
【化20】
を有する式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される共結晶、水和物もしくは溶媒和物の固体(結晶)形態に関する。
【0073】
上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせた別の好ましい実施形態は、下記構造:
【化21】
を有する式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される共結晶、水和物もしくは溶媒和物の固体(結晶)形態に関し、好ましくは197℃(±5℃)の融点を有すること及び/又は白色固体であることをさらに特徴とする。
【0074】
[IM-250遊離塩基]
本発明の一実施形態は、遊離塩基の形態で下記構造を有する式(I)で表される固体(結晶)化合物に関する。
【化22】
【0075】
[IM-250遊離塩基形態I]
いくつかの実施形態において、このようなIM-250遊離塩基形態は、下記構造を有する固体結晶形態IM-250遊離塩基形態Iに存在する。
【化23】
当該固体IM-250遊離塩基形態Iは、9.2、13.7及び18.7度で(特徴的なピーク)反射2θ度(±0.2度2θ)を含むX線粉末回折パターン(XRPD)を特徴とする。
【0076】
いくつかの態様において、IM-250遊離塩基形態Iは、9.2、13.7及び18.7度での角度2θ反射(±0.2度2θ)並びに14.4、24.0及び27.3度での角度2θ反射(±0.2度2θ)のうちの1つ、2つ又は3つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0077】
いくつかの実施形態において、IM-250遊離塩基形態Iは、9.2、13.7、14.4、18.7、24.0及び27.3度での角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0078】
いくつかの実施形態において、IM-250遊離塩基形態Iは、以下の(特徴的な)ピーク:9.2、13.7、14.4、18.7、24.0及び27.3度2θ(±0.2度2θ)のうちの少なくとも4つを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0079】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0080】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-250遊離塩基形態Iは、実質的に
図1に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する、角度2θ反射の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0081】
より好ましくは、そのような固体遊離塩基形態であるIM-250遊離塩基形態Iは、実質的に
図1に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0082】
さらに、そのようなIM-250遊離塩基形態Iは、実質的に
図2に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0083】
さらに、そのようなIM-250遊離塩基形態Iは、実質的に
図2に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0084】
結晶性IM-250遊離塩基形態Iのいくつかの実施形態では、下記の(a)~(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべてが適用される:
(a)結晶性IM-250遊離塩基形態Iは実質的に
図1に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性IM-250遊離塩基形態Iは実質的に
図2に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性IM-250遊離塩基形態Iは実質的に
図2に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-250遊離塩基形態Iは、下記の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する:
(a)実質的に
図1に示されるようなXRPDパターン、
(b)実質的に
図2に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図2に示されるTGAサーモグラム。
【0086】
いくつかの実施形態において、IM-250遊離塩基形態Iは、約163℃で開始する吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0087】
従って、固体IM-250遊離塩基形態Iは、164~165℃(±5℃)の融点を有することをさらに特徴とし得る。
【0088】
[IM-250遊離塩基形態III]
いくつかの実施形態において、このようなIM-250遊離塩基形態は、下記構造を有する固体結晶形態IM-250遊離塩基形態III中に存在する。
【化24】
上記構造において、この固体IM-250遊離塩基形態IIIは、9.7、12.3及び15.6度における(特徴的なピーク)角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0089】
いくつかの態様において、IM-250遊離塩基形態IIIは、9.7、12.3及び15.6度での角度2θ反射(±0.2度2θ)ならびに12.9、22.7及び23.8度での角度2θ反射(±0.2度2θ)のうちの1つ、2つ又は3つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0090】
いくつかの態様において、IM-250遊離塩基形態IIIは、9.7、12.3、12.9、15.6、22.7及び23.8度での角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0091】
いくつかの実施形態において、IM-250遊離塩基形態IIIは、以下の(特徴的な)ピーク:9.7、12.3、12.9、15.6、22.7及び23.8度2θ(±0.2度2θ)のうちの少なくとも4つを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0092】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0093】
いくつかの実施形態では、結晶性IM-250遊離塩基形態IIIは、実質的に
図3に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する角度2θ反射のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0094】
より好ましくは、そのような固体遊離塩基形態、IM-250遊離塩基形態IIIは、実質的に
図3に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0095】
さらに、そのようなIM-250遊離塩基形態IIIは、実質的に
図4に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0096】
さらに、そのようなIM-250遊離塩基形態IIIは、実質的に
図4に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0097】
結晶性IM-250遊離塩基形態IIIのいくつかの実施形態では、下記の(a)~(c)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべてが当てはまる:
(a)結晶性IM-250遊離塩基形態IIIは実質的に
図3に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性IM-250遊離塩基形態IIIが実質的に
図4に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性IM-250遊離塩基形態IIIが実質的に
図4に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-250遊離塩基形態IIIは、下記の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。
(a)実質的に
図3に示されるXRPDパターン、
(b)実質的に
図4に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図4に示されるTGAサーモグラム。
【0099】
いくつかの実施形態において、IM-250遊離塩基形態IIIは、約141℃で開始する吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0100】
従って、固体IM-250遊離塩基形態IIIは、143℃(±5℃)の融点を有することをさらに特徴とし得る。
【0101】
[重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)]
本発明のさらなる実施形態は、下記構造を有し、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)である、式(I)で表される固体(結晶性)化合物に関する。
【化25】
上記構造において、この固体重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、9.3、13.7及び18.6度における(特徴的なピーク)角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むX線粉末回折パターン(XRPD)によって特徴付けられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、9.3、13.7及び18.6度での角度2θ反射(±0.2度2θ)並びに14.4、15.3、15.5及び24.1度での角度2θ反射(±0.2度2θ)の1つ、2つ、3つ又は4つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0103】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、9.3、13.7、14.4、15.3、15.5、18.6及び24.1度における角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0104】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、以下の(特徴的な)ピーク:9.3、13.7、14.4、15.3、15.5、18.6及び24.1度2θ(±0.2度2θ)の少なくとも4つを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0105】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0106】
いくつかの実施形態では、結晶性重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、
図14に実質的に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する角度2θ反射の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0107】
より好ましくはそのような固体遊離塩基形態、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、実質的に
図14に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0108】
さらに、そのような重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、実質的に
図16に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0109】
さらに、そのような重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、実質的に
図15に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0110】
結晶性重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)のいくつかの実施形態では、以下の(a)~(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべてが当てはまる:
(a)結晶性重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、実質的に
図14に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、実質的に
図16に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、実質的に
図15に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0111】
いくつかの実施形態において、結晶性重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、以下の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する:
(a)実質的に
図14に示されるXRPDパターン、
(b)実質的に
図16に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図15に示されるTGAサーモグラム。
【0112】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、約163℃で開始する吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0113】
従って、固体重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、163~165℃(±5℃)の融点を有することをさらに特徴とし得る。
【0114】
[本発明の化合物の選択された塩形態]
本発明のさらなる態様は、式(I)で表される化合物の選択された塩形態に関し、好ましくは式(I)の化合物において、Xは下記式で表されるものである。
【化26】
【0115】
特に好適なのは、特に式(I)の化合物の塩酸塩及びナパジシレート塩のような本発明の化合物の塩酸塩及びナパジシレート塩及びその水和物又は溶媒和物であり、式中、Xは、
【化27】
であり、Yは、CH
3及びCD
3から選択される、塩酸塩が最も好適である。
【0116】
[IM-250塩酸塩]
本発明のさらなる実施形態は、下記の構造を有するIM-250塩酸塩である、化合物IM-250の塩酸塩に関する。
【化28】
【0117】
本発明の一実施形態では、このようなIM-250塩酸塩は、13.7度、17.7度、及び22.8度における(特徴的なピーク)角度2θ反射(±0.3度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0118】
いくつかの実施形態において、IM-250塩酸塩は、13.7、17.7及び22.8度での角度2θ反射(±0.3度2θ)並びに17.0、19.8及び21.8度での角度2θ反射(±0.3度2θ)の1つ、2つ又は3つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0119】
いくつかの実施形態において、IM-250塩酸塩は、13.7、17.0、17.7、19.8、21.8及び22.8度における角度2θ反射(±0.3度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0120】
いくつかの実施形態では、IM-250塩酸塩は、以下のピーク:13.7、17.0、17.7、19.8、21.8及び22.8度2θ(±0.3度2θ)の少なくとも4つを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0121】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0122】
いくつかの実施形態では、結晶性IM-250塩酸塩は、
図5に実質的に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する角度2θ反射の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、結晶性IM-250塩酸塩は、
図7に実質的に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する度2θ反射の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0124】
いくつかの実施形態において、そのような固体塩酸塩形態IM-250塩酸塩は、実質的に
図5に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0125】
いくつかの実施形態において、そのような固体塩酸塩形態IM-250塩酸塩は、実質的に
図7に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0126】
さらに、そのようなIM-250塩酸塩は、実質的に
図6に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0127】
さらに、そのようなIM-250塩酸塩は、実質的に
図6に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0128】
結晶性IM-250塩酸塩のいくつかの実施形態では、以下の(a)~(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべてが当てはまる:
(a)結晶性IM-250塩酸塩は、実質的に
図5に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性IM-250塩酸塩は、実質的に
図6に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性IM-250塩酸塩は、実質的に
図6に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0129】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-250塩酸塩は、以下の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。
(a)実質的に
図5に示されるXRPDパターン、
(b)実質的に
図6に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図6に示されるTGAサーモグラム。
【0130】
結晶性IM-250塩酸塩のいくつかの実施形態では以下の(a)~(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべてが当てはまる:
(a)結晶性IM-250塩酸塩は、実質的に
図7に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性IM-250塩酸塩は、実質的に
図6に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性IM-250塩酸塩は、実質的に
図6に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0131】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-250塩酸塩は、以下の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。
(a)実質的に
図7に示されるXRPDパターン、
(b)実質的に
図6に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図6に示されるTGAサーモグラム。
【0132】
いくつかの実施形態において、IM-250塩酸塩は、約151/170℃の開始/終了温度での加熱時に約9.8%の質量損失を示す熱重量分析サーモグラムを有する。
【0133】
いくつかの実施形態において、IM-250塩酸塩は、約221℃の分解開始温度を示す熱重量分析サーモグラムを有する。
【0134】
いくつかの実施態様において、下記構造を有するIM-250塩酸塩が本明細書において提供される。
【化29】
上記式において、塩酸塩及び(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミドは、1~1±0.2のモル比である。
【0135】
前記塩酸塩、IM-250塩酸塩は、驚くべきことに、化学的及び物理的安定性吸湿性(の欠如)及び改善された生物学的利用能に関していくつかの利点を示すことが判明したが、以下の実施例に示されるように、他の試験された塩はあまり有利ではなかった。従って、化合物、IM-250塩酸塩は、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0136】
[重水素化IM-250塩酸塩-d3-IM-250塩酸塩]
本発明のさらなる実施形態は、以下の構造を有する化合物であるIM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)の対応する重水素化化合物の塩酸塩に関する。
【化30】
【0137】
本発明の一実施形態では、そのような重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)が13.8、17.8及び21.8度における(特徴的なピーク)角度2θ反射(±0.3度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0138】
いくつかの態様において、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、13.8、17.8及び21.8度での角度2θ反射(±0.3度2θ)ならびに11.3、11.9、19.8、21.0及び21.3度での角度2θ反射(±0.3度2θ)の1つ、2つ、3つ、4つ又は5つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0139】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)が11.3、11.9、13.8、17.8、19.8、21.0、21.3及び21.8度における角度2θ反射(±0.3度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0140】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)が以下のピーク:11.3、11.9、13.8、17.8、19.8、21.0、21.3及び21.8度2θ(±0.3度2θ)の少なくとも4つを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0141】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0142】
いくつかの実施形態では、結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)が
図17に実質的に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する角度2θ反射の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、そのような固体塩酸塩形態の重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)が実質的に
図17に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0144】
さらに、そのような重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、実質的に
図18に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0145】
さらに、そのような重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、実質的に
図18に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0146】
結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)のいくつかの実施態様において、以下の(a)-(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全てを適用する:
(a)結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は実質的に
図17に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は実質的に
図18に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、実質的に
図18に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0147】
いくつかの実施形態において、結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、以下の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。
(a)実質的に
図17に示されるようなXRPDパターン、
(b)実質的に
図18に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図18に示されるTGAサーモグラム。
【0148】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、約149/167℃の開始/終了温度で加熱すると約7.8%の質量損失を示す熱重量分析サーモグラムを有する。
【0149】
いくつかの実施形態では、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、約225℃の分解開始温度を示す熱重量分析サーモグラムを有する。
【0150】
いくつかの実施形態において、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、約188℃で開始する吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0151】
従って、固体重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、188~194℃(±5℃)の融点を有することをさらに特徴とし得る。
【0152】
いくつかの実施態様において、下記の構造を有する重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)が、本明細書において提供される。
【化31】
上記式において、塩酸塩及び(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-(メチル-d
3)-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミドは、1~1±0.2のモル比である。
【0153】
前記重水素化塩酸塩、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、驚くべきことに、化学的及び物理的安定性、吸湿性(の欠如)及び改善された生物学的利用能に関していくつかの利点を示すことが判明したが、他の試験された塩はそれほど有利ではなかった。従って、結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)は、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0154】
[IM-250ナパジシレート塩]
本発明のさらなる実施形態は、以下の構造を有するIM-250ナパジシレートである、化合物IM-250のナフタレンジスルホン酸塩に関する。
【化32】
【0155】
本発明の一実施形態では、そのようなIM-250ナパジシレートは、9.1、14.5及び18.1度において(特徴的なピーク)角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有することを特徴とする。
【0156】
いくつかの実施形態において、IM-250ナパジシレートは、9.1、14.5及び18.1度での角度2θ反射(±0.2度2θ)並びに15.6、19.1及び20.9度での角度2θ反射(±0.2度2θ)の1つ、2つ又は3つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0157】
いくつかの実施形態において、IM-250ナパジシレートは、9.1、14.5、15.6、18.1、19.1及び20.9度における角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0158】
いくつかの実施形態において、IM-250ナパジシレートは、以下のピーク:9.1、14.5、15.6、18.1、19.1及び20.9度2θ(±0.2度2θ)の少なくとも4つを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0159】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0160】
いくつかの実施形態では、結晶性IM-250ナパジシレートは、
図8に実質的に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する角度2θ反射の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを示すXRPDパターンを有する。
【0161】
より好ましくは、そのような固体形態IM-250ナパジシレートは、実質的に
図8に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0162】
さらに、そのようなIM-250ナパジシレートは、実質的に
図9に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0163】
さらに、そのようなIM-250ナパジシレートは、実質的に
図9に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0164】
結晶性IM-250ナパジシレートのいくつかの実施形態では、以下の(a)~(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべてが適用される:
(a)結晶性IM-250ナパジシレートは、実質的に
図8に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性IM-250ナパジシレートは、実質的に
図9に示されるようなDSCサーモグラムを有する;
(c)結晶性IM-250ナパジシレートは、実質的に
図9に示されるようなTGAサーモグラムを有する。
【0165】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-250ナパジシレートは、以下の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。
(a)実質的に
図8に示されるようなXRPDパターン、
(b)実質的に
図9に示されるDSCサーモグラム、
(c)実質的に
図9に示されるTGAサーモグラム。
【0166】
いくつかの実施形態において、IM-250ナパジシレートは、約223℃で開始する発熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0167】
従って、固体IM-250ナパジシレートは、230℃(±5℃)の融点を有することをさらに特徴とし得る。
【0168】
いくつかの実施態様において、下記構造を有するIM-250ナパジシレートが、本明細書において提供される。
【化33】
上記構造において、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸及び(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミドは、1~2±0.2のモル比である。
【0169】
驚くべきことに、ナパジシレート塩、IM-250ナパジシレート塩は、化学的及び物理的安定性、吸湿性(の欠如)及び改善された生物学的利用能に関していくつかの利点を示すことが判明したが、以下の実施例に示されるように、他の試験された塩はあまり有利ではなかった。従って、化合物、IM-250ナパジシレート塩は、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0170】
[重水素化IM-250ナパジシレート塩-d3-IM-250ナパジシレート]
本発明の別の実施形態において、IM-250ナパジシレート塩は、下記構造で表される、重水素化化合物IM-250のナフタレンジスルホン酸塩の重水素化形態で存在することもできる。
【化34】
【0171】
[固体形態IM-315]
本発明のさらなる実施形態は、下記構造を有するIM-315である、式(I)で表される固体(結晶性)化合物に関する。
【化35】
上記構造において、この固体IM-315形態は、6.4、12.5及び18.3度において(特徴的なピーク)角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有することを特徴とする。
【0172】
いくつかの実施形態において、IM-315は、6.4、12.5及び18.3度での角度2θ反射(±0.2度2θ)並びに22.3及び23.1度での角度2θ反射(±0.2度2θ)の1つ又は2つを含むXRPDパターンを特徴とする。
【0173】
いくつかの実施形態では、IM-315は、6.4、12.5、18.3、22.3、及び23.1度における角度2θ反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有する。
【0174】
いくつかの実施形態において、IM-315は、以下のピーク:6.4、12.5、18.3、22.3及び23.1度2θ(±0.2度2θ)の少なくとも3つを含むXRPDパターンを有する。
【0175】
全ての値は、1.54Åの波長でCu-Kα放射線を用いて回折計で測定される。
【0176】
いくつかの実施形態では、結晶性IM-315は、
図10に実質的に示されるXRPDパターンとして最大強度を有する角度2θ反射のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つを表示するXRPDパターンを有する。
【0177】
より好ましくは、そのような固体形態IM-315が実質的に
図10に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0178】
さらに、そのようなIM-315は、実質的に
図11に示されるような示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。
【0179】
結晶性IM-315のいくつかの実施形態では、以下の(a)~(b)の少なくとも1つ又はすべてが当てはまる:
(a)結晶性IM-315は、実質的に
図10に示されるようなXRPDパターンを有する;
(b)結晶性IM-315は、実質的に
図11に示されるようなDSCサーモグラムを有する。
【0180】
いくつかの実施形態において、結晶性IM-315は、以下の特性の少なくとも1つ又は少なくとも2つを有する。
(a)実質的に
図10に示されるXRPDパターン、
(b)実質的に
図11に示されるDSCサーモグラム。
【0181】
さらに、このようなIM-315形態は、約196℃で開始する発熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0182】
従って、固体IM-315形態は、197℃(±5℃)の融点を有することをさらに特徴とし得る。
【0183】
実施例5に記載されるように、本発明によるIM-315形態は、白色固体として存在する。
【0184】
対照的に、特許文献1及び特許文献2に開示されている実施例化合物番号87は、184℃の融点を有し、淡黄色固体の形態で得られることを特徴とする。それによって、本発明によるIM-315は特許文献1及び特許文献2の実施例化合物番号87と異なり、本形態IM-315は、特許文献1及び特許文献2の実施例化合物番号87とは異なる新しい多形形態を構成すると結論付けることができる。
【0185】
[式(I)の化合物の固体形態の投与形態及び医学的使用]
本発明のさらなる態様は、上記の実施形態のいずれかの化合物の1つ又は複数を含む医薬製剤に関する。
【0186】
本発明のさらなる態様は、医薬としての使用のための、上記実施形態のいずれかの化合物に関する。
【0187】
特に、本発明は、ウイルス感染に関連する疾患又は障害の治療又は予防に使用するための記載の化合物に関する。
【0188】
より詳細には、本発明がヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染に関連する疾患又は障害の治療又は予防に使用するための、即ち、単純ヘルペスウイルス感染などのヘルペス感染の治療又は予防に使用するための、記載された化合物に関する。
【0189】
さらなる態様において、本発明は神経組織及び神経におけるヘルペスウイルスの潜伏(休眠)形態を治療及び排除する際に、好ましくは、ヘルペス感染又は単純ヘルペス脳炎(HSE)などのそれに伴う重篤な影響の再発及び再活性化を回避又は予防するために使用するための記載された化合物に関する。
【0190】
さらなる態様において、本発明はウイルスによって引き起こされる神経変性疾患、例えば、特にウイルスによって、特に単純ヘルペスウイルスによって引き起こされるアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療又は予防における使用のための記載された化合物に関する。
【0191】
さらなる態様において、本発明は、下記する患者に使用するための前記した化合物に関する:
ヘルペス感染症、特に単純ヘルペス感染症を呈する患者、口唇ヘルペス、陰部ヘルペス及びヘルペス関連角膜炎、アルツハイマー病、脳炎、肺炎、肝炎を呈する患者;免疫系が抑制された患者、例えばAIDS患者、癌患者、遺伝子免疫不全を有する患者、移植患者;新生児及び乳児;ヘルペス陽性患者、特に単純ヘルペス陽性患者、再発抑制(抑制療法)のための患者;又はアシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル及び/又はホスカルネット若しくはシドフォビルなどのヌクレオシド抗ウイルス療法に耐性を有する患者、特にヘルペス陽性患者、特に単純ヘルペス陽性患者。
【0192】
本発明による化合物は、ヒトならびに動物におけるそれぞれの障害及び疾患の予防及び治療における使用のために考慮される。
【0193】
従って、本発明は、医薬の調製のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。
【0194】
さらに、本発明は、特に単純ヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染に関連する疾患又は障害などのウイルス感染に関連する疾患又は障害を予防又は治療する方法、ならびに、好ましくは、ヘルペス感染の再発及び再活性化、又は単純ヘルペス脳炎(HSE)などの感染に伴う重篤な影響さえも回避又は予防するための、神経組織及び神経における潜在性(休眠)形態のヘルペスウイルスを治療及び排除する方法、又は特にアルツハイマー病などのウイルスによって引き起こされる神経変性疾患を予防又は治療する方法に関し、当該方法はそれを必要とするヒト又は動物に、有効量の本明細書に記載の化合物又は前記化合物を含む組成物を投与することを含む。
【0195】
実際の使用において、本発明において使用される化合物は、従来の薬学的配合技術に従って、薬学的担体との緊密な混合物中で活性成分として組み合わせることができる。前記担体は、投与、例えば、経口又は非経口(静脈内を含む)に所望される調製物の形態に応じて、多種多様な形態をとり得る。経口剤形のための組成物を調製する際には、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの経口液体製剤の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤など;又は例えば、粉末、硬質及び軟質カプセル及び錠剤などの経口固体製剤の場合には、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体のような、通常の医薬媒体のいずれかを使用することができ、液体製剤よりも固体経口製剤が好ましい。
【0196】
その投与の容易性のために、錠剤及びカプセル剤が最も有利な経口単位剤形を提供し、この場合に固体の薬物担体が明らかに使用される。必要に応じて、錠剤は、標準的な水性又は非水性技術によってコーティングされ得る。そのような組成物及び調製物は、少なくとも0.1パーセントの活性化合物を含有する必要がある。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージはもちろん変更することができ、好都合には、単位重量の約2.0パーセント~約60.0パーセントであり得る。そのような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効用量が得られるような量である。活性化合物はまた、鼻腔内に、例えば、液滴もしくはスプレーとして、又は点眼剤として投与され得る。
【0197】
錠剤、丸剤、カプセル剤などは、また、トラガントゴム、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びショ糖、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤を含有する可能性がある。単位剤形がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有し得る。
【0198】
被覆物としてか、又は投与単位の物理的形状を改質化するために、種々の他の物質が存在し得る。例えば、錠剤は、シェラック、砂糖又はその両者で被覆し得る。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素、ならびにチェリー又はオレンジフレーバーなどの香味剤を含有し得る。
【0199】
本発明において使用される化合物は、また、非経口的に投与され得る。これらの活性化合物の溶液又は懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。また分散剤はグリセリン、液体ポリエチレングリコール及びその油中の混合物中で製造し得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存料を含む。
【0200】
注射用に適する製薬学的形態は、滅菌注射溶液又は分散液の即時調製物に対する滅菌水溶液又は分散液及び滅菌粉末を含む。すべての場合に、前記形態は滅菌され、そして容易に注入できる程度の液状でなければならない。このものは製造の条件下で安定であり、そして微生物例えばバクテリア及び菌・カビの汚染作用に対して保存されなければならない。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0201】
哺乳動物、特にヒトに有効用量の本発明の化合物を提供するために、任意の適切な投与経路を用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口(静脈内を含む)、眼、肺、鼻などを用いることができる。剤形には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、ゲル、軟膏、エアロゾルなどが含まれる。好ましくは本発明の化合物は、点眼剤、クリーム又はゲルとして経口又は局所投与され、より好ましくは本発明の化合物は経口投与される。
【0202】
使用される活性成分の有効用量は、使用される特定の化合物、投与様式、治療される状態、及び治療される状態の重症度に応じて変動し得る。そのような用量は、当業者によって容易に確認され得る。
【0203】
本発明の化合物は、また、さらなる活性成分、特に、本明細書に記載の障害又は疾患のいずれかの治療において有利な効果を示す1つ以上の活性成分と組み合わせて存在してもよい。非常に特に、本発明の化合物は、ウイルス感染に関連する疾患又は障害(抗ウイルス活性化合物)、好ましくはヘルペスウイルスによって、特に単純ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染に関連する疾患又は障害、従っていわゆる併用療法に関連する疾患又は障害を治療するのに有効である少なくとも1つのさらなる活性物質と組み合わせて組成物中に存在する。少なくとも1つのさらなる活性物質(免疫モジュレーター、例えば、グルココルチコイド)が、ウイルス感染に関連する疾患又は障害を治療するのに有効であり、また、より好ましくは、アシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル及びトリフルリジンなどのヌクレオシド系薬物からなる群から選択される抗ウイルス活性化合物、ならびにホスカルネット及びシドフォビルなどの化合物が有効である。
【0204】
従って、本発明はさらに、ウイルス感染に関連する疾患又は障害(抗ウイルス活性化合物)の治療に有効で本明細書に記載の化合物の1つ又は複数と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤及び/又は少なくとも1つのさらなる活性物質とを含む医薬組成物に関する。
【0205】
本発明のさらなる態様は、腫瘍、癌又は新生物を治療するための腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における、ヘリカーゼプライマーゼ阻害剤として作用する本明細書に記載の化合物の使用に関する。
【0206】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、癌を治療するための腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における解毒剤としての使用のための医薬組成物であって、本明細書に記載の任意の実施形態で定義される少なくとも1つのヘリカーゼプリマーゼ阻害剤を含み、癌治療で使用される前記阻害剤に感受性の腫瘍溶解性ウイルスの活性を制御、調節、阻害又は遮断するように作用し、そして少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤及び/又は抗ウイルス活性もしくは免疫調節化合物などの少なくとも1つのさらなる活性物質をさらに含み得、かつ癌の治療で使用される腫瘍溶解性ウイルス感染に関連する疾患又は障害を治療するのに有効であるチェックポイント阻害剤を含む医薬組成物に関する。
【0207】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、特許文献5に詳細に記載されているような腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における使用のための、本発明のヘリカーゼプリマーゼ阻害剤化合物又は医薬組成物に関し、ここで、治療される癌は固形癌であり、好ましくは、癌疾患が肝臓癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、脳癌、黒色腫及び神経膠芽腫などから選択される。
【0208】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、特許文献5に記載されているような腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法において使用するための、本発明のヘリカーゼプリマーゼ阻害剤化合物又は医薬組成物に関し、ここで、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ヘルペスウイルスである。
【0209】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、特許文献5に記載されているような腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における使用のための、本発明のヘリカーゼプリマーゼ阻害剤化合物又は医薬組成物に関し、ここで、癌療法は、腫瘍溶解性ウイルスもしくは腫瘍溶解性ウイルス感染細胞及び/又はヘリカーゼプリマーゼ阻害剤又はそれを含む医薬組成物の注入、注射、腫瘍内注射又は局所もしくは経皮適用を含む。
【0210】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、特許文献5に記載されているような腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における使用のための、本発明のヘリカーゼプリマーゼ阻害剤化合物又は医薬組成物に関し、ここで、腫瘍溶解性ウイルス又は腫瘍溶解性ウイルス感染細胞は、腫瘍溶解性野生型、臨床分離株又は実験用ヘルペスウイルス株、又は遺伝的に操作された、もしくは多変異され、場合により弱毒化又は追加免疫された腫瘍溶解性ヘルペスウイルスから選択される。
【0211】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、特許文献5に記載されているような腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における使用のための、本発明のヘリカーゼプリマーゼ阻害剤化合物又は医薬組成物の少なくとも1つと、野生型、実験室株、臨床分離株、及び遺伝子操作された又は多変異腫瘍溶解性ウイルスから選択される少なくとも1つの腫瘍溶解性ウイルスとを含むキットに関する。
【0212】
本発明のこの追加の態様のさらなる実施形態は、本明細書に定義される癌の治療における使用のための前記キットに関する。
【0213】
本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法における使用のためのヘリカーゼプリマーゼ阻害剤化合物、医薬組成物又はキットは、以下の患者群のうちの1つ又は複数に適用することができる:
乳児;再発又は腫瘍溶解性ウイルス排出を抑制するためのヘルペス陽性患者、特に腫瘍溶解性単純ヘルペス陽性患者;アシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル及び/又はホスカルネットもしくはシドフォビルなどのヌクレオシド抗ウイルス療法に耐性である患者、特にヘルペス陽性患者、特に腫瘍溶解性単純ヘルペス陽性患者。
【0214】
本発明のさらなる態様は、以下の構造:
【化36】
を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、共結晶、水和物もしくは溶媒和物の調製に関するものであり、
(a)化合物P2b:
【化37】
を下記の化合物:
【化38】
と接触させる工程、
(b)化合物P2c:
【化39】
を、Rh
2(OAc)
4、tert-ブチルカルバメート、マグネシウムオキシド及び(ジアセトキシ)ヨードベンゼンと、化合物P2d:
【化40】
を形成するのに十分な条件下で接触させる工程、
(c)下記構造:
【化41】
を有する化合物を形成するのに十分な条件下で化合物P2dを脱保護する工程、及び
(d)任意に、化合物IM-250を、その薬学的に許容される塩、共結晶、水和物又は溶媒和物に随意に変換する工程、
を含む。
【0215】
さらなる実施形態は上述されたプロセスに関し、化合物P2d:
【化42】
は、工程(c)において塩酸で脱保護して、化合物IM-250塩酸塩:
【化43】
に相当する化合物IM-250の塩酸塩を形成する。
【0216】
好ましい実施形態において、IM-250塩酸塩は、イソプロパノール又はエタノール、好ましくはエタノールから再結晶される。
【0217】
上述の方法における別の実施形態では、化合物P2d:
【化44】
は、工程(c)において、1,5-ナフタレンジスルホン酸四水和物で脱保護されて、化合物IM-250のナパジシレート塩を形成する。
【0218】
同様にして、式(I)中のYに対応する位置で重水素化する工程を含めて、対応する重水素化化合物を得ることができる。
【実施例】
【0219】
[実験パート]
[略語]
HPMC ヒドロキシプロピルメチルセルロース
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC 示差走査熱量計
EA 酢酸エチル
EDCI・塩酸 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
FCC シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
PE 石油エーテル
rt 室温
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
TFA トリフルオロ酢酸
TGA 熱重量分析
THF テトラヒドロフラン
XRPD 粉末X線回析
【0220】
[実験セクション]
[X線粉末回折(XRPD)]
XRPD分析は、銅アンチカソード、単結晶シリコーン試料ホルダ及び位置感受性検出器(LynxExe)を用いて、ブルカーD2フェーズ回折計(Bruker D2 Phase diffractometer)で行った。粉末試料を、好ましい配向を回避し、当該試料表面の平面性を感知するような方法で、平坦な単結晶シリコーン試料ホルダ上に装填した。機器の動作条件は、次の通りである:
周囲温度及び雰囲気、X線発生器電圧30kV及び強度10mA、X線源:標的銅;放出放射Kα1=0.15406nm、Kα2=0.15444nm、比Kα2/Kα1=0.5、Kβフィルタ放射ニッケル、スリット:発散防止1nM、ソルラースリット2.5°、ゴニオメータ:2θについて4°~45°又は4°~50°まで分析した角度セクタ、2θについてステップサイズ0.07°、試料ホルダ回転速度:30rpm、検出:ゴニオメータ1sのステップサイズ当たりの露光時間。
【0221】
[示差走査熱量計(DSC)]
DSC分析は、Q1000 TA Instruments分析器で行った。分析される試料は、アルミニウムカプセル中で秤量され、次いで、クリンプされ、熱量計オーブンに入れられた。機器の運転条件は次の通りである:ヒータランプ10℃/min、最終温度230℃又は240℃、キャリアガス:窒素(Messer“qualite Azote 5.0”)、流量50mL/min。
【0222】
[熱重量分析(TGA)]
TGA分析は、TA Instruments TGA Hi-Res 2950で行った。試料を開いたアルミニウムバスケットに入れ、以下のように分析した:
質量アッセイ5mg;加熱ランプ10℃/分;最終温度500℃;キャリアガス:流量95~105mL/分の窒素(Messer“qualite Azote 5.0”)。
【0223】
(実施例1:IM-250遊離塩基形態Iの合成)
標題化合物を、固定相としてキラルセルOJを使用し、移動相として60/40体積%のCO2/IPA及び追加の下記データを使用して、キラルSFCクロマトグラフィによって(特許文献4の実施例7に記載のように)ラセミ混合物を分離することによって調製した:
機器:SFC-200(Thar, Waters)
カラム:OJ 20×250mm、10μm(ダイセル)
カラム温度:35℃
流量:100g/min
背圧:100bar
検出波長:214nm
サイクルタイム:6分
試料溶液:70gをジクロロメタン2000mLに溶解
注射液量:3mL
【0224】
表題化合物IM-250遊離塩基形態Iは、CO2を蒸発させた後、最初に溶出する鏡像異性体の移動相(溶剤)を除去し(滞留時間:3.25分)、そして40℃でロータリーエバポレーターによりIPAを除去することにより得ることができる。
【0225】
XRPD分析を行った。
図1はIM-250遊離塩基形態IのXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、以下の表1に含められる。
【0226】
【0227】
TGA及びDSC分析を行った。
図2はIM-250遊離塩基形態IのDSC及びTGAサーモグラムのオーバーレイを示す。TGA分析(右曲線)は、固体が約160℃未満で約0.1重量%を失い、固体が約240~300℃で約76重量%を失う(分解)ことを示した。DSC分析は約163°Cで開始し、164°C(遷移エンタルピィ83J/g)でピークを有する吸熱を明らかにした。
【0228】
(実施例2:IM-250遊離塩基形態IIIの合成)
[工程1:N,4-ジメチル-5-(メチルスルフィニル)チアゾール-2-アミン(P2a)]
【化45】
CH
2Cl
2(1.0L)中のN,4-ジメチル-5-(メチルチオ)チアゾール-2-アミン(特許文献4の実施例P4aに記載されているように)(80g、0.46mol)の溶液に、メタクロロペルオキシ安息香酸(83g、85%、0.46mol)を室温で加え、そしてその混合物を30分間撹拌した。次に、飽和NaHCO
3液を加えた。上記混合物は、CH
2Cl
2(1.5L)で抽出し、塩水(500mL)で洗浄した。上記有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮し、FCC(CH
2Cl
2:MeOH=10:1)で精製して、標記化合物P2a(58g、66%)を黄色の固形物として得た。
【0229】
[工程2:(-)-(S)-N,4-ジメチル-5-(メチルスルフィニル)チアゾール-2-アミン(P2b)]
【化46】
標題化合物P2bはキラルSFCクロマトグラフィーによるラセミ混合物P2aの分離により、以下の装置及び条件を用いて調製した:
機器:SFC-80(Thar, Waters)
カラム:IC 20×250mm、10μm(ダイセル)
カラム温度:35℃
移動相:0.2%NH
3を有するCO
2/MeOH=65/35
流量:80g/min
背圧:100bar
検出波長:214nm
サイクルタイム:5.6分
試料溶液:1Lに溶解した58g
注射液量:1.5mL
【0230】
化合物P2bは、最初に溶出するエナンチオマーとして淡黄色固体(22.5g)として得られた(保持時間:2.38分)。
【0231】
これは[α]20
589nm-33.5°(c=1.00g/100mLMeOH)の負の旋光度を有する。
【0232】
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):8.22(d,J=4.4Hz,1H),2.84(d,J=4.8Hz,3H),2.79(s,3H),2.24(s,3H)。MS実測値:191.2[M+H]+。
【0233】
[工程3:(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-(メチルスルフィニル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(P2c)]
【化47】
2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)酢酸(96.4g、389mmol)及びHOBt(78.7g、583mmol)をDMF(800mL)に溶解した。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで化合物P2b(74.0g、389mmol)及びEDCI・塩酸(112g、583mmol)を添加した。この混合物を一晩撹拌し、真空中で濃縮し、EA(1.0L)に再溶解し、水(2×0.5L)で洗浄した。この有機層をNa
2SO
4で乾燥し、真空中で濃縮し、FCC(PE:EA=1:2)で精製して、化合物P2c(145g、89%)を白色固形物として得た。
【0234】
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):7.57(dd,J=8.0,1.6Hz,2H),7.46-7.36(m,4H),7.30-7.24(m,1H),4.24(s,2H),3.74(s,3H),2.91(s,3H),2.41(s,3H)。MS実測値:421.1[M+H]+。
【0235】
[工程4:(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-(S-メチル-N-((1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル)スルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(P2d)]
【化48】
酸化マグネシウム(55.2g、1.38mol)、カルバミン酸tert-ブチル(80.7g、690mmol)、Rh
2(OAc)
4(14.5g、32.8mmol)及び(ジアセトキシ)ヨードベンゼン(167g、517mmol)を、CH
2Cl
2(1.0L)中の化合物P2c(145g、345mmol)の水溶液に加えた。混合物を40℃で1時間撹拌した。追加のRh
2(OAc)
4(4.8g、11mmol)、MgO(18.4g、460mmol)、カルバミン酸tert-ブチル(26.9g、230mmol)及び(ジアセトキシ)ヨードベンゼン(55.5g、172mmol)を加え、一晩撹拌した。次いで、この混合物をセライトのパッドを通して濾過し、前記溶媒を減圧下で除去し、そして粗生成物をFCC(PE:EA=1:1)により精製して、化合物P2d(160g、87%)を白色固体として得た。
【0236】
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):7.57(dd,J=8.0,1.2Hz,2H),7.45-7.35(m,4H),7.29-7.24(m,1H),4.26(s,2H),3.75(s,3H),3.47(s,3H),2.51(s,3H),1.32(s,9H)。MS実測値:536.1[M+H]+。
【0237】
[工程5:(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(IM-250遊離塩基)]
【化49】
周囲温度で、化合物P2d(160g、299mmol)を、CH
2Cl
2(0.5L)中のTFA(80mL)酸の撹拌液に添加し、そして撹拌を90分間続けた。この混合物を濃縮し、次いでCH
2Cl
2に溶解し、飽和NaHCO
3液(3×0.5L)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濃縮し、そしてFCC(PE:EA=1:2)で精製して、30℃のロータリーエバポレーターで有機溶媒を除去した後、IM-250遊離塩基形態III(120g、92%)を白色固形物として得た。
【0238】
XRPD分析を行った。
図3は、IM-250遊離塩基形態IIIのXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、そして以下の表2に含めた。
【0239】
【0240】
TGA及びDSC分析を行った。
図4は、IM-250遊離塩基形態IIIのDSC及びTGAサーモグラムのオーバーレイを示す。TGA分析(右曲線)は固体が約130℃未満で約0.2%の重量を失い、固体が約240~300℃で約75%の重量を失う(分解)ことを示した。DSC分析は約141℃で開始し、143℃でピーク(遷移エンタルピィ83J/g)を有する吸熱、再結晶のための148℃でピーク(遷移エンタルピィ43J/g)を有する発熱、及び約163℃で開始し、164℃でピーク(遷移エンタルピィ52J/g)を有する吸熱を明らかにした。
【0241】
(実施例3:IM-250塩酸塩の合成)
【化50】
IM-250形態I(205mg、470μmol)は、50℃及び大気圧下ロータリーエバポレーターで撹拌することによってアセトン(5mL)に可溶化された。1:1の化学量論に対応する1N塩酸の体積を添加した。次いで、その溶媒を50℃で蒸発乾固させ、フィルムを得た。このフィルムを再懸濁し、室温でエタノール(4mL)に可溶化した。次いで、その溶媒を50℃で蒸発乾固させ、メレンゲを得た。このフィルムを再懸濁し、そしてイソプロパノール(1mL)中に50℃で可溶化し、室温に保ち、部分的に脱混合し(約30分後)、次いで再可溶化のために再度50℃に加温した。非常に迅速に、強い結晶化が起こった。1回の追加の加熱(50℃)及び冷却(rt)サイクルを実施し(各20分)、この試料を室温で2日間保持した。その上清溶媒を除去し、当該粉末を動的真空下(70℃で40分間)で最終的に乾燥させて、無色結晶としてIM-250塩酸塩を得た。
【0242】
XRPD分析を行った。
図5は、IM-250塩酸塩のXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、以下の表3に含めた。
【0243】
【0244】
TGA及びDSC分析を行った。
図6は、IM-250塩酸塩のDSC及びTGAサーモグラムのオーバーレイを示す。TGA分析(右曲線)は主熱分解が221℃の開始温度で検出される前に、151/170°Cの開始/終了温度で加熱すると9.8%の質量損失を示した。9.8%の質量損失は、塩酸部分の逸脱に起因し得る。DSC分析は、真の融点を示さなかった。160℃から観察された分解されなかった二重吸熱事象は、TGAプロファイル上で観察された塩酸部分の損失に付随する。
【0245】
[エタノールによるIM-250塩酸塩の代替合成]
IM-250形態III(4.75g)を、ロータリーエバポレーターで室温及び大気圧で撹拌することによってアセトン(150mL)に可溶化した。次いで、1:1の化学量論に相当する体積の1N塩酸を添加した。この溶媒を50℃で部分的に蒸発させた(約100mL)。塩酸溶液によってもたらされた水をより良好に捕捉するために、エタノール(50mL)をその溶液に添加し、その後、数ミリリットルの残りの容量まで新たな蒸発を行った(シロップ状液体)。次いで、この試料を室温に戻し、結晶化の開始をもたらした。次いで、さらなるエタノール(50mL)を試料に添加し(常に、塩酸溶液と共にもたらされた水をより良好に除去するのを助けるために)、結晶化の予想外の増加をもたらした。XRPD分析を行った。
図7は、IM-250塩酸塩のXRPDパターンを示す。同定されたXRPDピークは
図5に示されるものと同様であり、同じ塩酸多形体が生成されたことを示した。
【0246】
[直接Boc-脱保護によるIM-250塩酸塩の代替合成]
化合物P2dをアセトン(10当量)に溶解し、50℃に加熱し、次いで塩酸(ジオキサン中4N、4当量)を添加した。完全に変換した後、その混合物を室温に到達させ、濾過し、アセトンで洗浄した。生成物を50℃で真空乾燥し、3.5%塩酸水溶液(10当量)中で室温下1時間スラリー化し、次いで濾過し、3.5%水溶液で洗浄した。この塩酸溶液(10当量)を50℃で真空乾燥して粗塩酸塩を得、これをエタノール中で再結晶して、純粋なIM-250塩酸塩を得た。
【0247】
(実施例4:IM-250ナパジシレートの合成)
【化51】
IM-250形態I(150mg、344μmol)及び1,5-ナフタレンジスルホン酸四水和物(124mg、344μmol)をガラスバイアル中で秤量する。メタノール(5mL)とTHF(5mL)の混合物を加え、この懸濁液をロータリーエバポレーターにより50℃の大気圧下で撹拌し、完全に可溶化させた。次いで、その溶媒を50℃で蒸発乾固し、フィルムを得る。このフィルムを水(1mL)及びエタノール(1mL)の混合物に再懸濁し、大気圧下40℃で数分間撹拌し、部分的に可溶化させる。水(1mL)及びエタノール(1mL)の追加の混合物を加え、大気圧下55℃で約20分間撹拌した後、完全に可溶化した。非常に迅速に、小さな粒子の強い結晶化が起こる。次いで、2サイクルの加熱(60℃で15分)及び冷却(室温で15分)を行う。最後に、試料を室温で一晩保持した。この上清をフラスコから除去した。粉末を室温で15分間乾燥し、そして最後に真空下70℃で45分間乾燥して、無色結晶としてIM-250ナパジシレートを得た。
【0248】
XRPD分析を行った。
図8は、IM-250ナパジシレートのXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、以下の表4に含めた。
【0249】
【0250】
TGA及びDSC分析を行った。
図9は、IM-250ナパジシレートのDSC及びTGAサーモグラムのオーバーレイを示す。TGA分析(右曲線)は固体が約110℃未満で約0.8重量%減少し、固体が約150~370℃で約67重量%減少する(分解)ことを示した。DSC分析の結果、発熱は約223°Cで開始し、ピークは230°C(遷移エンタルピィ152J/g)であった。
【0251】
(実施例4の比較実験:さらなるIM-250塩形態の合成)
いくつかの追加の強酸(例えば、臭化水素酸、硫酸、カンファースルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硝酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸)は、水又は純粋な有機溶媒(例えば、メタノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン)又はこれらの有機溶媒と水との混合物(50/50 v/v)のような異なる結晶化媒体中で微結晶化実験において試験された。この対イオンは、1/1(IM-250遊離塩基形態I/対イオン)モル比で試験された。結晶化実験の後、当該試料(全ての対イオン/結晶化媒体対に対応する)を分析して、結晶化をもたらした「対イオン/結晶化媒体」対を同定した。これにより、「結晶化ヒット」を定義することが可能になり、それをその後さらに特徴付けられた。
【0252】
スクリーンプレートの肉眼観察は、試験した酸をIM-250遊離塩基形態Iと組み合わせた場合、わずかな固体残渣しかもたらさないことを証明した。さらに、これらの試料のいずれにおいても、明らかに目に見える結晶形態は観察されなかった。対照的に、有意な量の材料を有する固体残渣が、異なる媒体(溶媒又は溶媒/水混合物)中で単独で再結晶されたIM-250遊離塩基形態I試料について観察された。例えば、臭化水素酸及び硝酸については、IM-250遊離塩基形態Iとの組み合わせは、わずかな試料においてのみ有意な量の材料を有する固体残渣をもたらす。硫酸、エタンジスルホン酸、トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸については、IM-250遊離塩基形態Iとの組み合わせは少数の試料においてのみ固体残渣を有する液体/ガラス質残渣をもたらす。カンファースルホン酸及びナフタレンスルホン酸については、IM-250遊離塩基形態Iとの組み合わせはわずかな固体残渣を有するか、又は固体残渣を有さない液体/硝子質残渣をもたらす。これらの試験された対イオンのそれぞれについて、結晶化の発生数及び得られた材料の品質を考慮に入れて、各対イオンについて、さらに特徴付けられるべき関連試料を選択し(また、適切な参照試料を考慮に入れて)、最終的にアップスケールした。特定の数の「IM-250遊離塩基形態I/対イオン/結晶化媒体」対を選択し、交差偏光下で光学顕微鏡により観察した。この結晶の形態(明確に定義された結晶形状が観察される場合)を異なる試料間で比較し、XRPDによって分析した。多くの可能性から、少数の有望なXRPDのみが得られ、そして開発可能性のさらなる調査のためにアップスケールされた。以下の段落では、いくつかの代表的な試みが概説される。
【0253】
[IM-250臭化水素酸塩]
約150mgのIM-250遊離塩基形態Iを最初に5mLのアセトンに可溶化した(30℃及び大気圧でロータリーエバポレーターによって撹拌)。次いで、1:1の化学量論に相当する体積の48%臭化水素酸を添加した。次いで、溶媒を40℃で蒸発乾固させて、クラスト/メレンゲを得た。このフィルムを再懸濁し、室温及び大気圧で6mLのTHFに可溶化し、非常に急速に強い結晶化をもたらした。次いで、数サイクル(2)の加熱(40℃で15分)及び冷却(室温で15分)を行い、結晶のサイズ及び品質を暫定的に増加させた。
【0254】
次いで、上記試料を室温で数時間保持した。少量の上清のみを容易に除去することができたので(初期溶液混合物全体を占める前記結晶)、当該試料を真空下で濾過した。上記単離された粉末は、動的真空下、室温で10分間、次いで60℃で約30分間、最終的に乾燥させられた。単離された試料の顕微鏡写真は、交差偏光子と分析器との間で観察された場合、粒子の高い複屈折を示し、上記試料が十分に結晶化されたことを示した。
【0255】
重ね合わされたXRPDプロファイルは、1当量の臭化水素酸で結晶化されたIM-250遊離塩基の上記試料がIM-250遊離塩基形態Iの親形態のものとは異なるXPRDパターンを示すことを証明した。
【0256】
加熱すると、223℃の開始温度で検出される主な熱分解の前に、異なる質量損失がTGAプロファイルで検出された:
1)17/25℃の開始/終了温度で検出された0.5%の第1の質量損失は、単に粉末に吸着されるであろう水及び/又は溶媒の離脱に対応したものであろう;
2)78/85℃の開始/終了温度で検出された3.5%の第2の質量損失;
3)103/115℃の開始/終了温度で検出された5.7%の第3の質量損失;及び
4)124/130℃の開始/終了温度で検出された5.7%の第4の質量損失。
【0257】
TGA分析からの発生ガスのFTIR分析は、THF FTIRスペクトルが3.5%及び5.7%の質量損失の間、上記試料を離れる揮発性種のFTIRスペクトルと最良に一致することを示した。従って、溶媒和形態の結晶化の仮説は可能性が高い。
【0258】
遊離塩基との比較によって決定された、上記塩試料中のIM-250遊離塩基のパーセンテージは、HPLCによって78.1%であることが見出された(1:1化学量論の標的IM-250臭化水素酸塩中の理論的IM-250遊離塩基パーセンテージの84.3%と比較される)。
【0259】
この結果は、予想されるものよりも低く、この試料が溶媒和形態に結晶化する可能性が高いことを確認する。
【0260】
HPLCプロファイルは単離された固体中の活性成分の非常にわずかな分解を示し、いくつかの新しい不純物の出現を伴う(285nmでの%純度=99.5%、親遊離塩基の%純度=99.8%と比較される)。
【0261】
結論として、IM-250臭化水素酸塩の結晶試料がTHF中で得られた。残念ながら、HPLC及びTGA-FTIR分析の結果は生成された臭化水素酸塩が実際にはTHF溶媒和物であり、それが開発に適さないことを証明している。実験を第2のバッチで繰り返し、同じ結果を得た。
【0262】
IM-250臭化水素酸塩についてのこの比較実験は、「IM-250遊離塩基/対イオン/結晶化媒体」マトリックス内に結晶を生成する多くの可能性から、驚くべきことに、わずかなセットアップしか、例えばIM-250ナパジシレート及びIM-250塩酸塩などの医薬としてのさらなる開発に適したIM-250塩形態を最終的に提供しなかったことを強調している。
【0263】
(実施例5:結晶性2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-メチル-5-スルファモイルチアゾール-2-イル)アセトアミドIM-315の合成)
【化52】
2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)酢酸(22.0g、88.7mmol)及びHOBt(18.0g、133mmol)をDMF(0.4L)に溶解し、この混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、4-メチル-2-(メチルアミノ)チアゾール-5-スルホンアミド(18.4g、88.7mmol)及びEDCI・塩酸(26.0g、133mmol)を添加した。この混合物を室温で一晩撹拌し、EtOAc(0.5L)で希釈し、水(2×250mL)及びブラインで洗浄した。この有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濃縮し、FCC(PE:EA=1:2)で精製して、IM-315(25.2g、65%)を白色固形物として得た。
【0264】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.65(s,2H),7.60-7.52(m,2H),7.46-7.33(m,4H),7.30-7.22(m,1H),4.23(s,2H),3.72(s,3H),2.48(s,3H)。MS実測値:438.0[M+H]+。
【0265】
XRPD分析を行った。
図10は、IM-315のXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、以下の表5に含められる。
【0266】
【0267】
DSC分析を行った。
図11は、IM-315のDSCサーモグラムを示す。DSC分析の結果、発熱は約196°Cで、ピークは197°C(遷移エンタルピィ117J/g)であった。注目すべきことに、この融点は、特許文献1の実施例8及び特許文献2の例87に記載された184℃の規定融点と比較してより高い、なお、この規定融点は、蒸発した反応混合物を水及びイソプロパノール中でスラリー化することから得られた。
【0268】
(実施例6:雄マウスにおける相対的生物学的利用能)
雄C57bl/6マウスに単回経口投与した後の、懸濁IM-250(DMSO原液由来)に対する結晶及び異なる塩形態の相対的生物学的利用能を調べた。動物(群あたり3匹)は、投与の約2時間前に餌の供給を止めた。上記懸濁液をDMSO原液から調製し、これをPBS中の0.5%HPMCで1:20に希釈し、超音波処理し、5mL/kgの強制投与容量で経口投与した。PBS中の0.5%HPMCに粉末を添加し、超音波処理し、5mL/kgの強制投与量で経口投与することにより、結晶性及び異なる塩形態の懸濁液を直接調製した。血液試料をキャピラリーマイクロサンプリングにより0.5時間、1時間、2時間、5時間、12時間及び24時間で採取し、バイオアナリティクスを非キラルLC-MSにより測定した。上記IM-250懸濁液に対する曲線下面積(AUC0-24h)及び相対的生物学的利用能を計算した。上記塩に対する用量を10mg/kg遊離IM-250に調整した。
【0269】
図12は経時的な血中濃度を示す。以下のデータ(表6)を得た。
【0270】
【0271】
(実施例7:化学的及び物理的安定性)
結晶性材料の化学的及び物理的に加速された安定性を、貯蔵又はエージング時の潜在的な安定性の問題を予測するために研究した。結晶を40℃/75%相対湿度(RH)で1か月間保存し、60℃(及び%HR<10%RH)で1か月間保存した。化学的安定性は外部標準化によるHPLCにより、新たに調製された(ストレスを与えられていない)標準溶液に対して評価した。この目的のために、6つの試料(正確に重み付けされた)を各条件について保存する:
2週間の安定性に対して3つ及び4週間の安定性に対して3つ。
また、XRPD、DSC分析によって、ストレスを受けた試料のXRPD及びDSCプロファイルを、ストレスを受けていない試料のXRPD及びDSCプロファイルと比較することによって、物理的安定性を評価した。そのために、各条件(それぞれ40℃/75%RH、60℃)で2つ以上の試料(各時点につき1つ)が保管される。
【0272】
[化学的安定性の結果]
IM-250遊離塩基形態IについてのHPLC分析(285nmでのUV)の結果(3回の独立したアッセイ)を表7に示す。
【0273】
【0274】
これらの結果を考慮すると、IM-250遊離塩基I型は、40℃/75%RH、60℃で少なくとも4週間保存した後、バルク粉末として化学的に安定であると考えることができる。
【0275】
[物理的安定性の結果]
表8は、40℃/75%RH及び60℃で2週間及び4週間保存したIM-250遊離塩基形態Iのバルク試料の物理的DSC特性評価結果を、初期の特性評価と比較して示す。ストレス条件下でのXRPDディフラクトグラムは、初期ディフラクトグラムと同様であった。
図13は、非ストレス試料のIM-250遊離塩基形態Iからの、及び40℃/75%RH及び60℃で2週間及び4週間保存した試料の、互い違いのXRPDパターンを示す。
【0276】
【0277】
結論として、IM-250遊離塩基I型は、40℃/75%RH、60℃で少なくとも4週間保存した後、バルク粉末として物理的に安定であると考えることができる。
【0278】
(実施例8:ICH安定性試験)
化学的・物理的安定性の長期的かつ加速的な評価は、委託製造機関で行った。IM-250塩酸塩試料を、二重PE袋(50μm、Semadeni、例えば、各タグをプラスチック撚りで結んだカタログ番号2439)に一次包装した。二次パッケージは、HDPEスクリューキャップ(CurTec)で閉じたHDPEドラムであった。保存条件は、相対湿度25±2℃/60±5%、相対湿度40±2℃/75±5%であった。得られた結果は、表9に示した通りであった。
【0279】
【0280】
結論として、IM-250塩酸塩は、25℃及び40℃での保存後少なくとも6ヶ月で、バルク粉末として物理的に安定であると考えることができる。
【0281】
(実施例9:重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)の合成)
[工程1:1-ブロモプロパン-2-オン-1,1,3,3,3-d
5(9a)]
【化53】
Br
2(2.5g、15mmol)をプロパン-2-オン-d
6(2.0g、31mmol)に室温で加え、2時間攪拌した後、その混合物をすぐに次工程で使用した。
【0282】
[工程2:N-メチル-4-(メチル-d
3)チアゾール-2-アミン(9b)]
【化54】
エタノール(20mL)中の化合物9aの溶液に、1-メチルチオ尿素(1.4g、15ミリモル)を75℃で加え、2時間攪拌した後、飽和NaHCO
3溶液を加えた。この混合物をEA(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮し、次いでFCC(EA:PE=1:1)で精製して、化合物9bを得た。
【0283】
[工程3:5-ブロモ-N-メチル-4-(メチル-d
3)チアゾール-2-アミン(9c)]
【化55】
化合物9b(400mg、3.0mmol)のCHCl
3(4mL)溶液に、Br
2(740mg、4.7mmol)を室温で加え、一晩攪拌した後、水(10mL)を加えた。飽和NaHCO
3液で上記溶液のpHを8に調整した。この混合液をCHCl
3(2×10mL)で抽出した。上記合わされた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、化合物9cを固形物として得た。
【0284】
[工程4:N-メチル-4-(メチル-d
3)-5-(メチルチオ)チアゾール-2-アミン(9d)]
【化56】
1,4-ジオキサン(4mL)中の化合物1c(350mg、1.6mmol)の溶液に、MeSNa(230mg、3.2mmol)を室温で加えた。一晩撹拌した後、この混合物を蒸発させて油状物を得、次いでこれをFCC(EA:PE=1:1)により精製して、化合物9dを黄色固体として得た。
【0285】
[工程5:2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-(メチル-d
3)-5-(メチルチオ)チアゾール-2-イル)アセトアミド(9e)]
【化57】
2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)酢酸(140mg、0.56mmol)、HATU(322mg、0.85mmol)及びEt
3N(171mg、0.85mmol)のCH
2Cl
2(2.0mL)溶液に、化合物9d(100mg、0.56mmol)を室温で加えた。一晩撹拌した後、この混合物を水(2×2.5mL)で洗浄した。上記有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮し、そしてFCC(PE:EA=2:1)で精製して、化合物9eを白色固形物として得た。
【0286】
[工程6:2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-(メチル-d
3)-5-(メチルスルフィニル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(9f)]
【化58】
CH
2Cl
2(1mL)中の化合物9e(180mg、0.44ミリモル)の溶液に、メタクロロペルオキシ安息香酸(76mg、純度85%)を加えた。この混合物を室温で20分間撹拌し、CH
2Cl
2と5%炭酸ナトリウム溶液の間に分配した。上記有機相を塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮し、FCC(PE:EA=1:2)で精製して、化合物9fを白色固形物として得た。
【0287】
[工程7:tert-ブチル((2-(2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチルアセトアミド)-4-(メチル-d
3)チアゾール-5-イル)(メチル)(オキソ)-l
6-スルファニリデン)カルバメート(9g)]
【化59】
MgO(57mg、1.40mmol)、tert-ブチルカルバメート(83mg、0.70mmol)、Rh
2(OAc)
4(15mg、33μmol)及び(ジアセトキシ)ヨードベンゼン(171mg、0.52mmol)を、CH
2Cl
2(2.5mL)中の化合物9f(150mg、0.35mmol)の水溶液に加えた。この混合物を40℃で一晩撹拌し、室温まで冷却し、セライトのパッドを通して濾過した。上記溶媒を減圧下で除去し、その粗生成物をFCC(PE:EA=1:1)により精製して、化合物9gを白色固体として得た。
【0288】
[工程8:2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-(メチル-d
3)-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(9h)]
【化60】
室温で、化合物9g(150mg、0.28ミリモル)を、CH
2Cl
2(8mL)中のトリフルオロ酢酸(2mL)の撹拌水溶液に添加した。撹拌を1時間続け、次いで、混合物を濃縮し、CH
2Cl
2中で分離し、飽和NaHCO
3(2×20mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、そして分取HPLCにより精製して、化合物9hを白色固形物として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ:7.57(d,J=7.2Hz,2H),7.46-7.35(m,4H),7.31-7.24(m,1H),4.69(s,1H),4.23(s,2H),3.72(s,3H),3.14(s,3H)。MS:439.1[M+1]
+。
【0289】
[工程9:(S)-2-(2’,5’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-メチル-N-(4-(メチル-d
3)-5-(S-メチルスルホンイミドイル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(重水素化IM-250遊離塩基、d3-IM-250遊離塩基)]
【化61】
固定相としてキラルセルOJを、移動相として55/45体積%のCO
2/IPAを、及び下記の追加データを使用し、キラルSFCクロマトグラフィによってラセミ混合物9hを分離することにより、表題化合物を調製した:
【0290】
機器:SFC-150(Thar, Waters)
カラム:OJ20×250mm、10μm(ダイセル)
カラム温度:35℃
流量:100g/min
背圧:100bar
検出波長:214nm
サイクルタイム:3.7分
試料溶液:40mLのMeOHに溶解した300mg
注射液量:1.0mL
【0291】
表題化合物重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)は、CO2を留去した後、最初に溶出したエナンチオマーの移動相(溶剤)を除去し(滞留時間:2.99分)、そして40℃でロータリーエバポレーターによりIPAを除去することにより、99.7面積%の純度で得ることができる。
【0292】
XRPD分析を行った。
図14は、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)のXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、そして以下の表10に含められる。
【0293】
【0294】
TGA及びDSC分析を行った。
図15は、重水素化IM-250遊離塩基(d3-IM-250遊離塩基)のTGAサーモグラムを示す。TGA分析は、熱分解に起因する243/305℃の開始/終了温度を示した。DSC分析(
図16)は,約163℃で開始し、165℃(遷移エンタルピィ85J/g)でピークを有する強い発熱遷移を明らかにした。
【0295】
(実施例10:重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)の合成)
【化62】
アセトン(50mL)中の重水素化IM-250遊離塩基(850mg)の溶液に、1:1の化学量論に対応する量の1N塩酸を加えた。溶媒を真空下(50℃)で除去する前に、この溶液を40℃で均質化し、フラスコ中にわずか数mLしか残っていない場合に白色固体の自発的結晶化を誘発した。塩酸添加によってもたらされた水を完全に除去するために、エタノール(2×5mL)をフラスコに添加し、50℃での濃度を乾燥まで完了させた(エタノール添加及び50℃での撹拌中に部分的な再可溶化のみが観察された)。次いで、さらなるエタノール(5mL)をフラスコに添加し、これを50℃及び室温で撹拌して上記結晶を再懸濁させた。その上清を固体から除去し、次いでこれを50~60℃において約3時間真空下でさらに乾燥させた。重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)の白色結晶が良好な収率で得られた。
【0296】
XRPD分析を行った。
図17は、IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)のXRPDパターンを示す。XRPDピークを同定し、以下の表11に含められる。
【0297】
【0298】
TGA及びDSC分析を行った。
図18は、重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)のDSC及びTGAサーモグラムのオーバーレイを示す。TGA分析(右曲線)は,主熱分解が225℃の開始温度で検出される前に、149/167℃の開始/終了温度で加熱すると7.8%の質量損失を示した。7.8%の質量損失は、塩酸部分の逸脱に起因し得る。このDSC分析は真の融点を示さず、むしろ約188℃で開始しそして194℃(遷移エンタルピィ-15J/g)でピークを有する広い吸熱を示した。
【0299】
(実施例11:重水素化IM-250ナパジシレート塩(d3-IM-250ナパジシレート)の合成)
式(I)の化合物の重水素化IM-250ナパジシレート塩形態は上記のように重水素化遊離塩基形態を調製し、続いて上記のようにナパジシレート塩に変換することによって、同様に調製することができる。
【0300】
(実施例12:雄マウスにおけるd3-IM-250塩酸塩対IM-250塩酸塩の相対的生物学的利用能及び脳曝露)
雄C57bl/6マウス(約8週齢)に単回経口投与した後の懸濁した結晶性重水素化IM-250塩酸塩(d3-IM-250塩酸塩)対懸濁したIM-250塩酸塩の相対的生物学的利用能を調べた。動物(群あたり3匹)は、10mg/kgの試験項目の投与の約2時間前に食物供給を止めた。その懸濁液はPBS中の0.5%HPMCに粉末を添加することによって直接調製し、超音波処理し、5mL/kgの強制投与容量で経口投与した。血液試料(20μL)を、0.5時間、1時間、2時間、5時間、12時間及び24時間でキャピラリーマイクロサンプリングにより採取し、尾静脈からLi-ヘパリンチューブに収集した。この試料をサンプリングから1~2分以内にドライアイス上で凍結し、非キラルLC-MSを介して測定されるLC-MS/MS分析まで-20℃で保存した。投与後24時間後、動物を屠殺し、PBSが透明になるまでPBSで潅流し、脳を収集し、LC-MS分析のために処理されるまで-20℃で保存して、脳/血液曝露を決定した。最高血中濃度(Cmax)、消失半減期(t1/2)、曲線下面積(AUC0-24h)及び血液/脳比率(神経組織曝露のための容易に得られる代用パラメータとして)を測定した。以下のデータ(表12)を得た。
【0301】
【0302】
[結論]
この実施形態においては、実施例6と比較してIM-250塩酸塩のAUC0-24はいくぶん低いが、チアゾール環の4-メチル位置での選択的重水素化は、Cmax、t1/2及びAUC0-24についてのこのマッチした対の比較の中で明らかであるように、PKパラメータをさらに改善する。両方の化合物について、有益で持続性の血液/脳比が得られた。
【国際調査報告】