IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 香港時代新能源科技有限公司の特許一覧

特表2025-502302セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
<>
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図1
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図2
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図3
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図4
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図5
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図6
  • 特表-セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】セパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/457 20210101AFI20250117BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/497
H01M50/403 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542136
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2022105167
(87)【国際公開番号】W WO2024011404
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉鋒
(72)【発明者】
【氏名】范玉磊
(72)【発明者】
【氏名】王毅恒
(72)【発明者】
【氏名】鐘▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】葛銷明
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
(57)【要約】
本願は、順に積層されて設置される第1ベースフィルムと、セラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含むコーティング層と、第2ベースフィルムと、を含むセパレータを提供する。本願の前記セパレータは電解液の良好な浸潤性を有し、リチウムデンドライトの成長を効果的に抑制することができ、且つ低い抵抗を有し、対応する電池の安全性能、動的特性及びサイクル特性を効果的に改善することができる。本願はさらに本願に記載のセパレータを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に積層されて設置される第1ベースフィルムと、第2ベースフィルムと、第1ベースフィルムと第2ベースフィルムとの間に位置し、セラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含むコーティング層と、を含むセパレータ。
【請求項2】
前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量比は1:0.001~0.3であり、選択的に1:0.01~0.1である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量の和と、前記酸化グラフェンの質量と、の比は2~11:1であり、選択的に2~9:1である、請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記酸化グラフェンと前記セラミック粒子との質量比は1:1.5~11であり、選択的に1:3~5である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記酸化グラフェンは酸化グラフェンシートであり、選択的に、前記酸化グラフェンシートの横方向最大寸法は0.01~10μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記セラミック粒子はSi、Fe、Sn、Ti、Cu、Mg、Ge、Zn、Zr及びB元素の酸化物、窒化物又はオキソ酸塩から選択された1つ又は複数であり、
選択的にSiの酸化物、Siの窒化物、Feの酸化物、Feの窒化物、Feのオキソ酸塩、Snの酸化物、Tiの酸化物、Tiの窒化物、Tiのオキソ酸塩、Cuの酸化物、Cuの窒化物、Mgの酸化物、Geの酸化物、Znの酸化物、ジルコニウムの酸化物、及び窒化ホウ素から選択された1つ又は複数であり、
さらに選択的に二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸リチウムから選択された1つ又は複数である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セラミック粒子の粒径は0.01~10μmであり、選択的に0.05~0.5μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記バインダーはドーパミン塩酸塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選択された1つ又は複数である、請求項1~7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さは0.1~10μmであり、選択的に1~6μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記第1ベースフィルム及び前記第2ベースフィルムはそれぞれ独立してポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、及びポリエステルから選択された1つ又は複数である、請求項1~9のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記第1ベースフィルム及び/又は前記第2ベースフィルムは酸化グラフェン分散液による浸潤処理がなされている、請求項1~10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第1ベースフィルム及び/又は前記第2ベースフィルムの厚さは3~30μmであり、選択的に5~25μmである、請求項1~11のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記セパレータはρ≦10mΩ・cmを満たし、選択的にρ≦5×10mΩ・cmを満たす(ただし、ρはセパレータのイオン抵抗率を示す。)、請求項1~12のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のセパレータを含む二次電池。
【請求項15】
請求項14に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項16】
請求項14に記載の二次電池又は請求項15に記載の電池モジュールのうちの少なくとも1つを含む電池パック。
【請求項17】
請求項14に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュール又は請求項16に記載の電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はリチウム電池技術分野に関し、特にセパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます拡大することに伴って、リチウムイオン電池は風力、火力、水力、太陽光発電所等のエネルギー貯蔵システム、さらには電動工具、電動自転車などの複数の分野で極めて広範に応用されている。リチウムイオン電池は一般的に電解液、正負極シート、及び正負極シートの間に設置されるセパレータを含み、前記セパレータは主に正負極の短絡を防止することに用いられ、同時にイオンを自由に通過させる。従来技術において使用されるセパレータの多くはポリオレフィンフィルムである。しかしながら、ポリオレフィンフィルムは電解液に対する浸潤性に劣り、且つ電池の使用過程で生成されるリチウムデンドライトがセパレータを貫通して電池の短絡が生じ、安全上のリスクを引き起こす可能性がある。
【0003】
上記問題を解決するために、当業者は一般的にセパレータ上に一層のコーティング層を施すことによりセパレータへの電解液の浸潤を促進し、且つリチウムデンドライトがセパレータを貫通することを回避する。セラミック粒子は当業者が一般的に施すコーティング層の一つである。しかしながら、セラミック粒子とポリオレフィンフィルムとの間の接着性が劣るため、「粉落ち」は深刻である。このため、バインダーを導入してセラミック粒子とポリオレフィンフィルムとの間の接着力を増大させて粉落ちを減少させる必要があるが、バインダーを大量に使用するとセパレータの抵抗が増大し、二次電池の動的特性が悪化する。
【0004】
このことから分かるように、良好な浸潤性能と低い抵抗を同時に有するセパレータをどのように開発するかは、研究者にとって早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【0005】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は良好な浸潤性能、機械的特性及び低い抵抗を同時に有し、それを応用した二次電池が良好な安全性能、動的特性及びサイクル特性を有するセパレータを提供することである。
【0006】
本願の第1態様によればセパレータが提供され、当該セパレータは、順に積層されて設置される第1ベースフィルムと、第2ベースフィルムと、第1ベースフィルムと第2ベースフィルムとの間に位置し、セラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含むコーティング層と、を含む。
【0007】
本願の前記セパレータは3層複合構造を有し、電解液の良好な浸潤性能及び低い抵抗を有し、前記セパレータを応用した二次電池の安全性能、動的特性及びサイクル特性を向上させることに役立つ。
【0008】
任意の実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量比は1:0.001~0.3であり、選択的に1:0.01~0.1である。
【0009】
セラミック粒子とバインダーとの質量比が上記範囲内にある場合、コーティング層が適切な接着性を有することに有利であり、セラミック粒子の「粉落ち」を効果的に回避する。
【0010】
任意の実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量の和と、前記酸化グラフェンの質量と、の比は2~11:1であり、選択的に2~9:1である。
【0011】
セラミック粒子とバインダーとの質量の和と、酸化グラフェンの質量と、の比が上記範囲内にある場合、前記コーティング層のイオン伝導率を増加させ、セパレータの浸潤性を向上させ、耐リチウムデンドライト能力を強化し、対応する二次電池の動的特性及び安全性能を改善することに有利である。
【0012】
任意の実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェンとセラミック粒子との質量比は1:1.5~11であり、選択的に1:3~5である。
【0013】
酸化グラフェンとセラミック粒子との質量比が上記範囲内にある場合、酸化グラフェン表面の酸素含有官能基とセラミック粒子との間における分子間作用力及び水素結合作用の形成を促進することに有利であり、セラミック粒子のセパレータ上での接着性を向上させ、それによりコーティング材全体の接着性を向上させ、さらに酸化グラフェンシートが積層してセパレータの細孔を塞ぐことを回避するのに有利である。
【0014】
任意の実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェンは酸化グラフェンシートであり、選択的に、前記酸化グラフェンシートの横方向最大寸法は0.01~10μmである。
【0015】
小径の酸化グラフェンはグラファイトがセパレータ上の細孔を覆ってしまいセパレータの通気性を低下させることを防止することができ、それによりイオンの伝送が阻害されること及びセパレータの抵抗が上昇することを回避する。
【0016】
任意の実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子はSi、Fe、Sn、Ti、Cu、Mg、Ge、Zn、Zr及びB元素の酸化物、窒化物又はオキソ酸塩から選択された1つ又は複数であり、
選択的にSiの酸化物、Siの窒化物、Feの酸化物、Feの窒化物、Feのオキソ酸塩、Snの酸化物、Tiの酸化物、Tiの窒化物、Tiのオキソ酸塩、Cuの酸化物、Cuの窒化物、Mgの酸化物、Geの酸化物、Znの酸化物、ジルコニウムの酸化物、及び窒化ホウ素から選択された1つ又は複数であり、
さらに選択的に二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、チタン酸リチウムから選択された1つ又は複数である。
【0017】
セラミック粒子が上記材料から選択される場合、セパレータの機械的強度、電解液の浸潤性及び電気的、化学的安定性を効果的に向上させることができる。
【0018】
任意の実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子の粒径は0.01~10μmであり、選択的に0.05~0.5μmである。
【0019】
セラミック粒子の粒径が上記範囲内にある場合、粒径が大きすぎることによる「粉落ち」を回避することに有利であるだけでなく、粒径が小さすぎることでベースフィルムのチャネルを塞ぎ、動的特性を悪化させることを回避することにも有利である。
【0020】
任意の実施形態において、選択的に、前記バインダーはドーパミン塩酸塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選択された1つ又は複数である。
【0021】
任意の実施形態において、選択的に、前記コーティング層の厚さは0.1~10μmであり、選択的に1~6μmである。
【0022】
コーティング層の厚さが上記範囲内にある場合、リチウムデンドライトを効果的に消費し、それがセパレータを貫通して、安全上の問題を引き起こすことを回避するだけでなく、コーティング層がセパレータの抵抗を大幅に増加させることを回避することにも有利である。
【0023】
任意の実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムはそれぞれ独立してポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、及びポリエステルから選択された1つ又は複数である。
【0024】
任意の実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び/又は第2ベースフィルムは酸化グラフェン分散液による浸潤処理がなされている。
【0025】
酸化グラフェン分散液でベースフィルムを前処理することにより、コーティング層とベースフィルムとの複合効率を向上させることができ、バインダーの使用を削減し、セパレータの抵抗を低下させる。
【0026】
任意の実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び/又は第2ベースフィルムの厚さは3~30μmであり、選択的に5~25μmである。
【0027】
任意の実施形態において、選択的に、前記セパレータはρ≦10mΩ・cmを満たし、選択的にρ≦5×10mΩ・cmを満たす。ただし、ρはセパレータのイオン抵抗率を示す。
【0028】
ρが上記範囲内にある場合、セパレータのイオン抵抗率が小さく、対応する二次電池の動的特性の改善に有利である。
【0029】
本願の第2態様によれば、本願の第1態様のセパレータを含む二次電池が提供される。
【0030】
本願の第3態様によれば、本願の第2態様の二次電池を含む電池モジュールが提供される。
【0031】
本願の第4態様によれば、本願の第2態様の二次電池又は本願の第3態様の電池モジュールのうちの少なくとも1つを含む電池パックが提供される。
【0032】
本願の第5態様によれば、本願の第2態様の二次電池、本願の第3態様の電池モジュール又は本願の第4態様の電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本願のセパレータは3層複合構造であり、中間に位置するコーティング層はセラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含む。セラミック粒子は、一方ではセパレータへの電解液の浸潤を促進することができ、他方では生成されるリチウムデンドライトを効果的に消費して、リチウムデンドライトがセパレータを貫通することを回避し、安全性能を向上させることができる。コーティング層中の酸化グラフェンの表面には様々な極性基が豊富に含まれ、一方ではベースフィルムへの電解液の浸潤をさらに促進することができ、他方では以下の作用により抵抗を減少させることに役立ち、それにより対応する電池の動的特性を改善する。第1に、酸化グラフェン自体は、ファンデルワールス力によってベースフィルムと複合することができ、バインダーの使用を削減する。第2に、酸化グラフェンはイオンが自由に伝送されるための大量のチャネルを提供することができ、セパレータのイオン伝導率を向上させる。また、コーティング層は第1ベースフィルムと第2ベースフィルムとの中間に位置し、前記ベースフィルム自体は「バリア層」として存在することができ、セラミック粒子と正負極シートが直接接触することを効果的に防止することができ、一方では対応する二次電池の安全性能をさらに向上させることに役立ち、他方では多くの副反応を回避することにも役立ち、対応する電池を使用する時の安定性を向上させ、サイクル特性を改善する。
【0034】
本願の電池モジュール、電池パック及び電力消費装置は本願の提供する二次電池を含み、従って前記二次電池と少なくとも同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本願のセパレータの概略図である。
図2】本願の一実施形態に係る二次電池の概略図である。
図3図2に示す本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
図4】本願の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。
図5】本願の一実施形態に係る電池パックの概略図である。
図6図5に示す本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
図7】本願の一実施形態に係る二次電池を電源として使用する電力消費装置の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
11 第1ベースフィルム
12 セラミック粒子
13 酸化グラフェンシート
14 第2ベースフィルム
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願のセパレータ及びそれを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不必要に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造についての重複する説明は省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長にならないようにして、当業者の理解を容易にするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0038】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形で定義され、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することによって定義され、選定された下限及び上限は、特定の範囲の境界を定義するものである。このような方法で定義された範囲は、両端の値が含まれてもよく又は含まれていなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、60~120及び80~110の範囲が特定のパラメータについて列挙されている場合、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2が列挙されており、且つ最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲がすべて企図されている。本願において、説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を意味し、a及びbは両方とも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の全ての実数が本明細書に全て列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、該パラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当する。
【0039】
本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0040】
本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、特に説明しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0041】
本願の全てのステップは、特に説明しない限り、順に又はランダムに実施することができ、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含む場合、前記方法は、順に実施されるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、又は順に実施されるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいという場合、ステップ(c)を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを意味し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、又はステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、又はステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよいことなどを示す。
【0042】
本願で言及される「含む」及び「包含する」は、特に説明しない限り、開放形式及び閉鎖形式の両方を示す。例えば、前記「含む」及び「包含する」は、列挙されていない他の構成要素も含む又は包含してもよいことを示すことができ、あるいは列挙された構成要素のみを含む又は包含してもよいことを示すことができる。
【0043】
なお、本願において、グラフェンに関連する用語はGB/T 30544.13-2018標準における意味を参照して理解することができ、関連パラメータも該標準を参照して測定することができる。例えば、GB/T 30544.13-2018に基づき、「二次元材料」という用語は1つ又はいくつかの層から構成され、各層内の原子は、それが位置する層内の隣接する原子と密接に結合しており、1つの次元(すなわちその厚さ)はナノメートル又はさらに小さい単位であり、残りの2つの次元は一般的により大きな単位である材料のことであり、「横方向寸法」という用語は二次元材料シートの横方向の大きさを指す。
【0044】
本願において、特に説明しない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、「A又はB」という条件は、Aが真(又は存在する)であり、Bが偽(又は存在しない)であるか、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)であるか、又はA及びBの両方が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0045】
発明者らは、実際の作業において、従来技術ではポリオレフィンフィルムへの電解液の浸潤を向上させるために、一般的にポリオレフィンフィルムの表面にセラミックコーティング層が施されることに注目した。セラミック粒子とベースフィルムの接着性能を向上させるために、大量のバインダーを使用する必要があり、これはセパレータの抵抗を増加させる。
【0046】
発明者らは数多くの実験の結果、2層のベースフィルムの中間にセラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含むコーティング層を施すことにより、セパレータへの電解液の浸潤を促進し、リチウムデンドライトがセパレータを貫通することを効果的に回避することができるだけでなく、コーティング層を施すこと又はバインダーを大量に使用することによるセパレータの抵抗の大幅な増加を回避することができ、多くの副反応の発生を回避し、対応する電池の動作安定性を向上させ、前記セパレータを応用した二次電池の安全性能、動的特性及びサイクル特性を向上させることを発見した。
【0047】
[セパレータ]
本願の第1態様によれば、順に積層されて設置される第1ベースフィルムと、第2ベースフィルムと、第1ベースフィルムと第2ベースフィルムとの間に位置し、セラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含むコーティング層と、を含むセパレータが提供される。
【0048】
本願のセパレータは3層複合構造であり、中間に位置するコーティング層はセラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含む。セラミック粒子は、一方ではセパレータへの電解液の浸潤を促進することができ、セパレータの耐熱性及び機械的特性を向上させ、他方では生成されるリチウムデンドライトを効果的に消費して、リチウムデンドライトがセパレータを貫通することを回避し、安全性能を向上させることができる。コーティング層中の酸化グラフェンの表面には様々な極性基が豊富に含まれ、一方ではセパレータへの電解液の浸潤をさらに促進することができ、他方では以下の作用により抵抗を減少させることに役立ち、それにより対応する電池の動的特性を改善する。第1に、酸化グラフェン自体は、ファンデルワールス力によってベースフィルムと複合することができ、バインダーの使用を削減する。第2に、酸化グラフェンはイオンが自由に伝送されるための大量のチャネルを提供することができ、セパレータのイオン伝導率を向上させる。また、コーティング層は第1ベースフィルムと第2ベースフィルムとの中間に位置し、前記ベースフィルム自体は「バリア層」として存在することができ、セラミック粒子と正負極シートが直接接触することを効果的に防止することができ、一方では対応する二次電池の安全性能をさらに向上させることに役立ち、他方では多くの副反応を回避することにも役立ち、対応する電池を使用する時の安定性を向上させ、サイクル特性を改善する。
【0049】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量比は1:0.001~0.3であり、選択的に1:0.01~0.1である。例として、前記比は1:0.001、1:0.005、1:0.006、1:0.01、1:0.013、1:0.017、1:0.02、1:0.026、1:0.033、1:0.05、1:0.06、1:0.1又は1:0.3及び上記比における任意の2つからなる範囲であってもよい。
【0050】
セラミック粒子とバインダーとの質量比が上記範囲内にある場合、コーティング層が適切な接着性を有することに有利であり、セラミック粒子の「粉落ち」を効果的に回避して、セラミック粒子がセパレータの湿潤性能を改善し、リチウムデンドライトを消費する作用を十分に発揮し、対応する二次電池の安全性能を向上させる。
【0051】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子と前記バインダーの質量の和と前記酸化グラフェンの質量との比は2~11:1であり、選択的に2~9:1である。例として、前記比は2:1、3:1、3.1:1、5:1、5.1:1、5.3:1、5.5:1、6.5:1、8:1、9:1、10:1又は11:1及び上記比における任意の2つからなる範囲であってもよい。
【0052】
セラミック粒子とバインダーの質量の和と酸化グラフェンの質量との比が上記範囲内にある場合、コーティング層が適切な接着性を有することが有利であり、それによりセラミック粒子がセパレータの湿潤性能を改善し、リチウムデンドライトを消費する作用を十分に発揮すると同時に、酸化グラフェンがバインダーの使用を削減し、及びイオンの自由な伝送を促進するという機能を発揮し、セパレータの抵抗を減少させ、対応する二次電池の動的特性を改善する。
【0053】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェンとセラミック粒子との質量比は1:1.5~11であり、選択的に1:3~5である。例として、前記比は1:1.5、1:1.95、1:3、1:5、1:8、1:8.95、1:9、1:10又は1:11及び上記比における任意の2つからなる範囲であってもよい。
【0054】
酸化グラフェン表面には酸素含有官能基が豊富に含まれ、酸化グラフェンとセラミック粒子との質量比が上記範囲内にある場合、酸化グラフェン表面の酸素含有官能基とセラミック粒子との間における分子間作用力及び水素結合作用の形成を促進することに有利であり、セラミック粒子のセパレータ上での接着性を向上させ、それによりコーティング材全体の接着性を向上させ、さらに酸化グラフェンシートが積層してセパレータの細孔を塞ぐことを回避するのに有利である。また、酸化グラフェンとセラミック粒子との質量比が上記範囲内にある場合、コーティング層がリチウムデンドライトを消費する機能を改善することにも有利である。
【0055】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記コーティング層の総重量に対して、前記酸化グラフェンの含有量は5~40%であり、選択的に15~30%であり、前記セラミック粒子の含有量は25~95%であり、選択的に70~85%であり、前記バインダーの含有量は0.001~8%であり、選択的に0.01%~0.5%である。
【0056】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェン:セラミック粒子:バインダーの質量比は0.09~1:1:0.001~0.3である。例として、上記比は0.1:1:0.001、0.2:1:0.001、0.2:1:0.01、0.2:1:0.1、0.2:1:0.3、0.3:1:0.3、0.5:1:0.2又は1:1:0.3及び上記比における任意の2つからなる範囲であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェンは酸化グラフェンシートであり、選択的に、前記酸化グラフェンシートの横方向最大寸法は0.01~10μmである。
【0058】
酸化グラフェン表面には水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基などの酸素含有官能基が豊富に含まれるため、セパレータの親液性を向上させることができ、電解液を迅速にセパレータに浸潤させることができる。また、積層された酸化グラフェンシートは大量の隙間を作り出してリチウムイオンがシート層の空隙内で自由に伝送されるようにして、セパレータのイオン伝導率を向上させる。さらに、小径の酸化グラフェンはグラフェンがセパレータ上の細孔を覆ってしまいセパレータの通気性を低下させることを防止することに有利であり、それによりイオンの伝送が阻害されること及びセパレータの抵抗が大幅に増加することを回避する。
【0059】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子はSi、Fe、Sn、Ti、Cu、Mg、Ge、Zn、Zr及びB元素の酸化物、窒化物又はオキソ酸塩から選択された1つ又は複数であり、
選択的にSiの酸化物、Siの窒化物、Feの酸化物、Feの窒化物、Feのオキソ酸塩、Snの酸化物、Tiの酸化物、Tiの窒化物、Tiのオキソ酸塩、Cuの酸化物、Cuの窒化物、Mgの酸化物、Geの酸化物、Znの酸化物、ジルコニウムの酸化物、及び窒化ホウ素から選択された1つ又は複数であり、
さらに選択的に二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、チタン酸リチウムから選択された1つ又は複数である。
【0060】
本願において、第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムは強い疎水性を有し、極性が強い電解液との親和性が低く、このためベースフィルムは電解液を吸収し保持することができない。本願の前記セラミック粒子は強い親水性を有し、セパレータへの電解液の浸潤性を顕著に向上させることに有利である。
【0061】
また、リチウム金属電池の数回の充放電過程において、リチウムデンドライトの発生は回避することができない。制御されない場合、リチウムデンドライトは最終的にセパレータに接触して突き破り、正負極の接触をもたらし、安全上の問題を引き起こす。本願の前記セラミック粒子に含まれる二酸化ケイ素などの成分は、リチウム挿入反応を発生させることができ、生成されたリチウムデンドライトを直ちに消費して、対応する電池の安全性能を向上させる。
【0062】
本願の前記セラミック粒子がリチウムデンドライトを消費する反応のメカニズムは、合金化反応メカニズム、インターカレーション反応メカニズム及び酸化還元メカニズムに分けられる。
【0063】
1)合金化反応メカニズム:金属酸化物とリチウムデンドライトが反応すると、金属単体の生成を伴い、生成された金属単体にさらに合金化反応が起こってリチウム合金が生成される。反応方程式は、以下のとおりである。
【0064】
【数1】
【0065】
二酸化スズを例にすると、放電過程においてまずスズ単体及びLiOが生成され、次いでスズ単体及びLiが反応してLi4.4Sn化合物が生成される。
【0066】
2)インターカレーション反応メカニズム:充放電過程においてLiは材料の層間構造の隙間にのみ挿入され、充放電過程におけるその化学反応式は以下のとおりである。
【0067】
【数2】
【0068】
インターカレーション反応メカニズムの代表的なセラミック材料は、主にSiO、TiO、チタン酸リチウムなどである。
【0069】
3)転化反応メカニズム:金属酸化物とLiが酸化還元反応を起こすと金属単体及びLiOが生成され、その化学反応式は以下のとおりである。
【0070】
【数3】
【0071】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記セラミック粒子の粒径は0.01~10μmであり、選択的に0.05~0.5μmである。
【0072】
セラミック粒子の粒径が大きすぎる場合、製造されたコーティング層はペースト粘度が大きく、且つ均一性を保証しにくく、セパレータにコーティングすることが困難である。また、セパレータにコーティングする過程で「粉落ち」現象が発生しやすく、粉体がセパレータの表面に付着しにくく、コーティング効果が理想的ではなく、期待通りにならない。粒子の粒径が小さすぎると、セラミック粒子をコーティングする時に、セラミック粒子が有機細孔材料の表面の空隙を塞ぎ、セパレータの透気性を低下させ、それによりイオン伝送チャネルを遮断し、電池の容量及びサイクル寿命をいずれも顕著に低下させる。
【0073】
また、前記セラミック粒子の粒径が上記範囲内にある場合、セラミック粒子を導入することで、セパレータの空隙率を向上させることに有利であり、Liの拡散を加速して、セパレータのイオン伝導率を向上させる。
【0074】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記バインダーはドーパミン塩酸塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選択された1つ又は複数である。
【0075】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記コーティング層の厚さは0.1~10μmであり、選択的に1~6μmである。
【0076】
コーティング層の厚さが上記範囲内にある場合、リチウムデンドライトを効果的に消費し、それがセパレータを貫通して、安全上の問題を引き起こすことを回避するだけでなく、コーティング層がセパレータの抵抗を大幅に増加させることを回避することにも有利である。
【0077】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムはそれぞれ独立してポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、及びポリエステルから選択された1つ又は複数である。
【0078】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び/又は第2ベースフィルムは酸化グラフェン分散液による浸潤処理がなされている。
【0079】
酸化グラフェン分散液でベースフィルムを前処理することにより、ベースフィルムの表面に多くの極性基が含まれるようにすることができ、ベースフィルムの親水性を増加させ、それにより電解液のベースフィルムに対する浸潤性を向上させる。また、ベースフィルムの表面に多くの極性基が含まれることで、コーティング層とベースフィルムとの複合効率を向上させることに役立ち、バインダーの使用を削減し、セパレータの抵抗を低下させる。
【0080】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムの重量平均分子量は100000~1000000である。重量平均分子量は本分野で一般的に使用される方法で測定することができ、例えばGB/T 21863-2008に基づきゲル浸透クロマトグラフィー法で測定することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記第1ベースフィルム及び/又は第2ベースフィルムの厚さは3~30μmであり、選択的に5~25μmである。
【0082】
セパレータの厚さが小さすぎると、セパレータの機械的安定性が悪化する可能性があり、且つセパレータが正負極シートを隔離する役割を十分に発揮することが困難である。セパレータの厚さが大きすぎると、セパレータの抵抗が増加し、リチウムイオンがセパレータを透過して伝送されることがより困難になる可能性があり、電池性能の低下をまねく。
【0083】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記セパレータはρ≦10mΩ・cmを満たし、選択的にρ≦5×10mΩ・cmを満たす。ここで、ρはセパレータのイオン抵抗率を示す。
【0084】
ρが上記範囲内にある場合、セパレータのイオン抵抗率が小さく、対応する二次電池の動的特性の改善に有利である。
【0085】
いくつかの実施形態において、本願はさらに、少なくとも以下のステップ1~3を含む、本願に記載のセパレータの製造方法を提供する。
【0086】
ステップ1では、適量の溶媒中で、酸化グラフェン、セラミック粒子及びバインダーを0.09~1:1:0.001~0.3の質量比で十分に混合し、混合ペーストを得る。
【0087】
ステップ2では、ステップ1で得られた混合ペーストを第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムの一面にコーティングする。
【0088】
ステップ3では、ステップ2で得られた第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムをコーティング層側に沿って重ね合わせ、ホットプレス、乾燥を経て溶媒を除去する。
【0089】
いくつかの実施形態において、選択的に、ステップ1における前記溶媒は水、N-Nジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などである。
【0090】
いくつかの実施形態において、選択的に、ステップ1における前記酸化グラフェンは酸化グラフェン分散液である。
【0091】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェン分散液の固形分含有量は0.1~5%であり、選択的に0.3~3%である。
【0092】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェン分散液は、酸化グラフェンを溶媒中に加えた後、超音波を使用して均一に分散させて得られたものであってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記酸化グラフェン分散液中の溶媒は水、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノールのうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、選択的に、ステップ2を実行する前に、酸化グラフェン分散液を用いて前記第1ベースフィルム及び第2ベースフィルムに対して前処理を実施する。
【0095】
いくつかの実施形態において、選択的に、ベースフィルムに前処理を実施する分散液は酸化グラフェンの水分散液又は酸化グラフェンのイソプロピルアルコール分散液である。
【0096】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記前処理とは、ベースフィルムを酸化グラフェン分散液中に完全に浸漬し、15~120秒、選択的に30~90秒保持し、次いで取り出して乾燥させることである。
【0097】
いくつかの実施形態において、選択的に、ステップ2におけるコーティングは本分野で一般的に使用されるコーティング方法で実施されてもよく、例えばスクレーパコーティング、ローラーコーティング又は押出コーティングなどである。
【0098】
いくつかの実施形態において、選択的に、ステップ3における前記ホットプレスは90~150℃、選択的に120~140℃の温度で実施される。
【0099】
いくつかの実施形態において、選択的に、ステップ3で得られたセパレータ上のコーティング層のコーティング密度は1.0~6.0g/mであり、選択的に1.5~4.5g/mである。
【0100】
いくつかの実施形態において、選択的に、本願の前記セパレータにおいて、酸化グラフェン、セラミック粒子及びバインダーの質量比は0.09~1:1:0.001~0.3である。例として、前記比は0.2:1:0.02、0.33:1:0.033、1.125:1:0.0125、0.1:1:0.001、0.2:1:0.01、0.2:1:0.06、0.2:1:0.02、0.2:1:0.001、0.2:1:0.006、0.5:1:0.03、0.1:1:0.006又は0.09:1:0.004及び上記比における任意の2つからなる範囲であってもよい。
【0101】
[二次電池]
本願の第2態様によれば、本願の第1態様に記載のセパレータを含む二次電池が提供される。一般的に、セパレータ以外に、二次電池はさらに正極シート、負極シート及び電解液を含む。
【0102】
特に、本願に記載のセパレータは、従来のセパレータの代わりにリチウム金属電池に使用することもできる。前記リチウム金属電池の負極はリチウム金属又はリチウム合金であってもよく、又は無負極であってもよい。対応する正極材料は以下のとおりである。無負極リチウム金属電池の場合、正極材料はリチウム源を提供する必要がある。
【0103】
二次電池の製造は本分野で一般的に使用される方法で実行することができ、例えば、正極シート、負極シート及びセパレータから、捲回プロセス又は積層プロセスを介して電極アセンブリを形成し、次いで電極アセンブリ内に電解液を注入し、密封して二次電池を得ることができる。
【0104】
以下に、二次電池の上記部材についてそれぞれ説明する。
【0105】
[正極シート]
正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極フィルム層と、を含む。一例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極フィルム層は、正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料ベース層(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0107】
本願において、正極材料とは、Liを可逆的に挿入及び脱離することができる化合物である。
【0108】
いくつかの実施形態において、正極活物質は公知の電池用正極活物質を使用することができる。例として、LiMO又はLi(ただし、Mは遷移金属であり、0≦x≦1、0≦y≦2)で表されるリチウム含有複合酸化物、スピネル状の酸化物、層状構造の金属硫化物、オリビン構造などを挙げることができる。例えば、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、Li4/3Ti5/3などのリチウムチタン酸化物、リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンニッケルコバルト複合酸化物や、LiMPO(M=Fe、Mn、Ni)などのオリビン型結晶構造を有する材料などを挙げることができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、選択的に、正極活物質は層状構造又はスピネル状構造のリチウム含有複合酸化物であり、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi1/2Mn1/2などに代表されるリチウムマンガンニッケルコバルト複合酸化物、LiNil/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.6Mn0.2Co0.2などに代表されるリチウムマンガンニッケルコバルト複合酸化物、又はLiNi1-x-y-zCoAlMg(式中、0≦x≦1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.1、0≦1-x-y-z≦1)などのリチウム含有複合酸化物である。また、上記リチウム含有複合酸化物における構成元素の一部が、Ge、Ti、Zr、Mg、Al、Mo、Snなどの添加元素で置換されたリチウム含有複合酸化物なども本願の範囲内に包含される。
【0110】
上記の正極活物質以外に、電池の正極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、層状構造のリチウム含有複合酸化物とスピネル状構造のリチウム含有複合酸化物とを同時に使用することにより、大容量化と安全性の向上との両立を求めることができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記正極活物質が前記正極フィルムに占める質量比は75%~99%であり、選択的に80%~97%である。
【0112】
いくつかの実施形態において、正極フィルム層は選択的に導電剤をさらに含むことができる。一例として、前記導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記導電剤は正極フィルム層の総重量の0.05~5%を占め、選択的に0.5~3%である。
【0114】
いくつかの実施形態において、正極フィルム層はさらに選択的にバインダーを含み、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシドなどの電池分野で一般的に使用されるバインダーである。
【0115】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記バインダーは正極フィルム層の総重量の0.1~3.5%を占め、選択的に0.5~2.5%である。
【0116】
いくつかの実施形態において、以下の方法で正極シートを製造することができる。上記正極シートを製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極ペーストを形成し、正極ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等のステップを経て、正極シートを得ることができる。
【0117】
[負極シート]
負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極フィルム層を含む。一例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、負極フィルム層は、負極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えば銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0119】
本願において、負極材料とは、リチウム金属、リチウムを挿入、脱離することができる化合物である。
【0120】
いくつかの実施形態において、負極活物質は該分野における公知の電池用負極活物質を使用することができる。例として、アルミニウム、ケイ素、スズなどの合金又は酸化物、炭素材料などの各種材料を負極活物質として用いることができる。選択的に、酸化物は二酸化チタンなどを挙げることができ、炭素材料はグラファイト、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズなどを挙げることができる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金から選択された少なくとも1つとすることができる。しかし、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記負極活物質が前記正極フィルムに占める質量比は75%~99%であり、選択的に80%~97%である。
【0122】
いくつかの実施形態において、負極フィルム層は選択的に導電剤をさらに含むことができる。導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択された少なくとも1つとすることができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記導電剤は負極フィルム層の総重量の0.05~5%を占め、選択的に0.5~3%である。
【0124】
いくつかの実施形態において、負極フィルム層はさらに選択的にバインダーを含み、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシドなどの電池分野で一般的に使用されるバインダーである。
【0125】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記バインダーは負極フィルム層の総重量の0.1~3.5%を占め、選択的に0.5~2.5%である。
【0126】
いくつかの実施形態において、負極フィルム層は、選択的に増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤をさらに含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、選択的に、前記増粘剤が前記負極フィルムに占める質量比は0.04%~5%であり、選択的に0.5%~3%である。
【0128】
いくつかの実施形態において、以下の方式で負極シートを製造することができる。上記負極シートを製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極ペーストを形成し、負極ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経て、負極シートを得ることができる。
【0129】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は電解質の種類を特に限定せず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は液体、ゲル又は完全な固体であってもよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記電解質として電解液を使用する。前記電解液は電解質塩と溶媒とを含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、非水溶媒(有機溶媒)を非水電解液として使用する。非水溶媒は炭酸エステル類、エーテル類などを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、炭酸エステル類は環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルを含む。環状炭酸エステルとしてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、チオエステル(エチレングリコールスルフィド)などを挙げることができる。鎖状炭酸エステルとしてジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどに代表される低粘度の極性鎖状炭酸エステルや、脂肪族分岐状炭酸エステル系化合物を挙げることができる。環状炭酸エステル(特にエチレンカーボネート)と鎖状炭酸エステルとの混合溶媒が特に好ましい。
【0133】
エーテル類としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジメチルエーテル(DME)、1,3-ジオキソラン(DOL)などを挙げることができる。
【0134】
また、上記非水溶媒以外に、プロピオン酸メチルなどの鎖状アルキルエステル類、リン酸トリメチルなどの鎖状トリエステルや、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、デンドリマーに代表されるエーテル結合を有する分岐状化合物などの非水溶媒(有機溶媒)を用いることもできる。
【0135】
また、フッ素系溶媒を用いてもよい。フッ素系溶媒として、例えば、H(CFOCH、COCH、H(CFOCHCH、H(CFOCHCF、H(CFCHO(CFHなど、又はCFCHFCFOCH、CFCHFCFOCHCHなどの直鎖構造の(パーフルオロアルキル)アルキルエーテル、例えば2-トリフルオロメチルヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2-トリフルオロメチルヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2-トリフルオロメチルヘキサフルオロプロピルプロピルエーテル、3-トリフルオロメチルオクタフルオロブチルメチルエーテル、3-トリフルオロメチルオクタフルオロブチルエチルエーテル、3-トリフルオロメチルオクタフルオロブチルプロピルエーテル、4-トリフルオロメチルデカフルオロペンチルメチルエーテル、4-トリフルオロメチルデカフルオロペンチルエチルエーテル、4-トリフルオロメチルデカフルオロペンチルプロピルエーテル、5-トリフルオロメチルドデカフルオロヘキシルメチルエーテル、5-トリフルオロメチルドデカフルオロヘキシルエチルエーテル、5-トリフルオロメチルドデカフルオロヘキシルプロピルエーテル、6-トリフルオロメチルテトラデカフルオロヘプチルメチルエーテル、6-トリフルオロメチルテトラデカフルオロヘプチルエチルエーテル、6-トリフルオロメチルテトラデカフルオロヘプチルプロピルエーテル、7-トリフルオロメチルヘキサデカフルオロオクチルメチルエーテル、7-トリフルオロメチルヘキサデカフルオロオクチルエチルエーテル、7-トリフルオロメチルヘキサデカフルオロオクチルプロピルエーテルなどを挙げることができる。
【0136】
また、イソ(パーフルオロアルキル)アルキルエーテルと直鎖構造の(パーフルオロアルキル)アルキルエーテルとの混合物を使用してもよい。
【0137】
非水電解液中に使用される電解質塩として、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、含フッ素化合物のリチウム塩、リチウムイミド塩などのリチウム塩が好ましい。
【0138】
このような電解質塩の例として、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCFCO、LiC(SO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(ROSO(式中、Rはフルオロアルキル基である)などを挙げることができる。これらのリチウム塩のうち、含フッ素有機リチウム塩が特に好ましい。含フッ素有機リチウム塩は、アニオンの極性が大きく且つイオンに分離しやすいため、非水電解液中に溶解しやすい。
【0139】
非水電解液中の電解質リチウム塩の濃度は、例えば0.3mol/L(モル/リットル)以上であり、より選択的に0.7mol/L以上であり、選択的に1.7mol/L以下であり、より選択的に1.2mol/L以下である。電解質リチウム塩の濃度が低すぎる場合、イオン伝導率が低すぎ、濃度が高すぎると、溶解しきれなかった電解質塩が析出するおそれがある。
【0140】
いくつかの実施形態において、前記電解液はさらに選択的に添加剤を含むが、本願はこれについて特に限定しない。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤が含まれていてもよく、さらに、電池の特定の特性を改善することができる添加剤、例えば、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温又は低温特性を改善する添加剤などが含まれていてもよい。
【0141】
[電池モジュール、電池パック及び電力消費装置]
本願の第3態様によれば、本願の第2態様の二次電池を含む電池モジュールが提供される。電池モジュールの製造は本分野で一般的に使用される方法を用いることができる。
【0142】
本願の第4態様によれば、本願の第2態様の二次電池又は本願の第3態様の電池モジュールのうちの少なくとも1つを含む電池パックが提供される。電池パックの製造は本分野で一般的に使用される方法を用いることができる。
【0143】
本願の第5態様によれば、本願の第2態様の二次電池、本願の第3態様の電池モジュール又は本願の第4態様の電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置が提供される。
【0144】
さらに、以下、適宜図面を参照して、本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置について説明する。
【0145】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装材を含むことができる。該外装材は上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いられる。
【0146】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装材は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装材は、パウチ型ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0147】
本願は二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図2は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0148】
いくつかの実施形態において、図3を参照すると、外装は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続された側板を含み、底板及び側板で囲まれることで収容キャビティが形成される。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は前記開口をカバーして、前記収容キャビティを密閉することができる。正極シート、負極シート及びセパレータから、捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容キャビティ内に封入される。電極アセンブリ52は電解液中に含浸されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際の要件に応じて選択することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールを構成することができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0150】
図4は一例としての電池モジュール4である。図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5を電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方式で配置してもよい。また、該複数の二次電池5は締結具によって固定することができる。
【0151】
選択的に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外ケースをさらに備えてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックを構成することができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0153】
図5及び図6は、一例としての電池パック1である。図5及び図6を参照すると、電池パック1は、電池ケースと、電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4と、を含むことができる。電池ケースは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に被せることができ、それにより電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ケース内に配置することができる。
【0154】
また、本願は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵要素として使用されてもよい。前記電力消費装置はモバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
前記電力消費装置として、二次電池、電池モジュール又は電池パックをその使用要件に応じて選択することができる。
【0156】
図7は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0157】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般的に軽量薄型化が求められており、電源として二次電池を用いることができる。
【実施例
【0158】
以下、本願の実施例について説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものと理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が示されていない場合、本分野の文献に記載された技術又は条件に従って、又は製品の説明書に従って実行される。使用した試薬又は機器にメーカーが記載されていない場合、いずれも市販の一般的な製品である。
【0159】
1、セパレータ
(実施例1)
ステップ1:ポリプロピレン膜の親水化改質
ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)の表面にナノオーダーグレードの親水化酸化グラフェン層をコーティングする
0.02wt%の酸化グラフェン(GO、南京先豊納米科技有限公司から購入)のイソプロピルアルコール(IPA)分散液を調製する。イソプロピルアルコール:水の体積分数比が20:1のIPA水溶液を用意し、0.02gのGOを100gの前記IPA水溶液に加え、30分間超音波振動してGOのイソプロピルアルコール(IPA)分散液を得る。次いで、7μmのPPフィルムを分散液中に完全に浸漬し、30秒間静置してから取り出して乾燥させる、というプロセスを5回繰り返して、表面が親水化されたPPフィルムを得る。
【0160】
ステップ2:混合ペーストの製造
固形分含有量1wt%のGOの水分散液(調製方法はステップ1と同じであり、水のみを溶媒として使用し、水を含む湿重量で計算、以下同じ)、SiO(400nm、乾燥重量で計算、以下同じ)、混合バインダー(混合バインダーの乾燥重量で計算、以下同じ)を100:5:0.1の質量比で混合し、800rpmで30分間撹拌してペーストを均一に混合し、使用に備える。
【0161】
前記混合バインダーの調製方法は以下のとおりである。0.75gのドーパミン塩酸塩と、0.2gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)と、10mlの脱イオン水とエタノール(1:1、v:v)との混合溶液(水系溶媒)と、を均一に混合する。次いで、濃度1mol/LのNaOH水溶液を用いてpHを8.5に調整し、混合バインダーを得る。
【0162】
ステップ3:セパレータのコーティング
ステップ2で得られたペーストを、GOで修飾されたPPフィルムの片側にスクレーパで均一にコーティングし、SiO/GO-PPフィルムを製造する。
【0163】
2層PPフィルムの複合
上記ステップ1~3に従ってもう1枚のSiO/GO-PPフィルムを製造する。次いで、2枚のSiO/GO-PPフィルムのコーティング層側を対向して重ね合わせた後、150℃でホットプレスして複合し、真空乾燥機の中で、溶媒が完全に除去されるまで60℃で一晩乾燥させて、PP-SiO/GO-PPである3層構造の複合セパレータを得る。当該複合セパレータのセラミック層の厚さは3μmであり、総厚さは17μmである。
【0164】
(実施例2)
ステップ2における二酸化ケイ素の粒径を700nmに変更したこと以外、実施例2のその他のステップは実施例1と同じである。
【0165】
(実施例3)
ステップ2における二酸化ケイ素の粒径を200nmに変更したこと以外、実施例3のその他のステップは実施例1と同じである。
【0166】
(実施例4)
ステップ2におけるセラミック粒子を二酸化ケイ素から酸化第二鉄(粒径は約100nm)に変更したこと以外、実施例4のその他のステップは実施例1と同じである。
【0167】
酸化第二鉄はリチウムデンドライトと合金化反応させることができ、比容量が高く、安定性に優れており、イオン伝導率が低く、リチウムデンドライトの消費に有利であり、同時にセパレータによる内部抵抗を減少させる。
【0168】
(実施例5)
ステップ2におけるセラミック粒子を二酸化ケイ素から二酸化スズ(粒径は約100nm)に変更したこと以外、実施例5のその他のステップは実施例1と同じである。
【0169】
(実施例6)
ステップ2におけるセラミック粒子を二酸化ケイ素から二酸化チタン(粒径は約100nm、アナターゼ型)に変更したこと以外、実施例6のその他のステップは実施例1と同じである。
【0170】
二酸化チタンはリチウムデンドライトとインターカレーション反応させることができ、チタン酸リチウムを生成する。理論容量が高く、構造が安定しており、リチウム挿入後も酸化物構造が大きく変化することがない。
【0171】
(実施例7)
ステップ2におけるセラミック粒子を二酸化ケイ素から酸化銅(CuO、粒径は約150nm)に変更したこと以外、実施例7のその他のステップは実施例1と同じである。
【0172】
酸化銅はリチウムと変換反応して、非晶質のLiO及びナノオーダーの金属銅粒子を生成し、生成されたナノオーダーの銅粒子はさらにLiOと反応して酸化物を生成することができ、それに高い比容量及び良好なサイクル特性を付与する。
【0173】
(実施例8)
ステップ1において、酸化グラフェン分散液を使用せずにポリプロピレンフィルムの親水化改質を行ったこと以外、実施例8のその他の条件は実施例1と同じである。
【0174】
(実施例9~14)
ステップ2における1wt%のGOの水分散液(調製方法はステップ1と同じであり、水のみを溶媒として使用する)、SiO(400nm)、混合バインダーの質量配合比を順に以下のように調整した。
【0175】
実施例9 100: 3:0.1
実施例10 100: 8:0.1
実施例11 100:10:0.1
実施例12 100: 5:0.05
実施例13 100: 5:0.3
実施例14 100: 5:0.5
【0176】
その他は実施例1と同じである。
【0177】
(実施例15~17)
ステップ3におけるコーティング層の厚さを4μm、5μm、6μmに変更したこと以外、その他のステップは実施例1と同じである。
【0178】
(実施例18~20)
セラミック粒子と混合バインダーとの質量比をそれぞれ1:0.001、1:0.3及び1:0.006としたこと以外、その他は実施例1と同じである。
【0179】
(実施例21~24)
セラミック粒子と混合バインダーとの質量の和と、酸化グラフェンの質量と、の比をそれぞれ2:1、3:1、9:1及び11:1としたこと以外、その他は実施例1と同じである。
【0180】
(実施例25)
ステップ2におけるセラミック粒子を二酸化ケイ素から酸化アルミニウム(粒径は約400nmである)に変更したこと以外、実施例25の条件は実施例1と同じである。
【0181】
(比較例1)
ステップ2において酸化グラフェンを使用しないこと以外、その他のステップは実施例1と同じである。
【0182】
実施例1~25及び比較例の試験結果は表1に示すとおりである。
【0183】
2、二次電池
正極シートの製造
正極活物質のリン酸鉄リチウム(LiFePOで計算する)、導電剤のアセチレンブラック、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96.5:2:1.5の質量比で混合し、溶媒のN-メチルピロリドン(すなわちNMP)に溶解し、十分に撹拌して均一に混合し、正極ペーストを得る。正極ペーストをアルミニウム箔上に均一にコーティングし、乾燥、冷間プレス、切断を経て、正極シートを得る。得られた極性シートのコーティング面密度は19.5mg/cmであり、圧粉密度は2.4g/cmである。
【0184】
負極シートの製造
グラファイト、導電剤のアセチレンブラック、バインダーのPVDF、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を96.5重量部:0.7重量部:1.8重量部:1重量部の質量比で溶媒の脱イオン水に溶解し、十分に撹拌して均一に混合し、負極ペーストを得る。負極ペーストを負極集電体の銅箔上に均一にコーティングし、乾燥、冷間プレス、切断を経て、負極シートを得る。得られた極性シートのコーティング面密度は9.8mg/cmであり、圧粉密度は1.65g/cmである。
【0185】
電解液の製造
有機溶媒のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)を重量比50/50で均一に混合し、LiPFを加えて上記有機溶媒に溶解し、均一に撹拌して、LiPFの濃度が1.1mol/Lの電解液を得る。
【0186】
セパレータ
本願の実施例及び比較例で製造されたセパレータを二次電池のセパレータとして使用する。
【0187】
二次電池
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し(セパレータは正負極の中間に配置されて隔離の役割を果たしている。)、捲回してベアセルを得る。ベアセルを外装材に入れ、上記電解液を注入して封入し、二次電池を得る。得られた二次電池の寸法は60×130×4mmである。
【0188】
関連パラメータの試験方法
1.セパレータ性能試験
1)セパレータの引張強度(Transverse Direction、TD)試験
ASTM D882-09基準に基づき測定する。試験対象のセパレータを幅10mm、長さ≧150mmの大きさに切断し、万能引張装置を利用して500mm/分の速度で引っ張り、サンプルの断裂時の最大荷重値を取得してから、それをセパレータの断面積(サンプルの幅×厚さ)で割って、セパレータの引張強度を計算する。
【0189】
2)セパレータの剥離力試験
ローラ圧縮機を利用して幅20mmの標準テープ(31B、日東から購入)をセパレータのセラミックコーティング層面に一定の応力(2kg、300mm/分)で貼り付け、引張試験機を利用して300mm/分の速度で180度剥離試験を行い、50mm~120mmの試験距離で50点の剥離力の数値を得て、平均値を算出する。
【0190】
3)セパレータの湿潤性試験
試験対象のセパレータを50mm×50mmの大きさに切断し、1mlの標準電解液(LiPFを、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)の重量比が1:1:1である混合溶媒に溶解して調製された電解液であり、LiPFの濃度は1mol/lである)をサンプルに滴下し、接触角計で液滴とセパレータとの夾角を観察する。
【0191】
4)セパレータの吸液速度試験
試験対象のセパレータを200mm×15mmの大きさに切断し、密閉空間内でサンプルを電解液の溶媒(EC:DMC:DECの重量比が1:1:1である混合溶媒)の上方に垂直に吊り下げ、セパレータの下端が溶媒の表面にちょうど接触するようにして、15分後にセパレータの毛細管吸液の高さを記録し、吸液速度(吸液高さ/吸液時間)を算出する。
【0192】
2. セラミック粒子の粒径試験
粒度分析Dv50とは、総体積の50%を占める粒子の直径はこの値より大きく、また総体積の50%を占める粒子の直径はこの値より小さいという値であり、Dv50は粉体のメディアン径を示す。
【0193】
粒子はレーザビームの照射下で、その散乱光の角度は粒子の直径と反比例関係を呈し、散乱光の強度は角度の増加に伴って対数規則的に減衰し、散乱光のエネルギー分布は粒子径分布と直接関連しており、散乱光のエネルギー分布を受信及び測定することにより、粒子の粒度分布の特徴を得ることができる。GB/T19077.1-2009標準の粒度分布レーザー回折法参照。
【0194】
3. コーティング層のコーティング面密度(ρ)試験
コーティング面密度(ρ)=コーティング重量(m)/コーティング面積(A)である。
【0195】
コーティング前のセパレータの重量(m)とコーティング後のセパレータの重量(m)を秤量し、両者の差がすなわちコーティング重量である。同時にセパレータがコーティングされた面積を測定することで、コーティング面密度を得ることができる。
【0196】
4. コーティング層によるセパレータのイオン抵抗率(ρ)試験
試験方法:電気化学インピーダンス分光法を用いて、電池内のセパレータのリチウムイオン透過性に対する影響を検討する。交流法を用いて測定された電気化学インピーダンススペクトルにおいて、電池の内部抵抗(これはセパレータの抵抗に関連する)を得ることができ、従ってこの方法を用いて電池の電荷移動抵抗を得ることができる。IVIUM電気化学ワークステーションを用いて試験を行い、周波数は0.1Hz~100kHzとした。
【0197】
抵抗の法則に基づき、領域制限対称電池を使用してEIS法で異なるセパレータ層数(n)のRsを測定してセパレータ抵抗とし、Rs及びnをプロットして傾きkを得て、既知の有効面積S及びセパレータ厚さの条件下でセパレータのイオン抵抗率を計算する。
【0198】
実際の試験から得られるのは一般的に電池のイオン抵抗、即ち体積抵抗である。試験で測定して得られるイオン抵抗(R)とは、セパレータ抵抗(R)と電池内の電解液の抵抗(R)との和であり、以下のように表される。
【0199】
【数4】
【0200】
計算の便宜上、Reの影響を無視してもよく、近似的にRs=Rbと見なし、以下の式に基づいてセパレータの抵抗率(ρ)を求めることができる。
【0201】
【数5】
【0202】
式中、ρはセパレータの抵抗率であり、Sはセパレータの有効面積であり、dはセパレータの平均厚さである。
【0203】
5.固形分含有量測定
固形分含有量はGB/T 1725-2007《着色塗料、ワニス及びプラスチックの不揮発分の測定》を参照して試験を行うことができる。
【0204】
6.二次電池の性能試験
クーロン効率試験
1)充電条件:室温下で定電流-定電圧モード(CC-CV mode)を利用して電池を充電する。まず定電流モードで0.1Cの固定電流で電圧が3.65Vに上昇するまで充電し、次に定電圧モードに切り替えて、電流が0.02Cになるまで行い、電池を完全に充電する。
【0205】
2)放電条件:異なる放電レート(Cレート:0.1C/1C/3C)の定電流モードで2.5Vまで放電し、これを200サイクル繰り返す。
【0206】
3)200サイクル後の異なる放電レートにおけるクーロン効率(放電容量/充電容量*100%)を計算する。結果を表1に示す。
【0207】
電力試験
1)充電条件:室温下で定電流-定電圧モード(CC-CV mode)を利用して電池を充電する。まず定電流モードで0.1Cの固定電流で電圧が3.65Vに上昇するまで充電し、次に定電圧モードに切り替えて、電流が0.02Cになるまで充電し、電池を完全に充電する。
【0208】
2)放電条件:放電レート0.1Cの定電流モードで2.5Vまで放電する。
【0209】
3)充放電過程における平均電力(電圧*電流)を計算し記録する。
【0210】
【表1-1】
【0211】
【表1-2】
【0212】
【表1-3】

備考:酸化グラフェン分散液を使用せずにポリプロピレンフィルムの親水化改質を行った。
:実施例15~17のコーティング層の厚さはそれぞれ4μm、5μm、6μmである。
:アルミナ(粒径約400nm)をセラミック粒子として使用した。
【0213】
表1の結果から分かることは以下のとおりである。1)酸化グラフェン分散液を使用して前処理されたセパレータは、セラミック-酸化グラフェンコーティング材とより効果的に接触することができ、セパレータの総合的な性能をさらに改善することに有利である。2)アルミナに比べて、本願の他のセラミック粒子を使用することで、セパレータの機械的特性と湿潤性をさらに向上させることができる。3)酸化グラフェンはセパレータの接着性、湿潤性及びイオン伝導能力を向上させることに役立つ。4)酸化グラフェン、バインダー及びセラミック粒子の配合比を調整することにより、セパレータの総合的な性能をさらに改善することができる。
【0214】
また、表1の結果から分かるように、酸化グラフェン-セラミック粒子混合コーティング材でコーティングされたセパレータに対応する二次電池は、高いクーロン効率を有し、低レート下で、200サイクル後も依然として99%以上を保持することができ、高レート下でのクーロン効率も高く、これは二次電池が良好なサイクル特性及びより長い耐用年数を有することを示している。同時に、比較例1に比べて、本願のセパレータを用いた二次電池はより高い電力を有し、その動的特性が優れていることを示す。また、セパレータは良好な耐デンドライト能力により、サイクル過程で生成されたリチウムデンドライトを直ちに消費することができ、それにより対応する二次電池はいずれも良好な安全性能を有する。
【0215】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一の構成を有し、同様の作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に包含される。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種の修正を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に積層されて設置される第1ベースフィルムと、第2ベースフィルムと、第1ベースフィルムと第2ベースフィルムとの間に位置し、セラミック粒子、酸化グラフェン及びバインダーを含むコーティング層と、を含むセパレータ。
【請求項2】
前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量比は1:0.001~0.3であり、選択的に1:0.01~0.1である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セラミック粒子と前記バインダーとの質量の和と、前記酸化グラフェンの質量と、の比は2~11:1であり、選択的に2~9:1である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記酸化グラフェンと前記セラミック粒子との質量比は1:1.5~11であり、選択的に1:3~5である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記酸化グラフェンは酸化グラフェンシートであり、選択的に、前記酸化グラフェンシートの横方向最大寸法は0.01~10μmである、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記セラミック粒子はSi、Fe、Sn、Ti、Cu、Mg、Ge、Zn、Zr及びB元素の酸化物、窒化物又はオキソ酸塩から選択された1つ又は複数であり、
選択的にSiの酸化物、Siの窒化物、Feの酸化物、Feの窒化物、Feのオキソ酸塩、Snの酸化物、Tiの酸化物、Tiの窒化物、Tiのオキソ酸塩、Cuの酸化物、Cuの窒化物、Mgの酸化物、Geの酸化物、Znの酸化物、ジルコニウムの酸化物、及び窒化ホウ素から選択された1つ又は複数であり、
さらに選択的に二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸リチウムから選択された1つ又は複数である、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セラミック粒子の粒径は0.01~10μmであり、選択的に0.05~0.5μmである、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記バインダーはドーパミン塩酸塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選択された1つ又は複数である、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さは0.1~10μmであり、選択的に1~6μmである、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記第1ベースフィルム及び前記第2ベースフィルムはそれぞれ独立してポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、及びポリエステルから選択された1つ又は複数である、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記第1ベースフィルム及び/又は前記第2ベースフィルムは酸化グラフェン分散液による浸潤処理がなされている、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第1ベースフィルム及び/又は前記第2ベースフィルムの厚さは3~30μmであり、選択的に5~25μmである、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記セパレータはρ≦10mΩ・cmを満たし、選択的にρ≦5×10mΩ・cmを満たす(ただし、ρはセパレータのイオン抵抗率を示す。)、請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載のセパレータを含む二次電池。
【請求項15】
請求項14に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項16】
請求項15に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項17】
請求項16に記載の電池パックを含む電力消費装置。
【国際調査報告】