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特表2025-502307二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20250117BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542146
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2022106071
(87)【国際公開番号】W WO2024011616
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼慧玲
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼昌隆
(72)【発明者】
【氏名】郭▲潔▼
(72)【発明者】
【氏名】黄磊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼翠平
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼文浩
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本出願は、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。前記二次電池は、正極シート、負極シート及び電解液を含み、負極シートは、負極活物質を含み、電解液は、第1の添加剤及び炭酸エステル溶媒を含み、第1の添加剤は、ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤を含み且つ負極活物質の表面に固体電解質界面膜を形成するように配置され、ここで、二次電池の放電容量をB1 Ahとし、二次電池のガス発生変化量をB2 mLとし、電解液の質量をC gとし、金属リチウムに対する第1の添加剤の還元電位をD(V、vs Li|Li)とすると、二次電池は、0.5≦B2/B1≦5、0.1≦C/B1≦100、0.8≦D≦2、10-4≦A1+A2≦10を満たす。本出願は、二次電池の安全性能、サイクル性能および電解液の利用率を改善することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
正極シートと、
負極活物質を含む負極シートと、
第1の添加剤及び炭酸エステル溶媒を含む電解液であって、前記第1の添加剤がホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤を含み且つ前記負極活物質の表面に固体電解質界面膜を形成するように配置される電解液と、を含み、
前記二次電池の放電容量をB1 Ahとし、
前記二次電池のガス発生変化量をB2 mLとし、
前記電解液の質量をC gとし、
金属リチウムに対する前記第1の添加剤の還元電位をD(V、vs Li|Li)とし、
前記電解液の総質量に対する前記ホウ素含有リチウム塩の質量百分率をA1%とし、前記電解液の総質量に対する前記エステル系添加剤の質量百分率をA2%とすると、
前記二次電池は、0.5≦B2/B1≦5、0.1≦C/B1≦100、0.8≦D≦2、10-4≦A1+A2≦10を満たす、
二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、以下の条件(1)~(4)のうちの少なくとも一つを満たし、
(1)1≦B2/B1≦5であり、
(2)1≦C/B1≦5であり、
(3)0.85≦D≦2であり、
(4)3≦A1+A2≦10である、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
金属リチウムに対する前記ホウ素含有リチウム塩の還元電位をD1(V、vs Li|Li)とし、0.85≦D1≦2であり、選択可能的に、0.85≦D1≦1.8であり、及び/又は、
金属リチウムに対する前記エステル系添加剤の還元電位をD2(V、vs Li|Li)とし、0.85≦D2≦2であり、選択可能的に、0.85≦D2≦1.2である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記ホウ素含有リチウム塩の分子式が、LiBFであり、分子式において、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電解液は、イオン伝導性リチウム塩をさらに含み、
前記イオン伝導性リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウムLiDODFP、テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムLiDFBP、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、硝酸リチウムLiNO、過塩素酸リチウムLiClO、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムLiSbF及びヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsFのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解液の総質量に基づいて計算して、前記イオン伝導性リチウム塩の質量百分率をA3%とし、
前記二次電池は、5≦A3≦25、選択可能的に、10≦A3≦20を満たす、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記炭酸エステル溶媒は、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がA4%である環状炭酸エステル溶媒と、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がA5%である鎖状炭酸エステル溶媒と、を含み、
前記二次電池は、1≦A5/A4≦10を満たし、
選択可能的に、5≦A4≦50であり、及び/又は、50≦A5≦70である、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートVA、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBC、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記正極シートは正極活物質を含み、
前記正極活物質の分子式は、LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cであり、分子式において、M及びNは、それぞれ独立に、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選択されるいずれか1種類であり、且つ、0≦y≦1、0≦x<1、0≦z≦1、x+y+z≦1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≦1である、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の二次電池を含む、
電池モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の電池モジュールを含む、
電池パック。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の二次電池、請求項11に記載の電池モジュール、又は請求項12に記載の電池パックを含む、
電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池の分野に関し、具体的には、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、高い容量、長い寿命などの特性を有するため、電子機器、例えば、携帯電話、ノートパソコン、バッテリーカー、電気自動車、電動飛行機、電動船舶、電動玩具自動車、電動玩具車両、電動玩具飛行機、電動工具などに広く用いられている。電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、二次電池の性能への要求もますます厳しくなっている。
【0003】
しかしながら、二次電池の性能を改善する場合に、二次電池の安全性能とサイクル性能と電解液の利用率を備え兼ねることは難しい。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することにある。
【0005】
本出願の第1の態様は、正極シート、負極シート及び電解液を含む二次電池であって、
負極シートは、負極活物質を含み、
電解液は、第1の添加剤及び炭酸エステル溶媒を含み、
第1の添加剤は、ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤を含み、負極活物質の表面に固体電解質界面膜を形成するように配置され、
ここで、二次電池の放電容量をB1 Ahとし、二次電池のガス発生変化量をB2 mLとし、電解液の質量をC gとし、金属リチウムに対する第1の添加剤の還元電位をD(V、vs Li|Li)とし、電解液の総質量に対するホウ素含有リチウム塩の質量百分率をA1%とし、電解液の総質量に対するエステル系添加剤の質量百分率をA2%とすると、
0.5≦B2/B1≦5、0.1≦C/B1≦100、0.8≦D≦2、10-4≦A1+A2≦10を満たす、二次電池を提供する。
【0006】
これにより、本出願は、二次電池の放電容量、ガス発生量、注入量、ホウ素含有リチウム塩の還元電位、及びホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤の含有量を共同で調節して上記式を満たすことにより、電解液中の成分が負極活物質の表面に安定なSEI膜を形成することを確保することができ、且つ、電解液における炭酸エステル溶媒の分解の程度が小さく、そのガス発生量が制御可能な範囲内にあり、二次電池の安全性能を確保することができ、且つ、金属イオンの円滑な移動を確保し、二次電池のサイクル性能を確保することができる。また、電解液が副反応を起こすリスクが小さいため、電解液の利用率が相対的に高い。
【0007】
任意の実施形態において、二次電池は、以下の条件(1)~(4)の少なくとも一つを満たす。
(1)1≦B2/B1≦5であり、
(2)1≦C/B1≦5であり、
(3)0.85≦D≦2であり、
(4)3≦A1+A2≦10である。
【0008】
電解液のガス発生変化量と二次電池の放電容量との比が1≦B2/B1≦5を満たすように制御されることにより、二次電池内の相対的に安全な内圧を確保した場合に、二次電池がその容量を十分に発揮することを確保することができる。
【0009】
電解液の質量と二次電池の放電容量との比が1≦C/B1≦5を満たすように制御されることにより、電解液の利用率を確保した上で、二次電池がその容量を十分に発揮することを確保することができる。
【0010】
第1の添加剤の金属リチウムに対する還元電位が0.85≦D≦2を満たすように調整されることにより、第1の添加剤の負極活物質への成膜速度及びそれが形成したSEI膜の構造安定性を調整することができる。
【0011】
ホウ素含有リチウム塩とエステル系添加剤との合計使用量が3≦A1+A2≦10を満たすように調整されることにより、負極活物質の表面に形成されたSEI膜の構造安定性を調整することができ、SEI膜の低い抵抗を確保することができ、二次電池の低温性能の向上に有利である。
【0012】
任意の実施形態において、金属リチウムに対するホウ素含有リチウム塩の還元電位をD1(V、vs Li|Li)とし、0.85≦D1≦2であり、選択可能的に、0.85≦D1≦1.8であり、及び/又は金属リチウムに対するエステル系添加剤の還元電位をD2(V、vs Li|Li)とし、0.85≦D2≦2であり、選択可能的に、0.85≦D2≦1.2である。
【0013】
D1が上記範囲にある場合に、ホウ素含有リチウム塩の還元電位が相対的に高く、ホウ素含有リチウム塩が負極活物質の表面に速やかに成膜されることにより有利であり、これにより、炭酸エステル溶媒が分解するリスクがさらに低下される。
【0014】
D2が上記範囲にある場合に、エステル系添加剤の還元電位が相対的に低く、ホウ素含有リチウム塩と配合して負極活物質の表面に成膜することができ、SEI膜の構造安定性を向上させるのに有利である。
【0015】
任意の実施形態において、ホウ素含有リチウム塩の分子式は、LiBFであり、分子式において、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4である。
【0016】
B原子は酸素を含むシュウ酸類配位子と結合することができ、結合後の生成物は優れた熱安定性を有し、負極活物質の表面に性能に優れたSEI膜を形成しやすいため、負極活物質の構造安定性を確保して、ひいては二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0017】
任意の実施形態において、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0018】
本出願の二次電池が上記ホウ素含有リチウム塩を含む場合、負極活物質の表面に、構造が安定で、抵抗値が比較的小さいSEI膜を形成することができるため、二次電池の高温性能や低温性能を改善することができる。また、上記ホウ素含有リチウム塩は、金属リチウムに対する還元電位が高く、負極活物質の表面に優先的に成膜することに有利であり、炭酸エステル溶媒の分解を低下することができる。
【0019】
任意の実施形態において、電解液は、イオン伝導性リチウム塩をさらに含み、イオン伝導性リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウムLiDODFP、テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムLiDFBP、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、硝酸リチウムLiNO、過塩素酸リチウムLiClO、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムLiSbF及びヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsFのうちの1種類又は複数種類を含む。イオン伝導性リチウム塩は、解離度が高く、その導電率が高く、リチウムイオンの移動に有利である。
【0020】
任意の実施形態において、電解液の総質量に基づいて、イオン伝導性リチウム塩の質量百分率をA3%とし、二次電池は、5≦A3≦25、選択可能的に、10≦A3≦20を満たす。
【0021】
イオン伝導性リチウム塩の質量百分率が上記範囲にある場合に、電解液の導電率を確保でき、それは、ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤と共に配合して使用すると、負極活物質に対して良好な保護作用を果たすことに有利であり、且つ電解液の安定性を確保し、電解液の利用率を向上させることができる。
【0022】
任意の実施形態において、炭酸エステル溶媒は、電解液の総質量に対する質量百分率がA4%である環状炭酸エステル溶媒と、電解液の総質量に対する質量百分率がA5%である鎖状炭酸エステル溶媒と、を含み、二次電池は、1≦A5/A4≦10、選択可能的に、5≦A4≦50、及び/又は50≦A5≦70を満たす。
【0023】
環状炭酸エステル溶媒は、より高い誘電率を有し、リチウム塩をより大きく溶解することができ、リチウム塩がよりリチウムイオンを解離しやすくなり、電解液の導電率を向上させる。鎖状炭酸エステルは低い粘度を有し、リチウムイオンの移動速度を向上させることができる。本出願は、環状炭酸エステル溶媒と鎖状炭酸エステル溶媒が上記比の範囲を満たすように調整されることにより、電解液の導電率とリチウムイオンの移動速度とを両立させ、二次電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0024】
任意の実施形態において、環状炭酸エステル溶媒は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートVA、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBC、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0025】
任意の実施形態において、正極シートは正極活物質を含み、正極活物質の分子式は、LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cであり、分子式において、M及びNは、それぞれ独立に、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選択されるいずれか1種類であり、且つ0≦y≦1、0≦x<1、0≦z≦1、x+y+z≦1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≦1である。
【0026】
本出願の第2の態様は、本出願の第1の態様のいずれかの実施形態に係る二次電池を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0027】
本出願の第3の態様は、本出願の第2の態様の実施形態に係る電池モジュールを含む電池パックをさらに提供する。
【0028】
本出願の第4の態様は、本出願の第1の態様のいずれかの実施形態に係る二次電池、本出願の第2の態様の実施形態に係る電池モジュール又は本出願の第3の態様の実施形態に係る電池パックを含む、電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本出願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。以下に説明された図面は本出願のいくつかの実施例のみであることは明確である。当業者であれば、創造的労働をしない前提であっても、図面に基づいて他の図面をさらに得ることができる。
【0030】
図1】本出願の二次電池の一実施形態の模式図である。
図2図1の二次電池の実施形態の分解模式図である。
図3】本出願の電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図4】本出願の電池パックの一実施形態の模式図である。
図5図4に示す電池パックの実施形態の分解模式図である。
図6】本出願の二次電池を電源として含む電気装置の一実施形態の模式図である。
【0031】
図面は、必ずしも実際の縮尺で描かれているわけではない。
【0032】
なお、説明は以下の通りである。
【0033】
1 電池パック、2 上ケース、3 下ケース、4 電池モジュール、
5 二次電池、51 ハウジング、52 電極アセンブリ、
53 カバープレート、
6 電力消費装置。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。しかし、必要でない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本出願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0035】
本出願において開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で規定され、所定範囲は、1つの下限及び1つの上限を選定することによって規定され、選定された下限及び上限は、特別な範囲の境界を限定している。このように限定される範囲は、端値を含む又は端値を含まない範囲であってもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して60―120及び80―110の範囲を挙げられた場合、60―110及び80―120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2と、最大範囲値3、4及び5が挙げられた場合、1―3、1―4、1―5、2―3、2―4及び2―5の範囲は、全て予想されてもよい。本出願において、他の説明がない限り、数値範囲「a―b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせを表す略記であり、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0―5」は、本明細書において全て「0―5」の間の全ての実数を挙げることを示し、「0―5」は、これらの数値の組合せの略記である。また、あるパラメータが2以上(≧2)の整数であると表記すると、当該パラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示することに相当している。
【0036】
特に説明がない限り、本出願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成してもよい。特に説明がない限り、本出願のすべての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成することができる。
【0037】
特に説明がない限り、本出願のすべての工程は、順に行われてもよいし、ランダムに行われてもよいが、順に行われることが好ましい。例えば、上記方法が工程(a)及び(b)を含むことは、上記方法が順に行われる工程(a)及び(b)を含むことであってもよく、順に行われる工程(b)及び(a)を含むことであってもよいことを表す。例えば、上記方法が工程(c)をさらに含んでもよいと言及する場合、工程(c)は、任意の順序で上記方法に加えられてもよいことを表す。例えば、上記方法は、工程(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、工程(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、工程(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0038】
特に説明がない限り、本出願に記載されている「備える」及び「含む」は、開放式であることを意味し、また、閉鎖式であってもよい。例えば、上記の「備える」及び上記「含む」は、挙げられていない他の成分をさらに「備える」又は「含む」こと、又は挙げられている成分のみを「備える」又は「含む」ことを表すことができる。
【0039】
特に説明がない限り、本出願において、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれの条件も満たされる。Aが真(又は存在)であり且つBが偽(又は存在しない)であり、Aが偽(又は存在しない)であり且つBが真(又は存在する)であり、又はAとBの両方が真である(又は存在する)。
【0040】
本出願において、用語「複数」、「複数種類」は、2つ又は2つ以上を意味する。
【0041】
二次電池は、高容量、長寿命などの特性を有するため、広く用いられている。二次電池の応用範囲の拡大に伴い、二次電池の性能への要求が徐々に高まっている。電解液は二次電池の重要な構成部分であり、正極シートと負極シートとの間に金属イオンを伝導する役割を果たす。電解液は、通常、リチウム塩と有機添加剤とを含む。リチウム塩の溶解度を向上させるために、有機添加剤の誘電率は通常比較的に高いことが求められている。リチウムイオンの移動を容易にするために、有機添加剤の粘度は通常比較的に低いことが求められている。炭酸エステル溶媒は、通常、高い誘電率を満たしつつ、低い粘度の要求を満たすことができるため、通常、電解液の添加剤として用いられている。しかし、高電圧では、電解液における炭酸エステル溶媒が還元分解しやすく、ガスが発生し、且つ、電解液に残った水が充電過程において分解して水素ガスなどが発生する。電解液の分解により、二次電池がサイクル過程でガスを生成し、ガス発生により二次電池が膨れて安全上のリスクを引き起こすだけでなく、二次電池における正極シートと負極シートとの密着が緊密でなくなり、二次電池の性能が低下してしまう可能性がある。また、電解液の分解が進むにつれて、電解液の利用率も低下することも引き起こす。
【0042】
そこで、発明者らは、二次電池について鋭意検討した結果、二次電池の放電容量と、ガス発生量と、電解液の質量と、電解液中の成分とが特定の関係を満たす場合に、二次電池の安全性能とサイクル性能とを両立させ、電解液の利用率を確保できることを見出した。次に、本出願の技術案について詳細に説明する。
【0043】
二次電池
【0044】
第1の態様によれば、本出願は、
負極シートと、正極シートと、電解液とを含む二次電池であって、
負極シートは、負極活物質を含み、
電解液は、第1の添加剤と炭酸エステル溶媒とを含み、
第1の添加剤は、ホウ素含有リチウム塩とエステル系添加剤とを含み、負極活物質の表面に固体電解質界面膜を形成するように配置され、
ここで、二次電池の放電容量をB1 Ahとし、二次電池のガス発生変化量をB2 mLとし、電解液の質量をC gとし、金属リチウムに対する第1の添加剤の還元電位をD(V、vs Li|Li)とし、電解液の総質量に対するホウ素含有リチウム塩の質量百分率をA1%とし、電解液の総質量に対するエステル系添加剤の質量百分率をA2%とすると、
0.5≦B2/B1≦5、0.1≦C/B1≦100、0.8≦D≦2、10-4≦A1+A2≦10を満たす、二次電池を提供する。
【0045】
メカニズムは明らかではないが、本出願の二次電池は、二次電池の安全性能とサイクル性能とを同時に両立させ、電解液の利用率を確保することができる。
【0046】
発明者らは、ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤が負極成膜添加剤として、いずれも負極活物質の表面に成膜し、負極活物質の表面に対して一定の不動態化作用を果たし、負極活物質の構造安定性を保護するという本出願の作用メカニズムを推測している。
【0047】
ホウ素含有リチウム塩とエステル系添加剤が共に第1の添加剤を構成し、金属リチウムに対する第1の添加剤の還元電位が相対的に高く、二次電池の化成過程において、炭酸エステル溶媒よりも第1の添加剤が優先的に負極活物質の表面に固体電解質界面膜(SoliD Electrolyte Interphase、SEI膜)を形成し、炭酸エステル溶媒が負極活物質の表面で分解して成膜し続けるリスクを低下し、溶媒のさらなる分解を阻害し、負極活物質の界面安定性を維持しつつ、電解液中の炭酸エステル溶媒の安定性を確保し、電解液の利用率を向上させることができる。また、電解液の分解程度が低下するため、電解液におけるガス発生のリスクが低下されるため、二次電池の内部圧力が安全圧力の範囲内になり、二次電池の安全性能を向上させることができる。また、電解液の分解の程度が低下することにより、金属イオン、例えばリチウムイオンの円滑な移動を確保することができるため、二次電池のサイクル性能を確保することができる。
【0048】
ホウ素含有リチウム塩とエステル系添加剤が共にSEI膜を形成し、SEI膜の構成成分が多く、その構造がより安定し、且つ、SEI膜の抵抗が低く、リチウムイオンの移動に有利である。
【0049】
電解液における有機溶媒は、一般に、環状炭酸エステル溶媒と、鎖状炭酸エステル溶媒とを含み、環状炭酸エステル溶媒は、電解液に対して高い誘電率を提供し、金属イオン、例えばリチウムイオンの解離を促進し、電解液のイオン導電率を向上させるのに有利であり、鎖状炭酸エステルは、低い粘度を提供することができ、金属イオン、例えばリチウムイオンの移動に有利である。
【0050】
電解液の質量と二次電池の放電容量との比を上記範囲内に制御することにより、電解液の利用率を確保した上で、二次電池がその容量を十分に発揮することを確保することができる。
【0051】
本出願は、二次電池の放電容量、ガス発生量、注入量、ホウ素含有リチウム塩の還元電位、及びホウ素含有リチウム塩、エステル系添加剤の含有量が上記式を満たすように制御されることにより、電解液中の成分が負極活物質の表面に安定なSEI膜を形成することを確保することができ、且つ、電解液における炭酸エステル溶媒の分解の程度が小さく、そのガス発生量が制御可能な範囲内であり、二次電池の安全性能を確保でき、且つ、金属イオンの円滑な移動を確保し、二次電池のサイクル性能を確保することができる。また、電解液が副反応を起こすリスクが小さいため、電解液の利用率が高い。
【0052】
いくつかの実施形態において、0.5≦B2/B1≦5であり、選択可能的に、1≦B2/B1≦5である。
【0053】
電解液のガス発生変化量と二次電池の放電容量との比が一定の範囲内に制御されることにより、二次電池内での相対的に安全な内圧を確保した場合、二次電池がその容量を十分に発揮することを確保することができる。例示的に、B2/B1は、0.5、1、1.2、1.5、1.8、2、2.5、3、3.5、4、4.2、4.5又は5であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、0.01≦B1≦500である。二次電池の放電容量が上記範囲にある場合、異なるシーンでの応用を満たすことができる。選択可能的に、2≦B1≦300であり、例示的に、二次電池の放電容量B1 Ahは、0.01 Ah、0.1 Ah、0.2 Ah、0.5 Ah、1 Ah、2 Ah、5 Ah、10 Ah、15 Ah、20 Ah、50 Ah、80 Ah、100 Ah、200 Ah、300 Ah又は500 Ahであってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0055】
本出願において、二次電池の放電容量B1 Ahとは、二次電池が室温で定電流充放電試験機により対応する電流と電圧を設定して測定した二次電池の容量値であり、当該技術分野で周知の方法及び機器を用いて測定することができる。三元系材料を例として、二次電池の放電容量の試験方法は、二次電池を定電流充放電試験機に置いて、試験温度25℃で、まず、一定の倍率0.05C(0.05Cは、二次電池の全ての電気量を20hで放電した電流値である)で製品電池の上限電圧(三元系材料の上限電圧は一般的に4.2-4.5Vである)まで充電し、30分間静置し、倍率0.05Cで下限電圧(三元系材料の下限電圧は一般的に2.5Vである)まで放電し、測定した放電容量が二次電池の放電容量B1 Ahである。
【0056】
いくつかの実施形態において、0.1≦B2≦2000である。二次電池のガス発生変化量が上記範囲にある場合、二次電池内での気圧変化が大きすぎず、二次電池が過度に膨張することがなく、二次電池の安全性能を確保することができる。選択可能的に、1≦B2≦1000であり、例示的に、二次電池のガス発生変化量は、0.1、1、2、5、10、15、20、25、30、35、50、80、100、200、300、400、500、600、700、800、1000、1200、1500、1600、1700、1800又は2000であってもよい。
【0057】
本出願において、二次電池のガス発生変化量は、当該技術分野で周知の意味であり、当該技術分野で周知の方法及び機器を用いて測定することができる。二次電池が角形電池である場合、二次電池の注液孔にCDKオイルゲージ(ブランドCCDK、型番:PPX-R10NH-6m-KA)を挿入し、機器の表示値は圧力パラメータ及び二次電池のガス発生量であり、表示値は圧力MPa(理想気体状態方程式PV=nRTにより、ガス発生量と圧力とは、正の相関である)である。試験する二次電池がソフトパッケージ電池である場合、天秤を用いてソフトパッケージ電池内のガス変化量を試験する。具体的な操作として、まず、体積が2Lのビーカーに脱イオン水を1.8Lまで入れ、水を入れたビーカーを天秤に挂けてゼロ点に戻し、鉄スタンド用治具によりソフトパッケージ電池の負極端末を挟み、二次電池を水に完全に浸し(排水法)、この時の天秤示度を製品の初期二次電池体積mLとして記録して、その後、ソフトパッケージ電池を25℃で、0.33Cで100%SOCまで充電し、完全に放電して実容量Ahを測定する。最後に、満充電されたソフトパック電池を70℃の高温炉に5日(5D)間静置し、排水法で二次電池の体積mLを再度測定し、70℃の高温で貯蔵した二次電池の体積変化量mL/Ah=(5D貯蔵した二次電池の体積-製品の初期二次電池体積)/実容量である。
【0058】
いくつかの実施形態において、0.1≦C/B1≦100であり、選択可能的に、1≦C/B1≦5である。
【0059】
電解液の質量と二次電池の放電容量との比が一定の範囲内に制御されることにより、電解液の利用率を確保した上で、二次電池がその容量を十分に発揮することができる。例示的に、C/B1は1、1.2、1.5、1.8、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、0.01≦C≦2000である。電解液の質量が上記範囲にある場合に、二次電池の容量を十分に発揮させることができる。選択可能的に、1≦C≦1000であり、例示的に、電解液の質量C gは、0.01g、0.05g、0.1g、0.2g、0.5g、0.6g、0.8g、1g、2g、5g、8g、10g、15g、20g、30g、50g、80g、100g、200g、300g、500g、700g、800g、1000g、1500g又は2000gであってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0061】
本出願において、電解液の質量Cは、製品二次電池における電解液の質量であり、電解液の質量C gの測定方法は、二次電池から電解液を取得する一例示的な方法として、二次電池を放電終止電圧まで放電し(安全のため、一般的に電池を完全放電状態にする)、遠心処理を行い、まず、遊離した電解液を注液孔から注出して収集し、次に、残りの極シート、セパレータなどのベアセル部分を遠心し、遠心回転速度が10000回転/分より大きくなり、遠心した後に明らかな液体が存在しなくなるまで、遠心を繰り返して電解液を収集し、収集された電解液の総量が製品セルの電解液の質量C gである。
【0062】
いくつかの実施形態において、0.8≦D≦2であり、選択可能的に、0.85≦D≦2であり、さらに選択可能的に、0.85≦D≦1.8である。Dは第1の添加剤の還元電位を示し、第1の添加剤が複数の材料を含む場合、異なる材料の還元電位が異なる可能性があるため、Dが範囲値である可能性がある。
【0063】
第1の添加剤の金属リチウムに対する還元電位を調整することにより、第1の添加剤の負極活物質への成膜速度及びそれが形成したSEI膜の構造安定性を調整することができる。
【0064】
本出願において、第1の添加剤の金属リチウムに対する還元電位は、当該技術分野で周知の意味であり、当該技術分野で通常の方法及び機器を用いて測定することができる。例えば、試験方法として、非水溶媒と主なリチウム塩LiPFのみを含むブランク電解液に1%の第1の添加剤を添加し、これを均一に混合し、リチウムシートを負極として採用し、黒鉛極シートを正極として採用し、コインセルとして組み立てられる。45℃で定電流充放電試験機上に2h静置して活性化し、まず200uAで5mVまで放電し、その後50uAで5mVまで放電し、5min静置し、0.1Cの電流を用いて2Vまで定電流充電し、測定結果をdQ/dV-Vのグラフとして示し、ここで、Qは電池の放電容量を示し、Vは電圧を示し、dQ/dVは電池の放電容量の電圧に対する微分を示し、上記のグラフによりホウ素含有リチウム塩に対応するピーク位置を識別することにより、第1の添加剤の還元電位を得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、金属リチウムに対するホウ素含有リチウム塩の還元電位をD1(V、vs Li|Li)とし、0.8≦D1≦2であり、選択可能的に、0.85≦D1≦1.8である。
【0066】
D1が上記範囲にある場合に、ホウ素含有リチウム塩の還元電位が相対的に高く、ホウ素含有リチウム塩が負極活物質の表面に速やかに成膜されることにより有利であり、これにより、炭酸エステル溶媒が分解するリスクをさらに低下する。選択可能的に、0.85≦D1≦2であり、例示的に、D1は、0.8、0.85、1、1.2、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2であってもよく、又は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、金属リチウムに対するエステル系添加剤の還元電位をD2(V、vs Li|Li)とし、0.8≦D2≦2である。
【0068】
D2が上記範囲にある場合に、エステル系添加剤の還元電位が相対的に低く、ホウ素含有リチウム塩と配合して負極活物質の表面に成膜することができ、SEI膜の構造安定性を向上させるのに有利である。選択可能的に、0.8≦D2≦1.8であり、さらに選択可能的に、0.8≦D2≦1.2であり、例示的に、D2は、0.8、0.85、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、又は1.8であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、10-4≦A1+A2≦10であり、選択可能的に、3≦A1+A2≦10である。
【0070】
ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤の合計使用量を調節することにより、それが負極活物質表面に形成したSEI膜の構造安定性を調節することができ、且つ、SEI膜の低い抵抗を確保することができ、二次電池の低温性能の改善に有利である。例示的に、A1+A2は、10-4、10-3、10-2、0.1、0.5、0.8、1、1.2、1.5、1.8、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、4.5、5、5.5、5.8、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0071】
本出願において、ホウ素含有リチウム塩の質量百分率A1%及びエステル系添加剤の質量百分率A2%の測定方法は、当該技術分野で既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフ-質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、10-4≦A1≦5である。ホウ素含有リチウム塩の質量百分率が上記範囲にある場合に、負極活物質の表面に安定なSEI膜を形成することができ、電解液の導電率を確保するのにも有利である。例示的に,ホウ素含有リチウム塩の質量百分率A1%は1×10-4%、1.5×10-4%、2×10-4%、5×10-4%、1×10-3%、1.5×10-3%、2×10-3%、5×10-3%、1×10-2%、5×10-2%、0.1%、0.5%、0.8%、1%、1.5%、2%、3%、4%或5%であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、10-4≦A2≦5である。エステル系添加剤の質量百分率が上記範囲にある場合に、SEI膜成分がより豊富になり、二次電池のサイクル及び貯蔵性能の改善に有利である。例示的に、エステル系添加剤の質量百分率A2%は、1×10-4%、1.5×10-4%、2×10-4%、5×10-4%、1×10-3%、1.5×10-3%、2×10-3%、5×10-3%、1×10-2%、5×10-2%、0.1%、0.5%、0.8%、1%、1.5%、2%、3%、4%又は5%であってもよく、又はこれらの任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0074】
[電解液]
【0075】
電解液は、正極シートと負極シートとの間で金属イオンを伝導する役割を果たし、本出願の電解液は、当該技術分野で周知の二次電池に用いられる電解液を採用することができる。電解液は、リチウム塩及び有機溶媒を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、リチウム塩は、ホウ素含有リチウム塩を含み、ホウ素含有リチウム塩の分子式は、LiBFであり、分子式中、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4である。
【0077】
B原子は酸素を含むシュウ酸類配位子と結合することができ、結合後の生成物は優れた熱安定性を有し、負極活物質の表面に性能に優れたSEI膜を形成しやすいため、負極活物質の構造安定性を確保して、二次電池のサイクル性能を改善することができる。もちろん、B原子はハロゲン原子、特にフッ素原子と結合してもよく、フッ素原子の電子吸引誘導効果が強く、その熱安定性及び化学的安定性が高く、且つ電解液中のリチウムイオンの移動数を向上させ、二次電池のレート性能を向上させ、分極現象を減少させることに有利である。
【0078】
一例として、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジシュウ酸ホウ酸リチウム(LiB(C、LiBOBと略称する)及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiBC、LiDFOBと略称する)のうちの1種類又は複数種類を含む。さらに、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウム(LiB(C、LiBOBと略称する)とジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiBC、LiDFOBと略称する)との組成物を含む。
【0079】
テトラフルオロホウ酸リチウムLiBFは、電解液中の炭酸エステル系溶媒又は添加剤と組み合わせて使用すると、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBFからなる系の粘度が相対的に低くなり、リチウムイオンの放出に有利であるため、電解液中の導電率を向上させる。テトラフルオロホウ酸リチウムLiBFから形成されるSEI膜の厚さが均一であり、動力学的活性が良く、二次電池における電荷の移動抵抗が小さく、これにより、二次電池の低温性能を顕著に改善することができ、また、SEI膜が熱分解しにくく、その高温での性能が安定するため、二次電池の高温性能を顕著に改善することができる。
【0080】
ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのいずれか一方は、正極シートにおける正極集電体に対する不動態化作用を有し、正極集電体と副反応して正極集電体を腐食させるリスクを低下し、正極シートの構造安定性を向上させることができる。また、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのいずれか一方を含む電解液は、酸性物質を生じにくいため、正極集電体が腐食されるリスクをさらに低下することもできる。ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBは、正極活物質との相溶性がよく、リチウムイオンの移動に有利であり、また、負極活物質の表面に有効なSEI膜を形成して、負極活物質に対する保護性能を向上させることができる。
【0081】
テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBを組み合わせて使用することにより、三者によって形成されたSEI膜の構成成分が多く、SEI膜の構造がより安定的であり、且つ構造が安定することを確保した上で、SEI膜の相対的に小さい抵抗値を確保して、二次電池の低温性能を確保することができる。
【0082】
本出願の二次電池が上記ホウ素含有リチウム塩を含む場合、負極活物質の表面に、構造が安定で、抵抗値が相対的に小さいSEI膜を形成することができるため、二次電池の高い低温性能を改善することができる。また、上記ホウ素含有リチウム塩は、金属リチウムに対する還元電位が高く、負極活物質の表面に優先的に成膜することに有利であるため、炭酸エステル溶媒の分解を低下させることができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、リチウム塩は、イオン伝導性リチウム塩をさらに含んでもよく、イオン伝導性リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウムLiDODFP、テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムLiDFBP、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、硝酸リチウムLiNO、過塩素酸リチウムLiClO、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムLiSbF、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsFのうちの1種類又は複数種類を含む。上記イオン伝導性リチウム塩の解離度が相対的に高く、その導電率が高く、リチウムイオンの移動に有利である。
【0084】
いくつかの実施形態において、電解液の総質量に基づいて、イオン伝導性リチウム塩の質量百分率は、A3%とし、5≦A3≦25であり、選択可能的に、10≦A3≦20である。
【0085】
イオン伝導性リチウム塩の質量百分率が上記範囲にある場合に、電解液の導電率を確保できる。それは、ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤と共に組み合わせて使用され、負極活物質に対して良好な保護作用を果たすことに有利であり、且つ電解液の安定性を確保し、電解液の利用率を向上させることができる。選択可能的に、10≦A3≦20であり、例示的に、イオン伝導性リチウム塩の質量百分率A3%は、5%、6%、8%、10%、12%、15%、16%、18%、20%、21%、23%又は25%であってもよく、又は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、エステル系添加剤は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含んでいてもよい。もちろん、エステル系添加剤は、直鎖状炭酸エステル添加剤などを含んでもよい。エステル系添加剤の質量百分率は、通常1%以下である。
【0087】
いくつかの実施形態において、炭酸エステル溶媒は、環状炭酸エステル溶媒と鎖状炭酸エステル溶媒とを含み、環状炭酸エステル溶媒の電解液の総質量に対する質量百分率をA4%とし、鎖状炭酸エステル系溶媒の電解液の総質量に対する質量百分率をA5%とし、ここで、二次電池は、1≦A5/A4≦10を満たす。
【0088】
環状炭酸エステル溶媒は、高い誘電率を有し、リチウム塩をより大きく溶解させることができ、リチウム塩がよりリチウムイオンを解離しやすくなり、電解液の導電率を向上させる。鎖状炭酸エステルは相対的に低い粘度を有し、リチウムイオンの移動速度を向上させることができる。本出願は、環状炭酸エステル溶媒と鎖状炭酸エステル溶媒が上記比の範囲を満たすように調整されることにより、電解液の導電率とリチウムイオンの移動速度とを両立させ、二次電池のサイクル性能をさらに改善することができる。選択可能的に、2≦A5/A4≦8、例示的に、A5/A4は、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよく、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、5≦A4≦50である。
【0090】
環状炭酸エステル溶媒の質量百分率が上記範囲にある場合に、電解液の導電率をより向上させることができる。例示的に、環状炭酸エステル溶媒の質量百分率A4%は、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、16%、18%、20%、30%、40%又は50%であり、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲である。
【0091】
いくつかの実施形態において、50≦A5≦70である。
【0092】
鎖状炭酸エステル溶媒の質量百分率が上記範囲にある場合に、電解液の粘度をより向上させることができ、リチウムイオンの移動速度を向上させることができる。例示的に、鎖状炭酸エステル溶媒の質量百分率A5%は、50%、52%、55%、56%、58%、60%、62%、65%、66%、68%又は70%であり、又は上記の任意の2つの数値からなる範囲である。
【0093】
いくつかの実施形態において、環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含む。上記環状炭酸エステル溶媒は、誘電率がより高く、リチウム塩の解離により有利である。
【0094】
いくつかの実施形態において、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートVA、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBC、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの1つ又は複数を含む。上記炭酸エステル系溶剤は、粘度が相対的に小さく、リチウムイオンの移動速度をさらに向上させることができる。
【0095】
いくつかの実施例において、電解液は、成膜添加剤、例えば、負極成膜添加剤をさらに含んでもよく、負極成膜添加剤は、硫酸エステル系添加剤、亜硫酸エステル系添加剤のうちの1種類又は複数種類を含む。負極成膜添加剤は、負極活物質の表面にSEI膜を形成することができ、SEI膜の表面に複数の成分が共に成膜してSEI膜の膜層構造を豊富にすることができ、SEI膜の構造安定性を向上させることができる。さらに、負極成膜添加剤は、硫酸エステル系添加剤及び亜硫酸エステル系添加剤を含み、それが形成したSEI膜は、組成が豊富であり、その構造安定性がより高く、負極活物質の貯蔵性能を改善することができる。もちろん、電解液に正極成膜添加剤を添加してもよく、それは正極活物質の表面に成膜し、正極活物質に対して保護作用を果たしてもよい。
【0096】
硫酸エステル系添加剤は、環状スルホン酸エステル系添加剤及び/又は炭化水素基硫酸エステル系添加剤を含む。さらに、環状スルホン酸エステル系添加剤は、1,3-プロパンスルトンPS、プロペンスルトンPES、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンFPSのうちの1つ又は複数を含む。炭化水素基硫酸エステル系添加剤は、硫酸ビニルDTD、硫酸ジエチルDES及び硫酸ジメチルDMSのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0097】
亜硫酸エステル系添加剤は、亜硫酸エチレンES及び/又は亜硫酸ビニルエチレンVESを含む。
【0098】
本出願の電解液は、当該技術分野の通常の方法に従って製造することができる。例えば、添加剤、溶媒、電解質塩等を均一に混合して電解液を得ることができる。各材料の添加順序は特に制限されず、例えば、添加剤、電解質塩等を非水溶媒に添加して均一に混合させ、非水電解液を得ることができる。
【0099】
本出願において、電解液中の各成分及びその含有量は、当該技術分野で既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフ-質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
【0100】
なお、本出願の電解液試験において、新たに調製した電解液を直接取り出してもよく、二次電池から電解液を取り出してもよい。二次電池から電解液を取り出す一つの例示的な方法は、二次電池を放電終止電圧まで放電した後(安全のために、一般的に電池を完全放電状態とする)、遠心処理を行い、その後遠心処理により得られた液体を非水電解液として適量に取り出す。二次電池の注液口から非水電解液を直接に取り出してもよい。
【0101】
[正極シート]
【0102】
いくつかの実施例において、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた正極膜層とを含む。例えば、正極集電体は、自体の厚み方向に対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0103】
正極膜層は、正極活物質を含み、正極活物質は、当該技術分野で周知の二次電池に用いられる正極活物質を採用することができる。例えば、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びこれらの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含んでいてもよい。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びこれらの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含んでもよい。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、及びこれらの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含んでもよい。本出願はこれらの材料に限定されるものではなく、二次電池正極活物質として用いられる従来周知の他の材料を用いてもよい。これらの正極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
いくつかの実施例において、正極活物質は、LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cを含み、ここで、M及びNは、それぞれ独立に、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選択されるいずれか1種類であり、0≦y≦1、0≦x<1、0≦z≦1、x+y+z≦1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≦1である。二次電池は、高圧条件下で充放電サイクルを行うと、上記正極活物質の構造が相対的に安定する。また、正極活物質がホウ素含有リチウム塩と組み合わせて使用すると、ホウ素含有リチウム塩中のB原子が正極活物質中のO原子と結合しやすくなるため、正極活物質の電荷の移動抵抗が低下し、正極活物質のバルク内でのリチウムイオンの拡散抵抗が低下する。従って、非水電解液に適切な含有量のテトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムを含有する場合、低コバルト又は無コバルトの正極活物質が顕著に改善されたリチウムイオン拡散速度を有することができ、低コバルト又は無コバルトの正極活物質のバルク内のリチウムイオンが表面にタイムリーに補充することができ、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の表面にリチウムが過度に脱離されることを回避することができ、これにより、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の結晶構造を安定させることができる。低コバルト又は無コバルトの正極活物質の結晶構造がより安定するため、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の表面に過度なリチウム脱離が発生することにより正極活物質の構造的性質、化学的性質又は電気化学的性質が不安定になるなどの問題、例えば、正極活物質の不可逆的な歪みや格子欠陥が増加するという問題が発生する確率を大幅に低下させることができる。
【0105】
LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cは、当該技術分野の通常の方法に従って製造することができる。例示的な製造方法としては、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素前駆体、N元素前駆体を混合した後焼結することで得る。焼結雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、空気雰囲気または酸素ガス雰囲気とすることができる。焼結雰囲気のO2濃度は、例えば、70%~100%である。焼結温度及び焼結時間は、実際の状況に応じて調節することができる。
【0106】
例として、リチウム源は、酸化リチウム(LiO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)、酢酸リチウム(CHCOOLi)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)及び硝酸リチウム(LiNO)のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。例として、コバルト源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト及び酢酸コバルトのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。例として、マンガン源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。例として、アルミニウム源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム及び酢酸アルミニウムのうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。例として、M元素前駆体は、M元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水酸化合物及び酢酸化合物のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。例として、N元素の前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫化リチウム、硫化アンモニウム及び単体硫黄のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。
【0107】
いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、分子式がLiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cである層状材料の質量百分率は80%~99%である。例えば、分子式がLiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cである層状材料の質量百分率は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の任意の数値からなる範囲であってもよい。選択可能的に、分子式がLiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cの層状材料の質量百分率は、85%-99%、90%-99%、95%-99%、80%-98%、85%-98%、90%-98%、95%-98%、80%-97%、85%-97%、90%-97%又は95%-97%である。
【0108】
いくつかの実施例において、正極膜層は、選択可能的に正極導電剤をさらに含んでもよい。本出願において、正極導電剤の種類は特に限定されないが、例として、正極導電剤は、超伝導性カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、正極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0109】
いくつかの実施例において、正極膜層は、選択可能的に正極バインダーをさらに含んでもよい。本出願において、正極バインダーの種類は特に限定されないが、例として、正極バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体および含フッ素アクリレート系樹脂から選択される1種類または複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、正極バインダーの質量百分率は5%以下である。
【0110】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用することができる。金属箔片の例としては、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでもよく、例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよく、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。
【0111】
正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスすることにより形成される。正極スラリーは、通常、正極活物質と、選択可能な導電剤と、選択可能なバインダーと、任意の他の成分とを溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
【0112】
[負極シート]
【0113】
負極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも一つの表面に設置された負極膜層とを含み、負極膜層は負極活物質を含む。
【0114】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設けられている。
【0115】
いくつかの実施形態において、負極活物質は、当該技術分野で周知の電池に用いられる負極活物質を採用することができる。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウム及びリチウムアルミニウム合金等のうちの少なくとも1種類を含むことができる。珪素系材料は、単体珪素、珪素酸化物、珪素炭素複合体、珪素窒素複合体及び珪素合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物及びスズ合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。しかしながら、本出願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活物質として用いられる従来の他の材料を使用することができる。これらの負極活物質は、1種類のみを単独で使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
いくつかの実施例において、負極膜層は、選択可能的に負極バインダーをさらに含んでもよい。本出願において、負極バインダーの種類は、特に限定されないが、例として、負極バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMMA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される1種類以上の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、負極バインダーの質量百分率は5%以下である。
【0117】
いくつかの実施例において、負極膜層は、選択可能的に負極導電剤をさらに含んでもよい。本出願において、負極導電剤の種類は特に限定されないが、例として、負極導電剤は、超伝導性炭素、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択される1種類または複数種類の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、負極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0118】
いくつかの実施例において、負極膜層は、選択可能的に他の助剤をさらに含んでもよい。例としては、他の助剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等の増粘剤を含むことができる。いくつかの実施例において、負極膜層の総質量に基づいて、他の助剤の質量百分率は2%以下である。
【0119】
いくつかの実施例において、負極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用することができる。金属箔片の例としては、銅箔や銅合金箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでもよく、例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよく、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを含んでもよい。
【0120】
負極膜層は、通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスすることにより形成される。負極スラリーは、通常、負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能なバインダー、その他の選択可能な助剤を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)または脱イオン水であってもよいが、これに限定されない。
【0121】
負極シートは、負極膜層以外の他の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施例において、負極シートは、負極膜層の表面に覆われた保護層を更に含む。
【0122】
[セパレータ]
【0123】
いくつかの実施形態において、二次電池は、セパレータを更に含む。本出願のセパレータの種類は特に限定されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の周知の多孔質構造のセパレータを選択することができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種類である。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよいが、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよく、特に限定されない。
【0125】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを作製することができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどのハードパッケージであってもよい。ナトリウムイオン電池の外装は、例えばバッグ式ソフトパッケージのソフトパッケージであってもよい。ソフトパッケージの材質はプラスチックでもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0128】
本出願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図1は、例示的な角形構造の二次電池5である。
【0129】
いくつかの実施例において、図1及び図2に示すように、外装は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は、底板と、底板に接続された側板とを含み、底板と側板とが囲まれて収容キャビティを形成する。ハウジング51は、収容キャビティと連通する開口部を有し、カバープレート53は、収容キャビティを閉鎖するように開口部を覆う。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容キャビティに封入される。電解液には、電極アセンブリ52が含浸される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数量は、1つ又は複数であってもよく、必要に応じて調節されてもよい。
【0130】
本出願の二次電池の製造方法は周知である。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回工程又は積層プロセスにより電極アセンブリを形成し、電極アセンブリを外装に入れ、乾燥した後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得ることができる。
【0131】
本出願のいくつかの実施例において、本出願に係る二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数量は、複数であってもよく、具体的な数量は、電池モジュールの応用や容量に応じて調節されてもよい。
【0132】
図3は、一例としての電池モジュール4の模式図である。図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並んで設けられていてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列されてもよい。更に、この複数の二次電池5が締結具により固定されてもよい。
【0133】
選択可能的に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外部ハウジングを更に含む。
【0134】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用や容量に応じて調節されてもよい。
【0135】
図4及び図5は、一例としての電池パック1の模式図である。図4及び図5に示すように、電池パック1に、電池ケースと、電池ボックスに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池ケースは、上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は、下ケース3を覆い、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成している。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケースに配列されてもよい。
【0136】
電力消費装置
【0137】
第2の態様では、本出願は、本出願の二次電池、電池モジュール及び電池パックのうちの少なくとも1種類を含む電力消費装置を提供する。二次電池、電池モジュール及び電池パックは、電力消費装置の電源として用いられてもよく、電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。電力消費装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0138】
電力消費装置は、その使用ニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0139】
図6は、一例としての電力消費装置の模式図である。当該電力消費装置6は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置の高い電力及び高いエネルギー密度への需要を満たすために、電池パック1又は電池モジュールを採用することができる。
【0140】
他の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該電力消費装置は、通常薄型化が求められ、二次電池を電源として採用することができる。
【0141】
実施例
【0142】
以下の実施例は本出願の内容をより具体的に説明するものであるが、これらの実施例は例示的な説明に過ぎず、本出願の開示内容の範囲内で様々の修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。以下の実施例において記載されているすべての数量、百分率、及び比の値は、特記しない限り、すべて質量基準に基づくものである。また、実施例において使用されるすべての試薬は、市販されているか、又は従来の方法に従って合成されてもよく、また、さらなる処理を必要とせずにそのまま使用することができる。また、実施例において使用される装置は、いずれも市販されている。
【0143】
実施例1
【0144】
1.正極シートの製造
【0145】
正極集電体として、厚さ12μmのアルミニウム箔を用いる。
【0146】
正極活物質であるLiNi0.6Co0.2Mn、導電剤であるカーボンブラック、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.4:1.1で適量の溶剤のNMP中で十分に撹拌して混合させ、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、正極シートを得る。
【0147】
2.負極シートの製造
【0148】
負極集電体として、厚さ8μmの銅箔を用いる。
【0149】
負極活物質である黒鉛、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の溶剤の脱イオン水中で十分に撹拌して混合させ、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスした後、負極シートを得る。
【0150】
3.セパレータ
【0151】
セパレータとしては、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムを用いる。
【0152】
4.電解液の製造
【0153】
含水量が10ppm未満の環境下で、非水有機溶媒であるECとDECとを体積比1:1で混合して電解液の溶媒を得た後、有機溶媒と第1の添加剤とを混合し、リチウム塩の濃度が1mol/Lの電解液とし、その主なリチウム塩をLiPFとする。金属リチウムシートに対するECの還元電位は0.7(V、Li+|Li)であり、金属リチウムシートに対するDECの還元電位は0.8(V、Li+|Li)である。
【0154】
5.二次電池の製造
【0155】
上記正極シートとセパレータと負極シートとを順に積層し、セパレータを正極シートと負極シートとの間に介在させて隔離作用を果たした後、巻回して電極アセンブリを得て、電極アセンブリを外装ハウジングに置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形などの工程を経て、リチウムイオン電池を得る。
【0156】
実施例2
【0157】
実施例2-1及び実施例2-2の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造され、実施例1と異なる点は、実施例2-1及び実施例2-2において、ホウ素含有リチウム塩の種類を調整したことである。
【0158】
実施例2-3及び実施例2-4の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造され、実施例1と異なる点は、実施例2-3及び実施例2-4において、エステル系添加剤の種類を調整したことである。
【0159】
実施例3
【0160】
実施例3-1乃至実施例3-5の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造され、実施例1と異なる点は、実施例3-1乃至実施例3-5において、ホウ素含有リチウム塩の添加量を調整したことである。
【0161】
実施例4
【0162】
実施例4-1乃至実施例4-4の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造され、実施例1と異なる点は、実施例4-1乃至実施例4-4において、エステル系添加剤の添加量を調整したことである。
【0163】
実施例5
【0164】
実施例5-1乃至実施例5-4の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造され、実施例1と異なる点は、実施例5-1乃至実施例5-4において、イオン伝導性リチウム塩の添加量を調整したことである。
【0165】
実施例6
【0166】
実施例6-1及び実施例6-2の二次電池は、実施例1と類似の方法で製造され、実施例1と異なる点は、実施例6-1及び実施例6-2において、イオン伝導性リチウム塩の種類を調整したことである。
【0167】
実施例1乃至実施例6及び比較例のデータを表1及び表2に示す。
【0168】
【表1】
【0169】
【表2】
【0170】
試験部分
【0171】
(1)二次電池の常温でのサイクル性能の試験
【0172】
25℃で、二次電池を1Cの定電流で4.4Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電を継続し、この時、二次電池は100%充電状態(100%SOC)であり、この時の充電容量を1回目の充電容量として記録した。二次電池を5分間静置した後、1Cの定電流で2.8Vまで放電し、これは一つのサイクル充放電過程であり、この時の放電容量を1回目の放電容量として記録した。二次電池を上記方法に従ってサイクル充放電試験を行い、毎回サイクルした後の放電容量を記録した。二次電池の25℃での600回サイクルした容量維持率(%)=600回サイクルした放電容量/1回目の放電容量×100%。
【0173】
(2)二次電池の70℃での貯蔵後ガス発生性能の試験
【0174】
二次電池の安全性能は、二次電池の高温での貯蔵後ガス発生性能の試験によって特徴付けることができる。
【0175】
貯蔵後ガス生成性能の試験方法:室温25℃で、排水法で製品であるソフトパッケージのセル体積を試験し、この時のセル体積を初期体積mLとして記録した。その後、容量の試験を行い、70℃で電池を6時間静置し、二次電池を1Cの定電流で4.4Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電を継続し、この時の放電容量を二次電池の実容量Ahとした。その後、ソフトパッケージの二次電池を0.33Cで4.4Vまで充電し、二次電池を60℃のサーモスタットに入れ、5日間貯蔵した後に取り出し、この時、排水法で試験して二次電池の体積を5D貯蔵後の体積mLとした。二次電池の70℃での5日間貯蔵後の体積変化量(mL/Ah)=(5D貯蔵後の体積-初期体積)/二次電池の実容量。
【0176】
(3)電解液の利用率の試験
25℃でのサイクルした後の二次電池の電解液の質量の測定方法として、製品である二次電池を25℃で、0.33Cレートの定電流で充放電を10回サイクルし、5分間静置した。二次電池を放電終止電圧まで放電し(安全のため、一般的に二次電池を完全放電状態にした)、その後、遠心処理を行い、まず、遊離した電解液を注液孔から注出して収集し、次に、残りの極シート、セパレータ等のベアセル部分を遠心し、遠心の回転速度が10000回転/分より大きく、遠心した後に明らかな液体が存在しなくなるまで、遠心を繰り返して電解液を収集し、収集した電解液の総量がセルの余剰電解液の質量gであり、電解液量の利用率g=セルの余剰電解液の質量/製品セルの質量×100%である。
【0177】
試験結果
【0178】
二次電池の性能の改善に対する本出願の作用を表3に示す。
【0179】
【表3】
【0180】
表3から分かるように、比較例には、ホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤が添加されておらず、その二次電池の全体性能、特にそのサイクル性能及び安全性能は相対的に悪くなる。
【0181】
本出願の実施例は、ホウ素含有リチウム塩の種類、含有量又はエステル系添加剤の種類、含有量が、式:0.5≦B2/B1≦5、0.1≦C/B1≦100、0.8≦D≦2、10-4≦A1+A2≦10を満たすように制御されることにより、二次電池のサイクル性能及びガス発生量を顕著に改善することができる。また、電解液にイオン伝導性リチウム塩を添加することにより、二次電池の性能をより一層改善することができる。
【0182】
以上、好ましい実施例を参照して本願を説明したが、本願の範囲を逸脱しない場合、種々の改良が可能であり、又はそのうちの一部の構成要素を等価物で置き換えてもよい。特に、構造的な矛盾がない限り、各実施例に言及された各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。本願は、以上に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての態様を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
正極シートと、
負極活物質を含む負極シートと、
第1の添加剤及び炭酸エステル溶媒を含む電解液であって、前記第1の添加剤がホウ素含有リチウム塩及びエステル系添加剤を含み且つ前記負極活物質の表面に固体電解質界面膜を形成するように配置される電解液と、を含み、
前記二次電池の放電容量をB1 Ahとし、
前記二次電池のガス発生変化量をB2 mLとし、
前記電解液の質量をC gとし、
金属リチウムに対する前記第1の添加剤の還元電位をD(V、vs Li|Li)とし、
前記電解液の総質量に対する前記ホウ素含有リチウム塩の質量百分率をA1%とし、前記電解液の総質量に対する前記エステル系添加剤の質量百分率をA2%とすると、
前記二次電池は、0.5≦B2/B1≦5、0.1≦C/B1≦100、0.8≦D≦2、10-4≦A1+A2≦10を満たす、
二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、以下の条件(1)~(4)のうちの少なくとも一つを満たし、
(1)1≦B2/B1≦5であり、
(2)1≦C/B1≦5であり、
(3)0.85≦D≦2であり、
(4)3≦A1+A2≦10である、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
金属リチウムに対する前記ホウ素含有リチウム塩の還元電位をD1(V、vs Li|Li)とし、0.85≦D1≦2であり、選択可能的に、0.85≦D1≦1.8であり、及び/又は、
金属リチウムに対する前記エステル系添加剤の還元電位をD2(V、vs Li|Li)とし、0.85≦D2≦2であり、選択可能的に、0.85≦D2≦1.2である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記ホウ素含有リチウム塩の分子式が、LiBFであり、分子式において、0≦a≦4、0≦b≦8、0≦c≦4、0≦d≦4である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF、ジシュウ酸ホウ酸リチウムLiBOB及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムLiDFOBのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電解液は、イオン伝導性リチウム塩をさらに含み、
前記イオン伝導性リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF、ジフルオロリン酸リチウムLiPO、ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウムLiDODFP、テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムLiDFBP、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムLiFSI、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、フルオロスルホン酸リチウムLiFSO、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムLiTFSI、硝酸リチウムLiNO、過塩素酸リチウムLiClO、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムLiSbF及びヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsFのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解液の総質量に基づいて計算して、前記イオン伝導性リチウム塩の質量百分率をA3%とし、
前記二次電池は、5≦A3≦25、選択可能的に、10≦A3≦20を満たす、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記炭酸エステル溶媒は、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がA4%である環状炭酸エステル溶媒と、
前記電解液の総質量に対する質量百分率がA5%である鎖状炭酸エステル溶媒と、を含み、
前記二次電池は、1≦A5/A4≦10を満たし、
選択可能的に、5≦A4≦50であり、及び/又は、50≦A5≦70である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項9】
前記環状炭酸エステル溶媒は、エチレンカーボネートEC、プロピレンカーボネートPC、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートPC、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBCのうちの1種類又は複数種類を含み、有機溶媒は、さらに、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記正極シートは正極活物質を含み、
前記正極活物質の分子式は、LiNiCoMn1-x-y-z又はLiNiCoAl1-a-b-cであり、分子式において、M及びNは、それぞれ独立に、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選択されるいずれか1種類であり、且つ、0≦y≦1、0≦x<1、0≦z≦1、x+y+z≦1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≦1である、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1に記載の二次電池を含む、
電池モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の電池モジュールを含む、
電池パック。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の二次電池、請求項11に記載の電池モジュール、又は請求項12に記載の電池パックを含む、
電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
任意の実施形態において、環状炭酸エステル溶媒は、ビニレンカーボネートVC、フルオロエチレンカーボネートFEC、ジフルオロエチレンカーボネートDFEC、ビニルエチレンカーボネートVEC及びジオクチルカーボネートCCのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートPC、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBCのうちの1種類又は複数種類を含む。有機溶媒は、さらに、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの1種類又は複数種類を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
いくつかの実施形態において、鎖状炭酸エステル溶媒は、エチルアリルカーボネートAEC、ジフェニルカーボネートDPC、メチルアリルカーボネートMAC、ポリカーボネートPC、ジエチルカーボネートDEC、エチルメチルカーボネートEMC、メチルプロピルカーボネートMPC、エチルプロピルカーボネートEPC、メチルブチルカーボネートMBCのうちの1種類又は複数種類を含む。有機溶媒は、さらに、酢酸メチルMA、酢酸エチルEA、プロピオン酸メチルMP及びプロピオン酸エチルEPのうちの1つ又は複数を含む。上記炭酸エステル系溶剤は、粘度が相対的に小さく、リチウムイオンの移動速度をさらに向上させることができる。
【国際調査報告】