(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】免疫療法の毒性を予測するための細胞状態のリキッドバイオプシー分析
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20250117BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250117BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542149
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 US2023060573
(87)【国際公開番号】W WO2023137390
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャウドゥリー, アーデル
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ロザーノ, アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR58
4B063QR62
4B063QX01
(57)【要約】
黒色腫患者において免疫療法の施行に伴って重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を、患者から得た末梢血試料中の活性化CD4メモリーT細胞の存在量および/またはT細胞受容体(TCR)の多様性に基づいて予測するための方法が開示される。本発明は、免疫療法を受ける患者において重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を、免疫療法を受ける前の患者から得た末梢血試料に由来するバイオマーカーに基づいて予測するための方法および組成物を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法を受ける患者において重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を予測するための方法であって、
a.免疫療法による処置を受ける前の対象から末梢血試料を得るステップと、
b.前記末梢血試料中の活性化CD4メモリーT細胞の存在量およびT細胞受容体(TCR)の多様性を定量するステップと、
c.前記活性化CD4メモリーT細胞の存在量とTCRの量の組合せが閾値を超える場合、前記患者を、重度のirARが発生する可能性が高いと分類するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
既知の臨床的標準を参照することによって前記閾値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化CD4メモリーT細胞の存在量および前記T細胞受容体(TCR)の多様性が、バルクRNAシーケンシング(CIBERSORTxおよびMiXCR)、飛行時間によるマスサイトメトリー(CyTOF)、immunoSEQ(登録商標)TCR-βプロファイリング、液滴ベースのscRNAシーケンシングおよびscTCRシーケンシング、および活性化CD4メモリーT細胞を標的とするRNAパネルを使用した標的化RNAシーケンシングのうちの少なくとも1つを使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
免疫療法を受ける患者において重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を予測するための方法であって、
a.免疫療法による処置を受ける前の対象から第1の末梢血試料を得、前記患者に前記免疫療法を施行した後に第2の末梢血試料を得るステップと、
b.前記第1の末梢血試料から第1のTCR多様性レベルを定量し、前記第2の末梢血試料から第2のTCR多様性レベルを定量するステップと、
c.前記第2のTCR多様性レベルから前記第1のTCR多様性レベルを差し引くことによってTCR拡大の程度を得るステップと、
d.前記TCR拡大の程度が閾値を超える場合、前記患者を、重度のirARが発生する可能性が高いと分類するステップと
を含む、方法。
【請求項5】
前記TCR拡大の程度に基づいて前記重度のirARが発症する時点を予測するステップをさらに含み、TCR拡大の程度がより高いことにより、重度のirARの発症がより早いことが予測される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のTCR多様性および前記第2のTCR多様性が、バルクRNAシーケンシング(CIBERSORTxおよびMiXCR)、飛行時間によるマスサイトメトリー(CyTOF)、immunoSEQ(登録商標)TCR-βプロファイリング、液滴ベースのscRNAシーケンシングおよびscTCRシーケンシング、および活性化CD4メモリーT細胞を標的とするRNAパネルを使用した標的化RNAシーケンシングのうちの少なくとも1つを使用して決定される、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2022年1月13日に出願された米国仮出願第63/299,377号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から付与されたCA187192およびCA238711の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
参照により組み込まれる材料
該当なし。
【0004】
発明の分野
本開示は、一般には、患者における免疫療法の毒性を予測するための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
ICIにより、がん処置に大変革がもたらされたが、ICIによる処置を受けた黒色腫患者のおよそ10~60%に重度の免疫関連性毒性が一般に発生しており、毒性の率は施行された特定の療法に密接に関連する。ICI誘導性毒性は、irAEとしても公知であり、肺、肝臓、心臓、皮膚、下垂体、および胃腸管を含めた様々な器官系に影響を及ぼし、緊急の医療介入を必要とする実質的な病的状態を伴う恐れがある。そのような病的状態は、抗がん処置の停止、および最も重度の場合には、死亡に至る恐れがある。irAEの生物学的駆動因子は、十分には特徴付けられておらず、標準的な診療においてirAEの発生のリスクが最も高い患者を同定する方法は存在しない。
【0006】
したがって、ICI誘導性毒性の潜在的なバイオマーカーの血液または腫瘍の分析に基づく調査がいくつかのグループによって行われた。しかし、これらの研究は一般に処置中の初期段階での予測または単一器官系に焦点を当てたものであり、患部器官系に関係なく、処置前の状況でのirAEの予測性能はわずかであった。最近、肺臓炎のみのirAEバイオマーカー候補が、腫瘍免疫組織化学的検査を使用して報告されたが、このバイオマーカーは、Cancer Genome Atlasによって間接的に同定されたものであり、毒性に関するアノテーションがされておらず、また、低グレードirAEが含まれない症例対照の状況で評価された。別のグループにより、マイクロRNA-146aをコードする遺伝子内の一塩基多型が同定され、重度のirAE発生に関連付けられた。さらに、他のグループが、irAEの調査を伴わずにICI応答バイオマーカーを同定した。
【0007】
ICI誘導性irAEのタイミング、重症度、および場所の変動性を含めた、その相当な不均一性を考慮すると、ICI誘導性irAEを引き起こす因子を決定することは依然として困難なままである。既存の自己抗体、自己反応性組織常在性T細胞、および、慢性ウイルス感染症から生じる、ウイルス抗原に対する特異性を有するT細胞は全てirAEに関係付けられている。結腸インターロイキン-1β発現の増大をもたらす腸内マイクロバイオームの変化も、ICI誘導性大腸炎に関して最近報告されている。これらの観察を考慮して、いくつかのグループが、irAEと自己免疫疾患の類似点を調査した。実際に、症例報告から、ICIが明白な自己免疫を引き起こし得ることが示されており、これにより、irAEが患者の一部において不顕性自己免疫となっている可能性が示唆される。しかし、ICI誘導性毒性の別個の顕在化に先立って共通の免疫学的状態が生じるかどうかは不明である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本開示の種々の態様として、免疫療法を受ける患者において重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を、免疫療法を受ける前の患者から得た末梢血試料に由来するバイオマーカーに基づいて予測するための方法および組成物が挙げられる。一態様では、開示される方法は、免疫療法による処置を受ける前の対象から末梢血試料を得るステップと、末梢血試料中の活性化CD4メモリーT細胞の存在量およびT細胞受容体(TCR)の多様性を定量するステップとを含む。好ましい方法は、活性化CD4メモリーT細胞の存在量とT細胞受容体(TCR)の多様性の組合せが閾値(本明細書では、モデル指数と称されることもある)を超える場合、患者を、重度のirARが発生する可能性が高いと分類するステップとをさらに含む。閾値は、活性化CD4メモリーT細胞およびTCR多様性のレベルを同定し、それを超えると患者がirARを生じやすいという上限を表す値の範囲を提供するモデル指数を使用して決定することができる。一態様では、所定の閾値を超えるモデル指数の値(CD4メモリーT細胞値とTCR多様性値の組合せ)により、より重度のirARが予測される。追加的な態様では、本方法は、既知の臨床的標準を参照することによって閾値を決定するステップをさらに含む。別の態様では、開示される方法は、活性化CD4メモリーT細胞の存在量およびT細胞受容体(TCR)の多様性を、バルクRNAシーケンシング(CIBERSORTxおよびMiXCR)、飛行時間によるマスサイトメトリー(CyTOF)、immunoSEQ(登録商標)TCR-βプロファイリング、液滴ベースのscRNAシーケンシングおよびscTCRシーケンシング、および活性化CD4メモリーT細胞を標的とするRNAパネルを使用した標的化RNAシーケンシングのうちの少なくとも1つを使用して決定するステップを含む。
【0009】
本開示の他の態様では、免疫療法を受ける患者において重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を予測するための方法が開示される。一態様では、本方法は、免疫療法による処置を受ける前の対象から第1の末梢血試料を得、免疫療法を施行した後に第2の末梢血試料を得るステップを含む。これらの他の態様において開示される方法は、第1の末梢血試料から第1のTCR多様性レベルを定量し、第2の末梢血試料から第2のTCR多様性レベルを定量するステップを含む。開示される方法は、第2のTCR多様性レベルから第1のTCR多様性レベルを差し引くことによってTCR拡大の程度を得るステップをさらに含む。開示される方法は、TCR拡大の程度が閾値を超える場合、患者を、重度のirARが発生する可能性が高いと分類するステップをさらに含む。一態様では、本方法は、TCR拡大の程度に基づいて重度のirARが発症する時点を予測するステップを含み、TCR拡大の程度がより高いことにより、重度のirARの発症がより早いことが予測される。一態様では、本方法は、T細胞受容体(TCR)の多様性レベルを、バルクRNAシーケンシング(CIBERSORTxおよびMiXCR)、飛行時間によるマスサイトメトリー(CyTOF)、immunoSEQ(登録商標)TCR-βプロファイリング、液滴ベースのscRNAシーケンシングおよびscTCRシーケンシング、および活性化CD4メモリーT細胞を標的とするRNAパネルを使用した標的化RNAシーケンシングのうちの少なくとも1つを使用して決定するステップを含む。
【0010】
他の目的および特色は、一部は明白であり、一部は以下に挙げられる。
【0011】
下記の図面は、単に例示するためのものであることが当業者には理解されよう。図面は、本教示の範囲をいかようにも限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示に記載されている試験の概要の概略図である。本試験に含められた患者の概要、当該患者のirAEの状況の要約、除外基準、および実施した下流の分析が含まれる。総計78例の適格患者のうち、71例が、除外基準の適用後にirAEの分析について評価可能であった。
【
図2A-B】
図2Aは、
図1のシングルセル発見コホートの特徴を表す色分けチャートのセットである。免疫療法の開始後の生じた最も高いirAEグレードおよび長続きする臨床応答の状態が含まれる。
図2Bは、CyTOFによって分析した末梢血液細胞のviSNE投影のUMAPチャートである。t-SNE、t分布型確率的近傍埋め込み法。
【
図2C-D】
図2Cは、(左)今後のirAEの状況によって群分けされた、18例の患者におけるCyTOFによって同定された20種の細胞状態の相対的な存在量を示すヒートマップ、ならびに(右)細胞状態の存在量と重度のirAE発生の関連性を示すグラフである。統計的有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定し、方向を有する-log10 P値によって表した。重度のirAEなしとの関連性については、-log10 P値に-1をかけた。Q値をBenjamini-Hochberg法によって決定した。
図2Dは、今後のirAEの状況によって層別化された患者(重度のirAEなし、n=10例の患者;重度のirAE、n=8例の患者)の処置前末梢血におけるCD4 TEM細胞(CyTOF)の出現頻度のグラフである。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。統計的有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定した。
【
図3A】
図3Aは、細胞型、患者、および状態(n=32)によって色分けされた、CyTOFによって共分析された13例の患者からの、scRNA-seqによってプロファイリングされた(
図2A)末梢血液細胞のUMAPである。T/NKT、NK様T細胞。
【
図3B】
図3Bは、今後のirAEの状況およびCD4 TEM細胞の出現頻度(CyTOF)に対する細胞状態の存在量(scRNA-seq)のUMAPである。前者は、両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって定量し、-log10 P値として表した。重度のirAEなしとの関連性については、-log10 P値に-1をかけた。CD4 T細胞状態5および3はまとめてCD4 T 5+3として示されている。
【
図3C】
図3Cは、CD4 T細胞状態5および3と他のCD4 T細胞状態の間のDEG(P
adj<0.05)のヒートマップである。各状態内で、列は、個々の患者からの平均発現をz-スコアに変換したものを表す。
【
図3D】
図3Dは、(左)重度のirAEの状況なし(n=7)および重度のirAEの状況(n=6)によって層別化された13例の患者におけるCD4 T 5+3細胞状態の候補活性化サブセットおよび静止サブセットの出現頻度。100万ごとの計数(CPM)が>0の活性化マーカーを発現しているとみなした。有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定した、ならびに(右)重度のirAE発生を予測するための、CD4 T 5+3サブセット(左側のパネル)の性能を示す受信者動作特性曲線プロット。NS、有意でない、の2つのグラフのセットである。
【
図3E】
図3Eは、今後のirAEの状況によって群分けされた、各T細胞状態、総T細胞、CD8 T細胞、CD4 T細胞、および活性化CD4 T 5+3細胞と静止CD4 T 5+3細胞とにおける処置前TCRクローン型多様性を示すグラフである(
図3Dにおいて定義されている)。少なくとも100のTCRクローンを有する全ての患者(n=9)についてTCR多様性を算出した。状態を、TCR多様性と重度のirAEの状況の間のAUCによって順序付けた。
【
図3F】
図3Fは、CD4 T細胞状態における重要な系列および活性化遺伝子の平均発現の色分けチャートである。箱内の状態はTEMおよびTEM様表現型と一致する。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。
【
図4A-B】
図4Aは、バルクコホート1(n=26例の患者)およびバルクコホート2(n=27例の患者)における処置前末梢血白血球組成(CIBERSORTx)と重度のirAE発生の間の関連性を示すグラフである(
図1)。有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定し、-log10 P値として表した。重度のirAEなしとの関連性については、-log10 P値に-1をかけた。
図4Bは、今後のirAEの状況(重度のirAEなし、n=36;重度のirAE、n=17)によって層別化された、両方のバルクコホート(n=53例の患者)におけるTCRクローン型多様性(Shannonエントロピー)を示すグラフである。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定した。
【
図4C】
図4Cは、処置前末梢血トランスクリプトームによる活性化CD4 TM細胞の存在量およびTCRクローン型多様性を、バルクコホート1で訓練し、両方のコホートにわたって示したモデルスコアを統合した、重度のirAEを予測するための複合モデルの開発を示すグラフである。高/低スコアのカットポイントをバルクコホート1に対してYoudenのJ統計値を使用して最適化した。
【
図4D】
図4Dは、(左)全ての患者(両方の療法、n=27)、併用療法患者(n=11)またはPD-1単独療法患者(n=16)のいずれに適用したかにかかわらず、バルクコホート2(ホールドアウト検証)における複合モデル性能を示すROCプロット、ならびに(右)PD-1患者(n=29)で訓練し、併用療法患者(n=24)でテストしたか、またはその逆であるかにかかわらず、バルクコホート1および2における複合モデル性能を示すROCプロット、の2つのグラフのセットである。各ROC曲線についてAUCが示されている。
【
図4E】
図4Eは、患者ごとの最も高いirAEグレードによって群分けした、モデルを重度のirAE発生についてLOOCVを用いて訓練した(
図13)後の全てのバルクコホート患者(n=53)の複合モデルスコアのグラフである。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×四分位範囲内の最小値および最大値を示す。統計的有意性をクラスカル・ワリス検定によって決定した。
【
図5A-B】
図5Aは、併用療法を用いた処置を受けた患者における重度のirAE発症までの時間の処置前予測を示すグラフである。カットポイントを、LOOCVを用いて訓練した複合モデルスコアを使用して最適化した。初期段階の進行が生じなかったバルクコホート1および2の患者のみを分析した(n=23)。統計的有意性を両側ログランク検定によって評定した。
図5Bは、併用療法を用いた処置を受けた患者におけるTCRクローンダイナミクスを重度のirAE発生との関連で示す2つのグラフのセットである。左:1-Pielouの均衡度によって測定された併用療法の開始後のベースラインからのTCRクローン性の変化。今後のirAEの状況が色で示されている。右:左と同じであるが、今後のirAEの状況に応じたクローン性の変化を示す。有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定した。
【
図5C-D】
図5Cは、
図5Bにおいて分析した患者3例から得た処置前PBMC試料由来のCD4 T細胞におけるCD4 T 5+3遺伝子シグネチャーの富化を示すグラフである。これらの患者は全てICI開始後に重度のirAEが発生し、またTCRクローン拡大を示した(
図15D)。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数ならびに最小値および最大値を示す。点は、scRNA-seqによってプロファイリングされ、Azimuth(CD4ナイーブ、n=245の細胞;CD4 TCM、n=320の細胞)またはベースラインから処置中の初期段階の時点までのそれらのクローン持続性(持続性CD4、n=190の細胞)のいずれかによってアノテーションされた細胞を示す。本分析において最も持続性が高かったCD4クローン型ではクローン拡大の証拠が示された(
図15FおよびG)。有意性を持続性細胞に対して両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定した。ssGSEA、単一試料GSEA。
図5Dは、1-Pielouの均衡度の変化によって測定された、併用療法の開始後のTCRクローン拡大の程度によって層別化した重度のirAEの非存在の差異のグラフである。患者を以下の三分位に群分けした:クローン拡大なし(n=5)、中間(n=5)、および高クローン拡大(n=5)。統計的有意性を両側ログランク検定によって評定した。
【
図6】
図6は、自己免疫疾患における循環中の白血球の大規模評定を示す色分けチャートである。健康対照と比べた2つの自己免疫障害における循環中の白血球レベルの富化。白血球組成をCIBERSORTxによって決定した。有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定および統合メタz-スコアによって決定した。分析ワークフローおよび基礎をなすデータセットの詳細は
図16に示されている。
【
図7A-C】
図7Aは、主要な細胞系列、重度のirAEの状況、scV(D)J-seqによるTCR発現、およびscV(D)J-seqによるBCR発現(
図3Aに関連する)によって色分けされた、液滴ベースのscRNA-seq(10×Genomics)によってプロファイリングされた13例の転移性黒色腫患者由来の処置前末梢血白血球のUMAP表示である。
図7Bは、scRNA-seqデータから同定されたCD4 T細胞クラスター当たりの平均log2トランスクリプトームの教師なし階層的クラスタリング(平均連結法)の概略図である。
図7Cは、CD4 T細胞クラスターにおける重要な活性化マーカー(HLA-DX、MKI67)および系列マーカー(SELL、CCR7)の平均発現を示すドットプロットである。
【
図7D-E】
図7Dは、分析した主要細胞型(B細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、NK細胞、単球)のそれぞれの中でのscRNA-seqクラスターの全てのペアワイズ組合せを示す、scRNA-seqデータから同定されたCD4 T細胞クラスター当たりの平均log2トランスクリプトームの教師なし階層的クラスタリング(平均連結法)のグラフである。82通りの可能性のあるペアワイズ組合せにわたって、CD4 T 5+3で、CyTOFによって列挙されたCD4 TEMレベルに対する最も高いスピアマン相関および重度のirAE発生との最も強い関連性が実現された。「T/NKT」としてアノテーションされた細胞はCD8 T細胞に入れた。
図7Eは、単位分散正規化(平均0および標準偏差1)後の各特色の平均によって順位付けした全てのペアワイズ組合せを示す、scRNA-seqデータから同定されたCD4 T細胞クラスター当たりの平均log2トランスクリプトームの教師なし階層的クラスタリング(平均連結法)のグラフである。本分析では、重度のirAEとの関連性についての-log10 P値(両側、対応のないウィルコクソン順位和検定)を、関連性の方向を考慮に入れず、単位分散に対して正規化した。
【
図8A】
図8Aは、scRNA-seqおよび228種の抗体によってプロファイリングされた162,000個の細胞の参照PBMCアトラスを使用してAzimuthにより埋め込みラベリングした、本研究において生成したscRNA-seqデータのUMAP投影を示す。
【
図8B-C】
図8Bは、マーカー遺伝子および教師なしクラスタリングによって決定された表現型ラベリング(行;
図3Aおよび
図7Aに関連する)とAzimuthを用いた参照誘導アノテーション(列)の一致を示す混同行列である。全部で、Azimuthによって主要系列群(B細胞、CD4 T、CD8 T、NK細胞、単球)に割り当てられた単一細胞の85%が、基準マーカー遺伝子評定によって同じ同一性に割り当てられた。Azimuthに使用した参照アトラスにはNKT細胞が存在しないことを考慮して、教師なし分析によって定義されたT/NKTクラスターはCD8 T細胞に再ラベリングした。
図8Cは、
図3Bのものと同じ分析であるが、Azimuthによって同定された27種全ての表現型状態を示すグラフである。これらの状態の中で、CD4 TEMが、重度のirAEおよびCyTOFにより列挙されたCD4 TEMと最も大きく関連した。CD4 TEMとCD4増殖性状態が組み合わさった集団も重度のirAEと強力に関連した。後者は、HLA-DXの最高発現およびSELLの最低発現を示し(パネルd)、これは、活性化CD4 TEM表現型と一致する。
【
図8D-E】
図8Dは、AzimuthによってアノテーションされたCD4 T細胞状態の中での重要な活性化マーカーおよび系列マーカーを示すドットプロットである。
図8Eは、
図8CおよびFのCD4 TEM状態とCD4増殖性状態の組合せを支持する、抗体由来のタグ(ADT)データを使用したAzimuthによるタンパク質発現レベルを示すバイオリンプロットのセットである。
【
図8F】
図8Fは、重度のirAEの予測に関する、Azimuthおよび教師なしクラスタリングによって同定された最上位の細胞サブセットの性能を示すグリッドである。組合せCD4 T 5+3クラスター(
図3B)は、重度のirAEおよびCyTOFと、最上位の参照誘導集団よりも大きく関連した(
図3C)。統計的有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定を使用して算出した。示されている全てのパネル中のデータは、
図3においてscRNA-seqによってプロファイリングされた13例の試料からのものである。
【
図9A】
図9Aは、scRNA-seqによってプロファイリングされた13例のPBMC試料(
図1および3A)における、重度のirAE発生と、教師なしクラスタリングによって同定されたT細胞状態の処置前レベル(左)およびAzimuthによって同定されたメモリー様T細胞状態(右)の間の関連性を示すグラフである。活性化細胞をHLA-DXまたはMKI67を発現する細胞(CPM>0)と定義し;静止細胞をHLA-DXおよびMKI67発現が存在しないこと(CPM=0)によって定義した。
【
図9B】
図9Bは、活性化、静止、および親T細胞サブセットの重度のirAE発生との関連の分析を示すグラフのセットである。左:シングルセル発見コホートにおいて分析された(
図1および2A)18例の患者全てについて、CyTOFによって定量された、重度のirAE発生と、メモリーT細胞サブセット、総CD4 T細胞およびCD8 T細胞、および総T細胞の処置前レベルの間の関連性。活性化表現型をCD38+またはHLA-DR+またはKi67+と定義した。静止表現型をCD38-HLA-DR-Ki67-と定義した。右:重度のirAE発生の予測に関する、活性化CD4 TEMサブセットおよび静止CD4 TEMサブセット(左側のパネル)の性能を示すROCプロット。細胞画分を、総PBMC含量に対して評定した。a、bにおける統計的有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定し、名目上の-log10 P値が示されている。重度のirAEなしとの関連性については-log10 P値にさらに-1をかけた。
【
図10A-B】
図10Aは、重要なTCR多様性評価基準、ならびにそのような評価基準に対する細胞の存在量、TCRの豊富さ、および別個のクローンのレパートリーの影響を示す概略図である。仮定上のCD4ナイーブおよびTEM細胞サブセットが例として示されている。大きさで差異を示す三角形は一定の縮尺では描かれていない。
図10Bは、scRNA-seqデータの教師なしクラスタリングによって同定された各CD4 T細胞状態についての平均クローン性(1-Pielouの均衡度)に対する平均Shannonエントロピーのグラフである。活性化細胞が富化されたTEM状態であるCD4 T 5+3(
図3BおよびC)は、この表現型について予測される通り、他のCD4状態と比べてクローン性の上昇を示す一方で、より高い多様性(Shannonエントロピー)も示し、それにより豊富さの増大も示される。
【
図10C-E】
図10Cは、利用可能なscTCRクローン型データを用いた、EM様CD4 T細胞状態(
図3F)の分布を示す概略図である。
図10Dは、処置前血液由来の偽性バルクT細胞における重度のirAE発生とTCR多様性(Shannonエントロピー)の間の関連性を示すグラフのセットである。scRNA-seqによって同定された全てのT細胞状態(左)および
図10Cに示されているEM様状態を除去した後のT細胞状態が示されている(重度のirAEなし、n=5例の患者;重度のirAE、n=4例の患者)。箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。
図10Eは、
図10Dにおけるものと同じ関連性を示すが、EM様状態を単独で示すグラフである。箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。
【
図10F-G】
図10Fは、処置前末梢性TCR多様性(Shannonエントロピー)と重度のirAE発生の間の関連性についての曲線下面積(AUC)を示すグラフである。活性化細胞(HLA-DXまたはMKI67についてCPM>0)に制限した後の組合せCD4 T 5+3クラスターを含めた、eにおける構成する細胞状態の全ての組合せについて示されている。注目すべきことに、本分析において、活性化EM様状態の他の組合せではAUC>0.85は実現されなかった。
図10Gは、BCRクローン型多様性(Shannonエントロピー)を示すグラフである。教師なしクラスタリングによって同定された各B細胞状態(
図3A)について示されている。
図10BおよびD~Fでは、少なくとも100種のTCRクローンを有する患者のみを分析した(n=9)。一貫性のために
図10Gでも同じ患者について分析した。箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。
【
図11A-B】
図11Aは、LM22シグネチャー行列(MAS5で正規化)からの主要なCD4 T細胞サブセットにおける発生的に調節されるマーカー遺伝子の発現を示すグラフである。活性化CD4メモリーT細胞についてのLM22参照シグネチャーがTEMプロファイルを有することが示されている。
図11Bは、17例の転移性黒色腫患者の処置前末梢血における活性化CD4メモリーT細胞の列挙についての、マスサイトメトリーに対するCIBERSORTxを示すグラフである。95%信頼度の帯を伴う線形回帰線が示されている。一致および有意性をそれぞれピアソンrおよび両側t検定によって決定した。このプロットでは、CyTOFによって定量化された活性化CD4メモリーT細胞がCD38発現によって定義されたが、他の活性化CD4 TEMサブセットもCIBERSORTxと有意に相関した(
図11C)。
【
図11C-D】
図11Cは、CyTOFおよびCIBERSORTxによって決定されたリンパ球サブセット出現頻度の相互相関プロットである。Act.、活性化された。
図11Dは、17例の転移性黒色腫患者由来のPBMCにおける、CIBERSORTxによって推測された活性化CD4メモリーT細胞レベルと、CyTOFによってプロファイリングされた、各集団内の手動でゲーティングしたCD38+活性化サブセットを含めた14種のメモリーT細胞状態の間の相関を示す相互相関プロットである。
【
図11E-F】
図11Eは、バルクRNA-seqによってプロファイリングされた5例の健康な対象由来の末梢血試料における、CIBERSORTxおよびフローサイトメトリーによって列挙されたリンパ球サブセットの包括的な相関を示す散布図である。95%信頼度の帯を伴う線形回帰線が示されている。一致および有意性をそれぞれピアソンrおよび両側t検定によって決定した。単球はサイトメトリーでは全血球計算値と比較して可変的に少なく見積もられたので、b~eにおける結果は全て、総リンパ球に対して表されている。
図11Fは、本研究における各モダリティによってプロファイリングされたirAEについて評価可能な試料全てにわたる、CyTOF(CD38+、HLA-DR+またはKi67+CD4 TEM細胞、n=28例の患者)、scRNA-seq(CD4 Tクラスター5および3内のHLA-DX+またはMKI67+細胞、n=13例の患者)、およびCIBERSORTx(n=60例の患者)によって定量化された活性化CD4メモリーT細胞レベルの分布を示すグラフである。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。統計的有意性をクラスカル・ワリス検定によって決定した。n.s.、有意でない(P>0.05)。
【
図12A】
図12Aは、Shannonエントロピーについて示され、治療型によって層別化された、バルクコホート1および2の各患者についてのベースラインバルクTCR多様性と観察された最も高いirAEグレードの間の関連性を示すグラフである。併用療法を用いた処置を受けた患者が今後のirAEの状況によって層別化されている:重度のirAEなし(n=10)と重度のirAE(n=14例の患者)(左)ならびにirAEグレード(右):0/1(n=3)、2(n=7)、3(n=12)、および4(n=2)。2群間比較を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって評定した。n.s.、有意でない(P>0.05)。線形回帰を適用して、irAEグレードによって群分けされた各評価基準の中央値を評価した(挿入図)。線形一致の有意性を両側t検定によって決定した。グレード0および1はそれぞれ毒性なしおよび無症候性毒性を反映し、これらを併合した。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。
【
図12B】
図12Bは、Gini-Simpson指数について示され、治療型によって層別化された、バルクコホート1および2の各患者についてのベースラインバルクTCR多様性と観察された最も高いirAEグレードの間の関連性を示すグラフである。併用療法を用いた処置を受けた患者が今後のirAEの状況:重度のirAEなし(n=10)と重度のirAE(n=14例の患者)(左)およびirAEグレード(右):0/1(n=3)、2(n=7)、3(n=12)、および4(n=2)によって層別化されている。2群間比較を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって評定した。n.s.、有意でない(P>0.05)。線形回帰を適用して、irAEグレードによって群分けされた各評価基準の中央値を評価した(挿入図)。線形一致の有意性を両側t検定によって決定した。グレード0および1はそれぞれ毒性なしおよび無症候性毒性を反映し、これらを併合した。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。
【
図12C】
図12Cは、Shannonエントロピーについて示され、治療型によって層別化された、バルクコホート1および2の各患者についてのベースラインバルクTCR多様性と観察された最も高いirAEグレードの関連性を示すグラフである。PD1単独療法を用いた処置を受けた患者が今後のirAEの状況:重度のirAEなし(n=26)と重度のirAE(n=3例の患者)(左)およびirAEグレード(右):0/1(n=19)、2(n=7)、3(n=2)、および4(n=1)によって層別化されている。2群間比較を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって評定した。n.s.、有意でない(P>0.05)。線形回帰を適用して、irAEグレードによって群分けされた各評価基準の中央値を評価した(挿入図)。線形一致の有意性を両側t検定によって決定した。グレード0および1はそれぞれ毒性なしおよび無症候性毒性を反映し、これらを併合した。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。
【
図12D】
図12Dは、Gini-Simpson指数について示され、治療型によって層別化された、バルクコホート1および2の各患者についてのベースラインバルクTCR多様性と観察された最も高いirAEグレードの関連性を示すグラフである。2群間比較を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって評定した。n.s.、有意でない(P>0.05)。線形回帰を適用して、irAEグレードによって群分けされた各評価基準の中央値を評価した(挿入図)。線形一致の有意性を両側t検定によって決定した。グレード0および1はそれぞれ毒性なしおよび無症候性毒性を反映し、これらを併合した。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。
【
図13A-B】
図13Aは、
図4Dにおいて見られるものと同様であるが、一個抜き交差検証(LOOCV)を使用した、両方のバルクコホート(n=53例の患者)に適用されるグラフである。
図13Bは、
図4Cにおいて見られるものと同様であるが、LOOCVによって決定されたモデルスコアについて示すグラフである。
【
図13C】
図13Cは、重度のirAE発生の予測に関する、複合モデルの性能と、他の候補処置前因子の性能とを示すプロットである。示されている通り、複合モデルをバルクコホート1(BC1)において訓練し、バルクコホート2(BC2)において検証したか、または逆に、バルクコホート2(BC2)において訓練し、バルクコホート1(BC1)において検証した。
【
図13D】
図13Dは、バルクコホート2からの異なる患者サブグループにおける重度のirAEの予測に関する、バルクコホート1で訓練した複合モデルの性能を示すグラフである。DCB、長続きする臨床的利益;NDB、長続きしない臨床的利益;GI、胃腸。
【
図13E-F】
図13Eは、今後のirAEグレード:0/1(n=3)、2(n=7)、3(n=12)、および4(n=2)によって層別化された、併用療法を用いた処置を受けた全てのバルクコホート患者(n=24)についてのLOOCVによって決定された複合モデルスコアを示すグラフである。中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。統計的有意性をクラスカル・ワリス検定によって決定した。
図13Fは、
図13Eのスコアを使用した併用療法患者におけるグレード2+、3+、または4のirAE発生の予測に関する、モデル性能を示すグラフである。
【
図13G-H】
図13Gは、患者当たりの症候性irAE(グレード2+)の数に対する両方のバルクコホート(n=53例の患者)のLOOCVによって決定された複合モデルスコアを示すグラフである。中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。統計的有意性をクラスカル・ワリス検定によって決定した。
図13Hは、患者当たりの器官系毒性の数に対する両方のバルクコホート(n=53例の患者)におけるLOOCVによって決定された複合モデルスコアを示すグラフである。中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに箱の上限下限の1.5×IQR(四分位範囲)内の最小値および最大値を示す。統計的有意性をクラスカル・ワリス検定によって決定した。
【
図13I】
図13Iは、患者および器官系にわたるirAEの分布を示すプロットである。バルクコホート1および2の患者を、LOOCVによって決定された複合モデルスコアを低下させることによって体系化する。高/低スコアを区別する線を、LOOCVを使用して最適化した。
【
図13J】
図13Jは、
図13Iの閾値によって層別化された、少なくとも2つの器官系にirAEが発生した両方のバルクコホートの患者のフラクションと、発生しなかった患者のフラクションとを示すグラフである。有意性を両側フィッシャーの直接検定によって決定した。
【
図14A】
図14は、検証バルクコホート2における重度のirAEまでの時間の予測に関する複合モデル性能を示すグラフのセットである。
図14a~cは、複合モデルスコアによって層別化された、バルクコホート2における、併用もしくはPD1免疫チェックポイント遮断(a)、併用療法(b)、またはPD1単独療法(c)を用いた処置を受けた患者についての重度のirAEの非存在についてのカプラン・マイヤー分析を示すグラフである。統計的有意性を両側ログランク検定によって算出した。全てのパネルに関して、訓練をバルクコホート1に対して実施し、重度のirAEの予測のカットポイントを、YoudenのJ統計値を使用してバルクコホート1に対して最適化した。とりわけ、a~cの分析では、処置開始と処置開始後3カ月の間が目印となり、この期間内に全ての重度のirAEが生じた。カプラン・マイヤープロットは、いかなる重度のirAEも発生しなかった患者の延長追跡調査を考慮して4カ月まで示されている。
図14Aは、複合モデルスコアによって層別化された、バルクコホート2における、併用またはPD1免疫チェックポイント遮断を用いた処置を受けた患者についての重度のirAEの非存在についてのカプラン・マイヤー分析を示すグラフである。統計的有意性を両側ログランク検定によって算出した。全てのパネルに関して、訓練をバルクコホート1に対して実施し、重度のirAEの予測のカットポイントを、YoudenのJ統計値を使用してバルクコホート1に対して最適化した。とりわけ、本分析では、処置開始と処置開始後3カ月の間が目印となり、この期間内に全ての重度のirAEが生じた。カプラン・マイヤープロットは、いかなる重度のirAEも発生しなかった患者の延長追跡調査を考慮して4カ月まで示されている。
【
図14B】
図14Bは、複合モデルスコアによって層別化された、バルクコホート2における、併用療法を用いた処置を受けた患者についての重度のirAEの非存在についてのカプラン・マイヤー分析を示すグラフである。統計的有意性を両側ログランク検定によって算出した。全てのパネルに関して、訓練をバルクコホート1に対して実施し、重度のirAEの予測のカットポイントを、YoudenのJ統計値を使用してバルクコホート1に対して最適化した。とりわけ、
図14A~Cの分析では、処置開始と処置開始後3カ月の間が目印となり、この期間内に全ての重度のirAEが生じた。カプラン・マイヤープロットは、いかなる重度のirAEも発生しなかった患者の延長追跡調査を考慮して4カ月まで示されている。
【
図14C】
図14Cは、複合モデルスコアによって層別化された、バルクコホート2における、PD1単独療法を用いた処置を受けた患者についての重度のirAEの非存在についてのカプラン・マイヤー分析を示すグラフである。統計的有意性を両側ログランク検定によって算出した。全てのパネルに関して、訓練をバルクコホート1に対して実施し、重度のirAEの予測のカットポイントを、YoudenのJ統計値を使用してバルクコホート1に対して最適化した。とりわけ、a~cの分析では、処置開始と処置開始後3カ月の間が目印となり、この期間内に全ての重度のirAEが生じた。カプラン・マイヤープロットは、いかなる重度のirAEも発生しなかった患者の延長追跡調査を考慮して4カ月まで示されている。
【
図15A-B】
図15Aは、対をなす処置前PBMC試料(n=15例の併用療法患者)からの、MiXCR(バルクRNA-seq)およびimmunoSEQ(登録商標)(ゲノムDNA)によってアセンブルされたTCRレパートリーの均衡度(Pielouの指数)を示すグラフである。一致および有意性をそれぞれスピアマンρおよび両側t検定によって決定した。
図15Bは、
図5Bのものと同様であるが、各処置前PBMC試料および処置中PBMC試料についてのクローン性を示すグラフである。統計的有意性を両側、対応のあるウィルコクソン順位和検定によって決定した。ns、有意でない(P>0.05)。
【
図15C】
図15Cは、重度のirAEの状況なし(n=6)および重度のirAEの状況(n=9)によって層別化された、15例の併用療法患者において処置中に検出された処置前末梢血TCRクローン型のフラクションを示すグラフである。マッチする増殖的CDR3 β鎖ヌクレオチド配列を有するクローン型を同一とみなした。中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。有意性を両側、対応のないウィルコクソン順位和検定によって決定した。
【
図15D-E】
図15Dは、immunoSEQ(登録商標)によって同定された持続性T細胞クローンと、全員が併用療法を受け、重度のICI誘導性毒性が発生した同じ3例の患者(YUALOE、YUNANCY、YUHONEY)由来の処置前PBMCのscTCR-seqデータおよびscRNA-seqデータとの相互参照を示す概略図である。
図15Eは、CD4 T細胞およびCD8 T細胞に分類された持続性クローンと共にAzimuthによってアノテーションされた主要なT細胞状態にわたる重要な系列マーカーおよび活性化マーカーのlog2発現を示すドットプロットである。
【
図15F】
図15Fは、系列(n=2の細胞型)および患者(n=3)によって層別化された、持続性クローン型の増殖的出現頻度のベースラインからの総計の変化を示すグラフである。増殖的出現頻度の差異(処置中%-処置前%)の合計を、immunoSEQ(登録商標)データから算出した。棒は平均+/-SDを示す。
【
図15G】
図15Gは、immunoSEQ(登録商標)を用いた末梢血TCR-βプロファイリングを示すグラフのセットである。上:ベースラインからのバルクTCRクローン性の変化(
図5b)。下:
図15Fと同じであるが、基礎をなすクローン型を示し、円のサイズは処置前のクローン出現頻度に比例する(immunoSEQ(登録商標))。
【
図15H】
図15Hは、
図5Dにおいて見られるものと同様であるが、併用療法のサイクル1の1日目、および<1カ月後に取得した採取血に制限したグラフである(n=7例の患者)。
【
図16】
図16は、健康対照に対する、自己免疫障害における末梢血白血球の大規模評定の図式である。健康対照と比べた、自己免疫障害における個々の循環中の白血球サブセットの富化を評価するためのワークフローおよび統計的メタ分析を記載する図式(
図6)。簡単に述べると、CIBERSORTxを適用して、全身性エリテマトーデス57-59(SLE;n=239)または炎症性腸疾患(IBD;n=348)のいずれかを有する患者由来の末梢血試料のバルクRNA-seqまたはマイクロアレイプロファイルにおける15種の白血球サブセットを健康対照と比較して列挙した。各データセットおよび細胞サブセットについて、両側、対応のないウィルコクソン順位和検定を適用して、健康と疾患表現型の間の相対的な存在量の差異を評定した。その後、結果をメタ-z統計値による試験にわたって併合した。
【
図17A】
図17Aは、処置前PBMCからCyTOFによってプロファイリングされた、CD4 T細胞サブセットおよびNKT細胞についてのゲーティング階層および染色結果を示す概略図である。調節性T細胞(Treg)以外の全てのCD4 T細胞サブセットはCD8 T細胞と類似的にゲーティングした。TCM、セントラルメモリーT細胞;TEM、エフェクターメモリーT細胞;EMRA、CD45RA+最終分化したエフェクターメモリーT細胞。
【
図17B】
図17Bは、処置前PBMCからCyTOFによってプロファイリングされた、活性化CD4 TEM細胞と静止CD4 TEM細胞とについてのゲーティング階層および染色結果を示す概略図である。
【
図17C】
図17Cは、処置前PBMCからCyTOFによってプロファイリングされた、単球サブセットについてのゲーティング階層および染色結果を示す概略図である。
【
図17D】
図17Dは、処置前PBMCからCyTOFによってプロファイリングされた、B細胞サブセットについてのゲーティング階層および染色結果を示す概略図である。
【
図17E】
図17Eは、処置前PBMCからCyTOFによってプロファイリングされた、NK細胞サブセットについてのゲーティング階層および染色結果を示す概略図である。
【
図18A-B】
図18は、CyTOFデータからの自動細胞状態定量化と手動細胞状態定量化の比較を示すグラフのセットである。
図18Aは、示されている末梢血液細胞型についての自動ゲーティング(Astrolabe)と手動ゲーティングの間の出現頻度の一致を示す散布図である。一致をピアソン相関および線形回帰(95%信頼度の帯が示されている)によって評定した。両側t検定を使用して、統計的有意性を評定した。データは
図1においてCyTOFによって分析した患者からのものである(n=18)。
図18Bは、
図18Aにおいて見られるものと同様であるが、CD4 TEM細胞についての散布図である。CD4 TEMについての代表的なゲーティングスキームが
図7Aに示されている。一致をピアソン相関および線形回帰(95%信頼度の帯が示されている)によって評定した。両側t検定を使用して、統計的有意性を評定した。データは
図1においてCyTOFによって分析した患者からのものである(n=18)。
【
図18C】
図18Cは、総PBMC、総T細胞、またはCD4 T細胞に対するフラクションとして表した、処置前のCD4 TEM存在量と重度のirAE発生の関連性を示すグラフである。箱の中央の線、箱の上端と下端、およびひげは、それぞれ中央値、第1四分位数および第3四分位数、ならびに最小値および最大値を示す。データは
図1においてCyTOFによって分析した患者からのものである(n=18)。
【
図19】
図19は、本開示に記載されている方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
重度の免疫関連有害事象(irAE)は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の組合せを用いた処置を受けた黒色腫患者の約60%に生じ、処置関連性の病的状態および死亡の原因となる。しかし、重度のirAEの発生またはそのタイミングを予測するための信頼できる方式は存在しない。
【0014】
細胞状態およびT細胞受容体の処置前および処置中分析により、免疫療法の毒性の発症およびそのタイミングが予測される。具体的には、末梢血中の活性化CD4エフェクターメモリーT細胞の存在量とT細胞受容体レパートリーの多様性を組み合わせて、免疫療法の毒性を予測する複合バイオマーカーを得る。処置前から処置中までのクローン拡大により、重度の毒性のタイミングが予測される。標的化RNAシーケンシングパネルにより、この分析が実用的かつ費用効果が大きい様式で可能になる。
【0015】
免疫療法の毒性(免疫関連有害事象)は、重度の、危険な、生命を脅かす、および致命的なものであり得る。実際には、早期または処置前にこれらの毒性を確実に予測する方式は存在しない。それができれば、毒性予測、より早期の介入、およびより個別化された精密な免疫療法の施行が容易になる。
【0016】
種々の態様では、患者における免疫療法の毒性を予測する方法が開示される。開示される方法は、活性化CD4メモリーT細胞の存在量レベルおよびバルクTCR多様性を含む、末梢血試料の分析から引き出される2つの因子が、重度の免疫関連有害事象(irAE)の発生と強力に相関するという発見に基づく。種々の態様では、免疫療法による処置を受ける前の対象から末梢血試料を得るステップを含む、患者における免疫療法の毒性を予測するリキッドバイオプシー法が開示される。種々の態様では、本方法は、末梢血試料中の活性化CD4メモリーT細胞の存在量およびT細胞受容体(TCR)の多様性を定量するステップをさらに含む。一部の態様では、本方法は、患者に重度のirARが発生する可能性を予測するモデル指数を決定するステップをさらに含み、モデル指数は、活性化CD4メモリーT細胞の存在量とT細胞受容体(TCR)の多様性の組合せを含む。本方法は、患者を、モデル指数の値が閾値を超える場合、重度のirARが発生する可能性が高いと分類するステップをさらに含む。一部の態様では、本方法は、モデル指数の値に基づいてirARの重症度を予測するステップをさらに含み、より高いモデル指数の値により、より重度のirARが予測される。より高いモデル指数の値の閾値は、経験的に、または既知の臨床的標準を参照することによって、決定することができる。
【0017】
種々の他の態様では、免疫療法の初期段階にわたってTCRの多様性が処置前TCRの多様性と比べて増大することと本明細書では定義される、TCR拡大の程度に基づいて、患者における免疫療法の毒性を予測する方法が開示される。本方法は、患者から、免疫療法の開始前に第1の末梢血試料を得、患者への免疫療法の施行の初期段階で第2の末梢血試料を得るステップを含む。本方法は、第1の末梢血試料から第1のTCR多様性を得、第2の末梢血試料から第2のTCR多様性を得るステップをさらに含む。本方法は、第2のTCR多様性から第1のTCR多様性を差し引いて、TCR拡大の程度を得るステップをさらに含む。一部の態様では、本方法は、TCR拡大の程度が閾値を超える場合、患者を、重度のirARが発生する可能性が高いと分類するステップをさらに含む。一部の態様では、本方法は、TCR拡大の程度に基づいて重度のirARが発症する時点を予測するステップをさらに含む。
【0018】
分子操作
以下の定義および方法は、本発明をより良好に定義するため、および本発明の実施に関する当業者に対する手引きのために提示するものである。特に断りのない限り、用語は、当業者による従来の使用に従って理解される。
【0019】
「異種DNA配列」、「外因性DNAセグメント」または「異種核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、それぞれ、特定の宿主細胞に対して外来である供給源を起源とする、または、同じ供給源由来の場合は、その元の形態から改変されている配列を指す。したがって、宿主細胞における異種遺伝子は、特定の宿主細胞に対して内因性であるが、例えば、DNAシャッフリングの使用によって改変されている遺伝子を包含する。この用語は、天然に存在するDNA配列の天然に存在しない多数のコピーも包含する。したがって、この用語は、細胞に対して外来もしくは異種であるDNAセグメント、または、細胞と相同であるが、宿主細胞の核酸内の、当該エレメントが通常は見いだされない位置に存在するDNAセグメントを指す。外因性DNAセグメントが発現されて外因性ポリペプチドが生じる。「相同な」DNA配列は、それが導入される宿主細胞に天然に付随するDNA配列である。
【0020】
発現ベクター、発現構築物、プラスミド、または組換えDNA構築物は、一般に、組換え手段または直接化学合成によるものを含めた人為的な介入によって生成された、例えば宿主細胞における特定の核酸の転写または翻訳を可能にする一連の特定の核酸エレメントを伴う核酸を指すと理解される。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸断片の一部であってよい。一般には、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結された、転写される核酸を含んでよい。
【0021】
「プロモーター」は、一般に、核酸の転写を方向付ける核酸制御配列と理解される。誘導性プロモーターは、一般に、特定の刺激に応答して、作動可能に連結した遺伝子の転写を媒介するプロモーターと理解される。プロモーターは、転写開始部位の付近の必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合ではTATAエレメントを含んでよい。プロモーターは、必要に応じて、遠位部のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含んでよく、これらは、転写開始部位から数千塩基対もの所に位置し得る。
【0022】
「転写可能な核酸分子」は、本明細書で使用される場合、RNA分子に転写することが可能な任意の核酸分子を指す。転写可能な核酸分子が、翻訳され、したがってタンパク質産物として発現される機能的なmRNA分子に転写されるように構築物を細胞に導入するための方法は公知である。目的の特定のRNA分子の翻訳を阻害するために、アンチセンスRNA分子の発現が可能になるように構築物を構築することもできる。本開示の実施に関しては、構築物および宿主細胞を調製および使用するための従来の組成物および方法が当業者には周知である(例えば、Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717;Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929;Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773;Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754を参照されたい)。
【0023】
「転写開始部位」または「開始部位」は、+1位とも定義される、転写される配列の一部である最初のヌクレオチドを囲む位置である。遺伝子の他の全ての配列およびその制御領域に、この開始部位を基準として番号を付すことができる。下流の配列(すなわち、3’方向のさらなるタンパク質コード配列)をプラスで命名することができ、上流の配列(5’方向にある制御領域の大部分)をマイナスで命名される。
【0024】
「作動可能に連結」または「機能的に連結」とは、単一の核酸断片上の核酸配列の、一方の機能が他方の影響を受ける関連性を指すことが好ましい。例えば、調節性DNA配列は、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列と、それらの2つの配列が、調節性DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を及ぼす(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)ように置かれている場合、「作動可能に連結」または「関連」していると言える。コード配列は、調節性配列とセンスまたはアンチセンス方向性に作動可能に連結していてよい。2つの核酸分子は、単一の連続した核酸分子の一部であってよく、また、隣接していてもよい。例えば、プロモーターが細胞における目的の遺伝子の転写を調節または媒介する場合、プロモーターは目的の遺伝子と作動可能に連結している。
【0025】
「構築物」は、一般に、任意の供給源に由来し、ゲノムへの組込みまたは自律複製が可能であり、1つまたは複数の核酸分子が作動可能に連結した核酸分子を含む、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製核酸分子、ファージ、または、直鎖状または環状一本鎖または二本鎖DNAまたはRNA核酸分子などの任意の組換え核酸分子と理解される。
【0026】
本開示の構築物は、3’転写終結核酸分子と作動可能に連結した転写可能な核酸分子と作動可能に連結したプロモーターを含有し得る。構築物は、これだけに限定されないが、例えば3’非翻訳領域(3’UTR)由来の追加的な調節性核酸分子も含み得る。構築物は、これだけに限定されないが、翻訳開始において重要な役割を果たし得、また、発現構築物内の遺伝成分でもあり得る、mRNA核酸分子の5’非翻訳領域(5’UTR)を含み得る。これらの追加的な上流および下流の調節性核酸分子は、プロモーター構築物上の他のエレメントに対してネイティブまたは異種の供給源に由来するものであってよい。
【0027】
「形質転換」という用語は、宿主細胞のゲノム内に核酸断片を移入し、それにより、遺伝学的に安定した遺伝をもたらすことを指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主細胞は「トランスジェニック」細胞と称され、トランスジェニック細胞を含む生物体は「トランスジェニック生物体」と称される。
【0028】
「形質転換された」、「トランスジェニック」、および「組換え」は、異種核酸分子が導入された細菌、シアノバクテリア、動物、または植物などの宿主細胞または生物体を指す。当技術分野で一般に知られており、開示されている通り、核酸分子をゲノム内に安定に組み込むことができる(Sambrook 1989;Innis 1995;Gelfand 1995;Innis & Gelfand 1999)。公知のPCR法としては、これだけに限定されないが、対をなすプライマー、ネステッドプライマー、単一特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的にミスマッチを有するプライマーなどを使用する方法が挙げられる。「形質転換されていない」という用語は、形質転換プロセスを経ていない通常の細胞を指す。
【0029】
「野生型」は、いかなる公知の変異も伴わない、天然に見いだされるウイルスまたは生物体を指す。
【0030】
発現されたタンパク質に対して上記の求められるパーセント同一性を有し、発現されたタンパク質の求められる活性を保持するバリアントヌクレオチド、およびそれらにコードされるポリペプチドの設計、生成、および試験は当技術分野の技術の範囲内に入る。例えば、変異体の定向進化および迅速単離は、これだけに限定されないが、Link et al. (2007) Nature Reviews 5(9), 680-688;Sanger et al. (1991) Gene 97(1), 119-123;Ghadessy et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98 (8) 4552-4557を含めた参考文献に記載されている方法に従うことができる。したがって、当業者は、例えば、本明細書に記載の参照配列に対して少なくとも95~99%の同一性を有する多数のヌクレオチドおよび/またはポリペプチドバリアントを生成し、そのようなバリアントを所望の表現型について当技術分野における常套的な方法に従ってスクリーニングすることができる。
【0031】
ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性パーセント(%)は、候補配列と参照配列の2つの配列をアラインメントした場合に、参照配列と比較して、候補配列内のヌクレオチドまたはアミノ酸残基と同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージと理解される。パーセント同一性を決定するために、配列をアラインメントし、必要であれば、ギャップを導入して、最大のパーセント配列同一性を実現する。パーセント同一性を決定するための配列アラインメント手順は、当業者には周知である。多くの場合、BLAST、BLAST2、ALIGN2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、配列をアラインメントする。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含めた、アラインメントを測定するための適当なパラメータを決定することができる。配列がアラインメントされたら、所与の配列Aの所与の配列Bに対するパーセント配列同一性(あるいは、所与の配列Bに対してある特定のパーセント配列同一性を有するまたは含む所与の配列Aと表現することができる)を、パーセント配列同一性=X/Y100(式中、Xは、配列アラインメントプログラムまたはアルゴリズムによるAとBのアラインメントによって同一マッチとスコア化された残基の数であり、Yは、B内の残基の総数である)として算出することができる。配列Aの長さと配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するパーセント配列同一性は、BのAに対するパーセント配列同一性と等しくない。
【0032】
一般に、求められる活性が保持される限りは、任意の位置において保存的置換がなされてよい。置き換えられるアミノ酸が元のアミノ酸と同様の特性を有する、いわゆる保存的交換、例えば、GluのAspによる交換、GlnのAsnによる交換、ValのIleによる交換、LeuのIleによる交換、およびSerのThrによる交換を行うことができる。例えば、同様の特性を有するアミノ酸は、脂肪族アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン);ヒドロキシルまたは硫黄/セレン含有アミノ酸(例えば、セリン、システイン、セレノシステイン、トレオニン、メチオニン);環状アミノ酸(例えば、プロリン);芳香族アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);塩基性アミノ酸(例えば、ヒスチジン、リシン、アルギニン);または酸性アミノ酸およびそれらのアミド(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン)であり得る。欠失は、アミノ酸の直接結合による置換えである。欠失の位置としては、ポリペプチドの末端および個々のタンパク質ドメインの間の連結が挙げられる。挿入は、直接結合が1つまたは複数のアミノ酸によって形式的に置き換えられる、ポリペプチド鎖へのアミノ酸の導入である。アミノ酸配列を、当技術分野で公知のコンピュータシミュレーションプログラムを利用してモジュレートすることができ、それにより、例えば、活性の改善または調節の変更を伴うポリペプチドを生じさせることができる。これらの人工的に生成されたポリペプチド配列に基づいて、そのようなモジュレートされたポリペプチドをコードする対応する核酸分子を、所望の宿主細胞の特異的なコドン使用を使用してin-vitroで合成することができる。
【0033】
「高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、65℃、6×SSC緩衝液(すなわち、0.9Mの塩化ナトリウムおよび0.09Mのクエン酸ナトリウム)中でのハイブリダイゼーションと定義される。これらの条件を考慮し、所与の配列のセットがハイブリダイズするかどうかに関して、2つの配列間のDNA二重鎖の融解温度(Tm)を算出することによって決定を行うことができる。特定の二重鎖が、6×SSCの塩条件下で65℃未満の融解温度を有する場合、2つの配列はハイブリダイズしない。他方では、同じ塩条件下で融解温度が65℃を超える場合、それらの配列はハイブリダイズする。一般に、任意のハイブリダイズしたDNA:DNA配列の融解温度は、次式:Tm=81.5℃+16.6(log10[Na+])+0.41(画分G/C含量)-0.63(%ホルムアミド)-(600/l)を使用して決定することができる。さらに、DNA:DNAハイブリッドのTmは、ヌクレオチド同一性が1%低下するごとに1~1.5℃低下する(例えば、Sambrook and Russel, 2006を参照されたい)。
【0034】
宿主細胞の形質転換を当技術分野で公知の種々の標準的な技法を使用して行うことができる(例えば、Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717;Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929;Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773;Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754を参照されたい)。そのような技法としては、これだけに限定されないが、ウイルス感染、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、微粒子銃媒介性送達、受容体媒介性取り込み、細胞融合、エレクトロポレーションなどが挙げられる。トランスフェクトされた細胞を選択し、増やして、宿主細胞のゲノム内に安定に組み込まれた発現ベクターを含む組換え宿主細胞をもたらすことができる。
【表1-1】
【表1-2】
【0035】
宿主細胞に導入することができる例示的な核酸としては、例えば、別の種由来のDNA配列もしくは遺伝子、またはさらには、同じ種を起源とするもしくは同じ種に存在するが、遺伝子操作方法によってレシピエント細胞に組み入れられた遺伝子もしくは配列が挙げられる。「外因性」という用語はまた、形質転換される細胞に通常は存在しない、もしくはおそらく単に形質転換用DNAセグメントもしくは遺伝子において見いだされるような形態、構造などでは存在しない遺伝子、または、通常存在し、天然の発現パターンとは異なる様式で発現させる、例えば、高発現させることが望まれる遺伝子も指すものとする。したがって、「外因性」遺伝子またはDNAという用語は、レシピエント細胞に導入される任意の遺伝子またはDNAセグメントを指すものとし、同様の遺伝子がそのような細胞にすでに存在し得るかどうかは問わない。外因性DNAに含まれるDNAの型としては、細胞にすでに存在するDNA、同じ型の生物体の別の個体由来のDNA、異なる生物体由来のDNA、または、外部から生成されたDNA、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含有するDNA配列、もしくは合成または改変バージョンの遺伝子をコードするDNA配列が挙げられる。
【0036】
本明細書に記載の手法に従って作出された宿主株を当技術分野で公知のいくつかの手段によって評価することができる(例えば、Studier (2005) Protein Expr Purif. 41(1), 207-234;Gellissen, ed. (2005) Production of Recombinant Proteins: Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems, Wiley-VCH, ISBN-10: 3527310363;Baneyx (2004) Protein Expression Technologies, Taylor & Francis, ISBN-10: 0954523253を参照されたい)。
【0037】
遺伝子を下方調節またはサイレンシングする方法が当技術分野で公知である。例えば、発現されるタンパク質活性を、アンチセンスオリゴヌクレオチド、タンパク質アプタマー、ヌクレオチドアプタマー、およびRNA干渉(RNAi)(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、およびマイクロRNA(miRNA)を使用して下方調節または排除することができる(例えば、ハンマーヘッド型リボザイムおよび低分子ヘアピンRNAが記載されているFanning and Symonds (2006) Handb Exp Pharmacol. 173, 289-303G;デオキシリボヌクレオチド配列のターゲティングが記載されているHelene, C., et al. (1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660, 27-36;Maher (1992) Bioassays 14 (12): 807-15;アプタマーが記載されているLee et al. (2006) Curr Opin Chem Biol. 10, 1-8;RNAiが記載されているReynolds et al. (2004) Nature Biotechnology 22 (3), 326-330;RNAiが記載されているPushparaj and Melendez (2006) Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology 33(5-6), 504-510;RNAiが記載されているDillon et al. (2005) Annual Review of Physiology 67, 147-173;RNAiが記載されているDykxhoorn and Lieberman (2005) Annual Review of Medicine 56, 401-423を参照されたい)。RNAi分子は、種々の供給源から市販されている(例えば、Ambion、TX;Sigma Aldrich、MO;Invitrogen)。種々のアルゴリズムを使用するいくつかのsiRNA分子設計プログラムが当技術分野で公知である(例えば、Cenix algorithm、Ambion;BLOCK-iT(商標)RNAi Designer、Invitrogen;siRNA Whitehead Institute Design Tools、Bioinformatics & Research Computingを参照されたい)。最適なsiRNA配列の定義に関して影響力の大きい形質として、siRNAの末端におけるG/C含量、siRNAの特定の内部ドメインのTm、siRNAの長さ、CDS(コード領域)内の標的配列の位置、および3’オーバーハングのヌクレオチド含量が挙げられる。
【0038】
本明細書に記載の定義および方法は、本開示をより良好に定義するため、および本開示の実施に関する当業者に対する手引きのために提示するものである。特に断りのない限り、用語は、当業者による従来の使用に従って理解される。
【0039】
一部の実施形態では、本開示のある特定の実施形態の記載および特許請求のために使用される成分の分量を表す数字、分子量などの特性、反応条件などは、一部の場合では「約」という用語によって修飾されるものと理解される。一部の実施形態では、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために使用されたデバイスまたは方法の平均値の標準偏差を包含することを示すために使用される。一部の実施形態では、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る、概数である。一部の実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁の数字を踏まえ、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本開示の広範囲の一部の実施形態を記載する数値範囲およびパラメータは概数であるにもかかわらず、特定の実施例において記載されている数値は、実行可能に精密に報告されている。本開示の一部の実施形態において提示されている数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見いだされる標準偏差に起因して必ず生じるある特定の誤差を含有し得る。本明細書における値の範囲の列挙は、ただ単に、その範囲内に入る別々の値それぞれを個々に参照する簡潔な方法としての機能を果たすものとする。本明細書において別段の指定のない限り、個々の値それぞれが、本明細書に個々に記載されているものと同じく本明細書に組み込まれる。
【0040】
一部の実施形態では、特定の実施形態が記載される文脈で(特に、下の特許請求の範囲のある特定の文脈で)使用される「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語および同様の言及は、特に記載がなければ、単数と複数の両方を包含すると解釈され得る。一部の実施形態では、「または(or)」という用語は、特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される場合、代替物のみを指すまたは代替物が相互排他的であることが明示されていなければ、「および/または」を意味するように使用される。
【0041】
「含む(comprise)」、「有する(have)」および「含む(include)」という用語は、オープンエンドの連結動詞である。これらの動詞の1つまたは複数のあらゆる形態または時制、例えば、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」および「含む(including)」も同じくオープンエンドである。例えば、1つまたは複数のステップを「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つまたは複数のステップのみを有することに限定されず、他の列挙されていないステップも包含し得る。同様に、1つまたは複数の特色を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の組成物またはデバイスは、それらの1つまたは複数の特色のみを有することに限定されず、他の列挙されていない特色を包含し得る。
【0042】
本明細書に記載の方法は全て、本明細書において別段の指定がある場合、または文脈から明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書においてある特定の実施形態に関して提供されるあらゆる例、または例示する言葉(例えば、「例えば/などの」)の使用は、ただ単に、本開示をよりよく照らし出すことを意図したものであり、別に特許請求される本開示の範囲に対する限定を提起するものではない。本明細書のどの言葉も、本開示の実施のために必須である特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0043】
本明細書に開示される本開示の代替要素または実施形態の群分けは、限定とは解釈されない。各群のメンバーが、個々にまたは本明細書に見いだされる群の他のメンバーもしくは他の要素との任意の組合せで言及および特許請求され得る。群の1つまたは複数のメンバーを利便性または特許性のために群に包含することもでき、群から除外することもできる。何らかのそのような包含または除外がなされる場合、本明細書は、ここでは改変された群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュ群の記載を満たすとみなされる。
【0044】
上記明細書に基づいて理解される通り、本開示の上記の態様は、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはこれらの任意の組合せもしくはサブセットを含めたコンピュータプログラミングまたは操作技法を使用して実行することができる。コンピュータ可読コード手段を有するそのような結果得られたプログラムはいずれも、本開示の考察された態様に応じて、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体内に具体化または提供し、それにより、コンピュータプログラム製品、すなわち、製造品を作製することができる。コンピュータ可読媒体は、例えば、これだけに限定されないが、固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、リードオンリーメモリ(ROM)などの半導体メモリ、および/または、インターネットもしくは他の通信ネットワークもしくはリンクなどの任意の送信/受信媒体であってよい。コンピュータコードを含有する製造品は、1つの媒体から直接コードを実行することによって、1つの媒体から別の媒体にコードをコピーすることによって、またはコードをネットワークで送信することによって、作製および/または使用することができる。
【0045】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、「app」、またはコードとしても公知)は、プログラム可能なプロセッサに対する機械命令を含み、高水準手続き型および/もしくはオブジェクト指向型プログラミング言語で、ならびに/または、アセンブリ言語/機械語でインプリメントすることができる。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体」および/または「コンピュータ可読媒体」という用語は、機械命令を機械可読シグナルとして受け取る機械可読媒体を含めたプログラム可能なプロセッサに機械命令および/またはデータを提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置および/またはデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラム可能論理デバイス(PLD))を指す。しかし、「機械可読媒体」および「コンピュータ可読媒体」は、一時的シグナルを包含しない。「機械可読シグナル」という用語は、プログラム可能なプロセッサに機械命令および/またはデータを提供するために使用される任意のシグナルを指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、プロセッサは、マイクロコントローラーを使用するシステム、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、および本明細書に記載の機能を実行することが可能な任意の他の回路またはプロセッサを含めた任意のプログラム可能なシステムを含むことができる。上記の例は単なる例であり、したがって、「プロセッサ」という用語の定義および/または意味をいかようにも限定するものではない。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ソフトウェア」および「ファームウェア」という用語は、互換的であり、プロセッサによる実行のためにRAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、および不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含めたメモリに保存されている任意のコンピュータプログラムを包含する。上記のメモリの型は単なる例であり、したがって、コンピュータプログラムの保存のために使用可能なメモリの型に関して限定するものではない。
【0048】
一態様では、コンピュータプログラムが提供され、プログラムがコンピュータ可読媒体上に具体化される。一態様では、システムは単一のコンピュータシステムで実行され、サーバーコンピュータへの接続は必要ない。さらなる態様では、システムをWindows(登録商標)環境(WindowsはMicrosoft Corporation、Redmond、Washingtonの登録商標である)で走らせる。さらに別の態様では、システムをメインフレーム環境およびUNIX(登録商標)サーバー環境(UNIXはReading、Berkshire、United KingdomにあるX/Open Company Limitedの登録商標である)で走らせる。アプリケーションは、順応性があり、種々の異なる環境でいかなる主要な機能性も損なわずに走るように設計される。
【0049】
一部の態様では、システムは、複数のコンピューティングデバイスに分配される複数の構成要素を含む。1つまたは複数の構成要素は、コンピュータ可読媒体に具体化されたコンピュータで実行可能な命令の形態であってよい。システムおよびプロセスは、本明細書に記載の特定の態様に限定されない。さらに、各システムおよび各プロセスの構成要素は、本明細書に記載の他の構成要素およびプロセスとは独立して、別々に実施することができる。各構成要素およびプロセスを他のアセンブリパッケージおよびプロセスと組み合わせて使用することもできる。本態様により、コンピュータおよび/またはコンピュータシステムの機能性および機能を増強することができる。
【0050】
本出願において引用されている刊行物、特許、特許出願、および他の参考文献は全て、個々の刊行物、特許、特許出願、または他の参考文献がそれぞれ具体的にかつ個別にあらゆる目的に関してその全体が参照により組み込まれることが示されたものと同じ程度に、あらゆる目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本開示の先行技術であることの容認と解釈されるべきではない。
【0051】
本開示を詳細に記載したので、添付の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲から逸脱することなく、改変、変形、および等価の実施形態が可能であることが明らかになろう。さらに、本開示における例は全て非限定的な例として提示されていることが理解されるべきである。
【実施例】
【0052】
以下の非限定的な例は、本開示をさらに例示するために提示される。実施例に開示されている技法は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者らにより見いだされた代表的な手法に従ったものであり、したがって、それを実施するための形式の例を構成するとみなすことができることが当業者には理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお同様または類似の結果が得られることを理解するべきである。
【0053】
(実施例1)
黒色腫患者における免疫チェックポイント遮断に対する毒性に関連するT細胞の特徴
以下の実施例は、黒色腫患者において免疫療法の施行に伴って重度の免疫関連有害事象(irAE)が発生する可能性を予測するための方法を記載するものである。
【0054】
要約:
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を用いた処置を受けた黒色腫患者の60%に至るまでにおいて重度の免疫関連有害事象(irAE)が生じる。しかし、irAE発生に先立って共通のベースライン免疫学的状態が生じるかどうかは不明である。本実施例では、飛行時間によるマスサイトメトリー、シングルセルRNAシーケンシング、シングルセルV(D)Jシーケンシング、バルクRNAシーケンシング、およびバルクT細胞受容体(TCR)シーケンシングを適用して、抗PD-1単独療法または抗PD-1と抗CTLA-4の併用ICIを用いた処置を受けた黒色腫患者由来の末梢血試料を試験した。ICIを受ける前およびICIを受けている初期段階の血液試料93例、ならびに3つの患者コホート(n=27、26、および18)を分析することにより、循環中の2つの処置前因子、活性化CD4メモリーT細胞の存在量およびTCR多様性が、器官系関与にかかわらず重度のirAE発生に関連することが見いだされた。併用療法を受けている患者の間でのTCRクローン性の処置中の変化についても探究し、知見がirAE発症の重症度およびタイミングと関連付けられた。これらの結果から、ICI誘導性毒性に関連する循環中のT細胞の特徴が実証され、診断および臨床管理の改善が示唆される。
【0055】
結果:
本試験では、転移性黒色腫患者におけるICI誘導性毒性に関連する末梢血の免疫学的特色を体系的に評価した。別個のシングルセルおよびバルクプロファイリングモダリティにわたって、処置開始から3カ月以内に重度のirAEの発生と関係する共通のT細胞の特色が同定された。これらの特色は、長続きする臨床応答および抗PD-1単独療法または抗PD-1と抗CTLA-4の併用療法を用いた処置を含めた重要な臨床的変数とは無関係であった。これらの知見を活用し、irAE発生の予測モデルを開発し、処置前および処置中の初期段階でのICI誘導性毒性の同定に関するそれらの有用性を探究した。
【0056】
臨床コホートの特徴。
重度の(グレード3+)irAE発生に関連する候補危険因子を試験するために、転移性黒色腫の78例の患者を同定し、除外基準の適用後、そのうち71例が評価可能であった(
図1)。これらの患者のうち、33例が抗PD-1単独療法を用いた処置を受け、38例が抗PD-1プラス抗CTLA-4併用療法を用いた処置を受けた。また、90%が以前のICI歴を有さなかった。患者全員を、ICIによる処置中および処置後にirAE発生について注意深くモニタリングした(追跡調査期間の中央値14.9カ月;グレード3+irAEまでの時間の中央値1.5カ月)。大多数の患者に軽度(グレード1)~生命を脅かす(グレード4)の1つまたは複数のirAEが生じ、多様な器官系が影響を受け、それらを認定臨床医が標準化された基準(CTCAE v.5.0)に従って分類した。71例の患者を、3つの重複しないコホート、シングルセル発見コホート、および訓練セットと検証セットに分割されるより大きなバルクコホートに層別化した(
図1)。
【0057】
処置前血液からの重度のirAEの決定因子。
マスサイトメトリーを使用して処置前末梢血を分析して、重度のirAEの細胞内決定因子を同定した。
【0058】
まず、18例の患者由来の処置前末梢血試料の高次元シングルセルプロファイリングを実施し(シングルセル発見コホート、
図1および2A)、そのうち8例の患者で処置開始後に重度のirAEが生じた。各試料中の35種の白血球マーカーをプロファイリングするために飛行時間によるマスサイトメトリー(CyTOF)を適用することにより、ほぼ800,000個の評価可能な細胞から20の別個の亜集団を分析し、それらには7種の主要な単核系列(B細胞、形質芽球、CD4 T細胞およびCD8 T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、単球)が包含された(
図2B、2C、7、および8A)。次に、各亜集団を重度のirAE転帰に関して調べた(
図2c)。全ての亜集団のうち、CD4エフェクターメモリーT(TEM)細胞のみが多重仮説補正後に有意であり、処置前血液中のレベルがより高いことが重度のirAE発生に関連した(p=0.0002;Q=0.004;
図2C、2D、7B、8B、および8C)。この知見を確証するために、13例の患者由来の同じ末梢血試料を、5’液滴ベースの10×クロムシングルセルRNAシーケンシング(scRNA-seq)をTCRおよびB細胞受容体(BCR)クローン型のシングルセルV(D)Jシーケンシング(scV(D)J-seq)と対にして使用して調査した。品質管理後(
図7A)、5’アッセイにより、24,807個の細胞、および基準マーカー遺伝子発現に基づいて分類された7種の主要系列が得られた(
図3A)。教師なしクラスタリングを使用し、7種の細胞型にわたって32種の別個の転写状態を同定した(
図3A)。次いで、細胞状態の存在量と重度のirAEの発生の関連性を算出した。驚くべきことに、これらの32種の細胞状態にわたって、CCR7およびSELL(CD62L)の発現を欠き、CD4 TEM細胞と一致するCD4 T細胞状態5が、重度のirAE発生と最も強力に関連することが見いだされた(名目上のP=0.05、両側、対応のないウィルコクソン順位和検定;
図3B)。この状態はまた、CyTOFによって測定されたCD4 TEMレベルと最も相関した(
図3B)。この結果の同時確率を並べ替え検定によって検討したところ、経験的P値0.003が算出された。さらなる分析により、教師なし階層的クラスタリングによって状態5と密接に関連付けられる(
図7B)CD4 T細胞状態3もまた、CD4 TEMと一致する発現プロファイルを示すことが明らかになった(
図3Cおよび7C)。状態5と組み合わせたところ、得られたクラスター(CD4 T 5+3)は重度のirAE発生およびCyTOFによって列挙されたCD4 TEMレベルとより有意に関連した(
図3B)。実際、82通りの可能性のある各主要細胞型内の細胞状態のペアワイズ組合せ全てにわたって、CD4 T 5+3により、CyTOFによって列挙されたCD4 TEMレベルに対する最も高いスピアマン相関と、重度のirAE発生との最も強い関連性の両方が実現された(
図7Dおよび7E)。
【0059】
他のCD4 T細胞状態に対する差次的遺伝子発現分析により、CD4 T 5および3では、HLA-DRA、MKI67、TNFRSF4(OX40)、CCL5、およびIL32を含む活性化エフェクター細胞のマーカーが富化されており、TCM細胞のマーカー(SELL/CD62L)およびナイーブT細胞のマーカー(CCR7、TCF7)が枯渇していることが明らかになった(
図3Cおよび7C)。参照誘導細胞ラベリングのためにSeurat Azimuthを使用し、CD4 TEM細胞が重度のirAEと最も大きく関連し、de novo分析によって同定されたCD4 T 5+3集団とほぼ同様であることが確認された(
図8)。さらに、CD4 T 5+3集団を基準活性化マーカー(HLA-DX、MKI67)の発現に基づいて活性化サブセットと静止サブセットに細分したところ、活性化サブセットは重度のirAE発生との最も強い関連性を示した(P=0.002、両側、対応のないウィルコクソン順位和検定;
図3Dおよび9A)。この知見を、Azimuthを用いた、およびCyTOFを用いた参照誘導アノテーションを使用して検証し(
図9Aおよび9B)、それにより、活性化CD4 TEM細胞が優先的に重度のICI毒性の基礎をなすことが示唆された。
【0060】
この観察を考慮して、活性化CD4 TEM細胞における処置前TCR多様性も重度のICI毒性と相関し得るかどうかという疑問が生じた。実際に、活性化CD4 T 5+3細胞のシングルセルTCRクローン型多様性(Shannonエントロピー)は重度のirAEが生じた患者において上昇していた(受信者動作特性曲線下面積(AUC)=0.90、P=0.05;
図3E)。このことから、活性化CD4 TEM細胞を総末梢血単核細胞(PBMC)に対して定量した場合、試料中の独特のクローン型の数、およびShannonエントロピーを含めた多様性メトリクスの重要な構成要素によって定義されるTCRの豊富さにより、クローン拡大に起因する多様性の喪失が覆い隠されることが示唆される(
図10AおよびB)。言い換えれば、総PBMCの中で、活性化CD4 TEM細胞のTCRの豊富さが、重度のirAEが発生することになる患者における処置前TCR多様性の全体的な増大の基礎をなす。とりわけ、豊富さを組み入れるクローン型多様性の定義に関しては、循環中のT細胞および腫瘍浸潤性T細胞に関する試験を含め、以前の文献に実質的な先例があり、本研究におけるそれらの適用の強力な基盤がもたらされる。
【0061】
全ての評価可能なT細胞を組み合わせた場合、このTCR多様性と重度のirAE発生の関連性は他のT細胞亜集団においては減弱したまたは存在しなかったが、処置前の試料中のバルクTCR多様性と重度のirAE発生の間には著しい傾向が観察された(AUC=0.80;
図3E)。さらに、この関連性は、エフェクターメモリープロファイル(低CCR7およびSELL)を有するCD4 T細胞に主に起因するものであった(
図3Fおよび10C~F)。対照的に、重度のirAE発生と関係する末梢血BCR多様性の差異の顕著さはより低かった(
図10G)。集合的に、これらの知見から、バルク末梢血に広範に反映される、ベースライン時のCD4 TEM細胞におけるより多様なTCRレパートリーが、重度のICI毒性の発生と関連することが示唆される。
【0062】
irAEに関連するT細胞の特色の広範な分析。
重度のirAE発生に関する処置前の決定因子の候補が同定されたので、より大きな独立した患者の群において知見を検証した。サンプルサイズ推定値に基づいて、単一薬剤(抗PD-1、n=29)または薬剤併用(抗PD-1および抗CTLA-4、n=24)によるチェックポイント遮断を用いて処置した2つのコホート(n=26および27)にわたる53例の追加的な転移性黒色腫患者由来の処置前末梢血試料に対してバルクRNAシーケンシング(バルクRNA-seq)を適用した(
図1)。循環中の免疫学的特色をバルクトランスクリプトームプロファイルで評定するために、バルク組織発現プロファイルから細胞サブセットを列挙するための機械学習手法であるCIBERSORTx、およびバルクRNA-seqデータからのV(D)Jクローン型アセンブリおよび定量化のためのコンピュータによる手法であるMiXCRを適用した。サイトメトリーアッセイと直接比較することにより、17例の黒色腫患者由来の末梢血を使用した活性化CD4メモリーT細胞(TM)シグネチャーの活性化CD4 TEM細胞に対する特異性(CyTOF)を含め、主要な血液系列のデコンボリューションに関するCIBERSORTxの正解度を確認した(
図11)。驚くべきことに、CIBERSORTxによって評価可能であった13例のPBMCサブセットのうち、活性化CD4 TM細胞レベルのみが重度のirAE発生と関連した(
図4A;併用およびPD-1についてそれぞれP<0.025、HR=8.3および14.8;
図14BおよびC)またはLOOCVによるコホートにわたって(併用療法についてP=0.0028およびHR=12.2、
図5A;PD-1治療についてP=0.03およびHR=9.0)。このモデルにより、独立に、治療型、年齢、性別、および他の重要なパラメータの多変量モデルで、重度のirAEまでの時間も予測した。
【0063】
重度のirAEと関係する末梢TCRクローン拡大。
致命的なICI媒介性毒性が生じた黒色腫患者に関する以前の症例報告により、患部組織におけるクローン拡大した自己反応性またはウイルス反応性T細胞の証拠が示され、これにより、自己認識および病原体認識T細胞クローンと致死的毒性が関係付けられる。したがって、末梢血中の処置前TCRクローン型が、ICI処置開始後に重度のirAEが発生することになる患者においてより強い拡大の傾向を示し得ることが仮定された。これを調査するために、immunoSEQを適用して、併用療法を用いた処置を受けた転移性黒色腫患者15例から採取された、対をなす処置前PBMC試料と処置中の初期段階のPBMC試料におけるバルクTCR-βレパートリーをプロファイリングした。捕捉されるクローンの数の変動に対してロバストなTCRクローン性指数(Pielouの均衡度)を使用し、これらの15例の患者由来の処置前の試料に関してMiXCR(バルクRNA-seq)とimmunoSEQ(DNA)の間の有意な一致が確認され、それにより、バルクコホート1および2における複合モデルの完全性が強調された(
図15A)。次いで、処置開始後の、1-Pielouの均衡度の増加によって測定されるTCRクローン拡大(すなわち、クローン優位性)を評定した。仮説の裏付けとして、重度のirAEが発生した患者において、重度のirAEが発生しなかった患者と比較して、TCRクローン拡大の有意な増大およびベースラインクローンの持続性の両方が観察された(
図5B、15B、15C)。scRNA-seqおよびシングルセルTCRシーケンシング(scTCR-seq)を実施した重度のirAE患者(n=3)では、両方の採取血において検出されたクローンの間で、活性化CD4 TEMコンパートメントの優先的な拡大が観察された(
図15D~G)。さらに、持続性CD4 T細胞クローンでは、scRNA-seq分析による同定で、CD4 T 5+3集団が高度に富化されていた(
図5Cおよび15E)。
【0064】
処置中の初期段階におけるTCRクローン拡大の程度が重度のirAE発生のタイミングと相関するかどうかをさらに探究した。実際に、ログランク検定によって三分位値で評定したかまたはコックス比例ハザード回帰によって順位により評定したかにかかわらず、TCRクローン拡大の規模がより大きい患者では重度のirAEがより早く発生した(P=0.003、ログランク検定;
図5D)。これらの結果は、分析を、ICIサイクル1から1カ月以内に得た処置中の採取血に制限した場合、採取血間の時間とは有意に独立していた(
図15H)。
【0065】
自己免疫疾患における循環中の白血球。
最後に、重度のirAEが発生するリスクがある患者のベースライン末梢血プロファイルが臨床的自己免疫と対応するかどうかを問われた。この目的のために、CIBERSORTxを適用して、6つの試験、および191例の健康対照に対して全身性エリテマトーデス(SLE)または炎症性腸疾患(IBD)のいずれかを有する587例の患者にわたるバルク末梢血トランスクリプトームにおいて15の白血球サブセットを調査した。メタ分析フレームワークを使用して、試験および病的逸脱にわたってP値を組み込み(
図16)、それにより、循環中の活性化CD4 TM細胞が、健康な個体と比べて自己免疫障害と最も有意に関連することが見いだされた(
図6)。これらのデータから、重度のirAEが、ICI投与により臨床的に表に現れる不顕性または潜在型の自己免疫の状態を表し得ることが示唆され、これは、免疫チェックポイント遮断を用いた処置を受けた自己免疫患者が自己免疫症状として発赤を生じる傾向があることを示す最近の症例報告および多施設データと一致する。
【0066】
考察
本試験では、2つのベースライン特色-末梢血中の活性化CD4 TM細胞の存在量およびクローン的により多様なTCRレパートリー-が、転移性黒色腫患者におけるICI誘導性irAEに関する有望な決定因子として同定された。以前の試験において(1)死後組織における活性化T細胞およびクローン拡大したTCRが致死的irAE(心筋炎、脳炎)と関係付けられ、(2)エフェクターCD4 T細胞が器官特異的irAE(破壊性甲状腺炎、肝炎)に関係付けられたが、本研究は、これらの知見の範囲を、多様な器官系におけるirAE発生における処置前のT細胞の特徴に拡大するものである。これらの特色を複合モデルに組み込むことにより、重度のirAEのより高いリスクが予測され、異なるirAEグレードおよび負荷量を区別するために十分な粒度が実証された。
【0067】
併用療法を用いた処置を受けた患者における初期のT細胞クローン拡大と重度のirAE発症のタイミングにも著しい相関が同定された。この知見をさらに特徴付け、CD4 T細胞およびCD8 T細胞のirAE関連性クローンダイナミクスに対する相対的な寄与を解明するために、今後の試験が必要である。
【0068】
irAE発生および自己免疫の両方の基礎をなす共通の免疫学的機構の可能性と一致して、SLEまたはIBDを有する患者における活性化CD4 TM細胞のレベルの上昇もさらに観察された。以前の自己免疫を有する患者では活性化CD4 T細胞レベルがより高く、ICIによる重度のirAEの率がより高くなると予測することが合理的であるが、当該コホートの患者はいずれも、実証された既存の自己免疫を有していなかった。さらに、そのような患者では、ICIの開始前に、ベースラインirAEリスクを変化させる代償的な免疫調節性機構が発生する可能性がある。それにもかかわらず、このつながりを今後の試験においてさらに詳細に試験し、重度のICI毒性のリスクがある患者において循環中の活性化CD4 TM細胞が自己抗原を認識する傾向の増大を示すかどうかを決定することが重要である。実際に、発赤のリスクは、併用免疫療法を用いた処置を受けた自己免疫疾患患者、特に、胃腸またはリウマチ性の状態を有する患者においてより高い。ICIの決定を行う間にこれらのリスクがある患者をより確実に同定することにより、その患者の転帰が改善され得る。
【0069】
本試験にはいくつかの限界がある。第1に、保存臨床試料を使用した遡及的設計を使用した。第2に、患者は、抗PD-1単独療法または抗PD-1プラス抗CTLA-4併用療法のいずれかを受けたが、これらに関連する重度のirAE発生のリスクプロファイルは異なる。第3に、大多数のirAEはICIによる処置を開始してから最初の3カ月以内に生じるが、一部はもっと後に生じる。本発明者らのコホートにおける重度のirAE発生までの時間の中央値は6.4週間(臨床試験データと一致する)であり、3カ月を超えてからirAEは生じなかったので、この知見が遅発性irAEに一般化されるかどうか調査する必要がある。第4に、免疫療法の間の処置中末梢血採取の処置開始に対するタイミングが均一ではなかった。最後に、知見が他のがん型におけるICI関連性irAEリスクに一般化されるかどうかは依然として不明である。
【0070】
今後の試験で、免疫療法前および免疫療法中の初期段階の両方のシングルセルプロファイリングのより大きな適用と共にこれらの限界に対処すべきである。さらに、本発明者らの発見をより大きな多施設でのコホートで確認し、ICI誘導性毒性の循環中の免疫学的決定因子が、関与する可能性が最も高い器官に応じて変動するかどうかを評定することが重要になる。前向きに検証すれば、これらの知見により、処置の適応を容易にして、免疫チェックポイント遮断のリスクプロファイルを改善することができ、ICI媒介性毒性の予測および潜在的予防のために意味を有する。
【0071】
方法
試験設計および参加者。
本試験で分析した試料は、黒色腫に焦点を当てた観察に基づく登録試験の一部として、ヘルシンキ宣言(2013)に従い、研究への使用に関して同意を取得して採取し、Yale University School of MedicineおよびWashington University School of Medicineの機関審査委員会の承認を得たものであった。18歳を超える、転移性黒色腫を有する適格患者を、抗PD-1遮断(ニボルマブもしくはペムブロリズマブ)または免疫チェックポイント遮断の組合せ(抗PD-1(ニボルマブ)および抗CTLA-4(イピリムマブ);
図1)のいずれかからなるICIによる処置を用いて処置した。患者の90パーセントが、処置前血液採取時に、以前にいかなる免疫チェックポイント遮断も受けたことがなかった。患者全員が、irAEおよび応答について認定腫瘍内科医による常套的な臨床的評定を受けた。サーベイランスを、ICIによる処置の各サイクルの前(およそ3週間ごと)に、およびいくつかの症例ではより頻繁に行った(例えば、重度のirAEで入院した患者に関して、入院患者のための医療従事者によって)。サーベイランスはまた、適用可能な場合、処置コースの完了後にも継続した。全てのirAEを、United States Health and Human Servicesによる有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE)v.5.0に従って分類し、グレード≧2および≧3をそれぞれ症候性および重度とみなした。患者コホート内で、および患者コホートにわたって、irAEは胃腸管、皮膚、肝臓、下垂体、甲状腺、副腎、筋骨格、眼、膵臓、および心臓系を含めた多様な器官系にわたった(
図13I)。3例の患者に、ICI投与に関連する全身性炎症症候群が生じた(YUGIM、YUHERN、およびYUTORY)。重度のirAEは全て、このコホート内の患者に死亡が認められない目印期間であったICIの開始後3カ月以内に生じた。応答を、以前に定義された通り、長続きする臨床的利益、長続きする利益なし、または評価不可能としてスコア化した。上述の適格性基準を満たす3つの患者コホートを同定し、抗PD-1または併用ICI投与の最初のサイクルの直前に、処置前PBMC試料を採取した(中央値0日;0~2カ月の範囲)。
図1に示されている通り、各コホートからのPBMC(全ての患者について処置前、および15例の患者について処置前/処置中の対)を分析した。
【0072】
血液採取および処理。
末梢血検体をK2EDTA Vacutainer管(Becton Dickinson)中に採取し、採血手技から1時間以内に処理した。PBMC抽出を、塩化アンモニウムプロトコールまたはLymphoprep(STEMCELL Technologies)プロトコールのいずれかによって行った。Lymphoprepプロトコールは製造業者の指示に従って適用した。塩化アンモニウムプロトコールを用いた場合、血液4~8mlを低温の塩化アンモニウム溶解緩衝液(0.1Mの塩化アンモニウム、0.01MのTris-HCl)20mlと混合し、室温で5分間インキュベートした。次いで、細胞を300gで5分間遠心分離し、低温のPBS5mlで洗浄した。PBMC試料を10%ジメチルスルホキシド/90%FBS中に入れて凍結保存した。クライオバイアルをNalgene Mr.Frosty container(Thermo Fisher Scientific)に入れて24時間置き、次いで、発現分析のために細胞およびRNA処理を行うまで液体窒素中で保管した。
【0073】
マスサイトメトリー。
金属コンジュゲート抗体を、予めコンジュゲートされたものをFluidigmから購入したか、または精製品をBioLegend、Thermo Fisher Scientific、またはCell Signaling Technologyから購入し、その後、Maxpar Antibody Labeling Kits(Fluidigm)を使用し、製造業者の指示に従って金属とコンジュゲートした。28例の患者それぞれからのPBMCをCyTOFのために調製した。凍結保存しておいた細胞懸濁液を、まず、クライオバイアルを37℃のウォーターバス中、キャップを浸さずに1~2分間保持することによって解凍した。その後、単一細胞懸濁液中1~3×106個のPBMCを、Human TruStain FcX(BioLegend)と一緒に室温で10分間インキュベートして、非特異的抗体結合を遮断し、その後、細胞表面分子に対する金属コンジュゲート抗体と一緒に氷上で20分間インキュベートした。細胞をまた、Cell-ID Cisplatin(Fluidigm)と一緒に製造業者の指示に従ってインキュベートして、生存細胞を同定した。細胞内固定緩衝液および透過処理緩衝液(Thermo Fisher Scientific)を用いて処理した後、細胞を、細胞内タンパク質に対する金属コンジュゲート抗体と一緒にインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、1.6%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)を含有するPBS中に希釈したCell-ID Intercalator-Ir(Fluidigm)で染色し、取得を行うまで4℃で保管した。洗浄ステップ後、次いで、試料取得を、Helios System(Fluidigm)を使用し、<400s-1の事象速度で実施した。
【0074】
試料間の技術的変動を減少させるために、各試料にCeビーズを使用し、Bead Normalizer v0.3(https://github.com/nolanlab/bead-normalization/wiki/Installing-the-Normalizer)を使用してファイルをまとめて正規化した。技術的変動性をさらに最小限にするために、試料処理および取得バッチを4つに限定し、全ての試料にわたって同じ試薬ロットを使用し、Helios較正に対する大きな調整は行わなかった。Astrolabeでは試料間の数値強度が比較されないことにも留意した;そうではなく、基礎をなすマーカー強度がシフトするか否かにかかわらず所与のサブセットが同じであると仮定して、各試料を別々に分析した。したがって、このプラットフォームはバッチの影響に対して抵抗性であると報告されている。
【0075】
マスサイトメトリーデータ分析。
CyTOFデータを、最初にCytobank v8.0およびv8.1(Beckman Coulter)を用い、階層的クラスター最適化のためにFlowSOMアルゴリズム、および高次元データの可視化のためにviSNEアルゴリズム(iterations=5,000、perplexity=100)を使用して分析した。その後の細胞亜集団の同定およびデータ可視化を、細胞亜集団を自動ラベリングするための、知識に基づく階層的アノテーション戦略と教師なしクラスタリングを併せたものであるEk’Balamアルゴリズム71を活用するAstrolabe Cytometry Platform v3.6およびv4.0(Astrolabe)を使用して実施した。全部で、末梢血における主要な単核系列にわたる20種の細胞亜集団を同定し、定量した。各患者試料について、細胞亜集団レベルを合計で1になるように正規化し、タンパク質マーカー発現に基づいて分類不能の細胞を分析から除外した。Astrolabeを確証するために、Cytobankを使用して、CD4 TEM細胞を含む主要な細胞集団の盲検化手動ゲーティングを実施した(
図17、18A、および18B)。総PBMCまたは循環中のT細胞のいずれに対するフラクションとしてかにはかかわらず、しかしCD4 T細胞に対するフラクションとしてではなく算出したCD4 TEM細胞の総存在量は重度のirAE発生と有意に関連した(
図18C)。
【0076】
フローサイトメトリー。
健康なドナー5例から採取したPBMCをフローサイトメトリーによって分析した(
図11E)。簡単に述べると、200万~500万個のPBMC細胞を、TruStain FcX Fc Receptor Blocking Solution(BioLegend)を用いて室温で10分間処理して、Fc受容体を遮断し、次いで、フルオロフォアでタグ付けした表面抗体を用いて室温で30分にわたって染色した。以下の抗体を使用して細胞を染色した:FITCとコンジュゲートした抗ヒトCD45(クローン2D1;BioLegend);AF700とコンジュゲートした抗ヒトCD3(クローンOKT3;BioLegend);APCとコンジュゲートした抗ヒトCD4(クローンOKT4;BioLegend);PE/Cy7とコンジュゲートした抗ヒトCD8(クローンSK1;BioLegend);APC-Cy7とコンジュゲートした抗ヒトCD19(クローンHIB19;BioLegend);PerCp/Cy5.5とコンジュゲートした抗ヒトCD14(クローンHCD14;BioLegend);およびBV605とコンジュゲートした抗ヒトCD56(クローン5.1H11;BioLegend)。次いで、細胞を氷冷したPBSベースの緩衝液(1×PBS、2%FBS、1mMのEDTA)で2回洗浄し、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(BioLegend)を用いて染色して、細胞生存能を評価した。抗体捕捉ビーズ(BD Biosciences)を使用して、実験における各フルオロフォアを相殺した。染色された細胞を、Washington University School of MedicineのSiteman Flow Cytometry Coreにおいて、MoFlo Legacy instrument(Beckman Coulter)を使用したオペレーター補助を伴ってフローサイトメトリーによって分析した。DAPI陽性細胞および推定ダブレットを前方散乱および側方散乱分析に基づいて除外した後、FlowJo v.10(FlowJo LLC)を使用し、B細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、およびNK細胞を含む主要なリンパ球集団を総リンパ球に対するパーセンテージとして列挙した。
【0077】
scRNA-seqおよびscV(D)J-seqライブラリー調製およびシーケンシング。
PBMC試料由来の単一細胞懸濁液を上記の通り得、細胞計数のためにヘモサイトメーター(Thermo Fisher Scientific)またはCoulter Counter(Beckman Coulter Life Sciences)を使用し、製造業者の指示に従って、1μl当たり700~1,200個の生存細胞の濃度に調製した。その後、単一細胞懸濁液を、TCRおよびBCRクローン型に対するscV(D)J-seqと対をなすscRNA-seqのために、5’トランスクリプトームキット(10×Genomics)を使用し、製造業者の指示に従ってライブラリー調製に供した。相補DNAライブラリーのシーケンシングをNovaSeq instrument(Illumina)において細胞当たり平均20,000リードを標的とする2×92塩基対(bp)ペアエンドリードで行った。
【0078】
scRNA-seq分析(発見コホート)。
生scRNA-seqリードをバーコードにより重複排除し、Cell Ranger v.3.1.0を使用してhg38参照ゲノムに対してアラインメントし、低密度デジタル計数行列を得、それをSeurat v.3.1.5またはv.3.2.1(参考文献72)を使用して分析して、細胞型および細胞状態を同定した。以下の基準に基づいて外れ値の細胞を同定し、除外した:(1)ミトコンドリア含量が>25%、または(2)試料-レベル分布に応じて、発現された遺伝子が100未満または1,500~3,000超の細胞。正規化(NormalizeData)および可変特色の同定(FindVariableFeatures、n=2,000の特色)後、FindIntegrationAnchors(dims=1:30)を適用してアンカーを同定し、また、IntegrateData(デフォルトパラメータを用いる)を適用して、バッチ補正を実施した。統合されたら、2,000種の最も可変性の遺伝子および上位30種の主成分を使用して主成分分析(PCA)および均一マニホールド近似投影(UMAP)を適用した。FindClustersを分解能パラメータを3に設定して適用して、細胞型および細胞状態を同定し、37種のクラスターを得た。
【0079】
同定されたクラスターを全て、基準マーカー遺伝子の発現に基づいて主要な細胞系列に割り当てた:CD3D/CD3Ehi=T細胞;CD8A/CD8BhiおよびNKG7/GNLYlo=CD8 T細胞;高IL7R発現および低NKG7/GNLYを有する非CD8 T細胞=CD4 T細胞;NKG7/GNLYhiおよびCD3D/CD3Elo=NK細胞;CD14またはFCGR3Ahi=単球;FCER1Ahi=樹状細胞(DC);MS4A1hi=B細胞;HBBhi=赤血球(red blood cell);PPBPhi=血小板。CD8/CD4 T細胞にアノテーションされなかった、CD3D/EおよびGNLY/NKG7の高発現を有する細胞はTまたはNKT細胞群に含め、T/NKTと称した。赤血球または血小板にアノテーションされたクラスターはさらなる分析から外した。実効ダブレット率を評定するために、細胞バーコードをシングルセルBCR(scBCR)およびTCR(scTCR)クローン型と相互参照した。(1)TCRクローン型に異常にマッピングされた非T細胞のパーセンテージ(mで示される)および(2)マッチするscTCRクローン型にアノテーションされたT細胞の出現頻度(すなわち、回収率)(fで示される)を決定することにより、実効ダブレット率(m/f)を2.2%と算出した。非B細胞にマッピングされたscBCRクローン型について算出された実効ダブレット率は同じであった(同じく2.2%)。実効ダブレット率が適度に低かったので、TCRまたはBCRクローン型配列の異常発現を有する単一細胞を全て除外した。次いで、PCA、UMAPおよびFindClustersを上記の通り繰り返し、32のクラスターを得た。非常に高いHBB発現を特徴とする2つの赤血球クラスターを残し、分析からは除外し、その後、PCA、UMAP、およびFindClustersの最終ラウンドを1回行い、32のクラスター(すなわち、状態)の最終セットを得た。低次元埋め込みが
図3Aおよび7Aに示されている。
【0080】
32種の状態全てを、それらと重度のirAE発生(
図3Bのx軸)との関連性およびCyTOFによって測定されたCD4 TEM存在量(
図3Bのy軸)について評定した。それらの中で、CD4 Tクラスター5が両方の変数と最も強力に相関した(
図3B)。この結果の統計的有意性を決定するために、(1)各評価基準によって1位に順位付けられ、かつ(2)少なくともCD4 Tクラスター5と同様に強力なP値およびスピアマン相関係数が実現される同時確率を算出した。この確率を経験的に算出するために、各scRNA-seqクラスターに関連付けられる細胞画分を全ての患者試料にわたって独立にシャッフルし、次いで、上記の(1)および(2)について評価する並べ替えスキームをインプリメントした。このプロセスを10,000回繰り返すことにより、CD4 Tクラスター5について経験的P値0.003が算出された。ペアワイズコンビナトリアル分析も実施し、生物学的一貫性が維持されるように細胞状態の対を同じ主要細胞型に制限し(B細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、NK細胞、単球)、82種の可能性のある細胞クラスターの組合せのそれぞれを、CyTOFによって列挙されたCD4 TEMレベルおよび重度のirAE発生と比較した(
図7DおよびE)。CD4 T細胞クラスター5および3が最上位の対として現れた。上記の統計的手法を使用し、この結果について経験的P値0.002が算出された。
図3Cの差次的発現遺伝子(DEG)を同定するために、Seurat FindMarkersを、デフォルトパラメータを用い、CD4 T 5+3集団と、他のCD4 T細胞状態とに適用した。
【0081】
irAE発生の細胞内決定因子を描写するための教師なしクラスタリングの相対的な有用性を評価するために、Seurat v.4.0.1(Azimuth)内の参照誘導アノテーションフレームワークを活用して、本発明者らのscRNA-seqデータセットを、scRNA-seqおよび220種を超えるタンパク質マーカーの共検出を用いて定義された6種の主要系列および27種のより細かい粒度のサブセットにわたる161,764の細胞のPBMCアトラスに投影した。まず、クエリデータセットを上記の品質管理ステップに従って前処理し、24,807の細胞を得た。次いで、クエリデータセットをSCTransformによって正規化し、FindTransferAnchorsを、50次元の予めコンピュータ処理した教師ありPCA変換を使用してクエリデータセットおよび参照データセットに適用し、次いで、MapQueryを適用して、クエリデータセットを参照することにより細胞型ラベリングおよびUMAP構造をマッピングした。
【0082】
Azimuthによって同定された27種の細胞状態の中で(
図8A)、CD4 TEMが重度のirAE発生と最も強力に関連し、CyTOFによって列挙されたCD4 TEM細胞と最も相関した(
図8C)。Azimuthによって同定された2種の他のCD4 TEM様サブセット(CD4 CTL、CD4増殖性)の中で、CD4増殖性がHLA-DXの最高発現およびSELLの最低発現を示し(
図8D)、これは、活性化CD4 TEM表現型と一致する。さらに、抗体由来のタグデータからAzimuthによるタンパク質発現を調査したところ、CD4 TEMおよびCD4増殖性状態のみがTEM細胞の特質を示した(CD45ROhiCD45RAloCD27lo;
図8E)。実際に、CD4 TEMとCD4増殖性が組み合わさった集団は、重度のirAE発生と最も大きく関連した(
図8C)。超幾何学的試験を適用して、組合せCD4 TEM+CD4増殖性集団(Azimuth)とde novoクラスタリングによって定義される状態の間の細胞バーコードの重複を評定した。CD4 T 5+3が1位のヒットとして現れた(Benjamini-Hochbergにより調整したP=2.5×10
-7)。教師なし手法と教師あり手法の間の強力な重複にもかかわらず、CD4 T 5+3は、参照誘導アノテーションによってラベリングされた集団よりも大きく重度のirAE発生およびCyTOFと関連した(
図8F)。
【0083】
バルクRNA-seqライブラリー調製、シーケンシング、および定量。
凍結保存しておいた細胞懸濁液を上記の通り解凍した。その後、RNAを、RNeasy PowerLyzer Tissue & Cells Kit(QIAGEN)を使用して抽出し、2100 Bioanalyzer System(Agilent Technologies)を用いて品質を評定した。全ての試料が、TruSeq RNA Exome分析のために十分に高い品質であり(DV200>30%)、TruSeq RNA Exome Kit(Illumina)を使用し、製造業者の指示に従って調製した。ハイブリッド捕捉後、cDNAライブラリーをプールし、HiSeq 2500 instrument(Illumina)において、2×150bpのペアエンドリードを使用し、試料当たり2000万~2500万リードを標的としてシーケンシングを行った。生リードを、Salmon v.0.12.0を用い、GENCODE v.29参照トランスクリプトームを使用して定量した;以下のコマンドライン引数を使用し、その他はデフォルトパラメータを使用した:--seqBias--gcBias--posBias--validateMappings--rangeFactorizationBins 4。リードカウントを、tximport v.1.10.1を使用して遺伝子レベルの100万当たりの転写物(TPM)に対して正規化した。マッピング率が≧60%であり、TCRアセンブリが上首尾である(下のV(D)J受容体プロファイリングおよびクローン型分析を参照されたい)試料のみをさらなる分析に含め、例外として、マッピング率が>40%(しかし<60%)であり、TCRアセンブリが上首尾である3つの試料を含めた。全部で、バルクコホート1および2内の53のシーケンシングされた試料(88%)がこれらの基準を満たした(
図1)。
【0084】
バルクRNA-seqデコンボリューション。
PBMCのバルクRNA-seqプロファイルにおける白血球組成を決定するために、CIBERSORTx v.1.0.41(https://cibersortx.stanford.edu)を、LM22シグネチャー行列と共に各コホートのTPM行列に適用した(
図1)。CIBERSORTxを、Bモードバッチ補正と共に、分位正規化なしで各シーケンシングバッチに別々に適用した。22種の機能的に定義されたヒト造血サブセットを区別するための高度に最適化された参照プロファイルからなるLM22は、RNA-seqまたはマイクロアレイのいずれでプロファイリングされたかにかかわらず全血およびPBMC中の白血球サブセットを正確に列挙するためのフローサイトメトリーに対して広範に検証されている。CIBERSORTx、およびLM22による活性化CD4 TM細胞プロファイルの性能を本研究において遺伝子発現分析によってさらに確証し(CCR5、SELL、TCF7、およびCD27;
図11A)、黒色腫患者由来のPBMC試料を使用し、CIBERSORTx、マスサイトメトリー、フローサイトメトリーおよびscRNA-seqの間で比較を行った(
図11B、11C、11D、11E、および11F)。顆粒球サブセットおよびマクロファージサブセット以外の全てのLM22サブセットを本研究において評価し(n=15;
図4A)、各試料のそれらの相対的なフラクションを合計で1になるように再度正規化した。合計15種のサブセットを評価したが、2種はCIBERSORTxによって低密度に検出され(調節性T(Treg)細胞、ガンマデルタT細胞)、
図4Aのウィルコクソン順位和検定によって評定することができなかった。
【0085】
V(D)J受容体プロファイリングおよびクローン型分析。
シングルセル発見コホートについて、生scV(D)J-seqリードを、Cell Ranger v.3.1.0を用いて参照refdata-cellranger-vdj-GRCh38-altsensembl-4.0.0にマッピングし、得られたクローン型アセンブリをLoupe V(D)Jブラウザv.3.0.0(10×Genomics)からダウンロードした。活性化TM細胞がクローン拡大によって生じることを考慮すると、活性化TM細胞はそれらのナイーブ対応物よりも低いTCR多様性を有することが予想されるが、ただし、(1)どちらの集団由来の細胞も等しくサンプリングされる(すなわち、それらの計数が等価である)または(2)総T細胞計数の変動を正規化によりなくすことを条件とする(
図10A)。しかし、総T細胞出現頻度の変動を度外視することにより、そのようなサンプリングでは、集団内の独特の種(クローン型)の数であり、免疫レパートリー多様性の基礎をなす重要な因子である、豊富さが無視される。したがって、本研究では、均衡度と豊富さを単一評価基準として組み合わせた理論的計量情報であるShannonエントロピーを最初に使用して、免疫レパートリー多様性を特徴付けた(
図10A)。シングルセル発見コホート内の各評価可能な患者試料について(
図1および2A)、TCRクローン型レパートリーをランダムにサンプリングして(非復元)、患者にわたって評価可能なPBMC細胞の数を等しくすると同時に、TCR回収率の技術的変動に対処した。サンプリングのために利用可能なTCRクローンのプールを最大にするために、100未満のTCRクローンを有する患者を除外した(n=4;YUTAUR、YUTORY、YUHERN、およびYUTHEA)。次いで、残りの9例の患者について、各T細胞サブセットについてShannonエントロピー(Rパッケージvegan v.2.5-6(参考文献78))を総PBMCに対して算出し、得られた値をこの手順の100回の反復にわたって平均した(
図3E、10Bおよび10D~F)。同じ9例の患者に関してShannonエントロピーをIGK、IGL、およびIGH鎖にわたるscBCRクローン型について上記の通り分析した(
図10G)。
【0086】
バルクコホート1および2について、Skewer v.0.2.2を使用してアダプター配列をトリミングした後、TCRクローン型をアセンブルし、MiXCR v.3.0.125を用い、以下のコマンドを使用して定量化した:mixcr align -p rna-seq -s hsa -O allowPartialAlignments=true data_R1.fastq.gz data_R2.fastq.gz alignments.vdjca。各患者試料について、TCRクローン型多様性を、TCR-α鎖およびTCR-β鎖について全体として、Shannonエントロピー(Rパッケージ vegan v.2.5-6)を使用して測定し、患者間での比較をirAE重症度に基づいて行った(
図4B、4C、12A、および12C)。Rパッケージimmunarch v.0.6.5(https://doi.org/10.5281/zenodo.3367200)を使用して算出したGini-Simpson指数をさらに適用して、バルクTCR多様性をirAE重症度に照らして評価した(
図12Bおよび12D)。注目すべきことに、TCRの豊富さがShannonエントロピーおよびGini-Simpson指数の両方を算出するための重要な構成要素である。
【0087】
バルクPBMCからのT細胞クローンダイナミクスの分析。
併用ICIを用いた処置を受けた15例の患者由来の対をなす処置前PBMCおよび処置中の初期段階PBMCに対して、バルクTCR-β鎖プロファイリングを実施した。処置中末梢血が重度のirAEの発症後に採取された患者はいなかった。ゲノムDNAを、DNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN)を使用して抽出し、調査分解能のimmunoSEQ(Adaptive Biotechnologies)にかけた。増殖的TCR-β鎖再構成からのデータをimmunoSEQ Analyzerオンラインツールを使用してエクスポートし、TCR-βレパートリーの豊富さおよび多様性についてPielouの均衡度を使用して評価し、1-均衡度の増加をクローン性の上昇に関連付けた。immunoSEQプロファイリングから得られたPielouの均衡度をバルクRNA-seq(MiXCR)と比較し、一致することが明らかになった(
図15A)。全ての処置前の試料と処置中の試料が適切に対をなすことも、TCR-β CDR3配列の交差比較によって検証した。対をなす処置中時点と処置前時点の間での各試料における1-Pielouの均衡度と定義されるクローン性の差異を分析することにより、クローン拡大が推測された(
図5Bおよび15B)。より詳細には、ベースラインからのクローン性の変化を算出するために、処置前のクローン性を処置中のクローン性から対をなす様式で差し引き、それにより、全ての処置前の試料をゼロに対して正規化した(
図5B、左)。
図15Bにおいて、
図5Bからのデータについて、処置中の試料の対をなす処置前の試料に対する正規化を伴わない分析も行った。
【0088】
重度のirAEの非存在を評定するために、δと示されるクローン拡大の程度を、Rパッケージdplyr v.1.0.7を使用して三分位値に均等に分割した(
図5Dおよび15H)。これにより、以下の群を得た:クローン拡大なし、δ<0、n=5;中間、0<δ<0.009、n=5;および高クローン拡大、δ>0.009、n=5。これらの閾値を完全なimmunoSEQコホート(n=15;
図5D)、および、ICIによる処置中、1日目および<1カ月後に血液試料を得た患者(n=7;
図15H)に適用した。さらに、順位空間で表した場合、クローン拡大の程度は、コックス回帰モデルにおいて重度のirAE発生までの時間と有意に関連し、採取血間の時間、検出された増殖的TCRクローンの数、ならびに各患者の年齢および性別とは無関係であった。
【0089】
持続性T細胞クローンの分析。
可変レベルのクローン拡大を有する、重度のirAEが生じた3例の患者:YUALOE、YUNANCY、およびYUHONEY(
図5Cおよび15D、15E、15F、および15G)について、対をなす処置前末梢血のscRNA-seqおよびscTCR-seqを実施した(
図5B)。注目すべきことに、これらの3例の患者由来の試料は、シングルセル発見コホートにおけるscRNA-seqまたはscV(D)J-seqによる以前のプロファイリングが行われていなかった。シーケンシングライブラリーを、シングルセル発見コホートに関して記載されているものと同様に生成し、品質管理のために処理した。Cell Ranger v.5.0.1を用いてマッピングを実施した。
【0090】
対をなす処置前血液試料と処置中血液試料の間で共有される増殖的TCR-β CDR3ヌクレオチド配列と定義された持続性クローンについて分析するために、immunoSEQデータを、1つの採取血において少なくとも2つの鋳型(処置前または処置中)および他の採取血において少なくとも1つの鋳型(平均で、共有されるクローン全てのうち60%)を有する共有されるクローン型について調べた。これにより、拡大したかまたは縮小した持続性クローンに優先的に焦点を当てることが可能になった。得られた配列を、処置前のscTCR-seqライブラリーからのTCR-β CDR3ヌクレオチド配列と相互参照し、それをさらにscRNA-seqデータと相互参照し、AzimuthによってT細胞にアノテーションされた細胞(上記の通り適用した)についてフィルタリングした(
図15D)。全部で、対をなすimmunoSEQクローン型データを有するシングルセルトランスクリプトームが1,504種同定された。各患者について、処置前のシングルセルとimmunoSEQ TCRクローン型出現頻度の間に有意なスピアマン相関が観察された(ρ>0.59;CD4 T細胞についてP0およびCD8A/B=0;CD8 T細胞についてCD8AまたはCD8B>0およびCD4=0)。全体で、全ての相互参照されたクローン型のうち69%をこの手法によって明確にラベリングすることができた(
図15E)。
図5Cに示されているプロットに関して、CD4 T 5と3の間の平均log2倍率変化をシングルセル発見コホート内の残りのCD4 T細胞クラスターに対して算出し(
図7B)、次いで、上位20種の遺伝子をその後の分析のために選択した。この遺伝子セットの富化を、単一試料GSEA(Rパッケージescape v.1.0.1)を使用して決定し、それをAzimuthによってラベリングされたまたは上記の通り持続性CD4/CD8 T細胞についてラベリングされたT細胞に適用した。
図15FおよびGに示されている分析のために、immunoSEQによって測定された持続性T細胞クローンの増殖的出現頻度をCD4 T細胞およびCD8 T細胞に群分けし、増殖的出現頻度の差異をクローン型ごとに(
図15G)または全体として(
図15F)表し、ベースラインからのバルククローン拡大と比較した(
図5B)。
【0091】
irAE発生を予測するための統合モデル。
活性化CD4 TM細胞の存在量およびバルクTCRクローン型多様性は、個々に重度のirAE発生と関連した(
図4AおよびB)。したがって、性能を改善する手段として統合モデリングを探究した。ランダムフォレストを用いた非線形モデリングを含めたいくつかの技法を評定したが、ロジスティック回帰(Rのglm)により同等の性能が実現され、一般化線形モデルは相対的に単純かつロバストであることから、これを選択した。訓練前に、バルクコホート1および2において各特色を外れ値についてROUT検定を使用して偽発見率=10%で検定した。88のデータ点(2つの特色×53例の試料)のうち、3つの外れ値が検出され、これらは全て、バルクコホート1の活性化CD4 TM細胞からのものであった。訓練コホートにかかわらず、検出された外れ値は全て、一定してこれらの3例の試料からのものであった。したがって、各統合モデルについて、訓練コホート内の全ての非外れ値試料の間で活性化CD4 TM細胞レベルの最大画分maxFを決定した。次いで、maxFを全ての試料についての上限として使用した。
【0092】
複合モデルを、重度のirAE(グレード3+)発生を予測するようにいくつかの方式で訓練した。これらには、バルクコホート1で訓練し、ホールドアウトされていたバルクコホート2でテストすること(
図4D、左);1つの治療型で訓練し、別の治療型でテストすること(
図4D、右);およびLOOCVを使用してバルクコホートにわたって訓練することが含まれる。LOOCVによる評定に関しては全てのモデルについて分析をn回繰り返した。ここで、nは患者の総数である。各反復において、モデルをi番目の患者以外の各患者に対して訓練し、ホールドアウトされていたi番目の患者に対し評価した。患者をLOOCVによって高群および低群に分ける際の過剰適合を軽減するために、YoudenのJ統計値を適用して、各訓練コホートにおける感度および特異度が最適化される閾値を決定し、次いで、この閾値に基づいて、ホールドアウトされていたi番目の患者を割り当てた。
【0093】
複合モデルスコアを、受信者動作特性(ROC)分析によって評定した。重度のirAEを非重度のirAEと識別するように訓練したモデルを使用して、今後の重度のirAEの発生(
図4Dおよび13A)、irAEグレード(
図4C、4E、13B、および13E)、irAEの影響を受ける器官系の数(
図13H~J)ならびに重度のirAE発生までの時間(
図5Aおよび
図14)について予測した。当該モデルを異なる患者サブグループにおいても評定し(
図4Dおよび13D)、バルクRNA-seqで評価した経路および以前に公開されたバイオマーカーと比較した(
図13C)。複合モデルを異なるirAEグレード閾値でさらに検証し(
図13F)、irAE発生について予測するように治療型ごとに別々にテストした(
図4D、5A、13A、13D~F、8B、8C)。
【0094】
自己免疫障害における循環中の白血球組成の評定。
バルクRNA-seqまたはマイクロアレイによってプロファイリングし、SLE患者239例、IBD患者348例、および対をなす健康対照191例にわたる末梢血遺伝子発現データセットを、Gene Expression Omnibus(GEO)からダウンロードした。HungらによるRNA-seqデータを前処理された発現行列としてダウンロードし、分析前にTPMで正規化した。Affymetrixマイクロアレイデータセット(n=5)をCELファイルとしてダウンロードし、MAS5で正規化し(Rのaffy v.3.12(参考文献82))、各プラットフォームに特異的なカスタムチップ定義ファイルを使用してEntrez遺伝子識別子にマッピングし(http://brainarray.mbni.med.umich.edu/ Brainarray/Database/CustomCDF/)、HUGO遺伝子記号に変換した。データセットの1つは入手可能な生CELファイルがなく、その代わりに、前処理された発現データをGEOから得た。複数のプローブセットが同じ遺伝子記号にマッピングされた場合には、試料にわたって平均log2発現が最も高いプローブセットをさらなる分析のために選択した。Palmerらのデータセットでは、対照として同定された一部の試料はEscherichia coli感染症、小児脂肪便症、またはクローン病への進行を有する対象からのものであった;これらは分析から除外した。Carpinteroらのデータセットにおける反復実験試料として、最新の試料を選択した。Petersらのデータセットに関しては、クローン病の患者由来の処置前血液試料(0週目)のみをさらに分析した。上記の通りCIBERSORTx49をLM22と共にHungらのバルクRNA-seqデータセットに適用し、一方、マイクロアレイデータセットについては(1)分位正規化およびBモードバッチ補正(非HG-U133プラットフォーム)または(2)分位正規化、およびバッチ補正なし(HG-U133プラットフォーム)のいずれかを用いて実行した。白血球サブセットを末梢血中に見いだされる単核サブセットに限定し(顆粒球およびマクロファージを除去した)、各試料について合計で1になるように再度正規化した。
【0095】
各データセット内で、両側、対応のないウィルコクソン順位和検定を適用して、同じ試験からの疾患を有する個体と健康対照の間で末梢血中の各白血球サブセットのレベルを評価した(
図16)。得られたP値を、関連性の方向性を考慮に入れて両側z-スコアに変換した。所与の疾患表現型(SLEまたはIBD)内で、z-スコアを、サンプルサイズによって重み付けしたLiptak法を使用し、データセットにわたって組み合わせた(
図16)。最後に、SLE特異的およびIBD特異的メタz-スコアを、Stouffer法を使用して組み合わせ(
図16)、各白血球サブセットについての汎SLE/IBDメタz-スコアを得た(
図6)。
【0096】
以前の文献および経路分析による候補毒性バイオマーカー。
複合モデルを、重度のirAEの予測のための以前に公開されたirAEバイオマーカーおよび富化された経路を基準として評価した(
図13C)。各候補バイオマーカーをバルクコホート1および2において別々に、ROC分析によってAUCを決定することにより評定した。以前の文献においてタンパク質発現によって測定された以下の処置前のirAEバイオマーカーを、本試験における末梢血中のRNAの代用物:個々に2変数線形回帰を用いて評価したADPGKおよびLCP1;CD74およびGNAL15発現;ならびに、同じ11種のサイトカイン(CSF3、CSF2、CX3CL1、FGF2、IFNA2、IL12A、IL1A、IL1B、IL1RA、IL2、IL13)をコードする遺伝子の幾何平均発現として評価したCYTOXスコアによって評定した。それとは別に、GSEAPreranked v.7.1.0によって予め順位付けしたGSEA v.4.1.0を適用して、Molecular Signatures Database v7.4ホールマーク経路収集物から、バルクコホート1および2における最もirAEにより富化された経路を同定した。インプットとして、重度のirAEが発生した患者と重度のirAEが発生しなかった患者の間のlog2倍率変化によって順位付けしたトランスクリプトームワイド遺伝子一覧をバルクコホート1および2について定義した。q<0.25の遺伝子セットを統計的に有意であるとみなした。重度のirAEを有する患者において、重度のirAEを有さない患者に対して最も富化された2つの遺伝子セット(MYC_TARGETS_V1;OXIDATIVE_PHOSPHORYLATION)をバルクコホート1および2において複合モデルと比較した(
図13C)。
【0097】
統計値。
別段の指定のない限り、統計的検定は全て両側検定であった。2群間の統計的差異を評定するためにウィルコクソン順位和検定を使用した。2つよりも多くの群を同時に評定する場合はノンパラメトリッククラスカル・ワリス検定を使用した。別段の指定のない限り、多重仮説検定にはBenjamini-Hochberg法を適用した。上記の通り重度のirAE発生およびCyTOF CD4 TEM存在量を用いてscRNA-seqクラスター相関を評定するために並べ替えスキームをインプリメントした。2つのカテゴリカル変数間の統計的差異を評定するためにフィッシャーの直接検定を適用した。分類の正解度を評定するためにROC分析を実施し、AUCによって定量した。AUCの統計的有意性を両側z検定によって決定した。ROC分析後の最適なカットポイントを同定するためにYoudenのJ統計値を使用した。直線的一致をピアソン(r)またはスピアマン(ρ)相関によって決定し、両側t検定を使用して、結果が有意にゼロではないかどうかを評定した。重度のirAEまでの時間に関して共変量を評定するためにカプラン・マイヤーおよびコックス回帰分析を使用した。カプラン・マイヤー分析についての有意水準およびHRは両側ログランク検定を使用して決定した。
図5Aおよび14の複合モデルおよび関連する分析には、バルクコホート1および2からの患者を含め(
図1)、重度のirAEは発生しなかったが、初期段階で疾患進行が生じ、3カ月が経過する前に治療切り換えに至った2例の患者(YUDIMEおよびYUMEDIC)を例外とした。これらの2例の患者は、それぞれ、患者集団において生じた全ての重度のirAEのうち76%が生じた期間である63日間(2.1カ月間)の免疫チェックポイント遮断を受けたので他の分析に含めた。
【0098】
コックス回帰に関しては、結果をWald統計値(z-スコア)に基づいて分析し、有意性をWald検定によって評定した。コックス回帰に含めた各共変量について比例ハザード仮定を確認してから、Schoenfeld残差を評価することによる分析を行った。必要に応じて、統合統計分析のためにLiptak法およびStouffer法を使用した。バルクコホート1および2についてのサンプルサイズ算出をR86のpwr v.1.3-0を使用して実施した。シングルセル発見コホートにおいて、CD4 TEM細胞の存在量(CyTOF)と重度のirAE発生の間の関連性の効果量は1.99であった(
図2CおよびD)。バルクコホート1および2を、α=0.05および1-β=0.8でこの効果量要件を満たす一方で、バルクコホート1において特異度が強調され(重度のirAEを有さない患者の数>重度のirAEを有する患者の数)、バルクコホート2において平衡(重度のirAEを有さない患者の数≒重度のirAEを有する患者の数)が強調されるように設計した。統計分析は全て、R v.3.5.1+またはPrism 8+(GraphPad Software)を使用して実施した。
【国際調査報告】