(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】食事補償のための十分なボーラス投与を確保するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/172 20060101AFI20250117BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20250117BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61M5/172 500
A61M5/142 530
A61B5/00 102A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542172
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 US2023060726
(87)【国際公開番号】W WO2023141415
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ボク リー
(72)【発明者】
【氏名】ランガラジャン ナラヤナスワミ
(72)【発明者】
【氏名】イーピン チョン
(72)【発明者】
【氏名】アシュトシュ ザド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
【テーマコード(参考)】
4C066
4C117
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
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4C117XB02
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4C117XN05
(57)【要約】
自動薬物送達システムにおいて、液状薬物のボーラス投与量の送達が不十分であることを防止又は補償するためのセーフガードを提供するためのシステム及び方法が開示される。セーフガードには、例えば、薬物送達アルゴリズムに組み込まれた機能であって、薬物送達アルゴリズムが、ユーザによる手動又は薬物送達システムによる自動のいずれかで、適切なボーラス投与量が送達されるようにするための機能が含まれる。さらに、薬剤送達アルゴリズムに、いつ食事が摂取されたかを判定する手段を提供し、いくつかの実施形態では、判定に応答して液状薬物の自動ボーラス投与を提供するための様々な方法が記載される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達システムにおいて食事摂取を補償する方法であって、
食事イベントの通知を受信することと;
ユーザに送達されるべき安全なボーラス投与量を計算することと;
前記安全なボーラス投与量を送達することと;
前記ユーザの血糖レベルを監視することと;
前記薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムに従って、前記ユーザの前記血糖レベルのさらなる変動を補償することとを含む、方法。
【請求項2】
食事イベントの前記通知は、前記薬物送達システムのユーザインタフェースのボタンのユーザ選択を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安全なボーラス投与量は、安全な公称インスリン送達量及び現在の残存インスリンの関数として計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記安全な公称インスリン送達量は、前記ユーザの1日の総インスリン必要量(TDI)の百分率として計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記安全なボーラス投与量は、
前記ユーザの現在の血糖レベルを考慮した、血糖補正係数と;
過去の所定期間での前記ユーザの血糖値における傾向に関して補正する、傾向補正係数と;
前記安全なボーラス投与量の送達前の所定時間期間内に前記ユーザが低血糖イベントを経験した場合に、前記安全なボーラス投与量を所定量減少させる、低血糖からのリバウンド係数と;
前記ボーラス投与量が夜間期間に投与される場合には、計算量だけ前記安全なボーラス投与量を減少させる夜間係数と
の1つ又は複数によって修正される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記傾向補正係数は、前記過去の所定期間の前記ユーザの血糖値の傾き及び曲率に基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
夜間モードが、IMUによって提供される動きプロファイル、及びタイムゾーン情報を使用して自動的に検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記夜間係数の現在値は、過去の発生において、前記現在値が低血糖のさらなるリスクを生じさせた場合には、下げられ、又は過去の発生において、前記現在値によって前記ユーザの血糖値が高まった場合には、上げられる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記安全なボーラス投与量を送達することは、
前記安全なボーラス投与量を、食事イベントの通知後の所定時間に投与される複数の段階的投与量に分割すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記安全なボーラス投与量は、各段階的送達で再計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
食事イベントの前記通知は、持続グルコースモニタから受信した前記ユーザの血糖レベルに基づく食事の摂取の自動検出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記食事の摂取の前記自動検出は、前記ユーザの血糖レベルの有意な増加と、前記薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムによって計算される液状薬物の自動送達の有意な増加との検出に基づいて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ユーザの血糖レベルの増加及び前記液状薬物の前記自動送達の増加は、前記持続グルコースモニタから新しい血糖測定値が受信されるたびに評価される所定幅の移動ウィンドウに関して評価される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記食事の摂取の前記自動検出は、食事検出分類器として訓練された1つ又は複数の機械学習モデルによる前記ユーザの血糖値のプロットの分析に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ又は複数の機械学習モデルは、現在時間より前の様々な時間に始まる、前記ユーザの血糖値の食後上昇を検出するように訓練される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の機械学習モデルは、10分検出器、15分検出器、及び20分検出器を含み、前記1つ又は複数の機械学習モデルは、食事摂取の最終判定を提供するためにカスケード接続される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記食事の摂取の前記自動検出は、血糖レベルの上昇が現在時間より前の様々な時間に始まったと仮定して血糖値が上昇したことを認識する複数の遅延検出器を使用する1つ又は複数の決定木による前記ユーザの血糖レベルのプロットの分析に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の遅延検出器の結果は、最終的な食事検出決定を合成するためにプールされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記食事イベントの前記通知に応答して、前記方法は、
未報知の食事の検出がされたことを前記ユーザに通知することと;
前記ユーザに推奨ボーラス投与量を提供することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記食事イベントの前記通知に応答して、前記方法は、
前記推奨ボーラス投与量に基づくグルコース偏差に対してより積極的に反応するように前記薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムを調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月18日に出願された米国仮特許出願第63/300,460号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の自動薬物送達システムの多くは周知であり、例えば、
図2に示すタイプのウェアラブル薬物送達デバイスを含む。薬物送達デバイス102は、任意のタイプの液体薬物をユーザに送達するように設計することができる。特定の実施形態において、薬物送達デバイス102は、例えば、マサチューセッツ州アクトンのInsulet Corporationによって製造されたOmniPod(登録商標)薬物送達デバイスであり得る。薬物送達デバイス102は、米国特許第7,303,549号、米国特許第7,137,964号、米国特許第6,740,059号に記載されているような薬物送達デバイスとすることができ、それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
ウェアラブル薬物送達デバイス102は、典型的には、プロセッサ及びメモリを備えて構成され、薬剤送達アルゴリズム(medication delivery algorithm,MDA)を実行し得る。代替的に、薬剤送達アプリケーションは、例えば、遠隔個人用糖尿病管理(personal diabetes manager,PDM)又はスマートフォンなどの遠隔デバイス上で、又は遠隔デバイスを介して実行されてもよく、この遠隔デバイスは、薬物送達指示をウェアラブル薬物送達デバイス102に送信するように構成されてもよい。
【0004】
MDAは、液状薬物の基礎投与を提供することができる。例えば、糖尿病患者の場合、MDAは、インスリン又はインスリンと他の薬物の共製剤の基礎投与量をユーザに送達する一方で、ユーザの血糖レベル(blood glucose level)の食後の変動を補償するために、ユーザが液状薬物のボーラス投与量を自己投与することを可能にする。
【0005】
ユーザが食事ボーラスを自己投与するための通常の手順は、摂取した食事を補うための適切なボーラス投与量を計算するためにボーラス計算機を使用することである。ユーザはボーラス計算機を使用するために食事に含まれる炭水化物の所定数を入力し、そしてユーザのインスリン対炭水化物比に基づいてボーラス投与量が計算される。通常、ボーラス投与量は、食事中の炭水化物のグラム数をインスリン対炭水化物比で割った値となる。
【数1】
【0006】
しかしながら、この方法では、ユーザが食事に含まれる炭水化物の数を誤って見積もることが多いため、誤差が生じやすい。さらに、インスリン対炭水化物比は、最近の運動活動、ストレスレベル、ホルモンの変動などによって、一日を通して変化する可能性がある。インスリンの量が過剰になるか、又は不足すると、危険な状況が生じる可能性がある。
【0007】
さらに、慣れたユーザは、自動インスリン投与(automatic insulin delivery,AID)システムの使用が楽になり、食事のためのボーラス投与回数を不注意に減少させることにより、液状薬物のボーラス投与量を自己投与することに自己満足する可能性もある。そのため、ユーザにおいて食事がボーラスで十分に手動で補われない場合が増加する可能性がある。さらに、食事のボーラスが遅れたり、食事を見越してボーラスを服用したが食事が遅れたりする場合もある。
【0008】
ボーラス投与量の自己投与を取り巻く多くの不確定要素を考慮すると、ボーラス投与量の自己投与に固有の欠点に起因して発生する可能性のある異常な状況を補償するか、少なくともユーザに警告することができるいくつかのセーフガードをMDAに組み込むことによって、ユーザにある程度の安全性を提供することが望ましい。
【0009】
定義
本明細書において、「液状薬物」という用語は、例えば、インスリン、GLP-1、プラムリンチド、モルヒネ、血圧治療薬、化学療法薬、不妊治療薬など、又はGLP-1、プラムリンチド、及びインスリンの2つ以上の共製剤を含む、皮下カニューレを介して薬物送達デバイスによって投与可能な液状の任意の薬物を含むと解釈されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本概要は、詳細な説明に後述する概念から抽出されたものを簡略化して紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際の補助として意図されるものでもない。
【0011】
第1の実施形態において、MDAは、液状薬物のボーラス投与量の不十分な送達に対するセーフガードの提供、又は液状薬物のボーラス投与量の不十分な送達を補償するように構成され得る。第1の態様において、薬物送達デバイスによって自動的に投与されるボーラス投与量の安全な計算を提供するために、様々な革新的な特徴をMDAに組み込むことができる。革新的な特徴については、以下でさらに詳細に説明する。本発明の第2の態様において、MDAは、過去のグルコース履歴を評価して、ユーザが、手動で補償されなかったか、又は補償不足であった食事を摂取したかどうかを自動的に判定することができる。ユーザが食事を摂取したと判定された場合、本発明の第3の態様において、MDAは、測定基準をユーザに提供することができ、これらの期間中の高グルコース濃度に対するMDAの積極性を増加させることができる。本発明の第4の態様において、MDAは、食事が摂取されたと判定したとき、インスリンのボーラス投与量が、薬物送達デバイス102によって自動的に送達され得る。
【0012】
様々な実施形態において、薬剤送達アルゴリズムは、本発明の上述の態様のすべて又は任意の組み合わせを提供することができる。
【0013】
図面中、同様の参照文字は、一般に、異なる図を通して同じ部分を指す。以下の記述において、本発明の様々な実施形態が、添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本明細書で開示するシステム及び方法を実施するのに適した例示的なシステムの機能ブロック図である。
【0015】
【
図2】
図2は、本明細書で開示する発明が使用されるタイプの先行技術のウェアラブル薬物送達装置の図である。
【0016】
【
図3】
図3は、ユーザが食事を摂取しようとしていることをシステムソフトウェアに知らせるために使用される「食事をする(Going to Eat)」ボタンを示す例示的なユーザインタフェース画面の図である。
【0017】
【
図4】
図4は、ユーザのTDIに対する百分率として、各食事に対して送達されたインスリンを示すヒストグラムである。
【0018】
【
図5】
図5は、「夜間モードの設定(Set Nighttime Mode)」ボタンと、夜間モードの開始時刻と終了時刻を入力するためのフィールドを示す例示的なユーザインタフェース画面の図である。
【0019】
【
図6】
図6は、前回のインスリン投与に基づいて夜間係数がどのように調整されるかを示すフローチャートである。
【0020】
【
図7】
図7は、食事を検出するために使用されるスライディングウィンドウが重ねられた血糖(blood glucose)測定値のプロットである。
【0021】
【
図8】
図8は、1日の血糖測定値のプロットであり、食事が摂取されたときのグルコースレベルの上昇と、食事の検出に使用されたプロットの部分を示す図である。
【0022】
【
図9】
図9は、機械学習パイプラインの概略図である。
【0023】
【
図10】
図10は、10分食事検出器、15分食事検出器、及び20分食事検出器に対する教師あり訓練プロセスを示す図である。
【0024】
【
図11】
図11は、頑健な食事検出結果を提供するための、10分食事検出器、15分食事検出器及び20分食事検出器からの結果のプーリング(pooling)を示すフローチャートである。
【0025】
【
図12】
図12は、インスリンの自動ボーラスを投与するプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本開示は、ユーザがボーラス投与を自己投与している場合に、不十分なボーラス投与に対するセーフガードを提供するための様々なシステム、構成要素及び方法を提示する。本明細書に記載される実施形態は、従来の先行技術のシステム、構成要素及び方法に対する1つ又は複数の利点を提供する、すなわち、薬剤送達アルゴリズムに組み込まれたセーフガードによって、ユーザによるボーラス投与量の自己投与が不十分である場合にユーザにセーフティネットを提供する。
【0027】
本発明の様々な実施形態には、薬物送達デバイス(本明細書では「ポッド」と称される場合がある)を使用して、自律的に、又は電子デバイスから受信した無線信号に従って、ユーザに薬剤を送達するためのシステム及び方法が含まれる。様々な実施形態において、電子デバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートネックレス、薬物送達デバイスに取り付けられたモジュール、又はユーザによって携帯され得るかもしくはユーザの身体に装着され得、薬物の送達の時間及び投与量を計算するアルゴリズムを実行する任意の他のタイプもしくは種類の電子デバイスを含むユーザデバイスであり得る。
【0028】
例えば、ユーザデバイスは、インスリンの送達の時間と投与量を計算する「人工膵臓」アルゴリズムを実行することができる。ユーザデバイスはまた、グルコースレベルなど、ユーザの物理的属性又は状態に関するデータを収集するグルコースセンサなどのセンサと通信することができる。センサは、ユーザの体内又は体上に配置され、薬物送達デバイスの一部であってもよいし、別個のデバイスであってもよい。
【0029】
代替的に、薬物送達デバイスは、センサとユーザデバイスとの間の通信に代えて、又はこれに加えて、センサと通信することができる。通信は、直接(例えば、センサが薬物送達デバイスと一体化されているか、そうでなければ薬物送達デバイスの一部である場合)であってもよいし、遠隔/無線(例えば、センサが薬物送達デバイスとは異なるハウジングに配置されている場合)であってもよい。これらの実施形態において、薬物送達デバイスは、薬剤の送達の時間及び投与量を計算するアルゴリズムの一部又は全部を実行するコンピューティングハードウェア(例えば、プロセッサ、メモリ、ファームウェア等)を含む。
【0030】
図1は、本明細書に記載のシステム及び方法を実施するのに適した例示的な薬物送達システム100の機能ブロック図である。薬物送達システム100は、人工膵臓(artificial pancreas,AP)アプリケーションのような薬物送達アルゴリズムを実装する(及び/又はそのための機能性を提供する)ことができ、インスリンのような薬物又は薬剤の、ユーザへの自動化された送達を支配又は制御する(例えば、血中グルコースの正常レベルである正常血糖値を維持する)。薬物送達システム100は、薬物送達デバイス102(ウェアラブルでもよい)、分析物センサ108(同じくウェアラブルでもよい)、及びユーザデバイス105を含む自動薬物送達システムであってもよい。
【0031】
薬物送達システム100は、任意選択的な例では、スマートウォッチ、パーソナルアシスタントデバイスなどの付属デバイス106も含むことができ、この付属デバイスは、有線又は無線通信リンク191~193のいずれかを介してシステム100の他の構成要素と通信することができる。
【0032】
ユーザデバイス
ユーザデバイス105は、スマートフォン、タブレット、個人用糖尿病管理(PDM)デバイス、専用の糖尿病治療管理デバイスなどのコンピューティングデバイスであってもよい。一例において、ユーザデバイス105は、プロセッサ151、デバイスメモリ153、ユーザインタフェース158、及び通信インタフェース154を含むことができる。また、ユーザデバイス105は、後述するように、ユーザの血糖値を管理し、ユーザへの薬物、薬剤、又は治療薬の送達を制御するためのユーザアプリケーション160など、デバイスメモリ153に記憶されたプログラミングコードに基づく処理を実行するための、及び、炭水化物補正投与量、補正ボーラス投与量の計算などの他の機能を提供するための、プロセッサ151として実装され得るアナログ回路及び/又はデジタル回路を含むことができる。ユーザデバイス105は、薬物送達デバイス102及び/又は分析物センサ108ならびに任意選択的なスマート付属デバイス106のプログラム、設定調整、及び/又は動作制御に使用することができる。
【0033】
プロセッサ151はまた、ユーザアプリ160などのデバイスメモリ153に記憶されたプログラミングコードを実行するように構成されてもよい。ユーザアプリ160は、分析物センサ108、クラウドベースのサービス111、及び/又はユーザデバイス105もしくは任意選択的な付属デバイス106から受信した情報に基づいて薬剤を送達するように動作可能なコンピュータアプリケーションであってもよい。メモリ153はまた、例えば、ユーザインタフェース158(例えば、タッチスクリーンデバイス、カメラなど)、通信インタフェース154、又はそれに類するものを操作するためのプログラミングコードを記憶することができる。プロセッサ151は、ユーザアプリ160を実行するとき、食事の摂取、血糖測定などに関連する表示及び通知を実施するように構成されてもよい。ユーザインタフェース158は、プロセッサ151の制御下にあり、本明細書に記載されるように、食事告知の入力、設定選択の調整などを可能にするグラフィカルユーザインタフェースを提示するように構成されてもよい。
【0034】
具体例では、ユーザアプリ160がAPアプリケーションであるとき、プロセッサ151は、ユーザアプリ160によって管理される糖尿病治療プラン(メモリに記憶され得る)を実行するようにも構成される。上述の機能に加えて、ユーザアプリ160がAPアプリケーションであるとき、糖尿病治療プランに従って、炭水化物補償投与量、補正ボーラス投与量を決定し、基礎投与量を決定する機能をさらに提供することができる。さらに、APアプリケーションとして、ユーザアプリ160は、決定されたボーラス投与量及び基礎投与量を送達するために、通信インタフェース154を介して薬物送達デバイス102に信号を出力する機能を提供する。
【0035】
通信インタフェース154は、1つ又は複数の無線周波数プロトコルに従って動作する1つ又は複数のトランシーバを含むことができる。一実施形態では、トランシーバは、セルラートランシーバ及びBluetooth(登録商標)トランシーバから構成され得る。通信インタフェース154は、ユーザアプリ160によって使用可能な情報を含む信号を受信及び送信するように構成されてもよい。
【0036】
ユーザデバイス105は、ユーザに様々な信号を提供するために、例えばスピーカや振動変換器である1つ又は複数の出力デバイス155をさらに備えることができる。
【0037】
薬物送達デバイス
様々な例示的な実施形態では、薬物送達デバイス102は、薬物送達デバイス(及び例示的な実施形態では、ウェアラブル薬物送達デバイス)に搭載されたメモリ123に記憶された薬剤送達アルゴリズム(MDA)129を実行するコントローラ121によって制御可能な、リザーバ124及び駆動機構125を含み得る。代替的に、コントローラ121は、通信リンク194を介して薬物送達デバイス102に通信され、ユーザデバイス105上で実行されるユーザアプリ160から受信する信号に基づいて、リザーバ124及び駆動機構125を制御するように動作してもよい。駆動機構125は、液体薬剤を出口流体ポートを通して針/カニューレ186に押し出すように、リザーバを通してプランジャを長手方向に並進させるように動作する。
【0038】
別の実施形態では、薬物送達デバイス102は、2つの異なる液体薬物の独立した送達を可能にする、任意選択の第2のリザーバ124-2及び第2の駆動機構125-2を含むこともできる。一例として、リザーバ124にはインスリンを充填し、リザーバ124-2にはプラムリンチド又はGLP-1を充填することができる。いくつかの実施形態では、リザーバ124、124-2のそれぞれは、MDA129の指示の下、コントローラ121によって別々に制御可能であり得る別々の駆動機構125、125-2をそれぞれ備えて構成され得る。リザーバ124、124-2のいずれも、共通の針/カニューレ186に接続されてもよい。
【0039】
薬物送達デバイス102は、任意選択で、ユーザから入力を受け取るための手段及びユーザに情報を出力するための手段を提供するユーザインタフェース127を備えるように構成されてもよい。ユーザインタフェース127は、例えば、発光ダイオード、薬物送達デバイス102のハウジング上のボタン、サウンド変換器、マイクロディスプレイ、マイクロフォン、デバイスの動作又はユーザのジェスチャ(例えば、デバイスのハウジングのタップ)を検出するための加速度計、又はユーザが情報を入力すること、及び/又は薬物送達デバイス102がユーザに提示するための情報(例えば、アラーム信号など)を出力することを可能にするように構成された任意の他のタイプのインタフェースデバイスを含むことができる。
【0040】
薬物送達デバイス102は、液体薬物を送達するためにユーザとインタフェースするための患者インタフェース186を含む。患者インタフェース186は、例えば、薬物をユーザの体内に送達するための針又はカニューレであってもよい(これは、皮下、腹腔内、又は静脈内で行われ得る)。薬物送達デバイス102は、針/カニューレ186をユーザの体内に挿入するための機構をさらに含んでもよく、この機構は、薬物送達デバイス102と一体的であってもよいし、薬物送達デバイス102に取り付け可能であってもよい。挿入機構は、一実施形態では、針/カニューレ186をユーザの皮膚の下に挿入し、その後、カニューレを所定の位置に残して針を後退させるアクチュエータで構成することができる。
【0041】
一実施形態では、薬物送達デバイス102は、通信インタフェース126を含み、これは、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、近距離無線通信規格、セルラー規格などの1つ又は複数の無線周波数プロトコルに従って動作するトランシーバであってもよい。コントローラ121は、例えば、通信インタフェース126を介して、ユーザデバイス105及び分析物センサ108と通信することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、薬物送達デバイス102は、1つ又は複数のセンサ184を備えることができる。センサ184は、コントローラ121に通信可能に結合され、様々な信号を提供する圧力センサ、電力センサなどのうちの1つ又は複数を含み得る。例えば、圧力センサは、患者インタフェース186とリザーバ124との間の流体経路において検出された流体圧力の表示を提供するように構成され得る。圧力センサは、患者インタフェース186をユーザに挿入するためのアクチュエータに結合されてもよいし、アクチュエータと一体的であってもよい。一実施例では、コントローラ121は、流体圧力の表示に基づいて薬物注入速度を決定するように動作可能であり得る。薬物注入速度は、注入速度閾値と比較されてもよく、比較結果は、残存インスリン(insulin onboard,IOB)量又は1日の総インスリン(total daily insulin,TDI)量を決定する際に使用可能であってもよい。一実施形態では、分析物センサ108は、薬物送達デバイス102と一体的であってもよい。
【0043】
薬物送達デバイス102は、コントローラ121、メモリ123、駆動機構125及び/又は薬物送達デバイス102の他の構成要素に電力を供給するための、バッテリ、圧電デバイス、エネルギハーベスティングデバイスなどの電源128をさらに含む。
【0044】
薬物送達デバイス102は、ユーザデバイス105又は任意選択の付属デバイス106からの入力なしに、薬剤の投与量をユーザに送達するのに必要なプロセスを実施及び実行するように構成され得る。より詳細に説明するように、MDA129は、例えば、送達されるべきインスリンの量、IOB、インスリン残量などを決定し、コントローラ121に駆動機構125を作動させてリザーバ124から薬剤を送達させるように動作可能であり得る。MDA129は、分析物センサ108又はユーザアプリ160から受信したデータを入力とすることができる。
【0045】
リザーバ124、124-2は、インスリン、プラムリンチド、GLP-1、インスリンとGLP-1の共製剤、モルヒネ、血圧薬、化学療法薬、不妊治療薬など、自動送達に適した薬物、薬剤、又は治療薬を貯蔵するように構成することができる。
【0046】
薬物送達デバイス102は、ウェアラブルデバイスであってもよく、取り付け位置でユーザの身体に取り付けられてもよく、取り付け位置又はその周辺で、インスリンなどの任意の薬物又は医薬品を含む任意の治療薬をユーザに送達してもよい。薬物送達デバイス102の表面は、ユーザの皮膚への取り付けを容易にするための接着剤を含んでもよい。
【0047】
ユーザデバイス105又は分析物センサ108などの外部デバイスと通信するように構成されているとき、薬物送達デバイス102は、ユーザデバイス105又は分析物センサ108から有線又は無線リンク194を介して信号を受信することができる。薬物送達デバイス102のコントローラ121は、それぞれの外部デバイスからの信号を受信して処理するとともに、糖尿病治療プラン又は他の薬物送達計画に従ってユーザへの薬物の送達を実施することができる。
【0048】
付属デバイス
任意選択の付属デバイス107は、例えばスマートウォッチ(例えば、Apple Watch(登録商標))、スマートグラス、スマートジュエリー、全地球測位システム対応ウェアラブル、ウェアラブルフィットネスデバイス、スマート衣料などのウェアラブルスマートデバイスであってもよい。ユーザデバイス105と同様に、付属デバイス107も、薬物送達デバイス102の制御を含む様々な機能を実行するように構成され得る。例えば、付属デバイス107は、通信インタフェース174、プロセッサ171、ユーザインタフェース178、及びメモリ173を含むことができる。ユーザインタフェース178は、スマート付属デバイス107のタッチスクリーンディスプレイ上に表示されるグラフィカルユーザインタフェースであってもよい。メモリ173は、スマート付属デバイス107のさまざまな機能を操作するためのプログラミングコード、ならびにユーザアプリ160のインスタンス、又は機能を低減したユーザアプリ160の簡易バージョンを記憶することができる。いくつかの実施例では、付属デバイス107は、様々なタイプのセンサも含んでもよい。
【0049】
分析物センサ
分析物センサ108は、コントローラ131、メモリ132、感知/測定デバイス133、任意選択のユーザインタフェース137、電源/エネルギハーベスティング回路134、及び通信インタフェース135を含んでもよい。分析物センサ108は、管理デバイス105のプロセッサ151又は薬物送達デバイス102のコントローラ121に通信可能に結合されてもよい。メモリ132は、情報及びプログラミングコード136を記憶するように構成されてもよい。
【0050】
分析物センサ108は、グルコース、乳酸、ケトン、尿酸、ナトリウム、カリウム、アルコールレベルなどの複数の異なる分析物を検出し、測定値などの検出結果を出力するように構成されてもよい。分析物センサ108は、例示的な実施形態では、5分毎、1分毎などの所定の時間間隔で血糖値を測定するように構成された持続グルコースモニタ(continuous glucose monitor,CGM)であってもよい。分析物センサ108の通信インタフェース135は、測定された血糖値を無線リンク195を介してユーザデバイス105に、又は無線通信リンク108を介して薬物送達デバイス102と通信するためのトランシーバとして動作する回路を有することができる。本明細書では分析物センサ108と呼ぶが、分析物センサ108の感知/測定デバイス133は、グルコース測定素子、心拍数モニタ、圧力センサなどの1つ又は複数の追加の感知素子を含んでもよい。コントローラ131は、独立した専用のロジック及び/又はコンポーネント、特定用途向け集積回路、ソフトウェア命令を実行するマイクロコントローラ又はプロセッサ、ファームウェア、メモリ(メモリ132など)に記憶されたプログラミング命令、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0051】
薬物送達デバイス102のコントローラ121と同様に、分析物センサ108のコントローラ131は、多くの機能を実行するように動作可能であり得る。例えば、コントローラ131は、プログラミングコード136によって、感知及び測定デバイス133によって検出されたデータの収集及び分析を管理するように構成され得る。
【0052】
分析物センサ108は、
図1では薬物送達デバイス102とは分離されて描かれているが、様々な実施形態では、分析物センサ108及び薬物送達デバイス102は、同じユニットに組み込まれてもよい。すなわち、様々な例では、分析物センサ108は、薬物送達デバイス102の一部であり、薬物送達デバイス102と一体的であり、薬物送達デバイス102と同じハウジング内に、又は薬物送達デバイス102のハウジングに取り付け可能なハウジング内に、又はそうでなければそれに隣接して含まれてもよい。このような構成例では、コントローラ121は、ユーザデバイス105、クラウドベースサービス111、別のセンサ(図示せず)、任意選択の付属デバイス106などからのいかなる外部入力なしに、単独で薬剤の適切な送達に必要な機能を実行することができる。
【0053】
クラウドベースのサービス
薬物送達システム100は、クラウドベースのサービス111と通信するか、又はクラウドベースのサービス111からサービスを受けることができる。クラウドベースのサービス111によって提供されるサービスは、血糖測定値、過去のIOB又はTDI、以前の炭水化物補償投与量、及び他の形態のデータなどの、個人データ又は匿名化されたデータを保存するデータストレージを含み得る。さらに、クラウドベースのサービス111は、複数のユーザからの匿名化されたデータを処理して、TDI、インスリン感受性、IOBなどに関連する一般化された情報を提供し得る。クラウドベースのサービス111をシステム100の各デバイス102、105、106、108に結合する通信リンク115は、セルラーリンク、Wi-Fi(登録商標)リンク、Bluetooth(登録商標)リンク、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0054】
通信リンク
無線通信リンク115及び191~196は、公知の無線通信規格又は専用規格を使用して動作する任意のタイプの無線リンクであってもよい。一例として、無線通信リンク191~196は、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、近距離無線通信標準、セルラー標準、又は他の任意の無線プロトコルに基づいた通信リンクを、それぞれの通信インタフェース126、135、154、174を介して提供し得る。
【0055】
動作例
動作例では、ユーザアプリケーション160は、ユーザとの一次インタフェースであるグラフィカルユーザインタフェースを実装し、薬物送達デバイス102の起動及び停止、マニュアルモードのための基礎及びボーラス計算機設定のプログラム、ならびに自動モードに特有の設定のプログラム(ハイブリッド閉ループ又は閉ループ)に使用される。
【0056】
ユーザアプリ160は、大きなテキスト、グラフィック、及び画面上の指示を使用し、セットアッププロセスを通り、システム100を使用をするようにユーザを促すことができるグラフィカルユーザインターフェイス158を提供する。それはまた、ユーザに合わせた基礎インスリン送達プロファイルをプログラムし、薬物送達デバイス102のステータスをチェックし、インスリンのボーラス投与を開始し、患者のインスリン送達プロファイルに変更を加え、システム警告及びアラームを処理し、ユーザが自動モードとマニュアルモードとの間で切り替えることを可能にするためにも使用される。
【0057】
ユーザアプリ160は、1日の異なる時間帯のための基礎プロファイル又は一時的な基礎プロファイルを設定するオプションを使用して、ユーザアプリ160がプログラムされた基礎速度及びボーラス量でインスリンを送達する手動モードで動作するように構成され得る。コントローラ121はまた、ボーラス計算機に入力するために分析物センサ108によって提供されるセンサグルコースデータを使用して、手動モードにおいてセンサ付きポンプとして機能する能力を有する。
【0058】
ユーザアプリ160は、ユーザアプリ160が複数の目標血糖値の使用を支援する自動モードで動作するように構成され得る。例えば、一実施形態では、目標血糖値は、110~150mg/dLの範囲内であり得、その増分は、10mg/dLごと、5mg/dLごと、又は他の増分であり得るが、好ましくは10mg/dLごとの増分である。ユーザが経験することは、現在のセットアップの流れを反映しており、ここでは、医療提供者は、ユーザが基礎レート、グルコース目標値、及びボーラス計算機設定をプログラムすることを支援する。続いて、これらによってインスリン投与パラメータがユーザアプリ160に通知される。インスリン投与パラメータは、薬物送達デバイス102の各使用中に送達される1日の総インスリン(TDI)に基づいて時間経過と共に適合される。一時的な低血糖保護モードは、自動モードにおいて様々な時間の間、ユーザによって実施され得る。低血糖保護モードでは、アルゴリズムは、インスリン送達を減少させ、運動中など、インスリン感受性が高くなると予想される一時的な期間にわたって使用することを意図している。
【0059】
ユーザアプリ160(又はMDA129)は、過去のグルコース測定値及び/又は予測区間(例えば、60分)にわたる予測グルコースに基づいて、定期的なインスリンマイクロボーラスを提供することができる。最適な食後コントロールには、ユーザが現在のポンプ療法と同じ方法で食事ボーラスを与えることを必要とし得るが、ユーザアプリ160の通常の動作は、行わなかった食事ボーラスを補償し、持続的な高血糖を軽減する。ユーザアプリ160は、設定された目標グルコース値を実現し、維持しようとする目標に向けたコントロール戦略を使用し、それによって持続的な高血糖及び低血糖の継続期間を短縮する。
【0060】
いくつかの実施形態では、ユーザデバイス105と分析物センサ108は互いに直接通信しなくてもよい。代わりに、分析物センサからのデータ(例えば、血糖測定値)は、リンク196を介して薬物送達デバイス102に通信され、その後、リンク194を介してユーザデバイス105に伝えられ得る。いくつかの実施形態では、分析物センサ108とユーザデバイス105との間の通信を可能にするために、分析物センサのシリアル番号がユーザアプリ160に入力されなければならない。
【0061】
ユーザアプリ160は、ボーラス計算機の使用を通じて、提案ボーラス投与量を計算する能力を提供することができる。ボーラス計算機は、摂取された炭水化物、直近の血糖測定値(又は、フィンガースティックを使用する場合の血糖測定値)、プログラム可能な補正係数、インスリン対炭水化物比、目標グルコース値、及び残存インスリン(IOB)に基づいて、提案ボーラス投与量を決定する際の補助とするために、ユーザの利便のため提供される。IOBは、任意のマニュアルによるボーラス及びアルゴリズムによって送達されたインスリンを考慮して、ユーザアプリ160によって推計され、IOBは、基礎IOBとボーラスIOBとの間で分割されてもよく、基礎IOBは、アルゴリズムによって送達されたインスリンを考慮し、ボーラスIOBは、任意のボーラス送達を考慮する。
【0062】
実施形態の説明
本発明の主要な実施形態は、自動薬物送達システム100において実施される改善に向けられており、
図1にその一例を示す。この改善は、ユーザが安全な血糖レベルを維持しやすくするためのものである。一実施形態では、改善により、食事イベントの通知時に安全なボーラス投与量をユーザに提供し、その後、MDA129に従って液状薬物のさらに必要な投与を提供することで、ユーザがボーラス投与量を計算して投与する必要性が排除される。他の実施形態では、薬物送達システム100は、食事の前又は後にユーザがインスリンのボーラス投与量を自己投与しなかった場合でも、許容可能なグルコースレベルを自動的に維持する。
【0063】
改善は、例えば、薬物送達システム100の一部として実行されるソフトウェア(すなわち、ユーザアプリ160又はMDA129)の修正によって実施され得る。特定の実施形態において、特定の機能は、ユーザデバイス105上で実行されるユーザアプリ160において実装されてよく、他の機能は、薬物送達デバイス102上で実行されるMDA129において実装されてよい。様々な機能がユーザアプリケーション160とMDA129との間で共有され得るため、本明細書では、ユーザアプリケーション160及びMDA129を「システムソフトウェア」と総称する。
【0064】
一実施形態では、ユーザには、
図3に示す「食事をする(Going to Eat)」ユーザ選択可能ボタン302が提供され、ユーザによって選択されると、システムソフトウェアに食事イベントを示す(すなわち、ユーザが食事をする意図があることを示す)。特定の実施形態では、MDA129は、食事イベントの通知を受け取ると、ボーラス計算機の代わりとなることができ、ユーザが意図する食事の炭水化物プロファイルを入力する必要性を排除することができる。本発明の好ましい実施形態では、ボタン302は、ユーザデバイス105のユーザインタフェース158に表示されてもよく、代替実施形態では、付属デバイス106のユーザインタフェース178に表示されてもよい。他の実施形態では、薬物送達デバイス102がユーザインタフェース127を備える場合、ユーザは、ユーザインタフェース127を介して薬物送達デバイス102に直接的に入力を提供することによって、システムソフトウェアに食事イベントを通知することができる(ただし、この例では、ボタン302のグラフィック表示は表示されない)。ユーザが「食事をする」ボタン302を選択すると(又は、薬物送達デバイス102に食事イベントの指示が提供されると)、安全なボーラスインスリン投与量が計算されてユーザに送達され、安全なボーラスの計算は、ユーザの現在の血糖レベル、残存インスリン(IOB)、所定の過去期間(好ましい実施形態では、30分)のユーザのグルコース傾向、及び夜間モードが有効であるかどうかを考慮する。これらの各考慮事項については、本明細書で後に説明する。
【0065】
食事の前に送達されたインスリンの分析は、
図4に示すヒストグラムに描かれている。ヒストグラムは、典型的なユーザの1日の総インスリン量(TDI)に対する百分率での送達インスリン対密度を示す。安全なボーラス投与量を決定するために様々な考慮によって調整され得る安全な公称インスリン投与量は、ユーザの1日の総インスリン(TDI)に対する百分率として、以下のように表され得る。
【数2】
ここで、
xは望ましい百分率であり、TDIはユーザの1日の総インスリン量である。
一実施形態では xを例えば8%とすることができるが、他の百分率をユーザごとに選択することもできる。例えば、xを5%~15%(端点を含む)の百分率としてもよい。
【0066】
本発明の別の態様において、インスリンの安全な補正投与量(IOB安全必要量)は、ユーザの現在の血糖レベル、グルコース高閾値、及び補正係数(例えば、下記式2に示すように、係数1600をTDIで割ることによってインスリンの単位当たりの血糖レベルの低下を推定する1600ルールに基づく)に基づいて計算され得る。安全な補正投与量は、いくつかの実施形態において、以下のように表され得る。
【数3】
ここで、
BG
currentはユーザの現在の血糖(blood glucose)測定値であり、T
Elevatedは高閾値である。
【0067】
一実施形態ではTElevatedには任意の値を用いてもよいが、例えばTElevatedを150mg/dlに設定してもよい。高閾値は、安全な公称インスリン投与量及びIOBと組み合わせて、安全なボーラス投与量を決定するために使用される。安全な補正投与量には2つの目的がある。第一に、インスリンの必要量を安全にすることであり、第二に、ユーザが「食事をする」ボタン302を選択することによって食事を摂取する意思を示した後の、食事の摂取の遅延に対してのある程度の柔軟性を持たせることである。
【0068】
CGMからのデータが欠落している場合は、過去30分間の最小CGM値をBG
currentとして使用することができる。過去30分間の有効なCGMデータがない場合、IOB安全必要量は以下のように計算できる。
【数4】
ここで、
T
Lowは低閾値である。
【0069】
低閾値には任意の値を用いてもよいが、TLowの値は、特定の実施形態では、100ml/dl、70ml/dl又は40ml/dlに設定されてもよい。低閾値は常に高閾値より低いので、低閾値を使用すると、IOB安全必要量は負になり、総インスリンを減少させる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ユーザが「食事をする」ボタン302を押した後に計算されて送達される安全なボーラス投与量は、ボタン302を選択する前の所定の時間期間のユーザの血糖測定値の傾向に依存する傾向補正係数(CFT)によってさらに調整され得る。
特定の実施形態では、所定の時間期間は、例えば、30分とすることができる。本発明の好ましい実施形態では、血糖測定値は、5分毎にCGMから定期的に受信されるが、他の実施形態では、他の期間が使用されてもよい。CGM測定値の受信が5分間隔で行われる実施形態では、前30分の時間期間により、現在の血糖測定値BGiから始まる7つの血糖測定値が得られる。
【0071】
傾向は、経時的な血糖測定値の粗い傾き(coarse slope)及び粗い曲率(coarse curvature)を計算することによって検出することができる。一実施形態では、傾向は、まず、15分ブロックにわたる血糖測定値の範囲の平均を以下のように計算することによって計算され得る。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0072】
その後、粗い傾きと粗い曲率は次のように定義される。
【数9】
【数10】
【0073】
特定の実施形態では、傾向補正係数CF
Tは、ルールセットを用いて決定することができる。任意のルールセットを使用することができるが、例示的な実施形態では、ルールセットはCF
Tを以下のように決定することができる。
【数11】
【数12】
【数13】
【0074】
所定の過去の期間中の1つ又は複数のCGM値が欠落しているか、又は利用できない場合、データ品質測定基準を使用して、傾向判定を行うために十分なCGMデータが利用可能かどうかを判定し得る。このような測定基準は、例えば、最後の30分間にx%(例えば、30%)を超えるデータ点が欠落していないことであってよい。データ品質が許容できない場合、傾向補正は行われずCFTは1に設定される。
【0075】
食事イベントの通知によりトリガーされたボーラス投与の直前に、ユーザが低血糖イベントを経験している場合(例えば、1時間以内又は閾値時間期限内の低血糖)、安全なボーラス投与量を減少させる、低血糖からのリバウンド係数(HF
Rebound)を適用できる。低血糖リバウンド係数は、以下のように指定することができる。
【数14】
ここで、
いくつかの実施形態では、z=0.75であり、他の実施形態では他の定数である。
【0076】
いくつかの実施形態では、夜間モード設定が提供され得る。夜間モード設定が有効であれば、低血糖のリスクをさらに低減するために、安全なボーラス投与量がさらに低減される。一実施形態では、ユーザには、
図5に示す夜間モードユーザインタフェース画面500が提供される。この画面には、「夜間モードを設定(Set Nighttime Mode)」ユーザ選択可能ボタン502が含まれ、このボタンがユーザによって選択されると、夜間モードが有効であることがシステムソフトウェアに示される。ユーザは、開始時間504と終了時間506を設定して、夜間モードがいつ実施されるかを示すことができる。
【0077】
代替実施形態では、ポンプ上の慣性測定ユニット(inertial measurement unit,IMU)センサを使用することで、夜間モードを自動的に有効にすることができる。IMUは、加速度計、ジャイロ、及び多くの場合、磁力計のうちの1つ又は複数を備える。これらのセンサは共に、x、y、z軸のうちの1つ又は複数におけるデバイスの動き、向き(又は傾き)を決定することができる。ランニング、水泳、又は睡眠などの持続的な活動に対して、IMUは各軸の信号活動の固有のプロファイルを生成する。これらの信号を解読することで、活動に対応付けられる固有の識別特性が特定される。したがって、ユーザが睡眠中であると判定された場合、3つの軸に沿って固有の識別特性が検出され、タイムゾーン情報とともに、ユーザの「夜間」モードの判断がされ得る。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、夜間モードユーザインタフェース画面500は、ユーザデバイス105のユーザインタフェース158に表示されてもよく、又は代替実施形態では、付属デバイス106のユーザインタフェース178に表示されてもよい。他の実施形態では、薬物送達デバイス102がユーザインタフェース127を備える場合、ユーザは、ユーザインタフェース127を介して薬物送達デバイス102に直接夜間モードを開始することができる(ただし、この例では、夜間モードユーザインタフェース画面500は表示せず)。
【0079】
夜間モードが有効で、「食事をする」ボタン302が押された場合、夜間係数(nighttime factor,NF)は、例えば、0.6から0.9の間で変化し得るように設定され得る。いくつかの実施形態では、デフォルトとして0.75の値を設定することができる。過去に、現在の値が低血糖のさらなるリスクを生じさせていた場合には、値を減らすことができる。逆に、過去に血糖が高まった場合には、現在の値を増加させることができる。
【0080】
図6に示すフローチャートは、安全なボーラス投与量が送達された過去の3時間にわたるユーザの血糖レベルの測定値に基づいて、NFに対する調整を決定するために使用することができる。現在のNFで開始し、安全なボーラス投与量が送達され、血糖が所定の時間期間、例えば3時間監視される。血糖が高まった場合、現在のNFは、次の計算のために、例えば10%増加される。高まった血糖(Elevated blood glucose)は、いくつかの実施形態では、3時間時点で設定値を80mg/dlより大きい値だけ超える血糖、として定義され得る。他の値、例えば、3時間時点で設定値を50mg/dl、60mg/dl、70mg/dl、90mg/dl、又は100mg/dl超える値が使用されてもよい。他の実施形態では、他の基準を使用してもよい。血糖が高まった血糖ではない場合は、血糖が低設定値を下回ったかどうかが判定される。そうでない場合、現在のNFは変更されない。ただし、血糖が当該設定値を下回った場合、NFは、次の計算のために、例えば10%減じられ得る。
【0081】
特定の実施形態では、安全なボーラス投与量で表される液状薬物の量を変更するため、傾向係数、低血糖リバウンド係数、及び夜間係数の任意の組み合わせを安全なボーラス投与量に適用することができ、安全なボーラス投与量は、ボタン302をユーザが選択することに応答してユーザに送達される。先に説明した全ての係数を使用する場合、安全なボーラスインスリン投与量は、以下のように表すことができる。
【数15】
ここで、
CF
T、HF
Rebound、及びNFは、安全のためのxの値を変更する。様々な実施形態において、安全なボーラス投与量は、安全なボーラス投与量を計算するために、傾向係数、低血糖リバウンド係数、及び夜間係数、又はそれらの任意の組み合わせ(これらの係数が全て無い場合も含む)を考慮することができる。
【0082】
IOBは、前インスリン送達からの残存インスリン(insulin-on-board)である。IOBが負の場合、0に丸められる。
【0083】
安全なボーラス投与量は、アルゴリズムによる(基礎)インスリンが安全なボーラス投与量を補償するために安全に増加することができる閉ループシステムに最適であり、閉ループシステムにおける低血糖のリスクを大幅に低減する。安全なボーラス投与量が食事イベントの通知時に投与された後、薬物送達デバイスのシステムソフトウェア100は、MDA129によって具現化されるアルゴリズムによる基礎インスリン送達に従って、ユーザの血糖レベルの食後のさらなる変動を補償する。
【0084】
xの値が減少すると、式(14)に従って複数回インスリンが投与され得る。例えばxは、先に説明した様々な係数の適用により3.5%に設定又は低減され、最初のボーラスインスリン送達は、ユーザが「食事をする」ボタン302を選択したときに投与され、2回目のボーラスはその10分後に投与され、3回目のボーラスはその20分後に投与され得る。安全にインスリンを投与するために、血糖の傾向を利用することができる。IOBは過剰なインスリン投与に対して安全である。
【0085】
未ボーラス又はボーラス不足の食事の検出-本発明のこの態様では、過去のグルコース履歴を評価し、自己ボーラス投与を介して手動で補償されなかったか、又はボーラス不足であった食事をユーザがしたかどうか、及びユーザがボタン302の選択によって薬物送達システム100に食事及びイベントを通知しなかった状況について判定する方法が開示される。この実施形態の拡張において、未補償又は補償不足の食事が検出される場合、システムソフトウェアは、ユーザに測定基準を提供し、また、それらの期間中の高グルコース濃度に対するMDA129の積極性を増加させることができる。
【0086】
典型的な、未ボーラス又はボーラス不足の食事は、ユーザのグルコースの有意な増加、及び基礎を超える自動インスリン送達の有意な増加をもたらす可能性がある。本発明のこの態様の1つの実施形態では、システムソフトウェアは、以下のように、各24時間期間にわたっての5分の移動増分での5時間ウィンドウをレビューすることができる。
【数16】
【数17】
ここで、
W
postは、直近5時間ウィンドウ間に投与されたインスリンの総量であり;
G
postは直近5時間ウィンドウのグルコース測定値の平均値であり;
I
algは、薬物送達アルゴリズムによって推奨されるインスリンであり;
228は、1日における5時間ウィンドウの数であり;
60は、5時間における5分のサイクルの数である。
【0087】
当業者であれば理解できるように、上式の定数は調整可能なパラメータである。方程式を評価する周期間隔が異なれば、あるいはウィンドウサイズが異なれば、適切に異なる定数を使用することになる。
【0088】
もし W
postと G
postが特定の基準を満たす場合、その特定期間のすべてのデータ点は、未報知の食事の検出の定義を満たすとみなすことができる。一実施形態では、これらの基準は例えば以下のようになる。真偽
【数18】
【0089】
ここで、閾値は、直近の5時間ウィンドウにわたって送達されるユーザのTDIベースの基礎量の少なくとも2倍であり、直近の5時間ウィンドウにわたってのユーザの平均グルコースは180より大きい。この実施形態で導入された特定の数値は、すべて可変パラメータであることに注意することが重要である。例えば、30分増分ごとに6時間ウィンドウをレビュー、又は15分増分ごとに3時間のウィンドウをレビュー、又は他の値でのレビューなど、移動ウィンドウの増分も総期間も変化し得る。さらに、選択基準の閾値も変化し得る。例えば、総増加自動インスリン送達の閾値は、基礎送達の2倍と比較して、1.5倍、3倍、又は4倍とすることができる。また、最終グルコース濃度は、150mg/dL、250mg/dL、ユーザの最終グルコース目標値、その他の値など、異なる値として変化し得る。
【0090】
各移動ウィンドウ中のユーザの平均グルコース濃度は、検出の関連閾値とともに、終了グルコース条件の追加として、又はその代替として、条件として含めることもできる。例えば、移動ウィンドウ中の平均グルコースが150mg/dLより高いことを条件とすることができる。
【0091】
システムは、この期間中における食事の二元的な検出ではなく、各条件が超過される程度に応じて食事の発生の確率的計算を代わりに提供することができる。例えば、システムは、自動化インスリン送達が5時間ウィンドウにわたって基礎量の1.5倍を超えた場合、未報知の食事又はボーラス不足の食事が発生した可能性を50%として提供することができ、送達がこの同じ期間中に基礎量の3倍を超えた場合、可能性は100%に上昇し得る。各条件は、食事送達の確率を提供することができ、食事の発生確率の最終決定は、すべての条件にわたる食事の確率の評価の平均、合計、又は他の組み合わせとして計算することができる。
【0092】
未報知の食事が検出された各期間について、システムは、ユーザが未報知の食事をしたことシステムが検出したことを、ユーザに知らせることができる。さらに、システムソフトウェアは、ユーザがその量のボーラスを自己投与していたならば、ユーザのグルコース制御結果が改善していたであろう、期間の終わりにおけるユーザの最終グルコースに基づく推奨インスリン量を提供できる。
【数19】
【0093】
さらに、システムソフトウェアは、追加の必要インスリンに基づいて、この期間中のQ:R比(インスリン偏差-対-グルコース偏差の相対コスト)を以下のように減少させることによって、この期間の最初の90分の間のグルコース偏差に対してより積極的に応答することができる。
【数20】
【0094】
本発明の別の態様では、機械学習アプローチを用いて食事の検出を行うことができる。この実施形態では、血糖レベルの特徴的な上昇プロファイルを検出する機械学習モデルに基づいて食事を検出することができる。食事検出モデルは、好ましくは、閉ループ制御データセットで学習される。既定の上昇特性を有する閉ループデータからの血糖プロファイルは、訓練データとして使用されるようにラベル付けされる。一実施形態では、上昇特性は、例えば、15分以内に20ml/dl、30分以内に40ml/dl、60分以内に60ml/dlとすることができる。
【0095】
一実施形態では、最初の血糖値上昇後10分、最初の血糖値上昇後15分、最初の血糖値上昇後20分から、時間を遡った2時間分の血糖値データを、食事を検出するための決定木を用いて訓練する。
【0096】
図7は、食事の検出に使用される血糖レベルのプロットにかかるスライディングウィンドウを示している。この例では、スライディングウィンドウがBG点23、24、25、及びそれ以降に達したときに、時間を通してウィンドウが指標化するにつれて、食事が検出される。
図8は、血糖上昇と食事検出の関係を示している。食事が3回の日のパターンを示す。
【0097】
食事を検出するために、血糖値データから特定の特徴が検出される。一実施形態では、血糖データの2時間の履歴が維持される。この実施形態では、血糖は5分ごとにサンプリングされ、25のデータ点が得られる。異なる履歴期間又は血糖レベルのサンプリングの異なる間隔が使用される実施形態では、異なる数のデータ点が分析に利用可能となる。本発明の一実施形態では、以下の特徴、すなわち、15分平均値(直近2時間の履歴の間の15分毎の平均血糖値);範囲の特徴(15分毎の血糖レベルの差);デルタ値(血糖値のプロットの粗い傾きを提供する、15分平均値の差);傾き値(血糖レベルのプロットの傾きの連続する値間の差);及び二階導関数(血糖レベルのプロットの傾きの差)が検出され得る。本発明の他の実施形態では、他の特徴を使用してもよい。
【0098】
訓練フェーズでは、15分以内に20ml/dl、30分以内に40ml/dl、60分以内に60ml/dlといった上昇特性を持つ血糖データが特定される。特定されたデータは機械学習モデルに提示され、食事検出ルールが開発される。グルコースレベルの食後上昇を認識するために、血糖曲線の完全な上昇部分が使用されるが、一実施形態では、上昇する血糖曲線の10分、15分、20分(及び各時点でのそれ以前の合計25個のデータ点の値)のみが機械学習システムに提示されることに留意すべきである。目的は、最小限の待ち時間で食事を検出することである。
【0099】
機械学習パイプラインは
図9に描かれており、10分食事検出分類器、15分食事検出分類器及び20分食事検出分類器のデータ生成を示している。食事のBG上昇点は、低閾値及び高閾値の内側になければならない。10分分類器は2時間のデータを抽出するために10分先と110分前とを参照し15分分類器は2時間のデータを抽出するために15分先と105分前とを参照し20分分類器は2時間のデータを抽出するために20分先と100分前とを参照する。
図10は、10分食事分類器、15分食事分類器及び20分食事分類器の教師あり訓練を示す。
【0100】
特定の実施形態では、決定木を食事の検出に使用することができる。一実施形態では、食事は3つの異なる遅延期間を使用して検出される。これらは、10分遅延検出器、15分遅延検出器及び20分遅延検出器である。10分遅延検出器、15分遅延検出器及び20分の遅延検出器は、それぞれ現在時刻の10分前、15分前及び20分前に、食後血糖値の上昇が始まったと仮定して、血糖値の上昇を認識する。食事検出決定木で使用される正確なルールは、本発明の異なる実施形態に基づいて異なる場合がある。さらに、異なる時間帯を使用する検出器を開発することもできる。
【0101】
食事検出をより頑健(robust)にするために、モデルはカスケード接続(cascated)及び/又は組み合わされてもよい。新しい血糖値がCGM108から受信されると、各5分間隔で、10分食事検出器、15分食事検出器及び20分食事検出器が起動され、食事が検出される。これらの結果は合成され、頑健な食事検出モデルとなり、その例を
図11に示す。1100において、MDA129の直近のサイクルが開始し、1102において、直近の血糖測定値が受信され、直近の2時間の履歴に追加される。10分遅延食事検出器1104、15分遅延食事検出器1106及び20分遅延食事検出器1108は、血糖測定値の2時間履歴。1110において、遅延食事検出器1104、1106及び1108のそれぞれからの結果がプールされ、1112において、食事検出結果が出力される。遅延食事検出器1104、1106及び1108からの結果の組み合わせに基づいて、食事検出が「真(TRUE)」であるか「偽(FALSE)」であるかを判定するために、1110においてプール分類器によって様々なルールが実施され得る。
【0102】
一例として、現在のサイクルで10分遅延食事検出器が真を返した場合、次のサイクルで15分遅延食事検出器が真を返し(このサイクルで10分遅延食事検出器も真を返すことが考えられる)、次のサイクルで20分遅延食事検出器が真を返すことが予想される。頑健性のために、これらの検出器が真を返し得る期間が許容され、
図11に示すように、10分検出器、15分検出器、及び20分検出器の結果を引き出すことによって、最終的な食事検出結果が合成される。
【0103】
自動ボーラス投与-特定の実施形態では、未ボーラス又はボーラス不足の食事が検出されると、検出に使用される方法にかかわらず、インスリンの自動ボーラス投与量が射出される。
図12は、自動ボーラスを投与すべきかどうかを決定するための論理フローを示す。1200において、サイクルが開始する。前述のように、本発明の好ましい実施形態では、各サイクルの長さは5分であり、各5分サイクル中にCGMから新しい血糖測定値が受信される。本発明の特定の実施形態では、新しいBG測定値の受信は、次のサイクルの開始をトリガする。1202において、直近の血糖測定値が受信され、1204において、直近に受信された測定値を含む直近の血糖測定値に対して、先に説明した食事検出器が実行される。1206において、食事が検出された場合、1208において前述したように自動ボーラスが投与される。食事が検出されなければ、制御は1200に戻り、次のサイクルの開始を待つ。
【0104】
自動ボーラスは、公称インスリン送達量を有してもよい。一実施形態では、自動ボーラスは、上記で詳細に説明した安全なボーラス投与量であってもよい。他の例示的な実施形態では、必要インスリン量は、公称的に、ユーザのTDIの百分率(例えば、8%)となる。このインスリン量は、安全IOB必要量(safe IOB requirement,IOB
SR)によって補正のために調整され、現在のIOBによって調節される。安全IOB必要量は、血糖を補正するために必要なインスリンを示す(ただし、安全性を向上させるために、インスリン設定値を使用する代わりに、例えば150mg/dlなどの高値を使用してもよい)。
【数21】
ここで、
【数22】
ここで、
CFは1600/TDIとして定義される補正係数(correction factor)である。
【0105】
自動ボーラスのトリガー前に手動ボーラスが投与された場合、IOBがインスリン送達を調節する。IOBが十分に高ければ、自動ボーラスは0単位のインスリンを投与することができる。一方、ユーザがボーラス不足であれば、IOBに従って適量のインスリンが供給される。
【0106】
自動ボーラスは、食後の血糖補償のために安全な量のインスリンを送達する。コアの閉ループ制御アルゴリズムは、ユーザに関して範囲内にある時間を最大化するために基礎インスリンの適切な量を提供し続ける。
【0107】
以下の実施例は、ユーザに送達されるべき薬物の取り得る量の探索空間の段階的探索を提供することにより、薬物の最適送達を決定する方法を提供するための、本明細書に開示されるシステム及び方法の様々な実施形態に関する。
【0108】
実施例1は、本発明の第1の実施形態の方法であり、食事イベントの通知を受信する工程と、ユーザに送達されるべき安全なボーラス投与量を計算する工程と、安全なボーラス投与量を送達する工程と、ユーザの血糖レベルを緩和する工程と、薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムによってユーザの血糖レベルのさらなる変動を補償する工程とを含む。
【0109】
実施例2は、実施例1、又は本明細書で開示される他の実施例の拡張であり、食事イベントの通知は、ユーザインタフェースのボタンをユーザが選択することを含む。。
【0110】
実施例3は、実施例1、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量は、安全な公称インスリン送達量及び現在の残存インスリンの関数として計算される。
【0111】
実施例4は、実施例3、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全な公称インスリン送達量は、ユーザの1日の総インスリン必要量の百分率として計算される。
【0112】
実施例5は、実施例4、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量は、ユーザの現在の血糖レベルを考慮する血糖補正係数によって修正される。
【0113】
実施例6は、実施例5、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量は、過去の所定期間のユーザの血糖値の傾向に対して補正する傾向補正係数によって修正される。
【0114】
実施例7は、実施例6、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、傾向補正係数は、過去の所定期間のユーザの血糖値の傾き及び曲率に基づく。
【0115】
実施例8は、実施例5、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量が、安全なボーラス投与量の送達前の所定期間内にユーザが低血糖イベントを経験した場合に、安全なボーラス投与量を所定量減少させる低血糖からのリバウンド係数によって修正される。
【0116】
実施例9は、実施例5、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量は、ボーラス投与量が夜間期間中に投与される場合、計算量だけ安全なボーラス投与量を減少させる夜間係数によって修正される。
【0117】
実施例10は、実施例9、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、過去の発生において、夜間係数の現在値が低血糖の追加リスクを生じさせた場合には、現在値が下げられ、又は過去の発生において、夜間係数の現在値でユーザの血糖値が高まった場合には、現在値が上げられる。
【0118】
実施例11は、実施例3、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量は、血糖補正係数、傾向補正係数、低血糖からのリバウンド係数、及び夜間係数の任意の組み合わせによって修正することができる。
【0119】
実施例12は、実施例1、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量を送達することが、食事イベントの通知後の所定の時間に送達される複数の段階的投与量に安全なボーラス投与量を分割することをさらに含む。
【0120】
実施例13は、実施例12、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、安全なボーラス投与量が各段階的送達で再計算される。
【0121】
実施例14は、実施例1、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事イベントの通知は、持続グルコースモニタから受信したユーザの血糖レベルに基づいて、食事の摂取を自動的に検出することを含む。。
【0122】
実施例15は、実施例14、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事の摂取を自動的に検出することは、薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムによって計算される液状薬物の自動送達の有意な増加におけるユーザの血糖レベルの有意な増加の検出に基づく。
【0123】
実施例16は、実施例15、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、ユーザの血糖レベルの増加及び液状薬物の自動送達の増加が、持続血糖モニタからの新しい血糖測定値の受信ごとに評価される所定の移動ウィンドウにおいて評価される。
【0124】
実施例17は、実施例14、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事の摂取の自動検出は、食事検出分類子として訓練された1つ又は複数の機械学習モデルによるユーザの血糖値のプロットの分析に基づいている。
【0125】
実施例18は、実施例17の拡張、又は本明細書に開示される他の実施例であり、1つ又は複数の機械学習モデルは、現在時刻より前の様々な時刻に始まるユーザの血糖レベルの食後上昇を検出するように訓練される。
【0126】
実施例19は、実施例18、又は本明細書に開示される他の例の拡張であり、1つ又は複数の機械学習モデルは、10分遅延検出器、15分遅延検出器、及び20分遅延検出器を備える。
【0127】
実施例20は、実施例17、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、1つ又は複数の機械学習モデルがカスケード接続されて、食事摂取の最終決定を提供する。
【0128】
実施例21は、実施例14、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事の摂取の自動検出は、1つ又は複数の決定木によるユーザの血糖レベルのプロットの分析に基づく。
【0129】
実施例22は、実施例21、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、決定木は、血糖値の上昇が現在時刻より前の様々な時刻に始まったという仮定を用いて、血糖レベルの上昇を認識するために複数の遅延検出器を使用する。
【0130】
実施例23は、実施例22、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、複数の遅延検出器は、10分遅延検出器、15分遅延検出器及び20分遅延検出器を含む。
【0131】
実施例24は、実施例22、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、複数の遅延検出器の結果がプールされ、最終的な食事検出判定が合成される。
【0132】
実施例25は、実施例14、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事イベントの通知に応答して、本方法は、食事の内部未報知の検出をユーザに通知することと、推奨ボーラス投与量をユーザに提供することとをさらに含む。
【0133】
実施例26は、実施例25、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事イベントの通知に応答して、本方法は、推奨ボーラス投与量に基づいて、グルコース偏差に対してより積極的に反応するように薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムを調整することをさらに含む。
【0134】
実施例27は、本発明の第2の実施形態の方法であって、以下の工程、すなわち、持続グルコースモニタから受信したユーザの血糖レベルに基づいて食事の摂取を自動的に検出することと、未報知の食事の検出をユーザに通知することと、推奨ボーラス投与量をユーザに提供することと、推奨ボーラス投与量に基づいてグルコース偏差に対してより積極的に反応するように薬物送達システムの薬物送達アルゴリズムを調整することとの工程を含む。
【0135】
実施例28は、第3の実施形態のシステムであって、プロセッサと、プロセッサ上で実行され、食事イベントの通知を受信する機能と、ユーザに送達されるべき安全なボーラス投与量を計算する機能と、安全なボーラス投与量を送達する機能と、ユーザの血糖レベルを監視する機能と、薬物送達システムの薬剤送達アルゴリズムに従って、ユーザの血糖値のさらなる変動を補償する機能とを提供する、ソフトウェアとを備える。
【0136】
実施例29は、実施例28、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、食事イベントの通知は、薬物送達システムのユーザインタフェースのボタンをユーザが選択することを含む。
【0137】
実施例30は、実施例28、又は本明細書に開示される他の実施例の拡張であり、持続グルコースモニタをさらに備え、食事イベントの通知は、持続グルコースモニタから受信したユーザの血糖レベルに基づいて、食事の摂取を自動的に検出することを含む。
【0138】
本明細書で説明する技術のソフトウェアに関連する実装としては、ファームウェア、特定用途向けソフトウェア、又は1つ若しくは複数のプロセッサによって実行され得る任意の他のタイプの、コンピュータ可読命令が含まれ得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読命令は、非一時的なコンピュータ可読の媒体を介して提供され得る。本明細書で述べる技術のハードウェアに関連する実装には、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)、及び/又はプログラマブルロジックデバイス(PLD)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、本明細書で述べる技術、及び/又は本明細書で述べるいずれのシステムもしくは構成コンポーネントも、1つ又は複数のメモリコンポーネント上に記憶されたコンピュータ可読命令を実行するプロセッサを用いて実行され得る。
【0139】
本発明が関連する技術分野の当業者は、本発明の多くの変更及び適応を実現し得る。調整可能なパラメータの値を含む、本明細書で提供される実装形態は、例示的なものとみなされるべきであり、本発明をいかなる意味においても限定するものではない。当業者であれば理解するように、本明細書で述べた実装形態の多くの変形が可能であり、本発明の範囲内に入る。さらに、本明細書で説明した様々な実施形態の特徴は、相互に排他的なものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そのような組み合わせ又は順列が本明細書で明示されなかったとしても、様々な組み合わせ及び順列で存在し得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示される方法及び装置は、本発明の限定としてではなく、その例示として捉えられるべきである。
【国際調査報告】