(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】加齢における分解性プロテアーゼ活性を阻害する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20250117BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250117BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20250117BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250117BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250117BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20250117BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/195
A61P25/28
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P21/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/06
A61P9/12
A61P9/00
A61P21/04
A61P43/00 101
A61P25/02
A61P13/12
A61P1/16
A61P31/14
A61P31/20
A61P43/00 107
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542237
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 US2023010998
(87)【国際公開番号】W WO2023141125
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】シュミット-シェーンバイン,ヘルト
(72)【発明者】
【氏名】デラーノ,フランク エイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084DC32
4C084MA24
4C084MA52
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA061
4C084ZA161
4C084ZA181
4C084ZA201
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA941
4C084ZB261
4C084ZC201
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA01
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA44
4C206MA72
4C206MA78
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA16
4C206ZA20
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA75
4C206ZA94
4C206ZB26
4C206ZC20
(57)【要約】
対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積を覆す、細胞損傷を覆す、および/または細胞外マトリックスを保つ方法であって、臓器に対する損傷のリスクがある対象を選択するステップ、および治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。セリンプロテアーゼ阻害剤は、経口投与される競合的阻害剤であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積を覆す方法であって、
(a)前記臓器においてセリンプロテアーゼの蓄積を有するか、または蓄積のリスクがある対象を選択するステップ、および
(b)治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップ
を含み、それによって前記対象の前記臓器における前記セリンプロテアーゼの蓄積を覆す、前記方法。
【請求項2】
対象の臓器における細胞損傷を覆す方法であって、
(a)前記臓器に対する細胞損傷を有するか、または細胞損傷のリスクがある対象を選択するステップ、および
(b)治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップ
を含み、それによって前記対象の前記臓器における細胞損傷を覆す、前記方法。
【請求項3】
対象の臓器における細胞外マトリックスを保つ方法であって、
(a)前記臓器において細胞外マトリックスを喪失しているか、または喪失のリスクがある対象を選択するステップ、および
(b)治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップ
を含み、それによって前記対象の前記臓器における細胞外マトリックスを保つ、前記方法。
【請求項4】
前記対象が少なくとも40歳である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が少なくとも50歳である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が少なくとも60歳である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、ショックおよび/または敗血症性ショックを発症するリスクを有しない、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象がHIVを有しない、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記臓器が、脳、脊髄、心臓、腎臓、筋肉、肝臓、および肺からなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記臓器が、脳、心臓、および筋肉からなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記臓器が脳である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
選択するステップが、脳疾患または脳の病状を有する対象を選択するステップを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記脳疾患または脳の病状が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症を含む認知症、てんかんまたは他の発作性障害、精神障害、多発性硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性外傷性脳症、長期COVID関連認知症、および脳卒中からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記臓器が心臓である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象を選択するステップが、心疾患または心臓の病状を有する対象を選択するステップを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記心疾患または心臓の病状が、冠動脈心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不全、心不整脈、弁膜症、高血圧、心臓不整脈、心内膜炎、心膜疾患、および心筋症からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記臓器が筋肉である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
対象を選択するステップが、筋疾患または筋肉の病状を有する対象を選択するステップを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記筋疾患または筋肉の病状が、線維筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎を含む筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、横紋筋融解症、心筋症、サルコペニア、シャルコー・マリー・トゥース病、多発性硬化症、ミオパチー、末梢神経障害、ならびに脊髄性筋萎縮症からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記臓器が腎臓である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
リスクのある対象を選択するステップが、腎疾患または腎臓の病状を有する対象を選択するステップを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記腎疾患または腎臓の病状が、慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、急性腎障害、腎結石、腎盂腎炎を含む腎感染症、腎嚢胞、および腎がんからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記臓器が肝臓である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
対象を選択するステップが、肝疾患または肝臓の病状を有する対象を選択するステップを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記肝疾患または肝臓の病状が、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、肝がん、胆管がん、肝腺腫、非アルコール性脂肪性肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記セリンプロテアーゼが、トリプシン、スブチリシン、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記セリンプロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシン、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記セリンプロテアーゼがトリプシンを含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が競合的阻害剤である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、メシル酸ナファモスタット(Futhan)、メシル酸カモスタット(FOY 305)、メシル酸ガベキサート(FOY)または誘導体、セリンプロテアーゼインヒビターKazal-1型(SPINK1)、アプロチニン、トラネキサム酸、ウリナスタチン、グランザイムA、グランザイムB、UAMC-00050、4-(2アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、ダイズトリプシンインヒビター、メプリン阻害剤、セトメラノチド、アルファ-1-アンチトリプシン、およびセルピンからなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤がトラネキサム酸を含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量が、対象の消化酵素活性の10%未満である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量が10μM未満である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量が5μM未満である、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、経腸投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、またはテレメトリーで制御される外部もしくは埋め込み注入ポンプによって投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が経口投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、テレメトリーで制御される注入ポンプによって投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、リポソーム組成物として、またはナノ粒子カプセル封入物として投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が点眼薬として投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記テレメトリーで制御される注入ポンプが前記臓器に向けられる、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が1週間よりも長く投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が2週間よりも長く投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が4週間よりも長く投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
セリンプロテアーゼ阻害剤を含む、加齢または加齢性の病状の処置のための医薬組成物。
【請求項45】
前記加齢性の病状が、脳、脊髄、心臓、腎臓、筋肉、肝臓、および肺からなる群から選択される臓器に影響を及ぼす、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記加齢性の病状が、脳、心臓、および筋肉からなる群から選択される臓器に影響を及ぼす、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記臓器が脳である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記加齢性の病状が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症を含む認知症、記憶、平衡、感覚、疼痛、てんかんまたは他の発作性障害を含むがこれらに限定されないニューロン機能の加齢性喪失、精神障害、多発性硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、および一過性脳虚血発作からなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記臓器が心臓である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記加齢性の病状が、冠動脈心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不全、弁膜症、高血圧、心臓不整脈、心内膜炎、心膜疾患、および心筋症からなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記臓器が筋肉である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記加齢性の病状が、線維筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎を含む筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、横紋筋融解症、心筋症、サルコペニア、シャルコー・マリー・トゥース病、多発性硬化症、ミオパチー、末梢神経障害、ならびに脊髄性筋萎縮症からなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記臓器が腎臓である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記加齢性の病状が、急性腎障害、腎結石、腎盂腎炎を含む腎感染症、腎嚢胞、腎透析を必要とする対象、および腎がんからなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記臓器が肝臓である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記加齢性の病状が、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、肝がん、胆管がん、肝腺腫、非アルコール性脂肪性肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が競合的阻害剤である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、メシル酸ナファモスタット(Futhan)、メシル酸カモスタット(FOY 305)、メシル酸ガベキサート(FOY)または誘導体、セリンプロテアーゼインヒビターKazal-1型(SPINK1)、アプロチニン、トラネキサム酸、ウリナスタチン、グランザイムA、グランザイムB、UAMC-00050、4-(2アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、ダイズトリプシンインヒビター、メプリン阻害剤、セトメラノチド、アルファ-1-アンチトリプシン、およびセルピンからなる群から選択される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤がトラネキサム酸を含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、対象の消化酵素活性の10%未満で投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が10μM未満である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が5μM未満である、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、経腸投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、またはテレメトリーで制御される外部もしくは埋め込み注入ポンプによって投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が経口投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、テレメトリーで制御される注入ポンプによって投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、リポソーム組成物またはナノ粒子として投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が点眼薬として投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記テレメトリーで制御される注入ポンプが前記臓器に向けられる、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が1週間よりも長く投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項70】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が2週間よりも長く投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が4週間よりも長く投与される、前記の請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月18日に出願された米国仮特許出願第63/300,409号の優先権を主張する。先行出願の開示は、本出願の開示の一部と考えられ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン)は、細胞外細胞マトリックスタンパク質の切断(コラーゲン分解)および膜受容体切断(例えば、インスリン受容体の切断、インスリン受容体結合部位の喪失および「インスリン抵抗性」)に起因する組織分解および細胞機能喪失に関与する二次プロ酵素(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ、カリクレイン、カテプシンのファミリーのメンバーなど)を活性化する。慢性的なマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害(例えば、ドキシサイクリン、ブドウ種子エキス、レスベラトロールなど)はまた、実験モデルおよび短期的なヒトでの治験において、メタボリックシンドロームの症状を軽減することが示されている。(例えば、ゲノムワイド関連研究によって)長寿と関連付けられる複数の遺伝子が、特定の加齢中のヒト集団および動物モデルにおいて同定されているが、それらは異なる種における加齢に関する一般的な機構を同定するものではない。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積を覆す方法であって、(a)臓器においてセリンプロテアーゼの蓄積を有するか、または蓄積のリスクがある対象を選択するステップ、および(b)治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップを含み、それによって対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積を覆す方法が提供される。
【0004】
さらに、対象の臓器における細胞損傷を覆す方法であって、(a)臓器に対する細胞損傷を有するか、または細胞損傷のリスクがある対象を選択するステップ、および(b)治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップを含み、それによって対象の臓器における細胞損傷を覆す方法が、本明細書で提供される。
【0005】
さらに、対象の臓器における細胞外マトリックスを保つ方法であって、(a)臓器において細胞外マトリックスを喪失しているか、または喪失のリスクがある対象を選択するステップ、および(b)治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップを含み、それによって対象の臓器における細胞外マトリックスを保つ方法が、本明細書で提供される。
【0006】
一部の実施形態では、対象は少なくとも40歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも50歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも60歳である。一部の実施形態では、対象は、ショックおよび/または敗血症性ショックを発症するリスクを有しない。一部の実施形態では、対象はHIVを有しない。一部の実施形態では、臓器は、脳、脊髄、心臓、腎臓、筋肉、肝臓、および肺からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は、脳、心臓、および筋肉からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は脳である。一部の実施形態では、選択するステップは、脳疾患または脳の病状を有する対象を選択するステップを含む。一部の実施形態では、脳疾患または脳の病状は、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症を含む認知症、てんかんまたは他の発作性障害、精神障害、多発性硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性外傷性脳症、長期COVID関連認知症、および脳卒中からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は心臓である。一部の実施形態では、対象を選択するステップは、心疾患または心臓の病状を有する対象を選択するステップを含む。一部の実施形態では、心疾患または心臓の病状は、冠動脈心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不全、心不整脈、弁膜症、高血圧、心臓不整脈、心内膜炎、心膜疾患、および心筋症からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は筋肉である。一部の実施形態では、対象を選択するステップは、筋疾患または筋肉の病状を有する対象を選択するステップを含む。一部の実施形態では、筋疾患または筋肉の病状は、線維筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎を含む筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、横紋筋融解症、心筋症、サルコペニア、シャルコー・マリー・トゥース病、多発性硬化症、ミオパチー、末梢神経障害、ならびに脊髄性筋萎縮症からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は腎臓である。一部の実施形態では、リスクのある対象を選択するステップは、腎疾患または腎臓の病状を有する対象を選択するステップを含む。一部の実施形態では、腎疾患または腎臓の病状は、慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、急性腎障害、腎結石、腎盂腎炎を含む腎感染症、腎嚢胞、および腎がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は肝臓である。一部の実施形態では、対象を選択するステップは、肝疾患または肝臓の病状を有する対象を選択するステップを含む。一部の実施形態では、肝疾患または肝臓の病状は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、肝がん、胆管がん、肝腺腫、非アルコール性脂肪性肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼは、トリプシン、スブチリシン、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシン、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼはトリプシンを含む。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は競合的阻害剤である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、メシル酸ナファモスタット(Futhan)、メシル酸カモスタット(FOY 305)、メシル酸ガベキサート(FOY)または誘導体、セリンプロテアーゼインヒビターKazal-1型(SPINK1)、アプロチニン、トラネキサム酸、ウリナスタチン、グランザイムA、グランザイムB、UAMC-00050、4-(2アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、ダイズトリプシンインヒビター、メプリン阻害剤、セトメラノチド、アルファ-1-アンチトリプシン、およびセルピンからなる群から選択される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、トラネキサム酸を含む。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量は、対象の消化酵素活性の10%未満である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量は10μM未満である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量は5μM未満である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、経腸投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、またはテレメトリーで制御される外部もしくは埋め込み注入ポンプによって投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は経口投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、テレメトリーで制御される注入ポンプによって投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、リポソーム組成物として、またはナノ粒子カプセル封入物として投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は点眼薬として投与される。一部の実施形態では、テレメトリーで制御される注入ポンプは、臓器に向けられる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は1週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は2週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は4週間よりも長く投与される。
【0007】
セリンプロテアーゼ阻害剤を含む、加齢または加齢性の病状の処置のための医薬組成物が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、脳、脊髄、心臓、腎臓、筋肉、肝臓、および肺からなる群から選択される臓器に影響を及ぼす加齢性の病状を処置する。一部の実施形態では、加齢性の病状は、脳、心臓、および筋肉からなる群から選択される臓器に影響を及ぼす。一部の実施形態では、臓器は脳である。一部の実施形態では、加齢性の病状は、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症を含む認知症、記憶、平衡、感覚、腰痛を含むがこれに限定されない疼痛、てんかんまたは他の発作性障害を含むがこれらに限定されないニューロン機能の加齢性喪失、精神障害、多発性硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、および一過性脳虚血発作からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は心臓である。一部の実施形態では、加齢性の病状は、冠動脈心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不全、弁膜症、高血圧、心臓不整脈、心内膜炎、心膜疾患、および心筋症からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は筋肉である。一部の実施形態では、加齢性の病状は、線維筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎を含む筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、横紋筋融解症、心筋症、サルコペニア、シャルコー・マリー・トゥース病、多発性硬化症、ミオパチー、末梢神経障害、ならびに脊髄性筋萎縮症からなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は腎臓である。一部の実施形態では、加齢性の病状は、急性腎障害、腎結石、腎盂腎炎を含む腎感染症、腎嚢胞、腎透析を必要とする対象、および腎がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、臓器は肝臓である。一部の実施形態では、加齢性の病状は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、肝がん、胆管がん、肝腺腫、非アルコール性脂肪性肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は競合的阻害剤である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、メシル酸ナファモスタット(Futhan)、メシル酸カモスタット(FOY 305)、メシル酸ガベキサート(FOY)または誘導体、セリンプロテアーゼインヒビターKazal-1型(SPINK1)、アプロチニン、トラネキサム酸、ウリナスタチン、グランザイムA、グランザイムB、UAMC-00050、4-(2アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、ダイズトリプシンインヒビター、メプリン阻害剤、セトメラノチド、アルファ-1-アンチトリプシン、およびセルピンからなる群から選択される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤はトラネキサム酸を含む。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、対象の消化酵素活性の10%未満で投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は10μM未満である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は5μM未満である。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、経腸投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、またはテレメトリーで制御される外部もしくは埋め込み注入ポンプによって投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は経口投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、テレメトリーで制御される注入ポンプによって投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、リポソーム組成物またはナノ粒子として投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は点眼薬として投与される。一部の実施形態では、テレメトリーで制御される注入ポンプは、臓器に向けられる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は1週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は2週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は4週間よりも長く投与される。
【0008】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載されており、当技術分野で公知の他の好適な方法および材料もまた使用され得る。材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が優先する。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-1】
図1A: 若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、2週間にわたる経口トラネキサム酸(TXA)による膵トリプシンの遮断)における、膵トリプシンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ラット心筋における膵トリプシン蓄積を示す画像である。図は、元の明視野およびIHC標識のデジタル色抽出後の同じ画像を示す。
【
図1-2】
図1B: 若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、2週間にわたる経口トラネキサム酸による膵トリプシンの遮断)におけるラット心筋コラーゲン断片化を示す画像である。左のパネルは明視野像を示し、右のパネルは色抽出後のコラーゲン断片化を示す。
【
図2-1】
図2A: 若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、2週間にわたる経口トラネキサム酸による膵トリプシンの遮断)における、膵トリプシンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ラット脳切片における膵トリプシン蓄積を示す画像である。図は、元の明視野およびIHC標識のデジタル色抽出後の同じ画像を示す。
【
図2-2】
図2B: 断片化したコラーゲン線維に結び付くペプチドで標識することによる、若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、2週間にわたる経口トラネキサム酸による膵トリプシンの遮断)の脳切片におけるコラーゲン分解を示す画像である。図は、元の明視野およびコラーゲン結合性ペプチド標識のデジタル色抽出後の同じ画像を示す。
【
図3-1】
図3A: 若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、経口トラネキサム酸(TXA)による膵トリプシンの2週間の遮断)における、膵トリプシンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ラット腸における膵トリプシン蓄積を示す画像である。図は、元の明視野およびIHC標識のデジタル色抽出後の同じ画像を示す。
【
図3-2】
図3B: 若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、2週間にわたる経口トラネキサム酸(TXA)による膵トリプシンの遮断)における、アルシアンブルー(pH 2.5)で染色した小腸の上皮細胞上のムチン含有粘液層を示す画像である。図は、元の明視野画像を、対応する下の色抽出画像とともに示す。さらに、上の明視野画像は、若齢(16週齢)ラット、老齢(100週齢)ラット、および老齢の処置ラット(100週齢、2週間にわたる経口トラネキサム酸(TXA)による膵トリプシンの遮断)において、小腸の上皮細胞がアミラーゼ(褐色)で染色されたことを示す。小腸におけるアミラーゼの増加が、老齢ラットにおいて若齢ラットとの比較で観察され、この増加は、2週間にわたる経口トラネキサム酸の投与によって減弱した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、対象において消化(GI)管の外部で、セリンプロテアーゼを阻害し、セリンプロテアーゼの活性を低下させる方法を記載する。
【0012】
これらの方法のさまざまな非限定的な態様が本明細書に記載されており、限定されることなく任意の組合せでそれらを使用することができる。本明細書に記載される方法のさまざまな構成要素のさらなる態様は、当技術分野で公知である。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、値を参照して本明細書で使用される場合、参照される値の文脈において同程度である値を指す。一般に、文脈に精通している当業者は、その文脈において「約」によって包含される妥当な分散の程度を理解するであろう。例えば、一部の実施形態では、「約」という用語は、言及された値の25%以内、20%以内、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、15%以内、14%以内、13%以内、12%以内、11%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満の範囲内にある値の範囲を包含し得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、「細胞」は、必要に応じて対象または市販の供給源から得られる、原核細胞または真核細胞のいずれかを指すことができる。
【0016】
加齢のプロセス
本明細書で使用される場合、「加齢」という用語は、老化することに関連するプロセスを指す。この用語は、特にヒト、多くの動物、および真菌を指すが、より広い意味では、加齢は、分裂を停止し(細胞老化)、細胞機能(例えば、成長ホルモン、インスリンに対する応答)および遺伝子発現の低下を示す生物体内部の単一細胞を指すこともできる。ヒトでは、加齢は、身体的および心理的変化を包含する経時的な変化の蓄積を表す。例えば、加齢は、細胞機能および組織機能の喪失を伴い、疾患に対する感受性の増大を伴う併存疾患を臨床的に発症し、最終的には完全な臓器不全を伴う。一連の生物学的プロセス(例えば、細胞およびミトコンドリアの機能、幹細胞の増殖および分化、遺伝子病変、ヒストン、DNA修復機構、エピジェネティクス、タンパク質フォールディング、細胞内および細胞間シグナル伝達、ならびに栄養素利用)は、調節不全になり、不安定になり、消耗する。加齢における病態生理学的機構には、分子ストレッサーに対する抵抗性の障害、慢性的な軽度炎症、ゲノム不安定性、テロメア縮小および細胞老化、エピジェネティック変化、タンパク質ホメオスタシス(タンパク質恒常性)の喪失、栄養素感知の調節不全、幹細胞枯渇、ならびに/または細胞間情報伝達の変化が含まれ得る。血管細胞および免疫学的細胞機能は、病理学的再構築ならびに加齢に関連する危険因子および疾患の発生を伴って損なわれるようになり、一方、複数の異なる組織が、加齢における微小血管および大血管病態に関する分子機構および細胞機構を共通に有する。加齢にはまた、慢性的な軽度炎症も付随し、炎症カスケードが基本的には組織修復に働くことから、組織損傷を引き起こす慢性的な機構が加齢には存在し得る。すべての臓器において、細胞および細胞外マトリックスは劣化することが知られており、その機構については、活性酸素種、放射線曝露、および反復的な小さな損傷によるものであると提唱されている。
【0017】
加齢は、ほとんどのヒト疾患について公知の最大の危険因子の1つであり、世界中で毎日死亡するおよそ150,000人の人々のうち、約3分の2が加齢に関連した原因で死亡する。加齢は、動的な生物学的、生理学的、環境的、心理学的、行動的、および社会的プロセスの変化を伴う。本明細書で使用される場合、「生物学的加齢の症状」は、細胞外マトリックスの劣化、感染に対する感受性の増大、熱中症または低体温症のリスクの増加、皮膚の菲薄化および皺、骨折がより容易に起こること、軽度のこわばりから重度の関節炎までの範囲にわたる関節変化、運動の遅延および制限、全体的な活力の低下、便秘、尿失禁、認知障害(例えば、思考、記憶、および思考の遅延)、反射および協調運動の低下、平衡感覚の困難、視力の低下、周辺視力の低下、難聴、毛髪の白化または白髪化、嗅覚の喪失、ならびに一部は筋組織の喪失に起因する体重減少を含み得るがこれらに限定されない、加齢の一般的な徴候および症状を指すことができる。
【0018】
GI管の外部の臓器におけるセリンプロテアーゼ活性は、加齢時の細胞および臓器の機能の慢性的および段階的な喪失(例えば、「自己消化」)の機構として働くことが発見されている。消化酵素は膵臓で合成された後、小腸に放出され、そこで大量の生体分子を分解する。小腸では、消化酵素が濃縮され(例えば、mM以下のレベルで)、十分に活性化されており、比較的非特異的であり、多様なポリマー性食物源のより低分子量のモノマー栄養素への分解を助長する。さらに、自身の腸の自己消化は、ムチン/上皮バリアによる腸の内腔での消化酵素の区画化によって主に防止され、このバリアは、小分子栄養素(例えば、イオン、アミノ酸、または単糖)に対して常に透過性であるが、これは一般に、膵臓セリンプロテアーゼなどのより大きな分子に対しては低い透過性を有する。しかし、時には、ムチン/上皮バリアは、疾患または病状に起因して損なわれ、また時には、ムチン/上皮バリアは、加齢の間に損なわれるようになるが、これは、より老齢の個体は、若齢の個体よりもムチン/上皮バリアが弱い傾向があるからである。
【0019】
本開示は、セリンプロテアーゼが関与する自己消化に起因する加齢に関する機構を提供する。本開示の方法は、消化管(GI)内部のセリンプロテアーゼ活性に対する影響を最小限に抑えた上で、GI管の外部のセリンプロテアーゼを遮断して、自己消化に起因する加齢の症状および疾患を改善する。
【0020】
セリンプロテアーゼ/セリンプロテアーゼ阻害剤
セリンプロテアーゼは、セリンエンドペプチダーゼと称されることもあり、タンパク質におけるペプチド結合を切断することができる酵素である。セリンプロテアーゼには、その構造に基づいて、キモトリプシン様(トリプシン様)およびスブチリシン様の2つの主なカテゴリーがある。スブチリシン様セリンプロテアーゼは、原核生物において見出すことができ、トリプシン様セリンプロテアーゼと同じ触媒機構を共通に有する。キモトリプシン様/トリプシン様セリンプロテアーゼは、触媒部位で収束する2つのベータ-バレルドメインを含む。セリンプロテアーゼは、ヒスチジン57、セリン195、およびアスパラギン酸102という3つのアミノ酸からなる酵素の活性部位に位置する触媒性の三つ組を利用するような方法でフォールディングを受ける。さらに、エラスターゼは、膵臓によって産生されるセリンプロテアーゼであり、小さな疎水性アミノ酸上、例えば、グリシン、アラニン、およびバリン上に存在するカルボキシル基の切断を触媒する。エラスターゼの主な役割は、結合組織に弾性を付与するタンパク質であるエラスチンの分解である。
【0021】
セリンプロテアーゼは、化学的阻害剤のほかにタンパク質性阻害剤が含まれ得る、セリンプロテアーゼ阻害剤によって阻害することができる。非限定的な実施形態では、低分子量阻害剤は、小腸から出て、血液、血漿、または他の組織に入ることができる。セリンプロテアーゼ阻害剤はSERPINと呼ばれることもある。セリンプロテアーゼ阻害剤には、競合的阻害剤、非競合的阻害剤、浸透性阻害剤、可逆的阻害剤、および非可逆的阻害剤が含まれ得る。時には、セリンプロテアーゼ阻害剤は、セリンプロテアーゼの立体構造形状を変化させて、セリンプロテアーゼの活性部位を破壊することによって、セリンプロテアーゼを遮断する。時には、セリンプロテアーゼ阻害剤は、セリンプロテアーゼの活性部位に結合して、それを遮断する。
【0022】
セリンプロテアーゼ阻害剤の非限定的な例としては、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、キモスタチン、ベンズアミジン、キシメラガトラン、リバロキサバン、イドラパリヌクス、アピキサバン、オタミキサバン、アプロチニン、ダビガトランエテキシラート、エドキサバン、レタキサバン、ウリナスタチン、ダラキサバン、ナファモスタット、ガベキサート、シベレスタット、メラガトラン、硫酸コレステロール、ダビガトラン、フォンダパリヌクス、デシルジン、ベトリキサバン、CGS-27023、GW-813893、ベロトラルスタット、エボロクマブ、コネスタットアルファ、ロスマリン酸、アルファ-1アンチトリプシン、アルファ-2アンチプラスミン、BIA 10-2472、C1-阻害剤、カモスタット、コスピン、CU-2010、CU-2020、カリスタチン、Kazalドメイン、マスピン、メトキシアラキドニルフルオロホスホネート、ミクロビリジン、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2、PMSF、プロテインC阻害剤、プロテインZ関連プロテアーゼインヒビター、SERPINA9、SERPINB1、SERPINB3、SERPINB4、SERPINB6、SERPINB7、SERPINB8、SERPINB9、SERPINB13、SERPINE2、SPINT1、スパオスタット、および子宮セルピンが挙げられる。
【0023】
一部の実施形態では、本開示の方法のセリンプロテアーゼ阻害剤は、メシル酸ナファモスタット(Futhan)、メシル酸カモスタット(FOY 305)、メシル酸ガベキサート(FOY)または誘導体、セリンプロテアーゼインヒビターKazal-1型(SPINK1)、トラネキサム酸、グランザイムA、グランザイムB、UAMC-00050、4-(2アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、ダイズトリプシンインヒビター、メプリン阻害剤、セトメラノチド、またはアルファ-1-アンチトリプシンを含む。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤のうちのいずれか1つの誘導体を含むことができる。
【0024】
加齢性の病状の処置のための医薬組成物
本明細書に記載される方法は、1つまたは複数のセリンプロテアーゼ阻害剤を活性成分として含む医薬組成物の使用を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性薬剤が1つまたは複数の薬学的に受容可能な担体と一緒に製剤化された組成物を指す。一部の実施形態では、組成物は、ヒトまたは動物対象への投与に好適である。一部の実施形態では、活性薬剤は、該当する集団に投与された場合に所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与のために適切な単位用量で存在する。
【0026】
医薬組成物は、典型的には、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮下、経口(例えば、カプセルまたは吸入)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。
【0027】
好適な医薬組成物を製剤化する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005、およびDrugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)のシリーズの本を参照のこと。例えば、非経口または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:無菌の希釈剤、例えば、注射用の水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0028】
注射用途に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与のために、好適な担体としては、生理食塩水、滅菌精製水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0029】
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した成分のうちの1つまたは組合せとともに好適な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙されたもののうち必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が、あらかじめ濾過滅菌されたその溶液から得られる。
【0030】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食担体を含む。経口治療投与の目的のために、活性化合物を賦形剤とともに組み込むことができ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。また、経口組成物を、うがい薬として使用するための流体担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または類似の性質を有する化合物を含み得る:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン、賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチ、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes、流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリン、または香味料、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味料。
【0031】
吸入による投与のためには、化合物を、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。そのような方法には、米国特許第6,468,798号明細書に記載されているものが含まれる。
【0032】
本明細書に記載されるような医薬組成物の全身投与はまた、経粘膜手段によるものでもあり得る。経粘膜投与のためには、透過させようとする障壁にとって適切な浸透剤が、製剤中に使用される。そのような浸透剤は、一般に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻用スプレーまたは坐薬の使用によって達成され得る。
【0033】
また、医薬組成物を、直腸送達のための坐薬(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含む)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0034】
一実施形態では、医薬組成物は、身体からの迅速な排出に抗して医薬組成物を保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤とともに調製される。一部の実施形態では、医薬組成物は、別の分子に連結された、コンジュゲートされた、または融合されたセリンプロテアーゼ阻害剤を含む。一部の実施形態では、他の分子が、医薬組成物の特性を変化させる。一部の実施形態では、医薬組成物を、ナノ粒子カプセル封入物を使用することによって送達することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤は、標準的な手法を使用して調製すること、または例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入することができる。リポソーム懸濁物(細胞性抗原に対するモノクローナル抗体を有する、選択された細胞に対して標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能な担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に記載されるように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0035】
医薬組成物は、投与のための説明書とともに、容器、パック、またはディスペンサーの中に含めることができる。
【0036】
消化(GI)管の外部のセリンプロテアーゼ活性を低下させる方法
加齢および/または加齢性の疾患または病状は、消化セリンプロテアーゼに対する腸バリアの透過性の増加を引き起こす可能性があり、その結果、セリンプロテアーゼ活性を対象の循環血中で検出しうる可能性がある。消化酵素は、ムチン-上皮バリアを越えて、膵臓および腸の外部の組織および臓器へと漏出する可能性があり、そこで細胞外マトリックスおよび細胞膜を損傷する可能性がある。一部の実施形態では、損傷は、外部ドメイン受容体の切断を含み得る。
【0037】
消化酵素は、膜受容体(例えば、インスリン受容体、成長ホルモン受容体)の切断および対象の臓器におけるコラーゲンの分解を含む、複数の形態の組織損傷を引き起こし得る。膵トリプシンはまた、プロホルモンを活性化することもでき、広範囲にわたる体液性メディエーターならびにそれらの受容体を切断するその能力に起因して、生理学的シグナル伝達を妨害する可能性がある。消化酵素阻害剤(例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤、例えば、トリプシンインヒビター)の投与による処置は、ムチンバリアの破綻を減弱させて、末梢臓器における消化酵素の蓄積、ならびにコラーゲンの切断を減少させることができる。例えば、小腸の外部の膵トリプシンに対する介入は、二次プロテアーゼの活性化を遮断するだけでなく、一連の細胞機能(免疫応答、ミトコンドリア機能、幹細胞の増殖および分化、DNA修復機構、エピジェネティクス、タンパク質フォールディング、細胞内および細胞間シグナル伝達、ならびに栄養素利用を含むが、これらに限定されない)も維持する。
【0038】
本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載される疾患、障害または病状を処置または予防するために対象に投与され得る。一部の実施形態では、本開示は、臓器に対する損傷のリスクがある対象を選択するステップ、および治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するステップによって、対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積を覆し、対象の臓器における細胞損傷を覆し、および/または対象の臓器における細胞外マトリックスを保つ方法を記載する。一部の実施形態では、本開示は、脳、脊髄、心臓、筋肉、腎臓、肝臓、または肺の疾患または病状を処置する方法を記載する。
【0039】
一部の実施形態では、本開示は、対象の消化(GI)管の外部のセリンプロテアーゼ活性を低下させる方法を記載する。一部の実施形態では、本方法は、対象の消化(GI)管の外部のセリンプロテアーゼの活性を阻害するかもしくは低下させることができ、または対象における生物学的加齢の症状を軽減することができる。一部の実施形態では、本方法は、GI管の外部のセリンプロテアーゼの活性の低下をもたらすセリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0040】
一部の実施形態では、本方法は、加齢性の疾患または病状を予防的に処置するステップを含む。本明細書で使用される場合、「予防的に処置すること」という用語は、健康を保つために、または疾患もしくは病状の進行もしくは発生を予防するために、予防的措置を講じること(例えば、対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積を覆すこと、対象の臓器における細胞損傷を覆すこと、および/または対象の臓器における細胞外マトリックスを保つこと)を指すことができる。例えば、対象に、疾患または病状を経験する(例えば、特定の病状、例えば、認知症に対する感受性を高めるバイオマーカーを有する)リスクがある場合に、対象を予防的に処置することができる。
【0041】
対象
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、典型的には哺乳動物(例えば、ヒト)を指す。一部の実施形態では、対象は、関連する疾患、障害、または病状に罹患している。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病状に対して感受性である。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病状の1つまたは複数の症状または特徴を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病状のいかなる症状または特徴も示さない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病状に対する感受性またはそのリスクに特徴的な1つまたは複数の特徴を有する者である。一部の実施形態では、対象は患者である。一部の実施形態では、対象は、診断および/または療法が施される、および/または施された個体である。
【0042】
一部の実施形態では、対象は、動物、ヒトまたは非ヒトであり得る。非ヒト対象の非限定的な例としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ロバ、サル、ならびに/または他の非ヒト霊長類、例えば、類人猿およびキツネザル科動物を挙げることができる。
【0043】
一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、ヒト患者は、成人ヒトまたは若年ヒト(例えば、18歳未満のヒト)であり得る。一部の実施形態では、対象は、加齢性の疾患、障害、または病状に罹患している患者である。一部の実施形態では、対象は、加齢性の疾患、障害、または病状に対する感受性を有する患者である。一部の実施形態では、対象は、加齢性の疾患、障害、または病状の1つまたは複数の徴候または症状または特徴を示す患者である。一部の実施形態では、対象が生物学的に老齢であるとみなされる場合、例えば、50歳を上回る、55歳を上回る、60歳を上回る、65歳を上回る、70歳を上回る、75歳を上回る、80歳を上回る、85歳を上回る、90歳を上回る、または95歳を上回る場合、対象は、加齢性の疾患、障害、または病状の症状を示している。一部の実施形態では、対象は、対象が生物学的に老齢であるとみなされない場合、例えば、45歳未満、40歳未満、35歳未満、30歳未満、または25歳未満である場合、加齢性の疾患、障害、または病状の症状を示している。一部の実施形態では、対象は、18歳を上回る成人である。一部の実施形態では、対象は20歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は30歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は40歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は50歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は60歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は70歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は80歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は90歳よりも老齢である。一部の実施形態では、対象は100歳よりも老齢である。
【0044】
処置すること/処置
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、対象(例えば、本明細書に記載される対象のうちのいずれか)における疾患もしくは障害の1つもしくは複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)の症状の数、頻度、重症度、もしくは持続時間の減少を意味し、および/または、これは対象における疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症および/もしくは悪化の減少をもたらす。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または病状に罹患しているかまたはそれに対する感受性を有する集団に対して治療投薬レジメンに従って投与された場合に、疾患、障害、および/または病状を処置するのに十分な量を意味する。一部の実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、および/または病状の1つもしくは複数の症状の発生率および/もしくは重症度を低下させ、その1つもしくは複数の特徴を安定化し、および/またはその発症を遅延させる量である。当業者は、「治療有効量」という用語が、実際には、特定の個体において処置の成功が達成されることを必要としないことを理解するであろう。そうではなくて、治療有効量は、そのような処置を必要とする患者に投与された場合に、かなりの数の対象において特定の所望の薬理学的応答をもたらす量であり得る。例えば、一部の実施形態では、「治療有効量」という用語は、本発明の療法に関連して、それを必要とする個体に投与された場合に、前記個体において生じる加齢の裏付けとなるプロセスを遮断するか、安定化するか、減弱させるか、もしくは覆す、または前記個体における加齢抑制プロセスを強化するかもしくは増大させる量を指す。本明細書に記載される組成物の「治療有効量」は、対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積の発生を(治療的処置において)覆すか、対象の臓器における細胞損傷を覆すか、または対象の臓器における細胞外マトリックス構造を保つことができる。治療有効量は、切断部位でコラーゲン構造に結合し得るペプチドをハイブリダイズさせることによって検出されるような、臓器組織の分子構造を保つことを含み得る。個体における疾患または病状を処置するためにその個体に投与される治療有効量は、予防目的で投与される治療有効量と同じであっても異なっていてもよい。本明細書に記載される治療方法は、加齢の「治癒」として解釈されるか、それに制限されるか、またはそれに限定されるものではなく、そうではなくて、治療方法は、加齢性の病状を「処置する」ための、すなわち、対象の臓器におけるセリンプロテアーゼの蓄積、対象の臓器において進行中の細胞外マトリックスタンパク質(例えば、コラーゲン)切断、細胞損傷(例えば、膜受容体切断)および細胞機能不全(例えば、細胞外マトリックスへのインテグリンの結び付きおよび細胞内インテグリンシグナル伝達の低下)を覆すか、または対象の臓器における細胞外マトリックスを保つなどであるがこれらに限定されない、加齢性の病状を有する個体の健康に望ましいかまたは有益な変化を生じさせるための、記載される組成物の使用を対象とする。当技術分野で理解されるように、セリンプロテアーゼ阻害剤の有効量は、とりわけ、患者の病歴ならびに他の因子、例えば、使用されるセリンプロテアーゼ阻害剤のタイプ(および/または投与量)に応じて異なり得る。
【0046】
「低下した」、「減少した」、「低下したレベル」、または「減少したレベル」という語句および類似の語句は、一般に、参照レベルまたは参照値と比較して、少なくとも1%(例えば、少なくとも2%、少なくとも4%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも22%、少なくとも24%、少なくとも26%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)の低下または減少を指す。「増加した」、「より大きい」、「増加したレベル」、または「より大きいレベル」という語句および類似の語句は、一般に、参照レベルまたは参照値と比較して、少なくとも1%(例えば、少なくとも2%、少なくとも4%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも22%、少なくとも24%、少なくとも26%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、100%、150%、200%、またはそれ以上)の増加を指す。
【0047】
一部の実施形態では、治療有効量は、例えば、投薬レジメンの一部として、複数回の用量で製剤化すること、および/または投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるセリンプロテアーゼ阻害剤を投与するための有効量およびスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは、当技術分野の技能の範囲内である。当業者は、投与されなければならない投薬量が、例えば、本明細書中に開示されるセリンプロテアーゼ阻害剤の投与を受ける対象、投与経路、セリンプロテアーゼ阻害剤の特定のタイプ、および対象に投与される他の薬物に応じて異なると考えられることを理解するであろう。一部の実施形態では、治療有効量の投与は長期的投与を含み、一方、他の実施形態では、治療有効量の投与は、計画された投与を含む。
【0048】
一部の実施形態では、計画された投与は、所定のスケジュールを含む。計画されたベースの非限定的な例としては、1日おき、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、または週1回が挙げられる。計画されたベースの他の非限定的な例としては、1日オン:6日オフ、2日オン:5日オフ、3日オン:4日オフ、4日オン:3日オフ、5日オン:2日オフ、6日オン:1日オフが挙げられる。計画されたベースのさらなる別の非限定的な例としては、2日オン:1日オフ、2日オン:2日オフ、2日オン:3日オフ、2日オン-4日オフ、2日オン:5日オフ、3日オン:1日オフ、3日オン:2日オフ、3日オン:3日オフ、3日オン:4日オフ、4日オン:1日オフ、4日オン-2日オフ、4日オン:3日オフ、5日オン:1日オフ、5日オン:2日オフ、6日オン:1日オフが挙げられる。計画されたベースのさらなる別の非限定的な例としては、7日毎に1日、7日毎に2日、7日毎に3日、7日毎に4日、7日毎に5日、または7日毎に6日が挙げられる。本方法は、維持用量組成物の毎日の投与を3~5日間連続して行い、続いて1~3日間連続して投与しないことからなる毎週のプロトコールによって組成物を投与するステップを含み得る。
【0049】
一部の実施形態では、対象に、セリンプロテアーゼ阻害剤を長期間にわたって(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、1年、2年、3年、4年、または5年の期間にわたって)投与することができる。熟練した医療専門家は、処置の有効性を診断または追跡するための本明細書に記載される方法のいずれか(例えば、加齢の少なくとも1つの症状の観察)を使用して、処置期間の長さを決定することができる。本明細書に記載されるように、熟練した医療専門家は、対象に投与されるセリンプロテアーゼ阻害剤の実体および数を変更すること(例えば、増加または減少させること)もでき、処置の有効性の評価に基づいて、対象へのセリンプロテアーゼ阻害剤の投与の用量または頻度を調整すること(例えば、増加または減少させること)もできる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は1週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は2週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は4週間よりも長く投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、1か月よりも長く、2か月よりも長く、3か月よりも長く、4か月よりも長く、5か月よりも長く、6か月よりも長く、7か月よりも長く、8か月よりも長く、9か月よりも長く、10か月よりも長く、11か月よりも長く、12か月よりも長く、またはより長く投与される。
【0050】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、GI管内のセリンプロテアーゼ濃度よりも低い濃度で投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、GI管のセリンプロテアーゼ濃度の10%未満の濃度で投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、GI管のセリンプロテアーゼ濃度の9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の濃度で投与することができる。例えば、低分子量のセリンプロテアーゼ競合的阻害剤(例えば、TXAまたはFOY)は、小腸内部のセリンプロテアーゼ濃度(例えば、100μM)よりも低いが、血漿中のプロテアーゼ濃度(例えば、5μM)に一致する、および/またはそれを上回る濃度(例えば、10μM)で投与される。一部の実施形態では、投与されるセリンプロテアーゼ阻害剤は、血漿中のセリンプロテアーゼの活性を遮断する。一部の実施形態では、小腸の消化活性の大部分が保たれる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の濃度は、胃および/または小腸の消化または機能活性を妨害することも低下させることもない。GI管内のセリンプロテアーゼ濃度は、経験的に決定することができ、またはそのような情報の標準化されて受容されている供給源を参考にして決定することができる。
【0051】
一部の実施形態では、対象に投与されることになるセリンプロテアーゼ阻害剤の濃度は、対象におけるセリンプロテアーゼ活性を測定することによって決定することができる。一部の実施形態では、対象に投与されることになるセリンプロテアーゼ阻害剤の濃度は、特定の時点で対象におけるセリンプロテアーゼ活性を測定することによって決定することができる。一部の実施形態では、対象に投与されることになるセリンプロテアーゼ阻害剤の濃度は、対象のGI管の外部(例えば、血漿中、末梢組織中)のセリンプロテアーゼ活性を測定することによって決定することができる。一部の実施形態では、GI管内のセリンプロテアーゼ濃度は、血漿中のペプチド出現率の質量分析決定によって決定される。例えば、患者の血漿の試料を質量分析計に通すことができ、血漿タンパク質のタンパク質分解を決定することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ濃度は、対象から、または対象の血漿もしくは他の体液(例えば、リンパ液)から採取された細胞を使用して、細胞外ドメインに対する抗体による受容体切断によって決定することができる。
【0052】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、GI管内のセリンプロテアーゼ濃度よりも低いが、GI管の外部(例えば、血漿中、または末梢組織中)のセリンプロテアーゼ濃度よりも高い濃度で投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、GI管の外部のセリンプロテアーゼ濃度とほぼ同じ濃度で投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、GI管の外部のセリンプロテアーゼ阻害剤濃度よりも高い濃度で投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、対象の血漿中および/または組織中のセリンプロテアーゼの濃度の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である濃度で投与することができる。
【0053】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、10mM未満、9mM未満、8mM未満、7mM未満、6mM未満、5mM未満、4mM未満、3mM未満、2mM未満、1mM未満、0.5mM未満、または0.1mM未満の濃度で投与することができる。
【0054】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、50μM未満(例えば、48μM未満、46μM未満、44μM未満、42μM未満、40μM未満、38μM未満、36μM未満、34μM未満、32μM未満、30μM未満、28μM未満、26μM未満、24μM未満、22μM未満、20μM未満、18μM未満、16μM未満、14μM未満、12μM未満、10μM未満、8μM未満、6μM未満、5μM未満、4μM未満、3μM未満、2μM未満、1μM未満、0.5μM未満、0.25μM未満、または0.1μM未満)の濃度で投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、5μM未満の濃度で投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、1μM未満(例えば、0.8μM未満、0.6μM未満、0.4μM未満、0.2μM未満、0.1μM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、20nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、1nM未満、0.8nM未満、0.6nM未満、0.4nM未満、0.2nM未満、0.1nM未満、90pM未満、80pM未満、70pM未満、60pM未満、50pM未満、40pM未満、30pM未満、20pM未満、10pM未満、5pM未満、3pM未満、1pM未満、0.8pM未満、0.6pM未満、0.4pM未満、0.2pM未満、または0.1pM未満)の濃度で投与される。
【0055】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、患者の体重に応じて投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、0.01~1.0gm/kg/日の間のいずれかで投与することができる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量は、0.01gm/kg/日、0.02gm/kg/日、0.03gm/kg/日、0.04gm/kg/日、0.05gm/kg/日、0.06gm/kg/日 0.07gm/kg/日、0.08gm/kg/日、0.09gm/kg/日、0.1gm/kg/日、0.11gm/kg/日、0.12gm/kg/日、0.13gm/kg/日、0.14gm/kg/日、0.15gm/kg/日、0.16gm/kg/日、0.17gm/kg/日、0.18gm/kg/日、0.19gm/kg/日、0.20gm/kg/日、0.21gm/kg/日、0.22gm/kg/日、0.23gm/kg/日、0.24gm/kg/日、0.25gm/kg/日、0.26gm/kg/日、0.27gm/kg/日、0.28gm/kg/日、0.29gm/kg/日、0.30gm/kg/日、0.31gm/kg/日、0.32gm/kg/日、0.33gm/kg/日、0.34gm/kg/日、0.35gm/kg/日、0.36gm/kg/日、0.37gm/kg/日、0.38gm/kg/日、0.39gm/kg/日、0.40gm/kg/日、0.41gm/kg/日、0.42gm/kg/日、0.43gm/kg/日、0.44gm/kg/日、0.45gm/kg/日、0.46gm/kg/日、0.47gm/kg/日、0.48gm/kg/日、0.49gm/kg/日、0.50gm/kg/日、0.51gm/kg/日、0.52gm/kg/日、0.53gm/kg/日、0.54gm/kg/日、0.55gm/kg/日、0.56gm/kg/日、0.57gm/kg/日、0.58gm/kg/日、0.59gm/kg/日、0.60gm/kg/日、0.61gm/kg/日、0.62gm/kg/日、0.63gm/kg/日、0.64gm/kg/日、0.65gm/kg/日、0.66gm/kg/日、0.67gm/kg/日、0.68gm/kg/日、0.69gm/kg/日、0.70gm/kg/日、0.71gm/kg/日、0.72gm/kg/日、0.73gm/kg/日、0.74gm/kg/日、0.75gm/kg/日、0.76gm/kg/日、0.77gm/kg/日、0.78gm/kg/日、0.79gm/kg/日、0.80gm/kg/日、0.81gm/kg/日、0.82gm/kg/日、0.83gm/kg/日、0.84gm/kg/日、0.85gm/kg/日、0.86gm/kg/日、0.87gm/kg/日、0.88gm/kg/日、0.89gm/kg/日、0.90gm/kg/日、0.91gm/kg/日、0.92gm/kg/日、0.93gm/kg/日、0.94gm/kg/日、0.95gm/kg/日、0.96gm/kg/日、0.97gm/kg/日、0.98gm/kg/日、0.99gm/kg/日、1.0gm/kg/日を含み得る。
【0056】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の特性に応じて、セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量は、1.0gm/kg/日よりも多い量を含み得る。例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤の治療有効量は、1gm/kg/日、2gm/kg/日、3gm/kg/日、4gm/kg/日、5gm/kg/日、6gm/kg/日、7gm/kg/日、8gm/kg/日、9gm/kg/日、10gm/kg/日、11gm/kg/日、12gm/kg/日、13gm/kg/日、14gm/kg/日、15gm/kg/日、16gm/kg/日、17gm/kg/日、18gm/kg/日、19gm/kg/日、20gm/kg/日、21gm/kg/日、22gm/kg/日、23gm/kg/日、24gm/kg/日、25gm/kg/日、26gm/kg/日、27gm/kg/日、28gm/kg/日、29gm/kg/日、30gm/kg/日、31gm/kg/日、32gm/kg/日、33gm/kg/日、34gm/kg/日、35gm/kg/日、36gm/kg/日、37gm/kg/日、38gm/kg/日、39gm/kg/日、40gm/kg/日、41gm/kg/日、42gm/kg/日、43gm/kg/日、44gm/kg/日、45gm/kg/日、46gm/kg/日、47gm/kg/日、48gm/kg/日、49gm/kg/日、50gm/kg/日、51gm/kg/日、52gm/kg/日、53gm/kg/日、54gm/kg/日、55gm/kg/日、56gm/kg/日、57gm/kg/日、58gm/kg/日、59gm/kg/日、60gm/kg/日、61gm/kg/日、62gm/kg/日、63gm/kg/日、64gm/kg/日、65gm/kg/日、66gm/kg/日、67gm/kg/日、68gm/kg/日、69gm/kg/日、70gm/kg/日、71gm/kg/日、72gm/kg/日、73gm/kg/日、74gm/kg/日、75gm/kg/日、76gm/kg/日、77gm/kg/日、78gm/kg/日、79gm/kg/日、80gm/kg/日、81gm/kg/日、82gm/kg/日、83gm/kg/日、84gm/kg/日、85gm/kg/日、86gm/kg/日、87gm/kg/日、88gm/kg/日、89gm/kg/日、90gm/kg/日、91gm/kg/日、92gm/kg/日、93gm/kg/日、94gm/kg/日、95gm/kg/日、96gm/kg/日、97gm/kg/日、98gm/kg/日、99gm/kg/日、または100gm/kg/日を含み得る。
【0057】
投与
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、典型的には、組成物であるかまたは組成物に含まれる薬剤の送達を達成するための、対象または系への組成物の投与を指す。当業者は、適切な状況において、対象(例えば、ヒト)への投与のために利用され得る種々の経路を把握しているであろう。例えば、一部の実施形態では、投与は、眼、経口、経腸、非経口などであり得る。一部の特定の実施形態では、投与は、気管支(例えば、気管支滴下注入による)、頬側、経腸、動脈内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、嚢内、特定の臓器内(例えば、肝臓内)、粘膜、鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内滴下注入による)、膣、硝子体、パッチによるものなどであり得る。一部の実施形態では、投与は単回投与のみを伴ってもよい。一部の実施形態では、投与は、一定回数の用量の適用を伴い得る。一部の実施形態では、投与は、間欠的(例えば、時間的に隔てられた複数回の用量)および/または定期的(例えば、共通の期間によって隔てられた個々の用量)投薬である投薬を伴い得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続的投薬(例えば、灌流)を伴い得る。一部の実施形態では、投与は、外部および/もしくは埋め込み注入ポンプ、液体製剤、カプセル封入製剤、または徐放カプセル封入物の使用を含むがこれらに限定されない送達方法を伴い得る。
【0058】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤の投与は、眼、経口、非経口、気管支(例えば、気管支滴下注入による)、頬側、経腸、動脈内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、嚢内、特定の臓器内(例えば、肝臓内)、粘膜、鼻、経口、直腸、皮下、舌下、気管(例えば、気管内滴下注入による)、膣、または硝子体であり得る。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、経腸投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、またはテレメトリーで制御される外部もしくは埋め込み注入ポンプによって投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、経口投与によって投与される。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、テレメトリーで制御される注入ポンプによって投与される。一部の実施形態では、テレメトリーで制御される注入ポンプは、標的組織に向けられる。一部の実施形態では、標的組織は、脂肪組織、膵臓組織、肝臓組織、腎臓組織、肺組織、脈管構造、骨組織、中枢神経系(CNS)組織、眼組織、筋肉組織、および二次リンパ臓器組織を含み得る。一部の実施形態では、標的組織は、静脈、動脈、リンパ管、脳脊髄液、皮下組織、または関節を含み得る。一部の実施形態では、テレメトリーで制御される注入ポンプは、標的臓器に向けられる。一部の実施形態では、標的臓器は、脳、脊髄、心臓、腎臓、筋肉、肝臓、肺、膵臓、または任意の他の臓器を含み得る。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、点眼剤またはリポソーム組成物の形態で投与される。
【0059】
一部の実施形態では、対象に2種以上のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与することができる。一部の実施形態では、1種または複数のセリンプロテアーゼ阻害剤の投与は、逐次投与である(例えば、1種のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与し、停止して、第2の異なるセリンプロテアーゼ阻害剤を投与する)。一部の実施形態では、対象に、セリンプロテアーゼ阻害剤の組合せを同時に投与することができる。
【0060】
一部の実施形態では、本開示の方法は、セリンプロテアーゼ阻害剤の投与によって処置される病状、または別の病状のいずれかに対して、他の方法または治療的処置の前に、それと併せて、またはその後に投与することができる。非限定的な一例では、対象を腸内のがん性腫瘤に対する手術によって処置することができ、手術後に対象にセリンプロテアーゼ阻害剤を投与して、腸からのプロテアーゼの漏出を制限することができる。セリンプロテアーゼ阻害剤の防止的/予防的投与は、腸透過性に起因する対象の臓器の自己消化を遅延させるため、および/または予防するために使用することができる。別の非限定的な例では、対象に、対象の認知症または別の病状(例えば、糖尿病)のいずれかに対する別の薬物療法を同時に受けている間に、疑われる認知症の処置のためにセリンプロテアーゼ阻害剤を投与することができる。
【0061】
一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ活性は、食後期間に増大する。この活性を遮断するために、セリンプロテアーゼ阻害剤を、食物摂取(例えば、摂食)の前に投与することができる。糖尿病または前糖尿病において、セリンプロテアーゼ活性が上昇するこの食後期間は、非糖尿病におけるよりも長く、数時間にわたって続くことがある。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤投与の量または濃度は、血漿または末梢組織、例えば、腹腔液、心臓、脳、腸、腎臓、肝臓、肺、眼、または本明細書中に開示される他の組織におけるプロテアーゼ活性の測定値に依存すると考えられる。一部の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、昼間サイクルの間に投与され、セリンプロテアーゼ阻害剤の投与は、対象において測定されたセリンプロテアーゼ活性に依存する。
【0062】
臓器/病状/疾患
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象における生物学的加齢の症状を軽減することができる。一部の実施形態では、対象は加齢性の疾患、障害、または病状の1つまたは複数の徴候もしくは症状もしくは特徴を示し得る。
【0063】
一部の実施形態では、本方法は、臓器に対する損傷のリスクがある対象を選択するステップを伴った。対象は、その臓器に影響を及ぼす既知の疾患または病状と一致する症状を示していることから、臓器に対する損傷のリスクを有し得る。対象は、その臓器に影響を及ぼす既知の疾患または病状の素因になることが知られているバイオマーカーを有することから、臓器に対する損傷のリスクを有し得る。対象は、その臓器に影響を及ぼす既知の疾患または病状の素因になると考えられる家族歴を有することから、臓器に対する損傷のリスクを有し得る。一部の実施形態では、対象はGI管の外部で(例えば、血漿において、または末梢組織において)上昇したセリンプロテアーゼ活性の症状および/またはバイオマーカーを示す。
【0064】
本明細書に開示される方法に関して、臓器は、脳、脊髄、心臓、腎臓、筋肉、腸、肝臓、眼、骨格筋、腹部および皮下脂肪組織、小腸壁および大腸壁、結合組織(腸間膜を含む)、乳房組織、男性および女性生殖器由来の組織、骨、軟骨、耳、鼻道、ならびに肺からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、臓器は、脳、心臓、腸、および筋肉からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、臓器は心臓である。一部の実施形態では、臓器は脳である。一部の実施形態では、臓器は腎臓である。一部の実施形態では、臓器は肝臓である。一部の実施形態では、臓器は腸(例えば、小腸および/または大腸)である。一部の実施形態では、臓器は眼である。一部の実施形態では、臓器は肺である。明確にしておくと、本開示の方法は、ショック(例えば、敗血症性ショック)またはHIVを処置することを意図していない。さらに、本開示の方法は、ショック(例えば、敗血症性ショック)および/またはHIVについて対象をスクリーニングして、対象がショックまたはHIVのバイオマーカーを現在経験している場合には、セリンプロテアーゼ阻害剤を対象に投与しないステップをさらに含み得る。
【0065】
一部の実施形態では、加齢性の疾患は、アルツハイマー病、記憶喪失、平衡感覚喪失、および感覚機能喪失を含むがこれらに限定されない加齢性の神経機能の喪失、腰痛を含むがこれらに限定されない疼痛、動脈瘤、慢性静脈疾患、嚢胞性線維症、膵炎における線維症、緑内障、高血圧症、特発性肺線維症、炎症性腸疾患、椎間板変性症、骨関節炎、2型糖尿病、脂肪萎縮症、リポジストロフィー、アテローム性動脈硬化症、白内障、COPD、腎移植不全、肝線維症、骨量減少、心筋梗塞、サルコペニア、創傷治癒、脱毛、心筋肥大、骨関節炎、パーキンソン病、肺組織弾力性の加齢性喪失、加齢性黄斑変性症、悪液質、糸球体硬化症、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、肝がん、胆管がん、肝腺腫、骨粗鬆症、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、精神障害、神経変性、てんかんもしくは他の発作性障害、脳卒中、がん、前頭側頭型認知症を含む認知症、髄膜炎、脳炎、血管疾患、冠動脈心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不全、弁膜疾患、高血圧、心臓不整脈、心内膜炎、心膜疾患、心筋症、易感染性、慢性炎症、腎機能障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患、エリテマトーデス、ループス腎炎、糖尿病性腎症、CNS損傷、筋萎縮性側索硬化症、線維筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎を含む筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症、横紋筋融解症、サルコペニア、シャルコー・マリー・トゥース病、ミオパチー、末梢神経障害、および脊髄性筋萎縮症、急性腎障害、腎結石、腎盂腎炎を含む腎感染症、腎嚢胞、腎がん、対象が腎臓透析を必要とする病状、膵臓がん、クローン病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、乾癬、グレーブス病、潰瘍性結腸炎、気分障害、ならびに/または認知障害を含み得る。
【0066】
キット
本明細書に記載される方法における使用のためのキットもまた、本明細書で提供される。例えば、キットは、経口投与のためのセリンプロテアーゼ阻害剤を含む組成物を含み得る。使用説明書をキットに含めることもできる。
【実施例】
【0067】
[実施例1]
ラットのさまざまな臓器における試料収集およびセリンプロテアーゼ阻害
動物および組織収集
成熟期(4か月、300~350gm)および老齢期(24か月、375~450gm)の雄性Wistarラット(Harlan Sprague Dawley Inc.、Indianapolis、IN)を試験に含めた。動物は、標準的な研究用固形飼料(8604 Teklad rodent diet;Harlan Laboratories、Indianapolis、IN)を制限せずに与えて維持し、水は自由に摂取させ、無菌条件のない別々の部屋で維持した。それらは正常な運動性、水および食物の消費ならびに糞便物質の排出を示すことが確認された。病的状態の徴候を示した動物は除外した。老齢動物のサブグループに、セリンプロテアーゼ阻害剤(トラネキサム酸、14日間)を飲料水中にて与えたが(137mM、毎日交換)、これは40ml/日の最小水分消費量で、350gm体重(BW)について0.39gm/kg/日という最小用量をもたらした。
【0068】
全身麻酔(2%リドカインHCl[Hospira,Inc、Lake Forrest、IL]による局所麻酔後に、ペントバルビタールナトリウム、50mg/kg[Abbott Laboratories、North Chicago、IL]により筋肉内)の後に、大腿静脈カテーテルを留置した。組織(腸、肝臓、肺、心臓、腎臓、脳、腸間膜(n=1))を、安楽死(Beuthanasia、静脈内、120mg/kg、Schering-Plough Animal Health Corp、Union、NJ)の後に直ちに収集し、固定し(ホルマリン、10%、中性緩衝化、1時間)、後固定して(新鮮なホルマリン溶液中、24時間)、ホルマリン(10%)中で貯蔵した。組織収集中のMMPの活性化またはデノボ合成を最小限にするために、最初の麻酔と腸間膜の固定との間の期間は60分未満に保った。
【0069】
組織切片
ホルマリン固定した組織を、ビブラトーム(Pelco Lancer Vibratome Series 1000)で切り出して40μmの切片にした。
【0070】
さらに、腸のより薄い切片を作製するために、上部空腸のセグメントをアラルダイト樹脂(Polysciences、Washington、PA)中に包埋し、再び切り出して1μmの切片にした(Ultramicrotome、LKB Ultratome Nova、ダイヤモンドナイフを用いて)。樹脂を除去し(Maxwell Solution(1回の浸漬))、水道水ですすぎ洗いして、過酸化水素(4%、1分間)中でインキュベートし、すすぎ洗いして(リン酸緩衝液中)、トリプシンに関して免疫標識した。
【0071】
セリンプロテアーゼの免疫組織化学
組織切片上の免疫標識密度およびセリンプロテアーゼの分布を決定するために、膵トリプシンMoAb(D-1):sc-137077(Santa Cruz)一次抗体を使用し、続いて二次抗体(抗ウサギIgGについてはMP-7601;抗マウスIgGについてはMP-7602;ImmPRESS Excel染色キットペルオキシダーゼ)を使用した。2つの基質色、赤(ImmPACT(商標)AEC基質キットペルオキシダーゼ、sk-4205;Vector(登録商標)Laboratories)および茶(ImmPACT(商標)DAB基質キットペルオキシダーゼ、sk4105;およびVectorstain Elite ABC-HRPキット、Vector(登録商標)Laboratories)を使用した。一次抗体を含まない切片を対照とした。細胞および血管構造が容易に同定されることから、定量的な標識強度測定を容易にするための対比染色は適用しなかった。切片に適用される一次抗体および二次抗体の濃度および曝露を調整して(それぞれ、24時間、およびVector(登録商標)Laboratoriesによるプロトコールに従う)、組織切片への抗体の完全な浸透を達成した。標識密度の定量的比較を可能にするために、すべての手順を、標準化された条件下で行った。
【0072】
ホールマウント組織標識
小腸:近位空腸(3×5mm)の壁の全層組織ブロックを、10%ホルムアルデヒド中ですべての側から固定した。セリンプロテアーゼは、DAB(Peroxidase Substrate Kit、ab64238、ABCAM)で標識した一次抗体および二次抗体により検出した。
【0073】
小腸の上皮細胞上のムチン含有粘液層を、アルシアンブルー(pH 2.5、kt 003;Diagnostic BioSystems、Pleasanton、CA)を使用して染色し、その後に蒸留水ですすぎ洗いして、顕微鏡スライド(Vector Mount AQ Aqueous Mounting Medium、Vector Laboratories、Burlington、CA)上にマウントした。
【0074】
腸間膜:無傷の腸間膜セクターにおけるトリプシン分布を、MoAb(D-1)、二次抗体(抗マウスIgG、MP-7602、ImmPRESS Excel染色キットペルオキシダーゼ、Vector(登録商標)Laboratories)および褐色基質(ImmPACT DAB sk-4105)によるビオチン/アビジン免疫標識によって描写した。
【0075】
コラーゲン断片標識
樹脂の除去後に、1μm切片を、折り畳まれていないコラーゲンに三重らせん形成によって結合して、コラーゲンの分子レベルの欠陥を高い特異性で局在化する、ビオチン結合コラーゲンハイブリダイゼーションペプチド(B-CHP)により標識した。
【0076】
組織切片をB-CHP(ストック溶液、150mM;最終適用溶液7.5mM)で染色した。トリマーCHPを、使用前に熱的にモノマーへと解離させ(80℃で10分間)、この高温のCHP溶液を、室温へと急速冷却して(4℃の水中に15秒間浸漬することによって)、希釈し、直ちに切片に適用する(待ち時間は1分間未満)。こうすることで、ほとんどのCHPペプチドは、CHP三重らせんフォールディングに関する動態研究に基づいて、染色プロセスの間に活性モノマーとして残ることが予想された。切片を室温で一晩インキュベートし、未結合のB-CHPを洗浄(1mlの1×PBS中にて、室温で30分間を3回)によって除去した。B-CHPを可視化するために、組織切片をストレプトアビジンペルオキシダーゼ(sk-5704、Vector(登録商標)Laboratories、製造元の指示に従う)とともにインキュベートし、続いて室温で基質(ImmPact AEC Substrate Kit Peroxidase;sk-4205、Vector Laboratories)とともにインキュベートした(組織に応じて1~10分間)。切片のB-CHP標識強度をデジタル顕微鏡で記録した。
【0077】
小腸の薄(1μm)切片をムチンおよびトリプシンの両方について標識するために、固定した腸をトリプシンに対する一次抗体中に浸漬し、DAB基質により染色した。その後、組織を樹脂中に包埋して、切片にした。ムチン標識(アルシアンブルー)を薄切片に適用し、カバーガラスをかけて画像化した。
【0078】
グルコース分析
組織収集の時点で、新鮮な大腿動脈血を使用して、血中グルコースレベル(Contour、Bayer Diabetes Care、Tarrytown、NY)および糖化ヘモグロビンレベルのパーセント(A1C Home Test;Bristol-Myers-Squibb Co;NY、NY)を測定した。
【0079】
インスリン受容体密度(腸間膜中)
インスリン受容体切断の測定は、その外部ドメインを抗体で標識することによって実施した。固定した組織切片(10%ホルマリン、中性緩衝化)を、インスリン受容体の細胞外ドメインに対する一次抗体(N末端にマッピングされるRα、N-20、sc-710ポリクローナル抗体、Santa Cruz Biotech)を用いて同定した。ペルオキシダーゼ酵素基質(ImmPACT AEC基質キットsk-4205;Vector(登録商標)Laboratories.)を用いるビオチン/アビジン手法を使用して、一次抗体を可視化した。一次抗体を含まない切片を陰性対照として使用した。
【0080】
デジタル画像解析
免疫標識密度の画像を、組織の比較的低倍率の全体像(10倍対物レンズ、開口数0.25)から単一細胞のより高い倍率(60倍油浸対物レンズ、開口数1.4)までの異なる倍率で記録した。画像は、デジタルカメラ(Spot Insight GIGABITカメラ、Sterling Height)を用いて、サブステージ集光器の固定設定下において標準的な光条件下で記録され、その結果、カメラは定量的な光強度メーターとして機能する。画像を研究室コンピューターで解析して、オペレーター誤差を最小限にした(NIH Image、1.61、パブリックドメインソフトウェア、空間分解能640×480ピクセル)。
【0081】
免疫基質標識の密度を、A=ln(I/Io)となるような光吸収(A)の形態で測定した。Iは組織上の光強度であり、Ioは組織を含まない入射光強度である。各臓器について、1群当たりの平均標識密度(1群当たり3匹)を、動物当たりの平均標識密度から決定した(5枚の臓器組織切片/動物、30点の画像/切片から決定)。
【0082】
統計
測定値を、平均±標準偏差としてまとめた。2群間の比較のために、対応のない両側スチューデントt検定を使用した。分散分析(ANOVA)を使用して、群間の目的のアウトカムの差について検定した。結果は、p<0.05で有意であると判定した。Bonferroniの事後多重比較検定を使用して、個々の群間の有意性を判定した。使用した動物の数は、群間の等しい分散、α=0.05およびβ=1~0.9を仮定して、統計的に決定的な結果を得るために必要な実験動物の数が最小限になるように推定した。動物を試験群または対照群にランダムに割り当てた。分析から除外された動物はなく、試験は盲検式とした。
【0083】
結果-心臓
免疫組織化学を、若齢群、老齢群、および老齢処置群について、ラット心筋における膵トリプシンに対するmABを用いて標準的な条件下で行った。経口トリプシンインヒビターによる2週間の処置は、老齢ラット(100週齢;「老齢処置」)における膵トリプシン蓄積を、若齢ラット(16週齢)で見られるのと同程度のレベルまで減少させる(
図1A)。さらに、経口トリプシンインヒビターによる2週間の処置は、老齢の処置ラットの心筋におけるコラーゲン断片化を、老齢ラットで見られるレベルより下の、若齢ラット(16週齢)で見られるレベルと同程度のレベルまで減少させる(
図1B)。結果は、セリンプロテアーゼ阻害剤による介入が、老齢ラットにおけるコラーゲン断片化を防止し、臓器機能を改善することを示す。
【0084】
結果-脳
免疫組織化学を、若齢群、老齢群、および老齢処置群について、ラット脳における膵トリプシンに対するmABを用いて標準的な条件下で実施した。経口トリプシンインヒビターによる2週間の処置は、老齢ラット(100週齢;「老齢処置」)における膵トリプシン蓄積を、若齢ラット(16週齢)で見られるのと同程度のレベルまで減少させる(
図2A)。さらに、経口トリプシンインヒビターによる2週間の処置は、老齢の処置ラットのラット脳におけるコラーゲン断片化を、老齢ラットで見られるレベルより下の、若齢ラット(16週齢)で見られるレベルと同程度のレベルまで減少させる(
図2B)。結果は、セリンプロテアーゼ阻害剤による介入が、老齢ラットにおけるコラーゲン断片化を防止し、臓器機能を改善することを示す。
【0085】
結果-腸
免疫組織化学を、若齢動物群、老齢動物群、および老齢処置動物群について、ラット腸における膵トリプシンに対するmAbを用いて標準的な条件下で行った。経口トリプシンインヒビターによる2週間の処置は、老齢ラット(100週齢)における膵トリプシン蓄積を、若齢ラット(16週齢)で見られるのと同程度のレベルまで減少させる(
図3A)。
【0086】
ラット小腸における絨毛は、細長い襞状の絨毛からなる。襞は腸の長軸と平行に整列している。小腸の絨毛におけるムチンは、消化酵素に対するバリアである。ムチン標識密度は、老齢ラットにおいて、特に絨毛の先端で有意に低下する。ムチン標識密度は、老齢の処置ラットにおいて、2週間経口投与されたトリプシンインヒビターによって部分的に回復した(
図3B)。
【0087】
[実施例2]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-心臓
患者は、息切れおよび疲労を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が心不全の症状を有する可能性が高いと判定する。医師は、心不全症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の心不全症状は安定し、改善し始める。
【0088】
[実施例3]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-脳
患者は、健忘症および記憶の問題を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が軽度認知障害を有する可能性が高いと判定する。医師は、軽度認知障害の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の軽度認知障害症状は安定する。
【0089】
[実施例4]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-腎臓
患者は、尿量低下および疲労感を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が腎不全の症状を有する可能性が高いと判定する。医師は、腎不全症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の腎不全症状は改善する。
【0090】
[実施例5]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-肝臓
患者は、黄疸および吐き気を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が肝不全の症状を有する可能性が高いと判定する。医師は、肝不全症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の肝不全症状は安定する。
【0091】
[実施例6]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-肺
患者は、息切れおよび咳を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が肺疾患の症状を有する可能性が高いと判定する。医師は、肺疾患症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の肺疾患症状は安定する。
【0092】
[実施例7]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-腸
患者は、消化不良、鼓脹、および吐き気を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が腸管穿孔/漏出性腸管の症状を有する可能性が高いと判定する。医師は、漏出性腸管症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の漏出性腸管症状は安定する。
【0093】
[実施例8]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-振戦
患者は、手にふるえがあり、書くことまたは描くことの困難を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が振戦の症状を有する可能性が高いと判定する。医師は、患者の振戦症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の振戦症状の1つまたは複数は、一般に安定する。
【0094】
[実施例9]
患者における可能性のある病状の例示的な処置-不安定血圧
患者は、不安定血圧を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が処置を必要とする不安定血圧を有すると判定する。医師は、患者の不安定血圧の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の血圧は安定する。
【0095】
[実施例10]
老齢患者における一般的な生物学的加齢の例示的な処置
比較的老齢の患者が、数年前との比較で、筋力の軽度の喪失、視力および聴力の軽度の喪失、ならびに活力の軽度の喪失を伴って医師を受診する。医師は患者を評価して、患者が何らかの特定の疾患または病状についての基準を現時点で満たしておらず、これらの症状が生物学的加齢に起因する可能性が高いと判定する。医師は、患者の症状の処置のために、本明細書で開示される医薬組成物の長期的投与を処方する。患者の症状の1つまたは複数は、一般に安定する。
【0096】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明とともに記載してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、限定は意図していないことを理解されたい。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】