(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】新規組換えコラーゲンポリペプチドおよび分子
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20250117BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250117BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20250117BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20250117BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250117BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20250117BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20250117BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20250117BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07K14/78
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K8/65
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/10
A61Q5/02
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542245
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2023050880
(87)【国際公開番号】W WO2023135300
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524265345
【氏名又は名称】カンブリアム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(74)【代理人】
【識別番号】100155125
【氏名又は名称】池田 直俊
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバート,タマラ
(72)【発明者】
【氏名】コットン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】サルヴィ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ボニン,ルシール
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA77X
4B065AA87X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA50
4C083AD431
4C083AD432
4C083CC02
4C083CC23
4C083CC33
4C083CC38
4C083EE12
4C083FF01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA21
4H045CA40
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規組換えコラーゲンポリペプチドおよびコラーゲン分子、それをコードしているポリヌクレオチド、それらを調製する方法、ならびにその組成物および使用に関する。新規組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、予防的抗老化、治癒的抗老化、抗酸化、抗色素沈着、加湿、抗皺、および弾性促進の活性を含む、皮膚にとってのその複数の利点のため、化粧品、パーソナルケア、栄養補助食品、および生物医学の応用において使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のコラーゲンポリペプチド。
【請求項3】
コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列が少なくとも2.5%のヒドロキシプロリンを含む、請求項1または請求項2に記載のコラーゲンポリペプチド。
【請求項4】
>7、好ましくは>8の等電点を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【請求項5】
2~45kDaの分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【請求項6】
5~20kDaの分子量を有する、請求項5に記載のコラーゲンポリペプチド。
【請求項7】
抗老化活性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含むコラーゲン分子。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチドをコードしている核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の発現ベクターまたは請求項9に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチドまたは請求項8に記載のコラーゲン分子と、1つまたは複数の賦形剤とを含む組成物。
【請求項13】
クリーム、乳濁液、血清、水溶液、軟膏、ペースト、ローション、懸濁液、ゲル、マスク、皮膚洗浄剤、洗浄クリーム、洗浄ローション、洗浄ミルク、洗浄パッド、洗顔料、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、またはボディーシャンプー中に含まれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
錠剤、カプセル、顆粒、または粉末中に含まれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
1つまたは複数の追加の活性成分を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
損傷した皮膚を修復すること、または皮膚を酸化損傷、色素沈着、もしくは老化から保護することにおける、請求項12から15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
皮膚加湿剤としての、請求項12から15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
(a)1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(b)任意選択で、ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ酵素をコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(c)(a)のヌクレオチド配列および任意選択で(b)を少なくとも1つのベクター内に挿入するステップと、
(d)(c)のベクターを培養酵母細胞中で発現させるステップと、
(e)培養酵母細胞から組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を単離するステップと
を含む、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を調製する方法。
【請求項19】
酵母細胞がピキア・パストリス細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(a)および/または(b)のヌクレオチド配列を、小胞体内への翻訳後移行を可能にするベクター内に挿入する、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を培養酵母細胞の培養上清から単離する、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項18から21のいずれか一項に記載の方法によって調製した、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規組換えコラーゲンポリペプチドおよびコラーゲン分子、それをコードしているポリヌクレオチド、それらを調製する方法、ならびにその組成物および使用に関する。新規組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、予防的抗老化、治癒的抗老化、抗酸化、抗色素沈着、加湿、抗皺、および弾性促進の活性を含む、皮膚にとってのその複数の利点のため、化粧品、パーソナルケア、栄養補助食品、および生物医学の応用において使用し得る。
【背景技術】
【0002】
化粧品産業は、数年の間、様々な化学的および機械的処置を用いて皮膚老化および皮膚損傷を予防することに焦点を当てている。内因的な皮膚老化は、皮膚の菲薄化、乾燥、および皺の出現を司っている回避不能なプロセスである。他方では、皮膚への外因的な損傷は、空気汚染または日光曝露などの環境的侵襲によって引き起こされる。これはまた、皺の出現、弾性の喪失、および皮膚構造の劣化をもたらす。
【0003】
コラーゲンは、ヒト皮膚における主な構造タンパク質である。ヒト皮膚は上層(表皮)および下層(真皮)を有する。コラーゲンは、細胞外基質(ECM)中に特異的に存在し、表皮および真皮中に存在する周囲の細胞に構造および支持を提供することを司っている。ヒトECMにおける構造的変化は、時間とともに皮膚老化を引き起こすことが知られている。これらの変化をもたらす機構は、皮膚の主な構成要素の分子的および機械的完全性に影響を与える内因的および外因的な要因をどちらも含む。
【0004】
したがって、皮膚老化を管理するための戦略は、(1)皮膚を適切に養って潤わせることによって、内因的な老化プロセスを遅くすること、(2)皮膚を遮蔽することによって、UV曝露および皮膚酸化などの外因的な要因に対して保護すること、ならびに(3)老化に伴う内因的な安定コラーゲンの欠如を補うことであった。
【0005】
上記戦略を用いることを目的とするスキンケア製品は、しばしばコラーゲンを含有する。コラーゲンおよび変性して部分的に分解されたコラーゲンであるゼラチンは、動物組織から単離する。化粧品市場の典型的なコラーゲン製品は、完全長または加水分解コラーゲン製品へと分類することができる。抽出した完全長コラーゲンを使用するコラーゲン製品は加湿効果を示す傾向にあるが、皮膚障壁を透過するには一般に大きすぎる。完全長コラーゲンは、皮膚の上に置かれる層として作用する傾向にある。加水分解コラーゲン、すなわち、より小さな小片(<1000Da)へと分解された完全長タンパク質は、抗微生物特性およびより長いコラーゲンポリペプチドよりも高い生体利用能を有すると考えられており、酵素消化または酸もしくは塩基中でのインキュベーションによって生成することができる。そのような方法で、完全長動物コラーゲンタンパク質に由来する多くのペプチドが生成され、異種混合物を表す。これらのペプチドのうちの一部は、完全長コラーゲンよりも有効に皮膚を透過するために十分に短いが、その活性濃度は必然的に低くなる。
【0006】
しかし、動物由来のコラーゲンの異種間生体適合性および免疫原性、動物由来の汚染病原体の危険性、ならびに同一の化学組成を有するコラーゲン調製物の再現性のある単離の困難性に関連する懸念が原因で、スキンケア製品のためのコラーゲンの代替供給源の必要性が生じている。実際、ゼラチン調製物のばらつきは、その使用において顕著な問題を生じる。さらに、多くの消費者は、非動物(すなわちヴィーガン)供給源に由来するコラーゲン調製物をより好む。
【0007】
代替供給源のコラーゲン(たとえば細菌性コラーゲン)を使用する化粧料は、ヒトタンパク質と構造が類似しているタンパク質を使用し得るが、典型的にはヒトタンパク質の実際のアミノ酸組成を再現せず、したがってヒトコラーゲンほど有効でない。
【0008】
したがって、ヒトタンパク質と構造が同じまたは類似であるだけでなく、従来技術のコラーゲン分子と比較して、化粧品、パーソナルケア、栄養補助食品、および生物医学的使用のために優れた抗老化および皮膚治癒特性を提供する、代替供給源のコラーゲンの必要性が存在する。本発明の新規コラーゲンポリペプチドおよびコラーゲン分子はこれらの必要性を満たす。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ヒトI型アルファ1(A1)コラーゲンに由来する配列を含み、培養酵母細胞から分泌されることができる、コラーゲンポリペプチドを提供する。これらのコラーゲンポリペプチドはまた、高次構造、特にホモ三量体コラーゲン分子も形成し得る。注目すべきことに、本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドおよびコラーゲン分子は、予防的抗老化、治癒的抗老化、抗酸化、抗色素沈着、加湿、抗皺、および弾性促進の活性を含む、多様な皮膚に対する有益効果に関連している。したがって、本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドおよび分子は、注目すべき抗老化効果に関連している。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドを提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載の3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含むコラーゲン分子を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチド、またはそれと少なくとも85%同一であるポリペプチドをコードしている核酸、およびそれを含む発現ベクターを提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載の発現ベクターまたは核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子と、1つまたは複数の賦形剤とを含む組成物、ならびに前記組成物の使用を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、
(a)1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(b)任意選択で、ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ酵素をコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(c)(a)のヌクレオチド配列および任意選択で(b)を少なくとも1つのベクター内に挿入するステップと、
(d)(c)のベクターを、培養酵母細胞、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)中で発現させるステップと、
(e)培養酵母細胞から組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を単離するステップと
を含む、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を調製する方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、本明細書中に記載の方法によって調製した組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ピキア・パストリスによる様々なコラーゲンポリペプチドの発現および分泌を示すSDS-PAGEゲルの図である(構築体#2(配列番号8)、#4(配列番号10)、#6(配列番号12)、および#8(配列番号14)を用いて生成-表2を参照)。矢印は目的の化合物を指す。アスタリスクはP4Hサブユニットを示す。
【
図2】ペプシン消化および非消化タンパク質懸濁液の、SDS-PAGE4~16%分析による比較を示す図であり(完全長構築体#5(配列番号11)および#6(配列番号12)、矢印によって示したバンドはペプシンによる消化に対して耐性であるため、ホモ三量体コラーゲン分子がピキア・パストリスによって生成および分泌されることを示す。ゲル上のより低い重量のバンドとして示される切断産物(配列番号21および配列番号22)についても、同じであると思われる。
【
図3】正常なヒト真皮ケラチノサイトに対する、試験したコラーゲンポリペプチドおよび緩衝溶液の細胞毒性活性を示す図である(パネルA~Gはそれぞれ試料1~7の結果を示す)。
【
図4】NHEK細胞における様々な遺伝子の発現に対する、試料2、4、5、および7の生物活性を示す図である。縦軸は、ブランク配合物(緩衝溶液、試料1、3、および6を参照)で処理した細胞と比較した、過剰発現または過小発現の百分率を示す。試料2、4、5、および7をそれぞれ試料1、3、3、および6と比較する。MMP1:マトリックスメタロペプチダーゼ1、SIRT2/SIRT6:サーチュイン2および6、SOD2:ミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼ2、GLRX:グルタレドキシン、HMOX1:ヘムオキシゲナーゼ1)、AZGP1:アルファ-2-糖タンパク質1、亜鉛結合性。(-)は、この遺伝子の過小発現が、皮膚に対する有益効果に関連している場合があることを示す。(+)は、この遺伝子の過剰発現が、皮膚に対する有益活性に関連している場合があることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明が容易に理解されるように、本発明の過程で使用する用語のいくつかの定義を以下に記載する。
【0019】
本明細書中で使用する略記「kDa」はキロダルトンを表す。
【0020】
本明細書中で使用する用語「アミノ酸」とは、20種の天然に存在するアミノ酸のうちの1種、または任意の非天然類似体をいう。好ましくは、用語「アミノ酸」とは、20種の天然に存在するアミノ酸のうちの1種をいう。
【0021】
本明細書中で使用する用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、アミノ酸の配列から構成される高分子を意味する。タンパク質は、ネイティブタンパク質、すなわち、天然に存在する非組換え細胞によって生成されるタンパク質であることができるか、あるいは、遺伝子操作した細胞もしくは組換え細胞から生成することができ、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはネイティブ配列の1つもしくは複数のアミノ酸からの欠失、それに対する付加、および/もしくはその置換を有する分子を含む。
【0022】
用語「配列同一性」とは、ヌクレオチド(核酸とも呼ばれる)配列またはアミノ酸配列であることができる、2つの配列間の相同性の度合の定量的尺度を示す。比較する2つの配列の長さが等しくない場合は、可能な最良の当て嵌めを与えるために、これらをアラインメントして、ギャップの挿入、または核酸配列もしくはアミノ酸配列の末端での切断を許容しなければならない。当業者には、配列同一性を比較するための様々な手段が利用可能であることが理解されよう(以下を参照)。
【0023】
本明細書中で使用する「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸を、以下の6つの群に従って、そのそれぞれの群中の別のアミノ酸によって置換することができることを意味する:[1]アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、[2]アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、[3]アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、[4]アルギニン(R)、リシン(K)、[5]イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および[6]フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0024】
本明細書中で使用する用語「ホモ三量体」とは、同じ種類の3つのコラーゲンポリペプチド、すなわち3個のヒトI型A1コラーゲンポリペプチドの複合体を意味する。
【0025】
本明細書中で使用する「組換え」とは、組換え技法を使用して作製した、すなわち天然に存在しない、ポリペプチドまたはタンパク質分子をいう。組換え核酸およびポリペプチドを生成するための方法および技法は当分野で周知である。
【0026】
本明細書中で使用する「単離した」とは、細胞培養から取り出され、細胞培養構成要素から分離されたタンパク質をいい、たとえば、これは細胞培養構成要素の少なくとも90%から分離され得る。
【0027】
本明細書中で使用する「抗酸化剤」である分子は、たとえば皮膚細胞中において、抗酸化活性を有する、すなわち、ネイティブ抗酸化経路を刺激することができる。
【0028】
本明細書中で使用する「抗老化活性」を有する分子は、皮膚細胞、たとえば正常なヒト真皮ケラチノサイト中において、たとえば、予防的および治癒的な抗老化、抗酸化、および抗色素沈着に関与していると記載されている遺伝子(たとえばmRNAシーケンシングを介して決定)を含む、老化プロセスに関与する遺伝子の示差的転写調節によって、(ベースライン発現レベルと比較して)内因的な老化プロセスを遅くすることができる。
【0029】
「ベクター」とは、それと連結している別の核酸(または「構築体」)を、細胞内に、たとえば電気穿孔によって導入するために使用することができる、核酸である。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、それ内に追加の核酸セグメントをライゲーションさせることができる、直鎖状または環状の二本鎖DNA分子をいう。別の種類のベクターは、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム内に導入することができるウイルスベクター(たとえば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)である。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律複製することができる(たとえば、細菌複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(たとえば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入の際に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ、選択圧下で培養することによって、宿主ゲノムと共に複製される。ベクターは、細胞中における選択された核酸の発現を指示するために使用することができる。
【0030】
「宿主細胞」とは、核酸、たとえば本明細書中に開示した核酸を発現させるために使用することができる細胞である。本発明による宿主細胞は、酵母細胞、好ましくはピキア・パストリスである。
【0031】
本明細書中で使用する「対象」は、すべての哺乳動物、好ましくはヒトを含む。
【0032】
本明細書中で使用する「患者」とは、処置する対象をいう。
【0033】
本明細書中で使用する「処置」とは、疾患もしくは状態の症状を軽減させること、疾患もしくは状態の進行を阻害すること、疾患もしくは状態の回帰を引き起こすこと、および/または疾患もしくは状態を治癒することと同義である。本発明における用語「処置」とは、治療処置、および疾患または状態のための予防的または抑制的手段を含むことを意図する。
【0034】
本明細書中で使用する用語「発明の」または「発明による」とは、本明細書中に開示および/または特許請求した、本発明のすべての態様および実施形態をいうことを意図する。本明細書中で「本明細書中に開示した」または「本明細書中に記載の」として言及した任意の態様、事項、または実施形態は、「本発明の」または「本発明による」態様、事項、または実施形態であると理解されるものである。
【0035】
本明細書中で使用する用語「含むこと(comprising)」とは、「含むこと(including)」および「からなること(consisting of)」の両方を包含すると解釈されるものであり、どちらの意味も、本発明による、具体的に意図され、したがって個々に開示されている実施形態である。
【0036】
本明細書中で使用する、要素または構成要素に先行する冠詞「a」および「an」は、要素または構成要素の事例(すなわち出現)の数に関して非制限的であることを意図する。
【0037】
したがって、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むとして読むものであり、要素または構成要素の単数形は、数が明らかに単数であることを意味しない限りは、複数形も含む。
【0038】
コラーゲンポリペプチド
一態様では、本発明は、1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドを提供する。ヒトI型A1コラーゲンのアミノ酸配列は、本明細書中で配列番号20に提供されている。
【0039】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは2~45kDaの分子量を有する。ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは5~20kDaの分子量を有する。本発明のコラーゲンポリペプチドの大きさが、これらが完全長コラーゲンよりも有効に皮膚を透過することを可能にすると考えられている。
【0040】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、ヒトI型コラーゲンA1の断片である。
【0041】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、少なくとも2つのPGPアミノ酸配列を含み得る。
【0042】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は少なくとも10%のプロリンを含む。好ましくは、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は少なくとも15%のプロリンを含む。より好ましくは、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は少なくとも20%のプロリンを含む。
【0043】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも1.5%、少なくとも2.5%、少なくとも5%、または少なくとも7.5%のヒドロキシプロリンを含む。コラーゲン中のより高いヒドロキシプロリン比は、より高い加湿および抗老化活性に対応すると予想される。1つの潜在的な作用機構がヒドロキシプロリン含有ジペプチドおよびトリペプチドの血流内への通過に関係しているため、より高いヒドロキシプロリン比はまた、栄養補助食品としての性能を改善させるとも予想される。
【0044】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも15%のグリシンを含む。好ましくは、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも20%のグリシンを含む。より好ましくは、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも25%のグリシンを含む。
【0045】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列はヒドロキシル化リシンを含む。
【0046】
本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドのプロリン/ヒドロキシプロリン、グリシン、および/またはヒドロキシル化リシンに富んだアミノ酸配列が、ヒト皮膚に対するその優れた加湿および抗老化効果に寄与すると考えられている。
【0047】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、>7、好ましくは>8の等電点を有する。
【0048】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは抗酸化剤である。
【0049】
たとえば、コラーゲンポリペプチドは、好ましくは、GFSGLDGAKGD(配列番号6)である、または3個までの保存的アミノ酸置換によってGFSGLDGAKGD(配列番号6)と異なる、アミノ酸配列を含み得る。
【0050】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは抗老化活性を有する。したがって、ある特定の実施形態では、本発明のコラーゲンポリペプチドを含む生成物は、老化プロセスに関与する遺伝子の示差的転写調節によって、皮膚細胞中において内因的な老化プロセスを遅くする。
【0051】
したがって、ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるMMP1の発現を、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%下方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。他の実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるSIRT2/SIRT6の発現を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。他の実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるSOD2の発現を、少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも90%上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるGLRXの発現を、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。他の実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるHMOX1の発現を、少なくとも40%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも120%、最も好ましくは少なくとも150%上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。他の実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるAZGP1の発現を、少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも90%上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。
【0052】
好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるSIRT2/SIRT6、SOD2、GLRX、HMOX1、およびAZGP1のうちの1つまたは複数の発現を上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。一部の特に好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるSIRT2/SIRT6、SOD2、GLRX、HMOX1、およびAZGP1の発現を上方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。これらの実施形態の一部では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるMMP1の発現を下方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。
【0053】
好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、皮膚細胞中におけるSIRT2/SIRT6、SOD2、GLRX、HMOX1、およびAZGP1のうちの1つまたは複数の発現を少なくとも50%上方制御し(ベースライン発現レベルと比較して)、皮膚細胞中におけるMMP1の発現を少なくとも50%下方制御する(ベースライン発現レベルと比較して)。
【0054】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは低アレルギー性である。したがって、ある特定の実施形態では、本発明のコラーゲンポリペプチドを含む生成物は、対象に施用した場合に、前記対象においてアレルギー反応を誘発しない。
【0055】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号1~4または7~17のうちの任意の1つと少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、コラーゲンポリペプチドは、配列番号1~4および7~17から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号2と少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号2であるアミノ酸配列を含む。
【0057】
他の好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号3、21、および22のうちの任意の1つと少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。これらの実施形態の一部では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号3、21、および22のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含む。
【0058】
特定の実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号8と少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号8であるアミノ酸配列を含む。
【0059】
特に好ましい実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含み、5~20kDaの分子量を有する。これらの実施形態の一部では、コラーゲンポリペプチドは>8の等電点を有する。これらの実施形態の一部では、コラーゲンポリペプチドは少なくとも2.5%のヒドロキシプロリンを含む。
【0060】
タンパク質および/または核酸配列の同一性(相同性)は、当分野で知られている様々な配列比較アルゴリズムおよびプログラムのうちの任意のものを使用して評価することができる。配列比較では、典型的には、1つの配列が参照配列の役目を務め(たとえば本明細書中に開示した配列)、それに対して試験配列を比較する。その後、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0061】
2つのアミノ酸または2つの核酸配列のパーセント同一性は、たとえば、Altschulら、1990年、J.Mol.Biol.、215:403~410頁、Altschulら、1997年、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402頁、およびKarinら、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90:5873~5787頁に記載されているBLASTアルゴリズムによって決定することができる。あるいは、2つのアミノ酸または2つの核酸配列のパーセント同一性は、たとえば、Benjamin Buchfink、Chao Xie、およびDaniel H.Huson、Fast and Sensitive Protein Alignment using DIAMOND、Nature Methods、12、59~60頁(2015年)に記載されているDIAMONDアルゴリズムによって決定することができる。
【0062】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは組換えコラーゲンポリペプチドである。
【0063】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドは、単離したコラーゲンポリペプチドである。
【0064】
核酸、ベクター、および宿主細胞
別の態様では、本発明は、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドをコードしている核酸を提供する。
【0065】
したがって、本発明の核酸は、1~80kDaの分子量を有する、配列番号2のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドをコードする。ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは2~45kDaの分子量を有する。一部の好ましい実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは5~20kDaの分子量を有する。
【0066】
ある実施形態では、核酸は、配列番号3、21、および22のうちの任意の1つのアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドをコードする。好ましくは、核酸は、配列番号3、21、および22のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0067】
他の実施形態では、核酸は、配列番号8、10、11、12、15、および16のうちの任意の1つのアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドをコードする。好ましくは、核酸は、配列番号8、10、11、12、15、および16のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0068】
好ましい実施形態では、核酸は、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドをコードする。好ましくは、核酸は、配列番号8のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0069】
別の態様では、本発明は、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0070】
さらに別の態様では、本発明は、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の発現ベクターまたは核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0071】
コラーゲン分子
別の態様では、本発明は、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含むコラーゲン分子を提供する。
【0072】
したがって、ホモ三量体として、本発明のコラーゲン分子は、2つのアルファ1ポリペプチドおよび1つのアルファ2ポリペプチドからなるヘテロ三量体である天然のヒトI型コラーゲンとは異なる。
【0073】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子はグリコシル化されている。
【0074】
好ましくは、コラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、ピキア・パストリスなどの培養酵母細胞から分泌されたものである。ある実施形態では、培養酵母細胞は野生型株である。あるいは、培養酵母細胞は、メタノールオキシダーゼがそのゲノムからノックアウトされていてよく、これは、これらがメタノール上でよりゆっくりと成長することをもたらす。好ましい実施形態では、培養酵母細胞はAOX1遺伝子の欠失を有する。ある実施形態では、培養酵母細胞はプロリル-4-ヒドロキシラーゼを安定に発現する。
【0075】
当業者には、酵母細胞中で組換え技法によって生成されたコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、ヴィーガン、すなわち、これらは動物または動物製品を供給源としないとして分類することができることが理解されよう。したがって、ある実施形態では、本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドおよびコラーゲン分子はヴィーガンである。
【0076】
組成物およびその使用
別の態様では、本発明は、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載のコラーゲンポリペプチドまたはその実施形態のすべてを有する本明細書中に記載のコラーゲン分子と、1つまたは複数の賦形剤とを含む、組成物を提供する。
【0077】
賦形剤は、たとえば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、プロピレン、グリコール、およびエタノール、ならびにその組合せなどの、当業者に知られている任意の賦形剤であることができる。
【0078】
本明細書中に記載の組成物は、水性担体および増粘剤を含む連続的な水性相を含み得る。水性相は、それだけには限定されないが、水溶性成分、水溶性の日焼け止め、および他の水溶性のスキンケア活性物質などの、油相中で限られた溶解性を示す他の親水性物質をさらに含み得る。本明細書中に記載の組成物は、約60%~約98%、好ましくは約65%~約97%の水性相を含む。
【0079】
本明細書中に記載の組成物は、担体、安定化剤、保存料、増粘剤、乳化剤、湿潤剤、軟化剤、および/または他の構成要素などの構成要素をさらに含み得る。
【0080】
担体は、たとえば、水性液体、デキストロース溶液、グリセロール溶液、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、リポソーム懸濁液;ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、およびゴマ油などの植物または合成起源のものなどの油;イソプロピルアルコール、ガス状フッ化炭素、エチルアルコール、ポリビニルピロリドン、プロピレングリコール、ゲル生成材料、ステアリルアルコール、ステアリン酸、モノオレイン酸ソルビタン、メチルセルロース、ならびにその組合せなどの、当業者に知られている任意の担体であることができる。
【0081】
本発明において特に有用な担体としては、水および低級アルキルアルコールの水溶液が挙げられる。本発明において有用な低級アルキルアルコールは、1~6個の炭素を有する一価アルコール、より好ましくはエタノールおよびグリセロールである。好ましくは、水性担体は実質的に水である。好ましくは脱イオン水を使用する。生成物の所望の特徴次第では、ミネラルカチオンを含む天然源からの水も使用することができる。
【0082】
本明細書中に記載の組成物のpHは、好ましくは約3~約8である。pHを、コラーゲンの最適な有効性を提供するpHに調節し得る。望ましいpHを達成するために、緩衝剤および他のpH調節剤を含めることができる。本明細書中における適切なpH調節剤としては、アセテート、ホスフェート、シトレート、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、およびカルボネートが挙げられる。
【0083】
安定化剤は、たとえば、アミノ酸;アスコルビン酸;ポロキサマーなどの界面活性剤;グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどの多価糖アルコール;ならびにその組合せなどの、当業者に知られている任意の安定化剤であることができる。
【0084】
本明細書中に記載の組成物の水性相は、約0.1%~約2%、好ましくは約0.2%~約1.5%の、シックナー、ゲル化剤、および構造化剤などの増粘剤を含む。増粘剤のレベルおよび種類は、他の構成要素との適合性、および生成物の他の所望の特徴に従って選択される。増粘剤としては、架橋結合されたポリアクリレートポリマーおよびコポリマー、疎水性修飾されたポリアクリレートポリマーおよびコポリマー、ポリアクリルアミドポリマーおよびコポリマー、ポリアクリロイルジメチルタウレート、アミノメチルプロパノール(AMP)系ポリマーおよびコポリマー、多糖、ならびにガムが挙げられる。カルボン酸/カルボキシレートコポリマーが本発明において有用である。本発明において有用なカルボン酸/カルボキシレートコポリマーの非限定的な例としては、商標名Pemulen TR-1、Pemulen TR-2、Carbopol Ultrez 10、Carbopol Ultrez 20、Carbopol Ultrez 21、Carbopol 1342、Carbopol 1382、およびCarbopol ETD 2020を有するCTFA名Acrylates/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー(すべてNoveon社製)、キサンタンガムが挙げられる。本発明において非常に有用な市販の追加の水溶性ポリマーとしては、Kelco社から入手可能な商標名KELTROLシリーズを有するキサンタンガム;商標名Carbopol 934、Carbopol 940、Carbopol 950、Carbopol 980、およびCarbopol 981を有するカルボマー(すべてNoveon社製);商標名ACRYSOL 22を有するアクリレート/ステアレス-20メタクリレートコポリマー(Rohm and Hass社製);商標名SEPIGEL 305を有するポリアクリルアミド(Seppic社製);商標名LUBRAGEL NPを有するグリセリルポリメタクリレート、および商標名LUBRAGEL OILを有するグリセリルポリメタクリレートとプロピレングリコールとPVM/MAコポリマーの混合物(すべてISP社製);商標名Clearogel SC11を有するスクレログルカン(Michel Mercier Products Inc社製);商標名CARBOWAXPEG、POLYOX WASR、およびUCON FLUIDSを有する酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン系ポリマー(すべてAmerchol社製)が挙げられる。増粘剤の別のクラスとしては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびベヘニルアルコールなどの構造化剤が挙げられる。
【0085】
本明細書中に記載の組成物は、油相を水性相中に分散および懸濁させるために有用な乳化剤を含有し得る。本明細書中に記載の組成物が乳化剤を含有する場合、これらは、乳化剤を1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.2%以下で含有する。乳化剤の例としては、ポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ステアレス-20、セテアレス-20、ジステアリン酸PPG-2メチルグルコース、セテス-10、ポリソルベート80、リン酸セチル、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ジエタノールアミン、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG-100、トリオレイン酸ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート(ポリソルベート85)、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン4ラウリルエーテルステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、ヘキシルラウレート、ジステアリン酸PPG-2メチルグルコース、セテス-10、リン酸ジエタノールアミンセチル、ステアリン酸グリセリル、PEG40水素化ヒマシ油、PEG-60水素化ヒマシ油、イソステアリン酸グリセレス-25PCA、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0086】
保存料は、たとえば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、アルキルパラベン、たとえば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール、ジオール、たとえば、プロパンジオール、ブチレングリコール、およびペンチレングリコールなどの、当業者に知られている任意の保存料であることができる。乳化剤の例としては、酢酸トリエチル、カプリン酸グリセリル、安息香酸、カプリン酸ソルビタン、グリセリン、レブリン酸ナトリウム、アニス酸ナトリウム、ペンチレングリコール、フェニルプロパノール、グルコノラクトン、ラクトバチルス属(Lactobacillus)発酵物、ラクトバチルス属、ココヤシ(Cocos Nucifera、ココナツ)果実抽出物、果実抽出物、ロイコノストック属(Leuconostoc)/ラディッシュ根発酵濾液、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
本明細書中に記載の組成物は、最終的な化粧料の有効性を増強させるために有用な1つまたは複数の追加の化粧品活性成分を含有し得る。本明細書中に記載の組成物が追加の活性成分を含有する場合、これらは、追加の活性成分を、20%以下、好ましくは10%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下で含有する。活性成分の例としては、それだけには限定されないが、ヒアルロン酸、加水分解コラーゲン、動物由来コラーゲン、海洋コラーゲン、銅ペプチド、ペプチド類および誘導体、レチノイドおよび誘導体、ナイアシンアミド、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、アルファヒドロキシ酸(AHA)、ベータヒドロキシ酸(BHA)、フェルラ酸、セラミド、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0088】
本明細書中に記載の組成物は、湿潤剤、軟化剤、剥離剤、非ビタミン抗酸化剤およびラジカル捕捉剤、発毛調節剤、ミネラル、保存料、植物ステロールおよび/または植物ホルモン、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、ならびにN-アシルアミノ酸化合物をさらに含み得る。適切な湿潤剤としては、それだけには限定されないが、ポリアルキレングリコールなどの多価アルコールおよびその誘導体が挙げられる。例示的なものは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシ化グリセリン、プロポキシル化グリセリン、およびそれらの混合物である。適切な軟化剤としては、それだけには限定されないが、炭化水素、脂肪酸、脂肪アルコール、およびエステルが挙げられる。
【0089】
本明細書中に記載の組成物中のさらに他の構成要素は、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマー、単糖、マンノースおよびトレハロースなどの二糖、オリゴ糖、多糖、デキストリンまたはデキストランなどの他の炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(たとえばZn-タンパク質錯体)、ならびに脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、または糖エステルであることができる。
【0090】
本明細書中に記載の組成物は、意図する使用に応じて、液体、半固体、または固体剤形などの多様な様々な形態で配合することができる。一実施形態では、本明細書中に記載の組成物は、クリーム、乳濁液、血清、水溶液、軟膏、ペースト、ローション、懸濁液、ゲル、マスク、石鹸などの皮膚洗浄剤、洗浄クリーム、洗浄ローション、洗浄ミルク、洗浄パッド、洗顔料、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、またはボディーシャンプー中に配合する。好ましくは、組成物はクリーム中に含まれる。別の実施形態では、本明細書中に記載の組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、または粉末などの固体剤形として配合する。
【0091】
本明細書中に記載の組成物は、対象に対して外用的に(すなわち、化粧品またはパーソナルケア製品として)使用することを意図する。本明細書中に記載の組成物はまた、内服的にも使用し得る(すなわち、栄養補助食品または生物医学的製品として)。したがって、ある実施形態では、本明細書中に記載の組成物は、局所的に、たとえば、表面的に(たとえばマイクロニードルを介して)または深部注射を介して施用する。他の実施形態では、本明細書中に記載の組成物は内服的に施用する。
【0092】
本明細書中に記載の組成物は、老化および皮膚損傷に関連するコラーゲンの喪失を補う。
【0093】
したがって、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の組成物は、損傷した皮膚を修復すること、または皮膚を酸化損傷、色素沈着、もしくは老化から保護することにおいて使用し得る。
【0094】
その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の組成物を、対象の皮膚または皮膚細胞に投与することを含む、損傷した皮膚を修復する方法、または皮膚を酸化損傷、色素沈着、もしくは老化から保護する方法も、本明細書中に同様に提供する。あるいは、組成物を内服的に投与し得る。
【0095】
その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の組成物の、皮膚加湿剤としての使用を、本明細書中にさらに提供する。
【0096】
本明細書中に記載の組成物は皮膚を養い、皮膚のきめ、皮膚のバランス、皮膚のふっくら感(plumping)、皮膚の滑らかさを改善させ、皺を軽減させることが予想される。
【0097】
ある実施形態では、本明細書中に記載の組成物は、皮膚障害の処置において使用するためのものである。皮膚障害の例としては、ざ瘡、酒さ、乾癬、アトピー性皮膚炎(湿疹)、接触皮膚炎、および白斑が挙げられる。
【0098】
組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を調製する方法
別の態様では、本発明は、
(a)1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(b)任意選択で、ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ酵素をコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(c)(a)のヌクレオチド配列および任意選択で(b)を少なくとも1つのベクター内に挿入するステップと、
(d)(c)のベクターを、培養酵母細胞、好ましくはピキア・パストリス中で発現させるステップと、
(e)培養酵母細胞から組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を単離するステップと
を含む、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を調製する方法を提供する。
【0099】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは2~45kDaの分子量を有する。ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは5~20kDaの分子量を有する。
【0100】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、少なくとも2つのPGPアミノ酸配列を含み得る。
【0101】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも10%のプロリンを含む。好ましくは、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも15%のプロリンを含む。より好ましくは、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも20%のプロリンを含む。
【0102】
ある実施形態では、コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも1.5%、少なくとも2.5%、少なくとも5%、または少なくとも7.5%のヒドロキシプロリンを含む。
【0103】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも15%のグリシンを含む。好ましくは、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも20%のグリシンを含む。より好ましくは、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも25%のグリシンを含む。
【0104】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列はヒドロキシル化リシンを含む。
【0105】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列は、>7、好ましくは>8の等電点を有する。
【0106】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは抗酸化剤である。
【0107】
たとえば、コードされているコラーゲンポリペプチドは、GFSGLDGAKGD(配列番号6)である、または3個までの保存的アミノ酸置換によってGFSGLDGAKGD(配列番号6)と異なる、アミノ酸配列を含み得る。
【0108】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは抗老化活性を有する。
【0109】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは低アレルギー性である。
【0110】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号1~4または7~17のうちの1つと少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号1~4および7~17から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0111】
好ましい実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号2と少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号2であるアミノ酸配列を含む。
【0112】
他の好ましい実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号3、21、および22のうちの1つと少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。これらの実施形態の一部では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号3、21、および22のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0113】
ある実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号8、10、11、12、15、および16のうちの1つと少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号8、10、11、12、15、および16のうちの1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0114】
好ましい実施形態では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号8と少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。これらの実施形態の一部では、コードされているコラーゲンポリペプチドは、配列番号8であるアミノ酸配列を含む。
【0115】
配列同一性を比較するための様々な手段は、本明細書中上記に開示されている。
【0116】
ある実施形態では、本方法によって生成した組換えコラーゲン分子は、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含む。
【0117】
ある実施形態では、本方法によって生成した組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、グリコシル化されている。
【0118】
ある実施形態では、ヒトI型コラーゲンA1の断片であるコラーゲンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列には、分泌シグナル配列をコードしているヌクレオチド配列が先行する。たとえば、分泌シグナル配列をコードしているヌクレオチド配列は、MatAlphaD分泌シグナル配列(配列番号5のアミノ酸配列)をコードし得る。OST1、MatAlphaF、インベルターゼ、およびヒト(Homo sapiens)由来のネイティブ分泌シグナルなどの、他の分泌シグナル配列も使用し得る。
【0119】
ある実施形態では、ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ酵素は、配列番号18および配列番号19によるアミノ酸配列によってコードされている。
【0120】
ある実施形態では、(a)および/または(b)のヌクレオチド配列は、二方向性プロモーターを使用するベクター内に挿入する。
【0121】
ある実施形態では、(a)および/または(b)のヌクレオチド配列は、誘導性および抑制解除性プロモーターを使用するベクター内に挿入する。たとえば、プロモーターはメタノール誘導性プロモーターであり得る。
【0122】
ある実施形態では、(a)および/または(b)のヌクレオチド配列は、小胞体内への翻訳後移行を可能にするベクター内に挿入する。
【0123】
ベクターは、形質移入、形質導入、または電気穿孔などの慣用手段によって、酵母細胞内に導入することができる。好ましくは、ベクターは、直鎖状にしたベクターの電気穿孔によって、酵母細胞内に導入する。
【0124】
酵母細胞は、約17~約23℃(たとえば約20℃)で、炭素源(たとえばグルコース)、窒素源(たとえばNH4+)、塩(たとえば、Na+、K+、Mg2+、Ca2+等)、微量元素、ペプトン(タンパク質の部分加水分解によって形成されたポリペプチドとアミノ酸の水溶性混合物)などの十分な栄養素、および適切なpH(たとえば酸性pH)での培養を用いて、培養することができる。十分な栄養素は、当分野で知られている酵母成長培地、たとえば、酵母およびカビの「YM」培地または酵母抽出物-ペプトン-デキストロース(YPD)培地によって提供することができる。典型的には、酵母成長培地は、酵母の成長を許可する一方で、細菌および他の酸不耐性生物の成長を阻止する、酸性pHの選択的成長培地である。
【0125】
ある実施形態では、本方法において使用する酵母細胞は野生型株である。あるいは、本方法において使用する酵母細胞は、メタノールオキシダーゼがそのゲノムからノックアウトされていてよく、これは、これらがメタノール上でよりゆっくりと成長することをもたらす。好ましい実施形態では、本方法において使用する酵母株はAOX1遺伝子の欠失を有する。そのような酵母の一例は、Invitrogen社(KM71H)、グラーツ工科大学(CBS7435MutS)、またはBiogrammatics社(BG11)から販売されているMutS株である。MutS株は、メタノールを唯一の炭素源として使用した場合に、それでもAox2を発現するが、野生型株よりもゆっくりと発現する。
【0126】
ある実施形態では、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、培養酵母細胞の培養上清から単離する。この観点では、たとえば、遠心分離、沈殿、または濾過を使用し得る。
【0127】
ある実施形態では、組換えコラーゲン分子は抗酸化剤である。
【0128】
ある実施形態では、本明細書中に記載の方法によって生成した組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子は、ヴィーガンである、すなわち、本方法は動物製品を用いない。
【0129】
また、その実施形態のすべてを有する本明細書中に記載の方法によって調製した組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子も、本明細書中に提供する。前記コラーゲン分子は3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含む。
【0130】
ある実施形態では、本明細書中に記載の方法によって調製した組換えコラーゲンポリペプチドは、少なくとも1.5%、少なくとも2.5%、少なくとも5%、または少なくとも7.5%のヒドロキシプロリンを含む。
【0131】
本明細書中に記載の言葉の定義または図面要素は、文字通りの記載した要素の組合せのみでなく、実質的に同じ結果を得るために実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で行うためのすべての均等な構造、材料、または動作も含むことを意図する。したがって、この意味では、記載した要素のうちの任意の1つおよびその様々な実施形態について、2つ以上の要素の均等な置換を行い得ること、または、単一の要素を、1つの請求項中の2つ以上の要素について置換し得ることが企図される。
【0132】
現在知られているまたは後に発明される、当業者によって想定される特許請求した主題からの変化は、意図する範囲およびその様々な実施形態内で均等であるとして、明白に企図される。したがって、当業者に現在または後に知られる明らかな置換は、定義した要素の範囲内にあるとして定義される。したがって、本開示は、本明細書中に具体的に例示および記載したもの、概念的に均等なもの、明らかに置換することができるもの、および本質的な思想を取り込むものも含むと理解されるものであることを意図する。
【0133】
事項
1.1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチド。
【0134】
2.2~45kDaの分子量を有する、第1項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0135】
3.5~20kDaの分子量を有する、第1項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0136】
4.ヒトI型コラーゲンA1断片である、第1項から第3項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0137】
5.少なくとも2つのPGPアミノ酸配列を含む、第1項から第4項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0138】
6.コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列が少なくとも2.5%のヒドロキシプロリンを含む、第1項から第5項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0139】
7.コラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列が少なくとも15%のグリシンを含む、第1項から第6項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0140】
8.ヒドロキシル化リシンを含む、第1項から第7項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0141】
9.>7、好ましくは>8の等電点を有する、第1項から第8項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0142】
10.抗酸化剤である、第1項から第9項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0143】
11.抗老化活性を有する、第1項から第10項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0144】
12.皮膚細胞中におけるSIRT2/SIRT6、SOD2、GLRX、HMOX1、およびAZGP1のうちの1つまたは複数の発現を、ベースライン発現レベルと比較して少なくとも50%上方制御する、第1項から第11項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0145】
13.皮膚細胞中におけるMMP1の発現を、ベースライン発現レベルと比較して少なくとも50%下方制御する、第1項から第12項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0146】
14.GFSGLDGAKGD(配列番号6)である、または3個までの保存的アミノ酸置換によってGFSGLDGAKGD(配列番号6)と異なる、アミノ酸配列を含む、第1項から第13項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0147】
15.低アレルギー性である、第1項から第14項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0148】
16.配列番号1~4または7~17のうちの任意の1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、第1項から第15項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0149】
17.配列番号1~4および7~17から選択されるアミノ酸配列を含む、第1項から第16項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0150】
18.配列番号2であるアミノ酸配列を含む、第1項から第17項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0151】
19.配列番号3、21、および22のうちの任意の1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、第1項から第18項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0152】
20.配列番号3、21、および22から選択されるアミノ酸配列を含む、第1項から第19項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0153】
21.組換えコラーゲンポリペプチドである、第1項から第20項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0154】
22.単離したコラーゲンポリペプチドである、第1項から第21項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド。
【0155】
23.第1項から第22項のいずれか一項に記載の3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含むコラーゲン分子。
【0156】
24.グリコシル化されている、第1項から第22項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチドまたは第23項に記載のコラーゲン分子。
【0157】
25.培養酵母細胞、好ましくはピキア・パストリスから分泌された、前記事項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子。
【0158】
26.第1項から第22項または第24項から第25項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチドをコードしている核酸。
【0159】
27.配列番号8、10、11、12、15、および16のうちの1つのアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%同一であるポリペプチドを含む、コラーゲンポリペプチドをコードしている核酸。
【0160】
28.コードされているコラーゲンポリペプチドが、配列番号8、10、11、12、15、および16のうちの1つのアミノ酸配列を含む、第27項に記載の核酸。
【0161】
29.第26項から第28項のいずれか一項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【0162】
30.第29項に記載の発現ベクターまたは第26項から第28項のいずれか一項に記載の核酸を含む宿主細胞。
【0163】
31.第1項から第22項または第24項から第25項のいずれか一項に記載のコラーゲンポリペプチド、または第23項から第25項のいずれか一項に記載のコラーゲン分子と、1つまたは複数の賦形剤とを含む組成物。
【0164】
32.クリーム、乳濁液、血清、水溶液、軟膏、ペースト、ローション、懸濁液、ゲル、マスク、皮膚洗浄剤、洗浄クリーム、洗浄ローション、洗浄ミルク、洗浄パッド、洗顔料、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、またはボディーシャンプー中に含まれる、第31項に記載の組成物。
【0165】
33.錠剤、カプセル、顆粒、または粉末中に含まれる、第31項に記載の組成物。
【0166】
34.1つまたは複数の追加の活性成分を含む、第31項から第33項のいずれか一項に記載の組成物。
【0167】
35.対象に対する局所的使用のためのものである、第31項から第34項のいずれか一項に記載の組成物。
【0168】
36.皮膚障害の処置において使用するための、第31項から第35項のいずれか一項に記載の組成物。
【0169】
37.損傷した皮膚を修復すること、または皮膚を酸化損傷、色素沈着、もしくは老化から保護することにおける、第31項から第36項のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【0170】
38.第31項から第36項のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、損傷した皮膚を修復する方法、または皮膚を酸化損傷、色素沈着、もしくは老化から保護する方法。
【0171】
39.組成物を対象の皮膚または皮膚細胞に投与する、第38項に記載の方法。
【0172】
40.皮膚加湿剤としての、第31項から第36項のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【0173】
41.
(a)1~80kDaの分子量を有する、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(b)任意選択で、ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ酵素をコードしているヌクレオチド配列を提供するステップと、
(c)(a)のヌクレオチド配列および任意選択で(b)を少なくとも1つのベクター内に挿入するステップと、
(d)(c)のベクターを、培養酵母細胞、好ましくはピキア・パストリス中で発現させるステップと、
(e)培養酵母細胞から組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を単離するステップと
を含む、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を調製する方法。
【0174】
42.コードされているコラーゲンポリペプチドが、配列番号2であるアミノ酸配列を含む、第41項に記載の方法。
【0175】
43.コードされているコラーゲンポリペプチドが2~45kDaの分子量を有する、第41項または第42項に記載の方法。
【0176】
44.コードされているコラーゲンポリペプチドが5~20kDaの分子量を有する、第41項または第42項に記載の方法。
【0177】
45.コードされているコラーゲンポリペプチドが少なくとも2つのPGPアミノ酸配列を含む、第41項から第44項のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
46.コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列が少なくとも2.5%のヒドロキシプロリンを含む、第41項から第45項のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
47.コードされているコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列が少なくとも15%のグリシンを含む、第41項から第46項のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
48.コードされているコラーゲンポリペプチドがヒドロキシル化リシンを含む、第41項から第47項のいずれか一項に記載の方法。
【0181】
49.コードされているコラーゲンポリペプチドが、>7、好ましくは>8の等電点を有する、第41項から第48項のいずれか一項に記載の方法。
【0182】
50.コードされているコラーゲンポリペプチドが抗酸化剤である、第41項から第49項のいずれか一項に記載の方法。
【0183】
51.コードされているコラーゲンポリペプチドが抗老化活性を有する、第41項から第50項のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
52.コードされているコラーゲンポリペプチドが、GFSGLDGAKGD(配列番号6)である、または3個までの保存的アミノ酸置換によってGFSGLDGAKGD(配列番号6)と異なる、アミノ酸配列を含む、第41項から第51項のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
53.コードされているコラーゲンポリペプチドが低アレルギー性である、第41項から第52項のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
54.コードされているコラーゲンポリペプチドが、配列番号1~4または7~17のうちの任意の1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、第41項から第53項のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
55.コードされているコラーゲンポリペプチドが、配列番号1~4および7~17から選択されるアミノ酸配列を含む、第41項から第53項のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
56.コードされているコラーゲンポリペプチドが、配列番号3、21、および22のうちの任意の1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、第41項から第53項のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
57.コードされているコラーゲンポリペプチドが、配列番号3、21、および22のうちの任意の1つから選択されるアミノ酸配列を含む、第41項から第53項のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
58.組換えコラーゲン分子が、第1項から第22項および第24から第28項のいずれか一項に記載の3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含む、第41項から第57項のいずれか一項に記載の方法。
【0191】
59.組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子がグリコシル化されている、第41項から第58項のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
60.配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むコラーゲンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列に、分泌シグナル配列をコードしているヌクレオチド配列が先行する、第41項から第59項のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
61.分泌シグナル配列をコードしているヌクレオチド配列が、配列番号5のアミノ酸配列をコードする、第60項に記載の方法。
【0194】
62.ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ酵素が、配列番号18および配列番号19によるアミノ酸配列によってコードされている、第41項から第61項のいずれか一項に記載の方法。
【0195】
63.(a)および/または(b)のヌクレオチド配列を、二方向性プロモーターを使用するベクター内に挿入する、第41項から第62項のいずれか一項に記載の方法。
【0196】
64.(a)および/または(b)のヌクレオチド配列を、誘導性および抑制解除性プロモーターを使用するベクター内に挿入する、第41項から第63項のいずれか一項に記載の方法。
【0197】
65.プロモーターがメタノール誘導性である、第64項に記載の方法。
【0198】
66.(a)および/または(b)のヌクレオチド配列を、小胞体内への翻訳後移行を可能にするベクター内に挿入する、第41項から第65項のいずれか一項に記載の方法。
【0199】
67.組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子を培養酵母細胞の培養上清から単離する、第41項から第66項のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
68.第41項から第68項のいずれか一項に記載の方法によって調製した、組換えコラーゲンポリペプチドまたはコラーゲン分子。
【0201】
69.3つのコラーゲンポリペプチドのホモ三量体を含む、第68項に記載の組換えコラーゲン分子。
【実施例】
【0202】
実施例1:コラーゲンポリペプチドおよびコラーゲン分子の開発
ヒトI型コラーゲンA1の断片に対応するコラーゲンアミノ酸配列(配列番号22)を実施例において使用した(たとえば配列番号1および配列番号2を参照)。
【0203】
水溶性および皮膚透過のバランスをとるために、1~80kDa、好ましくは2~45kDaの分子量を有するヒトI型コラーゲンA1のアミノ酸配列を選択した。
【0204】
ほとんどのタンパク質は、5.5~8のpH範囲でその実効電荷状態に達する。これは、等電点と呼ばれる、タンパク質の最も低い溶解性状態である。スキンケア(典型的にはpH5.5)またはパーソナルケアの配合物の調製を容易にするために、タンパク質は、pH5.5でその可溶性状態にある、すなわちその表面上で帯電しているべきである。
【0205】
ヒトI型コラーゲンA1のアミノ酸配列を、プロリンを含有するように、好ましくはプロリンが富むように選択した。コラーゲンのアミノ酸配列中のプロリンは、コラーゲン合成中に小胞体内でヒドロキシル化される。コラーゲン中のより高いヒドロキシプロリン比は、より高い加湿および抗老化活性に対応すると予想される。1つの潜在的な作用機構がヒドロキシプロリン含有ジペプチドおよびトリペプチドの血流内への通過に関係しているため、より高いヒドロキシプロリン比はまた、栄養補助食品としての性能を改善させるとも予想される。
【0206】
本発明のコラーゲンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトI型コラーゲンA1の断片に基づく(以下の表を参照)。
【0207】
コラーゲンポリペプチドの高次構造の形成をさらに容易にするために、コラーゲンポリペプチドの発現のための一部の構築体を、N末端(配列番号3)および/またはC末端(配列番号4)でヒトI型コラーゲンA1プロペプチド領域をコードしている配列を用いて調製した。これらの構築体には、Cおよび/またはN末端プロペプチドの切断除去を可能にするために、KEX2切断部位(「EKR」)をコラーゲン配列とC末端およびN末端プロペプチド領域との間にエンジニアリングした。KEX2は、ピキア・パストリスにネイティブなプロテアーゼである。
【0208】
一部の構築体は、コードされているコラーゲンポリペプチドのピキア・パストリス細胞からの分泌を容易にするために、酵母MatAlphaD分泌シグナル配列(配列番号5)をコードしているヌクレオチド配列を用いて調製した。MatAlphaDとは、完全長シグナル配列と比較して一部の分泌されたタンパク質のレベルの増加をもたらすことが示されている、接合因子アルファ1プレプロペプチドの欠失変異体を指す(G.P.Lin-Cereghinoら、Gene、2013年、519、311~317頁)。MatAlphaDは、小胞体(ER)内への翻訳後移行を容易にすると考えられている。理論に束縛されることを望まないが、ER中での滞留時間を増加させる分泌シグナル配列は、ER中の同時発現されるプロリル-4ヒドロキシラーゼによって、コラーゲンポリペプチドのヒドロキシル化を増加させると考えられている。このようにしてER中で過ごす時間を制御することで、コラーゲンヒドロキシル化とコラーゲンポリペプチド分泌との間のバランスをとることが容易になる。
【0209】
上記で言及したアミノ酸配列を表1中に示す。
【0210】
【0211】
上記から見られるように、配列番号1~4はPGPモチーフを含有する。
【0212】
表1中の配列の組合せを用いた、コラーゲンポリペプチドの発現のための構築体を設計および調製した。一部の構築体を、ピキア・パストリスなどの酵母中での発現用に調製した。
【0213】
これらの構築体の例を、それらがコードするアミノ酸配列と共に表2に提供する。配列番号7~17はそれぞれ構築体#1~11に対応する。
【0214】
構築体#1~11を用いて生成したコラーゲンポリペプチドのアミノ酸配列を、表2中に太字かつ斜体で示す。
【0215】
【0216】
上記表中、下線を引いた配列=MatAlphaD分泌シグナル(配列番号5)、太字かつ斜体の配列:それぞれの構築体を用いて生成したコラーゲンポリペプチドの配列である。
【0217】
構築体中で使用したプロモーターは、抑制解除性プロモーターでもあるメタノール誘導性プロモーターであり、これは、その活性が低濃度の炭素源(たとえばグルコース)で既に開始されており、その後、メタノールの添加によってこれをさらにブーストすることができることを意味する。したがって、このプロモーターは、所望する場合は、メタノールのない条件下での組換えタンパク質生成を可能にする。メタノール導入の前に既にある程度の転写活性が存在するため、細胞は、発現をブーストする前に既にこの条件に適応している可能性がある。
【0218】
上記表2から導くことができるように、構築体#2、#4、#5、#6、#9、および#10(それぞれ配列番号8、10、11、12、15、および16に対応)を用いて生成したコラーゲンポリペプチドは、ヒトI型コラーゲンA1の「80AA」断片(配列番号2)を含む。
【0219】
構築体#2、#4、#5、#6、#9、および#10を用いて生成したコラーゲンポリペプチドの配列を、以下の表3中に明記する。
【0220】
構築体#2、#4、および#9を用いて得られたコラーゲンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対応する。構築体#5、#6、および#10を用いて得られたコラーゲンポリペプチドは、それぞれ、配列番号2を含む配列番号21、22、および3のアミノ酸配列に対応する。
【0221】
【0222】
ヒトプロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4HAおよびP4HB)ならびにヒトI型コラーゲンA1のアミノ酸配列を、以下の表4中に提供する。
【0223】
【0224】
実施例2:ピキア・パストリスからのCol1a1コラーゲンの断片のタンパク質分泌スクリーニングおよび特徴づけ
本発明者らは、実施例1中に定義した構築体に従って、ヒトI型コラーゲンA1ポリペプチドをコードしている構築体を過剰発現させた。
【0225】
本発明者らは、ピキア・パストリス系におけるプロリンのヒドロキシル化の機構(プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4HAおよびB ヘテロ四量体A2B2、ヒト(Homo sapiens)由来)を、二方向性プロモーター下で、ゲノム中での構築体のランダム組込みによって、同時過剰発現させた。
【0226】
材料および方法:
ピキア・パストリスの形質転換
ピー・パストリス(P.pastoris)P4Hプラットフォーム株を、1μgのSmiI直鎖状発現構築体を用いて、電気穿孔によって形質転換させた。1mLのYPD/ソルビトール(1:1)中、30℃および550rpmでの3時間の再生の後、細胞を100mg/Lのゼオシンを含有するYPD寒天プレート上に播種した。
【0227】
ピキア・パストリスの培養および発現の誘導
ディープウェルプレート培養プロトコル:
メタノール依存性ディープウェルプレート培養プロトコル(スクリーニングおよび再スクリーニング):
・培地を96ウェルのディープウェルプレート中、無菌的条件下で調製する。無菌的な爪楊枝を使用して標的ピー・パストリス株の新鮮な単一コロニーを250μLのBMG1に接種する。
・60時間、28℃、320rpm、80%の湿度下で培養する。
・60時間の成長後、クローンをYPD寒天方形プレートにスタンプすることによって保存し、250μLのBMM2を添加することによって培養を誘導する。
・接種後の68、84、および92時間後に、50μLのBMM10の添加によるさらなる誘導。合計108時間(=48時間の誘導)の後に培養を停止する。
・細胞を4000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を収穫し、活性アッセイを適用するまたはSDS-PAGE分析を実行して標的タンパク質を検出する。
【0228】
抑圧解除した(メタノールなし)ディープウェルプレート培養プロトコル(スクリーニング):
・培地を96ウェルのディープウェルプレート中、無菌的条件下で調製する。
・無菌的な爪楊枝を使用して標的ピー・パストリス株の新鮮な単一コロニーを250μLのBMG1に接種する。
・60時間、28℃、320rpm、80%の湿度下で培養する。
・60時間の成長後、クローンをYPD寒天方形プレートにスタンプすることによって保存し、250μLのBMG0.5を添加することによって培養を誘導する。
・接種後の68、84、および92時間後に、50μLのBMG2.5の添加によるさらなる誘導。合計108時間(=48時間の誘導)の後に培養を停止する。
・細胞を4000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を収穫し、活性アッセイを適用するまたはSDS-PAGEもしくはネイティブゲル分析を実行して標的タンパク質を検出する。
【0229】
試薬、化学薬品、および材料組成
・無菌的な250mLから2.5Lのバッフル付き振盪フラスコ。
・YPD(1%w/vの酵母抽出物、2%w/vのペプトン、2%w/vのグルコース)。
・BMM10(緩衝最少メタノール含有5%のメタノール:1.34%の酵母ニトロゲンベースアミノ酸不含、4×10-5%のビオチン、200mMのリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、および5%のメタノール)。
・BMM2(緩衝最少メタノール含有5%のメタノール:1.34%の酵母ニトロゲンベースアミノ酸不含、4×10-5%のビオチン、200mMのリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、および1%のメタノール)。
・BMG1(緩衝最少メタノール含有5%のメタノール:1.34%の酵母ニトロゲンベースアミノ酸不含、4×10-5%のビオチン、200mMのリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、および1%のグリセロール)。
・BMG0.5(緩衝最少メタノール含有5%のメタノール:1.34%の酵母ニトロゲンベースアミノ酸不含、4×10-5%のビオチン、200mMのリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、および0.5%のグリセロール)。
・BMG2.5(緩衝最少メタノール含有5%のメタノール:1.34%の酵母ニトロゲンベースアミノ酸不含、4×10-5%のビオチン、200mMのリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、および2.5%のグリセロール)。
・純メタノール。
【0230】
SDS PAGEプロトコル:
・変性ゲル中での電気泳動によるタンパク質分析(SDS-PAGE):タンパク質をその分子量に基づいて分離することによって、タンパク質生成プロファイルを評価する。Boltビス-トリスプラスミニゲル(Bis-Tris Plus Mini Gel)を泳動するための標準プロトコル:
・ブロスを遠心分離する(4000rcf、10分間)。上清を細胞画分から分離する。
・それぞれの試料のタンパク質濃度を測定する。分析のために試料中のタンパク質濃度を正規化する。
・試料を4×LDS含有ローディングバッファーおよび10×DTT含有還元剤と混合する。蒸留水で30μLに到達させて完成する。
・15~20μLの試料/ウェルをビストリス4~16%ゲル中にロードする。
・MESランニング緩衝液中で流す(200V、25分間)
・BlueSafeタンパク質染色中で45分間インキュベートし、蒸留水で終夜洗浄することによって、ゲルを解像する。
【0231】
ペプシン消化したタンパク質懸濁液を用いたSDS PAGE:
・タンパク質溶液を凍結乾燥後に50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH2.2)に希釈し、0.05mg/mLのペプシンを用いて22℃で20時間処理した。
【0232】
結果:
ピキア・パストリス中の過剰発現されたコラーゲン断片を、
図1中のSDS-PAGEゲルによって示す。これらのSDS PAGEゲルは、構築体#2、4、6、および8のコラーゲンポリペプチドの発現を示す(構築体#2(配列番号8)、4(配列番号10)、6(配列番号12)、および8(配列番号14)-表2を参照)。星はP4H機構の2つのサブユニットを示す。
【0233】
ピキア・パストリスにおけるヒトコラーゲンのCOL1A1断片のホモ三量体形成の特徴づけ
Vuorelaら、EMBO Journal、1997年、第16巻第22号によれば、P4H機構の過剰発現とアセンブリされたコラーゲン断片との間には複雑な調節が存在する。P4HAサブユニットは、ER中に保持されるとして以前に記載されている。本発明者らの実験では、これは上清中に時折分泌され(
図1を参照)、これは、たとえば、構築体#2(配列番号8)と同時発現された場合に、P4Hサブユニットが上清内に分泌されたことを示している。
【0234】
図2におけるさらなるSDS-PAGE分析は、ピキア・パストリスによって生成および分泌されたホモ三量体コラーゲン断片を示し、およそ約25kDaに移動する完全長構築体(構築体#5および6(それぞれ配列番号11および配列番号12)について、赤色矢印で示す)ならびに切断産物(たとえば配列番号21および22)がペプシンによる消化に対して耐性であると示され、これはホモ三量体構造を示すためのカノニカルな方法である。
【0235】
実施例3:アミノ酸シーケンシング
方法
・NanoHPLC-MS/MSによる生成されたペプチドの分析。
・選択された株のセクレトーム中に見つかるタンパク質の同定。
・翻訳後修飾(PTM)としてのプロリンヒドロキシル化の分析。
・少なくとも50%のカバレッジが予想される。
・タンパク質分解酵素:トリプシンが標準として推奨される。
【0236】
結果
・SDSゲルからの2つの単離したバンドからのペプチド分析結果を以下に示す:
〇 コラーゲンポリペプチド1(配列番号2):7,3kDaのバンド、構築体#2を用いて作製(
図2を参照)
〇 コラーゲンポリペプチド2(配列番号22):11,2kDaのバンド、構築体#6を用いて作製(
図2を参照)
・タンパク質分解性ゲル内消化(トリプシン)および生じたペプチドのタンデム質量分析装置上での分析により、すべての選択したタンパク質バンドがコラーゲンであると思われることが明らかとなった。
・問題になっているコラーゲンに属するペプチドは、分析した試料中で10個の最も豊富なペプチドの中に見つかった。
・どの試料も分泌シグナルMatAlphaDに対応するペプチドを示さなかったため、分析したすべての構築体について、分泌ペプチドのプロセッシングは完了したと推測される。
【0237】
以下の結果は、上記で言及したバンドのさらなる追求である。
【0238】
コラーゲンポリペプチド1(配列番号2)
・コラーゲンの配列カバレッジは55%である。
・分析により、プロリンヒドロキシル化のネイティブ部位の少なくとも28%が、ペプチド中でヒドロキシル化されていたことが明らかとなり、これは2.5%のヒドロキシプロリンに対応する。
【0239】
コラーゲンポリペプチド2(配列番号22)
・コラーゲンの配列カバレッジは43%である。
・コラーゲン断片ならびにN末端およびC末端断片が見つかった。
・分析により、プロリンヒドロキシル化のネイティブ部位の少なくとも15%が、ペプチド中でヒドロキシル化されていたことが明らかとなり、これは1.6%のヒドロキシプロリンに対応する。
【0240】
実施例4:細胞毒性アッセイおよび遺伝子発現分析
皮膚老化に関連すると記載されている様々な遺伝子の発現の変化を、正常なヒト真皮ケラチノサイト(NHEK)において、様々なコラーゲンで処理した後、mRNAシーケンシングによって決定した。
【0241】
方法
1.細胞毒性アッセイ
試験モデル:
最初に、様々な濃度の様々な生成物(試料1~7、以下)の、正常なヒト真皮ケラチノサイト(NHEK)に対する細胞毒性を決定した。
【0242】
試料:
試験した生成物を以下のようにラベル付けする。
・試料1-標的タンパク質を再懸濁させるための緩衝溶液(PBS)
・試料2-緩衝溶液(試料1を参照)中に2.25w%の標的タンパク質(配列番号2)-Cambriumヴィーガンヒトコラーゲン
・試料3-ウシコラーゲンおよび加水分解コラーゲンを再懸濁させるための緩衝溶液(20mMの酢酸)
・試料4-緩衝溶液(試料3を参照)中に2.25w%のウシコラーゲン-Gibco(商標)コラーゲンI、ウシ(ThermoFisher社から販売、製品コードA1064401、2018年11月23日)
・試料5-緩衝溶液(試料3を参照)中に2.25w%の加水分解コラーゲン-iCONFIT加水分解コラーゲン(iCONFIT European Foods OU社、タリンから入手)
・試料6-合成コラーゲンを再懸濁させるための緩衝溶液(Aqua、ヘキサンジオール 5w/v%、ブチレングリコール 5w/v%から構成される)
・試料7-緩衝溶液(試料6を参照)中の合成コラーゲン溶液-INCI:sh-ポリペプチド-121
【0243】
プロトコル:
すべての試料を適切な培養培地中、4つの異なる濃度で直接希釈した:2.5%、1%、0.5%、および0.1%(希釈係数は40、100、200、および1000)。実験は3つ組(n=3個)で実施した。
【0244】
生成物をNHEKと共に24時間、37℃でインキュベートした。24時間のインキュベーション期間の最後の3時間の間、細胞増殖試薬WST1(Roche社)を培養培地中に導入した。WST1は、代謝活性のある細胞によってホルマザン色素(黄色い指示薬)へと切断されるテトラゾリウム塩を含有する。黄色染色のレベル(450nmでの吸光度によって決定)は生細胞の数に比例し、未処理の対照の80%~120%の値が、生成物の細胞毒性が存在しないことを示す。
【0245】
2.遺伝子発現分析
試験モデル:
試料1~7で処理した後の、正常なヒト真皮ケラチノサイト(NHEK)における遺伝子発現変化を、mRNAシーケンシングによって決定した。
【0246】
試料:
実験は、以下に示す組合せを用いて3つ組(n=3個)で実施した。
・未処理のNHEK(NT)
・NHEK+2.5%の試料1
・NHEK+2.5%の試料2
・NHEK+2.5%の試料3
・NHEK+2.5%の試料4
・NHEK+2.5%の試料5
・NHEK+2.5%の試料6
・NHEK+2.5%の試料7
【0247】
詳細には、NHEKを、10,000個の細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレート中、適切な培養培地(Promocell社)の存在下で培養した。接着後、2.5%の試料1~7(上記参照)をNHEKに加え、24時間インキュベートした。
【0248】
続いて、mRNAをNHEKから抽出し、逆転写に供し、DNAを、リアルタイムPCRに使用されるFluidigmプロトコル(96個の遺伝子)に従って、シーケンシング用に調製した。
【0249】
試料を、一般的な化粧品申請に関連する皮膚細胞経路に関与することが知られている遺伝子のリストに対して試験した。
【0250】
結果
1.細胞毒性アッセイ
試料1~7について、2.5%以下の濃度でNHEKに対する細胞毒性活性は検出されなかった(未処理の対照細胞の80~120%の生細胞百分率によって示される、
図4を参照)。
【0251】
2.遺伝子発現分析
表5および
図5は、試料2、4、5、および7を用いた処理の後、NHEKにおける、治癒的および予防的抗老化ならびに他の有益な皮膚効果に関連する具体的な遺伝子の発現の変化を示す(NHEK中における基底レベルと比較した上方/下方制御の百分率を示す)。
【0252】
50%を超える誘導および50%未満の阻害の変化のみを示す。
【0253】
【0254】
上記表中、MMP1:マトリックスメタロペプチダーゼ1、SIRT2/SIRT6:サーチュイン2および6、SOD2:ミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼ2、GLRX:グルタレドキシン、HMOX1:ヘムオキシゲナーゼ1、AZGP1:アルファ-2-糖タンパク質1、亜鉛結合性である。(-)は、この遺伝子の過小発現が、皮膚に対する有益効果に関連している場合があることを示す。(+)は、この遺伝子の過剰発現が、皮膚に対する有益活性に関連している場合があることを示す。
【0255】
考察
注目すべきことに、試料2を用いた処理は、他のコラーゲンを用いた処理と比較して、NHEK細胞における予防的および治癒的な抗老化、抗酸化、ならびに抗色素沈着に関与していると記載されている多様な様々な遺伝子の発現(上方制御および下方制御)に影響を与えた(表5を参照:MMP1の発現の阻害、SIRT2/SIRT6、SOD2、GLRX、HMOX1、およびAZGP1の発現の活性化)。
【0256】
以下の表6中に要約するように、試料2を用いた処理の後の、NHEK中におけるこれらの遺伝子の発現の上方制御および下方制御は、皮膚に対する有益効果を示唆している。
【0257】
【0258】
したがって、生成されたデータは、試料2を用いた処理が、老化を予防するために有効な方法として、皮膚の抗酸化的防御を活性化することによって、ならびに、老化が原因のいくつかの効果を変調するための有効な方法として、コラーゲンの分解を阻害し、細胞増殖および長寿の調節に寄与することによって、老化を予防および治癒することにおける有益な皮膚活性と関連していたことを示す。
【0259】
結論
これらのデータは、本発明のコラーゲンポリペプチドが、皮膚老化に関連づけられている多様な様々な遺伝子の転写調節に影響を与え、それによって皮膚細胞中において内因的な老化プロセスを遅くすることによって、強力な抗老化活性を示すことを示唆している。
【配列表】
【国際調査報告】