(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】セルロース粒子
(51)【国際特許分類】
C08B 16/00 20060101AFI20250117BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250117BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20250117BHJP
C08B 15/05 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08B16/00
C08J5/18 CEP
C08J3/12 A
C08B15/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542247
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2023050756
(87)【国際公開番号】W WO2023135261
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524265459
【氏名又は名称】セプリファイ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ イアキュッチ
(72)【発明者】
【氏名】カミラ ホノラト-リオス
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス シェルテル
(72)【発明者】
【氏名】シルビア ビグノリーニ
【テーマコード(参考)】
4C090
4F070
4F071
【Fターム(参考)】
4C090AA02
4C090AA08
4C090BA24
4C090BB68
4C090BD21
4C090CA31
4C090CA35
4C090DA26
4C090DA28
4F070AA02
4F070AB01
4F070DA42
4F070DC07
4F070DC13
4F070DC16
4F071AA09
4F071AF34
4F071AG34
4F071AH19
4F071BA06
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
本発明は、1,000~10,000nmの長さ及び2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子、並びにセルロース材料を加水分解して加水分解されたセルロース粒子を供給する工程と、加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程と、加水分解されたセルロース粒子を分画遠心分離を用いて分画する工程とを含むセルロース粒子の調製方法に関する。本発明はまた、フィルム又はクラスターなどのセルロース粒子を含む材料、セルロース粒子又はセルロース粒子を含む材料を含む組成物、及び組成物における粒子又は材料の使用に関する。粒子は、優れた拡散白色度及び不透明度を提供するそれらの能力により、白色顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,000~10,000nmの長さ及び2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子。
【請求項2】
前記アスペクト比が3~15、好ましくは4~10、より好ましくは4~6である、請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項3】
前記セルロース粒子が1,000~5000nm、好ましくは1,300~3,500nm、及びより好ましくは1,900~2,800nmの長さを有する、請求項1又は2のいずれかに記載のセルロース粒子。
【請求項4】
前記セルロース粒子が、200~1,000nm、好ましくは200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmの幅を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項5】
前記セルロース粒子が、ロッド若しくはロッド様の形状、又はフレーク若しくはフレーク様の形状を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項6】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、より好ましくは1,900~2,800nmの平均長さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項7】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、より好ましくは1,900~2,800nmのD50長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項8】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、2~18の前記粒子の平均長さと前記粒子の平均幅との間のアスペクト比を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項9】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、200~1,000nm、好ましくは200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmのD50幅を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項10】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000nm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは700nm以下の粒子長標準偏差を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項11】
前記粒子が、前記粒子の表面上に1つ以上の-O-Si(CH
3)
3又は-O-Si(OCH
3)
3基などの1つ以上のシリルエーテル基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項12】
セルロース粒子の調製方法であって、
(a)セルロース材料を、40~60v/v%の濃度を有するプロトン性無機酸を用いて40~60℃の温度で加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)第1遠心分離と第2遠心分離で構成される分画遠心分離を用いて、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程であって、ここで、第1遠心分離が第2遠心分離よりも低い相対遠心力である工程
を含む方法。
【請求項13】
前記プロトン性無機酸が、硫酸又は塩酸、好ましくは硫酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セルロース材料が微結晶セルロース粉末である、請求項12又は13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程(a)において、前記セルロース材料が、1~10時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~7時間、例えば約5時間、加水分解される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)が、前記加水分解されたセルロース粒子を水で透析することを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1遠心分離が50~1,500の相対遠心力であり、前記第2遠心分離が600~2,600の相対遠心力である、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1遠心分離が、150~1,500、好ましくは300~1,100、より好ましくは500~900、なおより好ましくは600~800の相対遠心力であり、前記第2遠心分離が、1,000~2,000、好ましくは1,300~1,700、より好ましくは1,400~1,600の相対遠心力である、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)をさらに含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)が、前記分画されたセルロース粒子を噴霧乾燥、凍結乾燥又は噴霧凍結乾燥して、セルロース粒子の乾燥粉末又は前記セルロース粒子を含むクラスターを提供することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記セルロース粒子をトリメチルクロロシラン又はクロロトリメトキシシランで処理して、1つ以上の-O-Si(CH
3)
3又は-O-Si(OCH
3)
3表面基を有する前記セルロース粒子を提供する工程をさらに含む、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項12~21のいずれか一項に記載の方法によって得られた、又は得ることができるセルロース粒子。
【請求項23】
セルロース粒子を0.1重量%の濃度で水に分散させ、光路長1cmとしたときに、波長400~800nmの入射光の反射率が25%以上である、請求項1~11及び22のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項24】
請求項1~11、22及び23のいずれか一項に記載のセルロース粒子を含むクラスター。
【請求項25】
1~2のアスペクト比、及び1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの長さを有する、請求項24に記載のクラスター。
【請求項26】
クラスターの集団が、1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの平均長さ、及び/又は1~2の平均アスペクト比を有する、請求項24又は25のいずれかに記載のクラスター。
【請求項27】
請求項20に記載の方法によって得られた又は得ることができるクラスター。
【請求項28】
請求項1~11、22及び23のいずれか一項に記載のセルロース粒子を含むフィルム。
【請求項29】
5.0~40.0μmの厚さを有する、請求項28に記載のフィルム。
【請求項30】
前記フィルムが、20~60%、好ましくは25~55%、より好ましくは40~53%の充填率を有する、請求項28又は29のいずれかに記載のフィルム。
【請求項31】
前記フィルムが、400~800nmの波長において入射光の50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の反射率を有する、請求項28~30のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項32】
前記フィルムが、70以上、例えば75以上、例えば80以上のL
*を有し、ここでL
*がCEILAB色空間座標である、請求項28~31のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項33】
請求項1~11、22及び23のいずれか一項に記載のセルロース粒子の懸濁液、請求項24~27のいずれか一項に記載のクラスターの懸濁液、又は請求項28~31のいずれか一項に記載のフィルムを割ることによって形成されたフレークの懸濁液を含む、組成物。
【請求項34】
前記セルロース粒子の懸濁液が、前記組成物を形成する前にpH7にpH調整される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
請求項1~11、22及び23のいずれか一項に記載のセルロース粒子、請求項24~27のいずれか一項に記載のクラスター、又は請求項28~31のいずれか一項に記載のフィルムを割ることによって形成されたフレークの、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月14日(14.01.2022)に出願されたGB2200462.6の優先権及び利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、セルロース粒子、セルロース粒子の調製方法及びそれにより調製されたセルロース粒子に関する。本発明はまた、フィルム又はクラスターなどのセルロース粒子を含む材料、セルロース粒子又はセルロース粒子を含む材料を含む組成物、及び組成物における粒子又は材料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
白色材料は、実質的にすべての波長の可視光をほぼ等しい強度で散乱させる。このような白色着色剤は、製品の白色度を高めるために、塗料、紙、化粧品、食品、太陽光発電装置及びパーソナルケア製品に使用される。従来、酸化チタンナノ粒子などの高屈折率の無機ナノ粒子が白色顔料として使用されている(Tao et al.)。しかしながら、環境的な生物蓄積についての懸念、及び潜在的な発がん性についての最近の研究(Bettini et al.)から、代替となる白色着色剤が必要とされている。
【0004】
白色の非吸収性材料の外観は、ナノ及びマイクロのスケールで材料の内部構造を設計することによって設計することができる。例えば、二酸化チタンナノ粒子のような光散乱性粒子はマクロスケールの構造に組み立てられる。これらの散乱増強剤のサイズと形態を制御して、不透明度及び白色度を変えることによって、様々な外観を有する材料を製造することができる。
【0005】
いくつかの二酸化チタンを含まない高散乱性材料が、ポリマー材料(Syurik et al.)又はセルロース由来のナノファイバー若しくはナノ結晶などのバイオポリマー(Toivonen et al.)のいずれかを使用して開発されている。セルロースナノ結晶は、典型的には、幅が3~5nmであり、長さが100~200nmである。しかしながら、これらの既知の材料は、それらの散乱性能に限界がある。
【0006】
したがって、二酸化チタンナノ粒子などの従来の白色着色剤と比較して、低コストであり、生体適合性及び持続可能性が改善された白色材料が必要とされている。セルロースナノ粒子は、良好な生体適合性を有することが示されている(Credou et al.及びMiyamoto et al.)。これらの代替物にはまた、多種多様な用途に適するように、優れた、かつ高度にカスタマイズ可能な可視光の散乱性能、白色度、及び不透明度を有することが求められている。これらの用途としては、食品添加物、化粧品、パーソナルケア製品、医薬品、インク、塗料、粉末洗剤、乳白剤、集光デバイス(太陽電池など)及び配光デバイス(LEDなど)が挙げられる。
【0007】
国際公開第2019/063647号及び文献(Toivonen et al.)には、様々な厚さのセルロースナノフィブリルが記載されており、それぞれ4.2nm、5.6nm及び19.5nmの幅を有する3つの例示的なフィブリルが示されている(国際公開第2019/063647号の20頁の表1)。これらの粒子の幅は比較的小さい。セルロースナノフィブリルの長さとアスペクト比は明確には開示されていないが、国際公開第2019/063647号の
図4及び5のSEM画像から、ナノフィブリルの繊維状の性質が確認される。また、文献(Toivonen et al.)の補足資料の
図1Sから、セルロースが高度に繊維状であることが確認される。
【0008】
繊維状の性質とは、ナノフィブリルが、それらの幅(約3~20nm)と比較して長い長さ(約1~15μm)を有し、したがって高いアスペクト比(約1000)を有することを意味する。典型的には、セルロースナノファイバーは、幅が3~20nmであり、長さが数マイクロメートルである。
【0009】
国際公開第2019/063647号及び文献(Toivonen et al.)に記載されている調製にはまた、ナノフィブリルを生成するためにいくつかの溶媒交換ステップが含まれている。ナノフィブリルの調製において、溶媒を水からエタノールに、次いでエタノールから2-プロパノールに、次いでさらに2-プロパノールからオクタンに交換して、セルロースナノフィブリルのフィルムを調製している。この溶媒交換プロセスは遅く、大量の溶媒を必要とし、このプロセスが容易に拡張できないことを意味している。
【発明の概要】
【0010】
概して、本発明は、プレターミナルサイズ(長さ)と低アスペクト比を有するセルロース粒子を提供する。驚くべきことに、本発明者らは、この形状を有するセルロース粒子が、可視光の全スペクトルを散乱させる点で優れ、優れた白色光の反射及び優れた輝度を実現することを見出した。したがって、粒子は、白色顔料、白色増強剤、散乱増強剤及び乳白剤としての使用に特に適している。これらは、インク、塗料、化粧品、食品、医薬品などに使用される。散乱増強剤は、配光デバイス(LEDなど)又は集光構成要素(太陽電池など)に特に有用である。
【0011】
本発明のセルロース系微粒子(CMP)は、セルロースナノファイバーやナノ結晶などの既知のセルロースナノ材料とは異なる。本発明のCMPは、ナノファイバーやナノ結晶よりも大きな幅と小さなアスペクト比を有し、光の可視スペクトルの波長との相互作用を最適化する。このように微粒子のサイズを調整することによって、散乱性能を単一散乱レベルで最適化することができる。
【0012】
その上、無秩序なネットワーク中のCMPの空間的配置をさらに制御することによって、現在の材料よりも性能が優れた高散乱性の材料を製造することができる。CMPから調製されたフィルム又はクラスターは、セルロースナノファイバーやセルロースナノ結晶のフィルムと比較して改善された散乱性及び反射率を示す。
【0013】
これらの新しいクラスのセルロース粒子は、多種多様な光学用途に適している。粒子はセルロースから製造されるため、既知の二酸化チタンの散乱性粒子よりも持続可能である。本発明はまた、セルロースが天然材料(例えば、木材又は綿に由来)であることから、優れた生体適合性を有する。したがって、本発明は、食品又は医薬品のコーティングなどの消費財における使用に特に適している。セルロースは、天然源並びにリサイクル材料(例えば、紙)から広く入手することができ、したがって、材料のコストは、二酸化チタンナノ粒子などの従来の顔料と同等か、又はそれよりも低いはずである。
【0014】
その上、セルロースナノファイバーやナノ結晶を調製するための従来のプロセスと比較して、本発明の製造プロセスは、エネルギー効率がより高く、より容易に拡張することができる。これは、このプロセスが、多孔性の散乱性セルロース系材料を製造するために以前は必須であった溶媒交換工程(Toivonen et al.)を必要としないためである。
【0015】
概して、本発明は、300~10,000nmの長さと2~20のアスペクト比を有するセルロース粒子を提供する。
【0016】
本発明の第1の態様では、1000~10,000nmの長さと2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は100~1000nmの幅を有する。セルロース粒子は、好ましくは200~1,000nm、より好ましくは200~800nm、なおより好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmの幅を有する。
【0018】
加えて、又は代わりに、本発明は、1,000~10,000nmの平均長さと2~18の平均アスペクト比を有するセルロース粒子を提供する。好ましくは、セルロース粒子は200~1,000nmの幅を有する。好ましくは、セルロース粒子は、1,000~10,000nmのD50長さと2~18のD50アスペクト比を有する。セルロース粒子はまた、200~1,000nmのD50幅を有してもよい。
【0019】
概して、本発明はセルロース粒子の調製方法を提供し、方法は、
(a)セルロース材料を加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)加水分解されたセルロース粒子を分画する工程を含む。
【0020】
本発明の第2の態様では、セルロース粒子の調製方法を提供し、方法は、
(a)セルロース材料を、40~60v/v%の濃度を有するプロトン性無機酸を用いて40~60℃の温度で加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)第1遠心分離と第2遠心分離で構成される分画遠心分離を用いて、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程であって、ここで、第1遠心分離が第2遠心分離よりも低い相対遠心力である工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1遠心分離は、50~1,500の相対遠心力であり、第2遠心分離は、600~2,600の相対遠心力である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、セルロース粒子の調製方法を提供し、方法は、
(a)セルロース材料を、40~60v/v%の濃度を有する硫酸を用いて、40~60℃の温度で加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)1,000~3,000rpmの速度の第1遠心分離と、2,000~4,000rpmの速度の第2遠心分離で構成される分画遠心分離を用いて、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程であって、ここで、第1遠心分離が第2遠心分離よりも低速である工程を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本方法は、分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程は、分画されたセルロース粒子を噴霧乾燥又は凍結乾燥させて、セルロース粒子の乾燥粉末を提供することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程は、分画されたセルロース粒子を噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥させて、セルロース粒子を含むクラスターを提供することを含む。
【0026】
本発明の第3の態様では、第2の態様の方法によって得られた又は得ることができるセルロース粒子を提供する。
【0027】
本発明の第4の態様では、第1又は第3の態様のいずれかのセルロース粒子を含むクラスターを提供する。
【0028】
本発明の第5の態様では、分画されたセルロース粒子が噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥によって乾燥される、第2の態様の方法によって得られた又は得ることができるクラスターを提供する。
【0029】
本発明の第6の態様では、第1又は第3の態様のセルロース粒子を含むフィルムを提供する。
【0030】
本発明の第7の態様では、第1又は第3の態様のセルロース粒子の懸濁液、第4又は第5の態様のクラスターの懸濁液、あるいは第6の態様のフィルムを割ることによって形成されたフレークの懸濁液を含む組成物を提供する。
【0031】
本発明の第8の態様では、第1又は第3の態様のセルロース粒子、第4又は第5の態様のクラスター、あるいは第6の態様のフィルムを割ることによって形成されたフレークの、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用を提供する。
【0032】
本発明のこれら及び他の態様及び実施形態を以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明を以下に並べた図面を参照して説明する。
【0034】
【
図1】比較例3(
図1a)、実施例2(
図1b)、実施例1(
図1c)、及び比較例4(
図1d)のSTEM画像を示す。実施例1[CMP-L]と2[CMP-M]、及び比較例3[CMP-S]と4[CMP-XL]の粒子について、
図1eに幅分布確率の粒径分布を示し、
図1fに長さ分布確率の粒径分布を示す。
図1gに、(左から右へ)実施例1、実施例2、比較例3、比較例4(すべて0.1重量%の濃度)の試料の懸濁液及び水を通過する光の写真を示す。照明は前方からである。
図1hに、実施例1、実施例2、比較例3、比較例4(すべて0.1重量%の濃度)の反射率を示す。
【0035】
【
図2】例示的なCMPの幅及び長さについてのヒストグラム並びに対数正規分布にフィッティングした曲線を示す。
図2aに、実施例1の幅を示す。
図2bに、実施例2の幅を示す。
図2cに、比較例3の幅を示す。
図2dに、比較例4の幅を示す。
図2eに、実施例1の長さを示す。
図2fに、実施例2の長さを示す。
図2gに、比較例3の長さを示す。
図2hに、比較例4の長さを示す。
【0036】
【
図3】
図3aに、実施例1FのCMPから作製された典型的な白色フィルム(厚さ9μm)の写真を示す。
図3bに、
図3aに示した実施例1Fの白色フィルムの断面のSEM画像を示す。
図3cに、厚さ25μm及び充填率25%での実施例1F[CMP-L]、実施例2F[CMP-M]及び比較例3F[CMP-S]の白色フィルムの反射率を示す。
図3dに、10μm及び40μmの厚さを有する実施例1Fのフィルムによって反射された強度(波長=400nm)の角度分布を示す。
【0037】
【
図4】
図4aに、40%の充填率並びに10μm、15μm、20μm及び30μmの厚さを有する実施例1Fのフィルムについての全透過データを示す。
図4bに、40%の充填率を有する実施例1Fのフィルムについての400nmの波長における全透過率対厚さのフィッティングした曲線を示す。
図4cに、実施例1Fのフィルムについての輸送平均自由行程のスペクトル依存性を示す。
【0038】
【
図5】
図5a~
図5dに、53%の充填率を有するCMPから作製された白色フィルムの断面のSEM画像を示す。
図5a及び
図5bに、実施例1FのSEM画像、
図5cに、実施例2FのSEM画像、及び
図5dに、比較例3FのSEM画像を示す。
図5eに、53%及び40%の充填率で9μmの厚さを有する実施例1Fの白色フィルムの反射率を示す。
図5fに、実施例1F[CMP-L](53%及び40%の充填率)、実施例2F[CMP-M]及び比較例3F[CMP-S]のパネルにおけるスペクトルのCIELAB色空間座標を示した極座標プロットを示す。
【0039】
【
図6】
図6aに、フィルムを空気中で直接乾燥させる実施例1FHなどのCMPの疎水性フィルムの調製プロセスの概略図を示す。
図6bに、実施例1FHの疎水性フィルムの反射率を示し、挿入画像は、実施例1FHの疎水性フィルムの断面のSEM画像及び実施例1FHの疎水性フィルムの表面上の水滴の接触角プロファイルを示す。
【0040】
【
図7】実施例1F、2F並びに比較例3F及び4Fなどのセルロース粒子からの自立型フィルムの製造の真空プロセスの概略図を示す。
【0041】
【
図8】散乱性粒子の反射率及び透過率を測定するための実験装置の概略図を示す。T
1は試料なしで透過した全光であり、T
2は試料ありで透過した全光であり、T
3は機器によって散乱された光であり、T
4は機器及び試料によって散乱された光である。
【0042】
【
図9】
図9aに、凍結乾燥後の乾燥CMP粉末の画像を示す。
図9bに、水に再分散させて超音波処理して水性懸濁液を形成した乾燥CMP粉末の画像を示す。
図9cに、水に再分散させて超音波処理して水性懸濁液を形成した乾燥CMP粉末のSEM画像を示す。
図9dに、水性CMP懸濁液を噴霧乾燥することによって調製されたCMPクラスターのSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
セルロース粒子
概して、本発明は、300~10,000nmの長さを有し、粒子の長さと粒子の幅との間の比が2~20であるセルロース粒子を提供する。
【0044】
第1の態様では、本発明は、1,000~10,000nmの長さを有し、粒子の長さと粒子の幅との比が2~18であるセルロース粒子を提供する。
【0045】
典型的には、粒子は100~1,000nmの幅を有する。好ましくは、粒子は200~1,000nmの幅を有する。
【0046】
セルロース粒子の形状及びサイズは、本明細書に記載される方法によって製造することができる。したがって、本発明はまた、本発明の方法によって得られた又は得ることができるセルロース粒子を提供する。
【0047】
加えて、又は代わりに、本発明は、セルロース粒子の集団が1,000~10,000nmの平均長さと2~18の平均アスペクト比を有するセルロース粒子を提供する。好ましくは、セルロース粒子の集団は、1,000~10,000nmのD50長さと2~18のD50アスペクト比を有する。
【0048】
セルロース粒子の集団は、100~1,000nm、例えば200~1,000nmの平均幅を有し得る。好ましくは、セルロース粒子の集団は、100~1,000nm、例えば200~1,000nmのD50幅を有し得る。
【0049】
当技術分野においてセルロース粒子は公知である。しかしながら、以前に報告されたセルロースナノ粒子は、典型的には、本発明のセルロース微粒子よりも長さが短い。以前に報告されたセルロースナノファイバーはまた、典型的には、本発明のセルロース微粒子よりも幅が短い。以前に報告されたセルロースナノファイバーやマイクロファイバーの場合、繊維の形態のために、アスペクト比は、本発明のセルロース微粒子よりもはるかに高い。
【0050】
米国特許出願公開第2021/213405号には、344nmの長さと13.76のアスペクト比を有するセルロースナノ結晶が記載されている。
【0051】
国際公開第2012/06720号には、300nmの長さと21nmの幅、したがって約14のアスペクト比を有する「セルロースナノウィスカー」が記載されている。
【0052】
中国特許出願公開第113152150号には、15以上のアスペクト比と300nm以下の長さを有するセルロースナノ粒子及びナノファイバーが記載されている。
【0053】
中国特許出願公開第113174091号は、セルロースナノ結晶と茶由来の不溶性タンパク質から形成された複合フィルムに関する。粒子は、100~600nmの長さと5~50nmの直径を有する。
【0054】
中国特許出願公開第112280072号には、100~400nmの長さと20~50nmの幅を有するセルロース粒子が記載されている。
【0055】
中国特許出願公開第102276734号には、300~400nmの長さと30~50nmの幅を有するセルロース粒子が記載されている。
【0056】
中国特許出願公開第113480756号には、200~400nmの長さと25~40nmの幅を有するセルロース粒子が記載されている。中国特許出願公開第113480756号に記載されているフィルムはまた、着色されており、したがって、本発明の白色の均一な散乱特性を有していない。
【0057】
欧州特許出願公開第3854819号には、セルロースナノ結晶及びナノファイバーが記載されている。ナノ結晶は、50nm以下の幅と5~50のアスペクト比を有する。ナノファイバーは、50nmの最大幅と10以上のアスペクト比を有する。18のアスペクト比と50nmの幅では、記載されたナノ結晶及びナノファイバーは、わずか900nmの長さを有し、これは本発明の粒子よりも短い。
【0058】
米国特許出願公開第2013/303750号には、100~5000nmの長さと5~200nmの幅を有するセルロースナノファイバー及びナノ結晶の調製が記載されている(実施例及び図を参照)。調製された繊維状セルロースは一般に、本発明よりも幅が狭く、アスペクト比が高い。米国特許出願公開第2013/303750号は、構造材料としてのセルロース粒子に関し、粒子の光学特性は試験していない。
【0059】
中国特許出願公開第113150319号は、官能化セルロースナノ結晶を含む自己修復ヒドロゲルに関する。セルロース粒子は、3~1,000nmの長さと1~20のアスペクト比を有することから、一般に、同じアスペクト比では、本発明の粒子よりも長さが短い。
【0060】
中国特許出願公開第106699904号は、100~1,000nmの長さと10~40nmの直径を有する超分岐セルロースナノファイバーに関する。超分岐繊維は、好ましくはロッド又はフレークの形状である本発明のセルロース粒子よりも分岐している。セルロースナノファイバーはまた、本発明の微粒子よりも短く、それらの最大長ではより高いアスペクト比を有する。
【0061】
本発明のセルロース粒子は、以下の特性によって特徴付けることができる。
【0062】
粒子の幅とは、一般に、粒子の最短寸法である。例えば、粒子がロッドの形状である場合、幅はロッドの断面の直径である。粒子の幅は、典型的には、粒子の横方向直径である。幅はまた、直径と呼ばれることもある。
【0063】
アスペクト比が1より大きい(例えば、2~18)ことから、粒子は典型的には球状ではない。粒子は、角柱状及び/又は細長いものとして説明され得る。好ましくは、粒子はロッドの形状である。
【0064】
粒子の幅とは、典型的には、粒子の最短の横方向寸法である。横方向寸法とは、粒子を平面図で見たときに観察できる最短の寸法である。平面図における粒子は二次元であるように見える。例えば、粒子がトップダウン(又は平面)画像から測定される場合、幅は粒子のトップダウン画像から測定できる最短寸法である。
【0065】
粒子の幅とは一般に、粒子の長さ寸法を規定する線に垂直な粒子の最短の寸法である。下に説明するように、粒子の長さは粒子の最長寸法であり、したがって、粒子の長さを規定する線は、粒子の最も遠い先端部の間の線である。幅は、粒子の長さを規定する線に垂直な粒子の最短寸法であり得る。最短寸法はまた、粒子の最も近い先端部の間の線によって規定されてもよく、この線は粒子の長さを規定する線に対して垂直である。換言すれば、最短寸法は、粒子の長さを規定する線に垂直な線によって結ぶことができる粒子の最も狭い部分である。
【0066】
粒子の幅は、標準的な技術を用いて決定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用してもよい。適切なシステムとしては、30kV及び作動距離5mmで操作されるMira3システム(TESCAN)が挙げられる。微粒子の幅をImageJによって解析してもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、粒子の幅はSEMを使用して測定される。
【0068】
幅の測定数は、典型的には100~1,000である。一般に、100を超える幅の測定が行われる。幅は、典型的には、測定された測定値の平均値である。幅の平均値を計算することによって、異常値の影響が低減され、粒子の代表的な幅が示される。
【0069】
典型的には、セルロース粒子は、100~1,000nm、例えば200~1,000nmの幅を有する。好ましくは、セルロース粒子は、200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmの幅を有する。
【0070】
第1の実施形態において、本明細書で「大セルロース微粒子」として知られるセルロース粒子は、200~800nm、好ましくは300~600nm、より好ましくは450~550nm、さらにより好ましくは500~540nmの幅を有する。
【0071】
第2の実施形態において、本明細書で「中セルロース微粒子」として知られるセルロース粒子は、100~500nm、好ましくは150~300nm、より好ましくは180~250nm、さらにより好ましくは200~230nmの幅を有する。
【0072】
典型的には、粒子の集団の幅は、対数正規分布を有する粒径分布を与える。一般に、粒子の集団は単峰性の粒径分布を有する。単峰性の粒径分布は、粒径分布において1つのピーク又は最大値のみを有する。典型的には、単峰性分布のピークは、分布中のすべての粒子の数によるモード平均粒径に対応する。粒径分布の例を
図2に示す。
【0073】
D100、D90、D50及びD10などの粒径分布からの幅についてのパーセンタイル値も計算することができる。これらの値は、粒子数に基づく幅粒径分布に基づいて計算することができる。
【0074】
D100幅とは、粒子の100%がD100粒子幅以下の幅を有する粒子幅である。
【0075】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、2,000nm以下、好ましくは1,500nm以下、好ましくは1,000nm以下のD100幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、500nm以上、好ましくは800nm以上、好ましくは1,000nm以上のD100幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、400~2,000nm、好ましくは500~1,200nm、好ましくは600~1,000nmのD100幅を有する。
【0076】
第1の実施形態において、D100幅は約1,000nmである。
【0077】
第2の実施形態において、D100幅は約450nmである。
【0078】
D90幅とは、粒子の90%がD90粒子幅以下の幅を有する粒子幅である。
【0079】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、1,000nm以下、好ましくは900nm以下、好ましくは800nm以下のD90幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、250nm以上、好ましくは300nm以上、好ましくは350nm以上のD90幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、300~1,000nm、好ましくは350~900nmのD90幅を有する。
【0080】
第1の実施形態において、D90幅は約850nmである。
【0081】
第2の実施形態において、D90幅は約350nmである。
【0082】
D50幅とは、粒子の50%がD50粒子幅以下の幅を有する粒子幅である。
【0083】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、800nm以下、好ましくは700nm以下、好ましくは600nm以下のD50幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、100nm以上、好ましくは150nm以上、好ましくは200nm以上のD50幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、200~800nm、好ましくは300~600nm、好ましくは450~550nmのD50幅を有する。
【0084】
第1の実施形態において、D50幅は500~540nm、例えば約520nmである。
【0085】
第2の実施形態において、D50幅は200~240nm、例えば約220nmである。
【0086】
D10幅とは、粒子の10%がD10粒子幅以下の幅を有する粒子幅である。
【0087】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、400nm以下、好ましくは300nm以下、好ましくは200nm以下のD10幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、50nm以上、好ましくは100nm以上、好ましくは200nm以上のD10幅を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、50~400nm、好ましくは100~300nm、好ましくは150~200nmのD10幅を有する。
【0088】
第1の実施形態において、D10幅は約300nmである。
【0089】
第2の実施形態において、D10幅は約150nmである。
【0090】
いくつかの実施形態において、粒子の集団は、低い幅標準偏差を有する。これは粒子幅分布が狭いことを示す。いくつかの実施形態において、粒子の集団の幅標準偏差は、300nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらにより好ましくは150nm以下、なおより好ましくは100nm以下である。いくつかの実施形態において、粒子の集団の幅標準偏差は、30~300nm、好ましくは40~250nm、より好ましくは50~200nm、さらにより好ましくは60~160nmである。
【0091】
いくつかの実施形態において、幅標準偏差は、50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、なおより好ましくは30%以下である。
第1の実施形態において、粒子の集団の幅標準偏差は、300nm以下、好ましくは250nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、さらにより好ましくは160nm以下である。第1の実施形態において、粒子の集団の幅標準偏差は、100~200nm、より好ましくは120~180nm、さらにより好ましくは140~160nmである。
【0092】
第2の実施形態において、粒子の集団の幅標準偏差は、300nm以下、好ましくは250nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらにより好ましくは100nm以下である。第2の実施形態において、粒子の集団の幅標準偏差は、30~120nm、好ましくは40~100nm、より好ましくは50~70nm、さらにより好ましくは60~70nmである。
【0093】
粒子の長さとは、一般に、粒子の最長寸法である。例えば、粒子がロッドの形状である場合、長さはロッドの先端部の間の長さである。粒子の長さは、典型的には、粒子の長手方向の長さである。
【0094】
粒子の長さは、典型的には、最長の横方向寸法である。横方向寸法は、粒子を平面図で見たときに観察できる寸法である。平面図における粒子は二次元であるように見える。例えば、粒子がトップダウン(又は平面)画像から測定される場合、長さは、粒子のトップダウン画像から測定できる最長寸法である。
【0095】
粒子の長さは、標準的な技術を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用してもよい。適切なシステムとしては、30kV及び5mmの作動距離で操作されるMira3 FEG-SEMシステム(TESCAN)が挙げられる。次いで、微粒子の長さをImageJによって解析してもよい。
【0096】
典型的には、粒子の長さは、SEMを用いて測定される。
【0097】
長さの測定数は、典型的には100~1,000である。一般に、100を超える長さの測定が行われる。長さは、得られた測定値の平均値である。長さの平均値を計算することによって、異常値の影響が低減され、粒子の代表的な長さが示される。
【0098】
典型的には、セルロース粒子は300~10,000nmの長さを有する。好ましくは、セルロース粒子は、1,000~5,000nm、より好ましくは1,300~3,500nm、さらにより好ましくは1,600~3,000nm、及び最も好ましくは1,900~2,800nmの長さを有する。
【0099】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、1,000~5,000nm、好ましくは1,900~3,500nm、より好ましくは2,200~3,000nm、さらにより好ましくは2,500~2,900nm、最も好ましくは2,600~2,800nmの長さを有する。
【0100】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、1,000~4,000nm、好ましくは1,200~2,700nm、より好ましくは1,500~2,500nm、さらにより好ましくは1,700~2,300nm、なおより好ましくは1,800~2,100nm、最も好ましくは1,900~2,000nmの長さを有する。
【0101】
典型的には、粒子の集団の長さは、対数正規分布を有する粒径分布を与える。一般に、粒子の集団は単峰性の粒径分布を有し、これは粒径分布において1つのピーク又は最大値のみを有する。単峰性分布のピーク又は最大値は、分布中のすべての粒子の数によるメジアン平均粒径に対応する。粒径分布の例を
図2に示す。
【0102】
D100、D90、D50及びD10などの粒径分布からの長さのパーセンタイル値も計算することができる。これらの値は、粒子数に基づく長さ粒径分布に基づいて計算することができる。
【0103】
D100長とは、粒子の100%がD100粒子長以下の長さを有する粒子長である。
【0104】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、8,000nm以下、好ましくは6,500nm以下、好ましくは5,000nm以下のD100長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、4,000nm以上、好ましくは5,000nm以上、好ましくは6,000nm以上のD100長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、4,000~6,000nm、好ましくは4,500~5,500nmのD100長を有する。
【0105】
第1の実施形態において、D100長は約5,500nmである。
【0106】
第2の実施形態において、D100長は約4,250nmである。
【0107】
D90長とは、粒子の90%がD90粒子長以下の長さを有する粒子長である。
【0108】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、6,000nm以下、好ましくは5,000nm以下、好ましくは4,500nm以下のD90長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、3,000nm以上、好ましくは3,500nm以上、好ましくは3,750nm以上のD90長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、3,000~5,000nm、好ましくは3,500~4,500nmのD90長を有する。
【0109】
第1の実施形態において、D90長は約4,500nmである。
【0110】
第2の実施形態において、D90長は約3,500nmである。
【0111】
D50長とは、粒子の50%がD50粒子長以下の長さを有する粒子長である。
【0112】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、5,000nm以下、好ましくは3,500nm以下、好ましくは3,000nm以下、より好ましくは2,800nm以下のD50長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、1,000nm以上、好ましくは1,300nm以上、好ましくは1,600nm以上、より好ましくは1,900nm以上のD50長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、好ましくは1,600~3,000nm、より好ましくは1,900~2,800nmのD50長を有する。
【0113】
第1の実施形態において、D50長は、1,000~5,000nm、好ましくは1,900~3,500nm、より好ましくは2,200~3,000nm、さらにより好ましくは2,500~2,900nm、最も好ましくは2,600~2,800nmである。第1の実施形態において、D50長は、好ましくは約2,700nmである。
【0114】
第2の実施形態において、D50長は、1,000~4,000nm、好ましくは1,200~2,700nm、好ましくは1,500~2,500nm、好ましくは1,700~2,300nm、好ましくは1,800~2,100nm、より好ましくは1,900~2,000nmである。第2の実施形態において、D50長は、好ましくは約1,950nmである。
【0115】
D10長とは、粒子の10%がD10粒子長以下の長さを有する粒子長である。
【0116】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、2,000nm以下、好ましくは1,750nm以下、好ましくは1,500nm以下のD10長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、500nm以上、好ましくは750nm以上、好ましくは1,000nm以上のD10長を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、500~2,000nm、好ましくは750~1,800nm、好ましくは1,000~1,700nmのD10長を有する。
【0117】
第1の実施形態において、D10長は約1,700nmである。
【0118】
第2の実施形態において、D10長は約1,200nmである。
【0119】
いくつかの実施形態において、粒子の集団は、低い長さ標準偏差を有する。これは粒子長分布が狭いことを示す。いくつかの実施形態において、粒子の集団の長さ標準偏差は、1,500nm以下、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは800nm以下、さらにより好ましくは800nm以下、なおより好ましくは700nm以下である。いくつかの実施形態において、粒子の集団の長さ標準偏差は、400~1,500nm、好ましくは500~1,000nm、より好ましくは600~800nmである。
【0120】
いくつかの実施形態において、長さ標準偏差は、50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、なおより好ましくは30%以下である。
【0121】
第1の実施形態において、粒子の集団の長さ標準偏差は、1,500nm以下、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらにより好ましくは800nm以下である。第1の実施形態において、粒子の集団の長さ標準偏差は、500~1,000nm、より好ましくは600~900nm、さらにより好ましくは700~800nmである。
【0122】
第2の実施形態において、粒子の集団の長さ標準偏差は、1,000nm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは700nm以下である。第2の実施形態において、粒子の集団の長さ標準偏差は、300~1,000nm、好ましくは400~800nm、より好ましくは500~750nm、さらにより好ましくは600~700nmである。
【0123】
アスペクト比とは、粒子の長さと粒子の幅との間の比である。これは一般に、粒子の最長寸法と粒子の最短寸法との間の比である。典型的には、粒子の最長寸法は、最も短い横方向寸法などの粒子の長さである。典型的には、粒子の最短寸法は、最も長い横方向寸法などの粒子の幅である。粒子の長さと幅は、上記のように決定することができる。
【0124】
例えば、3,000nmの長さと500nmの幅を有する粒子は、(3,000/500=)6のアスペクト比を有する。粒子の長さと幅が等しい完全に球状の粒子では、アスペクト比は1である。
【0125】
典型的には、セルロース粒子のアスペクト比は2~18である。好ましくは、セルロース粒子のアスペクト比は、3~15、より好ましくは4~10、最も好ましくは4~6である。
【0126】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子のアスペクト比は、2~10、好ましくは3~8、より好ましくは4~6である。
【0127】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子のアスペクト比は、4~18、好ましくは6~12、より好ましくは8~10である。
【0128】
アスペクト比はまた、粒子の集団の長さと粒子の集団の幅との間の比であり得る。いくつかの実施形態において、アスペクト比は、D50長とD50幅との間の比であるD50アスペクト比である。いくつかの実施形態において、アスペクト比は、平均長と平均幅との間の比である平均アスペクト比である。
【0129】
平均アスペクト比が2~18であってもよい。好ましくは、セルロース粒子の平均アスペクト比は、2~16、より好ましくは3~14、さらにより好ましくは4~10、最も好ましくは4~6である。
【0130】
D50アスペクト比が2~18であってもよい。好ましくは、セルロース粒子のD50アスペクト比は、2~16、より好ましくは3~14、さらにより好ましくは4~10、最も好ましくは4~6である。
【0131】
セルロース粒子は、任意の適切な形状を有することができる。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、ロッド若しくはロッド様の形状、又はフレーク若しくはフレーク様の形状を有する。いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、ロッド又はフレークの形状を有する。
【0132】
セルロース粒子は、ロッド又はロッド様の形状を有し得る。したがって、幅は、ロッドの断面の直径であり得る。粒子は、細長くてもよく、長さ寸法は幅寸法よりも大きい。
【0133】
セルロース粒子は、フレーク又はフレーク様の形状を有してもよい。フレーク又はフレーク様の形状は、細長くてもよく、長さ寸法は幅寸法よりも大きい。フレーク又はフレーク様の形状は、典型的には、粒子の長さの大部分にわたって均一な高さを有する。
【0134】
セルロース粒子は、実質的に分岐していない。すなわち、セルロース粒子は、典型的には2つ以上の分岐に分割されない。セルロース粒子は、好ましくは、分岐セルロース粒子ではなく、超分岐セルロース粒子でもない。
【0135】
セルロース粒子は、好ましくは微粒子の形態を有する。すなわち、セルロースの形状は粒子状であり、繊維状セルロースとは区別される。好ましくは、セルロース粒子はセルロースファイバーではない。
【0136】
セルロース粒子は、典型的には一次粒子である。すなわち、セルロース粒子は、より小さい粒子の凝集物ではない。セルロース粒子の凝集は、クラスターの項で考察される。
【0137】
セルロース粒子は、優れた光学特性を有する。特に、セルロース粒子は高い反射率を与えることができる。例えば、セルロース粒子の水懸濁液は、白色光の高い反射率を有する。
【0138】
粒子の光学特性は、分光計及び積分球と組み合わせた光源を使用するなど、標準的な技術を使用して測定することができる。代表的な構成を
図8に示す。シグナルは、試料の非存在下での強度に対して正規化することができる。典型的には、Labsphere SRS-99-010などの拡散白色標準板を使用する。光が照射されていないときにバックグラウンドを記録することができ、バックグラウンドノイズを測定値から差し引くことができる。光学特性は、可視範囲(例えば、400nm~800nm)で測定する。典型的には、光学特性は空気中で測定する。透過率を測定し、粒子による吸収がないと仮定して、得られた透過率値から反射率を計算することができる。典型的には、各試料について5つのスペクトルを取って平均した。
【0139】
いくつかの実施形態において、積分球(Labsphere)を用いて全透過率及び反射率の測定を行った。
図8(T
1及びT
2)に示すように、光源(Ocean Optics HPX-2000)を、コリメータ(Thorlabs)を介して光ファイバー(600μm Thorlabs FC-UV100-2-SR)に接続し、シグナルを分光計(Avantes HS2048)によって収集した。シグナルは、試料を載せていないときの強度に対して正規化した。光を当てなかったときのバックグラウンドを記録した。波長の範囲は400~800nmであった。各試料について5つのスペクトルを取り、平均してシグナル対ノイズ比を減少させた。各スペクトルを、3秒に等しい積分時間を用いて記録した。
【0140】
粒子は、水懸濁液として提供することができる。反射率及び透過率の測定のために、水中の粒子懸濁液を、典型的にはキュベット中に入れる。キュベットは1cmの光路長を有し得る。光路長は、粒子懸濁液の「試料厚さ」と呼ぶことができる。「試料厚さ」は1cmであってもよい。
【0141】
平均反射率とは、一般に、波長の範囲にわたって取られた反射率値の平均である。例えば、400~800nmの波長範囲にわたる平均反射率とは、400~800nmの波長で測定された反射率値の平均である。反射率値は、典型的には、1nm又は5nm間隔など、波長の範囲にわたって一定間隔で測定される。
【0142】
典型的には、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、試料光路長が1cmである場合、セルロース粒子は25%以上の反射率を有する。セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、好ましくは、30%以上、より好ましくは35%以上の反射率を有する。
【0143】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、400~800nmの波長で45%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上の反射率を有する。
【0144】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、400~800nmの波長範囲にわたって45%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上の平均反射率を有する。
【0145】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、400~800nmの波長で25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上の反射率を有する。
【0146】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、400~800nmの波長範囲にわたって40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上の平均反射率を有する。
【0147】
500nmにおいて、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、典型的には45%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上の反射率を有する。
【0148】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、500nmにおいて60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上の反射率を有する。
【0149】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、500nmにおいて45%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上の反射率を有する。
【0150】
600nmにおいて、セルロース粒子は、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上の反射率を有する。
【0151】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、600nmにおいて55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上の反射率を有する。
【0152】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、600nmにおいて40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上の反射率を有する。
【0153】
700nmにおいて、セルロース粒子は、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上の反射率を有する。
【0154】
第1の実施形態(大セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、700nmにおいて50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の反射率を有する。
【0155】
第2の実施形態(中セルロース微粒子)において、セルロース粒子は、例えば、セルロース粒子が0.1重量%の濃度で水中に分散され、光路長が1cmである場合、700nmにおいて25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上の反射率を有する。
【0156】
高い絶対反射率値に加えて、セルロース粒子によって反射された光はまた高度に拡散性である。したがって、光は典型的には、所与の波長範囲にわたって同等のレベルで反射される。また、反射スペクトルには顕著な又は鋭いピークがない。
【0157】
セルロース粒子は、散乱光の非対称な角度分布(ミー散乱)を有すると考えられる。これによって、散乱光の対称な角度分布(レイリー散乱)を有すると考えられる、小さい幅と高いアスペクト比を有する従来のセルロース粒子と比較しての、本セルロース粒子の高い散乱効率を説明することができる。
【0158】
セルロース粒子の表面は改質されていてもよい。典型的には、セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基が修飾される。セルロース粒子は、疎水性又は部分的に疎水性であるように修飾されてもよい。
【0159】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子の表面上の1つ以上のヒドロキシル基が修飾される。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基は、エステル基又はエーテル基などの異なる官能基に変換される。好ましくは、ヒドロキシル基はシリルエーテル基などのエーテル基に変換される。
【0160】
典型的には、ヒドロキシル基は、セルロース粒子をエステル化剤又はエーテル化剤で処理することによって変換される。好ましくは、変換は、セルロース粒子を疎水性化剤で処理することによって行われる。一般に、疎水性化剤からの疎水性部分がセルロース粒子に付加されて、セルロース粒子に疎水性を付与する。
【0161】
好ましくは、セルロース粒子の表面上の1つ以上のヒドロキシル基が、疎水性部分で置換される。例えば、ヒドロキシル基は、トリメチルシラン(TMS)基又はトリメトキシシラン((CH3O)3Si)基で置換されてもよい。このようにして、ヒドロキシル基は、-O-TMS又は(CH3O)3Si-O-基に変換される。
【0162】
理論に束縛されるものではないが、粒子の表面上のヒドロキシル基の一部を、-O-TMS又は(CH3O)3Si-O-などの疎水性基で置換することにより、ヒドロキシル基間の水素結合が減少して、セルロース粒子の間の細孔又は空隙の、例えば溶媒蒸発中の毛細管圧力による崩壊が生じにくくなると考えられる。したがって、粒子は、クラスター又はフィルムの一部として調製された場合、より堅牢である。セルロース粒子を含むクラスター又はフィルムは、改変された構造又は充填率、疎水性、強度又は他の物理的特性を有し得る。溶液中の粒子の分散性はまた、例えば、非極性溶媒中の分散性を増大させるようにカスタマイズすることができる。
【0163】
フィルム
本発明はまた、本明細書に記載のセルロース粒子を含むフィルムを提供する。
【0164】
フィルムは、本明細書に記載のセルロース粒子から実質的になってもよく、例えば、本質的になってもよい。フィルムは、薄層に形成されたセルロース粒子の集塊であってもよい。典型的には、セルロース粒子は、非共有結合の相互作用によってまとまっている。
【0165】
フィルムは、本明細書に記載の方法によって製造することができる。したがって、本発明は、本発明の方法によって得られた又は得ることができる材料を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子は、フィルム中にランダムに分布する。
【0167】
典型的には、フィルムは細孔又は空隙を含む。細孔又は空隙はセルロース粒子の間に存在する。フィルムは多孔質であると言うことができる。
【0168】
典型的には、細孔の形状は粒子の形状と同様である。細孔は一般に細長く、長さ寸法が幅寸法より大きい。細孔は、粒子と同様の幅を有してもよい。細孔は、粒子と同様の長さを有してもよい。細孔は、粒子と同様のアスペクト比を有してもよい。
【0169】
細孔の総体積は、材料の総体積(v2)から材料中のセルロース粒子の体積(v1)を引いたものに等しい。
【0170】
好ましくは、フィルムは、白色不透明フィルムを提供するために十分に大きい厚さ(例えば、乾燥厚さ)を有する。したがって、フィルムは、典型的には1.0μm~50μm、好ましくは5.0μm~40μm、より好ましくは7.0~30.0μm、さらにより好ましくは9.0~20.0μm、最も好ましくは9.0~12.0μmの厚さを有する。いくつかの実施形態において、フィルムは、20~30μm、例えば約25μmの厚さを有する。
【0171】
材料の厚さは、SEMを使用してフィルムの断面の厚さを測定するなど、標準的な技術を用いて測定することができる。
【0172】
フィルム中のセルロース粒子の量は、充填率(ff)を用いて推定することができる。
【0173】
充填率(ff)とは、材料の総体積(v2)に対する材料中のセルロース粒子の体積(v1)の比である。
【0174】
材料中のセルロース粒子の体積は、セルロースの公称密度ρ、1.5g/cm-3を使用して計算することができ、ここで、セルロースナノ粒子の体積v1=m/ρである(mは材料の重量である)。材料の体積は、材料の外部寸法の測定に基づいて、通常の方法によって計算することができる。例えば、円筒として近似できる円形フィルムの場合、式v2=πr2dを使用することができ、ここで式中のdはフィルムの厚さであり、rはフィルムの半径である。
【0175】
充填率は、セルロース系材料の光学特性(例えば、散乱効率や反射率)に影響することが知られている。
【0176】
典型的には、フィルムは20~60%の充填率を有する。好ましくは、フィルムは25~55%、より好ましくは40~55%の充填率を有する。好ましくは、フィルムは約50%の充填率を有する。
【0177】
フィルムの充填率及び厚さは、微粒子の初期量及びフィルム調製中の真空濾過プロセスの継続時間を変化させることによって適切に調整することができる(下を参照)。
【0178】
フィルムの光学特性は、分光計及び積分球と組み合わせた光源を使用するなど、標準的な技術を使用して測定することができる。代表的な構成を
図8に示す。シグナルは、試料の非存在下での強度に対して正規化することができる。典型的には、Labsphere SRS-99-010などの拡散白色標準板を使用する。光が照射されていないときにバックグラウンドを記録することができ、バックグラウンドノイズを測定値から差し引くことができる。光学特性は、可視範囲(例えば、400nm~800nm)で測定される。典型的には、光学特性は空気中で測定する。透過率を測定し、フィルムによる吸収がないと仮定して、得られた透過率値から反射率を計算することができる。典型的には、各試料について5つのスペクトルを取って平均した。
【0179】
平均反射率とは、一般に、波長の範囲にわたって取られた反射率値の平均である。例えば、400~800nmの波長範囲にわたる平均反射率とは、400~800nmの波長で測定された反射率値の平均である。反射率値は、典型的には、1nm又は5nm間隔など、波長の範囲にわたって一定間隔で測定される。
【0180】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の反射率を有する。
【0181】
第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長において70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上の反射率を有する。
【0182】
第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長にわたって73%以上、好ましくは78%以上、より好ましくは83%以上の平均反射率を有する。
【0183】
第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長において50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の反射率を有する。
【0184】
第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長にわたって55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上の平均反射率を有する。
【0185】
500nmにおいて、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には65%以上の反射率を有する。第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、500nmにおいて85%以上の反射率を有する。第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、500nmにおいて65%以上の反射率を有する。
【0186】
600nmにおいて、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には62%以上の反射率を有する。第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは600nmにおいて82%以上の反射率を有する。第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは600nmにおいて62%以上の反射率を有する。
【0187】
700nmにおいて、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には60%以上の反射率を有する。第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは700nmにおいて80%以上の反射率を有する。第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは700nmにおいて60%以上の反射率を有する。
【0188】
典型的には、材料は、例えば、材料が40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上の反射率を有する。
【0189】
第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長において55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上の反射率を有する。
【0190】
第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長にわたって60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上の平均反射率を有する。
【0191】
500nmにおいて、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上の反射率を有する。第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは500nmにおいて70%以上の反射率を有する。
【0192】
600nmにおいて、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは68%以上の反射率を有する。第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは600nmにおいて68%以上の反射率を有する。
【0193】
700nmにおいて、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上の反射率を有する。第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは700nmにおいて65%以上の反射率を有する。
【0194】
典型的には、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは73%以上の反射率を有する。
【0195】
第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは73%以上の反射率を有する。
【0196】
第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して、400~800nmの波長にわたって68%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは78%以上の平均反射率を有する。
【0197】
500nmにおいて、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上の反射率を有する。第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、500nmにおいて75%以上の反射率を有する。
【0198】
600nmにおいて、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上の反射率を有する。第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、600nmにおいて75%以上の反射率を有する。
【0199】
700nmにおいて、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上の反射率を有する。第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは700nmにおいて70%以上の反射率を有する。
【0200】
高い絶対反射率値に加えて、フィルムによって反射された光もまた高度に拡散性である。したがって、光は典型的には、所与の波長範囲にわたって同等のレベルで反射される。また、反射スペクトルには有意な又は鋭いピークがない。これにより、特定の着色した波長が反射又は透過スペクトルにおいて支配的にはならないため、優れた白色度を有するフィルムが得られる。
【0201】
典型的には、フィルムは、ランバートプロファイル又はランバート様プロファイルに従った反射光の角度分布を有する。ランバート反射率プロファイルでは、反射表面から観察される反射光の強度が、入射光の方向と表面の法線との間の角度の余弦に正比例する。これは、白色光の散乱にとって望ましい特性であり、理想的な拡散体であることを示している。これにより、すべての観察角度において同じ見かけの明るさを有する材料が得られる。
【0202】
典型的には、40μm以下、例えば20μm以下、例えば10μm以下の厚さを有する材料などにおいて、フィルムは、ランバートプロファイル又はランバート様プロファイルに従った反射光の角度分布を有する。
【0203】
白色度は、反射率(本明細書に記載のように測定される)をCEILAB(L*a*b*)色空間座標(CEILAB (L*a*b*) colour-space coordinates)に変換することによって定量化することができる。ここで、a*は赤(正の値)と緑(負の値)との間の位置を表し、b*は青(負の値)と黄(正の値)との間の位置を表す。L*は、反射の知覚明度又は輝度を表す。明度0は黒であり、明度100は拡散白色である。100に近い明度は、材料の優れた白色度を示す。
【0204】
例えば、反射率は、
図8(T
1及びT
2)に示すように、コリメータ(Thorlabs)を介して光ファイバー(600μm Thorlabs FC-UV100-2-SR)に接続された光源(Ocean Optics HPX-2000)と、分光計(Avantes HS2048)によって収集されたシグナルとを使用して測定することができる。シグナルは、試料を載せていないときの強度に対して正規化され得る。バックグラウンドは、典型的には、光が照射されないときに記録される。波長の範囲は、400~800nmであってもよい。各試料について5つのスペクトルを取り、平均してシグナル対ノイズ比を減少させることができる。各スペクトルは、3秒に等しい積分時間を使用して記録してもよい。
【0205】
白色度の定量化のために、完全な白色は色空間座標(100、0、0)を有すると仮定することができる。白色度は、文献(Jacucci et al.)に記載されているように定義して、計算することができる。
【0206】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、70以上、好ましくは75以上、より好ましくは80以上の明度を有する。典型的には、フィルムは、例えば、材料が25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、70~95、好ましくは75~90、より好ましくは80~90、さらにより好ましくは85~90の明度を有する。
【0207】
第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは、80以上、好ましくは85以上、より好ましくは88以上の明度を有する。
【0208】
第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは、75以上、好ましくは80以上、より好ましくは82以上の明度を有する。
【0209】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、75以上、好ましくは80以上、より好ましくは83以上の明度を有する。典型的には、フィルムは、例えば、材料が40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、80~90、好ましくは82~86、例えば83~85の明度を有する。第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは、80以上、好ましくは85以上、より好ましくは88以上の明度を有する。
【0210】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、82以上、例えば85以上、例えば87以上の明度を有する。典型的には、フィルムは、例えば、材料が53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、80~90、好ましくは83~89、より好ましくは86~88の明度を有し得る。第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは、82以上、好ましくは85以上、より好ましくは87以上の明度を有する。
【0211】
本発明の高い輝度は、材料の優れた拡散白色度を示す。
【0212】
透過率とは、物質を透過する入射光の割合である。低い透過率は、例えば、入射光の高レベルの散乱及び高レベルの反射率から生じる高い不透明度を示す。
【0213】
透過率は、上記の反射率と同じ方法で測定することができる。透過率は(1-反射率)に等しくてもよく、ここで吸収は無視される。
【0214】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が40%の充填率及び30μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下の透過率を有する。
【0215】
500nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び30μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には12%以下の透過率を有する。600nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び30μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には13%以下の透過率を有する。700nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び30μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には14%以下の透過率を有する。
【0216】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が40%の充填率及び20μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下の透過率を有する。
【0217】
500nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び20μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には15%以下の透過率を有する。600nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び20μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には17%以下の透過率を有する。700nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び20μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には18%以下の透過率を有する。
【0218】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が40%の充填率及び15μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して35%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下の透過率を有する。
【0219】
500nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び15μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には22%以下の透過率を有する。600nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び15μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には25%以下の透過率を有する。700nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び15μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には25%以下の透過率を有する。
【0220】
典型的には、フィルムは、例えば、材料が40%の充填率及び10μmの厚さを有する場合、400~800nmの波長の入射光に対して45%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下の透過率を有する。
【0221】
500nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び10μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には30%以下の透過率を有する。600nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び10μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には32%以下の透過率を有する。700nmにおいて、例えば、材料が40%の充填率及び10μmの厚さを有する場合、フィルムは典型的には35%以下の透過率を有する。
【0222】
フィルムの透過率は低い。これは、入射光のわずかな割合のみがフィルムを透過することから、フィルムによる優れた散乱効率を示している。入射光の大部分が散乱されて反射され、優れた白色度をもたらす。
【0223】
輸送平均自由行程とは、光が、材料との相互作用によってその最初の伝搬方向がランダム化される前に、材料内を移動しなければならない平均距離を表す。輸送平均自由行程は、試料の構造パラメータとは独立した様々な材料の散乱応答の尺度である。輸送平均自由行程は、材料の透過率から計算することができる。
【0224】
例えば、輸送平均自由行程は、文献(Syurik et al.)に記載されているように、以下の式によって全透過データから評価することができる。
【数1】
式中、T、L、l
t及びz
eは、それぞれ全透過、厚さ、平均自由行程及び外挿長である。外挿長は、平均自由行程の評価において試料の界面での内部反射を考慮に入れ、充填率システムを知ることによって計算することができる(Jacucci et al.)。
【0225】
典型的には、フィルムは、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは3μm以下の平均自由行程を有する。第3の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは3μm以下の平均自由行程を有する。第4の実施形態(中セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが25%の充填率及び25μmの厚さを有する場合、フィルムは8μm以下の平均自由行程を有する。
【0226】
典型的には、フィルムは、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、5μm以下、例えば3μm以下、例えば2μm以下の平均自由行程を有する。第5の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが40%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは2μm以下の平均自由行程を有する。
【0227】
典型的には、フィルムは、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下の平均自由行程を有する。第6の実施形態(大セルロース微粒子フィルム)では、例えば、フィルムが53%の充填率及び9μmの厚さを有する場合、フィルムは1.5μm以下の平均自由行程を有する。
【0228】
典型的には、材料の輸送平均自由行程は波長に依存せず、一般に全透過スペクトルの形状に似る。これは、材料による優れた散乱効率を示唆し、優れた不透明度と白色度を与える。
【0229】
いくつかの実施形態において、フィルムを構成するセルロース粒子の表面は、上記のように修飾されてもよい。
【0230】
フィルムは、フィルムが疎水性であるように修飾されてもよい。典型的には、疎水性フィルムは、90°超、好ましくは100°超、好ましくは110°超、好ましくは120°超、より好ましくは130°超、例えば約140°などの水滴接触角を有する。疎水性フィルムは、疎水性セルロース粒子を含んでもよい。
【0231】
疎水性フィルムは、防汚性及び自己浄化性コーティングなどの防汚及び自己浄化が望ましい場合に特に有用である。
【0232】
疎水性フィルムは、粒子の表面上のヒドロキシル基の一部が-OTMS又は-O-トリメトキシシランなどの疎水性基で置換されたセルロース粒子などの疎水性セルロース粒子から得ることができる。セルロース粒子の表面修飾は、上記の通りであってもよい。
【0233】
理論に束縛されるものではないが、セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基の一部を-OTMS基又は-O-トリメトキシシラン基で置換することにより、ヒドロキシル基間の水素結合が減少して、セルロース粒子の間の細孔又は空隙の、例えば溶媒蒸発中の毛細管圧力による崩壊が生じにくくなると考えられる。これにより、濾過及び凍結乾燥工程を必要とせずにフィルムを形成することができる。
【0234】
結果として、フィルムは、例えば、凍結乾燥工程が不要な、簡素化され、より容易に拡張可能な方法を用いて調製することができる。フィルムはまた、改変された構造又は充填率、疎水性、強度又は他の物理的特性を有することができる。
【0235】
フィルムはまた、例えばフィルムを破砕することによって、フレークに割られてもよい。典型的には、フレークはフィルムと同じ厚さを有する。フレークは、典型的には、5μm~500μm、好ましくは10μm~100μm、好ましくは20μm~70μmの長さを有する。一般に、フレークは、その厚さより大きい長さと幅を有する。フレーク又はフレーク様の形状は、典型的には、その長さの大部分にわたって均一な高さを有する。フレークは、典型的には一次元において平坦である。
【0236】
フレークの光学特性は、フィルムについて見られるものに相当する。フレークは、本発明の組成物に使用するために懸濁液中に分散させることができる。
【0237】
クラスター
本発明はまた、本明細書に記載のセルロース粒子を含むクラスターを提供する。
【0238】
クラスターは、本明細書に記載のセルロース粒子から実質的になっていてもよい。クラスターは、本明細書に記載のセルロース粒子からなっていてもよい。
【0239】
クラスターは、セルロース粒子の集塊であってもよい。典型的には、セルロース粒子は、非共有結合の相互作用によってまとめられる。
【0240】
クラスターは、本明細書に記載の方法によって製造することができる。したがって、本発明は、本発明の方法によって得られた又は得ることができるクラスターを提供する。
【0241】
クラスターは、典型的には、球又は球様の形状である。クラスターは、一般に、高次の対称性を有する。クラスターは、似たような又は等しい長さ、幅及び高さを有し得る。クラスターは、1~2、好ましくは1~1.5、より好ましくは1~1.2のアスペクト比を有し得る。アスペクト比は約1であってもよい。
【0242】
加えて、又は代わりに、クラスターの集団は、1~2、好ましくは1~1.5、より好ましくは1~1.2の平均アスペクト比を有してもよく、ここで、平均アスペクト比とは、平均幅に対する平均長さの比である。好ましくは、クラスターは約1の平均アスペクト比を有する。
【0243】
クラスターは、三次元であって一次元において平坦ではないという点で、フィルム又はフレークとは異なる。すなわち、クラスターは実質的に平坦な形態を有さない。クラスターは典型的にはフレークよりも小さい(例えば、クラスターの長さは典型的にはフレークの長さよりも短い)。
【0244】
好ましくは、クラスターは、1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは3.0~30.0μm、さらにより好ましくは5.0~20.0μmである長さ(例えば乾燥長さ)を有する。
【0245】
加えて又は代わりに、クラスターの集団は、1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの平均長さを有し得る。
【0246】
クラスターの長さは、SEMなどの標準的な技術を用いて測定することができる。
【0247】
いくつかの実施形態において、セルロース粒子はクラスター中にランダムに分布する。
【0248】
典型的には、クラスターは細孔又は空隙を含む。細孔又は空隙はセルロース粒子の間に存在する。クラスターは多孔性であると言うことができる。
【0249】
典型的には、細孔の形状は粒子の形状と同様である。細孔は一般に細長く、長さ寸法が幅寸法より大きい。細孔は、粒子と同様の幅を有してもよい。細孔は、粒子と同様の長さを有してもよい。細孔は、粒子と同様のアスペクト比を有してもよい。
【0250】
細孔の総体積は、材料の総体積(v2)から材料中のセルロース粒子の体積(v1)を引いたものに等しい。
【0251】
クラスター中のセルロース粒子の量は、充填率(ff)を使用して推定することができる。
【0252】
充填率(ff)とは、材料の全体積(v2)に対する材料中のセルロース粒子の体積(v1)の比である。
【0253】
クラスター中のセルロース粒子の体積は、セルロースの公称密度ρ、1.5g/cm-3を使用して計算することができ、ここで、セルロースナノ粒子の体積v1=m/ρである(mは材料の重量である)。材料の体積は、SEMを使用して直径を測定するなど、クラスターの外形寸法の測定に基づいて、通常の方法によって計算することができる。
【0254】
あるいは、充填率(ff)は、空隙の数及びサイズを他の材料と比較することによって測定することができる。例えば、クラスター中に存在する空隙の数を、充填率が既知の同じセルロース粒子を含むフィルム中に存在する空隙の数と比較することができる。空隙の数及びサイズは、SEMなどの標準的な技術を使用して立証することができる。クラスターとフィルムの空隙の数及びサイズが似ている場合、クラスターはフィルムと同等の充填率を有すると言うことができる。フィルムの充填率は上記のように測定される。
【0255】
充填率は、セルロース系材料の光学特性(例えば、散乱効率や反射率)に影響することが知られている。
【0256】
典型的には、クラスターは20~60%の充填率を有する。好ましくは、クラスターは25~55%、より好ましくは40~55%の充填率を有する。好ましくは、クラスターは約50%の充填率を有する。
【0257】
クラスターの充填率及び直径は、CMPの初期量及びクラスター調製中の噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥プロセスの条件を調節することによって適切に調整することができる(下を参照)。
【0258】
セルロース粒子の調製方法
概して、本出願は、セルロース粒子の調製方法を提供し、方法は、
(a)セルロース材料に酸を添加して、セルロース粒子を加水分解する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子から酸を除去する工程、及び
(c)特定のサイズの加水分解されたセルロース粒子を単離する工程を含む。
【0259】
「セルロース粒子に酸を添加する」工程(a)は、加水分解工程と称することができる。「加水分解されたセルロース粒子から酸を除去する」工程(b)は、洗浄工程と称することができる。「特定のサイズの加水分解されたセルロース粒子を単離する」工程(c)は、分画工程と称することができる。
【0260】
本出願はまた、セルロース粒子の調製方法を提供し、方法は、
(a)セルロース材料を加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程を含む。
【0261】
この方法は、本発明のセルロース粒子の調製に適する。
【0262】
いくつかの実施形態において、この方法は、300~10,000nmの長さと2~20のアスペクト比を有する、好ましくは1,000~10,000nmの長さと2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子を与える。好ましくは、粒子は200~1,000nmの幅を有する。この方法によって得ることができる他のサイズは、上記の通りである。セルロース粒子の長さとアスペクト比は、上記のような任意の好適な方法を用いて決定することができる。
【0263】
加水分解工程、洗浄工程、分画工程に使用される条件を調節することにより、300~10,000nmの長さと2~20のアスペクト比、好ましくは1,000~10,000nmの長さと2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子を調製することができる。好ましくは、粒子は200~1,000nmの幅を有する。
【0264】
この方法は、多孔性の散乱性セルロース系材料を製造するために以前は必須であった溶媒交換工程を必要としない。
【0265】
セルロース粒子を調製するいくつかの方法が知られている。しかしながら、以前に記載された方法は、典型的には、分画工程を含まず、及び/又は本発明と同じ条件下でセルロース材料を加水分解していない。これにより、本発明のセルロース微粒子とは異なるサイズ及び形状を有するセルロース粒子を生じる(セルロース粒子の項に記載のように)。
【0266】
米国特許出願公開第2021/213405号には、加水分解及び洗浄工程を含む方法が記載されている。分画工程は、米国特許出願公開第2021/213405号には記載されていない。
【0267】
国際公開第2012/06720号には、加水分解工程において低濃度の硫酸を使用してセルロースナノウィスカーを調製する方法が記載されている。この文献もまた、分画工程については言及していない。
【0268】
中国特許出願公開第113152150号には、CNCを懸濁させ、次いでCNC懸濁液を濾過して乾燥させてナノ粒子を形成する工程が記載されている。この方法は、加水分解工程又は分画工程を含んでいない。
【0269】
中国特許出願公開第113174091号には、酸加水分解によるセルロース粒子の形成が記載されている。使用される酸濃度は60w/w%より高く、また分画工程も記載されていない。
【0270】
中国特許出願公開第112280072号には、乳酸とグルコースを含むCNCの懸濁液からセルロース粒子を調製し、次いでこれを乾燥させてフィルムを形成する工程が記載されている。この方法は、加水分解工程、洗浄工程又は分画工程を含んでいない。
【0271】
中国特許出願公開第113480756号には、45℃で64重量%の硫酸を用いた酸加水分解によるセルロースフィルムの調製が記載されている。この文献では、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液の分画は記載されていない。得られたフィルムは着色している。
【0272】
欧州特許出願公開第3854819号は、様々な温度で64重量%の硫酸を用いたセルロースを加水分解する方法に関する。加水分解された溶液は洗浄され、透析される。分画遠心法を使用する分画プロセスは記載されていない。
【0273】
中国特許出願公開第106699904号には、塩酸を用いた加水分解による調製が記載されている。この文献にも、分画工程は記載されていない。
【0274】
米国特許出願公開第2013/303750号には、洗浄及び透析の前にセルロースを加水分解する方法が記載されている。加水分解工程には、本発明の好ましい実施形態とは異なる条件が使用されている。50v/v%の酸、50℃の温度及び3~5時間の時間を使用する加水分解工程は開示されていない。この文献にも、分画遠心分離を使用する分画工程は記載されていない。米国特許出願公開第2013/303750号で使用されている原料は、本発明の好ましい微結晶セルロース粉末とは対照的に、漂白されたユーカリの乾燥ラボパルプである。
【0275】
中国特許出願公開第113150319号には、10~80%の硫酸を用いた30~80℃での加水分解によるセルロースナノ結晶の調製が記載されている。この発明は、CMPを供給するための温度及び硫酸濃度の新しい選択肢を示している。この文献には、調製方法中の洗浄工程又は分画工程は記載されていない。
【0276】
中国特許出願公開第102276734号には、セルロースパルプを35重量%硫酸溶液を用いて60℃で5時間加水分解する方法が記載されている。加水分解されたセルロースを洗浄し、乾燥させ、次いで超音波浴を用いて再分散させている。酸濃度はこの発明においてより低く、分画工程は記載されていない。
【0277】
セルロース粒子の調製方法はまた、
セルロース材料を供給する工程を含む。
【0278】
これは、準備工程と称することができ、適切なセルロース材料を入手することを指す。準備工程は、典型的には加水分解工程の前に行われる。
【0279】
任意の好適なセルロース材料を使用することができる。好適なセルロース材料は、細菌、植物又は動物源(例えば、キチン)から調製することができ、植物ベース及びバイオマス由来の、例えば、綿及び木材、並びにその後に加工された製品、例えば、紙、濾紙、コットンリンター、セルロース粉末及び木材パルプが挙げられる。
【0280】
好ましくは、セルロース材料は微結晶セルロース粉末である。好適な微結晶セルロース粉末は市販されている(例えば、SERVA Electrophoresis GmbH製)。
セルロース材料は懸濁液の形態で提供されてもよい。好ましくは、微結晶セルロース粉末を水に分散させて水性懸濁液を形成させる。
【0281】
懸濁液とは、懸濁液が長時間かき混ぜずに静置された場合に、典型的には沈降を生じるために十分に大きな固体粒子を含有する流体の不均一な混合物である。セルロース粒子は液体中に懸濁される。懸濁液は、セルロース粒子の沈降を回避するために、例えば超音波処理によって混合してもよい。
【0282】
セルロース材料の保持に適した任意の懸濁媒体を使用することができる。好適な懸濁媒体は典型的には、水などの水性溶媒である。酸性及び塩基性の媒体を使用することができる。典型的には酸が使用され、適切な酸を下に示す。
【0283】
セルロース粒子を調製する方法は、
セルロース材料を加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程を含む。
【0284】
これは加水分解工程と称することができる。加水分解工程は洗浄工程の前に行われる。
【0285】
加水分解は、典型的には水性溶媒(例えば水)中で行われる。
【0286】
加水分解工程において、セルロース材料は、典型的には酸で加水分解される。酸加水分解とは、プロトン酸を用いて、水の付加による置換反応を介して化学結合の切断を触媒する加水分解プロセスである。酸加水分解の間に、セルロース粒子のセルロース鎖骨格が分子レベルで修飾されて、セルロース粒子にコロイド安定性を与えることも提唱されている。例えば、硫酸加水分解は、セルロース鎖を硫酸のハーフエステル基で修飾すると考えられている。
【0287】
加水分解工程は、セルロース材料の懸濁液などのセルロース材料を酸と接触させることを含み得る。
【0288】
酸は有機酸であっても無機酸であってもよい。典型的には、酸は無機酸(鉱酸)である。好適な無機酸としては、臭化水素酸(HBr)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、ヨウ化水素酸(HI)、硝酸(HNO3)、過塩素酸(HClO4)、リン酸(H3PO4)、硫酸(H2SO4)又はそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、無機酸は硫酸又は塩酸である。より好ましくは、無機酸は硫酸である。
【0289】
好適な有機酸としては、ギ酸(HCOOH)及び酢酸(CH3COOH)が挙げられる。好ましくは、有機酸はギ酸である。
【0290】
好ましくは、酸は硫酸又は塩酸である。より好ましくは、酸は硫酸である。
【0291】
(水性)酸の強度は、pHスケールを使用して規定することができる。水溶液のpHを決定する方法は公知であり、例えば、電気化学的方法(pHプローブを使用)及び万能指示薬などの指示薬化合物に対する滴定が挙げられる。典型的には、pHとは、加水分解工程の終点における加水分解溶液のpHを指す。
【0292】
加水分解工程で使用される酸は強酸性である。典型的には、酸は、1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.0以下のpHを有する。
【0293】
酸の強度は、酸の濃度に比例する。水性酸の濃度は、体積百分率(v/v%)を使用して特定することができる。
【0294】
典型的には、酸の濃度は、40~60v/v%、好ましくは45~55v/v%、より好ましくは50~55v/v%である。v/v%は、典型的には溶媒として水を用いて計算される。
【0295】
酸の量は、望ましい量のセルロース材料を懸濁できるように選択される。水性酸の量は、使用されるセルロース材料1グラム当たりのmL単位の水性酸の体積(セルロース材料に対する酸の比)を示すことによって特定することができる。
【0296】
典型的には、加水分解工程は、100:1、好ましくは80:1、より好ましくは60:1の酸対セルロース材料の質量比を使用する。加えて又は代わりに、加水分解工程は、4:1、好ましくは10:1の酸対セルロース材料の質量比を使用してもよい。例えば、加水分解工程は、100:1~4:1、好ましくは80:1~10:1の酸対セルロース材料の質量比を使用してもよい。セルロース対酸の比がより高い場合、加水分解工程に必要とされる酸がより少なく、洗浄工程に必要とされる溶媒がより少なくなるため、プロセスがより効率的になる。
【0297】
加水分解工程は、望ましい量のセルロース材料が加水分解されるように十分な時間行うことができる。典型的には、加水分解は、1~10時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~7時間、例えば約5時間行われる。
【0298】
加水分解は、酸の添加から反応がクエンチされるまで起こる。反応は、水を添加して酸を希釈する、塩基を添加して酸を中和する、酸を除去する(例えば、透析などによる洗浄によって)、又は温度を下げるなど、任意の適切な手段によってクエンチすることができる。
【0299】
加水分解工程は、高温(周囲温度、約20℃以上)で行ってもよい。加水分解工程中に熱を供給する方法は公知であり、例えば、外側加熱ジャケットを備えた反応容器を使用する、又はマイクロ波加熱を使用する、などが挙げられる。
【0300】
典型的には、加水分解工程は、40~60℃、好ましくは45~55℃、より好ましくは48~52℃、例えば約50℃の温度で行われる。
【0301】
好ましくは、セルロース材料は、50v/v%硫酸を用いて約50℃の温度で3~5時間加水分解される。
【0302】
いくつかの実施形態では、工程(b)において、セルロース材料は、50v/v%硫酸を用いて50℃の温度で5時間加水分解される。いくつかの実施形態では、工程(b)において、セルロース材料は、55v/v%硫酸を用いて60℃の温度で5時間加水分解される。
【0303】
加水分解は、酸加水分解をクエンチすることによって停止させることができる。典型的には、加水分解は、過剰の水などの水の添加によってクエンチされる。例えば、60mLの硫酸を使用してセルロース粒子を加水分解する場合、300mLの水を添加して酸加水分解をクエンチすることができる。
【0304】
より高い濃度の酸、より高い温度又はより長い時間を用いることにより、酸加水分解の速度が増大すると考えられる。典型的には、加水分解の程度が大きいほど、セルロース粒子のサイズは小さくなる。
【0305】
加水分解されたセルロース粒子は、任意の好適な方法によって収集することができる。典型的には、加水分解されたセルロース粒子を遠心分離によって収集する。遠心分離によって、加水分解されたセルロース粒子を酸の上清、及び、任意で酸加水分解をクエンチするために添加された水から分離することができる。次いで、例えばピペットを使用して上清を除去することができる。
【0306】
セルロース粒子を調製する方法は、
加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程を含む。
【0307】
これは、洗浄工程と称することができる。洗浄工程は、加水分解工程の後、かつ分画工程の前に行われる。
【0308】
加水分解されたセルロース粒子を、水を添加することによって洗浄することができる。次いで、水を除去することができる。したがって、洗浄工程は、加水分解されたセルロース粒子を水と接触させることを含み得る。
【0309】
洗浄工程は、典型的には加水分解反応をクエンチし、したがって加水分解工程を終了させる。洗浄ステップは、セルロース粒子から酸を希釈し、したがって、加水分解反応をクエンチすることができる。
【0310】
典型的には、洗浄工程では、1重量%のセルロース粒子の濃度にするために十分な水を添加してもよい。例えば、1gの加水分解されたセルロース粒子に対して、約100mLの水を洗浄毎に添加してもよい。これを1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上繰り返して酸を除去することができる。次いで、洗浄水を遠心分離によって除去してもよい。
【0311】
好ましくは、洗浄工程は、代わりに又は加えて、加水分解されたセルロース粒子を蒸留水などの水で透析する工程を含んでもよい。透析を、上記のように水で洗浄した後に行ってもよい。透析は、加水分解されたセルロース粒子を蒸留水に再懸濁し、半透(透析)膜の孔を通るそれらの不均一な拡散速度によって、溶解したイオン(例えば、加水分解工程で使用された酸)からそれらを精製することを含む。任意の適切な透析膜を使用することができる。適切な透析膜は、12kDa以上、例えば12~40kDaの分子量のカットオフを有する。
【0312】
透析プロセス中に蒸留水を交換してもよい。例えば、透析中に12時間毎に蒸留水を交換してもよい。蒸留水は、5回以上、好ましくは10回以上交換してもよい。
【0313】
いくつかの実施形態において、加水分解されたセルロース材料を、蒸留水に対して7日間透析し、12時間毎に蒸留水を交換する。
【0314】
いくつかの実施形態において、加水分解されたセルロース材料を、加水分解されたセルロース材料のpHが安定するまで透析する。pHは、透析プロセス中に蒸留水を交換するたびに、例えば12時間毎に測定してもよい。典型的には、加水分解されたセルロース材料のpHは、少なくとも2回の連続した測定、好ましくは4回の連続した測定、より好ましくは6回の連続した測定においてpHが一定になると安定している。あるいは、pHは1日1回の測定でもよく、pHが少なくとも連続2日間、好ましくは連続3日間、より好ましくは連続4日間一定になると、pHは安定している。
【0315】
一定のpHは、酸又は塩基が加水分解されたセルロース材料から実質的に除去されたことを示す。上記のように、水溶液のpHを決定する方法は公知である。
【0316】
いくつかの実施形態において、洗浄工程は、遠心分離によってセルロース粒子から酸を除去し、水で洗浄して遠心分離によって水を除去し、加水分解されたセルロース材料を透析することを含み得る。
【0317】
セルロース粒子の調製方法は、
加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程を含む。
【0318】
これは分画工程と称することができる。分画工程は、洗浄工程の後に行われる。
【0319】
加水分解されたセルロース粒子を、任意の適切な方法によって分画することができる。適切な方法としては、濾過及び遠心分離が挙げられる。好ましくは、加水分解されたセルロース粒子を分画遠心分離によって液体から分離する。
【0320】
分画は、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液に対して行われる。分画工程において、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液は、典型的には、個々のセルロース粒子の懸濁液である。すなわち、加水分解されたセルロース粒子は、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液中で顕著に凝集していないか、又は凝集していない。これは、所望のサイズ及び形状を有するセルロース粒子の凝集物を除去する分画工程を回避することから、有益である。これは、所望のサイズ及び形状を有するセルロース粒子の収率を改善する。
【0321】
分画(遠心分離など)は、セルロース粒子の懸濁液に対して行われる。典型的には、ミリポア水などの水中のセルロース粒子の懸濁液が使用される。任意の好適な濃度を使用することができる。好適な濃度としては、0.1重量%~5.0重量%、例えば0.2重量%~2.0重量%、例えば0.2重量%~1.0重量%のセルロース粒子が挙げられる。好ましくは、加水分解されたセルロース粒子の濃度は0.5重量%である。
【0322】
セルロース粒子の懸濁液は、任意の適切な方法によって調製することができる。加水分解されたセルロース粒子は、分離の前に混合又は撹拌されていてもよい。典型的には、加水分解されたセルロース粒子は、チップ音波処理又は超音波処理などによって分離の前に音波処理される。
【0323】
いくつかの実施形態において、0.5重量%の粒子濃度の加水分解されたセルロース粒子を含む30mLの懸濁液は、2秒オン2秒オフのサイクルで2分間、30%のアンプリチュードで超音波処理される。超音波処理は、20kHz、先端直径12.7mmのFisherブランドの超音波破砕機などの任意の好適な装置を使用して行うことができる。
【0324】
典型的には、分画遠心分離は、第1遠心分離と第2遠心分離で構成される。第1遠心分離は第2遠心分離とは異なる速度である。第1遠心分離は第2遠心分離よりも低速である。第2遠心分離は、典型的には、第1遠心分離からの上清に対して行われる。
【0325】
第1遠心分離は、1,000~3,000rpm、好ましくは1,500~2,500rpm、より好ましくは1,800~2,200rpm、例えば約2,000rpmの速度である。
【0326】
第2遠心分離は、2,000~4,000rpm、好ましくは2500~3500rpm、より好ましくは2,800~3,200rpm、例えば約3,000rpmの速度である。
【0327】
遠心分離速度は、相対遠心力(RCF)を用いて定量化することもできる。RCFとは、遠心分離中に粒子に作用する力の尺度である。RCFは、一般に、地球の重力場(g)の倍数として表される。RCFは、以下の式によって計算することができ、式中、半径(cm)は、遠心分離機の中心から試料の先端までの距離であり、回転速度(1分当たりの回転)は、遠心分離機の回転速度である。半径は典型的には約15cmである。
【0328】
RCF=11.2×半径×(回転数/1000)2
【0329】
第1遠心分離のRCFは、第2遠心分離と異なっていてもよい。第1遠心分離のRCFは、第2遠心分離より小さくてもよい。
【0330】
第1遠心分離は、50~1,500、好ましくは150~1,500、より好ましくは300~1,100、なおより好ましくは500~900、さらにより好ましくは600~800のRCFであり得る。第1遠心分離は、約650のRCFであり得る。
【0331】
第2遠心分離は、600~2,600、好ましくは1,000~2,000、より好ましくは1,300~1,700、なおより好ましくは1,400~1,600のRCFであり得る。第2遠心分離は、約1,500のRCFであり得る。
【0332】
第1遠心分離は、168~1,512、好ましくは378~1,150、より好ましくは544~813のRCFである。第1遠心分離は、約672のRCFである。
【0333】
第2遠心分離は、671~2,688、好ましくは1,050~3,058、より好ましくは1,317~1,720のRCFである。第2遠心分離は、約1,512のRCFである。
【0334】
第1遠心分離は、1~20分間、好ましくは2~15分間、好ましくは3~10分間、より好ましくは4~6分間、例えば約5分間行われ得る。
【0335】
第2遠心分離は、1~20分間、好ましくは2~15分間、好ましくは3~10分間、より好ましくは4~6分間、例えば約5分間行われ得る。
【0336】
好ましくは、第1遠心分離は2,000rpmで5分間行われ、第2遠心分離は3,000rpmで5分間行われ、第2遠心分離は第1遠心分離からの上清に対して行われる。
【0337】
2段階の分画遠心分離プロセスによって、セルロース粒子のより狭い粒径分布が得られると考えられる。低速での第1遠心分離は、より大きなセルロース粒子を沈殿させる。したがって、第1遠心分離からの上清には、依然として所望のサイズの粒子とより小さい粒子が含まれる。次いで、第1遠心分離からのこの上清を再び高速で遠心分離して、所望の粒子を沈降させる。より小さい粒子が第2遠心分離からの上清中に残る。結果として、第2遠心分離からの沈降粒子は、より大きい又はより小さい粒子を大きな割合で含まないため、粒径分布がより狭い。
【0338】
沈降したセルロース粒子は、任意の適切な方法によって収集することができる。典型的には、セルロース粒子は濾過によって収集される。
【0339】
セルロース粒子は、典型的にはスラリー又は懸濁液として収集される。スラリー又は懸濁液には、水、エタノール又はアセトンを用いることができる。好ましくは、スラリー又は懸濁液には水が用いられる。
【0340】
第1遠心分離の沈降画分からの沈降したより大きなセルロース粒子は、再循環することができ、上記の音波処理及び分画工程を繰り返すことによって再処理してもよい。これにより、所望の粒径を含有する画分の収率を改善することができる。
【0341】
セルロース粒子の調製方法はまた、
分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程を含む。
【0342】
これは乾燥工程と称することができる。乾燥工程は、典型的には、分画工程の後に行われる。乾燥工程は、典型的には、分画工程によって調製されたセルロース粒子のスラリー又は懸濁液に対して行われる。
【0343】
典型的には、乾燥工程は、分画されたセルロース粒子から溶媒を除去することを含む。乾燥工程は、典型的には、分画されたセルロース粒子から水、エタノール又はアセトンを除去することを含む。好ましくは、乾燥工程は、分画されたセルロース粒子から水を除去することを含む。
【0344】
分画されたセルロース粒子は、任意の適切な方法によって乾燥させることができる。適切な方法としては、蒸発、凍結乾燥、噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥が挙げられる。好ましくは、方法は、凍結乾燥、噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥である。より好ましくは、方法は凍結乾燥である。
【0345】
任意の好適な凍結乾燥装置を使用することができる。好適な凍結乾燥装置としては、LaboGene A/S製のScanvac and Coolsafe凍結乾燥器、又はSP Scientific製のVirTis凍結乾燥器が挙げられる。
【0346】
任意の好適な噴霧乾燥装置を使用することができる。好適な噴霧乾燥装置としては、Specialty Coating Systems(SCS)製のPrecisionCoatスプレーコーティング装置が挙げられる。
【0347】
任意の好適な噴霧凍結乾燥装置を使用することができる。好適な噴霧凍結乾燥装置としては、SCS製のPrecisionCoatスプレーコーティング装置、並びにLaboGene A/S製のScanvac and Coolsafe凍結乾燥器が挙げられる。
【0348】
典型的には、乾燥工程は、セルロース粒子の乾燥粉末を提供する。凍結乾燥又は噴霧乾燥によって、セルロース粒子の乾燥粉末を提供することができる。好ましくは、凍結乾燥によって、セルロース粒子の乾燥粉末を提供する。
【0349】
乾燥工程は、セルロース粒子のクラスターを提供することができる。好ましくは、噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥は、セルロース粒子のクラスターを提供する。
【0350】
乾燥セルロース粒子の形状及びサイズは、一般に、乾燥前のセルロース粒子と同じである。
【0351】
セルロース粒子の乾燥粉末は、多くの用途に有用である。いくつかの用途では、セルロース粒子を異なる媒体中に再分散できるように、セルロース粒子が乾燥粉末として提供されることが要求される。
【0352】
乾燥粉末はまた、溶媒の質量が少ないために貯蔵及び輸送コストが最小化される。乾燥粉末はまた、セルロース粒子中の真菌及び細菌の増殖を阻害する。さらに乾燥粉末によって、セルロース粒子を、セルロース粒子の調製に使用されたものとは異なる極性溶媒中に再分散させることができる。例えば、セルロース粒子を極性溶媒(例えば、水)中で調製しても、乾燥粉末を非極性溶媒(例えば、有機溶媒)中に再分散させることができる。乾燥粉末はまた、さらなる化学修飾を受けていてもよい。乾燥粉末は、さらなる化学修飾の前に有機溶媒中に再分散されてもよい。
【0353】
任意で、セルロース粒子の調製方法は、
セルロース粒子の表面を修飾する工程をさらに含む。
【0354】
これは、表面修飾工程と称することができる。典型的には、表面修飾工程は、セルロース粒子の分画後に行われる。
【0355】
表面修飾は、すべてのセルロース粒子に対して行うことができる。典型的には、表面修飾は、上記の分画工程又は乾燥工程で得られたセルロース粒子に対して行われる。
【0356】
表面修飾工程は、典型的には、セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基を異なる官能基に変換することを含む。ヒドロキシル基は、好ましくはエステル(エステル化)又はエーテル(エーテル化)に変換される。好ましくは、ヒドロキシル基はシリルエーテル基などのエーテル基に変換される。
【0357】
いくつかの実施形態において、表面修飾工程は、セルロース粒子をエステル化剤又はエーテル化剤と接触させることを含む。好ましくは、表面修飾工程は、セルロース粒子を疎水性化剤と接触させることを含む。
【0358】
任意の適切な試薬を使用して、表面修飾を行うことができる。好ましくは、試薬はエステル化試薬又はエーテル化試薬である。好ましくは、表面修飾工程は、セルロース粒子を無水物、塩化アシル又はエポキシ含有試薬で処理することを含む。疎水性化剤は、トリメチルクロロシラン(TCMS)及びクロロトリメトキシシランなどの任意の適切な疎水性化剤を含む。好ましくは、疎水性化剤はTCMSである。
【0359】
試薬は、液体又は蒸気(気体)であってもよい。典型的には、試薬は蒸気である。
【0360】
表面修飾は、溶液中又は気相反応中で行うことができる。溶液は、水性溶液であっても非水性溶液であってもよい。表面修飾は、窒素又はアルゴン雰囲気などの不活性雰囲気下で行われてもよい。
【0361】
セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基を、表面修飾反応の前に活性化させてもよい。任意の好適な活性化剤を使用することができる。好ましくは、活性化剤は塩基性溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液である。
【0362】
表面修飾は、触媒の存在下で行ってもよい。任意の好適な触媒を使用することができる。好ましくは、触媒は塩基性触媒である。好ましくは、触媒はピリジン、4-ジメチルアミノピリジン又はトリメチルアミンである。
【0363】
表面修飾工程は、任意の適切な長さの時間で行うことができる。典型的には、表面修飾工程は、5分以下、例えば3分以下、例えば2分以下、例えば1分以下で行われる。
【0364】
表面修飾工程によって、表面修飾セルロース粒子が得られる。理論に束縛されるものではないが、セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基をエステル又はエーテルなどで修飾することにより、セルロース粒子の表面間の水素結合が変化すると考えられる。修飾によって、水素結合を増加又は減少させることができる。好ましくは、修飾はヒドロキシル基間の水素結合を減少させ、セルロース粒子の間の細孔又は空隙の、例えば溶媒蒸発中の毛細管圧力による崩壊を生じにくくする。
【0365】
疎水性化剤による表面修飾によって、疎水性セルロース粒子が得られる。セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基の一部を疎水性基(-OTMS等)で置換することにより、ヒドロキシル基間の水素結合が減少することにより、セルロース粒子の間の細孔又は空隙の、例えば溶媒蒸発中の毛細管圧力による崩壊が生じにくくなると考えられる。溶液中の粒子の分散性はまた、例えば、非極性溶媒中の分散性を増大させるようにカスタマイズすることができる。
【0366】
フィルムの調製方法
概して、本出願はまた、セルロース粒子を含むフィルムの調製方法を提供し、方法は、
(a)セルロース粒子の懸濁液を供給する工程、
(b)懸濁液を濾過して、セルロース粒子の湿潤フィルムを供給する工程、及び
(c)セルロース粒子の湿潤フィルムを凍結乾燥する工程を含む。
【0367】
フィルムの調製方法は、セルロース粒子の懸濁液を供給する工程を含む。これは、準備工程と称することができる。
【0368】
任意のセルロース粒子(疎水性、表面修飾又は通常)を準備工程で使用することができる。好ましくは、本発明のセルロース粒子(上記)を使用する。
【0369】
セルロース粒子の懸濁液は、分画工程から直接供給されてもよい。セルロース粒子の懸濁液は、乾燥工程からの乾燥セルロース粒子を再分散させることによって供給されてもよい。
【0370】
懸濁液中のセルロース粒子の濃度を調整して、製造される材料の充填率及び厚さを変化させることができる。
【0371】
濃度は、典型的には0.1~12重量%、好ましくは4~10重量%、より好ましくは6~8重量%である。
【0372】
任意の適切な溶媒を、懸濁液の調製に使用することができる。適切な溶媒としては、水、エタノール及びアセトンが挙げられる。
【0373】
好ましくは、溶媒は水、エタノール又はアセトンである。より好ましくは、溶媒は水である。
【0374】
フィルムの調製方法は、懸濁液を濾過して、セルロース粒子の湿潤フィルムを供給する工程を含む。これは、濾過工程と称することができる。
【0375】
濾過工程は、ポリフッ化ビニリデン膜などの親水性膜を通して懸濁液を濾過することを含む。典型的には、濾過は真空下で行われる。濾過プロセスの継続時間及び真空の強度を使用して、製造される材料の充填率及び厚さを調整することができる。
【0376】
典型的には、セルロース微粒子の懸濁液を、目に見える溶媒層のない湿潤フィルムが形成されるまで真空濾過する。湿潤フィルムにフィルタ上でさらなる時間で真空をかけて、フィルムの厚さを調整することができる。
【0377】
いくつかの実施形態において、真空濾過は、600~700mbarの圧力の真空ポンプを使用して行われる。真空濾過は5~60分間行われる。
【0378】
理論に束縛されるものではないが、濾過によって材料を通して溶媒が引き込まれ、それによって、材料中に細孔又は空隙を作り出すと考えられる。溶媒が除去されると、孔又は空隙が材料中に残されて、セルロース粒子の相互接続された(浸透された)ネットワークが得られる。典型的には、セルロース粒子は、材料中でランダムに配向される。
【0379】
フィルムの調製方法は、セルロース粒子の湿潤フィルムを凍結乾燥する工程を含む。これは、凍結乾燥工程と称することができる。
【0380】
凍結乾燥工程は、フィルタとフィルタ上に堆積した湿潤フィルムの両方を凍結乾燥することによって行ってもよい。フィルタは、脆い湿潤フィルムに一時的な構造的支持を提供する。これにより、脆い湿潤フィルムを単独で移動させる必要がなくなる。
【0381】
典型的には、凍結乾燥は、フィルタと湿潤フィルムを液体窒素中に移すことによって行われる。湿潤フィルムが凍結したら、それをフィルタから取り外すことができる。これにより、フィルタから分離された自立フィルムなどの自立材料が提供される。
【0382】
任意の好適な凍結乾燥装置を使用することができる。好適な凍結乾燥装置としては、LaboGene A/S製のScanvac and Coolsafe凍結乾燥器、又はSP Scientific製のVirTis凍結乾燥器が挙げられる。
【0383】
この方法により、CMP(上記)のフィルムが得られる。
【0384】
凍結乾燥の後、フィルムは、例えば材料又はフィルムを切断、ブレンド又は粉砕することによって、粒子に割ることができる。
【0385】
フィルムはまた、例えばフィルムを破砕することによって、フレークに割られてもよい。典型的には、フレークはフィルムと同じ厚さを有する。フレークは、典型的には、5μm~500μm、好ましくは10μm~100μm、好ましくは20μm~70μmの長さを有する。一般に、フレークは、その厚さより大きい長さと幅を有する。フレーク又はフレーク様の形状は、典型的には、その長さの大部分にわたって均一な高さを有する。
【0386】
クラスターの調製方法
セルロース粒子を含むクラスターの調製方法であって、方法は、
(a)セルロース粒子の懸濁液を供給する工程、及び
(b)セルロース粒子の懸濁液を噴霧乾燥する工程を含む。
【0387】
クラスターの調製方法は、セルロース粒子の懸濁液を供給する工程を含む。これは、準備工程と称することができる。
【0388】
任意のセルロース粒子(疎水性、表面修飾又は無修飾)を準備工程で使用することができる。好ましくは、本発明のセルロース粒子(上記)を使用する。
【0389】
セルロース粒子の懸濁液は、分画工程から直接供給されてもよい。セルロース粒子の懸濁液は、乾燥工程からの乾燥セルロース粒子を再分散させることによって供給されてもよい。
【0390】
懸濁液中のセルロース粒子の濃度を調整して、生成されるクラスターの充填率及びサイズを変化させることができる。
【0391】
濃度は、典型的には0.001~1重量%、好ましくは0.05~0.1重量%、より好ましくは0.005~0.05重量%である。例えば、濃度は約0.01重量%であってもよい。
【0392】
任意の適切な溶媒を、懸濁液の調製に使用することができる。適切な溶媒としては、水、エタノール及びアセトンが挙げられる。
【0393】
好ましくは、溶媒は水又はエタノールである。より好ましくは、溶媒は水である。
【0394】
クラスターの調製方法は、セルロース粒子の懸濁液を噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥する工程を含む。これは噴霧乾燥工程と称することができる。
【0395】
典型的には、噴霧乾燥は、CMP懸濁液をガスと共に噴霧することによって行われる。CMP懸濁液を噴霧器を用いて霧化させて、CMP懸濁液の小滴を提供することができる。霧化を助けるために霧化の前にガスをCMP懸濁液と混合してもよく、及び/又はガスを霧化されたCMP懸濁液と混合してもよい。ガスによって、典型的には、CMP懸濁液から溶媒が蒸発する。これにより、セルロース粒子の乾燥クラスターが得られる。ガスは、高温(周囲温度、約20℃以上)で供給されてもよい。
【0396】
噴霧器は、CMP懸濁液の液滴のサイズを調整するように調節することができる。液滴のサイズを使用して、CMPクラスターのサイズを制御することができる。
【0397】
ガスは、高温(周囲温度、約20℃以上)で供給されてもよい。ガスの温度を調整して蒸発速度を変化させることができる。典型的には、60~90℃、好ましくは70~80℃の温度を有するガスが使用される。
【0398】
任意の好適な噴霧乾燥装置を使用することができる。好適な噴霧乾燥装置としては、Specialty Coating Systems(SCS)製のPrecisionCoatスプレーコーティング装置が挙げられる。
【0399】
任意の好適な噴霧凍結乾燥装置を使用することができる。好適な噴霧凍結乾燥装置としては、SCS製のPrecisionCoatスプレーコーティング装置(噴霧乾燥)、及びLaboGene A/S製のScanvac and Coolsafe凍結乾燥器、又はSP Scientific製のVirTis凍結乾燥器(凍結乾燥)が挙げられる。
【0400】
噴霧凍結乾燥では、懸濁液を液体窒素中に直接噴霧乾燥する。次いで、凍結したクラスターを液体窒素から回収して凍結乾燥する。
【0401】
この方法によって、CMPのクラスター(上記)を得る。
【0402】
噴霧乾燥工程の後、クラスターは、例えばクラスターを切断、ブレンド又は粉砕することによって、より小さなクラスターに割ってもよい。
【0403】
疎水性フィルムのドロップキャスティング調製
上記のように、本発明のセルロース粒子を疎水性化剤で処理して、疎水性材料を得ることができる。理論に束縛されるものではないが、セルロース粒子の表面上のヒドロキシル基の一部を疎水性基(-OTMS基又はO-Si(OMe)3基など)で置換することにより、ヒドロキシル基間の水素結合が減少して、セルロース粒子の間の細孔又は空隙の、例えば溶媒蒸発中の毛細管圧力による崩壊が生じにくくなると考えられる。したがって、本出願はまた、疎水性セルロースフィルムの調製方法を提供し、方法は、
(a)疎水性セルロース粒子の懸濁液を供給する工程、及び
(b)懸濁液をドロップキャスティングする工程を含む。
【0404】
疎水性セルロースフィルムの調製方法は、疎水性セルロース粒子の懸濁液を供給する工程を含む。これは、準備工程と称することができる。
【0405】
任意の疎水性セルロース粒子を、準備工程で使用することができる。好ましくは、本発明の疎水性セルロース粒子(上記)を使用する。
【0406】
セルロース粒子の懸濁液は、分画工程から直接供給されてもよい。セルロース粒子の懸濁液は、乾燥工程からの乾燥セルロース粒子を再分散させることによって供給されてもよい。
【0407】
任意の適切な溶媒を、懸濁液の調製に使用することができる。適切な溶媒としては、水及びエタノール、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-ブタノン、t-ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2-ジメトキシエタン(グリム、DME)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、グリセリン、ヘプタン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ヘキサン、メタノール、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、塩化メチレン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ニトロメタン、ペンタン、石油エーテル(リグロイン)、1-プロパノール、2-プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、トリエチルアミン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン又はイオン液体が挙げられる。
【0408】
好ましくは、揮発性溶媒が使用される。より好ましくは、溶媒はエタノール又はアセトンである。なおより好ましくは、溶媒はエタノールである。
【0409】
疎水性セルロースフィルムの調製方法は、疎水性セルロース粒子の懸濁液をドロップキャスティングする工程を含む。これはドロップキャスティング工程と称することができる。この方法の一実施形態を
図6aに示す。
【0410】
ドロップキャスティング工程は、典型的には、
疎水性セルロース粒子の懸濁液をキャスティング表面と接触させる工程、及び
溶媒を蒸発させる工程を含む。
【0411】
任意の適切なキャスティング表面を使用することができる。適切なキャスティング表面としては、ガラス及びPTFEなどのポリマーが挙げられる。
【0412】
溶媒は室温で蒸発させてもよい。あるいは、キャスティング表面を、溶媒の蒸発を促進するために加熱してもよい。
【0413】
ドロップキャスティングは、懸濁液を空気中でキャスティングすることによって行うことができる。典型的には、その後、ドロップキャスト懸濁液を室温で空気中に放置して乾燥させて、フィルムを形成する。
【0414】
このドロップキャスティングプロセスによって、濾過及び凍結乾燥工程の必要性が回避される。結果として、材料を形成する方法が簡素化され、より容易に拡張可能である。
【0415】
TCMSで処理した場合、CMPの表面上のヒドロキシル基の一部が-O-SiCH3部分によって置換され、したがってヒドロキシル基間の水素結合が乾燥プロセス中に著しく減少すると考えられる。理論に束縛されるものではないが、減少した水素結合及び水に対してのエタノールのより低い表面張力のために、溶媒の蒸発によって生じる毛細管圧力によって崩壊することなく、セルロース粒子の多孔質ネットワーク、特にセルロース粒子の薄膜を得ることができる。
【0416】
組成物
本発明のセルロース粒子は、顔料、白色増強剤、散乱増強剤及び乳白剤として好適である。
【0417】
セルロース粒子は、任意の上記の形態で組成物中に含めることができる。
【0418】
いくつかの実施形態において、組成物中に使用されるセルロース粒子は、分画工程から直接得られたもの、又は乾燥工程から直接得られたものである。
【0419】
いくつかの実施形態において、組成物中に使用されるセルロース粒子は、セルロース粒子のフィルムから、例えば(上記のように)フィルムを割ることによって得られたフレークである。
いくつかの実施形態において、組成物中に使用されるセルロース粒子は、セルロース粒子(上記)を噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥などで乾燥させることによって得られたセルロース粒子のクラスターである。
【0420】
いくつかの実施形態において、組成物中に使用されるセルロース粒子は、セルロース粒子(上記)を凍結乾燥又は噴霧乾燥などで乾燥させることによって得られたセルロース粒子の粉末である。
【0421】
いくつかの実施形態において、使用されるセルロース粒子は、疎水性化剤で処理されたセルロース粒子又は表面修飾を受けたセルロース粒子などの表面修飾セルロース粒子である。表面修飾は、ヒドロキシル基のエステル基又はTMS基などのエーテル基への修飾であってもよい。
【0422】
任意の上記の形態のセルロース粒子を溶媒中に再分散させて、セルロース粒子の懸濁液を供給することができる。好ましくは、乾燥セルロース粒子の粉末を溶媒中に再分散させて、セルロース粒子の懸濁液を供給する。得られたセルロース粒子の懸濁液を、組成物中に使用することができる。
【0423】
再分散溶媒は、任意の適切な溶媒であり、水、エタノール又はアセトンが挙げられる。好ましくは、溶媒は水又はエタノールである。より好ましくは、溶媒は水である。
【0424】
再分散された懸濁液のpHは調整することができる。pHは、任意の適切な方法によって調整することができる。典型的には、pHは、適切な酸又は塩基を水性セルロース懸濁液に添加することによって調整される。適切な酸としては、H2SO4及びHClが挙げられる。適切な塩基としては、NaOH及びKOHが挙げられる。pHは、上記のような任意の適切な方法を使用して測定することができる。
【0425】
典型的には、pHは、6.0~8.0、好ましくは6.5~7.5、より好ましくは6.8~7.2、さらにより好ましくは6.9~7.1のpHに調整される。pHを約7.0のpHに調整してもよい。
【0426】
懸濁液のpHを調整することにより、懸濁液中の粒子の分散性がより大きくなると考えられる。これにより、次に、懸濁液が配合される組成物の中で粒子の分散性がより大きくなる。
【0427】
理論に束縛されるものではないが、このようにpHを調整することにより、セルロース粒子の間の水素結合が弱くなり、その結果粒子の分散性が改善されると考えられる。例えば、適切な塩基(NaOHやKOHなど)を添加することによって、セルロース粒子の酸性水素が、塩基からの一価カチオン(Na+やK+など)によって置換される。これにより、水などの極性溶媒中での乾燥セルロース粉末の分散性が改善されると考えられる。この手順により、余分な添加剤又は安定剤を必要とせずに水中で安定なセルロース粒子が得られる。
【0428】
セルロース粒子の再分散懸濁液はまた、機械的に撹拌することができる。好ましくは、機械的撹拌は、セルロース懸濁液のpHを調整する工程の後に続く。機械的撹拌としては、撹拌、音波処理又は超音波処理などの任意の適切な方法が挙げられる。好ましくは、機械的撹拌は超音波処理である。セルロース粒子の完全に分散した懸濁液を得るためには機械的撹拌で十分である。STEM画像を、懸濁液の品質の指標として使用することができる。
【0429】
懸濁液を機械的に撹拌することにより、懸濁液中の粒子がより大きく分散すると考えられる。
【0430】
好ましくは、セルロース粒子(乾燥セルロース粒子など)を溶媒中に再分散させてセルロース粒子の懸濁液を供給し、懸濁液のpHを調整して、機械的に撹拌する。次いで、得られたセルロース粒子の懸濁液を組成物中に使用する。
【0431】
本発明はまた、本発明のセルロース粒子を含む組成物を提供する。セルロース粒子の優れた生体適合性により、それらは、食品、パーソナルケア製品又は医薬品などの消費財における使用に特に適する。
【0432】
いくつかの実施形態において、本発明のセルロース粒子を含む食品を提供する。好適な食品としては、白色度の向上又は不透明度の向上がメリットとなるものが挙げられる。適切な食品としては、ソース、グレイビー、鶏肉、パン、人工肉、チューインガム及びチューインガムコーティングが挙げられる。
【0433】
いくつかの実施形態において、本発明のセルロース粒子を含むパーソナルケア製品、例えば化粧品を提供する。好適なパーソナルケア製品としては、頬紅、ボディパウダー、ブロンジングパウダー、アイシャドウ、フェイスパウダー、リップパウダー、パウダーメーキャップなどの皮膚に塗るための化粧品パウダー、ブロンジング製品、アイペンシル、アイライナー、フェイスメイクアップ、フェイシャルファンデーション、ヘアゲル、ヘアペースト、ヘアスプレー、リップグロス、リップスティック、マスカラ、マニキュア液、ボディウォッシュ、シャンプー、シャワーゲル、スキンクリーム、サンクリーム、日焼け製品などの液体化粧品、及び、練り歯磨き、ホワイトニング配合物、マウスウォッシュ、歯科用接着剤、充填材及び歯科用材料などの歯科用製品が挙げられる。
【0434】
いくつかの実施形態において、本発明のセルロース粒子を含む医薬組成物を提供する。適切な医薬組成物としては、丸剤、錠剤又はカプセル剤などのすべての固形の単位剤形、腸溶コーティングなどの丸剤コーティング、口腔内崩壊コーティング又はフィルムコーティング、又は坐剤が挙げられる。
【0435】
いくつかの実施形態において、本発明のセルロース粒子を含むインクを提供する。
【0436】
いくつかの実施形態において、本発明のセルロース粒子を含む塗料を提供する。
【0437】
いくつかの実施形態において、本発明のセルロース粒子を含む洗浄組成物を提供する。好適な洗浄組成物としては、食器洗浄機用粉末、錠剤、液体若しくは液体充填パウチなどの食器洗浄機用組成物、又は洗濯用粉末、錠剤、液体充填パウチなどの洗濯用組成物が挙げられる。
【0438】
組成物は、意図される用途に応じて、溶媒又は他の配合物中に分散されたセルロース粒子を含むことができる。好適な溶媒としては、2-プロパノール、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジオキサン、18-クラウン-6,2-プロパノール、2-エトキシエタノール、酢酸、アセトン、アセトニトリル、アンモニア、ベンゼン、n-ブタノール、酢酸n-ブチル、クロロホルム、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジグリム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、DME、エタン、エタノール、酢酸エチル、エチレン、エチレングリコール、ギ酸、グリセリン、へプタン、ヘキサン、ヘキサメチルベンゼン、HMDSO、HMPA、水素、イミダゾール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、メタン、メタノール、n-ヘキサン、ニトロメタン、n-ペンタン、プロパン、プロピレン、炭酸プロピレン、ピリジン、ピロール、ピロリジン、シリコーングリース、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、トルエン、トリエチルアミン、水、ホワイトスピリット及びキシレン又はそれらの混合物が挙げられる。
【0439】
好ましくは、溶媒は水系の溶液又は配合物である。
【0440】
組成物はまた、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン、水中油中水型エマルジョン又は油中水中油型エマルジョンなどのダブルエマルジョン、ゲル、ラテックス、樹脂又は粘弾性ポリマーマトリックスであってもよい。組成物は、任意で、意図される用途及び使用に適するように、皮膚軟化剤、油、ポリマー、界面活性剤及びワックスを含んでもよい。
【0441】
適切な皮膚軟化剤としては、乳酸アンモニウム、ワセリン、サリチル酸、尿素が挙げられる。
【0442】
好適なポリマーとしては、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、芳香族ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン)、カーボポール(登録商標)、ジメチルヒダントイン-ホルムアルデヒド、ハロゲン化ポリマー、水添ポリデセン、ケラチン、パラ系アラミド、ポロキサマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミノ酸、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12)、ポリエーテル、ポリオレフィン(例えば、これらに限定はされないが、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリプロピレン、ポリブタジェン、ポリエチレングリコール)、ポリペプチド、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレートクロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリクアテルニウム、シリコーン類、シルクフィブロイン、シルクセリシン、ウルバン、ビニルアセテート、ビニルアセテート/クロトン酸コポリマー、メチルビニルエーテル及びマレイン酸セムエステルコポリマー、ビニルピロリドンが挙げられる。ポリマーは、セルロース又はリグニンの誘導体、例えば酢酸セルロース、硝酸セルロース、セロファン、ニトロセルロース及びセルロイドであってもよい。ポリマーは、デンプン誘導体であってもよい。ポリマーは、キチン、キトサン又はセリシン誘導体であってもよい。ポリマーは、アルギン酸塩、カラギーナン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸又はペクチンの誘導体であってもよい。優先的には、ポリマーは、天然原料及び/又はバイオベースの及び/又は再生可能なモノマーから合成され、得られたポリマーは、好ましくは、例えば、ポリ(乳酸)ポリ(ε-カプロラクトン)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3ヒドロキシバレレート)などの脂肪族ポリエステルのような生分解性である。
【0443】
適切な油としては、藻類油、アナトー油、アルガン油、アーモンド油、キョウニン油、アボカド油、ババス油、ブラジルナッツバター、バター、カシューバター、ヒマシ油、カメリア油、チェリーカーネルオイル、カカオバター、ココナツオイル、コーン油、綿実油、魚油、グレープシードオイル、クチナシ油、ギー、ヘーゼルナッツ油、ジャトロファ油、ホホバ油、コクム油、アマニ油、マカダミア油、トウモロコシ油、マンゴー種子油、マンゴーバター、鉱油、ミンク油、オリーブオイル、ヤシ油、パーム核油、モモ核油、ピーナツバター、ピーナツ油、プラム核油、ザクロ油、菜種油、米糠油、ローズヒップ油、サル油、ゴマ油、シアバター、ダイズ油、スクアレン、ヒマワリ油、茶種子油、クルミ油が挙げられる。エステル化油、脂肪酸、脂肪アルコール、水添油及びトリグリセリドなどの前述の油から得られる油の誘導体は、前記配合物の適切な成分として使用することができる。精油もまた適切な油である。
【0444】
好適な樹脂としては、トシルアミドホルムアルデヒド樹脂及びトルエン-スルホンアミド-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
【0445】
適切なワックスとしては、蜜蝋、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木蝋、ラノリン、パームワックス、パラフィンが挙げられる。
【0446】
適切なゲルとしては、セルロース誘導体増粘剤、並びにアカシアガム、寒天、アロエゲル、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、デンプン類、及びキサンタンガムなどの増粘剤の使用から得られる任意の化学的及び/又は物理的ゲルが挙げられる。
【0447】
使用
本発明は、本発明のセルロース粒子又はセルロース粒子を含む材料の、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用を提供する。
【0448】
これらの使用は、食品添加物(ペットフード添加物など)、化粧品、パーソナルケア製品、医薬品、インク、塗料、コーティング、積層品、粉末洗剤、乳白剤、集光デバイス(太陽電池など)及び配光デバイス(LEDなど)における用途であってもよい。
【0449】
セルロース粒子及び材料は、優れた拡散白色度及び不透明度を提供するそれらの能力によって、顔料としての使用に特に適している。
【0450】
セルロース粒子及び材料はまた、高レベルの反射率を有し、可視光の全スペクトルにわたって同等のレベルで光を反射することから、白色増強剤として好適である。
【0451】
セルロース粒子及び材料は、優れた散乱効率及び非常に短い平均自由行程を示すことから、散乱増強剤として特に適している。散乱増強剤は、集光デバイス(太陽電池など)及び配光デバイス(LEDなど)において特に有用である。
【0452】
その他の優先権
上記の実施形態のすべての互換性のある組合せは、すべての組合せが個々に明示的に記載されているかのように、本明細書において明示的に開示される。
【0453】
本発明の様々なさらなる態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0454】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれが、他方の有無にかかわらず、具体的に開示されている、として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の特定の開示として、あたかも各々が本明細書において個々に記載されているかのように解釈されるべきである。
【0455】
文脈上特に断りのない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明の特定の態様又は実施形態に限定されるものではなく、記載されるすべての態様及び実施形態に等しく適用される。
【実施例】
【0456】
次に、本発明の特定の態様及び実施形態を、例として、上記の図を参照して説明する。
【0457】
材料
微結晶セルロース粉末(MCC)は、SERVA Electrophoresisから購入した。
【0458】
濾紙は、Whatman No.1セルロース濾紙であった。
【0459】
硫酸(濃度>95%)は、Fisher Chemicalから購入した。
【0460】
トリクロロメチルシラン(TCMS)は、Sigma Aldrichから購入した。
【0461】
エタノール(無水)は、VWR chemicalsから購入した。
【0462】
カルボキシメチルセルロース(CMC、MW約90000)はAcrosから購入した。
【0463】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(平均孔径0.45μm)は、Merck Millipore Ltd.から購入した。
【0464】
セルロース微粒子(CMP)の調製
実施例1[CMP-L]
セルロース微粒子を酸加水分解によって調製した。
【0465】
セルロース微結晶粉末(1g)を硫酸(50v/v%、60mL)を用いて50℃で5時間加水分解し、次いで300mLのミリQ水を加えてクエンチした。酸の上清を遠心分離によって除去した。100mLのミリQ水を添加して加水分解されたセルロース粒子を分散させ、次いで遠心分離した。このプロセスを3回繰り返して大部分の酸を除去し、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液をミリQ水に対して1週間、水を1日2回交換しながら透析した(MWCO 12~14kDa)。加水分解されたセルロース粒子の透析懸濁液(0.5重量%、30mL)を氷浴中でチップ超音波処理した(Fisherブランドの超音波破砕機500W、20kHz、チップ直径12.7mm、アンプリチュード30%、2秒オン及び2秒オフ)。懸濁液を2000rpmで5分間遠心分離した後、上清を収集し、3000rpmで5分間遠心分離して、実施例1のセルロースナノ粒子を得た。
【0466】
実施例2[CMP-M]
硫酸の濃度と温度を調整することによって、実施例1よりもわずかに小さい幅と長さ、及び実施例1よりもわずかに高いアスペクト比を有するセルロースナノ粒子を得た。
【0467】
実施例2のCMPは、セルロース微結晶粉末(1g)を硫酸(55%、60mL)を用いて60℃で5時間加水分解した以外は、実施例1と同じ方法を使用して得た。
【0468】
比較例3[CMP-S]
実施例1及び2よりもはるかに小さい幅と長さを有するセルロースナノ粒子を、硫酸の濃度、反応時間及び温度を調整し、また別のセルロース源を使用することによって調製した。
【0469】
比較例3のCMPは、セルロース微結晶粉末をセルロース濾紙(Whatman No.1)に置き換えた以外は、実施例1と同じ方法を用いて得た。セルロース濾紙(Whatman No.1)は硫酸(55%、60mL)を用いて50℃で0.5時間加水分解した。
【0470】
比較例4[CMP-XL]
実施例1及び2よりもはるかに大きい幅及び長さ、並びにはるかに高いアスペクト比を有するセルロースファイバーを、セルロース濾紙(Whatman No.1)を先ずコーヒーグラインダーによって小片に粉砕し、続いてTEMPO酸化して、セルロース濾紙から調製した。1gのセルロースを150mLのミリQ水に懸濁させ、0.123gのTEMPO、1.23gのNaBr及び1.23gのNaClOを添加し、1MのNaOH溶液を添加してpHを10に維持しながら室温で4.5時間撹拌した。5MのHClでpHを6に調整することによって反応を停止させ、次いで、酸化されたセルロースファイバーを濾過によって洗浄し、ミリQ水に対して透析して、比較例4のセルロースファイバーを得た。
【0471】
理論に束縛されるものではないが、TEMPO酸化は、セルロースのグルコース環のC6位上のヒドロキシル基を負に荷電したカルボキシル基に選択的に変換する一段階反応である。この処理によって、斥力が増大し、天然セルロースナノファイバー間の水素結合が減少するため、ファイバーの密度が低下し、したがってより大きな幅を有するファイバーを生じると考えられる。
【0472】
サイズの特徴付け
セルロース粒子のサイズ分布は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)によって測定した。
【0473】
CMPの希釈懸濁液(0.001重量%)を炭素被覆銅グリッド(300メッシュ)上に2分間滴下し、濾紙片で除去し、次いで酢酸ウラニル溶液(2%)の液滴を染色剤として1分間適用した後、濾紙片で除去した。30kV及び5mmの作動距離で操作されるMira3システム(TESCAN)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)によって試料を測定した。ナノ粒子の長さと幅はImageJによって解析した。
【0474】
長さを計算するために採取する測定の数は、典型的には100~1,000である。一般に、100を超える長さの測定が行われる。実施例について採取された測定の数を、
図2における「カウント数」の合計に示す。長さは、採取したすべての測定値の平均値である。「±」は、平均測定値の標準偏差である。
【0475】
粒子の長さと幅を表1に示す。長さとは粒子の最も長い寸法を指す。幅とは粒子の最も短い寸法を指す。
【0476】
【表1】
フィッティングした粒径分布を
図1e(粒子の幅について)及び
図1f(粒子の長さについて)に示す。実施例の長さと幅についてのヒストグラム及びフィッティングした正規分布曲線を
図2a~2hに示す。正規分布は、ある大きさの幅又は長さを有する粒子の確率を表す。
【0477】
実施例1及び2のサイズ分布は比較的狭い。粒子の調製に使用される連続遠心分離によって、粒子のサイズ分布が狭くなると考えられる。
【0478】
実施例1及び2の粒子の寸法は、幅が3~5nm、長さが100~200nmである従来のセルロースナノ結晶(CNC)(Habibi et al.)、又は一般に幅が3~20nm、長さが数マイクロメートルであるセルロースナノファイバー(CNF)(Saito et al.)とは著しく異なる。
【0479】
比較例3は、実施例1及び2よりもはるかに小さいセルロース粒子を示し、これは従来のCNCに長さがより類似している。比較例4は、はるかに大きなセルロース結晶であり、従来のCNFに長さがより類似している。
【0480】
実施例のアスペクト比を、長さと幅の比として計算した。実施例のアスペクト比を表2に示す。
【0481】
平均アスペクト比は、平均の長さと幅から計算された平均値である(表1参照)。最大及び最小アスペクト比は、標準偏差の長さと幅の値を用いて計算される(表1参照)。
【0482】
【表2】
実施例1及び2のCMPは、比較的低いアスペクト比を有する。これにより、CMPは優れた散乱増強剤になる。比較例3は、実施例1及び2と同様のアスペクト比を有するが、はるかに小さい粒子であり、顕著に小さい幅と長さを有する(表1参照)。比較例4は、実施例1及び2よりもはるかに高いアスペクト比を有し、また、はるかに大きい粒子である(表1参照)。サイズ及びアスペクト比におけるこれらの差異は、実施例1及び2が比較例と比較して散乱の改善を示すことを意味していると考えられる。
【0483】
実施例1及び2の粒子のアスペクト比はまた、一般的に20~40のアスペクト比を有する従来のセルロースナノ結晶(CNC)(Habibi et al.)、又は一般的に50以上のアスペクト比を有するセルロースナノファイバー(CNF)(Saito et al.)とは異なる。
【0484】
理論に束縛されるものではないが、サイズの差及び比較的低いアスペクト比によって、粒子の異なる散乱能力が得られ、実施例1及び2のCMPが優れた散乱増強剤になると考えられる。
【0485】
顕微鏡による特徴付け
図1に、(a)比較例3、(b)実施例2、(c)実施例1、及び(d)比較例3についての溶液中のCMPのSTEM画像を示す。
【0486】
STEM画像は、30kV及び5mmの作動距離で操作されるMira3 FEG-SEMシステム(TESCAN)を使用して得る。
【0487】
溶液中の粒子の白色度
図1gに、固定濃度(0.1重量%)で水中に分散させた様々なサイズのCMPの懸濁液を示す。
図1gには、左から右に、実施例1、実施例2、比較例3、比較例4、及び対照としての純水を示している。
【0488】
単一散乱体としての実施例1及び2のCMPの効率は、対照と比較した試料の白色度によって観察することができる。比較例3及び4はいくらかの白色度を示すが、それらは明らかに実施例1及び2よりも白さが劣っている。粒子懸濁液の巨視的画像において観察される白色度は、単一の粒子の散乱能の直接的な指標であり、また白色着色剤としての粒子の有用性の直接的な指標でもある。
【0489】
溶液中の粒子の光反射率試験
図1hに、実施例1、2並びに比較例3及び4の光反射率を示す。これは、本明細書に記載した方法を使用して、固定濃度(0.1重量%)で水中に分散させた様々なサイズのCMPについて測定する。
【0490】
全透過率及び反射率の測定は、積分球(Labsphere)を用いて行った。
図8(T
1及びT
2)に示すように、光源(Ocean Optics HPX-2000)を、コリメータ(Thorlabs)を介して光ファイバー(600μm Thorlabs FC-UV100-2-SR)に接続し、シグナルを分光計(Avantes HS2048)によって収集した。シグナルは、試料を載せていないときの強度に対して正規化した。光を当てなかったときのバックグラウンドを記録した。波長の範囲は400~800nmであった。各試料について5つのスペクトルを取り、平均してシグナル対ノイズ比を減少させた。各スペクトルを、3秒に等しい積分時間を用いて記録した。
【0491】
実施例1及び2の粒子は、可視光スペクトル(400~800nm)にわたって、比較例3及び4よりもはるかに高い反射率を示す。
【0492】
実施例1及び2における粒子のサイズ及びアスペクト比は、白色光の良好な散乱を生じる。より小さい又はより大きい粒子、あるいはより高いアスペクト比を有する粒子は、散乱強度が低下するために反射率の低下を示す。
【0493】
実施例1は散乱光の角度分布が非対称(ミー散乱)であるのに対して、比較例3は散乱が対称のレイリー散乱体であると考えられる。これによって、散乱強度の差を説明することができる。
【0494】
セルロース微粒子の乾燥粉末の調製
実施例1のCMPから乾燥CMP粉末を調製した。
【0495】
実施例1のCMP[CMP-L]を0.1重量%の濃度(遠心分離後)で水中に再分散させて、セルロース粒子の水性懸濁液を得た。
【0496】
セルロース粒子の水性懸濁液のpHを、NaOHを添加して調整した。pHをpH 7.0に調整した。pHは上記のように測定することができる。
【0497】
次いで、セルロース粒子の水性懸濁液を凍結乾燥(SP Scientific製VirTis凍結乾燥器)して、セルロース粒子の懸濁液から水を除去し、実施例1のセルロース粒子の粉末を得た。
【0498】
【0499】
粉末は流動性であり、実質的に溶媒を含まない。CMPのこの乾燥粉末の形態は、粉末が製品組成物に添加される商業的用途に有用である。
【0500】
セルロース微粒子の乾燥粉末の再分散
乾燥させたCMP粉末を水に再分散させることによって、CMPの懸濁液を調製した。
【0501】
1mLの水を、上記のように調製した0.01gの乾燥CMP粉末に添加した。
【0502】
混合物を超音波処理してCMP粉末を水中に分散させて懸濁液を得た。
【0503】
図9bに、CMPの懸濁液の画像を示す。懸濁液は白色であり、均質であり、半透明である。
【0504】
乾燥CMP粉末は水に添加されると容易に懸濁液を形成した。
【0505】
超音波処理の形態での穏やかな機械的撹拌のみを使用して懸濁液を形成した。
【0506】
図9cに、水性懸濁液中の乾燥CMP粉末のSEM画像を示す。
【0507】
STEM画像は、30kV及び5mmの作動距離で操作されるMira3 FEG-SEMシステム(TESCAN)を使用して得る。
【0508】
懸濁液のSTEM画像は、実施例1の乾燥させ再分散させたCMP(
図9cに示される)が、分画工程から直接調製された実施例1のCMP(
図1cに示されるSTEM画像)から実質的に変化していないことを示している。CMPのサイズ及び形状は、乾燥及び再分散の工程の結果としてはほとんど変化しないことが示されている。
【0509】
セルロース微粒子クラスターの調製
実施例1[CMP-L]のCMPから乾燥CMPクラスターを調製した。
【0510】
実施例1のCMPを0.01重量%の濃度(遠心分離後)で水に再分散させ、セルロース粒子の水性懸濁液を得た。
【0511】
セルロース粒子の水性懸濁液のpHを、NaOHを添加して調整した。pHをpH 7.0に調整した。pHは上記のように測定することができる。
【0512】
次いで、セルロース粒子の水性懸濁液を噴霧凍結乾燥した。この懸濁液をスプレーコーティング装置(Specialty Coating Systems製PrecisionCoat spray coater)を用いて液体チッ素中に噴霧乾燥した。凍結したクラスターを液体窒素から回収し、凍結乾燥(SP Scientific製VirTis凍結乾燥器)して、実施例1のセルロース粒子のクラスターを得た。
【0513】
乾燥させたCMPクラスターのSEM画像を
図9dに示す。STEM画像は、30kV及び5mmの作動距離で操作されるMira3 FEG-SEMシステム(TESCAN)を使用して得る。
【0514】
図9dのSEM画像は、球状の形状を有するクラスターを示している。クラスターの直径は約100μmである。CMPはランダムに配向しており、細孔のネットワークによって分離されている。
【0515】
セルロース微粒子フィルムの調製
実施例1F、2F及び比較例3F
実施例1F、実施例2F及び比較例3Fの白色フィルムを、それぞれ実施例1、実施例2及び比較例3のCMPから調製した。
【0516】
CMPの白色フィルムを、親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜上で真空濾過して製造した。フィルムの充填率と厚さは、微粒子の初期量及び真空プロセスの継続時間によって制御した。
【0517】
0.1重量%の濃度のセルロース微粒子の懸濁液80mLを、目に見える水層のない湿潤フィルムが形成されるまで真空濾過した。懸濁液を15~30分間継続して真空引きした。時間は真空の強さに応じて変化させた。
【0518】
CMPの懸濁液を膜を通して濾過するため、水を除去すると、CMPは水がしみ出した跡のネットワークを形成する。このプロセスを
図7の概略図に示す。
【0519】
付着した湿潤フィルムと共にフィルタ膜を注意深く取り出して、液体窒素中に移した。次いで、凍結フィルムを凍結乾燥(SP Scientific製VirTis凍結乾燥器)させ、フィルタ膜から外して、自立フィルムを得た。
【0520】
表3に示すように、様々な厚さ及び充填率のフィルムを調製した。厚さ及び/又はCMPの充填率は、濾過時間(又は除去される水の量)によって調整することができる。
【0521】
【表3】
各フィルムの断面を、5kV及び約6mmの作動距離で操作されるMira3システム(TESCAN)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した。試料を調製するために、フィルムを液体窒素中で凍結させ、次いでフレークに割った。導電性の炭素テープを用いて試料をアルミニウムスタブ上に載せて、スパッタコーター(Quorum Q150T ES)によって白金層(厚さ10nm)でコーティングした。各フィルムの厚さは、それらの断面のSEM画像から決定した。
【0522】
セルロースの公称密度ρ、1.5g/cm-3、セルロースナノ粒子の体積v1=m/ρ(mはフィルムの重量である)を用いて、充填率(ff)を計算した。フィルムの体積v2=πr2dは、フィルムの平均厚さdを用いて推定し、ここで、rはフィルムの半径である。充填率は、ff=v1/v2によって計算される。
【0523】
比較例4F
比較例4Fの白色フィルムを比較例4のCMPから調製した。
【0524】
比較例4のCMPを1%CMC溶液と様々な重量比で混合した。混合物を最初に真空チャンバー内で脱気し、次いでペトリ皿上にキャストして自立フィルムを得た。これにより、比較例4Fのフィルムを得た。
【0525】
顕微鏡による特徴付け
図3aに、実施例1の粒子から作製され、9μmの厚さを有する実施例1F.1の典型的な白色フィルムの写真を示す。
図3aのフィルムの下のテキストは、フィルムの中央部分を背景紙と密接に接触させても、解明することは困難である。
【0526】
図3b及び
図5aに示したSEM画像に、実施例1F.1及び実施例1F.2(9μmの厚さとそれぞれ40%及び53%の充填率を有する)の断面を示す。
【0527】
図5に示したSEM画像に、実施例1F.3(
図5b)、実施例2F.1(
図5c)、及び比較例3F.1(
図5d)の白色フィルムの断面を示し、すべて25μmの厚さ及び25%の充填率を有する。
【0528】
最も小さい粒径(幅約40nm及び長さ228nm)を有する比較例3Fから調製されたフィルムは、実施例1F及び2Fのフィルムよりも密に充填される傾向があることが分かる。
【0529】
湿潤フィルムの底部にかかる真空力はフィルムの表面よりも強く、フィルムの幅にわたって充填率の勾配を作り出すと考えられる。理論に束縛されるものではないが、フィルム中のランダムな3Dネットワークは、CMP間に形成された水素結合によるものであり、微細孔は、凍結工程中の氷の結晶の形成の結果であると考えられる。
【0530】
また、フィルム形成の凍結乾燥工程中に形成された氷の結晶が、異なる氷の結晶間のドメイン境界でCMPを押し、CMPの層状シートの形成をもたらすと考えられる。実施例1F及び2Fなどのより大きな粒子を有するフィルムでは、フィルムはこのプロセスを受けにくく、したがって、SEM画像中にフレークや層が存在しない(
図5a、5b及び5c参照)。比較例3Fなどのより小さい粒子は、氷の結晶の形成の影響をより受けやすく、したがって、
図5dに見られるように、層やフレークを形成する。
【0531】
光反射率
全透過率及び反射率の測定は、積分球(Labsphere)を用いて行った。
図8(T
1及びT
2)に示すように、光源(Ocean Optics HPX-2000)を、コリメータ(Thorlabs)を介して光ファイバー(600μm Thorlabs FC-UV100-2-SR)に接続し、シグナルを分光計(Avantes HS2048)によって収集した。シグナルは、試料を載せていないときの強度に対して正規化した。光を当てなかったときのバックグラウンドを記録した。波長の範囲は400~800nmであった。各試料について5つのスペクトルを取り、平均してシグナル対ノイズ比を減少させた。各スペクトルを、3秒に等しい積分時間を用いて記録した。
【0532】
図3cに、実施例1F.3及び2F.1、並びに比較例3F.1で作製されたフィルムの光反射率を示す。フィルムの厚さは25μmであり、充填率は0.25であった。実施例1F.3及び2F.1はそれぞれ、80%以上及び60%以上の反射率を示し、これは、400nm~800nmの波長範囲にわたって40%以下の反射しかできない比較例3F.1の反射率よりも著しく大きい。実施例1F及び2Fのフィルムの反射率は、比較例3Fと比較して、可視スペクトルにわたって優れている。
【0533】
フィルムの反射率の程度は、溶液中の粒子について見られるそれに対応している。
【0534】
図5eに、厚さ9μmでそれぞれ40%及び53%の充填率を有する実施例1F.1及び1F.2で作製されたフィルムの光反射率を示す。充填率を増加させると、600nmにおける反射率が約71%から77%に増加する。
【0535】
光透過率及び白色度
様々な厚さを有する実施例1F及び2F、比較例3F、及びセルロースナノファイバーのフィルムの散乱効率を測定した。これにより、輸送平均自由行程を正確に推定することができる。
【0536】
図4aに、40%の充填率、並びにそれぞれ10μm、15μm、20μm及び30μmの厚さを有する実施例1F.4、1F.5、1F.6及び1F.7の透過率を示す。
図4bに、400nmの波長の入射光に対する様々な厚さにおける透過率を示す。
図4cに、実施例1F.1についての輸送平均自由行程(lt)の波長依存性を示す。輸送平均自由行程はほとんど波長に依存せず、全透過スペクトルの形状に類似していた。これは、フィルムによる優れた散乱効率を示している。
【0537】
フィルムの白色度を
図5fに示す。実施例1F.1、1F.2、1F.3、2F.1及び比較例3F.1についての散乱応答をスペクトル依存性の観点から示す。白色度は、様々な波長で反射される光の量を増加させることによって最適化され、反射率スペクトルをLa
*b
*色空間座標に変換することによって計算することができる(Jacucci et al.)。異なるサイズのCMPを有するフィルムは、同様の色飽和度を有し、すなわち、座標(a
*,b
*)の中心からの半径方向の距離が同等である。しかしながら、異なるサイズのCMPは、非常に異なる輝度を示し、すなわち、垂直座標(L
*)が異なる。
【0538】
CMPフィルムの散乱効率を、それらの輸送平均自由行程及び白色度(輝度、L*)の観点から表4にまとめる。平均自由行程は、400~800nmの波長にわたる平均自由行程の平均である。
【0539】
CNF(表4中)とは、文献(Syurik et al.)において調製されたセルロースナノファイバーを指す。
【0540】
【表4】
図4Cに、可視範囲(400~800nmの波長)にわたる実施例1F.1の平均自由行程のグラフを示す。
【0541】
輸送平均自由行程は、文献(Syurik et al.)に記載されているように、以下の式によって全透過データから評価した。
【0542】
【数2】
式中、T、L、l
t及びz
eは、それぞれ全透過率、厚さ、平均自由行程及び外挿長である。この後者のパラメータは、平均自由行程の評価において試料の界面での内部反射を考慮に入れており、充填率システムを知ることによって計算することができる(Jacucci et al.)。
【0543】
平均自由行程は、光がその初期伝搬方向がランダム化される前に媒体内を移動しなければならない平均距離を表し、散乱効率に反比例する。したがって、輸送平均自由行程は、試料構造パラメータとは独立した様々な材料の散乱応答の良好な尺度である。表4に、実施例1e.1、1F.2及び1F.3が、2.5μm以下、最低で1μmの輸送平均自由行程の値であることを示し、これは、低屈折率の散乱媒体としては非常に小さい。実施例2Fもまた、7μmの低い平均自由行程を示す。実施例1F及び2Fの平均自由行程は、20μmの平均自由行程を有する比較例3Fよりも著しく低い。
【0544】
実施例1F及び2Fの白色度は、すべてL*=0.83を超えている。これは、非常に高いレベルの散乱効率を示している。これに対して、比較例3FのCMPフィルムは、L*=0.66の白色度しか有さず、散乱効率が劣っていることを示唆している。
【0545】
フィルムの角度依存性
示した反射/透過光の角度分布はゴニオメーターを用いて決定した。キセノンランプ(Ocean Optics HPX-2000)を光ファイバー(Thorlabs FC-UV100-2-SR)に接続し、試料を照射した。照射角を垂直入射に固定し、1°の分解能で試料の周りに検出器アームを回転させることによって、強度の角度分布を取得した。シグナルの検出には、分光計(Avantes HS2048)に接続された600μmコアファイバー(Thorlabs FC-UV600-2-SR)を使用した。スペクトルを10回取得して平均して、シグナル対ノイズ比を減少させた。
【0546】
10μm及び40μmの厚さを有する実施例1Fの光学応答を、角度依存性の観点から評価した(
図3d参照)。反射光の角度分布をゴニオメーター装置を用いて測定した。照射角を垂直入射に固定し、試料の周りに検出器アームを回転させることによって、強度の角度分布を取得した。使用した波長は400nmであった。強度を白色拡散体に対して正規化した。
図3dは、実施例1Fが、10μmの厚さの非常に薄いフィルムであっても、理想的な拡散体のランバートプロファイルに従うことを示している。
【0547】
セルロース微粒子フィルムの疎水性調製
実施例1のセルロース微粒子を、メチルトリクロロシラン(TCMS)蒸気で処理した。実施例1の凍結乾燥したCMPを、1mLのTCMS液を入れたチャンバーの上部空間に30秒間置いた。TCMS処理後、CMPを音波処理によってエタノール中に分散させ、次いで、この懸濁液を空気中、室温でドロップキャスティングしてフィルムを形成した。
【0548】
これにより、水滴接触角が90°を超える疎水性フィルム、実施例1FHを得た。したがって、このフィルムは、防汚性及び自己浄化性の白色コーティングが望ましい様々な用途における白色コーティングに有用である。
【0549】
これは、高散乱フィルムを製造する代替の、簡素化された、拡張可能な方法であり、これにより,濾過、凍結及び凍結乾燥の工程を除くことができる。この方法を
図6aの概略図によって示す。
【0550】
TCMSで処理した場合、CMPの表面上のヒドロキシル基の一部が-O-Si(CH3)3部分によって置換され、それにより乾燥プロセス中にヒドロキシル基間の水素結合が著しく減少すると考えられる。理論に束縛されるものではないが、減少した水素結合及び水に対してのエタノールのより低い表面張力により、CMPの多孔性ネットワークを、溶媒蒸発によって生成される毛細管圧力によって崩壊することなく、薄膜中に形成することができる。
【0551】
疎水性フィルムの特徴付け
25μmの厚さを有する実施例1のFHにおいて、反射率は、400nmにおける84%から800nmにおける88%の範囲であった(
図6b参照)。
【0552】
さらに、実施例1FHのこれらの高散乱フィルムは、良好な疎水性応答を示す。
【0553】
接触角(CA,θ)を、液滴形状解析装置(First Ten Angstroms,USA)を用いて常温で測定した。試料の表面に5μLの水滴を置いて、表面の異なる位置で6回測定した平均値を接触角とした。
図6b(挿入画像)に、疎水性フィルムの断面のSEM画像とフィルムの表面上の水滴の接触角プロファイルを示す。これらのフィルムの水滴接触角は140度であり、これは超疎水性表面で得られるものに近い。
【0554】
これは、防汚性及び自己浄化性の白色コーティングとしてのこれらのフィルムの用途の可能性を広げる。
【0555】
参考文献
本発明及び本発明が属する技術分野の状態をより完全に記載して開示するために、多くの刊行物を上で引用している。これらの参考文献についての完全な引用を下に示す。これらの参考文献の各々の全体が本明細書に組み込まれる。
【0556】
Credou,J.;Berthelot,T.Sci.Rep.2017,7,40373.
【0557】
Credou,J.;Berthelot,T.J.Mater.Chem.B 2014,2(30),4767-4788.
【0558】
Habibi et al.Chem.Rev.2010,110(6),3479-3500.
【0559】
Jacucci et al.Adv.Opt.Mater.2019,7(23),1900980.
【0560】
Miyamoto,T.;Takahashi,S.;Ito,H.;Inagaki,H.;Noishiki,Y.J.Biomed.Mater.Res.1989,23(1),125-133.
【0561】
Saito et al.Biomacromolecules 2006,7,1687
Syurik et al.Adv.Funct.Mater.2018,28(24),170690
Tao,et al..J.Mater.Chem.2011,21(46),18623-18629
Toivonen et al.Adv.Mater.2018,30(16),1704050
Zhu et al.ACS Nano2016,10(1),1369-1377
中国特許出願公開第102276734号
中国特許出願公開第106699904号
中国特許出願公開第112280072号
中国特許出願公開第113150319号
中国特許出願公開第113152150号
中国特許出願公開第113174091号
中国特許出願公開第113480756号
欧州特許出願公開第3854819号
米国特許出願公開第2013/303750号
米国特許出願公開第2021/213405号
国際公開第2012/06720号
国際公開第2019/063647号
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0561
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0561】
Saito et al.Biomacromolecules 2006,7,1687
Syurik et al.Adv.Funct.Mater.2018,28(24),170690
Tao,et al..J.Mater.Chem.2011,21(46),18623-18629
Toivonen et al.Adv.Mater.2018,30(16),1704050
Zhu et al.ACS Nano2016,10(1),1369-1377
中国特許出願公開第102276734号
中国特許出願公開第106699904号
中国特許出願公開第112280072号
中国特許出願公開第113150319号
中国特許出願公開第113152150号
中国特許出願公開第113174091号
中国特許出願公開第113480756号
欧州特許出願公開第3854819号
米国特許出願公開第2013/303750号
米国特許出願公開第2021/213405号
国際公開第2012/06720号
国際公開第2019/063647号
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.1,000~10,000nmの長さ及び2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子。
2.前記アスペクト比が3~15、好ましくは4~10、より好ましくは4~6である、項目1に記載のセルロース粒子。
3.前記セルロース粒子が1,000~5000nm、好ましくは1,300~3,500nm、及びより好ましくは1,900~2,800nmの長さを有する、項目1又は2のいずれかに記載のセルロース粒子。
4.前記セルロース粒子が、200~1,000nm、好ましくは200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmの幅を有する、項目1~3のいずれかに記載のセルロース粒子。
5.前記セルロース粒子が、ロッド若しくはロッド様の形状、又はフレーク若しくはフレーク様の形状を有する、項目1~4のいずれかに記載のセルロース粒子。
6.前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、より好ましくは1,900~2,800nmの平均長さを有する、項目1~5のいずれかに記載のセルロース粒子。
7.前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、より好ましくは1,900~2,800nmのD50長さを有する、項目1~6のいずれかに記載のセルロース粒子。
8.前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、2~18の前記粒子の平均長さと前記粒子の平均幅との間のアスペクト比を有する、項目1~7のいずれかに記載のセルロース粒子。
9.前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、200~1,000nm、好ましくは200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmのD50幅を有する、項目1~8のいずれかに記載のセルロース粒子。
10.前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000nm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは700nm以下の粒子長標準偏差を有する、項目1~9のいずれかに記載のセルロース粒子。
11.前記粒子が、前記粒子の表面上に1つ以上の-O-Si(CH3)3又は-O-Si(OCH3)3基などの1つ以上のシリルエーテル基を含む、項目1~10のいずれかに記載のセルロース粒子。
12.セルロース粒子の調製方法であって、
(a)セルロース材料を、40~60v/v%の濃度を有するプロトン性無機酸を用いて40~60℃の温度で加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)第1遠心分離と第2遠心分離で構成される分画遠心分離を用いて、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程であって、ここで、第1遠心分離が第2遠心分離よりも低い相対遠心力である工程
を含む方法。
13.前記プロトン性無機酸が、硫酸又は塩酸、好ましくは硫酸である、項目12に記載の方法。
14.前記セルロース材料が微結晶セルロース粉末である、項目12又は13のいずれかに記載の方法。
15.工程(a)において、前記セルロース材料が、1~10時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~7時間、例えば約5時間、加水分解される、項目12~14のいずれかに記載の方法。
16.工程(b)が、前記加水分解されたセルロース粒子を水で透析することを含む、項目12~15のいずれかに記載の方法。
17.前記第1遠心分離が50~1,500の相対遠心力であり、前記第2遠心分離が600~2,600の相対遠心力である、項目12~16のいずれかに記載の方法。
18.前記第1遠心分離が、150~1,500、好ましくは300~1,100、より好ましくは500~900、なおより好ましくは600~800の相対遠心力であり、前記第2遠心分離が、1,000~2,000、好ましくは1,300~1,700、より好ましくは1,400~1,600の相対遠心力である、項目12~17のいずれかに記載の方法。
19.前記方法が、前記分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)をさらに含む、項目12~18のいずれかに記載の方法。
20.前記分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)が、前記分画されたセルロース粒子を噴霧乾燥、凍結乾燥又は噴霧凍結乾燥して、セルロース粒子の乾燥粉末又は前記セルロース粒子を含むクラスターを提供することを含む、項目19に記載の方法。
21.前記セルロース粒子をトリメチルクロロシラン又はクロロトリメトキシシランで処理して、1つ以上の-O-Si(CH3)3又は-O-Si(OCH3)3表面基を有する前記セルロース粒子を提供する工程をさらに含む、項目12~20のいずれかに記載の方法。
22.項目12~21のいずれかに記載の方法によって得られた、又は得ることができるセルロース粒子。
23.セルロース粒子を0.1重量%の濃度で水に分散させ、光路長1cmとしたときに、波長400~800nmの入射光の反射率が25%以上である、項目1~11及び22のいずれかに記載のセルロース粒子。
24.項目1~11、22及び23のいずれかに記載のセルロース粒子を含むクラスター。
25.1~2のアスペクト比、及び1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの長さを有する、項目24に記載のクラスター。
26.クラスターの集団が、1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの平均長さ、及び/又は1~2の平均アスペクト比を有する、項目24又は25のいずれかに記載のクラスター。
27.項目20に記載の方法によって得られた又は得ることができるクラスター。
28.項目1~11、22及び23のいずれかに記載のセルロース粒子を含むフィルム。
29.5.0~40.0μmの厚さを有する、項目28に記載のフィルム。
30.前記フィルムが、20~60%、好ましくは25~55%、より好ましくは40~53%の充填率を有する、項目28又は29のいずれかに記載のフィルム。
31.前記フィルムが、400~800nmの波長において入射光の50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の反射率を有する、項目28~30のいずれかに記載のフィルム。
32.前記フィルムが、70以上、例えば75以上、例えば80以上のL*を有し、ここでL*がCEILAB色空間座標である、項目28~31のいずれかに記載のフィルム。
33.項目1~11、22及び23のいずれかに記載のセルロース粒子の懸濁液、項目24~27のいずれかに記載のクラスターの懸濁液、又は項目28~31のいずれかに記載のフィルムを割ることによって形成されたフレークの懸濁液を含む、組成物。
34.前記セルロース粒子の懸濁液が、前記組成物を形成する前にpH7にpH調整される、項目33に記載の組成物。
35.項目1~11、22及び23のいずれかに記載のセルロース粒子、項目24~27のいずれかに記載のクラスター、又は項目28~31のいずれかに記載のフィルムを割ることによって形成されたフレークの、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,000~10,000nmの長さ及び2~18のアスペクト比を有するセルロース粒子。
【請求項2】
前記アスペクト比が3~15、好ましくは4~10、より好ましくは4~6である、請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項3】
前記セルロース粒子が1,000~5000nm、好ましくは1,300~3,500nm、及びより好ましくは1,900~2,800nmの長さを有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項4】
前記セルロース粒子が、200~1,000nm、好ましくは200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmの幅を有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項5】
前記セルロース粒子が、ロッド若しくはロッド様の形状、又はフレーク若しくはフレーク様の形状を有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項6】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、より好ましくは1,900~2,800nmの平均長さを有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項7】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000~5,000nm、好ましくは1,300~3,500nm、より好ましくは1,900~2,800nmのD50長さを有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項8】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、2~18の前記粒子の平均長さと前記粒子の平均幅との間のアスペクト比を有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項9】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、200~1,000nm、好ましくは200~800nm、より好ましくは300~600nm、さらにより好ましくは450~550nmのD50幅を有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項10】
前記セルロース粒子の集団中の前記粒子が、1,000nm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは700nm以下の粒子長標準偏差を有する、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項11】
前記粒子が、前記粒子の表面上に1つ以上の-O-Si(CH
3)
3又は-O-Si(OCH
3)
3基などの1つ以上のシリルエーテル基を含む、請求項
1に記載のセルロース粒子。
【請求項12】
セルロース粒子の調製方法であって、
(a)セルロース材料を、40~60v/v%の濃度を有するプロトン性無機酸を用いて40~60℃の温度で加水分解して、加水分解されたセルロース粒子を供給する工程、
(b)加水分解されたセルロース粒子を洗浄する工程、及び
(c)第1遠心分離と第2遠心分離で構成される分画遠心分離を用いて、加水分解されたセルロース粒子の懸濁液を分画する工程であって、ここで、第1遠心分離が第2遠心分離よりも低い相対遠心力である工程
を含む方法。
【請求項13】
前記プロトン性無機酸が、硫酸又は塩酸、好ましくは硫酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セルロース材料が微結晶セルロース粉末である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)において、前記セルロース材料が、1~10時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~7時間、例えば約5時間、加水分解される、請求項1
2に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)が、前記加水分解されたセルロース粒子を水で透析することを含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項17】
前記第1遠心分離が50~1,500の相対遠心力であり、前記第2遠心分離が600~2,600の相対遠心力である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項18】
前記第1遠心分離が、150~1,500、好ましくは300~1,100、より好ましくは500~900、なおより好ましくは600~800の相対遠心力であり、前記第2遠心分離が、1,000~2,000、好ましくは1,300~1,700、より好ましくは1,400~1,600の相対遠心力である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)をさらに含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項20】
前記分画されたセルロース粒子を乾燥させる工程(d)が、前記分画されたセルロース粒子を噴霧乾燥、凍結乾燥又は噴霧凍結乾燥して、セルロース粒子の乾燥粉末又は前記セルロース粒子を含むクラスターを提供することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記セルロース粒子をトリメチルクロロシラン又はクロロトリメトキシシランで処理して、1つ以上の-O-Si(CH
3)
3又は-O-Si(OCH
3)
3表面基を有する前記セルロース粒子を提供する工程をさらに含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項22】
請求項1
2に記載の方法によって得られた、又は得ることができるセルロース粒子。
【請求項23】
セルロース粒子を0.1重量%の濃度で水に分散させ、光路長1cmとしたときに、波長400~800nmの入射光の反射率が25%以上である、請求項
1及び22のいずれか一項に記載のセルロース粒子。
【請求項24】
請求項
1及び2
2のいずれか一項に記載のセルロース粒子を含むクラスター。
【請求項25】
1~2のアスペクト比、及び1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの長さを有する、請求項24に記載のクラスター。
【請求項26】
クラスターの集団が、1.0μm~100μm、好ましくは2.0μm~50μm、より好ましくは5.0~20.0μmの平均長さ、及び/又は1~2の平均アスペクト比を有する、請求項24に記載のクラスター。
【請求項27】
請求項20に記載の方法によって得られた又は得ることができるクラスター。
【請求項28】
請求項1
及び2
2のいずれか一項に記載のセルロース粒子を含むフィルム。
【請求項29】
5.0~40.0μmの厚さを有する、請求項28に記載のフィルム。
【請求項30】
前記フィルムが、20~60%、好ましくは25~55%、より好ましくは40~53%の充填率を有する、請求項2
8に記載のフィルム。
【請求項31】
前記フィルムが、400~800nmの波長において入射光の50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の反射率を有する、請求項2
8に記載のフィルム。
【請求項32】
前記フィルムが、70以上、例えば75以上、例えば80以上のL
*を有し、ここでL
*がCEILAB色空間座標である、請求項2
8に記載のフィルム。
【請求項33】
請求項1
及び2
2のいずれか一項に記載のセルロース粒子の懸濁
液を含む、組成物。
【請求項34】
請求項24に記載のクラスターの懸濁液を含む、組成物。
【請求項35】
請求項28のフィルムを割ることによって形成されたフレークの懸濁液を含む、組成物。
【請求項36】
前記セルロース粒子の懸濁液が、前記組成物を形成する前にpH7にpH調整される、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1
及び2
2のいずれか一項に記載のセルロース粒
子の、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用。
【請求項38】
請求項24に記載のクラスターの、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用。
【請求項39】
請求項28に記載のフィルムを割ることによって形成されたフレークの、顔料、白色増強剤、散乱増強剤又は乳白剤としての使用。
【国際調査報告】