IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キム、スン チャンの特許一覧

特表2025-502345エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物
<>
  • 特表-エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物 図1
  • 特表-エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物 図2
  • 特表-エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物 図3
  • 特表-エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物 図4
  • 特表-エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】エキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20250117BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20250117BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20250117BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20250117BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20250117BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALN20250117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C12N1/00 D
C12N5/074
C12N5/0735
C12N5/0775
C12N5/0789
C12N5/0797
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542248
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2023000753
(87)【国際公開番号】W WO2023136691
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0005693
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082798
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0098866
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524265518
【氏名又は名称】キム、スン チャン
【氏名又は名称原語表記】KIM,Seung Chan
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン チャン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BC06
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、高圧酸素を処理してエキソソームの生産性を向上させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物に関し、本発明の方法を利用する場合、エキソソームの生産性を効果的に向上させることができるので、これをエキソソームを活用する診断および治療などに非常に有用に利用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が含まれた試料を第1の気圧の環境で培養するステップと、
前記第1の気圧より高い第2の気圧の環境で前記試料を培養するステップと、を含み、
前記第2の気圧条件は、高圧の酸素によって組成される、エキソソームの生産性を向上させる方法。
【請求項2】
前記試料からエキソソームを抽出するステップと、をさらに含む、請求項1に記載のエキソソームの生産性を向上させる方法。
【請求項3】
前記細胞は幹細胞である、請求項1に記載のエキソソームの生産性を向上させる方法。
【請求項4】
前記第1の気圧の環境で培養するステップ、および前記第2の気圧の環境で培養するステップが2回以上繰り返して行われる、請求項1に記載のエキソソームの生産性を向上させる方法。
【請求項5】
前記第2の気圧は、1ないし5ATAである、請求項1に記載のエキソソームの生産性を向上させる方法。
【請求項6】
前記第2の気圧の環境で試料を培養するステップは、60ないし120分にかけて行われる、請求項1に記載のエキソソームの生産性を向上させる方法。
【請求項7】
エキソソームを含む組成物であって、
1ml当たり5×10個以上のエキソソーム個数濃度を有するエキソソームを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧酸素処理を利用してエキソソームの生産性を増加させる方法、およびそれにより生産されたエキソソームを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エキソソームは様々な種類の細胞から分泌される膜構造の小さな小胞である。エキソソームの直径はおおよそ30ないし300nmであることが報告されている。エキソソームは、電子顕微鏡を介した研究において、原形質膜から直接的に分離されるものではなく、多小胞体(multivesicular bodies;MVBs)と呼ばれる細胞内の特定区画から起源して細胞外に放出、分泌されることが観察された。すなわち、多小胞体と原形質膜が融合されると、小胞は細胞外の環境に放出され、これをエキソソームと呼ぶ。このようなエキソソームがどのような分子的機序によって作られるかははっきりと明らかにされていないが、赤血球細胞だけでなく、B-リンパ球、Tリンパ球、樹枝状細胞、血小板、マクロファージなどを含む様々な種類の免疫細胞と、腫瘍細胞、幹細胞なども生きている状態でエキソソームを生産して分泌すると知られている。
【0003】
また、最近の研究によると、エキソソームは、細胞間信号伝達および廃棄管理のような過程において重要な役割を果たしていると報告された(非特許文献1)。エキソソームは疾病の予後、治療および健康と疾病のためのバイオマーカーとして用いられてもよい潜在力を有しており、最近、臨床適用への関心が増加している。
【0004】
発明の背景となる技術は、本発明に対する理解をより容易にするために作成された。発明の背景となる技術に記載されている事項が先行技術として存在すると認めるものと理解されてはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Edwin van der pol et al.、Pharmacological Reviews July 2012、64(3)676~705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、細胞が生成するエキソソームが微量であるので、これを効率的に多量に得るためのエキソソームの生産性を増加させることができる方法が要求されている実情である。
そこで、本発明者らは、エキソソームの生産性を効果的に増加させることができる方法を開発しようとした。
【0007】
その結果、本発明の発明者らは、幹細胞を培養する時、高圧酸素を処理してエキソソームの生産性を増加させる方法を開発するのに至った。
これに対し、本発明において解決しようとする課題は、幹細胞の培養過程において高圧酸素を処理してエキソソームの生産性を増加させる方法を提供することである。
【0008】
本発明の課題は、以上において言及した課題に制限されるものではなく、言及されていないまた他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述のような課題を解決するために、細胞が含まれた試料を第1の気圧の環境で培養するステップと、前記第1の気圧より高い第2の気圧の環境で前記試料を培養するステップと、を含み、前記第2の気圧条件は、高圧の酸素によって組成される方法が提示される。
【0010】
本発明における「細胞」は、身体から得たあらゆる種類の体細胞であってもよく、例えば、皮膚、毛嚢、歯根、脂肪、血液、小便、粘液、唾液、涙、血漿、血清、尿、喀痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引物、リンパ液、気道液、腸液、および泌尿生殖管液、母乳、リンパ系体液、精液、脳脊髄液、器官系内体液、腹水、嚢胞性腫瘍体液、羊水液およびその組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよく、エキソソームを分泌する細胞であれば、これに限定されるものではない。また、「細胞」は、身体から得た体細胞の他に、植物、動物などのヒトとは異なる個体から得た細胞であってもよい。
【0011】
本発明における「エキソソーム」は、細胞によって放出されるエンドソーム由来の脂質二重層を有する小さな膜小胞を意味し、エキソソームは、細胞間信号を伝達するために、タンパク質、DNA、RNAなどを有して細胞外に分泌される小さな小胞を示してもよく、例えば、タンパク質、脂質、mRNA、マイクロRNA(miRNA)およびゲノムDNAを含んでもよい。
【0012】
一具現例において、前記幹細胞由来のエキソソームは、CD9、CD63、CD81およびそれらの組み合わせからなる群から選択されたマーカータンパク質を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0013】
具体的に、CD9、CD63およびCD81は、エキソソームの代表的なポジティブマーカーであるので、CD9、CD63およびCD81の含量とエキソソームの含量は互いに線形性を有し、CD9、CD63およびCD81含量の増加は、エキソソーム含量の比例的な増加を意味する。
【0014】
一具体例において、エキソソームは制限されないが、脂肪、ヒト血液から由来、抽出または分離されたものであってもよい。または、エキソソームは、幹細胞または免疫細胞から抽出されてもよい。前記幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPSC)、成体幹細胞、胚性幹細胞由来の間葉系幹細胞、または誘導多能性幹細胞由来の間葉系幹細胞であってもよい。前記免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、細胞毒性T細胞(cytotoxic T cell)、樹枝状細胞またはマクロファージであってもよい。また、エキソソームは身体から得た細胞の他に、植物、動物などのヒトとは異なる個体から得た細胞から由来、抽出または分離されたものであってもよい。
【0015】
また、本発明を限定しない例示として、前記成体幹細胞は、間葉系幹細胞、ヒト組織由来の間葉系基質細胞、ヒト組織由来の間葉系幹細胞、および多分化能幹細胞で構成された群から選択される1種以上の成体幹細胞であってもよい。前記間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、ホウォートンゼリーおよび胎盤で構成された群から選択される1種以上の組織から由来した間葉系幹細胞であってもよい。好ましくは、前記成体幹細胞は、間葉系幹細胞、例えば、脂肪、骨髄、臍帯または臍帯血由来の幹細胞であってもよく、より好ましくは、脂肪由来の幹細胞であってもよい。
【0016】
一具体例として、前記エキソソームが幹細胞から抽出されるものである場合、前記幹細胞は、脂肪組織(例えば、ヒトの脂肪組織)から分離された幹細胞(例えば、ヒト脂肪由来の幹細胞)であってもよいが、これに制限されるものではなく、脂肪、骨、軟骨、筋繊維などの一つ以上の間葉系細胞に分化できる細胞を全て含んでもよい。前記脂肪由来の幹細胞(ADSC)は、脂肪前駆細胞、基質細胞、多分化能脂肪由来細胞(multipotent adipose-derived cells)または脂肪由来の成体幹細胞(adipose derived adult stem cells)のうち少なくとも1種であってもよい。
【0017】
前記幹細胞または前記免疫細胞の種類は、病原体による感染の危険がなく、免疫拒否反応を起こさないものであれば制限されないが、好ましくは、ヒト由来の幹細胞またはヒト由来の免疫細胞であってもよい。
【0018】
しかしながら、当業界において用いられているか、追って用いられ得る様々な動物細胞、植物細胞を含んでもよく、後述する実施例において用いられた脂肪幹細胞は、本発明において用いられ得る動物細胞の一例として理解されなければならず、これに制限されるものではない。
【0019】
本発明における「試料」は、身体から得た血液、小便、粘液、唾液、涙、血漿、血清、尿、喀痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引物、リンパ液、気道液、腸液、および泌尿生殖管液、母乳、リンパ系体液、精液、脳脊髄液、器官係内体液、腹水、嚢胞性腫瘍体液、羊水液およびその組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよく、また、培養細胞の培地を含んでもよく、また、エキソソームを分泌する試料であれば、これに限定されない。ここで、培地としては、FBS(Fetal Bovine Serum)が含まれたものを用いてもよいが、これに限定されるものではなく、商業的に入手可能なエックセルセラピューティックス社のCellCorTMCD MSC、STEMCELL technology社のMesenCultTMplus、Peprotech社のeproGrowTMhMSC(Mesenchymal Stem Cell)Media、BI/Satorius社のMSC Nutristem(登録商標)シリーズ、Miltenyi biotec社のStemMACSTM、Roosterbio社のRoosterNourishTM、R&D systems社のStemXVivoTM、Takara Bio社のCellartis(登録商標)MSC XF、Irvine Science/FUJI社のPRIME-XV XSFMまたはPRIME-XV SFM、Ajinomoto社のStemFit for MSC、Lonza社のTheraPEAKTM、Cellntec社のCnT-PR-MSC-XFなどが用いられてもよい。
【0020】
一実施例において、血液は、体内の細胞に酸素と栄養素を供給し、細胞の新陳代謝によって発生する二酸化炭素と老廃物を回収して運搬する役割を果たす体液のことである。血漿(plasma)は、血液を構成する液体成分であり、タンパク質を始めとして多種多様な有機物や無機物が溶けている溶媒の役割を果たす。血清または漿液(serum)は、血液の一部成分であって血漿からフィブリノーゲンが除去された残りの黄色い液体成分のことである。
【0021】
本発明の一具体例のエキソソームの生産性の向上方法は、エキソソームの生産効率および收得率を増加させるために、幹細胞が培養される過程で一般培養条件と有利な条件間の環境条件、例えば、培養基内部の圧力条件、酸素濃度条件、二酸化炭素濃度条件、窒素濃度条件、空気組成条件、光源の波長条件、温度条件などを変化させて生産効率および收得率の増加を達成することができ、より具体的には、高圧酸素を処理することを特徴とする。
【0022】
一具体例において、細胞が含まれた試料を第1の気圧の環境で培養するステップと、前記第1の気圧より高い第2の気圧の環境で前記試料を培養するステップと、を含み、前記第2の気圧条件は、高圧の酸素によって組成されることで、エキソソームの生産効率および收得率を増加させるものであってもよく、これに制限されるものではない。
【0023】
より具体的に、前記試料からエキソソームを抽出するステップと、をさらに含んでもよいが、これに制限されるものではない。
より具体的に、前記細胞は幹細胞であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
より具体的に、前記第1の気圧の環境で培養するステップ、および前記第2の気圧の環境で培養するステップが2回以上繰り返して行われてもよいが、これに制限されるものではない。
【0025】
より具体的に、前記第2の気圧は、1ないし5ATAであってもよいが、これに制限されるものではない。
より具体的に、前記第2の気圧の環境で試料を培養するステップは、60ないし120分にかけて行われてもよいが、これに制限されるものではない。
【0026】
本明細書において用いられた用語「生産性」および「收得率」は、一定試料から得られるエキソソーム量を意味するものであって、本実施例において説明した実験方法を含む一般的な定量化方法によって測定されたことを意味する。
【0027】
一具体例において、エキソソームの生産効率および收得率の向上方法において、前記生産効率および收得率は、エキソソーム培養液1ml当たりのエキソソームの粒子数で定義されてもよい。
【0028】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解析されてはならない。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施例によるエキソソームの生産性を増加させる方法は、幹細胞の培養過程において相対的に苛酷な条件と相対的に有利な条件との間の環境条件、例えば、有利な条件として高圧酸素を処理して培養することで、生産効率および收得率が増加する効果を有する。
【0030】
より具体的に、有利な条件として高圧酸素処理は、1ないし5ATA条件で60分ないし120分間、1回ないし5回処理されるものであってもよく、好ましくは、3ATA条件で90分間、3回処理されるものであってもよく、これによってエキソソームの生産効率および收得率が増加することを確認した。
【0031】
本発明による効果は、以上において例示された内容によって制限されず、さらに様々な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例による高温酸素処理方法を図式化したものである。
図2】対照群(A0)でのナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis;NTA)の結果によるエキソソームのサイズと濃度分布を示した図である。
図3】実験群(A1)でのナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis;NTA)の結果によるエキソソームのサイズと濃度分布を示した図である。
図4】実験群(A2)でのナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis;NTA)の結果によるエキソソームのサイズと濃度分布を示した図である。
図5】実験群(A3)でのナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis;NTA)の結果によるエキソソームのサイズと濃度分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以上、添付図面を参照して、本発明の実施例をより詳しく説明したが、本発明は、必ずこのような実施例に限るのではなく、本発明の技術思想から外れない範囲内で多様に変形実施されてもよい。
【0034】
従って、本発明に開示されている実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであって、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。そのため、以上において記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないことが理解されなければならない。本発明の保護範囲は、以下の請求の範囲によって解析されなければならず、それと同等な範囲内にあるあらゆる技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【0035】
以下、実施例によってより詳しく説明する。しかしながら、これらの実施例は、一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1.細胞培養
エキソソームを抽出するために、30ないし40歳の健康な成人男性の下腹部から各70ccの脂肪を吸入して間質血管細胞群(SVF;stromal vascular fraction)を抽出した後、大気圧力を有する-196℃の窒素タンクで冷凍処理した。
【0037】
以後、前記冷凍処理した間質血管細胞群を解凍し、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum;FBS)、100ユニット(Units)/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンが含まれたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培養培地として用いてフラスコに接種し、37℃、Air、5%のCO培養基で7日間培養し、十分な幹細胞を確保するために同じ条件でさらに18日を培養した。
【0038】
実施例2.高圧酸素処理
前記実施例1において培養した細胞を4つの群(A0、A1、A2、A3)に分けて高圧酸素処理回数を異にして以下のように処理した。
【0039】
各サンプルは、各1ウェル(10ml)当たり10cells数になるように分注し、対照群および実験群は、それぞれ2つのウェルで実験を進めた。
高圧酸素処理は、高圧酸素チャンバで3ATA、90分にかけて細胞を培養することで行われており、高圧酸素処理をしない場合は、37℃、Air、5%のCO条件の一般インキュベーターで培養した。
【0040】
より具体的に、図1に示されているように、対照群であるA0は、高圧酸素の処理なしに一般インキュベーターで4日間培養し、実験群のうちA1は、培養1日目に1回の高圧酸素チャンバ内の培養を施行した後、一般インキュベーターで70.5時間培養し、実験群のうちA2は、培養1日目および2日目に各1回ずつ、計2回の高圧酸素チャンバ内の培養を施行した後、46.5時間にかけて一般インキュベーターで培養しており、実験群のうちA3は、培養1日目、2日目および3日目に各1回ずつ、計3回の高圧酸素チャンバ内の培養を施行した後、22.5時間を一般インキュベーターでさらに培養した。以後、培養4日目に対照群A0および実験群A1ないしA3を全て回収し、計8つのウェル培養液を-196℃の窒素タンクで冷凍した。
【0041】
実施例3.エキソソーム抽出および特性分析
前記実施例1において培養した細胞および実施例2のように高温酸素を処理した幹細胞からエキソソームの生産性および收得率を測定するために、各対照群および実験群から培養液を得た後、ATPS(Aqueous Two-Phase System)方法によりエキソソームを分離した。
【0042】
前記分離したエキソソームはナノ粒子追跡分析(nanoparticle tracking)を実施し、粒子の大きさと濃度を測定した。
その結果、図2ないし5および表1に示したように、分離されたエキソソームは、おおよそ200nm前後の大きさ範囲(通常のエキソソームの大きさ範囲)に分布し、粒径分布が概ね均一で、エキソソームの大きさや分布特性を満たすことが確認できた。また、表1に示したように、高圧酸素を処理したA1ないしA3の場合、高圧酸素処理回数が増加するにつれてエキソソームの個数濃度が増加し、エキソソームの生産性が向上することを確認した。
【0043】
【表1】
【0044】
また、分離されたエキソソームに対して流動細胞分析を実施し、CD9、CD63およびCD81マーカーの存在を確認した。
CD9、CD63およびCD81は、エキソソームの代表的なポジティブマーカーであるので、CD9、CD63およびCD81の含量とエキソソームの含量は互いに線形性を有し、CD9、CD63およびCD81の含量の増加は、エキソソーム含量の比例的な増加を意味する。
【0045】
具体的に、CD81に対して陽性(positive)であるエキソソームを分離するために、エキソソーム-ヒューマンCD81分離/検出キット(ThermoFisher Scientific)を製造社の指示に従って用いており、PE-マウス抗-ヒトCD9抗体(PE-Mouse anti-human CD9;BD Biosciences)、PE-マウス抗-ヒトCD63抗体(PE-Mouse anti-human CD63;BD Biosciences)およびPE-マウス抗-ヒトCD81抗体(PE-mouse anti-human CD81;BD Biosciences)を用いてマーカーを染めた後、流動細胞分析器(ACEA Biosciences)を利用して分析した。その結果、図6に示されているように、実施例2において、分離されたエキソソームは陽性マーカーであるCD9、CD63およびCD81に対して陽性であることを確認した。このような結果は、前記分離されたエキソソームがエキソソームに必ず存在しなければならない特異的マーカー特性を満たしていることを示す。
【0046】
従って、本発明を利用する場合、高い歩留まりで効果的にエキソソームを修得および大量生産できることを確認した。
一方、上述の実験は、一般培養基と高圧酸素処理が可能な培養基で行われていたが、これに限定されるものではなく、本発明による方法は、内部で圧力調節が可能なバイオリアクターで実行されてもよい。すなわち、試料を二つの圧力条件を有する培養基の間で交互に培養する方式で本発明の方法を行ってもよく、バイオリアクター内の空間内で圧力条件を変化させ、本発明の方法を行ってもよい。
【0047】
以上、本発明の実施例をさらに詳しく説明したが、本発明は、必ずこのような実施例に限るものではなく、本発明の技術思想から外れない範囲内で多様に変形実施されてもよい。従って、本発明に開示されている実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであって、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。そのため、以上において記述した実施例は、全ての面において例示的なものであって、限定的ではないことが理解されなければならない。本発明の保護範囲は、以下の請求の範囲によって解析されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】