(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】複合製品及び複合製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20250117BHJP
【FI】
B32B7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024542263
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 NL2023050018
(87)【国際公開番号】W WO2023136726
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517278185
【氏名又は名称】モーフォトニクス ホールディング ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Morphotonics Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】De Run 4281, 5503 LM Veldhoven, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】テル メーレン,ヤン マッテイス
(72)【発明者】
【氏名】キールケルス,ユーレス テオドロス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】フェルトハイゼン,レオン ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ルッベ,ボディネ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB33C
4F100AG00A
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA30B
4F100DD07A
4F100EH46B
4F100EJ08
4F100EJ91B
4F100GB41
4F100JK06B
4F100JL14B
(57)【要約】
【課題】本発明は、複合製品およびそのような製品を製造する方法に関する。
【解決手段】複合製品は、基材の少なくとも一部がテクスチャーを構成する基材と、少なくとも1つのコーティング層の少なくとも一部が基材のテクスチャーと反転されているコーティング層と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合製品であって、
基材の少なくとも一部がテクスチャーを備える、少なくとも1つの基材と、
少なくとも1つのコーティング層と、を備え、
インプリントされたコーティング層の少なくとも一部が基材のテクスチャーと反転されるように、少なくとも1つのコーティング層の少なくとも一部が、基材のテクスチャーの少なくとも一部にインプリントされる、複合製品。
【請求項2】
少なくとも1つのコーティング層が除去可能なコーティング層である、請求項1に記載の複合製品。
【請求項3】
基材のテクスチャーから少なくとも1つのコーティング層を除去するために必要な剥離力が、基材の密着力よりも低い、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項4】
コーティング層の除去に必要な剥離力が100N/m未満、好ましくは20N/m未満、より好ましくは3N/m未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項5】
基材のテクスチャーの表面自由エネルギーが70mN/m未満、好ましくは40mN/m未満、より好ましくは25mN/m未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項6】
コーティング層の表面自由エネルギーが70mN/m未満、好ましくは40mN/m未満、より好ましくは25mN/m未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項7】
少なくとも1つのコーティング層がフルオロアルキル基、長鎖アルキル基および/またはアルキルシロキサン基を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項8】
少なくとも1つのコーティング層のヤング率が4GPa未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項9】
少なくとも1つの基材のヤング率が4GPa未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項10】
基材の少なくとも一部が、インプリントされたテクスチャーを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項11】
基材のテクスチャーの少なくとも一部が繰り返しパターンを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項12】
基材のテクスチャーの少なくとも一部は、最大10μm、好ましくは最大5μm、より好ましくは最大2μmの山から谷までの高さを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項13】
少なくとも1つの基材がガラス、金属、ポリカーボネートおよび/またはポリエステルを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項14】
コーティング層の底面の少なくとも一部が基材のテクスチャーと逆のテクスチャーを有し、コーティング層の上面の少なくとも一部が実質的にフラットである、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項15】
少なくとも1つのコーティング層が基材のテクスチャーと直接接触している、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項16】
コーティング層の厚さが実質的に均一である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項17】
少なくとも1つのコーティング層が、特に硬化前に、少なくとも1つのモノマー、オリゴマーまたはポリマーモノマーおよび/またはオリゴマーを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項18】
少なくとも1つのコーティング層が少なくとも1つの添加剤、好ましくは少なくとも1つの開始剤を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項19】
少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1つのシロキサン基、エポキシ基および/またはフッ素有機基を含む少なくとも1つのアクリル樹脂を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項20】
少なくとも1つのコーティング層が最大5重量%の溶媒を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項21】
コーティング層の上面に付着された少なくとも1つのフィルム層を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項22】
少なくとも1つのコーティング層が複数のコーティング・サブ層を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項23】
複合製品の製造方法、特に先行の請求項のいずれかに記載の方法であって、
基材の少なくとも一部がテクスチャーを備える、少なくとも1つの基材を提供する工程と、
基材のテクスチャーの少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物を提供する工程と、
基材のテクスチャーに反転したインプリントコーティング層を形成するように、コーティング組成物を基材のテクスチャーの少なくとも一部にインプリントする工程と、
を含む方法。
【請求項24】
コーティング層の固化を可能にする工程を含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合製品に関する。本発明はまた、複合物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性テクスチャー層は、ナノメートルまたはマイクロメートルの範囲のテクスチャーを持つ表面である。これはランダムなテクスチャーの場合もあれば、回折格子、傾斜格子、ブレーズ格子、マイクロレンズアレイ、レンチキュラー、バー、ピラミッド、プリズムライン、あるいはブランク面である場合もある。ディスプレイや太陽電池などのデバイスにおける機能性テクスチャー層の使用は重要なトピックである。このような層をスマートに使用することで、パフォーマンスを向上させ、コストを削減し、製品の外観を向上させることができる。例えば、ディスプレイでは拡散層が使用され、より薄いLEDバックライトコンセプトの使用が可能になり、ディスプレイを側面から照らすことができる。その他の新しいハイテクの可能性としては、機能性テクスチャー層を太陽電池パネルに組み込んで効率を向上させることや、有機発光ダイオード(OLED)照明パネルに組み込んでより多くの光を取り出すことが挙げられる。
【0003】
機能性テクスチャー層は、ナノインプリントリソグラフィーなどのインプリントプロセスによって製造できる。テクスチャスタンプは、基材上に設けられた(流動性の)樹脂、ラッカー、またはレジスト層にそのテクスチャーをインプリントするために使用できる。樹脂を挟んだ基材にスタンプを押し付けた後、テクスチャー樹脂を固相に硬化させる。硬化方法は、熱または紫外線などの放射線を使用することによって行われる。この技術により、マイクロサイズまたはナノサイズの特徴を有するテクスチャリングを実行できる。
【0004】
テクスチャーのスケールが小さいことを考慮すると、機能性テクスチャー層ではハンドリング不良を起こしやすい。機能性テクスチャー層を保護するために、通常は接着層と組み合わせたフォイルが保護層として使用される。保護フォイルと接着層の組み合わせは、ラミネートまたは手動プレス工程によって、ウェハなどの保護対象の表面テクスチャー上にラミネートされる。フォイルはまた、保護のために感圧接着剤なしで使用することもできる。これらの方法の欠点は、通常、フォイルおよび/または接着層が機能性テクスチャー層の正確なテクスチャーに完全に準拠しないため、テクスチャーと保護フォイルの間に空気が閉じ込められるリスクが高いことである。
【0005】
したがって、本出願の目的は、上述の問題の少なくとも一部に対する解決策を提供すること、または少なくとも機能性テクスチャー層を保護するための代替解決策を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、複合製品を提供し、この複合製品は、基材の少なくとも一部がテクスチャーを備える少なくとも1つの基材と、少なくとも1つのコーティング層の少なくとも一部が、基材のテクスチャーの少なくとも一部上に設けられ、特にインプリントされ、コーティング層の少なくとも一部、特にインプリントされたコーティング層が基材のテクスチャーに反転されている、少なくとも1つのコーティング層と、を備える。
【0007】
本発明による複合製品は、先行技術に比べていくつかの利点を有する。基材のテクスチャーの少なくとも一部にインプリントされたコーティング層を使用することにより、基材のテクスチャーと反転したインプリントされたコーティング層を提供することができる。言い換えれば、インプリントされたコーティング層は基材の質感に正確に従う。したがって、コーティング層のインプリントされたテクスチャーは、本質的には基材のテクスチャーの正確なネガ画像である。コーティング層のインプリントを使用することで、基材のテクスチャー内に空気が閉じ込められることを防ぐ。本発明によるコーティング層は、空気を封入することなく、基材のテクスチャー上に設けられる。インプリントされたコーティング層は、特に交差する曲線間のすべての角度が維持されるように、基材のテクスチャーの(負の)マッピングをコンフォーマルな方法で指定し、従って、角度とスケールが保存されるコンフォーマル変換につながる。本発明は、コーティング層が空気のない状態で基材のテクスチャー上に設けられる複合製品を提供する。
【0008】
インプリントされたコーティング層の少なくとも一部が、基材のテクスチャーとは逆のテクスチャーを有するように、少なくとも1つのコーティング層の少なくとも一部は、特に、基材のテクスチャーの少なくとも一部上にインプリントされる。少なくとも1つのコーティング層は、インプリントされたテクスチャーおよび/または反転されたテクスチャーを含むとも言える。したがって、本発明はまた、少なくとも1つの基材を備え、基材の少なくとも一部がテクスチャーを備え、基材のテクスチャーの少なくとも一部上に設けられた少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層の少なくとも一部がインプリントされた反転テクスチャーを含む複合製品に関する。コーティング層は、例えば、ロール・ツー・プレート装置などの機械的インプリント装置によってインプリントすることができる。
【0009】
インプリントされたコーティング層を使用すると、例えば、スピン・コーティングによってコーティング層を適用する場合に比べていくつかの利点を有する。スピン・コーティングは、例えば(丸い)ウェハのコーティングする場合など、表面をコーティングする一般的な方法だが、スピン・コーティングは大きな表面に使用するには複雑である。長方形の表面もまたスピン・コートするには複雑である。第三に、スピン・コート法では、樹脂が充填されていない深いテクスチャーや急峻なテクスチャーを持つテクスチャー表面のコンフォーマルな保護ができない可能性が高い。スピン・コーティングでは、通常、より多くのコーティング材料が必要となるが、インプリントでは、コーティング材料の塗布が最小限で済み、こぼれることなく正確に使用することができる。最後に、スピン・コーティングは硬い基材に制約される。
【0010】
本発明による複合製品および方法は、製品の長期保管、出荷および/または輸送を可能にし、複数の製品の積み重ねが容易になるという利点がある。基材、特にそのテクスチャーは清潔に保たれ、その上に埃が蓄積することが防止される。さらに、有害な放射線や化学物質は、テクスチャーにダメージを与えたり、テクスチャーを変化させたりする可能性があるため、テクスチャーから遠ざけられる。さらに、複合製品は、製品の剥離などによる損傷を引き起こす可能性のある高湿度などの望ましくない気候条件の影響から保護される。
【0011】
複合製品を指す場合、コンポジット、アセンブリ、複合デバイスも意味する。基材のテクスチャーは、機能性テクスチャー、表面テクスチャー、または表面基材とも呼ばれる。テクスチャーは基材に直接提供できる。基材は、テクスチャーがその一部を形成する少なくとも1つの機能性テクスチャー層を備えることも考えられる。少なくとも1つのテクスチャーを備える少なくとも1つの基材が機能性テクスチャー層を形成することも、または、テクスチャーを備える基材が機能性テクスチャー層を含む基材と呼ばれることも考えられる。
【0012】
基材の形状は通常、目的の用途に応じて異なる。例えば、基材は実質的に長方形、正方形、円形、および/またはそれらの組み合わせであることが考えられる。基材は自由な形状を持つこともできる。これはまた、基材のテクスチャー、またはテクスチャーエリアにも当てはまる。基材は、好ましくは実質的に平面である。本発明による基材は比較的大きくてもよい。例えば、少なくとも1つの基材の表面積が少なくとも0.5m2、少なくとも1m2、または少なくとも2m2であることが考えられる。例えば、表面は、長さが10cm~10mの範囲であり、幅が10cm~5mの範囲である実質的に長方形であることが可能である。
【0013】
コーティング層は、基材、特に基材のテクスチャー上に塗布されたときに、少なくとも部分的に流動性であることが好ましい。例えば、コーティング層の粘度は、特に室温では5cPから5000cPの範囲、好ましくは 5cPから500cPの範囲であることが考えられる。コーティング層は、例えば、塗布時に水の粘度と同等の粘度を有することもできる。コーティング層は、好ましくは、液体または粘性樹脂の形態で、基材のテクスチャーの少なくとも一部に塗布される。コーティングを形成する樹脂、またはコーティング樹脂の一般的な適用技術は、ラミネートおよび/またはインプリントと組み合わせたプリンティング方法である。プリンティング方法としては、例えば、インクジェット・プリンティング、ディスペンス・プリンティング、スクリーン・プリンティング、ジェット・ディスペンシング、または当業者に知られている他のプリンティング技術を使用することができる。当業者に知られている更なるコーティング・プロセス、例えばスピン・コーティング、スプレー・コーティング、および/またはスリット・コーティングなどを使用することもできるが、これらに限定されない。インプリント工程では、ロール・ツー・ロール、プレート・ツー・プレート、またはロール・ツー・プレート方式を適用できる。コーティング樹脂の塗布には、テクスチャー付き、または、テクスチャーなしのモールドまたはスタンプを使用できる。前記実施例は、本発明による方法に適用することができる。
【0014】
本発明による少なくとも1つのコーティング層は、保護層または保護コーティング層とも呼ばれる。少なくとも1つのコーティング層は、除去可能なコーティング層であることが好ましい。除去時に基材の質感に本質的に損傷や変化を引き起こさないコーティング層は、本発明の文脈では除去可能と分類することができる。また、コーティング層は、全体として除去されるように構成されることが好ましい。したがって、コーティング層は、コーティング層の一部の基材のテクスチャー上に残ることなく除去できるほど十分に強力であることが好ましい。本発明によるコーティング層を基材から除去するために、さらなる(化学的な)除去補助剤は必要ない。
【0015】
コーティング層は保護機能を提供するだけでなく、基材から除去した後、さらなる目的にも使用できると考えられる。特にコーティング層は基材のテクスチャーのコピーであるため、検査中に一次テクスチャーを損傷するリスクなしに、コーティング層を使用して基材のテクスチャーの品質を間接的に検査することもできる。したがって、コーティング層は、損傷および/または永久変形させることなく、基材から、特に基材のテクスチャーから除去できるように構成されていると有益である。
【0016】
少なくとも1つのコーティング層を基材のテクスチャーから除去するために必要な剥離力は、基材の密着力、例えば基材のテクスチャーの密着力よりも低いことが好ましい。また、少なくとも1つのコーティング層を基材のテクスチャーから除去するために必要な剥離力は、コーティング層の密着力よりも低く、基材が取り付けられている任意の追加層の密着力および/または接着力よりも低く、および/またはコーティング層が取り付けられている任意の追加層の密着力および/または接着力よりも低いことも考えられる。コーティング層を基材のテクスチャーから分離するために必要な剥離力を最小限に抑えると同時に、前記層間の良好な接着を確保することが望ましい。剥離力という場合は剥離強度も意味する。剥離力は、例えば、硬質物品のISO 8510-2試験規格および軟質物品のISO 11339試験規格、またはそれと同等の代替規格に従った180度剥離試験によって決定することができる。
【0017】
例えば、少なくとも1つのコーティング層を基材のテクスチャーから除去するために必要な剥離力は、100N/m未満、好ましくは50N/m未満、より好ましくは20N/m未満、さらに好ましくは10または3N/m未満であることが考えられる。剥離力は1~10N/mの範囲、または2.5~7.5N/mの範囲にあることも考えられる。
【0018】
基材のテクスチャーの少なくとも一部は、比較的低い表面自由エネルギーを有することが好ましい。前記表面自由エネルギーは、コーティング層の剥離力が低いことを示すことができる。可能な実施形態では、基材のテクスチャーの表面自由エネルギーは70mN/m未満、特に40mN/m未満である。コーティング層の表面自由エネルギーが 70mN/m未満、特に40mN/m未満であることも考えられる。また、基材のテクスチャーの表面自由エネルギーが30mN/m未満、特に25mN/m未満であること、および/またはコーティング層の表面自由エネルギーが30mN/m未満、特に25mN/m未満であることも考えられる。このような値は、剥離力の低減にプラスに寄与し、基材のテクスチャーおよび/またはコーティング層のテクスチャーに損傷を与えたり、残留物を残したりすることなく、または少なくとも最小限に抑えて、基材のテクスチャーからコーティング層を容易に除去することを可能にする。表面自由エネルギーの所望の値は、例えば、基材の表面処理、特に基材のテクスチャーの表面処理によって得ることができる。コーティング層の組成を制御することで表面自由エネルギーを制御することも考えられる。低い表面自由エネルギーは、通常、表面に位置する化学基によって得られる。この目的のための典型的な化学基は、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、アルキルシロキサン基などのフッ素含有基である。したがって、基材のテクスチャーの少なくとも一部は、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、および/またはアルキルシロキサン基を含むと考えられる。基材のテクスチャーの少なくとも一部は、例えば、フルオロアルキル基、長アルキル基、および/またはアルキルシロキサン基を含む組成物で処理することができる。コーティング層がフルオロアルキル基、長鎖アルキル基および/またはアルキルシロキサン基を含むことも考えられる。基材および/またはコーティング層が、表面自由エネルギー材料を減少させるように構成された少なくとも1つの添加剤を含むことも考えられる。このような添加剤の非限定的な例としては、パーフルオロポリエーテル(PFPE)モノマー、パーフルオロモノマー、シリコーンモノマー、および/または脂肪族モノマーが挙げられる。
【0019】
コーティング層と基材のテクスチャーとの分離を強化するためのさらなるアプローチは、基材とコーティング層との間の相互作用を低減することである。これは、例えば、コーティング層と基材との間に形成される強力な共有結合、イオン結合、または金属界面結合および/または絡み合いの密度を低くすることによって実現できる。このようにして、2つのインターフェース間の相互作用の量と強度が制限される。可能な実施形態では、基材のテクスチャーとコーティング層との間の好ましい相互作用は、基材のテクスチャーが、限定されないが、SiOx、SiNx、金属および/または金属酸化物などの少なくとも1つの無機表面基を含むことによって得られる。前記材料は、通常、有機(例えば、アクリレート)表面基と強力な結合を形成しない。この原理に従うと、テクスチャー加工されたガラスまたはシリコン基板上にUV硬化アクリル樹脂を含むコーティング層を備えた組成物製品の実施形態は、層の分離に成功することになる。
【0020】
また、表面処理によってテクスチャーの機能表面基を不活性化および/または不活性化することにより、基材のテクスチャーとコーティング層との間の相互作用が比較的低くなることも考えられる。このような表面処理は、例えば、テクスチャーの上にパッシベーション層および/または別の不活性層を追加する堆積ステップから構成され得る。もう1つの選択肢は、コーティング材料に強力に結合する表面基の一定量を不活性化するプラズマ不活性化または不活性化ステップである。したがって、本発明による基材はプラズマ処理されたテクスチャーを含むと考えられる。基材および/またはコーティング層にエキシマ仕上げ工程を施すことも考えられる。
【0021】
本発明による複合材製品の可能な実施形態では、基材のヤング率は4GPa未満、好ましくは3GPa未満、より好ましくは2GPa未満である。コーティング層のヤング率は4GPa未満、好ましくは3GPa未満、さらに好ましくは2GPa未満であると考えられる。さらに別の実施形態では、本発明による複合材製品のヤング率は4GPa未満、好ましくは3GPa未満、より好ましくは2GPa未満であると考えられる。あるいは、基材は、シリコン、ニッケルシム、および/またはヤング率が約70GPaのガラスから構成されてもよい。オプションで(取り外し可能な)コーティング層に取り付けられるキャリア層は、ポリエステル(ヤング率4GPa)などの柔軟なフィルムに取り付けられる場合がある。ヤング率は、例えばASTM E111に従って測定される。これらの実施形態は、特に基材および/またはコーティング層のテクスチャーを損傷することなく、コーティング層を容易に除去することを可能にする。
【0022】
好ましい実施形態では、基材の少なくとも一部は、インプリントされたテクスチャーを含む。テクスチャーの少なくとも一部は、ナノインプリンティングなどのインプリンティングプロセスによって取得できる。スタンピングプロセスによってテクスチャーが得られることも考えられる。例えば樹脂が使用されている可能性もある。樹脂の典型的な応用技術は、印刷および/またはインプリントである。インプリント方法としては、ロール・ツー・ロール、プレート・ツー・プレート、またはロール・ツー・プレート技術を使用できる。樹脂を塗布するためには、好ましくはテクスチャー加工された型またはスタンプが適用される。また、テクスチャーが彫刻、ミリング、エッチング、レーザーアブレーション、印刷、射出成形、エンボス加工、またはその他の方法で機械加工されることも考えられる。テクスチャーを含む基材がインプリンティングプロセスに適用されるよう構成されることも考えられる。したがって、本発明による基材は、例えばスタンプであってもよい。
【0023】
特に基材のテクスチャーは、三次元テクスチャーである。例えば、基材のテクスチャーの少なくとも一部が繰り返しパターンを含むことも可能である。テクスチャーの少なくとも一部がランダム化されたテクスチャーである可能性も考えられる。テクスチャーは、回折格子、傾斜格子、ブレーズド格子、マイクロレンズアレイ、レンチキュラー、ピラー、バー、ピラミッド、プリズムライン、および/またはそれらの組み合わせで構成される。基材は、少なくとも1つの活性領域を含んでもよく、特に、前記活性領域がテクスチャーを構成する。
【0024】
テクスチャーの深さは、例えばナノメートルからマイクロメートルのスケールになる。例えば、テクスチャーの少なくとも一部が 0.1nmから500μmの範囲の深さを有することが考えられる。基材のテクスチャーの少なくとも一部が、最大 1 mm の山から谷までの高さを含むことも考えられる。好ましくは、基材のテクスチャーの少なくとも一部は、山から谷までの高さが最大10μmであり、より好ましくは最大5μmであり、さらに好ましくは最大2μmである。しかしながら、基材のテクスチャーの少なくとも一部が、最大100nm、より好ましくは最大50nm、さらに好ましくは最大 20または10nmの山から谷までの高さを含むことも考えられる。
【0025】
基材の仕様は、使用目的に応じて異なる。例えば、少なくとも1つの基材がガラス、金属、ポリカーボネート、および/またはポリエステルを含むことが考えられる。より具体的には、少なくとも1つの基材が、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および/またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むことが可能である。好ましくは、基材の少なくとも一部は実質的にフレキシブルである。あるいは、基材は実質的に剛性であってもよい。基材は、例えば、ガラス、シリカ、石英、セラミック、および/または金属などの耐久性のある材料で作られた剛性プレートまたはブロックであるのが好ましいが、これらに限定されない。使用可能な金属の非限定的な例としては、鋼、銅、および/またはアルミニウムなどが挙げられる。基材は、少なくとも1つの熱硬化性樹脂および/またはエボナイトなど、ただしこれらに限定されない、少なくとも1つのポリマー材料を含むことも考えられる。基材の少なくとも一部がシートとして形成されることも考えられる。少なくとも1つの基材は、例えば、金属シート、プラスチックシート、ゴムシート、および/またはガラスシートを含み得る。基材がコーティング層と実質的に同じ材料から作られることも考えられる。したがって、コーティング層と基材とは実質的に同じ材料から作られていると考えられる。コーティング層について述べた材料の例は、基材にも適用できる。
【0026】
コーティング層の少なくとも一部は、硬化前には実質的に透明および/または半透明であることが好ましい。例えば、コーティング層の少なくとも一部が光、特に紫外線を透過することが可能である。コーティング層の少なくとも一部は、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%の透明率を有する。コーティング層の少なくとも一部は、少なくとも60%のUV-A透過率、またはUV-A透明率を有することが好ましい。例えば、コーティング層の少なくとも一部が、60%から100%の範囲、特に70%から90%の範囲のUV-A透過率を有することが考えられる。好ましい実施形態では、コーティング層の少なくとも一部は、150~400nmの範囲、より好ましくは240~380nmの範囲、さらに好ましくは280~315nmの範囲の波長カットオフを有する。コーティング層は、UV硬化性コーティング層または硬化コーティング層であってもよい。例えば、コーティング層の少なくとも一部は、200nm~400nmの範囲、好ましくは365~405nmの範囲の波長で照射すると硬化可能であることが可能である。少なくとも1つのコーティング層が熱硬化性コーティング層であることも考えられる。
【0027】
一実施形態では、基材の少なくとも一部は、実質的に透明および/または半透明であることが好ましい。例えば、基材の少なくとも一部が光、特に紫外線を透過することが可能である。基材の少なくとも一部は、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%の透過率を有する。基材の少なくとも一部は、少なくとも60%のUV-A透過率、またはUV-A透明率を有することが好ましい。基材は、UV硬化性層または硬化層を含むことができる。例えば、300~800nmの範囲、好ましくは365~405nmの範囲の波長で照射すると、基材の少なくとも一部が硬化可能であることが可能である。基材の少なくとも一部が熱硬化性であることも考えられる。
【0028】
好ましくは、コーティング層の下面の少なくとも一部は、基材のテクスチャーとは逆のテクスチャーを有し、および/またはコーティング層の上面の少なくとも一部は、実質的にフラットである。インプリント法によってコーティング層を塗布することにより、均一なコーティング層を提供することができる。本発明によるコーティング層は、実質的に均一な厚さを有することができる。本発明に係るコーティング層は、実質的に均一なコーティング層であることが好ましい。わずかな偏差でも基材のテクスチャーに影響を与える可能性があるため、これは有益である。
【0029】
少なくとも1つのコーティング層は、特に空気などの他の媒体の干渉を受けることなく、基材のテクスチャーと直接接触することが好ましい。前述のように、基材上または基材とコーティング層の間に存在する媒体は、基材に悪影響を及ぼし、その結果、基材の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。基材のテクスチャーにフォームフィットするコーティング層の提供が望まれている。好ましくは、コーティング層の厚さは実質的に均一である。これは実際には、厚さの偏差が最大20%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大5%であることを意味する。
【0030】
少なくとも1つのコーティング層は、好ましくは少なくとも1つのポリマーを含む。例えば、少なくとも1つのコーティング層は、特に硬化前に、少なくとも1つのモノマーおよび/またはオリゴマーを含み、好ましくは、それらの少なくとも1つは、エポキシド、チオール、ポリビニル樹脂、アクリレート、メタクリレート、ポリエーテル、ビニルエーテル、ウレタンアクリレート、ポリエステル、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化ポリエーテル、シロキサン、シロキサンアクリレートおよび/またはそれらの混合物の群から選択されると考えられる。コーティング層が、特に硬化前に、以下からなることも考えられる:少なくとも1つの重合可能なC=C二重結合を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマー成分と、少なくとも1つの多官能性モノマー成分と、を含むプレポリマー組成物であって、多官能モノマー成分は、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテル、プロペニルエーテル、アルケン、ジエン、不飽和エステル、アリルトリアジン、アリルイソシアネート、およびN-ビニルアミドからなる群から選択される少なくとも2つの官能基を含み、少なくとも1つの重合可能な二重結合を有するモノマーまたはオリゴマー成分は、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテル、プロペニルエーテル、アルケン、ジエン、不飽和エステル、アリルトリアジン、アリルイソシアネート、およびN-ビニルアミドからなる群から選択され、アルキル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキルビニルエーテル、ポリシロキサンビニルエーテル、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、および(パー)フルオロポリエーテルビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの表面活性付着防止添加剤を含む。コーティング層、または樹脂は、少なくとも1つの過フッ素化成分をさらに含んでもよい。
【0031】
少なくとも1つのコーティング層は、少なくとも1つの添加剤を含んでいてもよい。例えば、少なくとも1つの添加剤が、コーティング層の硬化を促進するように特に構成された開始剤であることが考えられる。少なくとも1つのコーティング層は、例えば、少なくとも1つのラジカル開始剤、カチオン開始剤、アニオン開始剤および/または光開始剤を含むことができる。適用可能なラジカル開始剤の非限定的な例としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ジベンゾイルペルオキシドまたはペルオキソ二硫酸塩などの過酸化物、ジフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトンまたは2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンなどの芳香族ケトン、またはメチルベンゾイルホルメートなどのノルリッシュ型II開始剤が挙げられる。使用可能なカチオンおよびアニオン開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステル、アルキルスルホニウム塩、またはトリフェニルスルホニウム(カチオン性)、テトラフルオロボレート、または2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート(アニオン性)などの光塩基発生剤がある。少なくとも1つの開始剤を使用すると、コーティング層の硬化プロセスの制御性がさらに向上する。開始剤に応じて、固化は熱または放射線(例えば紫外線)によって開始される。実施形態では、塗布された開始剤とは別にコーティング層は完全に硬化可能である。可能な実施形態では、少なくとも1つのコーティング層、特にコーティング層を形成するコーティング組成物は、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、または少なくとも99重量%の硬化性材料を含む。
【0032】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのコーティング層は、少なくとも1つの樹脂、例えばアクリル樹脂を含み、好ましくは少なくとも1つのシロキサン基、エポキシ基および/またはフッ素有機基を含む。例えば、コーティング用の樹脂は、少なくとも1つの重合可能なエポキシド基および/または少なくとも1つの多官能性モノマー成分を含むモノマーまたはオリゴマーを含み、多官能性モノマー成分は分子あたり少なくとも2つの官能性エポキシド基を含むと考えられる。これらのエポキシ基含有配合物のいずれかと前の段落の成分との任意の混合物は、保護テクスチャー層の形成に適した配合物を構成する可能性がある。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つのコーティング層は、最大5重量%の溶媒を含む。少なくとも1つのコーティング層が実質的に溶媒を含まないことも考えられる。可能な実施形態では、コーティング層は、最大1重量%の溶媒、最大2重量%の溶媒、最大3重量%の溶媒、最大4重量%の溶媒、または最大5重量%の溶媒を含む。一実施形態では、コーティングは、用途に応じてその場で生成される感圧接着剤である。溶媒は、適度な量の樹脂を溶解することができ、同時に25℃で30hPa以上の蒸気圧を持つ液体として分類できる。
【0034】
複合製品、特にコーティング層は、少なくとも1つのフィルム層をさらに含んでもよい。このようなフィルム層は、好ましくはコーティング層の上面に取り付けられる。フィルム層が適用される場合、フィルム層は、好ましくは、(インプリントされた)テクスチャーを有する面と反対側のコーティング層の面に取り付けられる。フィルム層は、例えば、ポリマーフィルム層、プラスチックフィルム層、および/またはゴムフィルム層であり得る。フィルム層はフォイル層であってもよい。フィルム層は、固化前または固化後にコーティング層に適用することができる。フィルム層の塗布方法はラミネート加工でもよい。フィルム層を使用すると、基材からのコーティング層の除去が容易になる場合がある。可能な実施形態では、フィルム層は、接着剤、好ましくは感圧接着剤によってコーティング層に接着される。
【0035】
有益な実施形態では、少なくとも 1つのコーティング層は複数のコーティング・サブ層を含む。例えば、少なくとも1つのコーティング層が少なくとも3つのコーティング・サブ層、特に少なくとも5つのコーティング・サブ層、さらに特に少なくとも7つのコーティング・サブ層を含むことが考えられる。少なくとも2つのコーティング・サブ層がインプリントされたコーティング・サブ層であることが考えられる。各コーティング・サブ層がインプリントされたコーティング・サブ層であると考えられる。各コーティング・サブ層の組成は類似している場合がある。少なくとも2つのコーティング・サブ層の組成が異なる可能性もある。
【0036】
本発明はまた、本発明による複合製品に使用するための基材に関する。本発明はまた、本発明による複合製品に使用するためのコーティング層に関する。
【0037】
本発明はまた、特に本発明に従って複合製品を製造する方法に関するものであり、
- 基材の少なくとも一部がテクスチャーを備える、少なくとも1つの基材を提供する工程と、
- 基材のテクスチャーの少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物を提供する工程と、
- 基材のテクスチャーに反転したインプリントコーティング層を形成するように、コーティング組成物を基材のテクスチャーの少なくとも一部にインプリントする工程と、
を含む。
【0038】
この方法は、本発明による複合製品の製造を提供する。基材およびコーティング層について説明した実施形態のいずれも適用できる。この方法は、コーティング層の固化を可能にする工程をさらに含んでもよい。固化工程は、例えば、熱および/または紫外線硬化などの硬化工程であるが、これらに限定されない。基材の少なくとも一部、好ましくはテクスチャーの少なくとも一部は、コーティング層がその上に塗布される前に、プラズマ処理などの表面処理を受けることができるが、これに限定されない。
【0039】
発明者らは、以下に説明する複合製品の実験を行った。成功した剥離と失敗した剥離の典型的な剥離力の例を表1に示す。剥離試験は、180°剥離を使用してISO 8510-2試験規格に従って実施した。これらの試験では、基材とコーティング層のコーティング樹脂として2種類の材料を使用した:
・ 材料A:UV硬化性アクリレート樹脂
・ 材料B:パーフルオロ成分を含むUV硬化性アクリレート樹脂
試験した基材は、高さ30μmのピラミッド配列で形成されたテクスチャーを持ち、ベースは50×50μmである。基材とコーティング層は、厚さ250μmのPET基材上に製造されている。剥離試験を行うために、基材は剛性キャリアに取り付けられた。コーティング層は、特に溶媒を含まないコーティング樹脂を基材のテクスチャーに印刷し、続いてプラスチック・フォイルでテクスチャーにコーティング樹脂をラミネートし、その後コーティング樹脂をUV硬化させることによって塗布された。
【0040】
結果は、テクスチャー基材とコーティングの両方が材料B(パーフルオロ化合物を含む) で製造されている場合、または材料Aに表面処理が施されている場合、コーティング層の除去が成功することを示している。この場合、コーティングを最初の3次元層から分離するために必要な剥離力は低く、約25N/m未満である。自己組織化パッシベーション層を適用すると、大気圧プラズマ処理とは対照的に、パッシベーション層は活性表面基を中和するだけでなく、表面自由エネルギーを40mN/m未満の値に低下させるため、最も簡単に剥離できる(つまり、剥離力が最も低くなる)。自己組織化パッシベーション層が基材に適用されていない場合、材料AとBの組み合わせ(例えば、テクスチャー加工された製品が材料Aでコーティングが材料Bで作られている場合、またはその逆の場合)では、剥離力は約25-80N/mの中程度の範囲になる。この中程度の範囲では、2つの層を分離するために必要な剥離力は、テクスチャー層の1つとそれに対応する基材材料との間の接着が最も弱いリンクになるのに十分に高くなる。両方の材料が材料Aで構成されている場合、コーティングを最初の3次元層から分離するために必要な剥離力は高く、つまり80N/mを超え、その結果、層スタック内の密着力が失われる。
【0041】
表1:2つの材料 (AとB) で作られたテクスチャー加工された製品とコーティングの剥離試験結果。2つの試験では、コーティングとの分離を成功させるために、製品に表面処理が施された。
【0042】
【0043】
本発明は、以下の図に示される非限定的な例示的実施形態によってさらに説明される。図中において、
-
図1aおよび
図1bは、従来技術による複合製品の詳細図を示す。
-
図2a~
図2dは、本発明による複合製品の可能な実施形態を示す。
-
図3aおよび
図3bは、本発明による複合製品のさらに別の可能な実施形態を示す。
-
図4a~
図4cは、本発明による基材およびコーティング層の3D画像を示す。
これらの図では、同様の参照番号は、同様または同等の要素または機能に対応する。
【0044】
図1aおよび
図1bは、従来技術による複合製品10の欠点の詳細図を示している。これらの図は、複合製品10の側面図の詳細図を示している。複合製品10は、基材12と、コーティングまたはフォイルなどのカバー層13とを備えている。カバー層13は、基材12の上に塗布されている。この図は、気泡11が基材12とカバー層13の間に閉じ込められていることを示している。実際にこれが発生すると、気泡11は基材12の表面構造Sに影響を及ぼす。テクスチャーTの表面構造Sは、空気の影響により粗くなり、または変化する。これは、基材12の全体的な性能に影響するため、望ましくない。
【0045】
図2a-
図2dは、本発明による複合製品101の可能な実施形態の側面図の概略図を示す。各図は、基材102a、102b、102c、102dおよびコーティング層103a、103b、103c、103dを含む複合製品101a、101b、101c、101dを示す。各基材102a、102b、102c、102dはテクスチャーTを含む。示されている非限定的な例では、テクスチャーTは繰り返しパターンを有する。テクスチャーのデザインは、意図された用途に応じて異なる場合がある。テクスチャーのスケールは、通常、ナノメートルスケールであり、最大でマイクロメートルスケールである。これにより、コーティング層103a、103b、103c、103dは、基材102a、102b、102c、102dのテクスチャーTの少なくとも一部にインプリントされている。インプリントされたコーティング層103a、103b、103c、103dは、基材102a、102b、102c、102dのテクスチャーTと反転していることがわかる。各複合製品101a、101b、101c、101dのコーティング層103a、103b、103c、103dは取り外し可能であり、これは
図3aおよび
図3bに概略的に示されている。
図2aおよび
図2dは、テクスチャーTが基材102a、102dにインプリントされている実施形態を示している。
図2bおよび
図2cの実施形態は、基材102c、102cが機能性テクスチャー層を含む実施形態を示している。テクスチャーTは、前記機能性テクスチャー層にインプリントされている。
【0046】
図3aおよび3bは、本発明による複合製品201のさらに別の実施形態を示す。複合製品201は、基材202と除去可能なコーティング層203とを備え、基材203はテクスチャーTを含む。コーティング層203はさらに、追加の層204、特にコーティング層203に取り付けられたフォイル層204を含む。
図3aは、コーティング層203が基材202のテクスチャーT上に設けられている初期状態の複合製品201を示す。コーティング層203は、基材202のテクスチャーTに対して逆のテクスチャーを有するインプリントされたコーティング層203である。
図3bは、コーティング層203が基材202から除去されていることを示す。コーティング層203は、基本的に基材202から剥がされる。コーティング層203と基材202の有益な特性により、両方の層のテクスチャーは除去によって影響を受けない。したがって、コーティング層203を基材202のテクスチャーTから除去するために必要な剥離力は、通常、基材202のテクスチャーTの密着力よりも低くなる。
【0047】
図4a-
図4cは、本発明による基材302(
図4aおよび
図4b)およびコーティング層303(
図4c)の3D画像を示す。
図4aおよび
図4bは、コーティング層の塗布および除去前(
図4a)および塗布および除去後(
図4b)の基材302の同じテクスチャーTを示している。
図4cは、除去後のコーティング層303を示している。基材302のテクスチャーTに損傷や残留物がなく、コーティング層303のテクスチャーが基材302のテクスチャーの基本的に正確なネガ画像であることが分かる。これらの図は、本出願で説明されている実験テストに関連している。
【0048】
本発明は、ここで図示および説明されている例示的な実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の枠組み内で無数の変形が可能であり、これは当業者にとって明らかである。この場合、添付の請求項に記載されている発明のアイデアから逸脱することなく、上記の変形実施形態の異なる発明概念および/または技術的手段を完全にまたは部分的に組み合わせることが考えられる。
【0049】
この特許文書で使用されている動詞「comprise」およびその活用形は、「含む」だけでなく、「含む」、「実質的に含む」、「によって形成される」という表現およびそれらの活用形も含むと理解される。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合製品であって、
基材の少なくとも一部がテクスチャーを備え、
テクスチャーの少なくとも一部が繰り返しパターンを含み、テクスチャーの深さがナノメートルからマイクロメートルのスケールである、少なくとも1つの基材と、
少なくとも1つのコーティング層と、を備え、
インプリントされたコーティング層の少なくとも一部が基材のテクスチャーと反転されるように、少なくとも1つのコーティング層の少なくとも一部が、基材のテクスチャーの少なくとも一部にインプリントされ、コーティング層の除去に必要な剥離力は
10N/m未満である、複合製品。
【請求項2】
少なくとも1つのコーティング層を基材のテクスチャーから除去するために必要な剥離力は、基材の密着力よりも低い、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項3】
コーティング層の除去に必要な剥離力は
7.5N/m未満であり
、好ましくは3N/m未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項4】
基材のテクスチャーの表面自由エネルギーは70mN/m未満、好ましくは40mN/m未満、より好ましくは25mN/m未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項5】
コーティング層の表面自由エネルギーは70mN/m未満、好ましくは40mN/m未満、より好ましくは25mN/m未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項6】
少なくとも1つのコーティング層は、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基および/またはアルキルシロキサン基を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項7】
少なくとも1つのコーティング層のヤング率は4GPa未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項8】
少なくとも1つの基材のヤング率は4GPa未満である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項9】
基材の少なくとも一部が、インプリントされたテクスチャーを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項10】
基材のテクスチャーの少なくとも一部は、最大10μm、好ましくは最大5μm、より好ましくは最大2μmの山から谷までの高さを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項11】
少なくとも1つの基材がガラス、金属、ポリカーボネートおよび/またはポリエステルを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項12】
コーティング層の底面の少なくとも一部が基材のテクスチャーと逆のテクスチャーを有し、コーティング層の上面の少なくとも一部が実質的にフラットである、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項13】
少なくとも1つのコーティング層が基材のテクスチャーと直接接触している、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項14】
コーティング層の厚さが実質的に均一である、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項15】
少なくとも1つのコーティング層が、特に硬化前に、少なくとも1つのモノマー、オリゴマーまたはポリマーモノマーおよび/またはオリゴマーを含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項16】
少なくとも1つのコーティング層が少なくとも1つの添加剤、好ましくは少なくとも1つの開始剤を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項17】
少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1つのシロキサン基、エポキシ基および/またはフッ素有機基を含む少なくとも1つのアクリル樹脂を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項18】
少なくとも1つのコーティング層が最大5重量%の溶媒を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項19】
コーティング層の上面に付着された少なくとも1つのフィルム層を含み、フィルム層は、ポリマーフィルム層、プラスチックフィルム層、ゴムフィルム層および/または箔層の群から選択される、請求項
12に記載の複合製品。
【請求項20】
少なくとも1つのコーティング層が複数のコーティング・サブ層を含む、先行の請求項のいずれかに記載の複合製品。
【請求項21】
複合製品の製造方法、特に先行の請求項のいずれかに記載の方法であって、
基材の少なくとも一部がテクスチャーを備え
、テクスチャーの少なくとも一部は繰り返しパターンを備え、テクスチャーの深さはナノメートルからマイクロメートルのスケールである、少なくとも1つの基材を提供する工程と、
基材のテクスチャーの少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物を提供する工程と、
基材のテクスチャーに反転したインプリントコーティング層を形成するように、コーティング組成物を基材のテクスチャーの少なくとも一部にインプリントする工程と、を含
み、
コーティング層は除去可能なコーティング層であり、コーティング層の除去に必要な剥離力は
10N/m未満である、方法。
【請求項22】
コーティング層の固化を可能にする工程を含む、請求項
21に記載の方法。
【国際調査報告】