(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】眼内レンズ送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542264
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 US2023011080
(87)【国際公開番号】W WO2023141179
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524265703
【氏名又は名称】ビーバー―ビジテック インターナショナル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル,ネイサン スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ワン,パウラ ヨウェン
(72)【発明者】
【氏名】チュー,アレクサンダー ユピン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB04
4C097CC01
4C097MM09
4C097SA10
(57)【要約】
半装填型眼内レンズインジェクタデバイス及び関連する方法について記載している。いくつかの実施形態では、眼内レンズは、インジェクタデバイスとは別個のカセット内に非変形形態で保管される。カセットがインジェクタデバイスの空洞内に挿入されると、空洞内に延在する突出部が眼内レンズを所定の形態に変形させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞を含む本体と、
前記空洞の内部に延在する突出部であって、前記空洞が、内部に眼内レンズが配置されているカセットを受けるように構成され、前記カセットが前記空洞内に挿入されると、前記突出部が、前記眼内レンズを所定の形態に変形させる、突出部と、
を備える眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項2】
前記空洞内に配置された前記カセットをさらに備える、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項3】
前記所定の形態が湾曲形状である、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項4】
前記本体に接続され、前記空洞と作動的に関連付けられた、ノズルをさらに備える、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項5】
前記空洞及び前記ノズルを通して前記眼内レンズを移動させるように構成されたプランジャをさらに備える、請求項4に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項6】
前記ノズルが、前記プランジャが前記ノズルを通して前記眼内レンズを移動させる際に、前記眼内レンズを所定の第2形態に変形させるように構成されている、請求項5に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項7】
前記カセットが、前記カセットの一端に、前記プランジャが前記眼内レンズを前記ノズル内に押し込む際に、前記眼内レンズを前記空洞から前記ノズルへの開口部内に持ち上げるように構成された、角度のついた傾斜面を含む、請求項5に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項8】
前記本体が、前記プランジャが遠位方向に移動するのを選択的に防止するように構成された第1戻り止めを含む、請求項5に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項9】
前記本体が、前記プランジャが近位方向に移動するのを選択的に防止するように構成された第2戻り止めを含む、請求項8に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項10】
前記突出部が、前記空洞から離れるように向けられた方向において選択的に移動して、前記空洞の前記内部内に延在する前記突出部の部分を低減させるように構成されている、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項11】
前記突出部が、前記本体から選択的に取外し可能である、請求項10に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項12】
前記本体に移動可能に連結されたカバーをさらに備え、前記カバーが、開放形態と閉鎖形態との間で選択的に移動するように構成され、前記カバーが前記閉鎖形態にあるときに前記カセットが前記空洞内に配置されるように、前記カバーが前記カセットを前記カバーに選択的に連結するように構成されている、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項13】
前記カバーが、回転運動を介して前記開放形態と前記閉鎖形態との間で移動する、請求項12に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項14】
前記カバーが前記開放形態にあるとき、前記本体の外面から前記カバーの対向面に向かって外向きに延在する1つ又は複数の突起をさらに備え、前記1つ又は複数の突起が、前記開放形態において前記カバーを支持するように構成されている、請求項12に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項15】
前記カバーを前記開放形態に維持するように構成された1つ又は複数の戻り止めをさらに備える、請求項12に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項16】
前記突出部が、前記眼内レンズを変形させるために前記カセットの開口部を通って延在するように構成されている、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項17】
前記突出部が、前記眼内レンズの変形中に前記眼内レンズの光学部分との接触を回避するように構成された切取部を含む、請求項1に記載の眼内レンズインジェクタデバイス。
【請求項18】
眼内レンズインジェクタデバイスの空洞内にカセットを挿入することであって、前記カセットの内部に眼内レンズが配置されている、挿入することと、
前記カセットが前記空洞内に挿入される際、前記空洞の内部に延在する突出部により、前記眼内レンズを所定の形態に変形させることと、
を含む方法。
【請求項19】
前記眼内レンズを所定の形態に変形させることが、前記眼内レンズを湾曲形状に変形させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記眼内レンズをノズルに押し通すことをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記眼内レンズを、前記ノズル内で停止させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記眼内レンズが前記ノズルに押し通される際に、前記眼内レンズを所定の第2形態に変形させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記突出部を前記空洞から少なくとも部分的に取り除くことをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記カセットを前記空洞に挿入することは、前記カセットが連結されているカバーを開放形態から閉鎖形態に移動させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記カバーを移動させることが、前記カバーを前記閉鎖形態まで回転させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カバーの対向面と接触する、前記本体の外面から外向きに延在する1つ又は複数の突起により、前記カバーを前記開放形態で支持することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
1つ又は複数の戻り止めにより前記カバーを前記開放形態に維持することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
眼内レンズを保持するカセットであって、
眼内レンズインジェクタの空洞内に挿入されるように構成された本体と、
前記本体の第1表面から前記第1表面とは反対側に位置する前記本体の第2表面まで、前記本体の少なくとも一部を通って延在する開口部であって、内部に前記眼内レンズを受けるように構成されている開口部と、
前記眼内レンズが前記カセットの前記開口部内に配置されているときに、前記開口部内で前記眼内レンズを支持するように構成された1つ又は複数の棚状部と、
を備えるカセット。
【請求項29】
前記本体が、前記眼内レンズインジェクタデバイスの表面に連結されるように構成されている、請求項28に記載のカセット。
【請求項30】
前記本体が、前記眼内レンズインジェクタデバイスの可動カバーに連結されるように構成されている、請求項29に記載のカセット。
【請求項31】
前記本体が、前記カバー上のレールに取り付けられるように構成された1つ又は複数のコネクタを含む、請求項30に記載のカセット。
【請求項32】
前記カセットが前記カバーに完全に係合したときに、前記カセットが前記レール上で摺動するのを防止するように構成された機械的止め具をさらに備える、請求項31に記載のカセット。
【請求項33】
前記1つ又は複数の棚状部が、前記第1表面に対して角度が付けられている、請求項28に記載のカセット。
【請求項34】
前記カセットからの前記眼内レンズの展開経路に沿って前記第1表面から前記第2表面に向かって遠位に延在する、角度のついた傾斜面をさらに備える、請求項28に記載のカセット。
【請求項35】
前記眼内レンズに連結された1つ又は複数のハプティックを受けるように構成された、前記第1表面内に延在する1つ又は複数のハプティック凹部をさらに備える、請求項28に記載のカセット。
【請求項36】
前記カセットが、前記眼内レンズの1つ又は複数の対応するハプティックを受けるように構成された1つ又は複数のハプティック凹部を含む、請求項35に記載のカセット。
【請求項37】
前記1つ又は複数のハプティック凹部が、2つ以上のハプティック凹部を含み、前記2つ以上のハプティック凹部が、前記第1表面に対して異なる深さに位置する、請求項35に記載のカセット。
【請求項38】
前記眼内レンズを前記1つ又は複数の棚状部の上で保持するように構成された戻り止めをさらに備える、請求項28に記載のカセット。
【請求項39】
前記開口部内に配置された前記眼内レンズをさらに備える、請求項28に記載のカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2022年1月19日に出願された米国仮特許出願第63/300,819号に対する利益を主張するものであり、その出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
分野
[0002] 開示する実施形態は、眼内レンズ送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 眼内レンズインジェクタデバイスは、白内障手術中に取り除かれた水晶体に取って代わるように、眼球内に眼内レンズを挿入する。インジェクタに眼内レンズが予め装填されている場合もあれば、患者の眼球内に注入する前にユーザが用手的にレンズを装填する場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0004] いくつかの実施形態において、眼内レンズインジェクタデバイスは、空洞を含む本体と、空洞の内部に延在する突出部とを備える。空洞は、内部に眼内レンズが配置されているカセットを受けるように構成されており、カセットが空洞内に挿入されると、突出部は、眼内レンズを所定の形態に変形させる。
【0005】
[0005] いくつかの実施形態において、方法は、眼内レンズインジェクタデバイスの空洞内にカセットを挿入することを含み、カセットの内部に眼内レンズが配置されている。本方法は、カセットが空洞内に挿入される際、空洞の内部に延在する突出部により、眼内レンズを所定の形態に変形させることをさらに含む。
【0006】
[0006] いくつかの実施形態において、眼内レンズを保持するカセットは、眼内レンズインジェクタの空洞内に挿入されるように構成された本体を備える。カセットは、本体の第1表面から第1表面とは反対側に位置する本体の第2表面まで、本体の少なくとも一部を通って延在する開口部をさらに備え、開口部は、内部に眼内レンズを受けるように構成されている。カセットは、眼内レンズがカセットの開口部内に配置されているときに、開口部内で眼内レンズを支持するように構成された1つ又は複数の棚状部をさらに備える。
【0007】
[0007] 本開示はこの点に関して限定されないため、前述の概念、及び後に考察する追加の概念は、任意の好適な組合せで配置することができることが理解されるべきである。さらに、本開示の他の利点及び新規の特徴は、添付の図と併せて考慮する場合、さまざまな非限定的実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0008】
図面の簡単な説明
[0008] 添付図面は縮尺通りに描かれるようには意図されていない。図面において、さまざまな図に示す同一の又はほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている可能性がある。明瞭にするために、すべての図面においてすべての構成要素に符号が付されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]眼内レンズインジェクタの1つの実施形態を示す。
【
図2】[0010]開放形態にある眼内レンズインジェクタの遠位部分及びカセットの、カセットがインジェクタに取り付けられる前の1つの実施形態を示す
【
図3A】[0011]カセットの1つの実施形態を示す。
【
図3B】[0011]カセットの1つの実施形態を示す。
【
図3C】[0011]カセットの1つの実施形態を示す。
【
図4A】[0012]内部に眼内レンズが配置されているカセットの1つの実施形態を示す。
【
図4B】[0012]内部に眼内レンズが配置されているカセットの1つの実施形態を示す。
【
図4C】[0012]内部に眼内レンズが配置されているカセットの1つの実施形態を示す。
【
図5A】[0013]開放形態にある眼内レンズインジェクタの遠位部分にカセットの1つの実施形態が取り付けられた状態を示す。
【
図5B】[0014]閉鎖形態にある
図5Aのカセット及び眼内レンズインジェクタを示す。
【
図5C】[0015]閉鎖形態にあり折り畳みバーが取り外されている、
図5Aのカセット及び眼内レンズインジェクタを示す
【
図6A】[0016]眼内レンズが折り畳まれた位置にある、閉鎖形態にある眼内レンズインジェクタの1つの実施形態の断面概略図を示す。
【
図6B】[0017]折り畳みバーが部分的に取り外されている、
図6Aの眼内レンズインジェクタを示す。
【
図6C】[0018]折り畳みバーが完全に取り外されている、
図6Aの眼内レンズインジェクタを示す。
【
図6E】[0020]眼内レンズが折り畳まれた位置にある、閉鎖形態にある眼内レンズインジェクタの1つの実施形態の断面斜視概略図を示す。
【
図7】[0021]閉鎖形態にある眼内レンズインジェクタの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図8】[0022]カバーが取り外されている、眼内レンズインジェクタの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図9A】[0023]プランジャの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図9B】[0023]プランジャの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図10A】[0024]プランジャの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図10B】[0024]プランジャの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図11】[0025]プランジャの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図12A】[0026]眼内レンズインジェクタとカセットを収容しているパッケージとの1つの実施形態を示す。
【
図12B】[0026]眼内レンズインジェクタとカセットを収容しているパッケージとの1つの実施形態を示す。
【
図13】[0027]眼内レンズインジェクタにおけるシャトルの1つの実施形態を示す。
【
図14】[0028]カセットと眼内レンズインジェクタの遠位部分との1つの実施形態を示す。
【
図15A】[0029]カセット及びカセットパッケージの1つの実施形態を示す。
【
図15B】[0029]カセット及びカセットパッケージの1つの実施形態を示す。
【
図16A】[0030]眼内レンズインジェクタの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図16B】[0030]眼内レンズインジェクタの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図16C】[0030]眼内レンズインジェクタの遠位部分の1つの実施形態を示す。
【
図17A】[0031]眼内レンズインジェクタの1つの実施形態を示す。
【
図17B】[0032]
図17Aの眼内レンズインジェクタの遠位部分の断面斜視概略図を示す。
【
図17C】[0033]
図17Aの眼内レンズインジェクタの遠位部分の斜視図を示す。
【
図18A】[0034]第1位置にある眼内レンズインジェクタの1つの実施形態の断面斜視概略図を示す。
【
図18B】[0035]第2位置にある
図18Aの眼内レンズインジェクタの断面斜視概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
[0036] 白内障手術では、混濁又は白内障を発症した眼球の水晶体が眼内レンズ(「IOL」)で置き換えられる。医師は、眼球の切開部を通して用手的にIOLを挿入し得る。別法として、医師は、インジェクタデバイスを使用することもでき、そこでは、変形形態(例えば、折り畳まれた又は丸められた形態)にあるIOLが、インジェクタデバイスの狭い開口部から患者の眼球内に押し込まれる場合がある。挿入後、IOLは、展開することができ、外科医は、IOLを患者の眼球内に適切に位置決めすることができる。IOLは変形形態で眼球内に挿入することができるため、はるかに大きい切開を必要とする用手的な挿入よりも小さい切開を使用することができる。
【0011】
[0037] IOLインジェクタデバイスは、IOLが装填されていない場合もあれば事前に装填される場合もある。装填されていないデバイスでは、白内障処置の前に、医師が、鉗子又はその他の医療器具を用いてIOLをインジェクタ内に用手的に装填する場合がある。医師がIOLを扱うため、用手的な装填により、汚染及びのユーザエラーのリスクが高まる。予め装填されたインジェクタデバイスにより、IOLに触れる必要をなくし、したがって、これらのリスクを低減させることができるが、IOLはすでにデバイスに装填されているため、折り畳まれた形態で長期間保管することは、IOLを恒久的に変形させる危険性があるために可能ではない。
【0012】
[0038] 上記の観点から、本発明者らは、IOLを変形していない形態で保管し、汚染及びユーザエラーのリスクも低減させる、半装填型IOL送達システムの設計を認識し、評価した。いくつかの実施形態では、システムは、実質的に変形していない形態(例えば、平坦な形態)でIOLを保持する、インジェクタデバイスとは別個のカセットを含む。白内障処置の前に、カセットをインジェクタデバイスに連結して、IOLをインジェクタデバイスに装填することができる。IOLは、挿入前にデバイス内に装填される際に、湾曲した形態に変形させることができる。
【0013】
[0039] IOLカセット及びインジェクタの上記実施形態は、多くの利点を提供することができる。具体的には、こうした実施形態では、白内障処置の前にIOLを変形形態で保持する時間を比較的短くすることができ、長期間変形形態で保持されることに起因してIOLを恒久的に変形させるリスクを、低減させるか又はなくすことができる。加えて、カセットは、より小さい設置面積を有することができ、より小さいパッケージでインジェクタデバイスとは別個に保管することができ、予め装填されたデバイスのかさばる保管の問題をなくすことができる。さらに、カセットは、無菌パッケージから取り出し、ユーザがIOLを扱うことなくインジェクタデバイスに直接連結することができ、汚染のリスクが低減する。加えて、インジェクタデバイスは、IOLをデバイスへの挿入中に湾曲した形態に変形させるため、ユーザがIOLを位置決めする必要がない可能性があり、ユーザエラー及び汚染のリスクがさらに低減する。当然ながら、いくつかの利点について上述したが、本開示はこのように限定されるものではないため、開示する方法及びシステムを使用して他の利点も実現することができることが理解されるべきである。
【0014】
[0040] いくつかの実施形態では、インジェクタデバイスの空洞内に、変形していないIOLが装填されたカセットを挿入することができる。空洞は、インジェクタデバイスの近位端部分に位置決めし、デバイスの遠位端のノズルに動作可能に接続することができる。空洞は、空洞の内部容積内に延在する突出部を含むことができる。カセットが空洞に挿入されると、突出部はIOLを湾曲形状等の所定の形態に変形させることができる。いくつかの実施形態では、IOLが変形した後、展開前に、空洞内でIOLに対して近位に位置決めされたプランジャの経路から出るように、突出部を空洞から少なくとも部分的に取り除くことができる。プランジャは遠位方向に移動して、変形したIOLを空洞及びノズルに押し通すことができる。IOLは、狭窄ノズルを通って遠位方向に移動するに従い、ノズルの遠位端部分の開口部を通り抜けるように、より密な湾曲した形態に変形し続けることができる。
【0015】
[0041] いくつかの実施形態では、インジェクタデバイスは、インジェクタデバイスの本体に移動可能に連結されたカバーを含むことができる。カバーは、開放形態と閉鎖形態との間で移動することができる。閉鎖形態では、カバーは、インジェクタデバイス内に配置された空洞の上に位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、カバーが開放形態にあるとき、変形していないIOLが装填されたカセットをカバーの表面に連結することができる。カバーを開放形態から閉鎖形態に移動させることにより、カセットを空洞内に挿入してIOLを空洞内に装填することができる。いくつかの実施形態では、カバーが回転運動で開放形態と閉鎖形態との間を移動するように、ヒンジを介してカバーを本体に回転可能に連結することができる。装填(すなわち、開放形態から閉鎖形態への回転)中、カバー、並びに連結されたカセット及びIOLが、空洞内に変位して突出部と係合する際、空洞内に延在する突出部により、IOLが湾曲形状に変形することができる。このように、IOLは、処置中にIOLを展開する準備をするためにインジェクタデバイスが装填される際に変形する。
【0016】
[0042] 上述したように、いくつかの実施形態では、インジェクタデバイスの空洞内に、変形していないIOLを含むカセットを挿入して、IOLをインジェクタデバイスに装填することができる。上述した空洞内に延在する例示的な突出部を含むインジェクタデバイス及びカセットのさまざまな特徴により、空洞内に装填される際のIOLが変形する可能性がある。いくつかの実施形態では、カセットは、カセットの第1表面から反対側の第2表面まで延在する開口部を含むことができるが、開口部がカセット内を完全に延在しない実施形態も企図される。IOLは、1つ又は複数の適切に構成された棚状部によって開口部の一部内で支持することができる。例えば、棚状部は、後に詳述するように、IOLを開口部内で保持するために、IOLの1つ又は複数の非光学部分を支持及び保持するようなサイズ及び形状にすることができる。空洞は、開口部内でIOLを変形させるために、カセットが空洞内に挿入される際に少なくとも部分的にカセットの開口部内に、いくつかの実施形態ではカセットの開口部を貫通して延在する、突出部を含むことができる。いくつかの実施形態では、カセットが空洞内に受け入れられ、デバイスが閉鎖形態にあるときに、カセットの開口部に隣接して位置決めされた湾曲面を有するインジェクタデバイスの部分に近接して、カセットの第2表面、又は他の適切な部分を配置することができる。したがって、突出部がカセットの開口部を貫通して延在するとき、突出部はIOLの中央部分を押圧することができ、一方、IOLの外側部分は開口部の棚状部によって保持され、それにより、IOLは、湾曲面に向かって及び/又は湾曲面に対して変形して、IOLの所望の初期湾曲形状が与えられる。
【0017】
[0043] 図を参照して、所定の非限定的な実施形態についてさらに詳細に説明する。本開示は、本明細書に記載する所定の実施形態のみに限定されないため、これらの実施形態に関連して記載するさまざまなシステム、構成要素、特徴及び方法は、個々に、及び/又は任意の所望の組合せで使用することができることが理解されるべきである。
【0018】
[0044]
図1は、1つの実施形態による眼内レンズ(IOL)インジェクタデバイス100を示す。IOLインジェクタデバイス100は、長尺状本体102であって、その遠位部分に形成された空洞104を有する本体102と、空洞に近接した位置で本体102に移動可能に取り付けられたカバー106とを含む。
図1に示すように、カバー106は、閉鎖形態にあるとき、空洞開口部の上に配置される。シャトル108が、本体102に対して選択的に移動して突出部110の位置を制御するように構成されており、突出部110は、シャトルに作動的に連結され、シャトル108が本体102と係合しているとき、少なくとも部分的に空洞104内に延在する。
図1に示すように、IOL200は空洞104内に配置され、デバイスが閉鎖形態にあるときにカバー106と突出部110との間に変形形態で保持される。さらに、いくつかの実施形態では、シャトル及び関連する突出部は、IOLを所望の形態に変形させた後、空洞及び本体から取り外すか、又は少なくともIOLから係合解除するように移動させることができる。
【0019】
[0045]
図1に示すように、この実施形態では、インジェクタデバイス100は、本体102の遠位端部分から遠位に延在するノズル112を含む。ノズル112は、空洞104に流体的に接続されている。ピストン114等の作動デバイスが、本体102の近位端部分内に配置され、その近位端部分から近位に延在している。ピストン114は、装填及び閉鎖形態にあるIOLを含む空洞104の一部から近位に配置されたプランジャ400に作動的に連結されている。ピストン114及びプランジャ400は、いくつかの実施形態ではノズル112と軸方向に位置合わせすることができ、デバイスが装填及び閉鎖形態にあるとき、空洞104及び変形したIOL200がそれらの間に配置される。したがって、ピストン114を作動させる(すなわち、ピストン114をインジェクタデバイス100の長手方向軸に沿って遠位方向に圧縮する)ことにより、プランジャ400を、空洞104を通って遠位方向に移動させて、IOL200 200を、空洞104及びノズル112を通ってノズル112の遠位開口部から押し出すことができる。ピストン114を示し説明しているが、インジェクタデバイスは、プランジャを遠位に変位させ、IOLをデバイスの外に展開するために、他の展開システム(すなわち、直接突入、スクリュー設計)を含むことができることが留意されるべきである。
【0020】
[0046] いくつかの実施形態では、ノズル112を通って延在する内部チャネルの直径、又は他の横方向寸法は、遠位方向に低減する。したがって、IOL200は、ノズル112を通って遠位に変位するに従い、ノズル112を通り抜けるように、より小さい形態に変形し丸まり続ける。IOLは、ノズル112の遠位開口部に配置されると、デバイス内に装填されたときのIOLの初期変形形態よりも小さい横方向寸法(例えば、直径)を有する、第2変形形態になることができる。このように、IOLは、患者の眼球の小さい切開部を通して、切開部に挿入されたノズル112を介して挿入することができる。IOL200は、眼球内に挿入されると、非変形形態に展開することができ、外科医は、眼球内にIOLを適切に位置決めすることができる。
【0021】
[0047] 場合により、デバイスの把持及び/又は他の手動操作を容易にするための1つ又は複数の特徴を提供することが望ましいことがある。例えば、
図1に示すように、インジェクタデバイス100は、本体102の近位部分から半径方向に延在するフランジ116(例えば、バレルフランジ又は他の半径方向に延在する構造)を含むことができる。外科医は、フランジ116及びピストン114を片手で握って、ピストン114を作動させることができる。いくつかの実施形態では、フランジ116は、インジェクタデバイス100が、別の表面(例えば、テーブル又はカウンタ)の上に配置されたときにひっくり返るのを防止するために、平坦な表面の底面及び/又は上面を有することができる。いくつかの実施形態では、シャトル108は、インジェクタデバイスが配置される支持面の上でインジェクタデバイス100を支持し安定させるのに役立つように、本体102の底面から離れる方向に延在する2つの平行な脚部118を含むことができる。しかしながら、本開示はそのように限定されないため、脚部、平坦なベース、及び/又は支持面の上でインジェクタデバイスの所望の向きを維持するように構成された他の任意の適切な構造を使用することができる。
【0022】
[0048]
図2は、開放形態で、本体102にカバー106が移動可能に取り付けられている、インジェクタデバイス100の遠位部分の1つの実施形態を示す。カバー106は、ヒンジ120を介して本体に回転可能に取り付けることができ、カバー106は、開放形態(
図2)と閉鎖形態(
図1)との間で回転することができる。当然ながら、本開示はそのように限定されないため、他の取付機能を使用して、本体102にカバー106を取り付けてもよく、カバーは、他の方向において本体に対して移動してもよい。例えば、カセットが、ヒンジを用いずに、インジェクタデバイスの長手方向軸に対して横切る方向で空洞104に挿入可能である実施形態も企図される。
図2に示すように、いくつかの実施形態では、インジェクタデバイス100にはIOL200が予め装填されていない。いくつかの実施形態では、カセット300にIOL200を保管することができ、カセット300は、IOL200をインジェクタデバイス100に装填するためにインジェクタデバイス100に取り付けられるように構成されている。IOL200は、実質的に非変形形態でカセット300内に保管及び保持され、カセット300及びIOL200は、無菌パッケージ内にともに保管することができる。非限定的な例では、外科医は、カセット300及び非変形IOL200を収容している無菌パッケージを開封し、カバーが開放形態にあるときに、カバー106の表面の上でカセットを摺動させるか、又は他の方法でカセットをインジェクタデバイスの所望の部分に接続することによって、カセット300をインジェクタデバイス100に直接取り付けることができる。カセット300は、さまざまなタイプのコネクタによってカバー106に取り付けることができる。例えば、これは、
図2に示す矢印によって示すように、カセット300をカバーの長さに沿った方向に摺動させて、カバー106の内面上の1つ又は複数のレール122と係合させることを含むことができる。本開示はそのように限定されないため、カセットをカバー、又はインジェクタデバイスの別の部分に取り付けるための他のタイプの接続(例えば、スナップフィット、磁気コネクタ、機械的にかみ合う機構、ねじ締結具、及び/又は他の任意の適切なタイプのコネクタ)も企図されることが留意されるべきである。
【0023】
[0049] いくつかの実施形態では、外科医又は他のユーザは、カセットを直接扱うことなく、カセットをインジェクタデバイスに取り付けることができる。例えば、
図12A及び
図12Bに示すように、外科医は、インジェクタデバイス100のカバー106、又は他の対応する部分を、カセット300を収容している無菌パッケージ500に挿入することができる。突出する壁502及びロッド504によって、パッケージの開口部に対してほぼ垂直な方向において、パッケージ500内にカセット300を保持することができる。パッケージ500の開口部は、カバー106の外縁部150を受けるために、対向する壁に平行な棚状部506の2つの対を含むことができる。棚状部506は、カバー106がパッケージの開口部内に垂直方向に挿入される際に、カバー106をカセット200と適切に位置合わせすることができる。外科医がカバー106をパッケージ500の開口部内に挿入する際、カバー106は摺動してカセット200と係合することができる。いくつかの実施形態では、カセットの1つ又は複数の棚状部350、又は他の保持構造は、カバーのレール122の上を摺動して、カセットをカバーに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、カバーは、外科医がパッケージ500からカバーを取り外すときにカセットがカバーの上に保持されるように、カセットをカバーに取り付けるために、棚状部350又はカセットの他の部分のリブ352を越えて摺動する、戻り止め152を含むことができる。その後、本明細書の他の箇所で考察するように、取り付けられたカセット及びデバイスの使用を進めることができる。
【0024】
[0050] いくつかの実施形態では、カセット300及びIOL200は、上述したインジェクタデバイス100とともに使用することが必須ではないことが留意されるべきである。本開示はそのように限定されないため、例えば、任意のインジェクタデバイスで、カセット300内に保管されたIOL200を使用することができる。いくつかの実施形態では、カセット300が無菌パッケージ500に保管されている場合、ユーザは、パッケージ500からカセット300を取り出すことができる。次いで、ユーザは、後続する埋込みのためにIOLを別個のインジェクタデバイス内に位置決めする前に、例えば、鉗子を使用して、IOL200を損傷することなくカセットからIOLを持ち上げることにより、IOL200をカセット300から直接取り出すことができる。したがって、本開示はそのように限定されないため、IOL200が任意のインジェクタデバイスに装填される前に、カセット200はIOL200を保管することができる。
【0025】
[0051]
図5A及び
図5Bに関して以下でさらに詳細に考察するように、カセット300がカバー106に接続されると、カバー106は、開放形態から閉鎖形態に(例えば、カバーの回転によって)移動させることができる。カバーがいかに閉鎖されるかに関わらず、カバーが閉鎖される際、カバー106を閉鎖形態に向かって移動させるに従い、カセット300及びIOL200を空洞104内に挿入することができる。IOL200が空洞104に入る際、空洞内に延在する突出部110が、カバー106に形成された湾曲面124にIOLを接触させ押し付けることができ、湾曲面124は、カセット300がカバー106と組み立てられたときに、IOLの方に向けられている。したがって、突出部は、IOLを湾曲面に対して湾曲又は折畳み形態になるように変形させることができ、この場合、IOLは、遠位に移動するプランジャの移動経路と一直線上に位置決めされる。このように、IOLは、インジェクタデバイスに挿入される際に変形する前に、カセット内に実質的に変形していない形態で保管することができる。これにより、変形形態で長期間保管されることからのIOL200の損傷を低減させるか、又は実質的に防止することができる。加えて、外科医は、IOL200を直接扱うことなく、IOL200をインジェクタデバイスに装填することができ、これによってまた、IOLの用手操作に関連する汚染及び/又はユーザエラーのリスクを低減させることができる。
【0026】
[0052]
図3A~
図3Cは、IOLをデバイスに装填するためにインジェクタデバイスに取り付けることができるカセット300の1つの実施形態を示す。
図3A~
図3Cに示すように、カセット300は本体302を含み、本体302は、第1表面304から本体302の少なくとも一部を通って、第1表面とは反対側であり得る本体の第2表面306まで延在する開口部308を有する。開口部は、開口部の最大寸法が実質的に本体の長さ又は長手方向軸に沿って向けられている、長尺状開口部であり得る。場合により、開口部は、開口部内に配置されたIOLを変形させるために、上述したようにインジェクタデバイスからの突出部の開口部内への挿入に適応するようなサイズ及び形状とすることができる。しかしながら、任意の適切な形状の開口部を使用することができることが理解されるべきである。本体は、1つ又は複数の棚状部310を含むことができ、それらは、その上に配置されたIOLの1つ又は複数の部分を支持するように構成されている。したがって、棚状部310は、IOLを開口部308内で支持及び保持することができる。例えば、いくつかの実施形態では、IOLに適合するような形状及びサイズの凹部309が、本体の第1表面304から本体302内に延在することができる。凹部309は、開口部308の対応する幅よりも大きい直径、又は他の横方向寸法を有することができる。凹部の深さは、第1表面304と第2表面306との間に部分的に延在することができる。したがって、凹部は、開口部308の両側に配置された一対の対称的な棚状部310を含むことができる。開口部308の両側で凹部の側壁から半径方向内向きに延在する突出部に対応することができる戻り止め316が、支持する棚状部310と関連する戻り止め316との間で凹部309内にIOLの一部を保持するのに役立つことができる。
【0027】
[0053] 場合により、インジェクタデバイスへの挿入中に、IOLの単一部分が突起又は他の構造と接触するのを回避することが望ましいことがある。したがって、IOLが回転運動を介して空洞に挿入される例では、空洞への最初の挿入中に、IOLの単一部分が空洞内の対応する突出部と接触するのを回避するために、カセットの表面に対してIOLに角度を付けることが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、
図3Cに最もよく示すように、棚状部310、又は凹部309の他の支持面は、カセット内でIOLを傾斜して支持することができるように、本体の第1表面304及び/又は第2表面306に対して角度を付けることができる。いくつかの実施形態では、傾斜の最大角度は、8°、10°、12°、及び/又は他の任意の適切な角度以上であり得る。傾斜の最大角度は、18°、15°、13°、及び/又は他の任意の適切な角度以下であってもよい。例えば、8°以上18°以下の傾斜の最大角度、及び/又は前述したものの他の任意の適切な組合せを含む、前述したものの組合せが企図される。傾斜の最大角度の特定の範囲を上記で提供しているが、本開示はそのように限定されないため、上述した範囲よりも大きい範囲及び小さい範囲の両方も企図されることが理解されるべきである。
【0028】
[0054] カセット300は、カセットの凹部309及び関連する開口部308に対して所望の位置及び向きにIOLを保持するのに役立つ、1つ又は複数の特徴も含むことができる。いくつかのこうした実施形態では、本体302は、開口部の壁311内に延在する1つ又は複数のハプティック凹部312及び314を含むことができる。ハプティック凹部は、IOLの1つ又は複数のハプティック202(例えば、IOLのレンズに接続された非光学突起)を受けるように構成することができる(
図4A~
図4C参照)。第1表面に向かって外向きに向けられたハプティック凹部312及び314の底面は、棚状部310と同様の傾斜で角度を付けることができる。いくつかの実施形態では、ハプティック凹部312及び314の傾斜面並びに凹部の傾斜面は、互いに実質的に同一平面上にあり得る。例えば、傾斜した向きでIOLを支持するのを容易にするのに役立つために、ハプティック凹部314の深さは、凹部の反対側に配置されたハプティック凹部312の深さよりも大きくすることができる。いくつかの実施形態では、ハプティック凹部及び棚状部310は、IOLとの表面接触を減少させ、保管中の摩擦及び又は静止摩擦を低減させるために、凹凸のある表面(例えば、出っ張り、くぼみ、リブ)を含むことができる。
【0029】
[0055]
図3A及び
図3Cに示すように、カセット300は、本体302の底面306から延在する足部318を含むことができる。足部318は、カセットをインジェクタデバイス100(
図2参照)に取り付けるために、カバー106のレール122の上に滑り込み、レール122によって保持されるように構成することができる。カセットは、カセットの一端に機械的止め具320を含むことができ、それは、カセットがカバー106上を過度に摺動するのを防止しながら、カバー上の所望の位置でカセット300の移動を停止させるために、レール122の端部に当接するように構成されている。足部318及び/又はレール122は、カセットがインジェクタデバイスと完全に係合していることを示すために、カセットをレール上に摺動させるときに触覚フィードバックを提供する、1つ又は複数の戻り止め又は他の物理的構造を含むことができる。
【0030】
[0056]
図4A~
図4Cは、1つの実施形態による、カセット300内に配置されたIOL200を示す。
図4Aに示すように、IOL200は、凹部309内に、開口部308の両側で凹部の対向する部分に形成された棚状部上にIOLが載るように配置することができる。凹部309は、異なるサイズのIOLに適合するようにカスタマイズすることができる。戻り止め316は、凹部309内でIOLを固定するために、光学レンズを囲むIOL200の外周部の一部を軽く保持する。戻り止め316は、異なる厚さのIOLに適応するように、さまざまな高さであり得る。頂点204で外周部から延在するハプティック202は、カセット200のハプティック凹部312及び314内に配置される。ハプティックは、ハプティック凹部内では実質的に変形しない可能性があるが、いくつかの実施形態では、ハプティックに幾分かの程度の変形が存在する場合がある。
図4A~
図4Cに示すように、IOL200は、頂点204の間に延在する軸が、開口部208の中心長手軸と少なくとも部分的に平行な方向に向けられて、開口部308内に非変形形態で傾斜して配置されている。
【0031】
[0057]
図5A及び
図5Bは、デバイスが開放形態と閉鎖形態との間で遷移する際のインジェクタデバイスのカバーの閉鎖を示す。具体的には、
図5Aは、カセット300が、開放形態にあるインジェクタデバイス100のカバー106の内面に取り付けられた状態を示す。いくつかの実施形態では、カバー106は、空洞104に隣接してインジェクタデバイス100の本体に移動可能に取り付けられている。
図5Bは、閉鎖形態にあるカバー106を示す。いくつかの実施形態では、カバー106は、ヒンジ120を中心に回転して、カバー106を空洞104の上に位置決めし、カバーに取り付けられたカセット300、及びカセット内に保持されたIOL200を空洞104内に挿入する。カセット300は、第1表面304が第2表面306よりも先に空洞104に入るように、上下逆にして空洞内に挿入することができる。こうした実施形態では、カセット及びIOLが空洞に挿入される際、第1表面とカセット内に保持されたIOLとは、空洞の方を向けることができる。
【0032】
[0058] カバー106は、用手的に、すなわち、ハンドル107を把持し、ハンドル107又はカバーの他の部分が本体102又は空洞104の一部に選択的に接続されるまでカバーを回転させる等により、移動させることができる。例えば、ハンドルは、任意の適切なタイプの選択的に開閉可能な接続を使用することができるが、カバーを閉鎖形態で固定するために空洞壁の凹部と嵌合するように構成された戻り止めを有することができる。別法として、インジェクタデバイス100は、押されるとカバーを閉鎖形態に移動させるボタン又は他の作動機能を含むことができる。非限定的な例では、カバー106は、作動するとカバーが閉鎖形態に向かって付勢されるようにばね式であってもよい。
【0033】
[0059]
図5Aに示すように、シャトル108の突出部110は、カセット300が挿入される空洞の開口部とは反対側に配置された本体102の底部分の開口部を通って空洞104内に少なくとも部分的に延在する。ガイド壁126が、突出部110が貫通して延在する開口部を少なくとも部分的に取り囲むことができる。ガイド壁126は、突出部110を空洞104内で位置決めして支持するのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、カバー106が閉鎖形態に回転するか又は他の方法で移動する際、突出部110がカセット300の開口部208内に変位するため、IOL200は突出部110に押し付けられる。突出部110に対するカセット300及びIOL200の相対的な動きを図示しているが、いくつかの実施形態では、これらの構成要素の相対的な動きを提供するために、代わりに突出部110を移動させてもよい。いずれの場合も、突出部110は、軸A(
図4A及び
図4B)に沿って、開口部208を通って突出部から離れるように向けられた上向き方向に、IOLに圧力をかけることができる。IOL200が開口部208を通して上向きに変形する際、棚状部310(
図3A~
図3C)並びにハプティック凹部312及び314は、開口部208に対する初期高さで、開口部の両側に配置されたIOLの部分及びハプティックの端部分を保持するのに役立つことができる。したがって、IOL200の中央部分が開口部を通して変形する際、これにより、IOL200は、カセット300の壁311に沿って、カバー106(
図2)の湾曲面124に向かって及び/又は湾曲面124に対して上向きに折り畳まれる。したがって、IOLは、(カセットが取り付けられている)インジェクタデバイスのカバーが閉鎖形態に移動する際に湾曲形状に変形し、これにより、IOLが変形形態にある時間を最小限にすることができる。
【0034】
[0060] いくつかの実施形態では、IOLは、中央部分の方が厚く、外周部の方が薄い場合がある。厚い中央セクションは、より損傷を受けやすいIOLの光学部分である可能性があり、したがって、IOLのこの光学部分との接触を最小限にするか、又はなくすことが望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、IOLの1つ又は複数の部分に接触する突出部110の上方部分は、変形中のIOLへの損傷を最小限にするのに役立つコンプライアント材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、
図5Aに示すように、突出部110は、IOLに接触する突出部の上方部分の長さに沿って少なくとも部分的に延在する、切取部130も含むことができる。切取部130は、IOLの1つ又は複数の部分との接触を回避するようなサイズ及び形状にすることができる。例えば、切取部130は、カバー106が空洞104の上を閉鎖形態まで(すなわち、ヒンジ120を中心に回転することによって)移動するとき、切取部130がIOL200の下に位置決めされ、IOLの光学部分に対応するIOLの厚い中央部分が、切取部の長さに沿って突出部から間隔が空けられる(すなわち、接触しない)ように、配置することができる。大きい厚さを有するIOLは、IOLの厚い中央部分が突出部に接触するのを防止するために、小さい厚さを有するIOLよりも深い切取部を必要とする可能性がある。切取部130があるため、突出部110は、IOLの頂点204(
図4A~
図4C)及び/又はIOLの他の非光学部分においてのみIOLに接触する可能性がある。この場合もまた、こうした配置は、IOLの光学部分に対する損傷のリスクを最小限にするのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、異なるサイズのIOLに対して異なるサイズの切取部を有する突出部を設けることが望ましい場合がある。こうした実施形態では、シャトル108を交換可能とし、所望のIOLの厚さを補完するように突出部110に適切なサイズの切取部130を有するものを選択することができる。
【0035】
[0061] いくつかの実施形態では、突出部110はシャトル108とは別個に形成することができる(
図13参照)。例えば、突出部110は、突出部110がIOL200に接触してIOL200を変形させるときにIOL200に対する損傷のリスクを最小限にするために、軟質材料(例えば、シリコーン)で作製することができる。突出部110は、シャトル108に取り付けられるように構成された取付端部分111を含むことができる。例えば、取付端部分111は、シャトルの開口部の突出リング113内に挿入され、突出リング113によって保持されるように構成された、変形可能なリブを含むことができる。シリコーン突出部は、使用されるIOLのサイズに応じて、さまざまなサイズで作製し、シャトルに挿入することができる。
【0036】
[0062] 前述したように、いくつかの実施形態では、開放形態から閉鎖形態に移動するときのカバー106の回転運動により、カセット300は突出部110に対して斜めに空洞104に入る。例えば、ヒンジ120に最も近いカセット300の端部分は、ヒンジから最も遠い端部分よりも先に空洞104に入る。IOLが突出部110に斜めに接触するのを防止するために、棚状部310並びにハプティック凹部312及び314は、前述したように、カセット300内でIOLをカセット300に対して傾斜して保持する。傾斜は、カセット300が斜めに空洞に入る場合でも、IOLが挿入中に接触する突出部110の一部に対して、IOL200を実質的に平行に位置決めすることができるように、配置されている。これにより、空洞への初期挿入中にIOLが単一の場所で過度に変形するのを回避しながら、突出部110がIOLの長さに沿って配置された両頂点204、又はIOLの他の部分に対して同時に押圧することができる可能性がある。したがって、この配置により、挿入中にIOLがより均一に折り畳まれるようにすることができる。
【0037】
[0063] カバー106が完全に閉鎖されたとき、突出部110は、IOL200を、IOLがカセット300の壁311とカバーの湾曲面124との間に保持された状態で、湾曲形態になるように変形させている。突出部110は、IOLを湾曲面124まで押し上げ、IOLが傾斜しなくなり、突出部110及びカバー106と平行に位置決めされるようにする。いくつかの実施形態では、カバー106は、IOLが突出部110とカバー106との間で適切に折り畳まれない場合に、外科医が空洞104内でIOL200を再配置するために開くことができるドア(図示せず)を含むことができる。
【0038】
[0064]
図5Cに示すように、IOL200が変形位置で空洞104内に適切に位置決めされた後、シャトル108を本体102から部分的に又は完全に取り外して、突出部110を、IOL200と接触しなくなり、空洞104を通る展開中のIOLの移動経路から外れるように移動させることができる。いくつかの実施形態では、シャトル108は、シャトル及び関連する突出部を空洞から離れるように外向きに部分的に又は完全に移動させる前に、本体102シャトル上のシャトルの初期位置を選択的に維持する1つ又は複数のコネクタ128を含む。いくつかの実施形態では、接続は、ラッチ接続であって、脚部118を互いに押し付けて、コネクタ128が外向きに枢動して本体102の外面から離脱するようにすることにより、シャトル108を取り外すことができる。いくつかの実施形態では、コネクタ128は、内側部分に、本体の外面の隆起部131に取り付けられるラッチ129を含むことができる。本体102は、シャトルを2つ以上の位置で本体に取り付けるために、本体の外側に沿って複数の隆起部131を含むことができる。図には、シャトルを所望の初期位置で保持するための特定のタイプのコネクタを示すが、本開示はそのように限定されないため、シャトルをインジェクタデバイスの本体に対して移動させるか又は本体から取り外すことを可能にする、任意の適切なタイプの選択的接続(例えば、ラッチ、磁石、仮接着剤、ねじ締結具等)を使用することができることが理解されるべきである。
【0039】
[0065] いくつかの実施形態では、シャトルは、インジェクタデバイスに枢動可能に連結することができる。非限定的な例では、シャトルは、インジェクタデバイスの空洞に隣接する第1端部において、インジェクタデバイスに回転可能に取り付けられた長尺状アームを含むことができる。長尺状アームは、第2端部に、空洞の内部に少なくとも部分的に延在するように配置された突出部を含むことができる。インジェクタデバイスは、突出部を空洞内に維持するように長尺状アームを適所で固定する、ロックデバイス又は他の固定手段を含むことができる。眼内レンズを含むカセットが(例えば、注入の、長尺状アームとは反対側の側から)空洞内に配置されると、突出部は、カセット内のレンズに接触してレンズを変形させることができる。レンズが変形形態になると、ロックデバイスの解除ボタンが長尺状アーム及び突出部を空洞から解除することができる。ばねがアームをインジェクタデバイスから離れるように付勢して、突出部を空洞から取り外すことができる。
【0040】
[0066]
図6A~
図6Eは、変形形態にあるIOL200と突出部110とをさまざまな位置で保持している、空洞を通るインジェクタデバイスの横断面概略図である。
図6Aにおいて、突出部110は、空洞104内に延在し、カセット300の開口部308を通してIOL200を押し上げ、カバー106の湾曲面124に押し付けている。突出部110は、空洞の底部の開口部を通って延在し、突出部を安定させるのに役立つ壁126の間に配置されている。IOL200は、カセット300の壁311及びカバー106の湾曲面124に押し付けることにより、変形形態に保持されている。いくつかの実施形態では、湾曲面124は、カバーが閉鎖形態に移動したときに、突出部110がIOL200を押し上げ、IOLを湾曲面124に押し付けることなく、湾曲面124に向かって変形させるような形状とし、そのように開口部から一定の距離を置いて位置決めすることができる。こうした実施形態では、IOLは、少なくとも最初は、IOLの一部が壁311に押し付けられることにより、変形形態で保持される。いくつかの実施形態では、湾曲面124は、後により詳細に説明するように、IOLをノズル112に向かって空洞104に押し通すように構成されたプランジャ400に適合するサイズ及び形状である、カセット300の内壁311とのチャネルを形成することができる。湾曲面124は、IOLを変形形態で維持し、プランジャがIOLを空洞に押し通す際にIOLを案内するのに役立つことができる。
【0041】
[0067] IOL200が変形し、空洞104内に適切に位置決めされた後、シャトル108を取り外すことができる。
図6Bは、突出部が壁126の上面と同じ高さになるようにシャトル108が部分的に取り外された状態を示す。
図6C~
図6Dは、シャトル108及び突出部110がインジェクタデバイス100から完全に取り外された状態を示す。両方の位置において、突出部110は、IOL200の移動経路から取り除かれており、関連するプランジャ400が、空洞104の近位端部分に位置決めされており、そこでは、プランジャ400は、IOL200を変位させるために空洞の長手方向軸に沿って近位方向に移動するように構成されている。
【0042】
[0068]
図6Dは、1つの実施形態による、インジェクタデバイス内に変形形態で保持されたIOL200の拡大図を示す。図示するように、IOL200の外周部は、カセットを通って延在する開口部308の内壁311に接触している。IOLは、カセットの開口部308を通って上向きに、カバーの湾曲面124内に湾曲している。いくつかの実施形態では、IOLの外周部のみが壁311に接触し、IOLの中央の光学部分への接触と損傷のリスクとを最小限にする。壁311は、IOLの外周部に圧力をかけ、突出部110が取り外されても、IOLを湾曲形態に維持する。いくつかの実施形態では、突出部が貫通して挿入されるガイド壁126の上面は、IOLの外周部及びハプティック202が変形形態で保持されるための隙間を提供しながら、適切な距離だけ空洞内に延在することができる。例えば、
図6Eに最もよく示すように、ハプティック202は、突出部110が取り外されたときにハプティック202が開口部内に落下するのを防止するために適切な厚さを有することができる壁126の、上面の上方に又は上面に接して配置することができる。
【0043】
[0069]
図7に示すように、プランジャ400は、注入デバイスが閉鎖された後に変形形態にあるときにIOL200と位置合わせされる軸に沿って、空洞104及びノズル112を通って(
図7に矢印で示す)遠位方向に移動するように、作動させることができる。いくつかの実施形態では、プランジャ400は、移動する際、変形したIOL200を空洞104及びノズル112に押し通し、IOL200がノズルの小さい遠位開口部から押し出される前に、狭窄ノズルを通って移動するに従って、IOL200がより小さい変形形態になるように丸まるか又は湾曲するようにする。IOL200は、白内障処置中に眼球内に適切に位置決めされるようにIOLが非変形形態に展開する前に、眼球内の小さい切開部を通して挿入することができる。摩擦を低減させ、IOL200が空洞104及び/又はノズル112を通って移動する際に貼り付くのを防止するために、限定されないが、湾曲面124、内壁311、壁126の上面、及びノズル112の内面を含むインジェクタデバイスの表面を、潤滑剤(例えば、低摩擦親水性コーティング)でコーティングすることができる。
【0044】
[0070]
図8は、視覚化の目的で空洞104のカバーが取り外された、1つの実施形態によるインジェクタデバイス100の上面斜視図を示す。
図8に示すように、プランジャ400は、空洞104を通してIOL200を、ノズル112に接続された空洞の近位開口部140に押し込み、ノズルの遠位端から押し出すことができる。いくつかの実施形態では、より大きいIOLでは、より大きい直径のIOL及び付属のハプティック202を収容するために、空洞104を下方に延長することが有効である可能性がある。しかしながら、これにより、IOL200が、開口部140に対して空洞104内の下方に位置することになる可能性がある。こうした実施形態では、カセット300は、プランジャ400がIOLをノズル112内に押し込む際に、IOL200を開口部140に向かって上方にシフトさせる傾斜面322(
図3A~
図3Cも参照)を含むことができる。いくつかの実施形態では、インジェクタデバイス100はポート(図示せず)を含むことができ、それを通して、生理食塩水又は他の液体を空洞104に注入して、潤滑を提供することができる。
【0045】
[0071]
図9A及び
図9B、
図10A及び
図10B、並びに
図11は、プランジャ400のさまざまな実施形態を示す。図に示すように、プランジャ400は、遠位部分402と、展開システム(図示せず)に作動的に連結された近位部分404とを含むことができる。いくつかの実施形態では、遠位部分402は、IOLに接触するように構成されている遠位側面406を含む。遠位側面406は、遠位側面からプランジャ内に延在する1つ又は複数の開口部408を含むことができる。開口部408により、プランジャが空洞からノズルの細径部に変位する際に、プランジャが半径方向に圧縮されるのを可能にすることができる。遠位部分402は、狭窄ノズルを通ってプランジャを移動させる力を低減させるために、圧縮可能な材料で作製することもできる。
【0046】
[0072]
図9A及び
図9Bに示すいくつかの実施形態では、プランジャの遠位部分402は丸い形状を有することができる。遠位側面406は、IOLが空洞内に維持される際にハプティックの形状を補完するように凹面を有することができる。
図10A及び
図10Bに示すいくつかの実施形態では、遠位部分402プランジャは、丸み部分と平坦部分とを含むことができる。これは、いくつかの用途では、平坦部分が壁126の上面に沿ってより容易に摺動することができるため、より有利である可能性がある。遠位側面406は、ハプティックの湾曲を補完するように凹状であってもよく、遠位側面の底角部は、ハプティックの遠位端部に接触し、IOLを遠位に押すのに役立つことができる。
【0047】
[0073]
図11に示すように、いくつかの実施形態では、プランジャの遠位部分は、
図10A及び
図10Bの実施形態と同様に、平坦な底部を有して丸みを帯びることができるが、遠位側面406は、遠位部分402がくさび形状に類似するような平坦な傾斜面であってもよい。プランジャの傾斜遠位表面の適切な角度は、30度以上60度以下、40度以上50度以下、及び/又は他の任意の適切な角度であり得る。作動中、遠位側面406の底部分は、IOLのハプティックの最近位部分に接触する可能性がある。これは、ノズルを通して同等の材料(すなわち、プランジャの材料)を押し出すことなく、IOLをノズルに押し通し、遠位開口部から最後のハプティックを押し出すのに役立ち、したがって、インジェクタデバイスからIOLを排出するのに必要な力の量を減少させることができる。
【0048】
[0074] プランジャの具体的な形状について上述したが、本開示はいかなる特定のプランジャ構造にも限定されないため、他の設計も企図されることが留意されるべきである。
【0049】
[0075] カバーの回転運動以外の方法でカセットをインジェクタデバイスの空洞に挿入することができることも留意されるべきである。例えば、
図14に示すように、カセット300は、カセットをインジェクタデバイスの本体の開口部にほぼ垂直な方向において空洞内に下方運動で移動させることにより、インジェクタデバイス100の空洞104内に直接挿入することができる。カセット300は、カセットを空洞104内に位置決めして固定するために、底部分に、空洞の対応するくぼみにスナップ式に嵌まることができるタブ211を含むことができる。しかしながら、本開示はそのように限定されないため、他の適切なコネクタ及び取付け方法も使用することができる。
【0050】
[0076]
図15A及び
図15Bは、カセット600と、使用前にカセットを保管するための無菌パッケージ700との一実施形態を示す。
図15A及び
図15Bには示さないが、IOLは、非変形形態(
図4A参照)でカセット600内に保管することができる。カセット600がパッケージ700内に位置決めされた状態で、外科医又は他のユーザは、眼内注入デバイスの一部分をパッケージ内に挿入して、カセット600をデバイスに装填することができる。いくつかの実施形態では、パッケージ700は、パッケージの開口部から内部に、場合により、パッケージの開口部とは反対側の背面部分まで長手方向に延在する、対向するレール702を含む。レール702は、それらの間に延在する頂部部分710によって接続することができ、頂部部分は、パッケージ700の隣接する内面と頂部部分710との間に延在する長手方向リブ711によって支持することができる。レール702及び頂部部分710は、カセット600の断面形状の少なくとも対応する部分に適合するような形状及びサイズであって、カセットを、レール702を介してパッケージ700内に長手方向に摺動させてパッケージ700内で支持することができるようにすることができる。
【0051】
[0077] いくつかの実施形態では、カセット600は、カセット600の両側に配置された突起602を含むことができ、突起602は、カセットをパッケージ内で保持するためにレール702の内面に形成された切取部704内に滑り込むように構成されている。場合により、突起602は、カセット600をパッケージ700内に適切に挿入する際にユーザを補助するために、カセット600の第1端部604に近い方に位置決めすることができる。
図15Bは、パッケージ700内に配置されたカセット600の断面概略図である。切取部704は、カセット600が適切な位置でパッケージ内に挿入されると、
図15Bに示すように、突起602が切取部704の表面706に当接するように構成することができる。この構成では、カセット600は、パッケージ700の内部容積内に完全に配置される。製造業者又はパッケージを組み立てる他のユーザが、間違った方向で(例えば、端部604を先に挿入して)カセット600をパッケージ700内に挿入しようとした場合、突起602は、カセットの長手方向の長さ及びパッケージへの挿入方向に対してカセットの中央からオフセットしているために、カセットがパッケージ開口部から突き出るように、異なる向きで表面706に当接することになる。
【0052】
[0078] いくつかの実施形態では、ユーザは、
図12A及び
図12Bに関して上述したのと同様の方法で、デバイスのカバー106をパッケージ内に挿入することにより、カセット600を眼内注入デバイスに直接装填することができる。いくつかの実施形態では、パッケージ700の開口部は、カバー106の外縁部を受けるために、対向する壁に2対の平行な棚状部708を含むことができる。カバー106がパッケージの開口部内に長手方向に挿入される際に、カバーをカセット200と適切に位置合わせするのに役立つように構成することができる、棚状部708。
【0053】
[0079] 場合により、カセットとの係合中にカバーの所望の安定した向きを維持することが望ましいことがある。したがって、いくつかの実施形態では、
図16A~
図16Cに示すように、眼内インジェクタデバイス100は、所望の開放形態でカバーを支持するように構成された1つ又は複数の特徴を含むことができる。これは、例えば、所定の向きを有する所望の開放形態でカバー106を安定させ維持するように構成されたバンプアウト160及び/又は隆起部162を含むことができる。開放形態において、ユーザは、例えば、カセットを装填するためにカバーをカセットパッケージ内に挿入することにより、カセットをカバーに取り付けることができる。
図16A~
図16Cに示すように、いくつかの実施形態では、バンプアウト160は、カバーが完全開放形態にあるときに、本体102の外面(例えば、上面)からカバー106の対向面に向かって外向きに延在する1つ又は複数の突起に対応することができる。場合により、バンプアウトは、カバーヒンジ165の両側に配置することができる。バンプアウト160は、カバーが開放形態にあるときにカバー106の表面164に当接する、平滑な表面領域を有することができる。例えば、バンプアウトは、いくつかの実施形態では、カバーの対応する形状の表面(例えば、両方の表面は平坦であってもよく、又は他の方法で相補的な形状を有していてもよい)に対して配置されるように構成された表面を含むこともできる。バンプアウト160は、カバー106を所望の向きに維持して、カセットの取付けのためにカバーを適切に位置合わせするのに役立ち、カバーが所望の向きを越えて過度に広がるのを防止するような、サイズ及び形状とすることができる。例えば、バンプアウト160は、
図16Cに示すように、カバー106をデバイスの長手方向軸にほぼ平行な向きに維持するように構成された平坦な表面を有することができる。しかしながら、バンプアウト160は、本開示がこの態様において限定されないため、カバー106にカセットを取り付けるのに好適な他の任意の角度でカバー106を保持するように構成することもできる。
【0054】
[0080] いくつかの実施形態では、カバーヒンジ165は、ヒンジの遠位側に1つ又は複数の戻り止め162を含むことができ、戻り止め162は、ヒンジに隣接するカバー106の内面166上の対応する特徴と係合するように構成されている。戻り止めは、1つ又は複数の戻り止め又は他のロックに関連するロック解除力よりも大きい力を加えて、カバー106を戻り止めから外し、カバーを開放形態から閉鎖形態に向かって移動させることができるように、カバー106を完全開放形態で選択的にロックすることができる。したがって、カバー106へのカセットの装填を容易にするために、カバー106を開放形態で維持するのに役立つように、1つ又は複数の戻り止め、又は他の適切なロック(例えば、ラッチ、磁気ロック等)を使用することができる。
【0055】
[0081] いくつかの実施形態では、外科医又は他のユーザは、展開中にIOLに擦り傷を付けるリスクを低減させるように、及び/又は装填及び/又は展開中に潤滑を提供するのに役立つように、眼科用粘弾性物質(「OVD:ophthalmic viscoelastic device」)又は他の粘性流体等の流体を、IOLが注入前に保持される空洞104に注入することができる。いくつかの実施形態では、
図17A及び
図17Bに示すように、シャトル108は、1つ又は複数のボス180を含むことができ、カニューレ182を挿入するために、ボス及び/又は本体の他の適切な部分を貫通して、通路181が延在している。注入デバイス100の本体102は、通路183を含むことができ、通路183は、本体102の外面から空洞104内に延在し、シャトルが本体102に取り付けられたときにシャトルの通路181に接続して、流路がシャトル及び本体を通って本体の内部空洞内に延在するようにするように位置決めされている。このように、ユーザは、カニューレ182又は他の適切なOVD注入デバイスを介して、通路181、183を通して空洞内にOVDを注入することができる。いくつかの実施形態では、カニューレは、ステンレス鋼から作製することができる。
【0056】
[0082] いくつかの実施形態では、システムの空洞104の複数の部分にOVDを提供することが望ましい場合がある。したがって、シャトル108は、空洞104にOVDを注入するための2つのアクセス通路(例えば、デバイス内の装填されたIOLに対して近位及び遠位)を提供する、遠位ボス180及び近位ボス180の両方を含むことができる。いくつかの実施形態では、ボス180は、カニューレ182が空洞104内に過度に挿入されるのを防止するために、本体102の表面から外向きにある距離だけ延在することができる。カニューレ182は、
図17Bに示すように、過度の挿入を防止するために湾曲を有するような形状とすることもできる。いくつかの実施形態では、シャトル上の通路181の開口部は、カニューレ182の容易な挿入を可能にするために、開口部に向かって外向きにテーパ状にしてもよい。
【0057】
[0083] 操作中、ユーザは、装填されたIOLを展開する前に、1つ又は複数のボス180を通してOVDをシステムの空洞104内に挿入することができる。上述したように、シャトル108は、OVDを注入している間、装填されたIOLの位置を維持する突出部110(
図5C及び
図6A参照)を含むことができる。いくつかの実施形態において、ボス180は、シャトル108がデバイスの本体102に取り付けられたときに、インジェクタデバイスの直立面上に位置決めされる。このように、ユーザは、ボス180を通してOVDを注入している間、デバイス100を直立位置に保持することができる。その後、ユーザは、シャトル108を取り外し、既に適切な直立位置にあるデバイス100からIOLを展開することができる。いくつかの実施形態では、
図17A及び
図17Cに示すように、ノズル112が、IOLが展開されるノズルを通って延在するカニューレ、又は他の内部チャネルと流体連通する、1つ又は複数の排気ポート185を含むことができる。IOLの展開中、過剰なOVDは、排出ポート185から排出することができる。排出ポートは、ノズルのカニューレ内の空気圧を低下させることもでき、それにより、患者の水晶体嚢内に気泡を注入するリスクを低減させることができる。
【0058】
[0084]
図18A及び
図18Bは、それぞれ、展開前及び展開途中の眼内インジェクタデバイス100の断面概略図を示す。いくつかの実施形態では、デバイスは、近位端部分に、遠位端部分のノズルからIOLを展開するためにプランジャ400を作動させるピストン114を含む。いくつかの実施形態では、プランジャ114は、ピストン114とプランジャ400との間の距離を長くするためのばね式のはめ込み部分802を含むことができる。はめ込み部分802は、ピストンと同心に位置決めすることができ、ピストン114の遠位空洞800内にある距離だけ延在することができる。はめ込み部分の近位部分と、デバイス本体102内のピストン114の遠位で且つ展開前のプランジャ400の位置の近位に配置された壁805との間で、はめ込み部分802の周囲に、圧縮ばね804を配置することができる。
【0059】
[0085] いくつかの実施形態では、ピストン114の遠位端は、異なる長さでデバイス本体102の内面に沿って配置された第1戻り止め810及び第2戻り止め812に接触するように構成された、半径方向外向きに延在する突起806を含む(
図17Aも参照)。ばね804は、プランジャの移動に対して小さい抵抗力を提供することができ、それは、プランジャ400の不注意による作動を回避するのに役立つことができる。したがって、戻り止めは、閾値力がプランジャに加えられるまで、1つ又は複数の方向におけるプランジャの移動を選択的に防止することができる。いくつかの実施形態では、第1戻り止め810は、本体102の近位端部分の近くに位置決めされ、ピストン114の突起806と係合して、展開前にピストンを保持するように構成されている。いくつかの実施形態では、第1戻り止め801を、デバイスの本体102上のレバー811の端部分に配置して、突起806が戻り止めを越えて遠位に押されたときに戻り止め810が半径方向外向きに撓むのを可能にすることができる。突起806及び第1戻り止め810は、突起806が通過する際に戻り止め810を半径方向外向きに押すカムとして作用する、対応してテーパ状の面を有することができる。いくつかの実施形態では、戻り止め810の近位に位置するデバイス本体の棚状部808は、ピストン114が不注意でデバイスから遠位に引き抜かれるのを防止するように突起806を固定することができる。
【0060】
[0086] いくつかの実施形態では、本体102は、第1戻り止め810の近位に配置された第2戻り止め812を含む。第2戻り止め812は、突起806が戻り止め812を越えて遠位に押されたときに戻り止め812が半径方向外向きに撓むのを可能にするために、デバイスの本体102上のレバー813の端部分に配置することができる。第2戻り止め812は、突起806のテーパ状面と同様のテーパ状面を有することができるが、本開示はそのように限定されないため、いずれの戻り止めのセットについても他の適切な戻り止め構造を使用することができる。テーパ状面は、突起806が通過する際に、突起が展開途中位置で戻り止め812の遠位面に係合するまで、戻り止め812を半径方向外向きに押すカムとして作用することができる。第2戻り止め812は、ピストン114が展開途中位置で係合したとき、プランジャ400を作動させてIOLを空洞104からノズル112内に押し出すことができるように、デバイス本体102の長さに沿って位置決めすることができる。
【0061】
[0087]
図18Bは、展開途中位置にあるピストン114を示す。展開途中位置では、戻り止め812の遠位面が突起806と係合して、ピストン114及びプランジャ400が近位方向に移動するのを防ぐことができる。これにより、こうした動きに起因して、OVD及びIOLが近位方向に吸引されて空洞104内に戻る(これにより、ユーザがIOLを再配置することが必要になる)のを、防ぐことができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、ピストンを第1位置に戻したい場合、十分な力でピストン114を近位に引っ張り、第2戻り止め812を係合解除することができる可能性がある。いくつかの実施形態では、展開途中位置では、プランジャ400を作動させてIOLを展開するためにピストン114を遠位方向に移動させるために、ばね802の力のみに打ち勝てばよい。いくつかの用途では、外科医又は他のユーザは、最終的な展開の前にIOLが弛緩してノズル112の内径に適合することができるように、展開途中位置でデバイスを休止させることができる。しかしながら、ユーザによっては、第2戻り止め812で停止させず、ピストンを第1位置から最終的な展開まで単一の動きを使用して直接押すことによりIOLを展開することを好む場合がある。
【0062】
[0088] 本明細書において、本開示のいくつかの実施形態について説明及び図示したが、当業者であれば、本明細書に記載する機能を実施するため、及び/又は本明細書に記載する結果及び/又は利点のうちの1つ又は複数を得るための、種々の他の手段及び/又は構造を容易に構想することができ、こうした変形形態及び/又は変更形態の各々は、本開示の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載するすべてのパラメータ、寸法、材料及び構成は、例示的であることが意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は、本開示の教示が使用される所定の1つ又は複数の用途によって決まることを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に記載する本開示の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は通常の実験以上のことを行わずに確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単に例示として提示されたものであり、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、本開示は、具体的に記載し特許請求した以外の方法で実施することができることが理解されるべきである。本開示は、本明細書に記載する個々の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法に関する。加えて、2つ以上のそうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組合せは、そうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】