(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】セルフバランス型車いすの駐車装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20250117BHJP
B62D 57/028 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61G5/10 715
A61G5/10 718
B62D57/028 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542266
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2023050814
(87)【国際公開番号】W WO2023135279
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】102022000000602
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520275582
【氏名又は名称】ジェニー ファクトリー ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】GENNY FACTORY SA
【住所又は居所原語表記】Via Essagra 7, 6592 Sant’Antonino, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パオロ バダノ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ウーシュレーガー
(57)【要約】
【課題】完全に平坦ではない、あるいは傾斜していたり、凹凸があったり、屈曲した走行面に置かれた場合でも、ほぼ水平な姿勢で走行できる電動車いすを提供する。
【解決手段】電動セルフバランス型車いす(100)の駐車装置(10、10’)であって、一対のてこ(30、40)によって前記電動セルフバランス型車いす(100)のベース(20)に連結されており、前記てこ(30、40)の各々は、近位レバー(32、42)によって、前記てこ(30、40)の1つに拘束され好ましくはキー止めされたギアモータアセンブリ(60、60’)によって駆動可能な共有ギア(50、50’)に接続され、前述の近位レバー(32、42)の各々は、それぞれの遠位レバー(34、44)に関節連結される前記駐車装置(10、10’)において、前記遠位レバー(34、44)の各々は、それぞれのガイド(36、46)によって、前記車いす(100)の前記ベース(20)に接続され、地面に支持するためのそれぞれの支持脚(39、49)を有する。前記共有ギア(50、50’)は、互いに噛み合う一対の歯車(31、41)を有し、前記歯車(31、41)の各々は、一対の前記てこ(30、40)のそれぞれの前記近位レバー(32、42)に一体化されており、独自の回転軸(X、X’)を有し、前記ギアモータアセンブリ(60、60’)の作動によって前記一対の歯車(31、41)が同時に回転し、前記てこ(30、40)を上下に駆動することを特徴とする駐車装置(10、10’)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動セルフバランス型車いす(100)の駐車装置(10、10’)であって、一対のてこ(30、40)によって前記電動セルフバランス型車いす(100)のベース(20)に連結されており、前記てこ(30、40)の各々は、近位レバー(32、42)によって、前記てこ(30、40)の1つに拘束され好ましくはキー止めされたギアモータアセンブリ(60、60’)によって駆動可能な共有ギア(50、50’)に接続され、前述の近位レバー(32、42)の各々は、それぞれの遠位レバー(34、44)に関節連結された前記駐車装置(10、10’)において、前記遠位レバー(34、44)の各々は、それぞれのガイド(36、46)に沿って案内され、前記ガイド(36、46)は、前記車いす(100)の前記ベース(20)に拘束され、地面に支持するためのそれぞれの支持脚(39、49)を有し、前記共有ギア(50、50’)は、互いに噛み合う一対の歯車(31、41)を有し、前記歯車(31、41)の各々は、一対の前記てこ(30、40)のそれぞれの前記近位レバー(32、42)に一体化されており、独自の回転軸(X、X’)を有し、前記ギアモータアセンブリ(60、60’)の作動によって前記一対の歯車(31、41)が同時に回転し、前記てこ(30、40)を上下に駆動することを特徴とする駐車装置(10、10’)。
【請求項2】
前記共有ギア(50’)は、歯車(52)に作用するウォームスクリュー(51)を含み、前記歯車(52)は、前記共有ギア(50’)の前記歯車(31、41)の1つと噛み合う付加的歯車(54)を駆動することを特徴とする請求項1に記載の駐車装置(10’)。
【請求項3】
前記共有ギア(50、50’)は、前記歯車(31、41)の前記回転軸(X、X’)とは異なる回転軸(C)を支点とするホルダー(59)に収容されていることを特徴とする請求項1または2に記載の駐車装置(10、10’)。
【請求項4】
前記ギアモータアセンブリ(60、60’)は、前記ウォームスクリュー(51)に作用する一対のモータ(M、M’)を備えることを特徴とする請求項2に記載の駐車装置(10、10’)。
【請求項5】
前記遠位レバー(34、44)の各々は、それぞれのガイド(36、46)によって、前記ベース(20)に固定されたそれぞれの接続レバー(38、48)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の駐車装置(10)。
【請求項6】
前記駐車装置(10、10’)はさらに、前記駐車装置(10、10’)の安定性を確保するために、両方の前記支持脚(39、49)が地面に接しているときに、前記てこ(30、40)と前記共有ギア(50、50’)とで構成されるシステムの自由度を抑制するロックシステムを備えていることを特徴とする請求項1に記載の駐車装置(10、10’)。
【請求項7】
前記ロックシステムは、一対の電磁石(E、E’)を備え、前記電磁石は、歯付き要素(200)が前記電動セルフバランス型車いす(100)の支持フレームに一体化されたクラウンホイール(210)によってフックされる第1位置から、前記歯付き要素(200)が前記クラウンホイール(210)からフックを解除される第2位置まで、前記歯付き要素(200)を駆動するようになっていることを特徴とする請求項6に記載の駐車装置(10、10’)。
【請求項8】
地面に支持される前記支持脚(39、49)は、対応する前記遠位レバー(34、44)に対して関節連結されるようになっており、前記駐車装置(10、10’)に対して地面上でより良好な支持を提供することを特徴とする請求項1に記載の駐車装置(10、10’)。
【請求項9】
前記遠位レバー(34、44)は、前記遠位レバー(34、44)自体に存在するカム(37、47)を介して、それぞれの前記ガイド(36、46)によって案内され、前記駐車装置(10、10’)を格納位置から伸長位置へ、またはその逆へ切り換えることを特徴とする請求項1に記載の駐車装置(10、10’)。
【請求項10】
前記ギアモータアセンブリ(60、60’)は電気的に駆動することができることを特徴とする請求項1に記載の駐車装置(10、10’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、例えば、これに限定されるものではないが、少なくとも一人の人を輸送するため、あるいはロボット用途、つまり人が乗っていない状態の用途のためのセルフバランス型車いすの駐車装置、またはむしろ電動セルフバランス型車いすの駐車装置である。
【背景技術】
【0002】
下肢の運動機能が部分的にでも低下している人のために、電動セルフバランス型車いすがあることはよく知られている。具体的には、電動車いすを作動させるためのユーザ操作可能なベースと、このベースの両側にそれぞれ配置され、かつ走行面に支持された2つの車輪と、このベースに一体的に拘束され、座席が装備された支持フレームとを備えた、座った状態の人を輸送するための電動車いすがあることが知られている。特に、このタイプの電動車いすは、あらゆる作動条件下でもその重量をセルフバランスさせる手段も備えており、これはSEGWAY(登録商標)として知られる人輸送装置にも使用されている。
【0003】
車いすの重量をバランスさせるためのこのようなセルフバランス手段、またはバランス手段は、車いすの前進方向を変更するための追加手段とともに、このベース内に収容される。このタイプの車いすでは、前方および/または後方への移動は、ユーザの身体の前方/後方へのアンバランスによって達成される。
【0004】
また、車いすの起動は、人が車いすの座席に座った時点で行われ、その体重を利用してユーザの存在を検知し、車いすの電動操作を起動する。
【0005】
しかし、このタイプの車いすには、互いに平行かつ対向して配置された2つの車輪しか装備されていないため、作動していないとき、つまり内部のモータが作動していないときには安定しないという欠点がある。
【0006】
モータが作動している場合でも、車いすが安定した静止位置にあるときに、起こりうる予期しない外力によって車いすの安定性が失われ、非常に危険な結果を招く恐れがある。
【0007】
しかし、この点に関して、車いすには、非作動状態または駐車位置に維持されているときに、当該車いすを走行面に支持するための支持手段(いわゆる「駐車アセンブリまたは駐車装置」)が装備されている。
【0008】
特許文献1は、少なくとも1人の人を輸送するための電動セルフバランス型車いすに適用できる安定化アセンブリを例示しており、この安定化アセンブリは、一対の電動同軸車輪の間に配置されたプラットフォームを備え、プラットフォーム上の運転者の存在を検出し、バランスの変化に応じて電動車輪を制御するように適合された電子操縦ユニットを起動するように配置された荷重検出手段を搭載している。この安定化アセンブリは、当該プラットフォームの前部および後部にそれぞれ配置可能な一対の支持体を制御するてこを含み、前記座席上の運転者によって、地面支持の下降位置と操作不能な上昇位置との間で選択的に移動可能である。
【0009】
公知の安定化アセンブリのてこの動きは、車いすの座席の横および下に配置された手動操作レバーまたはバーによって、ユーザ自身が制御することができる。
【0010】
特許文献2には、少なくとも1人の人を輸送するための電動セルフバランス型車いすを例示しており、この電動セルフバランス型車いすは、電動セルフバランス型車いすを作動させるために操作可能なベースと、当該ベースの両側にそれぞれ配置され、走行面に支持された2つの車輪とを備えている。この電動セルフバランス型車いすは、ベースに一体的に拘束され、座席が装備された支持フレームと、少なくとも非作動状態のときにこの車いすを走行面に支持するための支持手段とを有する。支持手段は、地面に支持できる少なくとも1つの脚を備えている。また、脚を上昇位置と下降位置との間で移動およびロックする手段も有している。車いすがほぼ水平な位置に支持されるように、少なくとも走行面と接触しているときは脚が下がった位置にロックされる。
【0011】
特許文献3には、ジャイロポッドに取り付けられた座席を備えた車いすが記載されている。ここで、公知のように、ジャイロポッドという用語は、2つの平行な車輪を有するプラットフォーム(この場合は「いす」を支えるプラットフォーム)で構成され、ジャイロ安定化システムが装備された個別の電動車両を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2012/017335号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2606867号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第3106492号明細書
【0013】
ジャイロポッドのジャイロ安定化システムのおかげで、ユーザが前かがみになると、車いす-ユーザアセンブリの重心が前方に移動し、その結果、車いすを長手方向軸に沿って前方に移動させるための信号が電動車輪に送られる。同様に、ユーザが反り身になると、車いす-ユーザアセンブリの重心が後方に移動し、電動車輪のための信号が生成され、車いすを当該長手方向軸に沿って後方に移動させる。
【0014】
具体的には、ジャイロ安定化システムは、一連のセンサーから受信したデータから、ユーザが乗っている車いすの重心をリアルタイムで計算するようになっている電子ボードを備える。電子ボードはさらに、算出された重心位置に基づいて電動車輪を制御する。センサーは、例えば加速度計またはジャイロスコープである。センサーと電子ボードは、例えば車輪の間に横向きに置かれた電子ボックスに収納される。
【0015】
この装置は、サポートが休止位置にあり、ユーザが座っているときに起動システムを停止して、車いすの不要な動きを防止することを可能にするとともに、ユーザが座っている間に、脚が格納位置にあるときに起動システム35をフックし、脚が展開位置にあるときに起動システムのフックを解除するようになっている機械的接続手段も提供する。
【0016】
最後に、椅子は一対のシャンクを備えており、各シャンクの最初の部分には互いに噛み合う歯付き端部を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、平坦な地形でも急勾配の地形でも車いすを静止させるという問題は、この文献では扱われていない。
【0018】
従って、本発明の目的は、完全に平坦ではない、あるいは傾斜していたり、凹凸があったり、屈曲した走行面に置かれた場合でも、ほぼ水平な姿勢で走行できる電動車いすを提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、追加の複雑な電子制御システムを導入することなく、機械的要素のみによって公知技術の問題を解決できる電動車いすを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、電動セルフバランス型車いすの駐車装置によって達成され、一対のてこによって前記電動セルフバランス型車いすのベースに連結されており、前述のてこの各々は、近位レバーによって、前述のてこの1つに拘束され好ましくはキー止めされたギアモータアセンブリによって駆動可能な共有ギアに接続され、前述の近位レバーの各々は、それぞれの遠位レバーに関節連結された前記駐車装置において、前記遠位レバーの各々は、それぞれのガイドに沿って案内され、前記ガイドは、前記車いすの前記ベースに拘束され、地面に支持するためのそれぞれの支持脚を有し、前記共有ギアは、互いに噛み合う一対の歯車を有し、前記歯車の各々は、前記一対のてこのそれぞれの前記近位レバーに一体化されており、独自の回転軸を有し、前記ギアモータアセンブリの作動によって前記一対の歯車が同時に回転し、前記てこを上下に駆動することを特徴とする。
【0021】
この実施形態の利点には、本発明の装置を使用して、平坦な地形でも急勾配の地形でも、車いすを静止させることができるという事実が含まれる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記共有ギアは、前記歯車の回転軸とは異なる回転軸を支点とするホルダーに収容されている。
【0023】
この実施形態の利点は、モータがヒンジで取り付けられたホルダーのスイングシステムにより、急な斜面でも車いすを静止させることができる点である。
【0024】
特に、動きの最初の部分で脚を下ろす。どちらかの脚が地面に着くと、ホルダーは2番目の脚も地面に着くまでスイングする。
【0025】
これにより、片方の脚に加えられる力を最小限に抑えることができ、両方の脚が地面に着いているときには支持反作用が生じる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、ギアモータアセンブリは、共有ギアに作用する一対のモータを備える。
【0027】
この解決策の利点は、2つのモータのうち1つが故障しても、もう1つのモータが残って動きを確保し、特に2つの近位レバーが同時に動くようにすることである。
【0028】
本発明のさらなる実施形態によれば、本駐車装置は、この駐車装置の安定性を確保するために、両方の脚が地面に着いているときにてこおよびギアモータからなるシステムの自由度を抑制するロックシステムをさらに備える。
【0029】
この解決策の利点は、ロックシステムが駐車装置の安定性を確保することである。そうでなければ、ベースにトルクを加えることによって、ベースが回転し、車いすが前進することになり、駐車装置が不安定になる。
【0030】
本発明のさらなる特徴は、従属請求項から推測することができる。
【0031】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面に描かれた図を用いて、非限定的な例として示される以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態による駐車装置が装備された電動セルフバランス型車いすの側面図である。
【
図2】車いすが平坦面にあるとき、格納位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図3】車いすが平坦面にあるとき、地面に接触している伸長位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図4】車いすが10°の勾配の斜面にあるとき、格納位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図5】車いすが10°の勾配の斜面にあるとき、地面に接触している伸長位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図6】車いすが15°の勾配の斜面にあるとき、格納位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図7】車いすが15°の勾配の斜面にあるとき、地面に接触している伸長位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図8】車いすが20°の勾配の斜面にあるとき、格納位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図9】車いすが20°の勾配の斜面にあるとき、地面に接触している伸長位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【
図10】本発明の代替的実施形態による、駐車装置が装備された電動セルフバランス型車いすの一部の側面図である。
【
図13】側方伸長位置にある
図10の駐車装置の側面図である。
【
図14】ロック位置にある
図10の駐車装置のロックシステムの側面図である。
【
図15】ロック解除位置にある
図10の駐車装置のロックシステムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を添付図面を特に参照しながら説明する。
【0034】
特に、
図1は、本発明の一実施形態による、全体的に符号100で示され、駐車装置が装備された電動セルフバランス型車いすの側面図を示す。
【0035】
本発明をより詳細に説明するために、電動セルフバランス型車いす100は、例えば、部分的にでも下肢の運動能力が欠如している人またはロボット用途に使用することができるが、これに限定されるものではないことを明記しておく必要がある。
【0036】
このような車いすは、車いすを作動させるためにユーザが操作可能なベース20と、ベース20の両側にそれぞれ配置され、走行面に支持される2つの車輪110と、ベースに一体的に拘束され、座席130が装備された支持フレーム120とを備える。
【0037】
特に、このタイプの電動車いすは、例えば、SEGWAY(登録商標)という名前で知られる人を輸送するための装置にも使用されているタイプの、あらゆる作業条件下で重量をセルフバランスさせる手段も備えている。
【0038】
車いすの重量をバランスさせるためのこのようなセルフバランス手段、またはバランス手段は、車いすの前進方向を変更するための追加手段とともに、前記ベース内に収容される。このタイプの車いすでは、前方および/または後方への動き、場合によっては(操縦)方向は、ユーザの身体を前方および/または後方、さらには側方にアンバランスにすることで実現される。
【0039】
あるいは、または加えて、ドライブハンドルバーは、同じ車両の移動(操縦)方向に加えて、その車両の前方および/または後方の動きを決定すること、またはもっぱら決定することに寄与することができる。
【0040】
さらに、いくつかの好ましい実施形態では、車いすの起動は、人が車いすの座席に座り、その体重がユーザの存在を検出し、車いすの電動操作を起動するために使用される時点で達成される。
【0041】
あるいは、車いすを作動させるためには、ユーザの体重およびユーザ自身による手動制御の操作を同時に検出することが必要である。
【0042】
本明細書に記載のセルフバランス型車いすは、本発明の一態様によれば、下降および上昇が可能な支持脚を有するタイプの駐車装置を備えている。この駐車装置は、操作者が手動で作動させることが好ましく、車椅子が静止しているときにのみ作動を開始する。
【0043】
図2は、車いすが平坦面にあるとき、格納位置にある、全体的に符号10で示される本発明の駐車装置の側面図を示す。
【0044】
特に、本発明の駐車装置10は、前後一対のてこ30、40によって、セルフバランス型車いす100のベース20に接続されている。
【0045】
前述のてこ30、40の各々は、近位レバー 32、42によって、前述のてこ30、40の一方にキー止めされた、あるいはいずれにしても拘束されたギアモータアセンブリ60によって駆動可能な共有ギア50に接続されている。
【0046】
具体的には、ギアモータアセンブリ60は、ウォームスクリュー51に作用する一対のモータM、M’を備えている。
【0047】
より具体的には、前部てこ30は近位レバー32を介して共有ギア50に接続され、後部てこ40は近位レバー42を介して共有ギア50に接続される。
【0048】
ギアモータアセンブリ60は、好ましくは、てこ30、40の一方、例えば前部てこ30または後部てこ40にキー止めされる。
【0049】
前部てこ30の近位レバー32は、前部てこ30の遠位レバー34に関節連結されており、後部てこ40の近位レバー42は、後部てこ40の遠位レバー44に関節連結されている。
【0050】
具体的には、本明細書に示された本発明の実施形態では、前部てこ30の近位レバー32は、その一端がそれぞれの遠位レバー34の端部に関節連結されており、同様に、後部てこ40の近位レバー42は、その一端がそれぞれの遠位レバー44の端部に関節連結されている。
【0051】
前部てこ30の遠位レバー34は、地面に支持される支持脚39を有し、後部てこ40の遠位レバー44は、地面に支持される支持脚49を有するので、前部てこ30と後部てこ40とのアセンブリは電動車いす100の「シャンク」の機械的等価物を形成し、つまり、電動車いす100を平面または斜面に沿って駐車するときに、電動車いす100自体に前部支持と後部支持とが設けられる。
【0052】
前部てこ30および後部てこ40の遠位レバー34、44の支持脚39、49は、それぞれの近位レバー32、42と係合していない遠位レバー34、44の端部にそれぞれ形成されている。
【0053】
遠位レバー34、44の各々は、それぞれのガイド36、46(例えば摺動ブロックの形)によって、電動車いす100のベース20に固定されたそれぞれの接続レバー38、48に接続されている。
【0054】
具体的には、前部てこ30の遠位レバー34は、前部ガイド36を介して前部接続レバー38に接続されており、この前部接続レバー38は電動車いす100のベース20に固定されており、一方、後部てこ40の遠位レバー44は、後部ガイド46を介して後部接続レバー48に接続されており、この後部接続レバー48も電動車いす100のベース20に固定されている。
【0055】
前部ガイド36および後部ガイド46は、それぞれの遠位レバー34、44がそれぞれの接続レバー38、48に対して、より具体的にはベース20に固定された接続レバー38、48の端部に対して摺動および回転することを可能にする。
【0056】
あるいは、遠位レバー34、44を電動車いす100のベース20に接続する他の方法として、一般的なガイド36、46(本明細書では機械的拘束の一般的な意味で理解される)によって可能であり、ガイド36、46は、これらの遠位レバー34、44をベース20に接続し、遠位レバー34、44がベース20に対して優先的に回転移動できるようにする。例えば、ベース20に直接ヒンジで取り付けられ、それぞれの遠位レバー34、44が摺動する摺動ブロックからなるガイド36、46を使用する、または遠位レバー34、44とベース20との間の予想される相対運動を可能にする他の公知の機械的拘束を使用することができる。
【0057】
共有ギア50は、一対の歯車31、41を有し、この歯車31、41の各々は、それぞれのてこ30、40のそれぞれの近位レバー32、42と一体化されている。
【0058】
より具体的には、共有ギア50は、前部てこ30の近位前部レバー32と一体化され、回転軸Xを有する前部歯車31を有する。
【0059】
さらに、共有ギア50は、後部てこ40の近位後部レバー42と一体化され、回転軸X’を有する後部歯車41を有する。
【0060】
また、共有ギア50では、前部歯車31が後部歯車41と噛み合っている。
【0061】
さらに、共有ギア50は、歯車31、41の回転軸X、X’とは異なる回転軸Cを支点とするホルダー59に収容されている。
【0062】
電動セルフバランス型車いす100の駐車装置10の操作は以下のように行われる。
【0063】
ギアモータアセンブリ60の作動により、一対の歯車31、41が同時に回転し、これにより前述の前部てこ30および後部てこ40を上下に駆動する。
【0064】
具体的には、
図2及び
図3の場合、駐車装置10は、車いす100が平坦な面上にある状況では、格納位置から伸長位置に切り替わる。
【0065】
ギアモータアセンブリ60の作動と、その結果生じる一対の歯車31、41の同時回転により、前部てこ30の近位レバー32がその回転軸Xの周りを回転し、後部てこ40の近位レバー42がその回転軸X’の周りを回転する。
【0066】
近位レバー32は遠位レバー34に作用し、遠位レバー34は地面に接するまでガイド36によって下方に案内され、同様に、近位レバー42は遠位レバー44に作用し、遠位レバー44は地面に接するまでガイド46によって下方に案内され、その結果、駐車装置10の構成が
図3に示す位置に導かれる。
【0067】
ギアモータアセンブリ60を反対方向に作動させることにより、駐車装置10は、上記と同じ動きを逆に繰り返すことができ、駐車装置10を伸長位置から格納位置へ導くことができる。
【0068】
図4は、車いすが10°の勾配の斜面にあるとき、格納位置にある
図1の駐車装置の側面図である。
【0069】
ギアモータアセンブリ60の作動と、その結果生じる一対の歯車31、41の同時回転により、前部てこ30の近位レバー32がその回転軸Xの周りを回転し、後部てこ40の近位レバー42がその回転軸X’の周りを回転する。
【0070】
近位レバー32は遠位レバー34に作用し、遠位レバー34は地面に接するまでガイド36によって下方に案内され、同様に、近位レバー42は遠位レバー44に作用し、遠位レバー44はガイド46によって下方に案内される。
【0071】
しかし、前の場合とは異なり、車いす100は10°の勾配を有する斜面に置かれているため、この場合には、遠位レバー34とそれぞれの脚39は、遠位レバー44とその脚49の接触よりも早く地面Tに接触する。
【0072】
遠位レバー34とそれぞれの脚39が地面Tに接触した瞬間、共有ギア50はその回転中心Cを中心に回転し、遠位レバー44とそれぞれの脚49が地面Tに接触することも可能にし、その結果、駐車装置は
図5に示す位置に導かれ、ベース20は依然として水平位置のままである。
【0073】
この場合も、ギアモータアセンブリ60を反対方向に作動させることにより、駐車装置は、上記と同じ作動を逆に繰り返すことができ、駐車装置を伸長位置から格納位置、すなわち
図4に示す位置に導くことができる。
【0074】
図6および
図7は、上記の
図4および
図5に示した動きと同様の動きを示しており、唯一の違いは、この場合、車いす100が15°の勾配の斜面上にあることである。
【0075】
この場合、
図7に示す最終位置では、共有ギア50は
図5に示す位置よりも傾斜しているが、ベース20は依然として水平位置のままである。
【0076】
図8および
図9は、上記の
図4および
図5に示した動きと同様の動きを示しており、唯一の違いは、この場合、車いす100が20°の勾配の斜面上にあることである。
【0077】
この場合、
図9に示す最終位置では、共有ギア50は
図7に示す位置よりも傾斜しているが、ベース20は依然として水平位置のままである。
【0078】
駐車装置10はさらに、両脚39、49が地面に接しているときに、てこ30、40とギアモータ50とで構成されるシステムの自由度を抑制するロックシステムを備えている。
【0079】
このロックシステムは、ロック位置が
図14に、ロック解除位置が
図15に示されている。
【0080】
特に、ロックシステムは、歯付き要素200がセルフバランス型車いす100の支持フレーム120に一体化されたクラウンホイール210によってフックされる第1位置から、歯付き要素200が前述のクラウンホイール210からフックを解除される第2位置まで、歯付き要素200を駆動するようになっている一対の電磁石E、E’を備えている。
【0081】
この第1位置では、ロックシステムは駐車装置10の安定性を確保する。さもないと、ベース20にトルクを加えることによってベース20が回転し、車いす100を前進させるので、駐車装置10は不安定になってしまう。
【0082】
さらに、一対の電磁石E、E’が作動すると、クラウンホイール210のフックが外れ、ロックシステムのロックが解除される。
【0083】
図10は、本発明の代替的実施形態による、駐車装置10’が装備された電動セルフバランス型車いすの一部の側面図である。
【0084】
この実施形態は、歯車52に作用するウォームスクリュー51を含む共有ギア50’を駆動するギアモータアセンブリ60’を提供する点で、
図1~9の実施形態と異なり、この歯車52は、共有ギア50’の後部歯車41と噛み合う付加的歯車54を駆動する。
【0085】
この場合も、ギアモータアセンブリ60’は、前述のウォームスクリュー51に作用する一対のモータM、M’を備える。
【0086】
共有ギア50’の後部歯車41の回転は、上記と同様に、共有ギア50’の前部歯車31に伝達される。
【0087】
あるいは、付加的歯車54が共有ギア50’の前部歯車31と噛み合うように、上述の運動学的機構を再構成することもできる。
【0088】
特に、ギアモータアセンブリ60’の作動によりウォームスクリュー51が作動し、上述の運動機構に従って一対の歯車31、41が同時に回転し、前部てこ30の近位レバー32がその回転軸Xの周りを回転し、後部てこ40の近位レバー42がその回転軸X’の周りを回転する。
【0089】
近位レバー32は遠位レバー34に作用し、遠位レバー34は地面に接するまでガイド36によって下方に案内され、同様に、近位レバー42は遠位レバー44に作用し、遠位レバー44はガイド46によって下方に案内される。
【0090】
具体的には、遠位レバー34は、遠位レバー34自体に存在するカム37のおかげでガイド36によって案内され、一方、遠位レバー44は、遠位レバー44自体に存在するカム47のおかげでガイド46によって案内されるので、駐車装置10’は、
図11の格納位置から
図12の伸長位置に切り替わる。
【0091】
ギアモータアセンブリ60’を反対方向に作動させることにより、駐車装置10’は、上記と同じ動きを逆に繰り返すことができ、駐車装置10’を伸長位置(
図12)から格納位置(
図11)へ導くことができる。
【0092】
車いす100が傾斜地にある場合、遠位レバー34とそれぞれの脚39が地面Tに接触した瞬間、共有ギア50’はその回転中心C’を中心に回転し、遠位レバー44とそれぞれの脚49が地面Tに接触することを可能にし、その結果、駐車装置10’を
図13に示す位置に導く。
【0093】
脚39は、脚49が遠位レバー44に対して関節連結することができるのと同様に、遠位レバー34に対して関節連結することができ、駐車装置10’に対してより良い地面支持を提供することができる。
【0094】
説明したいずれの実施形態においても、ギアモータアセンブリ60、60’は、例えば車いす100のユーザが利用可能な適切な制御によって電気的に駆動することができる。
【0095】
付随的な理由または特定の理由によって示唆される変更または改良は、それによって本発明の範囲を逸脱することなく、先に説明した本発明に対して行うことができる。
【0096】
例えば、近位レバー32、42をX、X’軸に対して同時に回転させ、運動機構の点で同じ結果を得るために、ウォームスクリューに作用する一対のモータの代わりに、電子的に同期する2つのモータを取り付けることができる。
【符号の説明】
【0097】
10、10’ 駐車装置
20 ベース
30 前部てこ
31 前部歯車
32 近位レバー
34 遠位レバー
36 前部ガイド
37 カム
38 前部接続レバー
39 支持脚
40 後部てこ
41 後部歯車
42 近位レバー
44 遠位レバー
46 後部ガイド
47 カム
48 後部接続レバー
49 支持脚
50、50’ 共有ギア、ギアモータ
51 ウォームスクリュー
52 歯車
54 付加的歯車
59 ホルダー
60、60’ ギアモータアセンブリ
100 電動セルフバランス型車いす
110 車輪
120 支持フレーム
130 座席
200 歯付き要素
210 クラウンホイール
C、C’ 回転軸、回転中心
E、E’ 電磁石
M、M’ モータ
T 地面
X、X’ 回転軸
【国際調査報告】