(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】脱N-アセチル化ポリシアル酸(dPSA)結合剤およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20250117BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250117BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250117BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C07K16/00
C12N1/21 ZNA
C12N1/19
C12N1/15
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61K31/7088
A61P35/02
A61K47/68
A61K48/00
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024542318
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 US2023060678
(87)【国際公開番号】W WO2023137460
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524266630
【氏名又は名称】サッカロ、インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SACCHARO, INC.
【住所又は居所原語表記】6401 Chelton Drive, Oakland, California 94611, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】モエ、グレゴリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】プレスタ、レオナルド ジー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
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4C084AA13
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4C084NA14
4C084ZB261
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4C084ZB272
4C085AA13
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4C085AA16
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4C085BB36
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4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
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4C085GG04
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4C085GG10
4C086AA01
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4C086EA16
4C086MA01
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4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
dPSA結合剤、該結合剤の免疫グロブリン重鎖および軽鎖ポリペプチド、ならびにdPSA結合剤を使用して癌を治療し、癌細胞を死滅させる方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むdPSA結合剤、
(a)SEQ ID NO:51または少なくともその相補性決定領域(CDR)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:52もしくは53または少なくともそのCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域;
(b)SEQ ID NO:17~20のいずれかまたは少なくともその相補性決定領域(CDR)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:21または少なくともそのCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域;
(c)SEQID NO:1~4のいずれかまたは少なくともその相補性決定領域(CDR)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:5または少なくともそのCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域;または
(d)SEQ ID NO: 35または少なくともその相補性決定領域(CDR)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;およびSEQ ID NO: 36または少なくともそのCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域。
【請求項2】
以下を含む、dPSA結合剤、
(a)
SEQ ID NO: 6-9のいずれか1つを含むCDRH1;
SEQ ID NO: 10を含むCDRH2;
SEQ ID NO: 11を含むCDRH3;
を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域、および
SEQ ID NO: 12を含むCDRL1;
SEQ ID NO:13を含むCDRL2;および
SEQ ID NO: 14を含むCDRL3;
を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域、
(b)
SEQ ID NO: 24-27のいずれか1つを含むCDRH1;
SEQ ID NO: 28を含むCDRH2;
SEQ ID NO: 29を含むCDRH3;
を含む免疫グロブリン重鎖可変領域および
SEQ ID NO: 30を含むCDRL1;
SEQ ID NO:31を含むCDRL2;および
SEQ ID NO: 32を含むCDRL3;
を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域、
(c)
SEQ ID NO: 39を含むCDRH1;
SEQ ID NO:40を含むCDRH2;および
SEQ ID NO: 41または47を含むCDRH3;
を含む免疫グロブリン重鎖可変領域および
SEQ ID NO: 42を含むCDRL1;
SEQ ID NO:43または56を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:44を含むCDRL3;
を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域、または
(d)
SEQ ID NO: 45を含むCDRH1;
SEQ ID NO:46を含むCDRH2;および
SEQ ID NO: 41または47を含むCDRH3;
を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
SEQ ID NO: 48を含むCDRL1;
SEQ ID NO:49または56を含むCDRL2;および
SEQ ID NO: 50を含むCDRL3;
を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域。
【請求項3】
dPSA結合剤が、抗体、抗原結合抗体フラグメント、それらのコンジュゲート、またはキメラ抗原レセプターである、請求項1または2に記載のdPSA結合剤。
【請求項4】
dPSA結合剤が、F(ab')
2 フラグメント、Fab'フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、scFvフラグメント、dsFvフラグメント、またはdAbフラグメントである、請求項1~3のいずれかに記載のdPSA結合剤。
【請求項5】
dPSA結合剤が、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介し得るFc領域を含む、請求項1~3のいずれかに記載のdPSA結合剤。
【請求項6】
dPSA結合剤がIgG1またはIgG4抗体である、請求項1~3のいずれかに記載のdPSA結合剤。
【請求項7】
dPSA結合剤がアフコシル化されている、請求項1~6のいずれかに記載のdPSA結合剤。
【請求項8】
(a)請求項1~7のいずれか1項に記載のdPSA結合剤またはそれをコードする核酸、および(b)薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のdPSA結合剤の免疫グロブリン重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸であって、任意にベクター中に存在する核酸。
【請求項10】
免疫グロブリン重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のリーダー配列をさらにコードする、請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
請求項9または10に記載の核酸を含む細胞。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤を発現する細胞株。
【請求項13】
請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤を調製する方法であって、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドをコードする核酸配列を細胞内で発現させることを含む方法。
【請求項14】
dPSAを発現する癌細胞を死滅させる方法であって、癌細胞を請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤または請求項8に記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項15】
対象におけるdPSA発現を特徴とする癌の治療方法であって、請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤または請求項8に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項16】
dPSAを発現する細胞にペイロードを送達する方法であって、ペイロードに結合した請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤と細胞を接触させることを含む方法。
【請求項17】
ペイロードが細胞毒性分子または検出可能な標識である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞が癌細胞である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
生物学的流体または組織試料中の可溶性dPSAを検出する方法であって、生物学的流体または組織試料を、任意選択で検出可能な標識に結合した、請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤と接触させることを含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、該方法が、癌を検出するため、またはdPSA結合剤による治療のために患者を選択するために使用される、方法。
【請求項21】
癌を治療するための、請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤、または請求項8に記載の組成物。
【請求項22】
癌を治療するための医薬の製造のための、請求項1~7のいずれかに記載のdPSA結合剤、または請求項8に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願との相互参照
本特許出願は、2022年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/299,841号および2022年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/299,843号の利益を主張するものであり、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による取り込み
本明細書中に全体として参考として援用されるのは、本明細書と同時に提出され、以下のように特定される、コンピュータ読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リストである:2023年1月13日に作成された "514163.xml "という名称の1つの56,304バイトのXMLファイル。
【0003】
発明の背景
一般に、抗癌免疫療法の目標は、腫瘍細胞から排出も分泌もされないが高発現している安定した抗原を同定することであり、この抗原を免疫療法の基礎として、例えば、癌ワクチンの抗原として、または抗体ベースの癌治療の標的として使用することができる。最適には、このような腫瘍抗原は、治療される被験体の非癌性細胞との交差反応性から生じ得る有害な副作用を低減するように、癌性標的細胞に対して許容される程度に特異的である。交差反応性が再増殖可能な細胞に影響する場合は、免疫療法の特異性の要件を緩和してもよい。
【0004】
細胞表面タンパク質の変化したグリコシル化パターンは、ほとんど全てのタイプの癌で起こる。糖タンパク質や糖脂質の過剰なシアリル化は、転移性癌における細胞接着の異常な制御の中心であり、成体正常組織の細胞では発現されないが、発生過程では通常発現される遺伝子の再発現及び/又は過剰発現から次々起こる。特に、ポリα2→8 N-アセチルノイラミン酸またはポリシアル酸(polySia)は、主に胎児発生時に発現し、発生後はごくわずかな再生組織に限定される。ポリシアル酸の脱N-アセチル化型(dPSA)は癌細胞の表面に存在するが、発生後のヒト細胞の表面には存在せず、癌の同定と治療のための腫瘍抗原として機能する。
【0005】
したがって、dPSAを発現している細胞に結合できる新しい薬剤が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において提供されるのは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ポリペプチドを含むdPSA結合剤である。また、本明細書において提供されるのは、dPSA結合剤を使用して癌を治療し、癌細胞を殺し、及びdPSAを発現する細胞にペイロードを送達する方法である。
【0007】
以下の詳細な説明から明らかなように、関連する組成物および方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、SAC-1抗体の平均蛍光強度(MFI)とSEAM3参照抗体の濃度を比較したグラフで、試験抗体は参照抗体と同じエピトープに結合しないことを示す。
【
図2】
図2は、SAC-2抗体の平均蛍光強度(MFI)とSEAM3参照抗体の濃度を比較したグラフで、試験抗体は参照抗体と同じエピトープに結合しないことを示す。
【
図3】
図3Aと3Bは、SAC-1、SAC-2及びコントロールIgG1抗体によって共沈降したタンパク質をSDS-PAGE上で示したものである。
【
図4】
図4A、4Bおよび4Cは、正常ヒト乳房組織(
図4A)および乳房腫瘍(
図4C)のSAC-3染色を、対照IgG2a抗体による腫瘍の染色(
図4B)と比較して示している。
【
図5】
図5A、
図5B、および
図5Cは、SAC-1抗体(
図5A)またはSAC-2抗体(
図5B)の量と、さまざまな細胞株に対する各抗体のADCCを示す相対発光単位(RLU)の対比、および定量値(
図5C)を示したグラフである。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、ヒトA375メラノーマ(
図6A)およびMDA-MB-231乳がん(
図6B)細胞株に対するADCC活性に対するアフコシル化抗体の効果を示す、アフコシル化SAC-2.1CおよびSAC-2.1D(それぞれ「SAC-2.1CaFUC」および「SAC-2.1DaFUC」と呼ぶ)の濃度に対する殺細胞性をプロットしたグラフである。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、ヒト黒色腫のA375異種移植マウスモデルにおける腫瘍増殖に対するSAC-1.1(
図7A)およびSAC-2(
図7B)処置の用量依存性を示す。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、ヒト乳がんのMDA-MB-231異種移植マウスモデルにおいて、ビヒクル対照およびシクロホスファミド処理と比較したSAC-1.1、マウスSAC-2、およびSAC-2.1Cの腫瘍増殖に対する効果(
図8A)、ならびに腫瘍増殖に対するSAC-2.1Cと組み合わせたヒトPBMCの添加の効果(
図8B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
dPSAはポリシアル酸の脱N-アセチル化型(dPSA)であり、癌細胞の表面に見られるが、他の非癌性発生後ヒト細胞には見られない(Granoffら, J. Immunol.160(1):5028-36 (1998); Moeら, J. Immunol.182(10):6610-7 (2009); Moeら, Infect Immunol.73(4):2123-8 (2005); Moeら、J. Exp.Clin.Cancer Res.40(1):293 (2021); Steirerら, PLoS ONE 6:e27249 (2011))。細胞表面のdPSAはがん細胞に特有であり、異なるがん間で広く発現しているため、dPSAを発現する細胞と優先的に結合する剤は、診断と治療の両方でがん細胞を標的とするために使用することができる。
【0010】
ヒトにはポリシアル酸を合成する酵素をコードする2つの遺伝子、ST8SIA2とST8SIA4がある(それぞれポリシアル酸転移酵素ST8SIA2とST8SIA4)。両遺伝子ともヒトでは胎児発生期に高発現するが(Angataら、J. Biol.Chem., 272(11): 7182-90 (1997))、ST8SIA4は主にリンパ系組織およびリンパ球で発現される(Drake et al., PNAS 106(29):11995-2000 (2009));ST8SIA2は、ノーザンブロットに基づくと、いかなる成人の正常組織にも有意なレベルでは存在しないようである(Angata et al., J. Biol.Chem., 272(11): 7182-90 (1997))。
【0011】
ヒトではいくつかのタンパク質がポリシアリル化されていることが確認されている(例えば、Curreliら、J. Biol.Chem., 282(42):30346-56 (2007); Finneら, Biochem.Biophys.Res. Commun.112(2):482-7 (1983); Simonら, J. Biol.Chem., 288(26):18825-33 (2013); Werneburgら, Glia, 64(8):1314-30 (2016); Werneburgら, Glia, 63(7):1240-55 (2015); Yabeら, J. Biol.Chem., 278(16):13875-80 (2003))。神経細胞接着分子(NCAM)は、特に胎児期の発生において最も豊富であり、最も徹底的に研究されている(Rutishauser, U., Nat'l Rev. Neurosci., 9(1):26-35 (2008))。ヒトのがんの多くがポリシアル酸NCAMを異常に発現していると報告され(Amoureauxら, BMC Cancer, 10: 91 (2010); Gluerら, Pediatr.Res. 43(1):145-7 (1998); Rothら、Am.J. Pathol.133(2):227-40 (1988); Tanakaら、Cancer Res. 60(11): 3072-80 (2000))、細胞間および細胞と細胞外マトリックスとの相互作用を媒介するその役割は、転移や臨床的予後不良と関連している(Amoureauxら、BMC Cancer, 10: 91 (2010); Tanakaら、Cancer Res. 60(11): 3072-80 (2000))。最近、本発明者はヌクレオリンをdPSAに修飾または関連するタンパク質として同定し、細胞表面のdPSAがST8SIA2の発現に依存することを示した(Moeら、J. Exp.Clin.Cancer Res. 40(1):293 (2021))。
【0012】
本明細書に提供されるのは、dPSAを発現する細胞、特に癌細胞に選択的に結合する結合剤(例えば、抗体または抗体フラグメント)である。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、dPSAで修飾されたヌクレオリンに結合する。いかなる特定の理論または作用機序に拘束されることを望むものではないが、結合剤は、1つ以上のdPSA残基によって少なくとも部分的に規定されるエピトープを含む抗原(例えば、ヌクレオリン)に結合すると考えられる。従って、結合剤は、以下、"dPSA結合剤 "と称する。
【0013】
本明細書で提供されるdPSA結合剤は、Ig重鎖および軽鎖ポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、それぞれ少なくともIg重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域を含む。Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域はそれぞれ、順番に通常CDR1、CDR2、またはCDR3と呼ばれる3つの相補性決定領域(CDR)を含む。CDR領域はまた、それぞれ重鎖または軽鎖を示す命名法において「H」または「L」を用いて、すなわちCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、またはCDRL3と呼ぶこともできる。所与のIg配列のCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどのいくつかの従来の番号付けスキームのいずれかによって決定することができる(これらは、当該分野で広く知られ、公表文献に記載されている番号付けスキームの一般的に使用される名称である、例えば、「Kabat」番号付けスキームを記載している、Kabatら、 Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, NIH (1991); 「Chothia」番号付けスキームを記載している、Chothiaら、Canonical Structures for the Hypervariable Regions of Immunoglobulins, J. Mol.Biol., 196:901-917 (1987)およびAl-Lazikaniら, Standard Conformations for the Canonical Structures of Immunoglobulins, J. Mol.Biol.、273:927 - 948 (1997)、;「Martin」または「Enhanced Chothia」番号付けスキームを記載しているAbhinandanら、Analysis and Improvements to Kabat and Structurally Correct Numbering of Antibody Variable Domains、Mol.Immunol., 45: 3832 - 3839 (2008)、;「IMGT」番号付けスキームを記載しているLefrancら, The IMGT unique numbering for immunoglobulins, T cell Receptors and Ig-like domains, The Immunologist, 7: 132-136 (1999)およびLefrancら, IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and I superfamily V-like domains, Dev.Comp. Immunol., 27:55-77 (2003); 及び「AHo」番号付けスキームを記載しているHoneggerら、Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool, J. Mol.Biol. 309: 657 - 670 (2001)を参照)。CDRの同定はまた、関連する経験的結合データ、例えば、結合剤とその標的(例えば、結合エピトープを含む抗原またはその一部)との相互作用の結晶学的研究を通して、任意に前述の番号付けシステムのいずれかと組み合わせて行うことができる。
【0014】
本明細書で提供されるdPSA結合剤は人工のものであり、天然には存在しない。これらは実験室技術によって生成されたものであり、したがって、組換えまたは合成アミノ酸配列を含む組換えまたは合成分子と適切にみなされる。Ig重鎖および軽鎖ポリペプチドは、それらが産生される環境(例えば、細胞培養)から除去され、任意の程度まで精製されるという意味で、「単離」され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:1~4のいずれかまたは少なくともそのCDRを含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:5または少なくともそのCDRを含むIg軽鎖可変領域を含む。CDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどの任意の既知の番号付けスキームを使用して決定され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 1~4のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 5の軽鎖可変領域、またはKabatによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 1~4のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 5の軽鎖可変領域、またはChothiaによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 1~4のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 5の軽鎖可変領域、またはMartinによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 1~4のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 5の軽鎖可変領域、またはIGMTによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 1~4のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 5の軽鎖可変領域、またはAHoによって決定される少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、Ig重鎖可変領域および軽鎖可変領域の以下の組み合わせのいずれか、またはKabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoのいずれかによって決定される、少なくともそのCDRを含む:
【0016】
【0017】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:17~20のいずれかまたは少なくともそのCDRを含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:21または少なくともそのCDRを含むIg軽鎖可変領域を含む。CDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどの任意の既知の番号付けスキームを使用して決定され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO:17~20のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO:21の軽鎖可変領域、またはKabatによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 17~20のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 21の軽鎖可変領域、またはChothiaによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 17~20のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 21の軽鎖可変領域、またはMartinによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 17~20のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 21の軽鎖可変領域、またはIGMTによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO:17~20のいずれかの重鎖可変領域およびSEQ ID NO:21の軽鎖可変領域、またはAHoによって決定される少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、Ig重鎖可変領域および軽鎖可変領域の以下の組み合わせのいずれか、またはKabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoのいずれかによって決定される、少なくともそのCDRを含む:
【0018】
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域を含むdPSA結合剤であり、ここで、Ig重鎖可変領域は、SEQ ID NO:6~9または24~27のいずれか1つを含むCDR1、SEQ ID NO:10または28を含むCDR2、およびSEQ ID NO:11または29を含むCDR3;ならびにIg軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:12または30を含むCDR1、SEQ ID NO:13(RMS)または31を含むCDR2、およびSEQ ID NO:14または32を含むCDR3を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域を含むdPSA結合剤であり、ここで、Ig重鎖可変領域は、SEQ ID NO:6~9のいずれか1つを含むCDR1、SEQ ID NO:10を含むCDR2、およびSEQ ID NO:11を含むCDR3を含み;そしてIg軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:12を含むCDR1、SEQ ID NO:13を含むCDR2、およびSEQ ID NO:14を含むCDR3を含む。
【0021】
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域を含むdPSA結合剤であり、ここで、Ig重鎖可変領域は、SEQ ID NO:24~27のいずれか1つを含むCDR1、SEQ ID NO:28を含むCDR2、およびSEQ ID NO:29を含むCDR3を含み;そしてIg軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:30を含むCDR1、SEQ ID NO:31を含むCDR2、およびSEQ ID NO:32を含むCDR3を含む。
【0023】
【0024】
本開示のさらに別の態様によれば、dPSA結合剤は、SEQ ID NO.1~4のいずれかに対し、少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含む、Ig軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:15に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖ポリペプチド;およびSEQ ID NO:16に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖ポリペプチドを含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域は、配列の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを含む(保持する)ことができ、このCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoのような任意の公知の番号付けスキームを使用して、または本明細書において別様に規定されるように決定され得る(例えば、上記のSEQ ID NO:6~14)。いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1~4のうちの1つを含み、Ig軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 5を含む。 いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、それぞれSEQ ID NO: 15およびSEQ ID NO: 16を含むIg重鎖および軽鎖ポリペチドを含む。
【0025】
本開示のさらに別の態様によれば、dPSA結合剤は、SEQ ID NO.17~20のいずれかに対し、少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:21に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO: 22に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖ポリペプチド;およびSEQ ID NO: 23に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖ポリペプチド;を含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを含む(保持する)ことができ、このCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoのような任意の公知の番号付けスキームを使用して、または本明細書において別様に規定されるように決定され得る(例えば、上記のSEQ ID NO:6~14または24~32)。いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:17~20のうちの1つを含み、Ig軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:21をそれぞれ含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、それぞれSEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23を含むIg重鎖および軽鎖ポリペチドを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、それぞれSEQ ID NO: 33および34を含むIg重鎖および軽鎖ポリペプチドを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO: 35または少なくともそのCDRを含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO: 36または少なくともそのCDRを含むIg軽鎖可変領域を含む。CDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどの任意の既知の番号付けスキームを使用して決定され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO:35の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:36の軽鎖可変領域、またはKabatによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 35の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 36の軽鎖可変領域、またはChothiaによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 35の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 36の軽鎖可変領域、またはMartinによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 35の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 36の軽鎖可変領域、またはIGMTによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 35の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 36の軽鎖可変領域、またはAHoによって決定される少なくともそのCDRを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:51または少なくともそのCDRを含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:52または53または少なくともそのCDRを含むIg軽鎖可変領域を含む。CDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどの任意の既知の番号付けスキームを使用して決定され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO:51の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:52もしくは53の軽鎖可変領域、またはKabatによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 51の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 52もしくは53の軽鎖可変領域、またはChothiaによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 51の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 52もしくは53の軽鎖可変領域、またはMartinによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 51の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 52もしくは53の軽鎖可変領域、またはIGMTによって決定された少なくともそのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、SEQ ID NO: 51の重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 52もしくは53の軽鎖可変領域、またはAHoによって決定される少なくともそのCDRを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域を含むdPSA結合剤であり、ここで、Ig重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 39または45を含むCDR1、SEQ ID NO: 40または46を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 41または47を含むCDR3を含み;ならびにIg軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:42または48を含むCDR1、SEQ ID NO:43(GTN)、49、または56を含むCDR2、およびSEQ ID NO:44または50を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO: 39を含むCDR1、SEQ ID NO: 40を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 41または47を含むCDR3を含み;そしてIg軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 42を含むCDR1、SEQ ID NO: 43または56を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 44を含むCDR3を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域を含むdPSA結合剤であり、ここで、Ig重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 45を含むCDR1、SEQ ID NO: 46を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 41または47を含むCDR3を含み;そしてIg軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 48を含むCDR1、SEQ ID NO: 49または56を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 50を含むCDR3を含む。
【0031】
【0032】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:35に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:36に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:37に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖ポリペプチド;およびSEQ ID NO:38に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖ポリペプチドを含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域は、それぞれ、SEQ ID NO:35および36の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを含む(保持する)ことができ、このCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどの任意の公知の番号付けスキームを使用して、または本明細書において別様に規定されるように決定され得る(例えば、SEQ ID NO:39~44)。いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO: 35およびSEQ ID NO: 36を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、それぞれSEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38を含むIg重鎖および軽鎖ポリペチドを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:51に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:52または53に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:51に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するIg重鎖ポリペプチド;およびSEQ ID NO:52または53に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖ポリペプチドを含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域は、それぞれ、SEQ ID NO:51および52または53の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを含む(保持する)ことができ、このCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoのような任意の公知の番号付けスキームを使用して、または本明細書において別様に規定されるように、決定することができる。いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO: 51およびSEQ ID NO: 52または53を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:57に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg重鎖可変領域;およびSEQ ID NO:58または59に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:57に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド;およびSEQ ID NO:58または59に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有するアミノ酸配列を含むIg軽鎖ポリペプチドを含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、Ig重鎖可変領域およびIg軽鎖可変領域は、それぞれ、SEQ ID NO:57および58または59の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを含む(保持する)ことができ、このCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどの任意の公知の番号付けスキームを使用して、または本明細書において別様に規定されるように、決定することができる。いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO: 57およびSEQ ID NO: 58または59を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:33および34を含むIg重鎖可変領域および軽鎖可変領域、またはKabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、もしくはAHoなどの任意の既知の番号付けスキームを使用して決定される少なくともそのCDR;ならびに/もしくはSEQ ID NO:33または34に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有し、任意選択でそのCDRを保持する。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、SEQ ID NO:54および55、またはKabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、もしくはAHoなどの任意の既知の番号付けスキームを使用して決定される少なくともそのCDRを含むIg重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み;および/またはSEQ ID NO:54または55に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)を有し、任意選択でそのCDRを保持する。
【0036】
核酸配列またはアミノ酸配列に関して使用される配列の「同一性」は、目的の核酸配列またはアミノ酸配列を参照核酸配列または参照アミノ酸配列と比較することによって決定することができる。同一性パーセントは、最適に整列させたときに、目的の配列と参照配列の間で同じ(すなわち、同一である)ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合である。最適アラインメントを取得し、2つ以上の配列間の同一性を計算するための多くの数学的アルゴリズムが知られており、公的に利用可能である。このようなプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffee、およびALIGN(核酸配列およびアミノ酸配列のアラインメント用)、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.1、BL2SEQ、およびNational Center for Biotechnology Information、Bethesda、MDによって運営されるそれらの後期バージョン)、およびFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FASTM、およびSSEARCH)(配列アラインメントおよび配列類似性検索用)が挙げられる。配列アライメントアルゴリズムもまた、例えば、Altschulら、J. Molecular Biol:215(3):403-410(1990)、Beigertら、Proc.Natl. Acad.Sci. USA, 106(10):3770-3775 (2009), Durbinら, eds., Biological Sequence Analysis:Probalistic Models of Proteins and Nucleic Acids, Cambridge University Press, Cambridge, UK (2009), Soding, Bioinformatics, 21(7):951-960 (2005), Altschulら, Nucleic Acids Res., 25(17):3389-3402 (1997)、Gusfield, Algorithms on Strings, Trees and Sequences, Cambridge University Press, Cambridge UK (1997)に開示される。
【0037】
上記で具体的に規定した重鎖および軽鎖配列に対して100%未満の同一性を有する配列に関しては、ポリペプチドの生物学的活性(例えば、dPSA結合剤のdPSAへの結合能力)が実質的に保持されることを条件として、前述の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸で置換(replaced)または置換(substituted)することができ、および/または開示したアミノ酸配列から1つ以上のアミノ酸を欠失させるか、または開示したアミノ酸配列に挿入することができる。dPSA結合剤の生物学的活性は、例えば、特定のdPSAエピトープに対する結合親和性及び/又はdPSA以外の標的との交差反応性によって測定することができる。前述の特性または特徴は、ELISA、競合ELISA、表面プラズモン共鳴分析(BIACORE(商標))、または溶液相競合(KINEXA(商標))、ならびに他のin vitroまたはin vivo中和アッセイ、結合アッセイ、蛍光活性化細胞結合(FACS)、または他の適切なアッセイを含むがこれらに限定されない標準的な技術を用いて観察、測定、および/または評価することができる。
【0038】
dPSA結合剤は、dPSAおよび別の抗原に結合する多重特異的(例えば、二重特異的または「二重反応性」)構築物(例えば、二重特異的抗体または二重反応性抗体などの多重特異的抗体)の一部であり得る。このような構築物は、本明細書に記載のdPSAと結合する免疫グロブリン重鎖および軽鎖ポリペプチドと、dPSA以外の抗原と結合する免疫グロブリン由来の免疫グロブリン重鎖および軽鎖との組み合わせを含みうる。
【0039】
dPSA結合剤はコンジュゲートの一部であり得る。例えば、dPSA結合剤は、(1)抗dPSA抗体またはそのフラグメント、および(2)二次タンパク質または非タンパク質部分のコンジュゲートであり得る。さらに例示すると、dPSA結合剤は、別のペプチド、蛍光分子、または化学療法(例えば、細胞毒性)剤と結合した抗dPSA抗体またはそのフラグメントを含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、「全」免疫グロブリン又は抗原結合免疫グロブリン「断片」であり得る。「全」免疫グロブリンは、典型的には4つのポリペプチドからなる:2つの重(H)鎖ポリペプチドおよび2つの軽(L)鎖ポリペプチド。各重鎖は、1つのN末端可変領域(VH)と3つのC末端定常領域(CH1, CH2, CH3)を含み、各軽鎖は、1つのN末端可変領域(VL)と1つのC末端定常領域(CL)を含む。抗体の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ型(κ)またはλ型(λ)の2つの異なるタイプの1つに割り当てることができる。典型的な免疫グロブリンでは、各軽鎖はジスルフィド結合によって重鎖と連結しており、2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結している。この構成では、軽鎖の可変領域は一般に重鎖の可変領域と整列しており、軽鎖の定常領域は一般に重鎖の第一の定常領域と整列している。重鎖の残りの定数領域は一般に互いに整列している。
【0041】
軽鎖と重鎖の各対の可変領域または超可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。VH とVL 領域は同じ一般的な構造を持ち、それぞれの領域は4つのフレームワーク(FWまたはFR)領域を含む。本明細書で使用する「フレームワーク領域」という用語は、超可変領域または相補性決定領域(CDR)の間に位置する可変領域内の比較的保存されたアミノ酸配列を指す。各可変ドメインには4つのフレームワーク領域があり、それらはFR1、FR2、FR3、FR4と命名される。フレームワーク領域は、可変領域の構造的枠組みを提供するβシートを形成する(例えば、C.A. Janewayら(編)、Immunobiology, 5th Ed., Garland Publishing, New York, NY (2001)を参照)。フレームワーク領域は3つの相補性決定領域(CDR)によって連結されている。CDR1、CDR2、CDR3として知られる3つのCDRは、抗体の「超可変領域」を形成し、一般に抗原結合に関与すると考えられている。
【0042】
本明細書において、「抗体フラグメント」という用語および同様の用語(例えば、「抗体のフラグメント」、「抗体断片」、「抗体の機能的断片」)は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片または部分を意味するために互換的に使用される(一般に、Holligerら、Nat.Biotech:23(9):1126-1129 (2005))。本明細書および当該技術分野で日常的に使用される抗体「断片」には、文字通りの意味での全抗体の断片や部分だけでなく、「全抗体」には天然には存在しないリンカーや他の要素を含む可能性のある、他の公知の改変抗体様構築物も含まれる。抗体断片の例としては、(i) VL, VH, CL, CH1 ドメインからなる一価の断片であるFab断片、(ii) ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab')2断片、(iii)抗体の単一アームのVL およびVH ドメインからなるFvフラグメント、(iv)穏やかな還元条件を用いてF(ab')2 フラグメントのジスルフィド架橋を切断した結果生じるFab' フラグメント、および(v)ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。dPSA結合剤はまた、一本鎖抗体フラグメントでもあり得る。一本鎖抗体フラグメントの例としては、(i)一本鎖Fv(scFv)が挙げられ、これは、Fvフラグメントの2つのドメイン(すなわち、VL およびVH)が、2つのドメインを単一のポリペプチド鎖として合成することを可能にする合成リンカーによって結合された2つのドメインからなる一価分子であり(例えば、Birdら, Science, 242: 423-426 (1988); Hustonら, Proc.Natl. Acad.Sci.USA、85:5879-5883(1988);およびOsbournら、Nat.Biotechnol、16: 778 (1998))、および(ii)ポリペプチド鎖の二量体であるダイアボディであって、各ポリペプチド鎖が、同じポリペプチド鎖上のVH とVL との対合を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによってVL に連結されたVH を含み、それによって、異なるVH -VL ポリペプチド鎖上の相補的ドメイン間の対合を駆動して、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子を生成する、ダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない。Ig重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む、当該技術分野で公知の他の任意の抗原結合抗体様構築物もまた使用することができ、本開示の目的上、抗体断片である。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤はキメラ抗原受容体(またはその一部)である。
【0043】
いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、フラグメント結晶化可能(Fc )領域またはその一部などの重鎖定常領域を含む。Fc領域は、任意のIgクラス/サブクラス(IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)、IgM、それらの変異体を含む)のものであり得る。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、「全体」または「完全な」Ig(すなわち、抗体)であり;そして他の実施形態において、結合剤は、Fc領域にコンジュゲートまたは連結された抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、IgG1またはIgG4のようなIgG Fc領域を含む。例えば、dPSA結合剤は、IgG1抗体またはIgG4抗体であり得る。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、補体依存性細胞傷害性(CDC)または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介し得るFc領域を含む。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤は、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化するFc領域を含む。
【0044】
dPSA結合剤は、ヒトまたはヒト化抗体、非ヒト抗体又はキメラ抗体であり得る。「キメラ」とは、ヒト領域と非ヒト領域の両方を含む抗体またはその断片を意味する。好ましくは、dPSA結合剤はヒト化抗体である。「ヒト化」抗体は、ヒト抗体スカフォールドと、非ヒト抗体から得られた、または非ヒト抗体由来の少なくとも1つのCDRを含むモノクローナル抗体である。 非ヒト抗体には、例えばげっ歯類(例えばマウスやラット)などの非ヒト動物から単離された抗体が含まれる。ヒト化抗体は、非ヒト抗体から得られた、または非ヒト抗体由来のCDRを1つ、2つ、または3つ含むことができる。
【0045】
ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体は、in vitro供給源(例えば、ハイブリドーマや抗体を組換え的に産生する細胞株)やin vivo供給源(例えば、げっ歯類)を介してなど、任意の手段で得ることができる。抗体を作製する方法は当技術分野で知られており、例えば、Koehler and Milstein, Eur.J. Immunol., 5: 511-519 (1976); Harlow and Lane (編), Antibodies:A Laboratory Manual, CSH Press (1988); およびJanewayら(編), Immunobiology, 5th Ed., Garland Publishing, New York, NY (2001))。特定の実施形態において、ヒト抗体またはキメラ抗体は、1つまたは複数の内因性免疫グロブリン遺伝子が1つまたは複数のヒト免疫グロブリン遺伝子で置換されたトランスジェニック動物(例えば、マウス)を用いて作製することができる(例えば、Lonberg, Nat.Biotechnol.、23(9).1117-25 (2005)、およびLonberg, Handb.Exp.Pharmacol., 181: 69-97 (2008)を参照)。ヒト化抗体は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて作製することができ(例えば、An, Z.(編), Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic, John Wiley & Sons, Inc., Hoboken, New Jersey (2009)を参照)、例えば、ヒト抗体足場への非ヒトCDRの移植(例えば、Kashmiriら, Methods, 36(1):25-34(2005);およびHouら, J. Biochem., 144(1):115-120 (2008))。
【0046】
本明細書で提供されるdPSA結合剤は、任意の目的に使用することができる。例えば、dPSA結合剤は、dPSAを発現する(例えば、細胞表面上にdPSAを含む)癌細胞を標的化または殺傷するために使用され得る。従って、本明細書において提供されるのは、本明細書に記載のdPSA結合剤を癌細胞に投与することを含む、in vitroまたはin vivoで癌細胞を標的化または殺傷する方法である。本方法がin vivoで癌細胞を標的化または殺傷するために使用される場合、dPSA結合剤は、癌細胞を含む被験体にdPSA結合剤を投与することによって癌細胞に投与され得る。
【0047】
発現するがん細胞は、細胞表面にdPSAを発現する任意のがん細胞であり得る。例えば、癌細胞は、dPSAが細胞表面上のタンパク質に連結されるか、または他の方法でタンパク質と会合したヌクレオリンのようなタンパク質を含み得る)。いくつかの実施形態において、癌細胞はST8SIA2を発現する。
【0048】
癌細胞を標的化または死滅させる方法は、診断または治療目的に使用することができ、in vitro、ex vivo、またはin vivoで使用することができる。例えば、dPSA結合剤を検出可能なラベルまたは支持体(例えば、放射性標識、蛍光標識、ビーズ、足場など)に結合させて、被験体からの生物学的試料(生物学的流体または組織試料)中のdPSA発現レベルを分析するか、またはdPSAを発現する癌細胞の検出を容易にすることができる。例えば、検出可能な部分は、放射性同位元素(例えば、3 H、14 C、32 P、35 S、または125 I)、蛍光または化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ルシフェリンなど)、酵素(アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)、または支持体(ビーズ、足場、バイオセンサー表面など)でありうる。抗原結合剤(例えば、抗体)をこのような部位に別々に結合させるための当該分野で公知の任意の方法が、本発明の文脈において採用され得る(例えば、Hunterら、Nature、194:495-496(1962);Davidら、Biochemistry、13:1014-1021(1974);Painら、J. Immunol.Meth.、40:219-230(1981);およびNygren、J. Histochem.およびCytochem.、30:407-412(1982))。
【0049】
あるいは、dPSA結合剤は癌細胞を殺すために使用することもできる。例えば、dPSA結合剤は、化学療法剤(例えば、細胞毒性剤)に結合され得、そして発現しているdPSAにおいて化学療法剤を癌細胞に標的化して送達するために使用され得、それによって被験体において癌細胞を死滅させる。他の実施形態において、dPSA結合剤は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)を示し、がん細胞と結合し、ADCCまたはCDC媒介細胞死をもたらすことによって、dPSAを発現するがん細胞を死滅させるために使用される。いくつかの実施形態において、dPSA結合剤はアフコシル化されている。アフコシル化結合剤(例えば、抗体)は、FUT8遺伝子が破壊または欠失した細胞株(例えば、FUT8欠失CHO細胞)においてdPSA結合剤のIg重鎖および軽鎖をコードする核酸を発現させることなどにより、任意の適切な技術によって調製され得る。
【0050】
従って、本明細書で提供されるdPSA結合剤、およびそれを使用する方法は、dPSA表面発現を特徴とする癌を治療するために使用することができる。本明細書で使用される場合、用語「治療」、「処置する」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ること、例えば、疾患および/または疾患に起因する有害症状の重症度を低下させること、または進行を抑制することを指す。この目的のために、本発明方法は、「治療上有効な量」のdPSA結合剤を投与することを含む。「治療上有効な量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量および期間において有効な量をいう。治療上有効な量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を引き出すdPSA結合剤の能力のような因子に従って変化し得る。
【0051】
本明細書で提供される方法および組成物は、癌腫、肉腫、白血病、骨髄腫、およびリンパ腫を含む多種多様な癌の治療または予防のという観点から有用である。
【0052】
本明細書に開示される方法による治療が可能ながん腫としては、食道がん、肝細胞がん、基底細胞がん(皮膚がんの一種)、扁平上皮がん(様々な組織)、膀胱がん(移行細胞がん(膀胱の悪性新生物)を含む)、気管支がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん(肺の小細胞がんおよび非小細胞がんを含む)、副腎皮質がん、甲状腺がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、腎細胞がん、非浸潤性乳管がんまたは胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルム腫瘍、子宮頸がん、子宮体がん、精巣がん、骨原性がん、上皮がん、および上咽頭がんを含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書に開示される方法による治療に適し得る肉腫としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および他の軟部肉腫が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本明細書に開示される方法による治療に適し得る他の固形腫瘍としては、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、音響神経腫、乏突起膠腫、血管腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
他の癌には、白血病、リンパ腫、および骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)が含まれる。本明細書に開示される方法による治療が可能な白血病としては、a)慢性骨髄増殖症候群(多能性造血幹細胞の腫瘍性障害);b)急性骨髄性白血病(多能性造血幹細胞または系統が制限された造血細胞の腫瘍性形質転換);が挙げられるが、これらに限定されない;c) B細胞性CLL、T細胞性CLL前リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病を含む、慢性リンパ性白血病(CLL;免疫学的に未熟で機能不全の小リンパ球のクローン性増殖);およびd)急性リンパ芽球性白血病(リンパ芽球の蓄積を特徴とする)。主題の方法を用いて治療することができるリンパ腫としては、B細胞リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫);ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書に開示された方法に従って治療が可能な他の癌としては、非定型髄膜腫(脳)、膵島細胞癌(膵臓)、髄様癌(甲状腺)、間葉系(腸)、肝細胞癌(肝臓)、肝芽腫(肝臓)、明細胞癌(腎臓)、および神経線維腫縦隔が挙げられる。
【0057】
本明細書に開示された方法を用いた治療に適し得るさらなる例示的な癌には、神経外胚葉由来の癌および上皮由来の癌が含まれるが、これらに限定されない。神経外胚葉由来の癌の例としては、ユーイング肉腫、脊髄腫瘍、脳腫瘍、幼児期の上脳室原始神経外胚葉腫瘍、尿細管嚢胞癌、粘液性尿細管癌および紡錘細胞癌、腎腫瘍、縦隔腫瘍、神経膠腫、神経芽細胞腫、ならびに青年および若年成人の肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。上皮由来の例としては、小細胞肺癌、乳癌、眼水晶体癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、卵巣癌、および気管支上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、主題の方法は、黒色腫の治療を含まない(すなわち、癌は黒色腫以外である)。他の実施形態において、主題の方法は、リンパ腫の治療を含まない(すなわち、癌はリンパ腫以外である)。
【0058】
dPSA結合剤は、哺乳動物への投与に適した組成物の一部であり得る。好ましくは、組成物は、薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)組成物であり、これは、担体、好ましくは薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)担体、および本発明のアミノ酸配列、抗原結合剤、またはベクターを含む。本発明の文脈において、任意の適切な担体が使用され得、そしてそのような担体は当該分野で周知である。担体の選択は、部分的には、組成物が投与され得る特定の部位および組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。組成物はまた、治療用分子(例えば、タンパク質または抗体)、特に非経口製剤の製剤化において使用される任意の他の賦形剤、例えば、緩衝剤、張力調整剤、安定化剤、界面活性剤などを含み得る。組成物は無菌であり得る。組成物は、保存のために凍結または凍結乾燥され、使用前に適切な無菌担体中で再構成され得る。組成物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (2001)などに記載されている従来の技術に従って生成することができる。
【0059】
投与は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬投与、舌下投与、または座薬投与を含む、任意の標準的な投与技術を用いて行うことができる。好ましくは、組成物は非経口投与に適している。用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣内投与、および腹腔内投与を含む。より好ましくは、組成物は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を用いて哺乳動物に投与される。
【0060】
本発明のdPSA結合剤は、単独で又は他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば、dPSA結合剤は、本明細書に開示される疾患の治療または予防のための他の薬剤、例えば他の抗癌剤と組み合わせて投与することができる。この点に関して、例えば、dPSA結合剤は、例えば、化学療法剤、ワクチン、生物学的療法(例えば、他のモノクローナル抗体)、放射線療法、骨髄移植、化学療法治療、生物学的応答修飾剤治療および/または手術を含む少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0061】
本明細書においてさらに提供されるのは、dPSA結合剤をコードする(すなわち、dPSA結合剤の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドおよび/または免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドをコードする)核酸である。
【0062】
核酸は、DNAまたはRNA(またはハイブリッドDNA/RNAのような両方)のポリマーであることができ、一本鎖または二本鎖であることができ、非天然または変化したヌクレオチドを含むことができる。核酸はベクターの一部であってもよい。ベクターは、例えば、プラスミド、エピソーム、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスまたはアデノウイルス)、またはファージであり得る。適切なベクターおよびベクター調製の方法は、当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, New York, N.Y. (1994)を参照のこと)。
【0063】
ベクターは、典型的には、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、シグナルペプチド(例えば、オステオネクチンシグナルペプチド)、内部リボソーム進入部位(IRES)などの発現制御配列を含む。例示的な発現制御配列は当技術分野で知られており、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology:Methods in Enzymology, Vol.185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990)に記載されている。
【0064】
構成的、誘導性、および抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが、種々の異なる供給源から、当技術分野で周知である。プロモーターの代表的な供給源としては、例えば、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母、および細菌が挙げられ、これらの供給源からの適切なプロモーターは、容易に入手可能であるか、または、例えば、ATCCのような寄託機関および他の商業的または個々の供給源から公的に入手可能な配列に基づいて、合成的に作製され得る。プロモーターは、単方向性(すなわち、一方向に転写を開始する)または双方向性(すなわち、3'または5'方向のいずれかで転写を開始する)であり得る。プロモーターの非限定的な例としては、例えば、T7細菌発現系、pBAD(araA)細菌発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターとしては、例えば、Tet系(米国特許第5,464,758号および同第5,814,618号)、Ecdysone誘導性系(Noら、Proc.Natl. Acad.Sci.、93:3346-3351(1996))、T-REX(商標)系(Invitrogen、Carlsbad、CA)、LACSWITCH(商標)系(Stratagene、San Diego、CA)、およびCre-ERTタモキシフェン誘導性リコンビナーゼ系(Indraら、Nuc.Acid.Res., 27: 4324-4327 (1999); Nuc.Acid.Res., 28: e99 (2000); 米国特許7,112,715; およびKramer & Fussenegger, Methods Mol.Biol.、308:123-144(2005))を含む。
【0065】
本明細書で使用する「エンハンサー」という用語は、例えば、それが作動可能に連結している核酸配列の転写を増加させるDNA配列を指す。エンハンサーは、核酸配列のコード領域から何キロベースも離れたところに位置することができ、調節因子の結合、DNAメチル化のパターン、またはDNA構造の変化を媒介することができる。様々な異なる供給源からの多数のエンハンサーが当技術分野でよく知られており、クローン化されたポリヌクレオチドとして、またはクローン化されたポリヌクレオチド内で利用可能である(例えば、ATCCのような寄託機関、および他の商業的または個々の供給源から)。プロモーター(一般に使用されるCMVプロモーターのような)を含む多数のポリヌクレオチドはまた、エンハンサー配列を含む。エンハンサーは、コード配列の上流、コード配列内、またはコード配列の下流に位置し得る。
【0066】
ベクターはまた、「選択可能マーカー遺伝子」を含み得る。用語「選択可能マーカー遺伝子」は、本明細書で使用される場合、核酸配列を発現する細胞が、対応する選択剤の存在下で、特異的に選択されるかまたは選択されないことを可能にする核酸配列を指す。適切な選択可能マーカー遺伝子は、当該分野で公知であり、例えば、国際特許出願公開WO1992/008796およびWO1994/028143;Wiglerら、Proc.Natl. Acad.Sci.USA、77:3567-3570(1980);O'Hareら、Proc.Natl. Acad.Sci. USA, 78: 1527-1531 (1981); Mulligan & Berg, Proc.Natl. Acad.Sci.USA、78:2072-2076(1981);Colberre-Garapinら、J. Mol.Biol., 150: 1-14 (1981); Santerreら, Gene, 30: 147-156 (1984); Kentら, Science, 237: 901-903 (1987); Wiglerら, Cell, 11: 223-232 (1977); Szybalska & Szybalski, Proc.Natl. Acad.Sci. USA, 48: 2026-2034 (1962); Lowyら, Cell, 22: 817-823 (1980); および米国特許5,122,464および5,770,359に記載される。
【0067】
いくつかの実施形態において、ベクターは「エピソーム発現ベクター」または「エピソーム」であり、宿主細胞内で複製することができ、適切な選択圧の存在下で宿主細胞内でDNAの染色体外セグメントとして持続する(例えば、Coneseら、Gene Therapy、11:1735~1742(2004)を参照のこと)。代表的な市販のエピソーム発現ベクターとしては、エプスタイン・バー核抗原1(EBNA1)およびエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)複製起点(oriP)を利用するエピソームプラスミドが挙げられるが、これらに限定されない。Invitrogen(Carlsbad,CA)のベクターpREP4、pCEP4、pREP7、およびpcDNA3.1、ならびにStratagene(La Jolla,CA)のpBK-CMVは、EBNA1およびoriPの代わりにT-抗原およびSV40複製起点を使用するエピソームベクターの非限定的な例を示す。
【0068】
他の適当なベクターには、宿主細胞のDNAにランダムに組み込まれるか、発現ベクターと宿主細胞の染色体との間の特異的組換えを可能にする組換え部位を含む統合発現ベクターが含まれる。このような統合型発現ベクターは、宿主細胞の染色体の内因性発現制御配列を利用して、所望のタンパク質の発現をもたらすことができる。部位特異的に統合するベクターの例としては、例えば、Invitrogen社(Carlsbad、CA)のflp-inシステムの構成要素(例えば、pcDNA(商標)5/FRT)、またはStratagene社(La Jolla、CA)のpExchange-6コアベクターに見られるようなcre-loxシステムが挙げられる。宿主細胞の染色体にランダムに組み込まれるベクターの例としては、例えば、Life Technologies社(Carlsbad, CA)のpcDNA3.1(T-抗原非存在下で導入した場合)、Millipore社(Billerica, MA)のUCOE、Promega社(Madison, WI)のpCIまたはpFN10A(ACT)FLEXI(商標)などがある。
【0069】
ウイルスベクターも使用できる。代表的な市販のウイルス発現ベクターとしては、Crucell社(オランダ、ライデン)から入手可能なアデノウイルスベースのPer.C6システム、Invitrogen社(カリフォルニア州カールスバッド)から入手可能なレンチウイルスベースのpLP1、およびStratagene社(カリフォルニア州ラホヤ)から入手可能なレトロウイルスベクターpFB-ERVおよびpCFB-EGSHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、同じベクター上で(すなわち、シスで)細胞に提供することができる。一方向性プロモーターは、各核酸配列の発現を制御するために使用され得る。別の実施形態において、双方向プロモーターと単方向プロモーターとの組み合わせが、複数の核酸配列の発現を制御するために使用され得る。本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、あるいは別個のベクター上で(すなわち、トランスで)細胞の集団に提供することもできる。別個のベクターの各々の核酸配列は、同一または異なる発現制御配列を含み得る。別個のベクターは、同時にまたは順次、細胞に提供され得る。
【0071】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターは、それによってコードされるポリペプチドを発現することができる宿主細胞(任意の適切な原核細胞または真核細胞を含む)に導入することができる。このように、本発明は、本発明のベクターを含む単離された細胞を提供する。好ましい宿主細胞は、容易かつ確実に増殖させることができ、適度に速い増殖速度を有し、十分に特徴付けられた発現系を有し、容易かつ効率的に形質転換またはトランスフェクトすることができる細胞である。
【0072】
好適な原核細胞の例としては、Bacillus属(Bacillus subtilisおよびBacillus brevisなど)、Escherichia属(E. coliなど)、Pseudomonas属、Streptomyces属、Salmonella属、およびErwinia属の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。特に有用な原核細胞としては、大腸菌の様々な株(例えば、K12、HB101(ATCC番号33694)、DH5α、DH10、MC1061(ATCC番号53338)、およびCC102)が挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態において、ベクターは真核細胞に導入される。適切な真核細胞は、当該分野で公知であり、例えば、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が挙げられる。適切な酵母細胞の例としては、Kluyveromyces属、Pichia属、Rhino-sporidium属、Saccharomyces属、およびSchizosaccharomyces属のものが挙げられる。好ましい酵母細胞としては、例えば、Saccharomyces cerivisaeおよびPichia pastorisが挙げられる。
【0074】
適切な昆虫細胞は、例えばKittsら, Biotechniques, 14: 810-817 (1993); Lucklow, Curr.Opin.Biotechnol.、4:564-572(1993);およびLucklowら、J.Virol.、67:4566-4579(1993)に記載されている。好ましい昆虫細胞としては、Sf-9およびHI5(Invitrogen, Carlsbad, CA)が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞が本発明に利用される。多数の適切な哺乳動物宿主細胞が当該技術分野で知られており、そして多くはAmerican Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から入手可能である。適切な哺乳動物細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、CHO-K1細胞、ATCC番号CCL61)、CHO DHFR-細胞(Urlaubら、Proc.Natl. Acad.Sci.USA、97:4216-4220(1980))、ヒト胚性腎臓(HEK)293または293T細胞(ATCC番号CRL1573)、および3T3細胞(ATCC番号CCL92)が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な哺乳動物細胞株は、サルCOS-1細胞株(ATCC番号CRL1650)およびCOS-7細胞株(ATCC番号CRL1651)、ならびにCV-1細胞株(ATCC番号CCL70)である。さらに例示的な哺乳動物宿主細胞としては、形質転換細胞株を含む霊長類細胞株およびげっ歯類細胞株が挙げられる。正常二倍体細胞、一次組織のin vitro培養由来の細胞株、初代外植片も適している。他の適切な哺乳動物細胞株としては、マウス神経芽腫N2A細胞、HeLa、マウスL-929細胞、およびBHKまたはHaKハムスター細胞株が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらはすべてATCCから入手可能である。適切な哺乳動物宿主細胞を選択する方法、および細胞の形質転換、培養、増幅、スクリーニング、精製の方法は、当技術分野で知られている。
【0076】
一実施形態では、哺乳動物細胞はヒト細胞である。例えば、哺乳動物細胞は、プレBリンパ球由来の細胞株などのヒトリンパ球またはリンパ球由来の細胞株であり得る。ヒトリンパ系細胞株の例としては、RAMOS(CRL-1596)、Daudi(CCL-213)、EB-3(CCL-85)、DT40(CRL-2111)、18-81(Jackら、Proc.Natl. Acad.Sci. USA, 85: 1581-1585 (1988))、Raji細胞(CCL-86)、PER.C6細胞(Crucell Holland B.V., Leiden, The Netherlands)、およびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0077】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」などの任意の適切な方法によって細胞に導入され得る。「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」は、本明細書で使用される場合、物理的または化学的方法を使用して、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することを指す。多くの適切な技術が当該分野で知られており、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈殿(例えば、Murray E.J.(編)、Methods in Molecular Biology、第7巻、Gene Transfer and Expression Protocols、Humana Press(1991)を参照のこと);DEAE-デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進微粒子ボンバードメント(Johnston、Nature、346:776-777(1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brashら、Mol.Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))。ファージまたはウイルスベクターは、適切なパッケージング細胞で感染性粒子を増殖させた後、宿主細胞に導入することができ、そのうち多くは商業的に入手できる。
【0078】
核酸および細胞は、本明細書に記載されるdPSA結合剤の製造など、任意の目的に使用することができる。この点に関して、本発明は、dPSA結合剤の重および/または軽免疫グロブリンポリペプチドをコードする核酸または核酸配列を含む細胞を培養することを含むdPSA結合剤の調製方法を提供する。別の言い方をすれば、本方法は、dPSA結合剤の免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖をコードする核酸を細胞(例えば、CHO細胞およびCHO-K1細胞を含む本明細書で議論される細胞株のいずれかのようなin vitro細胞)中で発現させることを含む。免疫グロブリン重鎖および軽鎖は、所定の細胞において単一の核酸から発現させることができ、または免疫グロブリン重鎖および軽鎖は、同一の細胞において別々の核酸から発現させることができることが理解されよう。本方法は、公知の技術を用いて、細胞または細胞培養培地からdPSA結合剤を採取および/または精製することをさらに含み得る。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は本発明をさらに説明するものであるが、もちろん、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0080】
実施例1
以下の例は、本明細書で提供されるdPSA結合剤のdPSA抗原に対する選択的結合を示す。
【0081】
以下に示す配列を有するSAC-1およびSAC-2と命名した抗体を、dPSAを発現しないCHO細胞株でヒトIgG1 Fcとの組換えキメラとして発現させた。この抗体はELISAおよびセルベースアッセイによりdPSAへの特異的結合について試験された。SAC-1およびSAC-2抗体と同じCDRを持つヒト化抗体を調製した。この抗体は、SAC-1.1、SAC-2.1(「SAC-2ヒト化D」とも呼ばれる)、およびSAC-2.2(「SAC-2ヒト化C」とも呼ばれる)と命名され、以下に示す配列を有する。
【0082】
【0083】
dPSA抗原の調製
ELISAで使用するdPSA抗原は、100ミリグラムのコロミン酸(MilliporeSigma)、10ミリグラムの水素化ホウ素ナトリウム(MilliporeSigma)を10ミリリットルの2モルナトリウムで合わせ、100℃で40分間加熱することにより調製した。生じたdPSAは、2Mの塩酸で中和され、4Lの水で2回透析され、凍結乾燥された。0.75ミリリットルの0.1M酢酸ナトリウム(pH6.5)中のdPSA(20ミリグラム)をまず過ヨウ素酸ナトリウム(10ミリモルの過ヨウ素酸の0.25ミリリットル)で暗所、周囲温度で30分間酸化した。100マイクロリットルの10%(体積/体積)エチレングリコールを加えた後、反応混合物を透析し、上記のように凍結乾燥した。20ミリグラムの酸化dPSAと10ミリグラムのオボアルブミン(IMJECT(商標)OVALBUMIN、Pierce Chemical社)を、約5ミリグラムの水素化シアノホウ素ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で合わせた。この溶液を暗所、周囲温度で一晩撹拌した。dPSA-オボアルブミン結合体を、0.9%(重量/容量)塩化ナトリウム、10mMリン酸カリウム、pH7.1中、ToyoPearl HW-65Fカラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。dPSA-KLHコンジュゲートを含むフラクションを濃縮し(SpinX、Corning)、タンパク質は2ミリグラム/ミリリットル、修飾レジノシノールアッセイ(modified resorcinol assay)で測定した脱N-アセチル残基を約30%含むdPSAは4ミリグラム/ミリリットルとした。
【0084】
dPSA抗原への結合
ELISAは、Moeら、J. Exp. & Clin.Can.Res.40(1):293(2021)に記載されているように、1mlあたり10マイクログラムの抗体濃度から開始し、8回の連続3倍希釈で行った。dPSAに対する特異性は、緩衝液中に100マイクログラムのポリシアル酸(すなわちコロミン酸、MilliporeSigma)の存在下で同じELISAを行うことにより決定した。その結果(30分後のOD405が0.5以上の平均蛍光強度(MFI))、抗体がdPSAと特異的に結合していることが確認された。
【0085】
この抗体はまた、Moeら、J of Exp & Clin Can Res 2021, 40:293に記載されているように、フローサイトメトリーにより、ヒト神経芽細胞腫細胞株CHP-134およびヒト骨髄腫細胞株NCI-H929に固定濃度10μg/mlで結合するかどうかを試験した。簡単に説明すると、付着細胞を、10%(容量/容量)のウシ胎児血清(FBS、ThermoFisher Scientific)を含むRPMI 1640細胞培養培地に、ピペッティングまたはAccutase(商標)(Innovative Cell Technologies)による処理によって懸濁した。細胞を遠心分離し(200xg、8分)、細胞ペレットを培地に懸濁し、1ml当たり0.5-2x10^6細胞の濃度にした。細胞と抗体を1.5ミリリットルのエッペンドルフチューブに入れ、周囲温度で1時間、エンドオーバーエンドローテーション(end over end ratation)により混合した。チューブを遠心し(200xg、2分)、新鮮な培地で1回洗浄し、AlexaFluor 488結合ヤギ抗ヒトF(ab')2二次抗体を含む培地に細胞を懸濁した。30分間回転混合した後、細胞を新鮮な培地で1回洗浄し、0.5%(体積/体積)のホルムアルデヒドを含むPBS緩衝液に懸濁した。細胞の蛍光をフローサイトメトリー(Acea NovoCyte)で測定した。無関係なヒトIgG1陰性コントロール抗体(BioXCell)に対する平均蛍光強度(MFI)で表した結果を表1にまとめた。
【0086】
【0087】
実施例2
以下の例は、ポリシアリルトランスフェラーゼ遺伝子ST8SIA2およびST8SIA4がノックアウトされたCHP-134神経芽腫細胞(CHP-134 KO)ではなく、さらなる多様な癌細胞株に対する本明細書で提供される抗体の結合を示す。CHP-134細胞の表面上のdPSAは、Moeら、J of Exp & Clin Can Res 2021、40:293に記載されているように、ST8SIA2の発現に依存する。
【0088】
CHP-134およびNCI-H929細胞に関して、実施例1に記載したのと同様の手順に従って、実施例1で提供した抗体をさらに複数の追加細胞株に対する結合について試験した。表2は、各細胞株に対するEC50 および最大MFI値を示したものであり、本抗体が複数の多様なタイプの癌細胞と結合することを示している。さらにこの抗体は、参照抗dPSA抗体であるSEAM 3(Steirer and Moe ら、PLoS One 6(11): e27249 (2011))と比較して、有意に結合が増強された。
【0089】
【0090】
実施例3
以下の例は、本明細書で提供される抗体が参照抗体とは異なるエピトープに結合することを示している。
【0091】
実施例1の抗体によって認識されるエピトープが、参照用抗dPSA抗体であるSEAM 3(Steirer and Moe ら、PLoS One 6(11): e27249 (2011))によって認識されるエピトープと異なるかどうかを決定するために、CHP-134細胞への結合に対するEC50より10倍高い一定濃度の抗体を、SEAM 3の連続2倍希釈液と組み合わせた。
図1および
図2に示すように、実施例1の抗体はSEAM 3の結合を阻害せず、これは抗体が異なるエピトープを認識していることを示している。
【0092】
実施例4
この実施例は、本明細書で提供される抗体が複数のヒト癌細胞株に結合することを示している。
【0093】
細胞株はAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手し、マイコプラズマ汚染について定期的に検査した(MycoStripTM, InvivoGen, San Diego, CA)。細胞株は、ATCCが推奨する培地中で、5% CO2雰囲気の加湿チャンバー内で増殖させた。付着した細胞株は、StemProTM AccutaseTM 細胞解離試薬(Thermo Fisher Scientific, Carlsbad, CA)で処理して懸濁した。浮遊細胞を細胞培養培地で1:5に希釈し、遠心分離(200xg、10分)し、新鮮な培地に100万~1,000万個/mLの生存細胞密度まで懸濁した。生存率は、トリパンブルー染色(Thermo Fisher Scientific, Carlsbad, CA)により決定し、SKC, Inc.のC-Chip(商標)Disposable Hemacytometers(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)を用いて細胞を数えた。細胞および抗体(SAC-1、SAC-1ヒト化(SAC-1.1)、SAC-2、SAC-2マウス(SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55)、SAC-2ヒト化C(SAC-2.2)、およびSAC-2ヒト化D(SAC-2.1))をチューブに合わせ、周囲温度で回転持続混合(end and end continuous mixing)により、1時間インキュベートした。細胞を遠心し(200xg、2分)、上清を吸引除去し、Alexa Fluor 488(商標)で標識した適切な(すなわち抗マウスまたは抗ヒトIgG H+L)二次抗体(AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat Anti-Mouse IgG (H+L), Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)を含む培地に細胞を懸濁した。細胞と二次抗体を周囲温度で回転持続混合(end and end continuous mixing)により、30分間インキュベートした後、遠心分離し(200xg、2分間)、上清を吸引除去し、細胞を0.5%ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝生理食塩水に懸濁した。
【0094】
最後に、細胞をフローサイトメトリー(Acea NovoCyte, Agilent, Santa Clara, CAまたは類似のもの)で分析した。平均蛍光強度(MFI)の抗体濃度依存性の結合曲線をカーブフィッティングソフトウェア(GraphPad Prism, San Diego, CA)で解析し、結合定数(KD )と最大MFI(MFImax)を求めた。結果を表3(SAC-1抗体)および表4(SAC-2抗体)に示す。Neg.は陰性、NAは該当なしを意味する。表 3 と表 4 に示すように、試験した抗体は複数の癌の細胞株とナノモル領域の KD で結合し、MFImax 値は各細胞株のエピトープ密度によって変動する。このデータは、抗体によって認識される抗原が広範囲のヒト癌に存在し、CHP-134細胞でポリシアリルトランスフェラーゼSTSIA2をコードする遺伝子をノックアウトすると結合がなくなることから、その酵素の発現に依存していることを示している。
【0095】
【0096】
【0097】
実施例5
この実施例は、本明細書で提供される抗体が、dPSAを含むヌクレオリンの誘導体を認識することを示している。
【0098】
細胞内画分の調製:ヒトメラノーマA375細胞(T-175フラスコで80%コンフルエント)を、ProteoExtract(登録商標) Subcellular Proteome Extraction Kit(MilliporeSigma)を用いて抽出した。簡単に説明すると、ディファレンシャルデタージェント抽出法では、抽出中のタンパク質分解を防ぐためにプロテアーゼ阻害剤カクテル、汚染核酸を分解するためにBenzonase(登録商標) ヌクレアーゼ(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)とともに、4つの抽出バッファーを順に使用した。抽出はメーカーの指示に従い、細胞抽出液を4つのフラクションに分けた:F1(細胞質画分)、F2(細胞膜画分)、F3(核タンパク質画分)、F4(細胞骨格画分)。
【0099】
共免疫沈降:SAC-1、SAC-2、または無関係なヒトIgG1抗体(BioXCell, Lebanon, NH)と共有結合させたDynabeads M-270エポキシ磁気ビーズ(Thermo Fisher Scientific, Carlsbad, CA)を製造業者のプロトコールに従って調製した。抗体と反応する抗原は、共免疫沈降によって以下のように精製した。F2膜画分をSAC-1、SAC-2または無関係なIgG1結合磁気ビーズと別々にインキュベートした。ビーズを磁石で分離し、それぞれの抽出バッファーだけで洗浄し、次にポリシアル酸(polySia)(50μg/mL; Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイスのコロミン酸)を含むバッファーで洗浄し、非特異的結合抗原を除去した。最後に、還元剤を含まないSDS-PAGEサンプルバッファー(NuPAGE、Thermo Fisher Scientific社製)を用い、80℃で10分間加熱してビーズから抗原を溶出した。ビーズから溶出したタンパク質を4%-12% SDS-PAGE(NuPAGE, Thermo Fisher Scientific)で分離し、SimplyBlue(登録商標)クマシー染色(Thermo Fisher Scientific)で染色するか、ウェスタンブロッティング用にNuPAGEトランスファーセル(Thermo Fisher Scientific)を用いてPVDF膜(Immobilon(登録商標)-FL, Millipore, Waltham, MA)に転写した。PVDF膜をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中、5%(重量/容量)の乾燥全乳で一晩ブロッキングした後、免疫沈降物をブロッキング緩衝液中、抗ヌクレオリン抗体MS-3(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)で周囲温度で2時間染色した。PBS緩衝液で3回洗浄した後、結合した抗体をIRDye(登録商標) 800CW結合ロバ抗マウスIgG(H+L)二次抗体(LI-COR, Lincoln, NE)で検出した。ゲルとブロットの画像をOdyssey(登録商標) Fc Imaging System(LI-COR)で記録した。結果を
図3Aおよび3Bに示す。
【0100】
図3Aは、SDS-PAGEで分離した各抗体によって共沈降したタンパク質を示す。SAC-1とSAC-2によって共沈降された見かけの質量分布が同じで、強く染色された複数のバンドが存在するが、無関係なIgG1抗体では存在しない。以前、脱N-アセチルポリシアル酸(dPSA)に結合する抗体が、がん細胞のF2画分からdPSAで修飾されたヌクレオリンを共免疫沈降させることを示した(J Exp Clin Cancer Res. 2021 Sep 20; 40(1): 293)。細胞表面のヌクレオリンはがん細胞に特有であり、SDS-PAGEゲル上で分解すると見かけの質量に幅がある。これは、翻訳後修飾が複数あり、dPSAの長さと電荷が不均一であるためである。
【0101】
図3Bは、抗ヌクレオリン抗体MS-3による共沈タンパク質のウェスタンブロット染色を示す。SAC-1およびSAC-2サンプルの主要なバンド(すなわち、見かけの質量が77 kDaのバンド)は、MS-3との反応性に基づくヌクレオリンである。SDS-PAGEゲルでの移動に影響するヌクレオリンの翻訳後修飾は、未修飾の組換えヌクレオリンに作製したMS-3では検出できない可能性がある。MS-3で検出された主要なバンドとは異なる見かけの質量を有する他のバンドもヌクレオリンの誘導体であることを確認するために、
図5Aの括弧で示したゲルの切片を共免疫沈降させた各サンプルについて切り出し、タンパク質同定のためのLC-MS/MS質量分析法による分析のために前述のように処理した(J Exp Clin Cancer Res.2021 Sep 20; 40(1): 293)。LC-MS/MS質量分析により、分析したゲルの部分にもヌクレオリンが含まれていることが確認された。
【0102】
各サンプルのヌクレオリンの定量化も
図5Aに示し、各サンプルのSDS-PAGEゲルのその部分におけるクマシー染色の相対量に対応する。要約すると、データは、SAC-1およびSAC-2が、A375ヒトメラノーマ細胞の膜画分に位置するヌクレオリンの同じ修飾型に結合すること、およびヌクレオリンのその誘導体が、上記のようにdPSAで修飾される特徴(すなわち、SDS-PAGE上の見かけの質量の範囲)を有することを示す。
【0103】
実施例6
本実施例は、本明細書で提供される抗体が免疫組織化学によりヒト腫瘍および正常ヒト組織と反応性を示すことを示している。
【0104】
正常な発生後ヒト組織には結合せず、がん細胞には結合するSAC抗体の特異性を調べるため、SAC-2を用いて、正常ヒト組織と腫瘍からの組織標本を含む組織マイクロアレイを免疫組織化学的に染色した。
【0105】
SAC-2マウスモノクローナル抗体(SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55)は、TrisベースのpH9.5 Heat-Induced Epitope Retrievalを用いて2.5マイクログラム/ミリリットルで使用した;アイソタイプコントロール(マウスIgG2a)を同じ条件で使用した。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片を、Biocare intelliPATH自動染色プラットフォーム(Biocare Medical, Pacheco, CA)上で、メーカー推奨の設定を用いて染色した。切片はBiocare Peroxidase Blocker (Biocare, Cat. #PX968)とBackground Punisher (Biocare, Cat. #BP974M)でインキュベートし、非特異的バックグラウンドをブロックした。マウス一次抗体の検出には、MACH4 HRP-polymer Detection System (Biocare, Cat. #MRH534)を用いた。発色検出および対染色キット IntelliPATH FLX DAB chromogen (Biocare, Cat. #IPK5010) および IntelliPATH Hematoxylin (Biocare Medical, Cat. #XMF963)を使用した。組織マイクロアレイ(TMA)はPantomics社(Fairfield, CA)のものを使用した。TMAには、3つの異なるドナーからの正常ヒト組織のFDA推奨パネル(MNO961)が含まれた。ヒト腫瘍のTMAには、multi-tumor array(MTU481)と、乳がん(BRC1022)、大腸がん(COC1021)、肺がん(原発性および転移性、LUM961)、転移性がん(MET961)、卵巣がん(OVC1021)、膵がん(PAN1021)、リンパ腫(LYM1021)のアレイが含まれた。TMAスライドは、サンプル中のヒトIgGに結合する二次抗体によるバックグラウンドを除去するため、マウスバージョンのSAC-2抗体で染色した。染色されたスライドは、TissueScope LE whole slide scanner(Huron Digital Pathology, St.Jacobs, Ontario, Canada)を用いて20倍の倍率でデジタル化された。確認のため、ガラススライドを正立明視野顕微鏡で観察した。
【0106】
図4は、正常ヒト乳房組織(
図4A)および乳房腫瘍(
図4C)のSAC-2染色の例を、無関係なマウスIgG2a抗体による腫瘍の染色(
図4B)と比較したものである。腫瘍の染色は腫瘍細胞の錆茶色の膜染色で示されるが、正常乳房組織はSAC-2で染色されず、腫瘍は無関係のIgG2a抗体で染色されない。乳房腫瘍細胞のSAC-2染色は標本全体に均一であった。腫瘍細胞のSAC-2染色の強度は様々であったが、異なる標本では、SAC-2結合が陽性であったすべての標本で均質な染色の特徴が見られた。
【0107】
表5は正常ヒト組織の染色結果をまとめたものである。正常ヒト組織で陽性染色が観察されたのは、3つの前立腺標本のうち1つだけであった。染色された前立腺標本は良性前立腺過形成と記載されたが、初期段階の前立腺がん細胞も含まれていた可能性がある。腫瘍検体の多く、特に転移性腫瘍は染色された。表6は、腫瘍組織マイクロアレイをSAC-2で染色した結果をまとめたものである。要約すると、SAC-2は正常なヒトの発生後の組織には結合しないが、いくつかの異なるヒトの原発性および転移性腫瘍の細胞上に発現された抗原を認識することが示された。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
実施例7
この実施例は、本明細書で提供される抗体が抗体依存性細胞細胞傷害活性を有することを示す。
【0112】
5つの付着性細胞株(CHP-134およびKelly神経芽腫、SK-MEL-28黒色腫、SK-OV-3卵巣、およびAsPC-1膵臓)および2つの非付着性(NCI-H020骨髄腫、Jurkat白血病)癌細胞株を、in vitroでADCC活性を媒介する能力についてSAC-1およびSAC-2を用いて試験した。細胞株は、上記の実施例4に記載したように入手し、アッセイに使用するために調製した。ADCC活性は、InvivoGen Jurkat-LuciaTM NFAT-CD16レポーターアッセイキットを用いて、製造者の指示に従って測定した。このアッセイは、癌表面上の抗原への抗体の結合、およびルシフェラーゼの発現とルシフェリンの存在下での発光の産生をもたらすレポーター細胞上のレセプターへの抗体のFc部分の結合によって活性化される細胞殺傷CD-16Fcγレセプター媒介シグナル伝達経路を測定する。ルミネッセンスプレートリーダー(Synergy HTX Multimode Reader, Agilent, Santa Clara, CAまたは類似品)を用いて、出力シグナルを相対発光単位(RLU)として測定した。
【0113】
SAC-1とSAC-2のマウス-ヒトFc IgG1キメラバージョンの結果を
図5A-5Cのグラフに示す。一般に、SAC-1はSAC-2よりもシグナルが少なかった。これは抗体の結合試験で決定された相対MFIに反映されるエピトープ密度が低かったことを反映している(表3)が、試験したほとんどの細胞株に対してADCC活性を活性化することができた。SAC-2は試験したほとんどの細胞株に対して、より高いADCC活性を有し、これは結合試験で観察されたエピトープの密度が、より高いことと一致している(表4)が、SAC-2はいくつかの細胞株に対しては活性を欠いた。要約すると、このデータは、両抗体が複数の異なるヒト癌細胞株に対してADCC活性を媒介できることを示している。
【0114】
実施例8
この実施例は、ヒト化SAC-2.1CおよびD抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性が、フコシル化を低減または除去することによって(例えば、アフコシル化抗体)、増強されることを示す。
【0115】
フコシル化が減少した抗体(aFUC)のADCC活性は、DELFIA(登録商標) cell cytotoxicity assay kit(PerkinElmer, Billerica, MA)を用いて比較した。使用した標的細胞はヒトA375メラノーマ細胞とMDA-MB-231乳がん細胞である。アッセイはメーカーの説明書に従って行った。簡単に言えば、標的細胞を採取し、完全培地に懸濁した。標的細胞(1x10^6)を2uLの蛍光増強リガンド(DELFIA(登録商標) BATDA試薬)で37℃で20分間標識した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で4回洗浄した後、細胞密度を1×10^5/mLに調整し、96ウェルアッセイプレートに100mL/ウェル播種した。ADCCアッセイでは、連続希釈した抗体溶液50μLをウェルに加え、37℃、5%CO2で15分間インキュベートした。ナチュラルキラーエフェクター細胞(NK92/CD16a)を、96ウェルプレートの50μL/ウェルに、標的細胞1に対してエフェクター細胞8の割合で添加した。エフェクター細胞、抗体、標的細胞を入れたアッセイプレートを37℃、5% CO2で3時間インキュベートした。
【0116】
細胞がインタクトな状態では、BATDAリガンドは細胞内に残る。無傷の細胞サンプルの上清にユーロピウム溶液を添加すると、BATDAが上清に放出されないため、ユーロピウムはBATDAと蛍光キレートを形成することができない。ユーロピウム溶液は、そのままの状態では蛍光を発しない。細胞がエフェクター細胞によって溶解されると、BATDAは細胞外へ、上清中に放出される。上清にユーロピウム溶液を添加すると、ユーロピウムは放出されたBATDA(EuTDA)と高蛍光で安定なキレートを形成することができる。測定された蛍光シグナルは、細胞毒性アッセイにおいて溶解された細胞の量と直接相関する。
【0117】
BATDAの最大放出量を測定するため、10μLのLysis Bufferをコントロールウェルに添加し、全ウェルの上清20μLを平底検出プレートに移した。平底ウェルプレートの上清にユーロピウム溶液(200μL)を加え、プレートを室温で15分間振とうし、最後に時間分解蛍光光度計で5時間以内の蛍光を測定した。殺滅率は次のように計算した:ADCC=(サンプルの蛍光-標的細胞および効果細胞混合物の自発蛍光)/(標的細胞の最大蛍光-標的細胞および効果細胞混合物の自発蛍光)×100%。殺傷率曲線は、GraphPad Prism 6(GraphPad, San Diego, CA)を用いてEC50を決定するために解析した。結果を
図6Aおよび6Bに示し、表7にまとめた。試験した抗体と標的細胞によって、ADCC活性は4~10倍増加した。
【0118】
【0119】
実施例9
本実施例は、本明細書で提供される抗体がヒト癌の異種移植マウスモデルにおいてin vivo腫瘍阻害活性を有することを示す。
【0120】
ヒト癌の異種移植マウスモデルにおけるSAC抗体の腫瘍増殖抑制能を、A375ヒトメラノーマとMDA-MB-231ヒト乳癌の2つのモデルを用いて、無胸腺症のBALB/c nu/nuマウスとヒト末梢血単核球(PBMC)を補充したNSGマウスで試験した。マウスは後肢に1x10^6細胞とマトリゲルを皮下注射により接種された。腫瘍はデジタルノギスで計測し、平均100-200mm
3 の大きさで治療群(1群10匹)にグループ分けした。マウスにSAC抗体2mg/kg、6mg/kg、20mg/kgを週2回投与するか、標準治療薬(A375モデルにはパクリタキセル7.5mg/kg、MDA-MB-231モデルにはシクロホスファミド30mg/kgを毎日i.p.)または対照群にはビヒクルのみを投与した。ヒトPBMCを投与されたマウスは、治療期間開始時にPBMCで1回治療された。有意性の比較は、GraphPad Prism(San Diego, CA)ソフトウェアを用いて、Dunnettの多重比較検定による反復測定ANOVAによって行った。標準治療のパクリタキセルと比較したSAC抗体治療の用量依存性を
図7Aおよび7Bに示す。MDA-MB-231ヒト乳がん異種移植マウスモデルにおけるSAC-1.1、マウスSAC-2、SAC-2.1Cのデータを
図8Aに、SAC-2.1CとともにヒトPBMCを添加した効果を
図8Bに示す。このデータは、SAC-1およびSAC-2が、抗体の濃度に依存して、ヒト黒色腫および乳癌の異種移植マウスモデルにおいて腫瘍増殖を阻害できることを示している。
【0121】
本明細書で引用される刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれるよう個別に具体的に示され、その全体が本明細書に記載されている場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、「the」、「at least one」および類似の参照語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方をカバーするものと解釈される。1つ以上の項目のリスト(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)が続く「少なくとも1つ」という用語の使用は、本明細書において別段の指示があるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択される1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)の2つ以上の任意の組み合わせを意味すると解釈される。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」という意味)として解釈される。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書において別段の指示がない限り、単に、範囲内に入る各別個の値を個別に参照するための省略法として機能することを意図しており、各別個の値は、本明細書において個別に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書において提供されるあらゆる実施例、または例示的な言語(例えば、「~のような」)の使用は、単に本発明をより良く理解することを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる文言も、請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0123】
本発明を実施するための本発明者らに公知の最良の態様を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載した以外の方法で本発明を実施することを意図している。従って、本発明は、適用される法律によって許容される、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された主題のすべての修飾および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書において特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
【国際調査報告】