IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウィットワース ユニバーシティの特許一覧

<>
  • 特表-病原体検出システム 図1
  • 特表-病原体検出システム 図2
  • 特表-病原体検出システム 図3
  • 特表-病原体検出システム 図4
  • 特表-病原体検出システム 図5A
  • 特表-病原体検出システム 図5B
  • 特表-病原体検出システム 図6
  • 特表-病原体検出システム 図7
  • 特表-病原体検出システム 図8
  • 特表-病原体検出システム 図9A
  • 特表-病原体検出システム 図9B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】病原体検出システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20250117BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250117BHJP
   C12Q 1/682 20180101ALI20250117BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20250117BHJP
【FI】
C12M1/34 B ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/682 Z
C12Q1/689 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542347
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2023060530
(87)【国際公開番号】W WO2023137362
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】18/153,260
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/299,156
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524266766
【氏名又は名称】ウィットワース ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エス.メザー
(72)【発明者】
【氏名】ケント ジョーンズ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA01
4B029FA02
4B029FA03
4B029GA03
4B029GB01
4B029GB02
4B029GB09
4B029GB10
4B029HA09
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
病原体検出システムのためのシステムおよび装置が本明細書に記載される。例えば、病原体検出システムは、入口、出口、および反応チャンバを含む病原体検出装置;励起源および蛍光検出システムを含む撮像システム;基板;および加熱要素を含み得る。いくつかの例において、病原体検出システムは、サンプル中の1つ以上の病原体および/またはウイルスを検出するように構成され得る。例えば、病原体検出装置は、DNAまたはRNAの少なくとも一方を含む溶液を受け取り、その溶液を反応チャンバに送ることができる。溶液を加熱すると、病原体検出装置はさらに、1つ以上の蛍光色素を含むプローブを受け取ることができる。励起源は溶液を励起し、検出システムは1つ以上の蛍光色素の発光を検出できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口、
出口、及び
反応
チャンバ
を含む病原体検出装置と、
励起源、及び
蛍光検出システム
を含む撮像システムと、
基板と、
加熱要素と
を含む、病原体検出システムであって、
前記病原体検出システムは、
前記病原体検出装置の入口で、DNAまたはRNAの少なくとも一つを含む溶液を受領する、
前記病原体検出装置の反応チャンバに前記溶液を送る、
前記加熱要素を介して前記溶液を加熱する、
前記病原体検出装置の入口で、DNAプローブまたはRNAプローブ、前記プローブを含有する1以上の蛍光色素の-少なくとも1つを受領する、
前記撮像システムの励起源を介して、前記溶液と前記プローブを励起する、
蛍光検出システムを介して、1つまたは複数の蛍光色素の発光を検出する
ように構成される、病原体検出システム。
【請求項2】
前記加熱要素は、
ペルチェ素子、
加熱ブロック、
熱電冷却装置、
ホットプレートまたは
抵抗加熱器
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記病原体検出装置が三次元(3D)プリンティングを使って製造される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記病原体検出装置が樹脂を含み、前記樹脂が、
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア819);および
アボベンゾン
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記病原体検出装置が、1つ以上のマイクロウェルをさらに含み、前記マイクロウェルが約116μm×約116μmの寸法を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
病原体検出装置であって、
前記病原体検出装置の入口で、DNAまたはRNAの少なくとも一つを含む溶液を受領する、
前記病原体検出装置の反応チャンバに前記溶液を送る、
加熱要素によって前記溶液を加熱する、
前記病原体検出装置の入口で、1以上の蛍光色素を含有するDNAプローブまたはRNAプローブの少なくとも1つを受領する、
前記病原体検出装置の撮像システムの励起源によって、前記溶液および前記プローブを励起する、および
前記病原体検出装置の蛍光検出システムによって、1つ以上の蛍光色素の発光を検出する
ように構成された、病原体検出装置
を含む装置。
【請求項7】
前記加熱要素は、
ペルチェ素子、
加熱ブロック、
熱電冷却装置、
ホットプレート、または
抵抗加熱器
の少なくとも1つを含む請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記病原体検出装置が三次元(3D)プリンティングを使って製造される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記病原体検出装置が樹脂を含み、前記樹脂が、
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア819)、および
アボベンゾン
を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記病原体検出装置が、1つ以上のマイクロウェルをさらに含み、前記マイクロウェルが約116μm×約116μmの寸法を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
(a)配列番号1、3、4、5、6もしくは7に記載の配列を有する核酸、または配列番号1、3、4、5、6もしくは7に記載の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する核酸であって、
(b)配列番号2に記載の配列に対して逆相補体の配列、または配列番号2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列に対して逆相補体の配列を有する核酸に連結されたもの;または
(c)配列番号21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列を有する核酸、または配列番号21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を有する核酸であって、
(d)配列番号15、16もしくは27に記載の配列に対して逆相補体の配列、または配列番号15、16もしくは27に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列に対して逆相補体の配列を有する核酸に連結されたもの;
を含む組成物であり、
(a)および(b)、または(c)および(d)の配列は、約90℃でハイブリダイズし、二重らせん構造を形成することによって連結され、(a)の核酸は蛍光団に連結され、消光剤から遠い位置にあり、それによって蛍光シグナルを生じる、組成物。
【請求項12】
(a)の核酸が、配列番号1、3、4、5、6もしくは7に記載の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、(b)の核酸が、配列番号2に記載の配列の逆相補体に対して少なくとも99%の配列同一性を有するか、または(c)の核酸が、配列番号21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、(d)の核酸が、配列番号15、16、もしくは27に記載の配列の逆相補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(a)の核酸が、配列番号1、3、4、5、6もしくは7に記載の配列を有し、(b)の核酸が、配列番号2に記載の配列の逆相補体を有するか、または(c)の核酸が、配列番号21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列を有し、(d)の核酸が、配列番号15、16もしくは27に記載の配列の逆相補体を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
ループ構造を形成する核酸が、配列番号1、3、4、5、6、7、21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列、または配列番号1、3、4、5、6、7、21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
ループ構造を形成する核酸が、配列番号1、3、4、5、6、7、21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32もしくは33に記載の配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
細菌のRNAまたはDNAが、連鎖球菌(streptococcus)、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant staphylococcus aureus)(MRSA)、大腸菌群(coliform bacteria)、大腸菌(E. coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(C.diff)、結核菌(tuberculosis)、炭疽菌(anthrax)、マイコプラズマ(mycoplasma)、クラミドフィラ(chlamydophila)、レジオネラ(legionella)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・マヨニ(Borrelia mayonii)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、コレラ菌(Vibrio cholera)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ガルドネラ・ヴァギナリス(gardnerelaa vaginalis)、または淋菌(Neisseria gonorrhoeae)由来である請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
真菌のRNAまたはDNAが、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)、ラクトバチルス(lactobacillus)、ミクロスポルム・カニス(microsporum canis)、足白癬(tinea pedis)、カンジダ(Candida)、アスペルギルス(Aspergillus)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ブラストミセス(Blastomyces)またはコクシジオイデス(Coccidioides)をコードする、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
寄生虫のRNAまたはDNAが、マラリア、トキソプラズマ症、トリコモナス症、ジアルジア鞭毛虫症、条虫、回虫、シラミ、疥癬、リーシュマニア症、または河川盲目症などの疾患を引き起こす原虫、蠕虫、外部寄生虫をコードする、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記蛍光団または前記消光剤が、シアニン(テトラメチルインド(ジ)-カルボシアニン)、フルオレセインアミダイト(FAM)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、カルボキシローダミン(ROX)、ローダミン、テトラクロロフルオレセインの誘導体であり、および消光剤は、ジメチルアミノアゾベンゼンスルホン酸(Dabsyl)、IRDye(C5362ClNNa16)、Iowa Black、ブラックホール消光剤の誘導体であり得る、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記RNAまたはDNAが、請求項11~20における前述の病原体の相補体となり得るPCR産物である請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、病原体検出システムを説明する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムは、ウイルスまたは他の病原体を検出することができ、一般の人々に多くの利点および機会を提供する。例えば、PCRは、使用者に、生物学的サンプル中のウイルスの存在を効果的かつ正確に検出することを可能にする。しかしながら、ほとんどの従来のPCRシステムおよび装置は、非常に労力を要し、高価であり、高度な環境制御を必要とする。従来のPCR装置に代わるものに、マイクロ流体装置が挙げられるが、これらの装置は一般的に高価である。そのため、ユーザーは代替となる、より手頃なPCR装置を望むかもしれない。
【0003】
関連出願との相互参照
このPCT国際出願は、2023年1月11日出願の米国特許出願第18/153,260号(名称「PATHOGEN DETECTION SYSTEM」)の優先権を主張するものであり、前記米国特許出願は、2022年1月13日出願の米国仮特許出願第63/299,156号対する優先権を主張し、前記米国特許出願は、前記仮出願の非仮出願であり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
配列一覧への言及
本出願に関連する配列表は、紙媒体の代わりにXML形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。シーケンスリストを含むXMLファイルの名前は、W058-0006US.xmlである。このテキストファイルは158 KBで、2023年1月5日に作成され、特許センター(Patent Center)を通じて電子的に提出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,283,173号明細書
【特許文献2】米国特許第5,468,614号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Computational Molecular Biology (Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, NY (1988)
【非特許文献2】Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, NY (1994)
【非特許文献3】Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, NJ (1994)
【非特許文献4】Sequence Analysis in Molecular Biology (Von Heijne, G., ed.) Academic Press (1987)
【非特許文献5】Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Oxford University Press, NY (1992)
【非特許文献6】Higgins and Sharp CABIOS, 5, 151-153 (1989)
【非特許文献7】Altschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)
【非特許文献8】Pearson, Comput. Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp.] (1994), Meeting Date 1992, 111-20. Editor(s): Suhai, Sandor. Publisher: Plenum, New York, N.Y.
【非特許文献9】Scatchard, et al., 1949, Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660
【非特許文献10】Sambrook, et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition (1989)
【非特許文献11】F. M. Ausubel, et al. eds., Current Protocols in Molecular Biology, (1987)
【非特許文献12】Methods IN Enzymology (Academic Press, Inc.)
【非特許文献13】M. MacPherson, et al., PCR: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1991)
【非特許文献14】MacPherson et al., eds. PCR 2
【非特許文献15】Practical Approach, (1995)
【非特許文献16】Harlow and Lane, eds. Antibodies, A Laboratory Manual, (1988)
【非特許文献17】R. I. Freshney, ed. Animal Cell Culture (1987)
【非特許文献18】Fundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 1991)
【発明の概要】
【0007】
以下、添付の図を参照しながら詳細に説明する。図中、参照番号の左端の桁(複数可)は、参照番号が最初に現れる図を示す。異なる図において同じ参照番号が使用されている場合は、類似または同一の項目を示す。添付の図に描かれているシステムは縮尺通りではなく、図中の構成要素は互いに縮尺通りに描かれていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、病原体検知システムの一例を示す図である。
図2図2は、病原体検出装置の一実施形態の例を示す二次元上面図である。
図3図3は、病原体検出装置の製造方法を示す概略図である。
図4図4は、病原体検出装置の代替製造方法を示す概略図である。
図5A図5Aは、COVIDのスパイクタンパク質をコードするRNAに結合するように設計された病原体分子プローブのコンフォーメーションの例を示す。
図5B図5Bは、COVIDのスパイクタンパク質をコードするRNAに結合するように設計された病原体分子プローブの付加的なコンフォーメーションの例を示す。
図6図6は、サンプル中の病原体の存在を検出するために、病原体をコードするRNAまたはDNA標的領域に分子プローブを結合させるプロセスの一例を示す。
図7図7は、分子プローブとRNAまたはDNA標的との結合に対応する標準融解曲線を示す。
図8図8は、COVIDのスパイクタンパク質をコードするRNAを複製するDNA標的に結合するように設計された分子プローブの原理の実証である。
図9A図9Aは、分子プローブを検出する原理の実証のための3Dプリントマイクロウェルデザインを示す。
図9B図9Bは、図9Aの点で描いた四角の周辺の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
上述したように、ウイルスやその他の病原体を検出および診断するための現在および従来の標準はPCRである。ウイルスを検出するためには、ウイルスのゲノムデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)をビリオンのカプシドから抽出し、DNAまたはRNAが検出できるまで(例えば約100万倍)、特別なポリメラーゼを用いて相補鎖を何倍にもする。検出は通常、検出したいウイルス株に特異的な配列で設計されたDNAプローブを用いて行われる。プローブには、例えば、分子ビーコンおよび/またはインターカレート色素が含まれる。ウイルスを検出するために使用されるシステムは、典型的には、光学的励起および/または検出と、ポリメラーゼを活性化してコピーするための制御されたサーマルサイクラーを備えた卓上定量PCR(qPCR)装置を含むことができる。このプロセスは通常、標的DNAまたはRNAを増幅し、光学シグナルを検出するために、低温(約20℃から約50℃)から高温(約80℃から約90℃)のサイクルを約30から約60サイクル必要とする。その後、一般的にqPCR曲線が作成され、サンプル中に相補的DNAが存在する場合には、その指数関数的な成長を示す。元のDNAまたはRNAの量は、高感度(例えば、1~1000ゲノムコピー/mLまで)に較正されたサイクル数まで遡ることができる。
【0010】
PCRは非常に高感度であるため、ウイルスを検出する環境は高度に制御されなければならず、HEPAフィルター、HVACコントロール、層流、ヒュームフードなど様々な技術の使用が必要となる。さらに、qPCRは高度に訓練されたスタッフによって集中管理されたラボで実施される。不純物のリスクを低減するため、qPCR法の幾つかは、サンプルの調製とウイルスやその他の病原体の検出を自動化した機器に依拠する。これらの自動qPCR法は、集中型ラボ施設での検査用に開発されたもので、ハイスループットと迅速な検査所要時間を容易にしている。これらの時間は通常、約24時間から14日間である。しかし、検出されるウイルスの性質上、ウイルスのさらなる拡散を防ぐため、結果を待つ間、サンプルを採取した患者が隔離されることがある。地域保健の役割に加え、このような長い隔離期間は患者を隔離に追い込み、うつ病などの深刻な心理的影響をもたらす可能性がある。さらに、隔離期間が長いと、仕事を休むなど生産性が低下する可能性もある。したがって、迅速な検査所要時間が重要である。陰性の結果を迅速に受け取ることで、患者は社会生活および職場に復帰し、幸福感および生産性を向上させることができる。あるいは、陽性の結果を迅速に受け取ることで、適切な接触追跡、再検査、処置が可能になり、感染の拡大および流行の進行を効果的に回避できるかもしれない。
【0011】
ポイント・オブ・ケア(POC)病原体検出装置は、患者が迅速な結果を得ることができる方法の一つである。POC診断は、サンプルを検査機関に送るよりもむしろ、患者が医療を受ける場所、例えば医師の診察室でウイルスまたは他の病原体を検出することを可能にする医療アプローチである。現在のPCR自動化システムには、病院内に設置されたPOC装置が含まれる。例えば、いくつかのPOC PCR装置はカートリッジシステムに依存している。そのようなシステムはサンプルをカートリッジに入れ、次いで、それをサーマルサイクラーに入れる。いくつかの例では、光学検出システムが病原体を検出するために使用され得る。これらのカートリッジは一般的にプラスチック製で、ウイルスまたは他の病原体を検出するための特定の検査を行うのに必要な試薬を含有し得る。しかし、これらのカートリッジはかさばり、製造に費用がかかる場合がある。
【0012】
現在のPOC PCR装置に対する一つの解決策は、ラボオンチップ(LOC)装置という形で提示されている。LOC装置は通常ラボで行われる検査を行うことができるが、そのような検査を小さなチップ上に小型化したものである。これはハイスループットおよび自動処理などの利点を提供する。LOC装置は通常、検査用流体中のサンプルを輸送するためのマイクロ流体チャンネルを含む。病原体の検出にLOC装置を使用すると、サンプル容量、試薬、廃棄物のフットプリントの削減など、多くの利点がある。しかし、LOC装置は一般的に製造コストが非常に高い。例えば、従来のLOC装置は、クリーンルームと高度な訓練を受けたオペレーターを必要とするシリコン微細加工技術を用いて製造される。
【0013】
その解決策が、3次元(3D)プリンティングという形で提示される。3Dプリンティングは、コンピューター支援設計(CAD)構造を使用して、さまざまな方法で(バルク材料から除去するのとは対照的に)追加、接合、または固化される材料を用いて3D造形を作成することを含む。したがって、LOC装置は3Dプリンティングで製造することができる。LOC装置の製造コストは、従来の技術よりも大幅に低いだけでなく、3Dプリンティングでは、クリーンルーム、無数の器具、訓練を受けた専門家が不要になる。
【0014】
病原体検出システム
本出願は、3DプリンティングされたLOC病原体検出システムを説明する。例えば、病原体検出のためのシステムは、LOC装置を含むことができる。この装置は、いくつかの例では、入口、出口、および/または反応チャンバを含むことができる。本システムは、撮像システムをさらに含んでいてもよく、撮像システムは励起源および/または蛍光検出の構成要素を含み得る。さらに、本システムは、基板および/または発熱要素を含んでいてもよい。
【0015】
いくつかの例では、病原体検出システムは、1つ以上のウイルスまたは他の病原体を検出するように構成され得る。本開示では、SARS-CoV-2を検出するように構成されたシステムを説明するが、本システムは、SARS-CoV-2に関連する変異体を含む任意のウイルスまたは病原体の1つ以上を検出するために使用することができる。例えば、本システムは、病原体検出装置の入口で、生物学的試料を含む溶液を受け取ることができる。例えば、本システムは、本システムが検出すべきウイルスまたは病原体に関連するDNAまたはRNAの少なくとも一方を受け取ることができる。溶液には、例えば緩衝液が含まれ得る。その後、本システムは、処理および検出のために、溶液を病原体検出装置の反応チャンバに送る。
【0016】
いくつかの例では、本システムは、DNAまたはRNAを増幅するために、加熱要素を介して溶液を加熱することができる。例えば、溶液がDNAを含有する例では、DNA増幅プロセスを活性化するために加熱要素を使用することができる。いくつかの例を挙げると、PCR、ループ介在等温増幅(LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification))、核酸配列ベース増幅(NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification))、自家持続配列複製(3SR(Self-Sustained Sequence Replication))、ローリングサークル増幅(RC(Rolling Circle Amplification))、リガーゼ連鎖反応(LCR(Ligase Chain Reaction))など、様々な増幅プロセスを使用することができる。いくつかの例では、溶液を含有する病原体検出装置は、加熱要素の上に直接置かれてもよい。加熱要素には、例えば、ペルチェ素子、加熱ブロック、熱電冷却素子、ホットプレート、および/または抵抗加熱器が含まれる。
【0017】
その後、本システムは、病原体検出システムの入口で、DNAプローブまたはRNAプローブの少なくとも一方を受け取ることができる。いくつかの例では、プローブは1つ以上の蛍光色素を含む。プローブの使用を説明したが、インターカレート色素または分子ビーコンなど、他の様々な報告機構を使用してもよい。
【0018】
いくつかの例では、本システムは、次に、撮像システムの励起源を介して、溶液を励起することができる。励起源は、光励起を形作り、方向付けるための一連のレンズおよびミラーを含む光学撮像システムを含有することができる。溶液の励起に応答して、本システムは、蛍光検出システムを介して、1つ以上の蛍光色素の発光を検出することができる。例えば、本システムは、ラマン散乱およびレイリー散乱など、1つ以上の蛍光色素の発光を検出する際に、様々な光学的応答に依存することができる。本システムはさらに、いくつかの例を挙げると、電子増倍電荷結合素子(EMCCD)、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)、および光パワーメータなどの様々な検出装置に依存することができる。
【0019】
いくつかの例では、LOC装置は3Dプリンティング法を用いて製造することができる。例えば、LOCは、ステレオリソグラフィー(stereolithography)(SLA)3Dプリンティングを用いて製造することができ、この場合、光は、未現像の光硬化性樹脂のバットに集光され得る。硬化性樹脂は、光の波長が短くなるにつれて吸収が増加するため、光の浸透深度が減少する可能性がある。浸透の深さが減少すると、重合する樹脂の量が減少し、チャネルのZ軸がより制御されることになる。樹脂はまた、約300ナノメートル(nm)から約1000nmで特徴付けられる光吸収を有していてもよい。光源は、約350nmから約380nmのLED光源を有するデジタル光処理(DLP)プロジェクタを含んでもよいが、これらの波長に限定されない。光源は、電動ミラーマウントを使用してラスタースキャンされた光スポットを有するレーザーを含むことができるが、これに限定されない。
【0020】
本明細書で開示する病原体検出装置を製造するには、例えば、ビルドプラットフォームを樹脂のバット内に降下させることができる。ビルドプラットフォームをバット内に降ろすと、光源が所定のパターンで形成され得る。いくつかの例では、パターンは、ユーザーおよび/または別の装置によって予めプログラムされ得る。光は、樹脂槽を通してビルドプラットフォーム上に投射され、光に接触した未現像樹脂が固化されてビルドプラットフォーム上に現像済の樹脂の単層を形成する。いくつかの例では、ビルドプラットフォームは、1つ分層を下げ、新しい未現像樹脂で再コーティンし、設計が完了するまでこのプロセスを繰り返すことができる。光源は、現像済の樹脂の各層が異なるパターンで構成されるように、異なるパターンを照射するようにプログラムされてもよい。いくつかの例では、パターンが繰り返されてもよい。プロセスが完了したら、ビルドプラットフォームを未現像樹脂のバットから引き上げ、完成した3D病原体検出装置から残りの未現像樹脂を取り除くことができる。
【0021】
例では、病原体検出装置は、現像済の樹脂の層を形成するための一連のパターンを用いて製造され得るが、これに限定されない。例えば、一旦ビルドプラットフォームが未現像樹脂のバットに下げられると、光源は、ビルドプラットフォーム上に樹脂の第1の層が堆積されるように第1のパターンを放射することができ、第1の層は現像済の樹脂である。さらに、光源は、樹脂の第2の層が樹脂の第1の層上に堆積されるように第2のパターンで光を放射することができる。第2のパターンは、現像済の樹脂の第1および第2の部分と、未現像の樹脂の第3の部分とを含むことができ、第3の部分は、第2の層の第1および第2の部分の間に堆積されることができる。このように、第2の樹脂層は病原体検出装置の外壁を形成し始め、外壁は現像済の樹脂で構成される。
【0022】
いくつかの例では、光源は、樹脂の第三の層が樹脂の第2の層上に堆積されるような第三のパターンを放射することができる。第3の樹脂層は、現像済の樹脂であり得る第1の部分、第2の部分、および第3の部分を含むことができる。さらに、第3の層は、未現像樹脂であってもよい樹脂の第4の部分および第5の部分を含んでいてもよい。例では、第3の層の樹脂の第4の部分は、第3の層の第1の部分と第2の部分との間に堆積されてもよく、第3の層の第5の部分は、第3の層の樹脂の第2の部分と第3の部分との間に堆積されてもよい。そうすることによって、第3の層は、外壁の少なくとも一部および1つまたは複数の内壁の少なくとも一部など、病原体検出装置の一部を構成することができる。いくつかの例では、これは外側樹脂クラッド(cladding)の一部を形成することができ、外側樹脂クラッドは未現像樹脂で構成され、現像済の樹脂で囲まれうる。
【0023】
いくつかの例では、光源は、樹脂の第4の層が樹脂の第3の層上に堆積されるように第4のパターンを放射することができる。樹脂の第4の層は、現像済の樹脂であってもよい第1の部分、第2の部分、第3の部分、および/または第4の部分を含んでもよい。さらに、第4の層は、未現像樹脂であってもよい樹脂の第5の部分、第6の部分、および/または第7の部分を含んでもよい。そうすることにより、第4の層は第3の層の上に構築され、外側クラッドの外壁および/または内壁を伸長させ、内側樹脂クラッドの少なくとも一部を画定することができ、内側樹脂クラッドは外側樹脂クラッド内に堆積され得る。幾つかの例では、内側樹脂クラッディングは未現像樹脂で構成され、現像済の樹脂で囲まれ得る。
【0024】
いくつかの例では、光源は、樹脂の第5の層が樹脂の第4の層上に堆積され得るように、第3のパターンで光を放射し得る。第4の層の樹脂の第5の部分は、第4の層の第1の部分と第2の部分との間に堆積され、第4の層の樹脂の第6の部分は、第4の層の第2の部分と第3の部分との間に堆積され、第4の層の樹脂の第7の部分は、第4の層の第3の部分と第4の部分との間に堆積される。その結果、第5の層が第4の層の上に構築され、外側クラッドの外壁および/または内壁をさらに伸長し、現像済の樹脂によって囲まれた内側樹脂クラッドが完全に形成され得る。
【0025】
いくつかの例では、光源は、樹脂の第6の層が樹脂の第5の層上に堆積され得るように、第2のパターンで光を放射し得る。第6の層を堆積させることにより、外側クラッドの外壁および/または内壁はさらに伸長される。さらに、光源は、樹脂の第6の層上に樹脂の第7の層が堆積するように、第1のパターンで光を放射してもよい。そうすることにより、病原体検出装置は完全に形成され、内側樹脂クラッドが外側樹脂クラッド内に堆積され得る。
【0026】
内部構造に支持体を提供するために、ユーザーおよび/または別の装置は、層間および/または層の一部間に一時的な支持構造を作成するように光源をプログラムすることができ、この支持構造は製造の際に後で除去することができる。
【0027】
他の例では、病原体検出装置の製造は、逆ステレオリソグラフィー(inverted stereolithography)を用いた「ボトムアップ」アプローチを含むことができる。このプロセスは、ビルドプラットフォームを樹脂バットの底に接触するように下げることから開始する製造プロセスを要求し得る。光源は、樹脂バットを通して上方に第1のパターンを放射し、ビルドプラットフォームと接触させ、これによって、光が接触する可能性のある未現像樹脂を固化させ、現像することができる。いくつかの例では、バットを、予め決められた角度(一例として5度まで)で傾けて、今硬化した現像済み樹脂から剥がし、現像済み樹脂がビルドプラットフォームに付着したままバットの底部から剥離れる。現像済の樹脂とバットの底の間に新たにできた空間に、新しい液状の未現像樹脂が流れ込み、病原菌検出装置が完成するまでこの工程が繰り返される。
【0028】
いくつかの例では、病原体検出装置は、微小流体硬化と呼ばれる表面粗さ処理を経てもよい。3Dプリンティングを用いて病原体検出装置を製造した後、残存する重合していない未現像樹脂が装置のチャネル内に存在することがある。この未現像樹脂を除去するために、マイクロ流体コネクタに接続するようにチャネルをパターン化し、残りの未現像樹脂を排出し、少なくとも未現像樹脂の層を残す。残った樹脂は、排出後にUVAランプで露光して重合させることができる。
【0029】
病原体プローブ
病原体検出のためのシステムおよび方法に加えて、本出願は、ウイルスSARS-CoV-2のようなウイルスを検出するための病原体検出システム(上記)において使用されるように設計された病原体プローブを記載する。例えば、病原体プローブは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に設計された。このプローブは、現在知られているSARS-CoV-2株(2021年10月現在)を含む全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))のタンパク質およびDNA配列データベースを用いてインシリコで設計された。ゲノムの特定の保存領域(スパイクタンパク質をコードするのに応答可能な領域)が選択され、約60℃で変性するように36塩基のヘアピン形状の病原体プローブが設計された:
5’-GCGGGCGAAAAGTAGATCTTCAATAAATGAGCCCGC-3’(配列番号1)。可能性の高いRNA配列のシミュレーションから、図4に関して後述するように、5つの可能性の高い確認を得た。次に、SARS-CoV-2特異的病原体プローブを、対応する赤色色素(TYE665)、消光剤、およびSARS-CoV-2ゲノムに対応する100塩基オリゴヌクレオチドとともに、Integrated DNA Technologies, Inc.に注文した:
5’-ACAAATATTACCAGATCCATCAAAACCAAGCAAGAGGTCATTTATTGAAGATCTACTTTTCAACAAAGTGACACTTGCAGATGCTGGCTCATCAAACAA-3’(配列番号2)。ここで、下線部が病原体プローブと相補的である。サーマルサイクラーを用いてプローブの機能を確認するために融解曲線を得た。図7を参照して後述するように、約116μm×約116μmの大きさの1,166マイクロウェルの反応チャンバを持つマイクロアレイを3Dプリンティングすることにより、原理実証実験を行った。
【実施例
【0030】
病原体検出システムの実施形態例
図1図4は、病原体検出システムおよび病原体検出装置を用いて病原体を検出するための例示的な実施形態を示す。例えば、図1は、例示的な病原体検出システム100を示す。病原体検出システム100は、図2に関して後述する病原体検出装置102を含んでもよい。病原体検出装置102は、入口104、出口106、および反応チャンバ(本実施形態では図示せず)を含み得る。いくつかの例では、病原体検出システム100は、1つ以上の病原体またはウイルスを検出するように構成され得る。例えば、本システムは、病原体検出装置102の入口で、溶液を受け取ることができる。溶液は、病原体検出システム100が検出し得る1つ以上のウイルスおよび/または病原体のDNAおよび/またはRNAの少なくとも一方を含有し得る。DNAまたはRNAは、いくつかの例では、連鎖球菌(streptococcus)、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、大腸菌(coliform bacteria)、大腸菌(E. Coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)、結核菌(tuberculosis)、炭疽菌(anthrax)、マイコプラズマ、クラミドフィラ(chlamydophila)、レジオネラ(legionella)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・マヨニ(Borrelia burgdorferi)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、コレラ菌(Vibrio cholera)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ガルドネラ・ヴァギナリス(gardnerelaa vaginalis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)などの1つ以上の病原体の相補体でありうる産物、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)、ラクトバチルス(lactobacillus)、ミクロスポルム・カニス(microsporum canis)、足白癬(tinea pedis)、カンジダ(Candida)、アスペルギルス(Aspergillus)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans:C.neoformans)、ブラストミセス(Blastomyces)、コクシジオイデス(Coccidioides)、原虫、蠕虫、外部寄生虫であって、マラリア、トキソプラズマ症、トリコモナス症、ジアルジア鞭毛虫症、条虫、回虫、シラミ、疥癬、リーシュマニア症、河川盲目症などの疾患を引き起こす原虫、蠕虫、外部寄生虫をコードするものである。
【0031】
いくつかの例では、溶液はまた、TE緩衝液、TAE緩衝液、TBE緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(tris)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ホウ酸、酢酸、HCl、NaOH、NaCl、MgCl、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、イソプロパノール、エタノール、RNアーゼ、DNアーゼ、酢酸カリウム、超純水、水(HO)またはNHClからなり得る緩衝液を含み得る。いくつかの例では、病原体検出装置102は、例を挙げると、シリコン、スライドガラス、溶融シリカ、石英、サファイア、窒化ガリウム、ゲルマニウム、ゴリラガラス、酸化インジウムスズ、タンタル酸リチウム、窒化ケイ素、ゲルマニウムシリコン、炭化ケイ素、エピタキシャルシリコン、シリコン・オン・インシュレーター(SOI)、単結晶石英、酸化アルミニウム、コーニング・イーグル・グラス、ホウケイ酸塩、BK7ガラス、ソーダ石灰ガラス、熱酸化物、酸化亜鉛、II-V族半導体、II-VI族半導体、太陽電池、荷電結合素子、液晶ディスプレイからなり得る基板に結合されうる。
【0032】
いくつかの例では、病原体検出装置102は、加熱要素110に結合され得る。加熱要素は、いくつかの非限定的な例を挙げると、ペルチェ素子、加熱ブロック、熱電気冷却装置、ホットプレート、および/または抵抗加熱器を含むことができる。いくつかの例では、病原体検出装置102に熱を加えることにより、溶液中に含有されるDNAおよび/またはRNAの増幅を開始することができる。いくつかの例を挙げると、PCR、ループ介在等温増幅(LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification))、核酸配列ベース増幅(NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification))、自家持続配列複製(3SR(Self-Sustained Sequence Replication))、ローリングサークル増幅(RC(Rolling Circle Amplification))、リガーゼ連鎖反応(LCR(Ligase Chain Reaction))など、様々な増幅プロセスを使用することができる。
【0033】
いくつかの例では、病原体検出装置102は、病原体検出装置102の入口104において、DNAおよび/またはRNAプローブの少なくとも一方を受け取ることができ、これは図4~6に関して後述する。プローブを受け取ることに応答して、病原体検出システム100は、次に、励起源114を介して、DNAおよび/またはRNAとプローブとを含有する溶液を励起することができる。励起源は、光励起を形作り、方向付けるための一連のレンズおよびミラーを含む光学撮像システムを含むことができる。
【0034】
DNAおよび/またはRNAならびにプローブを含む溶液の励起に応答して、病原体検出システム100は、次に、検出システム116を介して、1つまたは複数の蛍光色素の発光118を検出することができる。例えば、病原体検出システム100は、1つ以上の蛍光色素の発光を検出する際に、ラマン散乱およびレイリー散乱などの様々な光学的応答に依存してもよい。システムはさらに、いくつかの例を挙げると、電子増倍電荷結合素子(EMCCD)、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)、および光パワーメータなどの様々な検出装置に依存してもよい。
【0035】
図2は、例示的な病原体検出装置200の二次元上面図である。図1に関して上述したように、かつ病原体検出装置102と同様に、病原体検出装置200は、病原体検出システム100のような病原体検出システムにおいて実施されてもよい。例えば、病原体検出装置200は、入口202、出口204、および/または反応チャンバ206を含むことができる。いくつかの例では、DNAおよび/またはRNAを含有する緩衝液などの入力試料が、入口202を介して病原体検出装置200に導入され得る。その後、溶液は、処理および検出のために反応チャンバ206に送られる。例として、DNA検出の場合、ウイルスゲノムDNAは試薬と混合され、DNA増幅のために反応チャンバ206に送られる。
【0036】
いくつかの例では、入口202および/または出口204は、いくつかの非限定的な例を挙げると、サンプルを1つの反応チャンバから別の反応チャンバに移送し、試薬、流体、および/または気体を導入し得るマイクロ流体チューブを介して、シリンジおよび/または他のポンプを使用して接続され得る。
【0037】
現在の実施形態では、単純な入口202、出口204、および反応チャンバ206が描かれているが、病原体検出装置200は、任意の数の入口202、出口204、および反応チャンバ206を含むことができ、これは、検出可能な病原体および/またはウイルスに対応するDNAおよび/またはRNAの1つまたは複数のサンプルについて多重サンプル試験を行うことができる。複数の反応チャンバ206の場合、検査される病原体および/またはウイルスに応じて、同じまたは異なる試薬(複数可)が入口202に導入され得る。
【0038】
図3および図4は、図1および図2に関して記載されたものと同一または類似であってもよい、病原体検出装置の製造方法の概略図を示す。図3および図4に関して記載される操作は、段階的工程で記載されるが、工程は、異なる順序で、および/または並行して実行されてもよく、図示される工程よりも多いまたは少ない工程を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0039】
図3は、病原体検出装置の製造方法の模式図300を示す。例において、病原体検出装置は、現像済の樹脂の層を生成するための一連のパターンを用いて製造されてもよい。例えば、病原体検出装置は、ユーザーが指定したパターンで光を放射するDLPプロジェクタを用いたSLA3Dプリンティングを用いて製造することができるが、これに限定されない。
【0040】
ステップ1において、ビルドプラットフォーム302は、未現像のUV硬化性樹脂のバットに下ろされ得るが、これに限定されない。樹脂は、ベースとしてポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)モノマーで構成される処方から作製され、光重合開始剤であるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)を用いて硬化され得る。いくつかの例では、マイクロ流体チャネルのz-高さの詳細を最適化するために、添加剤であるUV吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤はアボベンゾンを含有することができるが、これに限定されない。いくつかの例では、樹脂は3Dプリンタの光源、例えば約365nmの光に感応性であり得る。この感度は、病原体検出装置をプリンティングする際に、樹脂を可視光に対して透明にし、光が病原体検出装置を通って移動することを可能にする。いくつかの例では、樹脂は多層であってもよい。層には、例えば、マイクロ流体チャンネル、ミキサー、光導波路、ヒーター、フィルター、光検出器、化学検出器反応室、電源、導体などが含まれる。
【0041】
いくつかの例では、光源は、ビルドプラットフォーム302に向けられた光の第1のパターンで、指定された波長の1つ以上のレーザーを放射することができる。未現像樹脂と接触すると、未現像樹脂は重合し、ビルドプラットフォーム302上に堆積した現像済の樹脂の第1の層304を形成する。例では、光のパターンは予めプログラムされ、ユーザーおよび/または別の機械によって決定され得る。
【0042】
ステップ2において、光源は、ビルドプラットフォーム302および現像済の樹脂の第1の層304に向けて第2のパターンで光を放射し、樹脂の第2の層を現像済みの樹脂の第1の層304上に堆積させることができる。いくつかの例では、第2のパターンは、未現像樹脂の特定部分が光と接触し、未現像樹脂を重合させて現像済の樹脂を生成する一方で、未現像樹脂の他の部分が未現像のままとなるように光を放射することができる。例えば、光源は、樹脂の第2の層が現像済み樹脂306の部分を含み得る一方、第2の部分は未現像樹脂308のままであり、未現像樹脂306の第2の層が現像済み樹脂308の第2の層の部分の間に堆積するように第2のパターンで光を放射することができる。
【0043】
ステップ3において、光源は、現像済み樹脂の第2の層304および未現像樹脂の第2の層308を含む樹脂の第2の層上に樹脂の第3の層が堆積されるように第3のパターンで光を発することができる。ステップ2と同様に、第3のパターンは、現像済み樹脂310の部分と未現像樹脂312の部分を含むことができ、未現像樹脂312の第3の層の部分は、現像済み樹脂310の第3の層の間に堆積する。
【0044】
ステップ4において、光源は、現像済み樹脂の第3の層310および未現像樹脂の第3の層312を含む樹脂の第3の層上に樹脂の第4の層が堆積されるように、第4のパターンで光を放射することができる。ステップ2および3と同様に、第4のパターンは、現像済み樹脂314の部分および未現像樹脂316の部分を含むことができ、未現像樹脂316の第4の層の部分は、現像済み樹脂314の第4の層の部分の間に堆積する。
【0045】
ステップ5において、光源は、ステップ3と同様に、現像済み樹脂の第4の層314および未現像樹脂の第4の層316を含む樹脂の第4の層上に樹脂の第5の層が堆積されるように、第3のパターンで光を放射してもよい。ステップ2、3、4と同様に、第5のパターンは、現像済み樹脂318と未現像樹脂320の部分を含むことができ、未現像樹脂320の第5の層の部分は、現像済み樹脂318の第5の層の部分の間に堆積する。
【0046】
ステップ6において、光源は、第5の現像済み樹脂層318および第5の未現像樹脂層320を含む第5の樹脂層上に第6の樹脂層が堆積するように、ステップ2と同様の第2のパターンで光を放射してもよい。ステップ2、3、4、および5と同様に、第6のパターンは、現像済み樹脂322および未現像樹脂324の部分を含むことができ、未現像樹脂324の第6の層の部分は、現像済み樹脂322の第6の層の部分の間に堆積する。
【0047】
ステップ7において、光源は、ステップ1と同様に、現像済み樹脂の第6層322および未現像樹脂の第6層324を含む樹脂の第6層上に樹脂の第7層が堆積されるように、第1のパターンで光を発することができる。ステップ1と同様に、第7の層は現像済み樹脂326の一部を含むことができる。
【0048】
ステップ8では、病原体検出装置を反転させ、未現像の樹脂を排出する。
【0049】
図4は、病原体検出装置を製造する代替方法の模式図400を示す。図4に図示される方法は、上述の図3に図示される方法と同じであってもよく、または類似していてもよい。例えば、ステップ1において、非限定的な例を挙げると、ビルドプラットフォーム402が、未現像のUV硬化性樹脂のバットに下げられてもよい。いくつかの例では、樹脂は、365nmの光などの3Dプリンタの光源に感応性であり得る。いくつかの例では、光源は、ビルドプラットフォーム402に向けられた光の第1のパターンで、指定された波長の1つまたは複数のレーザーを放射できる。未現像樹脂と接触すると、未現像樹脂は重合して現像済み樹脂404の第1の層を形成する。
【0050】
ステップ2において、光源は、樹脂の第2の層を現像済み樹脂の第1の層404上に堆積させることができるように、ビルドプラットフォーム402および現像済み樹脂404の第1の層に向けて第2のパターンで光を放射しうる。いくつかの例では、第2のパターンは、未現像樹脂の特定部分が光と接触し、未現像樹脂を重合させて現像済み樹脂を生成し、未現像樹脂の他の部分は未現像のままとなるように光を放射することができる。例えば、光源は、樹脂の第2の層が現像済み樹脂406の部分を含む一方、第2の部分が未現像樹脂408のままであり、未現像樹脂406の第2の層が第2の現像済み樹脂408の第2の層の部分の間に堆積するように、第2のパターンで光を放射することができる。
【0051】
ステップ3において、光源は、現像済み樹脂404の第2の層および未現像樹脂408の第2の層を含む樹脂の第2の層上に樹脂の第3の層が堆積されるように第3のパターンで光を放射することができる。ステップ2と同様に、第3のパターンは、現像済み樹脂410の部分と未現像樹脂412の部分を含むことができ、未現像樹脂412の第3の層の部分は、現像済み樹脂410の第3の層の間に堆積する。
【0052】
ステップ4では、病原菌検出装置を反転させ、未発達の樹脂を排出する。
【0053】
病原体プローブの実施形態例
図5Aおよび図5Bは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に設計された、現在の実施形態ではヘアピンプローブとして描かれている病原体プローブの例示的なコンフォーメーション500aおよび500bを示す。例えば、病原体プローブは、当時知られていたSARS-CoV-2株を含むNCBIのタンパク質およびDNA配列データベースを用いて設計された。ゲノムの特定の保存領域が選択され、36塩基の病原体プローブが約60℃で変性するように設計された:
【0054】
5’-GCGGGCGAAAAGTAGATCTTCAATAAATGAGCCCGC-3’(配列番号1)。
【0055】
プローブの可能な誘導体は、例えば、以下のものがあるが、これらに限定されない。
5’-GCGGGCTCATTTATTGAAGATCTACTTTTCGCCCGC-3’(配列番号3)、
5’-CGCCCGCTTTTCATCTAGAAGTTATTTACTCGGGCG-3)(配列番号4)、
5’-GCGGGCGAAAAGUAGAUCUUCAAUAAAUGAGCCCGC-3’(配列番号5)、
5’-GCGGGCUCAUUUAUUGAAGAUCUACUUUUCGCCCGC-3’(配列番号6)、
5’-CGCCCGCUUUUCAUCUAGAAGUUAUUUACUCGGGCG-3’(配列番号7)。
可能性の高いRNA配列のシミュレーションから、約63.4℃の最も高い融解温度を持つ5つの可能性の高いコンフォーメーション400を得た。いくつかの例では、病原体プローブは、赤色色素(TYE665)のような対応する色素、消光剤、および/またはSARS-CoV-2ゲノムに対応する100塩基オリゴヌクレオチドを含むことができる:
5’-ACAAATATTACCAGATCCATCAAAACCAAGCAAGAGGTCATTTATTGAAGATCTACTTTTCAACAAAGTGACACTTGCAGATGCTGGCTCATCAAACAA-3’(配列番号2)。ここで、下線部分は病原体プローブと相補的である。
【0056】
あるいは、SARS-CoV2ゲノムの異なるセグメントは、5’-AGUCAGUGUGUUAAUCUUACAACCAGAACUCAAUUACCCCCUGCAUACACUAAUUCUUUCACACGUGGUGUUUAUUACCCUGACA-3’(配列番号15)またはそのDNA等価物5’-AGTCAGTGTGTTAATCTTACAACCAGAACTCAATTACCCCCTGCATACACTAATTCTTTCACACGTGGTGTTTATTACCCTGACA-3’(配列番号16)を選択した。標的SARS-CoV2ゲノム配列のDNA等価物、逆相補体は、5’-TGTCAGGGTAATAAACACCACGTGTGAAAGAATTAGTGTATGCAGGGGGTAATTGAGTTCTGGTTGTAAGATTAACACACTGACT-3’(配列番号27)である。
【0057】
これらは以下のプライマーに対応する。
フォワードプライマー:5’-AGTCAGTGTGTTAATCTTACAACC-3’(配列番号17)および
リバースプライマー:5’-TGTCAGGGTAATAAACACCACG-3’(配列番号18)。
【0058】
これらのプライマーの逆相補体は以下の通りである:
フォワードプライマー:5’-GGTTGTAAGATTAACACACTGACT-3’(配列番号19)および
リバースプライマー:5’-CGTGGTGTTTATTACCCTGACA-3’(配列番号20)。
【0059】
配列番号15および16のゲノム配列から、さまざまな病原体プローブが設計された。可能なプローブのデザインには、例えば以下のようなものがあるが、これらに限定されない。
5’-GCGCCCTGTCAGGGTAATAAACACCACGTGTGAAAGAATTGGGCGC-3’(配列番号21)、
5’-TGCAGGGGGTAA-3’(配列番号22)、
5’-CGCCCGTTCTGGTTGTAAGATTAACACACTGACTCGGGCG-3’(配列番号23)、
5’-GCGCCCAATTCTTTCACACGTGGTGTTTATTACCCTGACAGGGCGC-3’(配列番号24)、
5’-TTACCCCCTGCA-3’(配列番号25)、
5’-CGCCCGAGTCAGTGTGTTAATCTTACAACCAGAACGGGCG-3’(配列番号26)、
5’-GCGCCCUGUCAGGGUAAUAAACACCACGUGUGAAAGAAUUGGGCGC -3’(配列番号28)、
5’-UGCAGGGGGUAA-3’(配列番号29)、
5’-CGCCCGUUCUGGUUGUAAGAUUAACACACUGACUCGGGCG-3’(配列番号30)、
5’-CGCGGGACAGUCCCAUUAUUUGUGGUGCACACUUUCUUAACCCGCG-3’(配列番号31)、
5’-UUACCCCCUGCA-3’(配列番号32)、および
5’-CGCCCGAGUCAGUGUGUUAAUCUUACAACCAGAACGGGCG-3’(配列番号33)。
【0060】
図6は、サンプル中のウイルスの存在を検出するために、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質にプローブを結合させるための例示的な工程600を示す。工程600は、上述および図1~4に関して説明したように、病原体検出システムにおける病原体検出装置において実施することができる。例えば、ステップ1(「1」で示される)は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合するように設計された病原体プローブ502を例示する。プローブ602は蛍光団604を含んでいてもよく、これは特定の波長の光で照射された場合、蛍光を発するタイプの蛍光プローブであってよい。プローブはまた、消光剤606を含んでいてもよく、この消光剤は特定の周波数および/または色範囲の光を吸収する。いくつかの例では、病原体プローブ602のステム608の1つ以上の部分が相補的であり、消光剤が蛍光団に結合できるようになっている。
【0061】
ステップ2(「2」で示す)は、図1に記載した加熱要素106のような熱にさらされた後のプローブ602を示す。例えば、プローブ602を含有するサンプルに熱を加えることに応答して、プローブ602は結合を解除し、蛍光団604および消光剤606は互いに分離することができる。いくつかの例では、蛍光団604および消光剤606は、蛍光団が蛍光を発することができるように、互いに離れた距離にあってよい。
【0062】
ステップ3(「3」で示す)では、SARS-CoV-2の相補的DNA(cDNA)がプローブ602に結合できる。例えば、サンプルがSARS-CoV-2のcDNAを含有する場合、cDNAはプローブ602に優先的に結合する。いくつかの例では、ステップ2で上げた温度を下げてもよい。cDNAに結合しているプローブ602は、再折り畳みが妨げられ、蛍光を発することがある。しかし、結合が解除されたプローブ602は、ステップ1で描かれたのと同様に、再度折り畳まれる可能性がある。したがって、標的DNAがサンプル中に多く存在するほど、サンプルからより多くの蛍光が検出される可能性がある。
【0063】
図7は、図6に示したプロセスに対応する標準融解曲線を示す。例えば、「1」で示すように、プローブは第1の温度で結合している。しかし、融点702を越えて温度を上げると、「2」で示すように、プローブは結合しなくなる。いくつかの例では、プローブを含有するサンプルは相補的DNAを含有し、この相補的DNAは結合していないプローブと結合し、蛍光を発する。しかし、いくつかの例では、「3」で示されるように、サンプルは相補的DNAを含まず、プローブは相補的DNAに結合しないままである。温度を低下するのに応じて、結合していないプローブは自身に再結合し、蛍光をほとんど発しなくなる。
【0064】
図8は、プローブの原理の実証を示す。例えば、画像800(a)および800(b)ならびに対応する強度プロット800(c)および800(d)を作成するために、相補的な標的DNAを含有しないプローブをqPCRサーマルサイクラーに導入し、温度を約25℃から約90℃まで上昇させ、温度を約20秒間保持し、温度を約25℃まで下降させるサイクルを5回繰り返した。次に、種々の条件を用いて試薬を導入し、qPCRを使用して調査し、溶融曲線を得た。いくつかの例では、プローブ自体を単独でqPCRに導入した場合、蛍光は低く、標的DNAが存在しないことを示した。同様に、プローブをランダムなプラスミドDNAと混合してqPCRサイクルに導入した場合も、蛍光は低く、標的DNAが存在しないことを示した。しかし、相補的な合成標的DNAと混合された設計したプローブをqPCRサイクルに導入すると、プローブは相補的DNAと結合して高い蛍光を発し、標的DNAが存在することを示した。
【0065】
これらの試薬の組み合わせは、図1~4に記載された病原体検出装置のような3Dプリンティングされたマイクロウェルアレイ装置に導入され、オレンジ色の励起および収集赤色蛍光バンドパスフィルターを使用して共焦点顕微鏡システムで画像化された。800aは、共焦点顕微鏡を用いて撮像された蛍光の画像を示し、これにはプローブおよび陰性プラスミンランダムDNAが存在した。図示されているように、蛍光は検出されなかった。あるいは、800bに示されるように、プローブと相補的な標的DNAが導入され、高レベルの蛍光が得られ、標的DNA鎖(合成SARS-CoV-2核酸)の陽性かつ特異的な検出を示す。
【0066】
画像800(a)および800(b)の一部から強度を抽出し、それぞれ800(c)および800(d)にプロットした。描かれているように、800(b)に示されているプラスミドDNAサンプルでは、強度は2±1相対単位である。しかしながら、標的DNAが存在する場合、強度は80±1であり、その結果、陽性サンプルのシグナル対ノイズ比(SNR)は~7となり、~300nM未満の検出限界(limit-of-detection、LOD)が可能であることを示唆している。
【0067】
図9Aおよび図9Bは、プローブの原理の実証の代替実施形態を示す。図9Aは、例示的な病原体検出装置の3Dプリントされたマイクロウェルデザイン900(a)を示す。例えば、図8に関して説明したのと同様に、約116μm×約116μmの寸法を有する1,166個のマイクロウェルからなるマイクロアレイ反応チャンバを3Dプリントすることにより、原理実証実験を行った。図9Bは、図9Aに描かれているものと同様の、3Dプリントされたマイクロウェルの明視野顕微鏡画像900(b)の例を示している。例えば、図9Bは、病原体検出装置内の標的DNAの存在を示す画像を示す。例えば、相補的な合成標的DNAと混合した設計プローブを病原体検出装置に導入すると、プローブは相補的DNAと結合し、高い蛍光を発するので、標的DNAの存在を示す。
【0068】
本明細書に開示され、参照される配列の変異体もまた含まれる。本明細書に開示したプローブの核酸配列の変異体には、本明細書に開示した核酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性、80%の配列同一性、85%の配列同一性、90%の配列同一性、95%の配列同一性、96%の配列同一性、97%の配列同一性、98%の配列同一性、または99%の配列同一性を有する配列も含まれる。
【0069】
「%配列同一性」とは、配列を比較することによって決定される、2つ以上の配列間の関係をいう。当技術分野では、「同一性」はまた、そのような配列の文字列間の一致によって決定される核酸配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」(しばしば「類似性」と呼ばれる)は、以下に記載されているものを含む公知の方法により容易に計算することができる:Computational Molecular Biology (Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,NY(1988)(非特許文献1);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,NY(1994)(非特許文献2);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M., and Griffin,H.G、Humana Press,NJ(1994)(非特許文献3);Sequence Analysis in Molecular Biology(Von Heijne,G.,ed.)Academic Press (1987)(非特許文献4);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.)Oxford University Press,NY(1992)(非特許文献5)。同一性を決定するための好ましい方法は、試験された配列間の最良の一致を与えるように設計されている。同一性および類似性を決定する方法は、一般に利用可能なコンピュータプログラムで体系化されている。配列のアラインメントおよび同一性のパーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR,Inc. Madison,Wisconsin)のMegalignプログラムを用いて実施されうる。配列の多重アラインメントはまた、アラインメントのClustal法(Higgins and Sharp CABIOS,5,151-153(1989)(非特許文献6))を、デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10,GAP LENGTH PENALTY=10)を用いて行うこともできる。関連プログラムには、プログラムのGCG群(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,Wisconsin);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul,et al.Biol. 215:403-410(1990)(非特許文献7);DNASTAR(DNASTAR,Inc.,Madison,Wisconsin);およびSmith-Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int Symp.](1994), Meeting Date 1992, 111-20.編集者:Suhai,Sandor.出版社:Plenum,New York,N:Plenum,New York,N.Y.(非特許文献8))。本開示の文脈において、配列解析ソフトウェアが解析に使用される場合、解析結果は、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解されるであろう。本明細書で使用する「デフォルト値」とは、最初に初期化されたときにソフトウェアに最初にロードされる値またはパラメータのセットを意味する。
【0070】
変異体にはまた、本明細書に開示した配列に対してストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、参照配列と同じ機能を提供する核酸分子が含まれる。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、50%ホルムアミド、5XSSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5Xデンハルト溶液、10%デキストラン硫酸、および20μg/mlの変性、剪断したサケ精子DNAを含む溶液中で、42℃で一晩インキュベートした後、0.1XSSC中50℃で洗浄することを含む。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出のストリンジェンシーの変化は、ホルムアミド濃度(ホルムアミドの割合が低いとストリンジェンシーが低くなる)、塩条件または温度の操作によって主に達成される。例えば、中程度に高いストリンジェンシー条件には、6XSSPE(20XSSPE=3M NaCl;0.2M NaHPO;0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中で37℃で一晩インキュベートした後、1XSSPE、0.1%SDSによって50℃で洗浄することが含まれる。加えて、さらに低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーション後に行う洗浄は、より高い塩濃度(例えば5XSSC)で行うことができる。上記の条件の変更は、ハイブリダイゼーション実験におけるバックグラウンドの抑制に使用される代替ブロッキング試薬を含めるか、または置換することによって達成される。典型的なブロッキング試薬には、Denhardt試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の独自製剤が含まれる。特定のブロッキング試薬を含めると、適合性の問題から、上記のハイブリダイゼーション条件を調節しなければならないことがある。
【0071】
「特異的に結合する」とは、親和性またはKa(すなわち、1/Mを単位とする特定の結合相互作用の平衡会合定数)が10-1以上でありながら、関連する環境試料中の他の分子または成分と有意に会合しない、2つの結合分子の会合を指す。本明細書において、「特異的に結合する」は「結合する」ともいう。結合は、「高親和性」または「低親和性」に分類することができる。特定の実施形態において、「高親和性」とは、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1、または少なくとも1013-1のKaを有する結合を指す。特定の実施形態において、「低親和性」とは、最大10-1、最大10-1、最大10-1のKaを有する結合を指す。結合を検出するためだけでなく、結合親和性を決定するための様々なアッセイが知られており、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、およびBIACORE(登録商標)分析がある(例えば、Scatchardら、1949、Ann.N.Y. Acad.Sci.51:660(非特許文献9);および米国特許第5,283,173号明細書(US5,283,173)(特許文献1)、米国特許第5,468,614号明細書(US5,468,614)(特許文献2)、またはこれらに相当するものも参照のこと)。
【0072】
特に断らない限り、本開示の実施態様は、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術を用いることができる。これらの方法は、以下の刊行物に記載されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning.A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)(非特許文献10);F.M.Ausubel,et al.eds.,Current Protocols in Molecular Biology,(1987)(非特許文献11);シリーズMethods IN Enzymology(Academic Press, Inc.)(非特許文献12);M.MacPherson,et al.,PCR:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press (1991)(非特許文献13); MacPhersonら,eds.PCR 2(非特許文献14):Practical Approach,(1995)(非特許文献15);Harlow and Lane,eds.Antibodies,A Laboratory Manual,(1988)(非特許文献16);およびR.I.Freshney,eds.Animal Cell Culture(1987)(非特許文献17)。
【0073】
ウイルスタンパク質をコードするRNAは、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、フラビルウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルスまたはトガウイルスに由来し得る。特定の実施形態において、ウイルスタンパク質をコードするRNAは、SARS-COV-2、CMV、EBV、インフルエンザウイルス(flu viruses)、A型肝炎、B型肝炎、またはC型肝炎、単純ヘルペス、HIV、インフルエンザ、日本脳炎、麻疹、ポリオ、狂犬病、呼吸器合胞体(RS)、風疹、天然痘、帯状疱疹、西ナイル、および/またはジカ熱に由来し得る。
【0074】
CMVタンパク質には、エンベロープ糖タンパク質BおよびCMV pp65が含まれ、EBVタンパク質には、EBV EBNAI、EBV P18およびEBV P23が含まれ、肝炎タンパク質には、B型肝炎ウイルスのS、MおよびLタンパク質、B型肝炎ウイルスのPre-S抗原、HBCAG DELTA、HBV HBE、C型肝炎ウイルスRNA、HCV NS3およびHCV NS4が含まれ、単純ヘルペスタンパク質には、即時型初期タンパク質および糖タンパク質Dが含まれ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質には、HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質および逆転写酵素などのgag、polおよびenv遺伝子の遺伝子産物が含まれ、ヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原には、L1タンパク質が含まれ、インフルエンザタンパク質には、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼが含まれ、日本脳炎タンパク質には、タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1、NS1-NS2Aおよび80%Eが含まれ、マラリアタンパク質には、プラスモディウムタンパク質サーカムスポロゾイト(the Plasmodium proteins circumsporozoite)(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼおよびフルクトースビスリン酸アルドラーゼが含まれ、麻疹タンパク質には、麻疹ウイルス融合タンパク質が含まれ、狂犬病タンパク質には、狂犬病糖タンパク質および狂犬病核タンパク質が含まれ、呼吸器合胞体タンパク質にはRSV融合タンパク質およびM2タンパク質が含まれ、ロタウイルスタンパク質にはVP7scが含まれ、風疹タンパク質にはE1タンパク質およびE2タンパク質が含まれ、帯状疱疹タンパク質にはgplとgpllが含まれ、ジカタンパク質には前膜(pre-membrane)、エンベロープ(E)、Eタンパク質のドメインIII、非構造タンパク質1~5が含まれる。
【0075】
追加の特定の例示的なウイルスタンパク質配列には、以下が含まれる。
【0076】
【表1】
【0077】
その他のウイルス抗原の例については、Fundamental Virology, Second Edition,eds.Fields,B.N. and Knipe,D.M.(Raven Press,New York,1991)(非特許文献18)を参照。
【0078】
結論
上述の議論は、記載された装置および技術の例示的な実現を示すが、記載された機能を実現するために他のアーキテクチャが使用されてもよく、本開示の範囲内であることが意図される。さらに、主題は、構造的特徴および/または方法論的行為に特有の言語で説明されてきたが、添付の特許請求の範囲において定義される主題は、必ずしも説明される特定の特徴または行為に限定されないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴および行為は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として開示されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
【配列表】
2025502375000001.xml
【国際調査報告】