(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】眼内レンズ保持デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543102
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 IL2023050075
(87)【国際公開番号】W WO2023139589
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523156202
【氏名又は名称】アイメッド テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eyemed Technologies ltd.
【住所又は居所原語表記】Landau 10, Qiryat Ono, 5555110, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】イスラエリ,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シュムクラー,ヴァディム
(72)【発明者】
【氏名】ミツェル,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC18
4C097DD09
4C097DD10
4C097MM09
4C097SA03
4C097SA08
4C097SA10
(57)【要約】
眼内に埋め込まれて、眼内レンズ(IOL)を保持するためのデバイスが提示され、本デバイスは、遠隔エネルギー源からエネルギーを吸収することにより、IOLの光軸を中心にIOLを回転させるように動作可能であり、本デバイスは、眼の水晶体嚢の内部に固定的に配置されるように構成されたステータ部分と、IOLに固定的に取り付けられるように構成されたロータ部分と、ロータ部分およびIOLの回転を引き起こすように動作可能な運動システムとを備え、運動システムは、複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータに関連付けられた少なくとも1の相互作用領域とを備え、複数のアクチュエータは、時計回りおよび反時計回りの角度方向の各々にロータ部分およびIOLの回転を引き起こすように動作可能な少なくとも2のアクチュエータを含み、複数のアクチュエータおよび少なくとも1の相互作用領域は位置合わせされており、所与の各時点において、複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが、それに関連する相互作用領域に対して異なるように位置合わせされ、さらに、遠隔エネルギー源によって作動されるときに、関連する相互作用領域と係合して、異なる角度距離または異なる角度方向のいずれかを有する異なる増分回転でIOLを回転させるように構成されており、本デバイスは、生体組織の侵入から可動部分を密閉する保護シールドアセンブリを含むことができる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの眼の水晶体嚢内に埋め込まれて、眼内レンズ(IOL)をしっかりと保持するように構成され、かつ遠隔エネルギー源からエネルギーを吸収することにより、IOLの光軸を中心にIOLを回転させるように動作可能なデバイスであって、
-水晶体嚢の内部に固定的に配置されるように構成されたステータ部分と、
-IOLに固定的に取り付けられるように構成されたロータ部分と、
-前記ステータ部分に対して、IOLの光軸の周りで前記ロータ部分およびIOLの増分回転を引き起こすように動作可能な運動システムとを備え、前記運動システムが、前記ロータ部分と固定された空間的関係を有する複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータに関連付けられ、前記ステータ部分と固定された空間的関係を有する少なくとも1の相互作用領域とを備え、前記複数のアクチュエータが、時計回りおよび反時計回りの角度方向の各々に前記ロータ部分およびIOLの回転を引き起こすように動作可能な少なくとも2のアクチュエータを含み、前記複数のアクチュエータおよび前記少なくとも1の相互作用領域が位置合わせされており、所与の各時点において、前記複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが、それに関連する相互作用領域に対して異なるように配置されて、関連する相互作用領域上の異なる相互作用点を向き、さらに、前記遠隔エネルギー源によって作動されるときに、それぞれの相互作用点で関連する相互作用領域と係合して、異なる角度距離または異なる角度方向のいずれかを有する異なる増分回転でIOLを回転させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータおよび関連する少なくとも1の相互作用領域が位置合わせされており、前記複数のアクチュエータのうちの1つのアクチュエータが前記遠隔エネルギー源により作動されて、それぞれの相互作用点で関連する相互作用領域と係合して、特定の角度距離および方向を有する特定の増分回転でIOLを回転させた後の所与の各時点で、前記複数のアクチュエータのうちの後続のアクチュエータが、その関連する相互作用領域と位置合わせされた状態となり、前記遠隔エネルギー源により作動されて、その関連する相互作用領域と係合するときに、同じ特定の角度距離および方向を有する同じ特定の増分回転でIOLを回転させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータおよび関連する少なくとも1の相互作用領域が位置合わせされており、あるアクチュエータが作動されて関連する相互作用領域と係合し特定の角度距離と方向を有する特定の増分回転でIOLを回転させた後に、前記アクチュエータが関連する相互作用領域に対して位置がずれた状態となり、その結果、前記アクチュエータのその後の作動により関連する相互作用領域と係合しても、IOLの増分回転がゼロになることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータが、第1の距離を空けて配置された2つのアクチュエータを含み、前記関連する少なくとも1の相互作用領域が、前記第1の距離とは異なる第2の距離を空けて配置された2つのそれぞれの相互作用領域を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータが、可変距離を空けて配置された少なくとも3のアクチュエータを含み、前記関連する少なくとも1の相互作用領域が、一定の距離を空けて配置された少なくとも3のそれぞれの相互作用領域を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1~3の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータが、一定の距離を空けて配置された少なくとも3のアクチュエータを含み、前記関連する少なくとも1の相互作用領域が、可変距離を空けて配置された少なくとも3のそれぞれの相互作用領域を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項5または6に記載のデバイスにおいて、
前記可変距離が、前記少なくとも3のアクチュエータのうちの2つの隣接する各アクチュエータ間または前記少なくとも3のそれぞれの相互作用領域のうちの2つの隣接する各相互作用領域間の一定の増加するピッチによって特徴付けられることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが、関連する相互作用領域と順次係合するように特定の作動順序で順次作動されるときに、等しい角度距離および同じ角度方向を有する順次の増分回転でIOLを回転させることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが一方向性であり、関連する少なくとも1の相互作用領域と係合するように個別に作動されるときに、IOLを同じ角度方向に回転させることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスにおいて、
一方向性のアクチュエータが、関連する相互作用領域と係合するように順次作動されるときに、IOLを時計回り方向に回転させるように動作可能な一方向性アクチュエータの第1のグループと、関連する少なくとも1の相互作用領域と係合するように順次作動されるときに、IOLを反時計回り方向に回転させるように動作可能な一方向性アクチュエータの第2のグループとを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項1~8の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが双方向性であり、関連する少なくとも1の相互作用領域と係合するように個別に作動されるときに、関連する相互作用領域に対するそれらの一時的な配置に基づいて、IOLを時計回りまたは反時計回りのいずれかの角度方向に回転させることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータの各々が、前記遠隔エネルギー源によって作動されるときに、IOLをそれぞれ1または2の角度方向に回転させるように構成された一方向性アクチュエータまたは双方向性アクチュエータとして、アクチュエータを規定する長さ寸法を有することを特徴とするデバイス。
【請求項13】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが、第1の休止空間構成と、前記遠隔エネルギー源によって作動されるときの第2の作動空間構成との間で可逆的にシフト可能なアクチュエータ作動可能部分を含み、それにより、アクチュエータが、関連する相互作用領域と係合すること、および関連する相互作用領域から離脱することをそれぞれ可能にすることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項13に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが、前記アクチュエータ作動可能部分と繋がるアクチュエータ弾性部分を含み、前記アクチュエータ弾性部分は、前記アクチュエータ作動可能部分が前記遠隔エネルギー源によって作動されなくなると、前記アクチュエータ作動可能部分を前記第2の作動空間構成から前記第1の休止空間構成に戻すように動作可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のデバイスにおいて、
前記アクチュエータ弾性部分は、前記アクチュエータ作動可能部分が前記遠隔エネルギー源によって作動されるときに、関連する相互作用領域と係合して、IOLを増分回転で回転させるように動作可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項13~15の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記アクチュエータ作動可能部分が、前記第1の休止空間構成および前記第2の作動空間構成を提供するように動作可能な形状記憶材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項16に記載のデバイスにおいて、
前記形状記憶材料が、ニチノールを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項18】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記ステータ部分が、超弾性材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項19】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記ロータ部分が、超弾性材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項18または19に記載のデバイスにおいて、
前記超弾性材料が、ニチノールを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項18~20の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
当該デバイスが、約2.54mm
2の面積または約1.8mmの円直径の断面を通過できるように折り畳み可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記増分回転が、0.3°の角度以上の角度距離を有することを特徴とするデバイス。
【請求項23】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記少なくとも1の相互作用領域のうちの1または複数が、一連の歯状突起によって規定されていることを特徴とするデバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のデバイスにおいて、
各歯状突起が、0.6°の角度以上の角度距離の増分回転を規定することを特徴とするデバイス。
【請求項25】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータを識別するための1または複数のマークを備え、それによってどのアクチュエータが作動されるのかを可能にすることを特徴とするデバイス。
【請求項26】
先行する請求項の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
IOLの増分回転を妨げるような、前記運動システムおよび/または前記ロータ部分とある種の生体組織の相互作用を防止するために、前記運動システムおよび/または前記ロータ部分を少なくとも部分的に遮蔽するように構成された保護シールドアセンブリをさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項27】
請求項26に記載のデバイスにおいて、
前記保護シールドアセンブリが、前記運動システムおよび/または前記ロータ部分を当該デバイスの前側および後側からそれぞれ遮蔽するように構成された前面カバーおよび背面カバーを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項28】
請求項27に記載のデバイスにおいて、
前記前面および背面カバーが、当該デバイスの前側および後側全体をそれぞれ遮蔽することを特徴とするデバイス。
【請求項29】
請求項28に記載のデバイスにおいて、
前記前面および背面カバーが、当該デバイスのステータ部分に直接または間接的に取り付けられるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項30】
請求項29に記載のデバイスにおいて、
前記前面および背面カバーが、接着および/または溶着によって当該デバイスのステータ部分に取り付けられるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項31】
請求項27または28に記載のデバイスにおいて、
前記前面および背面カバーが、当該デバイスのステータ部分を包囲する筐体を形成するように互いに取り付け可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項32】
請求項26~31の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記保護シールドアセンブリは、眼に入る光がIOLを通過して網膜に到達できるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項33】
請求項26~32の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記保護シールドアセンブリが、前記遠隔エネルギー源からのエネルギーが前記アクチュエータに到達することを可能にするように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項34】
請求項26~33の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記保護シールドアセンブリが、少なくとも部分的にポリメチルメタクリレート(PMMA)から作られていることを特徴とするデバイス。
【請求項35】
請求項34に記載のデバイスにおいて、
前記PMMAの少なくとも一部が、疎水性であることを特徴とするデバイス。
【請求項36】
請求項34に記載のデバイスにおいて、
前記PMMAの少なくとも一部が、親水性であることを特徴とするデバイス。
【請求項37】
請求項26~36の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記保護シールドアセンブリが、前記運動システムおよび/または前記ロータ部分とある種の生体組織の相互作用を防止しながら、前記保護シールドアセンブリの内側と外側との間の房水の流れを可能にする1または複数のチャネルを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項38】
請求項26に記載のデバイスにおいて、
前記保護シールドアセンブリが、前記ステータ部分の外側に取り付けるように構成された側面部分を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項39】
請求項38に記載のデバイスにおいて、
前記側面部分が、前記ステータ部分の少なくとも外側部分を固定的に収容するように構成された周方向溝を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項40】
請求項39に記載のデバイスにおいて、
前記溝が、その中に前記ステータ部分のすべてを収容し、さらに、前記運動システムおよびロータ部分の少なくとも外側を収容するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項41】
IOLシステムであって、
-請求項38~40の何れか一項に記載のデバイスと、
-IOLであって、その外周に沿って溝が形成され、前記ロータ部分の少なくとも内側部分をその中に収容するように構成されたIOLとを備えることを特徴とするIOLシステム。
【請求項42】
請求項41に記載のIOLシステムにおいて、
前記側面部分の内側が、IOLの外周側と雄雌構成でそれぞれ係合して、IOLの回転運動を可能にしながら、前記溝内に収容された前記運動システムおよび前記ロータ部分を遮蔽するように構成されていることを特徴とするIOLシステム。
【請求項43】
IOL調節システムであって、
-請求項1~40の何れか一項に記載のデバイス、または請求項41または42に記載のシステムと、
-前記複数のアクチュエータにエネルギーを供給するように構成され、かつ動作可能な遠隔エネルギー源とを備えることを特徴とするIOL調節システム。
【請求項44】
請求項43に記載のシステムにおいて、
前記遠隔エネルギー源が、エネルギーを熱の形態で提供するように構成され、かつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項45】
請求項44に記載のシステムにおいて、
前記遠隔エネルギー源が、放射素子を含むことを特徴とするシステム。
【請求項46】
請求項44に記載のシステムにおいて、
前記遠隔エネルギー源が、レーザ光源を含むことを特徴とするシステム。
【請求項47】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記レーザ光源が、連続的なレーザ放射を提供するように構成され、かつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項48】
請求項47に記載のシステムにおいて、
前記レーザ光源が、緑色スペクトルの光を提供するように動作可能なアルゴンレーザ光源として構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項49】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記レーザ光源が、1または複数のレーザダイオードを含むことを特徴とするシステム。
【請求項50】
請求項46~49の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記レーザ光源が、0.1~5ワットのレーザ出力、および200~1000msのレーザパルス幅を提供するように構成され、かつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項51】
請求項43に記載のシステムにおいて、
前記遠隔エネルギー源が、電磁放射送信部を含み、前記複数のアクチュエータが、対応する電磁放射受信部を含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスの分野に属し、特に眼内レンズを生体内で保持するように構成されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
視覚および視力に関連する様々な疾病は、天然の水晶体を人工の眼内レンズ(IOL)に置き換えることによって治療される。白内障、眼の外傷、遠視、近視および乱視を含む視力屈折異常などの眼に関する問題は、IOL置換手術によって解決することができる。この治療は、レーザ治療を受けられない人の他の眼疾患にも有効である。
【0003】
白内障は世界中で最も多く見られる眼疾患で、世界の失明の半数と視覚障害の3分の1の原因となっている。世界中で年間約2,500万人の患者が白内障手術を受けている。
【0004】
通常、移植されるIOLは、患者が非常に良好な視力を得られるような焦点距離と光学的度数が選択される。しかしながら、低下した視力を矯正するために必要なレンズの正確な特性を予測することは、多くの場合困難である。例えば、最先端の多焦点眼内レンズや他の老視矯正眼内レンズを使用しても、治療後に目標とする視力を達成できる患者は現在50%未満であり、結果として、術後の患者は読書や遠く見るために眼鏡をかけなければならないことが多い。
【0005】
IOL置換手術は頻繁に行われる手術であるが、例えば、正確なレンズ特性(ELP)の予測、手術中のレンズ位置の誤差、手術後や眼の治癒過程での傾きやずれ、高齢者の角膜円柱の変化など、いくつかの課題がある。視覚障害の矯正に使用されるIOLには、単焦点、多焦点、トーリック(同じレンズで組み合わせることも可能)など、いくつかの種類がある。どの種類のIOLも、装着と治癒の過程の後に、設計された光軸からずれたり外れたりする可能性があるため、水晶体嚢内のIOLの位置を最適化することで補正する必要がある可能性がある。IOLの位置の補正は、非点収差の問題を補正するためにIOLの光軸の周りに、または焦点の問題を補正するためにIOLの光軸に沿って行う必要がある。IOLを移動させるために繰り返される手術、レンズの事後変形による補正を可能にする特有のUV感応性ポリマーの使用、および/またはレーザ照射によるIOL形状の変更など、補正を実施するために使用される侵襲的および非侵襲的な技術がいくつかある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、水晶体嚢内に既に埋め込まれた眼内レンズ(IOL)の位置の事後調整および最適化のための技術を提供する。
【0007】
説明する技術、システムおよびデバイスは、IOL位置の非侵襲的、遠隔的、可逆的および反復的な補正を可能にし、追加の侵襲的な外科的処置の必要性を排除しつつ、処置が比較的容易かつ短時間で、クリニックで実施されることを可能にする。
【0008】
本発明は、IOLの位置を移動および調整するように動作可能な運動システム/機構/アセンブリを含む/一体化したIOL保持/支持システム/デバイス(例えば、クレードルの形態)を提供する。運動システム/機構/アセンブリは、眼球の外側から遠隔的に作動され、角度方向(xy平面、θ)および軸方向(z)の少なくとも一方において、すなわちIOLを回転させ、かつ/またはその屈折力をそれぞれ変更することによって、IOLの位置の補正を適用するように構成されている。本発明によれば、軸方向の変位は、光軸を中心とする回転が光軸に沿った変位をもたらし得るように、変位の螺旋経路を使用することによって達成され得ることに留意されたい。
【0009】
本発明によれば、医師は、所望の視力を達成するために必要な視力矯正の正確な量に基づいてIOLの位置を正確に調整することができる。本明細書に開示のシステム/デバイスは、有利なことに、小型であり、眼の瞳孔を通して一体化された運動システム/機構への遠隔アクセスを可能にする。瞳孔の直径は、明るい状態では約2mm~4mmの間、暗い状態では約4mm~8mmの間である。したがって、記載のシステム/デバイスは、約3.5~4.5mmの範囲の直径を有するIOLを収容することを可能にする。その結果、システム/デバイスの運動システム/機構がIOLを変位させるために機能すべき外周は、例えば、約π・4mm(直径4mmの比較的円形を仮定)であり、必要な角度補正の精度は約0.5°~1°であるため、これは補正の角度距離のステップが約0.017~0.035mmであることを意味する。本発明の技術は、そのような微小なステップの角度/距離補正を可能にする運動システム/機構の製造の限界を克服しながら、記載の範囲のステップ距離を達成することを可能にする。
【0010】
さらに、記載のシステムおよびデバイスは、少なくとも動作温度範囲において、弾性があり、折り畳み可能であり、よって眼嚢への挿入および埋込が容易である。
【0011】
すなわち、一態様によれば、ヒトの眼の水晶体嚢内に埋め込まれて、眼内レンズ(IOL)をしっかりと保持するように構成され、かつ遠隔エネルギー源からエネルギーを吸収することにより、IOLの光軸を中心にIOLを回転させるように動作可能なデバイスが提供され、このデバイスが、
-水晶体嚢の内部に固定的に配置されるように構成されたステータ部分と、
-IOLに固定的に取り付けられるように構成されたロータ部分と、
-ステータ部分に対して、IOLの光軸の周りでロータ部分およびIOLの増分回転を引き起こすように動作可能な運動システムとを備え、運動システムが、ロータ部分と固定された空間的関係を有する複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータに関連付けられ、ステータ部分と固定された空間的関係を有する少なくとも1の相互作用領域とを備え、複数のアクチュエータが、時計回りおよび反時計回りの角度方向の各々にロータ部分およびIOLの回転を引き起こすように動作可能な少なくとも2のアクチュエータを含み、複数のアクチュエータおよび少なくとも1の相互作用領域が位置合わせされており、所与の各時点において、複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが、それに関連する相互作用領域に対して異なるように配置されて、関連する相互作用領域上の異なる相互作用点を向き、さらに、遠隔エネルギー源によって作動されるときに、それぞれの相互作用点で関連する相互作用領域と係合して、異なる角度距離または異なる角度方向のいずれかを有する異なる増分回転でIOLを回転させるように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータおよび関連する少なくとも1の相互作用領域が位置合わせされており、複数のアクチュエータのうちの1つのアクチュエータが遠隔エネルギー源により作動されて、それぞれの相互作用点で関連する相互作用領域と係合して、特定の角度距離および方向を有する特定の増分回転でIOLを回転させた後の所与の各時点で、複数のアクチュエータのうちの後続のアクチュエータが、その関連する相互作用領域と位置合わせされた状態となり、遠隔エネルギー源により作動されて、その関連する相互作用領域と係合するときに、同じ特定の角度距離および方向を有する同じ特定の増分回転でIOLを回転させるように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータおよび関連する少なくとも1の相互作用領域が位置合わせされており、あるアクチュエータが作動されて関連する相互作用領域と係合し特定の角度距離と方向を有する特定の増分回転でIOLを回転させた後に、アクチュエータが関連する相互作用領域に対して位置がずれた状態となり、その結果、アクチュエータのその後の作動により関連する相互作用領域と係合しても、IOLの増分回転がゼロになる。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータが、第1の距離を空けて配置された2つのアクチュエータを含み、関連する少なくとも1の相互作用領域が、第1の距離とは異なる第2の距離を空けて配置された2つのそれぞれの相互作用領域を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータが、可変距離を空けて配置された少なくとも3のアクチュエータを含み、関連する少なくとも1の相互作用領域が、一定の距離を空けて配置された少なくとも3のそれぞれの相互作用領域を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータが、一定の距離を空けて配置された少なくとも3のアクチュエータを含み、関連する少なくとも1の相互作用領域が、可変距離を空けて配置された少なくとも3のそれぞれの相互作用領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、可変距離が、少なくとも3のアクチュエータのうちの2つの隣接する各アクチュエータ間または少なくとも3のそれぞれの相互作用領域のうちの2つの隣接する各相互作用領域間の一定の増加するピッチによって特徴付けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが、特定の作動順序で順次作動されて、関連する相互作用領域と順次係合するときに、等しい角度距離および同じ角度方向を有する順次の増分回転でIOLを回転させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが一方向性であり、個別に作動されて、関連する少なくとも1の相互作用領域と係合するときに、IOLを同じ角度方向に回転させる。一方向性のアクチュエータは、関連する相互作用領域と係合するように順次作動されるときに、IOLを時計回り方向に回転させるように動作可能な一方向性アクチュエータの第1のグループと、関連する少なくとも1の相互作用領域と係合するように順次作動されるときに、IOLを反時計回り方向に回転させるように動作可能な一方向性アクチュエータの第2のグループとを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが双方向性であり、関連する少なくとも1の相互作用領域と係合するように個別に作動されるときに、関連する相互作用領域に対するそれらの一時的な配置に基づいて、IOLを時計回りまたは反時計回りのいずれかの角度方向に回転させる。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータの各々が、遠隔エネルギー源によって作動されるときに、IOLをそれぞれ1または2の角度方向に回転させるように構成された一方向性アクチュエータまたは双方向性アクチュエータとして、アクチュエータを規定する長さ寸法を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが、第1の休止空間構成と、遠隔エネルギー源によって作動されるときの第2の作動空間構成との間で可逆的にシフト可能なアクチュエータ作動可能部分を含み、それにより、アクチュエータが、関連する相互作用領域と係合すること、および関連する相互作用領域から離脱することができる。複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータは、アクチュエータ作動可能部分と繋がるアクチュエータ弾性部分を含むことができ、アクチュエータ弾性部分は、アクチュエータ作動可能部分が遠隔エネルギー源によって作動されなくなると、アクチュエータ作動可能部分を第2の作動空間構成から第1の休止空間構成に戻すように動作可能である。アクチュエータ弾性部分は、アクチュエータ作動可能部分が遠隔エネルギー源によって作動されるときに、関連する相互作用領域と係合して、IOLを増分回転で回転させるように動作可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、アクチュエータ作動可能部分が、第1の休止空間構成および第2の作動空間構成を提供するように動作可能な形状記憶材料を含む。形状記憶材料は、ニチノールまたは/およびバイメタルを含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、ステータ部分が超弾性材料を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ロータ部分が超弾性材料を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、超弾性材料が、ニチノールまたは/およびバイメタルを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、デバイスが、約2.54mm2の面積または約1.8mmの円直径の断面を通過できるように折り畳み可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、増分回転が0.3°の角度以上の角度距離を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の相互作用領域のうちの1または複数が、一連の歯状突起によって規定される。各歯状突起は、0.6°の角度以上の角度距離の増分回転を規定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、デバイスが、複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータを識別するための1または複数のマークを備え、それによってどのアクチュエータが作動されるのかを可能にする。
【0031】
いくつかの実施形態では、デバイスが、IOLの増分回転を阻止するような、運動システムおよび/またはロータ部分と生体組織の相互作用を防止するために、運動システムおよび/またはロータ部分を少なくとも部分的に遮蔽するように構成された保護シールドアセンブリをさらに備える。
【0032】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、運動システムおよび/またはロータ部分をデバイスの前側および後側からそれぞれ遮蔽するように構成された前面カバーおよび背面カバーを備える。
【0033】
いくつかの実施形態では、前面および背面カバーが、デバイスの前側および後側全体をそれぞれ遮蔽する。
【0034】
いくつかの実施形態では、前面および背面カバーが、デバイスのステータ部分に直接または間接的に取り付けられるように構成されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、前面および背面カバーが、接着および/または溶着によってデバイスのステータ部分に取り付けられるように構成されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、前面カバーおよび背面カバーが、デバイスのステータ部分を包囲する筐体を形成するように互いに取り付け可能である。
【0037】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリは、眼に入る光がIOLを通過して網膜に到達できるように構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、遠隔エネルギー源からのエネルギーがアクチュエータに到達することを可能にするように構成されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、少なくとも部分的に疎水性または親水性のポリメチルメタクリレート(PMMA)から作られている。
【0040】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、運動システムおよび/またはロータ部分とある種の生体組織の相互作用を防止しながら、保護シールドアセンブリの内側と外側との間の房水の流れを可能にする1または複数のチャネルを備える。
【0041】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、ステータ部分の外側に取り付けるように構成された側面部分を備える。
【0042】
いくつかの実施形態では、側面部分が、ステータ部分の少なくとも外側部分を固定的に収容するように構成された周方向溝を備える。
【0043】
いくつかの実施形態では、溝が、その中にステータ部分のすべてを収容し、さらに、運動システムおよびロータ部分の少なくとも外側を収容するように構成されている。
【0044】
別の態様によれば、IOLシステムが提供され、このIOLシステムが、
-上述したデバイスと、
-IOLであって、その外周に沿って溝が形成され、ロータ部分の少なくとも内側部分をその中に収容するように構成されたIOLとを備える。
【0045】
いくつかの実施形態では、側面部分の内側が、IOLの外周側と雄雌構成でそれぞれ係合して、IOLの回転運動を可能にしながら、溝内に収容された運動システムおよびロータ部分を遮蔽するように構成されている。
【0046】
別の態様によれば、IOL調節システムが提供され、このIOL調節システムが、
-上述した構成の何れか一つを有するデバイスと、
-複数のアクチュエータにエネルギーを供給するように構成され、かつ動作可能な遠隔エネルギー源とを備える。
【0047】
いくつかの実施形態では、遠隔エネルギー源が、エネルギーを熱の形態で提供するように構成され、かつ動作可能である。遠隔エネルギー源は、放射素子、レーザ光源のうちの1または複数を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、レーザ光源が、連続的なレーザ放射を提供するように構成され、かつ動作可能である。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、緑色スペクトルの光を提供するように動作可能なアルゴンレーザ光源として構成されている。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、1または複数のレーザダイオード、例えば、適応レーザダイオードを備える。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、0.1~5ワットのレーザ出力、および200~1000msのレーザパルス幅を提供するように構成され、かつ動作可能である。
【0049】
別の態様によれば、眼内に埋め込まれて眼内レンズ(IOL)を保持するように構成されたIOL保持デバイスとともに使用するための保護シールドアセンブリが提供され、IOL保持デバイスが、遠隔エネルギー源からエネルギーを吸収することによってIOLの変位を可能にするように構成された可動部分を含み、保護シールドアセンブリが、IOLの変位を妨げるような生体組織と可動部分との相互作用を防止するように、可動部分を少なくとも部分的に遮蔽するように構成されている。
【0050】
一部の実施形態では、保護シールドアセンブリが、IOL保持デバイスの前側および後側からそれぞれ可動部分を遮蔽するように構成された前面カバーおよび背面カバーを備える。
【0051】
いくつかの実施形態では、前面および背面カバーが、デバイスの前側および後側全体をそれぞれ遮蔽し、前面および背面カバーが、接着および/または溶着によって、IOL保持デバイスのステータ部分に直接または間接的に取り付けられるように構成されている
【0052】
いくつかの実施形態では、前面および背面カバーが、デバイスのステータ部分を包囲する筐体を形成するように互いに取り付け可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリは、眼に入る光がIOLを通過して網膜に到達することを可能にするとともに、遠隔エネルギー源からのエネルギーが可動部分に到達して可動部分を作動させることを可能にするように構成されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、少なくとも部分的に親水性または疎水性のポリメチルメタクリレート(PMMA)から作られている。
【0055】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、運動システムおよび/またはロータ部分とある種の生体組織の相互作用を防止しながら、保護シールドアセンブリの内側と外側との間の房水の流れを可能にする1または複数のチャネルを備える。
【0056】
いくつかの実施形態では、保護シールドアセンブリが、ステータ部分の外側に取り付けるように構成された側面部分を備える。
【0057】
いくつかの実施形態では、側面部分が、ステータ部分の少なくとも外側部分を固定的に収容するように構成された周方向溝を備える。
【0058】
いくつかの実施形態では、溝が、その中にステータ部分のすべてを収容し、さらに、運動システムおよびロータ部分の少なくとも外側を収容するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本明細書に開示の主題をより良く理解し、実際にどのように実施され得るのかを例示するために、以下、添付図面を参照して、単なる非限定的な例として実施形態を説明する。
【
図1】
図1A~
図1G4は、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第1の非限定的な例を示している。
【
図2】
図2A~
図2Dは、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第2の非限定的な例を示している。
【
図3】
図3A~
図3Dは、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第3の非限定的な例を示している。
【
図4】
図4A~
図4Cは、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第4の非限定的な例を示している。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第5の非限定的な例を示している。
【
図6】
図6A~
図6Gは、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第6の非限定的な例を示している。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、本発明に係る、IOLを保持するように構成され、IOLが眼内に埋め込まれた後にIOLの位置を遠隔的に調整するように動作可能なデバイスの第7の非限定的な例を示している。
【
図8】
図8A1~
図8G2は、IOLの増分回転を阻止するような運動システムおよび/またはロータ部分と生体組織との相互作用を防止するために、運動システムおよび/またはロータ部分を少なくとも部分的に遮蔽するように構成された保護シールドデバイス/アセンブリの非限定的な例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、埋め込まれたレンズの位置の遠隔的、非侵襲的、かつ制御された後調整を可能にする眼内レンズ(IOL)保持デバイスを提供することを目的とする。
【0061】
本発明の技術の原理を組み込んだデバイス10の第1の非限定的な例を概略的に示す
図1A~
図1G4を参照すると、デバイス10は、ヒトの眼の水晶体嚢内に埋め込まれ、眼内レンズIOLを確実に保持するように構成され、IOLを回転させるように動作可能となっている。
【0062】
図1Aは、デバイス10とそれにより保持されたIOLの等角図であり、
図1Bは、デバイス10の正面図であり、
図1Cは、デバイス10の背面図であり、
図1Dは、デバイス10の分解図であり、
図1E1~
図1E4は、デバイス10の様々な部分のクローズアップ図であり、
図1F1~
図1F4は、デバイス10によるIOLの時計回りの回転を示し、
図1G1~
図1G4は、デバイス10によるIOLの反時計回りの回転を示している。
【0063】
図示のように、デバイス10は、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202を含み、遠隔エネルギー源ES(これは、デバイス100の一部ではなく、以下にさらに説明されるように、いくつかのレーザ光源などの様々な適切なエネルギー源のなかから選択することができる)からエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心として、IOLを回転させるように動作可能である。
【0064】
デバイス10は、外側ステータ部分100と、内側ロータ部分200と、眼球の水晶体嚢内に固定的に配置された外側ステータ部分100に対して、IOLに固定的に取り付けられた内側ロータ部分200を回転させるように、遠隔エネルギー源ESによって動作可能な運動システム300とを含む。
【0065】
本例および以下の例では、デバイス10が実質的に円形を描き、ステータ部分が実質的に外側リングを形成し、ロータ部分が実質的に内側リングを形成し、ここではロータ部分の外側に突起として構成される複数の領域204、すなわち3つの領域においてのみ互いに接触している。しかしながら、ステータおよびロータは、各々または両方が他の形状をとることができ、特に、開いた形状を有することができ、必ずしも本例のような閉じた形状を有する必要はないことに留意されたい。例えば、ステータおよび/またはロータ部分は、開いた円弧として構成することができる。
【0066】
IOLを保持する本発明のデバイスは、通常、解剖学的水晶体嚢区画、または水晶体嚢が損傷/破損した場合には解剖学的溝に埋め込まれる。通常、ヒトの眼へのIOLの埋め込みは、IOLに取り付けられてIOLを埋込部位に固定できる1または複数の触覚部によって支持される。本例では、ステータ部100が、その外側に、2つの対応する触覚部(図示せず)を取り付けるように構成された2つの取付部分102を含む。触覚部は、特定の埋込解剖学的部位に合わせて調整することができる。いくつかの実施形態では、触覚部がステータ部分100の一体部分を形成することもできるが、一般に、この例でもそうであるように、触覚部はステータ部分に取り外し可能に取り付けられる要素として構成することができる。
【0067】
本発明のデバイスの寸法は、既製レンズを含むレンズを確実に保持することができ、かつ確実な埋込と埋込後のIOLの効果的な変位を確保するように選択される。このデバイスは、IOLを変位させるためにデバイスを作動させるまで、IOLを恒久的な位置に保持するように構成されている。説明した例の
図1Bに示すように、デバイス10の寸法は、IOLを収容するキャビティ202の直径が3.6mm、ステータ部分の公称外径が6mm、部分102を含むステータ部分の直径が7.5mmである。通常、キャビティ202の寸法は、市販されているIOLの寸法を満たす3.5mm~5mmの間であることに留意されたい。
【0068】
運動システムは、ステータ部分に対して、IOLの光軸を中心とするロータ部分およびIOLの増分回転を引き起こすように動作可能である。運動システムが作動しない限り、IOLは水晶体嚢内に安全かつ安定的に配置される。一般に、運動システムは、ロータ部分と固定された空間的関係を有する複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータに関連付けられ、ステータ部分と固定された空間的関係を有する少なくとも1の相互作用領域とを含む。
【0069】
いくつかの例では、アクチュエータが、ロータ部分に固定的に取り付けられた別個の要素である。いくつかの例では、アクチュエータがロータ部分と一体である。いくつかの例では、アクチュエータが部分的に別体であり、ロータ部分と部分的に一体である。説明例では、運動システム300が、ロータ部分200の外側に固定的に保持された、部分的に別体であり部分的に一体である3つのアクチュエータ310A、310B、310Cを含む。アクチュエータ310A~310Cの詳細については、以下でさらに説明する。
【0070】
いくつかの例では、1または複数の相互作用領域が、ステータ部分に固定的に取り付けられた別個の要素である。いくつかの例では、1または複数の相互作用領域が、ステータ部分と一体である。いくつかの例では、1または複数の相互作用領域が、ロータ部分と部分的に別個であり、部分的に一体である。説明する例では、運動システム300が、ステータ部分と一体であり、ステータ部分100の内側に位置する3つの相互作用領域320A、320B、320Cを含む。相互作用領域320A~320Cの詳細については、以下でさらに説明する。
【0071】
本発明によれば、複数のアクチュエータおよびそれに関連する複数の相互作用領域が位置合わせされており、所与の各時点で、複数のアクチュエータのうちの各アクチュエータが関連する相互作用領域に対して異なるように位置合わせされて、例えば、各アクチュエータが、関連する相互作用領域上の異なる点を向き、関連する相互作用領域と係合するように遠隔エネルギー源によって作動されるときに、異なる角度距離または角度方向のいずれかを有する異なる増分回転でIOLを回転させるように構成されている。
【0072】
本発明の技術によれば、複数のアクチュエータが、少なくとも2のアクチュエータを含む。関連する1または複数の相互作用領域と同様に、単一の相互作用領域が最初のアクチュエータから最後のアクチュエータまで延在して、すべてに関連することができ、別の場合には、関連する複数の相互作用領域が少なくとも2つである。2つのアクチュエータと2つの相互作用領域の場合、円形に配置されると仮定すると、2つのアクチュエータが、それらの間に第1の距離を空けて配置される必要があり、2つの相互作用領域が、それらの間に、アクチュエータ間の第1の距離とは異なる第2の距離を空けて配置される必要があり、その結果、第1のアクチュエータと相互作用領域の組合せ間の配置が、第2のアクチュエータと相互作用領域の組合せ間の配置とは異なる。代替的には、単一の相互作用領域は、第1のアクチュエータが第1の特徴と位置合わせされ、第2のアクチュエータが第2の特徴と位置合わせされるように、特徴の様々なパターンを有するものであってもよい。
【0073】
別の例では、複数のアクチュエータが、それらの間に可変距離を空けて配置された少なくとも3のアクチュエータを含み、関連する複数の相互作用領域が、それらの間に一定の距離を空けて配置された少なくとも3の相互作用領域を含むか、または、単一の相互作用が3つのアクチュエータに関連付けられるか、または、2つの相互作用領域にうち、第1の相互作用領域が2つのアクチュエータに関連付けられ、第2の相互作用領域が第3のアクチュエータに関連付けられる。
【0074】
さらに別の例では、複数のアクチュエータが、それらの間に一定の距離を空けて配置された少なくとも3のアクチュエータを含み、関連する複数の相互作用領域が、それらの間に可変距離を空けて配置された少なくとも3の相互作用領域を含む。また、ここでは、アクチュエータが相互作用領域に対して異なるように位置合わせされるように、特徴の可変パターンを有する相互作用領域を利用することができる。
【0075】
代替的には、いくつかの例では、アクチュエータと相互作用領域の両方のグループが、隣接するアクチュエータ/相互作用領域間の距離が可変である。重要な点は、各アクチュエータと相互作用領域の組合せが互いに対して異なるように位置合わせされていることである。
【0076】
いくつかの例では、可変距離が、複数のアクチュエータのうちの2つの隣接する各アクチュエータ間、または複数の相互作用領域のうちの2つの隣接する各相互作用領域間の一定の増加するピッチによって特徴付けられる。例えば、3つのアクチュエータは0°、60°、120°に位置し、3つの相互作用領域は1°、62°、123°に位置する。換言すれば、ここでのピッチは1°である。
【0077】
記載の非限定的な例では、アクチュエータ310A~310Cの間の距離が一定であり、相互作用領域320A~320Cの間の距離が可変であるか、またはその逆である。どちらの選択肢も有効である。
【0078】
図1A~
図1G4の非限定的な説明例では、所与の時点で各アクチュエータが、作動されて関連するそれぞれの相互作用領域と係合する場合に、最初に相互作用領域内の異なる点に接触し、少なくとも異なる角度距離または異なる角度方向によって特徴付けられる特定の増分回転を引き起こすように、3つのアクチュエータ310A~310Cの各々が、それぞれの関連する相互作用領域320A~320Cに対して位置合わせされる。これは
図1E1~
図1E3に見ることができ、これら図面には、アクチュエータ310A~310Cのいずれかが作動する前のデバイス10、すなわち、
図1Bのアクチュエータと関連する相互作用領域との間の瞬間的な配置が示されている。
図1E1は、アクチュエータ310Aおよび関連する相互作用領域320Aのクローズアップ図であり、
図1E2は、アクチュエータ310Bおよび関連する相互作用領域320Bのクローズアップ図であり、
図1E3は、アクチュエータ310Cおよび関連する相互作用領域320Cのクローズアップ図である。
【0079】
図1E1は、アクチュエータ310Aと相互作用領域320Aとの間の瞬間的な配置を示している。
図1E1から分かるように、アクチュエータ310Aが作動すると、相互作用点320A1において相互作用領域320Aと相互作用/係合する。相互作用領域は静的であり(ステータ部分と固定された空間的関係を有し)、アクチュエータは回転可能である(ロータ部分と固定された空間的関係を有する)ため、アクチュエータ310Aが作動して320A1で相互作用領域320Aと係合することにより、アクチュエータが相互作用点320A1から停止する点320A2までスライドし、その結果、相互作用領域320Aの構造によって決定される特定の角度距離だけ、ロータ部分200が反時計回りに回転する。
【0080】
図1E2は、(アクチュエータ310Aと相互作用作用320Aとの間の配置、および
図1E3に示すようなアクチュエータ310Cと相互作用作用320Cとの間の配置と同時に起きる)アクチュエータ310Bと相互作用領域320Bとの間の瞬間的な配置を示している。分かるように、アクチュエータ310Bが作動すると、相互作用点320B1で相互作用領域320Bと係合し、相互作用点320B1から停止する点320B2までスライドし、その結果、相互作用領域320Bの構造によって決定される特定の角度距離だけ、ロータ部分200が時計回りに回転する。例えば、分かるように、この角度距離は、アクチュエータ310Aが作動した場合に引き起こされる角度距離とは異なる。しかしながら、前述したように、角度距離および角度方向のうちの少なくとも一方は、異なるアクチュエータおよび相互作用領域間で異なる必要がある。
【0081】
図1E3は、アクチュエータ310Cと相互作用領域320Cとの間の瞬間的な配置を示している。アクチュエータ310Cが作動すると、相互作用点320C1で相互作用領域320Cと係合し、点320C2で停止するまで反時計回りの角度方向に回転する。相互作用領域320A~320Cが同一構造である場合、ここでの角度距離は、アクチュエータ310A、310Bの作動によって引き起こされる角度距離よりも大きいことが分かる。
【0082】
いくつかの例では、
図1F1~
図1F4および
図1G1~
図1G4においてさらに後述するように、複数のアクチュエータおよび関連する(それぞれの)複数の相互作用領域が位置合わせされることにより、複数のアクチュエータのうちの1つのアクチュエータが遠隔エネルギー源により作動されて関連する/それぞれの相互作用領域と係合し、特定の角度距離および方向を有する特定の増分回転でIOLを回転させた後の所与の各時点で、複数のアクチュエータのうちの後続のアクチュエータが、その関連する/それぞれの相互作用領域と位置合わせされ、遠隔エネルギー源により作動されてその関連する/それぞれの相互作用領域と係合するときに、同じ特定の角度距離および角度方向を有する同じ特定の増分回転でIOLを回転させるように構成された状態となる。
【0083】
いくつかの例では、
図1F1~
図1F4および
図1G1~
図1G4にも示すように、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが、特定の作動順序で順次作動されて、関連する複数の相互作用領域と順次係合するときに、等しい角度距離および同じ角度方向を有する逐次増分回転でIOLを回転させる。
【0084】
図1F1は、アクチュエータが作動して関連する相互作用領域と係合する前の時点「0」におけるデバイス10を示している。すべてのアクチュエータおよびそれぞれの相互作用領域のクローズアップ図からよく分かるように、アクチュエータ310A~310Cの各々は、関連する相互作用領域320A~320Cに対して異なるように位置合わせされている。それぞれのクローズアップ図において、矢印は、それぞれのアクチュエータが相互作用することとなる相互作用領域の特定の部分を示している。矢印は、相互作用の発生前、発生中および発生後のすべての図面において、相互作用領域のその具体的な部分を示している。すなわち、矢印AR1は、アクチュエータ310Aと相互作用領域320Aとの間の係合が生じることとなる相互作用領域320Aの部分を示し、矢印AR2は、アクチュエータ310Bと相互作用領域320Bとの間の係合が生じることとなる相互作用領域320Bの部分を示し、矢印AR3は、アクチュエータ310Cと相互作用領域320Cとの間の係合が生じることとなる相互作用領域320Cの部分を示している。
【0085】
図1F2~
図1F4は、3つのアクチュエータ310A、310B、310Cをこの順序で3回順次作動させた結果として、ロータ部分の3回の増分の均等な時計回りの回転における、ロータ部分の時計回りの回転を示している。
【0086】
図1F2は、アクチュエータ310Aと相互作用領域320Aとの係合の終了位置を示している。分かるように、アクチュエータは、相互作用領域320Aの関連部分の最下点320ALに到達し、そこではそれ以上の動きは発生し得ない。アクチュエータ310Aをもう一度作動させても、ロータ部分とステータ部分との間の相対的な動きが発生することはなく、すなわち、それらの間の動きはゼロとなる。
図1F3に示すように、アクチュエータ310Bが作動して相互作用領域320Bと係合する前に、後述するように、アクチュエータ310Aは弛緩されて、相互作用領域310Aとの係合が解除される。また、
図1F2は、アクチュエータ310Aと相互作用領域320Aとの間の係合と同じ角度距離を有するその後の時計回りの増分回転に影響を与える、アクチュエータ310Bと相互作用領域320Bとの間の新たな位置合わせも示している。
【0087】
同様に、
図1F3は、アクチュエータ310Bの順次的な作動と、相互作用領域320Bとの係合中のその終了位置を示しており、ロータ部分の第2の時計回りの増分回転がもたらされている。
図1F4は、アクチュエータ310Cの順次的な作動と、相互作用領域320Cとの係合中のその終了位置を示しており、ロータ部分の時計回りの第3の増分回転がもたらされている。
図1F4から分かるように、アクチュエータ310Aは、相互作用領域320Aに対して、
図1F1と同様に配置されており、必要に応じて増分回転の別のサイクルまたは部分的なサイクルが可能になっている。一方、アクチュエータ320Bを作動させると、反時計回りの増分回転となり、IOLの位置を逆方向に補正することができる。
【0088】
図1G1~
図1G4を参照すると、それらが、ロータ部分の順次の反時計回りの増分回転に影響を与えるための、アクチュエータの同様の作動系列を示していることが理解されよう。ここでは、アクチュエータが逆の順序、すなわち310C、310B、310Aの順序で順次作動される。
図1G1は、時点「0」におけるデバイスを示し、
図1G2は、ロータ部分の反時計回りの増分回転をもたらす相互作用領域320Cとのアクチュエータ310Cの係合の終了位置を示し、
図1G3は、ロータ部分の反時計回りの第2の増分回転をもたらす相互作用領域320Bとのアクチュエータ310Bの係合の終了位置を示し、
図1G4は、ロータ部分の反時計回りの第3の増分回転をもたらす相互作用領域320Aとのアクチュエータ310Aの係合の終了位置を示している。分かるように、アクチュエータ310Cは、3回の増分回転の後、相互作用領域320Cに対して
図1G1と同様の配置に戻り、必要に応じて反時計回りの増分回転の別のサイクルまたは部分的なサイクルが可能となっている。一方、アクチュエータ320Bを作動させると、時計回りの増分回転となり、IOLの位置を反対方向に補正することが可能になる。
【0089】
いくつかの実施形態では、以下にさらに例示するように、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが一方向性であり、個々に作動されて関連する複数の相互作用領域と係合すると、IOLを同じ特定の角度方向に回転させる。すなわち、それらは、時計回りまたは反時計回りのどちらか一方の方向にのみIOLを回転させるように動作可能である。一方向性アクチュエータを利用する場合、複数のアクチュエータはすべて同じ角度方向への一方向性であってもよく、あるいは複数のアクチュエータが、関連する複数の相互作用領域と係合するように順次作動されるときに、IOLを時計回り方向に回転させるように動作可能な一方向性アクチュエータの第1のグループと、関連する複数の相互作用領域と係合するように順次作動されるときに、IOLを反時計回り方向に回転させるように動作可能な一方向性アクチュエータの第2のグループとを含むものであってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが双方向性であり、関連する複数の相互作用領域と係合するように個々に作動されるときに、関連する相互作用領域に対するそれらの一時的な配置に基づいて、IOLを時計回りまたは反時計回りのどちらかの角度方向に回転させるようになっている。
【0091】
いくつかの実施形態では、複数のアクチュエータのうちの少なくともいくつかのアクチュエータが、遠隔エネルギー源によって作動されるときに、IOLをそれぞれ1または2の角度方向に回転させるように構成された一方向性アクチュエータまたは双方向性アクチュエータとして、アクチュエータを規定する長さ寸法を有する。以下にさらに例を挙げる。
【0092】
図1A~
図1G4の説明例では、アクチュエータ310A~310Cがすべて双方向性である。上述したように、アクチュエータの各々は、アクチュエータと関連する相互作用領域との間の一時的な配置に応じて、IOLを時計回り方向または反時計回り方向に回転させることができる。図面(例えば、
図1E1、
図1E2)に示すように、アクチュエータは、作動されると、直線状の真っ直ぐな作動経路LAP(
図1E1、
図1E2)に沿って相互作用領域に向かって延び、よって双方向性であり、相互作用領域との一時的な配置に応じて、時計回りおよび反時計回りの両方の回転に影響を与えるように相互作用領域と係合することができる。
【0093】
本発明によれば、アクチュエータは、エネルギー源からのエネルギーに曝されると作動する。いくつかの実施形態では、アクチュエータ、または少なくともその作動可能部分は、第1の休止(非係合)空間構成(例えば、
図1F1のアクチュエータ310A)から第2の作動(係合)空間構成(例えば、
図1F2のアクチュエータ310A)に移行し、この空間構成では、アクチュエータまたは少なくともその一部と相互作用領域との接触および係合が特定の点で生じ、それにより、角度距離および角度方向を有する特定の回転運動を引き起こす。
【0094】
また、アクチュエータは、相互作用領域との係合が特定の回転運動を達成すると、第2の係合空間構成から第1の非係合空間構成に戻るように構成されている。いくつかの実施形態では、アクチュエータが、アクチュエータ作動可能部分と繋がるアクチュエータ弾性部分を含み、アクチュエータ弾性部分は、アクチュエータ作動可能部分が遠隔エネルギー源によって作動されなくなると、アクチュエータ作動可能部分を第2の作動空間構成から第1の休止空間構成に戻すように動作可能である。いくつかの実施形態では、弾性部分が、作動可能部分を休止空間構成に戻すように付勢するバネのように作用する。いくつかの実施形態では、さらに後述するように、アクチュエータ弾性部分は、アクチュエータ作動可能部分が遠隔エネルギー源によって作動されるときに、関連する相互作用領域と係合して、IOLを増分回転させるように動作可能である。換言すれば、作動可能部分または弾性部分のいずれかが、相互作用領域と係合して回転運動を引き起こすように構成され得る。
【0095】
図1A~
図1G4の説明例では、アクチュエータが作動可能部分と弾性部分の両方を含む。例えば、
図1C、
図1Dおよび
図1E1に示すように、アクチュエータ310Aは、エネルギー源によって作動するように構成された作動可能部分310AAと、休止空間構成にあるときに作動可能部分310AAを定位置に保持し、作動可能部分に弾性力を加えることによって作動可能部分310AAを作動空間構成(例えば、
図1F2)から休止空間構成に戻すように構成された弾性部分310AEとを含む。図示のように、この例では、弾性部分310AEがロータ部分200の一体部分を形成し、作動可能部分310AAが、弾性部分310AEの2つの部分EM1、EM2の間に閉じ込められた別個の要素である。
【0096】
いくつかの実施形態では、休止空間構成および作動空間構成、並びにそれらの間のシフトを可能にするために、アクチュエータ、具体的には作動可能部分は、作動可能部分が遠隔エネルギー源からのエネルギーに曝されたときに第2の作動空間構成を提供するように動作可能な形状記憶材料および/またはバイメタル材料から部分的または全体的に作製することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ステータ部分が超弾性材料を含む。いくつかの実施形態では、ロータ部分が超弾性材料を含む。超弾性材料により、デバイスまたはその主要部分は、一定の大きさの外力が加えられると折り畳み可能であり、外力が除去されると変形することなく元の形状に戻ることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、形状記憶材料が、その生体適合性と設計の柔軟性のために選択された、特別に設計されたニチノール(ニッケルチタン合金)である。いくつかの実施形態では、超弾性材料が、特別に設計されたニチノールまたはバイメタルである。
【0099】
ニチノールは、特定の温度範囲では超弾性材料、特定の温度範囲では形状記憶材料として設計することができる。一般に、ニチノールは、数℃の勾配でマルテンサイト相からオーステナイト相にその構造が変化するように構成されている。温度の勾配と相変態温度は、要求に応じてプログラムすることができる。例えば、ニチノール合金は、約40℃まではマルテンサイト相で柔軟であるように設計することができ、外力によって所望の形状に成形することができる。一方、温度を約60℃まで上げると、オーステナイト相に相転移し、ニチノールは、一定の大きさの外力を受けている間でも、その「メモリ」に保存された形状に変化(変形)し、例えば、アクチュエータの作動可能部分の第2の作動空間構成を形成する。温度が約40℃に戻ると、ニチノールはその柔軟な状態に戻り、休止空間構成を提供する所望の形状に再形成することができる。ステータ部分とロータ部分は、水晶体嚢に挿入されている間に折り畳むことができるように、室温付近で超弾性となるように設計することができる。例えば、約2.54mm2の面積の断面(円直径1.8mmに相当するが、断面は楕円のような形状をとることができる)を通すことができるようにデバイスを折り畳み可能に構成することができる。
【0100】
相互作用領域は、アクチュエータと相互作用領域との間の係合の結果としてロータ部分の回転運動を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの相互作用領域が、一連の隆起/歯状突起によって規定されている。2つの隣接する各歯状突起は、それらの間にある1つの窪み/谷部によって分離されている。いくつかの実施形態では、複数の相互作用領域が、様々なサイズを有する様々な一連の隆起/歯状突起によって規定されるものであってもよい。いくつかの実施形態では、相互作用領域内の歯状突起が対称である。いくつかの実施形態では、相互作用領域内の歯状突起が非対称である。非対称の構成は、運動システムが2つのアクチュエータおよび2つのそれぞれの相互作用領域のみを含む場合に有利である。何故なら、この方法では、アクチュエータが隣接する歯の間を移動して、IOLを長い角度距離に沿って回転させることができるためである。
【0101】
図1A~
図1G4の非限定的な例では、相互作用領域320A~320Cが、同一の一連の対称的な歯状突起として構成されている。例えば、
図1E4は、相互作用領域の歯状突起を示している。2つの歯状突起320BT1、320BT2は、谷点320BVによって分離されている。各歯は、アクチュエータと相互作用領域との間の最も高い接触点/係合点を規定する頂点を有する。歯320BT2の頂点320BTTが図示されている。谷点320BVは、相互作用領域とのアクチュエータの最終接触点/係合点を規定する。歯の各側面は、歯の頂点と谷点との間で最大となる係合経路を規定する。アクチュエータは、アクチュエータが相互作用領域と係合するたびに、頂点と移動の終点として機能する谷点との間の任意の点で歯と接触/係合することができる。このため、この非限定的な例では、各アクチュエータを1回だけ作動させることができ、アクチュエータの最初の作動後に少なくとも1の他のアクチュエータ(典型的には、一連のアクチュエータのうちの次のアクチュエータ)が作動されない限り、同じアクチュエータのその後の作動は、ロータ部分とステータ部分との間の相対移動をもたらさないことが理解されよう。
【0102】
一連の窪み/谷点によって分離された一連の隆起/歯状突起によって形成される相互作用領域の上述した構成は、相互作用領域の比較的大きい/大きな特徴(隆起/歯)を有することを可能にし、それにより、アクチュエータと相互作用領域との間の各係合が相互作用領域の特徴(隆起/歯)の一部にわたるアクチュエータの相対移動をもたらすため、IOLの小さな増分回転運動を達成しながらも、デバイスの製造プロセスを容易にすることができる。いくつかの実施形態では、隆起/歯のほぼ半分、3分の1または4分の1が係合経路となるように、アクチュエータが相互作用領域に対して位置合わせされる。いくつかの実施形態では、各隆起/歯状突起が、0.6ºの角度以上の角度距離の増分回転を規定する。いくつかの実施形態では、(歯/隆起の一部を形成する)増分回転が、0.3ºの角度以上の角度距離を有する。特に図示していないが、ステータおよび/またはロータ部分には、デバイスのオペレータがIOLの正確な角度位置(新旧両方の位置、変位前および変位後の位置)を識別するのに役立つスケールマークを設けることができる。
【0103】
各アクチュエータはそれぞれの相互作用領域を有するが、これは説明的なもので、主に機能的なものである。構造的に連続する単一の相互作用領域、例えば、ステータ部分の内周全体にわたって延びる円形の相互作用領域が設けられ、複数のアクチュエータがそれと相互作用する場合もあり得ることを理解されたい。
【0104】
遠隔エネルギー源ESは、複数のアクチュエータに作動エネルギーを供給するように構成され、かつ動作可能である。通常、各アクチュエータは個別に作動される。いくつかの実施形態では、遠隔エネルギー源ESが、遠隔エネルギー源と遠隔作動されるアクチュエータとの間に直接的な/途切れることのない見通し線/経路を必要とするが、いくつかの他の実施形態では、そのような要件はなく、直接的な見通し線がなくても作動を達成することができる。いくつかの実施形態では、遠隔エネルギー源ESが、作動エネルギーを熱の形態で提供するように構成され、かつ動作可能である。これは、上述したように、アクチュエータがニチノールから作られている場合に特に重要である。いくつかの実施形態では、遠隔エネルギー源ESが、照射によってアクチュエータを加熱するように動作可能な少なくとも1の放射要素を含む。いくつかの実施形態では、遠隔エネルギー源ESが、電磁放射送信部を含み、複数のアクチュエータが、対応する電磁放射受信部を含む。いくつかの実施形態では、遠隔エネルギー源ESがレーザ光源である。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、連続的なレーザ放射を提供するように構成され、かつ動作可能である。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、緑色スペクトルの光(いわゆるアルゴンレーザ)を提供するように構成され、かつ動作可能である。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、1または複数のレーザダイオードを含む。いくつかの実施形態では、レーザ光源が、0.1~5ワットのレーザ出力、200~1000msのレーザパルス幅を有するレーザを生成するように構成され、かつ動作可能である。
【0105】
図2A~
図2Dを参照すると、本発明の特徴を組み込んだデバイス10Aの別の非限定的な例が示されている。
図2Aは、デバイス10Aの斜視図であり、
図2Bは、分解図であり、
図2Cは、ロータおよびステータ部分と運動システムを示し、
図2Dは、運動システムのクローズアップ図である。
【0106】
図2Aに示すように、デバイス10Aは、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202Aを含み、(上述したように、デバイス10Aの一部ではない)遠隔エネルギー源ESからエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心にIOLを回転させるように動作可能である。デバイス10Aは、外側ステータ部分100Aと、内側ロータ部分200Aと、固定的に取り付けられた2つの触覚部102Aの助けによって眼球の水晶体嚢内に固定的に配置された外側ステータ部分100Aに対して、IOLに固定的に取り付けられた内側ロータ部分200Aを、遠隔エネルギー源ESによって回転させるように動作可能な運動システム300Aとを含む。
【0107】
この例では、
図2Bに示すように、デバイス10Aが、ロータ部分200Aの軸方向の(光軸OAの方向に沿った)変位を制限するように構成され、かつ動作可能な背面カバー400Aも含む。また、背面カバーだけでなく、前面カバー(図示せず)も、本明細書で説明されるデバイスの例のいずれかに取り付けることができ、それによって、ロータ部分および場合によっては運動システムの少なくとも一部の軸方向の変位を制御および制限することができる。前面カバーおよび/または背面カバーは、固定式とする(ステータ部分に取り付ける)か、または回転可能とする(ロータ部分に取り付ける)ことができる。
【0108】
図2Cに明確に示すように、この非限定的な例では、運動システム300Aが、6つのアクチュエータ312A~312Fを含む。各アクチュエータは、上述したように、作動可能部分および弾性部分を含む。すなわち、アクチュエータ312A~312Fは、作動可能部分312AA~312FAおよび弾性部分EM1A~EM6Aをそれぞれ含む。この非限定的な例では、アクチュエータの作動可能部分がロータ部分と一体化されており、弾性部分がロータ部分に固定的に連結された別個の要素である。
【0109】
図示のように、運動システム300Aは、6つのアクチュエータ312A~312Fに関連する3つの相互作用領域322A~322Cを含む。相互作用領域は、デバイス10の相互作用領域と同様の一連の隆起/歯状突起である。相互作用領域322Aは、アクチュエータ312A、312Bに関連し、相互作用領域322Bは、アクチュエータ312C、312Dに関連し、相互作用領域322Cは、アクチュエータ312E、312Fに関連する。
図2Cから分かるように、アクチュエータの各々(少なくとも作動可能部分)は、関連する相互作用領域に対して異なるように配置されている。
【0110】
この非限定的な例では、アクチュエータの各々が一方向性であり、関連する相互作用領域と係合するときに、ロータ部分およびIOLを時計回りまたは反時計回りのいずれか一方の角度方向に回転させることができる。その理由は、アクチュエータの作動可能部分の湾曲構造によって、作動可能部分が遠隔エネルギー源によって作動されるときに、デバイス10に含まれるアクチュエータのように直線に沿ってではなく、相互作用領域に向かって曲線上を移動し、湾曲した経路によって、アクチュエータの作動可能部分が隆起/歯の片側のみと係合することができるためである。アクチュエータ312A、312C、312Eは、ロータ部分およびIOLを時計回りに回転させ、アクチュエータ312B、312D、312Fは、ロータ部分およびIOLを反時計回りに回転させる。
図2Dは、デバイス10Aのアクチュエータの一方向性の性質を示している。図示のように、作動可能部分312EAを有するアクチュエータ312Eが作動されると、反時計回りに(作動可能部分312EAの左側へ)湾曲した作動経路CAP1に沿って移動し、歯の左側と係合する。上述したように、作動可能部分312EAと隆起/歯との間のこの係合により、ロータ部分が時計回りに回転する。比較すると、作動可能部分312FAを有するアクチュエータ312Fが作動されると、時計回りに(作動可能部分312FAの右側へ)湾曲した作動経路CAP2に沿って移動し、歯の右側と係合する。上述したように、作動可能部分312FAと隆起/歯との間のこの係合により、ロータ部分が反時計回りに回転する。
【0111】
デバイス10に関して説明した残りの特徴は、特に説明しないが、デバイス10Aに関しても適用可能である。
【0112】
図3A~
図3Dを参照すると、本発明の特徴を組み込んだデバイス10Bの別の非限定的な例が示されている。
図3Aは、デバイス10Bの斜視図であり、
図3Bは、分解図であり、
図3Cは、ロータおよびステータ部分と運動システムを示し、
図3Dは、運動システムのクローズアップ図である。
【0113】
図3Aに示すように、デバイス10Bは、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202Bを含み、遠隔エネルギー源ES(上述したように、デバイス10Bの一部ではない)からエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心にIOLを回転させるように動作可能である。デバイス10Bは、外側ステータ部分100Bと、内側ロータ部分200Bと、ステータ部分100Bの一体部分を形成する取付部分102Bに取付可能な2つの触覚部(図示せず)の助けにより眼球の水晶体嚢内に固定的に配置された外側ステータ部分100Bに対して、IOLに固定的に取り付けられた内側ロータ部分200Bを回転させるように、遠隔エネルギー源ESによって動作可能な運動システム300Bとを含む。
【0114】
図3Bは、デバイス10Bの分解図であり、丸い/円形の相互作用領域324を含む運動システム300Bを示し、円形の相互作用領域が、アクチュエータのすべてに関連し、ステータ部分100Bの一体部分を形成し、上述したように窪み/谷部によって間隔を空けて配置された一連の隆起/歯状突起によって形成されている。また、運動システムは、6つのアクチュエータ314A~314Fも含み、それらが、さらに後述するように、デバイス10Aのアクチュエータと同様の一方向アクチュエータとなっている。
【0115】
図3Cに明確に示すように、運動システム(
図3Aの300B)において、この非限定的な例では、各アクチュエータが、上述したように動作することができる作動可能部分および弾性部分を含む。すなわち、アクチュエータ314A~314Fは、作動可能部分314AB~314FBおよび弾性部分EM1B~EM6Bをそれぞれ含む。この非限定的な例では、アクチュエータの作動可能部分と弾性部分がともに、レンズの光軸OAを中心に一緒に回転するようにロータ部分に固定的に連結された別個の要素である。
【0116】
この非限定的な例では、
図3Dに示すように、アクチュエータの弾性部分が、ロータ部分およびIOLの回転運動を引き起こすために相互作用領域と係合するアクチュエータの部分である。クローズアップ
図3D1は、非作動状態のアクチュエータを示し、クローズアップ
図3D2は、作動状態のアクチュエータを示している。作動状態では、作動可能部分314Bは、遠隔エネルギー源によって作動されると、矢印AR1B、AR2Bに沿って移動し、それにより弾性部分EMBを相互作用領域324に向かって押圧し、その結果、弾性部分EMBが相互作用領域の隆起/歯と係合して、ロータ部分をIOLとともに回転させる。
【0117】
例えば、
図3Cに示すように、アクチュエータの各々は、相互作用領域に対して異なるように位置合わせされており、相互作用領域と係合するときに、異なる角度距離または角度方向を有する増分回転を引き起こすようになっている。
【0118】
この非限定的な例では、アクチュエータの各々が一方向性であり、関連する相互作用領域と係合するときに、ロータ部分およびIOLを時計回りまたは反時計回りのいずれか一方の角度方向に回転させることができる。その理由は、アクチュエータの弾性部分の湾曲構造によって、弾性部分が、作動された作動可能部分により移動されるときに、デバイス10に含まれるアクチュエータのように直線に沿ってではなく、(アクチュエータの作動可能部分に関してではあるが、
図2Dで説明したように)相互作用領域に向かって曲線上を移動し、湾曲した経路によって、アクチュエータの弾性部分が隆起/歯の片側のみと係合することができるためである。アクチュエータ314A、314C、314Eは、ロータ部分およびIOLを反時計回りに回転させ、アクチュエータ314B、314D、314Fは、ロータ部分およびIOLを時計回りに回転させる。
【0119】
デバイス10に関して説明した残りの特徴は、特に説明しないが、デバイス10Bに関しても適用可能である。
【0120】
図4A~
図4Cを参照すると、本発明の特徴を組み込んだデバイス10Cの別の非限定的な例が示されている。
図4Aは、デバイス10Cの斜視図であり、
図4Bは、分解図であり、
図4Cは、ロータおよびステータ部分と運動システム300Cを示している。
【0121】
図4Aに示すように、デバイス10Cは、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202Cを含み、遠隔エネルギー源ES(上述したように、デバイス10Cの一部ではない)からエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心にIOLを回転させるように動作可能である。デバイス10Cは、外側ステータ部分100Cと、内側ロータ部分200Cと、固定的に取り付けられた2つの触覚部102Cの助けにより眼球の水晶体嚢内に固定的に配置された外側ステータ部分100Cに対して、IOLに固定的に取り付けられた内側ロータ部分200Cを回転させるように、遠隔エネルギー源ESによって動作可能な運動システム300Cとを含む。
【0122】
図4Bは、デバイス10Cの分解図であり、3つのアクチュエータ316A~316Cにそれぞれ関連付けられる3つの相互作用領域326A~326Cを含む運動システム300Cを示している。
【0123】
この例では、
図4Bに示すように、デバイス10Cが前面カバー500Cおよび背面カバー400Cも含み、それらがともに、ロータ部分200Cの軸方向の(光軸OAの方向に沿った)変位を制御および制限するように構成され、かつ動作可能となっている。
【0124】
図4Bおよび
図4Cに示すように、相互作用領域326A~326Cは、ステータ部分100Cの一体部分を形成し、各々が、上述したように、窪み/谷部によって間隔を置いて配置された一連の隆起/歯状突起によって形成されている。
【0125】
図4Cに明確に示されているように、運動システム300Cにおいて、この非限定的な例では、各アクチュエータが、上述したように動作することができる作動可能部分と、相互作用領域と係合して、作動可能部分をその休止空間構成に戻すように動作可能な弾性部分とを含む。すなわち、アクチュエータ316A~316Cは、作動可能部分316AC~316CCおよび弾性部分EM1C1~EM3C2をそれぞれ含む。この非限定的な例では、アクチュエータの作動可能部分316AC~316CCが、レンズの光軸OAを中心に一緒に回転するように、ロータ部分200Cの適切なポケット内に固定的に受け入れられる別個の要素であり、弾性部分EM1C1~EM3C2が、ロータ部分200Cと一体の部分である。
【0126】
この非限定的な例では、上述した
図3A~3Dの例と同様に、アクチュエータの弾性部分が、ロータ部分およびIOLの回転運動を引き起こすために相互作用領域と係合するアクチュエータの部分である。遠隔エネルギー源によって作動可能部分が作動されると、作動可能部分が変形して、相互作用領域と係合する方向に弾性部分を押す。この例の弾性部分は2つのサブ部分を含み、一方の弾性サブ部分は作動可能部分と接触して作動可能部分を休止空間構成に戻すように付勢するものであり、それらサブ部分は、図示のように、EM1C1、EM2C1、EM3C1である。第2の弾性サブ部分は、相互作用領域と係合する長いアームであり、それらサブ部分は、図示のように、EM1C2、EM2C2、EM3C2である。2つのサブ部分がある理由の1つは、長いアームは弱く、作動可能部分を休止空間構成に戻すのに実質的に有効ではない可能性があることである。例えば、図示のように、作動可能部分316ACは、作動されると、矢印AR1Cの方向に移動して、弾性部分EM1C1、EM1C2を相互作用領域326Aに向けて押圧し、弾性部分EM1C2が、相互作用領域の隆起/歯と係合し、IOLとともにロータ部分を回転させる。
【0127】
例えば、
図4Cに示すように、アクチュエータの各々は、それぞれの相互作用領域に対して異なるように位置合わせされ、所与の各時点で、各アクチュエータが、それぞれの相互作用領域と係合するときに、異なる角度距離または角度方向を有する増分回転を引き起こす。
【0128】
この非限定的な例では、アクチュエータの各々が双方向性であり、関連する相互作用領域と係合したときに、アクチュエータと関連する相互作用領域との間の一時的な配置に応じて、ロータ部分およびIOLを時計回りまたは反時計回りに回転させることができる。アクチュエータは、弾性部分の長さが長いため、双方向性である。分かるように、各弾性部分は、ロータ部分の内周の約3分の1にわたって延びている。図示のように、弾性部分EM1C2の長さは、第3の円にわたって延びるArcLの長さに対応する。弾性部分の長さが長いことにより、相互作用領域と係合するその先端は、作動された作動可能部分によって移動させられるときに、湾曲した経路ではなく、実質的に直線的な経路上を移動する。この直線的な経路により、アクチュエータの弾性部分は、一時的な配置に応じて、隆起/歯の両側と係合することができる。本発明者等は実験を行い、円の約半分にわたってそれぞれ延びる2つのアクチュエータ、または円の約3分の1にわたってそれぞれ延びる3つのアクチュエータを使用することにより、関連する相互作用領域と係合するアクチュエータ部分の直線的な移動経路が得られることを見出した。
【0129】
デバイス10に関して説明した残りの特徴は、特に説明しないが、デバイス10Cに関しても適用可能である。
【0130】
図5Aおよび
図5Bを参照すると、本発明の特徴を組み込んだデバイス10Dの別の非限定的な例が示されている。
図2Aは、デバイス10Dの斜視図であり、
図2Bは、ロータおよびステータ部分と運動システムを示す分解図である。
【0131】
図5Aに示すように、デバイス10Dは、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202Dを含み、遠隔エネルギー源ES(上述したように、デバイス10Dの一部ではない)からエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心にIOLを回転させるように動作可能である。デバイス10Dは、2つのロータサブ部分200D1、200D2の間に位置するステータ部分100Dと、ステータ部分100Dの2つの取付部分102Dに取付可能な2つの触覚部の助けによって眼球の水晶体嚢内に固定的に配置されたステータ部分100Dに対して、IOLに固定的に取り付けられたロータサブ部分を回転させるように、遠隔エネルギー源ESによって動作可能な運動システム300Dとを含む。
【0132】
この例では、
図2Bに示すように、ロータ部分が、ステータ部分を間に取り囲む2つのロータサブ部分によって規定されている。すなわち、2つのロータサブ部分は、軸方向に(光軸OAの方向に沿った)ステータ部分100Dの変位を制限するように構成され、かつ動作可能である。このデバイス10Dの構成の利点は、ロータサブ部分とステータ部分が実質的に同じ内径および外径を有するため、内側キャビティが最大のキャビティとなり、より大きいIOLを収容できることである。一方、他の例では、ロータ部分の方が小さく、ステータ部分に囲まれている。
【0133】
この非限定的な例では、2つのロータサブ部分が使用されているが、他の例では、ステータ部分の前方または後方に位置する1つのロータ部分を使用できることに留意されたい。
図5Aおよび
図5Bに記載の構成の利点は、安定性が向上し、構造のバランスがとれていることである。
【0134】
図5Aおよび
図5Bに示すように、この非限定的な例では、運動システム300Dが、3つのアクチュエータ317A~317Cを含む。各アクチュエータは、上述しように同様に動作可能であり、作動可能部分と、作動可能部分に関連する2つの弾性部分とを含む。すなわち、アクチュエータ317A~317Cは、3つの作動可能部分317AC~317CCおよび6つの弾性部分EM1C1~EM3C2を含み、各作動可能部分が、第1および第2のロータサブ部分に位置する2つの弾性部分とそれぞれ関連する。この非限定的な例では、アクチュエータの弾性部分がロータサブ部分と一体化されており、作動可能部分が、ステータ部分の両側に位置する2つの関連する弾性部分と接触するように、専用の領域でロータサブ部分に固定的に接続された別個の要素である。各作動可能部分は、ステータ部分および2つのロータサブ部分の全深さにわたって延びる深さを有する(それにより、デバイスの安定性が向上する)。
【0135】
図示のように、運動システム300Dは、ステータ部分に配置され、3つのアクチュエータ317A~317Cに関連する3つの相互作用領域327A~327Cを含む。相互作用領域は、デバイス10の相互作用領域と同様の一連の隆起/歯状突起である。相互作用領域327Aはアクチュエータ317Aに関連し、相互作用領域327Bはアクチュエータ317Bに関連し、相互作用領域327Cはアクチュエータ317Cに関連する。ここでも、アクチュエータ(少なくとも作動可能部分)の各々は、関連する相互作用領域に対して異なるように位置合わせされていることに留意されたい。
【0136】
この非限定的な例では、アクチュエータの各々が双方向性であり、関連する相互作用領域と係合するときに、アクチュエータと関連する相互作用領域との間の一時的な配置に応じて、ロータ部分およびIOLを時計回りまたは反時計回りに回転させることができる。アクチュエータは、作動可能部分(および弾性部分)の長さが長いため、双方向性である。分かるように、各作動可能部分は、ロータサブ部分の内周の約3分の1にわたって延びている。これは、上述したデバイス10Cのアクチュエータの双方向性の機能と同様である。
【0137】
デバイス10に関して説明した残りの特徴は、特に説明しないが、デバイス10Dに関しても適用可能である。
【0138】
図6A~
図6Gを参照すると、本発明の特徴を組み込んだデバイス10Eの別の非限定的な例が示されている。
図6Aは、デバイス10Eの正面図であり、
図6Bは、分解図であり、
図6C~
図6Gは、運動システムおよびその光軸周りのIOLの様々な回転を示している。
【0139】
図6Aに示すように、デバイス10Eは、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202Eを含み、遠隔エネルギー源ES(上述したように、デバイス10Eの一部ではない)からエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心にIOLを回転させるように動作可能である。デバイス10Eは、外側ステータ部分100Eと、内側ロータ部分200Eと、ステータ部分100Eの一体部分を形成する2つの対応する取付部分102Eに取付可能な2つの触覚部(図示せず)の助けによって眼球の水晶体嚢内に固定的に配置された外側ステータ部分100Eに対して、IOLに固定的に取り付けられた内側ロータ部分200Eを回転させるように、遠隔エネルギー源ESによって動作可能な運動システム300Eとを含む。
【0140】
図6Bは、デバイス10Eの分解図であり、ステータ部分100E、ロータ部分200E、背面カバー400E、5つのアクチュエータ318A~318Eにそれぞれ関連付けられた5つの相互作用領域328A~328Eを含む運動システム300Eを示している。
【0141】
図6Bに示すように、相互作用領域328A~328Eは、ステータ部分100Eの一体部分を形成し、各々が、アクチュエータ318A~318Eの一部を受け入れるように構成された窪みとしてそれぞれ形成されている。
【0142】
アクチュエータは、この非限定的な例では、弾性部分がなく、作動可能部分のみを含む。アクチュエータの作動可能部分は、レンズの光軸OAを中心に一緒に回転するように、ロータ部分200Eの適切なポケット内に固定的に受け入れられる別個の要素である。
【0143】
各アクチュエータは、関連する(それぞれの)相互作用領域に対して異なるように位置合わせされている。各アクチュエータは、ベースと、予め設定された傾斜角に沿ってベースから上方に延びるアームとを有する。簡単のため、これはアクチュエータ318Aで例示されており、他のアクチュエータにも同様に当てはまる。図示のように、アクチュエータは、ロータ部分200Eに固定的に連結されたベース318ABと、アームの上部分が窪み328A内に受け入れられるようにベースから延びるアーム318AAとを有する。ベースとアームの間には角度αがある。各アクチュエータは、そのベースとアームとの間に異なる角度αを有する。非限定的な説明例では、アクチュエータ318Aが角度α=90°を有し、アクチュエータ318Bが角度α=90°-βを有し、アクチュエータ318Cが角度α=90°-2βを有し、アクチュエータ318Dが角度α=90°+βを有し、アクチュエータ318Eが角度α=90°+2βを有する。
【0144】
各アクチュエータは、作動すると、そのメモリに保存された形状、例えばα=90°の形状をとるように構成され、関連する窪みとの係合により、ロータ部分とステータ部分との間で増分回転運動が生じることとなる。この場合、例えば、アクチュエータ318Aを作動させても、アクチュエータ318Aはその形状を変えることはなく、動きを生じることはない。さらに、弾性部分が存在しないため、アクチュエータは冷却後も直角形状(α=90°)のままである。すなわち、この例では、各アクチュエータは一度しか作動させることができない。
【0145】
図6D~
図6Gは、ステータ部分に対するロータ部分の異なる変位を示しており、
図6Dは、アクチュエータ318Bを作動させた後のロータ部分とステータ部分との間の新たな相対位置を示し、角度βのロータ部分の時計回りの増分回転が生じた状態であり、
図6Eは、アクチュエータ318Cを作動させた後のロータ部分とステータ部分との間の新たな相対位置を示し、角度2βのロータ部分の時計回りの増分回転が生じた状態であり、
図6Fは、アクチュエータ318Dを作動させた後のロータ部分とステータ部分との間の新しい相対位置を示し、角度βのロータ部分の反時計回りの増分回転が生じた状態であり、
図6Gは、アクチュエータ318Eを作動させた後のロータ部分とステータ部分との間の新しい相対位置を示し、角度2βのロータ部分の反時計回りの増分回転が生じた状態である。説明した配置により、最大2βの時計回りの回転または最大2βの反時計回りの回転のいずれかが可能になることが理解されよう。また、アクチュエータ318Aは、
図6Cに示すように、ロータ部分をその最初の位置に戻すために、別のアクチュエータの各作動後に作動させることができることも理解されよう。アクチュエータの数を増やすと、増分回転距離(角度)の範囲を広げることができる。
【0146】
図7Aおよび
図7Bを参照すると、本発明の特徴を組み込んだデバイス10Fの別の非限定的な例が示されている。
図7Aは、ロータおよびステータ部分と運動システムを示し、
図7Bは、運動システムのクローズアップ図である。
【0147】
図7Aに示すように、デバイス10Fは、IOLを受け入れるように構成されたキャビティ202Fを含み、遠隔エネルギー源ES(上述したように、デバイス10Fの一部ではない)からエネルギーを吸収することによって、IOLの光軸OAを中心にIOLを回転させるように動作可能である。デバイス10Fは、外側ステータ部分100Fと、内側ロータ部分200Fと、2つの触覚部などの他のコンポーネント(図示せず)の助けによって眼球の水晶体嚢内に固定的に配置された外側ステータ部分100Fに対して、IOLに固定的に取り付けられた内側ロータ部分200Fを回転させるように、遠隔エネルギー源ESによって動作可能な運動システム300Fとを含む。
【0148】
運動システム300Fは、丸い/円形の相互作用領域329を含み、この相互作用領域が、すべてのアクチュエータに関連し、ステータ部分100Fの一体部分をその内側に形成し、上述したように、窪み/谷部によって間隔を空けて配置された一連の隆起/歯状突起によって形成されている。ここでも、異なるアクチュエータが、対応する異なる相互作用領域と位置合わせされている。また、運動システム300Fは、さらに後述するように、デバイス10A、10Bのアクチュエータと動作が類似する、一方向性アクチュエータである4つのアクチュエータ319A~319Dを含む。2つの近くにあるアクチュエータ319A、319Bは、ロータおよびIOLの時計回りの回転を担い、他の2つの近くにあるアクチュエータ319C、319Dは、ロータおよびIOLの反時計回りの回転を担う。
【0149】
図7Bに明確に示すように、運動システムにおいて、この非限定的な例では、アクチュエータ319A(および同様に残りのアクチュエータ)が、上述したように動作することができる作動可能部分319ACおよび弾性部分EM1Fを含む。この非限定的な例では、アクチュエータの作動可能部分と弾性部分がともに、レンズの光軸OAを中心に一緒に回転するようにロータ部分に固定的に接続された別個の要素である。
【0150】
この非限定的な例では、
図7Bに示すように、アクチュエータ319Aの弾性部分EM1Fが、ロータ部分およびIOLの回転運動を引き起こすために相互作用領域329と係合するアクチュエータの部分である。クローズアップ
図7B1は、非作動状態のアクチュエータを示している。矢印AR1F、AR2Fは、作動可能部分が遠隔エネルギー源により作動されて弾性部分を相互作用領域329に向けて押圧し、弾性部分がそれと位置合わせされた相互作用領域の隆起/歯と係合して、ロータ部分をIOLとともに回転させるときの、作動可能部分319ACおよび弾性部分EM1Fの移動経路をそれぞれ示している。
【0151】
上述したように、この非限定的な例では、アクチュエータの各々が一方向性であり、関連する相互作用領域と係合したときに、ロータ部分およびIOLを時計回りまたは反時計回りのいずれかの一方の角度方向に回転させることができる。その理由は、アクチュエータの弾性部分の湾曲構造によって、作動された作動可能部分により弾性部分が移動するときに、デバイス10に含まれるアクチュエータのように直線に沿ってではなく、(アクチュエータの作動可能部分に関してではあるが、
図2Dで説明したように)相互作用領域に向かって曲線上を移動し、湾曲した経路によって、アクチュエータの弾性部分が隆起/歯の片側のみと係合することができるためである。
【0152】
このデバイス10Fの非限定的な例では、運動システムが、本出願人によって実現された小型運動システムの一例である。図示のように、隆起/歯の高さは0.03mm、作動可能部分の中央部の幅は0.04mm、弾性部分の最も薄い部分は0.02mmである。デバイス外径は6.00mm、レンズを受け入れる内径は5.2mmである。これにより、光学的に有効な大きな自由領域が実現され、光学的に有効な自由領域の周囲に運動システムが非常に小さな領域を占めることになる。実際に、この非限定的な例では、邪魔されない光学領域(クリアな光路)とデバイス全体の領域との比率が約73~75%である。一般に、この非限定的な例および上述した他のデバイスでは、ステータおよびロータ部分の公称深さが約0.03~0.1mmである。(本明細書全体を通して、「約」という語は、指定された数値および指定された数値の周りの±10%のマージンの範囲を意味する。本明細書に記載の他の数値は、「約」という語が明確に付されていなくても、±10%のマージンも含むと理解されるべきである)。いくつかの実施形態では、IOL保持デバイス、より具体的には補償運動システム(具体的にはアクチュエータ)および/またはデバイスのロータ部分は、眼球とIOL保持デバイスの可動部分(可動部分は、ここでは、運動システム、具体的にはアクチュエータ、およびロータ部分、並びにIOL保持デバイスのあらゆる可動部分を示すために使用される)との相互作用を防止する保護シールドデバイスまたはアセンブリによって、眼球内部から少なくとも部分的に隔離されている。そのような相互作用により、運動システムおよび/またはIOL保持デバイスのロータ部分の機能が阻害される可能性がある。IOL保持デバイスおよびIOLを眼球前房に挿入する際に、眼球壁(強膜組織)にスリット/傷が生じるため、傷を治癒するための生体反応が開始される。その物質の一つが眼内フィブリンであり、このフィブリンは繊維状の物質であり、運動システムおよび/またはロータ部分に入り込むと可動部分の動きを妨げる。さらに、PCO(後嚢混濁)は「後発白内障」とも呼ばれ、白内障摘出の術後合併症の中で最も一般的なものである。PCOでは、水晶体上皮細胞(LEC)の移動、増殖、分化により、後嚢が二次的に混濁する。
【0153】
図8A1~
図8G2を参照すると、本発明のIOL保持デバイスまたは他のIOL保持デバイスとともに使用するためのシールドデバイス/アセンブリの非限定的な例が示されている。
【0154】
第1の例が、
図8A1および
図8A2に示されている。これら図面は、
図3A~
図3Dで上述したデバイス10Bとともに使用される保護シールドアセンブリ600を示している。
図8A1は分解図であり、
図8A2は組立後の側面図である。図示のように、2つの触覚部102Fがデバイス10Bの取付部分に取り付けられ、それにより眼球水晶体嚢内でデバイス10Bを位置決めして固定することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリが、IOL保持デバイスをカプセル化する1つの単一体構成を含む。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリが、IOL保持デバイスの様々な部分または運動システムの少なくとも可動部分に取り付けられる2以上の部品を含む。いくつかの実施形態では、2以上の部品が保護シールドデバイス/アセンブリを形成する場合、2以上の部品が互いに組み合わされて一体化された単一体シールドを形成する。いくつかの実施形態では、2以上の部品が、直接または間接的に、IOL保持デバイスのステータ部分の前面および任意にはステータ部分の背面にも取り付けられる。ステータ部分の各面への取り付けは、接着、溶着または他の適切な手段によって行うことができる。
【0156】
説明例では、保護シールドアセンブリ600が、デバイス10Bのステータ部分の前面および背面にそれぞれ取り付けられる前側(前面)部分602Aおよび後側(背面)部分602Bを含む。これによって、運動システム全体が包囲されて保護される。
【0157】
本明細書に記載の保護シールドデバイス/アセンブリは、透明な光学窓を有し、それにより眼の外側から網膜に向かって光がIOLを通過することができるように構成されている。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリの前(入口)面および/または背(出口)面は、光が中断/干渉されることなく、通過することができるように構成されている。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリの前(入口)面および/または背(出口)面が、入射光および出射光に干渉して、IOLの機能性を高めるように構成される。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリが、1または複数の光学面を含む。
【0158】
この例では、部品602A、6020Bが、光がIOLを通過して網膜に向かうことを可能にする透明な光学窓を形成する透明材料から作られている。部品602Aは曲面602ASを有し、部品602Bは曲面602BSを有する。
【0159】
本明細書に記載の保護シールドデバイス/アセンブリは、エネルギー源ESからのエネルギーが、運動システムの少なくともアクチュエータに向かって途切れることなく通過して、その作動を可能にするように構成されている。
【0160】
本明細書に記載の保護シールドデバイス/アセンブリは、様々な適切な生体適合性材料から製造することができる。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリが、眼内レンズを製造するために一般的に使用される材料と同じ材料から全体的または部分的に製造される。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリが、眼内への挿入を容易にするために折り畳むことができ、かつ歪むことなく元に戻すことができる可撓性材料および/または弾性材料から全体的または部分的に作られる。
【0161】
いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリがポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリがすべてPMMAから作られている。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリの一部またはすべてが疎水性PMMAから作られている。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリの一部またはすべてが親水性PMMAから作られている。いくつかの実施形態では、保護シールドデバイス/アセンブリの一部またはすべてがシリコンから作られている。
【0162】
本明細書に記載の保護シールドデバイス/アセンブリは、シールドとデバイスの組合せに更なる靭性および/または剛性を提供することができ、これによりデバイスの設計の柔軟性が可能になる。例えば、これにより、ステータおよび/またはロータおよび/または運動システムのより薄い部品を使用することが可能になり、その結果、水晶体嚢内へのIOL保持デバイスの挿入が容易になる。
【0163】
図8B1および
図8B2は、保護シールドデバイス/アセンブリの別の非限定的な例を示している。
図8B1は組立後のシールドとデバイスの組合せの斜視図であり、
図8B2は分解図である。この例では、保護シールドデバイス600Bが、IOLを有するデバイス10Bを包み込み、カプセル化している。保護シールドデバイス600Bは、当該技術分野において公知の手段、例えば、クリップ、雄雌取付などによって互いに取り付け可能な前面部分602BAおよび背面部分602BBを含む。デバイス10Bは、保護シールドデバイス600Bの内部に封入されているため、この非限定的な例では、前面部分602BAなど、保護シールドデバイスの1または複数の部分に触覚部を含ませることができる。
【0164】
図8A1~
図8A2および
図8B1~
図8B2の両方の非限定的な例において、保護シールドデバイス/アセンブリは、例えば
図4Bにおいて上述した前面カバーおよび背面カバーと同様に、軸方向(光軸方向)におけるロータ/ステータ/運動システムの変位を制限/防止するカバーとしても機能する。これにより、IOL保持デバイスに含まれる機能部品を削減することができる。
【0165】
図8C1および
図8C2は、保護シールドデバイス/アセンブリの別の非限定的な例を示している。
図8C1は斜視分解図であり、
図8C2は保護シールドデバイス/アセンブリ600Cの前面部分および背面部分の側面図である。保護シールドデバイス/アセンブリ600Cは、デバイス10Bのステータ部分に間接的に取り付けられるように構成された前面部分600CAおよび背面部分600CBを含み、それらが、軸方向に沿ったIOL保持デバイスの変位を制限するためにステータ部分の前面および背面にそれぞれ取り付けられる前面カバー500Hおよび背面カバー400Hに取り付けられている。上述した取り付けは、いずれも接着、溶着などにより行われる。
図8C2に示すように、前面部分600CAおよび背面部分600CBは、平坦な外面602CAS、602CBSをそれぞれ含み、IOLを通過する光との光学的干渉を最小限に抑えることができる。
【0166】
図8D1および
図8D2を参照すると、保護シールドデバイス/アセンブリの別の非限定的な例が示されている。
図8D1は斜視分解図であり、
図8D2は、内部にIOLおよび保持デバイスが収容された保護シールドデバイス/アセンブリ600Dの断面図である。保護シールドデバイス/アセンブリ600Dは、前面(前方)部分602DA、背面(後方)部分602DBおよび側面部分602DCを含み、それらが、互いに取り付けられるように構成され、IOL2およびIOL保持デバイス10Iを覆い囲む筐体を形成している。側面部分602DCは、眼嚢内への埋込を容易にする2つの触覚部602Iを含む。この例または本明細書の他の例において、側面部分は、前面または背面部分/カバーのいずれか、または両方の一体部品を形成することができることに留意されたい。この非限定的な例は、軸方向に沿ったIOL保持デバイスの変位を制限することができる別の方法を示している。図示のように、IOL2には、その外周に沿って溝IOLGが形成されている。デバイス10Iのロータ部分200Iは、溝IOLGの内部に挿入/収容されるように構成され、ステータ部分100Iの遠位(内側)部分も、溝IOLGの内部に挿入されるように構成され、一方、ステータ部分の近位側(外側)は、保護アセンブリ600Dの側面部分602DCに固定的に取り付けられている。この場合、運動システム300Iも溝IOLG内に配置される。記載の構成は、IOL2を軸方向に安定して保持し、軸方向に沿ったIOL2のずれを防止すると同時に、光軸周りの安定した回転を可能にする。
【0167】
いくつかの実施形態では(この例に限らない)、保護シールドアセンブリが1または複数の穴/チャネルを含み、それにより、フィブリンなどの他の成分が保護シールドの内側に入るのを阻止して可動部品との相互作用および可動部品への損傷を防止しながらも、保護シールドの筐体の内側と外側との間で房水などの特定の流体の通過/流れを可能にしている。また、穴/チャネルは、折り畳みおよび埋込の前に内部ボリュームを生理学的液体で満たすことができるため、圧力安定性を促進することができる。また、液体は、埋込後の折り畳み解除を容易にする。この非限定的な例では、前面カバーおよび背面カバーが、そのような穴/チャネル602DH1、602DH2をそれぞれ含む。
【0168】
図8E1および
図8E2を参照すると、保護シールドデバイス/アセンブリの別の非限定的な例が示されている。
図8D1は分解図であり、
図8D2は保護シールドデバイス/アセンブリ600Eの断面図である。この例では、保護シールドデバイス/アセンブリ600Eが、側面部分602ECのみを含み、その側面部分が、眼嚢内への埋込を容易にする2つの触覚部602Jを含む。この非限定的な例では、
図8D1および
図8D2の例と同様の別の方法を使用して、軸方向に沿ったIOL保持デバイスの変位を制限している。図示のように、IOL3には、その外周に沿って溝IOLJが形成されている。デバイス10Jのロータ部分200Jは、溝IOLJの内部に挿入されるように構成され、ステータ部分100Jの遠位(内側)部分も、溝IOLGの内部に挿入されるように構成され、一方で、ステータ部分の近位(外側)部分は、保護アセンブリ600Eの側面部分602ECの内側に形成された溝604Jに受け入れられている。この場合、運動システム300Jも溝IOLJ内に配置される。このような構成により、IOL3が軸方向に安定して保持され、軸方向に沿ったIOL3のずれが防止されるとともに、光軸回りの安定した回転が可能となる。
【0169】
図示のように、この例の保護シールドアセンブリには、前の例で説明した前面カバーおよび背面カバーが含まれていない。運動システム300Jは、溝IOLJ内に封入されることによって保護され、さらに、
図8E2のクローズアップ図に示すように、IOL2の周縁を側面部分602ECの内側に所定の近接位置で可能な限り近く保つことによって保護される。所定の近接位置は、最小限の摩擦で回転運動を可能にしながらも、フィブリンおよび他の不要な生体組織の可動部分への侵入を防止するように選択される。
【0170】
図8F1~
図8F3は、保護シールドデバイス/アセンブリの別の非限定的な例を示している。
図8F1は分解図であり、
図8F2および
図8F3は、IOLを内部に組み込んだ保護シールドデバイス/アセンブリ600Fの断面図である。この例では、保護シールドデバイス/アセンブリ600Fが前面部分602FAおよび背面部分602FBを含み、それらが、互いに取り付けられ、IOL4およびIOL保持デバイス10Kを内部に取り囲むように構成されている。前面部分602FAには、眼嚢内への埋込を容易にする2つの触覚部602Kが取り付けられている。この非限定的な例では、IOL4は、保持デバイス10Kのロータ部分200Kを内部に受け入れるために、その光学的側面IOL4S1の1つがカットされている。運動システム300Kは、一方の面がIOL4により覆われ、他方の面が露出している。この構成により、
図8D1~
図8E2で説明した例よりもIOL4の光学領域を大きくすることができ、製造が容易になり、IOLの光学特性がより保持される。
図8F3を
図8F2と比較すると、2つのリング状の部材606ER1、606ER2を追加することにより、軸方向における可動部品およびIOLの変位を制限し、少なくともレンズの反対側で、運動システムをさらに保護することができる。2つの部材は、ステータ部分100Kの両側に取り付けられ、ステータ部分の内側を越えて遠位方向に延びて、ステータの内側遠位側と接するロータ部分200Kの外側も2つの部材の間に位置するようになっており、これにより、ロータ部分の軸方向へのずれが、それに取り付けられるIOL4とともに防止される。
【0171】
図8G1および
図8G2は、保護シールドデバイス/アセンブリ600Gのさらに別の例を示している。
図8G1は、分解図であり、
図8G2は、保護シールドデバイス/アセンブリ600Gの断面図である。
図8E1および
図8E2の例と同様に、この例では、保護シールドデバイス/アセンブリ600Gが、側面部分602GCのみを含み、その側面部分が、眼嚢の内部への埋込を容易にする2つの触覚部602Lを含む。この非限定的な例では、
図8E1および
図8E2の例と同様の別の方法を使用して、運動システム300Lを保護しながら、軸方向に沿ったIOL保持デバイスの変位を制限する。図示のように、IOL5には、その外周に沿って溝IOLLが形成されている。デバイス10Lのロータ部分200Lは、その内側が溝IOLLの内部に部分的に挿入されて固定され、その外側が軸方向の動きを防止するために側面部分602GCの溝604Lの内部に部分的に挿入されるように構成されている。ステータ部分100Lは、側面部分602GCの溝604L内に受け入れられている。IOL5の外周側および側面部分602GCの内周側は、側面部分602GCの内周側がIOL5の外周側の内部に雄雌構成で受け入れられるように、対向して整合する形でカット/面取りされ、側面部分とIOLとの間に所定の重なりが形成されている。側面部分の内周側とIOLの外周側との間のこの重なりは、溝604Lの内部に安全に位置する運動システム300Lを遮蔽する一方で、IOLの妨げのない回転を可能にする最小限の摩擦を維持することができる。ここでも、
図8E1および
図8E2の例と同様に、フィブリンや他の不要な組織の侵入から運動システムを溝内で完全に保護するため、保護シールドアセンブリには、前の例で説明した前面および背面カバーが含まれていない。
【0172】
説明した構成により、IOL5が軸方向に安定して保持され、軸方向に沿ったIOL5のずれが防止されると同時に、光軸周りの安定した回転が可能となる。このように、本発明は、IOLが埋め込まれた後に、IOLをその光軸周りで制御可能かつ正確に遠隔変位させることにより、IOLの位置を調整して適切に機能させるための強力な技術を提供することが理解されよう。
【国際調査報告】