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特表2025-502423ネコにおける貧血の治療のためのモリデュスタット製剤および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ネコにおける貧血の治療のためのモリデュスタット製剤および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20250117BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250117BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250117BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250117BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/44
A61K31/5377
A61P43/00 111
A61K9/14
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/24
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/08
A61P7/06
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543130
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 US2022045207
(87)【国際公開番号】W WO2023140901
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/301,881
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516001834
【氏名又は名称】エランコ・ユーエス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Elanco US Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】508270727
【氏名又は名称】エランコ アニマル ヘルス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Elanco Animal Health GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ベディース,ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】ベーゲル,アネット
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ,ザムエル
(72)【発明者】
【氏名】フラーツ,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュースケン,リカルダ
(72)【発明者】
【氏名】ピュッケ,シモーネ・マレーネ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,フランツィスカ
(72)【発明者】
【氏名】オルロヴィウス,アン-カトリーン・ローラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA30
4C076BB01
4C076BB02
4C076DD37R
4C076DD37S
4C076DD38R
4C076DD39S
4C076DD41R
4C076DD43S
4C076DD45R
4C076DD45S
4C076DD46G
4C076DD59S
4C076DD63S
4C076EE51
4C076EE53
4C076EE54
4C076FF02
4C076FF09
4C076FF12
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF61
4C076FF63
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA52
4C084MA57
4C084NA14
4C084ZA55
4C084ZA81
4C084ZC20
4C084ZC61
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA13
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA57
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZC20
4C086ZC61
(57)【要約】
ネコにおける貧血の治療のためのモリデュスタットおよび油を含む医薬組成物および関連する使用方法が記載されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤および油を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤が、式(I)の化合物
【化1】
またはその塩、立体異性体、互変異性体、もしくはN-オキシドを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
式Iの前記化合物が、式(II)を有する塩の形態であり、
【化2】
Mが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、銅、銀、亜鉛、鉄、アンモニウム、および置換アンモニウムからなる群から選択され、前記水素原子のうちの一つ~四つがC-C-アルキルで置換され、
mが、前記カチオンの前記それぞれの正電荷を示し、1、2、または3、好ましくは1であり、nが、前記対アニオンの前記それぞれの化学量論的量を示し、1、2、または3、好ましくは1であり、式中、nが、前記式(II)を有する前記塩が非荷電となるように、mに等しい、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤が、式(IIA)の化合物。
【化3】
【請求項5】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤が、ナトリウム塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤が、モリデュスタットを含むか、それらからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤が、モリデュスタットナトリウムを含むか、それらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を含む微粒子化粒子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記微粒子化粒子が、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40mμ以下、または約30μm以下のD90によって特徴付けられる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記微粒子化粒子が、約20μm~約70μm、約20μm~約60μm、約20μm~約50μm、約20μm~約40μm、または約20μm~約30μmであるD90によって特徴付けられる、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記微粒子化粒子が、約0.1μm~約10μm、約0.2μm~約10μm、または約0.2~約5μmであるD10によって特徴付けられる、請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記微粒子化粒子が、約1μm~約20μm、約1μm~約15μm、約1μm~約10μm、約5μm~約20μm、約5μm~約15μm、約5μm~約10μm、約10~約20μm、または約10~約15μmであるD50によって特徴付けられる、請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記微粒子化粒子が実質的に単一モードの粒子サイズ分布によって特徴付けられる、請求項8~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度が、約1.0%~20%(m/v)である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度が、約1.0%~約10%(m/v)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度が、約1.0%~約5.0%(m/v)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度が、約1.0%、1.25%、1.50%、1.75%、2.0%、2.25%、2.50%、2.75%、3.0%、3.25%、3.50%、3.75%、4.0%、4.25%、4.50%、4.75%、または5.0%(m/v)である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度が、約1.5%~約2.5%(m/v)、約2.0%~約4.5%(m/v)、約2.0%~約3.0%(m/v)、約1.0%~約3.0%(m/v)、または約2.0%~約5.0%(m/v)である、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度が、約2.5%(m/v)である、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記油が、アーモンド油、杏仁油、キャノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、亜麻仁油、グレープ油、大麻油、トウモロコシ油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ゴマ種油、大豆油、ヒマワリ油、アザミ油、キャノーラ油、ぬか油、小麦胚油、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記油が、変性アーモンド油、変性杏仁油、変性キャノーラ油、変性ヒマシ油、変性ココナッツ油、変性綿実油、変性亜麻仁油、変性グレープ油、変性大麻油、変性トウモロコシ油、変性オリーブ油、変性パーム油、変性ピーナッツ油、変性ゴマ種油、変性大豆油、変性ヒマワリ油、変性アザミ油、変性菜種油、変性ぬか油、変性小麦胚油、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含み、前記変性が、アルコール分解、好ましくはグリセロール、プロピレングリコール、または低分子ポリエチレングリコールを使用して得られる、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記油がヒマワリ油を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記油が変性トウモロコシ油を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物が魚油をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物が、サケ油、タラ肝油、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの魚油をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記魚油が、約0.01%~約5%(w/w)の量である、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記魚油が、約0.01%~約1.5%(w/w)の量である、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記魚油が、約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、または5%(w/w)の量である、請求項24~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記組成物が増粘剤をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記増粘剤が、C12~C24脂肪酸を有するグリセロールエステルを含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記グリセロールエステルが、モノエステル、ジエステル、トリエステル、またはそれらの混合物である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記増粘剤が、ジベヘン酸グリセロールを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記増粘剤が、約0.1%~約10%(w/w)の量である、請求項29~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記増粘剤が、約0.1%~約8%(w/w)の量である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記増粘剤が約0.5%~約5%(w/w)の量である、請求項33または34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記増粘剤が約0.5%~約2.5%(w/w)の量である、請求項33~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記増粘剤が、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%(w/w)の量である、請求項33~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記増粘剤が、約1.0%(w/w)の量である、請求項33~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記組成物が、抗酸化剤をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記組成物が、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、レシチン、没食子酸プロピル、トコフェロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの抗酸化剤をさらに含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記抗酸化剤が、約0.01%~約2%(w/w)の量である、請求項39または40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記抗酸化剤が、約0.01%~約1.5%(w/w)の量である、請求項39~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記抗酸化剤が、約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、または2%(w/w)の量である、請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記組成物が、防腐剤をさらに含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記組成物が、エタノール、プロピレングリコール、ブタノール、クロロブタノール、安息香酸、ソルビン酸、パラ-ヒドロキシ安息香酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの防腐剤をさらに含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記防腐剤が、約0.01%~約2%(w/w)の量である、請求項44または45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記防腐剤が、約0.01%~約1.5%(w/w)の量である、請求項44~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記防腐剤が、約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、または2%(w/w)の量である、請求項44~47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
医薬組成物であって、
約0.1%~約20%、任意選択的に約0.5%~約10%(w/w)の量の本明細書に記載の低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤と、
約50%~約99.8%、任意選択的に約70%~約98.97%(w/w)の量の油と、
任意選択的に、約0.01%~約5%、任意選択的に約0.01%~約1.5%(w/w)の量の魚油と、
任意選択的に、約0.1%~約10%、任意選択的に約0.5%~約5%(w/w)の量の増粘剤と、
任意選択的に、約0.01%~約2%、任意選択的に約0.01%~約1.5%(w/w)の量の抗酸化剤と、
任意選択的に、約0.01%~約2%、任意選択的に約0.01%~約1.5%(w/w)の量の防腐剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項50】
前記組成物が、経口投与、舌下/口腔投与、またはそれらの組み合わせのために製剤化される、請求項1~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記組成物が、経口投与用に製剤化される、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記組成物が、懸濁液、エマルション、スラリー、分散液、または溶液である、請求項1~51のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記組成物が懸濁液である、請求項1~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記組成物が、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、潤滑剤、乳化剤、安定剤、溶媒、希釈剤、緩衝液、界面活性剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
貧血を治療するための薬剤の製造に使用するための、請求項1~54のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項56】
貧血の治療に使用するための、請求項1~54のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記貧血が、非再生性貧血である、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記貧血が、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、化学療法誘発性貧血(CIA)、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、または溶血性貧血である、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記貧血が、慢性腎臓病(CKD)に関連する、請求項56~58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
エリスロポエチンを増加させる方法であって、請求項1~54のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項61】
貧血を治療する方法であって、請求項1~54のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項62】
前記貧血が、非再生性貧血である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記貧血が、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、化学療法誘発性貧血(CIA)、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、または溶血性貧血である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記医薬組成物が、1日1回投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記医薬組成物が、少なくとも28日間連続で1日1回投与される、請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記医薬組成物が、前記28日間連続の投与後に、1日1回断続的に投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記医薬組成物が、28日間連続の投与の少なくとも3日後、少なくとも4日後、少なくとも5日後、少なくとも6日後、少なくとも7日後、少なくとも8日後、少なくとも9日後、少なくとも10日後、または少なくとも14日後に投与されない、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
前記それを必要とする対象が哺乳動物である、請求項61~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記対象がネコである、請求項61~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物が経口投与される、請求項61~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記組成物が、約0.5mg/L以上、約1mg/L以上、1.5mg/L以上、2mg/L以上、2.5mg/L以上、3mg/L以上、または約0.5mg/L~約5mg/Lの前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の最大血漿濃度(Cmax)を提供するのに十分な用量で投与される、請求項61~70のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2022年1月21日に出願された米国仮出願第63/301,881号に対する優先権を主張する国際特許出願であり、その開示は、その全体として本明細書で援用される。
【背景分野】
【0002】
ネコの慢性腎臓病(CKD)に関連する貧血は、主に腎臓におけるエリスロポエチン(EPO)産生の減少によって引き起こされる。EPOの産生は、低酸素誘導因子(HIF)によって制御される。高レベルのHIFは、低酸素条件で発生するEPO産生を増加させる。CKDでは、欠陥のある腎臓の代謝活性の低下が相対的な腎過酸素症につながり、したがって、保存されたEPO制御機構にもかかわらず、EPO産生が減少する。したがって、慢性腎臓病(CKD)を有するネコは、正常な赤血球レベルを維持するのに十分なEPOを産生することができない。したがって、腎性貧血は、疾患進行と共に悪化するCKDの一般的かつ重篤な合併症である。EPO産生を刺激する化合物、およびCKDによる貧血を治療または管理するための方法に対するニーズが依然として存在する。口当たりがよく、ネコへの送達の改善を提供する、安定した製剤に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、内在性エリスロポエチン産生を増加させる低酸素誘導因子-プロリルヒドロキシラーゼ(HIF-PH)阻害剤(例えば、モリデュスタットまたはその塩)を含む様々な組成物、ならびにかかる組成物を調製および使用する方法を提供する。
【0004】
例えば、医薬組成物が本明細書で提供される。
【0005】
本明細書に記載の組成物(例えば、医薬組成物)は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤および油を含み得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(I)の化合物
【化1】
またはその塩、立体異性体、互変異性体、もしくはN-オキシドを含む。
【0006】
式Iの化合物は、式(II)を有する塩の形態であってもよく、
【化2】
式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、銅、銀、亜鉛、鉄、アンモニウム、または置換アンモニウムであり、水素原子のうちの一つ~四つがC-C-アルキルによって置き換えられ、mは、カチオンのそれぞれの正電荷を示し、1、2、または3、好ましくは1であり、nは、対アニオンのそれぞれの化学量論的量を示し、1、2、または3、好ましくは1であり、nは、式(II)を有する塩が非荷電となるように、mに等しい。
【0007】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(IIA)の化合物を含み得る。
【化3】
【0008】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、ナトリウム塩を含み得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、モリデュスタットを含み得る、またはそれからなり得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、モリデュスタットナトリウムを含むか、またはそれからなり得る。
【0009】
医薬組成物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を含む微粒子化粒子を含み得る。微粒子化粒子は、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、または約30μm以下のD90によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、約20μm~約70μm、約20μm~約60μm、約20μm~約50μm、約20μm~約40μm、または約20μm~約30μmであるD90によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、約0.1μm~約10μm、約0.2μm~約10μm、または約0.2~約5μmであるD10によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、約1μm~約20μm、約1μm~約15μm、約1μm~約10μm、約5μm~約20μm、約5μm~約15μm、約5μm~約10μm、約10~約20μm、または約10~約15μmであるD50によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、実質的に単一モードの粒子サイズ分布によって特徴付けられ得る。
【0010】
本明細書に記載の医薬組成物では、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤(例えば、モリデュスタットまたはモリデュスタットナトリウム)の濃度は、約1.0%~20%(m/v)であり得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度は、約1.0%~10%(m/v)であり得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度は、約1.0%~5.0%(m/v)であり得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度は、約1.0%、1.25%、1.50%、1.75%、2.0%、2.25%、2.50%、2.75%、3.0%、3.25%、3.50%、3.75%、4.0%、4.25%、4.50%、4.75%、もしくは5.0%(m/v)、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度であり得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度は、約1.5%~2.5%(m/v)、2.0%~4.5%(m/v)、2.0%~3.0%(m/v)、1.0%~3.0%(m/v)、または2.0%~5.0%(m/v)であり得る。例えば、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の濃度は、約2.5%(m/v)であり得る。
【0011】
本明細書に記載の医薬組成物は、アーモンド油、杏仁油、キャノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、亜麻仁油、グレープ油、大麻油、トウモロコシ油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ゴマ種油、大豆油、ヒマワリ油、アザミ油、キャノーラ油、ぬか油、小麦胚油、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含み得る油を含むことができる。
【0012】
本明細書に記載の医薬組成物は、変性アーモンド油、変性杏仁油、変性キャノーラ油、変性ヒマシ油、変性ココナッツ油、変性綿実油、変性亜麻仁油、変性グレープ油、変性大麻油、変性トウモロコシ油、変性オリーブ油、変性パーム油、変性ピーナッツ油、変性ゴマ種油、変性大豆油、変性ヒマワリ油、変性アザミ油、変性菜種油、変性ぬか油、変性小麦胚油、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含み得る油を含むことができ、変性は、アルコール分解、好ましくはグリセロール、プロピレングリコール、または低分子ポリエチレングリコールを使用して得られる。油はヒマワリ油を含むことができる。油は、変性トウモロコシ油を含むことができる。
【0013】
本明細書に記載の医薬組成物は、魚油をさらに含み得る。組成物は、サケ油、タラ肝油、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの魚油をさらに含み得る。魚油は、約0.01%~5%(w/w)の量とすることができる。魚油は、約0.01%~1.5%(w/w)の量とすることができる。魚油は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、もしくは5%(w/w)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度であり得る。
【0014】
本明細書に記載の医薬組成物は、増粘剤をさらに含み得る。増粘剤は、C12~C24脂肪酸を有するグリセロールエステルを含み得る。グリセロールエステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、またはそれらの混合物であり得る。増粘剤は、ジベヘン酸グリセロールを含み得る。増粘剤は、約0.1%~10%(w/w)の量とすることができる。増粘剤は、約0.1%~8%(w/w)の量とすることができる。増粘剤は、約0.5%~5%(w/w)の量とすることができる。増粘剤は、約0.5%~2.5%(w/w)の量とすることができる。増粘剤は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%(w/w)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度とすることができる。増粘剤は、約1.0%(w/w)の量とすることができる。
【0015】
本明細書に記載の医薬組成物は、抗酸化剤をさらに含み得る。例えば、本明細書に記載の組成物は、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、レシチン、没食子酸プロピル、トコフェロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの抗酸化剤をさらに含むことができる。抗酸化剤は、約0.01%~2%(w/w)の量とすることができる。抗酸化剤は、約0.01%~1.5%(w/w)の量とすることができる。抗酸化剤は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、もしくは2%(w/w)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度であり得る。
【0016】
本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤をさらに含み得る。例えば、本明細書に記載の組成物は、エタノール、プロピレングリコール、ブタノール、クロロブタノール、安息香酸、ソルビン酸、パラ-ヒドロキシ安息香酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの防腐剤をさらに含み得る。防腐剤は、約0.01%~2%(w/w)の量とすることができる。防腐剤は、約0.01%~1.5%(w/w)の量とすることができる。防腐剤は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、もしくは2%(w/w)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度であり得る。
【0017】
医薬組成物は、0.1%~20%の量、任意選択的に0.5%~10%(w/w)の本明細書に記載の低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、50%~99.8%の量、任意選択的に70%~98.97%(w/w)の油、任意選択的に、0.01%~5%の量、任意選択的に0.01%~1.5%(w/w)の魚油、任意選択的に、0.1%~10%の量、任意選択的に0.5%~5%(w/w)の増粘剤、任意選択的に、0.01%~2%の量、任意選択的に0.01%~1.5%(w/w)の抗酸化剤、および任意選択的に、0.01%~2%の量、任意選択的に0.01%~1.5%(w/w)の防腐剤を含み得る。
【0018】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口投与、舌下/口腔投与、またはそれらの組み合わせのために製剤化され得る。例えば、本明細書に記載の組成物は、経口投与用に製剤化することができる。
【0019】
本明細書に記載の医薬組成物は、懸濁液、エマルション、スラリー、分散液、または溶液であり得る。例えば、本明細書に記載の組成物は、懸濁液であり得る。
【0020】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、潤滑剤、乳化剤、安定剤、溶媒、希釈剤、緩衝液、界面活性剤、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0021】
本明細書に記載の医薬組成物は、貧血を治療するための薬剤の製造における使用に(例えば、慢性腎臓病(CKD)に関連する貧血を治療するための薬剤の製造における使用に)使用することができる。
【0022】
本明細書に記載の医薬組成物は、貧血の治療に使用するためのものであり得る。貧血は、非再生性貧血であり得る。貧血は、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、化学療法誘発性貧血(CIA)、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、または溶血性貧血であり得る。貧血は、慢性腎臓病(CKD)と関連し得る。
【0023】
記載されるように、様々な使用方法も本明細書に提供される。例えば、エリスロポエチンを増加させるための方法は、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。さらに、貧血を治療するための方法は、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。記載されるように、貧血は、非再生性貧血であり得る。貧血は、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、化学療法誘発性貧血(CIA)、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、または溶血性貧血であり得る。貧血は、慢性腎臓病(CKD)と関連し得る。
【0024】
本明細書に記載の方法では、医薬組成物は、1日1回投与され得る。医薬組成物は、少なくとも28日間連続で1日1回投与することができる。医薬組成物は、28日間連続の投与後に、1日1回断続的に投与することができる。医薬組成物は、28日間連続の投与の少なくとも3日後、少なくとも4日後、少なくとも5日後、少なくとも6日後、少なくとも7日後、少なくとも8日後、少なくとも9日後、少なくとも10日後、または少なくとも14日後に投与されない。
【0025】
本明細書に記載の方法では、それを必要とする対象は哺乳動物であり得る。さらに、対象はネコであり得る。
【0026】
本明細書に記載の方法では、医薬組成物は、経口投与され得る。本明細書に記載の医薬組成物は、約0.5mg/L以上、約1mg/L以上、1.5mg/L以上、2mg/L以上、2.5mg/L以上、3mg/L以上、または約0.5mg/L~約5mg/Lの低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の最大血漿濃度(Cmax)を提供するのに十分な用量で投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、血漿ヘマトクリット値に対するモリデュスタットナトリウムの異なる用量および製剤の効果を示し、平均(±標準偏差)ヘマトクリット(HCT)は98日間の経過期間にわたるものである。治療は、それぞれSD15(10%懸濁液で治療された群)およびSD23(5%懸濁液で治療された群)で停止した。
図2図2は、血漿ヘマトクリット値に対するモリデュスタットナトリウムの異なる用量および製剤の効果を示す。群平均±SDヘマトクリットの時間経過は、28日間で提示されている。
図3図3は、試験0日目および試験7日目のエリスロポエチンの平均(±標準偏差)血漿濃度を示す。モリデュスタットナトリウム油性懸濁液を毎日投与した。
図4図4は、微粒子化モリデュスタットで製剤化されたモリデュスタットナトリウム油性懸濁液の粒子サイズ分布ヒストグラムを示す。
図5図5は、非微粒子化モリデュスタットで製剤化されたモリデュスタットナトリウム油性懸濁液の粒子サイズ分布ヒストグラムを示す。
図6図6は、48時間にわたる微粒子化製剤(円)および非微粒子化製剤(三角形)の沈降分析のグラフを示す。
【発明の詳細な説明】
【0028】
主題の開示がさらに説明される前に、本開示は、特定の実施形態の変形を行うことができ、依然として添付の特許請求の範囲内に収まり得るため、以下に記載される本開示の特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形への言及を含む。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。好ましい方法および組成物が記載されるが、本明細書に記載の内容と類似または同等の任意の方法および組成物を、本発明の実施または試験に使用することができる。
【0030】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤(HIF-PHI)を使用した貧血の治療
貧血、任意選択的に慢性腎臓病に関連する貧血は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤(HIF-PHI)の投与によって治療され得る。これらの阻害剤は、正常酸素条件下で低酸素誘導因子(HIF)の分解における決定因子であるプロリルヒドロキシラーゼを阻害することによって作用する薬剤クラスのメンバーである。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤または阻害剤を含む医薬組成物は、慢性腎臓病(CKD)に関連する非再生性貧血に罹患しているネコの治療に使用されてもよい。例えば、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、任意選択的にナトリウム塩として、2.5%(m/v)の油性懸濁液中で製剤化され、ネコにおける貧血(例えば、CKDに関連する貧血)の治療のために、体重1kg当たり5mgのHIF-PHIの割合で1日1回の経口投与に使用されてもよい。
【0031】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、好ましくは、以下の式(I)の化合物
【化4】
またはその塩、立体異性体、互変異性体、もしくはN-オキシドを含む。式(I)の化合物は、モリデュスタットとも呼ばれる。
【0032】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(II)を有する塩の形態である式(I)の化合物であってもよく、
【化5】
式中、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、銅、銀、亜鉛、鉄、アンモニウム、および置換アンモニウムからなる群から選択され、水素原子のうちの一つ~四つがC-C-アルキルで置換され、好ましくは、Mはナトリウムであり、
mは、カチオンのそれぞれの正電荷を示し、1、2、または3、好ましくは1であり、
nは、対アニオンのそれぞれの化学量論的量を示し、1、2、または3、好ましくは1であり、nは、式(II)を有する塩が非荷電となるように、mに等しい。
【0033】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(IIA)を有するナトリウム塩の形態であってもよく、
【化6】
これは、1-[6-(モルホリン-4-イル)ピリミジン-4-イル]-4-(1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-1H-ピラゾール-5-オレートナトリウムとしても知られている。
【0034】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(II)のカリウムまたはアンモニウム塩の形態であってもよく、これは1-[6-(モルホリン-4-イル)ピリミジン-4-イル]-4-(1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-1H-ピラゾール-5-オレートカリウムまたは1-[6-(モルホリン-4-イル)ピリミジン-4-イル]-4-(1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-1H-ピラゾール-5-オレートアンモニウムとしても知られている。
【0035】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、モリデュスタットであってもよい。例えば、モリデュスタットは、2.5%(m/v)の油性懸濁液中のナトリウム塩として製剤化され、ネコにおける貧血の治療のために、体重1kg当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの割合で1日1回の経口投与に使用され得る。モリデュスタット、2-[6-(モルホリン-4-イル)ピリミジン-4-イル]-4-(1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-3-オンは、本明細書に記載のネコの慢性腎臓病に関連する貧血を治療する方法に使用され得る。
【0036】
治療方法
本開示は、貧血を治療または予防するための方法をさらに提供する。方法は、治療的または予防的に、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有効量を含む医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む。治療または予防される貧血は、慢性腎臓病と関連し得る。
【0037】
任意選択的に慢性腎臓病に関連する貧血を治療または予防するための方法は、その哺乳動物に、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤(例えば、モリデュスタットまたはその塩、例えば、モリデュスタットナトリウム)の治療有効量または予防有効量を含む医薬組成物を投与することを含み得る。本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、疾患または状態の発症を予防、改善、治療、または遅延するのに有効な、本明細書に開示される化合物の量を広く指す。「予防有効量」という表現は、障害の発症または進行を阻害するのに有効な、本明細書に開示される化合物の量を指す。
【0038】
任意選択的に慢性腎臓病に関連する貧血を治療するための方法は、その哺乳動物に、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有効量を含む医薬組成物を投与することを含んでもよい。
【0039】
貧血、任意選択的に非再生性貧血を治療または予防するための方法は、その哺乳動物に、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の治療有効量または予防有効量を含む医薬組成物を投与することを含んでもよい。
【0040】
貧血、任意選択的に非再生性貧血を治療するための方法は、その哺乳動物に、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有効量を含む医薬組成物を投与することを含んでもよい。
【0041】
貧血は、非再生性貧血であってもよい。貧血は、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、炎症疾患に関連する貧血、化学療法誘発性貧血(CIA)、または免疫介在性溶血性貧血(IMHA)であり得る。貧血は、慢性腎臓病(CKD)と関連していてもよい。
【0042】
エリスロポエチンを増加させるための方法は、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。
【0043】
本明細書に記載の医薬組成物は、1日1回投与され得る。本明細書に記載の医薬組成物は、少なくとも28日間連続で1日1回投与することができる。本明細書に記載の医薬組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日間、1日1回投与することができる。本明細書に記載の医薬組成物は、約1~28日の間、1日1回投与することができる。本明細書に記載の医薬組成物は、約1~7日、1~14日、1~21日、3~21日、16~28日、または14~21日の間、1日1回投与され得る。
【0044】
対象は哺乳動物であってもよい。例えば、哺乳動物はネコであってもよい。
【0045】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口投与され得る。
【0046】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有効量は、体重1kg当たり約5mgであってもよい。例えば、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有効量は、体重1kg当たり約1~10mgであってもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有効量は、体重1kg当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mgであってもよい。
【0047】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約1.0%~5.0%(m/v)の量で医薬組成物中に存在してもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約1.0%、1.25%、1.50%、1.75%、2.0%、2.25%、2.50%、2.75%、3.0%、3.25%、3.50%、3.75%、4.0%、4.25%、4.50%、4.75%、もしくは5.0%(m/v)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度であってもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約1.5%~2.5%(m/v)、2.0%~4.5%(m/v)、2.0%~3.0%(m/v)、1.0%~3.0%(m/v)、または2.0%~5.0%(m/v)の量であってもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約2.5%の量であってもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、モリデュスタットであり得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(I)、式(II)、式(IIA)またはその組み合わせを有する化合物であり得る。
【0048】
医薬組成物は、懸濁液、エマルション、スラリー、分散液、または溶液として製剤化されてもよい。医薬組成物は、懸濁液であってもよい。
【0049】
用量
本明細書に記載の医薬組成物は、当該技術分野で公知の様式で対象に投与される。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康、および体重、存在する場合は併用療法の種類、治療頻度、ならびに所望の効果の性質に依存する。
【0050】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、本明細書に記載の医薬組成物内の任意の好適な量で存在し得る。当業者であれば、用量および投与経路を含む様々な因子に応じて、医薬組成物中に含める好適な濃度の化合物を容易に決定することができる。本発明に有用な医薬組成物は、治療される対象の状態、障害、または疾患を治療または予防するのに有効な量の低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を含有し得る。
【0051】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約1.0%~5.0%(m/v)の量で医薬組成物中に存在してもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約1.0%、1.25%、1.50%、1.75%、2.0%、2.25%、2.50%、2.75%、3.0%、3.25%、3.50%、3.75%、4.0%、4.25%、4.50%、4.75%、もしくは5.0%(m/v)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度であってもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約1.5%~2.5%(m/v)、2.0%~4.5%(m/v)、2.0%~3.0%(m/v)、1.0%~3.0%(m/v)、または2.0%~5.0%(m/v)の量であってもよい。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、約2.5%の量であり得る。
【0052】
本明細書に記載の医薬組成物は、1日1回用量で投与されてもよく、または総1日用量は、1日2回、3回、または4回の分割用量で投与されてもよい。用量は、1週間、1か月、または数か月、3か月、6か月、9か月、もしくは12か月の過程にわたって、または当該技術分野で公知であり、かつ臨床的に関連すると決定される間隔にわたって投与され得る。用量は、対象の生涯を通して継続されてもよく、または臨床的判断が必要とされる場合は中止されてもよい。
【0053】
本明細書に記載の医薬組成物の1日用量は、1日当たり、対象当たり約1~約10mgの広い範囲にわたって変化してもよい。対象は動物であり得る。対象は哺乳動物であり得る。対象はネコであり得る。範囲は、1日当たり体重1kg当たり約1mg~10mgとすることができる。さらに、用量は、1日当たり約0.5~20mg/kg、1日当たり約1~10mg/kg、1日当たり約2.5~10mg/kg、1日当たり約5~10mg/kg、または1日当たり約2.5~7.5mg/kgであってもよい。本明細書に記載の医薬組成物の1日用量は、1日当たり、対象当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。他の動物の場合、1kgについて計算された用量が投与されてもよい。
【0054】
非限定的な例として、動物の治療は、本明細書に記載の医薬組成物の一回用量または定期的な用量として、一日当たり、対象当たり0.0001~約1,000mgであり得る。範囲は、より具体的には、一日当たり、対象について約0.001mg/kg~10mg/体重kg、1日当たり約0.1~100mg、約1.0~50mg、または約1.0~20mgであり得る。さらに、用量は、1日当たり約0.5~10mg/kg、1日当たり約1.0~5.0mg/kg、1日当たり5.0~10mg/kgであってもよい。
【0055】
用量はまた、血清濃度を達成する量であってもよい。
【0056】
本発明の医薬組成物は、数週間にわたって少なくとも週1回投与されてもよい。医薬組成物は、数週間~数か月にわたって少なくとも週1回投与されてもよい。医薬組成物は、4~8週間にわたって週1回投与されてもよい。医薬組成物は、4週間にわたって週1回投与されてもよい。医薬組成物は、1日1回投与されてもよい。
【0057】
投与経路
化合物を含む医薬組成物の有効量の投与経路および用量も開示される。本発明の化合物は、疾患の効果的な治療のための様々なプロトコルにおいて、他の医薬品と組み合わせて投与することができる。
【0058】
本明細書に開示される医薬組成物は、経口、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、腎内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣内、直腸、口腔、舌下、鼻内、イオン導入の手段、または経皮的手段を含むがこれらに限定されない経路によって投与されてもよい。本明細書に開示される医薬組成物は、注射によって投与されてもよい。本明細書に開示される医薬組成物は、経口投与されてもよい。
【0059】
対象
本明細書に記載の医薬組成物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の有益な効果を経験することができる任意の動物に投与することができる。そのような動物としては、ヒト、ならびにペットおよび家畜などの非ヒトが挙げられる。動物には、ヒト、ネコ、イヌ、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ロバ、ラバ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ラマ、およびハムスターが含まれてもよいが、これらに限定されない。動物はネコであってもよい。
【0060】
医薬組成物
上述のように、医薬組成物は、少なくとも一つの低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を含み、特に、本明細書に記載のモリデュスタット(すなわち、式(I)の化合物)、またはその塩、立体異性体、互変異性体、若しくはN-オキシドを含む。モリデュスタットは、塩として製剤化することができる。例えば、モリデュスタットは、ナトリウム塩として製剤化され得る。
【0061】
本明細書に記載の医薬組成物は、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝液、増粘剤、抗酸化剤、塩、親油性溶媒、界面活性剤、防腐剤、アジュバント、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の適切な補助剤のうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。こうした滅菌溶液を調製する実施例および方法は、当該技術分野で周知であり、REMINGTON’s PHARMACEUTICAL SCIENCES(Gennaro,Ed., 18th Edition,Mack Publishing Co. (1990))を含むがこれに限定されない、よく知られている文言に見出すことができる。化合物の投与方法、溶解性、および/または安定性に適した薬学的に許容可能な担体が、日常的に選択され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、当該技術分野で周知の薬学的活性物質に対する、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を広く指す。任意の従来の培地または薬剤が化合物と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。補助化合物も組成物に組み込まれ得る。
【0062】
医薬組成物は、界面活性剤を含んでもよい。適切な界面活性剤は両親媒性化合物である。脂肪酸を有するソルビタンのモノエステル、ジエステル、またはトリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシエチル化化合物、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、およびポロキサマーを界面活性剤として使用してもよい。ポリエトキシル化化合物とも呼ばれるポリオキシエチル化化合物は、例えばエチレンオキシドとの反応によって調製される。それらは、式-[O-CH-CH]-の一つ以上の連結単位を有する。特に言及され得るポリオキシエチル化化合物は、非イオン性両親媒性ポリオキシエチル化化合物、例えば、
-ポロキサマーであって、好ましくは100~5000g/molのモル質量を有し、特に好ましくは1000~3500g/molのモル質量を有する、ポロキサマーと、を含む。ポロキサマーは、エチレンオキシドおよびメチルオキシランのブロックコポリマーの国際的な一般名であり、
-非イオン性乳化剤とも呼ばれるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、好ましくは、例えばグリセロールポリエチレングリコールリシノール酸塩、
- ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、好ましくは、例えばポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート、
-マクロゴール15ヒドロキシステアリン酸などのポリオキシエチレン脂肪酸(=Solutol HS15、15molのエチレンオキシドおよび1molの12-ヒドロキシステアリン酸を反応させることによって得ることができる)、
-ヒドロキシポリエトキシドデカンなどのポリオキシエチレン脂肪アルコールである。
【0063】
脂肪酸または脂肪アルコールは、特に、少なくとも6個の炭素原子、および通常は30個以下の炭素原子を有する、対応する化合物を表す。
【0064】
医薬組成物は、増粘剤を含み得る。増粘剤は、0.1%~10%(w/w)、0.1%~8%(w/w)、0.5%~5%(w/w)、または0.5%~2.5%(w/w)の量であってもよい。医薬組成物は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%(w/w)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度での増粘剤であり得る。医薬組成物は、約1.0%(w/w)の量である増粘剤を含み得る。
【0065】
適切な増粘剤には、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、ベントナイト、カオリン、ペクチン、デンプン、加工デンプン、ワックス、寒天、パラフィン、ゼラチン、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、セチルアルコール、ステアリン酸塩、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸グリセリル、飽和または不飽和長鎖脂肪酸(C~C24、高分子量ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール2000)、グリセロールエステル、およびその組み合わせを含む。
【0066】
増粘剤は、グリセロールエステルであってもよく、好ましくは、C12-C24脂肪酸を有するグリセロールエステルであり、かつ/またはモノエステル、ジエステル、トリエステル、もしくはそれらの混合物である。増粘剤は、ジベヘン酸グリセロールであってもよい。ジベヘン酸グリセロールは、ジベヘン酸グリセリルまたはジベヘン酸グリセリンとも呼ばれる。
【0067】
医薬組成物は、抗酸化剤を含んでもよい。抗酸化剤は、0.01%~2%(w/w)、0.01%~1.5%(w/w)、0.5~2重量%、0.01%~1.5%(w/w)、0.001%~1%(w/w)、または0.01%~0.3%(w/w)の量であり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、もしくは2%(w/w)の量、またはこれらの割合のいずれかの範囲内の濃度での抗酸化剤を含み得る。
【0068】
適切な抗酸化剤には、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、レシチン、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム)、有機硫化物(シスチン、システイン、システアミン、メチオニン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオ乳酸)、フェノール(トコフェロール、ならびにビタミンEおよびビタミンE DPGS(d-アルファ-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩))、ブチル化ヒドロキシアニソール、 ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸(プロピル、オクチル、没食子酸プロピル、および没食子酸ドデシル)、有機酸(アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸)およびその塩およびエステルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、レシチン、没食子酸プロピル、およびトコフェロールからなる群から選択されてもよい。
【0069】
医薬組成物は、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、レシチン、没食子酸プロピル、トコフェロール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗酸化剤を含み得る。
【0070】
本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤を含み得る。適切な防腐剤としては、カルボン酸(ソルビン酸、プロピオン酸、安息香酸、乳酸)、フェノール(クレゾール、メチルパラベンなどのp-ヒドロキシ安息香酸エステル、プロピルパラベン)、脂肪族アルコール(ベンジルアルコール、エタノール、ブタノール)、第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、防腐剤は、エタノール、プロピレングリコール、ブタノール、クロロブタノール、安息香酸、ソルビン酸、およびパラ-ヒドロキシ安息香酸エステルであってもよい。メチル4-ヒドロキシベンゾエート、エチル4-ヒドロキシベンゾエート、およびプロピル4-ヒドロキシベンゾエートも、好ましいパラ-ヒドロキシ安息香酸エステルとして知られている。
【0071】
医薬組成物は、エタノール、プロピレングリコール、ブタノール、クロロブタノール、安息香酸、ソルビン酸、パラ-ヒドロキシ安息香酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される防腐剤を含み得る。
【0072】
本発明に有用な医薬賦形剤および添加剤にはまた、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、単糖類、二糖類、三糖類、テラ糖類、およびオリゴ糖類を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖類、および多糖類または糖ポリマーなどの誘導体化糖類)が挙げられるが、これらに限定されず、それらは単独でまたは1~99.99重量%の範囲もしくは体積の組み合わせで存在し得る。例示的なタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどの血清アルブミンが挙げられる。緩衝能力でも機能し得る代表的なアミノ酸成分としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
本発明での使用に適した炭水化物賦形剤としては、単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース、二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース、多糖類、例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、およびアルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
本明細書に記載の医薬組成物は、着色剤、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、懸濁剤、エタノール、キレート剤(例えば、EDTA)、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)、香味剤、水、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0075】
EDTAおよびEGTAなどのキレート剤は、凝集を低減するために医薬組成物に任意選択的に添加することができる。これらの添加剤は、ポンプまたはプラスチック容器を使用して医薬組成物を投与する場合に特に有用である。薬学的に許容可能な界面活性剤の存在は、組成物が凝集する傾向を軽減する。
【0076】
本明細書に記載の医薬組成物は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含むがこれらに限定されない乳化剤を含んでもよい。
【0077】
さらに、本明細書に記載の医薬組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(高分子糖)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、香味剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「Tween(登録商標)20」および「Tween(登録商標)80」などのポリソルベート、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、およびキレート剤(例えば、EDTAまたはEGTA)などの高分子賦形剤/添加剤を含み得る。本明細書に記載の医薬組成物での使用に好適なこれらおよび追加の公知の医薬賦形剤および/または添加剤は、例えば、REMINGTON: The SCIENCE & PRACTICE OF PHARMACY (19th ed., Williams & Williams (1995))およびPHYSICBMS’s DESK REFERENCE (52nd ed., Medical Economics (1998))に記載されるものなど、公知である。
【0078】
本開示は、安定した医薬組成物、ならびに防腐剤を含有する保存溶液および製剤、ならびに薬学的に許容可能な製剤中に本明細書に開示される少なくとも一つの化合物を含む、薬学的または獣医学的な使用に適した複数回使用の保存製剤を提供する。
【0079】
本明細書に開示される化合物はまた、リポソームの形態で投与され得る。当該技術分野で公知のように、リポソームは、一般的にリン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中に分散されるモノ層またはマルチ層水和液晶によって形成される。リポソームを形成することができる、任意の非毒性、生理学的に許容可能、および代謝可能な脂質を使用することができる。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤、またはそれらの組み合わせを含有し得る。好ましい脂質は、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)であり、天然および合成の両方である。リポソームを形成する方法は、当該技術分野で公知である(Prescott, ed., METH. CELL BIOL. 14:33 (1976))。リポソーム、作製方法、および使用方法は、米国特許第4,089,8091号(リポソームの調製のためのプロセス)、第4,233,871号(脂質小胞中の生物学的に活性な物質に関する方法)、第4,438,052号(混合されたミッセルを生成するためのプロセス)、第4,485,054号(大きな多層小胞)、第4,532,089号(巨大サイズのリポソームおよびその方法)、第4,897,269号(リポソーム薬物送達システム)、第5,820,880号(リポソーム製剤)に記載されている。
【0080】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、(希釈剤で希釈する前に)前濃縮物中に可溶化または懸濁され、希釈前に前濃縮物に添加され、希釈された前濃縮物に添加され、または前濃縮物と混合する前に希釈剤に添加され得る。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤はまた、治療効果のために、独立した剤形の一部として共投与することができる。任意選択的に、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、第一の可溶化量、および第二の非可溶化(懸濁)量で存在し得る。
【0081】
本明細書に記載の医薬組成物は、単位用量または複数回用量の容器、密封アンプル、およびバイアルで提示することができ、使用直前に滅菌液体担体、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0082】
医薬組成物で使用するための許容可能な液体担体としては、植物油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物は、最終製剤が約0.5%~5.0%(m/v)を含有するように、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を液体担体中に溶解または懸濁することによって調製することができる。
【0083】
錠剤またはカプセルの形態での経口投与については、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を、エタノール、グリセロール、水、またはそれらの組み合わせなどの経口かつ非毒性の薬学的に許容可能な不活性担体と組み合わせることができる。さらに、望ましいまたは必要な場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および着色剤も医薬組成物に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコースもしくはベータラクトースを含む天然糖、コーン甘味料、アカシア、トラガカント、もしくはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの剤形で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
経口投与については、医薬組成物は甘味料を含まない場合がある。甘味料としては、スクロース、フルクトース、サッカリンナトリウム、スクラロース(SPLENDA(登録商標))、ソルビトール、マンニトール、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の医薬組成物は、甘味料を実質的に含まなくてもよい。本明細書に記載の医薬組成物は、香味剤、例えば、バニラ、アニス、ハチミツ風味、またはそれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0085】
経口投与用に製剤化された本明細書に記載の医薬組成物は、水、グリセリン、および様々な組み合わせなどの希釈剤に加えて、着色剤、例えば、染料、天然着色剤または顔料と組み合わせることができる。当該医薬組成物を調製する方法は、REMINGTON’s PHARMACEUTICAL SCIENCES, Martin,E.W., ed., Mack Publishing Company, 19th ed. (1995)に記載されるその他の好適な医薬賦形剤及びその製剤を組み入れることができる。
【0086】
微粒子化
組成物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を含む微粒子化粒子を含み得る。微粒子化粒子は、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、または約30μm以下のD90によって特徴付けられる。微粒子化粒子は、約20μm~約70μm、約20μm~約60μm、約20μm~約50μm、約20μm~約40μm、または約20μm~約30μmであるD90によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、約0.1μm~約10μm、約0.2μm~約10μm、または約0.2~約5μmであるD10によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、約1μm~約20μm、約1μm~約15μm、約1μm~約10μm、約5μm~約20μm、約5μm~約15μm、約5μm~約10μm、約10~約20μm、または約10~約15μmであるD50によって特徴付けられ得る。微粒子化粒子は、実質的に単一モードの粒子サイズ分布によって特徴付けられ得る。
【0087】
「D10」および「Dx10」という用語は、体積で分布の10%がより小さい粒子サイズを有し、90%がより大きい粒子サイズを有する、測定された粒子の直径を説明する。「D50」および「Dx50」という用語は、体積で分布の50%がより小さく、50%がより大きい粒子サイズを有する、粒子の直径を説明する。「D90」および「Dx90」という用語は、体積で分布の90%がより小さく、10%がより大きい粒子サイズを有する、粒子の直径を説明する。
【0088】
低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の微粒子化は、油中のより大きな懸濁特性を可能にする。低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子の微粒子化は、凝集を有益に防止し、粒子が懸濁液中に緩く凝集したままであり、沈降速度を減少し、製品の貯蔵寿命全体を通して容易な再均質化を可能にすることが見出されている。例えば、微粒子化低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子は、非微粒子化粒子よりも長い懸濁液中に、例えば、1時間未満と比べて6時間にわたり懸濁液中に留まる。驚くべきことに、微粒子化粒子は、有意な沈降なしに、48時間にわたって懸濁液中に留まり得ることが見出された。したがって、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の微粒子化は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤のより一貫した予測可能な投与を提供する。
【0089】
発明者らは、増粘剤としてジベヘン酸グリセリルを使用したヒマワリ油中の微粒子化低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子の製剤が、懸濁液の予想外の改善をもたらしたことを発見した。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、発明者らは、ヒマワリ油およびジベヘン酸グリセリルによって形成されるオレオゲル様構造に製剤化された微粒子化低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子を見出した。ゲル化の概念は、不規則構造の概念に従う。増粘剤であるジベヘン酸グリセリルは、室温では固体であるが、40℃を超える温度ではヒマワリ油(一般に植物油)中で可塑化する極性脂肪である。この温度を超えると、二成分系ヒマワリ油およびジベヘン酸グリセリルが、透明な油性液体を形成する。冷却すると、ジベヘン酸グリセリルは、ヒマワリ油中でネットワーク様構造を形成する小さな結晶性粒子に再結晶し始める。この状況は、水性系におけるベントナイト構造機構と同等である。ジベヘン酸グリセリルの濃度が十分に高い時、オルガノゲルが形成され、部分的に凝集した結晶の三次元ネットワークがビヒクルの全体積を占める。濃度が低い時、粒子は緩い構造を形成し、ヒマワリ油内に浮動し、経時的にゆっくりと沈降する。次いで、この沈降構造は、カードハウス様構造において、ジベヘン酸グリセリルネットワーク内に沈降する微粒子化低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子に対する支持を提供する。次いで、微粒子化低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子およびジベヘン酸グリセリルの共沈降は、再分散が容易である。これらの不規則な粒子状オルガノゲルの多用途性は、増粘剤と支持された微粒子化低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤粒子との間の特定の物理化学的相互作用を必要としないという事実にある。
【0090】
モリデュスタットナトリウム油性懸濁液2.5%について導出された薬物動態データは、標的動物ネコにおける経口投与後に、高くほぼ完全なバイオアベイラビリティ(約80%)を示す。
【0091】
油性懸濁液
医薬組成物は、油性懸濁液として製剤化されてもよい。油は、アーモンド油、杏仁油、キャノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、亜麻仁油、グレープ油、大麻油、トウモロコシ油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ゴマ種油、大豆油、ヒマワリ油、アザミ油、キャノーラ油、ぬか油、小麦胚油、およびそれらの混合物であってもよい。油はヒマワリ油であってもよい。
【0092】
トウモロコシ油(コーン油)は、圧搾後または抽出後に任意選択的な精製によって、トウモロコシの種子から得られてもよい。好ましくは、トウモロコシ油は、脂肪酸の総量に基づいて、8.6%~16.5%(w/w)のパルミチン酸、最大3.3%(w/w)のステアリン酸、20%~42.2%(w/w)のオレイン酸、39.4%~65.6%(w/w)のリノール酸、0.5%~1.5%(w/w)のアラキジン酸、最大0.5%(w/w)のエイコセン酸、および最大0.5%(w/w)のベヘン酸を含む。
【0093】
ヒマワリ油は、機械的圧搾後または抽出後に任意選択的な精製によって、ヒマワリ種子から得られてもよい。好ましくは、ヒマワリ油は、脂肪酸の総量に基づいて、4%~9%(w/w)のパルミチン酸、1%~7%(w/w)のステアリン酸、14%~40%(w/w)のオレイン酸、および48%~74%(w/w)のリノール酸を含むことが好ましい。
【0094】
アザミ油(サフラワー油)は、圧搾後および/または抽出後の任意選択的な精製によって、ベニバナの種子(I型)から、またはベニバナのハイブリッドの種子(II型)から得られてもよい。好ましくは、I型画分から得られたアザミ油は、脂肪酸の総量に基づいて、C14未満の鎖長の最大0.2%(w/w)の飽和脂肪酸、最大0.2%(w/w)のミリスチン酸、4%~10%(w/w)のパルミチン酸、1%~5%(w/w)のステアリン酸、8%~21%(w/w)のオレイン酸、68%~83%(w/w)のリノール酸、最大0.5%(w/w)のリノレン酸、最大0.5%(w/w)のアラキジン酸、最大0.5%(w/w)のエイコセン酸、および最大1%のベヘン酸を含むことが好ましい。好ましくは、II型画分から得られたアザミ油は、脂肪酸の総量に基づいて、C14未満の鎖長の最大0.2%(w/w)の飽和脂肪酸、最大0.2%(w/w)のミリスチン酸、3.6%~6%(w/w)のパルミチン酸、1%~5%(w/w)のステアリン酸、70%~84%(w/w)のオレイン酸、7%~23%(w/w)のリノール酸、最大0.5%(w/w)のリノレン酸、最大1%(w/w)のアラキジン酸、最大1%(w/w)のエイコセン酸、および最大1.2%のベヘン酸を含むことが好ましい。
【0095】
医薬組成物は、変性油を含んでもよく、変性は、アルコール分解によって、好ましくはグリセロール、プロピレングリコール、または低分子ポリエチレングリコールを用いて得られる。これに関連して、低分子ポリエチレングリコールは以下のように定義されることが理解されるべきである。H-(O-CH-CHn-OH、式中、nは、1~5、好ましくは1~4、および任意選択的に1~3または1~2から選択される。
【0096】
変性油は、変性アーモンド油、変性杏仁油、変性キャノーラ油、変性ヒマシ油、変性ココナッツ油、変性綿実油、変性亜麻仁油、変性グレープ油、変性大麻油、変性トウモロコシ油、変性オリーブ油、変性パーム油、変性ピーナッツ油、変性ゴマ種油、変性大豆油、変性ヒマワリ油、変性アザミ油、変性菜種油、変性ぬか油、変性小麦胚油、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含み得る油を含むことができ、変性は、アルコール分解、好ましくはグリセロール、プロピレングリコール、または低分子ポリエチレングリコールであってもよい。これに関連して、低分子ポリエチレングリコールは以下のように定義されることが理解されるべきである。H-(O-CH-CHn-OH、式中、nは、1~5、好ましくは1~4、および任意選択的に1~3または1~2から選択される。
【0097】
アルコール分解は、溶媒和反応の一例であり、トリグリセリドは、メタノールまたはエタノールなどのアルコールと反応して、脂肪酸のメチルまたはエチルエステルを得る。任意選択的に、グリセロールはアルコールとして使用されてもよい。この反応は、アルコール断片の交換によるエステル交換反応としても知られている。アルコール分解反応後に、特定の飽和モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドを除去するための脱ろうプロセスが続くことが好ましい。
【0098】
例えば、Maisine(登録商標)CCは、例示的に変性されたトウモロコシ油である。これは、トウモロコシ油のアルコール分解およびその後のトウモロコシ油の脱ろうによって得られる。生成物は、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドを含み、モノエステル画分は32%~52%(w/w)から成り、ジエステル画分は40%~60%(w/w)から成り、トリエステル画分は、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの総量に基づいて5%~20%(w/w)から成る。
【0099】
医薬組成物は、ゴマ種油、大豆油、ヒマワリ油、アザミ油、およびトウモロコシ油を含んでもよく、変性は、アルコール分解によって、好ましくはグリセロール、プロピレングリコール、または低分子ポリエチレングリコールを用いて得られる。
【0100】
医薬組成物は、ヒマワリ油を含み得る。
【0101】
医薬組成物は、大豆油を含み得る。
【0102】
医薬組成物は、変性トウモロコシ油を含み得る。
【0103】
医薬組成物は、変性油と非変性油との混合物を含み得る。
【0104】
医薬組成物は、魚油を含み得る。魚油は、タラ肝油、サケ油、またはそれらの混合物であり得る。
【0105】
魚油は、カタクチイワシ科、アジ科、ニシン科、キュウリウオ科、サバ科(マグロ属およびハガツオ属を除く)、およびイカナゴ科(I型)などの科の魚から、またはサバ科(II型)に属するマグロ属およびハガツオ属から得ることができる。魚油は、アルファ-リノレン酸(C18:3 n-3)、モロクチン酸(C18:4 n-3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n-3)、チムノドン酸(エイコサペンタエン酸)(C20:5 n-3;EPA)、ヘンエイコサペンタエン酸(C21:5 n-3)、クルパノドン酸(C22:5 n-3)、およびセルボン酸(ドコサヘキサエン酸)(C22:6 n-3;DHA)などのオメガ-3酸を含んでもよい。I型から得られた魚油は、トリグリセリドとして表される、少なくとも合計28%(w/w)のオメガ3酸を含むことが好ましい。I型から得られた魚油は、トリグリセリドとして表される、少なくとも13%(w/w)のEPAおよび少なくとも9%(w/w)のDHAを含む。II型から得られた魚油は、トリグリセリドとして表される、少なくとも合計28%(w/w)のオメガ3酸を含むことが好ましい。II型から得られた魚油は、トリグリセリドとして表される、4~12%(w/w)のEPAおよび少なくとも20%(w/w)のDHAを含む。
【0106】
タラ肝油は、タラ(Gadus morhua L.)、およびタラ科の他の種の新鮮な肝臓から得られてもよく、固体物質は冷却および濾過によって除去される。タラ肝油は、アルファ-リノレン酸(C18:3 n-3)、モロクチン酸(C18:4 n-3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n-3)、チムノドン酸(エイコサペンタエン酸)(C20:5 n-3;EPA)、ヘンエイコサペンタエン酸(C21:5 n-3)、クルパノドン酸(C22:5 n-3)、およびセルボン酸(ドコサヘキサエン酸)(C22:6 n-3;DHA)などのオメガ-3酸を含んでもよい。タラ肝油は、トリグリセリドとして表される10%~28%(w/w)のEPAおよびDHAを含むことが好ましい。タラ肝油は、脂肪酸の総量に基づいて、3%~11%(w/w)のリノール酸をさらに含んでもよい。
【0107】
サケ油は、タイセイヨウサケ(Salmo salar)から得られてもよい。位置分布(β(2)-アシル)は、セルボン(ドコサヘキサエン)酸(C22:6 n-3;DHA)では60~70%、チムノドン(エイコサペンタエン)酸(C20:5 n-3;EPA)では25%~35%(w/w)、モロクチン酸(C18:4 n-3)では40%~55%(w/w)である。サケ油は、トリグリセリドとして表される10%~28%(w/w)のEPAおよびDHAを含むことが好ましい。
【0108】
医薬組成物は、ヒマワリ油および魚油を含み得る。
【0109】
医薬組成物は、変性トウモロコシ油および魚油を含み得る。
【0110】
例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、
(A)0.1%~20%、好ましくは0.5%~10%(w/w)の量の本明細書に記載の低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、
(B)50%~99.8%、好ましくは70%~98.97%(w/w)の量の油、
(C)任意選択的に、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1.5%(w/w)の量の魚油、
(D)任意選択的に、0.1%~10%、好ましくは0.5%~5%(w/w)の量の増粘剤、
(E)任意選択的に、0.01%~2%、好ましくは0.01%~1.5%(w/w)の量の抗酸化剤、
(F)任意選択的に、0.01%~2%、好ましくは0.01%~1.5%(w/w)の量の防腐剤、
【0111】
医薬組成物は、風味料を含まなくてもよい。例えば、医薬組成物は、香味剤を含まなくてもよい。本明細書に記載の医薬組成物は、香味剤、例えば、バニラ香味剤、アニス、ハチミツ香味剤、またはそれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0112】
医薬組成物を作製する方法
本明細書に記載の医薬組成物を調製する方法は、従来の混合、溶解、または凍結乾燥プロセスを含む、公知の様式で製造される。したがって、液体医薬調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせること、任意選択的に、得られた混合物を粉砕すること、および顆粒の混合物を、望ましい場合または必要に応じて、適切な補助剤を添加した後に処理することによって得ることができる。
【0113】
好ましい実施形態が本明細書に詳細に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、追加、置換を行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であるとみなされる。さらに、まだ示されていない範囲で、本明細書において記載および図示される様々な実施形態のうちのいずれか一つがさらに修正されて、本明細書に開示される他の実施形態のいずれかに示される特徴を組み込むことができることが、当業者によって理解されるであろう。
【0114】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、または開示される正確な形態に本開示を限定することを意図するものではない。本開示の特定の実施形態および実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、関連技術分野の当業者が認識するであろうように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップまたは機能が所与の順序で提示される一方で、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実行し得るか、または実質的に同時に機能を実行し得る。本明細書に提供される本開示の教示は、必要に応じて他の手順または方法に適用することができる。本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本開示の態様は、必要に応じて、本開示のなおさらなる実施形態を提供するために、上記の参考文献および出願の組成物、機能、および概念を採用するように修正することができる。
【0115】
前述の実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態の要素と組み合わせられてもよく、または置換されてもよい。さらに、本開示の特定の実施形態に関連する利点は、これらの実施形態の文脈で説明されてきたが、他の実施形態はまた、こうした利点を示してもよく、すべての実施形態が、本開示の範囲内に入るために必ずしもこうした利点を示す必要はない。
【0116】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態および態様を示す。本発明の趣旨または範囲を変更することなく、様々な修正、追加、置換などを実施することができ、こうした修正および変形が、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に包含されることが当業者には明らかであろう。以下の実施例は、いかなる形でも本発明を限定しない。
【実施例
【0117】
[実施例1]
油性懸濁液の調製および分析
モリデュスタットナトリウムの油性懸濁液を、以下の表1に示すように、特定の量の成分を組み合わせることによって調製した。
【表1】
【0118】
製剤を分析して、最終用量の粒子サイズ分布(PSD)に対する活性成分粒子サイズの影響を評価した。Malvernレーザー回折装置を使用して、懸濁液中の粒子サイズを測定した。平均粒子サイズ測定値を、各製剤について以下の表2に提供する。図4および図5は、各製剤の粒子サイズ分布ヒストグラムを示す。
【表2】
【0119】
微粒子化製剤を非微粒子化製剤と比較する沈降分析を、TURBISCANデバイス(光学原理、光透過率および後方散乱)を使用して行った。分析の結果を図6に示す。結果は、非微粒子化製剤の沈降が(再)均質化後1時間以内に開始する一方で、微粒子化製剤は少なくとも6時間安定なままであり、48時間以内にわずかな沈降のみを示すことを示す。この実験の結果は、微粒子化製剤が、均質性、(再)懸濁性、およびユーザによる後ほどの投与にとって重要な低速沈降のための優れた品質管理を提供することを実証する。
[実施例2]
【0120】
経口投与後の血漿薬物動態研究
本試験は、絶食および摂食したネコへの実施例1に従って製剤化されたそのナトリウム塩(微粒子化)の単回経口(po)投与後に、モリデュスタットの血漿薬物動態プロファイルを開発するように設計された、血漿薬物動態試験であった。成体で健康なメスのヨーロピアン・ショートヘアネコ4匹を試験のために選択した。治療前の日に、経口治療のための絶食状態を確保するために餌止めした。
【0121】
HIF-PHIの薬物動態プロファイルは、平均体重が3.5kg(StD=0.41kg)の成体、メス、健康なヨーロッパ・ショートヘアネコ3匹の血漿中で決定された。1匹の動物は取り扱いが困難であったため、試験から除外した。
【0122】
動物を、3.0mg/kgの単回経口用量率で、試験品目を用いて絶食状態で治療した。14日間のウォッシュアウト期間後、動物は、同じ用量率および同じ投与経路で、試験品目を用いて治療されたが、摂食状態で治療された。固定間隔での頻繁な採血検体を、各治療後48時間にわたって行った。
【0123】
血漿試料を、タンデム質量分析検出器(AB Sciex API 4000)を使用して、それらのモリデュスタットおよびその代謝物の濃度に関してHPLCによって分析した。
【0124】
得られた個々の血漿濃度-時間プロファイルから得られた薬物動態(PK)を、非コンパートメント解析を使用して導出した。モリデュスタットの平均血漿薬物動態を表3に示す。
【表3】
【0125】
モリデュスタットのピークおよび血漿曝露の程度は、絶食状態でネコにナトリウム塩として経口投与した場合、摂食状態と比較して高かった。代謝モリデュスタット量は、食事状態とは無関係に、総曝露で約60%であった。化合物は、ネコにおいて3.0mg/kgの用量率で2回の経口治療後、不耐性の臨床徴候なしに臨床的に忍容性良好であった。エリスロポエチン(EPO)濃度は、両方の治療、すなわち、摂食または絶食したネコへの経口投与の6時間後に高度に増加したことが見出された。発明者らは、油性懸濁液中のモリデュスタットの油投与が、静脈内投与を必要とせずに、EPOレベルを迅速に増加させたことを見出した。
[実施例3]
【0126】
血液パラメータに対する薬力学的効果
この試験は、異なる用量で経口経路を介して毎日投与され、異なる製剤のモリデュスタットナトリウムを使用して、健康な成体ネコにおける赤血球パラメータに対するモリデュスタットの効果を評価した。治療段階中のヘマトクリット、エリスロポエチン(EPO)、およびモリデュスタット血漿濃度が考察され、ヘマトクリットは主要転帰パラメータを表す。
【0127】
試験には、ヘマトクリット値の増加が達成される治療段階と、治療の中止後、ヘマトクリット値がプラセボに匹敵するレベルに減少し、基準範囲内である観察段階という2つの段階があった。試験デザインの概要を以下の表4に示す。
【表4】
【0128】
成体ネコ22匹を、それぞれ5匹および6匹のネコ/群(3匹(2匹)のオス/3匹のメス)を有する三つの治療群および一つの対照群に無作為化した。2週間のベースライン段階の後、ネコに1日1回、絶食状態で経口投与した。4つの異なるIVP懸濁液、すなわちプラセボ油性懸濁液ビヒクル、モリデュスタットナトリウム(微粒子化)5%油性懸濁液、モリデュスタットナトリウム(微粒子化)10%油性懸濁液、およびモリデュスタットナトリウム(微粒子化)10%水性懸濁液を投与した。油性懸濁液は、実施例1に記載の油性懸濁液に従った。
【0129】
各動物について体重1kg当たりの適用量(BW)を一貫して維持するために、モリデュスタットの油性懸濁液を2つの異なる濃度(5%および10%)で利用可能とし、その結果、各ネコを0.1mL/kgのBWのそれぞれの製剤で治療した。
【0130】
血液パラメータの評価のために、血液試料を、治療段階の前、最中、および後に固定間隔で採取した。さらに、血漿試料を、治療の前および後に試験日(SD)0、SD7、およびSD23で収集し、EPOおよびモリデュスタットの濃度について分析した。
【0131】
モリデュスタットナトリウムを投与されたすべての動物は、治療後最大42日間、基準範囲を超えるヘマトクリットの増加を示した。ヘマトクリット値は、群3および4のほとんどのネコのSD14、ならびに群2のネコのSD21で既に薬力学的効果が誇張されているため、治療中止の基準を満たした。結果として、それぞれの群のすべてのネコにおいて治療を省略した。
【0132】
治療段階のデータに適用された統計解析は、プラセボと比較して、SD7で既に10mg/kgで治療した群、およびSD14で5mg/kgで治療した群において、有意に高い平均ヘマトクリット血漿値をもたらした。平均ヘマトクリット値は、すべての群において、治療期間全体にわたって有意に高いままであった。注目すべきことに、同様の結果が平均ヘモグロビン値にも見られた。
【0133】
モリデュスタットナトリウム治療群の平均ヘマトクリット値は、SD56で基準範囲内のレベルに戻り、SD70以降からプラセボ群のレベルと同等であった。図1および図2を参照されたい。
【0134】
EPO濃度は、SD0の治療後6時間で群4のネコで最高であり、SD7の治療後6時間で群3のネコで最高であり、モリデュスタット血漿濃度の分析と一致した。EPO濃度(治療後6時間)は、測定したすべての試験日で、プラセボ群と比較して、すべてのモリデュスタットナトリウム治療群で有意に異なっていた。
【0135】
プラセボを投与されたネコ(群1)の血漿中のEPO濃度は、試験全体を通して内因性レベルのままであった。
【0136】
SD0およびSD7の投与の6時間後、すべての治療群で平均EPO濃度がピークに達した。SD0の投与後6時間で、EPO濃度は群4、次いで群3、次いで群2のネコで最高であった。しかし、SD7では、平均EPO濃度は、群3および群4で最高であり、次いで、投与後6時間では群2のネコで最高であった。SD1の治療後24時間で、平均EPO濃度は、群3および群4においておよそ55mU/mLであり、群2において治療前値にほぼ戻った。SD8の治療後24時間で、血漿中のEPOの濃度は、すべての群について治療前値にほぼ戻った。図3を参照されたい。
【0137】
SD0およびSD7では、すべての治療群のEPO濃度は、プラセボ群と有意に異なっていた。SD23では、群2(治療群のまま)のEPO濃度もプラセボ群と有意に異なっていた。
【0138】
モリデュスタットナトリウムを用いた治療は、すべての試験群で非常に忍容性が高く、安全であった。治療はネコの体重に影響を及ぼさなかった。身体検査または一般的な健康観察中に観察された所見のいずれも、試験の結果に悪影響を与えるとは評価されなかった。最も頻繁に観察された所見は、少量の液体の嘔吐であった。治療に関連するこの有害事象(治療後4時間以内)は、すべての群にわたって観察された。有害事象は、群1~3において、10%未満の穏やかな用量(群1:0.7%、群2:3.5%、群3:8.8%)で見られ、群4においては中程度の用量20%で見られ、水性懸濁液の投与が油性懸濁液の投与よりも忍容性が低いことを示した。
[実施例4]
【0139】
慢性腎臓病(CKD)貧血を有するネコにおける有効性
この試験の目的は、ネコの慢性腎臓病(CKD)に関連する貧血を管理するためのモリデュスタットの安全性および有効性を評価することであった。
【0140】
この試験は、CKDに関連する貧血を有するネコにおける、実施例1によるモリデュスタット(微粒子化)経口懸濁液の有効性および使用時の安全性を評価するために設計された、多施設、グローバル無作為化、盲検化、プラセボ(ビヒクル)対照現場試験であった。
【0141】
この試験は、10か月間にわたり、米国(US、n=23ヵ所の診療所)および欧州(EU、n=11ヵ所の診療所)で単一のプロトコルを使用して実施された。試験日(SD)-7(±2日)に、血清化学検査および血液学検査のために、登録資格を有するネコから血液を採取した。登録基準を満たした後、ネコを対照製品(CP[ビヒクル])またはモリデュスタットのいずれかで、少なくとも28日間連続して1日1回(SD0~SD27)経口投与した。モリデュスタットを、5mg/kg体重(bw)(0.2mL/kg bw)の用量で経口投与した。SD0、7、14、21、および28(SD0を除くすべての時点で±2日)の血液パラメータを評価するために血液を採取した。クレアチニンを除くSD28(±2日)での血清化学検査による評価のためにも血液を採取した。ヘマトクリット(HCT)および血球容積(PCV、各診療所で実施)が、目的の主要な血液パラメータであった。個々の動物治療の成功を、3つの異なる基準を使用してSD28±2まで、ならびにSD28のデータのみを使用して評価した。
【0142】
合計65匹のネコを、11ヵ所のUS施設および9ヵ所のEU施設でスクリーニングした。性別がほぼ均等に分布し、主に飼い猫のショートヘア品種で、年齢範囲が4~17歳、初期体重が2~6キログラムの、ネコ23匹(米国の9ヵ所から13例、およびEUの9ヵ所から10例)を無作為化し、2つの治療のうちの1つを投与した。合計21匹のネコを28日間の有効性段階に含めた。
【0143】
HCTおよびPCVの結果の分析からの臨床的結論はほぼ同一であった。貧血CKD対照群(CP、n=6)の週平均応答は予想通りに変化し、試験参加は、試験全体を通して低下した。28日間の試験を完了したCPネコは3匹のみであった。6匹のCP治療したネコのうち4匹は、これらのパラメータの両方にいかなる関連する増加も示さなかった。治療群の週平均応答は、平均ベースラインと比較して、1.65%~3.91%の増加であった。CP群と比較して、HCTおよびPCVの結果は、SD21で有意に高かった(p値<0.01)。SD28で観察された増加は、主に、この試験日のデータを提供するCPネコの数が少ないという理由から、統計的有意性に近づいた(p<0.061)。各治療群のベースライン(ベースライン対照解析)と比較して、SD21およびSD28の両方のHCTは、それぞれ3.91%および3.68%の平均ベースラインと有意に異なっていた。さらに、各治療群のベースライン(ベースライン対照解析)と比較して、SD21およびSD28の両方のPCV値は、それぞれ3.46%および3.89%の平均ベースラインと有意に異なっていた。また、SD14のHCTの増加はベースラインと比較して平均1.87%(有意性に近づく、p=0.0643)、SD14 PCVの増加はベースラインと比較して平均2.21%(p=0.0167)であった。対照的に、CP群において、ベースラインと比較して有意なHCTまたはPCVの増加は観察されなかった。
【0144】
HCT値に基づき、成功基準に応じて、各治療群の個々の動物治療成功率は、IVP治療群では40%~60%、CP群では16.7%であった。PCVの結果に基づく治療の成功は、治療群で33%~67%、CP群で33%であった。2つの群間で約20%~40%の改善が観察されたが、限定的なサンプルサイズ(それぞれIVP群はn=15、およびCP群はn=6)のため、統計的に有意な差は得られなかった。
【0145】
継続段階では、米国からネコ3匹、EUからネコ5匹であった。2匹のネコは、継続段階を通して5mg/kg bwを投与され、5匹のネコは、2.5mg/kg bwで断続的に治療され、1匹のネコは、SD 49まで5mg/kg bwで治療された。概して、8匹のネコすべてのHCTおよびPCVレベルは、SD77でより低いPCVを有するEU地域(GA03)のネコ1匹を除いて、継続段階全体を通して維持または増加した。しかしながら、そのPCVは、SD84で26%に増加した。継続段階のネコの結果は、断続的治療によって、および/またはモリデュスタットの用量を調節することによって、許容可能なHCT/PCVレベルを維持または達成することができ、治療に関連する有害事象がないことを示した。
【0146】
ネコにモリデュスタットを投与したとき、またはCKDの症状を治療するために本試験で使用された他の併用薬を投与したときに、治療に関連する有害事象は観察されなかった。モリデュスタットを5mg/kg体重で28日間、1日1回投与すると、貧血のネコのSD0と比較して、SD21およびSD28のPCV/HCTが有意に増加した。治療は忍容性良好であり、モリデュスタットを単独で投与した場合、またはCKDの症状を治療するために使用された他の薬剤と併用した場合、治療に関連する有害事象は観察されなかった。
[実施例5]
【0147】
2.5%(M/V)のモリデュスタット油性懸濁液の反復経口投与後のモリデュスタットの血漿薬物動態
健康な成体ネコに1kg bw当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの標的用量率で、1日1回の経口投与を反復した後、試験品目(実施例1によるモリデュスタットナトリウム(微粒子化)油性懸濁液2.5%(m/v))の血漿薬物動態プロファイルを決定した。
【0148】
単一群設計の後、健康な若い成体ネコ8匹(去勢オス4匹、卵巣除去メス4匹)を試験に含めた。動物は14~15.5か月齢であり、生存期の開始時に3.35~4.95kgの体重であった。
【0149】
投与された用量率は、1kg当たり4.8mgのモリデュスタットナトリウムであった。投与は6日間連続で1日1回であり、24時間の間隔を維持した。用量率の計算は、すべての投与について、SD-1で決定された体重に基づいていた。
【0150】
ネコへの反復投与後の試験品目に含まれる活性物質の薬物動態プロファイルを説明するのに適切とみなされる所定のスケジュールに従って、動物1匹当たり31個の血液試料を採取した。
【0151】
血漿中の活性物質モリデュスタットおよびその主要代謝物の濃度を、高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法によって分析した。定量下限は、各物質について5μg/Lであった。
【0152】
血漿濃度データの薬物動態評価は、非コンパートメント法を使用した観察されたデータに基づいており、試験品目での反復投与後の活性物質およびその代謝物の吸収、分布および排出相を適切に記述するためのすべてのPKパラメータを含んでいた。表5は、試験品目の1日1回の反復経口投与後に導出されたものとして表示される、モリデュスタットおよびその代謝物の平均血漿薬物動態の概要を示す。
【表5】
【0153】
実際の試験の条件下では、血漿薬物動態は、低い個体間変動によって特徴付けられた。1kg bw当たり4.8mgのモリデュスタットナトリウムの実際の用量率での1日1回の試験品目の6回の反復投与は、定常状態の血漿薬物動態をもたらした。
臨床的に意義のある蓄積は、1.1の計算された蓄積指数で、意図された治療用量率で1日1回反復投与した後に発生しなかった。
【0154】
1回目の投与および最終投与後の薬物動態を比較する反復投与後に、導出された血漿薬物動態の変化または変更は発生せず、1kg当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの用量で1日1回投薬を繰り返しても、ネコにおけるモリデュスタットの代謝または排出パターンに影響を与えないことを示した。
[実施例6]
【0155】
モリデュスタットのバイオアベイラビリティ
この試験では、品目(実施例1に従った、2.5%(m/v)のモリデュスタットナトリウム(微粒子化)油性懸濁液)の血漿薬物動態特性を、経口バイオアベイラビリティおよび用量比例性に関して特に考慮して決定した。試験品目を、健康な成体ネコに、体重(bw)1kg当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの予想目標用量率で、2.5mg/kgおよび10mg/kgで、単回経口用量として適用した。適切な基準品目(モリデュスタットナトリウム水溶液2.0%(m/v))を使用して、比較のために5.0mg/kgの単回静脈内ボーラス用量を適用した。
【0156】
混合連続/クロスオーバーデザイン後、16匹の健康な成体ネコ(去勢オス8匹、卵巣除去メス8匹)を試験に含め、それぞれ8匹の動物からなる4つの試験群に割り当てた。動物は13.7~14.7か月齢であり、生存期の開始時に3.3~6.0kgの体重であった。
【0157】
投与された用量率は、それぞれ0.5倍、1倍、2倍用量群について、1kg当たり2.42mg/kg、4.79、および9.54mgのモリデュスタットナトリウムの平均であった。基準品目は、5.15mg/kgの実際の平均用量率で投与された。用量率の計算は、各試験期間の前に決定された体重に基づいていた。
【0158】
ネコへの単回経口投与または静脈内投与後の試験および基準品目に含まれる活性物質の薬物動態プロファイルを説明するのに適切とみなされる所定のスケジュールに従って、経口投与後に動物1匹当たり15個の血液試料を採取した(静脈内投与後は動物1匹当たり16個の試料)。
【0159】
活性物質モリデュスタットおよびその主要血漿濃度を、方法01469(Krebber et al., Analytical method for the determination of BAY 85-3934 and its metabolite BAY 116-3348 in plasma by LC-MS/MS,BAG-CS report MR-15/109)に従って、高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析によって分析した。定量下限は、各物質について5μg/Lであった。
【0160】
血漿濃度データの薬物動態評価は、非コンパートメント法を使用した観察されたデータに基づいており、試験品目または基準品目での経口投与後または静脈内投与後の活性物質およびその代謝物の吸収、分布および排出相を適切に記述するためのすべてのPKパラメータを含んでいた。薬物動態評価については、実際の個々の用量率を使用して、標的用量率と実際の用量率との間の小さな差異を考慮した。すべての動物は、スケジュールに従って生存期を完了した。動物は、生存期全体を通して良好な全身健康状態を示した。平均血漿薬物動態の概要を表6に示す。
【表6】
【0161】
試験品目のモリデュスタットナトリウム油性懸濁液2.5%(m/v)を、1kg当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの用量率でネコに単回経口投与した後、経口バイオアベイラビリティは高く、幾何平均は82%であり、57%~110%の範囲であった。
【0162】
標的治療用量率の0.5倍~2倍に相当する、1kg当たり2.5および10mgのモリデュスタットナトリウムの用量率での試験品目の経口投与は、血漿曝露の用量比例的な程度をもたらした。血漿曝露率(Cmax)は、わずかに比例しなかった。
【0163】
ネコに1kg当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの単回静脈内ボーラス投与後、平均モリデュスタット血漿曝露量は16.35mg*時間/Lであった。モリデュスタットは、2.69L/kgの容積で体内に分布した。血漿クリアランスは、0.31L/時間/kgであった。モリデュスタットは、5.91時間の半減期で排出された。
【0164】
代謝物は、8.71mg*時間/L(変換率53%)の範囲で構築された。血漿クリアランスは0.59L/時間/kgであり、消失半減期は5.13時間であった。動物間変動は低かった。オスとメスの比較は、メスにおいてわずかに高い血漿クリアランス(0.33対0.30L/時間/kg)および分布体積(2.96対2.36L/kg)を示し、親および代謝物の両方についてわずかに高い総血漿曝露をもたらした。
【0165】
結論として、実際の試験の条件下で、試験品目であるモリデュスタットナトリウム油性懸濁液2.5%(m/v)は、ネコ1kg当たり5mgのモリデュスタットナトリウムの標的治療用量率で予想外に高い経口バイオアベイラビリティ(83%)を示した。血漿曝露は、0.5倍~2倍(2.5~10mg/kg)の試験用量範囲にわたって用量比例的であった。関連する性別による差異はなかった。
【0166】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。任意の参考文献の引用は、出願日前のその開示に対するものであり、本開示が先行発明という理由によりかかる参考文献に先行する資格を有さないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0167】
当然のことながら、上述の要素の各々、または二つ以上を一緒にして、上述のタイプとは異なる他のタイプの方法において、有用な用途を見出す場合がある。さらなる分析なしに、前述は、先行技術の観点からみて、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の一般的または特定の態様の本質的な特徴を公正に構成する特徴を省略することなく、現在の知識を適用することによって、他の人物らがそれを様々な用途に容易に適合させることができる、本開示の概要を完全に明らかにするであろう。前述の実施形態は、単なる例として提示されており、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】