(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】水の凝結を低減する複合物、そのような複合物を含む物品、およびそのような複合物を作製する方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/14 20060101AFI20250117BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20250117BHJP
A41D 31/102 20190101ALI20250117BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20250117BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
B32B15/14
A41D31/02 A
A41D31/102
A41D13/00 102
A41D31/00 502B
A41D31/00 502H
A41D31/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543169
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2023051166
(87)【国際公開番号】W WO2023139143
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508372593
【氏名又は名称】デカスロン
【氏名又は名称原語表記】DECATHLON
【住所又は居所原語表記】4 BOULEVARD DE MONS, 59650 VILLENEUVE D’ASCQ, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサルヴェス,リザ
(72)【発明者】
【氏名】グルレット,イネス
【テーマコード(参考)】
3B211
4F100
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AA05
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC00
3B211AC08
3B211AC18
4F100AB01C
4F100AB01D
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4F100YY00
(57)【要約】
本発明は、水の凝結を低減する複合物(10)であって、内側面(12)と外側面(14)とを有し、前記外側面(14)は、外部の大気に直接的に対向する方向を向いており、
複合物(10)は、内側面(12)から外側面(14)に向かって、
水不透過性かつ水蒸気透過性の基材A(20,26)と、
織物基材B(30)と、
少なくとも1種の金属M1であって、任意に合金の形態であり、織物基材B(30)上に直接的に堆積して金属層C(40)を形成する、金属M1と、を含む、複合物(10)に関する。
本発明は、さらに、そのような複合物(10)を含む物品と、そのような複合物(10)を作製するための方法と、内壁上の水の凝結を限定する物品を作製するための複合物(10)の使用と、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の凝結を低減する複合物(10,100)であって、内側面(12,102)と外側面(14,104)とを有し、前記外側面(14,104)は、外部の大気に直接的に対向する方向を向いており、
前記複合物(10,100)は、前記内側面(12,102)から前記外側面(14,104)に向かって、
-水不透過性かつ水蒸気透過性の基材A(20,26,120,126)と、
-織物基材B(30,130,400,500,600)と、
-少なくとも1種の金属M1であって、任意に合金の形態であり、前記織物基材B(30,130,400,500,600)上に直接的に堆積して金属層C(40,140)を形成する、金属M1と、
を含む、複合物(10,100)。
【請求項2】
前記織物基材B(30,130,400,500,600)は、その外側面(34)と内側面(32)との間に延在する、前記金属層C(40,140)のない貫通開口(410,510,610)を有する、ことを特徴とする、請求項1に記載の複合物(10,100)。
【請求項3】
前記金属層C(40,140)のための防護層D(50,150)をさらに含む、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の複合物(10,100)。
【請求項4】
前記防護層D(50,150)は、金属層であり、少なくとも1種の金属M2を含み、前記少なくとも1種の金属M2は、任意に合金の形態であり、特に、前記金属層C(40,140)の前記少なくとも1種の金属M1とは異なる、ことを特徴とする、請求項3に記載の複合物(10,100)。
【請求項5】
前記防護層D(50,150)は、二酸化チタンを含む金属層であり、特に、前記少なくとも1種の金属M2は、チタンであり、さらに特には、前記防護層Dは、撥水性の層でもある、ことを特徴とする、請求項3または4に記載の複合物(10,100)。
【請求項6】
前記防護層D(50,150)は、少なくとも1種のポリマーを含み、特に、金属を含まない層である、ことを特徴とする、請求項3に記載の複合物(10,100)。
【請求項7】
前記織物基材B(30,130,400,500,600)は、繊維および/またはフィラメントを含み、
任意に合金の形態である前記少なくとも1種の金属M1は、少なくとも部分的に前記繊維および/または前記フィラメントの表面を覆う、ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項8】
前記複合物(10,100)は、合計厚さが5mm以下である、ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項9】
前記複合物(10,100)は、熱絶縁性の織物層を含まない、ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項10】
前記複合物(10,100)は、水蒸気に対する抵抗性(Ret)が50m
2.Pa.W
-1以下、特に20m
2.Pa.W
-1以下である、ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項11】
前記複合物(10,100)の前記外側面(14,104)は、撥水性を有する、ことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項12】
前記複合物(10,100)の前記外側面(14,104)は、放射率が0.50以下である、ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項13】
前記少なくとも1種の金属M1は、アルミニウム、銀、金、ステンレス鋼、亜鉛、スズ、鉛、銅、チタン、ニッケル、クロム、およびこれらの混合物からなるリストから選ばれる、ことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項14】
特に、水不透過性かつ水蒸気透過性の前記基材A(20,26,120,126)により形成される、前記複合物(10,100)の前記内側面(12,102)は、使用中に、凝結から防護される使用者または物体に直接的に対向する方向を向いている、ことを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の複合物(10,100)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの複合物(10,100)を含む物品(300)であって、
前記物品(300)は、
雨および/または風からの防護のための装置(305)であって、保護領域(310,315)を含み、特に、寝袋の防護的な外袋、テント(305)、日/雨覆い、防護防水シート、傘、日除け、カーテン、ブラインドから選ばれる、装置(305)と、
雨および/または風に対する防護のための衣服と、
を含むリストから選ばれる、ことを特徴とする、物品(300)。
【請求項16】
前記複合物(10,100)は、雨および/または風からの防護のための前記装置(305)、特に、テント(305)、日/雨覆い、または寝袋の外袋における、単一の壁部を含む屋根部または単一の壁部を含む衝立部を少なくとも部分的に形成する、ことを特徴とする、請求項15に記載の物品(300)。
【請求項17】
テント(305)であって、
前記テント(305)は、少なくとも一部が単一の壁部を含む屋根部を含み、
前記テントは、単一の壁部を含む前記少なくとも一部を形成する、請求項1から14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの複合物(10,100)を含む、ことを特徴とする、テント(305)。
【請求項18】
水の凝結を限定する複合物(10,100)の製造方法であって、前記複合物(10,100)は、内側面(12,102)と外側面(14,104)とを有し、前記外側面(14,104)は、外部の大気に直接的に対向する方向を向いており、特に、請求項1から14のいずれか1項に記載の複合物(10,100)であり、
前記方法は、
a-内側面(32)と外側面(34)とを有する少なくとも1つの織物基材B(30,130,400,500,600)を設ける工程と、
b-前記織物基材B(30,130,400,500,600)の前記内側面(32)上に、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材A(20,26,120,126)を堆積させる工程と、
c-任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M1の薄層を、前記織物基材B(30,130,400,500,600)の前記外側面(34)上に直接的に堆積させることで、金属層C(40,140)を製造する工程であって、特に、薄層を堆積させる前記工程は、物理気相成長工程である、工程と、
d-任意に、前記金属層C(40,140)の外側面(44)上に、前記金属層C(40,140)の防護層D(50,150)を堆積させる工程と、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記各工程を、
a-内側面(32)と外側面(34)とを有する少なくとも1つの織物基材B(30,130,400,500,600)を設ける工程と、その後、
c-任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M1の薄層を、前記織物基材B(30,130,400,500,600)の前記外側面(34)上に直接的に堆積させることで、金属層C(40,140)を製造する工程であって、特に、薄層を堆積させる前記工程は、物理気相成長工程である、工程と、その後、
d-任意に、前記金属層C(40,140)の外側面(44)上に、前記金属層C(40,140)の防護層D(50,150)を堆積させる工程と、
b-前記織物基材B(30,130,400,500,600)の前記内側面(32)上に、防水性かつ水蒸気透過性の基材A(20,26,120,126)を堆積させる工程と、
の順に実行する、ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記工程d)は、前記防護層D(50,150)の薄層を堆積させる工程であり、特に、二酸化チタンを含む金属性の防護層Dを堆積させる工程である、ことを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
複合物(10,100)の使用であって、
前記複合物(10,100)は、請求項1から14のいずれか1項に記載の、または請求項18から20のいずれか1項に記載の方法を実行することによって得られる、複合物(10,100)であり、内壁上の水の凝結を限定または防止する物品(300)を作製するための、特に、少なくとも、テント屋根部における単一の壁部を含む一部を製造するための、複合物(10,100)である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内側面における水の凝結を低減する複合物、およびそのような複合物を作製する方法の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、さらに、物品(例えば、テント、日/雨覆い、ブラインド、寝袋の外袋等)であって、特に、少なくとも1人の使用者を受け入れるように構成された保護領域を含み、物品によって保護される使用者および/または物体に、露としての水が流れ落ちるのを制限または阻止するために水の凝結を低減する複合物をさらに含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
外部環境(太陽、雨、風等)から使用者を防護することを意図する物品であって、特にキャンピングの分野における、例えば、テント、保護用覆い、ブラインド、日/雨覆い、日除け等の物品、および、一般にスポーツ活動の実践のための物品(マウンテンジャケット、寝袋の外袋、防護防水シート、セーリング用ダンガリー等の、悪天候に対する防護のための衣服)の織物は、水に対する不透過性を確実にするために、1つの面がコーティングされている。しかしながら、塗布された被覆は、空気および水蒸気に対する織物の透過性を大きく、または全体的に低減する。
【0004】
眠っている間、および、一般に前記物品を用いて退避している間、人は水蒸気を継続的に生成する。この水蒸気の量は、前記物品の保護領域内、例えばテント内、の自然な湿度に加わる。夜には、外部温度は、前記物品の保護領域の内部の温度、例えばテントの内部の温度、よりも急速に下がる。保護領域に含まれる水蒸気は、保護領域の内部を保護領域の外部から分離している冷えた壁部の内側面に接触すると、内側面上で凝結し、その後、使用者に流れ落ち、または落下する。
【0005】
前記物品の壁部の内側面上におけるこの凝結の現象は、保護領域に使用者がいなくても認められるが、これは単に地面から放出される熱、および/または周辺の熱、および/または大気中、よって保護領域内の水の飽和を原因とすることに留意すべきである。使用者は、この水が流れ落ちることに悩まされる可能性がある。
【0006】
さらに、前記物品を折り畳む際、および/または保管する際、前記物品は湿ったままとなり、これが、カビを発生させるリスクに繋がる可能性があるとともに、重量が増加する可能性がある。しかしながら、特定の活動、特にハイキングの実践のためには、軽量な物品が求められる。軽量な物品は、折り畳みや運搬が容易であり、および/または乾燥させるのが容易である。
【0007】
この問題を克服するために、前記物品がテントである場合、二重屋根部を含む。二重屋根部の外側および内側の織物は、数センチメートルの空隙によって隔てられている。内部チャンバの織物は、コーティングされておらず、よって、水蒸気を通過させる。外部の織物は、コーティングされており、前記物品の内部(この場合、保護領域)を雨から防護するが、水蒸気をブロックする。したがって、周囲空気の湿気は、外部の織物の内側面上で凝結することになる。使用者は、内部チャンバの織物によって防護され、よって、前記物品の保護領域は、乾燥したままとなり、凝結した水が流れ落ちることから防護される。
【0008】
しかしながら、前記物品の内部チャンバの織物と外部の織物との間に水滴が形成されるので、この手法は、前記物品が湿ったままになることを阻止できない。ハイキングの際、前記物品は、朝には折り畳まれ、乾燥させる時間もないまま、濡れたまま運ばれる。濡れた物品の有する水は、ハイキング中の追加的な負荷となる。加えて、潜在的なカビ発生の問題が解決されていない。
【0009】
そのうえ、二重屋根部の使用によって生じる追加的な費用は、使用者にとって価値をもたらさない。二重屋根部の生産は、温室効果ガスを放出することによって、環境に影響する。これは、そのライフサイクルがエネルギー(電気、水、使用の終わりにおける二重屋根部に関連する廃棄物管理)を必要とするためである。換気装置が前記物品に設けられて、湿気を排出するようにしているが、この換気は不十分であることがあり、(例えば、外部温度が非常に低い場合、風が強い場合等に)最適に使用できない可能性がある。
【0010】
したがって、テントに関しては、使用者を水滴から防護するための内部の織物をなくすことが求められている。
【0011】
したがって、いわゆる単一の壁部の物品(特に、テント)、すなわち、使用者の防護のための単一の織物を含み、内部チャンバを含まない物品が知られている。これらの単一の壁部の物品は、水不透過性かつ水蒸気透過性の層、または水不透過性かつ水蒸気透過性の膜を有する被覆を含む織物成分を含む。
【0012】
しかしながら、水の凝結は、これらの単一の壁部を含む物品の内側面上でも見られる。この水は、使用者および/または物体に流れ落ちる可能性があり、物品が折り畳まれた際に重量を増加させ、保管する前に物品を適切に乾燥させないと、カビが発生するリスクがある。
【0013】
さらに、物品の保護領域から発生する水蒸気を、物品を通過させて、すなわち、その内側面から外側面に排出させるために、物品の外側面に水が停滞、したがって留まってはならないことが認められる。
【0014】
そのうえ、晴れた夜は、放射冷却の現象が認められる。この現象により、物品の内側面および/または外側面上の凝結が増大する。テントまたは保護用覆い等の物品にとっての上述の凝結現象は、例えば、軽量のマウンテンジャケットまたはセーリング用ダンガリー等の、スポーツ実践のための衣服品でも起こり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Textiles - Physiological effects - Measurement of thermal and water-vapour resistance under steady-state conditions (sweating guarded-hotplate test)
【非特許文献2】Textile fabrics - Determination of the resistance to surface wetting (spray test)
【非特許文献3】Flexible sheets for waterproofing - Determination of emissivity
【非特許文献4】Textiles - Determination of resistance to water penetration - Hydrostatic pressure test
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、内側面および/または外側面上における水の凝結を制限するように構成された複合物であって、水の凝結を制限するために、使用することで水滴の形成に当然に曝され、軽量かつ折り畳みが容易な物品に使用可能に構成された複合物に対する需要がある。
【0017】
さらに、内側面および/または外側面上における水の凝結を制限するように構成された物品に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、第1態様によると、
水の凝結を限定する複合物であって、内側面と外側面とを有し、前記外側面は、外部の大気に直接的に対向する方向を向いており、
前記複合物は、前記内側面から前記外側面に向かって、
-任意に、防護的な基材Eと、
-水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aと、
-織物基材Bと、
-金属M1であって、任意に合金の形態であり、前記織物基材B上に直接的に堆積して金属層Cを形成する、金属M1と、
-任意に、前記金属層Cのための防護層Dと、
-任意に、撥水加工層と、
を含む、特に、これらから実質的に形成されている、複合物に関する。
【0019】
金属層Cは、基材AおよびBと組み合わせると、放射冷却の現象の結果を制限できるとともに、内側面から外側面に向かって、したがって、基材AおよびBならびに金属層Cを通って、水蒸気を排出させることができる、という特長を有する。
【0020】
金属M1、および/または金属M1を含む合金は、金属の薄層Cを形成する。薄層Cは、織物基材B上に直接的に塗布されており、有機結合剤が介在することで織物基材の細孔を塞いで、水蒸気に対するその透過性を著しく変質させてしまうことがない、という特長を有する。
【0021】
金属層Cは、ポリマー結合剤を含まない、という特長を有する。
【0022】
特に、この文書において、ポリマー結合剤は、金属粒子を分散させる基質を形成する任意のポリマーを意味するものと理解される。
【0023】
金属層Cは、通気性の基材Aの存在に加えて、空との熱伝達を限定することによって、放射冷却の現象から生じる効果を制限または阻止できる、という特長を有する。
【0024】
好ましくは、金属層Cは、複合物の外側面の放射率が低くなるように選ばれる。金属層Cは、複合物の外側放射率を低減することにより、織物基材Bからの熱損失を低減できる。したがって、外部との熱交換は低減する。
【0025】
したがって、織物基材Bは、夜間に熱を逃がす。
【0026】
内部の環境で、すなわち、前記複合物により少なくとも部分的に形成される物品の保護領域で、熱損失が低減し、さらに、織物基材Bの熱損失が低減することで、保護領域において露点に達するリスクを低減し、これにより、複合物の冷えた内側面上で水蒸気の凝結が現れるのを阻止できる、という特長を有する。
【0027】
好ましくは、基材Aは、実質的に互いの反対側に位置する内側面および外側面を有する。
【0028】
「水不透過性かつ水蒸気透過性の基材A」という用語は、水は、基材Aを、その外側面から内側面に通過できないが、水蒸気は、内側面から外側面に通過できることを意味するものと理解される。
【0029】
好ましくは、基材Aの内側面は、複合物の外部に直接的に対向する方向を向いており、特に、凝結から防護される使用者の方を直接的に向いており、および/または、複合物を含む物品の保護領域に対向している。
【0030】
好ましくは、織物基材Bは、実質的に互いの反対側に位置する内側面および外側面を有する。
【0031】
好ましくは、基材Aの外側面は、織物基材Bの内側面と対向するように配置されている。
【0032】
好ましくは、基材Aの外側面は、織物基材Bの内側面と直接接触している。
【0033】
好ましくは、金属層Cは、実質的に互いの反対側に位置する内側面および外側面を有する。
【0034】
好ましくは、織物基材Bの外側面は、金属層Cの内側面と対向している。
【0035】
好ましくは、金属層Cの内側面は、織物基材Bの外側面と直接接触している。
【0036】
水不透過性かつ水蒸気透過性の基材A
ある実施形態において、基材Aは、水不透過性かつ水蒸気透過性の膜、特に、通気性の膜を含む(または、そのような膜である)。
【0037】
通気性の膜は、
-(例えば、水相接着剤、例えば、アクリル接着剤によって)結合、ならびに、任意に、接着剤を重合させ、および/もしくは溶媒(特に、水)を蒸発させるための加熱によって、または、
-通気性の膜を加熱して、軟化させ、その後、圧力下、織物基材Bの内側面に付着させることによって、
織物基材Bの内側面と一体化させることができる。
【0038】
通気性の膜は、市販の、すぐに使える膜であってもよい。
【0039】
通気性の膜Aは、ポリウレタン系、フッ素化ポリマー系(例えば、PTFE)、またはポリエチレングリコール系の膜であってもよい。
【0040】
他の実施形態において、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aは、水不透過性かつ水蒸気透過性のポリマー被覆、特に、織物基材Bの内側面のポリマー被覆を含み(または、そのようなポリマー被覆であり)、さらに特には、ポリマー被覆は、ドクターブレードまたはブレードを用いたコーティングによって、ローラによって、または任意の他の同等の手段によって、塗布される。
【0041】
ポリマーの被覆は、分散液または溶液、例えば、水性分散液もしくは水性溶液、または溶媒分散液もしくは溶媒溶液中に、1または複数種類のポリマー、および/もしくは1または複数種類のオリゴマー、および/もしくは1または複数種類のモノマーを含む液体の1または複数の層の塗布を含んでいてもよい。
【0042】
1または複数種類のポリマー/オリゴマーは、ポリウレタン、ポリアクリラート、およびポリエステルから選ぶことができる。
【0043】
通気性の被覆または通気性の膜は、微孔質またはナノポーラスであって、液状の水の通過を物理的にブロックし、マイクロポアまたはナノポアを介して水蒸気が通過できてもよく、親水性(特に、水蒸気が基材Aを通って化学的に排出される)であってもよい。
【0044】
当業者は、この種類の、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aの生産方法と、基材Aを織物基材Bに固定する方法と、を知っている。
【0045】
防護的な基材E(任意)
ある実施形態において、複合物は、特に、複合物の外部に直接的に対向する、および/または、複合物の内側面を少なくとも部分的に形成する、防護的な基材Eを含む。
【0046】
それゆえ、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aは、基材Eと織物基材Bとの間に配置される。
【0047】
防護的な基材Eは、通気性の基材Aを防護できる。
【0048】
基材Eは、水蒸気透過性を有する、という特長を有する。
【0049】
基材Eは、少なくとも1つの寸法が0.1mm以上、任意に、0.5mm以上または1mm以上である貫通開口を有する、という特長を有する。
【0050】
そのような基材Eを複合物に配置することで、熱蒸発(thermal evaporation)に対する複合物の抵抗性が向上し、したがって、凝結の現象を増大し得ることが認められている。それでも、外部からの攻撃に対する水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aの防護性を向上させる(摩耗、引裂き等に対する抵抗性を向上させる)ことを望む場合、この実施形態は有利となり得る。したがって、基材Eを配置することは、好ましくない。好ましくは、基材Eは、織物層、例えば、布地、(例えば、メッシュタイプの)ニット、不織布、またはこれらの組み合わせであるか、またはそのような織物層を含む。
【0051】
不織布は、好ましくは、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、またはこれらの組み合わせである。
【0052】
基材Eは、好ましくは、非常に軽い。基材Eは、好ましくは、厚さが、3mm以下、より好ましくは、2mm以下、特に、1mm以下である。
【0053】
好ましくは、基材Eは、単位面積当たりの質量が、5g/m2以上かつ150g/m2以下、より好ましくは、100g/m2以下、任意に、75g/m2以下または50g/m2以下である。
【0054】
一例として、基材Eが不織布である場合、または不織布を含む場合、基材Eは、単位面積当たりの質量が、5g/m2以上かつ30g/m2以下、例えば、15g/m2程度である。
【0055】
一例として、基材Eが布地またはニットである場合、または布地またはニットを含む場合、基材Eは、単位面積当たりの質量が、30g/m2以上かつ60g/m2以下、例えば、45g/m2程度である。
【0056】
基材Eは、熱絶縁性の基材ではない。
【0057】
好ましくは、基材Eは、繊維および/またはフィラメント、例えば、ポリアミド(PA66、PA4-6、PA6等)、および/またはポリエステル(PETまたはPBT)、および/またはポリオレフィン(PP、PE)を材料とする繊維および/またはフィラメントを含む。
【0058】
織物基材B
織物基材Bは、好ましくは、水蒸気透過性を有する、すなわち、水蒸気が、織物基材Bの内側面から外側面に通過できる、柔軟な織物である。
【0059】
織物基材Bは、布地、ニット、不織布、またはこれらの組み合わせであってもよく、または含む。
【0060】
好ましくは、織物基材Bは、織られた織物であり、または織られた織物を含み、特に、たて糸とよこ糸とを含む。この種類の織られた織物は、一般的に、例えばニットと比較して、物理的な性能(引裂き抵抗等)が良好であり、伸長時の寸法が安定している。
【0061】
織物基材Bは、好ましくは、1または複数のマルチフィラメント糸および/または1または複数の繊維糸を含む。これらの糸は、1または複数の合成材料(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等)、および/または天然材料(綿等)、および/または再生材料(特に、セルロース系材料、例えばビスコース等)、またはこれらの混合物、に含まれる1または複数の糸であってもよい。
【0062】
織物基材Bの単位面積当たりの質量は、好ましくは、250g/m2以下、より好ましくは、200g/m2以下、好ましくは、150g/m2以下または130g/m2以下、任意に、100g/m2または90g/m2以下である。
【0063】
織物基材Bの単位面積当たりの質量は、好ましくは、25g/m2以上、より好ましくは、50g/m2以上、任意に、75g/m2以上である。
【0064】
織物基材Bは、少なくとも1つの寸法が0.01mm以上、好ましくは、0.1mm以上、任意に、0.5mm以上または1mm以上である細孔(または貫通開口)を有する、という特長を有する。
【0065】
織物基材Bは、水蒸気透過性を有する、という特長を有する。
【0066】
基材Bの織り糸同士の間の交差する空間によって、基材Bの内側面と外側面との間で水蒸気が通過する空間が形成されている、という特長を有する。
【0067】
金属層C
好ましくは、金属層Cは、薄膜堆積技術によって、特に、以下に記載するように、または、本発明の第4態様を参照して、堆積させる。
【0068】
好ましくは、金属層Cは、厚さが、50μm以下、好ましくは、10μm以下、特に、1μm以下、特に、200nm以下、150nm以下、または100nm以下である。
【0069】
好ましくは、金属層Cは、厚さが、1nm以上、好ましくは、10nm以上である。
【0070】
金属層Cは、物理気相成長法(PVD)によって、特に、以下から選ばれる方法によって生成する、という特長を有する。
-真空蒸着法(特に、本発明の第4態様の第1実施形態による)、または
-好ましくは、スパッタリング堆積法(特に、本発明の第4態様の第2実施形態により、任意に、磁界によって向上させる)
【0071】
防護的な金属層Dは、物理気相成長(PVD)法によって、特に、以下から選ばれる方法によって、生成できる。
-真空蒸着法(特に、本発明の第4態様の第1実施形態による)、または
-特に、金属層Cと同じ生成チャンバ内での、スパッタリング堆積法(特に、本発明の第4態様の第2実施形態により、任意に、磁界によって向上させる)
金属層Dは、特に、金属層Cと同じ生成チャンバ内での、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって生成することもできる。
【0072】
薄膜堆積技術を使用することで、織物基材Bまたは金属層Cの水蒸気に対する透過性が著しく改質されないようにするとともに、複合物の外側面の放射率レベルを低下させることによって、放射冷却の現象に関連する効果を限定する、という特長を有する。
【0073】
金属層Cまたは、特に、金属の、または非金属の防護層Dは、水蒸気透過性を有する、という特長を有する。
【0074】
複合物
好ましくは、本発明に係る複合物は、柔軟であり、特に、一定のドレープ適性有し、物品の様々な形状に適合できる。
【0075】
柔軟な複合物は、縫われていてもよく、よって、縫針によって穴が開いていてもよい。
【0076】
好ましくは、複合物の単位面積当たりの合計質量は、10g/m2以上、30g/m2以上、または50g/m2以上である。
【0077】
好ましくは、複合物の単位面積当たりの質量は、350g/m2以下、より好ましくは、300g/m2以下、250g/m2以下、または200g/m2以下、任意に、150g/m2以下または100g/m2以下である。
【0078】
好ましくは、複合物は、厚さが、0.01mm以上または0.05mm以上である。
【0079】
好ましくは、複合物は、厚さが、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、または1mm以下である。
【0080】
本明細書において、「外部の大気」は、本発明に係る複合物の外側に存在するあらゆるものを意味するものと理解され、外側面は、特に、使用中、外部の大気に向かう、特に、空に向かう方向を向くことを意図する。
【0081】
複合物の外側面の化学分析をエネルギー分散性X線分光法によって行うことができる。これは、定性分析である。そのような測定の間に、サンプルの表面化学組成が特定されるが、この場合は、金属層Cの金属M1の存在であり、特に、アルミニウムと、(可能性として)微量のシリカと、である。
【0082】
ある実施形態において、織物基材Bは、貫通開口を含み、貫通開口は、織物基材Bの外側面と内側面との間に延在し、金属層Cと任意に防護層Dとが設けられていない。
【0083】
金属層C、および/または防護的な金属層Dもしくは非金属性の防護層Dは、織物基材Bの繊維および/または織り糸上に堆積しており、それゆえ、織物基材Bの貫通開口を塞がない、という特長を有する。
【0084】
特に、織物基材Bの貫通開口は、織物基材Bの内側面と外側面とに延在し、織物基材Bの内側面と外側面とで開口している。
【0085】
これらの貫通開口は、織られた、または編まれた2本の織り糸の間を延在する貫通開口を含んでいてもよい。
【0086】
貫通開口は、水蒸気透過性の領域を形成しており、特に、水蒸気が、織物基材Bの内側面から外側面に通過できるようになっている。
【0087】
好ましくは、これらの貫通開口は、平均の大きさが、0.01mm2未満である。
【0088】
織物基材Bの外側面上の貫通開口は、平均の大きさが、0.05mm2以下、0.01mm2以下、0.0090mm2以下、0.0070mm2以下、0.0050mm2以下、0.0040mm2以下、または0.003mm2以下である、という特長を有する。
【0089】
織物基材Bの外側面上の開放された貫通開口は、平均の大きさが、0.0001mm2以上、好ましくは、0.001mm2以上である、という特長を有する。
【0090】
貫通開口の平均の大きさを測定する例示的な手順は、以下のとおりである。(少なくとも5つの)サンプルを、走査型電子顕微鏡を用いて、同じ拡大率で、各パラメータを以下のように設定して観察する。
加速電圧:10~11ボルト
ビーム開口サイズ:5.5~6
チャンバ内圧力:130パスカル
拡大率:100倍
使用する検出器:ABSレンズ
【0091】
画像解析は、Topo Mapsソフトウェアを用いて行う。複合物の外側面の構造の分析には、Topo Mapsソフトウェアの二値セグメンテーションを選択して使用する。各サンプルについて、3つの異なる領域を評価する。各サンプルについて、以下の情報を記録する。すなわち、100倍拡大像と、2値画像と、細孔の表面分布のヒストグラムと、貫通開口の表面積の統計的平均と、である。
【0092】
これらの貫通開口は、複合物の外側面から、すなわち、複合物における、外部の大気の方向を向く面であり、使用者の方向を向かない面から観察されるので、有利である。
【0093】
例えば、複合物の外側の貫通開口の数の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%に、金属層Cは設けられておらず、および/または、防護層Dは設けられていない。
【0094】
例えば、積層体の外側面上の貫通開口の数の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%は、平均の大きさが、0.05mm2以下、0.01mm2以下、0.0090mm2以下、0.0070mm2以下、0.0050mm2以下、0.0040mm2以下、または0.003mm2以下である。
【0095】
例えば、複合物の外側面上の貫通開口の数の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%は、平均の大きさが、0.0001mm2以上、好ましくは、0.001mm2以上である。
【0096】
これらの数の百分率は、Topo Mapsソフトウェアを用いて得られた画像を分析して算出する。例えば、好ましくは、少なくとも30の貫通開口を含むように特定した寸法を有する正方形内の、開放された貫通開口の数、または貫通開口の大きさを、少なくとも3回算出する。
【0097】
好ましくは、本明細書において、金属層は、特に金属層CまたはDについて、ポリマー層中に充填剤として分散させた金属を含まない、任意の層を意味するものと理解される。
【0098】
好ましくは、本明細書において、金属層は、薄膜堆積技術(例えば、PVDまたはPECVD)によって堆積させた任意の層を意味するものと理解され、より好ましくは、少なくとも1種のポリマー結合剤の水性分散液もしくは水性溶液、または溶媒分散液もしくは溶媒溶液のコーティングまたは含浸を経ず、前記分散液または溶液に分散させた、少なくとも1種の金属充填剤を含む。
【0099】
ある実施形態において、複合物は、金属層Cのための防護層Dをさらに含む。
【0100】
防護層Dは、好ましくは、薄膜堆積技術によって堆積させる。
【0101】
防護層Dは、物理気相成長技術によって、またはプラズマ化学気相成長技術によって、特に、真空下で、堆積させることができる。
【0102】
物理気相成長技術は、本発明の第4態様を参照して前述または後述するように、任意に、磁界によって向上させた、真空蒸着法またはスパッタリング堆積法であってもよい。
【0103】
ある実施形態において、金属層Dは、ポリマー結合剤を含まない。
【0104】
織物基材Bは、金属層Cによって被覆されているが、1または複数種類の気相前駆物質に晒してもよく、気相前駆物質は、金属層Cの外側面上で反応または分解することで、所望の堆積物を生成する。
【0105】
よって、防護層Dは、アルミニウム、銀、チタンを含まない、金属層または化学層であってもよく、特に、金属を含まない化学層であってもよい。
【0106】
金属を含まない化学層は、シリカ系(例えば、SiO2)であってもよく、炭素化学の材料に基づいていてもよく、ポリマーまたはオリゴマーであってもよい。
【0107】
好ましくは、防護層Dは、厚さが、500μm以下または100μm以下、より好ましくは、50μm以下、好ましくは、10μm以下、特に、1μm以下、特に、200nm以下、150nm以下、または100nm以下である。
【0108】
防護層Dは、好ましくは、厚さが、1nm以上または10nm以上である。
【0109】
防護層Dの機能は、悪天候(雨、紫外線等)による酸化および劣化から金属層Cを防護することである。
【0110】
ある実施形態において、防護層Dは、金属層Dであり、少なくとも1種の金属M2を含み、任意に合金の形態である。
【0111】
特に、M2は、金属層Cの少なくとも1種の金属M1とは異なり、または、金属M1を含む合金とは異なる合金に含まれている(M2は、M1と同一であってもよい)。
【0112】
好ましくは、金属層Dは、物理気相成長技術によって、特に、(上述のように)スパッタリングによって、または、プラズマ化学気相成長技術(PECVD)によって、堆積させる。
【0113】
好ましくは、金属層Dは、真空下で堆積させる。
【0114】
好ましくは、金属M2は、クロム、ニッケル、クロム-ニッケル合金、またはチタンであってもよい。
【0115】
本明細書において、薄膜堆積技術/工程は、特に、真空下で行う、(特に、本明細書において記載するように)任意の物理気相成長技術/工程、特に、真空下で行う、任意のプラズマ化学気相成長技術/工程、またはこれらの組み合わせであると理解される。
【0116】
一実施形態において、防護層Dは、二酸化チタンを含む金属層であり、特に、少なくとも1種の金属M2は、チタンであり、さらに特には、防護層Dは、撥水性の層でもある。
【0117】
一実施形態において、防護層Dは、撥水性の層である。
【0118】
(複合物の外側面に関して、このテキストにおいて以下に記載するように)撥水性の目標値は、好ましくは、少なくとも1回の洗浄後、3を超える、好ましくは、4以上の評価である。
【0119】
防護層Dは、薄膜堆積技術によって得られる層であり、撥水性を有する、という特長を有する。
【0120】
一実施形態において、防護層Dは、二酸化チタンを含み、特に、本質的に二酸化チタンからなる。
【0121】
一実施形態において、防護層Dは、二酸化チタンを、少なくとも60質量%、さらに特には少なくとも70質量%、少なくとも80質量%、少なくとも90質量%、または少なくとも約95質量%含む。
【0122】
ある要素(例えば、層)の少なくとも90質量/体積%または少なくとも95質量/体積%が1または複数のサブ要素から形成されている場合、その要素は、本質的にサブ要素からなると、本明細書において理解される。
【0123】
ある実施形態において、防護層Dは、少なくとも1種のポリマーを含み、特に、金属を含まない層である。
【0124】
当業者は、PECVDによって堆積させるポリマーまたはオリゴマーを選択する際に、ポリマーまたはオリゴマーが、金属層Cの放射率の性質を変質させず、酸化および紫外線に対する金属層Cのための防護的機能を与えるようにすることを知っている。
【0125】
ある実施形態において、織物基材Bは、繊維および/またはフィラメントを含み、任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M1は、この繊維および/またはフィラメントを少なくとも部分的に覆う。
【0126】
任意に合金の形態である金属M1は、織物基材の外側面の繊維および/またはフィラメントの表面に直接接触している。
【0127】
この構成は、選択した堆積技術によって可能となる。
【0128】
ある実施形態において、複合物は、金属層Dと外部の大気との間に配置される熱絶縁性の織物層を含まない。
【0129】
ある実施形態において、複合物は、熱絶縁性の織物層を含まない。
【0130】
好ましくは、本発明に係る複合物は、熱絶縁物品中での使用を意図しておらず、したがって、例えばフェルト等の、厚い熱絶縁層を含まない。実際、熱絶縁の層を設けると、水蒸気に対する複合物の抵抗性を改質してしまう。この絶縁層によってブロックされた水蒸気は、絶縁層の表面で凝結し、水滴を形成することになる。
【0131】
ある実施形態において、複合物は、水蒸気に対する抵抗性(Ret)が、50m2.Pa.W-1以下であり、好ましくは、45m2.Pa.W-1以下、40m2.Pa.W-1以下、35m2.Pa.W-1以下、30m2.Pa.W-1以下、25m2.Pa.W-1以下、20m2.Pa.W-1以下、または15m2.Pa.W-1以下である。
【0132】
「水蒸気に対する抵抗性」という用語は、水蒸気が複合物を、特にその内側面から外側面に、通過するのに必要なエネルギーの測定値を意味するものと理解される。
【0133】
特に、これは、本発明に係る複合物の内側面と外側面との間の水蒸気の圧力差を、勾配の方向における単位表面積当たりの蒸発による熱流で除算したものである。
【0134】
それゆえ、Retが低いほど、複合物の通気性は高くなる。
【0135】
水蒸気に対する抵抗性(Ret)は、好ましくは、ISO11092の規格、特に、2014年(9月)に始まる「Textiles - Physiological effects - Measurement of thermal and water-vapour resistance under steady-state conditions (sweating guarded-hotplate test)」というタイトルの規格にしたがって測定する。特に、この測定では、複合物は、厚さが、5mm以下、特に、1mm以下である。
【0136】
ある実施形態において、織物基材Bは、平均の大きさが0.005mm2以下である貫通開口を含む。
【0137】
貫通開口の平均の大きさは、内側面上または外側面上で測定できる。
【0138】
測定手順は、上述のとおりである。
【0139】
ある実施形態において、複合物の外側面は、撥水性を有する。
【0140】
これにより、水が複合物の外側面上に停滞し、複合物における水蒸気に対する透過性を障害することを防止する。
【0141】
好ましくは、撥水性は、NF EN ISO4920の規格、特に、2013年1月に始まる「Textile fabrics - Determination of the resistance to surface wetting (spray test)」というタイトルの規格にしたがって測定する。この国際基準は、織物布地における水による表面濡れに対する耐性を特定するスプレー試験方法を規定する。
【0142】
撥水性は、1から5のスコアリング尺度で、5を測定する撥水性の最高値とし、1を最低値として評価する。
【0143】
目標値は、好ましくは、少なくとも1回の洗浄後、3を超えるスコア、好ましくは、4以上のスコアである。
【0144】
撥水性は、金属層Cまたは防護層Dの外側面上に、アルキル基、アクリル酸、またはこれらの組み合わせを含むウレタン等の、少なくとも1種類の、特に、非フッ素化させた、撥水剤の溶液または水性分散液を(例えば、含浸によって)塗布することによって得ることができる。
【0145】
そのような撥水剤およびそれらの塗布方法は、当業者にとって周知である。
【0146】
一実施形態において、複合物の外側面は、防護層Dの外側面である。
【0147】
防護層Dは、内側と外側とを含み、特に、実質的に互いの反対側に位置しており、外側は、直接的に複合物の外部の方向を向いており、特に、直接的に外部の大気の方向を向いている、という特長を有する。
【0148】
防護層Dは、撥水性を有する、という特長を有する。
【0149】
防護層Dは、金属層Cの外側面に直接的に対向する内側面を有する、という特長を有する。
【0150】
ある実施形態において、複合物の外側面は、放射率が、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下、または0.30以下である。
【0151】
放射率(ε)は、熱を吸収し、放射によって熱を放出する、物体の表面の性質であり、同じ温度における、その表面によって放射されるエネルギーと、黒体によって放射されるエネルギーと、の間の比率によって表現される。黒体とは、全ての波長において受け取る電磁放射の全てを吸収する理論上の物体のことである。黒体を通過する電磁放射はなく、反射される電磁放射もない。
【0152】
0.30以下の放射率とは、複合物の外側面によって受け取られる日射の、特に、赤外放射の、少なくとも70%は、外部の大気中に再放出され、日射の30%以下は、吸収および/または透過されることを意味する。
【0153】
よって、放射率は、その物体の温度、放射の方向、波長、および、とりわけ複合物の内側面と外側面との表面状態を含む数多くのパラメータに依存する。
【0154】
本明細書において、「反射」という用語は、性質の異なる2つの伝播媒体を分離する表面に投射された波が、元の媒体に戻る現象を意味するものと理解される。特に、前記複合物に関しては、外側面が第1の媒体として作用し、外側面が対向する周囲空気が第2の媒体として作用する。
【0155】
本明細書において、「放射線の伝播」という用語は、放射線が、波長を変えることなく媒体を通過すること、特に、前記複合物を通過することを意味するものと理解される。
【0156】
本発明にとっての日射は、太陽スペクトルを含み、太陽スペクトルは、特に、可視放射と、赤外放射と、紫外放射と、を含む。
【0157】
好ましくは、本明細書において対象とする赤外放射は、近赤外放射と遠赤外放射とを含み、または近赤外放射と遠赤外放射とであり、特に、遠赤外放射を含み、または遠赤外放射である。
【0158】
遠赤外(FIR)放射は、地面、前記複合物、形成され得る内部チャンバ、保護領域に配置される物体、および、最後に、とりわけ、保護領域内の、もしくは前記物品を含む衣服を着用する、1または複数の使用者等の、様々な物体から放射される熱放射の一部である。
【0159】
遠赤外線波は、ダメージを与えることなく皮膚を透過し、太陽と同様に、しかし有害な紫外放射を伴わず、使用者の体の組織を熱する。
【0160】
好ましくは、遠赤外放射は、波長が5μm以上の任意の放射線を意味するものと理解される。
【0161】
本明細書において、放射線の吸収は、材料の、本発明の場合は、前記複合物の、厚さ内での前記放射線の透過、保持、および同化を意味するものと理解される。
【0162】
反射、伝播、および吸収の割合は、投射される放射線、特に、日射における、反射、伝播、および吸収される部分として定義される。
【0163】
放射率、反射、伝播、および吸収は、前記複合物の放射の性質となる。
【0164】
前記複合物の外側面における、特に赤外線の、特に遠赤外線の、放射率は、NF EN 15976の規格、特に、2011年7月付の、「Flexible sheets for waterproofing - Determination of emissivity」というタイトルの規格にしたがって測定できる、という特長を有する。
【0165】
ある実施形態において、複合物の外側面は、水不透過性を有する。
【0166】
複合物の水不透過性は、NF EN ISO 811の規格、特に、2018年5月付の「Textiles - Determination of resistance to water penetration - Hydrostatic pressure test」というタイトルの規格に記載された測定方法によって評価できる。
【0167】
ある実施形態において、任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M1は、アルミニウム、銀、金、ステンレス鋼、亜鉛、スズ、鉛、銅、チタン、クロム、ニッケル、およびこれらの混合物からなるリストから選ばれ、好ましくは、アルミニウムである。
【0168】
ある実施形態において、任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M2は、アルミニウム、銀、金、ステンレス鋼、亜鉛、スズ、鉛、銅、チタン(特に、二酸化チタンの形態)、クロム、ニッケル、およびこれらの混合物からなるリストから選ばれ、好ましくは、アルミニウムまたは二酸化チタンである。
【0169】
好ましくは、少なくとも1種の金属M2は、少なくとも1種の金属M1とは異なり、または、少なくとも1種の金属M2は、金属M1と同一であり、金属層Cは、防護層Dにおける金属M2の合金とは異なる、金属M1の合金を含む。
【0170】
ある実施形態において、特に、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aによって少なくとも部分的に形成される、前記複合物の内側面は、使用中に、水滴から防護される使用者または物体に直接的に対向する方向を向いている。
【0171】
使用中に、複合物の内側面は、好ましくは、空気の層と接触している。
【0172】
本発明は、第2態様によると、
本発明の第1態様を参照する各実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの複合物を含む物品であって、
雨および/または風から使用者を防護するための装置であって、保護領域を含み、特に、寝袋の防護的な外袋、テント、日/雨覆い、防護防水シート、傘、日除け、カーテン、ブラインドから選ばれる、装置と、
雨および/または風に対する防護のための衣服と、
を含むリストから選ばれる、という特長を有する、物品に関する。
【0173】
ある例示的な実施形態において、前記物品は、雨および/または風からの防護のための装置であって、保護領域を含み、特に、寝袋の防護的な外袋、テント、日/雨覆い、および防護防水シートから選ばれ、さらに特には、寝袋の防護的な外袋、テント、および日/雨覆い、から選ばれる。
【0174】
ある例示的な実施形態において、前記物品は、雨および/または風に対する防護のための衣服である。
【0175】
前記防護的衣服は、セーリング用ダンガリー、ハイキング用ジャケット等であってもよい。
【0176】
本発明に係る物品は、テントであってもよい。
【0177】
テントは、内部チャンバを含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、テントは、内部チャンバを含まない。
【0178】
雨および/または風からの防護のための装置は、保護領域、すなわち、使用者が、例えば、雨、風、および/または太陽から少なくとも部分的に退避できる領域を含む。
【0179】
複合物の内側面は、空気の層、例えば、厚さが最小の(例えば、5mm、3cm、15cm、または20cm程度の)、特に、複合物と内部チャンバとにわたる、または保護領域内の空気に直接的に対向する、空気の層と少なくとも部分的に接触している。
【0180】
ある実施形態において、前記複合物は、雨および/または風からの防護のための装置、特に、テント、日/雨覆い、または寝袋の外袋における、単一の壁部を含む屋根部または単一の壁部を含む衝立部を少なくとも部分的に形成する。
【0181】
これにより、先行技術による既存の物品と比較して、前記物品を軽量化できる。
【0182】
本発明は、第3態様によると、
テントであって、
前記テントは、少なくとも一部が単一の壁部を含む屋根部を含み、
前記テントは、単一の壁部を含む前記少なくとも一部を形成する、本発明の第1態様を参照する各実施形態のいずれかによる少なくとも1つの複合物を含む、テントに関する。
【0183】
ある実施形態において、前記テントは、単一の壁部の屋根部を含み、前記テントは、単一の壁部の前記屋根部を少なくとも部分的にまたは全体的に形成する、本発明の第1態様を参照する各実施形態のいずれか1つによる、または本発明の第4態様を参照する各実施形態のいずれか1つによる製造プロセスによって得らえる、1または複数の複合物を含む。
【0184】
第1の例において、前記テントは、テントの単一の壁部の屋根部を少なくとも部分的にまたは全体的に形成する複合物を含む。
【0185】
第2の例において、前記テントは、テントの単一の壁部の屋根部を少なくとも部分的にまたは全体的に形成する、組み合わされた、特に、縁に沿って縫った、および/または溶接した、および/または接着した、いくつかの複合物を含む。
【0186】
一実施形態において、前記テントは、展開した状態のテントに張力を加えて保持するための装置であって、単一の壁部を含む屋根部の外側に少なくとも部分的に展開するように構成された1または複数の張力ロッドを含む装置を含む。
【0187】
本発明における単一の壁部の屋根部は、単一の壁部、または互いに接合させた複数の壁部であって、単一の壁部を含むテントの内側チャンバを、外部の大気から区切る壁部を意味するものと理解される。
【0188】
本発明は、第4態様によると、
水の凝結を限定する複合物を作製するための方法であって、前記複合物は、内側面と外側面とを有し、前記外側面は、外部の大気に直接的に対向する方向を向いており、特に、本発明の第1態様を参照する各実施形態のいずれか1つによる複合物であり、
前記方法は、
a-内側面と外側面とを有する少なくとも1つの織物基材Bを設ける工程と、
b-前記織物基材Bの前記内側面上に、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aを堆積させる工程と、
c-任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M1の薄層を、前記織物基材Bの前記外側面上に直接的に堆積させることで、金属層Cを製造する工程であって、特に、薄層を堆積させる前記工程は、物理気相成長工程である、工程と、
d-任意に、前記金属層Cの外側面上に、前記金属層Cの防護層Dを塗布する工程であって、特に、前記工程d)は、物理気相成長工程または化学気相成長工程である、工程と、
e-任意に、前記金属層Cの前記外側面上に、または前記防護層Dの外側面上に撥水加工層を塗布する工程と、を(特に、この順に連続して)含む、方法に関する。
【0189】
好ましくは、金属層Cと、任意に防護層Dとは、薄膜堆積技術によって、特に、蒸着により、層Cおよび/または防護層Dに物理的に作用することによって、または防護層Dに化学的に作用することによって、堆積させる。
【0190】
物理気相成長は、真空蒸着法であってもよく、または、好ましくは、陰極スパッタリングによるもので、任意に、磁界によって向上させてもよい。
【0191】
以下で本発明の第4態様を参照して記載している薄膜堆積技術に関する技術的特徴、代替手段、実施形態は、本発明の第3態様、第2態様、または第1態様に独立して適用される。
【0192】
薄膜CまたはDの蒸着
(特に、層Cの製造のための)薄膜堆積工程c)は、物理気相成長工程であって、特に、
-真空蒸着工程、または
-好ましくは、陰極スパッタリング堆積工程であって、任意に、磁界によって向上させる工程
である、という特長を有する。
【0193】
(特に、層Dの製造のための)工程d)は、薄膜堆積工程であって、特に、
-物理気相成長工程(PVD(物理蒸着法)として知られている)、さらに特には、
-真空蒸着工程であって、特に、金属層Cを作製するためのチャンバで実行する工程、または、
-スパッタリング堆積工程であって、任意に、磁界によって向上させ、特に、金属層Cを作製するためのチャンバで実行し、特に、真空下で実行する工程、または、
-好ましくは、プラズマ化学気相成長(PECVD)であって、特に、金属層Cを作製するためのチャンバで実行する工程、または、
-PVD工程とPECVD工程との組み合わせであって、特に、これら2つの工程が同時に起こる工程
である、という特長を有する。
【0194】
第1実施形態において、真空蒸着工程(特に、工程c)または工程d))は、少なくとも1種の金属M1(もしくは、少なくとも1種の金属M2)、または少なくとも1種の金属M1の合金(もしくは、少なくとも1種の金属M2の合金)の真空蒸着工程を含む。少なくとも1種の金属M1もしくはM2、またはその合金の蒸発工程は、熱蒸発等の様々な技術によって実施できる。
【0195】
特に、この蒸発工程は、任意に合金の形態である少なくとも1種の金属M1(またはM2)を、真空チャンバに配置したるつぼ内に配置することを含む。
【0196】
この蒸発工程で、るつぼは、金属層Cを堆積させる際に、織物基材Bの外側面に対向するように配置される、または、金属層Dを堆積させる際に、金属層Cの外側面に対向するように配置される、という特長を有する。少なくとも1種の金属M1もしくはM2、またはその合金は、その後、特に、加熱によって気化させ、織物基材Bの外側面上、または金属層Cの外側面上での凝結によって堆積させる。
【0197】
金属層Cまたは防護的な金属層Dの所望の厚さによって、この操作を何度か繰り返すことが可能である。
【0198】
好ましくは、るつぼ(すなわち、溶融した状態の、少なくとも1種の金属M1もしくはM2、またはM1もしくはM2の合金を含む入れ物)は、織物基材Bの外側面、または金属層Cの外側面に拡張させて対向するように配置できる、という特長を有する。これは、特に、拡張源を用いた真空蒸着と呼ばれる。好ましくは、この場合、気化させた金属粒子は、実質的に垂直線に沿って織物基材Bまたは金属層Cの方に向ける。この場合、好ましくは、形成される金属層は、規則的な、すなわち実質的に一定の厚さを有する。
【0199】
るつぼ(すなわち、溶融した状態の、少なくとも1種の金属M1またはM2を含む入れ物)は、織物基材Bまたは金属層Cに対向する点に配置できる。これは、点状源を用いた真空蒸着と呼ばれる。好ましくは、この場合、気化した粒子は、実質的に円弧に沿った方向に向ける。この場合、好ましくは、形成される金属層は、不規則な厚さを有する。これは、中心が縁よりも厚いからである。この影響を低減するために、チャンバで加えられる圧力を低下させることが可能である。しかしながら、その場合、堆積の速度が低下する。
【0200】
第2の、特に、好ましい実施形態において、特に、磁界と組み合わせた、スパッタリング堆積工程(特に、工程c)または工程d))は、好ましくは、電子衝撃等の様々な技術によって実現される、少なくとも1種の金属M1もしくはM2、またはその合金の蒸発の工程を含む。
【0201】
特に、このスパッタリング工程では、ダイオード(すなわち、陰極と陽極とのアセンブリ)を配置したチャンバが用いられ、プラズマの形成を含む。
【0202】
特に、チャンバは、陰極を形成するスパッタリング対象を含み、スパッタリング対象は、少なくとも1種の金属M1もしくはM2、またはその合金を含む(または、実質的に、少なくとも1種の金属M1もしくはM2、またはその合金からなる)。チャンバは、任意に、金属層Cによって被覆された織物基材Bが固定されている陽極であって、織物基材Bまたは金属層Cの外側面が、特に、陰極から数センチメートル離れて陰極に対向するような陽極をさらに含む。
【0203】
スパッタリング工程は、チャンバ内で真空状態を確立させ、その後、一定量の気体、好ましくは、アルゴン、または任意の他の同等の気体、またはこれらの混合物を導入し、2つの電極(陰極および陽極)の間に電圧を印加して、チャンバの空気をイオン化し、グロー放電プラズマを生成する工程を含む、という特長を有する。対象の陰電位により、残留ガス中の陽イオンは、対象に向かって急速に移動/流動し、高速で対象に当たる。対象の金属粒子は引き剥がされ、プラズマと交差する際に気化し、陽極によって捕捉される。これにより、対象からのこれらの金属粒子は、陽極に固定した織物基材Bまたは金属層C上に堆積する。
【0204】
好ましくは、陰極と陽極との間に電圧を印加する際には、さらに、磁界を、特に、対象に重畳させて用いる。
【0205】
これにより、陰極の近傍で気体分子をさらにイオン化することが可能となり、これにより、生成されるイオンと対象との間の衝突の数が増加する。したがって、イオン化率が向上し、よって、得られるスパッタリングの収率、および究極的には堆積物の収率を高めることが可能となる。さらに、プラズマは、磁界によって、対象に向かって位置し、したがって、基材に加えられる温度は低くなる。これは、使用する織り糸/繊維によって耐熱性が限定される織物基材Bにとって有利である。
【0206】
任意に、磁界によって向上させた、(マグネトロンスパッタリングと呼ばれる)スパッタリング堆積技術は、織物基材B上への化学的および物理的付着の面で良好な結果が得られる。さらに、この技術によって、より複雑な合金を堆積できる。最後に、金属粒子の堆積は、織物基材Bの外側面の可能な限り近くで起こる。したがって、金属粒子は、織物の微細構造上に堆積する。これは、水蒸気に対する透過性を維持するのに好都合である。
【0207】
第3実施形態において、工程d)は、プラズマ化学気相成長工程である。プラズマは、好ましくは、酸素のプラズマ、アルゴンのプラズマ、または酸素とアルゴンとの混合物のプラズマであり、例えば、有機ケイ素化合物、例えば、線状もしくは環状のシロキサン、または、例えば、金属M2、例えば、チタンもしくはアルミニウム、好ましくは、チタン、または、好ましくは、金属M2を含む化合物(例えば、チタン)等の、化学的な前駆物質をさらに含む。
【0208】
例えば、金属M2を含む化合物は、チタンイソプロポオキシド(TTIP)であってもよい。
【0209】
金属M2がチタンである場合、防護層Dは、二酸化チタンの金属性の層である、という特長を有する。
【0210】
一般に、当業者は、様々な物理または化学気相成長技術を知っており、対象基準にしたがって薄膜CおよびDを塗布する方法を知っている。
【0211】
薄膜堆積技術を用いることにより、織物基材Bまたは金属層Cにおける、水蒸気に対する透過性が著しく改質されないようにすることができるとともに、複合物の外側面の放射率のレベルを下げることで、放射冷却の現象に関連する影響を限定できる、という特長を有する。
【0212】
第4実施形態において、金属層Cおよび/または防護層Dは、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aに結合する織物基材Bの外側面上に堆積しており、特に、基材Aは、織物基材Bの内側面上に配置されている。
【0213】
第5実施形態において、金属層Cは、織物基材Bの外側面上に堆積しており、織物基材Bは、金属層Cを堆積させる際に、防水性かつ水蒸気透過性の基材Aと結合していない。
【0214】
任意に第5実施形態と組み合わせる第6実施形態において、金属層Dは、織物基材Bの外側面上に堆積しており、織物基材Bの外側面は、金属層Cによって少なくとも部分的に覆われており、織物基材Bは、金属層Dを堆積させる際に、防水性かつ水蒸気透過性の基材Aと結合していない。
【0215】
ある実施形態において、
前記各工程を、
a-内側面と外側面とを有する少なくとも1つの織物基材Bを設ける工程と、その後、
c-合金の形態であってもよい少なくとも1種の金属M1の薄層を、前記織物基材Bの前記外側面上に直接的に堆積させることで、金属層Cを製造する工程であって、特に、薄層を堆積させる前記工程は、物理気相成長工程である、工程と、その後、
d-任意に、前記金属層Cの外側面上に、前記金属層Cの防護層Dを堆積させる工程と、
b-前記織物基材Bの前記内側面上に、防水性かつ水蒸気透過性の基材Aを堆積させる工程と、
の順に実行する。
【0216】
層Cは、防水性かつ水蒸気透過性の基材Aのない織物基材B上に堆積させることで、織物基材Bのみが層Cによって少なくとも部分的に覆われているようにする、という特長を有する。
【0217】
防水性かつ水蒸気透過性の基材Aは、金属層Cおよび/または金属層Dによって被覆されていない、という特長を有する。
【0218】
加えて、薄膜堆積技術により、C層と、可能性としてD層とが、細孔を閉塞させることなく、織物基材Bの織物部分のみに結合できる。よって、水蒸気は、(特に、層Cおよび/または層Dによって閉塞されていない)基材Aを通って、その後、(特に、層Cおよび/または層Dによって閉塞されていない)織物基材Bの細孔を通って、より容易に流動する。
【0219】
ある実施形態において、工程d)は、防護層Dの薄膜堆積工程であり、特に、少なくとも1種の金属M2(さらに特には、金属M1とは異なる、もしくは、金属M1と同一であるが、合金の形態であって、金属M1の前記合金とは異なる、金属M2)の物理気相成長工程、もしくは、金属を含まない、少なくとも1種の化学的な化合物の化学気相成長工程、または、防護層Dを形成するための、金属層Cの外側面上への二酸化チタンの化学気相成長の工程である。
【0220】
金属を含まない化学的な化合物は、炭素および/または酸素を含み、任意にケイ素原子(Si)を含む、任意の化合物を意味するものと理解されるものとする。
【0221】
一実施形態において、工程d)は、防護層Dの薄層を堆積させる工程であり、特に、二酸化チタンを含む金属性の防護層Dを堆積させる工程である。
【0222】
ある実施形態において、前記複合物は、内側面から外側面に向かって、
-任意に、防護的な織物層Eと、
-水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aであって、特に、水不透過性かつ水蒸気透過性の膜、または水不透過性かつ水蒸気透過性のポリマー被覆を含む、基材Aと、
-織物基材Bと、
-金属層Cであって、好ましくは、薄膜堆積技術によって堆積させた、金属層Cと、
-任意に、金属層Cの防護層Dであって、好ましくは、薄膜堆積技術によって堆積させた、防護層D、より好ましくは、防護的な金属層Dであって、例えば、二酸化チタンからなる防護層D、または防護的なポリマー層Dと、
-任意に、撥水加工層であって、特に、前記複合物の外側面を撥水性にするための、または、防護層Dが二酸化チタン層である場合、防護層Dも撥水性を有するための、撥水加工層と、を含む。
【0223】
本発明は、本発明の第5態様によると、
複合物の使用であって、
前記複合物は、本発明の第1態様に係る各実施形態のいずれか1つによる、または本発明の第4態様に係る方法を実行することによって得られる、複合物であり、内壁上の水の凝結を限定または防止する物品を作製するための、特に、少なくとも、テント屋根部における単一の壁部を含む一部を製造するための、複合物である、使用に関する。
【0224】
前記物品は、前記複合物を含み、前記物品の少なくとも1つの内壁は、前記複合物の内側面を含む(または、前記複合物の内側面から少なくとも部分的に形成される)、という特長を有する。
【0225】
前記物品における、外部の大気の方向を向く外側面は、前記複合物の外側面を含む(または、前記複合物の外側面から少なくとも部分的に形成される)、という特長を有する。
【0226】
前記物品は、好ましくは、雨および/または風から使用者を防護するための装置であって、保護領域を含み、特に、寝袋の防護的な外袋、テント、日/雨覆い、防護防水シート、傘、日除け、カーテン、ブラインドから選ばれる、装置と、雨および/または風に対する防護のための衣服と、であり、より好ましくは、雨および/または風から使用者を防護するための装置であって、保護領域を含み、特に、寝袋の防護的な外袋、テント、日/雨覆いから選ばれる、装置である。
【0227】
前記物品は、本発明の第2態様を参照して定義される物品であってもよい。
【0228】
一般に、第1、第2、第3、第4、および第5態様に係る代替手段/実施形態は、互いから独立して、互いと組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0229】
本発明は、本発明の各実施形態の以下の記載を読めば、より良く理解されるであろう。以下の記載は、非限定的な例としてのみ提供され、以下の添付図面を参照する。
【
図1】本発明に係る複合物の第1の例の断面を模式的に示す。
【
図2】本発明に係る複合物の第2の例の断面を模式的に示す。
【
図3】先行技術による複合物の比較例を模式的に示す。
【
図4】本発明に係る物品の第1の例であって、
図1および
図2に示す第1または第2の例を含む、単一の壁部を含むテントを模式的に示す。
【
図5】走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、織物基材Bの外側面の写真を模式的に示す。織物基材Bの内側面には金属層Cがなく、織物基材Bの外側面は金属層Cによって覆われている。したがって、複合物は、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材Aを含まない。
【
図6】走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、織物基材Bの外側面の写真を模式的に示す。織物基材Bの内側面は、基材Aを形成する、水不透過性かつ水蒸気透過性の被覆によって覆われており、外側面は、金属層Cによって覆われている。
【
図7】走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、織物基材Bの外側面の写真を模式的に示す。織物基材Bの内側面は、基材Aを形成する、水不透過性かつ水蒸気透過性の膜によって覆われており、外側面は、金属層Cによって覆われている。
【
図8】本発明に係る物品の第2の例であって、
図1および
図2に示す第1または第2の例を含む、単一の壁部を含むテントを模式的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0230】
本発明に係る複合物10としての第1の例は、実質的に互いの反対側に位置する内側面12および外側面14を有する。複合物10は、水不透過性かつ水蒸気透過性の基材A,20を含み、基材A,20は、実質的に互いの反対側に位置する内側面22および外側面24を有する。基材Aは、水および水蒸気に対して不透過性を有するポリマー被覆26からなり、例えば、ポリウレタンを材料とし、微孔質である、という特長を有する。複合物10は、織物基材B,30を含み、織物基材B,30は、実質的に互いの反対側に位置する内側面32および外側面34を有し、内側面32は、基材A,20の外側面24と対向するように配置される。複合物10は、金属層C,40を含み、金属層C,40は、実質的に互いの反対側に位置する内側面42および外側面44を有し、内側面42は、織物基材Bの外側面34と対向するように配置される。よって、基材A,20と、織物基材B,30と、金属層C,40とは、実質的に積層されている。
【0231】
金属層C,40は、金属M1を材料とする金属層であり、好ましくは、M1はアルミニウムである、という特長を有する。
【0232】
任意に、複合物10は、金属層Cのための防護層D,50を含む。防護層D,50は、実質的に互いの反対側に位置する内側面52および外側面54を有する。防護層D,50の内側面52は、金属層C,40の外側面44と対向するように配置される。
【0233】
この具体例において、防護層D,50は、金属M2を含む金属層であり、金属M2は、特に、合金の形態であり、特に、ニッケル-クロム合金である。
【0234】
複合物10の外側面14は、直接的に外部の大気の方向を向くように意図されている一方で、内側面12は、使用者、特に、使用者が退避/駐在できる保護領域の方向を向くように意図されている、という特長を有する。
【0235】
金属層C,40と、任意に金属層D,50とは、好ましくは、物理気相成長によって、特に、スパッタリングによって、特に、磁界によって向上させて、堆積させる。金属層C,40は、厚さが例えば80nm程度である。金属層D,50は、厚さが例えば80nm程度である。
【0236】
代替的に、防護層Dは、化学気相成長工程、特に、プラズマ化学気相成長の間に堆積させ、好ましくは、プラズマは、分子状の窒素またはアルゴンと、少なくとも1種の化学的な前駆物質、例えばオルガノシランと、を含む。
【0237】
好ましくは、防護層Dの外側面54は、撥水加工で、特に、非フッ素化難燃剤に基づく撥水加工で、処理されている。
【0238】
代替的な例において、防護層Dが二酸化チタンの薄層である場合、防護層Dの外側面は、本来的に撥水機能を有するため、撥水処理は必要としない。
【0239】
本発明に係る複合物100としての第2の例は、内側面102から外側面104に向かって、防護的な織物層E,115と、水に対して不透過性を有し、水蒸気に対して透過性を有する基材A,120であって、水および水蒸気に対して不透過性を有するポリマー被覆126からなる、例えば、ポリウレタンであり、微孔質の、基材Aと、織物基材B,130と、金属層C,140と、任意に防護層D,150と、を含む。
【0240】
この具体例における防護層D,150は、金属M2を含む金属層であり、特に、合金の形態であり、特に、ニッケル-クロム合金である、という特長を有する。
【0241】
金属層Cと、任意に金属層Dとは、好ましくは、物理気相成長によって、特に、スパッタリングによって、堆積させる、という特長を有する。金属層C,140は、厚さが例えば80nm程度である。金属層D,150は、厚さが例えば80nm程度である。金属層C,140は、金属M1、好ましくはアルミニウムを含む。
【0242】
代替的に、防護層Dは、化学気相成長工程、特に、プラズマ化学気相成長の間に堆積させ、好ましくは、プラズマは、分子状の窒素またはアルゴンと、少なくとも1種の化学的な前駆物質、例えばオルガノシランと、を含む。
【0243】
代替的に、基材Aは、水不透過性かつ水蒸気透過性の膜であり、特に、微孔質であり、ポリウレタンを材料とする。
【0244】
好ましくは、防護層D,150の外側面154は、撥水加工で、上述の各難燃剤から選ばれる難燃剤に基づく。
【0245】
図3に示す複合物200としての比較例は、内側面202から外側面204に向かって、水に対して不透過性を有し、水蒸気に対して透過性を有するポリマー被覆210を含む基材Aと、金属層C,220と、織物基材B,230と、を含む。
【0246】
複合物200の外側面204は、放射率が0.65程度であり、Retが13m2.Pa.W-1程度である。金属層C,220が織物基材B,230の内側面232に配置されている場合、外側面204の放射率は過度に高くなり、複合物200の内側面202の熱放射加熱を効果的に抑制するには不十分である。
【0247】
前記各例で記載した織物基材Bは、繊度が150デニールの織り糸を含む布地であってもよく、特に、ポリエチレンテレフタラートを材料とし、単位面積当たりの質量が90g/m2であってもよい。
【0248】
代替的な例において、防護層D(50または150)は、二酸化チタンの薄層であり、撥水性の層としても作用する。防護層Dは、その後、化学気相成長工程で、特に、プラズマで支援して、堆積させ、好ましくは、プラズマは、二窒素またはアルゴンと、少なくとも1種の化学的な前駆物質であって、二酸化チタン層を形成するために、チタンまたは二酸化チタンである前駆物質と、を含む。好ましくは、薄層Dの堆積は、真空下において実行する。
【0249】
本発明に係る製造プロセスの例において、複合物10または100は、まず、金属層C(40または140)を織物基材B(30または130)の外側34に塗布し、その後、防護層D(50または150、すなわち二酸化チタンの薄層)を金属層Cの外側44に塗布し、最後に、防水性かつ通気性の基材Aを織物基材Bの内側32に塗布する、ことによって製造する。積層体の各層をこの順で積層することで、RETが最適化される。これは、水蒸気が基材Aを通って蒸発するのを促進し、よって、抗凝結効果が向上するためである。
【0250】
図4は、物品300の非限定的な例の断面を示す。この例は、本発明に係る複合物10または100を含む、単一の壁部を含むテント305である。
【0251】
この物品は保護領域310を含み、保護領域310では、使用者320または物体が、太陽、風、および雨から退避することができる。この具体例において、保護領域310は、単一の壁部を含むテント305の内部チャンバ315である。内部チャンバ315に蓄積する水蒸気は、矢印Fで示すように、複合物10または100を、内側面12または102から外側面14または104の方向に、外部の大気まで通過することで除去される。水蒸気と蓄積する熱とは、本発明に係る複合物の性質を利用して、内部チャンバから除去できる。水蒸気が保護領域から除去され、複合物の内側面と外側面との間の温度差が減じることで、水蒸気は、複合物の内側面上で凝結しない。よって、複合物は、内側面が乾燥したままとなり、使用者にとっての快適さが向上する。よって、物品300は軽量化しており、従来の内部チャンバは設けられていない。これにより、物品の搬送が容易となり、製造に必要な構成要素の数が少なくなり、その結果、再利用性が向上する。
【0252】
図8は、本発明に係る物品の第2の例を模式的に表す。この例は、本発明に係る複合物10または100を含む、単一の壁部を含むテント400である。特に、単一の壁部を含むテント400は、単一の壁部を含む屋根部410を含み、よって、単一の壁部を含む屋根部によって覆われる内側チャンバを含まない。単一の壁部を含む屋根部のみによって、内側チャンバが形成されている。
【0253】
単一の壁部を含む屋根部410は、複数の複合物10または100を互いに接合して形成されている、という特長を有する。
【0254】
好ましくは、テント400は、展開した状態の単一の壁部を含むテント420に張力を掛けて保持するための装置をさらに含む。
【0255】
以下に記載する各試験を、本発明に係る複合物と比較複合物との様々な構築物について実施した。
【0256】
比較例1:比較複合物であって、水蒸気不透過性のポリウレタン被覆と、織物基材(例えば、繊度が75デニール、重量が64g/m2程度のPET織り糸を含む)と、80nmの金属層Cと、撥水加工層と、を含み、重量/m2が89g/m2であり、厚さが0.15mmである複合物は、Retが222m2.Pa.W-1であり、撥水性グレードが4であり、不透過性が8017水柱mmである。Retは非常に高く、水蒸気が複合物の内側面上に蓄積し、凝結し、水滴を形成する。
【0257】
比較例2:比較複合物であって、織物基材(例えば、繊度が75デニール、重量が64g/m2程度のPET織り糸を含む)と、80nmの金属層Cと、撥水加工層と、を含み、重量/m2が68g/m2であり、厚さが0.10mmである複合物は、放射率が0.28であり、Retが3.54m2.Pa.W-1であり、撥水性グレードが4であり、不透過性が97.7水柱mmである。Retは非常に低いが、この複合物は、水に対して透過性を有し、したがって、使用者を雨から防護しない。
【0258】
本発明に係る例1:本発明に係る複合物であって、水蒸気透過性かつ水不透過性のポリウレタン被覆と、織物基材(例えば、繊度が75デニール、重量が75g/m2程度のPET織り糸を含む)と、80nmの金属層Cと、撥水加工層と、を含み、重量/m2が83g/m2であり、厚さが0.15mmである複合物は、放射率が0.30であり、Retが11.4m2.Pa.W-1であり、撥水性グレードが3であり、不透過性が6396水柱mmである。使用中(例えば、テントにおける単一の壁部を含む屋根部を形成する場合)、複合物の内側面上に水滴は形成されず、一晩の睡眠後も乾燥したままである。
【0259】
本発明に係る例2:本発明に係る複合物であって、水蒸気透過性かつ水不透過性の膜と、織物基材(例えば、繊度が75デニール、重量が64g/m2程度のPET織り糸を含む)と、80nmの金属層Cと、撥水加工層と、を含み、重量/m2が92g/m2であり、厚さが0.15mmである複合物は、放射率が0.26であり、Retが13m2.Pa.W-1であり、撥水性グレードが4.5であり、不透過性が5998水柱mmである。使用中(例えば、テントにおける単一の壁部を含む屋根部を形成する場合)、複合物の内側面上に水滴は形成されず、一晩の睡眠後も乾燥したままである。
【0260】
本発明に係る例3:本発明に係る複合物であって、メッシュの織物の防護層E(50g/m2のPETを材料とする)と、水蒸気透過性かつ水不透過性の膜と、織物基材(例えば、繊度が75デニール、重量が64g/m2程度のPET織り糸を含む)と、80nmの金属層Cと、撥水加工層と、を含み、重量/m2が150g/m2であり、厚さが0.33mmである複合物は、放射率が0.26であり、Retが32.1m2.Pa.W-1であり、撥水性グレードが4.5であり、不透過性が22531水柱mmである。使用中(例えば、テントにおける単一の壁部を含む屋根部を形成する場合)、複合物の内側面上に水滴は形成されず、一晩の睡眠後も乾燥したままである。この種類の複合物は、摩耗に対する基材Aの防護性を向上させることを求めるのであれば、興味深い可能性がある。しかしながら、実際には、例1および例2は、複合物の内側面上の水滴の不形成に関しては、非常に良好な性能を有し、それを防護層Eなしで実現することが認められている。
【0261】
本発明に係る例1から例3において、金属層C上に防護的な薄膜Dを堆積させ、防護層Dに撥水加工を施しているが、測定されるRetおよび放射率は、これによっては変化しない。防護層Dによって、金属層Cが酸化するのを阻止し、その寿命を延ばすことができる。
【0262】
前記各例において、金属層Cは、(すなわち、磁界によって向上させた)マグネトロンスパッタリングによって堆積させる。
【0263】
織物基材Bに対する付着と、放射率と、Retとについて同じ性能が得られるのであれば、物理的な薄膜堆積の他の同等の技術を使用してもよい。当業者であれば、それらの物理または化学気相成長技術を知っており、特に、本発明で特定される放射率とRetとの値を実現するためにどのパラメータを維持すべきかを知っている。
【0264】
図5および
図6は、上述の(特に、走査型電子顕微鏡とTopo Mapsソフトウェアとを用いた)測定手順にしたがって測定した織物基材B(400,500,600)の貫通開口の写真を示す。
【0265】
図5では、貫通開口410が見られ、
図6では510であり、
図7では610である。これらの貫通開口(410,510,610)は、織物基材B(400,500,600)の内側面と外側面とに延在し、開口している。織物基材B(400,500,600)は、特に、繊度が75デニールであるPET織り糸を含み、たて糸およびよこ糸を有する、64g/m
2の布地である。
【0266】
金属層Cは、好ましくは、マグネトロンスパッタリングによって堆積させた、80nmのアルミニウム層である。
【0267】
貫通開口は、
図5から
図7に見られるように、織り糸同士が互いと交差する箇所に形成されている、という特長を有する。
【0268】
図5で認められるように、金属層Cは、織物基材B,400の貫通開口410を塞がず、少なくとも1種の金属M1(この場合はアルミニウム)は、織り糸上に堆積している。
【0269】
図6では、貫通開口510は、基材Aを形成する、水不透過性かつ水蒸気透過性の被覆によって、織物基材Bの内側面から塞がれている。しかしながら、この基材Aは水蒸気に対して透過性を有するので、水蒸気は、基材Aを通過し、その後、貫通開口510を介して、織物基材Bと、金属層Cと、任意に(やはり織り糸/繊維に付着し、開口510を塞がない)防護層Dと、を通って排出される。
【0270】
図7では、基材Aは、織物基材Bの内側面上に積層した、水不透過性かつ水蒸気透過性の膜である。したがって、この膜は、織物基材Bの貫通開口610を塞がず、したがって、外側面からは見えない。
【0271】
一般に、基材Aは、水蒸気の排出を可能にする一方で、液状の水を通さないマイクロポアを含む。
【0272】
これらの貫通開口410、510、または610は、好ましくは、平均の大きさが0.01mm2以下であり、より好ましくは、0.003mm2以下かつ0.0001mm2以上であり、例えば、0.001~0.01mm2程度である。
【国際調査報告】