(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】バルビツール酸グリコシル系ゲル化剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20250117BHJP
C07D 405/04 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C09K3/00 103M
C07D405/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543242
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2023051377
(87)【国際公開番号】W WO2023139217
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サミ・ハリラ
(72)【発明者】
【氏名】ロバン・ブラミ
(57)【要約】
本発明は、ゲル化剤としての、一般式(I)[式中、- Saccは、ピラノース及び/又はフラノース形態であり、L及び/又はD系列の、単糖類又は最大20糖単位までを含む多糖類を表し、前記単糖類又は多糖類が、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル官能基を有し、- X
1
+は、Na
+、Li
+、K
+、
+NR
3R
4R
5R
6、及びR
7-NH
3
+からなる群から選択されるカチオンを表し、同一であるか又は異なってもよいR
3、R
4、R
5、及びR
6は、(C
1~C
20)アルキル基を表し、R
7は、(C
1~C
20)アルキル基を表し、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含み、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基で置換されており、- R
2は、特に、H又はメチルを表す]及びその互変異性型を有する化合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機液体又は有機液体の混合物をテクスチャリング又はゲル化するための剤としての、以下の一般式(I)
【化1】
[式中、
Saccは、ピラノース及び/又はフラノース形態であり、L及び/又はD系列の、単糖類又は最大20糖単位までを含む多糖類を表し、前記単糖類又は多糖類が、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル官能基を有し、
X
1
+は、Na
+、Li
+、K
+、
+NR
3R
4R
5R
6、R
7-NH
3
+、
+PR
3R
4R
5R
6、及び
+SR
3R
4R
5からなる群から選択されるカチオンを表し、
同一であるか又は異なるR
3、R
4、R
5、及びR
6は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C
1~C
20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基で置換されており、
R
7は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C
1~C
20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基で置換されており、
R
2はH又は任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C
1~C
20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基で置換されている]
及びその互変異性型を有する化合物の使用。
【請求項2】
式(I)において、Saccが、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-キシロース、D-リキソース、L-フコース、L-アラビノース、L-ラムノース、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸、D-イズロン酸、N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、D-マルトース、D-ラクトース、D-セロビオース、D-マルトトリオース、D-ガラクトサミン、D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、又はN-アセチル-D-グルコサミンから選択されるヘキソサミンを伴うD-イズロン酸、D-グルクロン酸、キシロビオース、及びそのオリゴマーからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記有機液体が、有機溶媒及び油から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記有機液体が、アルコール、ケトン、脂肪族、芳香族、若しくはハロゲン化炭化水素、エステル、窒素誘導体、エーテル、シリコーン、脂肪族カルボン酸、及びそれらのエステル誘導体、アミド、脂質、又はグリセリドからなる群から選択され、好ましくは、エタノール、プロパノール、グリセロール、ブタノール、オクタノール、イソプロパノール、アニソール、酢酸エチル、オクチルドデカノール、テトラヒドロフラン、アセトン、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、及びアジピン酸、ステアリン酸、又はカプリン酸のエステルから選択される有機溶媒である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記油が、植物油又は動物油、及び天然又は合成鉱物油から選択され、好ましくは、菜種油、ラベンダーの精油、パーム油、オリーブ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ホホバ油、パラフィン、又は液化石油である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
式(I)を有する化合物の質量での割合は、有機液体又は有機液体の混合物の質量に対して、質量で0.1%から10%の間、好ましくは1%から5%までである、請求項1から5に記載の使用。
【請求項7】
有機液体又は有機液体の混合物の存在下に式(I)を有する化合物を置く工程を含む有機ゲル又はオレオゲルを調製するための方法であって、前記液体が、有機溶媒及び油から選択され、上に定義されるとおりであり、
前記式(I)を有する化合物が、以下の式
【化2】
[式中、
Saccは、ピラノース及び/又はフラノース形態であり、L及び/又はD系列の、単糖類又は最大20糖単位までを含む多糖類を表し、前記単糖類又は多糖類が、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル官能基を有し、
X
1
+は、Na
+、Li
+、K
+、
+NR
3R
4R
5R
6、R
7-NH
3
+、
+PR
3R
4R
5R
6、及び
+SR
3R
4R
5からなる群から選択されるカチオンを表し、
同一であるか又は異なるR
3、R
4、R
5、及びR
6は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C
1~C
20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基、特にフェニル基で置換されており、
R
7は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C
1~C
20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基、特にフェニル基で置換されており、
R
2はH又は任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C
1~C
20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C
6~C
10)アリール基、特にフェニル基で置換されている]及びその互変異性型に従う、方法。
【請求項8】
前記有機液体又は有機液体の混合物に、前記式(I)を有する化合物の水溶液を加える工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加える工程が、超音波による処理の工程、又は前記有機液体又は有機液体の混合物を加熱する、若しくは冷却する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機液体又は有機液体の混合物が、染料、着臭分子、及び医薬活性成分から選択される追加の化合物を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、科学的な名称のβ-C-グリコシドピリミジントリオンにより知られるバルビツール酸グリコシルに基づく新規のゲル化剤、及び、バルビツール酸グリコシルに基づく前記ゲル化剤の使用によって、有機ゲル又はオレオゲルを調製するための方法である。
【背景技術】
【0002】
有機ゲル化剤は、比較的低い質量濃度(1質量%未満)でも、すべての種類の有機溶媒又は油相をテクスチャリングし、ゲル化まですることが可能な小さい有機分子である。
【0003】
現時点で、有機ゲル化剤として使用することができる多数の分子が存在するが、これらは一定数の欠点を有する。
【0004】
それは、これらの有機ゲル化剤の合成には、複数の工程、及び有毒な溶媒及び/又は試薬の使用が必要とされるからである。更に、これらの有機ゲル化剤の大多数は、疎水性を有し、このために水性媒体において不溶性であり、したがって「洗浄可能」ではない。多くの有機ゲル化剤に関して、それらの化学及び酵素安定性は、それらの開発の妨げとなるものである。
【0005】
更に、エチルセルロース等の、ポリマー性の有機ゲル化剤は、適用後に皮膜を残すという欠点を更に有する。
【0006】
最後に、有機ゲル化剤は多くの場合、1つの用途に特定されており、有機ゲル化剤は、テクスチャリング又はゲル化という単一の機能のみを有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gonzales M.A.等、Carbohydrate Research 1986、158、58~66頁
【非特許文献2】Wulff G.等、Carbohydrate Research 1994、257、81~95頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、現時点で、前述の欠点を有しない有機ゲル化剤が、したがって特に、環境に配慮して容易に合成することができ、化学及び酵素安定的な、バイオ供給性を有する有機ゲル化化合物を提供することが、必要とされる。
【0009】
したがって本発明の目標は、単一工程で合成することができ、環境に配慮した条件下、特に水性溶媒の存在下で副生成物を形成させずに精製し、定量的収率を得ることが容易である有機ゲル化剤を提供することである。
【0010】
本発明の別の目標は、水に完全に可溶であり、したがって、適用、例えば、皮膚の処置の終わりに、洗浄可能である有機ゲル化剤を提供することである。
【0011】
本発明の別の目標は、化学及び酵素安定的であり、任意選択で、容易に調整可能なゲル化能力を有する、有機ゲル化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、ゲル化又はテクスチャリング剤としての、以下の一般式(I)
【0013】
【0014】
[式中、
- Saccは、ピラノース及び/又はフラノース形態であり、L及び/又はD系列の、単糖類又は最大20糖単位までを含む多糖類を表し、前記単糖類又は多糖類が、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル官能基を有し、
- X1
+は、Na+、Li+、K+、+NR3R4R5R6、R7-NH3
+、+PR3R4R5R6、及び+SR3R4R5からなる群から選択されるカチオンを表し、
同一であるか又は異なるR3、R4、R5、及びR6は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C1~C20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C6~C10)アリール基、特にフェニル基で置換されており、
R7は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C1~C20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C6~C10)アリール基、特にフェニル基で置換されており、
- R2はH、メチル又は任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C1~C20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C6~C10)アリール基、特にフェニル基で置換されている]
及びその互変異性型を有する化合物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
したがって、本発明によるテクスチャリング又はゲル化剤(又は有機ゲル化剤)として使用される化合物は、非天然のC-グリコシド結合によって化学及び酵素安定的であるC-グリコシド誘導体である。
【0016】
これらの化合物のゲル化能は、例えば、単に混合することによって、それらの濃度及び陽対イオンの性質に作用を及ぼすことによって、容易に調整することができる。
【0017】
本発明による有機ゲル化剤は、例えば、化粧用組成物及び香水、又は医薬若しくは皮膚医薬組成物において使用することができるが、食品分野において、又は潤滑剤、塗料、若しくは建設業界において、又は絵画キャンバスを維持するためにも使用することができる。
【0018】
テクスチャー剤は、最終製品の稠度、粘度、及び感覚性を増大するために、化粧用、食品、又は他の配合物中に存在する添加剤である。テクスチャリング剤は、特に、ポリアクリレート等の合成ポリマー、多糖類及びそれらの誘導体等のバイオ供給ポリマー、ガム、及び、油又はバター、エステル又はワックスに由来する脂質である。
【0019】
ゲル化剤は、テクスチャリングしてもよく、これは、媒体中のそれの濃度に依存することになる。それは、所与の脂肪相に対し、その最小ゲル化濃度を下回ると、テクスチャリングすることになり、上回るか又は等しいと、ゲル化することになる。
【0020】
一般式(I)の互変異性型は、以下のとおりである。
【0021】
【0022】
本発明によれば、(Ct~Cz)基は、t~z個の炭素原子を有することができる炭素鎖を、例えば、1~6個の炭素原子を有することができる炭素鎖C1~C6を、含む基を意味する。
【0023】
本発明によれば、「アルキル」という用語は、これに反して言及されない限り、1個から20個までの炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素脂肪族基を示す。例を挙げると、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、又はペンチル基に言及することができる。
【0024】
一実施形態によれば、本発明によるアルキル基は、少なくとも1個の不飽和によって割り込まれ得る。
【0025】
本発明のアルキル基はまた、少なくとも1個のアリール基で置換され得る。
【0026】
本発明によれば、アリール基は、6個から10個の間の炭素原子を含む環式芳香族基である。アリール基の例を挙げると、フェニル基又はナフチル基に言及することができる。
【0027】
好ましくは、式(I)において、同一であるか又は異なるR3、R4、R5、及びR6は、(C1~C20)アルキル基又はベンジル基を表す。
【0028】
好ましくは、式(I)において、R7は、(C1~C20)アルキル基を表す。
【0029】
好ましくは、式(I)において、R2は、H又はメチル、好ましくはメチルを表す。
【0030】
好ましくは、式(I)において、X1
+は、Na+、Li+、及びK+からなる群から選択されるカチオンを表し、優先的にはNa+である。
【0031】
一実施形態において、カチオンX1
+は、例えば、ポリアンモニウムイオン等の多荷電誘導体から選択することができる。
【0032】
一実施形態において、式(I)において、Saccは、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-キシロース、D-リキソース、L-フコース、L-アラビノース、L-ラムノース、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸、D-イズロン酸、N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、D-マルトース、D-ラクトース、D-セロビオース、D-マルトトリオース、D-ガラクトサミン、D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、又はN-アセチル-D-グルコサミンから選択されるヘキソサミンを伴うD-イズロン酸、D-グルクロン酸、キシロビオース、及びそのオリゴマー(キシロトリオースからキシロヘキサオースまで)からなる群から選択される。
【0033】
好ましくは、式(I)において、SaccはD-グルコースである。
【0034】
本発明による式(I)を有するC-グリコシド誘導体は、例えば、Gonzales M.A.等、Carbohydrate Research 1986、158、58~66頁によって、及びWulff G.等、Carbohydrate Research 1994、257、81~95頁によって説明される方法に従って調製することができる。
【0035】
本発明に従って使用される式(I)を有するC-グリコシド誘導体の中でも、以下の化合物:
- ナトリウム1,3-ジメチル-2,6-ジオキソ-5-[(2S,3R,4R,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシ-メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-オラート:
【0036】
【0037】
- ナトリウム2,6-ジオキソ-5-[(2S,3R,4R,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-オラート
【0038】
【0039】
- ナトリウム1,3-ジメチル-2,6-ジオキソ-5-[(2S,3R,4R,5R,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-オラート:
【0040】
【0041】
- ナトリウム1,3-ジメチル-2,6-ジオキソ-5[(2S,3R,4S,5R)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-オラート:
【0042】
【0043】
- ナトリウム2,6-ジオキソ-5-[(2S,3R,4S,5R)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-オラート
【0044】
【0045】
- ナトリウム1,3-ジメチル-2,6-ジオキソ-5-[(2S,3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチル-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-オラート:
【0046】
【0047】
が特に好ましい。
【0048】
好ましくは、本発明による式(I)を有する化合物は、以下の式
【0049】
【0050】
に従う。
【0051】
いくつかの利点が、C-グリコシドファミリーに属するこのクラスの分子の使用に関連付けられる。
【0052】
前述の好ましいバルビツール酸グリコシルは、例えば、水中の単一合成工程において得られ、C-グリコシド結合によってN,N-ジメチルバルビツール酸に結合されるグルコース単位によって特徴付けられる。それの精製は、定量的収率で反応媒体の単純な沈殿によって得られ、その生成を工業的観点から容易且つ実用的にする。
【0053】
この分子を調製するための出発試薬は市販されている。
【0054】
本発明の化合物(又はグリコ-ゲル化剤)は、異なる極性を有する有機溶媒及び油の両方を、ゲル化までテクスチャリングし、それのゲル化能は、関連するカチオン性対イオンの性質によって容易に調整することができる。ゲル化は、下記に説明されるように、超音波、単純な混合によって、又は加熱サイクルとそれに続く室温への冷却サイクルによって、誘導することができる。
【0055】
一実施形態によれば、式(I)を有する化合物は、有機液体又は液体の混合物のゲル化剤として使用され、前記有機液体は、有機溶媒及び油から選択される。
【0056】
本発明によれば、有機液体は、炭素鎖を有するか、又は炭素を含む液体である。上に示されるように、それは、有機溶媒、油、又はそれらの混合物であってもよい。
【0057】
一実施形態によれば、有機液体は、アルコール、ケトン、脂肪族、芳香族、若しくはハロゲン化炭化水素、エステル、窒素誘導体、エーテル、シリコーン、脂肪族カルボン酸、及びそれらのエステル誘導体、アミド、脂質、又はグリセリドからなる群から選択される有機溶媒である。好ましくは、有機溶媒は、エタノール、プロパノール、グリセロール、ブタノール、オクタノール、イソプロパノール、アニソール、オクチルドデカノール、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、及びアジピン酸、ステアリン酸、又はカプリン酸のエステルから選択される。
【0058】
一実施形態によれば、有機液体は、植物又は動物油、及び天然又は合成鉱物油から選択される油である。好ましくは、油は、菜種油、ヒマシ油、ホホバ油、ラベンダーの精油、パーム油、オリーブ油、ヒマワリ油、パラフィン、又は液化石油から選択される。
【0059】
好ましくは、有機液体は、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセロール、オクタノール、イソプロパノール、アニソール、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランから選択される有機溶媒、又は菜種油、若しくはラベンダーの精油(ラベンダーのEO)から選択される油である。
【0060】
本発明はまた、式(I)を有する化合物が、好ましくは少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の有機溶媒を含む有機液体の混合物をテクスチャリング又はゲル化するための剤として使用される、前述の使用に関する。
【0061】
例えば、混合物として、ラベンダーの精油及びエタノールを含む混合物、又は菜種油、オクタノール、及びイソプロパノール、若しくはシリコーン油及び脂肪エステルを含む混合物に言及することができるが、オクタノール及びエタノールの混合物等の2種の有機溶媒の混合物にも言及することができる。
【0062】
好ましくは、上に定義されるような使用の文脈において、式(I)を有する化合物の質量での割合は、有機液体又は有機液体の混合物の質量に対して、質量で0.1%から10%の間、好ましくは1%~5%である。
【0063】
本発明はまた、有機液体又は有機液体の混合物の存在下に式(I)を有する化合物を置く工程を含む有機ゲル又はオレオゲルを調製するための方法であって、前記液体が、有機溶媒及び油から選択され、上に定義されるとおりであり、
前記式(I)を有する化合物が、以下の式
【0064】
【0065】
[式中、
- Saccは、ピラノース及び/又はフラノース形態であり、L及び/又はD系列の、単糖類又は最大20糖単位までを含む多糖類を表し、前記単糖類又は多糖類が、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル官能基を有し、
- X1
+は、Na+、Li+、K+、+NR3R4R5R6、R7-NH3
+、+PR3R4R5R6、及び+SR3R4R5からなる群から選択されるカチオンを表し、
同一であるか又は異なるR3、R4、R5、及びR6は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C1~C20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C6~C10)アリール基、特にフェニル基で置換されており、
R7は、任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C1~C20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C6~C10)アリール基、特にフェニル基で置換されており、
- R2はH、メチル又は任意選択で少なくとも1個の不飽和を含む(C1~C20)アルキル基を表し、前記アルキル基が任意選択で少なくとも1個の(C6~C10)アリール基、特にフェニル基で置換されている]及びその互変異性型に従う、方法に関する。
【0066】
本発明によれば、有機ゲルという用語は、有機溶媒のゲルを示し、オレオゲルという用語は、ゲル化された油を示す。
【0067】
一実施形態によれば、本発明の方法は、有機液体又は有機液体の混合物に、式(I)を有する化合物の水溶液を加える工程を含む。
【0068】
好ましくは、加える工程は、超音波処理工程、又は有機液体又は有機液体の混合物を加熱する、若しくは冷却する工程を更に含む。
【0069】
本発明による方法の一実施形態によれば、有機液体又は有機液体の混合物は、ナイルレッド、カーマインレッド、金属酸化物、エチルヘキシルトリアゾン、ユーカリプトール、又はドキソルビシン等の、染料又は顔料、乳白剤、有機若しくは鉱物UV遮蔽剤、着臭分子、及び医薬活性成分から選択される追加の化合物を含む。
【実施例】
【0070】
(実施例1:2%のゲル(w/v)を形成するための適正な用量の決定)
10mgのバルビツール酸グルコシル又はβ-C-グルコシドピリミジントリオンナトリウムを、ねじ栓を備えた約1.5mlのフラスコ中で秤量する。450μLの選択した溶媒を加え、次いで、溶媒に粉末をよく分散させるために、混合物を数秒間、超音波処理する(大抵の場合、バルビツール酸グルコシルは溶媒に溶けない)。次に、水を2μLずつ加え、各添加の間に混合物を超音波処理し、手で軽く撹拌してゲルが形成しているか確認する。超音波処理の時間は、溶媒の性質に応じて変動する。ひとたびゲルが形成されると、それを非常に均質にすることはできない。この場合、ゲルを得るために取るべき行為を判断することができる必要がある。多くの場合、i)非常に少量の水、熱を加え、静置して冷却するか、又はii)加熱し、超音波処理しながら静置して冷却する(冷却中にバルビツール酸グルコシルが沈殿する場合)のいずれかが必要である。次に、混合物を、溶媒を用いて完成させ、500μLにゲル化する。
【0071】
(実施例2:グリコバルビツール酸粉末に溶媒+水の混合物を加えることによるゲルの形成)
10mgのバルビツール酸グルコシルナトリウムを秤量し、次いで、溶媒及び水の混合物を、実施例1において上に定義する適正な割合で加える。次に、超音波浴中で低温で混合物を超音波処理するか、又は加熱し、静置し冷却して、ゲルを得るか、又は室温にて素早く撹拌し、次いで、静置して落ち着かせる。
【0072】
例えば、500μLのエタノール中に40μLの水、440μLのイソプロパノール中に60μLの水、455μLのブタノール中に45μLの水、420μLのアセトン中に60μLの水、又は480μLのプロパン-1-オール中に35μLの水を加えることが必要である。
【0073】
(実施例3:バルビツール酸グルコシルナトリウムの濃縮溶液を溶媒に加えることによるゲルの形成)
溶媒を撹拌下、容器に入れ、次いで、バルビツール酸グルコシルナトリウム水溶液(1.47M)を、実施例1において上に定義する割合で加える。混合物を数秒間撹拌し、次いで、撹拌を止めてゲルを形成させる。
【0074】
この実施例において、80μLのバルビツール酸グルコシルナトリウム水溶液(1.47M)を1mlの96%エタノールに加えた。
【0075】
(実施例4: 油又は無極性溶媒(例:菜種油、トルエン、アニソール等)を用いたゲルの形成)
水に混和性でない溶媒を用いると、ゲルを形成するための少量の水の導入を可能にするいずれかの別の溶媒(2相を形成せずに少量の水を受け入れることができる混合物の例:ラベンダーのEO/エタノール)を加えること、即ち、アンモニウムアルキル塩によって、ナトリウムの起源にある対イオンの性質を変えることが必要である。3種のアンモニウム塩、即ち、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、又はTequat(登録商標)LC 90i(獣脂エステルクワット)を試験した。ゲル化のために好都合な条件を見つけるために、実施例1において説明したものと同じ方法を使用することが可能である。溶媒を加え、適正な量の水を調節する前に、バルビツール酸グルコシル及び当量のアンモニウム塩を秤量する。
【0076】
様々な結果を下記のTable 1(表1)において以下に記載する。
【0077】
例えば、10mgのバルビツール酸グルコシルナトリウムを、9.4mgのTBAB、又は11mgのCTABのいずれかと混合した。次に、400μLの菜種油を加え、次いで、その全部を分散のために超音波処理し、最後に5μLの水を加えた。超音波処理により、ゲルを即時に形成することが可能となる。
【0078】
それぞれの場合において、秤量した10mgのバルビツール酸グルコシルナトリウム、及び1モル当量のアンモニウム塩に関して、Table 1(表1)の様々な溶媒試験のために従うプロトコルは、実施例4において詳細に述べるものである。
【0079】
【0080】
【国際調査報告】