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特表2025-502453有機化合物におけるまたはこれに関する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】有機化合物におけるまたはこれに関する改善
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20250117BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20250117BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20250117BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20250117BHJP
【FI】
A23L27/20 D
A23L27/00 Z
A23L5/00 H
A23L29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543295
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2023051316
(87)【国際公開番号】W WO2023139188
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】2200791.8
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルブリング,イバン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LG01
4B035LG14
4B035LG17
4B035LG19
4B035LG42
4B035LG50
4B035LP01
4B035LP16
4B047LB08
4B047LF04
4B047LG03
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG08
4B047LG15
4B047LG22
4B047LG25
4B047LG28
4B047LG50
4B047LG56
4B047LP05
4B047LP16
(57)【要約】
本開示は、脂肪型フレーバーを提供するためのフレーバー増強剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪型フレーバーを提供するためのフレーバー増強剤であって、フレーバー増強剤は、以下のマーカー構成要素の少なくとも10を指し示された濃度において含む、前記フレーバー増強剤:
- 3000ppm~10'000ppmの濃度におけるフラネオール;
- 50ppm~200ppmの濃度におけるノル-フラネオール;
- 1000ppm~4000ppmの濃度におけるプロピオン酸;
- 0.50ppm~10.0ppmの濃度の濃度における2-アセチルチアゾール;
- 0.20ppm~5.00ppmの濃度におけるヘプタナール;
- 200ppm~1500ppmの濃度における酢酸;
- 1.00ppm~5.00ppmの濃度におけるスルフロール;
- 5.00ppm~30.0ppmの濃度におけるマルトール;
- 0.20ppm~2.00ppmの濃度におけるトリメチルピラジン;
- 0.10ppm~1.00ppmの濃度における2,5-ジメチルピラジン;
- 1.00ppm~10.00ppmの濃度における2-アセチルピロール;
- 10.0ppm~70.0ppmの濃度におけるプロリン-イソロイシンジケトピペラジン;
- 2.00ppm~10.0ppmの濃度におけるプロリン-バリンジケトピペラジン;
- 0.50ppm~3.00ppmの濃度における2,3-オクタンジオン;および
- 0.30ppm~1.50ppmの濃度における2-メチル-3-チアゾリン。
【請求項2】
フラネオールを、4000ppm~9000ppmの、より好ましくは5000ppm~8000ppmの、および最も好ましくは6000ppm~7500ppmの濃度において含む、請求項1に記載のフレーバー増強剤。
【請求項3】
ノル-フラネオールを、70ppm~170ppmの、より好ましくは90ppm~150ppmの、および最も好ましくは100ppm~130ppmの濃度において含む、請求項1または2に記載のフレーバー増強剤。
【請求項4】
プロピオン酸を、1250ppm~3000ppmの、より好ましくは1500ppm~2500ppmの、および最も好ましくは1700ppm~2200ppmの濃度において含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項5】
2-アセチルチアゾールを、0.70ppm~7.00ppmの、より好ましくは0.80ppm~5.00ppmの、および最も好ましくは1.00ppm~4.00ppmの濃度において含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項6】
ヘプタナールを、0.30ppm~5.00ppmの、より好ましくは0.40ppm~2.00ppmの、および最も好ましくは0.45ppm~1.10ppmの濃度において含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項7】
酢酸を、300ppm~1200ppmの、より好ましくは400ppm~1000ppmの、および最も好ましくは500ppm~850ppmの濃度において含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項8】
スルフロールを、1.50ppm~4.50ppmの、より好ましくは2.00ppm~4.00ppmの、および最も好ましくは2.25ppm~3.50ppmの濃度において含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項9】
マルトールを、7.00ppm~25.0ppmの、より好ましくは9.00ppm~22.5ppmの、および最も好ましくは10.0ppm~20.0ppmの濃度において含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項10】
トリメチルピラジンを、0.30ppm~1.50ppmの、より好ましくは0.35ppm~1.25ppmの、および最も好ましくは0.40ppm~1.00ppmの濃度において含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項11】
2,5-ジメチルピラジンを、0.15ppm~0.80ppmの、より好ましくは0.20ppm~0.60ppmの、および最も好ましくは0.25ppm~0.50ppmの濃度において含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項12】
2-アセチルピロールを、2.00ppm~8.00ppmの、より好ましくは2.50ppm~6.00ppmの、および最も好ましくは3.00ppm~5.00ppmの濃度において含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項13】
プロリン-イソロイシンジケトピペラジンを、15.0ppm~60.0ppmの、より好ましくは17.5ppm~55.0ppmの、および最も好ましくは20.0ppm~50.0ppmの濃度において含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項14】
プロリン-バリンジケトピペラジンを、3.00ppm~9.00ppmの、より好ましくは4.00ppm~8.00ppmの、および最も好ましくは5.00ppm~7.50ppmの濃度において含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項15】
2,3-オクタンジオンを、0.60ppm~2.50ppmの、より好ましくは0.70ppm~2.20ppmの、および最も好ましくは0.80ppm~2.00pmの濃度において含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項16】
2-メチル-3-チアゾリンを、0.40ppm~1.30ppmの、より好ましくは0.45ppm~1.10ppmの、および最も好ましくは0.50ppm~1.00ppmの濃度において含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項17】
以下の1以上をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤:
- 0.10ppm~2.00ppmの、より好ましくは0.20ppm~1.50ppmの、および最も好ましくは0.25ppm~1.00ppmの濃度におけるテトラメチルピラジン;
- 0.50ppm~2.00ppmの、より好ましくは0.70ppm~1.50ppmの、および最も好ましくは0.80ppm~1.20ppmの濃度におけるトランス-2-ウンデセナール;
- 0.75ppm~2.00ppmの、より好ましくは1.00ppm~1.60ppmの、および最も好ましくは1.25ppm~1.40ppmの濃度におけるトランス-2-デセナール;および/または
- 0.10ppm~1.00ppmの、より好ましくは0.30ppm~0.80ppmの、および最も好ましくは0.40ppm~0.60ppmの濃度における2E,4E-デカジエナール。
【請求項18】
フレーバリング調製物が固体フレーバリング調製物、好ましくは粒状または粉末である、請求項1~17のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤を含む食品。
【請求項20】
脂肪型フレーバーを食品に付与する方法であって、該方法が、該食品製品に請求項1~18のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤を添加するステップを含む、前記方法。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤を調製する方法であって、以下のステップを含む、前記方法:
(i)出発材料を提供すること;および
(ii)出発材料を反応させ、および同時に、その結果得られた材料を電子レンジ中で乾燥させてフレーバー増強剤を得ること;
ここで、出発材料は、少なくとも(a)タンパク質供給源もしくはタンパク質のフラグメント、またはアミノ官能基を持つ他の材料、および(b)脂肪または油を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪型フレーバーを提供するためのフレーバー増強剤に関する。
【0002】
フレーバー剤は、匂いおよび/または味を付与または改変するために食品または飲料に添加される製品である。食品中/上での使用のためのフレーバー剤およびフレーバリング特性を持つ所定の食品成分に関する規則(EC)No 1334/2008は、2008年12月16日に採択され、2009年1月20日に発効された。これはフレーバー剤の安全な使用のための一般的な要件を定め、および以下の種々のタイプのフレーバー剤の定義を提供する:フレーバリング物質、フレーバリング調製物、熱プロセスフレーバー剤、スモークフレーバー剤、フレーバー前駆体、およびその他のフレーバー剤。
【0003】
「フレーバリング調製物」は、次のように定義される:フレーバリング調製物は、材料の未加工の状態またはヒトの消費のために加工した後のいずれかで、適切な物理的プロセス、酵素的プロセスまたは微生物学的プロセスによって、野菜、動物または微生物学的起源の材料から得られる定義された化学物質以外のフレーバリング調製物である。
【0004】
一方、「熱プロセスフレーバー剤」(一般に「プロセスフレーバー」とも称される)は、それ自体が必ずしもフレーバー剤特性を有さない成分であって、少なくとも1つは窒素(アミノ)およびもう1つは還元糖を含有するものの混合物から熱処理後に得られる生成物として定義される。
【0005】
したがって、フレーバリング調製物および反応/プロセスフレーバーは、食品それ自体ではない;それらは、食品もしくは飲料にフレーバーを付与するために、または食品もしくは飲料のフレーバーを改変または改善するために、食品または飲料に添加されることが意図される製造品である。それらは本質的に非栄養的であり、すなわち、それらの実質的な目的は、食品もしくは飲料にフレーバーを付与すること、またはそれらが添加される食品もしくは飲料のフレーバーを増強、改変もしくは改善することであり、栄養を提供することではない。
【0006】
本出願を通してずっと、用語「フレーバー増強剤」は、規則(EC)No 1334/2008で定義されているフレーバリング調製物と熱プロセスフレーバー剤の両方を網羅することを意味する。したがって、用語「フレーバー増強剤」は、本明細書に使用されるとき、アミンまたはアミンの供給源を還元糖または還元糖の供給源と反応させることによって得られるすべての種類の反応フレーバーを、これらの出発材料の供給源に関係なくカバーする。
【0007】
本発明は、脂肪型フレーバーを提供するための組成物に着目するものである。
かかるフレーバーは、典型的には、熱の存在下で還元糖とアミノ官能基(アミノ酸、アミド、アンモニウム、およびアンモニアを包含する)との非酵素的褐変反応であるメイラード反応によって得られる。しかし、フレーバー合成には、実例として、シッフ塩基形成、ストレッカー分解、またはカラメル化反応など、他の反応型も関与する可能性がある。
【0008】
メイラード反応の結果として製造される一般的なフレーバーは、赤身肉、家禽、コーヒー、野菜、パンの耳、ローストノートを包含する。メイラード反応は糖およびアミノ酸に主に依存するが、以下を包含する他の成分も関与し得る:自己分解酵母抽出物、加水分解植物性タンパク質、ゼラチン、野菜抽出物、酵素処理タンパク質、肉脂肪または肉抽出物、反応のpHを調整するための酸または塩基。反応は一般に、調整されたpHと共に、特定の温度(典型的には100℃)にて、特定された時間(典型的には15分)、水性であり、様々なフレーバーを製造する。生産される典型的なフレーバーは、鶏肉、豚肉、牛肉、キャラメル、およびチョコレートである。しかし、反応の成分、温度、および/またはpHを調整することによって、多種多様なニュアンスおよび強度が達成され得る。
【0009】
フレーバー増強剤は、典型的には、揮発性反応産物および不揮発性反応産物の両方の複雑な多重の構成要素のブレンド、ならびにあらゆる未反応の出発材料からなる。それらの組成構成は、反応パラメータに敏感であり得、それらの構成要素の点で、またはそれらの構成要素の分布パターンにおいて変動し得る。重要な反応パラメータは、前駆体成分の化学的性質、反応時間および温度、水分、圧力、pH等を包含する。これらのパラメータの1以上が制御されていない場合、フレーバー増強剤のフレーバープロファイルおよび/または着色は、例えば、すべての出発材料を変換し損なうこと、またはオフテイストの発生によって悪影響が及ぼされ得る。
【0010】
フレーバー増強剤の工業的製造において、当業者は、前述の反応パラメータまたは変数を検討するだけではなく、プロセスエンジニアリングの考慮事項も検討しなければならない。例えば、反応媒体における粘度制御は重要なプロセスパラメータであり、工業規模では汲み入れ、攪拌、ブレンド、および濾過などの操作に影響を与え、これらの操作を容易にするために、実例として、高度に希薄な水性スラリーからなる反応媒体において反応フレーバーを形成することが慣例である。さらにまた、このように粘度を制御することに加えて、高レベルの水を採用することは、熱移動を制御し、フレーバー増強剤の形成の間の過熱や局所的な加熱を防止することを助けることができる。
【0011】
フレーバー増強剤は、異なる物理的形態を有し得る。実例として、それらは、それらの組成および意図された使用に応じて、固体または液体であってもよい。
【0012】
乾燥形態のフレーバー増強剤は、それらの物理的安定性および微生物学的安定性の理由から、ならびに、保管、取り扱い、投与等の容易さなどのサプライチェーンの考慮事項のために、特に重要である。したがって、一旦フレーバー増強剤が形成された後の反応混合物からの水の除去は、重大なプロセスステップである。
【0013】
従来のプロセス条件を使用すると、第1ステップにおいてスラリーを調理してフレーバー調製物または反応フレーバーを創作した後、第2ステップにおいて噴霧乾燥または真空オーブン乾燥によってスラリーが脱水される。噴霧乾燥は比較的安価であるが、この技術は比較的大量の担体材料の使用を必要とし、完成したフレーバー調製物のフレーバープロファイルおよび口当たりに支障を来し得る。より一般的には、第2のステップにおいて、真空オーブン乾燥を使用して脱水が遂行される。このケースにおいて、反応の完了後、スラリーが乾燥トレイに移され、トレイが真空オーブンに挿入され、減圧下で加熱すること(通常は100℃未満)によって水が蒸発される。しかし、このようにスラリーを脱水するために必要とされる時間およびエネルギーは、むしろ資源の無駄である。このプロセスは面倒で、複雑で、および高価である;長い乾燥時間および高温への依存は、慎重にプロセス制御を行わなければ、乾燥プロセスはフレーバーの質および真正性にその痕跡を残し得ることを意味する。
【0014】
固形脂肪型のフレーバー増強剤を調製するためのこれらの従来の方法は、高いエネルギー入力を必要とする傾向がある。
それにもかかわらず、固体フレーバー増強剤は取り扱いやすく、食品または飲料の添加剤として多くの使用があり、フレーバー製造業者ならびに同様に食品製造業者および飲料製造業者によって非常に所望されている。
したがって、持続可能で、速く、信頼でき、費用対効果の良い方法において調製され得る、改善されたフレーバープロファイルを持つ固形脂肪型フレーバー増強剤への必要性がある。
【発明の概要】
【0015】
第1の側面において、本発明は、脂肪型フレーバーを提供するための改善されたフレーバー増強剤を提供する。
第2の側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤を含む食品製品を提供する。
第3の側面において、本発明は、脂肪型フレーバーを食品製品に付与する方法であって、該方法は、該食品製品に本発明のフレーバー増強剤を添加するステップを含む、前記方法を提供する。
第4の側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤を調製する方法を提供する。
【0016】
本発明のフレーバー増強剤は、以下のマーカー構成要素少なくとも10を指し示された濃度において含む:
- 3000ppm~10'000ppmの濃度におけるフラネオール;
- 50ppm~200ppmの濃度におけるノル-フラネオール;
- 1000ppm~4000ppmの濃度におけるプロピオン酸;
- 0.50ppm~10.0ppmの濃度の濃度における2-アセチルチアゾール;
- 0.20ppm~5.00ppmの濃度におけるヘプタナール;
- 200ppm~1500ppmの濃度における酢酸;
- 1.00ppm~5.00ppmの濃度におけるスルフロール;
- 5.00ppm~30.0ppmの濃度におけるマルトール;
- 0.20ppm~2.00ppmの濃度におけるトリメチルピラジン;
- 0.10ppm~1.00ppmの濃度における2,5-ジメチルピラジン;
- 1.00ppm~10.00ppmの濃度における2-アセチルピロール;
- 10.0ppm~70.0ppmの濃度におけるプロリン-イソロイシンジケトピペラジン;
- 2.00ppm~10.0ppmの濃度におけるプロリン-バリンジケトピペラジン;
- 0.50ppm~3.00ppmの濃度における2,3-オクタンジオン;および
- 0.30ppm~1.50ppmの濃度における2-メチル-3-チアゾリン。
【0017】
これらのマーカー構成要素は、様々な出発材料、出発材料の比率および画分、スラリー粘度および流動性、ならびにエネルギー取り込み(例として、均質またはホットスポット形成)、フレーバー増強剤を調製するための水の再吸収および保持を包含する反応条件および乾燥条件、ならびにこのようにして得られたフレーバー増強剤の匂い、味、食感、口当たり、安定性、および創作における機能性および性能に関する詳細な分析の広範な試験によって特定されてきた。
【0018】
驚くべきことに、上記のマーカー構成要素の少なくとも10を指し示された濃度において含むフレーバー増強剤は、舌上および口腔において長続きする料理のジューシーさを提供する、脂肪の、動物性(羊)骨髄、キャラメルの、甘いトーンの極めて特徴的なフレーバープロファイルを提供できることが見出された。
本発明の脂肪型フレーバー増強剤は、従来の方法よりも低いエネルギー入力を必要とする持続可能なやり方において調製され得る。
それらはまた、周囲温度にて数ヶ月にわたって安定である。
【0019】
フレーバー増強剤の構成要素は、質量分析計に連結されたガスクロマトグラフィーを用いて同定され得る。
構成要素の濃度は、好適な検出器を使用する定量的ガスクロマトグラフィーおよび試料調製によって決定され得る。実例として、内部標準が使用されてもよい。
【0020】
本発明の特徴は、フレーバー増強剤が食品マトリックスまたは飲料マトリックスの外部に形成される製品であることである。これは、食品または飲料に混合または適用されるおかげで、単独でまたは完全なフレーバー組成物の一部として、食品または飲料のフレーバーを付与、または変更もしくは改善することができる製造品である。フレーバー増強剤は、食品または飲料が加熱または調理されているプロセスにある間、食品または飲料のマトリックス内またはマトリックス上に形成されない。
【0021】
本発明のフレーバー増強剤は、上記15のマーカー構成要素の少なくとも10を指し示された濃度において含む。好ましくは、フレーバー増強剤は、少なくとも11、より好ましくは少なくとも12、さらにより好ましくは少なくとも13、なおより好ましくは少なくとも14、および最も好ましくは15すべてのマーカーを、とりわけ指し示された濃度において含む。
【0022】
ある態様において、フレーバー増強剤は、フラネオールを、4000ppm~9000ppmの、より好ましくは5000ppm~8000ppmの、および最も好ましくは6000ppm~7500ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約5580ppm、約6910ppm、約7270ppmまたは約7430ppmのフラネオールを含む。
【0023】
ある態様において、フレーバー増強剤は、ノル-フラネオールを、70ppm~170ppmの、より好ましくは90ppm~150ppmの、および最も好ましくは100ppm~130ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約101ppm、約103ppm、約119ppmまたは約129ppmのノル-フラネオールを含む。
【0024】
ある態様において、フレーバー増強剤は、プロピオン酸を、1250ppm~3000ppmの、より好ましくは1500ppm~2500ppmの、および最も好ましくは1700ppm~2200ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約1740ppm、約1830ppm、約1850ppmまたは約2150ppmのプロピオン酸を含む。
【0025】
ある態様において、フレーバー増強剤は、2-アセチルチアゾールを、0.70ppm~7.00ppmの、より好ましくは0.80ppm~5.00ppmの、および最も好ましくは1.00ppm~4.00ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約0.91ppm、約1.36ppm、約2.01ppmまたは約4.25ppmの2-アセチルチアゾールを含む。
【0026】
ある態様において、フレーバー増強剤は、ヘプタナールを、0.30ppm~5.00ppmの、より好ましくは0.40ppm~2.00ppmの、および最も好ましくは0.45ppm~1.10ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約0.47ppm、約0.81ppmまたは約1.09ppmのヘプタナールを含む。
【0027】
ある態様において、フレーバー増強剤は、酢酸を、300ppm~1200ppmの、より好ましくは400ppm~1000ppmの、および最も好ましくは500ppm~850ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約510ppm、約737ppm、約758ppmまたは約836ppmの酢酸を含む。
【0028】
ある態様において、フレーバー増強剤は、スルフロールを、1.50ppm~4.50ppmの、より好ましくは2.00ppm~4.00ppmの、および最も好ましくは2.25ppm~3.50ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約2.35ppm、約2.98ppm、約3.13ppmまたは約3.27ppmのスルフロールを含む。
【0029】
ある態様において、フレーバー増強剤は、マルトールを、7.00ppm~25.0ppmの、より好ましくは9.00ppm~22.5ppmの、および最も好ましくは10.0ppm~20.0ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約18.0ppm、約18.8ppm、約19.0ppmまたは約19.5ppmのマルトールを含む。
【0030】
ある態様において、フレーバー増強剤は、トリメチルピラジンを、0.30ppm~1.50ppmの、より好ましくは0.35ppm~1.25ppmの、および最も好ましくは0.40ppm~1.00ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約0.41ppm、約0.48ppm、約0.83ppmまたは約0.96ppmのトリメチルピラジンを含む。
【0031】
ある態様において、フレーバー増強剤は、2,5-ジメチルピラジンを、0.15ppm~0.80ppmの、より好ましくは0.20ppm~0.60ppmの、および最も好ましくは0.25ppm~0.50ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約0.26ppm、約0.35ppm、約0.38ppmまたは約0.46ppmの2,5-ジメチルピラジンを含む。
【0032】
ある態様において、フレーバー増強剤は、2-アセチルピロールを、2.00ppm~8.00ppmの、より好ましくは2.50ppm~6.00ppmの、および最も好ましくは3.00ppm~5.00ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約3.20ppm、約3.28ppm、約4.20ppmまたは約4.56ppmの2-アセチルピロールを含む。
【0033】
ある態様において、フレーバー増強剤は、プロリン-イソロイシンジケトピペラジンを、15.0ppm~60.0ppmの、より好ましくは17.5ppm~55.0ppmの、および最も好ましくは20.0ppm~50.0ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約21.7ppm、約41.1ppm、約41.4ppmまたは約46.5ppmのプロリン-イソロイシンジケトピペラジンを含む。
【0034】
ある態様において、フレーバー増強剤は、プロリン-バリンジケトピペラジンを、3.00ppm~9.00ppmの、より好ましくは4.00ppm~8.00ppmの、および最も好ましくは5.00ppm~7.50ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約5.13ppm、約5.23ppm、約5.68ppmまたは約7.23ppmのプロリン-バリンジケトピペラジンを含む。
【0035】
ある態様において、フレーバー増強剤は、2,3-オクタンジオンを、0.60ppm~2.50ppmの、より好ましくは0.70ppm~2.20ppmの、および最も好ましくは0.80ppm~2.00ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約0.81ppm、約1.00ppm、約1.76ppmまたは約1.82ppmの2,3-オクタンジオンを含む。
【0036】
ある態様において、フレーバー増強剤は、2-メチル-3-チアゾリンを、0.40ppm~1.30ppmの、より好ましくは0.45ppm~1.10ppmの、および最も好ましくは0.50ppm~1.00ppmの濃度において含む。実例として、フレーバー増強剤は、約0.55ppm、約0.59ppm、約0.79ppmまたは約0.98ppmの2-メチル-3-チアゾリンを含む。
【0037】
本発明のフレーバー増強剤は、典型的には、調製物に所定の匂いまたは味を付与し得る様々な他の構成要素を含む。
以下の追加の構成要素は、真正の脂肪型フレーバーの印象をさらに改善するために特に有利であることが見出されている:テトラメチルピラジン、トランス-2-ウンデセナール、トランス-2-デセナールおよび/または2E,4E-デカジエナール。
【0038】
したがって、ある態様において、本発明のフレーバー増強剤は、以下の1以上をさらに含む:
- 0.10ppm~2.00ppmの、より好ましくは0.20ppm~1.50ppmの、および最も好ましくは0.25ppm~1.00ppmの濃度におけるテトラメチルピラジン;
- 0.50ppm~2.00ppmの、より好ましくは0.70ppm~1.50ppmの、および最も好ましくは0.80ppm~1.20ppmの濃度におけるトランス-2-ウンデセナール;
- 0.75ppm~2.00ppmの、より好ましくは1.00ppm~1.60ppmの、および最も好ましくは1.25ppm~1.40ppmの濃度におけるトランス-2-デセナール;および/または
- 0.10ppm~1.00ppmの、より好ましくは0.30ppm~0.80ppmの、および最も好ましくは0.40ppm~0.60ppmの濃度における2E,4E-デカジエナール。
【0039】
本出願を通してずっと、用語「2E,4E-デカジエナール」は、大抵、本質的に完全に、または完全に、2E,4E-デカジエナールからなるが、いくつかの2E,4Z-デカジエナールまたは別の異性体を含んでもよいデカジエナールを指す。例えば、2E,4E-デカジエナールは、約2~4%の2E,4Z-デカジエナールを含んでもよい。
【0040】
本発明のフレーバー増強剤は、典型的には固体形態である。代替的に、それらは、ペースト、懸濁液、または溶液、例としてスラリーまたはエマルションの形態で提供され得る。
好ましくは、本発明のフレーバー増強剤は、粒状または粉末の形態である。この目的のために、フレーバー増強剤は、粒状化され、製粉され、および/またはふるい分けされてもよい。
【0041】
本発明のフレーバー増強剤は、食品または飲料とブレンドされて、それにフレーバーを付与し得るか、またはそのフレーバーを改変または改善し得る、完全なフレーバー組成物を表してもよい。代替的に、フレーバー増強剤は、完全なフレーバー組成物の一部のみを形成してもよく、および他のフレーバー成分と混合されて完全なフレーバー組成物を形成することができる。熟練したフレーバリストは、本発明のフレーバー増強剤をフレーバー組成物に採用される他の既知の成分と混合して、多種多様な完全なフレーバー組成物を開発し、飲食料品業界の要件を満足することができるだろう。
【0042】
本発明のフレーバー増強剤は、汎用性が高く、多種多様な食品製品に使用されて、所望の脂肪の、骨髄の印象を付与し得る。実例として、肉を含有する、または肉ベースの食品または食材、たとえば濃縮スープ、乾燥肉、パッケージ化されたグレービー、キャセロール等々の食品と採用され得て、これらの食品を補助または増強する。
したがって、一態様において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤を含む食品製品も提供する。
【0043】
食品製品は、脂肪型フレーバーノートが所望であるあらゆる種類の食材であり得る。食品製品の例は、これらに限定されないが、肉製品、例として、ミートボール、ナゲット、家禽のコールドカット、家禽のソーセージ調製物、および味付けまたはマリネされた新鮮な肉製品または塩漬け肉製品;焼成製品;スナック食品、例として、ベークドポテトチップスもしくはフライドポテトチップスまたはポテト生地製品、パン生地製品、トウモロコシまたはピーナッツベースの押出物;ペットフード;缶詰食品;キャセロール料理;冷凍人工食品;スパイスブレンド;調味料;マリネ;発酵製品;すぐに加熱できる食品;すぐに食べられる食事;シーズニング調製物;ソース;グレービー;スープ;ブイヨン;ストック;フォン;ミートスプレッドおよびディップ;および麺類を包含する。
【0044】
本発明のフレーバー増強剤は、これらの食品製品のフレーバーを全般的に改善することができる。それらは、コンビニエンスフードなどの食べ物の最終的なブレンドにおいて、他の成分と単純に混合することによって、食品製品に添加され得る。代替的に、それらは、例えば、散布するか、またはスナック食品を噴霧コーティングするプロセスによって、食べ物の外側に添加されてもよい。さらに、フレーバー増強剤は、食べ物の形成の間に、ときに内部フレーバリングと称されるプロセスにおいて、添加されてもよい。
本発明のフレーバー増強剤はあらゆる型の肉プロファイル、例として、家禽、牛肉または豚肉と共に、また魚介と共に、ならびに非肉用途において、または野菜と共に使用され得る。
【0045】
本発明のフレーバー増強剤は、他のプロセスフレーバーと混合されて、完全なフレーバー組成物を創作してもよい。実例として、他のトップノートおよび/または不揮発性の味構成要素と混合されてもよい。それはまた、例えば、酵母抽出物、スパイス、および/またはミートトップノートといった、他の既存のモジュールと組み合わされてもよい。
完全なフレーバー組成物に有用な他の既知の成分は、フレーバー増強剤の形成前にスラリーに添加されてもよく、またはそれらはフレーバー増強剤が形成された後にフレーバー増強剤にブレンドされても、または両方であってもよい。
【0046】
完全なフレーバー組成物は、本明細書に記載のとおりのフレーバー増強剤;当該技術分野で一般的に既知の芳香揮発性物質および他のフレーバー成分;および他の相乗剤もしくは増強剤、たとえば脂肪もしくは脂肪酸、またはそれらの供給源、ハーブ、スパイス等;pH調節剤;無機塩;味マスキング剤、味感知剤;ビタミン;染料;着色剤;顔料等を含んでもよい。
【0047】
他の成分は、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、メチルプロパナール、C3~C5アルカナールを包含するアルデヒドおよびケトン供給源、HVP、ブタンジオン、ペンタン-2,3-ジオン、ピルビンアルデヒド、ピルビン酸、グリセルアルデヒド、グリオキサール、ジヒドロキシアセトン、α-ケト酪酸、ヘプタン-3,4-ジオン-2,5-ジアセテート、HMFone、HDFone、および関連誘導体、アスコルビン酸、5-ケトグルコン酸、シクロテン(cyclotene)、マルトール、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸を包含するαジケトンおよびそれらの供給源、ならびにタンパク質加水分解物を包含する。
【0048】
前述の成分に加えて、完全なフレーバー組成物は、担体材料を含有してもよい。担体材料は、特に、完全なフレーバー組成物が粉末の形態で提示されるとき、流動助剤、もしくは増量剤として、または粉末のガラス転移温度(Tg)を改変することによって粉末に物理的安定性を提供するために採用される。
【0049】
本発明のフレーバー増強剤は、固体フレーバー組成物に対して特に有利である。
それは、水ベースの系、脂肪ベースの系、および混合系において使用され得る。
本発明のフレーバー増強剤は、典型的には、オーブン乾燥によって調製される従来の組成物よりも強く、およびより濃縮されている。その結果として、従来のフレーバーモジュールと比較して使用される量が低減され得る。
【0050】
完全なフレーバー製剤または食品製品の中のフレーバー増強剤の投与量または濃度は、所望の影響および用途に応じて選択され得る。
完全なフレーバー製剤におけるフレーバー増強剤の典型的な投与量は、5~30重量%の範囲である;しかし、より高いまたはより低い投与量も使用されてもよい。
典型的には、肉ベースの食品製品は、約0.2~0.3%のフレーバーを含有するが、より高いまたはより低い投与量も使用されてもよい。ベジタリアンまたはビーガンの代替品は、一般的に、より高いフレーバー濃度、実例として約0.5~1%を必要とする。
【0051】
さらなる側面において、本発明は、脂肪型フレーバーを食品製品に付与する方法であって、該方法は、該食品製品に本発明のフレーバー増強剤を添加するステップを含む、前記方法に関する。
フレーバー増強剤は、食品製品の製造の間のあらゆる時点にて食品製品に添加されてもよい。実例として、食品製品の形成の間に他の成分と混合されてもよく、また、食品製品に、例えば、注入またはその上にコーティングされて、適用されてもよい。
【0052】
さらなる側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤を調製する方法に関する。該方法は、マイクロ波における材料の付随反応および乾燥を伴う。
【0053】
より具体的には、方法は以下のステップを含む:
(i)出発材料を提供すること;および
(ii)出発物質を反応させ、および同時に、その結果得られる材料を電子レンジにおいて乾燥させて、フレーバー増強剤を得ること、
ここで、出発材料は、少なくとも(a)タンパク質供給源もしくはタンパク質のフラグメント、またはアミノ官能基を持つ他の材料、および(b)脂肪または油を包含する。
【0054】
好適な方法は、実例として、WO 2018/083224に記載され、その開示は、方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。
出発材料は、典型的には、固体または液体である。
ある態様において、出発材料は、スラリーの形態またはエマルションの形態、とりわけ水性スラリーの形態でマイクロ波に導入される。典型的な含水量は約20~30%であるが、より高いまたは低い含水量も可能である。スラリーは、脂肪ベースであってもよく、または水および脂肪の混合物に基づくものであってもよい。
【0055】
出発材料は、少なくとも(a)タンパク質供給源もしくはタンパク質のフラグメント、またはアミノ官能基を持つ他の材料、および(b)脂肪または油を包含する。
食品製品における使用に好適であるあらゆる脂肪または油が使用され得る。脂肪または油は、植物供給源または動物供給源からであってもよい。好適な脂肪および油の例は、以下を包含する:牛肉、子牛肉、豚肉、子羊肉、羊肉、山羊肉、野菜(例として、ニンニク、ネギ、タマネギ、マスタード、アボカド、ニンジン、セロリ、チャイブ)、作物(例として、ヒマワリ、ベニバナ、亜麻仁、菜種、ゴマ、ピーナッツ、オリーブ、ヤシのココス、ナッツ)、スパイス(バジル、ナツメグ、ショウガ、ラベージ、ローズマリー、セージ、タイム、カルダモン)、家禽(例として、アヒル、ガチョウ、ニワトリ)、狩猟肉、魚および魚介。
【0056】
意図された使用に応じて、動物性脂肪、とりわけ強いおよび/または具体的な芳香を持つ動物性脂肪が好まれ得る。
大抵のケースにおいて、出発材料は、還元糖もしくは還元糖の供給源または他の炭水化物をさらに包含する。
任意に、出発材料は、抽出物(例として、植物および/または肉から)、スパイス、塩、担体、繊維、野菜由来、果実由来もしくは動物由来の粉末、酸、または他の一般的な添加物をさらに包含してもよい。
【0057】
出発材料、とりわけ出発材料を含有するスラリーは、フィルムの形態で電子レンジに導入されてもよく、これは、実例として、蒸発面上にスラリーを投入すること、注ぐこと、または汲み入れることによって形成され得る。フィルムの厚さは、所望のフレーバリング調製物が生成される期間内にスラリーが脱水されなければならないという考慮事項に関して選択される。また、入射したマイクロ波放射がフィルムを透過して、効率的で均一な加熱を保証する必要がある。
その結果得られる産物は、規則(EC)No 1334/2008に規定されるフレーバリング調製物または熱プロセスフレーバー剤(「反応フレーバー」)であり得る。
【0058】
材料を反応させ、同時に乾燥させるための電子レンジの使用は、反応後に別々のステップにおいて乾燥が行われる従来の方法と比較して、プロセシング時間を大幅に短くすることを可能にする。フレーバリング調製物の合成およびその脱水は、本質的に同時に単一のステップにおいて行われる。
【0059】
あらゆる工業用電子レンジは、本発明に従う方法において採用され得る。好適な電子レンジは、30kW/915MHz(50kVA)、最大で100kW/915MHz(150kVA);または100W/2450MHz(0.15kVA)、最大で30kW/2450MHz(45kVA)を包含する。
マイクロ波エネルギー入力は、典型的には、3~100kW、またはなおより高く、好ましくは30~100kWの範囲であり得る。
その結果得られるフレーバー増強剤は、典型的には、約0.1~5.0重量%の、より好ましくは約0.5~3.0%の含水量を有する。
【0060】
反応時間および温度は、出発材料および所望の製品、とりわけプロセシングの所望のグレードに応じて調節され得る。実例として、反応および乾燥ステップは、約100~180℃の温度にて約30秒~15分間実行されてもよい。
反応および乾燥ステップは、バッチのやり方でまたは連続的に実行され得る。
【0061】
電子レンジを通過した後、その結果得られたフレーバー増強剤は、粘性ペースト、ケーキ、リボン、または同種の形態で提示され得る。
この段階にて、さらなるプロセシングステップに供与されてもよい。例えば、フレーバー増強剤は、製粉され、粉砕され、および/またはふるい分けによってグレーディングされ、それを所望の粒子サイズを有する粉末、粒子または同種の形態にし得る。
【0062】
よって本発明は、以下の非限定例を用いて、さらに説明される:
【0063】
例1:固形脂肪型フレーバー増強剤の調製
適切なビーカー中で、出発材料の懸濁液/エマルションを調製した。正しい反応スラリーの質および均一性を確保するために、ビーカーには高剪断攪拌ユニット(Polytron PT6100、Kinematica、リッタウ、スイス)が備えられていた。
【0064】
以下の材料を所与の順序においてビーカーに添加した。
【表1】
【0065】
激しい攪拌下で、10ml 50% NaOHを緩やかに添加することにより、スラリーのpHを7.0に調整した。その結果得られたスラリーを、以下に概説するとおり、MWS flexiWAVE電子レンジ(ヘーアブルク、スイス)中で加工した:
結晶化皿において、90.0gの上記スラリーを段階的なマイクロ波領域(200Wにて6分、800Wにて1.0分)に供与した。穏やかから激しい泡立ちが観察され、スラリー温度は室温から約110~135℃に上昇した。プロセシングの終わりに向かって、スラリーは固化し始め、冷却すると、比較的均一で脆い固体を形成した。
【0066】
乾燥した発泡固体を、制御された雰囲気下で製粉し(Retsch ZM 100、ドイツ)、本発明のフレーバー増強剤を得た。最終粉末の含水量は、1.0~2.5%であった(Moisture Analyser HB 43、Mettler-Toledo、スイス)。
機能的な感覚刺激性評価およびマイクロ波製品の従来の加工製品に対する比較は、電子レンジ製品が、料理のバタースコッチのトーンの有意により強い影響と共に、脂肪種の特定の長続きする脂肪味の知覚を提供したことを示した。
【0067】
例2:固体脂肪型フレーバーの分析
本発明に従う4種のフレーバー増強剤の組成を分析した。
この目的のために、10gの各サンプルを20mlの水に溶解させ、0.5mgの内部標準をを含有する0.5mlのtert-ブチルメチルエーテルを添加した。よって得られた混合物を、20mlのtert-ブチルメチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相をvigreuxカラムに濃縮し、3mlの最終体積とした。抽出物を、キャピラリーカラム(Innowax 60 m x 0.32 iD x 0.25 ft、Agilent)を備えたGC-MS/FID(Agilent MSD 5977Bに接続されたAgilent GC 7890B)により分析した。濃度は、以下の式を使用して計算した:
c標的 = cSTD×面積標的/面積STD
ここで、c標的はフレーバー構成物質の濃度であり、cSTDは内部標準の濃度であり、面積標的は構成物質のFID面積であり、面積STDは、標準のFID面積である。
【0068】
2種の試料は、以下の鍵となる構成要素を含有することが見出された:
【表2】
【0069】
例3:ポテトクリスプ
プレーンなポテトクリスプを、クリスプが温かくカリカリになるまで、オーブンで30分温め(80℃)、次いで以下の2種のシーズニングを散布することよりコーティングした。
【表3】
【0070】
次いで、2種のポテトクリスプ試料を4人のフレーバリストによって査定した。
シーズニング1は、スパイシーで、肉的、ローストされ、グリルされた牛肉のプロファイルを提供した。
シーズニング2を用いたポテトクリスプは、さらなるボディおよび増強されたノートを持ち、より肉的で、脂肪的であると記載された。
【0071】
例4:鶏肉ブロスインスタントパウダー
鶏肉ブロスインスタントパウダーを、以下の成分を均一になるまでブレンドすることにより調製した。
【表4】
【0072】
得られた鶏肉ブロスパウダーを温水(用量:2%)と混合し、1%の例1の脂肪型フレーバー増強剤を添加し、よく混合した。
本発明のフレーバー増強剤は、全体的にうま味の特徴を増加させ、長く調理されたシチューのローストされたノートおよび芳香の特徴を付与することが見出された。
【国際調査報告】