IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルケー テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2025-502467二次電池用負極活物質、その製造方法及びこれを含む二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質、その製造方法及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20250117BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20250117BHJP
   C01B 33/023 20060101ALI20250117BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/13
C01B33/023
B09B3/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543405
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2022018857
(87)【国際公開番号】W WO2023182612
(87)【国際公開日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0037332
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524274118
【氏名又は名称】エルケー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュ スク
【テーマコード(参考)】
4D004
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4D004AA18
4D004BA06
4D004CA22
4D004DA06
4G072AA01
4G072BB05
4G072DD04
4G072DD05
4G072DD06
4G072GG01
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH33
4G072HH40
4G072JJ09
4G072JJ28
4G072KK07
4G072KK11
4G072LL03
4G072MM24
4G072RR13
4G072TT01
4G072TT30
4G072UU30
5H050AA07
5H050CA08
5H050CB02
5H050GA15
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA19
(57)【要約】
シリコン(Si)系粒子を含み、前記シリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合(ここで、Mは金属である)を含むものである、二次電池用負極活物質、その製造方法及びこれを含む二次電池に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)系粒子を含み、
前記シリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合(ここで、Mは金属である)を含むものである、二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記金属(M)は、B、P、Ge、Ti、Zr又はこれらの組み合わせを含むものである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記シリコン(Si)系粒子は、Si-Si結合をさらに含むものである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記シリコン(Si)系粒子は、シリカ及び金属酸化物を含有する廃ガラスを200℃乃至350℃の温度で還元させて製造されるものである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記シリコン(Si)系粒子は、フーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルにおいて、800cm-1乃至900cm-1の波数、650cm-1乃至750cm-1の波数、又はこれらの組み合わせの波数で前記M-O-Si結合に該当する透過度のピークを示すものである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記シリコン(Si)系粒子の平均粒径は0.05μm乃至5μmである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項7】
シリカ及び金属酸化物を含有する廃ガラスを200℃乃至350℃の温度で還元させ、シリコン(Si)系粒子を製造する段階を含み、
前記製造されたシリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合(ここで、Mは金属である)を含むものである、二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記廃ガラスは、ディスプレイの廃棄時に発生する熱強化ガラスである、請求項7に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物の金属と前記金属(M)は、B、P、Ge、Ti、Zr又はこれらの組み合わせを含むものである、請求項7に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記還元は、Al、AlCl、Zn、Mg、Ca又はこれらの組み合わせを含む還元剤を投入して行われるものである、請求項7に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
請求項1、2及び4乃至6のいずれか1項の負極活物質を含む負極;
正極;及び
電解質;を含む二次電池。
【請求項12】
前記負極の容量は、1Cで800mAh/g乃至1700mAh/gである、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記負極は、0.5Cで50サイクルの充放電を繰り返した後の体積変化が5%乃至40%である、請求項11に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極活物質、その製造方法及びこれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池分野において、シリコン負極素材は、商用化された黒鉛素材(370mAh/g)に比べて理論的な重さ当たりの容量が10倍以上であるので、次世代のパッテリー用負極物質として脚光を浴びている。
【0003】
ただし、充電時、リチウムイオンとシリコンとの反応を通じて体積が300%以上大きくなるという問題があるので、充放電を繰り返すとき、大きな体積変化によってシリコンが割れてしまい、電極から分離されるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一具現例は、充放電を繰り返すときに発生する体積変化が抑制され、電気化学的特性に優れた二次電池用負極活物質を提供する。
【0005】
他の一具現例は、前記二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0006】
さらに他の一具現例は、前記二次電池用負極活物質を含む二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一具現例は、シリコン(Si)系粒子を含み、前記シリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合(ここで、Mは金属である)を含むものである二次電池用負極活物質を提供する。
【0008】
前記金属(M)は、B、P、Ge、Ti、Zr又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0009】
前記シリコン(Si)系粒子は、Si-Si結合をさらに含むことができる。
【0010】
前記シリコン(Si)系粒子は、シリカ及び金属酸化物を含有する廃ガラスを200℃乃至350℃の温度で還元させて製造され得る。
【0011】
前記シリコン(Si)系粒子は、フーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルにおいて、800cm-1乃至900cm-1の波数(wave number)、650cm-1乃至750cm-1の波数、又はこれらの組み合わせの波数で前記M-O-Si結合に該当する透過度(transmittance)のピークを示すことができる。
【0012】
前記シリコン(Si)系粒子の平均粒径は、0.05μm乃至5μmであり得る。
【0013】
他の一具現例は、シリカ及び金属酸化物を含有する廃ガラスを200℃乃至350℃の温度で還元させ、シリコン(Si)系粒子を製造する段階を含み、前記製造されたシリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合(ここで、Mは金属である)を含むものである二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0014】
前記廃ガラスは、ディスプレイの廃棄時に発生する熱強化ガラスであり得る。
【0015】
前記金属酸化物の金属と前記金属(M)は、B、P、Ge、Ti、Zr又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
前記還元は、Al、AlCl、Zn、Mg、Ca又はこれらの組み合わせを含む還元剤を投入して行われ得る。
【0017】
さらに他の一具現例は、前記負極活物質を含む負極;正極;及び電解質を含む二次電池を提供する。
【0018】
前記負極の容量は、1Cで800mAh/g乃至1700mAh/gであり得る。
【0019】
前記負極は、0.5Cで50サイクルの充放電を繰り返した後の体積変化が5%乃至40%であり得る。
【発明の効果】
【0020】
一具現例に係る二次電池用負極活物質は、充放電を繰り返すときに発生する体積変化を抑制することによって、二次電池の電気化学的特性を向上できるだけでなく、各種ディスプレイの廃ガラスをリサイクルできるので環境にやさしい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図1b】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図2a】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質のX線回折分析(XRD)グラフである。
図2b】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質のX線回折分析(XRD)グラフである。
図3a】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質のフーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルを示すグラフである。
図3b】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質のフーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルを示すグラフである。
図4a】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池において、初期充放電サイクルによる電圧と放電容量の変化を示すグラフである。
図4b】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池において、初期充放電サイクルによる電圧と放電容量の変化を示すグラフである。
図5a】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池において、充放電繰り返しサイクルによる容量変化を示すグラフである。
図5b】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池において、充放電繰り返しサイクルによる容量変化を示すグラフである。
図6a】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池の充放電を繰り返すときの負極の体積変化を示すイメージである。
図6b】それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池の充放電を繰り返すときの負極の体積変化を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各具現例に対して、技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、各具現例は、様々な異なる形態で具現可能であり、ここで説明する具現例に限定されない。
【0023】
一具現例に係る二次電池用負極活物質は、シリコン(Si)系粒子を含み、このとき、シリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合(ここで、Mは金属である)を含む。
【0024】
一具現例において、負極活物質として使用されるシリコン(Si)系粒子は、M-O-Si結合を含んでいるので、リチウムイオンとの反応時に発生するシリコン(Si)の体積変化を制御することができる。言い換えると、M-O-Si結合を含むシリコン(Si)を負極活物質として使用することによって、充放電を繰り返すときに発生するシリコンの体積変化を抑制することができ、これによって二次電池の電気化学的特性が向上し得る。
【0025】
具体的には、M-O-Si結合は、M-O-Si結合を有する粒子であり得る。言い換えると、前記シリコン(Si)系粒子は、多数個の粒子が凝集している形態であってもよく、多数個の粒子のうち一つとしてM-O-Si結合を有する粒子を含むことができる。
【0026】
前記M-O-Si結合において、金属(M)は、B、P、Ge、Ti、Zr又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0027】
一具現例に係るシリコン(Si)系粒子は、純粋なSi-Si結合を有していることはもちろん、前記M-O-Si結合も有しているものである。具体的には、前記シリコン(Si)系粒子に対するX線回折分析(XRD)及びフーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルによると、純粋なSi-Si結合を含み、M-O-Si結合を追加的に有している。ここで、前記Si-Si結合は、Si-Si結合を有する粒子であり得る。
【0028】
さらに具体的には、前記シリコン(Si)系粒子は、フーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルにおいて、800cm-1乃至900cm-1の波数、650cm-1乃至750cm-1の波数、又はこれらの組み合わせの波数で前記M-O-Si結合に該当する透過度のピークを示すことができる。前記M-O-Si結合に該当する透過度のピークは、例えば、850cm-1乃至900cm-1の波数、650cm-1乃至700cm-1の波数、又はこれらの組み合わせの波数で示すことができる。
【0029】
前記シリコン(Si)系粒子の平均粒径は、0.05μm乃至5μm、例えば、0.05μm乃至1μm、0.1μm乃至0.8μmであり得る。シリコン(Si)系粒子の平均粒径が前記範囲内である場合、高容量の電極を得ることができる。
【0030】
前記シリコン(Si)系粒子は、シリカ及び金属酸化物を含有する廃ガラス(waste glass)を用いて低温還元法を通じて製造され得る。
【0031】
前記廃ガラスは、スマートフォンなどのディスプレイ液晶に使用される熱強化ガラスであり得る。各種ディスプレイの廃棄時に発生する廃ガラスは、ほとんどがリサイクルされずに埋め立てられる実情であるので、環境汚染の原因となっている。一具現例では、前記廃ガラスを負極活物質の原料として使用することによって、各種ディスプレイの廃ガラスをリサイクルできるようになり、これによって環境汚染を減少できるので環境にやさしい。
【0032】
また、従来のシリコンをシリカから製造する工程は、炭化熱工程(carbothermal process)を用いるときに1700℃以上の温度が必要であり、マグネシウム、アルミニウムなどの金属還元剤を使用する場合、2500℃以上の発熱反応によって構造の制御が難しくなる。その一方で、一具現例は、廃ガラスを使用することによって、高温工程による設備が必要でないので、原料費を大きく節減するだけでなく、低温還元法を通じて構造の制御が容易になり、純度の高いシリコンを製造することができる。
【0033】
具体的には、一具現例に係るシリコン(Si)系粒子は、シリカ及び金属酸化物を含有する廃ガラスを200℃乃至350℃の温度、例えば、200℃乃至300℃、200℃乃至280℃の温度で還元させて製造され得る。
【0034】
前記範囲の低い還元温度で製造される場合、構造の制御が容易になり、純度の高いシリコン系粒子を得ることができ、製造されたシリコン系粒子は、M-O-Si結合を含んでいるので、充放電時に発生するシリコン(Si)の体積変化を防止することができる。
【0035】
前記金属酸化物の金属は、M-O-Si結合での金属(M)と同一である。例えば、前記金属酸化物は、ホウ素酸化物、リン酸化物、ゲルマニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0036】
前記シリコン(Si)系粒子の製造は、還元剤を投入して行われ得る。前記還元剤は、Al、AlCl、Zn、Mg、Ca又はこれらの組み合わせを含むことができる。例えば、還元剤としては、Al及びAlClを共に使用することができ、この場合、1:5乃至1:20の重量比、例えば、1:10乃至1:20の重量比で混合して使用することができる。
【0037】
以下、上述した負極活物質を含む二次電池に対して説明する。
【0038】
前記二次電池は、負極、正極及び電解質を含む。
【0039】
一具現例に係るシリコン(Si)系粒子を負極活物質として用いた負極は、高容量を有することができ、具体的には、1Cで800mAh/g乃至1700mAh/g、例えば、1Cで800mAh/g乃至1500mAh/g、1Cで900mAh/g乃至1200mAh/gであり得る。
【0040】
一具現例に係るシリコン(Si)系粒子を負極活物質として用いた負極は、充放電を繰り返すときに発生する体積変化を抑制することができる。具体的には、0.5Cで50サイクルの充放電を繰り返した後の体積変化が5%乃至40%、例えば、5%乃至20%、10%乃至18%であり得る。
【0041】
前記負極は、集電体、及び前記集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0042】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、又はこれらの組み合わせを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記負極活物質層は、上述した負極活物質を含み、バインダー及び導電材をさらに含むことができる。
【0044】
前記バインダーは、各負極活物質粒子を互いにうまく付着させ、また、負極活物質を負極集電体にうまく付着させる役割をし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさないと共に、電子伝導性材料であればいずれも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;又はこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0046】
前記正極は、集電体、及び前記集電体上に位置する正極活物質層を含む。
【0047】
前記集電体としてはアルミニウムを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記正極活物質層は正極活物質を含む。前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物(リチウム化インターカレーション化合物)、具体的には、リチウム金属酸化物を使用することができる。前記リチウム酸化物としては、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル及びアルミニウムから選ばれる少なくとも一つの金属と、リチウムとを含む酸化物を使用することができる。
【0049】
前記正極活物質層は、バインダー及び導電材をさらに含むことができる。
【0050】
前記バインダーは、各正極活物質粒子を互いにうまく付着させ、また、正極活物質を正極集電体にうまく付着させる役割をし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさないと共に、電子伝導性材料であればいずれも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;又はこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0052】
前記負極及び正極は、それぞれ活物質、導電材及びバインダーを溶媒中で混合することによって活物質組成物を製造し、この組成物を集電体に塗布して製造する。このような電極の製造方法は、当該分野に広く知られている内容であるので、本明細書の詳細な説明では省略する。前記溶媒としてはN-メチルピロリドンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記電解質は、リチウム塩及び有機溶媒を含む。
【0054】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解され、二次電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的な二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割をする物質である。
【0055】
前記リチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、LiN(CFSO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサレートボレート(lithium bis(oxalato)borate;LiBOB)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0056】
前記リチウム塩の濃度は、約0.1M乃至約2.0Mの範囲内であり得る。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、ゲル状電解質組成物が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解液の性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動し得る。
【0057】
前記有機溶媒は、二次電池の電気化学的反応に関与する各イオンが移動し得る媒質としての役割をする。前記有機溶媒は、非水性有機溶媒であって、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、及び非プロトン性溶媒から選ばれ得る。
【0058】
前記カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate、BC)などが使用され得る。
【0059】
特に、鎖状カーボネート化合物と環状カーボネート化合物とを混合して使用する場合、誘電率を高めると同時に、粘性の小さい溶媒が製造され得るので好ましい。この場合、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物は、約1:1乃至1:9の体積比で混合して使用することができる。
【0060】
また、前記エステル系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用され得る。前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用され得る。前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用され得る。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用され得る。
【0061】
前記有機溶媒は、単独で使用するか、又は一つ以上を混合して使用することができ、一つ以上を混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池の性能によって適宜調節することができる。
【0062】
二次電池の種類によって、正極と負極との間にセパレーターが存在する場合もある。このようなセパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオリド又はこれらの2層以上の多層膜が使用可能であり、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレーター、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレーター、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレーターなどの混合多層膜が使用可能であることは当然である。
【実施例
【0063】
以下では、本発明の具体的な各実施例を提示する。ただし、下記に記載した各実施例は、本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎなく、これによって本発明が制限されてはならない。また、ここで記載していない内容は、この技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、それについての説明を省略する。
【0064】
(シリコン系粒子の製造)
【0065】
実施例1
【0066】
スマートフォンの廃棄時に発生した廃ガラスとしてのボロシリケートガラス(neutral borosilicate glass 5.1、USP and EP Type 1 glass)(SiO 85%、B 13%及びNa 2%含有)と、還元剤であるAl及びAlClとを用いて低温還元法でシリコン(Si)系粒子を製造した。具体的には、ボロシリケートガラスとAl及びAlClとを1:0.8:8の重量比で混合してからステンレススチール反応器(stainless steel reactor)(Unilok Corporation)に入れた後、アルゴン雰囲気及び250℃で15時間反応を行うことによってシリコン系粒子を製造した。その後、HCl溶液で化学的エッチング(chemical etching)を通じて不純物を除去した。
【0067】
比較例1
【0068】
純粋なシリカ(bare silica)(SiO 99.5%、400メッシュ、2マイクロンAPSパウダー、S.A.表面積2m/g)とAl及びAlClとを1:0.8:8の重量比で混合してからステンレススチール反応器(Unilok Corporation)に入れた後、アルゴン雰囲気及び250℃で15時間反応を行うことによってシリコン系粒子を製造した。その後、HCl溶液で化学的エッチングを通じて不純物を除去した。
【0069】
(二次電池用負極の製造)
負極活物質として実施例1及び比較例1で製造されたそれぞれのシリコン系粒子を、導電材としてカーボンブラックを、バインダーとしてポリアクリル酸(PAA)を60:20:20の重量比で溶媒である水に添加し、それぞれの負極混合物スラリー(固形分の含量:50重量%)を製造した。前記負極混合物スラリーを20μm厚の負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、これを乾燥させることによってそれぞれの負極を製造した。
【0070】
評価1:負極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)測定
負極活物質として実施例1及び比較例1で製造されたシリコン系粒子の表面に対して走査電子顕微鏡(SEM)の測定を行い、その結果を図1a及び図1bに示した。
【0071】
図1a及び図1bは、それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【0072】
図1a及び図1bを参考にすると、実施例1の場合は、1マイクロメートル以下の大きさを有するシリコン系粒子が製造されたことを確認することができる。また、比較例1の場合は、1マイクロメートル以下の大きさを有するシリコン系粒子が製造され、表面が滑らかであることを確認することができる。
【0073】
評価2:負極活物質のX線回折分析(XRD)測定
負極活物質として実施例1及び比較例1で製造されたシリコン系粒子に対してX線回折分析(XRD)の測定を行い、その結果を図2a及び図2bに示した。
【0074】
図2a及び図2bは、それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質のX線回折分析(XRD)グラフである。
【0075】
図2a及び図2bを参考にすると、実施例1で製造されたシリコン系粒子の場合は、シリコン系粒子内に純粋なシリコン(Si)粒子が合成されたことが分かる一方で、比較例1で製造されたシリコン系粒子の場合は、HClでエッチングした後にも依然として反応していないシリカ(SiO)粒子が存在することが分かる。これによって、一具現例に係るシリコン系粒子は、M-O-Si結合を含みながらもシリコン(Si)の純度が高い粒子であることが分かる。
【0076】
評価3:負極活物質のフーリエ変換赤外線(FT-IR)測定
負極活物質として実施例1及び比較例1で製造されたシリコン系粒子に対してフーリエ変換赤外線(FT-IR)の測定を行い、その結果を図3a及び図3bに示した。
【0077】
図3a及び図3bは、それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池用負極活物質のフーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルを示すグラフである。
【0078】
図3a及び図3bを参考にすると、実施例1で製造されたシリコン系粒子の場合は、純粋なSi-Si結合を含み、B-O-Si結合及びSi-O-Si結合を追加的に有していることを確認することができる。その一方で、比較例1で製造されたシリコン系粒子の場合は、残存するシリカによるSi-O-Si結合及びSi-Si結合のみが存在することを確認することができる。これによって、一具現例に係るシリコン系粒子は、M-O-Si結合を含んでいる粒子であることが分かる。
【0079】
評価4:二次電池の電気化学的特性測定
実施例1及び比較例1によって製造された負極とLi対極を用いてそれぞれのハーフセルを製造した。ハーフセルに対して0.05Cで初期充放電サイクルを行い、それによる放電容量を図4a及び図4bに示した。
【0080】
図4a及び図4bは、それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池において、初期充放電サイクルによる電圧と放電容量の変化を示すグラフである。
【0081】
図4a及び図4bを参考にすると、実施例1の場合は、放電容量が約1500mAh/gで、比較例1の場合は、放電容量が約1800mAh/gであることを確認した。
【0082】
続いて、初期充放電サイクルを行った後、1Cの速い充放電実験で長期寿命テストを行った。これに対する結果を図5a及び図5bに示した。
【0083】
図5a及び図5bは、それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池において、充放電繰り返しサイクルによる容量変化を示すグラフである。
【0084】
図5a及び図5bを参考にすると、実施例1の場合は、約1000mAh/gの容量が200サイクルまで維持される一方で、比較例1の場合は、100サイクルでほとんど容量が具現されないことを確認することができる。すなわち、比較例1は、充放電を繰り返すときに発生する体積変化に耐えられず、容量が低下したことが分かる。
【0085】
これによって、一具現例によってM-O-Si結合を含むシリコン系粒子を負極活物質として使用した場合、負極の体積変化が抑制され、電気化学的特性が向上することが分かる。
【0086】
評価5:負極の体積変化測定
実施例1及び比較例1によって製造された負極とLi対極を用いてそれぞれのハーフセルを製造した。ハーフセルに対して0.05Cで初期充放電サイクルを行い、0.5C速度で50サイクルの充放電を繰り返した後、負極の体積変化を測定し、その結果を図6a及び図6bに示した。
【0087】
図6a及び図6bは、それぞれ実施例1及び比較例1に係る二次電池の充放電を繰り返すときの負極の体積変化を示すイメージである。
【0088】
図6a及び図6bを参考にすると、実施例1の場合は、約16%の体積が膨張したことが分かる一方で、比較例1の場合は、約225%の体積が膨張したことが分かる。すなわち、比較例1は、繰り返された充放電で体積変化が制御されないことが分かる。
【0089】
これにより、一具現例によってM-O-Si結合を含むシリコン系粒子を負極活物質として使用した場合、負極の体積変化が抑制されることが分かる。
【0090】
以上では、本発明の好適な実施例に対して説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び添付の図面の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
【国際調査報告】