(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】MCMB製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20250117BHJP
C04B 35/52 20060101ALI20250117BHJP
C10C 3/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C01B32/05
C04B35/52
C10C3/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543438
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2022001080
(87)【国際公開番号】W WO2023140400
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007951
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524274417
【氏名又は名称】キリングトン マテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジンギュ
(72)【発明者】
【氏名】パスク ステファン デービッド
(72)【発明者】
【氏名】イ ファンボム
【テーマコード(参考)】
4G146
4H058
【Fターム(参考)】
4G146AA23
4G146AB01
4G146AC16B
4G146AD10
4G146BA22
4G146BB03
4G146BB04
4G146BB06
4G146BB11
4G146BB18
4G146CA02
4G146CA16
4H058DA13
4H058DA22
4H058EA03
4H058EA08
4H058EA45
4H058FA03
4H058FA33
(57)【要約】
本発明は、MCMB製造方法に関し、a)原料ピッチを前処理する段階と、b)前処理したピッチを塩と混合する段階と、c)前記ピッチと塩の混合物を粉砕撹拌する段階と、d)前記粉砕した混合物を150~300℃の温度で30~180分間加熱撹拌し、原料ピッチを熱分解および重合反応させて、メソフェーズピッチを製造する段階と、e)加熱撹拌した混合物を冷却させた後、塩を除去する段階と、f)塩が除去されたメソフェーズピッチを後処理し、MCMBを製造する段階と、を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)原料ピッチを前処理する段階と、
b)前処理したピッチを塩と混合する段階と、
c)前記ピッチと塩の混合物を粉砕撹拌する段階と、
d)前記粉砕した混合物を150~300℃の温度で30~180分間加熱撹拌し、原料ピッチを熱分解および重合反応させて、メソフェーズピッチを製造する段階と、
e)加熱撹拌した混合物を冷却させた後、塩を除去する段階と、
f)塩が除去されたメソフェーズピッチを後処理し、MCMBを製造する段階と、を含むMCMB製造方法。
【請求項2】
前記原料ピッチは、軟化点150または115の等方性ピッチであることを特徴とする請求項1に記載のMCMB製造方法。
【請求項3】
a)段階は、
乾燥した原料ピッチをふるいにかけて106μm以下の粒径となるように均一化し、
均一化した原料ピッチをオーブンで乾燥させることを特徴とする請求項1または2に記載のMCMB製造方法。
【請求項4】
b)段階の塩は、
水溶性金属塩化物であることを特徴とする請求項1または2に記載のMCMB製造方法。
【請求項5】
前記金属塩化物は、
塩化アルミニウムと塩化ナトリウムを3:2~1:1のモル比で混合したことを特徴とする請求項4に記載のMCMB製造方法。
【請求項6】
前記原料ピッチと金属塩化物の混合比は、原料ピッチ5~30wt%と塩70~95wt%であることを特徴とする請求項4に記載のMCMB製造方法。
【請求項7】
e)段階は、
水溶性の塩を蒸留水で洗浄して除去することを特徴とする請求項4に記載のMCMB製造方法。
【請求項8】
f)段階は、
真空雰囲気でメソフェーズピッチを乾燥させた後、
溶媒抽出を通じてMCMBを製造することを特徴とする請求項1に記載のMCMB製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MCMB製造方法に関し、より詳細には、MCMBの製造費用を節減できるMCMB製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、メソフェーズ炭素質小球体(mesophase carbon microbeads,MCMB)は、ピッチ(pitch)を高温加熱することによって製造される。ピッチ(pitch)は、光学的に等方性特性を示すが、380℃以上で熱処理すると、熱分解と同時に重合反応が起こることにより、光学的に異方性特性を有するメソフェーズ炭素質小球体が生成され、続いて熱処理すると、メソフェーズ炭素質小球体の粒子が徐々に成長し、一定温度以上では、小球体が互いに結合し、コークス化する。このような熱処理過程で生成したメソフェーズ炭素質小球体(MCMB)は、芳香族環の積層により結晶構造がよく発達しているため、電気的・機械的特性に優れ、リチウム二次電池用負極材料および高強度、高密度の各種炭素材料の製造過程の基本素材に用いられている。
【0003】
韓国公開特許10-1999-0083663号公報(粒子状炭素体の製造方法、1999年12月6日公開)には、ピッチと高分子樹脂を混合し、500~600℃で反応させた後、これを冷却して得た物質を粉砕した後、分級して、粉末を得る方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、このような方法は、最終製品の品質がピッチの品質自体による影響を大きく受けるため、異方性ピッチを使用したり、あるいは、等方性ピッチを使用する場合、これを異方性ピッチに変換させる作業が必要であり、熱硬化性樹脂の含有によって収率が低下する。
【0005】
また、等方性ピッチを異方性ピッチに変換させるとき、500~600℃の高温で熱処理を行うので、製造コストが増加する問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような従来問題点を勘案した本発明が解決しようとする技術的課題は、等方性ピッチを用いて異方性ピッチを製造するとき、投入されるエネルギーを節減できるMCMB製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、ピッチの反応温度を相対的に下げ、反応に必要な時間を短縮し、生産性の向上と製造費用を節減できるMCMB製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態によるMCMB製造方法は、a)原料ピッチを前処理する段階と、b)前処理したピッチを塩と混合する段階と、c)前記ピッチと塩の混合物を粉砕撹拌する段階と、d)前記粉砕した混合物を150~300℃の温度で30~180分間加熱撹拌し、原料ピッチを熱分解および重合反応させて、メソフェーズピッチを製造する段階と、e)加熱撹拌した混合物を冷却させた後、塩を除去する段階と、f)塩が除去されたメソフェーズピッチを後処理し、MCMBを製造する段階と、を含んでもよい。
【0009】
本発明の実施形態において、前記原料ピッチは、軟化点が150または115の等方性ピッチであってもよい。
本発明の実施形態において、a)段階は、乾燥した原料ピッチをふるいにかけて106μm以下の粒径となるように均一化し、均一化した原料ピッチをオーブンで乾燥させることができる。
【0010】
本発明の実施形態において、b)段階の塩は、水溶性金属塩化物であってもよい。
本発明の実施形態において、前記金属塩化物は、塩化アルミニウムと塩化ナトリウムを3:2~1:1のモル比で混合したものであってもよい。
【0011】
本発明の実施形態において、前記原料ピッチと金属塩化物の混合比は、原料ピッチ5~30wt%と塩70~95wt%であってもよい。
本発明の実施形態において、e)段階は、水溶性の塩を蒸留水で洗浄して除去することができる。
【0012】
本発明の実施形態において、f)段階は、真空雰囲気でメソフェーズピッチを乾燥させた後、溶媒抽出を通じてMCMBを製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるMCMB製造方法は、溶融塩を用いてピッチに対して知られた380℃より低い温度で重合反応を誘導してMCMBを製造することによって、生産性を向上させ、製造費用を節減できる効果がある。
【0014】
また、本発明は、等方性ピッチを使用しながらも、異方性MCMBを製造することができ、原料コストおよび原料の処理コストを節減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるMCMB製造方法の工程フローチャートである。
【
図2】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図3】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図4】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図5】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図6】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図7】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図8】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図9】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図10】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図11】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【
図12】
図2~
図12は、それぞれ本発明の様々な実験例の結果を示すラマンシフトグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるMCMB製造方法について添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態は、当該技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、下記の実施形態は、様々な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が下記の実施形態に限定されるものではない。かえって、これらの実施形態は、本開示をさらに充実かつ完全にし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0017】
本明細書において使用された用語は、特定の実施形態を説明するために使用され、本発明を制限するためのものではない。本明細書において使用されたように、単数の形態は文脈上他の場合を明確に示すものでなければ、複数の形態を含む。また、本明細書において使用される「含む。(comprise)」及び/または「含む(comprising)」は、言及した形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/またはこれらグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/またはこれらグループの存在または付加を排除するものではない。本明細書において使用されたように、用語「及び/または」は、当該列挙された項目のうちいずれか一つ及び一つ以上のあらゆる組み合わせを含む。
【0018】
本明細書において第1、第2などの用語が、多様な部材、領域及び/または部位を説明するために使用されるが、これら部材、部品、領域、層及び/または部位は、これら用語により限定されてはならない。これら用語は、特定順序や上下、または優劣を意味するものではなく、ただ、一つの部材、領域または部位を他の部材、領域または部位と区別するために使用される。したがって、以下で述べる第1部材、領域または部位は、本発明の趣旨を逸脱することなく、第2部材、領域または部位を称することができる。
【0019】
以下、本発明の実施形態は、本発明の実施形態を概略的に示す図面を参照して説明する。図面において、例えば、製造技術及び/または公差によって、図示された形状の変形が予想される。したがって、本発明の実施形態は、本明細書に示した領域の特定形状に制限されてはならず、例えば、製造上招来される形状の変化を含まなければならない。
【0020】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるMCMB製造方法の工程フローチャートである。
図1を参照すると、本発明は、原料ピッチを前処理する段階(S10)と、前処理したピッチを塩と混合する段階(S20)と、前記ピッチと塩の混合物を粉砕撹拌する段階(S30)と、前記粉砕した混合物を150~300℃の温度で30~180分間加熱撹拌し、ピッチを熱分解および重合反応させて、メソフェーズピッチを製造する段階(S40)と、加熱撹拌した混合物を冷却させた後、塩を除去する段階(S50)と、塩が除去されたメソフェーズピッチを後処理し、MCMBを製造する段階(S60)と、を含む。
【0021】
以下、上記のように構成される本発明によるMCMB製造方法の構成と作用についてより詳細に説明する。
まず、S10段階のように原料ピッチを前処理する。
【0022】
この際、前処理は、乾燥した原料ピッチをふるいにかけて106μm以下の粒径となるように均一化し、均一化した原料ピッチをオーブンで乾燥させる。この際、乾燥条件は、真空雰囲気で40℃で加熱して完全乾燥させる。この際、原料ピッチは、等方性(isotropic)ピッチである。
【0023】
この際、乾燥時間は、原料ピッチの量によって調節することができる。
次に、S20段階のように乾燥した原料ピッチを塩(salts)と混合する。
この際、塩は、塩化ナトリウムを含むものであってもよく、塩化ナトリウムと金属塩化物の混合物であることが好ましい。特に金属塩化物は、塩化アルミニウム(AlCl3)を使用することができる。
【0024】
前記塩化アルミニウムと塩化ナトリウムの混合比は、3:2~1:1のモル比で混合することが好ましい。
前記塩化アルミニウムと塩化ナトリウムを使用する理由は、両方とも水溶性であり、後続工程で塩の除去が相対的に容易であるからである。
【0025】
すなわち、本発明の説明には、塩化アルミニウムと塩化ナトリウムの混合物について説明するが、水溶性金属塩であれば、適用が可能である。
前処理した前記ピッチと塩の混合比は、ピッチ5~30wt%と塩70~95wt%で混合する。
【0026】
次に、S30段階のように、前記ピッチと塩の混合物を粉砕撹拌する。
この際、粉砕撹拌は、ボールミルを使用することができ、混合物の粒径均質化および撹拌し、ピッチと塩を均一に混合する。
【0027】
次に、前記粉砕した混合物を150~300℃の温度で30~180分間加熱撹拌し、ピッチを熱分解および重合反応させて、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)を製造する。好ましくは、加熱温度を250℃とする。これは、加熱温度を最も低くしながらも、所望の品質のMCMBを得るための条件である。
【0028】
この際、加熱撹拌の雰囲気は、窒素などの不活性ガスを供給し、パージ(purge)状態を維持し、撹拌機を用いて撹拌しながら加熱する。
撹拌機は、機械的撹拌機を用い、80~120RPMの比較的低速で撹拌を行う。このような撹拌機のRPMは、粘度および量によって異なっていてもよく、80~400RPMの範囲で撹拌することができる。
【0029】
このような加熱によって融点が低い塩化アルミニウムが溶融し、溶融物内で均一に分散したピッチは全体的に均一に加熱され、したがって、粉末状ピッチを直接加熱する方式に比べて加熱効率を高めることができる。
【0030】
したがって、本発明は、従来知られたピッチの反応温度に比べてさらに低い温度で反応を誘導することができ、したがって、MCMB製造に必要なエネルギーを節減することができる。
【0031】
次に、S50段階のように、加熱撹拌した混合物を冷却させた後、塩を除去する。
この際の冷却は、他の異物との反応を防止するために窒素が供給される雰囲気で行われ、冷却が完了した後には、蒸留水を用いて混合物を洗浄して塩を除去することによって、メソフェーズピッチを獲得する。
【0032】
前述したように、本発明において使用する塩化アルミニウムと塩化ナトリウムは、いずれも、水溶性金属塩であり、蒸留水洗浄によって容易に除去され、メソフェーズピッチを獲得することができる。
【0033】
次に、S60段階のように、塩が除去されたメソフェーズピッチを後処理し、MCMBを獲得する。
この際の後処理は、オーブンを用いてメソフェーズピッチを乾燥させることであり、40℃真空雰囲気で乾燥させた後、乾燥したメソフェーズピッチから熱処理反応物を溶媒抽出を通じて除去し、MCMBを製造する。
【0034】
溶媒抽出は、重油を用いた抽出など知られた抽出法を使用することができる。
このように製造されるMCMBは、原料ピッチの品質とは関係なく、その品質に優れていることが確認され、これは、下記の実験例を通じてより詳細に説明する。
【0035】
本発明は、具体的には、等方性ピッチを溶融金属塩に分散させて熱処理し、異方性メソフェーズピッチを得ることに特徴があり、このような本発明によるMCMB製造方法の優秀性を確認するために、下記のように小規模の実験を行い、本発明により製造されたMCMBの特性をラマン(Raman)分光法などで確認し、本発明の効果を確認した。
【0036】
<実験例>
図2は、軟化点が150の等方性ピッチのラマン分光結果グラフである。
本発明は、軟化点が150または115の等方性ピッチを原料として使用して、異方性メソフェーズピッチを獲得する方法を提供することに特徴があり、本発明において獲得しようとする異方性メソフェーズピッチのラマン分光結果グラフを
図3に示した。
【0037】
実験は、様々な条件を変更しながら、下記の表1のように複数回進めた。
例えば、金属塩の種類をAlCl3とNaClの混合物、KClとZnCl2の混合物に対する実験を行い、塩の混合割合も多様に可変した。
【0038】
原料(feedstock)のピッチは、表1で1、2で表現される異方性ピッチと3、4で表現される等方性ピッチを使用して実験した。3で表現された等方性ピッチは、前述した軟化点150ピッチであり、4は、軟化点115ピッチである。
【0039】
また、熱処理の温度条件と時間条件も多様に変更し、熱処理時に撹拌機(Stirrer)を用いた撹拌条件も変更した。
【0040】
【0041】
実験結果、KCl+ZnCl2混合物を塩として使用した場合、メソフェーズピッチから塩を除去することが容易でないので、使用が不可能であることが確認された。
【0042】
したがって、本発明では、水溶性金属塩を使用して溶融物を提供する。
以下では、表1の実験において有意味な実験結果について記述する。
<実験結果1>
有意味な実験結果として、表1の実験番号3は、溶融塩として塩化アルミニウムと塩化ナトリウムの混合物を使用し、ピッチと塩を重量比を基準として1:10の割合で混合し、300℃で180分間熱処理した。この際、撹拌を省略した。
【0043】
このような条件で製造されたメソフェーズピッチを製造し、その結果を確認し、ラマン分析結果を
図4に示した。
図4を参照すると、実験番号3の結果は、
図3のラマンシフト結果と類似していることを確認することができる。すなわち、等方性ピッチを使用しながらも、異方性メソフェーズピッチを製造することができることを確認した。
【0044】
また、相対的に低い温度でもMCMB製造のための処理が可能であることを確認することができた。
ただし、300℃で加熱したにもかかわらず、ピッチと溶融塩混合体の気化現象が一部観察された。
【0045】
<実験結果2>
実験番号4の結果を
図5に示した。
実験番号4は、前述した実験番号3の条件で加熱温度を250℃に下げ、他の要素は同一に維持した結果である。
【0046】
このように温度を250℃に下げた場合にも、
図3のラマンシフト結果と類似した結果を得ることができ、加熱温度をさらに下げて、製造コストをより一層節減することができる。
【0047】
特に気化現象が発生しないので、実験番号3の結果に比べて
図3にさらに近いラマンシフトグラフを確認することができた。
<実験結果3>
実験番号17の結果であるラマンシフトを
図6に示した。
【0048】
実験番号17は、実験番号3の条件において加熱温度のみを200℃に下げたものであり、前述した
図4と
図5のラマンシフト結果と類似しているが、ピークの強度(Intensity a.u.)が減少することを確認することができた。
【0049】
上記の実験結果に基づいて、本発明は、150~300℃の加熱条件を適用することが好ましく、特に250℃で加熱した場合、目標とする結果と最も類似した結果を得ることができた。
【0050】
上記の実験は、加熱温度条件を確認するためのものであり、加熱維持時間の適切な程度を確認するために、上記の実験と同一条件であり、温度を250℃に固定した状態で加熱時間を変更して特性を分析した。
【0051】
<実験結果4>
基本的な実験条件は実験番号4と同一にし、かつ加熱時間は180分から120分に短縮した結果を
図7に示した。
【0052】
図7に示したように、加熱時間を120分に短縮したにもかかわらず、ラマン結果は、目標とする結果と非常に類似していることを確認することができた。
<実験結果5>
実験番号4の実験条件において、加熱時間を60分にさらに短縮した実験結果を
図8に示した。
【0053】
ラマンシフトの形態は、120分を維持した実験結果5と維持しているが、強度が低くなったことを確認することができる。
このような様々な実験を通じて、加熱温度は150~300℃の範囲で、加熱時間は30~180分で処理することが、低品質の等方性ピッチを使用しながらも、異方性メソフェーズピッチを製造することができることが確認された。
【0054】
より多様な実験結果の獲得のために、等方性ピッチと塩の混合割合を調整しながら実験を行った。
<実験結果6>
実験番号4の実験条件は、塩化アルミニウムと塩化ナトリウムの混合物を使用し、等方性ピッチと塩混合物を1:10の重量比で混合した例であり、これを1:2に変更したことが、実験番号5の実験条件である。
【0055】
実験番号5の条件によって実験した結果を
図9に示した。
図示のように、目標とするラマンシフト結果とは差異が大きいことを確認することができた。
【0056】
これは、等方性ピッチが分散する溶融塩の量が少なくて、等方性ピッチを均一に加熱しないからであると理解することができる。
<実験結果7>
実験番号5とは異なって、実験番号6では、等方性ピッチと塩混合物の混合重量比を1:20で塩の比率を増加させた。
【0057】
この際の実験結果を
図10に示した。
ラマンシフトの形状は、目標とする結果と類似しているが、ピーク強度が若干低い結果を示した。
【0058】
このような実験結果に基づいて等方性ピッチと塩混合物は、ピッチ5~30wt%と塩70~95wt%で混合することが適当であることが確認された。
<実験結果8>
また、加熱時に撹拌の影響を評価するために、実験番号4と同一条件で撹拌機を用いて撹拌を行った実験番号11の実験結果を
図11に示した。
【0059】
図11を参照すると、撹拌をしない結果(
図7参照)と比較して、目標とする結果にさらに近い結果を得ることができた。
加熱状態での溶融塩の撹拌は、熱の分布均一性を向上させて、等方性ピッチをより均一に加熱して、さらに優れた特性を示すことができることが立証された。
【0060】
最後に、軟化点が115の等方性ピッチに本発明を適用したときにも、優れた品質のメソフェーズピッチを得ることができるかを確認するための実験を行った。
<実験結果9>
表1の実験番号19は、115等級の等方性ピッチを使用し、溶融塩として塩化アルミニウムと塩化ナトリウムの混合物、等方性ピッチと溶融塩の重量比を1:10とし、加熱温度は、250℃で180分間加熱し、加熱時に溶融塩を撹拌した。
【0061】
このような実験で得られた結果を
図12に示した。
図12から確認できるように、115等級の等方性ピッチを使用する場合にも、優れた品質のメソフェーズピッチを獲得することができた。
【0062】
したがって、本発明は、より低コストの原料ピッチを使用しながらも、所望の品質のMCMBを製造することができ、製造コストを最小化することができる特徴がある。
【0063】
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で多様に修正、変形して実施することができることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、自然法則を用いて等方性ピッチを異方性ピッチに切り替え、エネルギーを節減できる方法に関し、産業上の利用可能性がある。
【国際調査報告】