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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】高純度のコレステロールの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07J 9/00 20060101AFI20250117BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C07J9/00
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543848
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2022144100
(87)【国際公開番号】W WO2023142890
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210099954.7
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512198970
【氏名又は名称】華東師範大学
(71)【出願人】
【識別番号】522185623
【氏名又は名称】江蘇佳尓科薬業集団股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU JIAERKE PHARMACEUTICALS GROUP CORP.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.302,Huzhuangtou,Sanhuangmiao,Zhenglu,Tianning District,Changzhou,Jiangsu 213111,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】仇 文▲衛▼
(72)【発明者】
【氏名】顧 向忠
(72)【発明者】
【氏名】李 晨晨
(72)【発明者】
【氏名】蒋 澄宇
(72)【発明者】
【氏名】叶 如飛
【テーマコード(参考)】
4C091
4H039
【Fターム(参考)】
4C091AA02
4C091BB06
4C091CC03
4C091DD01
4C091EE04
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM01
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA05
4C091PB05
4C091QQ01
4C091RR05
4H039CA60
4H039CG90
(57)【要約】
本発明は、高純度のコレステロールを合成する方法を開示し、当該方法は、植物由来の21-ヒドロキシ-20-メチルプレグナ-4-エン-3-オン、別名ビスノラールアルコール又はBAを原料として使用し、酸化、Wittig反応、アセチル化、還元、ヒドロキシル保護、選択的水素化還元、脱保護又は加水分解などのステップを経て上記コレステロールを合成し、純度は99%以上に達することができる。従来の動物由来のコレステロールの欠点を考慮して、本発明は植物由来の原料BAからコレステロールを合成し、安全性が高く、病原性細菌やウイルス感染のリスクを回避するだけでなく、合成収率も高く、良好な製品の純度、環境に優しく、産業化生産に便利であり、そして本発明では製品中の不純物のレベルを大幅に低減し、高純度のコレステロールの取得を容易にし、臨床使用の安全性を向上させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の21-ヒドロキシ-20-メチルプレグナ-4-エン-3-オンBAを原料として使用してコレステロールを合成する方法であって、
前記方法は、BAを原料として使用し、酸化、Wittig反応、アセチル化、還元、ヒドロキシル保護、選択的水素化還元、脱保護又は加水分解などのステップを経て前記コレステロールを合成する方法であり、具体的には、
(a)第1の溶媒中で、式(1)で表されるBAを酸化反応させて式(2)の化合物を得るステップ、
(b)第2の溶媒中で、式(2)の化合物をWittig反応させて式(3)の化合物を得るステップ、
(c)第3の溶媒中で、式(3)の化合物をアセチル化反応させて式(4)の化合物を得るステップ、
(d)第4の溶媒中で、式(4)の化合物を還元反応させて式(5)の化合物を得るステップ、
(e)第5の溶媒中で、式(5)の化合物をヒドロキシル保護反応させて式(6)の化合物を得るステップ、
(f)第6の溶媒中で、式(6)の化合物を選択的水素化還元反応させて式(7)の化合物を得るステップ、
(g)第7の溶媒中で、式(7)の化合物を脱保護反応又は加水分解反応させてコレステロールを得るステップ、
を含み、
ここで、前記方法の反応プロセスはスキーム(A)に示す通りである、コレステロールの合成方法。
【化66】
(ただし、Rはエステル基、シリルエーテル基から選択される。)
【請求項2】
前記エステル基は、C2-C10直鎖エステル基、イソブチルエステル
【化67】
イソペンチルエステル基
【化68】
フェニルエステル基
【化69】
p-メトキシフェニルエステル基
【化70】
から選択される1つ又は複数であり、
前記シリルエーテル基はトリメチルシリルエーテル基
【化71】
及びtert-ブチルジメチルシリルエーテル基
【化72】
から選択される1つ又は2つである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)において、前記酸化反応は、具体的には、前記第1の溶媒中で、式(1)で表されるBAを、TEMPO、炭酸水素ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム及び酸化剤と酸化反応させて、式(2)の化合物を得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式(1)で表されるBA、TEMPO、炭酸水素ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム、酸化剤のモル比は、1:(0~1):(0~20):(0~1):(1~5)であり、及び/又は、前記酸化剤は、N-クロロスクシンイミドNCS、N-ブロモスクシンイミドNBS及び2-ヨードキシ安息香酸IBXから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記第1の溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルスルホキシド及び水から選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記酸化反応の温度は0~30℃であり、及び/又は、前記酸化反応の時間は3~8時間である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)において、前記Wittig反応は、具体的には、前記第2の溶媒の中で式(2)の化合物、3,3-ジメチルアリルハライド、トリフェニルホスフィン、カリウムtert-ブトキシドをWittig反応させて、式(3)の化合物を得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式(2)の化合物、3,3-ジメチルアリルハライド、トリフェニルホスフィン、カリウムtert-ブトキシドのモル比は、1:(1~4):(1~4):(1~4)であり、及び/又は、前記第2の溶媒は、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ヘプタンから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記3,3-ジメチルアリルハライドは、3,3-ジメチルアリルクロリド、3,3-ジメチルアリルブロミドから選択される1つ又は2つであり、及び/又は、前記Wittig反応の温度は-10~112℃であり、及び/又は、前記Wittig反応の時間は0.5~9時間である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)において、前記アセチル化反応は、具体的には、前記式(3)の化合物、塩化アセチル、無水酢酸、及び塩基を第3の溶媒中でアセチル化反応させて式(4)の化合物を得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式(3)の化合物、塩化アセチル、無水酢酸、塩基のモル比は、1:(0.5~62.5):(1~62.5):(0~6)であり、及び/又は、前記塩基は、ピリジン、トリエチルアミン、DIPEA、DMAP及びジイソプロピルアミンから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記第3の溶媒は、無水酢酸、塩化アセチル、酢酸エチル及びジクロロメタンから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記アセチル化反応の温度は40~110℃であり、及び/又は、前記アセチル化反応の時間は1~10時間である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)において、前記還元反応は、具体的には、前記式(4)の化合物と還元剤とを前記第4の溶媒中で還元反応させて式(5)の化合物を得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記式(4)の化合物と還元剤のモル比は1:(1~25)であり、及び/又は、前記第4の溶媒は、テトラヒドロフラン、エタノール、水、ジクロロメタン、2-メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、酢酸及びメチルtert-ブチルエーテルから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記還元剤は、NaBH及びKBHから選択される1種又は2種であり、及び/又は、前記還元反応の温度は0~50℃であり、及び/又は、前記還元反応の時間は6~12時間である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(e)において、前記ヒドロキシル保護反応は、具体的には、前記式(5)の化合物とヒドロキシの保護試薬とを、塩基の作用下で前記第5の溶媒中で縮合反応させ、式(6)の化合物を得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Rがエステル基である場合、前記第5の溶媒は、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、DMF、トルエン、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、DMAPから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記式(5)の化合物、ヒドロキシの保護試薬、塩基のモル比は、1:(1~4):(0.05~5)であり、及び/又は、前記反応の温度は0~50℃であり、及び/又は、前記ヒドロキシル保護反応の時間は2~24時間であり、
Rがシリルエーテル基である場合、前記第5の溶媒は、DMF、ジクロロメタン、クロロホルム及び四塩化炭素のうちの1つ又は複数であり、及び/又は、前記塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、DMAPから選択される1つ又は複数であり、前記式(5)の化合物、ヒドロキシの保護試薬、塩基のモル比は、1:(2~4):(4~8)であり、及び/又は、前記反応の温度は0~50℃であり、及び/又は、前記ヒドロキシル保護反応の時間は2~24時間である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(f)において、前記選択的水素化還元反応は、具体的には、前記式(6)の化合物を前記第6の溶媒中で触媒の作用下で、還元剤と選択的水素化還元反応させて式(7)の化合物を得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤はHから選択され、及び/又は、前記触媒はラネーNiであり、及び/又は、前記式(6)の化合物と触媒との質量比は1:(0.05~5)であり、及び/又は、前記第6の溶媒は、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン及びイソプロピルアルコールから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記水素化還元反応の温度は0~60℃であり、及び/又は、前記水素化還元反応における還元剤Hの圧力は1~20atmであり、及び/又は、前記水素化還元反応の時間は4~48時間である、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Rがエステル基である場合、ステップ(g)において、前記加水分解反応は具体的には、前記式(7)の化合物を第7の溶媒中で塩基の作用下で、加水分解反応させ、コレステロールを得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基は、LiOH、KOH、NaOH、t-BuOK、KCOから選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記式(7)の化合物と塩基のモル比は1:(0.5~2)であり、及び/又は、前記第7の溶媒は、メタノール、エタノールから選択される1種又は2種であり、及び/又は、前記加水分解反応の温度は10~75℃であり、及び/又は、前記加水分解反応の時間は0.3~12時間である、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Rがシリルエーテル基である場合、ステップ(g)において、前記脱保護反応は、具体的には、前記式(7)の化合物を前記第7の溶媒中で触媒の作用下で、脱保護反応させ、コレステロールを得る反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒はフッ化テトラブチルアンモニウムTBAF、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物TBAF・3HO、三フッ化ホウ素エーテル、酢酸及び塩化水素の酢酸エチル溶液から選択される1つ又は複数であり、及び/又は、前記式(7)の化合物と触媒のモル比は1:(1~6)であり、及び/又は、前記第7の溶媒は、テトラヒドロフラン及び水から選択される1種又は2種であり、及び/又は、前記脱保護反応の温度は10~75℃であり、及び/又は、前記脱保護反応の時間は2~48時間である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化合物の構造は、式(6-2E)、(6-3E)、(6-4E)、(6-5E)、(6-6E)、(6-2Z)、(6-3Z)、(6-4Z)、(6-5Z)、(6-6Z)、(6′-2E)、(6′-3E)、(6′-4E)、(6′-5E)、(6′-6E)、(6′-2Z)、(6′-3Z)、(6′-4Z)、(6′-5Z)、(6′-6Z)で示される通りである、ことを特徴とする化合物。
【化73】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学合成の技術分野に属し、植物由来の21-ヒドロキシ-20-メチルプレグナ-4-エン-3-オン、別名ビスノラールアルコール又はBA(Bisnoralcohol)を原料として使用して高純度のコレステロールを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは、動物の組織細胞にとって不可欠で重要な物質であり、細胞膜の形成に関与するだけでなく、体内の胆汁酸やステロイドホルモンの合成の原料でもある。現在、商業化されたコレステロールは主に次の目的で使用されている。1.医薬品賦形剤-リポソーム添加剤、例えば新型コロナウイルスmRNAワクチンの賦形剤(リポソームを製造する時に30~50%のコレステロールを加えると、リポソームの薬物担持能力及び安定性を大幅に増加させることができ);2.化粧品添加物;3.液晶製造用の原料;4.ビタミンD3製造用の出発原料。現在、商業化されているコレステロールのほとんどは動物の脳幹(脳幹コレステロール)又はラノリン(ラノリンコレステロール)由来のものであり、いずれも動物由来のコレステロールである。動物由来の製品には動物の病原体やその他の有害な因子が含まれている可能性が高いことが研究で判明しており、特に狂牛病、豚レンサ球菌、鳥インフルエンザなどの感染症の発生により、コレステロールの安全性が注目されるようになった。例えば、ビタミンD3製造の上流原料はコレステロールであり、ヨーロッパとアメリカ諸国では、疫病の危険性を理由に、以前から脳幹コレステロールの原料としての使用を禁止していた。2020年7月1日からは、中国も同様に脳幹コレステロールの原料としての使用も制限した。従って、人々の健康と安全を確保するためには、植物由来の高純度コレステロール合成法の開発が急務となっている。
【0003】
コレステロールの化学合成は、主に以下の方法があると報告されている。
(1)ジオスゲニンを原料として使用し、6ステップの反応を経て61%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN1772760A、スキーム1に示す)。このスキームは、原材料の価格が比較的高く、手順が煩雑で、使用される試薬の毒性が高く、汚染性が高いため、産業生産には適しなかった。
【化1】
【0004】
(2)スチグマステロール分解生成物を原料として使用し、5ステップの反応を経て67%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN105218610A、スキーム2に示す通りである)。しかし、本発明の出願人は、実験を通じて、このスキームには次のような問題があることを発見した。当該特許の第1のステップの反応でオルトギ酸トリエチルを使用してC-3位のカルボニル基をエーテル化保護する場合、選択性が低く、側鎖のアルデヒドの反応を引き起こしやすく、アセタールが生成してしまう(詳細は発明の内容の「比較例1」を参照)。従って、このスキームの実現可能性については深刻な疑問があった。
【化2】
【0005】
(3)プレグネノロンを原料として使用し、4ステップの反応を経て72%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN105218609A、スキーム3に示す通りである)。このスキームは、使用される貴金属ロジウム触媒とキラルホスフィン配位子が高価であり、大規模な産業生産には適しない。
【化3】
【0006】
(4)プレグネノロンを原料として使用し、2ステップの反応を経て80%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN104961788A、スキーム4に示す通りである)。このスキームも、使用された貴金属ロジウム触媒とキラルホスフィン配位子が高価であって、大規模な産業生産には適していない。
【化4】
【0007】
(5)スチグマステロールを原料として使用し、5ステップの反応を経て68%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN105237603A、スキーム5に示す通りである)。このスキームでは合成プロセスでOが使用され、反応のモニタリングや設備に対する要求が高くなり、経済性と安全性が十分ではない。
【化5】
【0008】
(6)スチグマステロールを原料として使用し、4ステップの反応を経て70%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN106632565A、スキーム6に示す通りである)。このスキームでもOが使用されるため、プロセスの難易度が高くなり、反応のモニタリングや設備に対する要求が高くなり、経済性と安全性が十分でない。
【化6】
【0009】
(7)BAを原料として使用し、5ステップの反応を経て78.5%の総モル収率でコレステロールを合成した(CN113248557A、スキーム7に示す通りである)。このスキームの精製ではカラムクロマトグラフィー精製が使用され、産業生産には適しなく、また、このスキームで得られるコレステロールの純度は高くなく(95%~96%)、更に精製しないと医薬品賦形剤の基準を満たすことが困難である。
【化7】
【0010】
動物由来のコレステロールは、狂牛病、豚レンサ球菌、鳥インフルエンザなどの病気に感染するリスクがある。これまでに報告されているコレステロールの化学合成スキームには、操作が煩雑で、汚染度が高く、触媒が高価で、生成物の純度が低いなどの欠点があるため、植物由来の原料を用いたより安全で効率的な高純度コレステロールの合成方法の開発は重要な価値がある。
【発明の概要】
【0011】
既存技術の欠点を解決するために、本発明の目的は、植物由来の高純度のコレステロールの合成方法を提供することである。本発明は、植物由来の21-ヒドロキシ-20-メチルプレグナ-4-エン-3-オン、別名ビスノラールアルコール又はBAを原料として使用し、酸化、Wittig反応、アセチル化、還元、ヒドロキシル保護、選択的水素化還元、脱保護又は加水分解などのステップを経て上記コレステロールを合成し、純度は99%以上に達することができる。本発明では、コレステロールを合成するための出発原料であるBAは、安全かつ経済的であり、コレステロールを合成する方法は操作が簡単で、収率が高く、純度が高く、環境に優しく、産業生産に便利である。
【0012】
本発明で使用する原料BA(bisnoralcohol)は、製油プロセスで残存する植物ステロールを発酵させて得られる植物由来のグリーン原料であり、現在年間生産量は1000トン級に達しており、価格も低く、先行技術の動物由来コレステロールに存在可能な病原性細菌やウイルス感染のリスクを十分に回避することができる。
【0013】
本発明の合成方法において、前記原料BAには、植物ステロールの生物発酵によって得られるもの、又は化学合成法によって得られるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明によって提供されるBA原料を使用してコレステロールを合成する方法は、
(a)第1の溶媒中で、式(1)で表されるBAを酸化反応させて式(2)の化合物を得るステップ、
(b)第2の溶媒中で、式(2)の化合物をWittig反応させて式(3)の化合物を得るステップ、
(c)第3の溶媒中で、式(3)の化合物をアセチル化反応させて式(4)の化合物を得るステップ、
(d)第4の溶媒中で、式(4)の化合物を還元反応させて式(5)の化合物を得るステップ、
(e)第5の溶媒中で、式(5)の化合物をヒドロキシル保護反応させて式(6)の化合物を得るステップ、
(f)第6の溶媒中で、式(6)の化合物を選択的水素化還元反応させて式(7)の化合物を得るステップ、
(g)第7の溶媒中で、式(7)の化合物を脱保護反応又は加水分解反応させてコレステロールを得るステップ、
を含み、
ここで、前記方法の反応プロセスはスキーム(A)に示す通りである。
【化8】
【0015】
ここで、Rはエステル基、シリルエーテル基から選択され、
好ましくは、RはC2-C10直鎖エステル基、イソブチルエステル
【化9】
イソペンチルエステル基
【化10】
フェニルエステル基
【化11】
p-メトキシフェニルエステル基
【化12】
トリメチルシリルエーテル基
【化13】
及びtert-ブチルジメチルシリルエーテル基
【化14】
から選択される1つ又は複数であり、
より好ましくは、Rはエチルエステル
【化15】
プロピルエステル
【化16】
ブチルエステル
【化17】
イソブチルエステル
【化18】
イソペンチルエステル
【化19】
フェニルエステル
【化20】
p-メトキシフェニルエステル
【化21】
トリメチルシリルエーテル基
【化22】
及びtert-ブチルジメチルシリルエーテル基
【化23】
から選択される1つ又は複数である。
【0016】
注:化合物式(3)~(6)では、C-22位とC-23位の間の二重結合は、いずれもE配置がメインで、Z配置がサブであり、この2つの配置の比はE/Z≒87/13(H NMRにより判定)であり、その後の精製操作がなければ、この比は変化しない。
本発明のステップ(a)において、前記酸化反応は、具体的には、第1の溶媒中で、式(1)で表されるBAを、TEMPO、炭酸水素ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム及び酸化剤と酸化反応させて、式(2)の化合物を得る反応である。
【0017】
ここで、式(1)で表されるBA、TEMPO、炭酸水素ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム、酸化剤のモル比は、1:(0~1):(0~20):(0~1):(1~5)であり、好ましくは、1:0.01:1.35:0.1:1.15である。
【0018】
ここで、前記酸化反応は、酸化剤の存在下で行われ、前記酸化剤は、N-クロロスクシンイミドNCS、N-ブロモスクシンイミドNBS及び2-ヨードキシ安息香酸IBXなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、N-クロロスクシンイミドNCSである。
【0019】
ここで、前記第1の溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルスルホキシド及び水などから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、ジクロロメタンと水との混合溶媒(体積比V/V=5/2)である。
ここで、前記酸化反応の温度は0~30℃であり、好ましくは0℃である。
ここで、前記酸化反応の時間は3~8時間であり、好ましくは6時間である。
【0020】
特定の一実施形態において、式(2)の化合物の合成ステップは、式(1)で表されるBAを第1の溶媒に溶解させ、その後にTEMPO、炭酸水素ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム及びNCSを加えて、酸化反応をさせて、式(2)の化合物を得るステップを含む。
【0021】
本発明のステップ(b)において、前記Wittig反応は、具体的には、第2の溶媒の中で式(2)の化合物、3,3-ジメチルアリルハライド、トリフェニルホスフィン、カリウムtert-ブトキシドをWittig反応させて、式(3)の化合物を得る反応である。
【0022】
ここで、式(2)の化合物、3,3-ジメチルアリルハライド、トリフェニルホスフィン、カリウムtert-ブトキシドのモル比は、1:(1~4):(1~4):(1~4)であり、好ましくは、1:1.3:1.3:1.3である。
ここで、前記第2の溶媒は、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン及びヘプタンなどのうちの1つ又は複数であり、好ましくはトルエンである。
【0023】
ここで、前記3,3-ジメチルアリルハライドは、3,3-ジメチルアリルクロリド、3,3-ジメチルアリルブロミドなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくは3,3-ジメチルアリルブロミドである。
ここで、前記Wittig反応の温度は-10~112℃であり、好ましくは10℃である。
ここで、前記Wittig反応の時間は0.5~9時間であり、好ましくは0.5時間である。
【0024】
本発明のステップ(c)において、前記アセチル化反応は、具体的には、式(3)の化合物、塩化アセチル、無水酢酸、及び塩基を第3の溶媒中でアセチル化反応させて式(4)の化合物を得る反応である。
【0025】
ここで、式(3)の化合物、塩化アセチル、無水酢酸、塩基のモル比は、1:(0.5~62.5):(1~62.5):(0~6)であり、好ましくは1:25:24:4である。
ここで、前記塩基は、ピリジン、トリエチルアミン、DIPEA、DMAP及びジイソプロピルアミンなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、ジイソプロピルアミンである。
ここで、前記第3の溶媒は、無水酢酸、塩化アセチル、酢酸エチル及びジクロロメタンなどのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、塩化アセチルと無水酢酸との混合溶媒である。
ここで、前記アセチル化反応の温度は40~110℃であり、好ましくは70℃である。
ここで、前記アセチル化反応時間は1~10時間であり、好ましくは2~10時間であり、更に好ましくは6時間である。
ここで、前記アセチル化反応では、塩化アセチル及び無水酢酸が反応物及び溶媒の両方として使用される。
【0026】
特定の一実施形態において、式(4)の化合物の合成ステップは、式(3)の化合物に塩化アセチル、無水酢酸、及び塩基を加え、アセチル化反応させて、式(4)の化合物を得るステップを含む。
【0027】
本発明のステップ(d)において、前記還元反応は、具体的には、前記式(4)の化合物と還元剤とを第4の溶媒中で還元反応させて式(5)の化合物を得る反応である。
【0028】
ここで、式(4)の化合物と還元剤のモル比は1:(1~25)であり、好ましくは1:4である。
ここで、前記第4の溶媒は、テトラヒドロフラン、エタノール、水、ジクロロメタン、2-メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、酢酸及びメチルtert-ブチルエーテルなどのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、テトラヒドロフランとエタノールと水との混合溶媒(体積比V/V/V=10/5/3)である。
ここで、前記還元剤は、NaBH及びKBHなどのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、NaBHである。
ここで、前記還元反応の温度は0~50℃であり、好ましくは25℃である。
ここで、前記還元反応の時間は6~12時間であり、好ましくは8時間である。
【0029】
特定の一実施形態において、式(5)の化合物の合成ステップは、式(4)の化合物を第4の溶媒に溶解させ、還元剤を用いて還元反応させて式(5)の化合物を得るステップを含む。
【0030】
本発明のステップ(e)において、ヒドロキシの保護基Rがエステル基である場合、前記ヒドロキシル保護反応は、具体的には、第5の溶媒の中で、式(5)の化合物とヒドロキシの保護試薬とを、塩基の作用下で第5の溶媒中で反応させ、式(6)の化合物を得る反応である。
【0031】
前記エステル基はC2-C10直鎖エステル基(エチルエステル
【化24】
プロピルエステル
【化25】
ブチルエステル
【化26】
など)、イソブチルエステル
【化27】
イソペンチルエステル
【化28】
フェニルエステル
【化29】
及びp-メトキシフェニルエステル
【化30】
などのうちの1つ又は複数のエステル基から選択され、好ましくは、エチルエステルである。
【0032】
ここで、前記式(5)の化合物、エステル基の保護試薬、塩基のモル比は1:(1~4):(0.05~5)であり、好ましくは1:3:0.1である。
ここで、前記第5の溶媒は、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、DMF、トルエン、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランなどのうちの1つ又は複数であり、好ましくは酢酸エチルである。
ここで、前記塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ピリジン及びDMAPなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくはDMAPである。
ここで、前記反応の温度は0~50℃であり、好ましくは45℃である。
ここで、前記反応の時間は2~24時間であり、好ましくは4時間である。
【0033】
本発明のステップ(e)において、ヒドロキシの保護基がシリルエーテル基である場合、前記ヒドロキシル保護反応は、具体的には、第5の溶媒の中で、式(5)の化合物とシリルエーテル基の保護試薬とを、塩基の作用下で第5の溶媒中で反応させ、式(6)の化合物を得る反応である。
【0034】
ここで、前記シリルエーテル基は、トリメチルシリルエーテル基
【化31】
及びtert-ブチルジメチルシリルエーテル基
【化32】
などから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、tert-ブチルジメチルシリルエーテル基
【化33】
である。
【0035】
ここで、前記式(5)の化合物、シリルエーテル基の保護試薬、塩基のモル比は1:(2~4):(4~8)であり、好ましくは1:2.5:4である。
ここで、前記第5の溶媒は、DMF、ジクロロメタン、クロロホルム及び四塩化炭素などのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、ジクロロメタンである。
ここで、前記塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ピリジン及びDMAPなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくはイミダゾールである。
ここで、前記反応の温度は0~50℃であり、好ましくは25℃である。
ここで、前記反応の時間は2~24時間であり、好ましくは12時間である。
【0036】
特定の一実施形態において、式(6)の化合物の合成ステップは、式(5)の化合物を第5の溶媒に溶解させ、塩基の作用下でヒドロキシの保護試薬と反応させて、式(6)の化合物を得るステップを含む。
【0037】
本発明のステップ(f)において、前記選択的水素化還元反応は、具体的には、式(6)の化合物を第6の溶媒中で触媒の作用下で、還元剤と選択的水素化還元反応させて式(7)の化合物を得る反応である。
ここで、前記触媒はラネーNiである。
ここで、前記還元剤はHである。
ここで、式(6)の化合物と触媒であるラネーNiとの質量比は1:(0.05~5)であり、好ましくは1:1である。
ここで、前記第6の溶媒は、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン及びイソプロピルアルコールなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくは酢酸エチルである。
ここで、前記水素化還元反応の温度は0~60℃であり、好ましくは30℃である。
ここで、前記水素化還元反応における還元剤Hの圧力は1~20atmであり、好ましくは1atmである。
ここで、前記水素化還元反応の時間は4~48時間であり、好ましくは4~30時間であり、更に好ましくは7時間である。
【0038】
特定の一実施形態において、コレステロールの合成ステップは、式(6)の化合物を第6の溶媒に溶解させ、ラネーNiを添加し、Hで置換した後、選択的水素化還元反応させて、式(7)の化合物を得るステップを含む。
【0039】
本発明のステップ(g)において、保護基Rがエステル基である場合、前記加水分解反応は具体的には、前記式(7)の化合物を第7の溶媒中で塩基の作用下で、加水分解反応させ、コレステロールを得る反応である。
【0040】
ここで、前記塩基は、LiOH、KOH、NaOH、t-BuOK、KCOなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくはKCOである。
ここで、前記式(7)の化合物と塩基のモル比は1:(0.5~2)であり、好ましくは1:1.3である。
ここで、前記第7の溶媒は、メタノール及びエタノールなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくはメタノールである。
ここで、前記加水分解反応の温度は10~75℃であり、好ましくは65℃である。
ここで、前記加水分解反応時間は0.3~12時間であり、好ましくは2時間である。
本発明のステップ(g)において、保護基Rがシリルエーテル基である場合、前記脱保護反応は、具体的には、前記式(7)の化合物を前記第7の溶媒中で触媒の作用下で、脱保護反応させ、コレステロールを得る反応である。
ここで、前記触媒はフッ化テトラブチルアンモニウムTBAF、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物TBAF・3HO、三フッ化ホウ素エーテル、酢酸及び塩化水素の酢酸エチル溶液から選択される1つ又は複数であり、好ましくは、TBAF・3HOである。
ここで、前記式(7)の化合物と触媒のモル比は1:(1~6)であり、好ましくは1:4である。
ここで、前記第7の溶媒は、テトラヒドロフラン及び水などから選択される1つ又は複数であり、好ましくはテトラヒドロフランである。
ここで、前記脱保護反応の温度は10~75℃であり、好ましくは25℃である。
ここで、前記脱保護反応の時間は2~48時間であり、好ましくは24時間である。
【0041】
特定の一実施形態において、コレステロールの合成するステップは、式(7)の化合物を第7の溶媒に溶解させ、塩基又は触媒を加えて、脱保護又は加水分解反応を行い、コレステロールを得るステップを含む。
【0042】
本発明はまた、20種の化合物を提供し、当該化合物の構造は、以下の式(6-2E)、(6-3E)、(6-4E)、(6-5E)、(6-6E)、(6-2Z)、(6-3Z)、(6-4Z)、(6-5Z)、(6-6Z)、(6′-2E)、(6′-3E)、(6′-4E)、(6′-5E)、(6′-6E)、(6′-2Z)、(6′-3Z)、(6′-4Z)、(6′-5Z)、(6′-6Z)で示される通りである。
【化34】
【0043】
本発明の有益な効果には、以下のものが含まれる。本発明の高純度コレステロールの製造方法において、使用される商業化された原料BAは植物由来の原料であるため、動物由来の原料に存在する可能性のある病原性細菌及びウイルスによる感染のリスクを回避し、安価で入手が容易であり、また、得られるコレステロールが高純度(99%以上)であり、合成工程が簡単で、収率が高く、副反応が少なく、環境に優しく、高純度コレステロールの産業的生産を達成するのに便利であり、安全性が低く、純度が低く、合成コストが高い、環境に優しくないなどの既存のコレステロール製品の問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は本発明の実施例6で得られた式(7-1)の化合物の粗生成物のガスクロマトグラムを示す。
図2図2は本発明の実施例6で得られた式(7-1)の化合物の精製品のガスクロマトグラムを示す。
図3図3は本発明の実施例6で得られた式(7-2)の化合物の精製品のガスクロマトグラムを示す。
図4図4は本発明の実施例6で得られた式(7-3)の化合物の精製品のガスクロマトグラムを示す。
図5図5は本発明の実施例6で得られた式(7-4)の化合物の精製品のガスクロマトグラムを示す。
図6図6は本発明の実施例6で得られた式(7-5)の化合物の精製品のガスクロマトグラムを示す。
図7図7は本発明の実施例6で得られた式(7-6)の化合物の精製品のガスクロマトグラムを示す。
図8図8はコレステロールの単結晶構造図を示す。
図9図9は式(7-1)の化合物の加水分解反応により得られたコレステロールのガスクロマトグラムを示す。
図10図10は式(7-2)の化合物の加水分解反応により得られたコレステロールのガスクロマトグラムを示す。
図11図11は式(7-3)の化合物の加水分解反応により得られたコレステロールのガスクロマトグラムを示す。
図12図12は式(7-4)の化合物の加水分解反応により得られたコレステロールのガスクロマトグラムを示す。
図13図13は式(7-5)の化合物の加水分解反応により得られたコレステロールのガスクロマトグラムを示す。
図14図14は式(7-6)の化合物の脱保護反応により得られたコレステロールのガスクロマトグラムを示す。
図15図15は式(6-1)の化合物を10%Pd/C触媒水素化して、得られた式(7-1)の化合物の粗生成物のガスクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の具体的な実施例及び図面に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。本発明を実施するためのプロセス、条件、実験方法などは、以下に特に述べる内容を除き、当該分野における普通知識や公知常識であり、その内容が本発明に特に限定されるものではない。
【0046】
以下の実施例では、化合物の構造は核磁気共鳴装置と高分解能質量分析計で決定され、試薬は主に上海国薬化学試薬会社から提供され、生成物の精製は主にスラリー化とカラムクロマトグラフィーによって行われ、シリカゲル(200-300)は青島海洋化学工場から入手した。
【0047】
本発明は、植物由来の21-ヒドロキシ-20-メチルプレグナ-4-エン-3-オン(BA)を原料としてコレステロールを合成する方法を提供し、その反応プロセスは、上記スキーム(A)に示す通りである。なお、本発明では、植物由来の21-ヒドロキシ-20-メチルプレグナ-4-エン-3-オン(BA)を原料としてコレステロールを合成する方法において、他の副生成物を生成させることを更に含み、具体的な反応スキームは(A’)に示す通りである。
【化35】
【0048】
ここで、Rはエステル基、シリルエーテル基から選択され、
注:化合物式(3)~(6)では、C-22位とC-23位の間の二重結合は、いずれもE配置がメインで、Z配置がサブであり、この2つの配置の比はE/Z≒87/13(H NMRにより判定)であり、その後の精製操作がなければ、この比は変化しない。化合物式(5)(3β-OH)/(5’)(3α-OH)の比は約92/8(H NMRにより判定)であり、その後の精製操作がなければ、化合物式(6)/(6’)、(7)/(7’)の比は変化しない。
【0049】
本発明では、上記式(3)、式(4)、式(5)、式(5’)、式(6)及び式(6’)の化合物は、Wittig反応によって導入されたD環側鎖二重結合(C-22、C-23位の二重結合)がシス-トランス配置(E及びZ配置)を有し、2つの配置の比率がE/Z≒87/13であるため、その後の精製操作がなければ、この比は変化しない。化合物式(5)(3β-OH)及び(5’)(3α-OH)は、化合物式(4)をNaBH又はKBHで還元することによって得られ、得られた化合物式(5)(3β-OH)及び(5’)(3α-OH)における3β-OH/3α-OHの比は約92/8であり、その後の精製操作がなければ、この比は変化しない。従って、式(3)、式(4)、式(5)、式(5’)、式(6)、式(6’)、式(7)及び式(7’)の化合物はすべて単一物質ではなく、混合物である。
【0050】
実施例1 式(2)の化合物の製造
【化36】
この実施例では、異なる実験条件下での式(2)の化合物の製造結果を示す。
【0051】
(1)フラスコにBA(24.79g、0.075mol)、TEMPO(118mg、0.750mmol)、ジクロロメタン(200mL)、炭酸水素ナトリウム(8.8g、0.105mol)、NCS(11.55g、86.5mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(2.42g、7.5mmol)及び水(160mL)を順次に加え、0℃で6時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、チオ硫酸ナトリウム5水和物溶液(5.6gチオ硫酸ナトリウム5水和物/110mL水)を加え、5~10℃で20分間撹拌し、分液し、水相をジクロロメタン(150mL×2)で抽出し、有機層を合わせ、1%水酸化ナトリウム溶液(100mL)で洗浄し、分液し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、式(2)の化合物(24.0gの白色固体、モル収率:94.9%)を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ 9.55 (s, 1H), 5.71 (s, 1H), 2.45 - 2.23 (m, 5H), 1.99 (t, J = 13.7 Hz, 2H), 1.91 - 1.78 (m, 2H), 1.68 (t, J = 10.2 Hz, 2H), 1.43 (m, 5H), 1.30 - 1.19 (m, 2H), 1.17 (s, 3H), 1.11 (d, J = 5.5 Hz, 3H), 1.06 - 0.89 (m, 3H), 0.75 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl) δ 205.00, 199.65, 171.31, 123.99, 55.25, 53.84, 51.04, 49.54, 43.10, 39.39, 38.68, 35.80, 35.68, 34.06, 32.93, 32.05, 27.11, 24.64, 21.06, 17.48, 13.53, 12.44. HRMS(ESI): calcd for C2232NaO [M+Na], 351.2295, found 351.2292.
【0052】
(2)フラスコにBA(24.79g、0.075mol)、TEMPO(118mg、0.750mmol)、ジクロロメタン(200mL)、炭酸水素ナトリウム(8.8g、0.105mol)、NBS(17.8g、100mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(2.42g、7.5mmol)及び水(160mL)を順次に加え、0℃で6時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、チオ硫酸ナトリウム5水和物溶液(8gチオ硫酸ナトリウム5水和物/160mL水)を加え、5~10℃で20分間撹拌し、分液し、水相をジクロロメタン(150mL×2)で抽出し、有機層を合わせ、1%水酸化ナトリウム溶液(100mL)で洗浄し、分液し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、式(2)の化合物(23.6gの白色固体、モル収率:95.2%)を得た。
【0053】
(3)フラスコに式(1)の化合物BA(24.79g、75mmol)、IBX(42g、150mmol)、THF(250mL)及びDMSO(200mL)を順次加え、25℃で5時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、水を加え、吸引濾過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタン(400mL)及び水(300mL)を加えて抽出し、有機相を1%水酸化ナトリウム溶液(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、式(2)の化合物(23.2gの白色固体、モル収率:93.5%)を得た。
【0054】
実施例2 式(3)の化合物の製造
【化37】
この実施例では、異なる実験条件下での式(3)の化合物の製造結果を示す。
【0055】
(1)フラスコにトリフェニルホスフィン(23.97g、91.40mmol)、3,3-ジメチルアリルブロミド(13.62g、91.40mmol)、230mLのトルエンを加え、80℃で30分間撹拌して反応させ、2時間加熱還流させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下で、カリウムtert-ブトキシド(10.26g、91.40mmol)を加え、0.5時間撹拌し、その後、式(2)の化合物(23.09g、70.30mmol)をバッチで加え、10℃で0.5時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、水(23mL)を加えて反応をクエンチし、2MのHClを加えてPHを6~7に調節し、有機相を水(120mL×2)で洗浄し、減圧濃縮して、乳白色の固体を得た。上記固体を50%のエタノール(80mL)に加え、25℃で1時間スラリー化し、濾過し、ケーキを50%のエタノール(13mL)で濯ぎ、式(3)の化合物(3E及び3Z、3E/3Z≒87/13、24.9gの白色固体、モル収率:93.14%)を得た。HRMS(ESI): calcd for C2740NaO [M+Na],403.2971, found 403.2967.
【0056】
注:本発明において、式(3)の化合物をアセチル化し、還元して得られる中間体である式(4)の化合物、式(5)の化合物及び式(6)の化合物のE/Z配置の比は基本的に変化せず、C-22位とC-23位との間の二重結合は、E配置がメインで、Z配置がサブである(3E/3Z≒87/13)。式(6)の化合物におけるC-22位とC-23位の間の二重結合のシス-トランス異性体は、ラネーニッケルによって還元され、脱保護又は加水分解されて、生成物であるコレステロールが得られる。従って、対応する化合物のE/Z配置の比は、後の実施例で表記しない。
【0057】
(2)フラスコにトリフェニルホスフィン(23.97g、91.40mmol)、3,3-ジメチルアリルブロミド(13.62g、91.40mmol)、230mLのn-ヘプタンを加え、3時間加熱還流させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下で、カリウムtert-ブトキシド(10.26g、91.40mmol)を加え、0.5時間撹拌し、その後、式(2)の化合物(23.00g、70.07mmol)をバッチで加え、15℃で1時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、水(23mL)を加えて反応をクエンチし、2MのHClを加えてPHを6~7に調節し、有機相を水(120mL×2)で洗浄し、減圧濃縮して、乳白色の固体を得た。上記固体を50%のエタノール(70mL)に加え、25℃で1時間スラリー化し、濾過し、ケーキを50%のエタノール(13mL)で濯ぎ、式(3)の化合物(3E及び3Z、24.5gの白色固体、モル収率:91.94%)を得た。
【0058】
(3)フラスコにトリフェニルホスフィン(23.97g、91.40mmol)、3,3-ジメチルアリルブロミド(13.62g、91.40mmol)、230mLのトルエンを加え、80℃で30分間撹拌して反応させ、2時間加熱還流させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下で、カリウムtert-ブトキシド(11.27g、100.5mmol)を加え、40分間撹拌し、その後、式(2)の化合物(23.09g、70.30mmol)をバッチで加え、10℃で2時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、水(23mL)を加えて反応をクエンチし、2MのHClを加えてPHを6~7に調節し、有機相を水(120mL×2)で洗浄し、減圧濃縮して、乳白色の固体を得た。上記固体を50%のエタノール(70mL)に加え、25℃で1時間スラリー化し、濾過し、ケーキを50%のエタノール(13mL)で濯ぎ、式(3)の化合物(3E及び3Z、24.73gの白色固体、モル収率:92.5%)を得た。
【0059】
(4)フラスコにトリフェニルホスフィン(23.97g、91.40mmol)、3,3-ジメチルアリルブロミド(13.62g、91.40mmol)、230mLのトルエンを加え、2時間還流させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下で、カリウムtert-ブトキシド(9.23g、82.26mmol)を加え、0.5時間撹拌し、その後、式(2)の化合物(15.00g、45.70mmol)を加え、2.5時間加熱還流させた。TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、水(23mL)を加えて反応をクエンチし、2MのHClを加えてPHを6~7に調節し、有機相を水(100mL×2)で洗浄し、減圧濃縮して、乳白色の固体を得た。上記固体を50%のエタノール(45mL)に加え、25℃で1時間スラリー化し、式(3)の化合物(3E及び3Z、16.72gの白色固体、モル収率:96.20%)を得た。
【0060】
(5)フラスコにトリフェニルホスフィン(23.97g、91.40mmol)、3,3-ジメチルアリルクロリド(9.56g、91.40mmol)、230mLのトルエンを加え、10時間還流させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下で、カリウムtert-ブトキシド(9.23g、82.26mmol)を加え、0.5時間撹拌し、その後、式(2)の化合物(7.5g、22.85mmol)を加え、4.5時間還流させた。TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、水(23mL)を加えて反応をクエンチし、2MのHClを加えてPHを6~7に調節し、有機相を水(100mL×2)で洗浄し、減圧濃縮して、乳白色の固体を得た。上記固体を50%のエタノール(45mL)に加え、25℃で1時間スラリー化し、式(3)の化合物(3E及び3Z、6.26gの白色固体、モル収率:72.04%)を得た。
【0061】
実施例3 式(4)の化合物の製造
【化38】
この実施例では、異なる実験条件下での式(4)の化合物の製造結果を示す。
【0062】
(1)フラスコに式(3)の化合物(15g、39.44mmol)、無水酢酸(16.09g、157.76mmol)及び塩化アセチル(3.08g、39.44mmol)を加え、70℃で6時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、減圧濃縮し、わずかに冷却させ、ピリジン(2g)及びメタノール(75mL)を加え、撹拌して分散させ、減圧濃縮し、わずかに冷却させ、メタノール(75mL)を加え、10分間撹拌して還流させ、反応溶液を25℃に冷却させ、30分間撹拌し、濾過し、ケーキをメタノール(24mL)で濯ぎ、吸引濾過し、乾燥させて、式(4)の化合物(4E及び4Z、15.50gの白色固体、モル収率:93.03%)を得た。HRMS(ESI): calcd for C2942NaO [M+Na],445.3077, found 445.3081.
【0063】
(2)フラスコに式(3)の化合物(15g、39.44mmol)、無水酢酸(96.6g、946.2mmol)、塩化アセチル(77.4g、986mmol)及びDIPEA(30.58g、236.6mmol)を加え、70℃で3時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、減圧濃縮し、わずかに冷却させ、反応溶液を氷水(200mL)に加え、15分間撹拌し、濾過し、水を抜き、得られた固体をメタノール(60mL)及びピリジン(1.5mL)に加え、25℃で30分間スラリー化し、濾過し、ケーキをメタノール(10mL)で濯ぎ、吸引濾過し、乾燥させて、式(4)の化合物(4E及び4Z、16gの白色固体、モル収率:96.04%)を得た。
【0064】
(3)フラスコに式(3)の化合物(15g、39.44mmol)、無水酢酸(96.3g、943.2mmol)、塩化アセチル(74.1g、943.2mmol)を加え、65℃で4時間還流して反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、減圧濃縮し、わずかに冷却させ、反応溶液を氷水(300mL)に加え、15分間撹拌し、濾過し、水を抜き、得られた固体をメタノール(60mL)及びピリジン(3mL)に加え、25℃で30分間スラリー化し、濾過し、ケーキをメタノール(7.5mL)で濯ぎ、吸引濾過し、乾燥させて、式(4)の化合物(4E及び4Z、14.99gの白色固体、モル収率:89.97%)を得た。
【0065】
(4)フラスコに式(3)の化合物(15g、39.44mmol)、無水酢酸(95.51g、936.23mmol)、塩化アセチル(73.49g、936.23mmol)及びジイソプロピルアミン(11.98g、118.35mmol)を加え、60℃で4時間還流して反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃まで冷却させ、減圧濃縮し、わずかに冷却させ、反応溶液を氷水(300mL)に加え、15分間撹拌し、濾過し、水を抜き、得られた固体をメタノール(60mL)及びピリジン(3mL)に加え、25℃で30分間スラリー化し、濾過し、ケーキをメタノール(7.5mL)で濯ぎ、吸引濾過し、乾燥させて、式(4)の化合物(4E及び4Z、16.32gの白色固体、モル収率:97.96%)を得た。
【0066】
実施例4 式(5)の化合物の粗生成物の製造
【化39】
この実施例では、異なる実験条件下での式(5)の化合物の粗生成物の製造結果を示す。
【0067】
(1)フラスコに式(4)の化合物(9.80g、23.21mmol)、テトラヒドロフランとエタノールと水の混合溶媒(196mL、V/V/V=10/5/3)を加え、水素化ホウ素ナトリウム(3.51g、92.84mmol)をバッチで加え、30℃で8時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、6M塩酸を加えて反応溶液のPHを7~8に調節し、反応溶液中に多量の固体が析出し、濾過し、濾液を取って減圧下で溶媒を蒸発させ、多量の固体が析出し、ジクロロメタン(100mL)及び水(50mL)を加えて抽出し、分液し、有機相を水(100mL)で洗浄し、撹拌し、層を分離し、減圧下で溶媒を蒸発させ、式(5)の化合物の粗生成物(8.71gの淡黄色固体、モル収率:98.09%)を得、直接に次のステップの反応に使用した。
【0068】
注:水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として用いて得られる式(5)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(5)(5E及び5Z、3β-OH)及び(5’)(5’E及び5’Z、3α-OH)であり、H NMR判定によれば、それらの比は化合物(5)/(5’)≒92/8であった。以下の実施例で得られる式(5)化合物の粗生成物中の5(3β-OH)/5’(3α-OH)の比は、基本的にこの実施例と一致しているため、以降は表記しない。
【0069】
(2)フラスコに式(4)の化合物(9.80g、23.21mmol)、テトラヒドロフラン、エタノールと水の混合溶媒(147mL、V/V/V=10/5/2)を加え、水素化ホウ素ナトリウム(2.64g、69.63mmol)をバッチで加え、25℃で10時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、6M塩酸を加えて反応溶液のPHを7~8に調節し、反応溶液中に多量の固体が析出し、濾過し、濾液を取って減圧下で溶媒を蒸発させ、多量の固体が析出し、ジクロロメタン(100mL)及び水(50mL)を加えて抽出し、分液し、有機相を水(100mL)で洗浄し、撹拌し、層を分離し、減圧下で溶媒を蒸発させ、式(5)の化合物の粗生成物(8.79gの淡黄色固体、モル収率:98.9%)を得、直接に次のステップの反応に使用した。
【0070】
(3)フラスコに式(4)の化合物(9.80g、23.21mmol)、ジクロロメタン、メタノールと水の混合溶媒(95mL、V/V/V=18/9/1)を加え、水素化ホウ素ナトリウム(1.76g、46.44mmol)をバッチで加え、25℃で6時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、3Mの塩酸を加えて反応溶液のPHを7~8に調節し、反応溶液中に多量の固体が析出し、濾過し、濾液を取って減圧下で溶媒を蒸発させ、多量の固体が析出し、ジクロロメタン(100mL)及び水(50mL)を加えて抽出し、分液し、有機相を水(100mL)で洗浄し、撹拌し、層を分離し、減圧下で溶媒を蒸発させ、式(5)の化合物の粗生成物(8.77gの淡黄色固体、モル収率:98.76%)を得、直接に次のステップの反応に使用した。
【0071】
(4)フラスコに式(4)の化合物(9.80g、23.21mmol)、テトラヒドロフラン、エタノールと水の混合溶媒(200mL、V/V/V=10/5/3)を加え、水素化ホウ素カリウム(5.01g、92.84mmol)をバッチで加え、30℃で8時間反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、6M塩酸を加えて反応溶液のPHを7~8に調節し、反応溶液中に多量の固体が析出し、濾過し、濾液を取って減圧下で溶媒を蒸発させ、多量の固体が析出し、ジクロロメタン(100mL)及び水(50mL)を加えて抽出し、分液し、有機相を水(100mL)で洗浄し、撹拌し、層を分離し、減圧下で溶媒を蒸発させ、式(5)の化合物の粗生成物(8.80gの淡黄色固体、モル収率:99.1%)を得、直接に次のステップの反応に使用した。
注:水素化ホウ素カリウムで還元されて得られる式(5)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(5)(5E及び5Z、3β-OH)及び(5’)(5’E及び5’Z、3α-OH)であり、このうち、化合物5’(3α-OH)の含有量がより高く、H NMR判定によれば、化合物5(3β-OH)/5′(3α-OH)≒85/15であった。
【0072】
実施例5 式(6)の化合物の粗生成物の製造
1.式(6-1)の化合物の粗生成物の製造
【化40】
フラスコに酢酸エチル(76mL)、式(5)の化合物の粗生成物(7.6g、20mmol)を加え、攪拌して透明に溶解させ、DMAP(0.245g、2mmol)及び無水酢酸(6.13g、60mmol)を加え、45℃で4時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、水(20mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチル(76mL)を加えて抽出し、有機相を水、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧濃縮して式(6-1)の化合物の粗生成物(8.3gの白色固体、モル収率:97.8%)を得た。
【0073】
注:式(6-1)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(6-1)(6-1Eと6-1Z)及び(6’-1)(6’-1Eと6’-1Z)であり、それらの比は化合物(6-1)/(6’-1)≒92/8であった。
【0074】
2.式(6-2)の化合物の粗生成物の製造
【化41】
フラスコに酢酸エチル(50mL)、式(5)の化合物の粗生成物(5g、13mmol)を加え、攪拌して透明に溶解させ、DMAP(0.159g、1.3mmol)及び無水プロピオン酸(5.07g、39mmol)を加え、50℃で5時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、水(20mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチル(76mL)を加えて抽出し、有機相を水、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧濃縮し、メタノール/水を加え、25℃で5時間スラリー化し、吸引濾過して式(6-2)の化合物の粗生成物(5.6gの白色固体、モル収率:98.2%)を得た。
注:式(6-2)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(6-2)(6-2Eと6-2Z)及び(6’-2)(6’-2Eと6’-2Z)であり、それらの比は化合物(6-2)/(6’-2)≒92/8であった。
【0075】
3.式(6-3)の化合物の粗生成物の製造
【化42】
フラスコに酢酸エチル(50mL)、式(5)の化合物の粗生成物(5g、13mmol)を加え、攪拌して透明に溶解させ、DMAP(0.159g、1.3mmol)及び無水酪酸(6.2g、39mmol)を加え、55℃で4時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、水(20mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチル(76mL)を加えて抽出し、有機相を水、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧濃縮し、メタノール/水を加え、25℃で5時間スラリー化し、吸引濾過して式(6-3)の化合物の粗生成物(5.71gの白色固体、モル収率:97%)を得た。
注:式(6-3)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(6-3)(6-3Eと6-3Z)及び(6’-3)(6’-3Eと6’-3Z)であり、それらの比は化合物(6-3)/(6’-3)≒92/8であった。
【0076】
4.式(6-4)の化合物の粗生成物の製造
【化43】
フラスコに酢酸エチル(115mL)、式(5)の化合物の粗生成物(7.65g、20mmol)を加え、攪拌して透明に溶解させ、DMAP(0.488g、4mmol)及び無水安息香酸(13.5g、60mmol)を加え、45℃で4時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、減圧濃縮し、メタノール/水を加え、25℃で5時間スラリー化し、吸引濾過して式(6-4)の化合物の粗生成物(9.34gの白色固体、モル収率:96%)を得た。
注:式(6-4)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(6-4)(6-4Eと6-4Z)及び(6’-4)(6’-4Eと6’-4Z)であり、それらの比は化合物(6-4)/(6’-4)≒92/8であった。
【0077】
5.式(6-5)の化合物の粗生成物の製造
【化44】
フラスコにDCM(50mL)、式(5)の化合物の粗生成物(5g、13.07mmol)を加え、攪拌して透明に溶解させ、トリエチルアミン(2.64g、26.14mmol)とDMAP(0.318g、2.61mmol)を加え、p-クロロベンゾイルクロリド(3.4g、19.6mmol)を0℃でゆっくり滴下し、Nで保護しながら35℃で12時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、水(30mL)を加えて反応をクエンチし、分液し、有機相を飽和NaHCO水溶液、2N希塩酸、水、飽和NaClで順次に洗浄し、減圧濃縮し、メタノール/水を加え、25℃で5時間スラリー化し、吸引濾過して式(6-5)の化合物の粗生成物(6.4gの白色固体、モル収率:94.8%)を得た。
注:式(6-5)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(6-5)(6-5Eと6-5Z)及び(6’-5)(6’-5Eと6’-5Z)であり、それらの比は化合物(6-5)/(6’-5)≒92/8であった。
【0078】
6.式(6-6)の化合物の粗生成物の製造
【化45】
フラスコにDCM(100mL)、式(5)の化合物の粗生成物(10g、26.14mmol)を加え、攪拌して透明に溶解させ、TBSCl(9.85g、65.35mmol)及びイミダゾール(7.12g、104.56mmol)を加え、25℃で12時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、水(100mL)を加えて10分間撹拌し、分液し、有機相を水及び飽和NaClで洗浄し、減圧濃縮し、メタノール/水を加え、25℃で3時間スラリー化し、吸引濾過して式(6-6)の化合物の粗生成物(12.43gの白色固体、モル収率:95%)を得た。
注:式(6-6)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(6-6)(6-6Eと6-6Z)及び(6’-6)(6’-6Eと6’-6Z)であり、それらの比は化合物(6-6)/(6’-6)≒92/8であった。
【0079】
実施例6 式(7)の化合物の製造
1.式(7-1)の化合物の製造
【化46】
フラスコに酢酸エチル(75mL)、式(6-1)の化合物の粗生成物(5g、11.77mmol)を加え、撹拌して透明に溶解させ、その後にラネーNi(5g、湿重量、標準手順に従って活性化)を加え、H(1atm)、35℃で7時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、珪藻土濾過でラネーNiを除去し、濾液を減圧濃縮し、式(7-1)の化合物の粗生成物(白色固体、ガスクロマトグラフィー純度:91.25%、図1を参照)を得、直接に精製ステップに使用した。この白色固体をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に加え、溶液が透明になるまで加熱還流させ、15℃まで自然冷却させ、5時間撹拌し、吸引濾過して式(7-1)の化合物(4.2gの白色固体、モル収率:84%、ガスクロマトグラフィー純度:99.40%、図2を参照)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 5.40 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.68 - 4.57 (m, 1H), 2.40 - 2.31 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 2.05 - 1.95 (m, 2H), 1.91 - 1.81 (m, 3H), 1.66 - 1.43 (m, 8H), 1.41 - 1.33 (m, 3H), 1.31 - 1.24 (m, 1H), 1.22 - 1.07 (m, 7H), 1.04 (s, 3H), 1.03 - 0.96 (m, 2H), 0.94 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.89 (dd, J = 6.6, 2.8 Hz, 6H), 0.70 (s, 3H).13C NMR (151 MHz, CDCl) δ 170.55, 139.67, 122.66, 73.99, 56.69, 56.14, 50.04, 42.32, 39.74, 39.53, 38.13, 37.00, 36.60, 36.19, 35.80, 31.91, 31.87, 28.24, 28.02, 27.78, 24.29, 23.83, 22.83, 22.57, 21.45, 21.03, 19.32, 18.72, 11.86.
注:式(7-1)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(7-1)及び(7’-1)であり、それらの比は化合物(7-1)/(7’-1)≒92/8であった。
【0080】
2.式(7-2)の化合物の製造
【化47】
フラスコに酢酸エチル(75mL)、式(6-2)の化合物の粗生成物(5g、11.4mmol)を加え、撹拌して透明に溶解させ、その後にラネーNi(7.5g、湿重量、標準手順に従って活性化)を加え、H(1atm)、55℃で7時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、珪藻土濾過でラネーNiを除去し、濾液を減圧濃縮し、式(7-2)の化合物の粗生成物を白色固体として得、直接に精製ステップに使用した。この白色固体をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に加え、溶液が透明になるまで加熱還流させ、15℃まで自然冷却させ、4時間撹拌し、吸引濾過して式(7-2)の化合物(4.0gの白色固体、モル収率:80%、ガスクロマトグラフィー純度:98.35%、図3を参照)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 5.39 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.67 - 4.62 (m, 1H), 2.44 - 2.24 (m, 4H), 2.10 - 1.95 (m, 2H), 1.93 - 1.81 (m, 3H), 1.68 - 1.43 (m, 8H), 1.40 - 1.34 (m, 3H), 1.29-1.25 (m, 1H), 1.20-1.10 (m, 9H), 1.04 (s, 3H), 1.03 - 0.96 (m, 3H), 0.94 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.89 (dd, J = 6.6, 2.8 Hz, 6H), 0.70 (s, 3H). 13C NMR (151 MHz, CDCl) δ 173.96, 139.75, 122.59, 56.70, 56.14, 50.03, 42.32, 39.74, 39.53, 38.16, 37.01, 36.61, 36.19, 35.80, 31.91, 31.87, 28.24, 28.02, 27.94, 27.81, 24.29, 23.83, 22.83, 22.57, 21.04, 19.33, 18.72, 11.86, 9.19.
注:式(7-2)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(7-2)及び(7’-2)であり、それらの比は化合物(7-2)/(7’-2)≒92/8であった。
【0081】
3.式(7-3)の化合物の製造
【化48】
フラスコに酢酸エチル(75mL)、式(6-3)の化合物の粗生成物(5g、11mmol)を加え、撹拌して透明に溶解させ、その後にラネーNi(5g、湿重量、標準手順に従って活性化)を加え、H(1atm)、35℃で10時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、珪藻土濾過でラネーNiを除去し、濾液を減圧濃縮し、式(7-3)の化合物の粗生成物を白色固体として得、直接に精製ステップに使用した。この白色固体をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に加え、溶液が透明になるまで加熱還流させ、15℃まで自然冷却させ、5時間撹拌し、吸引濾過して式(7-3)の化合物(4.1gの白色固体、モル収率:82%、ガスクロマトグラフィー純度:99.5%、図4を参照)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 5.39 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.74 - 4.58 (m, 1H), 2.33 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 2.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.09 - 1.95 (m, 2H), 1.93 - 1.80 (m, 3H), 1.68 - 1.65 (m, 2H), 1.65 - 1.41 (m, 7H), 1.41 - 1.31 (m, 3H), 1.31 - 1.24 (m, 1H), 1.23 - 1.06 (m, 7H), 1.04 (s, 3H), 1.03-0.99 (m, 2H), 0.99 - 0.92 (m, 7H), 0.89 (dd, J = 6.7, 2.7 Hz, 6H), 0.70 (s, 3H). 13C NMR (151 MHz, CDCl) δ 173.14, 139.74, 122.59, 73.68, 56.70, 56.14, 50.03, 42.32, 39.74, 39.53, 38.18, 37.01, 36.60, 36.19, 35.80, 31.91, 31.87, 28.24, 28.02, 27.83, 24.29, 23.84, 22.83, 22.57, 21.04, 19.33, 18.72, 18.56, 13.65, 11.86.
注:式(7-3)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(7-3)及び(7’-3)であり、それらの比は化合物(7-3)/(7’-3)≒92/8であった。
【0082】
4.式(7-4)の化合物の製造
【化49】
フラスコにテトラヒドロフラン(35mL)と酢酸エチル(35mL)、式(6-4)の化合物の粗生成物(4.87g、10mmol)を加え、撹拌して透明に溶解させ、その後にラネーNi(4.87g、湿重量、標準手順に従って活性化)を加え、H(1atm)、35℃で24時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、珪藻土濾過でラネーNiを除去し、濾液を減圧濃縮し、式(7-4)の化合物の粗生成物を白色固体として得、直接に精製ステップに使用した。この白色固体をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に加え、溶液が透明になるまで加熱還流させ、15℃まで自然冷却させ、4~5時間撹拌し、吸引濾過して式(7-4)の化合物(4.1gの白色固体、モル収率:84.2%、ガスクロマトグラフィー純度:98.08%、図5を参照)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 8.11 - 7.99 (m, 2H), 7.59 - 7.51 (m, 1H), 7.43 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 5.42 (dd, J = 5.1, 2.1 Hz, 1H), 4.89 - 4.84 (m, 1H), 2.47 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 2.05-1.97 (m, 3H), 1.94 - 1.90 (m, 1H), 1.86-1.80 (m, 1H), 1.77 - 1.73 (m, 1H), 1.63 - 1.45 (m, 6H), 1.41 - 1.30 (m, 3H), 1.29 - 1.05 (m, 11H), 1.04 - 0.99 (m, 3H), 0.92 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.87 (dd, J = 6.6, 2.8 Hz, 6H), 0.69 (s, 3H). 13C NMR (151 MHz, CDCl) δ 166.01, 139.69, 132.72, 130.87, 129.55, 128.27, 122.80, 56.71, 56.15, 50.06, 42.34, 39.76, 39.54, 38.23, 37.05, 36.68, 36.20, 35.82, 31.95, 31.90, 28.25, 28.03, 27.90, 24.31, 23.85, 22.84, 22.58, 21.07, 19.40, 18.74, 11.88.
注:式(7-4)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(7-4)及び(7’-4)であり、それらの比は化合物(7-4)/(7’-4)≒92/8であった。
【0083】
5.式(7-5)の化合物の製造
【化50】
フラスコにテトラヒドロフラン(39mL)と酢酸エチル(39mL)、式(6-5)の化合物の粗生成物(5.16g、10mmol)を加え、撹拌して透明に溶解させ、その後にラネーNi(10g、湿重量、標準手順に従って活性化)を加え、H(1atm)、30℃で24時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、珪藻土濾過でラネーNiを除去し、濾液を減圧濃縮し、式(7-5)の化合物の粗生成物を白色固体として得、直接に精製ステップに使用した。この白色固体をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に加え、溶液が透明になるまで加熱還流させ、15℃まで自然冷却させ、4時間撹拌し、吸引濾過して式(7-5)の化合物(4.23gの白色固体、モル収率:82%、ガスクロマトグラフィー純度:97.96%、図6を参照)を得た。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 8.02 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 5.44 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.88 - 4.82 (m, 1H), 3.88 (s, 3H), 2.47 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 2.06 - 1.98 (m, 3H), 1.95 - 1.91 (m, 1H), 1.90 - 1.81 (m, 1H), 1.79 - 1.69 (m, 1H), 1.67 - 1.44 (m, 7H), 1.36 (d, J = 8.9 Hz, 3H), 1.30 - 1.10 (m, 7H), 1.09 (s, 3H), 1.07 - 0.99 (m, 3H), 0.94 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.89 (dd, J = 6.6, 2.4 Hz, 6H), 0.71 (s, 3H). 13C NMR (151 MHz, CDCl) δ 165.78, 163.20, 139.79, 131.55, 123.31, 122.69, 113.50, 60.41, 58.50, 56.71, 56.15, 55.42, 50.06, 42.33, 39.76, 39.53, 38.30, 37.07, 36.67, 36.20, 35.81, 31.95, 31.90, 28.25, 28.03, 27.95, 24.31, 23.84, 22.83, 22.58, 21.06, 19.40, 18.73, 18.46, 14.21, 11.87.
注:式(7-5)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(7-5)及び(7’-5)であり、それらの比は化合物(7-5)/(7’-5)≒92/8であった。
【0084】
6.式(7-6)の化合物の製造
【化51】
フラスコに酢酸エチル(75mL)、式(6-6)の化合物の粗生成物(5g、10mmol)を加え、撹拌して透明に溶解させ、その後にラネーNi(5g、湿重量、標準手順に従って活性化)を加え、H(1atm)、35℃で12時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、珪藻土濾過でラネーNiを除去し、濾液を減圧濃縮し、式(7-6)の化合物の粗生成物を白色固体として得、直接に精製ステップに使用した。この白色固体をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に加え、溶液が透明になるまで加熱還流させ、15℃まで自然冷却させ、4時間撹拌し、吸引濾過して式(7-6)の化合物(4.05gの白色固体、モル収率:81%、ガスクロマトグラフィー純度:98.57%、図7を参照)を得た。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 5.43 - 5.30 (m, 1H), 3.53 - 3.47 (m, 1H), 2.32 - 2.26 (m, 1H), 2.21 - 2.17 (m, 1H), 2.07 - 1.96 (m, 2H), 1.89 - 1.80 (m, 2H), 1.77 - 1.70 (m, 1H), 1.62 - 1.45 (m, 8H), 1.41 - 1.31 (m, 3H), 1.31 - 1.24 (m, 1H), 1.18 - 1.06 (m, 7H), 1.02 (s, 4H), 1.01 - 0.98 (m, 1H), 0.93 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.91 (s, 9H), 0.89 (dd, J = 6.6, 2.4 Hz, 6H), 0.69 (s, 3H), 0.08 (s, 6H). 13C NMR (151 MHz, CDCl) δ 141.60, 121.19, 72.67, 56.82, 56.16, 50.23, 42.84, 42.34, 39.82, 39.53, 37.40, 36.61, 36.20, 35.79, 32.10, 31.96, 31.92, 28.25, 28.03, 25.96, 24.31, 23.82, 22.83, 22.57, 21.08, 19.44, 18.73, 18.28, 11.86.
注:式(7-6)の化合物の粗生成物の主成分は、化合物(7-6)及び(7’-6)であり、それらの比は化合物(7-6)/(7’-6)≒92/8であった。
【0085】
実施例7 コレステロールの製造
1.式(7-1)の化合物の加水分解によるコレステロールの製造
【化52】
フラスコにメタノール(40mL)とKCO(1.28g、12.1mmol)を加え、透明に溶解させた後、N保護下、式(7-1)の化合物(4g、9.33mmol)を加え、65℃に加熱して2時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2mol/Lの希塩酸を加えてPHを7~8に調節し、減圧下でメタノールを蒸発させ、水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、ケーキに水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて精製コレステロール(CCDC 2099442、単結晶構造は図8を参照、3.57gの白色固体、モル収率:99.1%、ガスクロマトグラフィー純度:99.10%、図9を参照)を得た。mp: 147~149℃。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 5.36 - 5.34 (m, 1H), 3.55 - 3.49 (m, 1H), 2.35 - 2.19 (m, 2H), 2.06 - 1.92 (m, 2H), 1.86 - 1.79 (m, 3H), 1.68 - 1.19 (m, 14H), 1.19 - 1.03 (m, 7H), 1.01 (s, 3H), 0.98 - 0.93 (m, 1H), 0.91 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.86 (dd, J = 6.6, 2.8 Hz, 6H), 0.68 (s, 3H).13C NMR (150 MHz, CDCl) δ 140.77, 121.73, 71.82, 56.78, 56.17, 50.14, 42.33, 42.32, 39.80, 39.53, 37.27, 36.52, 36.20, 35.80, 31.93, 31.92, 31.68, 28.25, 28.03, 24.31, 23.84, 22.84, 22.58, 21.10, 19.41, 18.73, 11.87.HRMS(ESI): calcd for C2746NaO [M+Na],409.3441, found 409.3121.
【0086】
2.式(7-2)の化合物の加水分解によるコレステロールの製造
【化53】
フラスコにメタノール(40mL)とKCO(1.57g、11.4mmol)を加え、透明に溶解させた後、N保護下、式(7-2)の化合物(4g、9mmol)を加え、65℃に加熱して2時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2mol/Lの希塩酸を加えてPHを7~8に調節し、減圧下でメタノールを蒸発させ、水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、ケーキに水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて精製コレステロール(3.46gの白色固体、モル収率:98.8%、ガスクロマトグラフィー純度:98.96%、図10を参照)を得た。
【0087】
3.式(7-3)の化合物の加水分解によるコレステロールの製造
【化54】
フラスコにメタノール(40mL)とKCO(1.57g、11.4mmol)を加え、透明に溶解させた後、N保護下、式(7-3)の化合物(4g、8.76mmol)を加え、65℃に加熱して2時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2mol/Lの希塩酸を加えてPHを7~8に調節し、減圧下でメタノールを蒸発させ、水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、ケーキに水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて精製コレステロール(3.33gの白色固体、モル収率:98.5%、ガスクロマトグラフィー純度:99.41%、図11を参照)を得た。
【0088】
4.式(7-4)の化合物の加水分解によるコレステロールの製造
【化55】
フラスコにメタノール(25mL)とKOH(0.31g、5.5mmol)を加え、透明に溶解させた後、N保護下、式(7-4)の化合物(2.45g、5mmol)を加え、45℃で6時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2mol/Lの希塩酸を加えてPHを5~6に調節し、減圧下でメタノールを蒸発させ、水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、ケーキに80%のエタノール(10ml)を更に加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて精製コレステロール(1.83gの白色固体、モル収率:94.8%、ガスクロマトグラフィー純度:99.44%、図12を参照)を得た。
【0089】
5.式(7-5)の化合物の加水分解によるコレステロールの製造
【化56】
フラスコにメタノール(25mL)とKOH(0.31g、5.5mmol)を加え、透明に溶解させた後、N保護下、式(7-5)の化合物(2.6g、5mmol)を加え、45℃で8時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2mol/Lの希塩酸を加えてPHを5~6に調節し、減圧下でメタノールを蒸発させ、水(20mL)を加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、ケーキに80%のエタノール(10ml)を更に加え、25℃で2時間撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて精製コレステロール(1.8gの白色固体、モル収率:93.3%、ガスクロマトグラフィー純度:98.69%、図13を参照)を得た。
【0090】
6.式(7-6)の化合物の脱保護によるコレステロールの製造
【化57】
フラスコにテトラヒドロフラン(25mL)、式(7-6)の化合物(2.5g、5mmol)を加え、透明に溶解させた後、N保護下、TBAF・3HO(7.88g、25mmol)を加え、25℃で24時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、飽和塩化アンモニウムを加えてクエンチし、減圧下でテトラヒドロフランを蒸発させ、ジクロロメタン(70mL)及び水(50mL)を加えて抽出し、分液し、有機相を飽和NaHCO水溶液、2N希塩酸、水、飽和NaClで順次に洗浄し、減圧濃縮して粗コレステロールを得、ケーキに80%エタノール(10ml)を加え、25℃で3時間スラリー化し、吸引濾過して精製コレステロール(1.84gの白色固体、モル収率:95.3%、ガスクロマトグラフィー純度:98.6%、図14を参照)を得た。
【0091】
式(6-1)の化合物をラネーNi水素化還元して式(7-1)の化合物を得る反応過程で導入される可能性のある不純物構造は、式(8-1)、(8-2)、(8-3)及び(8-4)の化合物である。
【化58】
【0092】
本発明の実施例6で得られた式(7-1)の化合物の粗生成物ガスクロマトグラム(図1を参照)において、式(8-1)、(8-2)、(8-3)、(8-4)の化合物の保持時間は、9.123分(0.11%)、9.318分(0.42%)、9.538分(0.16%)、10.324分(0.39%)のいずれか1つに対応する。
【0093】
本発明の式(7-1)の化合物の粗生成物は1回の再結晶により精製され、純度は91.25%から99.40%に増加し(ガスクロマトグラムは図2を参照)、この際、3α-OR副生成物は基本的に除去され、対応する保持時間に対応する不純物の含有量も減少し、それぞれ9.168分(0.19%)、9.382分(0.12%)、9.576分(0.05%)、10.366分(0.17%)であり、この再結晶操作方法のモル収率は84%であった。アルカリ加水分解によって得られたコレステロールのガスクロマトグラフィー純度は、99.10%であり(図9を参照)、これは式(7-1)の化合物の純度と基本的に一致した。
【0094】
比較例1
特許文献(背景技術のスキーム2、CN105218610A)に報告されているように、スチグマステロール分解生成物を原料として使用し、5ステップの反応を経て総モル収率67%でコレステロールを合成した。この特許文献の技術スキームにおける第1のステップの反応は、以下の反応式1に示される通りである。
【化59】
【0095】
特許文献CN105218610Aに記載された反応式1では、BA酸化後の式(02)の化合物を原料として使用し、エタノールを溶媒として使用し、p-トルエンスルホン酸及びオルトギ酸トリエチルの作用下で、40℃に加熱して4時間保持し、式(03)の化合物(モル収率:97.50%)を得た。
【0096】
上記の特許文献によって提供される実験方法に従って、本発明は、溶媒としてエタノール、基質として式(02)の化合物を使用し、p-トルエンスルホン酸及びオルトギ酸トリエチルの触媒作用下で、40℃で保持して4時間反応させ、原料が完全に反応したことがTLCにより検出された後、特許文献(CN105218610A)の方法に従って後処理を行うと、式(03’)の化合物(反応式2に示す通りである)が得られたが、当該特許文献に記載の化合物とは一致しなかった。本発明では、オルトギ酸トリエチルの量を減らすことも試みたが、原料が完全に反応したことがTLCにより検出された後、特許文献(CN105218610A)に記載されている反応式1の結果は得られず、下記反応式3の結果が得られた。これは、特許文献CN105218610Aに報告されている方法に従って式(02)の化合物の3位のカルボニル基を保護すると、C-22位のアルデヒド基が優先的に保護されてアセタールを形成し、反応式2又は反応式3に示される式(03’)及び(03’’)の化合物が得られるが、特許文献(CN105218610A)に記載の式(03)の化合物が得られないことを示している。明らかに、反応式2又は式3で示される式(03’)及び(03’’)の化合物は、その後のWittig反応を起こすことができない。
【化60】
【0097】
実験方法:エタノール(4ml)、オルトギ酸トリエチル(2ml)、式(02)の化合物(2.00g、70.20mmol)及びp-トルエンスルホン酸(20mg、0.12mmol)をフラスコに加え、40℃で保持して4時間反応させ、原料が完全に反応したことがTLCにより検出された。氷浴下で酢酸ナトリウム(20mg)を加え、ケーキを溶出液が中性になるまで水洗し、水切りし、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1)で精製して、式(03’)の化合物(2.30gの無色の油状物、モル収率:88%)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 5.23 - 5.19 (m 1H), 5.10 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 3.81 - 3.70 (m, 4H), 3.61 - 3.55 (m, 1H), 3.49 - 3.41 (m, 2H), 2.31 - 2.25 (m, 1H), 2.18 - 1.96 (m, 4H), 1.85 - 1.78 (m, 2H), 1.71 - 1.52 (m, 7H), 1.43 - 1.33 (m, 4H), 1.29 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.22 - 1.18 (m, 6H), 0.99 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.96 (s, 3H), 0.70 (s, 3H).13C NMR (150 MHz, CDCl) δ 154.52, 141.06, 118.03, 106.07, 99.04, 64.60, 63.35, 62.14, 56.48, 51.88, 48.33, 42.59, 40.39, 39.62, 35.18, 33.86, 31.92, 31.86, 27.72, 25.55, 24.42, 21.17, 18.96, 15.49, 15.37, 14.68, 11.94, 11.89. HRMS(ESI): calcd for C2846NaO [M+Na],453.3339, found 453.3328.
【0098】
実験方法:エタノール(4ml)、オルトギ酸トリエチル(1ml)、式(02)の化合物(2.00g、70.20mmol)及びp-トルエンスルホン酸(20mg、0.12mmol)をフラスコに加え、40℃で保持して4時間反応させ、原料が完全に反応したことがTLCにより検出された。氷浴下で酢酸ナトリウム(20mg)を加え、ケーキを溶出液が中性になるまで水洗し、水切りし、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=5:1)で精製して、式(03’’)の化合物(2.32gの無色の油状物、モル収率:95%)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.69 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 4.27 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 3.78 - 3.72 (m, 1H), 3.58-3.53 (m, 1H), 3.47 - 3.40 (m, 2H), 2.42 - 2.21 (m, 4H), 2.01 - 1.97 (m, 2H), 1.84 - 1.77 (m, 2H), 1.69 - 1.58 (m, 3H), 1.53 - 1.47 (m, 2H), 1.41 - 1.27 (m, 3H), 1.21 - 1.17 (m, 6H), 1.16 (d, J = 4.1 Hz, 4H), 1.13 - 1.08 (m, 1H), 1.04 - 0.98 (m, 2H), 0.96 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.93 - 0.86 (m, 1H), 0.69 (s, 3H).13C NMR (150 MHz, CDCl) δ 199.58, 171.53, 123.76, 105.95, 64.58, 63.40, 55.39, 53.81, 51.81, 42.52, 40.33, 39.42, 35.69, 35.63, 33.97, 32.92, 32.03, 27.62, 24.37, 21.01, 17.37, 15.48, 15.36, 11.91, 11.86.
【0099】
比較例2
特許文献(CN105218610A)に報告されている第2のステップのWittig反応は、次の反応式4に示されている。
【化61】
【0100】
この特許文献では、溶媒としてトルエンを使用し、トリフェニルホスフィン及び1-クロロ-3-メチルブタンを加えて2時間還流させ、カリウムtert-ブトキシド及び式(03)の化合物を加えて還流させて4時間反応させて、式(04)の化合物を得、モル収率は90.29%であった。例えば、本発明は、特許文献(CN105218610A)の方法(比較例2、反応式4)を採用し、1-クロロ-3-メチルブタン又は1-ブロモ-3-メチルブタンを用いて、本発明の式(2)の化合物についてWittig反応を行い、反応結果は反応式5に示されるように、式(3’)の化合物が得られたが、予想された式(3)の化合物は得られなかった。これは、特許文献(CN105218610A)に開示された方法が本発明に適用できないことを示している。
【化62】
【0101】
実験方法:トリフェニルホスフィン(797mg、3.04mmol)、1-クロロ-3-メチルブタン(324mg、3.04mmol)、トルエン(10mL)をフラスコに加え、2時間還流反応させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下でカリウムtert-ブトキシド(307mg、2.74.02mmol)を3回に分けて加え、氷浴下で0.5時間撹拌し、次いで式(2)の化合物(500mg、1.52mmol)を加え、4時間還流反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2MのHCl(4mL)を加えて溶液を中性に調節し、ジクロロメタン(50mL)及び水(50mL)で抽出し、有機相を水、飽和食塩水で順次に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE:EA=20:1)で精製して、式(3’)の化合物(516mgの無色油状物、モル収率:85%)を得た。H NMR (600 MHz, CDCl) δ 9.53 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 2.72 - 2.68 (m, 1H), 2.39 - 2.25 (m, 6H), 2.10 (dd, J = 14.4, 4.8 Hz, 1H), 1.94 - 1.86 (m, 3H), 1.68 - 1.53 (m, 8H), 1.43 - 1.30 (m, 4H), 1.25 (s, 3H), 1.15 (s, 3H), 1.04 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.89 (d, J = 6.6 Hz, 6H), 0.72 (s, 3H).13C NMR (150 MHz, CDCl) δ 205.71, 198.54, 163.30, 133.32, 55.49, 54.31, 51.82, 48.85, 42.21, 39.05, 38.94, 38.40, 35.35, 35.16, 33.95, 32.12, 29.71, 28.43, 27.31, 26.49, 23.74, 23.21, 22.54, 20.74, 17.80, 13.60, 12.97. HRMS(ESI): calcd for C2742NaO [M+Na],421.3077, found 421.3075.
【0102】
トリフェニルホスフィン(797mg、3.04mmol)、1-ブロモ-3-メチルブタン(459mg、3.04mmol)、10mLのトルエンをフラスコに加え、2時間還流反応させた後、25℃まで冷却させ、氷浴下でカリウムtert-ブトキシド(307mg、2.74mmol)をバッチで加え、氷浴下で0.5時間撹拌し、次いで式(2)の化合物(500mg、1.52mmol)を加え、2.5時間還流反応させた。TLCにより反応終了を検出した後、25℃に冷却させ、2MのHCl(4mL)を加えて溶液を中性に調節し、ジクロロメタン(50mL)及び水(50mL)で抽出し、有機相を水、飽和食塩水で順次に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE:EA=20:1)で精製して、式(3’)の化合物(534mgの無色油状物、モル収率:88%)を得た。
【0103】
比較例3
本発明において式(4)の化合物の3位エステル基をNaBHで還元して式(5)の化合物を得た後、式(5)の化合物をヒドロキシ保護、選択的水素化還元、脱保護又は加水分解反応を経てコレステロールを得た。また、まず還元剤としてラネーNi/Hを用いて側鎖の二重結合の選択的水素化還元反応を行い、その後NaBHを用いて3位のエステル基を還元することを試みた。反応結果は反応式6に示されるように、式(6-1)及び(6’-1)の化合物が得られたが、予想された式(9)の化合物は得られなかった。これは、ラネーNi/Hを還元剤として使用する場合、側鎖を選択的水素化還元できないことを示している。従って、本発明の反応順序を変更することができない。
【化63】
【0104】
実験方法:フラスコに式(4)の化合物(2.10g、17.2mmol)、ラネーNi(4.20g、湿重量)、イソプロパノール(30mL)、H(1atm)を加え、30℃で11時間反応させ、TLCにより反応終了を検出した後、ラネーNiを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮して式(6-1)及び式(6’-1)の混合物を得た。生成物のH NMRの結果から判定すれば、式(6-1)の化合物と異性体式(6’-1)の化合物の比は1:0.28であった。
【0105】
比較例4
本発明において式(6-1)の化合物の粗生成物をラネーNi/Hで還元させて、式(7-1)の化合物の粗生成物を合成した。以下の反応式7に示された通りである。
【化64】
【0106】
本発明では、還元剤としてHを使用し、触媒としてラネーNiを使用することにより、側鎖の二重結合を選択的水素化還元することにより、得られた式(7-1)の化合物の粗生成物は、過剰還元体である不純物の式(8-4)の化合物の含有量が低く(0.39%)、精製によって除去するのが容易である。また、還元剤としてH、触媒として10%Pd/Cを用いて側鎖の二重結合を選択的水素化還元する場合、得られた式(7-1)の化合物の粗生成物には、過剰還元体である不純物の式(8-4)の化合物の量が多くて3.4%超え(図15を参照)、精製によって除去するのが困難であり、所期の目的を達成できなかった。これは、10%Pd/Cは触媒活性が比較的高く、選択性が低く、側鎖の選択的水素化還元の触媒としてラネーNiに代わることができないことを示している。
【0107】
実験方法:フラスコに式(6-1)の化合物(1.50g、3.56mmol)、10%Pd/C(150mg)、酢酸エチル(30mL)を加え、H(1atm)、30℃で9時間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより反応終了を検出した後、Pd/Cを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮した。生成物のガスクロマトグラムにより判断すると、式(7-1)の化合物の含有量は91.3%であり、過剰還元体である不純物の式(8-4)の化合物の含有量は3.4%であり、中間体不純物1、2、3の合計含有量は2%であった。
【0108】
比較例5
特許文献CN113248557Aにおいて、以下の反応式8に示される通りである。
式(4)の化合物を水素化ホウ素ナトリウムで還元し、カラムクロマトグラフィーで精製して式(5)(3β-OH)の化合物を得、式(5)の化合物をラネーNi触媒による選択的水素化反応にかけて、コレステロールの粗生成物を得、次に、前記コレステロールの粗生成物を1回カラムクロマトグラフィー又は再結晶によって精製して、精製品のコレステロールを得、ガスクロマトグラフィー純度は95~96%であった。
【化65】
【0109】
本発明において、式(7)の化合物を1回の再結晶精製、脱保護又は加水分解によって得られるコレステロールは、純度が99.0%以上に達することができ、純度が高く、精製収率が良好であり、重要な応用価値を有する。
【0110】
本発明の保護内容は上記実施例に限定されるものではない。本発明の概念の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考えられる変更及び利点はすべて本発明に含まれ、添付の特許請求の範囲が保護範囲である。
図1
図2
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【国際調査報告】