(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電気ガラス炉、上記炉によるガラスの溶融及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/03 20060101AFI20250117BHJP
C03B 5/42 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C03B5/03
C03B5/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543899
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 FR2023050098
(87)【国際公開番号】W WO2023144489
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100232895
【氏名又は名称】林 海藍
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ ジマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル ジェルべ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ドゥ ディアヌ
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AD00
(57)【要約】
本発明は、電気ガラス炉(100)に関し、これは、コールド又はセミコールドトップを有するタンク(110)、及びタンク内に導入される原材料(130)を溶融し、それによって溶融材料の浴(120)を得るための電極(150)を有し、タンクは、溶融材料がタンクから流出するのを可能にするように構成される開口部(113)を有する側壁(112)を有する。炉はさらに、「遅延」手段(170、180)と呼ばれる手段を有し、これは、少なくとも部分的に浴中に浸漬され、開口部と鉛直に整列してタンクの側壁に近接して配置され、遅延手段に近接して導入される原材料の、タンク内での、滞留時間を増加させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドトップ又はセミコールドトップを有するタンク(110)であってタンク内に導入される原材料(130)を溶融することによって溶融材料の浴(120)を得るための電極(150)をさらに有するタンク(110)、を有する電気ガラス炉(100)であって、
前記タンク(110)が、前記溶融材料が前記タンクから流出することを可能にするように構成される開口部(113)を有する側壁(112)を有し、
前記炉が、いわゆる「遅延」手段(170、180)をさらに有することを特徴とし、当該「遅延」手段は、前記浴内に少なくとも部分的に浸漬され、前記開口部と鉛直に整列してかつ前記タンクの前記側壁に近接して配置され、前記側壁内の前記開口部と鉛直に整列して前記浴の表面に直接位置するゾーン内、及び前記浴の表面に位置し前記側壁から水平方向に移動したときに前記遅延手段に実質的に先行するゾーン内に導入される前記原材料の前記タンク内の滞留時間を長くするように構成される、電気ガラス炉(100)。
【請求項2】
前記遅延手段が、プレート(170)であって、耐火性材料でできている層を有し、前記タンクの前記側壁(112)に接触して又はその近傍に配置されている、プレート(170)を有し、前記プレートが、実質的に水平な中間平面内に延在し、ここで固定されている状態に維持される、請求項1に記載の炉(100)。
【請求項3】
前記プレート(170)が、前記側壁(112)から、前記タンク(110)の底壁(111)に向かって実質的に傾斜している、請求項2に記載の炉(100)。
【請求項4】
前記遅延手段が、プレート(170)であって、耐火性材料でできている層を有し、前記タンクの前記側壁(112)に接触して又はその近傍に配置されている、プレート(170)を有し、前記プレートが、第1の実質的に水平な位置及び第2の実質的に鉛直な位置を含む2つの位置の間でリトラクタブルである、請求項1に記載の炉(100)。
【請求項5】
前記プレートが加熱されており、前記プレートの前記耐火性材料が、例えば伝導性材料、例えばクロム又は白金などである、請求項2~4のいずれか一項に記載の炉(100)。
【請求項6】
前記遅延手段が、プレート(170)であって、耐火性材料でできている層を有し、前記タンクの前記側壁(112)に接触して又はその近傍に配置されている、プレート(170)を有し、前記プレートが、実質的に鉛直な中間平面内に延在し、ここで固定されている状態に維持されかつ加熱され、前記プレートの前記耐火性材料が、伝導性材料、例えばモリブデン又は白金などである、請求項1に記載の炉(100)。
【請求項7】
前記プレート(170)が、前記浴の表面から離れて、優先的には前記浴の表面から10センチメートル以下の距離で、溶融材料の前記浴(120)内に浸漬される、請求項2~6のいずれか一項に記載の炉(100)。
【請求項8】
前記プレート(170)が、前記タンク(110)の前記側壁(112)に沿って測定される横断方向において、前記開口部(113)の寸法以上の寸法を有する、請求項2~7のいずれか一項に記載の炉(100)。
【請求項9】
前記プレート(170)が、前記横断方向において、前記開口部(113)の両側に、例えば対称的に、より特には前記横断方向における前記開口部の寸法の20%以下の距離にわたって、延在する、請求項8に記載の炉(100)。
【請求項10】
前記プレート(170)が、前記中間平面において30センチメートル~50センチメートルの距離にわたって延在している、請求項2~9のいずれか一項に記載の炉(100)。
【請求項11】
前記遅延手段が、少なくとも1つの電極(180)であって、プレートとは異なる様式で形成され、実質的に鉛直に又は実質的に水平に配置される、少なくとも1つの電極(180)、例えば2つの電極などを有し、前記少なくとも1つの電極(180)が、前記タンク内に導入される前記原材料(130)を溶融するように構成される前記電極(150)とは異なる、請求項1~10のいずれか一項に記載の炉(100)。
【請求項12】
前記開口部(113)が、ダム、例えば鉛直に取り外し可能なダムなどによってできている、請求項1~11のいずれか一項に記載の炉(100)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の電気ガラス炉(100)を用いて実施される、原材料の溶融方法。
【請求項14】
請求項13に記載の溶融方法に従って原材料を溶融する工程を含む、ガラスの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のガラスの製造方法によって得られる、ガラス、例えば平坦ガラス又は遮断ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス生成の一般分野に属する。それは、より詳細には、原材料を溶融できるように構成される電気ガラス炉に関する。それはまた、この電気ガラス炉を用いて実施される原材料の溶融方法、及び上記溶融方法にしたがって原材料を溶融する工程を含むガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製造用の炉設計の様々な例が、特には製造される物品、すなわちガラスの化学組成及びその最終形状(グラスウール、ロックウール、中空ガラス、又はさらには平坦ガラス)に応じて知られている。
【0003】
本明細書において、「原材料」とは、ガラス炉に供給される組成物に入りうる、全ての材料、ガラス化可能材料、天然鉱石、又は合成生成物、リサイクル由来の材料、例えばカレットなどを意味すると理解される。
【0004】
同様に、「ガラス」は広義のガラスを意味し、すなわちガラス質、ガラスセラミック、又はセラミックマトリックスを有する任意の材料を包含するものと理解される。
【0005】
さらに、「製造」という用語は、原材料を溶融する不可欠な工程、及び必要に応じて、溶融ガラスをその最終成形のために、特には平坦ガラス(グレージング)、中空ガラス(ボトル、ジャー)、その熱遮断特性又は音遮断特性のために用いられるミネラルウール(特にロックウール又はグラスウール)の形態であるガラス、又はさらには随意に補強に用いられる繊維糸の形態であるガラスの形態で、精製/調整する全ての後続工程を含む。
【0006】
より詳細には、電気ガラス炉を用いて原材料の溶融を実行し、それによって、一般的に「ガラス化可能混合物」又は「組成物」と呼ばれる、ガラス化可能材料の浴を得ることが知られている。
【0007】
ガラス化可能混合物は、原材料であって、典型的には、例えば、ソーダ石灰ガラス(平坦ガラス製造に最もよく用いられるガラス)の製造のための砂、石灰石(炭酸カルシウム)、ソーダ灰、及びドロマイトの混合物、又はホウケイ酸ガラスの製造のための三酸化ホウ素などを含み、かつ溶融を促進するために割れたガラスでできているカレットが有利には添加される、原材料に由来する。
【0008】
これらの原材料は、最も混和性の低い粒子、すなわち二酸化ケイ素又はシリカ(SiO2)に最も富みかつ酸化ナトリウム(Na2O)に最も乏しいものも溶解する、溶融したガラス化可能材料の浴を形成する液状塊に変換される。
【0009】
上記電気ガラス炉は、従来、溶融材料の浴を含むことを意図される耐火性材料でできているタンクを有し、タンクの上方の空間は、アーチによって閉じられている。原材料は、溶融材料の浴の表面の全部又は一部にわたるこの導入を実行できる機械装置によって、タンク内にその頂部を介して導入される。この表面は、浴の上方の温度を制限することを可能にする熱遮蔽物を構成する。このタイプの炉は、浴の全表面(それぞれ浴表面の一部のみ)が原材料で覆われることを意図される場合には、「コールドトップ」(それぞれ「セミコールドトップ」)とも呼ばれる。
【0010】
電気ガラス炉の加熱原理は、特には原材料の溶融に必要な熱エネルギーが溶融ガラスの塊の中(すなわち溶融材料の浴中)に提供されるという事実に基づいている。より正確には、ガラスの電気的溶融は、800~900℃から電気伝導性を帯び、温度とともに伝導性が増すというその特性に基づいている。したがって、ガラスは、ジュール効果によって加熱され、溶融材料の浴が抵抗体を構成する。このジュール効果を得るために必要な電流は、その一部について、この浴中に埋め込まれている電極によって提供される。
【0011】
このようにして溶融した材料は、従来、タンクの側壁の下側部分内に作られている開口部を介してタンクから排出される。この側面の開口部は、一般的には(必ずしもそうである必要はないが)、溶融材料の他の領域への流れを可能にするスロートによって延在している。これらは、精製、均質化、又は熱調整工程、及び最終的なガラス成形(平坦ガラス、中空ガラスなどの製造と同様)が実施される、領域でありうる。代替的には、製造しようとする物品が無機ウール(特にはロックウール又はグラスウール)の形態のガラスである場合、溶融材料は、スロート出口においてかつ随意に熱調整した後、適切な繊維化場所に直接搬送されてよい。
【0012】
実際には、側面開口部と直線的に(すなわち鉛直に)導入される原材料は、ありうる限り迅速に排出されるものであることに留意されたい。このような迅速な排出は、原材料の導入領域を上記開口部から分離する距離が短いことに起因するだけでなく、溶融材料の浴内で優勢な熱対流運動にも起因する。
【0013】
このような排出速度は、製造しようとするガラスの最終的な品質にとって有害であることが判明している。実際、このようにして側面開口部に鉛直に導入される原材料が、溶融材料の浴中での非常に短い滞留時間を有する限りにおいて、それらがタンクを出たときにそれらの溶融が不完全になりうる大きなリスクが存在する。しかしながら、未溶融(すなわち、完全に溶融していない)残留物の存在は、平坦ガラス及び中空ガラスの製造の場合にはガラスの最終的な品質を変化させる(例えば、粒子の存在、粘度の変動、完成品の厚さの変動など)ことが知られており、また、無機ウール(特にはロックウール又はグラスウール)の形態であるガラスの製造の場合には、繊維化スピナーを詰まらせ、又はさらには破損させることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点の全て又は一部、特には上述したものを、コールド又はセミコールドトップタンクを有する電気ガラス炉の側壁内に形成される開口部の鉛直方向に近接して導入される原材料に由来する未溶融残留物の存在を非常に大きく制限することを可能にする解決策を提案することによって、改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、第一の態様によれば、本発明は電気ガラス炉に関し、これは、コールド又はセミコールドトップタンク、及びタンク内に導入される原材料を溶融し、このようにして溶融材料の浴を得るための電極も有し、タンクは、溶融材料がタンクから流出するのを可能にするように構成される開口部を有する側壁を有する。炉はさらに、「遅延」手段と呼ばれる手段を有し、これらは、少なくとも部分的に浴中に浸漬され、開口部と鉛直に整列してかつタンクの側壁に近接して配置され、遅延手段に近接して導入される原材料のタンク内での滞留時間を増加させるように構成される。
【0016】
ここで、「遅延手段に近接して」とは、側壁内に作られている開口部と鉛直に直接整列して浴の表面に位置しているゾーンに近接しているだけでなく、浴の表面に位置し、かつ上記側壁から水平方向に離れる場合に上記遅延手段に実質的に先行する、ゾーンにも近接していることを意味することに留意すべきである。
【0017】
したがって、上記遅延手段は、それらが、上記滞留時間の増加により、側壁内の開口部の鉛直方向に対して近接してタンク内に導入される原材料から生じる未溶融材料の存在のリスクを非常に大きく抑えることを可能にするという点で、特に有利であることが証明される。
【0018】
特定の実施形態において、炉は、単独で又は任意の技術的に可能な組合せで、下記の特徴のうちのいくつかをさらに含みうる。
【0019】
特定の実施形態において、上記遅延手段は、プレートであって、耐火性材料でできている層を有し、かつタンクの側壁に接触して又はその近傍に配置されている、プレートを有し、上記プレートは、実質的に水平な中間平面内に延在しており、ここでそれは固定されている状態を維持される。
【0020】
したがって、このようなプレートは、その配置により、原材料が開口部上に鉛直に直接落下するのを防止することだけでなく、有利には、上記プレートの近傍で浴に到達した原材料が、上記開口部の方向への対流運動によって急速に引っ張られ過ぎるのを防止することも、可能にする。
【0021】
特定の実施形態では、プレートは、側壁から、タンクの下側壁に向かって実質的に傾斜している。
【0022】
このような配置は、開口部と鉛直に整列して導入される原材料がプレートの上方に蓄積しないようにできるという点で有利である。水平に対するプレートの傾斜は、このようにして導入される材料が側壁から遠ざかって浴に向かってスライドすることを実際に可能にする。
【0023】
特定の実施形態において、上記遅延手段は、プレートであって、耐火性材料でできている層を有し、かつタンクの側壁に接触して又はその近傍に配置されている、プレートを有し、上記プレートは、第1の実質的に水平な位置及び第2の実質的に鉛直な位置を含む2つの位置の間でリトラクタブル(元の状態に戻ることが可能)である。
【0024】
リトラクタブル(元の状態に戻ることが可能)なプレートを考慮することは、有利には、上記プレートの近くに導入される原材料のタンク内での滞留時間を増加させることが実際に望まれる瞬間を制御することを可能にする。
【0025】
特定の実施形態において、上記プレートは加熱され、上記プレートの耐火性材料は、伝導性材料、例えばモリブデン又は白金などである。
【0026】
プレートの加熱は、特にはプレートが鉛直位置にある場合、対流であって、浴中に生じ、かつ開口部と鉛直に整列している側壁と対向して局所的に位置する、対流を反転させ、それによって、上記プレート付近でタンク内に導入される原材料を浴の中心に向かって戻すことを可能にする。その結果、このようにして導入される原材料のタンク内の滞留時間が長くなる。さらに、プレートの加熱は、浴中のガラスの温度を局所的に上昇させることを可能にし、これも溶融物の品質を高めることに寄与する。
【0027】
特定の実施形態において、上記遅延手段は、プレートであって、耐火性材料でできている層を有し、かつタンクの側壁に接触して又はその近傍に配置されている、プレートを有し、上記プレートは、実質的に鉛直な中間平面内に延在しており、ここでそれは固定されている状態を維持されかつ加熱され、上記プレートの耐火性材料は、伝導性材料、例えばモリブデン又は白金などである。
【0028】
特定の実施形態において、プレートは、上記浴の表面から離れて、優先的には上記浴の表面から10センチメートル以下の距離で、溶融材料の浴中に浸漬される。
【0029】
特定の実施形態において、プレートは、タンクの側壁に沿って測定される横断方向において、開口部の寸法以上の寸法を有する。
【0030】
一般的に、プレートの寸法は、本発明を限定するものではない。しかしながら、本発明者らは、導入される原材料のタンク内での滞留時間を増加させるという点で、プレートが上記横断方向において開口部の寸法以上の寸法を有する場合に、優れた結果が得られることを見出した。
【0031】
特定の実施形態において、プレートは、上記横断方向において、開口部の両側で、例えば対称的に、より詳細には、上記横断方向における上記開口部の寸法の20%以下の距離にわたって、延在する。
【0032】
特定の実施形態では、プレートは、上記中間平面内において(すなわち、考慮される場合に応じて水平に又は鉛直に)、30センチメートル~50センチメートルの距離にわたって延在する。
【0033】
特定の実施形態において、上記遅延手段は、プレートとは異なる様式で形成され、かつ実質的に鉛直又は実質的に水平に配置されている、少なくとも1つの電極、例えば2つの電極を有し、上記少なくとも1つの電極は、タンク内に導入される原材料を溶融するように構成されている電極とは別である。
【0034】
このような少なくとも1つの電極を用いることは、対流であって、浴中に生じ、かつ開口部と鉛直に整列している側壁に対向して局所的に位置する、対流を反転させ、それによって、上記電極付近でタンク内に導入される原材料を浴の中心に向かって戻すことを可能にし、その結果、このようにして導入される原材料のタンク内での滞留時間が長くなる。さらに、プレートの加熱は、浴中のガラスの温度を局所的に上昇させることを可能にし、これはまた、溶融物の品質を高めることに寄与する。
【0035】
特定の実施形態では、側面開口部は、ダム、例えば鉛直に取り外し可能なダムによって形成される。
【0036】
第2の態様によれば、本発明は、本発明による電気ガラス炉によって実施される原材料の溶融方法に関する。
【0037】
第3の態様によれば、本発明は、本発明による溶融方法にしたがって原材料を溶融する工程を含むガラスの製造方法に関する。
【0038】
本発明の他の特徴及び利点は、任意の限定的な特徴を除くその例示的な実施形態を示す添付図面を参照しながら、以下に示す説明から明らかになるであろう。図において、下記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、その環境において、本発明による電気ガラス炉の特定の実施形態を、概略的に示している;
【0040】
【
図2】
図2は、その環境において、本発明による電気ガラス炉の別の特定の実施形態を、概略的に示している;
【0041】
【
図3】
図3は、その環境において、本発明による電気ガラス炉のさらに別の特定の実施形態を、概略的に示している;
【0042】
【
図4】
図4は、その環境において、本発明による電気ガラス炉のさらに別の特定の実施形態を、概略的に示している;
【0043】
【
図5】
図5は、その環境において、本発明による電気ガラス炉のさらに別の特定の実施形態を、概略的に示している;
【0044】
【
図6】
図6は、本発明による炉の有効性を従来技術から知られている従来の炉と比較するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、その環境において、本発明による電気ガラス炉100の特定の実施形態を概略的に示している。
【0046】
残りの説明では、水平方向、鉛直方向、及び横断方向が、
図1及び
図2内に示す軸系(H,V,T)に関して、限定することなく用いられる。また、
図1の電気ガラス炉100を鉛直断面で示す。
【0047】
慣例により、「上側」及び「下側」、又は「頂部」及び「底部」、又は「上方」及び「下方」という用語は、鉛直方向に関して用いられる。
【0048】
上記電気ガラス炉100は、ガラス化可能な溶融材料の浴を形成する目的で、原材料の溶融を実行するように構成される。このようにして溶融される材料は、ガラスの製造用に意図されるものであり、この目的のために、電気ガラス炉100が、電気ガラス炉100が実装されるゾーン以外のゾーンにおいて、ガラスの精製及び/又は均質化及び/又は熱調整及び/又は最終成形の工程を実施することができる様々な装置(図示せず)を含む、ガラス製造設備内に組み込まれる。このような工程は、当業者に周知であるので、ここではこれ以上説明されない。
【0049】
残りの説明では、電気ガラス炉101内の溶融材料から製造されることが意図されるガラスが、遮断ガラスタイプの物品であることを非限定的な様式で考慮する。しかしながら、このような遮断ガラスの製造を考慮することは、本発明の1つの代替実施形態に過ぎないことに留意されたい。したがって、一般的に、本発明による電気ガラス炉100内の溶融材料によって製造されることを意図されるガラスのタイプ(例:平坦ガラス、ミネラルウールの形態であるガラス、繊維糸の形態であるガラスなど)には限定が付されない。
【0050】
遮断ガラスタイプの物品を製造することを可能にする原材料の組成も、当業者には周知であり、したがってここでは詳述しないことに留意されたい。もちろん、このような見解は、本発明にしたがって製造されうる他の全てのタイプのガラスにも適用される。
【0051】
図1に示す実施形態では、電気ガラス炉100は、平行六面体形状のものであり、従来は、タンク110を有し、ここで、原材料が溶融され、それによって、溶融材料の浴120を得る。
【0052】
タンク110は、電気ガラス炉100の底部を形成しかつ水平に延在する下側壁111、及び上記下側壁111から鉛直に立ち上がる側壁112を有し、横断軸Tは、上記側壁112に沿って延在している。電気ガラス炉100のタンク110は、ここではコールドトップタンクであり、したがって、それ自体公知の材料、例えば粘土材料、例えばシリマナイトなどでできているトップ(図には示されていない)によって蓋をされている。
【0053】
タンク110(すなわちタンク110の壁)は、耐火性材料でできており、例えばアルミナ-ジルコニア-シリカ(AZS)又はクロムなどでできている。側壁112は、一般的には、周囲空気と接触する外部金属ケーシング(「補強材」とも呼ばれる)を有する。この金属ケーシングは、冷却流体が循環する2つの仕切り、例えば水などが循環する2つの仕切り(いわゆる「ウォータージャケット」壁)を有しうる。
【0054】
平行六面体形状の、コールドトップタンクを有する電気ガラス炉を考慮することは、もちろん本発明の限定を構成するものではない。したがって、別の形態、例えば円形の基部を有する円筒形状、及び半コールドトップタンクなどを考慮することは妨げられない。
【0055】
同様に、下側壁111が水平に対して傾斜しており、例えば下方を指している円錐、又は他の傾斜平面の形態であり、それによって、溶融開始において溶融したガラス化可能材料のタンク110の底部に向かっての移動を促進することを考慮することは妨げられない。
【0056】
ガラスの製造に有用な原材料130は、ここではタンク110がコールドトップであると考えると、溶融材料の浴120の表面上に、より詳細には浴120の表面全体にわたって、導入を実行することができる機械装置140によって、タンク110内にその上部を介して導入される。非限定的な例として、
図1によって示されるように、上記機械装置140は、浴表面上の任意の箇所に組成物を堆積させる回転マット(「ブーム」とも呼ばれる)を有するバッチ式チャージャーに相当する。
【0057】
このようにして導入され、かつまだ溶融していない原材料130は、溶融しかつ浴120の実際の溶融材料を供給する前に、浴120の表面上にクラスト121を形成する。
【0058】
タンク110内に導入される原材料130の溶融は、電極150によって行われる。さらに、電極150の周囲に放散される電力は、浴120内に強い対流の領域を生成することを可能にし、このようにして、既に溶融した材料とクラスト121との間の境界に必要な熱量を提供するための十分に強い流れを生み出す。
【0059】
本実施形態では、電極150は、クラスト121を通して、溶融材料の浴120内に沈むように表面上に配置される。さらに、浸漬電極150は、鉛直に延在し、
図1の例では、数が2つであり、耐火性材料(1000℃を超える温度に耐える)、例えばモリブデンなどでできている。また、上記電極150は、従来、浴120の中心近傍において分布していることに留意されたい。
【0060】
もちろん、電極の他の代替的な実施形態を想定してよく、例えば斜めに延在する、すなわち鉛直方向に対して傾斜している、浸漬電極などを想定してよい。さらに、沈み電極の数は、それが2つより大きい場合、本発明の限定要因を構成しない。
【0061】
代替的には、又は浴120の表面上に配置されかつその中に浸漬される電極150に加えて、下側壁111を通して配置され、それによって、浴120内に浸漬される、立ち上がり電極(沈み電極とは対照的)を用いることも想定されうる。この場合も、そのような立ち上がり電極は、鉛直に、又は代替的には斜めに、延在しうる。
【0062】
最後に、随意に先述の変形例に加えて、鉛直壁110を通して導入される電極も想定されうる。
【0063】
タンク110の側壁112は、開口部113を有し、これは、本明細書の他の部分では「側面開口部113」とも呼ばれる。この側面開口部113は、浴120の溶融材料がタンク110から流出するのを可能にするよう構成されている。この側面開口部113は、横断方向Tにおける側壁112の寸法全体を覆っていないことに留意されたい。
【0064】
より詳細には、
図1に示すように、側面開口部113は、溶融材料の出口を形成し、したがって、これは、スロートを形成する排出チャネル160を介して、他の領域へ流れてよく、ここで、ガラスの精製及び/又は均質化及び/又は熱調整及び/又は最終成形の工程が、典型的には実施される。
【0065】
本実施形態では、側面開口部113は、横断方向Tにおいて比較的大きな寸法(すなわち長さ)の、長方形形状を有する。しかしながら、これは特定の実施形態の変形例に過ぎず、結局のところ、側面開口部113の形状に限定は付されないことが理解される。
【0066】
さらに、
図1に示すように、ここでは、側面開口部113が、下側壁111において、側壁112の下側部分内に配置されていると考えられる。しかしながら、他の変形例を想定してよく、ここで、側面開口部113が、下側壁111のレベルよりも低いレベルに配置されるか、又は他には側壁112の上側部分内(すなわち、下側壁111よりも浴120の表面に近くなるよう)に配置される。
【0067】
本発明によれば、電気ガラス炉100は、いわゆる「遅延」手段も有し、これは、少なくとも部分的に浴120内に浸漬され、側面開口部113と鉛直に整列してタンク110の側壁112の近傍に配置され、かつ上記遅延手段の近くに導入される原材料130のタンク110内での滞留時間を増加させるように構成されている。
【0068】
ここで、「遅延手段に近接して」とは、側面開口部113と鉛直に直接整列して(すなわち、鉛直な側壁112に沿って)浴120の表面に位置するゾーンに近接しているだけでなく、浴120の表面に位置し、上記側壁112から離れて水平方向に(したがって、
図1の水平方向Hにおいて左側に)移動するときに上記遅延手段に実質的に先行し、かつ横断方向Tにおいて上記遅延手段の両側に実質的に延在もしている、ゾーンにも近接していることを意味することに留意されたい。
【0069】
純粋に例示すると、これら2つのゾーンは、
図1において点線の境界によって区画される空間122内に含まれ、この空間122は、水平方向H及び横断方向Tの両方に延在することが理解される。
【0070】
このような遅延手段は、上記滞留時間の増加により、側面開口部113の鉛直に対して近接してタンク110内に導入される原材料130に由来する未溶融物の存在のリスクを非常に大きく制限することを可能にするという点で、特に有利であることが証明される。
【0071】
また、上記遅延手段の近くに導入される原材料130のタンク110内での滞留時間を増加させることは、最終的に、上記タンク110内に導入される全ての原材料の最小滞留時間を増加させる(したがって、最終的に、それらにより多くの溶融時間を与える)ことを可能にすることにも留意されたい。
【0072】
図1の実施形態では、上記遅延手段は、耐火性材料(すなわち、1000℃を超える温度に耐える)でできている層を有するプレート170を有する。
【0073】
非限定的な例として、上記耐火性材料は、マグネシア及び/若しくはクロムに基づくか、又は他にはアルミナ-ジルコニア-シリカタイプ(電気融合されているもの又は電気融合されていないもの)のものである。さらに別のカテゴリーとして、高温における金属(例:いわゆる耐火鋼、例えばモリブデン又は白金など)に基づく材料又は冷却される材料のものが想定される。
【0074】
本実施形態では、上記プレート170は、タンク110の側壁112に、ここではその端部に沿って、接触して配置される。それは、平行六面体形状を有し、上側面171、及び上記上側面171の反対側にある下側面172を有する。
【0075】
プレート170の形状は、ここでは、タンク110自体が平行六面体形状である限りにおいて、平行六面体となるように選択されていることに留意されたい。しかしながら、別の形状のタンク110の場合、プレート170の形状は、有利には、プレート170が側壁112と接触するように適合されることが理解される。
【0076】
さらに、プレート170が側壁112と接触していることを考慮することは、本発明の1つの代替実施態様のみを構成する。実際、プレート170が上記側壁112の近傍に配置されることを考慮することは妨げられない。「近傍に」という用語は、ここでは、約1~2センチメートルの距離を指す。
【0077】
プレート170はさらに、溶融材料の浴120内に部分的に浸漬され、「中間平面」と呼ばれる、水平面内に延在する。より詳細には、プレート170は、タンク110の側壁112に対して垂直に延在しており、プレート170の上側面171は(下側面172はそれぞれ)クラスト121内に含まれ(浴120内にそれぞれ含まれる)。また、プレート170は、上記中間平面内に固定されている。
【0078】
図1の実施例では、プレート170の下側面172を浴120の表面から分離する距離は、約1cmであり、例えば5cmに等しい。
【0079】
さらに、非限定的な例として、プレート170の厚さは、実質的には150mmに等しい。しかしながら、プレートの厚さについて他の値は排除されない。さらに、より一般的な様式で、プレート170が少なくとも部分的に浸漬されると同時に、クラスト121の厚さよりも大きい又は小さい厚さを考慮することは排除されない。
【0080】
したがって、このようなプレート170は、その配置により、原材料が側面開口部113上に鉛直に直接落下するのを防止することを可能にするだけでなく、有利には、上記プレート170の近傍(
図1に示す空間122を参照)で浴120に到達する原材料が、上記側面開口部113の方向への対流運動によって急速に引っ張られ過ぎるのを防止することを可能にする。
【0081】
一般的に、プレート170の水平及び横断寸法は、本発明を限定するものではない。しかしながら、本発明者らは、上記プレート170に近接して導入される原材料のタンク110内の滞留時間を増加させるという観点から、プレート170が以下のものを有する場合に、優れた結果が得られることを見出した:
- 横断方向Tにおいて側面開口部113の寸法よりも大きいか又はそれに等しい寸法、及び/又は、
- 側面開口部113の鉛直寸法(方向V)よりも大きい水平寸法(方向H)を有する。
【0082】
非限定的な例として、プレート170は、横断方向Tにおいて又は水平方向Hにおいて、800mm及び1200mmの寸法を有しうる。
【0083】
好ましくは、プレート170は、上記横断方向Tにおいて、側面開口部113の両側に、例えば対称的に、より詳細には、上記横断方向Tにおける上記側面開口部113の寸法の20%以下の距離にわたって延在する。
【0084】
もちろん、プレート170が、上記横断方向Tにおいて、側面開口部113の片側のみに延在することも想定されうる。
【0085】
さらに、ここで説明する実施形態では、プレート170は、30cm~50cm、例えば40cmに等しい距離にわたって、上記中間平面において水平に(すなわち方向Hに)延在する。
【0086】
当業者であれば、プレート170の横断及び水平の寸法は、有利には、側面開口部113のものの関数として適合されうることを前述の配置において理解し、したがって、先に提供した値は、本発明への限定を何ら構成するものではない。
【0087】
ここでも、以下に列挙する、他の実施形態を、
図1に示す実施形態を参照してこれまで説明したプレート170について想定しうる。これらの他の実施形態は全て、技術的に実行可能な全ての組み合わせにしたがって互いに組み合わせられうる。
【0088】
したがって、一実施形態(図示せず)によれば、水平プレート170は、上記浴の表面から離れて、優先的には上記浴の表面から10センチメートル以下の距離で、溶融材料の浴120内に浸漬される。換言すれば、この態様では、プレート170は、浴120内に完全に浸漬される。
【0089】
一実施形態(図示せず)によれば、水平プレート170は、耐火性材料でできている層に加えて、上記耐火性材料でできている層が付着している金属性材料でできている層を有する。さらに特定の実施形態によれば、遮断層を、上記耐火性層と金属性層との間に配置しうる。
【0090】
一実施形態によれば、水平プレート170は、側壁112から、下側壁111に向かって実質的に傾斜している。例えば、上記傾斜は、30°未満であり、又はさらにはより特定の例によれば15°未満である。さらに、この実施形態では、プレート170の底部、すなわちその底面172は、浴120内に浸漬されたままであり、これは、導入される原材料130が炉100の中心から側壁112へと循環しかつプレート170の下を通過するのを、防止することを可能にする。
【0091】
このような配置は、側面開口部113と鉛直に整列して導入される原材料がプレート170の上方に蓄積しないようにできる点で有利である。水平に対するプレート170の傾斜は、このようにして導入される材料が、側壁112から遠ざかって浴120に向かってスライドすることを実際に可能にする。
【0092】
さらに別の実施形態(図示せず)によれば、プレート170が、以下を有する2つの位置の間で、リトラクタブル(元の状態に戻ることが可能)であると考えることもありうる:
- プレート170の配置についてこれまで説明した位置に対応する、第1の水平な(又は実質的に水平な)位置、
- プレート170が側壁112に隣接する(又は実質的に隣接する)位置に対応する、第2の鉛直な(又は必要に応じて実質的に鉛直な)位置。
【0093】
このような配置においてリトラクタブル(元の状態に戻ることが可能)なプレート170を考慮することは、有利には、上記プレート170の近くに導入される原材料130のタンク110内での滞留時間を増加させることが実際に望まれる瞬間を制御することを可能にする。
【0094】
最後に、上記プレート170が加熱される、他の実施形態も想定しうる。
【0095】
プレート170の加熱は、例えば、プレート170の耐火性層のために、伝導性材料、例えばモリブデン又は白金などを選択することによって、かつこれを電極150の1つに接続することによって実行され、このような実施形態は、有利には、プレート170が(実質的に)鉛直に延在する場合に実施されるが、もちろん、プレート170が(実質的に)水平に延在する場合の加熱は排除されない。さらに、加熱プレート170は、その公称位置(すなわち、鉛直又は水平)に固定されたままであってよく、又は他には、ある実施形態によれば、2つのそれぞれ鉛直位置と水平位置との間で、リトラクタブル(元の状態に戻ることが可能)でありうる。
【0096】
プレート170が加熱され、かつ(実質的に)鉛直に延在している場合、それは、上記浴120の外側に延在する外部部分を有することによって、浴120内に浸漬されうることに留意されたい。この外部部分は、例えばプレート170を側壁112に固定するために用いられ、浴120の表面下に位置する補助部分に用いられる耐火性材料以外の材料でできている。
【0097】
プレート170の、これが(実質的に)鉛直に延在する場合の加熱を考慮することは、対流であって、浴120内に生じ、かつ側面開口部113と鉛直に整列している側壁112に対向して局所的に位置する、対流を反転させることが可能にする。このような対流の反転は、電気ガラス炉100を鉛直断面で表した
図2において非限定的な例として表される。
図2において、対流は、浴120の溶融材料の速度場(タンク110内に含まれる矢印)によって表され、そこに対流の反転が明確に観察される(
図2において点線で囲まれているゾーン123)。したがって、上記反転は、有利には、プレート170の近くでタンク110内に導入される原材料を浴120の中心に戻すことを可能にし、このようにして、それらが、排出チャネル160を通って急速に引き張られ過ぎるのを防ぐ。
【0098】
本発明は、遅延手段が上記単一のプレート170を有する実施形態のみを考慮して、今まで説明されてきた。しかしながら、さらに他の実施形態を想定することもありうる。
【0099】
したがって、
図3は、その環境において、遅延手段が実質的に鉛直に、より特には浴120中に鉛直に浸漬されて(「沈んで」)、配置される電極180を有する、本発明による電気ガラス炉100の別の特定の実施形態を概略的に表している。上記沈み電極180は、プレートとは異なる様式で形成され(したがって、プレート170とはいっそう異なる)、かつ浴120内に部分的に浸漬されるが、それが完全に浸漬されることを想定することは妨げられない。
【0100】
作動させるために、この沈み電極180は、本実施形態では、浴の中央に配置されかつ原材料130の溶融を実行するために用いられる、電極150の1つに対応する別の電極に接続される。
【0101】
さらに、ここでは、上記電極150に加えてガラス炉110が備える、沈み電極180は、(実質的に)鉛直に配置されていると考えられるが、これが、側壁112から見て、(実質的に)水平であると考えることも十分にありうる。
【0102】
図3に示すように、電極180は、側面開口部113と鉛直方向に整列してかつタンク110の側壁112の近傍に配置されている点で、電極150とは異なる。換言すれば、本実施形態において、上記遅延手段を形成する電極180は、原材料130を溶融するために従来用いられている電極150よりも、側壁112にかなり近い位置に配置されている。
【0103】
このような電極180を用いることは、加熱鉛直プレートが用いられる場合について前述したのと同様の技術的効果を生み出す。したがって、電極180は、対流であって、浴120内に生じ、かつ側面開口部113と鉛直に整列している側壁112に対向して局所的に位置する、対流を反転させることを可能にし、それによって、上記電極180の近傍でタンク110内に導入される原材料を浴120の中心に向かって戻す。この結果、このようにして導入される、原材料のタンク110内での滞留時間が長くなる。
【0104】
図3の態様は、単一の電極180を考慮して説明されているが、この電極の数は本発明を限定するものではないことに留意されたい。したがって、例えば、上記沈み電極180が同種の別の電極に接続されることを考慮することは妨げられず、この場合、上記電気ガラス炉100は、電極150に加えて、
図1に示すものと同種の2つの沈み電極を有する。
【0105】
電極180の長さは、本発明の限定的な要因を表すものではない。したがって、特定の実施形態によれば、電極180は、タンク110の所定の深さまで、例えば、それが側面開口部113と対向する末端部を有するまで、浴120内に沈むように構成される。
【0106】
これまでは、
図3の実施形態を参照して、遅延手段は上記電極180のみを有し、プレート170はその部分について存在しないとこれまで考えられてきたことに留意されたい。これらの配置は、2つの見解を引き出す:
(1)プレート170を、上述のように加熱される場合、浴の中央に配置されかつ原材料130の溶融を実行するのに用いられる電極150の、別個の電極として見てよい。換言すれば、この態様では、加熱プレート170は、
図3を参照して説明した電極180と同様に、そのような電極として形成される;
(2)非伝導性耐火性材料でできている又はできていないプレート170が、上記遅延手段を形成するために電極180と組み合わされる、さらなる実施形態を考慮することは妨げられない。例えば、上記電極180は、上記プレート170を通過することによって、実質的に水平に配置されうる。
【0107】
最後に、上記遅延手段に想定される実施形態とは無関係に、本発明はまた、側面開口部113が側壁112の材料でできているキャビティ(空洞)であることを考慮して、これまで説明されてきた。しかしながら、他の代替を想定してよく、例えば、側面開口部113が、ダム190、例えば鉛直に取り外し可能なダムなどによって(結果的に)形成されるような代替例などを想定してよい。従来、ダム190の幅は、側面開口部113の幅に適合し、ダム190は、上記側面開口部113を越えて延在しないことが理解される。さらに、ダム190は上記開口部113と一直線上に配置される。
【0108】
図4及び
図5は、遅延手段がそれぞれプレート170(
図1に類似)及び電極180(
図3に類似)を有する場合において、このようなダム190が実施される、実施形態を概略的に示す。
【0109】
上記ダム190は、例えば、耐火性材料でできており、かつ/又は、その中での冷却液体の循環を可能にする容器(「ウォータージャケット」)を有する。
【0110】
ダム190は、タンク110の側壁112の一部であると見なしうる。
【0111】
このようなダム190の作製については、ここでは詳しく説明しないが、この目的のために、国際公開第2013/098504号が有利には参照される。
【0112】
本発明はまた、本発明による電気ガラス炉100を用いて実施される原材料130の溶融方法に関する。上記溶融方法(図示せず)は、タンク110内に原材料130を導入する工程、及びこのようにして導入される原材料130を溶融する工程を含む。上記溶融方法は、より特定の実施形態において、原材料130の溶融から得られた溶融材料を、側面開口部113を通して、排出する工程をさらに含みうる。
【0113】
最後に、本発明は、本発明による溶融方法にしたがって原材料130を溶融する工程を含む、ガラスの製造方法(図示せず)も対象とする。上記製造方法はまた、ガラスの最終成形の工程を含み、これは、より特定の実施例によれば、タンク110から側面開口部113を通って排出チャネル160を介して流出する溶融材料からの、精製及び/又は均質化及び/又は熱調整の工程によって先行されうる。
【0114】
そして、電気ガラス炉100の実施形態の特定の例について、遅延手段に近接して導入される原材料130のタンク110内の滞留時間を増加させるという観点から得られる結果を説明する。
【0115】
より詳細には、この特定の実施形態では、長方形の側面開口部113を有する平行六面体形状の電気ガラス炉100が考えられ、上記炉100は、遮断ガラスの生成を意図されている。遅延手段は、ここでは、厚さが150mmに等しく、幅(横断方向Tで測定)が側面開口部113の幅を20%増加させたものに等しく、長さ(横断方向Hでカウント)が側面開口部113の幅のうち70%に等しい、プレート170である。さらに、プレート170は、横断方向Tに沿って、側面開口部113の両側に対称的に延在している。最後に、上記プレート170は、アルミナ-ジルコニア-シリカタイプの電気融合材料でできている層を有する。
【0116】
この例示的な実施形態について得られた結果は、
図6によって示される表に記載されている。これらは、時間単位で表した比較結果であり、プレート170が用いられる場合(表中の参照「B」)又は用いられない場合(表中の参照「A」)について、評価することを可能にする:
- タンク110内での最小滞留時間T_MINの差、
- タンク110内で最も短時間滞留した1%のガラスの平均滞留時間の差T_MOY_1、
- タンク110内で最も短時間滞留した5%のガラスの平均滞留時間の差T_MOY_5、
- タンク110内で最も短時間滞留した10%のガラスの平均滞留時間の差T_MOY_10。
【0117】
これらの結果から、電気ガラス炉100が上記プレート170を備える場合、滞留時間がT_MIN、T_MOY_1、T_MOY_5、及びT_MOY_10についてそれぞれ90%、55%、38%、及び27%増加するので、プレート170を用いることが根本的な技術的問題に関して特に有利であることが分かる。
【国際調査報告】