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特表2025-502537知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/20 20200101AFI20250117BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20250117BHJP
   A61K 8/66 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20250117BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K6/20
A61K6/60
A61K8/66
A61K8/44
A61Q11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544787
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 CN2022143803
(87)【国際公開番号】W WO2023142882
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210109256.0
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524279076
【氏名又は名称】陜西師範大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楊鵬
(72)【発明者】
【氏名】胡博文
【テーマコード(参考)】
4C083
4C089
【Fターム(参考)】
4C083AB311
4C083AB312
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC541
4C083AC542
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC861
4C083AC862
4C083AD411
4C083AD471
4C083AD472
4C083BB44
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE32
4C083EE38
4C089AA20
4C089BA08
4C089BC09
4C089BE17
4C089CA03
(57)【要約】
本願は、重量部基準で、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質5~72部、水溶性ジスルフィド交換剤4~67部、pH調整剤1~21部を原料として含む、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用を開示する。本願は、非毒性のジスルフィド交換剤(例えば、システイン(Cys))を使用し、それを膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質と反応させることを初めて提案し、これによって石灰化調節機能を有するタンパク質ナノ被覆層を形成させる時に、象牙質の小穴を塞ぐ大量の高分子量のタンパク質凝集体は生じず、透過性はより良く、すでに露出している象牙質の小穴の内部により深く浸透することができ、深さは200~500μmに至り(TCEPと反応するタンパク質被覆層の封鎖する深さは約40μmだけである)、且つ小窩裂溝の窪みに至る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部基準で、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質5~72部、水溶性ジスルフィド交換剤4~67部、pH調整剤1~21部を原料として含むことを特徴とする、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料。
【請求項2】
重量部基準で、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質30~70部、水溶性ジスルフィド交換剤20~67部、pH調整剤4~21部を、任意に、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質30~50部、水溶性ジスルフィド交換剤10~50部、pH調整剤6~20部を原料として含むことを特徴とする、請求項1に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料。
【請求項3】
前記水溶性ジスルフィド交換剤が、メルカプト基を有しタンパク質とのチオールとジスルフィドの交換反応ができる物質であり、任意に、システイン、グルタチオンのうちのいずれか1つ又は複数であることを特徴とする、請求項1に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料。
【請求項4】
前記膜形成タンパク質としては、リゾチーム、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ホエイ由来アルブミン、インスリン、α-ラクトアルブミン、フィブリノゲン、β-ラクトグロブリン、リボヌクレアーゼA、シトクロムc、α-アミラーゼ、ペプシン、ミオグロビン、アルブミン、コラーゲン、ケラチン、大豆タンパク、ヘモグロビン、DNAポリメラーゼ、カゼイン、ラクトフェリン、トリプシン、キモトリプシン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブリノゲン、ヤギ血清、ウシ胎児血清、マウス血清、免疫グロブリン、乳タンパク質、オボアルブミン、コンカナバリン、魚皮由来コラーゲン、スーパーオキシドジスムターゼ、パンクレリパーゼ、ラッカーゼ、ヒストン、コラゲナーゼ、セルラーゼ、グルテン、ムチン、トランスグルタミナーゼ、β-ガラクトシダーゼのうちのいずれか1つ又は複数が用いられ、
前記ペグ化膜形成タンパク質が、ペグ化リゾチーム、ペグ化ウシ血清アルブミン、ペグ化ヒト血清アルブミン、ペグ化ホエイ由来アルブミン、ペグ化インスリン、ペグ化α-ラクトアルブミン、ペグ化フィブリノゲン、ペグ化β-ラクトグロブリン、ペグ化リボヌクレアーゼA、ペグ化シトクロムc、ペグ化α-アミラーゼ、ペグ化ペプシン、ペグ化ミオグロビン、ペグ化アルブミン、ペグ化コラーゲン、ペグ化ケラチン、ペグ化大豆タンパク、ペグ化ヘモグロビン、ペグ化DNAポリメラーゼ、ペグ化カゼイン、ペグ化ラクトフェリン、ペグ化トリプシン、ペグ化キモトリプシン、ペグ化サイログロブリン、ペグ化トランスフェリン、ペグ化フィブリノゲン、ペグ化ヤギ血清、ペグ化ウシ胎児血清、ペグ化マウス血清、ペグ化免疫グロブリン、ペグ化乳タンパク質、ペグ化オボアルブミン、ペグ化コンカナバリン、ペグ化魚皮由来コラーゲン、ペグ化スーパーオキシドジスムターゼ、ペグ化パンクレリパーゼ、ペグ化ラッカーゼ、ペグ化ヒストン、ペグ化コラゲナーゼ、ペグ化セルラーゼ、ペグ化グルテン、ペグ化ムチン、ペグ化トランスグルタミナーゼ、ペグ化β-ガラクトシダーゼのうちのいずれか1つ又は複数を含み、
任意に、前記ペグ化膜形成タンパク質に用いられるポリエチレングリコールの数平均分子量は200~20000であり、任意に、リゾチーム-PEG6000、リゾチーム-PEG4000、リゾチーム-PEG2000であり、好ましくは、リゾチーム-PEG2000であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料。
【請求項5】
前記pH調整剤が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウムからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムから1つ又は2つ選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含み、任意に、石灰化材料を希釈するための緩衝液及び添加剤をさらに含むことを特徴とする、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための洗口液。
【請求項7】
洗口液は、石灰化材料、HEPES緩衝液、添加剤を質量:体積:質量比5~25mg:10~200mL:5~15mgで均一に混合して得られ、
任意に、洗口液では、石灰化材料の濃度は0.2mg/mLより大きく、任意に、石灰化材料の濃度は0.25mg/mLより大きく、任意に、石灰化材料の濃度は0.3mg/mLより大きく、任意に、石灰化材料の濃度は0.5mg/mLより大きく、任意に、洗口液では、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質の濃度は0.2mg/mL以上であり、
任意に、前記HEPES緩衝液の濃度範囲は、5~20mMであり、任意に、10mMであり、前記添加剤が、エタノール、クエン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、1,2-オクタンジオール及びソルボースからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、洗口液のpHは7~7.5であることを特徴とする、請求項6に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための洗口液。
【請求項8】
エナメル質のエピタキシャル成長を促進するための歯用減感剤であって、
HEPES緩衝液、請求項1~5のいずれか一項に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含み、
任意に、前記石灰化材料はHEPES緩衝液によって0.1~320mg/mLの歯用減感剤溶液として調製され、任意に、濃度は0.2~320mg/mLであり、任意に、濃度は0.3~320mg/mLであり、任意に、濃度は0.5~320mg/mLであり、任意に、濃度は1~320mg/mLであり、任意に、歯用減感剤では、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質の濃度は0.2mg/mL以上であり、
任意に、HEPES緩衝液の濃度は5~20mMであり、任意に、10mMであり、任意に、歯用減感剤溶液のpHは7~7.5であり、任意に、歯用減感剤の使用方法は、歯用減感剤を綿棒に付けて象牙質に均一に塗布し又は容器を利用して象牙質を歯用減感剤溶液に1~5分間浸漬させることを含むことを特徴とする、歯用減感剤。
【請求項9】
知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための歯磨剤であって、歯磨剤添加物、請求項1~5のいずれか一項に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含み、任意に、石灰化材料と歯磨剤添加物との質量比は1:2~5であり、任意に、前記歯磨剤添加物は研磨剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、色素、香料からいずれか1つ又は複数選ばれることを特徴とする、歯磨剤。
【請求項10】
知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための小窩裂溝封鎖材であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含み、小窩裂溝封鎖材は、前記石灰化材料とHEPES緩衝液を質量比1:0.1~5で均一に混合して得られ、任意に、HEPES緩衝液の濃度は、5~20mMであり、任意に、10mMであり、任意に、小窩裂溝封鎖材溶液のpHは7~7.5であることを特徴とする、小窩裂溝封鎖材。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202210109256.0で、出願日が2021年1月28日で、出願名称が「知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願は全体として参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、生体材料の技術分野に関し、特に、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
統計によると、15.2~57.4%の成人に知覚過敏に悩まされる経験があり、小児における齲蝕の発生率は66.9~88.1%に達しているが、2020年の小児における小窩裂溝封鎖のサービスの実施率は22%だけにとどまる。口腔と歯の健康はますます重要視されるようになる。
【0004】
エナメル質は、歯の最も硬い外表面で、歯の健康を守る第一の防御線である。その主成分はヒドロキシアパタイトで、健康な口腔環境の中で脱灰しにくいが、様々な細菌が食物残渣などによって長時間包み込まれる場合に、乳酸などが生成され、最外層のエナメル質に不可逆的な脱灰が起こり、さらに齲蝕が生じ小窩裂溝齲蝕と知覚過敏が起きる。小窩裂溝は歯の咬合面の窪みに位置し、様々な形態のものがあるが、そのうちI型、IK型、逆Y型が50%以上を占めている。その特殊な形態により洗浄が徹底しにくいため、プラークバイオフィルムと齲蝕原性基質が停滞する部位になり、最終的に小窩裂溝齲蝕が生じる。知覚過敏は、主に、エナメル質の欠損で象牙質が露出し、さらに象牙質上の小穴が露出することを言い、熱いものや冷たいもの、酸っぱいものや辛いもの、圧力などのような外部刺激は小穴を介して歯髄を刺激することによるものである。小穴に対する封鎖は、知覚過敏を軽減又は治癒する主な手段であり、さらにエナメル質を修復すれば象牙質の露出を食い止めることができ、知覚過敏と齲蝕に対する治療効果を得る。
【0005】
唾液の中に再石灰化に必要な過飽和のカルシウムイオンとリンイオンが含まれており、一般的なサプリメントはフッ化物などを利用して、再石灰化プロセスを強化することで知覚過敏を治療し齲蝕を修復する。しかしながら、当該方法は、効果が長く持続せず、しかも再石灰化層が不安定で脱落しやすいため、知覚過敏が非常に再発しやすく、エナメル質の再石灰化の効果も明らかではない。
【0006】
また、現在既に提案されているPTL/C-AMG又はLyso-PEGなどの石灰化材料は、一般的に、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)という生物学的安全性の問題があるジスルフィド還元剤が反応に参加する必要がある。TCEPは、使用者の口腔組織に良くない刺激を与え、人体に有害であるため、その使用は専門業者による科学研究に限られ、臨床診断又は治療に用いることができず、ましてや食品、医薬品はなおさらである。また、リゾチーム又はペグ化リゾチームはTCEPと反応すると高分子量のタンパク質凝集体が生じるため、透過性は低下する。上記石灰化被覆層にオーダーメイドされた高価なアメロゲニンペプチド(C-AMG)も必要とされるため、コストが非常に高い。すでに報告されているトリエチルアミン固定ACP再石灰化系のほうも、匂いが強く毒性のあるトリエチルアミンが入っているため、臨床上の使用が限られている。
【0007】
現在、小窩裂溝封鎖材はポリマー樹脂系の小窩裂溝封鎖材が主であり、しかし、その構造はエナメル質自体と大きく異なり、辺縁が密着せず脱落率が高いことが従来の小窩裂溝封鎖材の主な欠点とされる。したがって、深く封鎖させてエナメル質のエピタキシャル成長を経て再石灰化HApを生成させるのは、現在最も好ましい小窩裂溝封鎖方法である。如何に石灰化材料を小穴又は小窩裂溝の内部に深く浸透させるか、それに、再石灰化HAp層を生成させるかが、現在臨床上解決すべき2つの主な技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、上記の欠点を解消するためになされるもので、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用を提供することを目的とする。
【0009】
本願は、非毒性のジスルフィド交換剤(例えば、システイン(Cys))を使用し、それを膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質と反応させることを初めて提案し、これによって石灰化調節機能を有するタンパク質ナノ被覆層を形成させる時に、象牙質の小穴を塞ぐ大量の高分子量のタンパク質凝集体は生じず、透過性はより良く、すでに露出している象牙質の小穴の内部により深く浸透することができ、深さは約200μmに至り(TCEPと反応するタンパク質被覆層の封鎖する深さは約40μmだけである)、且つ小窩裂溝の窪みに至る。当該石灰化を調節可能なタンパク質被覆層は、静電引力、疎水性相互作用、ファンデルワールス力などの作用で、唾液中の過飽和のカルシウムイオンとリンイオンを引き付けることで再石灰化プロセスを調節して、再生HAp層を生成させて、小穴を塞ぎ、エナメル質を修復することにより齲蝕と小窩裂溝齲蝕を治療することができる。本願で提案されている再石灰化を調節するタンパク質被覆層は、タンパク質の特殊処理も必要としなければ、高価なアメロゲニンペプチドをオーダーメイドする必要もなく、当該タンパク質被覆層は無色かつ透明で、調製しやすく、価格が安く、非毒性であり、優れた生体適合性を持っている。再石灰化HAp層は、構造が緻密で、安定性が高く、石灰化する深さが200μmの象牙質の小穴の内部と小窩裂溝の窪みに至る。本願の石灰化材料は、長期にわたり知覚過敏、齲蝕を効果的に治療することができ、小窩裂溝封鎖に利用できるため、臨床上の使用において大きな意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願が上記の目的を達成するために採用する技術的解決手段は、次のとおりである。
本願は、第1の態様として、重量部基準で、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質5~72部、水溶性ジスルフィド交換剤4~67部、pH調整剤1~21部を原料として含む、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を提供する。
【0011】
さらに、重量部基準で、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質30~70部、水溶性ジスルフィド交換剤20~67部、pH調整剤4~21部を、任意に、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質30~50部、水溶性ジスルフィド交換剤10~50部、pH調整剤6~20部を原料として含む。
【0012】
さらに、前記水溶性ジスルフィド交換剤は、メルカプト基を有しタンパク質とのチオールとジスルフィドの交換反応ができる物質であり、任意に、システイン、グルタチオンのうちのいずれか1つ又は複数である。
【0013】
さらに、前記膜形成タンパク質としては、リゾチーム、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ホエイ由来アルブミン、インスリン、α-ラクトアルブミン、フィブリノゲン、β-ラクトグロブリン、リボヌクレアーゼA、シトクロムc、α-アミラーゼ、ペプシン、ミオグロビン、アルブミン、コラーゲン、ケラチン、大豆タンパク、ヘモグロビン、DNAポリメラーゼ、カゼイン、ラクトフェリン、トリプシン、キモトリプシン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブリノゲン、ヤギ血清、ウシ胎児血清、マウス血清、免疫グロブリン、乳タンパク質、オボアルブミン、コンカナバリン、魚皮由来コラーゲン、スーパーオキシドジスムターゼ、パンクレリパーゼ、ラッカーゼ、ヒストン、コラゲナーゼ、セルラーゼ、グルテン、ムチン、トランスグルタミナーゼ、β-ガラクトシダーゼのうちのいずれか1つ又は複数が用いられる。
前記ペグ化膜形成タンパク質は、ペグ化リゾチーム、ペグ化ウシ血清アルブミン、ペグ化ヒト血清アルブミン、ペグ化ホエイ由来アルブミン、ペグ化インスリン、ペグ化α-ラクトアルブミン、ペグ化フィブリノゲン、ペグ化β-ラクトグロブリン、ペグ化リボヌクレアーゼA、ペグ化シトクロムc、ペグ化α-アミラーゼ、ペグ化ペプシン、ペグ化ミオグロビン、ペグ化アルブミン、ペグ化コラーゲン、ペグ化ケラチン、ペグ化大豆タンパク、ペグ化ヘモグロビン、ペグ化DNAポリメラーゼ、ペグ化カゼイン、ペグ化ラクトフェリン、ペグ化トリプシン、ペグ化キモトリプシン、ペグ化サイログロブリン、ペグ化トランスフェリン、ペグ化フィブリノゲン、ペグ化ヤギ血清、ペグ化ウシ胎児血清、ペグ化マウス血清、ペグ化免疫グロブリン、ペグ化乳タンパク質、ペグ化オボアルブミン、ペグ化コンカナバリン、ペグ化魚皮由来コラーゲン、ペグ化スーパーオキシドジスムターゼ、ペグ化パンクレリパーゼ、ペグ化ラッカーゼ、ペグ化ヒストン、ペグ化コラゲナーゼ、ペグ化セルラーゼ、ペグ化グルテン、ペグ化ムチン、ペグ化トランスグルタミナーゼ、ペグ化β-ガラクトシダーゼのうちのいずれか1つ又は複数を含む。
任意に、前記ペグ化膜形成タンパク質に用いられるポリエチレングリコールの数平均分子量は200~20000であり、任意に、リゾチーム-PEG6000、リゾチーム-PEG4000、リゾチーム-PEG2000であり、好ましくは、リゾチーム-PEG2000である。
【0014】
さらに、前記pH調整剤は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウムからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムから1つ又は2つ選ばれる。
【0015】
第2の態様として、前記の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含み、任意に、石灰化材料を希釈するための緩衝液及び添加剤をさらに含む、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための洗口液を提供する。
【0016】
さらに、洗口液は、石灰化材料、HEPES緩衝液、添加剤を質量:体積:質量比5~25mg:10~200mL:5~15mgで均一に混合して得られる。
任意に、洗口液では、石灰化材料の濃度は0.2mg/mLより大きく、任意に、石灰化材料の濃度は0.25mg/mLより大きく、任意に、石灰化材料の濃度は0.3mg/mLより大きく、任意に、石灰化材料の濃度は0.5mg/mLより大きく、任意に、洗口液では、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質の濃度は0.2mg/mL以上である。
任意に、前記HEPES緩衝液の濃度範囲は、5~20mMであり、任意に、10mMであり、前記添加剤はエタノール、クエン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、1,2-オクタンジオール及びソルボースからいずれか1つ又は複数選ばれ、任意に、洗口液のpHは7~7.5である。
【0017】
第3の態様として、HEPES緩衝液、前記の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含む、エナメル質のエピタキシャル成長を促進するための歯用減感剤を提供する。
任意に、前記石灰化材料はHEPES緩衝液によって0.1~320mg/mLの歯用減感剤溶液として調製され、任意に、濃度は0.2~320mg/mLであり、任意に、濃度は0.3~320mg/mLであり、任意に、濃度は0.5~320mg/mLであり、任意に、濃度は1~320mg/mLであり、任意に、歯用減感剤では、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質の濃度は0.2mg/mL以上である。
任意に、HEPES緩衝液の濃度は5~20mMであり、任意に、10mMであり、任意に、歯用減感剤溶液のpHは7~7.5であり、任意に、歯用減感剤の使用方法は、歯用減感剤を綿棒に付けて象牙質に均一に塗布し又は容器を利用して象牙質を歯用減感剤溶液に1~5分間浸漬させることを含む。
【0018】
第4の態様として、歯磨剤添加物、前記の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含む、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための歯磨剤を提供し、任意に、石灰化材料と歯磨剤添加物との質量比は1:2~5であり、任意に、前記歯磨剤添加物は研磨剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、色素、香料からいずれか1つ又は複数選ばれる。
【0019】
第5の態様として、前記の知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を含む、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための小窩裂溝封鎖材を提供し、小窩裂溝封鎖材は、前記石灰化材料とHEPES緩衝液を質量比1:0.1~5で均一に混合して得られ、任意に、HEPES緩衝液の濃度は、5~20mMであり、任意に、10mMであり、任意に、小窩裂溝封鎖材溶液のpHは7~7.5である。
【発明の効果】
【0020】
(1)本願は、非毒性のジスルフィド交換剤(例えば、システイン(Cys))を使用し、それを膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質と反応させて、石灰化調節機能を有するタンパク質ナノ被覆層を形成させる。当該タンパク質ナノ被覆層が石灰化プロセスを調節する過程で大量の高分子量のタンパク質凝集体は生じないため、象牙質の小穴が塞がることが避けられ、透過性はより良く、すでに露出している象牙質の小穴の内部に入ることができ、深さは約200μmに至り、しかも、静電引力、疎水性相互作用、ファンデルワールス力などの作用で、唾液中の過飽和のカルシウムイオンとリンイオンを引き付けることで再石灰化プロセスを調節して、さほど時間がかからなくても、一定の配向性があって安定性の高いHAp層を形成させることができる。
【0021】
(2)本願の石灰化材料は、タンパク質被覆層を形成するプロセスでタンパク質の特殊処理も必要としなければ、高価なアメロゲニンペプチドをオーダーメイドする必要もない。本願で提案されている再石灰化を調節するタンパク質被覆層は無色かつ透明で、調製しやすく、価格が安く、非毒性であり、優れた生体適合性を持っている。再石灰化HAp層は、構造が緻密で、安定性が高く、石灰化する深さが200μmの象牙質の小穴の内部と小窩裂溝の窪みに至る。
【0022】
(3)本願の膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質とシステインは口腔内で相転移し、歯の上(固液界面)に二次元のナノオーダーのタンパク質フィルムを形成させる。当該フィルムは表面に大量の官能基を備えるため、唾液中の過飽和のカルシウムイオンとリン酸イオンを静電引力、疎水性相互作用、ファンデルワールス力などの作用でフィルムの表面に吸着させて、核生成サイトを形成することができる。口腔中の唾液の中で象牙質の小穴の内部と欠損しているエナメル質の表面を再石灰化させて、再石灰化被覆層を生成させることにより、小穴を深く封鎖して知覚過敏の治療、エナメル質の修復、齲蝕の予防と小窩裂溝封鎖という目的を達成する。石灰化時間の増加につれて小穴に対する封鎖の深さは約500μmにも至り、エナメル質の再石灰化の厚さも石灰化時間につれて直線的に増加する(図5参照)。表面の再石灰化で生じるヒドロキシアパタイトは一定の配向性を有し、その性能は天然のエナメル質にも引けを取らない。
【0023】
(4)本願の石灰化材料は、歯用減感剤、洗口液、多目的歯磨剤、小窩裂溝封鎖材などを製造することができるものである。本願の歯用減感剤、洗口液、多目的歯磨剤、小窩裂溝封鎖材は、膜形成タンパク質分子又はペグ化膜形成タンパク質分子と水溶性ジスルフィド交換剤の相転移反応を利用して象牙質の小穴の内部、欠損しているエナメル質の表面及び小窩裂溝の内部において界面での誘導された自己組織化により厚さが約20~45nmの再石灰化を調節可能なタンパク質ナノフィルムを形成させ、当該フィルムは、無色かつ透明で、良い密着性を有し、しかもエナメル質の表面に再石灰化により新しくできるヒドロキシアパタイトを補強させる機能を有する。
【0024】
(5)本願は、使用する主成分がタンパク質で、小穴を効果的に封鎖して知覚過敏を治療しエナメル質を効果的に修復し、エナメル質の酸蝕脱灰を防止し、齲蝕と小窩裂溝齲蝕の発生を予防することができる。本願は、象牙質の小穴に対する封鎖の深さ、エナメル質の表面と小窩裂溝の内部における再石灰化の効果と封鎖の効果に目を向けている。知覚過敏は象牙質が小穴から露出して歯の神経を刺激することで起きるため、齲蝕と小窩裂溝齲蝕は最初にエナメル質の表面の脱灰として認識される。したがって、象牙質の小穴の内部に対して深く封鎖しエナメル質の表面に対してエピタキシャル成長により再石灰化することは、歯に永久的な構造損傷が現れる前に齲蝕を食い止め、修復することができ、あるいは、永久的な構造損傷が現れた後は象牙質の小穴を深く封鎖して知覚過敏を治療でき、エナメル質の再石灰化により、エナメル質の欠損を修復し、さらに齲蝕又は小窩裂溝齲蝕の進行を予防することができる。当該歯用減感剤、洗口液、多目的歯磨剤又は小窩裂溝封鎖材を一定の期間使用した後、脱灰しているエナメル質の表面と小穴の内部に再石灰化が起こり、又は正常な歯に石灰化させて齲蝕の発生を予防し象牙質の過敏を抑える。歯用減感剤、洗口液、多目的歯磨剤又は小窩裂溝封鎖材の歯に対する接触時間は約20秒~約2分とする必要があり、使用している間に、小穴の内部、エナメル質の表面と小窩裂溝の窪みに再石灰化を調節可能なタンパク質二次元のナノフィルムを形成させ、その後に小穴の内部、エナメル質の表面と小窩裂溝の窪みで、口腔中の唾液の中で再石灰化が起きてHAp層を形成することができる。
【0025】
(6)本願の石灰化材料で製造された歯用減感剤、洗口液、多目的歯磨剤又は小窩裂溝封鎖材は、タンパク質を主成分としており、水溶性ジスルフィド交換剤も非毒性のタンパク質であるため、FDAの安全物質に対する定義に適合しており、クラスII医療機器に用いる場合に、人体に害を及ぼさず、優れた生体適合性を有している。また、本願の石灰化材料で歯の減感及びエナメル質の脱灰防止用の他の製品を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
1つ又は複数の実施例をそれらに対応する図面に示す画像で例示的に説明し、これらの例示的な説明は実施例に対する限定を構成するものではない。本明細書で使用される言葉「例示的」は「例、実施例として又は説明目的」という意味になる。本明細書で「例示的に」説明されるいずれの実施例も、必ずしも他の実施例より良い又は優れるものと解釈するとは限らない。
図1】本願の試験例1の洗口液、試験例2の歯用減感剤がそれぞれ、エナメル質の表面、象牙質の小穴の内部で形成させたナノフィルム及び深い膜形成を示す図である。ここで、aは実施例1に対応する洗口液でうがいした後、エナメル質の表面で形成している生体タンパク質による二次元のナノフィルムの原子間力を示す図であり、bは実施例1に対応する歯用減感剤が象牙質の小穴内で深い膜形成を誘導することの共焦点レーザー顕微鏡による三次元イメージングを示す図である。
図2】本願の試験例3のリゾチーム(Lyz)濃度とシステイン(Cys)濃度の二元因子影響下での膜形成の境界線である。
図3】本願の試験例1の洗口液体外試験でエナメル質の表面に新しくできる再石灰化被覆層をテストする走査型電子顕微鏡画像である。ここで、aは酸蝕エナメル質の表面であり、bはエナメル質の断面であり、cはブランクのエナメル質に対するエネルギースペクトル解析であり、dは実施例1に対応する洗口液を使用し、改良した人工唾液の中で石灰化を2週間誘導した後のエナメル質の表面を示す図であり、eは実施例1に対応する洗口液を使用し、改良した人工唾液の中で石灰化を2週間誘導した後のエナメル質の断面を示す図であり、fは実施例1に対応する洗口液を使用し、改良した人工唾液の中で石灰化を2週間誘導した後のエナメル質の表面に対するエネルギースペクトル解析を示す図であり、gは実施例1に対応する洗口液を使用し、実際の口腔中の唾液の中で石灰化を3日間誘導したエナメル質の表面を示す図であり、hは実施例1に対応する洗口液を使用し、実際の口腔中の唾液の中で石灰化を3日間誘導したエナメル質の断面を示す図であり、iは実施例1に対応する洗口液を使用し、実際の口腔中の唾液の中で石灰化を3日間誘導したエナメル質の表面に対するエネルギースペクトル解析を示す図である。
図4】ブランクの象牙質切片と、実施例1に対応する歯用減感剤が塗布された象牙質切片の走査型電子顕微鏡画像である。ここで、aはブランクの象牙質の表面であり、bは実施例1に対応する歯用減感剤が塗布された象牙質の表面であり、cはブランクの象牙質の断面であり、dは歯用減感剤が塗布されていない7日間の生体石灰化後の象牙質の断面であり、eは実施例1に対応する歯用減感剤が塗布された7日間の生体石灰化後の象牙質の断面であり(最大深さは約200μmに至る)、fは実施例1に対応する歯用減感剤が塗布された後の再石灰化結晶に対するエネルギースペクトル解析である。
図5】比較例1及び実施例1に対応する洗口液を使用したエナメル質の走査型電子顕微鏡画像及び石灰化厚さの石灰化時間に伴う変化である。ここで、aは比較例1の洗口液を2週間使用した後のエナメル質の表面を示す図であり、bは比較例1の洗口液を2週間使用した後のエナメル質の再石灰化断面を示す図であり、cは本願の実施例1に対応する洗口液を2週間使用した後のエナメル質の表面を示す図であり、dは本願の実施例1に対応する洗口液を2週間使用した後のエナメル質の再石灰化断面を示す図であり、eは本願の実施例1に対応する洗口液を使用した場合の、石灰化時間に伴う石灰化物の厚さの変化である。
図6】比較例2及び実施例1に対応する歯用減感剤を使用した象牙質の走査型電子顕微鏡画像である。ここで、aは比較例2で得た減感剤を3週間使用した後の象牙質の表面を示す図であり、bは比較例2で得た減感剤を3週間使用した後の象牙質の再石灰化断面であり、cは本願の実施例1に対応する歯用減感剤を3週間使用した後の象牙質の表面を示す図であり、dは本願の実施例1に対応する歯用減感剤を3週間使用した後の象牙質の再石灰化断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点が一層明瞭になるよう、本願の実施例に係る技術的解決手段を明瞭に、完全に記述する。言うまでもないが、記述される実施例は本願のいくつかの実施例で、全ての実施例ではない。当業者が本願の実施例を踏まえ、進歩性のある作業をすることなく得ている他の実施例は、全て本願の保護範囲に入るものとする。
【0028】
また、本願をより一層説明するために、下記の具体的な実施形態で具体的な内容を多く示している。それらの具体的な内容のいくつかがなくても、本願は同様に実施できることは当業者に理解されている。いくつかの実施例では、本願の趣旨を引き立てるために、当業者に熟知される原料、要素、方法、手段などについて詳しくは記述していない。
【0029】
他に明確な断りがない限り、明細書全体と特許請求の範囲において、用語「含む」又はその変形である「包含」又は「含有」などは、記載されている要素又は構成部分を含み、他の要素又は他の構成部分は排除されないように理解される。
【0030】
(実施例1)
70mgのリゾチーム、65mgのシステイン(Cys)、20mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を得た。
【0031】
(実施例2)
30mgのリゾチーム、46mgのシステイン(Cys)、15.2mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を得た。
【0032】
(実施例3)
40mgのリゾチーム、20.8mgのグルタチオン(GSH)、6.2mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を得た。
【0033】
(実施例4)
52mgのリゾチーム、65mgのグルタチオン(GSH)、18.2mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を得た。
【0034】
(実施例5)
72mgのペグ化リゾチーム、67mgのシステイン(Cys)、20.6mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を得た。
【0035】
(実施例6)
62mgのペグ化リゾチーム、50mgのグルタチオン(GSH)、16.2mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料を得た。
【0036】
(実施例7)
本実施例の洗口液は上記の実施例1~6で得た石灰化材料のそれぞれと、10mM HEPES緩衝液からなり、使用時に6.2mgの石灰化材料を40mLの10mM HEPES緩衝液に入れ、5mgのサッカリンナトリウム及び2mgのソルボースを加え均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための洗口液を得た。
【0037】
(実施例8)
本実施例の洗口液は上記の実施例1~6で得た石灰化材料のそれぞれと、10mM HEPES緩衝液からなり、使用時に20mgの石灰化材料を240mLの10mM HEPES緩衝液に入れ、6mgのサッカリンナトリウム及び4mgのソルボースを加え均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための洗口液を得た。
【0038】
(実施例9)
本実施例の歯用減感剤は上記の実施例1~6で得た石灰化材料のそれぞれと、10mM HEPES緩衝液からなり、使用時に35mgの石灰化材料と120mLの10mM HEPES緩衝液を均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための歯用減感剤を得た。
【0039】
(実施例10)
本実施例の歯用減感剤は上記の実施例1~6で得た石灰化材料のそれぞれと、10mM HEPES緩衝液からなり、使用時に52mgの石灰化材料と152mLの10mM HEPES緩衝液を均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための歯用減感剤を得た。
【0040】
(実施例11)
本実施例の小窩裂溝封鎖材は上記の実施例1~6で得た石灰化材料のそれぞれと、10mM HEPES緩衝液からなり、使用時に42mgの石灰化材料と25mLの10mM HEPES緩衝液を均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための小窩裂溝封鎖材を得た。
【0041】
(実施例12)
本実施例の小窩裂溝封鎖材は上記の実施例1~6で得た石灰化材料のそれぞれと、10mM HEPES緩衝液からなり、使用時に26.2mgの石灰化材料と30.2mLの10mM HEPES緩衝液を均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための小窩裂溝封鎖材を得た。
【0042】
(実施例13)
本実施例の小窩裂溝封鎖材は上記の実施例1~6で得た石灰化材料と、歯磨剤添加物からなり、使用時に12mgの石灰化材料と20mgの歯磨剤添加物を均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための多目的歯磨剤を得た。
【0043】
(実施例14)
本実施例の小窩裂溝封鎖材は上記の実施例1~6で得た石灰化材料と、歯磨剤添加物からなり、使用時に45mgの石灰化材料と100mgの歯磨剤添加物を均一に混合して、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための多目的歯磨剤を得た。
【0044】
上記の実施例でリゾチーム又はペグ化リゾチームは、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ホエイ由来アルブミン、インスリン、α-ラクトアルブミン、フィブリノゲン、β-ラクトグロブリン、リボヌクレアーゼA、シトクロムc、α-アミラーゼ、ペプシン、ミオグロビン、アルブミン、コラーゲン、ケラチン、大豆タンパク、ヘモグロビン、DNAポリメラーゼ、カゼイン、ラクトフェリン、トリプシン、キモトリプシン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブリノゲン、ヤギ血清、ウシ胎児血清、マウス血清、免疫グロブリン、乳タンパク質、オボアルブミン、コンカナバリン、魚皮由来コラーゲン、スーパーオキシドジスムターゼ、パンクレリパーゼ、ラッカーゼ、ヒストン、コラゲナーゼ、セルラーゼ、グルテン、ムチン、トランスグルタミナーゼ、β-ガラクトシダーゼのうちのいずれか1つ若しくは複数に置き換えてもよく、又はペグ化膜形成タンパク質は、ペグ化リゾチーム、ペグ化ウシ血清アルブミン、ペグ化ヒト血清アルブミン、ペグ化ホエイ由来アルブミン、ペグ化インスリン、ペグ化α-ラクトアルブミン、ペグ化フィブリノゲン、ペグ化β-ラクトグロブリン、ペグ化リボヌクレアーゼA、ペグ化シトクロムc、ペグ化α-アミラーゼ、ペグ化ペプシン、ペグ化ミオグロビン、ペグ化アルブミン、ペグ化コラーゲン、ペグ化ケラチン、ペグ化大豆タンパク、ペグ化ヘモグロビン、ペグ化DNAポリメラーゼ、ペグ化カゼイン、ペグ化ラクトフェリン、ペグ化トリプシン、ペグ化キモトリプシン、ペグ化サイログロブリン、ペグ化トランスフェリン、ペグ化フィブリノゲン、ペグ化ヤギ血清、ペグ化ウシ胎児血清、ペグ化マウス血清、ペグ化免疫グロブリン、ペグ化乳タンパク質、ペグ化オボアルブミン、ペグ化コンカナバリン、ペグ化魚皮由来コラーゲン、ペグ化スーパーオキシドジスムターゼ、ペグ化パンクレリパーゼ、ペグ化ラッカーゼ、ペグ化ヒストン、ペグ化コラゲナーゼ、ペグ化セルラーゼ、ペグ化グルテン、ペグ化ムチン、ペグ化トランスグルタミナーゼ、ペグ化β-ガラクトシダーゼのうちのいずれか1つ又は複数を含む。
【0045】
(比較例1)
20mgのリゾチーム、10mgのアメロゲニンペプチド、10mgのリン酸水素二ナトリウム、5.2mgのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、3.5mgのリン酸二水素ナトリウムを均一に混合して、本比較例の石灰化材料を得た。
【0046】
2mgの本比較例の石灰化材料を10mLのHEPES緩衝液に加え、さらに8mgのサッカリンナトリウム及び2mgのソルボースを加え均一に混合して、本比較例のエナメル質脱灰を防ぐ洗口液を得た。本比較例でHEPES緩衝液の濃度は20mMであった。
【0047】
(比較例2)
40mgのペグ化リゾチーム、10mgの塩化カルシウム、10mgのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、60mgの炭酸水素ナトリウムを均一に混合して、本比較例の減感剤を得た。
【0048】
60mgの本比較例の石灰化材料を10mLの脱イオン水に加え均一に混合して、6mg/mLの本比較例の減感剤溶液を得た。
【0049】
発明者は、本願の有益な効果を証明するために、実施例8で得た知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための洗口液の性能試験を行い、試験は具体的に以下のとおりであった。
(試験例1)
齲蝕の起きていないヒト第三大臼歯サンプルを採取し(歯サンプルは空軍軍医大学口腔医院、天津医科大学口腔医院から提供され、当該研究は前記業者の医学研究倫理委員会によって許可された)、洗浄後、SYJ160低速ミクロトーム及び200~6000メッシュのサンドペーパーでエナメル質を処理して6mm×6mm×1.5mmのエナメル質切片にし、研磨されたエナメル質切片を37%(wt%)のリン酸で30秒間酸蝕し、超純水で洗い流して15分間超音波をかけ、窒素吹きつけによる乾燥後、実施例8で得た洗口液に入れて、1分間浸漬することで、うがいする過程をシミュレートした。
【0050】
1分間後にエナメル質の表面に生体タンパク質による二次元のナノフィルムが形成され、ここで、実施例8中のの洗口液(実施例1の石灰化材料を用いて実施例8の方法で製造した洗口液で、以下、実施例1に対応する洗口液という)の試験結果は、図1のaに示すように、厚さが約30~50nmであった。それぞれ、改良した人工唾液及び実際の口腔中の唾液の中での石灰化の状況を確認した。
1)前記タンパク質フィルムによって覆われたエナメル質を改良した人工唾液に浸漬させ、37℃で生体石灰化させ、改良した人工唾液を毎日1回交換した。石灰化する過程で、毎日エナメル質を改良した人工唾液から取り出し、超純水で洗い流して、窒素吹きつけによる乾燥後、実施例8で得た洗口液に1分間浸漬し、その後、改良した人工唾液に移し、当該プロセスを毎日2回繰り返した。2週間後、走査型電子顕微鏡でエナメル質の再石灰化被覆層の平面の形態を観察し、エネルギー分光計で再石灰化被覆層を面走査して、再石灰化被覆層の元素を分析し、ヌープ硬さ試験機を用いてエナメル質に圧痕をつけ、走査型電子顕微鏡でエナメル質の再石灰化被覆層の断面の形態を観察し、ここで、実施例1に対応する洗口液を使用する場合のエネルギー分光計の走査結果を図3のd、fに、ヌープ硬さ試験機による走査結果を図3のeに示している。
【0051】
図3の結果に示すように、生体タンパク質による二次元のナノフィルムは、その場成長の方法によってエナメル質に成長するもので、タンパク質膜が塗布されたエナメル質を改良した人工唾液に入れて生体石灰化をシミュレートしたところ、配向性が良好なヒドロキシアパタイトが生成され、カルシウム/リン比も天然のエナメル質のカルシウム/リン比に一致しており、酸蝕されたエナメル質の表面(図3のa~c)に再石灰化により新しくできたヒドロキシアパタイトは、エナメル質脱灰を防止し、齲蝕を予防する。
【0052】
2)前記タンパク質フィルムが成長しているエナメル質を遠心分離後の実際の口腔中の唾液に浸漬し(ここで、実際の唾液は健康な成人対象から採取され、サンプルは少なくとも食後2時間後に採取され、サンプルの採取は医学研究倫理委員会によって許可された)、膜が成長しているエナメル質を実際の口腔中の唾液の中に浸漬することで生体石灰化をシミュレートした。3日間後、エナメル質の表面の形態を観察し、結果を図3のg~iに示す。図から明らかなように、タンパク質膜が成長しているエナメル質を実際の口腔中の唾液の中に浸漬すると、再石灰化により高度な配向性のある再生ヒドロキシアパタイトが得られたことから、口腔中の唾液環境でもタンパク質膜は石灰化作用を発揮でき、人体の口腔環境で使用できることが証明された。
【0053】
発明者はさらに、前記方法で比較例1の洗口液と実施例1に対応する洗口液による膜形成及び石灰化エナメル質の走査型電子顕微鏡画像を比較し、結果を図5に示す。結果に示すように、実施例1に対応する洗口液を使用する場合、形成された石灰化層は表面が緻密で(図5のc)、エナメル質の再石灰化層の厚さは石灰化時間につれて直線的に増加した(図5のe)のに対し、比較例1の洗口液は、エナメル質の石灰化層の表面が緻密ではなく(図5のa)、比較例1の洗口液によるエナメル質の再石灰化層の厚さ(図5のb、矢印の指す位置)は実施例1に対応する洗口液の石灰化物の深さ(図5のd、矢印の指す位置)をはるかに下回っている。
【0054】
(試験例2)
発明者は、本願の有益な効果を証明するために、さらに、実施例10で得た歯用減感剤の性能試験を行い、試験は具体的に以下のとおりであった。
齲蝕の起きていないヒト第三大臼歯サンプルを採取し(歯サンプルは空軍軍医大学口腔医院、天津医科大学口腔医院から提供され、当該研究は前記業者の医学研究倫理委員会によって許可された)、洗浄後、SYJ160低速ミクロトームを用いて厚さが2mmの象牙質切片を作製し、研磨して5mm×5mm×2mmの象牙質サンプルにし、象牙質サンプルを17%(wt%)のEDTA溶液と2%(wt%)のNaClO溶液で齲蝕したものを試験サンプルとして用いた。
【0055】
前記サンプルを歯用減感剤溶液に浸漬し、37℃で2分間静置した後、取り出した。歯用減感剤は蛍光色素チオフラビンT(ThT)と特異的に結合できるという特徴から、共焦点レーザー顕微鏡による三次元イメージング試験で、当該歯用減感剤は小穴の内部に浸透して膜を形成できることを証明し、ここで、実施例10の中の歯用減感剤(実施例1の石灰化材料を用いて実施例10の方法で製造した歯用減感剤で、以下、実施例1に対応する歯用減感剤という)の試験結果を図1のbに示している。
【0056】
前記歯用減感剤が塗布された象牙質切片を12ウェルプレートに放置し、改良した人工唾液を加えて37℃で培養し、改良した人工唾液を毎日交換し、7日間の再石灰化後、走査型電子顕微鏡で小穴が封鎖された様子を観察した。歯用減感剤が塗布されていないブランク切片を対照試験とし、実施例1に対応する歯用減感剤の試験結果を図4に示す。
【0057】
図4のeから明らかなように、歯用減感剤を用いてタンパク質膜を形成させた象牙質切片の小穴の内部が再石灰化結晶によって封鎖されたが、歯用減感剤が塗布されていないブランク対照群(図4のd)の象牙質切片の小穴の内部に結晶が出現しておらず、象牙質は露出しているままであった。エネルギースペクトル解析(図4のf)により再石灰化結晶はヒドロキシアパタイトHApであることを証明した。本試験例は、本願で提案されている歯用減感剤は小穴の内部に深く入って再石灰化調節機能を有するタンパク質ナノ被覆層を形成でき、しかも改良した人工唾液環境の中で象牙質の再石灰化を誘導して、象牙質の小穴を深く封鎖することで、知覚過敏の症状を治療できることを示した。
【0058】
発明者は、前記方法で再石灰化時間をさらに延長して(3週間)比較例2の歯用減感剤と実施例1に対応する歯用減感剤による石灰化象牙質の走査型電子顕微鏡画像を比較し、結果を図6に示す。結果に示すように、石灰化時間の増加につれて、実施例1に対応する歯用減感剤は小穴に対する封鎖の深さが200~500μmに至る(図6のdの枠の象牙質切片の表面に対する距離が約420μmであった)のに対し、比較例2の歯用減感剤の小穴に対する封鎖の深さは約40μmだけであった(図6のbの白い矢印のところ)。
【0059】
(試験例3)
発明者は、膜形成タンパク質とシステインによる膜形成の境界線を判明するために、異なる濃度の膜形成タンパク質溶液とシステイン溶液を調製し、図2の曲線をプロットした。この図から明らかなように、境界線の左側の下方のLyz、Cys濃度では、再石灰化プロセスを調節可能な完全な二次元のナノフィルムは凝集形成できず、また、この図から分かるように、タンパク質濃度が0.2mg/mL以上であるとき、少量のシステインでも膜形成ができるが、タンパク質濃度が0.2mg/mLより低いときに、膜形成に高い濃度のシステインを必要とする。
【0060】
以上から分かるように、本願で使用される石灰化材料は主にタンパク質などであり、材料は非毒性で、優れた生体適合性を持っており、調製しやすく、使いやすく、体外試験は、再石灰化で生じる結晶は構造が安定的で天然のエナメル質又は象牙質にも引けを取らず、歯の長期的な減感を可能にし、治療効果が優れていることを証明した。本願で用いる知覚過敏を治療しエナメル質の欠損を修復し齲蝕を予防する石灰化材料と、この石灰化材料で製造された歯用減感剤、洗口液、歯磨剤などの製品に、優れる治療用途が見込まれる。
【0061】
本願は、タンパク質リゾチーム(又はペグ化リゾチーム)を使用して、ジスルフィド交換剤(システイン又はグルタチオン)の作用でタンパク質ナノフィルムを形成させ、当該ナノフィルムは、象牙質の再石灰化と、エナメル質のエピタキシャル成長の促進による知覚過敏、齲蝕の治療と小窩裂溝封鎖に用いることができる。本願の石灰化材料は、浸漬、塗布などの簡単な方式で、すでに露出している象牙質の小穴の内部、齲蝕しているエナメル質の表面と小窩裂溝の内部に入って、再石灰化誘導機能を有する一層のタンパク質ナノフィルム被覆層を形成することができ、唾液中の飽和のカルシウムイオンとリンイオンが象牙質の小穴の内部で再石灰化してHAp層を形成するよう誘導することができ、エナメル質の表面におけるHAp再石灰化を促進してエナメル質のエピタキシャル成長を実現でき、これにより知覚過敏の治療、齲蝕の予防と小窩裂溝封鎖の目的を達成する。本願では、象牙質の内部とエナメル質の表面で形成されたタンパク質被覆層は、抗菌性と耐汚染能力も有しており、口腔の清潔と健康を保つ上で重要な役割を果たしている。本願で言及されている石灰化材料がいずれもアメリカ食品医薬品局(FDA)によって認定された安全物質に該当し、より優れた生体適合性を持っているため、臨床上より幅広い使用が見込まれる。
【0062】
最後に付け加えたいが、上記の実施例は本願の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、制限を加えるためのものではない。上記の実施例を参照して本願を詳細に説明してはいるが、依然として上記の各実施例に記載の技術的解決手段を変更し、又はそのいくつかの技術的特徴を同等に差し替えたりすることができ、これらの変更又は差し替えにより、対象となる技術的解決手段の本質は本願の各実施例の技術的解決手段の趣旨と範囲から逸脱していることはない、ということは当業者に理解されている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願は、重量部基準で、膜形成タンパク質又はペグ化膜形成タンパク質5~72部、水溶性ジスルフィド交換剤4~67部、pH調整剤1~21部を原料として含む、知覚過敏を治療しエナメル質のエピタキシャル成長を促進するための石灰化材料及びその使用を提供する。本願の石灰化材料で製造された歯用減感剤、洗口液、多目的歯磨剤又は小窩裂溝封鎖材は、タンパク質を主成分としており、水溶性ジスルフィド交換剤も非毒性のタンパク質であるため、人体に害を及ぼさず、優れた生体適合性を有している。また、本願の石灰化材料で歯の減感及びエナメル質の脱灰防止用の他の製品を製造することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】