(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】フェノチアジン系化合物の結晶形、塩、製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
C07D 279/20 20060101AFI20250117BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20250117BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250117BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07D279/20 CSP
A61K31/5415
A61P3/00
A61P1/16
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P35/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544862
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2023073055
(87)【国際公開番号】W WO2023143350
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210108728.0
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210108746.9
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524280371
【氏名又は名称】チェンドゥ ヘンハオ イノベイティブ サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ハー、ペン
(72)【発明者】
【氏名】ドン、グァンシン
(72)【発明者】
【氏名】リ、イー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】デン、タ
(72)【発明者】
【氏名】イエ、チジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ペイ
(72)【発明者】
【氏名】リ、シャン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ボガン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC89
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
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4C086MA04
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4C086ZA02
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4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC01
4C086ZC21
4C086ZC35
(57)【要約】
フェノチアジン系化合物の結晶形、塩、及びその製造方法と用途が提供される。該フェノチアジン系化合物の塩酸塩及びその結晶は、フェロトーシス阻害剤として使用でき、また、溶解性、安定性、経口吸収生体利用率及び薬剤形成性が良好である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の結晶形Aを有する2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶。
Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、14.36±0.2°、18.57±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、23.40±0.2°、29.03±0.2°の特徴的なピークを有し、
好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、14.36±0.2°、17.84±0.2°、18.57±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、23.40±0.2°、27.50±0.2°、29.03±0.2°の特徴的なピークを有し、
好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、14.36±0.2°、16.54±0.2°、17.84±0.2°、18.57±0.2°、20.89±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、22.92±0.2°、23.40±0.2°、25.88±0.2°、27.50±0.2°、29.03±0.2°の特徴的なピークを有し、
好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、12.63±0.2°、14.36±0.2°、16.06±0.2°、16.54±0.2°、17.84±0.2°、18.57±0.2°、20.89±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、22.92±0.2°、23.40±0.2°、25.11±0.2°、25.51±0.2°、25.88±0.2°、27.50±0.2°、28.54±0.2°、29.03±0.2°、33.55±0.2°の特徴的なピークを有し、
より好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは
図1に示される。
【請求項2】
下記の結晶形Bを有する2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶。
Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、16.46±0.2°、22.01±0.2°の特徴的なピークを有し、
好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、16.46±0.2°、22.01±0.2°、27.62±0.2°、28.91±0.2°、33.41±0.2°の特徴的なピークを有し、
好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、5.41±0.2°、10.92±0.2°、16.46±0.2°、22.01±0.2°、27.62±0.2°、28.91±0.2°、33.41±0.2°の特徴的なピークを有し、
より好ましくは、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは
図3に示される。
【請求項3】
請求項1に記載の塩酸塩の結晶形A、又は請求項2に記載の塩酸塩の結晶形B、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
がん、臓器損傷及び変性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の塩酸塩の結晶形A、又は請求項2に記載の塩酸塩の結晶形B、又は請求項3に記載の医薬組成物の使用。
【請求項5】
がん、神経変性疾患、心血管疾患・脳血管疾患、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、代謝性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の塩酸塩の結晶形A、又は請求項2に記載の塩酸塩の結晶形B、又は請求項3に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、前記疾患は、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、虚血再灌流傷害、アテローム性動脈硬化症、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、糖尿病、または糖尿病の合併症であり、
好ましくは、前記脳卒中は出血性脳卒中及び/又は虚血性脳卒中である、使用。
【請求項6】
フェロトーシス阻害剤の製造における、請求項1に記載の塩酸塩の結晶形A、又は請求項2に記載の塩酸塩の結晶形B、又は請求項3に記載の医薬組成物の使用。
【請求項7】
化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンを10~40℃でメタノールに分散させた後、濃塩酸とメタノールとの混合溶液を滴下し、攪拌・晶析し、濾過し、濾過ケーキをメタノールで洗浄した後、濾過ケーキを真空乾燥し、結晶状物質が得られることを含む、請求項1に記載の塩酸塩の結晶形Aを製造する方法であって、
好ましくは、前記溶媒メタノールと化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとの重量比は、5:1~15:1、好ましくは8:1~12:1であり、
好ましくは、前記化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと濃塩酸との重量比は、1:1~8:1、好ましくは3:1~5:1であり、
好ましくは、前記攪拌・晶析は、1~8時間行われ、好ましくは2~5時間行われる、方法。
【請求項8】
化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンを10~40℃でアセトンと水に分散させた後、濃塩酸とアセトンと水との混合溶液を滴下し、攪拌・晶析し、濾過し、濾過ケーキをアセトンで洗浄した後、濾過ケーキを真空乾燥し、結晶状物質が得られることを含む、請求項1に記載の塩酸塩の結晶形Aを製造する方法であって、
好ましくは、前記溶媒アセトンと水と化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとの重量比は、(1~8):(0.5~3):(0.5~3)、好ましくは(4~6):(0.5~1):(0.5~1)であり、
好ましくは、前記化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと濃塩酸との重量比は、1:1~8:1、好ましくは3:1~5:1であり、
好ましくは、前記攪拌・晶析は、1~8時間行われ、好ましくは2~5時間行われる、方法。
【請求項9】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩であって、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンメタンスルホン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンエタンスルホン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン-p-トルエンスルホン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酒石酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン臭化水素酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンシュウ酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン硫酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酢酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンプロピオン酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン過塩素酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリンゴ酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンサリチル酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマンデル酸塩、
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン乳酸塩、及び
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンコハク酸塩から任意に選択される、塩。
【請求項10】
前記塩が、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩であることを特徴とする、請求項9に記載の塩。
【請求項11】
前記塩酸塩中の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと塩酸とのモル比が1:(0.5~2)であり、好ましくは、前記モル比が1:1又は1:2であることを特徴とする、請求項9に記載の塩。
【請求項12】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと酸を反応させて塩を生成することを特徴とする、請求項9に記載の塩を製造する方法であって、
好ましくは、前記反応は水及び/又は有機溶媒中で行われ、前記有機溶媒は炭素数2~6のケトン類、酢酸エチル、低級脂肪アルコール、およびテトラヒドロフランから任意に選択された1種又は1種以上の混合物であり、さらに、前記炭素数2~6のケトン類はアセトンであることが好ましく、よりさらに、前記低級脂肪アルコールはメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールから任意に選択され、
好ましくは、前記反応は、アセトン、メタノール及びエタノールから任意に選択された1種の溶媒又は1種以上の混合溶媒中で行われ、
好ましくは、前記酸は、塩酸、HCl、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、臭化水素酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、過塩素酸、リンゴ酸、サリチル酸、マンデル酸、乳酸、及びコハク酸から任意に選択された1種であり、より好ましくは塩酸である、方法。
【請求項13】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと塩酸をアセトン、エタノール、イソプロパノール、又はテトラヒドロフラン中で反応させ、攪拌し、濾過することにより前記塩が得られることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか1項に記載の塩(好ましくは、前記塩が塩酸塩である)と1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤とを含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項15】
がん、臓器損傷、及び変性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、請求項9~12のいずれか1項に記載の塩、又は請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
がん、神経変性疾患、心血管疾患・脳血管疾患、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、代謝性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、請求項9~12に記載の塩、又は請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
前記疾患が、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、虚血再灌流傷害、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、又は糖尿病の合併症であることを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記脳卒中が出血性脳卒中及び/又は虚血性脳卒中であることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月28日に中国国家知識産権局に提出された出願番号202210108728.0及び202210108746.9の中国特許出願の優先権を主張し、それらの全内容は援用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬化学の分野に属し、具体的には、医薬用フェノチアジン系化合物の結晶形、塩、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0003】
フェロトーシス(Ferroptosis)は、鉄依存性および脂質過酸化に駆動させるプログラム細胞死の方式である。フェロトーシスの形態学的の特徴は、主にミトコンドリアの体積の減小、ミトコンドリアの膜密度の増加、ミトコンドリアのクリステの減少又は消失、ミトコンドリアの外膜が破裂するが細胞核のサイズが正常であることとして表われる。これは、フェロトーシスがアポトーシス、壊死及びオートファジーと区別する主な形態学的特徴である。フェロトーシスの生化学的特徴は、主に細胞内の鉄及びROSの蓄積、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達系の活性化、シスチン/グルタミン酸トランスポーター系の阻害、及びNADPH酸化の増加などとして表われる。
【0004】
細胞フェロトーシスが多くの病気、障害及び疾患と密に関連しているということがますますに研究によって確信されている。この細胞死モードは小分子誘導性RAS腫瘍細胞死に関連しているということがDixonらによって2012年に始めて発見された(Scott J Dixonら、Cell.2012 May 25;149(5):1060-72.)。がん、臓器損傷、及び変性疾患におけるフェロトーシスの役割は、最近の研究でさらに実証された(Xuejun Jiangら、Nat Rev Mol Cell Biol.2021 Apr;22(4):266-282)。具体的には、様々ながん、神経変性疾患、心血管疾患・脳血管疾患、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、代謝性疾患などの発生及び発展が含まれる。特に、アルツハイマー病や、パーキンソン病、腫瘍、脳卒中、虚血再灌流傷害、アテローム性動脈硬化症、肝腎不全、炎症、糖尿病の合併症などの疾患において重要な役割を果たしている。フェロトーシスの発生を刺激又は阻害することにより、関連疾患の発生及び発展が許容可能になるため、フェロトーシス阻害剤は、これらの疾患を治療する可能性を有する医薬品と考えられている。
【0005】
国際出願WO2019205854A1には、優れたフェロトーシス阻害活性を有する化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン及びその製造方法が開示されている。しかし、従来技術ではその結晶形についての研究は行われていない。
【0006】
薬物の結晶多形は医薬品の研究開発において一般的な現象であり、医薬品の品質を影響する重要な要素である。結晶形が異なると、溶解性、安定性、吸湿性、及び生体利用率が異なくなることが多く、そして医薬品の医薬製剤の品質、人体内での吸収挙動に直接影響し、最終的には人体内でのこの製剤の治療効果及び副作用の利益比に影響する。そのため、医薬品の有効性を最大限に引き出すために、この化合物の結晶形研究を行い、純度が高く、溶解度がよく、安定性がよく、生体利用率が高い結晶形を見つけることが必要であり、これは医薬品開発にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の1つは、安定性、溶解性、吸湿性、生体利用率など医薬品の薬剤形成性(druggability)が改善された2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの複数の結晶形、特にその塩酸塩の複数の結晶形を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、上記結晶形の医薬組成物、製造方法及び用途を提供することである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案を採用する。
【0010】
1つ又は複数の実施形態においては、下記の結晶形Aを有する2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶が提供される。Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは10.68±0.2°、14.36±0.2°、18.57±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、23.40±0.2°、29.03±0.2°の特徴的なピークを有する。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、14.36±0.2°、17.84±0.2°、18.57±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、23.40±0.2°、27.50±0.2°、29.03±0.2°の特徴的なピークを有する。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、14.36±0.2°、16.54±0.2°、17.84±0.2°、18.57±0.2°、20.89±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、22.92±0.2°、23.40±0.2°、25.88±0.2°、27.50±0.2°、29.03±0.2の特徴的なピークを有する。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.68±0.2°、12.63±0.2°、14.36±0.2°、16.06±0.2°、16.54±0.2°、17.84±0.2°、18.57±0.2°、20.89±0.2°、21.08±0.2°、22.14±0.2°、22.92±0.2°、23.40±0.2°、25.11±0.2°、25.51±0.2°、25.88±0.2°、27.50±0.2°、28.54±0.2°、29.03±0.2°、33.55±0.2°の特徴的なピークを有する。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは
図1に示される。
【0015】
1つ又は複数の実施形態においては、下記の結晶形Bを有する2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶が提供される。Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、16.46±0.2°、22.01±0.2°の特徴的なピークを有する。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、16.46±0.2°、22.01±0.2°、27.62±0.2°、28.91±0.2°、33.41±0.2°の特徴的なピークを有する。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、5.41±0.2°、10.92±0.2°、16.46±0.2°、22.01±0.2°、27.62±0.2°、28.91±0.2°、33.41±0.2°の特徴的なピークを有する。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、Cu-Ka放射線を使用して2θ角度で表した場合、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは
図3に示される。
【0019】
1つ又は複数の実施形態においては、上記の塩酸塩の結晶形A、又は塩酸塩の結晶形B、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0020】
1つ又は複数の実施形態においては、がん、臓器損傷及び変性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、上記の塩酸塩の結晶形A、又は塩酸塩の結晶形B、又はその医薬組成物の使用が提供される。
【0021】
1つ又は複数の実施形態においては、がん、神経変性疾患、心血管疾患・脳血管疾患、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、代謝性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、前記の塩酸塩の結晶形A、又は塩酸塩の結晶形B、又はその医薬組成物の使用が提供される。
1つ又は複数の実施形態において、前記疾患は、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、虚血再灌流傷害、アテローム性動脈硬化症、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、糖尿病、及び糖尿病の合併症から選択されることがあるが、これらに限定されない。
1つ又は複数の実施形態において、前記脳卒中は出血性脳卒中及び/又は虚血性脳卒中である。なお、前記虚血性脳卒中は脳梗塞、脳梗死とも呼ばれる。
【0022】
1つ又は複数の実施形態においては、フェロトーシス阻害剤の製造における、塩酸塩の結晶形A、又は塩酸塩の結晶形B、又はその医薬組成物の使用が提供される。
【0023】
1つ又は複数の実施形態においては、化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンを10~40℃でメタノールに分散させた後、濃塩酸とメタノールとの混合溶液を滴下し、攪拌・晶析し、濾過し、濾過ケーキをメタノールで洗浄した後、濾過ケーキを真空乾燥し、結晶状物質が得られることを含む本出願の塩酸塩の結晶形Aの製造方法が提供される。
好ましくは、前記溶媒メタノールと化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとの重量比は、5:1~15:1であり、例えば5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1、10.46:1、11:1、11.5:1、12:1、12.5:1、13:1、13.5:1、14:1、14.5:1、又は15:1である。
好ましくは、前記化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと濃塩酸との重量比は、1:1~8:1であり、例えば1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.15:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1である。
好ましくは、前記攪拌・晶析は、1~8時間行われ、例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間行われる。
【0024】
1つ又は複数の実施形態においては、化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンを10~40℃でアセトンと水に分散させた後、濃塩酸、アセトンと水の混合溶液を滴下し、攪拌・晶析し、濾過し、濾過ケーキをアセトンで洗浄した後、濾過ケーキを真空乾燥し、結晶状物質が得られることを含む本出願の塩酸塩の結晶形Aの製造方法が提供される。
好ましくは、前記溶媒アセトンと水と化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとの重量比は、(1~8):(0.5~3):(0.5~3)であり、好ましくは(4~6):(0.5~1):(0.5~1)、例えば4:1:1、4.74:1:1、5:1:1である。
好ましくは、前記化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと濃塩酸との重量比は、1:1~8:1であり、例えば1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.66:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1である。
好ましくは、前記攪拌・晶析は、1~8時間行われ、好ましくは2~5時間行われる。
上記製造方法における濃塩酸の質量分率は、20%以上であり、例えば20%、25%、30%、35%、36%、37%、38%、39%、40%である。
【0025】
本発明の前記臓器損傷とは、臓器又は前記臓器に関連する組織の1つ又は複数の機能のあらゆる損害、傷害、低下又は喪失を指す。損傷は、以下に限定されないが、臓器組織又は構造の変化が挙げられ、その形態として、例えば組織壊死領域の発達、或いは細胞又は組織構造完全性の破壊又は喪失、或いは例えば細胞炎症過程又はアポトーシスからの細胞物質又は破片の異常な蓄積などの正常な状態に対する損害又は変化である。臓器や組織の種類によっては、損傷の病態が異なる可能性があることが理解される。また、臓器損傷は、前記損傷に関連する病気又は疾患(即ち、臓器損傷に関連する病気)の発症メカニズムを齎すおそれもある。
【0026】
本発明の前記塩酸塩結晶において、化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと塩酸とのモル比は、約1:(1±0.5)であり、例として、1:(1±0.4)、1:(1±0.2)、1:(1±0.1)、1:1である。
【0027】
本発明における前記2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aは、結晶形Aとも呼ばれる。前記2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Bは、結晶形Bとも呼ばれる。
【0028】
本発明では、従来技術と比較して、以下の有益な効果が得られる。
1.本発明では、大量の実験研究を通じて、その物理的及び化学的特性が遊離化合物と比較して大幅に向上した2つの新規な化合物の結晶形が得られた。
1)塩酸塩の結晶形Aは、非常に高い純度を有し、例えば、本発明の一実施形態におけるこの純度は99.76%に達する。水への溶解度は遊離化合物よりも10000倍向上し、かつ溶解度が大幅に向上すると同時に、良好な安定性も維持する。例えば、本発明の一実施形態において、結晶形Aは研磨条件下で依然として結晶形を維持し、良好な機械的安定性を有する。本発明の別の実施形態において、結晶形Aの融点は約265.31℃であり、これは、結晶形が良好な熱安定性を有することを示す。本発明のさらに別の実施形態において、結晶形Aは加速及び安定の条件下で依然として結晶形を維持し、純度が基本的に変化しない。本発明の更なる別の実施形態において、結晶形Aは異なる溶媒に溶解したが、磁気撹拌後でも結晶形転移は生じなかった。さらに、結晶形Aは生体利用率においても遊離化合物と比較して大幅に向上した。
【0029】
2)塩酸塩の結晶形Bは、遊離化合物と比較して溶解度の点で予想外の有益な効果も達成した。例えば、本発明の一実施形態において、結晶形Bは遊離化合物よりも水への溶解度が1000倍向上した。
【0030】
2.本発明の塩酸塩の結晶形Aは塩酸塩の結晶形Bよりも物理的及び化学的特性に優れている。
吸湿性について、塩酸塩の結晶形Aは25oC/80%RHでの水分吸着率がただ0.36%であることから、結晶形Aは吸湿性がわずかであり、結晶形Bよりも優れていることが示される。溶解度について、塩酸塩の結晶形Aは水中及び塩酸中の溶解度がいずれも結晶形Bよりも優れており、例えば、水及びpH値が1.0の塩酸溶液中には、塩酸塩結晶形Aの溶解度が塩酸塩結晶形Bの溶解度の10倍以上である。しかし、安定性について、溶解度のより良い塩酸塩結晶形Aは、かえってより良い安定性を有する。例えば、本発明の一実施形態において、結晶形Aは加速及び安定条件下で結晶形を維持していたが、結晶形Bは室温で2日以内に結晶形Aに転移し始めた。安定性について、塩酸塩の結晶形Aは長期25℃/60%RH及び加速40℃/75%RH条件下で1週間放置された後、純度がほとんど変化せず、化学的安定性が良好であり、サンプルの結晶形の変化が観察されなかった。塩酸塩の結晶形AはRT-75%RH及びRT-97%RH条件下で1週間放置された後、サンプルの結晶形の変化が観察されなかった。また、塩酸塩の結晶形Aは研磨された後にその結晶形が維持されていた。また、加速(40℃±2℃、75%RH±10%RH、6ヶ月)条件では、結晶形Aは結晶形Bより総不純物の含有量が大幅に低く、結晶形Aの安定性が結晶形Bの方よりも優れている。
【0031】
また、本発明の別の目的の1つは、溶解度および安定性の両方においてその化合物よりも大幅に向上した、化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの複数の薬学的に許容される塩を提供することである。
本発明の別の目的は、上記化合物の塩の製造方法及び用途を提供することである。
これに対して、本発明の具体的な技術案は次の通りである。
【0032】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンメタンスルホン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンエタンスルホン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン-p-トルエンスルホン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酒石酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン臭化水素酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンシュウ酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン硫酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酢酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンプロピオン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン過塩素酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリンゴ酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンサリチル酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマンデル酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン乳酸塩、及び2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンコハク酸塩などが提供される。
【0033】
1つ又は複数の実施形態においては、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩が提供される。
【0034】
1つ又は複数の実施形態において、前記塩酸塩中の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと塩酸とのモル比は、約1:(0.5~2)であり、例えば1:1、1:2である。
【0035】
本発明の前記塩において、化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと酸とのモル比は、以下に例示されるように、許容可能な範囲内で適切に変動する。
1つ又は複数の実施形態において、前記2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと酸とのモル比は、1:(2±0.4)とされてもよく、例えば、1:(2±0.3)、1:(2±0.2)、1:(2±0.1)、又は1:2とされる。前記酸は、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、臭化水素酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、過塩素酸、リンゴ酸、サリチル酸、マンデル酸、乳酸、及びコハク酸から任意に選択される。
【0036】
1つ又は複数の実施形態において、前記2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと酸とのモル比は、1:(1±0.2)とされてもよく、例えば1:(1±0.15)、1:(1±0.1)、1:(1±0.05)、又は1:1とされる。前記酸は、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、臭化水素酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、過塩素酸、リンゴ酸、サリチル酸、マンデル酸、乳酸、及びコハク酸から任意に選択される。
【0037】
1つ又は複数の実施形態において、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと酸を反応させて塩を得ることを含む2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの塩の製造方法が提供される。
好ましくは、前記反応は水及び/又は有機溶媒中で行われる。前記溶媒は炭素数2~6のケトン類、酢酸エチル、低級脂肪アルコール、及びテトラヒドロフランから任意に選択された1種又は1種以上の混合物である。前記低級脂肪アルコールは1~8個の炭素原子を含むアルコール類を指す。
さらに、前記炭素数2~6のケトン類は、アセトンであることが好ましい。
よりさらに、前記低級脂肪アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールから任意に選択される。
好ましくは、前記反応は、アセトン、メタノール、及びエタノールのうちの1種の溶媒又は1種以上の混合溶媒中で行われる。
好ましくは、前記酸は、塩酸、HCl、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、及び酒石酸から任意に選択された1種であり、より好ましくは塩酸である。なお、前記塩酸は、HClの水溶液を指し、HClはHClガスを指す。
【0038】
1つ又は複数の実施形態において、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと塩酸をアセトン、又はエタノール、又はイソプロパノール、又はテトラヒドロフラン中で反応させ、攪拌し、濾過することにより塩酸塩が得られることを含む2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の製造方法が提供される。
【0039】
1つ又は複数の実施形態においては、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの塩と1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。好ましくは、前記塩は塩酸塩である。
【0040】
1つ又は複数の実施形態においては、がん、臓器損傷及び変性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの塩、又は2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの塩を含む医薬組成物の使用が提供される。
【0041】
1つ又は複数の実施形態においては、がん、神経変性疾患、心血管疾患・脳血管疾患、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、代謝性疾患の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの塩、又は2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの塩を含む医薬組成物の使用が提供される。
【0042】
1つ又は複数の実施形態において、前記疾患は、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、虚血再灌流傷害、免疫関連疾患、肝腎不全、炎症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、又は糖尿病の合併症である。
【0043】
1つ又は複数の実施形態において、前記脳卒中は出血性脳卒中及び/又は虚血性脳卒中である。なお、前記虚血性脳卒中は脳梗塞、脳梗死とも呼ばれる。
【0044】
本発明では、従来技術と比較して、以下の有益な効果が得られる。
1.2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンは、塩酸塩にされた後、溶解度、安定性及び吸湿性がいずれも改善された。
塩酸塩は遊離化合物よりも溶解度が、大幅に向上する。例えば、本発明の一実施形態において、塩酸塩は、遊離化合物よりも水への溶解度が約7700倍向上し、さらに、クエン酸塩などの他の塩も、遊離化合物よりも溶解度が大幅に向上する。塩酸塩は遊離化合物よりも安定性が大きく向上する。例えば、本発明の一実施形態において、塩酸塩は、遊離化合物よりも高温、高湿、光照射条件下での安定性が優れており、総不純物の含有量が明らかに低い。さらに、塩酸塩は遊離化合物よりも吸湿性も低い。
【0045】
2.2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩は、他の塩よりも性能が大幅に改善される。
溶解度について、塩酸塩は他の塩よりも溶解性能が優れている。例えば、本発明の一実施形態において、塩酸塩は溶解度の良いクエン酸塩に比べでも、溶解度が7倍向上し、マレイン酸塩及びフマル酸塩に比べて35倍以上向上する。安定性について、塩酸塩は他の塩よりも良い効果を有する。例えば、本発明の一実施形態において、塩酸塩は、他の塩よりも高温、高湿、光照射条件下での安定性が高く、総不純物の含有量が他の塩よりも明らかに低い。別の実施形態において、塩酸塩はpH1.0の塩酸溶液中に溶液の色が変化しなかったことに対して、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩などの他の塩は明らかに変化したから、塩酸塩の安定性がより優れていることが示される。吸湿性についても、塩酸塩は他の塩よりも吸湿性が低い。さらに、塩酸塩は製造過程中に良好に固形化できるが、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などの他の塩は粘着ペースト状になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、実施例1で得られる結晶形AのXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、実施例2で得られる結晶形AのXRPDパターンである。
【
図3】
図3は、結晶形BのXRPDパターンである。
【
図4】
図4は、結晶形Aの純度検出パターンである。
【
図5】
図5は、結晶形Aの1HNMRスペクトルである。
【
図8】
図8は、結晶形Aの安定性研究のXRPDパターンである。
【
図9】
図9は、結晶形Bの安定性研究のXRPDパターンである。
【
図10】
図10は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の
1HNMRスペクトルである。
【
図11】
図11は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の
13CNMRスペクトルである。
【
図12】
図12は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩の
1HNMRスペクトルである。
【
図13】
図13は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩の
1HNMRスペクトルである。
【
図14】
図14は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩の
1HNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)の具体的な合成方法については、国際出願WO2019205854A1の製造方法を参照のこと。
【0048】
実施例1:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aの製造方法1
【化1】
【0049】
50L反応釜に窒素を導入して反応釜内のガスを置換し、次いで窒素雰囲気条件下で反応釜に1.70Kgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)及び17.78Kgのメタノールを加え、攪拌を開始し、25±5℃条件下で反応釜に0.41Kgの濃塩酸(質量分率36%)と0.82Kgのメタノールとの混合溶液を滴下し、約1時間程度で滴下が完了した。滴下終了後、反応混合液を25±5℃条件下で2~4時間保温攪拌しながら晶析し、次いで反応混合液を濾過し、濾過ケーキを1.50Kgのメタノールで洗浄し、濾過ケーキを40℃~50℃の真空条件下(圧力-0.08MPa~-0.10MPa)で12~16時間熱乾燥し、合計1.64Kgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを収集した。結晶収率が88.3%であった。XRPD検出により結晶形Aであった(XRPDパターンを
図1に示す)。
【0050】
製造した結晶形Aは、純度が99.76%であり、最大単一不純物の含有量が0.068%であり、総不純物及び単一不純物が国家薬品監督管理局によって発行された「化学薬物中の不純物研究に関する技術ガイドライン」及びICHQ3Aによって規定された管理限界≦0.15%(この製品の1日の最大投与量≦2グラム/日)より小さかった(
図4に示す純度検出パターンにおいては、DA414という名前の主ピークは2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aである)。
【0051】
核磁気データ:
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ=11.27 (s, 1H), 8.64 (s, 1H), 7.09 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.92 (m, 4H), 6.80 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.71 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 6.64 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 3.90 (m, 1H), 3.60 (d, J = 73.7 Hz, 2H), 3.39 (s, 2H), 3.16 (d, J = 9.1 Hz, 4H), 2.77 (s, 3H), 1.45 (d, J = 7.2 Hz, 3H),(
1H NMRパターンを
図5に示す)。
【0052】
実施例2:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aの製造方法2
【化2】
【0053】
50L反応釜に窒素を導入して反応釜内のガスを置換し、次いで窒素雰囲気条件下で反応釜に1.50Kgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)、7.11Kgのアセトン及び1.50Kgの水を加え、攪拌を開始し、25±5℃条件下で反応釜に0.41Kgの濃塩酸(質量分率36%)と0.68Kgのアセトン及び0.15Kgの水との混合溶液を滴下し、約1時間程度で滴下が完了した。滴下終了後、反応混合液を25±5℃条件下で2~4時間保温攪拌しながらて晶析し、次いで反応混合液を濾過し、濾過ケーキを1.50Kgのアセトンで洗浄し、濾過ケーキを40℃~50℃の真空条件下で(圧力-0.08MPa~-0.10MPa)で12~16時間熱乾燥し、合計1.30Kgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを収集した。結晶収率が79.5%であった。XRPD検出により結晶形Aであった(XRPDパターンを
図2に示す)。
【0054】
実施例3:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Bの製造方法
約5mgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを秤量し、そこに0.2mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、超音波溶解させ、溶液を5mLバイアルに濾過し、スターラーを加えた。室温での攪拌条件下で、4mLの酢酸エチルを滴下し、大量の沈殿物が析出し、濾過し、濾過ケーキを室温で一晩真空乾燥させた。XRPD検出により結晶形Bであった(結晶形BのXRPDパターンを
図3に示す)。
【0055】
実施例4:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形AのXRPD測定
「中国薬局方」(2020版)--第4部--総則0451--X線回折法--第2法--粉末X線回折法に従って測定を行った。
【0056】
【0057】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩結晶形のXRPDパターンを
図1に示し、XRPDデータを表2に示す。該結晶形は結晶形Aと命名された。
【0058】
【0059】
実施例5:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形BのXRPD測定
「中国薬局方」(2020版)--第4部--総則0451--X線回折法--第2法--粉末X線回折法に従って測定を行った。
【0060】
【0061】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩結晶形のXRPDパターンを
図3に示し、XRPDデータを表4に示す。該結晶形は結晶形Bと命名された。
【0062】
【0063】
【0064】
結晶形AのTGA検出パターンを
図6に示す。
TGA測定の結果、結晶形Aは120℃に加熱した場合、サンプルの重量が約0.1586%減少したから、結晶形Aが無水物であったことが示される。
【0065】
【0066】
結晶形AのDSC検出パターンを
図7に示す。
DSCパターンにより、結晶形Aは単一の吸熱ピークを有し、融点が約265.31°Cであることが示された。この結果は、結晶形Aが良好な熱安定性を有することを示した。
【0067】
実施例8:結晶形Aのイオンクロマトグラフィー(IC)
【表7】
【0068】
イオンクロマトグラフィー(IC)測定の結果により、塩形成比が1:1であったから、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとHClが1:1で結合していることが示された。
【0069】
実施例9:結晶形Aの他の製造方法
(1)揮発結晶化法
実験操作:出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに秤量して5mLのバイアルに入れ、それぞれ一定体積の表8の混合溶媒を加えて溶解させ、0.45μmのPTFEフィルターを使用して別の5mLバイアルに濾過し、様々な温度で揮発するために蓋が開いたままに放置した。得られた固体を収集してXRPD測定に供した。表8に示す測定の結果により、塩酸塩結晶形Aの製品が得られた。
【0070】
【0071】
(2)貧溶媒添加法
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約5mgずつに秤量して5mLのバイアルに加え、それぞれ表9における対応する第1溶媒で固体を完全に溶解させ、0.45μmのPTFEフィルターを使用して別の5mLバイアルに濾過した。固体が析出するまで該清澄溶液に攪拌しながら表9中の第2溶媒を滴下した。なお、溶媒の総体積を5mLに加えても固体が析出しない場合、5℃で磁気撹拌に移し、一晩攪拌した後、まだ清澄なサンプルであったら、室温に移して揮発又は回転乾燥する。遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供した。表9に示す測定の結果により、塩酸塩結晶形Aの製品が得られた。
【0072】
【0073】
(3)アンチ貧溶媒添加法
出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約5mgずつに秤量して5mLのバイアルに加え、それぞれ表10中の対応する第1溶媒で固体を完全に溶解させ、0.45μmのPTFEフィルターを使用して別の5mLバイアルに濾過した。攪拌条件下で、該清澄溶液を表10中の第2溶媒に滴下した。第2溶媒の体積は3mLにした。固体が析出しない場合、5℃で磁気撹拌に移し、一晩攪拌した後、まだ清澄なサンプルを室温に移して揮発又は回転乾燥した。遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供した。表10に示す測定の結果により、塩酸塩の結晶形Aのみが得られた。
【0074】
【0075】
(4)冷却結晶化法
出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに秤量して5mLのバイアルに加え、それぞれ一定体積の表11中の対応する単一溶媒又は混合溶媒を加え、50℃超音波条件下で溶解した後、0.45μmのPTFEフィルターを使用して別の5mLバイアルに濾過した。該清澄濾液を生化学インキュベーターに入れ、50℃条件下で120min恒温にし、さらに0.1℃/minの速度で5℃まで冷却し、温度変化中に攪拌を続けた。固体が析出した場合、遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供した。測定の結果を表11に示す。
【0076】
【0077】
(5)気液拡散法
出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに秤量して5mLバイアルに入れ、それぞれ一定体積の表12中の第1溶媒(単一溶媒又は混合溶媒)を加えて溶解させ、0.45μmのPTFEフィルターを使用して別の5mLバイアルに濾過し、さらに20mLのバイアルを取ってそこに約3mLの第2溶媒を加え、清澄溶液が入った5mLバイアルを蓋が開いたまま20mLバイアルに置いた後、密封して室温で約1週間静置した。得られた固体を収集してXRPD測定に供した。測定の結果を表12に示す。
【0078】
【0079】
(6)高分子誘導法
出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに秤量して5mLバイアルに入れ、それぞれ一定体積の混合溶媒を加えて溶解し(0.45μmのPTFEフィルターを使用して濾過し)、1~2mgのポリマーを加え、バイアルをその上に穴を開けたシーリングフィルムで密封し、、室温に置いてゆっくりと揮発させた。表13に示す測定の結果により、塩酸塩結晶形Aの製品が得られた。
【表13】
【0080】
XRPD結果は、実施例9で製造したサンプル結晶形がすべて結晶形Aであることが示した(XRPDパターンは示されていない)。
【0081】
実施例10:結晶形Bの他の製造方法
(1)貧溶媒添加法
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約5mgずつに秤量して5mLのバイアルに加え、それぞれ表14中の対応する第1溶媒で固体を完全に溶解させ、0.45μmのPTFEフィルターを使用して別の5mLバイアルに濾過した。固体が析出するまで該清澄溶液に攪拌しながら表14中の第2溶媒を滴下した。遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供した。表14に示す測定の結果により、塩酸塩結晶形Bの製品が得られた。
【0082】
【0083】
(2)高分子誘導法
出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに秤量して5mLバイアルに入れ、それぞれ一定体積の混合溶媒を加えて溶解し(0.45μmのPTFEフィルターを使用して濾過し)、1~2mgのポリマーを加え、バイアルをその上に穴を開けたシーリングフィルムで密封し、室温に置いてゆっくりと揮発させた。表15に示す測定の結果により、塩酸塩の結晶形B製品を得た。
【0084】
【0085】
XRPD結果は、実施例10で製造したサンプル結晶形がすべて結晶形Bであることを示した(XRPDパターンは示されていない)。
【0086】
実施例11:吸湿性研究
動的水蒸気収着法(DVS)により吸湿性を評価した結果、塩酸塩の結晶形Aは25oC/80%RHでの水分吸着率が約0.36%であったから、結晶形Aは吸湿性をわずかに有し、吸湿性実験の前後で結晶形は変化しなかったことが示された。
【0087】
吸湿性研究の結果から、塩酸塩の結晶形Aは塩酸塩の結晶形Bよりも吸湿性が低く、薬剤形成性がより優れていることが示された。
【0088】
実施例12:溶解度比較研究
「中国薬局方」(2020版)の一般溶解度試験方法に従い、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形A、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Bを秤量し、25℃±2℃条件下で一定容量の溶媒に加え、5分ごとに30秒間激しく振盪し、30分以内の溶解を観察し、溶解度を測定した。
【0089】
【0090】
ここで、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩は実施例17の方法1により得られた。
【0091】
その結果、水溶液系においては、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aの溶解度が2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、及び2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Bの溶解度よりも明らかに優れた。pH1.0の塩酸溶液(ほぼ人間の胃液のpH)系においては、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aの溶解度が2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、及び2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Bよりも明らかに優れた。これらの結果から、結晶形Aは物理的及び化学的特性がより優れ、薬剤形成性がより良いことが示された。2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Bは、遊離状態よりも水中の溶解度が1000倍優れており、予想外の効果が得られた。
【0092】
また、発明者は研究中で、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの他の塩形、例えばクエン酸塩、フマル酸塩及びマレイン酸塩を晶析させて得られた結晶形は、それらの塩形と比較して、水中及びpH1.0の塩酸溶液中の溶解度がほぼ同じであり、大幅に改善されなかったことを発見した。
【0093】
実施例13:結晶形の安定性試験
(1)結晶形Aの安定性実験
実験1:温度、湿度に対する安定性実験
【0094】
試験操作1:塩酸塩の結晶形Aサンプルをそれぞれ長期25℃/60%RH及び加速40℃/75%RHの条件下で1週間放置し、結晶形の変化を試験した結果、塩酸塩の結晶形Aサンプルは2つの試験条件下で1週間放置された後、純度が基本的に変化せず、化学的安定性が良好で、サンプルの結晶形の変化が観察されなかった。サンプル安定性の放置前後のXRPD比較図を
図8に示す。
【0095】
試験操作2:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを5mLバイアルに約10mg秤量し、5mLバイアルを蓋が開いたままに恒湿器内に置いたら、恒湿器を密封した。室温で約1週間静置した後、固体を収集してXRPD測定に供したところ、サンプルの結晶形の変化は観察されなかった。測定の結果を表17に示す。
【0096】
【0097】
実験2:機械的安定性の実験
約10mgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを乳鉢に秤量し、0.05mLの湿潤剤を3回に分けて加えて研磨し、毎回5min研磨し、固体を収集して試験XRPDに供したところ、サンプル結晶形は変化しなかった。測定の結果を表18に示す。
【0098】
【0099】
実験3:その他の安定性実験
試験操作1:約10mgの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを5mLバイアルに秤量し、それぞれ1mLの表19に列挙された単一溶媒又は混合溶媒を加え、得られた懸濁液を5℃で約3日間磁気撹拌した後、遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供したところ、サンプルの結晶形転移が起こらなかった。測定の結果を表19に示す。
【0100】
【0101】
試験操作2:出発物質2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに各5mLバイアルに秤量し、それぞれ0.5mLの表20に列挙された単一溶媒又は混合溶媒を加え、懸濁液を得た。懸濁液を室温で約3日間磁気撹拌した後、遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供したところ、サンプルの結晶形転移が起こらなかった。測定の結果を表20に示す。
【0102】
【0103】
試験操作3:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aを約10mgずつに各5mLバイアルに秤量し、それぞれ0.5mLの表21に列挙された単一溶媒又は混合溶媒を加え、得られた懸濁液を50℃で約3日間磁気撹拌した後、遠心分離して固体を収集し、XRPD測定に供したところ、サンプルの結晶形転移が起こらなかった。測定の結果を表21に示す。
【0104】
【0105】
(2)結晶形Bの安定性試験
試験操作:一定量の塩酸塩の結晶形Bサンプルをサンプル瓶に秤量し、次いでサンプル瓶をそれぞれ室温で密閉したまま2日間及び5日間に放置した後、サンプル瓶内のサンプルを一定量取ってXRPD測定に供した。測定の結果、塩酸塩の結晶形Bサンプルが室温で密閉したまま2日間放置された後に塩酸塩の結晶形Aに転移して始め、5日間放置された後に結晶形Bが部分的に塩酸塩の結晶形Aに転移したことから、塩酸塩の結晶形Bが不安定な結晶形であることが示された。結晶形Bの安定性研究から得られたXRPDパターンを
図9に示す。結晶形Aは結晶形Bよりも結晶形安定性に優れていることが分かった。
【0106】
また、結晶形Aは圧縮性、流動性などの特性が良好であり、その比表面積、嵩密度、空隙率及び粒径などの特性が医薬品製剤の開発や製造に非常に適している。一方、結晶形Bはこれらの特徴を有しない。
【0107】
さらに、塩酸塩の結晶形A及び塩酸塩の結晶形Bに対して影響因子試験研究を行ったところ、高温(温度60℃)、高湿(25℃/90%±5%RH)、光照射(45001x±5001x)の条件下で30日間放置した場合、結晶形Aは結晶形Bよりも安定性が優れており、不純物の生成量が低かったことを発見した。
【0108】
同時に、遊離化合物と比較して、塩酸塩の結晶形Aは安定性に優れており、測定された総不純物の含有量がより低くかった。
【0109】
(3)結晶形A及びFormBの安定性の比較試験
中国薬局方2020版及びICHQ1A安定性研究ガイドラインに基づき、結晶形A及びFormBを加速(40℃±2℃、75%RH±10%RH)条件下で6ヶ月置いており、結晶形A及びFormBの総不純物変化を検出した。結果を表22に示す。表22は様々な結晶形の安定性実験を示すものである。その結果、結晶形Aは加速条件下で6ヶ月置いていた後、総不純物が0.25%から0.41%に増加したが、結晶形Bは加速条件下で6ヶ月置いていた後、総不純物が0.28%から0.88%に増加した。この結果は、結晶形Bの安定性が非常に悪く、結晶形Aの安定性が結晶形Bの安定性よりも優れていることを示した。
【0110】
【0111】
実施例14:薬物動態の比較研究
実験方法:3匹の健康な雄SDラットを選択し、一晩絶食させた後、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)、又は2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aの懸濁液(溶媒:0.5%CMC-Na)をそれぞれ10mg/kgで胃内投与した。投薬体積は10ml/kgにした。投与前及び投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12、24時間後にラット眼窩静脈叢から約200μLの全血約を採取し、EDTA-K2抗凝固剤を含む遠心管に入れ、その後3000~4000rpm条件下で10min遠心分離し、上部の血漿をすべて別の清潔な遠心管に移し、LC-MS/MSの方法で血漿サンプル中の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの血中濃度を検出し、非コンパートメントモデルを使用して薬物動態パラメータを算出した。
【0112】
【0113】
その結果、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aは、ラットへの経口投与後によく吸収され、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(遊離状態)よりもその血液暴露量及び生体利用率が優れたことから、塩酸塩の結晶形Aは遊離状態よりも薬剤形成性が大幅に向上することが示された。
【0114】
実施例15:本発明の化合物のフェロトーシスへの阻害率に関する研究
実験方法:本実施例には、フェロトーシスの阻害剤を研究するために、以下のようにフェロトーシスのスクリーニングモデルを構築した。フェロトーシススクリーニングモデルには主にCCK8細胞生存能力検出法を採用した。まず、マウス海馬神経細胞HT22及びヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞をディッシュ内で培養し、対数増殖期の細胞を特定の数(5000個/ウェル)で1ウェルあたり80μLで96ウェルプレートに播種し、その後37℃、5%CO2環境のインキュベーター内で細胞が壁に接着しているように培養した。24時間後、所定の培地で調製した様々な濃度の本発明の化合物10μL及び最終濃度10μMのフェロトーシス誘導剤エラスチン10μLを加えた。なお、結果の正確性を保証するために、各化合物に対して3つの重複ウェルを設置した。そして、陽性対照群(上記と同様に、10μLの同じ培地で調製した一定濃度の化合物フェロステイン-1及び10μLのフェロトーシス誘導剤エラスチンを添加した)、ブランク対照群(上記で指定した等体積量の培地及び培地及び等体積量のDMSOを添加したが、細胞は含まなかった)、及び溶媒対照群(上記で指定した等体積量の培地及び培地と等体積量のDMSOを添加したが、細胞は含まなかった)を設置した。なお、結果の准確性を保証するため、各群にも3つの重複ウェルを設置した。薬剤を加えた後、インキュベーターに入れて24時間培養した。各ウェルに10μLのCCK8溶液を加え、インキュベーターに入れて2~4時間培養を続けた後、マイクロプレートリーダーを使用して450nmでの吸光度値を検出し、薬物のフェロトーシスへの阻害率を算出した。阻害率は、次の式を使用して算出した。
【0115】
阻害率%(inhibitionrate,IR)=[1-(A実験群-Aブランク)/(A溶媒-Aブランク)]×100%
GraphPadPrism6ソフトを使用し、阻害率変化曲線を当てはめ、IC50を算出した。
【0116】
【0117】
表24に示す測定の結果から、本発明の化合物2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の結晶形Aは、複数の細胞系においてフェロトーシスに対する阻害効果を有し、阻害活性が陽性対照群フェロステイン-1よりも大幅に優れていることが分かった。
【0118】
実施例16:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの製造
【化3】
【0119】
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンの具体的な合成方法については、国際出願WO2019205854A1における製造方法を参照のこと。生成物の不純物を測定したところ、総不純物の含有量が1.36%であった。
【0120】
実施例17:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の製造
【化4】
【0121】
方法1:
20~25℃条件下で5.0gの2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン(12.45mmol、1.0eq)を50mLのアセトンに溶解した。1.14mLの質量分率36%の濃塩酸(13.70mmol、1.1eq)をアセトンで4.5mLに希釈し、次いで反応液にゆっくり滴下して反応させ、1時間攪拌を続けた後に濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩4.4gが収率80.7%で得られた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ=11.27 (s, 1H), 8.65 (s, 1H), 7.10 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.93 (m, 4H), 6.81 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.72 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 6.65 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 3.91 (m, 1H), 3.70 (s, 2H), 3.35 (s, 4H), 3.17 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 2.77 (s, 3H), 1.46 (d, J = 7.2 Hz, 3H),(
1H NMRパターンを
図10に示す);
13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ=148.29, 146.87, 142.56, 138.00, 128.37, 127.87, 126.54, 122.09, 121.26, 116.89, 116.57, 114.91, 113.98, 52.47, 46.11, 43.12, 42.35, 21.91,(
13C NMRパターンを
図11に示す)。構造同定したところ、得られた塩酸塩中の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンと塩酸が1:1で結合している。
【0122】
方法2:
溶媒アセトンをエタノールに置換すること以外には、方法1の操作手順を参照しながら、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の製品を得た。構造同定したところ、この製品は方法1で得られた製品と一致した。
【0123】
方法3:
溶媒アセトンをイソプロパノールに置換すること以外には、方法1の操作手順を参照しながら、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の製品を得た。構造同定したところ、この製品は方法1で得られた製品と一致した。
【0124】
方法4:
溶媒アセトンをテトラヒドロフランに置換すること以外には、方法1の操作手順を参照しながら、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩の製品を得た。構造同定したところ、この製品は方法1で得られた製品と一致した。
【0125】
上記の塩酸塩製品の不純物を測定したところ、総不純物の含有量が0.10%~0.25%であった。
【0126】
実施例18:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンメタンスルホン酸塩の製造
【化5】
【0127】
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)を酢酸エチル2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に酢酸エチル2mLとメタンスルホン酸(36.0mg、0.374mmol、1.0eq)との混合溶液を滴下し、滴下中に多量の綿状固体が析出し、20~25℃条件下で1時間攪拌を続けた後に濾過し、濾過ケーキ(濾過ケーキは粘着状になっている)を収集して乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンメタンスルホン酸塩90.15mgが収率48.4%で得られた。
【0128】
実施例19:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン-p-トルエンスルホン酸塩の製造
【化6】
【0129】
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)を酢酸エチル2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に65mgのp-トルエンスルホン酸(0.374mmol、1.0eq)を加え、少量の固体が析出し、20~25℃条件下で1時間攪拌を続けた後に濾過し、濾過ケーキ(濾過ケーキは粘着状になっている)を収集して乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン-p-トルエンスルホン酸塩100.20mgが収率46.5%で得られた。
【0130】
実施例20:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩の製造
【化7】
【0131】
方法1:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)をメタノール4mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた(溶解後に固体がゆっくりと析出した)。次いで、反応液に72mgクエン酸(0.374mmol、1.0eq)を加え、濁りを溶解した後、固体を徐々に析出させ、20~25℃条件下で4時間攪拌した後に濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩183.10mgが得られた。
【0132】
方法2:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)をアセトン4mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に72mgのクエン酸(0.374mmol、1.0eq)を加え、攪拌中に固体を徐々に析出させ、20~25℃条件下で2時間攪拌を続けた後に濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩179.63mgが得られた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ=10.88 (s, 2H), 8.51 (s, 1H), 7.09 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.99 - 6.93 (m, 1H), 6.89 (d, J = 8.4 Hz, 3H), 6.82 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.73 (m, 1H), 6.66 (m, 2H), 6.52 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 3.91 (m, 1H), 3.22 (s, 4H), 2.92 (d, J = 4.4 Hz, 4H), 2.65 (d, J = 15.2 Hz, 2H), 2.57 (m, 4H), 2.53 (s, 2H), 2.09 (s, 3H), 1.47 (d, J = 7.2 Hz, 3H),(
1H NMRパターンを
図12に示す)。構造同定したところ、得られたクエン酸塩中の、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとクエン酸が1:2で結合している。
【0133】
方法3:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)を酢酸エチル2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に72mgのクエン酸(0.374mmol、1.0eq)を加え、攪拌中に固体を徐々に析出させ、20~25℃条件下で4時間攪拌を続けた後に濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩189.4mgが得られた。
【0134】
上記のクエン酸塩生成物の不純物を測定したところ、総不純物の含有量が0.64%~0.80%であった。
【0135】
実施例21:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩の製造
【化8】
【0136】
方法1:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)を酢酸エチル2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液にフマル酸43.41mg(trans-2-ブテン二酸;0.374mmol、1.0eq)を加え、撹拌しながら徐々に固体が析出した。20~25℃条件下で4時間~5時間攪拌を続けた後、多量の固体が析出した。濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩146.3mgが収率75.8%で得られた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ=8.51 (s, 1H), 7.06 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.99 - 6.93 (m, 1H), 6.91 - 6.84 (m, 3H), 6.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.73 (m, 1H), 6.65 (m, 2H), 6.59 (s, 2H), 6.51 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 3.90 (m, 1H), 3.22 - 3.08 (m, 4H), 2.70 - 2.58 (m, 4H), 2.35 (s, 3H), 1.46 (d, J = 7.2 Hz, 3H),(
1H NMRパターンを
図13に示す)。構造同定したところ、得られたフマル酸塩中の、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとフマル酸が1:1で結合している。
【0137】
方法2:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)をアセトン2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液にフマル酸43.41mg(trans-2-ブテン二酸;0.374mmol、1.0eq)を加え、最初、少量の固体が反応瓶の底に析出し、その後徐々に油状物になった。20~25℃条件下で4時間~5時間攪拌を続けた後、多量の固体が析出した。濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩121mgが収率62.5%で得られた。
【0138】
上記のフマル酸塩生成物の不純物を測定したところ、総不純物の含有量が0.76%~0.84%であった。
【0139】
実施例22:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酒石酸塩の製造
方法1:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)をアセトン2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に酒石酸56mg(DL型;0.374mmol、1.0eq)を加え、攪拌中に少量の固体が反応瓶の底に析出し、その後20~25℃で攪拌を2時間続け、固体が析出した。濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酒石酸塩155.3mgが得られた。
【0140】
方法2:
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)を酢酸エチル2mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に酒石酸56mg(DL型;0.374mmol、1.0eq)を加え、攪拌中に少量の固体が反応瓶の底に析出し、その後20~25℃で攪拌を2時間続け、多量の固体が析出した。濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン酒石酸塩166.5mgが得られた。
【0141】
実施例23:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩の製造
【化9】
【0142】
20~25℃条件下で2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン150mg(0.374mmol)を酢酸エチル3mLに溶解させ、攪拌しながら清澄になるように溶解させた。次いで、反応液に43.41mgのマレイン酸(cis-2-ブテン二酸;0.374mmol、1.0eq)を加え、撹拌しながら、過程中少量の固体が反応瓶の底に析出し、その後徐々に油状物になった。20~25℃で4時間~5時間攪拌を続けた後、多量の固体が析出した。濾過し、濾過ケーキを乾燥させた。そして、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩132.8mgが収率68.6%で得られ、その総不純物の含有量が0.42%であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ=8.51 (s, 1H), 7.11 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.00 - 6.87 (m, 4H), 6.82 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.73 (m, 1H), 6.66 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.05 (s, 2H), 3.92 (m, 1H), 3.28 (s, 8H), 2.83 (s, 3H), 1.47 (d, J = 7.2 Hz, 3H),(
1H NMRパターンを
図14に示す)。構造同定したところ、得られたマレイン酸塩中の、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンとマレイン酸が1:1で結合している。
【0143】
実施例24:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン臭化水素酸塩の製造
実施例17の製造方法を参照しながら、塩酸を臭化水素酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン臭化水素酸塩を製造した。
【0144】
実施例25:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリン酸塩の製造
実施例17の製造方法を参照しながら、塩酸をリン酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリン酸塩を製造した。
【0145】
実施例26:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンシュウ酸塩の製造
実施例17の製造方法を参照しながら、塩酸をシュウ酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンシュウ酸塩を製造した。
【0146】
実施例27:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンエタンスルホン酸塩の製造
実施例21の製造方法を参照しながら、フマル酸をエタンスルホン酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンエタンスルホン酸塩を製造した。
【0147】
実施例28:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリンゴ酸塩の製造
実施例21の製造方法を参照しながら、フマル酸をリンゴ酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンリンゴ酸塩を製造した。
【0148】
実施例29:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンコハク酸塩の製造
実施例21の製造方法を参照しながら、フマル酸をコハク酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンコハク酸塩を製造した。
【0149】
実施例30:2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンプロピオン酸塩の製造
実施例21の製造方法を参照しながら、フマル酸をプロピオン酸に置換し、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンプロピオン酸塩を製造した。
【0150】
実施例31:溶解度の比較研究
「中国薬局方」(2020版)の一般溶解度試験方法に従い、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩を秤量し、25℃±2℃条件下で一定容量の溶媒に加え、5分ごとに30秒間激しく振盪し、30分以内の溶解を観察し、溶解度を測定した。
【0151】
【0152】
溶解度実験の結果、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンよりも水及びpH1.0の塩酸溶液中の溶解度、特に水中の溶解度が優れた。2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩は、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンよりも水中の溶解度が1000倍高かった。
【0153】
さらに、塩酸塩の溶解度は、この化合物の他の塩の溶解度よりも明らかに優れており、その中で、溶解度のより良いクエン酸塩に比べて7倍向上し、マレイン酸塩及びフマル酸塩に比べても35倍以上向上した。
【0154】
実施例32:安定性の試験1
試験(1):高温に対する試験
「中国薬局方」(2020版)9001「原料医薬品及び製剤の安定性試験ガイドライン」方法に従って、試験供試品を蓋が開いたまま適切な恒温装置に置き、温度60℃条件下で30日間放置しており、5日目、10日目及び30日目にサンプリングした。
【0155】
高温試験の結果、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンは、塩になった後、高温条件下での安定性が遊離状態の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンよりも高かった。その中で、塩酸塩は高温条件下での安定性が最良で、性状に変化がなく、総不純物の生成量が低かったことが分かった。
【0156】
【0157】
試験(2):高湿試験
「中国薬局方」(2020版)9001「原料医薬品及び製剤の安定性試験ガイドライン」方法に従って、試験供試品を蓋が開いたまま恒湿密閉容器に置き、25℃でそれぞれ相対湿度90%±5%条件下で30日間放置しており、5日目、10日目及び30日目にサンプリングした。
【0158】
高湿試験の結果、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンは、塩になった後、高湿条件下での安定性が遊離状態の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンよりも高かった。その中で、塩酸塩は高湿条件下での安定性が他の塩型よりも優れており、性状に変化がなく、総不純物の生成量が低かったことが分かった。
【0159】
【0160】
試験(3):光照射試験
「中国薬局方」(2020版)9001「原料医薬品与製剤安定性試験ガイドライン」方法に従って、試験供試品を安定性試験箱に置き、照度45001x±5001x、光源総照度1.2x106lux・hr以上、近紫外ランプエネルギー200W・hr/m2以上の条件下で30日間放置しており、5日目、10日目及び30日目にサンプリングした。
【0161】
光照射試験の結果、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンは、塩になった後、光照射条件下での安定性が遊離状態の2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンよりも高かった。その中で、クエン酸塩は光照射条件下で、外観が5日目で淡黄色から灰色に変化し、10日目で暗灰色に変化し、塩酸塩は光照射条件下での安定性が他の塩型よりも優れており、性状に変化がなく、総不純物の生成量が低かったことが分かった。
【0162】
【0163】
以上より、安定性実験の結果から、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩は、高温、高湿、光照射条件下での安定性が遊離化合物及び他の塩よりも高く、総不純物の含有量が他の塩及び遊離化合物よりも明らかに低かったことが示された。
【0164】
実施例33:安定性試験2
2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩を同じ質量で秤量し、25℃±2℃条件下で一定容量のpH1.0の塩酸溶液(人間の胃液の酸性に類似)に加え、5分ごとに30秒間激しく振盪し、0.5時間及24時間以内の溶液の色の状態を観察した。
【0165】
【0166】
実験結果から、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンフマル酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンマレイン酸塩サンプルは、pH1.0の塩酸溶液において溶液の色が明らかに変化し、安定性が2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩よりも悪かったこと示された。
【0167】
実施例34:吸湿性の比較実験
「中国薬局方」(2020版)第4部の「医薬品吸湿性ガイドライン」に従って、上記実施例で得られた2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジンクエン酸塩などに対して吸湿性試験を行った。
【0168】
吸湿性特徴の説明及び吸湿性重量増加の定義は次の通りである。
潮解:十分な水分を吸収して液体を形成すること、
極めて吸湿性があり:引湿による重量増加は15%以上であること、
吸湿性があり:引湿による重量増加は15%未満であるが2%以上になること、
わずかに吸湿性があり:引湿による重量増加は2%未満であるが0.2%以上になること、
吸湿性がない又はほとんどない:引湿による重量増加は0.2%未満であること。
【0169】
実験結果から、2-(1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)エチル)-10H-フェノチアジン塩酸塩は、吸湿性が低く、その物理的及び化学的特性が優れており、薬剤形成性が最良であったことが示された。
【0170】
上記実施形態は、本発明の技術的趣旨及び特徴を説明するために使用されたもので過ぎなく、この技術に精通した方が本発明の内容を理解してそれに応じて実施できるようにすることを目的とし、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。本発明の精神及び本質に基づいて行われたすべての同等の変更又は修正は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】