(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】C-ヌクレオシド一リン酸合成
(51)【国際特許分類】
C12P 19/38 20060101AFI20250117BHJP
C07H 19/067 20060101ALI20250117BHJP
C07H 19/073 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12P19/38
C07H19/067
C07H19/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024562378
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2023050489
(87)【国際公開番号】W WO2023131727
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524260030
【氏名又は名称】ユーエービー・バイオマター・デザインズ
(71)【出願人】
【識別番号】516227331
【氏名又は名称】エンジンザイム・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティナ・コプルナイテ
(72)【発明者】
【氏名】ニナ・ウルベリエネ
(72)【発明者】
【氏名】ロランダス・メシュキス
(72)【発明者】
【氏名】ディアナ・イカサライテ
(72)【発明者】
【氏名】リナス・ザクリス
(72)【発明者】
【氏名】ラウリナス・カルプス
(72)【発明者】
【氏名】フェデリカ・ルッギエリ
(72)【発明者】
【氏名】サスチャ・グローブ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C057
【Fターム(参考)】
4B064AF33
4B064CA21
4B064CB04
4B064CE10
4B064CE11
4B064DA20
4C057BB02
4C057BB05
4C057CC01
4C057DD01
4C057LL08
4C057LL10
4C057LL41
4C057LL42
(57)【要約】
マルチステップ酵素経路を使用して、シュードウリジン-5'-一リン酸等のC-ヌクレオシド-5'-一リン酸をN-ヌクレオシドから合成するワンポット方法を本明細書において提供する。前記方法は、前記N-ヌクレオシドをリン酸供給源及びヌクレオシドホスホリラーゼと反応させて、ペントース-1-リン酸中間体を形成する工程と、前記ペントース-1-リン酸中間体をホスホムターゼと反応させて、ペントース-5-リン酸中間体を形成する工程と、前記ペントース-5-リン酸中間体をヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼと反応させて、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を形成する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を合成する方法であって、
a) N-ヌクレオシドを、ヌクレオシドホスホリラーゼの存在下でリン酸の供給源と反応させて、第1の中間体を形成する工程であって、前記ヌクレオシドがペントース糖及び第1の塩基を含み、前記第1の中間体がペントース-1-リン酸を含む、工程と;
b) ペントース-1-リン酸を含む前記第1の中間体を、ホスホムターゼと反応させて、第2の中間体を形成する工程であって、前記第2の中間体がペントース-5-リン酸を含む、工程と;
c) ペントース-5-リン酸を含む前記第2の中間体を、ヌクレオシド-5'-一リン酸C-グリコシダーゼの存在下で第2の塩基と反応させて、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程a)、b)及びc)をワンポット反応として行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記N-ヌクレオシドが式Iaによる化合物を含み;前記第1の中間体が式Ibによる化合物を含み;前記第2の中間体が式Icによる化合物を含み;前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸が式1dによる化合物を含む
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、H、OH、OCH
3、F、NH
2、及びN
3から独立に選択される]、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R
1及びR
2がそれぞれ、OHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R
1がOHであり、かつR
2がHである、又はR
1及びR
2がHである、又はR
1がOHであり、かつR
2がOCH
3である、又はR
1がN
3であり、かつR
2がHである、又はR
1がOHであり、かつR
2がN
3である、又はR
1がHであり、かつR
2がOHである、又はR
1がFであり、かつR
2がOHである、又はR
1がOCH
3であり、かつR
2がOHである、又はR
1がOHであり、かつR
2がFである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の塩基が、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、及び2-チオウラシルから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の塩基が、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、及び2-チオウラシルから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の塩基が前記第2の塩基と同じである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)の前記第2の塩基が、工程a)の反応の副生成物として生成された前記第1の塩基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の塩基がウラシルを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)における前記N-ヌクレオシドがウリジンを含み、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸がシュードウリジン-5'-一リン酸を含む、請求項1から4及び6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の塩基が4-チオウラシル又は2-チオウラシルを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の塩基及び第2の塩基が異なる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヌクレオシド-5'リン酸C-グリコシダーゼが、前記第2の塩基に対しては反応性であるが、前記第1の塩基に対しては非反応性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の塩基が、シトシン、グアニン、チミン、アデニン、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-(3-アミノアリル)ウラシルから選択され、及び/又は前記第2の塩基が、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、2-チオウラシル、2-アミノ-1H-ピロール-5-カルボキシレート、及び1,4-ナフトキノンから選択される、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の塩基がチミンを含み、前記第2の塩基がN3-メチルウラシルを含み、工程a)における前記N-ヌクレオシドが5-メチルウリジンを含み、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸がN3-メチルシュードウリジン-5'-一リン酸を含む、請求項1から4及び13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記N-ヌクレオシドが式IIaによる化合物を含み、前記第1の中間体が式IIbによる化合物を含み、前記第2の中間体が式IIcによる化合物を含み、前記C-ヌクレオシド5'一リン酸が式IIdによる化合物を含む
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、H、OH、OCH
3、F、NH
2、及びN
3から独立に選択される]、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項18】
R
1及びR
2がそれぞれ、OHである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程a)において、前記N-ヌクレオシドが式IIIaによる化合物を含み、前記第1の中間体が式IIIbによる化合物を含み、前記第2の中間体が式IIIcによる化合物を含み、前記C-ヌクレオシド5'一リン酸が式IIIdによる化合物を含む
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、H、OH、OCH
3、F、NH
2、及びN
3から独立に選択される]、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項20】
R
1及びR
2がそれぞれ、OHである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記N-ヌクレオシドが式IVaによる化合物を含み、前記第1の中間体が式IVbによる化合物を含み、前記第2の中間体が式IVcによる化合物を含み、前記C-ヌクレオシド5'一リン酸が式IVdによる化合物を含む
【化4】
[式中、R
1及びR
2は、H、OH、OCH
3、F、NH
2、及びN
3から独立に選択される]、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項22】
R
1及びR
2がそれぞれ、OHである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の塩基及び/又は第2の塩基が、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、及び2-チオウラシルから選択される、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の塩基が前記第2の塩基と同じである、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程c)の前記第2の塩基が、工程a)の反応の副生成物として生成された前記第1の塩基である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の塩基及び第2の塩基が異なる、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼが、前記第2の塩基に対しては活性であるが、前記第1の塩基に対しては不活性である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の塩基が、シトシン、グアニン、チミン、アデニン、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-(3-アミノアリル)ウラシルから選択され、及び/又は前記第2の塩基が、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、2-チオウラシル、2-アミノ-1H-ピロール-5-カルボキシレート、及び1,4-ナフトキノンから選択される、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヌクレオシドホスホリラーゼが、プリン-ヌクレオシドホスホリラーゼ、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ、チミジンホスホリラーゼ、ウリジンホスホリラーゼ及びグアノシンホスホリラーゼから選択される酵素を含み、好ましくは、前記ヌクレオシドホスホリラーゼが、ピリミジン-ヌクレオシドホスホリラーゼ、チミジンホスホリラーゼ及びウリジンホスホリラーゼから選択される酵素を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヌクレオシドホスホリラーゼがウリジンホスホリラーゼを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼがシュードウリジレートシンターゼを含み、任意選択で、前記シュードウリジレートシンターゼが、YeiN、SdmA、及びAlnAから選択される、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ホスホムターゼがホスホペントムターゼを含み、任意選択で、前記ホスホペントムターゼがdeoBホスホペントムターゼを含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
工程c)において得られた前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸をアルカリホスファターゼで更に処理する、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
リン酸の前記供給源が、可溶性アルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸塩から選択される化合物を含み、任意選択で、リン酸の前記供給源が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素カリウムから選択される化合物、約pH7のリン酸カリウム緩衝液、及び約pH8のリン酸カリウム緩衝液を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
工程a)、b)及びc)を約37℃で実施する、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
工程c)において得られた前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーから選択される1つ又は複数の方法により精製する、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
工程a)において使用されるホスホリラーゼの濃度が0.02~0.6mg/mLであり、及び/又は工程b)において使用されるホスホムターゼの濃度が0.2~0.6mg/mLであり、及び/又は工程c)において使用されるヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼの濃度が0.2~0.6mg/mLである、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記酵素は固体支持体に固定化されている、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている、2022年1月10日に出願した英国特許出願第2200248.9号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は概して、ヌクレオシド誘導体の合成に関する。より具体的には、本発明は、マルチステップ酵素経路を使用して、N-ヌクレオシドからC-ヌクレオシド-5'-一リン酸を合成する方法に関する。前記方法は、前記N-ヌクレオシドをリン酸供給源及びヌクレオシドホスホリラーゼと反応させて、ペントース-1-リン酸中間体を形成する工程と、前記ペントース-1-リン酸中間体をホスホムターゼと反応させて、ペントース-5-リン酸中間体を形成する工程と、前記ペントース-5-リン酸中間体をヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼと反応させて、C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を形成する工程とを含む。
【背景技術】
【0003】
ヌクレオシドは、DNA及びRNAの分子構成単位である。ヌクレオシドは、窒素塩基に結合しているペントース糖を含むグリコシルアミン化合物である。DNAでは、ペントース糖は2-デオキシ-D-リボースであり、RNAでは、ペントース糖はD-リボースである。
【0004】
【0005】
窒素塩基は、ピリミジン類又はプリン類として分類され得る複素環式有機化合物である。ピリミジン塩基は、4個の炭素原子及び2個の窒素原子を含む6員環の一般構造を有する。プリン塩基は、イミダゾール環と縮合しているピリミジン環を含む。下に図示されるとおりの5種の主要又は正準塩基が存在する:プリン類のアデニン及びグアニン;並びにピリミジン類のシトシン、チミン、及びウラシル。
【0006】
【0007】
生体系では、DNA及びRNAは、核酸の形成後に改変されている正準塩基の誘導体を含有することもある。例として、DNAにおいて見出される一般的な非正準塩基は、5-メチルシトシンである。シトシンのメチル化は、遺伝子発現及び環境変化へのその後の適応、分化、並びに発生の調節において中心的な役割を果たす。更なる例として、7-メチルグアニンが多くの場合に、mRNAの5'末端で見出される(7-メチルグアノシン(methyguanosine)キャップ)。この改変は、mRNAを分解から保護し、mRNAの翻訳を補助する。核酸の改変パターンの変化が、がん等の病態において観察されている。合成により改変された塩基又は塩基類似体も多数存在し、それらの多くが、重要な生化学的ツールとして役立つ。
【0008】
ヌクレオシドは、合成及び天然産物由来の両方が、臨床用途において、詳細には、抗ウイルス又は抗がん薬として広く使用されている。臨床用途で使用されるヌクレオシドは典型的には、塩基の複素環式単位がN-グリコシド(C-N)結合を介してペントース部分に連結しているN-ヌクレオシドである。著名な例には、抗ウイルス薬のビダラビン及び抗がん薬のゲムシタビンが含まれる。しかしながら、N-ヌクレオシドは、N-グリコシダーゼによる加水分解を受けやすく、それらの治療活性を限定している。このことが、塩基とペントース糖との間の正準N-グリコシド結合が非加水分解性C-グリコシド(C-C)結合により置き換えられているC-ヌクレオシドの開発に対する関心を高めている。
【0009】
特に、合成C-ヌクレオシドであるBCX4430及びGS6620は、それぞれフィロウイルス及びC型肝炎ウイルスに対して有効であることが示されている。フィロウイルスに対して使用するために元々は開発されたが、合成C-ヌクレオシドGS-5734は現在は、SARS-CoV-2ウイルスに対して評価されている。ショードマイシン、フォルマイシン、シュードウリジマイシン、及びミニマイシン等の他のC-ヌクレオシドは、抗生物質有効性を含む多様な生物学的活性を示す天然微生物化合物の新興のクラスを構成している。
【0010】
シュードウリジンは、C-ヌクレオシド、及びN-ヌクレオシドウリジンの異性体である。ウリジン及びシュードウリジンの構造を、比較のために下に提示する。
【0011】
【0012】
シュードウリジンは、tRNA、リボソームRNA及びスモールRNA等のRNAにおいて、シュードウリジレートシンターゼ(代替用語:シュードウリジン-5'-一リン酸(monophophosphate)グリコシダーゼ)により転写後に形成される。N1を介してではなくC5を介してのウラシルのリボースへの結合は、水分子と共に水素結合を形成し得る追加のイミノプロトンの存在を可能にする。そして、これは、RNAの二次構造を安定化させ、塩基スタッキング相互作用を強化する。
【0013】
mRNAベースのワクチンでは、mRNAの免疫原性を低下させ、かつ抗原安定性及び発現を増大させるために、シュードウリジン及びその誘導体が、ウリジンに取って代わって使用されている。SARS-CoV-2(BNT162b2)に対するPfizer-BioNtechのワクチン及びSARS-CoV-2に対するModerna Therapeuticsワクチン(mRNA-1273)は両方とも、ウラシルがN1-メチルシュードウリジンに置き換えられているmRNAを含む。mRNAベースのワクチンの緊急採用(quick adoption)及び種々の臨床分野へのそれらの用途の拡大は、シュードウリジン及びその誘導体についての高い商業的需要をもたらしている。
【0014】
シュードウリジンは、哺乳類細胞系及び組織中の天然RNAからの抽出によっては、シュードウリジンの相対的に低い割合のために容易に入手することができない。このことは、ウリジンと比較してシュードウリジン又はその誘導体のかなり高い小売価格にも更に反映されている。
【0015】
シュードウリジン及びその誘導体を合成するための方法を開発する試みがなされている。いったん、そのような方法は、シュードウリジンのマルチステップ半酵素合成を伴う(Rileyら、2021、Bioorg. Med. Chem. Lett. 44、128105)。この方法では、下に図示されているが、アデノシン一リン酸(AMP)を酸性条件下及び約100℃の高温下で脱プリンに掛けて、リボース-5-リン酸を形成する。リボース-5-リン酸を酸性混合物から抽出及び精製するが、その際、それはイソプロパノール沈殿及びアニオン交換クロマトグラフィーにより形成される。次いで、精製されたリボース-5-リン酸をシュードウリジン-5'-一リン酸グリコシダーゼ(ψMPグリコシダーゼ)の存在下でウラシルと反応させて、シュードウリジン-5'-一リン酸を形成する。シュードウリジン-5'-一リン酸をカラムクロマトグラフィーにより精製し、その後、細菌アルカリホスファターゼと反応させて、シュードウリジンを生成する。精製されたシュードウリジンをHPLCにより得る。しかしながら、この方法において必要とされる過酷な条件及び複数の精製工程により、その方法は、時間及び費用的に非効率となっている。
【0016】
シュードウリジンの半酵素合成(Riley et al. 2021からアレンジ)
【0017】
【0018】
中国特許第114196715号は、シュードウリジンを合成するための同様の方法を開示している。しかしながら、この方法では、リボース-5-リン酸(AMPの加水分解により入手)を、変異型シュードウリジン-5'-一リン酸グリコシダーゼの存在下でウラシルと反応させて、シュードウリジン-5'-一リン酸を形成する。次いで、脱リン酸化及び分離の後に、シュードウリジンを得る。
【0019】
シュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための更なるマルチステップ方法を下に図示する。この方法では、リボースを、アデノシン三リン酸(ATP)の存在下でリボキナーゼと反応させて、リボース-5-リン酸を形成する。次いで、Rileyらによる上の方法においてのとおりに、リボース-5-リン酸をシュードウリジン-5'-一リン酸及びシュードウリジンに変換することができる。しかしながら、ATPは高価であり、この方法も、方法を時間及び費用的に非効率なものとする複数の精製工程を必要とする。
【0020】
シュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための更なるマルチステップ方法
【0021】
【0022】
それゆえ、既存の方法の欠点を克服する、シュードウリジン及びその誘導体等のC-ヌクレオシドを合成するより効率的な方法を提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】英国特許出願第2200248.9号
【特許文献2】中国特許第114196715号
【特許文献3】WO2015/115993
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Rileyら、2021、Bioorg. Med. Chem. Lett. 44、128105
【非特許文献2】de Giuseppeら、2012、PLoS ONE vol. 7、e44282; Uniprot: O34925
【非特許文献3】Jensenら、1975、Eur. J. Biochem.、vol. 51、253~265頁; Uniprot: P0ABP8
【非特許文献4】Saundersら、1969、J. Biol. Chem.、vol. 244、3691~3697頁
【非特許文献5】Pugmireら、1998、Structure、vol. 6、1467~1479頁; Uniprot: P77836
【非特許文献6】Wenら、2022、Proteins vol. 90、1233~1241頁; Uniprot: P0C037
【非特許文献7】Vallenetら、2008、PLoS ONE vol. 3、e1805; Uniprot: B0VLV6
【非特許文献8】Veikoら、1998、Bioorg. Khim., vol. 24、381~387頁; UniProt ID: O08444
【非特許文献9】Waltonら、1989、Nucleic Acids Res. vol. 17、6741頁; Uniprot: P12758
【非特許文献10】Walterら、1990、J. Biol. Chem.、vol. 265、14016~14022頁; Uniprot: P07650
【非特許文献11】Valentin-Hansenら、1984、Nucleic Acids Res.、vol. 12、5211~5224頁; Uniprot: P0A6K6
【非特許文献12】Panosianら、2011、J. Biol. Chem.、vol. 268、8143~8054頁; Uniprot: Q818Z9
【非特許文献13】Preumontら、2008、J. Biol. Chem.、vol. 283、No.37、25238~25246頁
【非特許文献14】Pfeiffer and Nidetzky 2020、Nat Commun. 2020 Dec 8;11(1):6270.
【非特許文献15】Ojaら、2013、PNAS、vol. 100、no.4、1291~1296頁
【非特許文献16】Palmuら、2017、ACS Chemical Biology、vol. 12、1472~1477頁
【非特許文献17】Preumontら、2008、J. Biol. Chem.、vol. 283、No.37、25238~25246頁
【非特許文献18】Kongら、2019、iScience、vol. 22、430~440頁
【発明の概要】
【0025】
したがって、C-ヌクレオシド5'-一リン酸を合成するための方法であって、
a) N-ヌクレオシドを、ヌクレオシドホスホリラーゼの存在下でリン酸の供給源と反応させて、第1の中間体を形成する工程であって、前記ヌクレオシドがペントース糖及び第1の塩基を含み、前記第1の中間体がペントース-1-リン酸を含む、工程と;
b) ペントース-1-リン酸を含む前記第1の中間体を、ホスホムターゼと反応させて、第2の中間体を形成する工程であって、前記第2の中間体がペントース-5-リン酸を含む、工程と;
c) ペントース-5-リン酸を含む前記第2の中間体を、ヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼの存在下で第2の塩基と反応させて、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0026】
本発明の好ましい特徴は、従属請求項において定義する。
【0027】
有利なことに、本発明の方法における出発物質の費用は低い。更に、本発明者らは予想外にも、本発明の方法を、いずれの中間体生成物の分離又は精製も必要とせずにワンポット反応として行うことができることを見出している。このことにより、費用は更に縮小し、前記方法は時間的に効率的なものとなっている。
【0028】
次の説明及び図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】シュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための反応物を含む反応混合物から様々な時点で採取された試料での薄層クロマトグラム(TLC)である。
【
図2】アルカリホスファターゼで処理されている、シュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための反応混合物のHPLC-MSクロマトグラム及びピーク表である。
【
図3】市販のシュードウリジンのHPLC-MSクロマトグラム及びピーク表である。
【
図4】シュードウリジンのプロトン化(上)及び脱プロトン化(下)形態を表す、アルカリホスファターゼで処理されているシュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための反応混合物のHPLC-MSクロマトグラムである。
【
図5A】ウラシル及びシュードウリジン-5'-一リン酸を図示する、アルカリホスファターゼ処理を伴わずにシュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための反応混合物のHPLC-MSクロマトグラムである。
【
図5B】シュードウリジン-5'-一リン酸のプロトン化(上)及び脱プロトン化(下)形態を表す、アルカリホスファターゼ処理を伴わずにシュードウリジン-5'-一リン酸を合成するための反応混合物のHPLC-MSクロマトグラムである。
【
図6】D
2O中の合成されたシュードウリジン-5'-一リン酸の
1H-NMRスペクトルである。
【
図7】D
2O中の合成されたシュードウリジン-5'-一リン酸の
13C-NMRスペクトルである。
【
図8】D
2O中の合成されたシュードウリジン-5'-一リン酸の
31P-NMRスペクトルである。
【
図9】C-ヌクレオシド5'-一リン酸を合成するための種々の反応混合物のTLCである。
【
図10】1L規模でのワンポット反応における経時的なシュードウリジン一リン酸、ウリジン及びウラシルの濃度のグラフである。
【
図11】pH8の種々のリン酸カリウム緩衝液濃度(mM)での24時間後のウリジン変換率及びシュードウリジン一リン酸収率のパーセント(%)でのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
C-ヌクレオシド5'-一リン酸を合成する方法
本発明は、C-ヌクレオシド5'-一リン酸を合成する方法であって、
a) N-ヌクレオシドを、ヌクレオシドホスホリラーゼの存在下でリン酸の供給源と反応させて、第1の中間体を形成する工程であって、前記ヌクレオシドがペントース糖及び第1の塩基を含み、前記第1の中間体がペントース-1-リン酸を含む工程と;
b) ペントース-1-リン酸を含む前記第1の中間体を、ホスホムターゼと反応させて、第2の中間体を形成する工程であって、前記第2の中間体がペントース-5-リン酸を含む工程と;
c) ペントース-5-リン酸を含む前記第2の中間体を、ヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼの存在下で第2の塩基と反応させて、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0031】
本明細書において使用される場合の「含むこと」又は「含む」という用語は、少なくともその用語に続く特徴の包含を示し、明示的に記述されていない他の特徴の包含を排除するものではない。その用語はまた、その用語に続く特徴からなる実体を示すこともある。
【0032】
N-ヌクレオシド
上で論述したとおり、N-ヌクレオシドは、ペントース糖及び典型的には窒素性である塩基を含み、その際、塩基は、N-グリコシド(C-N)結合によりペントース部分に結合している。典型的には、ピリミジンベースのヌクレオシドでは、グリコシド結合は、C1'とN-1との間にあり、プリンベースのヌクレオシドでは、グリコシド結合は、C1'とN-9との間にある。
【0033】
ペントース糖は、限定ではないが、典型的には、D-異性体型である。好ましい実施形態では、ペントースは、D-アルドペントースを含む。D-アルドペントースは、D-リボース、2-デオキシ-D-リボース、D-アラビノース、D-キシロース、又はD-リキソース及びそれらの誘導体から選択され得る。好ましい実施形態では、ペントースは、D-リボースを含む。他の実施形態では、ヌクレオシドは、一般式Ia、IIa、IIIa又はIVaにおいて図示されるとおりのペントースを含み得る:
【0034】
【0035】
[式中、R1及びR2は独立に、H、OH、OCH3、F、NH2、及びN3から選択される]。
【0036】
特に式Iaに関して、次の置換基を提示する:
R1及びR2はそれぞれ、OHである;R1は、OHであり、かつR2は、Hである;R1及びR2は、Hである;R1は、OHであり、かつR2は、OCH3である;R1は、N3であり、かつR2は、Hである;R1は、OHであり、かつR2は、N3である;R1は、Hであり、かつR2は、OHである;R1は、Fであり、かつR2は、OHである;R1は、OCH3であり、かつR2は、OHである;R1は、OHであり、かつR2は、Fである。
【0037】
好ましい一実施形態では、R1及びR2はそれぞれ、OHである(前記ペントースはD-リボースを含む)。別の実施形態では、R1は、OHであり、かつR2は、Hである(前記ペントースは、2-デオキシ-D-リボースを含む)。また別の実施形態では、R1は、OHであり、かつR2は、Fである(前記ペントースは、2-デオキシ-2-フルオロ-D-リボースを含む)。
【0038】
上の置換基選択は、特に式Iaに関して提示されているが、それらは、式IIa、IIIa、及びIVaにも関連し、適用可能である。好ましい実施形態では、R1及びR2はそれぞれ、OHであり、したがって、式IIaのペントースはD-アラビノースを含み、式IIIaのペントースはD-キシロースを含み、式IVaのペントースはD-リキソースを含む。
【0039】
ペントース糖のフラノース構造を本明細書では、ハース投影式により図示してきたが、本発明の方法では、ペントース糖は、ピラノース又は直鎖型、又はその組合せ等の他の構造異性型で存在してもよい。
【0040】
それぞれ式Ia、IIa、IIIa及びIVaによるペントースを含むN-ヌクレオシドを用いる、本発明による方法の反応の略図を下に図示する。「A」、「B」及び「C」はそれぞれ、ヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、及びヌクレオシド-5'-一リン酸C-グリコシダーゼを指す。
【0041】
【0042】
【0043】
前記N-ヌクレオシドの第1の塩基は、特に限定されず、アデニン、シトシン、グアニン、チミン及びウラシルから選択される標準のプリン又はピリミジン塩基を含んでよい。化学的に改変された塩基も、本発明の方法の範囲内と認められる。第一の塩基として使用するための化学的に改変された塩基には、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、2-チオウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-(3-アミノアリル)ウラシルも含まれ得る。
【0044】
本明細書において言及される第1の塩基を下に図示する。簡略化のために、塩基を、式IaによるN-ヌクレオシド構造の範囲内でのみ図示する。類似の構造が、それぞれ式IIa、IIIa及びIVaで認められるであろう。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるペントース糖と共にN-グリコシド(C-N)結合を形成することができる他の改変された塩基又は塩基類似体を、本発明の反応において使用することもできる。
【0049】
ワンポット反応及び反応条件
本発明の方法は、「ワンポット」反応として有利に行うことができる。「ワンポット」反応とは、中間化合物の何らかの分離及び精製を伴うことなく、C-ヌクレオシド-5'-一リン酸の合成が行われることを意味し、好ましくは、すべての反応物が、単一の反応器に供給される。これにより有利に、時間及び資源が節約される一方で、化学的収率が上昇する。
【0050】
好ましい実施形態では、前記N-ヌクレオシド、リン酸供給源、ヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、第2の塩基及びヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼ(反応物)を反応器に一斉に添加する。他の実施形態では、反応物の1種又は複数を反応器に連続して添加する。
【0051】
反応を好ましくは、関係する酵素の最適な温度及びpHで行う。典型的には、反応を約37℃で、又は酵素の最適な温度で行う。しかしながら、反応を、約20℃~約37℃の温度で、又は酵素が活性を維持するいずれかの温度までで行うこともできる。典型的には、反応を、酵素の最適なpHで行う。例えば、反応を、約6から約8まで(約6から約7まで、又は約7から約8まで、等)のpHで、又は酵素が活性を維持するいずれかのpHで行うことができる。一部の実施形態では、反応を約7のpHで行う。一部の実施形態では、反応を約8のpHで行う。
【0052】
ヌクレオシドホスホリラーゼ
本発明において使用するために好適なヌクレオシドホスホリラーゼは、特に限定されず、それには、反応:N-ヌクレオシド⇔D-ペントース-1-リン酸+第1の塩基を触媒することができるいずれかの酵素が含まれる。ヌクレオシドホスホリラーゼは一般に、広い特異性を有し、典型的には、いずれの所与のヌクレオシドホスホリラーゼも複数の基質に対して作用し得る。本発明の方法において使用するためのヌクレオシドホスホリラーゼは、出発N-ヌクレオシドに基づき、特に、N-ヌクレオシドの塩基部分に基づき選択することができる。本発明の方法において使用するためのヌクレオシドホスホリラーゼは、商業的に容易に入手可能であり、組換え発現の確立された方法により得ることもできる。
【0053】
一部の実施形態では、用いられるヌクレオシドホスホリラーゼには、これに限定されないが:プリン-ヌクレオシドホスホリラーゼ(EC 2.4.2.1)、ピリミジン-ヌクレオシドホスホリラーゼ(EC 2.4.2.2)、チミジンホスホリラーゼ(EC 2.4.2.4):チミン、ウリジンホスホリラーゼ(EC 2.4.2.3)及びグアノシンホスホリラーゼ(EC 2.4.2.15)が含まれる。(ここで提示されるEC番号は、酵素番号を指す。これは、酵素についての国際的に認められた数値分類スキームである。酵素番号は、酵素自体ではなく、酵素により触媒される反応に基づき、それを明記している)。
【0054】
好ましい一実施形態では、前記ヌクレオシドホスホリラーゼは、ウリジンホスホリラーゼを含む。上に列挙されているもののいずれかと同じEC番号を有する他のヌクレオシドホスホリラーゼを本発明において使用することもできる。
【0055】
好ましい実施形態では、前記N-ヌクレオシドは、グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、キサンチン又は7-メチルグアニンを第1の塩基部分として含み、使用されるヌクレオシドホスホリラーゼは、プリン-ヌクレオシドホスホリラーゼ(EC 2.4.2.1)を含む。そのようなプリン-ヌクレオシドホスホリラーゼは例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)((de Giuseppeら、2012、PLoS ONE vol. 7、e44282; Uniprot: O34925)及び大腸菌(Escherichia coli)(Jensenら、1975、Eur. J. Biochem.、vol. 51、253~265頁; Uniprot: P0ABP8)において同定されている。
【0056】
他の好ましい実施形態では、前記N-ヌクレオシドは、シトシン、チミン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、5-(3-アミノアリル)ウラシル、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルを塩基部分として含み、使用されるヌクレオシドホスホリラーゼは、ピリミジン-ヌクレオシドホスホリラーゼ(EC 2.4.2.2)を含む。そのようなピリミジン-ヌクレオシドホスホリラーゼは例えば、バチルス・ステアローサモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(Saundersら、1969、J. Biol. Chem.、vol. 244、3691~3697頁; Pugmireら、1998、Structure、vol. 6、1467~1479頁; Uniprot: P77836)において同定されている。ピリミジン/ピリンヌクレオシドホスフィラーゼは、大腸菌(Wenら、2022、Proteins vol. 90、1233~1241頁; Uniprot: P0C037)及びアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)(Vallenetら、2008、PLoS ONE vol. 3、e1805; Uniprot: B0VLV6)においても同定されている。
【0057】
更なる好ましい実施形態では、前記N-ヌクレオシドは、ウラシルを第1の塩基部分として含み、使用されるヌクレオシドホスホリラーゼは、ウリジンホスホリラーゼ(EC 2.4.2.3)を含む。ウリジンホスホリラーゼは例えば、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)(Veikoら、1998、Bioorg. Khim., vol. 24、381~387頁; UniProt ID: O08444)及び大腸菌(Waltonら、1989、Nucleic Acids Res. vol. 17、6741頁; Uniprot: P12758)において同定されている。
【0058】
また更なる実施形態では、前記N-ヌクレオシドは、チミン又はウラシルを第1の塩基部分として含み、使用されるヌクレオシドホスホリラーゼは、チミジンホスホリラーゼ(EC 2.4.2.4)を含むか;又は前記N-ヌクレオシドは、グアニンを第1の塩基部分として含み、使用されるヌクレオシドホスホリラーゼは、グアノシンホスホリラーゼ(EC 2.4.2.4)を含む。チミジンホスホリラーゼは、例えば、大腸菌(Walterら、1990、J. Biol. Chem.、vol. 265、14016~14022頁; Uniprot: P07650)において同定されている。
【0059】
しかしながら、ホスホリラーゼ及び塩基基質の上述の組合せは排他的又は限定的ではなく、他の組合せも認められ、当業者であれば容易に決定するであろう。
【0060】
ヌクレオシドホスホリラーゼが必要とする基質である、本発明の方法の工程a)におけるリン酸の供給源は、可溶性アルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸塩から選択される化合物を含んでよい。一部の実施形態では、リン酸塩の供給源は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、及びリン酸水素カリウムから選択される化合物を含む。好ましい一実施形態では、リン酸の供給源は、pH約7のリン酸カリウム緩衝液を含む。別の好ましい実施形態では、リン酸の供給源は、pH約8のリン酸カリウム緩衝液を含む。
【0061】
一部の実施形態では、工程a)において使用されるヌクレオシドホスホリラーゼの濃度は、約0.02~約0.6mg/mL、例えば、約0.3~約0.6mg/mL、約0.4~約0.6mg/ml、又は約0.5mg/ml、又は例えば、約0.02~約0.5mg/mL、約0.02~約0.4mg/mL、約0.02~約0.3mg/mL、約0.02~約0.2mg/mL、約0.02~約0.1mg/mL、約0.02~約0.05mg/mL、又は約0.025~約0.035mg/mLである。一部の実施形態では、ヌクレオシドホスホリラーゼの濃度は、約0.02mg/mL、約0.025mg/mL、約0.03mg/mL、約0.035mg/mL、約0.04mg/mL、約0.045mg/mL、又は約0.05mg/mLである。0.02mg/mL未満の酵素の濃度は、最終のC-ヌクレオシド-5'-一リン酸の収率を低下させることがあり、0.6mg/mLを超える酵素の濃度は、限定された経済的有用性を有し得る。
【0062】
ホスホムターゼ
本発明の方法の工程b)において使用されるホスホムターゼは、特に限定されず、それには、反応:D-ペントース-1-リン酸⇔D-ペントース-5-リン酸を触媒することができるいずれかの酵素が含まれる。好ましくは、前記ホスホムターゼは、ホスホペントムターゼである。ホスホペントムターゼも、広い特異性を有し、所与のホスホペントムターゼは、いくつかの異なるD-ペントース-1-リン酸中間体で作用して、D-ペントース-5-リン酸中間体を形成し得る。
【0063】
本発明の方法において使用するための好ましいホスホペントムターゼは、EC番号5.4.2.7を有する酵素、例えば、deoBホスホペントムターゼを含む。deoBホスホペントムターゼは、大腸菌(Valentin-Hansenら、1984、Nucleic Acids Res.、vol. 12、5211~5224頁; Uniprot: P0A6K6)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)(Panosianら、2011、J. Biol. Chem.、vol. 268、8143~8054頁; Uniprot: Q818Z9)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)及び炭疽菌(Bacillus anthracis)を含むいくつかの異なる菌株から単離され得る。
【0064】
他のホスホペントムターゼが一般に公知であり、それには、例えば、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)HB8(GenBank ID: 3169853又はUniProt: Q5SLG9)、ストレブトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus・thermophilus)(GenBank ID: 66898918又はUniProt: Q5M482)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) S288C(GenBank ID: 855321又はUniProt: Q03262)から単離されたホスホペントムターゼが含まれる。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)は、R1及びR2がそれぞれOHであるか、又はそれぞれR1がOHであり、かつR2がHである式IaによるD-リボース又は2-デオキシ-D-リボース糖を含むN-ヌクレオシドを、ホスホペントムターゼ(例えば、deoBホスホペントースムターゼ(EC 5.4.2.7)又はdeoBホスホペントムターゼと同じ酵素分類を有するいずれかの他の酵素)と反応させて、第1の中間体D-リボース-1-リン酸又は2-デオキシ-D-リボース-1-リン酸を形成することを含む。
【0066】
一部の実施形態では、工程b)において使用されるホスホムターゼの濃度は、約0.2~約0.6mg/mL、例えば、約0.3~約0.6mg/mL、約0.4~約0.6mg/mL、又は約0.5mg/mL、又は例えば、約0.2~約0.5mg/mL、約0.2~約0.4mg/mL、又は約0.2~約0.3mg/mLである。一部の実施形態では、ホスホムターゼの濃度は、約0.2mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、又は約0.35mg/mLである。0.2mg/mL未満の濃度は、最終のC-ヌクレオシド-5'-一リン酸の収率を低下させることがあり、0.6mg/mLを超える酵素の濃度は、限定された経済的有用性を有し得る。
【0067】
ヌクレオシド-5'-一リン酸C-グリコシダーゼ
本発明の方法において使用するためのヌクレオシド-5'-一リン酸C-グリコシダーゼは、特に限定されず、それには、反応:D-ペントース-5-リン酸+第2の塩基⇔C-ヌクレオシド-5-'一リン酸を触媒することができるいずれかの酵素が含まれる。C-ヌクレオシドグリコシダーゼは一般に、広い特異性を有し、典型的には、所与のC-ヌクレオシドグリコシダーゼは、いくつかの異なる基質で作用し得る。本発明の方法において使用するためのC-ヌクレオシドグリコシダーゼは、組換え発現の確立された方法により得ることができる。
【0068】
本発明の方法において使用するための好ましいC-ヌクレオシドグリコシダーゼは、シュードウリジレートシンターゼ(別法では、シュードウリジン-5'-一リン酸グリコシダーゼと称される)(EC 4.2.1.70)又は同じ酵素分類を有するいずれか他の酵素である。シュードウリジレートシンターゼは、原核生物におけるヌクレオチド触媒経路において使用される代謝酵素である。シュードウリジレートシンターゼ又はシュードウリジレートシンターゼと同等な活性を有する関連酵素は、多くの原核源から同定及び単離されている。例えば、YeiN(psuG)は、大腸菌(Preumontら、2008、J. Biol. Chem.、vol. 283、No.37、25238~25246頁; Pfeiffer and Nidetzky 2020、Nat Commun. 2020 Dec 8;11(1):6270.)において同定されており、AlnAは、ストレプトミセス種(Ojaら、2013、PNAS、vol. 100、no.4、1291~1296頁)において同定されており、SdmAは、ストレプトミセス・ショードエンシ(Streptomyces showdoensi)(Palmuら、2017、ACS Chemical Biology、vol. 12、1472~1477頁)において同定されており、TmYeiNは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Preumontら、2008、J. Biol. Chem.、vol. 283、No.37、25238~25246頁)において同定されている。加えて、MinB(GenBank: QDX19370.1)は、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)(Kongら、2019、iScience、vol. 22、430~440頁)において同定されており、IndA(GenBank: AFV27435.1)は、ストレプトミセス・クロモフスクス(Streptomyces chromofuscus)において同定されている。シュードウリジレートシンターゼの真核ホモログは、多機能酵素としても存在する。上述の酵素のいずれも、本発明の方法に好適であろう。
【0069】
一部の実施形態では、シュードウリジレートシンターゼは、ペントース-5-リン酸基質からのウラシル及びその誘導体の5-β-C-グリコシル化を触媒する。ペントースは、D-リボース(R1及びR2がそれぞれOHである、上の式Ic)、2-デオキシ-D-リボース(R1がOHであり、R2がHである、上の式Ic)、2-デオキシ-2-フルオロ-D-リボース(R1がOHであり、R2がFである、上の式Ic);D-アラビノース(R1及びR2がそれぞれOHである、上の式Iic)、D-キシロース(R1及びR2がそれぞれOHである、上の式IIIc)及びD-リキソース(R1及びR2がそれぞれOHである、上の式Ivc)のいずれか1つを含んでよい。ウラシル誘導体には、これに限定されないが、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、2-チオウラシルが含まれ得る。
【0070】
一部の実施形態では、本発明の方法の工程c)は、シュードウリジレートシンターゼ(例えば、YeiN)を、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルから選択される塩基(第2の塩基)の存在下でD-リボース-5-リン酸と反応させることを含む。
【0071】
一部の実施形態では、本発明の方法の工程c)は、シュードウリジレートシンターゼ(例えば、YeiN)を、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルから選択される塩基(第2の塩基)の存在下で2-デオキシ-D-リボース-5-リン酸と反応させることを含む。
【0072】
一部の実施形態では、本発明の方法の工程c)は、シュードウリジレートシンターゼ(例えば、YeiN)を、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルから選択される塩基(第2の塩基)の存在下でD-キシロース-5-リン酸と反応させることを含む。
【0073】
一部の実施形態では、本発明の方法の工程c)は、シュードウリジレートシンターゼ(例えば、YeiN)を、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルから選択される塩基(第2の塩基)の存在下でD-アラビノース-5-リン酸と反応させることを含む。
【0074】
一部の実施形態では、本発明の方法の工程c)は、シュードウリジレートシンターゼ(例えば、YeiN)を、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルから選択される塩基(第2の塩基)の存在下でD-リキソース-5-リン酸と反応させることを含む。
【0075】
一部の実施形態では、本発明の方法の工程c)は、シュードウリジレートシンターゼ(例えば、YeiN)を、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、又は2-チオウラシルから選択される塩基(第2の塩基)の存在下で2-デオキシ-2-フルオロ-D-リボースと反応させることを含む。
【0076】
上の実施形態では、かつ上に提示されているスキーム1~4に関して、シュードウリジレートシンターゼの基質であるペントース-5-リン酸のペントース部分は、N-ヌクレオシド出発化合物に由来する。
【0077】
第1の塩基及び第2の塩基が異なる実施形態では(下の「廃棄がある(wasteful)」反応の記載を参照されたい)、ヌクレオシド-5'-一リン酸C-グリコシダーゼは好ましくは、第2の塩基に対しては反応性であるが、第1の塩基に対しては非反応性であるか、又は反応性が低い。
【0078】
理論に拘束されることは望まず、かつ基質としてのウラシル又はその誘導体に特に関して、シュードウリジレートシンターゼにより触媒される反応は、マンニッヒ付加と類似の反応において、正規のN1-C1'グリコシド結合の切断、N3-C6軸に沿ってのウラシル塩基の180°回転、並びにC5及びC1'のカップリングを伴って、C-Cグリコシド結合を形成すると考えられる。塩基及びペントース基質の他の組合せを用いて、及び他の匹敵するC-ヌクレオシド-5'-一リン酸グリコシダーゼ酵素を用いても、類似の化学が生じると予測される。
【0079】
一部の実施形態では、工程c)において使用されるC-ヌクレオシド-5'-一リン酸グリコシダーゼの濃度は、約0.2~約0.6mg/mL、例えば、約0.3~約0.6mg/mL、約0.4~約0.6mg/mL、又は約0.5mg/mL、又は例えば、約0.2~約0.5mg/mL、約0.2~約0.4mg/mL、又は約0.25~約0.35mg/mLである。一部の実施形態では、C-ヌクレオシド-5'-一リン酸グリコシダーゼの濃度は、約0.2mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、約0.35mg/mL、又は約0.4mg/mLである。0.2mg/mL未満の酵素の濃度は、最終のC-ヌクレオシド-5'-一リン酸の収率を低下させることがあり、0.6mg/mLを超える酵素の濃度は、限られた経済的有用性を有し得る。
【0080】
一部の実施形態では、前記ヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ及び/又はヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼは、例えば、好熱性細菌において見出されるとおりの好熱性酵素を含んでよい。好熱性酵素は、それらの非好熱性カウンターパートと比較して、それらの増大した頑強性及び安定性(例えば、高温下、及び一般的なタンパク質変性因子の存在下での)により有利であり得る。これらの特性は、酵素の貯蔵を容易にし、長期間にわたって酵素反応を実行することを可能にし、かつその後の再使用のために限外濾過等の方法による反応混合物からの酵素の単離を容易にすることができる。例えば、好熱性酵素は、大腸菌又は他の好適な宿主細胞において酵素を過剰発現させること、細胞を溶解させること、細胞溶解産物を熱処理してすべての天然の大腸菌酵素を不活性化すること(好熱性酵素は、これらの条件下で活性を維持するであろう)、熱処理された溶解産物を濾過/遠心して不溶性粒子を除去すること、及び粗製の酵素調製物を本発明の酵素的合成方法のために使用することを含む、組換え方法により得ることができる。
【0081】
第2の塩基
前記第2の塩基も、特に限定されず、それには、本明細書において定義されるとおりの標準の、又は化学的に改変された塩基が含まれ得る。第2の塩基として作用し得る追加の塩基には、2-アミノ-1H-ピロール-5-カルボキシレート及び1,4-ナフトキノン(Napthoquinone)が含まれる。本明細書において開示されるペントース-5-リン酸化合物と共にC-グリコシド結合を形成することができる他の改変された塩基又は塩基類似体も、本発明において使用することができる。
【0082】
「廃棄がない」反応
一部の実施形態では、前記第1の塩基及び前記第2の塩基は同じである。これらの反応では、工程a)において廃棄生成物として生成された前記第1の塩基を工程c)において再使用して、C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を形成する。したがって、塩基の「廃棄」がない。
【0083】
これらの実施形態では、前記第1及び第2の塩基は好ましくは、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル及び2-チオウラシルから選択される。
【0084】
特異的な実施形態では、シュードウリジン-5'-一リン酸を合成する次の方法であって、
a) ウリジンを、ヌクレオシドホスホリラーゼの存在下でリン酸の供給源と反応させて、リボース-1-リン酸を第1の中間体として、及びウラシル形成する工程と;
b) ペントース-1-リン酸をホスホムターゼと反応させて、リボース-5-リン酸を第2の中間体として形成する工程と;
c) リボース-5-リン酸をヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼの存在下で、工程a)において生成されたウラシルと反応させて、シュードウリジン-5'-一リン酸を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0085】
前記方法を、下に図示する(スキーム5)。「A」、「B」及び「C」は、それぞれヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、及びヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼを指す。
【0086】
【0087】
上の「廃棄がない」方法では、前記ヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、及びヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼは、上で記載されたとおりであってよい。好ましくは、前記ヌクレオシドホスホリラーゼは、ウリジンホスホリラーゼを含み、前記ホスホムターゼは、ホスホペントムターゼDeoBを含み、及び/又は前記ヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼは、シュードウリジレートシンターゼ(psuG又はyeiN)を含む。
【0088】
「廃棄がない」反応の別の実施形態では、かつスキーム5に更に関して、2-チオウリジン、4-チオウリジン、又は4-チオ-2'-デオキシウリジンを、ウリジンの代わりに出発ヌクレオシドとして使用して、それぞれ2-チオ-シュードウリジン-5-リン酸、4-チオ-シュードウリジン-5'リン酸、及び4-チオ-2'-デオキシ-シュードウリジン-5'-リン酸を形成する。反応において使用される前記ヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、及びヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼは、上で記載されたとおりであってよい。好ましくは、前記ヌクレオシドホスホリラーゼは、ウリジンホスホリラーゼを含み、前記ホスホムターゼは、ホスホペントムターゼDeoBを含み、及び/又は前記ヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼは、シュードウリジレートシンターゼ(psuG又はyeiN)を含む。
【0089】
「廃棄がある」反応
一部の実施形態では、前記第1の塩基は、前記第2の塩基とは異なる。これらの実施形態では、前記第1の塩基は、シトシン、グアニン、チミン、アデニン、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-(3-アミノアリル)ウラシルから選択され得る。前記第2の塩基は、ウラシル、3-メチルウラシル、6-アミノウラシル、4-チオウラシル、2-チオウラシル、2-アミノ-1H-ピロール-5-カルボキシレート、及び1,4-ナフトキノンから選択され得る。これらの実施形態では、反応がN-ヌクレオシド-5'-一リン酸の形成に有利に進行することを保証するように、ヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼは、第2の塩基に対しては反応性であるが、前記第1の塩基に対しては非反応性であるか、又は活性が低いことが望ましい。
【0090】
特異的な実施形態では、N-3メチルシュードウリジン-5'-一リン酸を合成する次の方法であって
a) 5-メチルウリジンを、ヌクレオシドホスホリラーゼの存在下でリン酸の供給源と反応させて、リボース-1-リン酸を第1の中間体として、及びチミンを廃棄生成物として形成する工程と;
b) リボース-1-リン酸をホスホムターゼと反応させて、リボース-5-リン酸を第2の中間体として形成する工程と;
c) リボース-5-リン酸を、ヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼの存在下でN3-メチルウラシルと反応させて、N-3メチルシュードウリジン-5'-一リン酸を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0091】
前記方法を、下に図示する(スキーム6)。「A」、「B」及び「C」は、それぞれヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、及びヌクレオシド-5'-リン酸C-グリコシダーゼを指す。
【0092】
【0093】
上の「廃棄がある」方法では、前記ヌクレオシドホスホリラーゼ、ホスホムターゼ、及びヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼは、上で記載されたとおりであってよい。好ましくは、前記ヌクレオシドホスホリラーゼは、ウリジンホスホリラーゼ又はチミジンホスホリラーゼを含み、前記ホスホムターゼは、ホスホペントムターゼDeoBを含み、及び/又は前記ヌクレオシド5'-リン酸C-グリコシダーゼは、シュードウリジン-5'-リン酸グリコシダーゼ(例えば、psuG/Yei N)を含む。
【0094】
C-ヌクレオシド-5'-一リン酸の精製
本発明の方法により生成されたC-ヌクレオシド-5'-一リン酸を更なる分離及び/又は精製工程に掛けることができる。一部の実施形態では、前記C-ヌクレオシド5'一リン酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーから選択される1つ又は複数の方法により反応混合物から分離する。一部の実施形態では、前記C-ヌクレオシド-5'-一リン酸を反応混合物から分離し、及び/又は結晶化により精製する。
【0095】
所望の用途に応じて、本明細書において記載される方法により生成されたC-ヌクレオシド-5'-一リン酸を、任意選択でいずれかの分離又は精製工程の前にホスファターゼ酵素で処理して、C-ヌクレオシド(及びリン酸廃棄生成物)を生成することができる。したがって、本発明は更に、C-ヌクレオシドを生成する方法を提供する。一部の実施形態では、前記ホスファターゼ酵素は、アルカリホスファターゼ酵素である。一部の実施形態では、前記ホスファターゼ酵素は、HAD様ホスファターゼ、より具体的にはHADヒドロラーゼサブファミリー1A、例えば、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)に由来するUniprot ID Q181K6である。前記ホスファターゼは市販されているか、又は標準的な組換え方法により容易に生成される。
【0096】
本発明の方法により生成されるC-ヌクレオシドは、更なる分離及び/又は精製工程に掛けることができる。一部の実施形態では、前記C-ヌクレオシドを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーから選択される1つ又は複数の方法により反応混合物から分離する。一部の実施形態では、前記C-ヌクレオシドを反応混合物から分離し、及び/又は結晶化により精製する。
【0097】
固体支持体への酵素の固定化
酵素を有機合成において(有機溶媒中等で)使用する場合、それらは多くの場合に、凝集する、沈澱する、及び/又はアンフォールドする(すなわち、変性する)傾向がある。したがって一部の実施形態では、本明細書において開示される方法において使用される酵素を固体支持体に固定化して、固定化された状態で触媒として使用する。そのような固定化は、酵素の安定性を改善し、酵素が通常は許容しないであろう反応条件を可能にし得る。固定化された状態での酵素の使用はまた、反応混合物からの分離を促進し、触媒の回収を可能にする。加えて、固定化により、溶液中に遊離した酵素で可能であったであろうよりもかなり高い濃度で、固定化された酵素を使用することが可能になる。固体支持体に酵素を固定化するための方法は、当技術分野で公知である。
【0098】
一部の実施形態では、前記固体支持体は、約20nm~約100nm、例えば、約20~約60nmの空孔直径を有する硬質多孔性材料である。一部の実施形態では、前記固体支持体は、溶媒中で限定された膨潤を呈し、多くの有機媒体及びpH10未満の水性環境において化学的及び寸法的に安定している。一部の実施形態では、前記固体支持体材料は、WO2015/115993に開示のとおりの調整多孔性ガラス(controlled porosity glass;CPG)又はハイブリッド調整多孔性ガラス(ハイブリッドCPG)である。
【0099】
一部の実施形態では、固体支持体上のキレート化金属を介しての酵素の固定化を容易にするために、前記酵素は、ポリヒスチジンタグ(すなわち、2~8個の連続するヒスチジン残基、好ましくは6個の連続するヒスチジン残基のHis-tag)等の金属アフィニティータグを含む。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書において開示される方法において使用される3つの酵素(すなわち、前記ヌクレオシドホスホリラーゼ、前記ホスホムターゼ及び前記ヌクレオシド-5'-一リン酸C-グリコシダーゼ)のそれぞれを、固体支持体に個別に固定化する。一部の実施形態では、前記酵素のうちの2又は3種を同じ固体支持体に同時固定化する。
【0101】
一部の実施形態では、前記固定化された酵素を、バッチ型又は連続撹拌型タンク反応器内で使用する。一部の実施形態では、前記固定化された酵素を、連続フローモードでの運転に好適な固定床反応器、例えば、連続フロー固定床反応器内に充填する。
【0102】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、その値又はパラメーター自体を対象とする実施形態を含む(かつ記載する)、本明細書における値又はパラメーターに関する。例えば、「約20」に言及する記載は、「20」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を定義する数値を包括する。一般的に言えば、「約」という用語は、示された変数の値と、示された値の実験誤差の範囲内(例えば、平均について95%信頼区間の範囲内)、又は示された値の10パーセントの範囲内であり、そのいずれか大きい方である変数のすべての値とに関する。
【0103】
本発明をここでは、次の実施例により記載するが、それらは、本発明を限定するものではまったくない。すべての引用される文書及び本明細書に記述される参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0104】
実験方法
実施例3~11での分析方法
化合物のウリジン、ウラシル、シュードウリジン、及びシュードウリジン一リン酸の分析及び分離のために、次のセットアップを使用した:機器:Thermo scientific Vanquish、Agilent 1260 Infinity II、カラム:HILICON iHILIC-(P)Classicカラム(長さ×内径 100mm×2.1)、移動相:A:アセトニトリル、B:100mMのギ酸アンモニウムpH5.8、勾配:0分 - 15%B、2分 - 15%B、2.5分 - 40%B、5.5分 - 40%B、5.5分 - 15%Bにスイッチバック、5分間にわたって保持、流速:0.3mL/分、注入体積2μL。ウリジン、ウラシル、シュードウリジン、及びシュードウリジン一リン酸を分析するための試料調製:反応試料10μLを内標準ストック溶液(10mMのカフェイン)50μLと合わせ、続いて、HPLCグレードの水940μLを添加した。溶液を15秒間にわたってボルテックスし、次いで、得られた溶液500μLをアセトニトリル(ACN)500μLと混合し、続いて、更に15秒間にわたってボルテックスした。溶液は、200倍希釈及び0.25mMの最終カフェイン濃度(標準)を示し、それをHPLC分析のために使用した。カフェインが内標準として反応混合物中に存在するならば、HPLC試料の調製は次のとおりであった:反応試料10μLをHPLCグレードの水990μLと合わせた。溶液を15秒間にわたってボルテックスすることにより混合し、次いで、得られた混合物500μLをACN500μLに添加し、続いて、15秒間にわたってボルテックスした。溶液は、200倍希釈及び0.25mMの最終カフェイン濃度(標準)を示し、それをHPLC分析のために使用した。
【0105】
リン酸、リボース-1-リン酸、リボース-5-リン酸を分析するために、次のセットアップを使用した:機器:Dionex Intergion HPIC、カラム:Dionex IonPac AS11-HC-4um RFIC & HPIC、カラム温度35℃、流速:0.38mL/分、検出器:導電率検出器、検出器温度35℃、注入体積10μL、溶離液:水中KOH、勾配:0分 - 10mMのKOH、6分 - 35mMのKOH、7分 - 80mMのKOH、9分 - 80mMのKOH、9分 10mMのKOH、13分 - 10mMのKOH。リボース-リン酸を分析するための試料調製:反応試料10μLをLC-MSグレードのACN200μLと合わせ、続いて、マイクロピュア水(micropure water)中10mMのギ酸アンモニウム100μLを添加した。次いで、マイクロピュア水690μLを添加し、溶液を15秒間にわたってボルテックスした。得られた溶液500μLをマイクロピュア水500μLと混合し、再び15秒間にわたってボルテックスした。溶液は、200倍希釈及び0.5mMの最終ギ酸アンモニウム濃度(標準として)を示し、それをHPLC分析のために使用した。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
シュードウリジン一リン酸の生成
0.48mg/mLのウリジンホスホリラーゼ、0.4mg/mLのホスホペントムターゼ、0.5mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、70mMのウリジン、0.5mMのMnCl
2及び125mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を25mLの合計体積で含有する反応混合物を37℃で振盪した。反応を薄層クロマトグラフィー(TLC)により28時間にわたってモニターした。
図1から分かり得るとおり、ΨMPの量が増加するにつれて、ウラシル/ウリジンの量が経時的に減少し、有効なΨMP合成が確認された。
【0107】
合成されたΨMPのアイデンティティをHPLC-MS及びNMR分光法により確認した。HPLC-MS分析のために、反応混合物から採取した試料をアルカリホスファターゼで処理して、リン酸を除去した。
図2は、アルカリホスファターゼ処理された反応混合物でのHPLC-MSクロマトグラムであり、2つのピークが254nmで観察された。1.918分の溶離時点での第1のピークはシュードウリジンを表す。2.081分の溶離時点での第2のピークはウラシルを表す。
図3は、市販のシュードウリジンでの比較のHPLC-MSクロマトグラムである。試料調製のために使用される有機溶媒(メタノール及びアセトニトリル)の存在により、シュードウリジンに対応する溶離ピークは、2.34秒のやや長い保持時間で観察される。
図4は、
図2から1.918分の保持時間を有するピークにおける物質のHPLC-MS質量スペクトルである。これは、検出されるイオンが、質量において、MS(ESI+):m/z 244.80 [M+H]+を有するプロトン化シュードウリジン(上)及びMS(ESI+):m/z 242.75 [M-H]
-を有する脱プロトン化シュードウリジン(下)と等しいことを実証している(シュードウリジンの分子量は244g/molである)。
図5Aは、アルカリホスファターゼで処理する前の反応混合物でのHPLC-MSクロマトグラムである。消費されなかったウラシルは、2.509分で溶離され、ΨMPは、4.193分で溶離される。
図5Bは、
図5AにおけるΨMPピークでのHPLC-MS質量スペクトルであり、検出されたイオンが、質量において、MS(ESI+):m/z 324.75 [M
+H]
+を有するプロトン化ΨMP(上)及びMS(ESI+):m/z 322.75 [M
-H]
-を有する脱プロトン化ΨMP(下)と等しいことを示している(ΨMPの分子量は324.18g/molである)。
【0108】
NMR分光法のために、合成されたΨMPを、イオン交換クロマトグラフィー(固相DEAE Sephadex A-25、溶離液:0.01~0.1MのNaCl)、続く、逆相クロマトグラフィー(C18 30g.カラム、溶離液:水)により、反応混合物から精製した。
1H-NMR、
13C-NMR及び31
P-NMRスペクトルを精製された物質について記録し、ΨMPのアイデンティティを更に確認した。
図6は、D
2O中の合成されたΨMPの
1H-NMRスペクトルを表す。ΨMPは、2つの特異的なシグナル:4.80ppmでの二重線(1'-C水素)及び7.77ppmでの一重線(6-C水素)により特徴づけられる。5.24ppm及び5.39ppmにおける小さなシグナルは、リボース-1-リン酸又はリボース-5-リン酸を表す。
図7は、D
2O中の合成されたΨMPの
13C-NMRスペクトルを表す。9つの異なるシグナルは、ΨMPの9つの異なる炭素原子を表す。
図8は、D
2O中の合成されたΨMPの
31P-NMRスペクトルを表す。1.45ppmの主要なシグナルは、合成されたシュードウリジン-5'-一リン酸のリン原子を表し、より小さい0.49ppmのシグナルは、リボース-1'-リン酸又はリボース-5'-リン酸に由来する。
【0109】
反応収率を測定するために、反応混合物の試料をアルカリホスファターゼで処理し、HPLC-MSにより分析した。測定された試料におけるシュードウリジンピークの面積(1886102面積単位)を
図3において提示されているとおりの既知の濃度を有する標準試料におけるシュードウリジンピークの面積(2765690面積単位)と比較することにより、試料中のシュードウリジンの量を計算した。およそ380mgのΨMPが25mL反応で形成し、これは、約70%の収率をもたらしている。
【0110】
(実施例2)
種々のN-ヌクレオシドからのC-ヌクレオシド-5'-一リン酸の生成
0.48mg/mLのウリジンホスホリラーゼ、0.4mg/mLのホスホペントムターゼ、0.5mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、0.5mMのMnCl
2及び125mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を含有する反応混合物を0.1mLの合計体積で10mMの2-チオウリジン又は10mMの4-チオウリジン又は10mMの4-チオ-2'-デオキシウリジンと混合し、37℃で16時間にわたって振盪した。得られた生成物を
図9により説明されているとおりTLCで分析した。C-ヌクレオシド-5'-一リン酸形成が3種すべての出発ヌクレオシドから観察される。
【0111】
(実施例3)
1リットル規模でのシュードウリジン一リン酸の生成
0.03mg/mLのウリジンホスホリラーゼ、0.26mg/mLのホスホペントムターゼ、0.29mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、200mMのウリジン、0.5mMのMnCl2及び240mMのリン酸カリウム緩衝液pH8.0を1Lの合計体積で含有する反応混合物を300rpm及び37℃で、ジャケット付き1L撹拌型タンク反応器(Radleys社、バッチ型反応器、ガラス製)内で撹拌した。反応を24.5時間の時間経過の間、記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によりモニターした。測定を2連で行い、平均値を決定した。
【0112】
図10において示されているとおり、シュードウリジン一リン酸濃度が常に上昇した一方で、ウリジン濃度は低下した。ウラシルのレベルが経時的に着々と低下した一方で、より高いシュードウリジン一リン酸形成が達成された。24.5時間後に、次の生成物分布が達成された:0.264mMのウリジン、8.147mMのウラシル、191.58mMのシュードウリジン一リン酸。リボース-リン酸中間体を、HPLCイオンクロマトグラフィーを使用して分析すると、24.5時間後に、1.0mMのリボース-1-リン酸、及び6.2mMのリボース-5-リン酸が明らかになった。生成物、基質、及び中間体をHPLC分析に基づき、市販の標準(Sigma Aldrich社、Merck社、BOCSCI Inc.社)と比較して同定した。
【0113】
24.5時間後に、およそ62gのシュードウリジン一リン酸に相関する95.8%のシュードウリジン一リン酸収率と一緒に、99.7%のウリジン変換率が達成され、それにより、有効なスケーラブルな酵素カスケード反応が実証された。
【0114】
(実施例4)
シュードウリジン一リン酸からシュードウリジンへの変換
実施例3から得られた物質を濾過し(濾過システム:Amicon(登録商標)Stirred Cell、フィルター:Ultrafiltration Disk、10 kDa NMW、76mm直径再生セルロース)、そのまま、脱リン酸化工程のための反応混合物として使用した。5mMのMgCl2及び0.12g/Lのホスファターゼ(Uniprot:Q181K6、由来:クロストリディオイデス・ディフィシル(630株)、2.38mg/mLの濃度で50mMのトリスpH8.0中に貯蔵)を反応混合物に添加し、それを300rpm及び37℃で、ジャケット付き1L撹拌タンク反応器(Radleys社、バッチ型反応器、ガラス製)内で撹拌した。反応を23時間の間、HPLCによりモニターした。
【0115】
23時間後に、次の生成物分布が得られた:0.11mMのウリジン、4.77mMのウラシル、184mMのシュードウリジン、2mMのリボース-5-リン酸、1.9mMのシュードウリジン一リン酸。反応混合物を濾過し(濾過システム:Amicon(登録商標)Stirred Cell、フィルター:Ultrafiltration Disk、10 kDa NMW、76mm直径再生セルロース)、凍結させた。この実施例は、リットル規模での効率的な脱リン酸化工程作業を、98.7%のシュードウリジン一リン酸変換率及び44.9g/Lに対応する96.2%のシュードウリジン収率で実証している。
【0116】
(実施例5)
粗製の反応混合物からのシュードウリジンの精製及び結晶化
実施例4から得られた物質の8mLアリコットを、回転蒸発器を使用して真空中で蒸発乾固し、続いて、i-PrOH(1mL)を用いて更に共沸乾燥した。得られた固体を温(60℃)蒸留水2mLに再溶解して、合計体積約2.25mLを得た。この混合物の1.8mLアリコットを室温に冷却すると、その後すぐに、小さな白色の結晶が現れた。混合物を4℃に更に冷却し、この温度で終夜放置した。得られた白色の結晶を濾過し、冷エタノール(0.5mL)で洗浄し、続いて、乾燥した。白色の結晶性シュードウリジン104mgが得られた(収率38%)。結晶の純度を、記載されているとおりにHPLCにより決定した。結果:シュードウリジン>99%、ウラシル0.3%、シュードウリジン一リン酸約0.1%、ウリジン<0.1%。
【0117】
(実施例6)
種々のリン酸カリウム緩衝液濃度の存在下、上昇させたウリジン濃度(200mM)でのウリジンからシュードウリジン-5'-一リン酸への変換
1mL反応混合物のセットを、0.14mg/mLのホスホリラーゼ、0.26mg/mLのホスホペントムターゼ、0.29mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、200mMのウリジン、0.5mMのMnCl
2、50mMのカフェイン(分析用の内標準として)、及び変動濃度のpH8.0のリン酸カリウム緩衝液(250、245、240、235、230、220、210mM)を含有する96ディープウェルプレート(2mL、ラウンドウェル)内で調製した。反応混合物を37℃及び800rpmで、プレート振盪機(MB100-4A Thermoshaker、Allsheng社)内で24時間にわたってインキュベートした。測定を3連で行った(n=3)。リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)濃度が235mM未満である場合に、ウリジン変換率及びシュードウリジン一リン酸収率の低下が観察された(
図11を参照されたい;測定値の平均が指示エラーバーと共に示されている)。pH8.0で240mMのリン酸カリウム緩衝液濃度では、次の生成物分布が得られた:187mMのシュードウリジン一リン酸、5mMのウリジン、及び8mMのウラシル。これは、97.5%のウリジン変換率及び93.5%のシュードウリジン一リン酸収率に対応する。このように、緩衝能が同様に上昇するならば、基質負荷の増大が可能である。
【0118】
(実施例7)
低下させた酵素濃度の存在下でのウリジンからシュードウリジン-5'-一リン酸への変換
0.03mg/mLのホスホリラーゼ、0.26mg/mLのホスホペントムターゼ、0.29mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、240mMのリン酸カリウム緩衝液pH8.0、0.5mMのMnCl2を含有する反応混合物50mLをエルレンマイヤー振盪フラスコ内で調製した。反応混合物を37℃及び150rpm(25mmオービタルシェーカー、New Brunswick Innova 42)で24時間にわたってインキュベートした。24時間後に、次の生成物組成が得られた:0.3mMのウリジン、4.2mMのウラシル、0.4mMのシュードウリジン、195.2mMのシュードウリジン一リン酸。この手順は、99.9%のウリジン変換率及び97.6%のシュードウリジン一リン酸収率をもたらした。更に、リン酸及びリボース-リン酸含有量は、0.2mMのリボース-1-リン酸、2.1mMのリボース-5-リン酸、及び30.8mMのリン酸であると決定された。このように、酵素あたり0.3mg/mL未満の酵素濃度で、高いウリジン変換率及びシュードウリジン一リン酸収率を達成することができる。
【0119】
(実施例8)
種々のpHを有するリン酸カリウム緩衝液中でのウリジンからシュードウリジン-5'-一リン酸への変換
1mL反応混合物のセットを、0.14mg/mLのホスホリラーゼ、0.26mg/mLのホスホペントムターゼ、0.29mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、70mMのウリジン、0.5mMのMnCl2、50mMのカフェイン(内標準)を種々のpH(6、7、8)の200mMのリン酸カリウムと共に含有する96ディープウェルプレート(2mL、ラウンドウェル)内で調製した。反応混合物を37℃及び800rpmで、プレート振盪機(MB100-4A Thermoshaker、Allsheng社)内で24時間にわたってインキュベートした。24時間後に、pH6で実行した反応では、生成物組成は、21.82mMのウリジン、24.96mMのウラシル、23.21mMのシュードウリジン一リン酸であった。これは、68.8%のウリジン変換率及び33.1%のシュードウリジン一リン酸収率に対応する。pH7で実行した反応は、24時間の反応時間の後に、2.0mMのウリジン、11.74mMのウラシル、及び56.24mMシュードウリジン一リン酸を含有し、97.1%のウリジン変換率及び79.9%のシュードウリジン一リン酸収率に対応した。pH8で実行した反応は、24時間の反応時間の後に、0.25mMのウリジン、6.32mMのウラシル、及び63.42mMのシュードウリジン一リン酸を含有し、99.6%のウリジン変換率及び90.9%のシュードウリジン一リン酸収率に対応した。結果は、pH6又はpH7と比較して、リン酸カリウム緩衝液中でのpH8での反応が好ましいことを実証している。
【0120】
(実施例9)
ウリジンからシュードウリジン-5'-一リン酸への変換に対する酵素濃度の変化の作用
1mL反応混合物のセットを、50mMのリン酸カリウム緩衝液pH8.0、200mMのウリジン、0.5mMのMnCl2、50mMのカフェイン(内標準)を含有する96ディープウェルプレート(2mL、ラウンドウェル)内で調製し、ホスホリラーゼ(udp)、ホスホペントムターゼ(deoB)及びシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ(psuG)の濃度を1種、2種又は3種すべての酵素について、±10%又は±15%変化させた。下に示されているとおり、これは、ホスホリラーゼでは0.0255~0.0345mg/mL、ホスホペントムターゼでは0.221~0.299mg/mL、及びシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼでは0.2465~0.3335mg/mLの評価濃度範囲をもたらした。
【0121】
【0122】
生成物形成を24時間の間モニターした。試験された酵素比は、24時間の反応経過の間、同じ反応プロファイル及び分析物分布を有したことが観察された。3種すべての酵素を15%減少させても、反応は、同じ速度で進行したと考えられた。このように、結果は、±15%の酵素量の偏移を許容する強固なカスケード反応を実証している。
【0123】
(実施例10)
適切な酵素比がシュードウリジン-5'-一リン酸形成を可能にする
1mL反応混合物を、0.03mg/mLのホスホリラーゼ、0.26mg/mLのホスホペントムターゼ、0.29mg/mLのシュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼ、70mMのウリジン、0.5mMのMnCl2、50mMのカフェイン(分析のための内標準)及び200mMのリン酸カリウム緩衝液pH7.0を含有する96ディープウェルプレート(ラウンドウェル)内で調製した。混合物を37℃で24時間にわたってインキュベートした。24時間後に、次の生成物形成が観察された:51mMのシュードウリジン一リン酸、15.4mMのウラシル、3.6mMのウリジン。これは、72%のシュードウリジン一リン酸収率及び95%のウリジン変換率に対応する。その収率は、実施例1の収率(約70%)に匹敵するが、本実施例では、より低い個別及び全体酵素濃度を使用した。結果は、酵素負荷のみが、シュードウリジン-5'-一リン酸の高収率を達成するために考慮すべき唯一の因子ではないことを実証している。実施例9と共に、その結果は、ホスホリラーゼ、ホスホペントムターゼ、シュードウリジン-5'-一リン酸(ΨMP)グリコシダーゼの酵素比も重要であることを実証している。
【0124】
(実施例11)
シュードウリジン-5'-一リン酸の脱リン酸化
反応混合物を、5.1mMのウラシル、0.17mMのウリジン、50mMのカフェイン(内標準)、184.1mMのシュードウリジン一リン酸、5mMのMgCl2及び0.09mg/mLのホスファターゼ(Uniprot:Q181K6、由来:クロストリディオイデス・ディフィシル(630株)、2.07mg/mLの濃度で50mMのトリスpH8.0中で貯蔵)を含有して調製した。得られた反応混合物785mLを23.5時間にわたって300rpm及び37℃で、ジャケット付き1L撹拌型タンク反応器(Radleys社、バッチ型反応器、ガラス製)内で撹拌した。反応を23.5時間の間、HPLCによりモニターした。
【0125】
23.5時間後に、次の生成物分布が得られた:0.15mMのウリジン、5.6mMのウラシル、181.7mMのシュードウリジン、及び2mMのシュードウリジン一リン酸。反応混合物を濾過し(濾過システム:Amicon(登録商標)Stirred Cell、フィルター:Ultrafiltration Disk、10 kDa NMW、76mm直径再生セルロース)、凍結した。
【国際調査報告】