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特表2025-502553心肺蘇生中に必要な臓器に効率的な量の酸素を安全に供給するシステム方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】心肺蘇生中に必要な臓器に効率的な量の酸素を安全に供給するシステム方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20250117BHJP
   A61M 16/12 20060101ALI20250117BHJP
   A61N 1/365 20060101ALI20250117BHJP
   A61H 31/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61M16/00 311
A61M16/12
A61M16/00 370Z
A61N1/365
A61H31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024562380
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-09-10
(86)【国際出願番号】 IB2023050197
(87)【国際公開番号】W WO2023135511
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/298,297
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524261554
【氏名又は名称】ガブリエリー,ノアム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエリー,ノアム
【テーマコード(参考)】
4C053
4C074
【Fターム(参考)】
4C053KK05
4C053KK07
4C074AA10
4C074BB02
4C074BB04
(57)【要約】
心肺蘇生(CPR)中に、必須臓器に効率的な量の酸素を安全に供給するためのシステムが記載され、半自発的陽圧換気を行うためのそれぞれの方法および気管内装置がさらに記載され、システムは、少なくとも1つの四肢圧迫装置、陽圧換気システム、気管内チューブ、心臓刺激装置、気管内圧センサ、シンクロナイザから構成され、方法は、以下から構成される。少なくとも1つの四肢装置を圧迫し、四肢への血流を閉塞する工程、混合ガスを供給する工程、気管内チューブを提供する工程、展開構成を付与する工程、保留構成を付与する工程、心臓刺激装置を実行する工程、圧力を決定する工程、タイミングを同期させる工程。気管内装置は、細長いチューブ、展開構成および保留構成を想定するシーリングカフから構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心肺蘇生(CPR)中に、必要な臓器に効率的な量の酸素を安全に供給するためのシステムであって、
(a)少なくとも1つの四肢圧迫装置であって、四肢に遠位から近位へ順次圧迫力を及ぼし、前記四肢への血流を閉塞するように構成された、四肢圧迫装置と、
(b)陽圧によって混合ガスを供給するように構成された陽圧換気サブシステムとを備え、
前記陽圧換気サブシステムが、
(I)二酸化炭素濃縮ガスを含む二酸化炭素リザーバと、
(II)分子酸素濃縮ガスを含む分子酸素リザーバと、
(III)前記二酸化炭素リザーバおよび前記分子酸素リザーバに動作可能に接続され、前記分子酸素濃縮ガスを前記二酸化炭素濃縮ガスと制御可能に混合するように構成された、制御可能な混合モジュールと、
(IV)動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサであって、動脈血中の二酸化炭素分圧を検出するように構成された二酸化炭素分圧センサと、
(V)前記制御可能な混合モジュールおよび前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサに動作可能に接続されたコントローラであって、前記分子酸素濃縮ガスおよび前記二酸化炭素濃縮ガスの混合物における、前記分子酸素濃縮ガスの比率および前記二酸化炭素濃縮ガスの比率からなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御するように構成されたコントローラと、
(VI)その遠位部分に配置されたシーリングカフを含む気管内チューブであって、反復的に想定するように構成されている、気管内チューブと、を含み、
前記気管内チューブは、
(i)前記シーリングカフが気管の内面に係合され、それにより、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持しながら、前記シーリングカフと前記気管の内面との間の気体の通路を効果的にシールする、展開構成と、
(ii)前記気管からの前記気体の自然流出を維持しながら、前記シーリングカフが前記気管の前記内表面から外れる、保留構成と、を有し、
前記システムが、
(c)機械的刺激および電気的刺激からなる群から選択される少なくとも1種の刺激を所定の時間間隔で心筋に与えることにより、前記動脈血の自発的循環を戻すように構成された心筋刺激装置と、
(d)前記気管内の圧力を連続的に測定するように構成された気管内圧センサと、
(e)前記陽圧換気システムの注入フェーズを前記心臓刺激の減圧フェーズの開始とタイミングを合わせるように構成されたシンクロナイザと、をさらに備える、システム。
【請求項2】
前記四肢に対する前記遠位から近位への順次的な圧迫力が、アップローリングする収縮弾性リングによって達成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記四肢に対する前記遠位から近位への順次的な圧迫力が、弾性包帯、調節可能な閉鎖部を有する弾性四肢ラップ、調節可能な閉鎖部を有する膨張可能な四肢ラップからなる群から選択される少なくとも1つの要素を適用することによって達成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの四肢圧迫装置が、100~200mmHgおよび200~300mmHgからなる群から選択される表面皮膚圧範囲を適用することにより、前記四肢への血液の動脈流入を閉塞するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記混合ガスが、
95%の分子酸素と5%の二酸化炭素、
0.1~2.0%の二酸化炭素で残りが分子酸素、
2.1~4.0%の二酸化炭素で残りが分子酸素、
4.1~5.6%の二酸化炭素で残りが分子酸素、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素で残りが化学元素キセノン、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素で残りが化学元素アルゴン、からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサは、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHg、46~50mmHg、51~55mmHg、56~65mmHgからなる群から選択される少なくとも1つの圧力範囲に維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および酸素分子30%および化学元素キセノン65%の混合ガスと、酸素分子30%および化学元素キセノン70%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と50%の分子酸素と45%の化学元素キセノンとの混合ガスと、50%の分子酸素と50%の化学元素キセノンとの混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および酸素分子30%および化学元素アルゴン65%の混合ガスと、酸素分子30%および化学元素アルゴン70%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および酸素分子50%および化学元素アルゴン45%の混合ガスと、二酸化炭素分子50%および化学元素アルゴン50%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
心肺蘇生(CPR)中に、必要な臓器に効率的な量の酸素を安全に供給する方法であって、
(a)少なくとも1つの四肢装置を圧迫し、前記四肢への血流を閉塞することにより、四肢に遠位から近位への順次圧迫力を作用させる工程と
(b)陽圧換気によって混合ガスを送り込む工程と、を包含し、
前記混合ガスを送り込む工程が、
(I)二酸化炭素濃縮ガスを供給する工程と、
(II)分子酸素濃縮ガスを供給する工程と、
(III)前記分子酸素濃縮ガスを前記二酸化炭素濃縮ガスと制御可能に混合する工程と、
(IV)動脈血中の二酸化炭素分圧を検出する工程と、
(V)前記分子酸素濃縮ガスと前記二酸化炭素濃縮ガスとの混合ガス中の、前記分子酸素濃縮ガスの比率と前記二酸化炭素濃縮ガスの比率とからなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御する工程と、を含み、
前記方法が、
(c)前記気管内チューブの遠位部分に配置されたシーリングカフを含む気管内チューブを提供する工程と、
(d)前記シーリングカフに展開構成を付与し、前記シーリングカフを気管の内面に係合させ、それにより、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持しながら、前記シーリングカフと前記気管の内面との間の気体の通路を効果的に封止する工程と、
(e)前記気管からの前記気体の自然流出を維持しながら、前記気管の前記内表面から前記シーリングカフが外れ、保留構成を前記シーリングカフに付与する工程と、
(f)機械的刺激および電気的刺激からなる群から選択される少なくとも1種の刺激を所定の時間間隔で与えることにより、前記動脈血の自発的循環を戻すために、心筋に対して心筋刺激を行う工程と、
(g)前記気管内の圧力を連続的に測定する工程と、
(h)前記陽圧換気システムの注入フェーズのタイミングを、前記心臓刺激の減圧フェーズの開始と同期させる工程と、をさらに包含する、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの四肢装置の前記圧迫および前記四肢への前記血流の閉塞は、アップローリングする収縮弾性リングによって行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの四肢装置の前記圧迫および前記四肢への前記血流の閉塞は、弾性包帯、調節可能な閉鎖部を有する弾性四肢ラップ、調節可能な閉鎖部を有する膨張可能な四肢ラップからなる群から選択される少なくとも1つの要素を適用することによって行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの四肢装置が、100~200mmHg、200~300mmHgからなる群から選択される表面皮膚圧範囲を適用することにより、四肢への血液の動脈流入を閉塞するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記混合ガスが、
95%の分子酸素と5%の二酸化炭素と、
0.1~2.0%の二酸化炭素で残りが分子状酸素と、
2.1~4.0%の二酸化炭素で残りが分子状酸素と、
4.1~5.6%の二酸化炭素で残りが分子酸素と、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素とで残りが化学元素キセノンと、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素とで残りが化学元素アルゴンと、からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と95%の分子酸素の炭化水素ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを、41~45mmHg、46~50mmHg、51~55mmHg、56~65mmHgからなる群から選択される少なくとも1つの圧力範囲に維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素30%および化学元素キセノン65%の混合ガスと、分子酸素30%および化学元素キセノン70%の混合ガスとを制御可能に混合して、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素50%および化学元素キセノン45%の混合ガスと、分子酸素50%および化学元素キセノン50%の混合ガスとを制御可能に混合して、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素30%および化学元素アルゴン65%の混合ガスと、分子酸素30%および化学元素アルゴン70%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素50%および化学元素アルゴン45%の混合ガスと、分子酸素50%および化学元素アルゴン50%の混合ガスとを制御可能に混合して、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
半自発的陽圧換気を行うための気管内装置であって、
(a)内腔を含み、気管内展開用に構成された細長いチューブと、
(b)前記細長いチューブの遠位部分に配置されたシーリングカフであって、展開構成と保持構成とを反復的に想定するように構成された、シーリングカフと、を備え、
(c)前記展開構成において、前記シーリングカフは、気管の内面に係合するように広げられ、それにより、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持しながら、前記シーリングカフと前記気管の内面との間の気体の通路を効果的にシールし、
(d)前記保留構成では、前記気管からの前記気体の自然流出を維持しながら、前記気管の前記内表面から外れるように、前記シーリングカフが折り畳まれる、気管内装置。
【請求項24】
前記シーリングカフは、膨張可能な内腔を含む膨張可能なトロイダル構造からなる、請求項23に記載の気管内装置。
【請求項25】
前記シーリングカフの前記膨張可能な内腔と前記細長いチューブの前記内腔とを接続する少なくとも1つの導管をさらに備える、請求項24に記載の気管内装置。
【請求項26】
前記シーリングカフの前記トロイダル構造の前方遠位部分に少なくとも1つの出口をさらに備え、前記シーリングカフの前記膨張可能な内腔から前記気管への気体の流入を維持するように構成される、請求項24に記載の気管内装置。
【請求項27】
前記細長いチューブが、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持するように構成された一方向流れ逆止弁を備える、請求項23に記載の気管内装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に救急医学および心臓学の分野に関わるものであり、より具体的には、心停止の有意義な転帰を改善する手段に関するものである。
【0002】
(はじめに)
心停止は、米国では毎年50万人以上、世界では数百万人の死因となっている。大多数の患者の心停止の原因は、冠動脈の重大な狭窄または閉塞であり、心臓のポンプ機能の停止につながる。その結果、血流が突然停止し、組織への酸素供給が停止する。結果は壊滅的である。ある組織(例えば皮膚、脂肪、筋肉)には酸素の貯蔵と高エネルギー化合物の貯蔵があり、不可逆的な損傷を受けることなく数時間生き延びることができるが、他の組織(例えば心筋や脳)にはそのような貯蔵がなく、継続的な高酸素供給を必要とするため、細胞に不可逆的な損傷と損傷を受けることなく短時間の虚血に耐えることはできない。
【0003】
現在の米国心臓協会(AHA)の心停止患者救命プロトコルは、心肺蘇生法、すなわち胸骨圧迫と電気的除細動を行い、機械的・電気的心機能を回復させることであり、自然循環の回復(ROSC)としても知られている。
【0004】
このように停止した心臓をジャンプスタートさせる鍵は、冠動脈を通じて心筋への血流を速やかに回復させることである。しかし、今日では、ROSCだけでは十分ではなく、心停止後の生存を有意義なものにするためには、心肺蘇生(CPR)の過程で神経学的損傷を避けることが重要であることがはっきりと理解されている。つまり、心肺蘇生中も脳への血流と酸素供給を維持しなければならない。残念ながら、胸骨圧迫が初めて導入されてから60年以上経過したCPRの全体的な臨床経験は非常に残念なものである。最近の研究では、病院外で心停止を目撃した8000人の患者にCPRが行われた。そのうちの半数にはエピネフリン(Epi)を静脈内投与し、残りの半数には同じCPRプロトコルを行ったがエピネフリン投与は行わなかった。エピ投与群では、病院到着時のROSCが、エピを投与しなかった患者のROSCよりはるかに高かった。しかし、心停止から30日後の神経学的無傷生存率を比較したところ、両群間に統計学的有意差は認められなかった。
【0005】
したがって、Epiの使用は心臓の鼓動を復活させるという点では有益であるが、その使用は脳の生存能力を助けるものではなく、おそらく傷つけるものでさえあることは明らかである。同様の結果は、複数の臨床研究および実験研究でも示されている。図1のフロー図は、心停止とCPRの間に起こる生理学的事象のシーケンスを示している。CPRの有意義な結果を改善するためには、さらに優れた手段が必要であることは明らかである。
【0006】
(CPRの神経学的転帰を悪くする原因となっている、CPR中の現在の慣行とメカニズムの分析)
Epiやその他の血管圧迫薬の投与は、脳動脈を含む動脈を収縮させ、その結果、血液の流れに対する抵抗が増大する。これは血圧を上昇させるかもしれないが、明らかに血流を妨げ、脳組織への酸素輸送を阻害する。
【0007】
(a)低酸素性血管拡張としても知られる「反応性充血」の生理学的メカニズムにより、全身の細動脈が最大限に拡張する。そのため、Epiやその他の鎮圧薬が静脈に注射されると、広く開いた動脈を通ってゆっくりと移動する。そのため、静脈内に注射されたエピやその他の血管圧迫薬が体組織に到達するタイミングは、CPR中は非常に不均一である。脳など心臓に近い組織が先に薬物を受け取り、足など遠い組織はかなり遅れて薬物を受け取る。その結果、脳循環は末梢循環よりも早く収縮する。単純な流体力学の性質上、胸骨圧迫CPRによって発生した血流は、大きく開いた末梢に優先的に流される一方で、収縮した脳動脈への流入は妨げられる。Epiが末梢に到達するのはそれより後である。しかし、半減期が4分と短く、CPRによる血流が緩慢であるため、末梢到達時にはすでに部分的に不活性化されている。この逆説的な「スティール現象」は、脳組織から細胞への不可欠な酸素輸送を奪う。
【0008】
患者が呼吸していない場合、陽圧人工呼吸はもちろん必要である。(a)CPR中のCO2の代謝産生が大幅に減少するのに比べて換気量が多すぎると、動脈PCO2(PaCO2)が低下する。低PaCO2は脳血管収縮の強力な原因であり、再び脳血流を阻害する。(b)低PaCO2は酸素-ヘモグロビン解離曲線の左へのシフト(ボーア効果)を引き起こす。このシフトにより、酸素とヘモグロビンの結合が強くなり、組織での酸素分子のオフロードが減少する。その結果、毛細血管を流れる血液1mlあたり、毛細血管のPO2がどのようなレベルであっても、供給される酸素はかなり少なくなる(例えば20~35%少なくなる)。組織が血液からより多くの酸素を取り出そうとしても、毛細血管末端のPO2を下げる必要があり、それによって毛細血管からミトコンドリアへ酸素分子を運ぶ拡散駆動力が低下するため、役に立たない。流れが阻害され、酸素供給量が減少し、分圧勾配が小さくなることで、脳への酸素輸送が決定的に制限される。CPR中に過換気は絶対に避けなければならないことは、複数の動物実験や臨床研究でも認められている。(c)比較的大きな1回換気量の陽圧換気は、胸腔内圧を上昇させ、肺胞を膨張させ、それによって静脈血の心臓右側への還流を妨げ、肺毛細血管を圧迫し、その流れに対する抵抗を増大させ、また肺毛細血管を伸張させる(伸長させる)、その流れに対する抵抗も増大させる。これらの現象により、心臓の部屋が一杯になり、圧縮されても、圧縮されるごとに少量の血液しか排出されなくなる。気道への空気の流入を防ぐことによって胸部圧迫による胸部容積の減少を維持し(例えば「インピーダンス閾値装置」による)、CPR中に胸壁の圧縮-減圧(吸引)力を使用することによって気道に陰圧を加えることによって陽圧換気のこれらの影響を打ち消そうとする試みは、中心静脈と肺血管、および肺の遠位で非軟骨性の気道の動的虚脱の性質により、その効果は限定的であることに留意されたい。ある状況下では、胸部血管や小気道に対する胸壁内圧が負圧になると、導管が虚脱したり、流量が制限されたり、フラッターが発生したりすることがある。
【0009】
比較的過剰な換気に伴うPaCO2の低下は、pHの上昇(「呼吸性アルカローシス」)に続き、O2-ヘモグロビン解離曲線の左方シフトの独立した原因となる。このことは、長年行われてきたが、現在では推奨されていない、おそらく組織の嫌気性代謝による乳酸の生成によって引き起こされる代謝性アシドーシスを打ち消すための炭酸水素ナトリウムの静脈内投与によって、さらに侮辱される。重炭酸塩の投与は、O2解離曲線をさらに左にシフトさせ、その結果、血液から組織へのO2分子の運搬が制限される。
【0010】
図面に示された図は、これらのメカニズムの概要を示している。
【0011】
(背景美術)
CPR中の血管拡張薬の使用は、脳血流を有意に増加させることにより、複数の動物実験で有益であることが以前に示されている。以前使用された化合物は、強力な血管拡張薬として知られるニトロプルシドナトリウム(Na-Nitroprusside(SNP))の静脈内投与である。この動物実験では、SNPを投与すると全身血圧が低下することも明らかにされている、血管拡張が誘導される場合には予想されることである。血圧の低下はPaCO2が上昇したときにも起こることが知られている。
【0012】
上記2で述べた極端な血管拡張を機械的な方法で打ち消そうとする試みは、以下に概説するように、今のところほとんど失敗に終わっている。
【0013】
腹部と脚を含む下半身全体を覆う膨張式ブラダーを備えた衣服である軍用(医療用)アンチショックパンツ(MAST)を使用した研究では、有益な効果は見られなかった。この方法が失敗した主な理由は3つある。
【0014】
MASTは遠位から近位へと順次膨張するわけではない。そのため、末梢から末梢へ血液を圧迫することはない。実際、近位側のブラダーが遠位側のブラダーより先に膨張すると、MASTが静脈止血帯として機能し、血液が自動輸血されずに末梢に閉じ込められる可能性がある。
【0015】
MASTは徐々に取り外すことはできない。膀胱を収縮させるか、マジックテープ(登録商標)の留め具を開くかして取り外すと、末梢血管床が突然開き、末梢抵抗の急激な低下と血圧の低下を招く、患者のホメオスタシスの再崩壊を招くことが多い。
【0016】
腹部膀胱による腹部の圧迫は内臓を尾側に移動させ、下部肋骨の拡張を制限するため、呼吸に大きな支障をきたす。
【0017】
MASTの適用に時間がかかりすぎる(5分以上)。研究者らは、CPR中に腹部を強く縛ることによって末梢抵抗を増加させようと試みてきた。この方法も、実験動物(ブタ)のCPR実験では転帰を改善できなかった。
【0018】
CPR中に脚を挙上することは以前にも試みられたことがある。しかし、脚を挙上することで脚から排出される血液は45%に過ぎない(Blond et Al, Acta Ortho Scand. 2001)。さらに、胸部を圧迫するたびに、血液は拡張した下肢の動脈に流れ込むため、搬送中に余分な人員を必要とする挙脚の利点は最小限になる。
【0019】
エスマーチ包帯で脚を縛ることは、1951年、タスマニアのウールワース博士によって、整形外科手術のためにエーテル麻酔を受け、心停止を経験した小児において、開胸心臓マッサージ中に心臓を再拡張する有益な効果があることが報告された。その子供は助からなかった。
【0020】
外傷時の止血や空気止血のような止血帯の装着は、理論的には血管抵抗を増加させ、ストローク量を必要な臓器に流すことによって心臓マッサージの有効性を向上させることができる公知の技術である。しかし、整形外科でよく知られているように、まず血液を完全に空にすることなく四肢の血流を止めることは、しばしば血管内凝固を伴う。これらの血栓は、止血を解除すると急速に肺や脳に移動し(Sulek 1999)、結果として肺塞栓や脳梗塞を引き起こす。
【0021】
大腿動脈から挿入した膨らませたバルーンで大動脈を遮断するのは、実験動物において有意な有益効果をもたらす英雄的手段である(Sesma et Al, Am.J. Emerg.Med.Effect of Intra-aortic occlusion balloon in external thoracic compressions during CPR in pigs - ScienceDirect)、https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0735675702000402。
【0022】
重要な先行技術は、必須臓器に酸素化血液を供給しようとするCPR中の体外膜酸素化装置(Extra-Corporeal Membrane Oxygenator:ECMO)の使用である(Speidl 2015 Extracorporeal membrane oxygenation in cardiac arrest)。ECMOは、使用されるとしばしば成功する(4~54%の生存に意味がある)が、しかし、物流上の困難、チームと装置の利用可能性、コストのため、めったに使用されない。ヨーロッパの大都市環境では、心停止患者の1~2%にしか使用されていない。https://www.escardio.org/static-file/Escardio/Congresses/Congress management/Acute Cardiovascular Care/Documents/Slides_FP344.pdf.
(発明の概要)
以下の本発明の要約は、本発明の様々な側面および特徴の基礎となる、いくつかの原理の基本的理解を示すために提供される。この要約は、本発明の広範な概要ではなく、そのため、必ずしも本発明のすべての鍵または重要な要素を特に特定することを意図するものではなく、本発明の範囲を画定するものでもない。その唯一の目的は、以下のより詳細な説明の前段階として、簡略化した形で本発明のいくつかの概念を提示することである。
【0023】
本発明は、従来技術の欠陥に鑑みてなされたものであり、これらの欠陥を克服するためのシステム、方法およびプロセスを提供する。課題を解決するための手段、本発明のいくつかの実施形態および態様によれば、心肺蘇生(CPR)中に、必須臓器に効率的な量の酸素を安全に送達するためのシステムが提供される。四肢に遠位から近位への順次的な圧迫力を及ぼし、四肢への血流を閉塞するように構成された少なくとも1つの四肢圧迫装置と、正圧によって混合ガスを送達するように構成された正圧換気システムと、を備える。本発明のいくつかの実施形態および態様によれば、陽圧換気システムは、二酸化炭素濃縮ガスを含む二酸化炭素リザーバと、分子酸素濃縮ガスを含む分子酸素リザーバと、二酸化炭素リザーバおよび分子酸素リザーバに動作可能に接続され、分子酸素濃縮ガスを二酸化炭素濃縮ガスと制御可能に混合するように構成された制御可能混合モジュールと、以下からなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサと、を備える。
【0024】
動脈血中の二酸化炭素分圧を検出するように構成された、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサ;制御可能な混合モジュールおよび少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサに動作可能に接続されたコントローラであって、以下からなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御するように構成された、コントローラ:分子酸素濃縮ガスと二酸化炭素濃縮ガスとの混合物における、分子酸素濃縮ガスの比率と二酸化炭素濃縮ガスの比率とからなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御するように構成された、制御可能な混合モジュールと少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサとに動作可能に接続されたコントローラ;気管内チューブの遠位部分に配置されたシーリングカフを含む気管内チューブであって、以下の構成を反復的に想定するように構成された、気管内チューブ;気管内チューブの遠位部分に配置されたシーリングカフを含む、気管内チューブ:気管内チューブからの気体の気管への流入を維持しながら、シーリングカフが気管の内面に係合する展開構成と、気管からの気体の自然流出を維持しながら、シーリングカフが気管の内面から外れる非展開構成。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態および態様によれば、本システムは、機械的刺激および電気的刺激からなる群から選択される少なくとも1つの刺激を所定の時間間隔で心筋に与えることにより、動脈血の自発循環を戻すように構成された心臓刺激装置と、気管内の圧力を連続的に決定するように構成された気管内圧センサと、陽圧換気システムの注入フェーズを心臓刺激の減圧フェーズの開始とタイミングを合わせるように構成されたシンクロナイザと、を備える。
【0026】
いくつかの実施形態では、四肢に対する遠位から近位への順次的な圧迫力は、上転する収縮弾性リングによって達成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、四肢に対する遠位から近位への順次的な圧迫力は、弾性包帯、調節可能な閉鎖部を有する弾性四肢ラップ、調節可能な閉鎖部を有する膨張式四肢ラップからなる群から選択される少なくとも1つの要素を適用することによって達成される。
【0028】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの四肢圧迫装置は、100mmHgおよび200mmHg、200mmHgおよび300mmHgからなる群から選択される表面皮膚圧範囲を適用することによって、四肢への血液の動脈流入を閉塞するように構成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、混合ガスは、95%の分子酸素および5%の二酸化炭素、0.1~2.0%の二酸化炭素(残りは分子酸素)、2.1~4.0%の二酸化炭素(残りは分子酸素)、4.1~5.6%の二酸化炭素(残りは分子状酸素)、0.1~5.0%の二酸化炭素(残りは分子酸素)、30~50%の分子酸素および化学元素キセノン、0.1~5.0%の二酸化炭素(残りは分子酸素)および化学元素アルゴンからなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、制御可能な混合モジュールは、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHgに維持する。
【0031】
いくつかの実施形態において、制御可能な混合モジュールは、以下からなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の炭化水素ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHg、46~50mmHg、51~55mmHg、56~65mmHgからなる群から選択される少なくとも1つの圧力範囲に維持する。
【0032】
いくつかの実施形態において、制御可能な混合モジュールは、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と30%の分子酸素と65%の化学元素キセノンとの混合ガスと、30%の分子酸素と70%の化学元素キセノンとの混合ガスとを制御可能に混合し、動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する。
【0033】
いくつかの実施形態において、制御可能な混合モジュールは、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と50%の分子酸素と45%の化学元素キセノンとの混合ガスと、5%の二酸化炭素と50%の分子酸素と50%の化学元素キセノンとの混合ガスとを制御可能に混合し、動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する。
【0034】
いくつかの実施形態において、制御可能な混合モジュールは、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と30%の分子酸素および65%の化学元素アルゴンの混合ガスと、30%の分子酸素および70%の化学元素アルゴンの混合ガスとを制御可能に混合し、動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する。
【0035】
いくつかの実施形態において、制御可能な混合モジュールは、動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と50%の分子酸素および45%の化学元素アルゴンの混合ガスと、5%の二酸化炭素と50%の分子酸素および45%の化学元素アルゴンの混合ガスとを制御可能に混合し、動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態および態様によれば、心肺蘇生(CPR)中に、必須臓器に効率的な量の酸素を安全に送達する方法であって、四肢に遠位から近位へ順次圧迫力を作用させることによって、少なくとも1つの四肢装置を圧迫し、四肢への血流を閉塞することと、陽圧換気によって混合ガスを送達することと、を含む方法が提供される。この送達することは、二酸化炭素濃縮ガスを供給する工程と、酸素分子濃縮ガスを供給する工程と、酸素分子濃縮ガスと二酸化炭素濃縮ガスとを制御可能に混合する工程と、動脈血中の二酸化炭素分圧を検出する工程と、酸素分子濃縮ガスと二酸化炭素濃縮ガスとの混合物において、酸素分子濃縮ガスの比率と二酸化炭素濃縮ガスの比率とからなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御する工程とを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態および態様によれば、本方法は、気管内チューブの遠位部分に配置されたシーリングカフを含む気管内チューブを提供する工程と、気管内チューブから気管への気体の流入を維持しながら、シーリングカフが気管の内面に係合される展開構成をシーリングカフに付与する工程と、気管からの気体の自然流出を維持しながら、気管の内面からシーリングカフを離脱させる保持構成をシーリングカフに付与する工程と、動脈血の自然循環を戻すために、機械的刺激および電気的刺激からなる群から選択される少なくとも1つの刺激を所定の時間間隔で心筋に与えることによって、心筋刺激装置を実行する工程と、気管内の圧力を連続的に測定し、陽圧換気システムの注入フェーズと心臓刺激の減圧フェーズの開始タイミングを同期させる工程とを含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態および態様によれば、半自発的陽圧換気を行うための気管内装置が提供される。気管内装置は、気管内展開用に構成された細長いチューブと、細長いチューブの遠位部分に配置されたシーリングカフであって、展開構成と留置構成とを反復的に仮定するように構成されたシーリングカフと、を含む。シーリングカフは、展開構成では、気管内チューブから気管への気体の流入を維持しながら、気管の内面に係合するように、シーリングカフは広げられ、留置構成では、気管からの気体の自然流出を維持しながら、気管の内面から外れるように、シーリングカフは折り畳まれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、シーリングカフは、膨張可能な内腔を含む膨張可能なトロイダル構造からなる。
【0040】
いくつかの実施形態では、半自発的陽圧換気を行うための気管内装置は、シーリングカフの膨張可能な内腔と細長いチューブの内腔とを接続する少なくとも1つの導管をさらに備える。
【0041】
いくつかの実施形態では、半自発的陽圧換気を行うための気管内装置は、シーリングカフの膨張可能な内腔から気管への気体の流入を維持するように構成された、シーリングカフのトロイダル構造の前方遠位部分に設けられた少なくとも1つの出口をさらに備える。
【0042】
いくつかの実施形態では、細長いチューブは、気管内チューブから気管への気体の流入を維持するように構成された一方向流れ逆止弁を含んでいる。
【0043】
本発明は、目標とする過呼吸(すなわち、正常値以上)レベルのPaCO2を処方することと、動脈血中のPCO2(PaCO2)を直接測定するか、あるいは呼気終了時のCO2分画(呼気終末PCO2(PETCO2)としても知られる)をモニターすることと、PaCO2をフィードバック情報として使用し、一方は5%または5.6%のCO2と酸素、および必要に応じてキセノンやアルゴンなどの神経保護不活性ガスを含み、他方は同じ組成でCO2を含まないものとの二つの気体の混合比率を変更することと、を開示する。混合装置は、混合物中のCO2の割合を増減させることができ、PaCO2(またはPETCO2)の瞬時レベルに応じて行う。所定の過呼吸レベルのPaCO2は、典型的には41mmHgから60mmHgの間の値であり、より一般的には46mmHgから55mmHgの間の値である。これらのPaCO2レベルは、(a)血管拡張、(b)O2-ヘモグロビン解離曲線の右へのシフト、(c)患者が自発呼吸に戻ることができた場合の呼吸活動の刺激、を引き起こすことが知られている。
【0044】
このように、PaCO2を上昇させるためにCO2濃縮ガスを投与することによって引き起こされる全身血管拡張を打ち消すために、本発明は、末梢、特に四肢の血管を収縮させる手段を同時に使用することを指示する。したがって、本発明は、四肢から中心循環へ血液を絞り出し、四肢への血液の再流入を阻止する、遠位から近位への順次的な四肢圧迫装置の適用を開示する。このような装置は、図面および発明の詳細な説明に示すように、弾性収縮リング、収縮弾性スリーブ付き弾性収縮リング(ストッキネット)、手動式弾性ラップ、手動式弾性包帯、および順次膨張可能な空気圧式収縮ラップからなるが、これに限定されない。
【0045】
PaCO2を上昇させると全体的な血管拡張が起こるため、末梢の血管抵抗を増加させることは、CPRによって発生した心拍出量の多くを重要臓器、特に脳循環に流すための鍵となる。PaCO2を上昇させることの第二の利点は、SNPでは存在しない、O2解離曲線が右にシフトすることである。
【0046】
本発明のもう一つの側面は、2つのガス(一方は5または5.6%のCO2を含み、他方は含まない)を混合する混合装置のサーボ制御により、PaCO2を所望のレベルに制御する手段である。例えば、PaCO2またはPETCO2が規定値より低い場合、ミキサーはより高いCO2フラクション(FCO2)を供給するように調整する。混合装置-モニターフィードバック機構は、PaCO2の望ましくない振動を引き起こす可能性のある過少ダンプフィードバックループを避けるために、FCO2の変化を遅くする手段を含んでいる。PaCO2を決定するパラメータはFCO2だけではないので、(式1)を用いてすべてのパラメータとその相互作用を示す。
【0047】
(式1)
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、
FCO2は、血液中のCO2濃度を望ましいレベルに維持するために必要なCOの供給割合である。
【0050】
PaCO2(またはPETCO2)は、動脈血中の望ましいCO2分圧であり、fは呼吸数である。
【0051】
VTは1回換気量である。
【0052】
VDとは肺デッドスペースである。通常、2.2×体重(Kg)(またはLbsでの体重)である。
【0053】
【数2】
【0054】
は組織におけるCO2の代謝生成速度である。
【0055】
図1aは、FCO2と、いくつかの換気レベル(すなわち、fとVT)と、
【0056】
【数3】
【0057】
との関係を図式化したものである。
【0058】
過呼吸混合ガスの新規供給の感度と安全性をさらに評価するためには、十分な酸素が供給されていることを確認する必要がある。(式2)は、この混合ガスの使用による動脈血酸素分圧PaO2への影響を計算したものである。
【0059】
(式2)
【0060】
【数4】
【0061】
ここで、
【0062】
【数5】
【0063】
は組織による代謝酸素消費量である。
【0064】
RQは、呼吸商のことで、CO2産生量とO2消費量の比である。その値は、バランスの取れた食事を摂っている人でおよそ0.8である。
FIOは吸入ガス中のO2の割合である。
【0065】
【数6】
【0066】
は肺胞酸素分率である。
【0067】
O2-ヘモグロビン解離曲線が非常に右にシフトしている場合、すなわちP50=40mmHg(P50はヘモグロビンが50%飽和する酸素分圧)の場合でも、動脈血中のヘモグロビンの飽和度を100%近く(例えば98%)に維持するためには、混合ガスを酸素で濃縮してPaO2とPAlvO2を大気圧より高いレベルに保つ必要がある。(式3)は、Hill方程式を用いて98%飽和に必要なPaO2を計算したものである。
【0068】
(式3)
【0069】
【数7】
【0070】
そして、(式3)の要素を移動させると、(式4)が得られる。
【0071】
【数8】
【0072】
O2Sat=0.98、P50=40に対して、PO2=160.6mmHgが得られる。
【0073】
(式2)に戻ると、与えられたVdot CO2とVDの値に対するFIO2、f、VTの最小値を評価することができる。このように、本発明の重要な側面は、様々な値の組織CO2産生に対してPaCO2を維持するために必要なFICO2を決定するのに役立つガス交換計算機である。直感的には、CO2代謝組織産生が少ないほど、PaCO2を所望のレベルに維持するためにはFICO2を高くしなければならない。理論的には、これは肺胞換気量を減少させる(例えば呼吸数や1回換気量を減少させる)ことによって行うことができる。しかし、これは酸素供給を制限することにつながり、(式3)および(式4)に示すように、PaO2およびO2Satが低くなりすぎる可能性がある。このように、ガス交換計算機は、代謝率がどのようなレベルであっても、患者の組織酸素化にとって安全な最小肺胞換気の限界を設定する。
【0074】
本発明の付加的な側面は、上記で開示したサーボ制御混合ガスを呼吸のためだけでなく、ECMO装置や気泡酸素吸入器などの人工肺や人工心肺装置にも供給することである。
【0075】
本発明のさらなる側面は、患者の肺の人工換気を非常に低い圧力、あるいは負圧に維持することである。これは平均気道圧を低く保ち、吸気時の圧力の上昇を最小限に抑えることを意味する。そうすることで、末梢から心臓への血液の静脈還流に対する肺と胸部の膨張の障害と、肺毛細血管を通る血流に対する抵抗が減少する。本発明は、気管内カテーテル換気の方法を用いて、呼吸サイクルの吸気(肺の膨張)相をCPR胸骨圧迫の減圧または反動相に同期させ、段階的陰圧を加えることによって呼気を補助することによって、そうする手段を開示する。
【0076】
最適化された人工換気のこの新規なCPR特異的方法は、肺血流に対する換気の干渉を防ぐことに焦点を当てることにより、本発明の不可欠な部分である。人工呼吸コンポーネントの好ましい実施形態は、以下のステップから構成され、これらのステップを一緒に適用すると、胸骨圧迫CPRの「拡張期」または減圧期において、右心への静脈還流と左心への充満が促進される。
【0077】
人工呼吸の空気注入(吸気)段階と心臓マッサージの減圧部分を同期させる。そうすることで、低駆動圧での空気導入が容易になる。この同期の好ましい実施形態は、CPRの減圧フェーズの開始時に肺への吸気空気注入の正しいタイミングを決定するプロセッサに供給する高周波応答気管内圧センサを使用することである。
【0078】
解剖学的デッドスペースを著しく減少させ、より少ない1回換気量で肺胞換気を維持できるようにする。これには、主カリーナから吸気する細い気管カテーテルを用いて換気を行う。空気が注入される間、カテーテルの先端付近のバルーンが短時間膨らんで気管を閉塞し、注入された空気が漏れないようにする。目的の量が注入されるとバルーンが収縮し、カテーテル周辺(カテーテルと気管壁の間)の肺からガスを吐き出すことができる。こうすることで、上気道と気管の容積(成人の場合~100ml)分だけ解剖学的なデッドスペースが減少し、さらに噴射ジェットの空気力学的混合によってデッドスペースが動的に減少する。そのため、デッドスペースを減らした分だけ潮量を減らすことができ、肺圧と胸部膨張を抑えることができる。
【0079】
ラリンジアルマスクまたは口鼻マスクを用いて、空気の出口(声門、口または鼻)に制御された段階的かつ同期化された陰圧を加えることにより、肺から空気を積極的に排出することを開示する。
【0080】
(定義)
本明細書でいう容易に接続可能という用語は、より大きなシステムまたはアセンブリの他の構造および/または部材および/または構成要素に都合よく接続されるように構成された任意の構造および/または部材を含むと解釈されるべきである。しかしながら、容易に接続可能という用語は、必ずしも容易に切断可能または取り外し可能であることを意味しない。容易に接続可能という用語は、一回限りの接続または結合の容易さを提供することによって任意に満たされる。
【0081】
本明細書で使用される動作可能に接続された、動作可能に結合された、または同様の用語は、開示されたシステムおよびその様々な構成要素が本明細書に記載された方法で効果的に動作することを可能にする特定の方法(例えば、流体が移動すること、および/または電力もしくは信号が伝達されることを可能にする方法)で接続されたことを意味する。
【0082】
本明細書において、弾性または弾力性という用語は、柔軟性または弾力性のある材料の前述の引張強さよりも低い引張強さを有し、任意に効率的に伸張または膨張することができ、特に約600MPa未満のUTS値を有する本質的に延性のある材料に関連するものとして解釈される。
【0083】
本明細書で使用される方法およびプロセスという用語は、その実行のための特定の時系列にかかわらず、ステップまたは構成動作の任意のシーケンスを含むものと解釈される。任意の所定の方法またはプロセスの特定のステップまたは構成動作は、文脈が明確に指示しない限り、必ずしも特許請求の範囲、説明または図面のフローチャートにおいて提示される順序ではない。所定の方法または工程に含まれる任意の特定のステップまたは構成動作は、文脈が明確に指示しない限り、当該方法または工程における他の任意の特定のステップまたは構成動作に先行または後続してもよい。任意の方法またはプロセスに含まれる任意の特定のステップまたは構成要素動作および/またはその組み合わせは、文脈が明確に指示しない限り、当該方法またはプロセスにおける他の任意の特定のステップまたは動作の前または後に、反復的に実行されてもよい。さらに、いくつかのステップまたは構成動作および/またはその組合せは、文脈が明確に指示しない限り、組み合わされてもよく、一緒に実行されてもよく、同時に実行されてもよく、および/または並行して実行されてもよい。さらに、任意の方法またはプロセスにおけるいくつかのステップまたは構成要素動作および/またはその組み合わせは、文脈が明確に指示しない限り、スキップ、省略、免除および/またはオプトアウトされてもよい。
【0084】
本明細書または特許請求の範囲において、動詞のような動作または操作を意味する用語は、基本形であれ、時制、属格、現在/過去分詞であれ、必ずしも実際に実行されるものではなく、むしろ構成的な態様で、すなわち、単に任意にまたは潜在的に実行されるものと解釈される。
【0085】
本明細書で使用される実質的にという用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を与えられるべきものであり(特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない)、限定されることなく、指定された量または質の大部分であるが、必ずしもすべてではないことを指す。
【0086】
この用語は、本質的に、組成物、方法または構造体が、追加の成分、段階および/または部分を含んでもよいことを意味するが、追加の成分、段階および/または部分が、請求される組成物、方法または構造体の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限る。
【0087】
本明細書で使用される場合、この用語は、プラスマイナス10%(±10%)の間隔を意味する特定の意味に変化する。本明細書に開示される任意の実施形態について、いくつかの代替実施形態における特定の値の開示は、その特定の値(すなわち、±10%)にほぼまたはほぼ等しい間隔を開示するものと理解される。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語約(about)またはおよそ(approximately)は、特定の値にプラスまたはマイナス20%(+/-20%)に等しい範囲を指すことによって、特定の値を修飾する。本明細書で開示される実施形態のいずれかについて、特定の値の開示は、様々な代替実施形態において、その特定の値(すなわち、±20%)に等しい範囲の開示としても理解され得る。
【0089】
一方、本明細書で使用される用語および演算子は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、用語および/またはに相当する代替演算子でもある。
【0090】
しかしながら、本明細書で簡単に要約した要約も特定の定義も、本発明の解釈を特定の形態や実施例に限定するものではなく、むしろ逆に、本発明の範囲に入るすべての変更、同等物、代替物をカバーするものであることを理解されたい。
【0091】
(図面の説明)
本発明は、添付の図面と共にとらえた以下の詳細な説明から、より包括的に理解され、理解されるであろう。
【0092】
図1は、心停止時およびCPR開始時の主な生理学的事象のフロー図である。
【0093】
図2は、統一発明のブロック図である。
【0094】
図3は、統一発明の実施形態の概略図である。
【0095】
図4は、人工呼吸器と人工心肺のためのETCO2ベースのサーボ制御炭酸濃縮ガス供給装置の概略図である。
【0096】
図5はCPR-同期換気と能動呼気の模式図である。
【0097】
図6Aは、気道圧サーボ制御換気トリガー装置のフロー図である。
【0098】
図6Bは、気道圧サーボ制御換気トリガープロセスの概略図である。
【0099】
図7は、US7513256による気管内換気の先行技術である。
【0100】
図8Aは、CPR用の遠位から近位へ順次膨張する失血ラップの例である。
【0101】
図8Bは、CPRのための遠位から近位への順次駆血用ラップのためのバネ付き一方弁の例である。
【0102】
図8Cは、CPRのために遠位から近位へ順次膨張させる失血ラップの使用例である。
【0103】
図9Aは、CPRのための遠位から近位へ順次転がる失血用回転装置の例である。
【0104】
図9Bは、CPR用遠位-近位分割スリーブ順次巻き止血帯の組立例である。
【0105】
図9Cは、完成間近の組み立てと完成した遠位から近位への分割スリーブ順次巻きCPR用止血帯の例である。
【0106】
図10Aは、4つの例示的なレベルの動脈PCO2-PaCO2を達成するために必要な送達ガス中の二酸化炭素の割合-FCO2を、組織二酸化炭素産生速度-VdotCO2の関数として示したものである。
【0107】
図10Bは、例示的な4回の1回換気量-VTで、動脈PCO2-PaCO2を55mmHgにするために必要な送気ガス中の二酸化炭素分率-FCO2を、組織内二酸化炭素生成速度-VdotCO2の関数として示したものである。
【0108】
図10Cは、例示的な4呼吸速度fで、動脈PCO2-PaCO2を55mmHgにするために必要な送気ガス中の二酸化炭素の割合FCO2を、組織二酸化炭素産生速度VdotCO2の関数として示したものである。
【0109】
図10Bは、例示的な4段階のデッドスペース(VD)を有する55mmHgの動脈血PCO2(PaCO2)を達成するために送達ガス中に必要な二酸化炭素の割合(FCO2)を、組織二酸化炭素産生速度(VdotCO2)の関数として示したものである。
【0110】
図11Aは、動脈血酸素分圧PaO2の4つの例示的レベルを達成するために必要な、送気ガス中の酸素分率FO2を、組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として示したものである。
【0111】
図11Bは、動脈血酸素分圧PaO2 161mmHgを達成するために必要な、送気ガス中の酸素分子分画FO2を、組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として、4段階の例示的な1回換気量VTで示したものである。
【0112】
図11Cは、組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として、4つの例示的なレベルの呼吸数fを用いて、161mmHgの動脈血酸素分圧PaO2を達成するために必要な、送気ガス中の分子酸素分画FO2である。
【0113】
図11Dは、組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として、4つの例示的なレベルのデッドスペースVDを用いて、161mmHgの動脈血酸素分圧PaO2を達成するために必要な、供給ガス中の分子酸素分画FO2である。
【0114】
図12Aは、ガス交換計算機の例示的な操作手順である。
【0115】
図12Bは、パラメータ間の関係を図式化したものである。
【0116】
本発明は、様々な変更および代替形態の影響を受け得るが、その特定の実施形態は、図面において単に例示として示されている。図面は必ずしも完全なものではなく、構成要素も本質的に縮尺通りではなく、その代わりに本発明の基礎となる原理を明確に説明することに重点が置かれている。
【0117】
(実施形態の詳細な開示)
本発明によれば、心肺蘇生(CPR)を受けている心停止患者を、最大量の酸素が脳に到達するように最適に処置するために、3つの手段が使用される。図2は、3つの要素から一体的かつ不可分に構成される本発明の概略ブロック図である。ここで説明するように、これらの要素は臨床的・生理学的に相互に作用し合い、脳への酸素供給に対する総合的な効果を高めるだけでなく、要素の1つが存在しない場合、他の要素の効果は有害となり、利益どころか害をもたらす可能性がある。このことは、米国心臓協会の教示に従い、図1のブロック図に概説されているCPRを実施する現行技術の欠点を検討することによって最もよく理解される。
【0118】
図1の左側は、心停止が発生した直後の生理学的な出来事を概説している。右側は、心肺蘇生法(CPR)と総称される現在の治療法の結果を示している。その結果、冒頭で述べたように、現在の治療法で治療された心停止患者の多くで、心臓は拍動を再開する(自然循環の回復(ROSC)とも呼ばれる)、しかし、脳に壊滅的で回復不可能な損傷を受ける。全体的な結果は、CPRを受けた患者のうち、許容できる精神機能で意味のある生存を経験するのはごく少数であるということである。一連の出来事は、心停止11という急性の出来事と、それに伴う心拍出量の停止12から始まる。その結果、2つの大きな出来事が起こる。酸素がすべての組織に供給されなくなり14、交感神経系、細動脈やその他の血管の平滑筋の緊張を制御する機能が停止する13。全組織15への血流不足は、反応性充血17としても知られる代償性血管拡張18を引き起こし、これが交感神経停止13とその結果としての血管運動緊張16の喪失の影響に加わる。極端な血管拡張18は全末梢抵抗19を減少させ、CPRの一環として心臓マッサージが開始されると血圧と流量の低下を引き起こす。末梢血管の拡張は末梢に血液のプーリングを引き起こし、血液の大部分が心臓に戻らず心室37を満たす。図の左側を要約すると、心停止は極度の血管拡張を引き起こすと簡単に言うことができる。
【0119】
CPR22が施行されると、患者は1分間に100回の割合で胸骨圧迫23を受け、人工陽圧換気24を行い、現在のAHAプロトコルに従ってエピネフリン36を注射する。効果的な胸骨圧迫が開始されると、心拍出量27と酸素供給量28がいくらか発生する。これは、反応性充血29とそれに続く血管収縮34を引き起こすメカニズムをある程度逆転させる。エピネフリン36の静脈注射も血管収縮34を引き起こすが、これは主に脳血管31の収縮である。陽圧換気IPPV24の開始は、15回の圧迫ごとに1~2回の呼吸、すなわち毎分6~12回の呼吸でも、組織25で生成されるCO2よりも多くのCO2を肺から除去し、低炭酸ガス症30として知られるCO2の動脈分圧を急速に低下させる。低カプニア30は、血管収縮31を引き起こし、脳血流32と酸素輸送35を大幅に低下させることにより、脳循環に直接影響を及ぼす。低カプニアはまた、酸素-ヘモグロビン解離曲線の左へのシフトを引き起こし、これは組織を流れる血液1mlごとに、ヘモグロビンから抜け出て組織に渡される酸素が少なくなることを意味する。これは、他の組織の中でも特に脳への酸素輸送量を減少させる一因となる。
【0120】
陽圧換気IPPV24の別の有害な効果は、肺と胸部の拡張と胸腔内圧の上昇である。IPPV中の胸腔内圧の上昇は、胸部外の静脈から胸部内の大静脈セグメントへの圧力勾配を減少させることによって、心臓37の右側への静脈血の還流をさらに減少させる。同時に、IPPVによる肺の拡張は、肺血管抵抗26の上昇をもたらし、心臓の右側から左側に流れる血液を妨げ、それによって左心室への静脈還流を減少させる。IPPVによって両心室の充満が減少することはよく知られており、末梢に血液が溜まることによる静脈還流の減少も加わって、CPRによる胸骨圧迫で得られる心拍出量は通常の1/300rd以下となる。最終的な結果は、脳への血流と酸素輸送のさらなる低下である。
【0121】
上述の情報に基づけば、心拍出量が非常に低い状態で陽圧換気とエピネフリンを併用すると、脳組織への酸素輸送量が決定的に低下することは明らかである。このように、本発明は、脳を損傷から守るためには、CPRが正反対のアプローチを用いなければならないことを教示している。すなわち、脳循環に焦点を当てた血管拡張を誘導し、維持しなければならないこと、末梢血管を圧迫し、収縮させなければならないこと、IPPVによって引き起こされる心臓への血流障害を絶対に避けなければならないこと、一方、O2-ヘモグロビン解離曲線を左ではなく右にシフトさせなければならないことである。本特許は、以下のプロセスを組み合わせることによって、その方法を教えている。
【0122】
統一発明の概略ブロック図を図2に示す。細動脈や他の血管を拡張させる最も強力で自然な手段は、二酸化炭素CO2分圧の上昇である過呼吸を誘発することである。これは、二酸化炭素濃縮ガス101を人工呼吸器回路に供給し、使用する場合はECMOや気泡酸素吸入器などの人工心肺装置のガス交換器に供給することで簡単にできる。101で簡単に述べたように、濃縮CO2は、血管拡張を誘導し、O2-ヘモグロビン解離曲線を右にシフトさせて細胞およびそのミトコンドリアへのO2移行を促進し、患者の呼吸駆動を刺激する。しかし、CO2による血管拡張は、全体的なものであり、末梢に血液を溜めることにつながるため、それだけではまったく役に立たない。末梢血管拡張を打ち消す手段107を含める必要がある。本発明は、逐次的遠位-近位自動輸血を適用することによって末梢から中核へ血液を絞り出す手段と、止血帯103として作用することによって末梢への血液の戻りを防止する手段の使用を組み合わせることを教示する。止血帯103の複合効果は、血液を末梢から中核に移動させることにより心臓への前負荷を増加させる一方、末梢への流れを制限することにより、CPRにより生成された流れを必須臓器に流し、心臓の後負荷としても知られる流れに対するより高い抵抗をもたらす血液のシャントを最小限に抑えることである。
【0123】
103で教示したように四肢を順次絞ることによって右心への静脈還流を増加させても、IPPV111によってもたらされる血流障害を完全に克服することはできない。このことは、人工換気中の圧力と膨張の増加を最小にするために、人工換気105を変更しなければならないことを意味する。そのために本発明は、吸気新鮮ガスを遠位気管に注入し、CPRの減圧(受動的または能動的)と同期して行うことにより解剖学的デッドスペースを減少させることによって、潮量を最小化することを教示する。105の発明の構成要素はまた、換気サイクルの呼気期に陰圧(吸引)をかけることを開示している。また、動脈血酸素飽和度を98%以上とするのに十分なレベルまで1回換気量-VTを減少させることも教示している。これは、図11a、11b、11c、11dに記載された数学的アルゴリズムに従って行われ、このアルゴリズムは、1回換気量、デッドスペース、呼吸数、動脈PCO2、P50(O2解離曲線の位置)、組織によるO2消費速度、人工心肺装置の使用(もしあれば)および有効性など、O2輸送に影響を与えるすべての要因を考慮に入れている。
【0124】
105に記載された換気スキームは、吸入ガス中または人工心肺交換器中に供給されるCO2分率FCO2のサーボ制御を通じて、101に記載されたCO2供給と緊密に相互作用109する。101のCO2分圧がどのようなものであっても、FCO2は105の換気のパラメータに影響され、その逆も同様である。
【0125】
この発明の3極すべての複合効果は、相互矢印113、115、117で示されるプロセスによって概略的に示されるように、脳組織120へのO2輸送の脳血流範囲に効果的に影響を及ぼす。
【0126】
本発明の相互に関連する各極をよりよく理解するために、次に、心停止被害者のCPR胸部圧迫130が示されている図3を参照する。最初に、順次適用される遠位から近位への四肢圧迫および止血装置132を指摘する。これは、CO2濃縮ガスの血管拡張作用が打ち消され、血液が四肢から体幹に移動し、戻ることが阻止される手段である。このような四肢圧迫装置が被害者の腕にも適用できることは、図面に示さずとも理解できる。次に、呼気中の終末CO2レベルに関する連続情報を有線または無線通信160を介して受信することによりサーボ制御されるガス混合器142が示されている。この呼気終末CO2は、呼気ガスが透過する顔面または喉頭マスク164と直接通信150を行うCO2分析器152によって追跡される。呼気終了時のCO2分圧レベルは、CO2の動脈分圧に対応し、したがって、導管146を介して人工呼吸器144に供給される混合器142による混合ガスをサーボ制御するために使用することができる。本発明のこの部分の他の実施形態は、この図面には示されていない経皮CO2モニターまたは留置動脈CO2電極を使用することである。本発明のさらに別の実施形態は、導管146を通過するガス混合物を分割し、その一部を同じく図3に示されていない人工心肺装置163のガス交換器に供給することによるものである。サーボ制御ガス混合器142は、対応する導管138および140を介して混合器142に接続された複数の圧縮ガスボンベ134および136からのガスを混合する。好ましい実施形態では、一方のボンベは圧縮された純粋な(100%の)酸素を含み、他方のボンベはカーボゲンとしても知られる5%のCO2の混合ガスを含む。2つのガスを任意の割合で混合することにより、0.0(すべてのガスが100%酸素から供給される場合)から0.05(すべてのガスが混合シリンダーから供給される場合)の間のFCO2レベルを生成することができる。他の実施形態は、5~6%または6~8%のレベルを含む、混合シリンダー内の高いCO2濃度からなる。さらに、キセノンやアルゴンなどの不活性ガスをO2混合ガスに35%~45%のO2比率で添加し、不活性ガスのレベルを65%~55%にする実施形態もある。患者に常に十分な酸素が供給されることを確認するために、不活性ガス-カルボゲン混合ガスに同じ割合の酸素を含める必要がある。
【0127】
次に、胸部への血流と肺を通る血流を妨げない方法で患者を換気するために使用される要素を図3に開示する。これらは、患者の気道と連通166する高忠実度圧力センサ148によって調節され、サーボ制御される。この信号は、同期陽圧呼吸器144による呼吸を開始する時期か、ポンプ162によるガスの真空排出を開始する時期かを決定する、図6aに示すコンピュータベースのアルゴリズムによって分析される。好ましい実施形態では、陽圧換気装置144は、内径4±1mmの細いカテーテル150を介して気管遠位部にガスを注入する。ガスがカテーテル150に流入し始めるとすぐに、弾性バルーン151が膨張して気管を閉塞し、空気の流出を防ぐ。この気管内換気については、図7および米国特許7513256号に詳しく説明されている。気管遠位部で気体を注入し、カテーテル150の周囲から気体を排出させることで、新鮮な気体の界面が気道開口部(口/鼻)から深い位置に移動することが確認され、それによって成人の場合、デッドスペースが約100ccカットされる。そうすることで、同じ量だけ1回換気量をカットすることができ、肺と胸の膨張を抑えることができる。この好ましい実施形態のもう一つの要素は、調節され同期化された真空ポンプ162によって補助されたマスク164と導管150を介したガスの積極的な排出であり、この真空ポンプは気道内圧センサ148からの信号によってサーボ制御156されている。
【0128】
図4に示すように、人工呼吸器と人工心肺に供給されるガス組成の、呼気終末CO2ベースのサーボ制御をさらに説明することが可能になった。この図では、ガス供給に焦点を当てることで、乱雑さを減らしている。人工呼吸器158と人工心肺交換器163は、導管138と140を介して圧縮ガスボンベから供給される複数のガス134と136を混合するサーボ制御ガス混合器142からガスを受け取る。混合ガスは、呼気終末CO2モニター152からの信号を受信し、混合ガス中のCO2のレベルを調整して、分圧ETCO2が所望のレベルにあることを確認する。呼気ガス中のCO2レベルが所望のレベルより高ければ、ガス中のFCO2を減少させなければならず、所望のレベルより低ければ、混合ガス中のFCO2を増加させなければならないことは、この分野の専門家には明らかである。フィードバック制御は、CO2の望ましくない変動(アンダーダンピングフィードバックループ)を避けるために、変更が効果的に行われるのに十分な速さでありながら、速すぎないように行われる。
【0129】
本発明の別の部分の説明を図5に示すが、そこでは肺への空気の送り込みと肺からの空気の排出が、CPR胸骨圧迫によって引き起こされる気道内変動と同期している。好ましい実施形態は、気道に挿入するか、導管166を介して気道内腔に接続する気道内圧力センサ148で得られる圧迫信号の使用に基づいている。圧力センサは、CPR胸骨圧迫によって誘発される気道内圧の変化に対して、0Hz~100Hz、または0Hz~1000Hzの十分な周波数応答で感度が高い必要がある。圧力センサは、独立型であってもよいし、空気送出カテーテル150に組み込んでもよい。別の好ましい実施形態では、胸壁の垂直方向の動きを追跡する胸部運動加速度計からの信号を使用する。さらに別の実施形態では、食道の下部1/3rdに配置された食道圧力センサから圧力信号を得る。別の好ましい実施形態では、中心静脈圧(CVP)を使用して、CPR胸骨圧迫による胸腔内圧の変化を監視および追跡する。陽圧換気装置144および能動的呼気真空ポンプ162によって送出される吸気の開始をトリガーするためのより正確で確実なデータを得るために、このようなセンサを任意に組み合わせて使用できることも明らかである。トリガー信号は、好ましい実施形態では、図6のaおよび図6のbに概略的に示すフローダイアグラムアルゴリズムに従って気体の送出を開始するために使用される。圧力信号はまた、気道圧力が穏やかな亜大気圧であるが低すぎず、-2~-7cmH2Oの範囲に保たれていることを確認することによって、肺からの空気の排出を開始し制御するために使用される。真空の制御は、ソレノイドバルブやMEMS部品の開閉、あるいは電動式や電磁式の真空ポンプの速度制御によって行われる。排気ポンプの制御と動作は図面に示されていない。ガス送出陽圧換気装置144の好ましい実施形態は、米国特許7513256号で先に特許取得された気管内換気装置として図7に示されている。外部からトリガーできる他のタイプの容積または圧力の人工呼吸器も使用できる。
【0130】
圧力信号を送気起動トリガーに変換するために使用されるアルゴリズムの好ましい実施形態を図6aに示す。瞬間的な胸部圧迫に対応する信号が気道内圧信号として170で得られる。先に開示したように、胸壁加速度、近接信号、光反射信号、機械的圧迫装置からの補助信号、気管チューブ信号または血管内圧信号などの他の信号を使用することもできる。胸部圧力または位置の経時平均値は、基準点を決定するために172で時間にわたって計算される。これはデジタル方式またはアナログ積分器を用いて行われる。胸部直径または圧力信号が、「if」ボックス174を使用して決定された前記平均値Pmawを超えていることを示す限り、アルゴリズムの経路は184を介してループされ、170を介して信号の取得を継続する。このループは、胸部直径または圧力の値が、胸部直径がPmaw未満であることを示すまで繰り返される。これが検出されると、胸部直径または圧力信号の一次導関数を計算することにより、胸部直径または圧力がさらに減少する方向に勾配していることを確認するための二次試験が176によって適用される。勾配が直径または圧力の継続的な減少に向かわない場合、経路184を経由して170へのループが継続される。実際のサイズとサイズ導関数との両方が胸部の減圧相の開始を示すと、アルゴリズムは次に、それが呼吸178を開始する適切なタイミングであるかどうかをチェックする。そうでない場合、経路184から170を通るループが十分な速度、例えば5msecごとに継続される。一旦178の検査が呼吸を開始する時間であることを検出すると、前の呼吸からの経過時間(例えば5秒、10秒、12秒)を決定するか、前の呼吸からの胸部圧迫回数(例えば15回、7回、8回)を決定することにより、アルゴリズムは吸気182を開始する。これは、挿入されたカテーテルまたはチューブを介して患者の気管に正気流を作動させることによって行われ、その例が図7に示されている。その後、タイマまたは容量カウンターまたは気道からの圧力信号が作動され、十分なガスが肺に注入されたことを示す閾値が設定されると、呼吸終了判定180が作動され、空気の注入が停止され、制御経路186は170でのプロセスを繰り返すようにアルゴリズムを戻す。
【0131】
呼吸開始プロセスの概略的な実施例が図6Bに示されており、これは、明確にするために、3つのパネルから構成されている。パネルA 202は、胸部196の前後(AP)直径を連続トレース198として示す。トレースが上向き(「OUT」)192の場合、胸部直径が大きくなっていることを意味する。このパネルAでは、減圧は胸壁の受動的な弾性反動によるものである。時間軸194は、任意の時間ゼロからの経過時間を秒単位で示す。パネルAの2番目のトレース(200と表示)は、気道圧(Paw)190をcmH2Oで示し、ゼロは大気圧を基準とする。胸部が圧迫されると(in)圧力が上昇し、減圧されると(out)Pawが下降し、大気圧に対して負圧になることさえあることがわかる。
【0132】
パネルBは同様に、パネルAと同様に受動的な反動210として、また胸部を外側に引っ張る能動的な吸引または減圧機構が作動したとき208として、上側のトレースにおける胸部の動きを示す。トレース208と210の両方が、パネルの左側の胸部直径軸を参照している。能動的な減圧は、受動的な反動の場合よりも、より高いAP直径と容積を有するように実際に胸を拡張することができる。さらに、圧力トレース211に示すように、これは、右側の第2のY軸を参照するように、気道内圧を大気レベル以下にすることができる。この負の減圧相と一致するように肺へのガス送出のタイミングを合わせることは、胸部圧迫とガス送出を同期させず、その結果、胸腔内圧および気道内圧が高くなる従来技術に対する本発明の利点を明確に示している。先に説明したように、これには、主静脈から心臓の右側への血流に対する障害を最小限に抑えるという利点がある。これはパネルCに模式的に示されており、(a)圧力が負であること、(b)圧力が単調減少していること(dp/dtが正)をアルゴリズムが検出しているため、呼吸の開始がトリガー212される。減圧された胸部216の負圧と送気されたガスの正圧のバランスは、同期化が達成されなかった場合よりも小さい圧力トレース214を与えている。
【0133】
図7は、本特許の他の2つの様式と組み合わせるための最適かつ好ましい実施形態として、米国特許第7513256号の教示を組み込んだものである。他の陽圧換気モードも使用でき、トリガーによる呼吸開始も可能であるが、毎分100回のCPRと正確に同期させるのに十分な応答時間がない場合がある。気管内人工呼吸器は通常の気管内チューブの半分である細いカテーテルで作動する。直径を半分にするには、駆動圧を16倍にする必要がある人工呼吸器内の空気量も(ボイルの法則に従って)16分の1になる。つまり、人工呼吸器の大きさを同じ割合で小さくできるため、周波数応答が非常に速くなり、心肺蘇生と同期した人工呼吸に非常に適している。さらに、空気の流出が細いチューブの周囲にあるため、肺の排出に利用できる断面積がはるかに大きくなり、換気サイクルの呼気期における肺の排出抵抗が劇的に減少する。これにより、肺と胸部の平均容積がさらに減少し、右心への血液還流の障害が軽減される。真空ポンプを組み込んで同期化された能動的ガス排出を加えると、肺と胸部の容積はさらに減少する。積極的な胸部減圧、吸気閾値装置の使用、または呼気中の真空印加のいずれにせよ、胸腔内圧を負圧にすることによって静脈を吸引する方法は、太い静脈の潰れやすい性質によって実質的に流量が制限されることに留意すべきである。したがって、この発明の第3の構成要素、すなわち、図8および図9に示す遠位から近位への連続的な四肢圧迫を適用する必要がある。
【0134】
緊急時に四肢から体幹に血液を移動させることは、古くから行われてきた。脚を持ち上げることは古い文献にも記載されており、実際、整形外科手術では、無血の術野を作るために空気止血帯を巻く前に失血させる手段として用いられている。2001-2年にActa Orthopedica Scandinavia誌に発表されたBlondらの研究によると、四肢挙上によって血液の約45%が四肢から移動する。つまり、55%の血液が四肢に残ることになる。この目的でメディカル・アンチショック・パンツを使用しようとしたが、うまくいかなかった(Bickel et al.1987 Jun;16(6):653-8。)、ヘマクリア(RTM)www.hemaclear.com と呼ばれる装置が、整形外科手術において血液を四肢から体幹に移動させ、その再侵入を阻止するために広く使用されており、ヘマショック(RTM)www.hemashock.comと呼ばれる同様の装置が救急用に利用可能である。本発明は、カーボゲン使用による血管拡張効果を打ち消すために、心停止時にこのCPRモードの一部として、血液を遠位から近位へ迅速かつ効果的に絞り出し、後負荷、拡張期血圧、冠動脈灌流圧、そして最も重要な脳血流を増加させながら心臓をプライミングするために、独自に適した2つの追加装置を開示する。
【0135】
図8Aでは、単一の四肢に適用するCPR用空気圧式遠位-近位順次膨張式失血ラップ250を開示している。この装置は、布製の包帯262に埋め込まれた複数の膨張可能なブラダー264で構成されている。ブラダーは、膨張したときに四肢を最適に覆い圧迫しやすくするために、長方形または平行四辺形266をしている。ラップは、四肢に素早く装着され、面ファスナー256または同様の安全で調節可能な閉鎖具で閉じられる。膨張は、最遠位区画から開始し、好ましくは、流量レギュレータ258および圧力レギュレータ260によって制御される圧縮ガスボンベを接続することによって行われる。最も遠位のブラダー内の圧力が、図8bに記載されたバネ式一方向バルブ274によって制御される予め設定されたレベルに達すると、すべてのコンパートメントが所望の圧力まで膨張するまで、第2のブラダーが充填され始める。このように、ラップは四肢を遠位から近位まで順次圧迫する。別の実施形態では、手動または電動ポンプ(図示せず)を使用して膨張させることもできる。ラップの収縮過程は、近位から遠位へ段階的に行う必要がある。膀胱は一度に1つずつ収縮させ、各膀胱が収縮した後、患者のバイタルサインを評価しなければならない。真空ポンプ254からレギュレータ272とバルブ268に接続された肉厚チューブ270を通して真空をかけることにより、膀胱を収縮させる。最も近位の膀胱が空になった後、膀胱の間にあるバネ式一方向バルブは、真空レベルがバネ式バルブを開く閾値より高くなったときにのみ開くことに注意する。そのため、ブラダは必要に応じて1つずつ収縮する。
【0136】
ブラダ間の圧力調整一方向弁の好ましい実施形態が、図8bの概略図280に示されている。弁プレート290は、柵状の硬い支持体282にその下側でしっかりと取り付けられたバネ286によって引っ張られる。閉じられると、プレート286は円形の棚288にぴったりと載り、弾性クッションOリング284が、バネで付勢されたプレート290と閉塞棚288との間のシールとして機能する。図8aに示すように、すべてのブラダーの間にはバネ付き一方向弁がある。開くためには、弁の下端と上端(遠位端と近位端)の間の圧力差が、バネの引っ張り力に打ち勝つのに十分でなければならず、好ましい実施形態では200mmHgより大きくなければならない。他の実施形態では、バネの力は100-150mmHg、150-200mmHg、200-300mmHgの圧力差を必要とするように設定される。圧力差は、遠位膀胱を開弁しきい値以上に膨張させるか、または弁開弁しきい値より高い真空を適用することによって作り出すことができる。図8cに示すように、各脚にラップ292を適用する能力をさらに開示する。これは、圧力調整器300を介して圧縮ガスボンベ298に接続する294および296に示すような膨張チューブを各ラップまたはラップに接続することによって行われる。必要であれば、同様のデザインでより小さなサイズのラップを腕に適用できることは明らかである。健康な人の両腕の血液量は150mlで、両脚のそれは500mlを超えるが、心停止時に末梢血管に血液が溜まると、その量はもっと多くなる可能性がある。
【0137】
次に、図9に示すような弾性失血止血帯の新しい構成について説明する。この装置は、弾性スリーブが巻かれた弾性リングからなる一般的な構成において、先に特許を取得したヘマショックと類似しており、リングにも巻かれているストラップが引っ張られると、リングが四肢を巻き上げる。新しい装置のユニークな構成は、ストラップを含まないことである。装置302は、図9bに示すストラップ310またはスプリットスリーブ308を引っ張ることによって遠位から近位に巻き取られる。このCPR用失血止血デバイスの好ましい実施形態は、弾性伸縮性シリコーンまたは金属(鋼)バネ304から作られた弾性リングの周囲に巻かれた当初は完全なスリーブ306から構成される。鋼製バネリングと巻かれたスリーブ316の四肢への巻き上げは、ストラップ310を引っ張ることによって行われる。患者が止血帯を外す準備ができたら、患者の心血管系虚脱を避けるためにバイタルサインをモニターしながら、近位から遠位へ段階的に手で巻き取る。
【0138】
ここで、(式5)および(式6)によって支配され、図12bの出力に示されるように図12aのパラメータ入力計算機を使用するガス交換計算機の重要な安全機能に目を向ける。サーボ制御ガス混合器142の連続的な調節は、呼気終末CO2モニター152からのフィードバックに基づくが、生理学的パラメータに基づいてその初期設定と境界を調節する方がより安全で実用的である。図12aに示すガス交換計算機は、患者自身のパラメータを入力することにより、これらの初期設定を決定する。図12aの350で開始すると、ユーザーはまず患者の体重352を入力し、続いて換気速度354とタイダル・ボリューム356として知られる各呼吸の量を入力する。次に、使用者は換気方法に関する情報を入力し、そこから計算機がデッドスペースVD358の大きさを決定する。例えば、健常人が自発呼吸をする場合のデッドスペースVDは約2.2ml/kgである。しかし、マスクを使って換気すると、マスク内の空気が再呼吸されるため、通常の解剖学的VDに加算されて約3.2ml/kgとなる。患者が気管内チューブで挿管されると、上気道はバイパスされ、VDは1.5ml/kgに低下する。最後に、気管内換気を使用する場合は、VDを0.7ml/kgに下げる。次にユーザーは目標PaCO2 360を入力する。周囲の気圧と水蒸気分圧の影響は362と364で入力され、実際の水蒸気分圧は患者の体温に応じて決定される。次に、吸入酸素分率FIO2がユーザー366によって設定される。CPR中の未知のパラメータは、患者がメタボリス368によって実際に生成しているCO2の量である。健康な安静時では、2.8ml/kg/分である。CPR中の実際の値の推定値は、CPR胸部圧迫によって発生する心拍出量に基づいて決定される。心拍出量が正常心拍出量の0.3であれば、メタボリックレベルの推定値は約0.3となるはずである。
【0139】
これらのパラメータを使用して、ガス交換計算機は必要なレベルのFICO2を(式5)によって決定し、予想されるPaO2を(式6)によって決定する。(式5)は、図12bの386行目に示すように、PaCO2を所望のレベルに維持するのに必要な必要FICO2を計算する。グラフから、横軸388で示すようにCO2の代謝産生が低いほど、左側の縦軸382で示すFICO2が高くなるはずであることがわかる。代謝が完全に停止し、CO2の生成がゼロになった場合、FICO2は0.05より高くなければならない。一例として、縦破線374で示すように代謝率が通常の約1/3である場合、この例で目標として使用するPaCO2を55mmHgのレベルに保つために必要なFICO2は、横破線378で示すように約0.04(4%)でなければならない。
【0140】
次に、吸入ガス中の必要な酸素濃度に注目する。(式6)はガス交換計算機に入力されたパラメータから予測PaO2を計算する。(式3)は、酸素飽和度を少なくとも98%にするために必要な最低PaO2を示している。この値が通常より高くなるのは、P50が通常の26.6mmHgではなく40mmHgという高濃度のPaCO2によるボーアの効果で、O2-ヘモグロビン解離が右にシフトするためである。(式3)を用いると、PaO2の下限は161mmHgが必要であることがわかる。次に(式6)と図12bのグラフに目を向けると、線380がPaO2を予測しているのがわかる。また、垂直破線374で示される作業点では、水平破線376と交わる線380の値は約240mmHgであることがわかる。この値は、前述の安全下限値161mmHgよりも高い。ガス交換計算機では、これらのパラメータを使用することができる。しかし、作業点におけるPaO2の値が161より低くなるようなパラメータの組み合わせが選択された場合、計算機はアラーム信号を発生する。このように、ガス交換計算機はFICO2の値が高い混合ガスを使用する場合に必要不可欠な安全機能である。
【0141】
(式5)
【0142】
【数9】
【0143】
(式6)
【0144】
【数10】
【0145】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1】心停止時およびCPR開始時の主な生理学的事象のフロー図である。
図2】統一発明のブロック図である。
図3】統一発明の実施形態の概略図である。
図4】人工呼吸器と人工心肺のためのETCO2ベースのサーボ制御炭酸濃縮ガス供給装置の概略図である。
図5】CPR-同期換気と能動呼気の模式図である。
図6A】気道圧サーボ制御換気トリガー装置のフロー図である。
図6B】気道圧サーボ制御換気トリガープロセスの概略図である。
図7】US7513256による気管内換気の先行技術である。
図8A】CPR用の遠位から近位へ順次膨張する失血ラップの例である。
図8B】CPRのための遠位から近位への順次駆血用ラップのためのバネ付き一方弁の例である。
図8C】CPRのために遠位から近位へ順次膨張させる失血ラップの使用例である。
図9A】CPRのための遠位から近位へ順次転がる失血用回転装置の例である。
図9B】CPR用遠位-近位分割スリーブ順次巻き止血帯の組立例である。
図9C】完成間近の組み立てと完成した遠位から近位への分割スリーブ順次巻きCPR用止血帯の例である。
図10A】4つの例示的なレベルの動脈PCO2-PaCO2を達成するために必要な送達ガス中の二酸化炭素の割合-FCO2を、組織二酸化炭素産生速度-VdotCO2の関数として示したものである。
図10B】例示的な4回の1回換気量-VTで、動脈PCO2-PaCO2を55mmHgにするために必要な送気ガス中の二酸化炭素分率-FCO2を、組織内二酸化炭素生成速度-VdotCO2の関数として示したものである。
図10C】例示的な4呼吸速度fで、動脈PCO2-PaCO2を55mmHgにするために必要な送気ガス中の二酸化炭素の割合FCO2を、組織二酸化炭素産生速度VdotCO2の関数として示したものである。
図10D】例示的な4段階のデッドスペース(VD)を有する55mmHgの動脈血PCO2(PaCO2)を達成するために送達ガス中に必要な二酸化炭素の割合(FCO2)を、組織二酸化炭素産生速度(VdotCO2)の関数として示したものである。
図11A】動脈血酸素分圧PaO2の4つの例示的レベルを達成するために必要な、送気ガス中の酸素分率FO2を、組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として示したものである。
図11B】動脈血酸素分圧PaO2 161mmHgを達成するために必要な、送気ガス中の酸素分子分画FO2を、組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として、4段階の例示的な1回換気量VTで示したものである。
図11C】組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として、4つの例示的なレベルの呼吸数fを用いて、161mmHgの動脈血酸素分圧PaO2を達成するために必要な、送気ガス中の分子酸素分画FO2である。
図11D】組織分子酸素消費速度VdotO2の関数として、4つの例示的なレベルのデッドスペースVDを用いて、161mmHgの動脈血酸素分圧PaO2を達成するために必要な、供給ガス中の分子酸素分画FO2である。
図12A】ガス交換計算機の例示的な操作手順である。
図12B】パラメータ間の関係を図式化したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2023-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期された心肺蘇生(CPR)を提供するために、脳への二酸化炭素の供給を最大化することにより脳の低炭酸ガス症を防止しながら必要な臓器への効率的な量の酸素の供給を確実にするように構成されたシステムであって、
(a)少なくとも1つの四肢圧迫装置であって、四肢に遠位から近位へ順次圧迫力を及ぼし、前記四肢への血流を閉塞するように構成された、四肢圧迫装置であって、前記圧迫力を断続的でなくコンスタントに及ぼす、四肢圧迫装置と、
(b)陽圧によって混合ガスを供給するように構成された陽圧換気サブシステムとを備え、
前記陽圧換気サブシステムが、
(I)二酸化炭素濃縮ガスを含む二酸化炭素リザーバと、
(II)分子酸素濃縮ガスを含む分子酸素リザーバと、
(III)前記二酸化炭素リザーバおよび前記分子酸素リザーバに動作可能に接続され、前記分子酸素濃縮ガスを前記二酸化炭素濃縮ガスと制御可能に混合するように構成された、制御可能な混合モジュールと、
(IV)動脈血二酸化炭素分圧センサおよび呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサであって、動脈血中の二酸化炭素分圧を検出するように構成された二酸化炭素分圧センサと、
(V)前記制御可能な混合モジュールおよび前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサに動作可能に接続されたコントローラであって、前記分子酸素濃縮ガスおよび前記二酸化炭素濃縮ガスの混合物における、前記分子酸素濃縮ガスの比率および前記二酸化炭素濃縮ガスの比率からなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御するように構成されたコントローラであって、前記コントローラは前記分子酸素濃縮ガスおよび前記二酸化炭素濃縮ガスの前記混合物の前記比率の中で前記分子酸素の効率的な量を含むように構成され、及び、前記コントローラは前記分子酸素濃縮ガスおよび前記二酸化炭素濃縮ガスの前記混合物の前記比率の中で前記二酸化炭素濃縮ガスの量を増大させ、これにより、脳への二酸化炭素の供給を最大化し、脳の低炭酸ガス症を防止するようにさらに構成される、コントローラと、
(VI)その遠位部分に配置された一方向シーリングカフを含む気管内チューブであって、反復的に及び断続的に想定するように構成されている、気管内チューブと、を含み、
前記気管内チューブは、
(i)前記一方向シーリングカフが気管の内面に係合され、それにより、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持しながら、前記シーリングカフと前記気管の内面との間の気体の通路を効果的にシールする、展開構成であって、呼吸商サイクルの吸気フェーズの間、前記一方向シーリングカフにより想定される、展開構成と
(ii)前記気管からの前記気体の自然流出を維持しながら、前記シーリングカフが前記気管の前記内表面から外れる、保留構成であって、前記呼吸商サイクルの呼気フェーズの間、前記一方向シーリングカフにより想定される、保留構成と、を有し、
前記システムが、
(c)機械的刺激および電気的刺激からなる群から選択される少なくとも1種の刺激を所定の時間間隔で心筋に与えることにより、前記動脈血の自発的循環を戻すように構成された心筋刺激装置と、
(d)前記気管内の圧力を連続的に測定するように構成された気管内圧センサと、
(e)前記陽圧換気システムの注入フェーズを前記心臓刺激の減圧フェーズの開始とタイミングを合わせるように構成されたシンクロナイザと、をさらに備える、システム。
【請求項2】
前記四肢に対する前記遠位から近位への順次的な圧迫力が、アップローリングする収縮弾性リングによって達成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記四肢に対する前記遠位から近位への順次的な圧迫力が、弾性包帯、調節可能な閉鎖部を有する弾性四肢ラップ、調節可能な閉鎖部を有する膨張可能な四肢ラップからなる群から選択される少なくとも1つの要素を適用することによって達成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの四肢圧迫装置が、100~200mmHgおよび200~300mmHgからなる群から選択される表面皮膚圧範囲を適用することにより、前記四肢への血液の動脈流入を閉塞するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記混合ガスが、
95%の分子酸素と5%の二酸化炭素、
0.1~2.0%の二酸化炭素で残りが分子酸素、
2.1~4.0%の二酸化炭素で残りが分子酸素、
4.1~5.6%の二酸化炭素で残りが分子酸素、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素で残りが化学元素キセノン、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素で残りが化学元素アルゴン、からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサは、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHg、46~50mmHg、51~55mmHg、56~65mmHgからなる群から選択される少なくとも1つの圧力範囲に維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および酸素分子30%および化学元素キセノン65%の混合ガスと、酸素分子30%および化学元素キセノン70%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と50%の分子酸素と45%の化学元素キセノンとの混合ガスと、50%の分子酸素と50%の化学元素キセノンとの混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および酸素分子30%および化学元素アルゴン65%の混合ガスと、酸素分子30%および化学元素アルゴン70%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御可能な混合モジュールが、前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および酸素分子50%および化学元素アルゴン45%の混合ガスと、二酸化炭素分子50%および化学元素アルゴン50%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
脳への二酸化炭素の供給を最大化することにより脳の低炭酸ガス症を防止しながら必要な臓器への効率的な量の酸素の供給を確実にするように構成された、同期された心肺蘇生(CPR)の方法であって、
(a)少なくとも1つの四肢装置を圧迫し、前記四肢への血流を閉塞することにより、四肢に遠位から近位への順次圧迫力を作用させる工程であって、前記圧迫力を断続的でなくコンスタントに及ぼす、工程
(b)陽圧換気によって混合ガスを送り込む工程と、を包含し、
前記混合ガスを送り込む工程が、
(I)二酸化炭素濃縮ガスを供給する工程と、
(II)分子酸素濃縮ガスを供給する工程と、
(III)前記分子酸素濃縮ガスを前記二酸化炭素濃縮ガスと制御可能に混合する工程と、
(IV)動脈血中の二酸化炭素分圧を検出する工程と、
(V)前記分子酸素濃縮ガスと前記二酸化炭素濃縮ガスとの混合ガス中の、前記分子酸素濃縮ガスの比率と前記二酸化炭素濃縮ガスの比率とからなる群から選択される少なくとも1つの比率を制御する工程であって、
前記制御する工程が、前記分子酸素濃縮ガスおよび前記二酸化炭素濃縮ガスの前記混合物の前記比率の中で前記分子酸素の効率的な量を含むように構成され、及び、
前記制御する工程は前記分子酸素濃縮ガスおよび前記二酸化炭素濃縮ガスの前記混合物の前記比率の中で前記二酸化炭素濃縮ガスの量を増大させ、これにより、脳への二酸化炭素の供給を最大化し、脳の低炭酸ガス症を防止するようにさらに構成される、工程と、を含み、
前記方法が、
(c)前記気管内チューブの遠位部分に配置された一方向シーリングカフを含む気管内チューブを提供する工程と
(d)前記一方向シーリングカフに展開構成を付与し、前記一方向シーリングカフを気管の内面に係合させ、それにより、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持しながら、前記一方向シーリングカフと前記気管の内面との間の気体の通路を効果的に封止する工程であって、
前記展開構成の付与が、呼吸商サイクルの吸気フェーズの間、前記一方向シーリングカフにより実行される、工程と、
(e)前記気管からの前記気体の自然流出を維持しながら、前記気管の前記内表面から前記一方向シーリングカフが外れ、保留構成を前記一方向シーリングカフに付与する工程であって、
前記保留構成の付与が、前記呼吸商サイクルの呼気フェーズの間、前記一方向シーリングカフにより実行される、工程と、
(f)機械的刺激および電気的刺激からなる群から選択される少なくとも1種の刺激を所定の時間間隔で与えることにより、前記動脈血の自発的循環を戻すために、心筋に対して心筋刺激を行う工程と、
(g)前記気管内の圧力を連続的に測定する工程と、
(h)前記陽圧換気システムの注入フェーズのタイミングを、前記心臓刺激の減圧フェーズの開始と同期させる工程と、をさらに包含する、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの四肢装置の前記圧迫および前記四肢への前記血流の閉塞は、アップローリングする収縮弾性リングによって行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの四肢装置の前記圧迫および前記四肢への前記血流の閉塞は、弾性包帯、調節可能な閉鎖部を有する弾性四肢ラップ、調節可能な閉鎖部を有する膨張可能な四肢ラップからなる群から選択される少なくとも1つの要素を適用することによって行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの四肢装置が、100~200mmHg、200~300mmHgからなる群から選択される表面皮膚圧範囲を適用することにより、四肢への血液の動脈流入を閉塞するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記混合ガスが、
95%の分子酸素と5%の二酸化炭素と、
0.1~2.0%の二酸化炭素で残りが分子状酸素と、
2.1~4.0%の二酸化炭素で残りが分子状酸素と、
4.1~5.6%の二酸化炭素で残りが分子酸素と、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素とで残りが化学元素キセノンと、
0.1~5.0%の二酸化炭素と30~50%の分子酸素とで残りが化学元素アルゴンと、からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム:。
【請求項17】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素および95%の分子酸素の混合ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~45mmHgに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、5%の二酸化炭素と95%の分子酸素の炭化水素ガスを純粋な100%の分子酸素と制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを、41~45mmHg、46~50mmHg、51~55mmHg、56~65mmHgからなる群から選択される少なくとも1つの圧力範囲に維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素30%および化学元素キセノン65%の混合ガスと、分子酸素30%および化学元素キセノン70%の混合ガスとを制御可能に混合して、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素50%および化学元素キセノン45%の混合ガスと、分子酸素50%および化学元素キセノン50%の混合ガスとを制御可能に混合して、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素30%および化学元素アルゴン65%の混合ガスと、分子酸素30%および化学元素アルゴン70%の混合ガスとを制御可能に混合し、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記動脈血二酸化炭素分圧センサおよび前記呼気終末二酸化炭素分圧センサからなる群から選択される前記少なくとも1つの二酸化炭素分圧センサからのフィードバックに従って、二酸化炭素5%および分子酸素50%および化学元素アルゴン45%の混合ガスと、分子酸素50%および化学元素アルゴン50%の混合ガスとを制御可能に混合して、前記動脈血二酸化炭素分圧レベルを41~65mmHgに維持することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
半自発的陽圧換気を行うための気管内装置であって、
(a)内腔を含み、気管内展開用に構成された細長いチューブと、
(b)前記細長いチューブの遠位部分に配置された一方向シーリングカフであって、展開構成と保持構成とを反復的に及び断続的に想定するように構成された、一方向シーリングカフと、を備え、
(c)前記展開構成において、前記一方向シーリングカフは、気管の内面に係合するように広げられ、それにより、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持しながら、前記一方向シーリングカフと前記気管の内面との間の気体の通路を効果的にシールし、
(d)前記保留構成では、前記気管からの前記気体の自然流出を維持しながら、前記気管の前記内表面から外れるように、前記一方向シーリングカフが折り畳まれ
(e)前記展開構成が、呼吸商サイクルの吸気フェーズの間、前記一方向シーリングカフにより想定可能であり、
(f)前記保留構成が、前記呼吸商サイクルの呼気フェーズの間、前記一方向シーリングカフにより想定可能である、気管内装置。
【請求項24】
前記シーリングカフは、膨張可能な内腔を含む膨張可能なトロイダル構造からなる、請求項23に記載の気管内装置。
【請求項25】
前記シーリングカフの前記膨張可能な内腔と前記細長いチューブの前記内腔とを接続する少なくとも1つの導管をさらに備える、請求項24に記載の気管内装置。
【請求項26】
前記シーリングカフの前記トロイダル構造の前方遠位部分に少なくとも1つの出口をさらに備え、前記シーリングカフの前記膨張可能な内腔から前記気管への気体の流入を維持するように構成される、請求項24に記載の気管内装置。
【請求項27】
前記細長いチューブが、前記気管内チューブから前記気管への気体の流入を維持するように構成された一方向流れ逆止弁を備える、請求項23に記載の気管内装置。
【国際調査報告】