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特表2025-502570エステルチオール化合物の製造方法およびそれを含む光学樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】エステルチオール化合物の製造方法およびそれを含む光学樹脂
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/12 20060101AFI20250117BHJP
   C07C 323/52 20060101ALI20250117BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20250117BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20250117BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20250117BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20250117BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20250117BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C07C319/12
C07C323/52
C08G18/38 076
C08G18/32 006
C08G18/34
G02C7/00
G02B1/04
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024565889
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 KR2022001284
(87)【国際公開番号】W WO2023145981
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524279021
【氏名又は名称】ケーエス オプティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KS OPTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26-108, Yulchonsandan 4-ro, Haeryong-myeon, Suncheon-si, Jeollanam-do 58034, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】キム クンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ クワンヨン
【テーマコード(参考)】
2H006
4H006
4H039
4J034
【Fターム(参考)】
2H006BA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC48
4H006BA52
4H006BA68
4H006BC31
4H006BC34
4H006BD80
4H039CA66
4J034CA03
4J034CA22
4J034CA32
4J034CB05
4J034CB08
4J034CC01
4J034CC03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034RA13
4J034SA02
4J034SB01
4J034SD03
(57)【要約】
【要約】
【課題】
【解決手段】
本発明は、多価アルコールとメルカプトカルボン酸とを反応させてエステルチオール化合物を製造する方法に関し、また、それから得られる光学的特性に優れた光学樹脂または光学レンズに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一系固体酸触媒を用いて、下記化1の多価アルコールと下記化2のメルカプトカルボン酸とを反応させて、下記化3のエステルチオール化合物を製造する方法。
【化1】
【化2】
【化3】
[上記化学式において、RおよびRは各々独立してHまたはCHであり、lは0~2の整数であり、mは1~4の整数であり、nは0~3の整数である。]
【請求項2】
前記不均一系固体酸触媒は、天然粘土、合成シリカ-アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、または超強酸メソ細孔物質触媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不均一系固体酸触媒は、超強酸メソ細孔物質触媒であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不均一系固体酸触媒は、超強酸としてスルホン酸が導入されたメソ細孔物質であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記超強酸メソ細孔物質触媒は、0.2~20重量比で使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記化1の多価アルコールと前記化2のメルカプトカーボン酸とは、20~30対80~70の割合で使用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不均一系固体酸触媒が充填された固定床管式反応器で行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項にしたがって製造されたエステルチオール化合物と、ポリイソシアネートとを含む重合性組成物であって、他のポリチオールまたはポリオールをさらに含む、重合性組成物。
【請求項9】
請求項8の重合性組成物において、前記ポリチオールまたはポリオールとポリイソシアネートとの反応器であって、SH(またはOH)基/NCO基のモル比が0.5~1.5の範囲で重合して得られるポリ(チオール)ウレタン組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のポリ(チオール)ウレタン組成物を硬化させた樹脂。
【請求項11】
光学材料用であることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂。
【請求項12】
前記光学材料は光学レンズであることを特徴とする、請求項11に記載の樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステルチオール化合物の製造方法、およびそれから得られるエステルチオール化合物を含む、光学的特性に優れたポリ(チオ)ウレタン系重合性組成物および光学樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオウレタン系光学材料は、ガラス光学材料と屈折率が似ており、ガラス光学材料に比べて軽くて衝撃に強く、染色性に優れるため、眼鏡レンズ、カメラレンズなどの様々な光学材料として広く用いられている。近年、光学材料の耐衝撃性および耐熱性などの高機能性が求められており、光学的高透明性、高屈折率、高アッベ数性能が求められている。
【0003】
ポリチオウレタン系光学材料の耐衝撃性を向上させるために、エステルチオール化合物に対する研究が着実に試みられており、エステルチオール化合物を含む光学材料用組成物は、光硬化用チオ-エン(thio-ene)組成物、エポキシ硬化システムの硬化剤として使用可能である。
【0004】
エステルチオール化合物は、通常の多価アルコールとメルカプトカルボン酸とをエステル化触媒存在下にて副生する水を蒸留除去しながら行う、エステル化法によって製造されている(先行技術文献1~4参照)。
【0005】
しかしながら、通常のエステルチオール化合物の製造方法は、均一系触媒を用いることにより反応後に均一系触媒を除去するために特別な精製工程が必要であるため、追加の工程コストが発生し、廃水を多量に発生することにより環境汚染を招く可能性がある。また、一部の均一系触媒がエステルチオール化合物に残存する場合があり、光学樹脂を製造するときに脈理、白濁、黄変などが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許出願10-2010-7028490
【特許文献2】大韓民国特許出願10-2016-0090624
【特許文献3】大韓民国特許出願10-2017-7035596
【特許文献4】大韓民国特許出願10-2019-0005901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、上述のような短所を解決するために研究した結果、反応系と独立的な固体酸を導入してエステルチオール化合物を製造することにより、均一系触媒を用いることで派生するさらなる複雑な精製工程をフィルターのような単純な工程に変換して製造工程を簡素化し、効率的にエステルチオール化合物を製造しようとしたものである。また、使用した触媒を再利用して廃水、廃棄物の発生量を抑制することにより、経済的でありながら、環境にやさしい工程が既存工程との差別点として有することができる。したがって、本発明では、工程コストの低減、高い収率、高品質の製品を得ることによって、産業化の面で経済的な利益をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記、本発明の課題は、本発明の一態様として、不均一系固体酸触媒を用いて下記化1の多価アルコールと下記化2のメルカプトカルボン酸とを反応させて下記化3のエステルチオール化合物を製造する方法によって達成される。
【0009】
【化1】
【化2】
【化3】
[上記化学式において、RおよびRは各々独立してHまたはCHであり、lは0~2の整数であり、mは1~4の整数であり、nは0~3の整数である。]
【0010】
ここで、上記固体酸触媒は、天然粘土、合成シリカ-アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、または超強酸メソ細孔物質触媒であり得る。上記固体酸触媒は、超強酸メソ細孔物質触媒が好ましい。特に、超強酸としてスルホン酸が導入されたメソ細孔物質がより好ましい。
【0011】
一方、上記超強酸メソ細孔物質触媒は、0.2~20重量比で使用することができ、好ましくは1~20重量比である。
【0012】
また、上記化1の多価アルコールと上記化2のメルカプトカルボン酸とは、20~30:80~70の割合で使用することができる。
【0013】
また、本発明の方法は、上記不均一系固体酸触媒が充填した固定床管式反応器中で行うことが好ましい。
【0014】
本発明の他の様態として、本発明は、上記製造方法により製造されたエステルチオール化合物とともにポリイソシアネートを含む重合性組成物であり、他のポリチオールまたはポリオールをさらに含み得る、重合性組成物を提供することができる。
【0015】
本発明の他の態様として、本発明は、上記重合性組成物のポリチオールまたはポリオールとポリイソシアネートの反応器であり、SH(またはOH)基/NCO基のモル比が0.5~1.5の範囲に重合して得られるポリ(チオール)ウレタン組成物を提供することができる。
【0016】
本発明の別の様態として、本発明は、ポリ(チオール)ウレタン組成物を硬化させた樹脂を提供することができ、ここで得られた樹脂は光学材料、特に光学レンズとして使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法は、光学材料分野をはじめとする化学、樹脂、コーティング工業分野において、広く使用されるエステルチオール化合物の製造効率および品質を向上させることが可能であり、技術的、工業的に高い価値を有する。
【0018】
本発明の特徴である不均一系触媒を用いる製造方法で得られたエステルチオール化合物は、経済性に優れるとともに、高品質の製品を得ることができる。また、かかる触媒を用いて、品質に優れた光学用樹脂や光学製品を、高い経済性で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に記載の配合比率(含有比率)、物性値、パラメータなどの具体的な数値は、それらに対応する配合比率(含有比率)、物性値、パラメータなどの当該記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に置き換えることができる。一方、「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0020】
次いで、本発明のエステルチオール化合物の製造方法について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明は、エステルチオール化合物の製造過程に使用されるエステル触媒として不均一系触媒を用いることにより、さらなる複雑な精製工程を経ることなく、容易に高純度のエステルチオール化合物を製造しようとする。
【0022】
上記のように、エステルチオール化合物は、多価アルコールにメルカプトカルボン酸をエステル触媒下にて副生される水を除去しながら行う、エステル化反応によって製造する。エステル化反応触媒は、一般にブレンステッド(Bronsted)酸、ルイス酸(Lewis acids)または固体酸触媒などの様々なものがある。通常のエステル反応に均一系触媒を主に用いた。分子状態で作用する均一系触媒は活性が高く、分子状態で反応するため、選択性に優れ、非常に効果的である。しかし、触媒が反応系のような1つの相として存在するため、反応終了後の生成物との分離および再使用が困難であり、分離に関連する追加の施設運用にはコストが多く必要である。分離過程に所要される薬品とコストによって工程の経済性が悪くなり、環境汚染までもたらす可能性がある。かかる点に鑑みて、本発明では、分離しやすく、再使用できる不均一系固体触媒を用いようとする。特に、石油化学工業とともに発達してきた固体酸触媒は種類が多様で酸強度調節幅が広く、本発明の製造工程に適用可能性が高い。さらに、固体触媒の細孔構造を用いて選択性を高めることができれば、副産物の生成抑制と環境汚染防止の側面で非常に有用である。
【0023】
本発明のエステルチオール化合物の製造に使用され得る不均一系触媒は、特に制限はないが、代表的な例として、天然粘土から、シリカ-アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、超強酸メソ細孔物質などがある。無定形触媒もあるが、細孔が規則的なゼオライトとメソ細孔物質もある。細孔の大きさと形状が一定の触媒では、細孔構造に起因する形状選択的触媒作用も期待することができる。ゼオライト細孔は、ベンゼンなど通常の分子と大きさが似ており、ゼオライトを使用すると分子の大きさによって物質を区別することができる。かかる性質を触媒反応に導入して反応物の大きさや生成物の拡散速度などを用いて反応速度を調節するか、特定生成物に対する選択性を高めたりすることができて効果的である。細孔の大きさが遷移状態に影響を与え、特定の生成物に対する選択性を高めることもできる。
【0024】
上記ゼオライトは、結晶性を有するアルミノシリケートであり、骨格構造の異なる170余種のゼオライトを使用することができ、より具体的には、MFI、FAU、MOR、BEA、LTAおよびCHAが挙げられる。ゼオライトの物理的化学的性質や触媒としての活用可能性は、骨格の構造、細孔入口の大きさ、細孔の形状と大きさ、Si/Alモル比、粒子の大きさなどによって決定される。骨格の構造は、ゼオライトの基本事項として結晶を成す二次基本単位の種類と、それらの結合方法によって骨格の形状が決まる。さらに、骨格によって細孔の形状と大きさ、連結方法が決まり、細孔入口の大きさも決定される。大きな細孔が多いと、反応物と接触できる表面が広く、触媒として活性は高くなることがあるが、機械的安定性は低くなる。骨格にアルミニウムが含まれる程度を示すSi/Alモル比は酸点の生成に関連しており、ゼオライトの水熱安定性を決定する主要因子でもある。粒子の大きさはゼオライト内での反応物と生成物の移動距離を決定し、粒子が小さいと外表面が広くなり、外表面で最初に反応が行わなければならない触媒反応において活性が非常に高くなる。この他にも陽イオン交換、骨格元素の交換、特定物質の担持、外表面の酸点遮蔽など、様々な方法でゼオライトの触媒として性質、特に酸性を幅広く調節することができ、非常に有用な触媒材料である。
【0025】
このような機能に加えて、細孔の形状と大きさによって反応性質が変わる点を活用するため、非常に効果的な触媒を製造することができる。しかしながら、ゼオライトの細孔入口の大きさは0.7nmより小さくて大きな分子は細孔内に入ることができない。したがって、大きな分子の有機合成反応には触媒として活用することができない。1992年に発表されたメソ細孔物質には3~10nm範囲のメソ細孔が発達しており、かかる限界を克服することができる。使用するモールド物質によって細孔の大きさと形状を幅広く調節できるだけでなく、骨格にシリコンとともにアルミニウムを導入するため、酸触媒として可能性も高い。ただし、ゼオライトとは異なり、細孔壁が無定形であるため、強い酸点が生成されず、細孔が反応物に非常に大きいため、細孔壁と反応物との相互作用に起因する選択性の増加は期待し難い。代わりに均一な大きさのメソ細孔が規則的に発達しており、表面積が広く物質伝達が速く、細孔壁に特定の官能基を固定して触媒として優れた性能を期待することもできる。
【0026】
特に、触媒は、メソ細孔物質に硫酸より強い超強酸を導入して使用することができ、超強酸としてはスルホン酸(RSOH)、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、過塩素酸(HClO)、フルオリン酸(HF)、硫酸の誘導体である塩化硫酸(ClSOH)、フルオロ硫酸(FSOH)などを使用することができる。
【0027】
好ましい超強酸は、スルホン酸としてスルホン酸基(-SOH)を固定して表側では不均一系触媒であるが、活性点は均一系触媒のように作用する超強酸メソ細孔物質が挙げられ、これを用いて触媒をつくることができる。特に、有機結合ひもでスルホン酸基を表面にぶら下げておくと、有機合成反応に効果的な酸触媒となる。固定されたスルホン酸基の数と、周辺構造によって酸点の数と酸強度が決定されるため、目的に符合する固体酸触媒を製造することができる。-SH官能基とともにアルコキシ基を含むシランをシリカでつくられたメソ細孔物質の表面ヒドロキシル基と反応させると、細孔壁に-SH官能基を固定することができる。これを適切な酸化剤で処理することにより、スルホン酸基が固定された酸触媒をつくる。さらに、-SH官能基を有するか、硫化結合を有するアルコキシシランやクロロシランをメソ細孔物質の合成母液に添加して合成するため、合成過程において酸性官能基を細孔壁に固定することもできる。酸強度が非常に強いNafion基を固定すれば、非常に強い酸点をメソ細孔物質の細孔壁に固定することができる。このように製造した固体酸触媒はゼオライトとは異なり、細孔構造に起因する形状選択性を期待することは難しいが、表面積が広く物質伝達が速く、大きな分子の触媒反応には活性が高い。
【0028】
本発明のエステルチオールの製造方法で用いられる式(1)の多価アルコールは、市販の物質として特に限定することなく、たとえばペンタエリトリトールなどが挙げられる。
【0029】
また、式(2)のメルカプトカルボン酸としては、たとえば4-メルカプト酪酸、3-メルカプト酪酸、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプト酢酸などが挙げられるが、これに限定されない。本実施形態では、またはレンズ重合反応の観点から、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプト酢酸が好ましい。
【0030】
上記式(1)の多価アルコールと式(2)のメルカプトカルボン酸との重量比は10~40:90~60である。好ましい重量比は20~30:80~70である。
【0031】
一方、本発明のエステルチオールの製造方法で用いられる反応器は、回分式反応器(batch reactor)および管式反応器(tubular reactor)などが挙げられる。管式反応器の中でも、本発明の不均一系固体酸触媒を充填して使用できる固定床管式反応器(fixed bed tubular reactor)を用いることが好ましい。特に、このような触媒固定床反応器は、目的に応じて複数の触媒固定床を連結して使用することができ、反応に対して触媒重量当たりの転化率が高いという利点がある。また、このような反応器は回分式反応器で扱い難い製品の生産が容易であり、連続的な生産が可能であるため、工程コストの低減や大量生産の容易さなど様々な利点を有している。
【0032】
本発明のエステルチオール化合物製造工程の温度は、特に限定されないが、0℃~250℃で行うことができ、好ましくは50~200℃、より好ましくは100~180℃である。
【0033】
本発明の製造工程時に酸素を排除するために窒素雰囲気、水素雰囲気で行うことが好ましく、溶媒下で行うか、溶媒を除去した状態でも行うことが可能である。
【0034】
本発明に使用される溶媒も特に制限されない。不活性化溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、たとえば、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、たとえば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、たとえば、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類、たとえば、ニトロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルイミダゾリジンオンなどの含窒素化合物類、たとえば、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、たとえば、アミルホルメート、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、n-アミルアセテート、イソアミルアセテート、メチルイソアミルアセテート、メトキシブチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、sec-ヘキシルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、エチルプロピオネート、n-ブチルプロピネート、イソアミルプロピネート、エチルアセテート、ブチルステアレート、ブチルラクテートおよびアミルラクテートなどの脂肪酸エステル類、及びサリチル酸メチル、ジメチルフタレートおよび安息香酸メチルなどの芳香族カルボン酸エステル類などが挙げられ、単独または2種類以上を併用することができる。好ましくは芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくはトルエンおよびクロロベンゼン、ジクロロベンゼンが挙げられる。
【0035】
上記のように得られたエステルチオール化合物を使用して製造された製品は、高い光学的特性を満たすことができるため、これは光学材料、具体的にプラスチック光学レンズの製造に使用することができる。
【0036】
本発明によれば、上述のエステルチオール化合物を含むポリチオール/ポリオール組成物、およびイソシアネート組成物を含む重合性組成物が提供される。
【0037】
上記重合性組成物は、イソシアネート組成物とポリオール/ポリチオールとを混合状態で含むか、または分離された状態で含むことができる。すなわち、上記重合性組成物中で、イソシアネート組成物とポリオール/ポリチオールとは、互いに接触して配合された状態であるか、または互いに接触しないように分離された状態であり得る。
【0038】
本発明の重合性組成物に使用されるポリオール成分としては、たとえば、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。上記ポリオールは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60以上400未満の化合物である。低分子量ポリオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロペンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンテンジオール、1,6-ヘキセンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびそれらの混合物、1,4-シクロヘキセンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどの二価アルコール、たとえば、グリセリンなどの三価アルコール、たとえば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)などの四価アルコール、たとえば、キシリトールなどの五価アルコール、たとえば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトールなどの六価アルコールなどが挙げられる。
【0040】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上、たとえば10000以下、好ましくは5000以下の化合物である。高分子量ポリオールとしては、たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、およびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0041】
本発明の重合性組成物に、上記エステルチオールを含んで使用されるポリチオール成分としては、たとえば、脂肪族系ポリチオール、芳香族ポリチオール、ヘテロ環含有ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含有する脂肪族系ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含有するヘテロ環含有ポリチオールなどが挙げられる。上記チオールはチオールオリゴマーまたはポリチオールであり得、1種または2種以上を混合して使用することができる。上記チオールの具体例としては、3,3’-チオビス[2-[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール]、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール(GST)、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)ジスルフィド、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)エタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-ブチルエステル、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-(2-(2-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ)エチルチオ)プロパン-1-チオール、(4R,11S)-4,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、(S)-3-((R-2,3-ジメルカプトプロピル)チオ)プロパン-1,2-ジチオール、(4R,14R)-4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタン-1,17-ジチオール、(S)-3-((R-3-メルカプト-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)チオ)-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-チオール、3,3’-ジチオビス(プロパン-1,2-ジチオール)、(7R,11S)-7,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(7R,12S)-7,12-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,10,13,16-ヘキサチアオクタデカン-1,18-ジチオール、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ビスペンタエリスリトールエーテルヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、ペンタエトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)、2-(2,2-ビス(メルカプトジメチルチオ)エチル)-1,3-ジチアンなどが挙げられる。
【0042】
本発明の重合性組成物に使用されるイソシアネート組成物として、アルキレンジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、ヘテロ環ジイソシアネート化合物、硫黄を含有する脂肪族ジイソシアネート化合物などを1種以上使用することができる。
【0043】
アルキレンジイソシアネート化合物には、たとえば、エチレンジイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;オクタメチレンジイソシアネート;ノナメチレンジイソシアネート;2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート;2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート;デカメチレンジイソシアネート;ブテンジイソシアネート;1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート;2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;1,6,11-ウンデカントリイソシアネート;1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート;1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン;2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン;ビス(イソシアネートエチル)カーボネート;ビス(イソシアネートエチル)エーテル;1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-1,2-ジイソシアネート;1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-1,3-ジイソシアネート;1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-1,4-ジイソシアネート;1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-2,3-ジイソシアネート;1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-2,4-ジイソシアネート;メチリシンジイソシアネート;リシントリイソシアネート;2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート;2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート;メシチレントリイソシアネート;2,6-ジ(イソシアネートメチル)フランなどがある。
【0044】
脂環族ジイソシアネート化合物には、たとえば、イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5,2,1,0,6]デカン;3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5,2,1,0,6]デカン;4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5,2,1,0,6]デカン;4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5,2,1,0,6]デカン;2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン;2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン;ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート;メチルシクロヘキサンジイソシアネート(DIMC);ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート;2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール;ダイマー酸ジイソシアネート;2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチルビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチルビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン;1,3,5-トリス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン;ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート(H12MDI)などがある。
【0045】
ヘテロ環ジイソシアネート化合物には、たとえば、チオフェン-2,5-ジイソシアネート;メチルチオフェン-2,5-ジイソシアネート;1,4-ジチアン-2,5-ジイソシアネート;メチル1,4-ジチアン-2,5-ジイソシアネート;1,3-ジチオラン-4,5-ジイソシアネート;メチル1,3-ジチオラン-4,5-ジイソシアネート;メチル1,3-ジチオラン-2-メチル-4,5-ジイソシアネート;エチル1,3-ジチオラン-2,2-ジイソシアネート;テトラヒドロチオフェン-2,5-ジイソシアネート;メチルテトラヒドロチオフェン-2,5-ジイソシアネート;エチルテトラヒドロチオフェン-2,5-ジイソシアネート;メチルテトラヒドロチオフェン-3,4-ジイソシアネート;1,2-ジイソチオシアネートエタン;1,3-ジイソチオシアネートプロパン;1,4-ジイソチオシアネートブタン;1,6-ジイソチオシアネートヘキサン;p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアネート;シクロヘキサンジイソチオシアネートなどがある。
【0046】
硫黄を含有する脂肪族ジイソシアネート化合物には、たとえば、4-イソシアネート-4’-イソチオシアネートジフェニルスルフィド;2-イソシアネート-2’-イソチオシアネートジエチルジスルフィド;チオジエチルジイソシアネート;チオジプロピルジイソシアネート;チオジヘキシルジイソシアネート;ジメチルスルホンジイソシアネート;ジチオジメチルジイソシアネート;ジチオジエチルジイソシアネート;ジチオジプロピルジイソシアネート;ジシクロヘキシルスルファ-4,4’-ジイソシアネート;1-イソシアネートメチルチア-2,3-ビス(2-イソシアネートエチルチア)プロパンなどがある。
【0047】
上記重合性組成物は、その他にも必要に応じて、内部離型剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、重合触媒、熱安定剤、色補正剤、連鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0048】
上記内部離型剤としては、パーフルオロアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはリン酸エステル基を有するフッ素系非イオン界面活性剤;ジメチルポリシロキサン基、ヒドロキシアルキル基またはリン酸エステル基を有するシリコーン系非イオン界面活性剤;アルキル第四級アンモニウム塩、すなわち、トリメチルセチルアンモニウム塩、トリメチルステアリル、ジメチルエチルセチルアンモニウム塩、トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジエチルシクロヘキサドデシルアンモニウム塩、酸性リン酸エステルの中から選択される成分を単独で、あるいは2種以上併用することができる。
【0049】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチレート系、シアノアクリレート系、オキサニリド系などを使用することができる。
【0050】
上記近赤外線吸収剤としては、アゾ系、アミニウム系、アントラキノン系、シアニン系、ポリメチン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、キノン系、 ジアンモニウム系、ジチオール金属錯体系、スクアリリウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系などを使用することができる。
【0051】
上記重合触媒としては、アミン系、リン系、有機錫系、有機銅系、有機ガリウム、有機ジルコニウム、有機鉄系、有機亜鉛、有機アルミニウム、有機ビスマス系などを使用することができる。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロリド、ジメチル錫ジクロリド、テトラメチルジアセトキシジスタノキサン、テトラエチルジアセトキシジスタノキサン、テトラプロピルジアセトキシジスタノキサン、テトラブチルジアセトキシジスタノキサンなどの錫化合物や三級アミンなどのアミン化合物を使用することができる。これらは、単独で使用することも可能であり、2種類以上を併用することも可能である。触媒の添加量としては、組成物のモノマー総重量に対して0.001~1重量%の範囲で使用することが好ましい。この範囲の場合、重合性は勿論、作業時に可使時間(pot life)や得られた樹脂の透明性、様々な光学物性あるいは耐光性の点で好ましい。
【0052】
上記熱安定剤としては、金属脂肪酸塩系、リン系、鉛系、有機錫系などを1種または2種以上混合して使用可能である。
【0053】
また、本発明の光学レンズ用樹脂組成物は、レンズの初期色を補正するための色補正剤をさらに含むことができる。色補正剤としては、有機染料、有機顔料、無機顔料などが用いられ得る。かかる有機染料などを光学レンズ用樹脂組成物1当り0.1~50,000ppm、好ましくは0.5~10,000ppm添加することにより、紫外線吸収剤添加、光学樹脂およびモノマーなどによってレンズが黄色を帯びることを防止することができる。
【0054】
また、本発明によれば、上述の重合性組成物から得られたポリ(チオ)ウレタンが提供される。すなわち、上記ポリ(チオ)ウレタンは、上記重合性組成物中のイソシアネート組成物とチオールとを重合(および硬化)して製造してもよい。上記重合反応は、SH基/NCO基のモル比が0.5~1.5であってもよく、より好ましくは0.9~1.1になるように反応させてもよい。
【0055】
本発明の組成物を硬化させるときには、用途に応じて様々の成形法があり得、特に制限された硬化方法はないが、概して熱による硬化を主に使用する。これにより、本発明の樹脂が得られる。本発明の樹脂は、通常の方法であるモールド注入方式である注型重合によって得られる。
【0056】
本発明の樹脂組成物を熱硬化させて眼鏡レンズを製造する過程は、以下の通りである。まず、本発明の組成物に最後に重合開始剤を添加した後、窒素を吹き付けて配合筒内に空気を除去した後、減圧攪拌を1~5時間行い、攪拌を停止した後、減圧脱泡してモールドに注入する。このとき、モールドは、好ましくはプラスチックガスケット、またはポリエステルまたはポリプロピレン粘着テープで固定されたガラスモールドや金属製モールドを使用する。混合物が注入されたガラスモールドを強制循環式オーブンに入れ、常温から120~130℃までゆっくり昇温した後、120~140℃で1~4時間保持し、60~80℃にゆっくり冷却した後、モールドから固形物を離型して光学レンズを得る。このようにして得られた光学レンズを120~140℃の温度で1~4時間アニール処理して最終目的のプラスチック眼鏡レンズ(生地)を得る。
【0057】
また、上記方法で得られた光学レンズに、光学特性を高めるためにハードコーティングおよびマルチコーティング処理を行うことができる。ハードコーティング層の形成は、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基などの官能基を有する少なくとも1つのシラン化合物と、酸化ケイ酸、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化タングステン、酸化アルミニウムなどの少なくとも1つ以上の金属酸化物コロイドを主成分とするコーティング組成物を含浸またはスピンコーティング法で光学レンズ表面に厚さ0.5~10でコーティングした後、加熱または紫外線硬化してコーティング膜を完成する。
【0058】
マルチコーティング層、すなわち、反射防止コーティング層は、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化イットリウムなどの金属酸化物を真空蒸着またはスパッタリングする方法によって形成することができる。最も好ましくは、レンズの両面ハードコーティング膜上に酸化ケイ素と酸化ジルコニウム膜を3回以上繰り返し真空蒸着した後、酸化ケイ素膜を最後に真空蒸着する。また、必要に応じて最後に水膜(フッ素樹脂)層を置くか、酸化ケイ素と酸化ジルコニウム膜との間にITO層を置くこともできる。
【0059】
本発明の光学レンズは、必要に応じて分散染料または光変色染料を用いて着色処理した後に使用することもできる。
【0060】
本発明の光学レンズ用樹脂組成物は、プラスチック眼鏡レンズに限定されず、様々な光学製品に使用することができる。
【0061】
本発明によって作製された光学レンズが、プラスチック眼鏡レンズとしての適切な物性を有するかを評価する必要があり、各々の物性値である(1)屈折率およびアッベ数(υ)、(2)耐熱性(Tg)、(3)黄色度、(4)脈理および白濁は、以下の試験法によって評価した。
【0062】
(1)屈折率(nE20):ATAGO社のDR-M4モデルであるABBE屈折計を用いて546nm(E波長)の屈折率を20℃で測定した。
(2)耐熱性:SCINCO社のDSCN-650熱分析器を用いて試験片のガラス転移温度(Tg)を測定し耐熱性とした。
(3)黄色度:SHIMADZU社のUV-2600分光器を用いて2mm試験片のY.I値を測定して黄色度を比較した。
(4)脈理および白濁:レンズ100個を目視で観察し、脈理および白化現象の発生程度を10個以上:×、5~9個:△、3~4個:〇、2個以下:◎と表記した。
【0063】
本発明は、下記実施例によって例示されるが、これに限定されない。
【0064】
実施例に使用される略語は、以下を意味する。
【0065】
TESPT:ビス(テトラエトキシシリル)テトラスルフィド
TEOS:テトラエチルオルソシリケート
CTABr:セチルトリメチルアンモニウムプロミド
PETMA:ペンタエリスリトールテトラチオグリコール酸
TPA:ドデカタングストリン酸(dodeca tungsto phosphoric acid)
【0066】
1.超強酸メソ細孔物質触媒の製造
[合成例1-1]
300mlテフロン(登録商標)反応器に5gのCTABr(0.0137mol)を脱イオン水100ml、28%水酸化アンモニウム(0.55mol)50mlを含む溶液に溶解した後、15分間撹拌した。9gのTEOS(0.038mol)と2.59gのTESPT(0.0096mol)を30分間さらに添加し、2時間撹拌した。その後、テフロン反応器をオートクレーブ反応器に入れ、100℃で3日間熟成した。次いで、固体が生成された溶液を濾過し、脱イオン水とエタノールで十分に洗浄した。得られた固体を100℃のオーブンで乾燥し、500℃でか焼した。
【0067】
得られた固体1gを35%塩酸50mlに分散した後、-10℃で臭素(Br)2gを1時間投入し、室温で10時間撹拌した。生成された固体を精製水100mlで洗浄し、再びメタノール200mlで洗浄した後、真空乾燥してスルホン酸が導入された超強酸メソ細孔物質(TESPT-10-MCM)を得た。
【0068】
[合成例1-2~1-3]
合成例1-1と同様の方法で表1に記載の組成にしたがって超強酸メソ細孔物質であるTESPT-20-MCMとTESPT-30-MCMを得た。
【0069】
【表1】
【0070】
2.エステルチオール化合物の製造
[合成例2-1]
Dean-Stock装置と、窒素ガスパージ管、および温度計を備えた反応器に、ペンタエリスリトール(SAMYANG CHEMICAL CORPORATION、99%)100gと合成例1-1から得られた超強酸メソ細孔物質(TESPT-10-MCM)5g、トルエン300ml、3-メルカプトプロピオン酸(アルファエイサー、99%)312gを加え、反応器内部温度をトルエン環流温度に加熱して生成した水を連続的に除去しながら4時間反応を行った後、室温まで冷却した。除去された水の量は理論的に計算された水の量に対して99.0%であった。
【0071】
反応液を室温に冷却し、フィルター濾過して触媒を分離した後、減圧濃縮してエステルチオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(以下、PETMPと略称する)330gを得た。得られたPETMPは、高速液体クロマトグラフィーと赤外線分光器を介してペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)であることを確認しており、APHAは6であった。
【0072】
[合成例2-2~2-6、合成比較例1]
超強酸メソ細孔物質(TESPT-10-MCM)の代わりに表2に記載した触媒を用いる他に、合成例2-1と同様の方法で製造してPETMPを得た。得られたPETMPは、合成例2-1と同様に高速液体クロマトグラフィーと赤外線分光器を介して確認しており、これに対する結果は表2に記載した。
【0073】
[合成例2-7~2-8]
触媒として合成例2-2、2-6で使用した触媒を再利用する他に、合成例1と同様の方法で製造してPETMPを得た。得られたPETMPの結果は新しい触媒を用いたものと同様であった。
【0074】
[合成例2-9]
Dean-Stock装置と、窒素ガスパージ管、および温度計を備えた反応器に、ペンタエリスリトール100gと合成例1-2で得られた超強酸メソ細孔物質(TESPT-20-MCM)5g、トルエン500ml、メルカプト酢酸271gを加え、反応器内部温度をトルエン環流温度に加熱して生成した水を連続的に除去しながら4時間反応を行った後、室温まで冷却した。反応液を室温に冷却し、フィルター濾過して触媒を分離した後、減圧濃縮してエステルチオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトアセテート)(以下、PETMAと略称する)312gを得た。得られたPETMAは、合成例2-1と同様に高速液体クロマトグラフィーと赤外線分光器を介して確認しており、そのAPHAは7であった。
【0075】
[合成比較例1]
Dean-Stock装置と、窒素ガスパージ管、および温度計を備えた反応器に、ペンタエリスリトール(SAMYANG CHEMICAL CORPORATION、99%)100gとメタンスルホン酸5g、トルエン300ml、チオグリコール酸(ダイセル、99%)312gを加え、反応器内部温度をトルエン還流温度に加熱して生成した水を連続的に除去しながら4時間反応を行った後、室温まで冷却した。この後、得られた反応物に5%炭酸ナトリウム水溶液246gを投入し、25℃で1時間撹拌した後、層分離して下層を除去し、蒸留水246gでさらに2回洗浄した。この後、真空下で加熱濃縮してトルエンと微量の水を完全に除去した後、フィルター濾過してエステルチオール化合物であるPETMP337gを得た。得られたエステルチオール化合物の色はAPHA15であった。
【0076】
【表2】
【0077】
エステルチオール化合物の製造に不均一系固体酸触媒を用いて収率と色に優れたエステルチオール化合物を合成することができ、特に、廃水発生量は均一系触媒を用いた合成比較例1に比べて著しく少ないことが確認できる。また、合成例2-7、2-8のように、本発明の製造工程に不均一系固体酸触媒を再利用することが可能であった。これにより、エステルチオール化合物の製造における不均一系固体酸触媒の導入により、既存の回分式製造方法から触媒層を介した連続生産方法を適用することができるであろう。
【0078】
3.光学レンズの製造および評価
[実施例1]
メチルシクロヘキサンジイソシアネート(DIMC)46.5gに、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール(GST)30.8gおよび上記合成例で製造されたペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)19.7g、ジブチルスズジクロリド(DBDC)0.1g、ZELEC UN 0.12g、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール1.5gを入れ、窒素気流下で10分間撹拌して1トル以下で1時間真空脱泡し、窒素でパージして窒素圧力を用いてガラスモールドに注入した。光学樹脂組成物が注入されたガラスモールドを強制循環式オーブンで30℃から125℃までゆっくり昇温して125℃で2時間保持した後、70℃に冷却して光学樹脂をモールドから脱型して中心厚1.3mmの眼鏡レンズを得た。得られた眼鏡レンズを72mm幅に加工した後、アルカリ水性洗浄液に浸漬して超音波洗浄した後、125℃で2時間アニールした。この後、ハード液にディップコーティングして熱硬化した後、金属酸化物およびフッ素樹脂を、真空蒸着を用いてマルチコーティングされた眼鏡レンズを得た。
【0079】
[実施例2~8、比較例1]
表3に記載のPETMPを使用する他に、実施例1と同様の方法で光学樹脂を製造し、物性評価を行い、その結果を表3に記載した。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例を介して不均一系固体酸触媒を用いて製造したエステルチオール化合物は光学レンズとして使用が可能であった。実施例2と比較例1を比較したとき、黄色度は1.25と1.82で非常に大きな差を示し、不均一系固体酸触媒で製造したエステルチオール化合物を使用したレンズが均一系触媒で製造したものに比べて黄色度の側面から非常に優れた結果を示した。
【0082】
また、実施例と比較例を比較したとき、脈理および白濁などの光学的性質も、不均一系固体酸触媒で製造したエステルチオール化合物を使用したレンズが均一系触媒を用いたものに比べて良好な結果を示し、光学素材として使用が可能であった。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔径が2~10nmのメソポーラス材料に超強酸を導入して調製した酸触媒を用いて、下記化1の多価アルコールと下記化2のメルカプトカルボン酸とを反応させる工程を含む、下記化3で表されるエステルチオール化合物を製造する方法。
【化1】
【化2】
【化3】
[上記化において、RおよびRは各々独立してHまたはCHであり、lは0~2の整数であり、mは1~4の整数であり、nは0~3の整数である。]
【請求項2】
前記超強酸が、スルホン酸(RSO H)、トリフルオロメタンスルホン酸(CF SO )、過塩素酸(HClO )、フッ酸(HF)、クロロ硫酸(ClSO H)およびフルオロ硫酸(FSO H)からなる群から選択される1種以上の物質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超強酸がスルホン酸であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸触媒が、多価アルコール100gを基準として0.2~20gの重量比で使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記化1の多価アルコールと前記化2のメルカプトカボン酸とは、20~30対80~70の重量比で使用されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記触媒が充填された固定床管式反応器で行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、窒素雰囲気下または水素雰囲気下で実施されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(i)下記式3で表されるエステルチオール化合物と、
(ii)ポリイソシアネートと、
(iii)前記エステルチオール化合物以外のポリチオールまたはポリオールと、を備える光学材料用の重合性ポリ(チオ)ウレタン組成物。
【化3】
[上記化3において、R およびR は各々独立してHまたはCH であり、lは0~2の整数であり、mは1~4の整数であり、nは0~3の整数である。]
【請求項9】
記ポリチオールまたはポリオールのSH(またはOH)基前記ポリイソシアネートのNCO基のモル比が0.5~1.5の範囲である請求項8記載の重合性ポリ(チオウレタン組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の重合性ポリ(チオウレタン組成物を硬化させた樹脂。
【請求項11】
光学材料として使用される、請求項10に記載の樹脂。
【請求項12】
求項11に記載の樹脂を用いて得られる光学レンズ
【国際調査報告】