(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】プッシュ型の片側皮質骨固定アンカー
(51)【国際特許分類】
A61B 17/84 20060101AFI20250117BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61B17/84
A61B17/88
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024565891
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 KR2022020467
(87)【国際公開番号】W WO2023146131
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011812
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524279456
【氏名又は名称】エーアイアールエス インク.
【氏名又は名称原語表記】AIRS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ジョン サンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ デヘ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL42
(57)【要約】
本発明は、プッシュ型(Push type)により皮質骨に固定され、身体の損傷を極力抑えるように構成されるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーに関するものであり、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、皮質骨に挿し込まれ、外力により広げられて皮質骨に固定されるヘッダー部が下端部に設けられるアンカースリーブ及び前記アンカースリーブに挿し込まれ、押される場合に前記ヘッダー部を広げる外力を生じさせるように構成されるアンカーピンを備えて構成されてもよい。
【選択図】5a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮質骨に挿し込まれ、外力により広げられて皮質骨に固定されるヘッダー部が下端部に設けられるアンカースリーブと、
前記アンカースリーブに挿し込まれ、押される場合に前記ヘッダー部を広げる外力を生じさせるように構成されるアンカーピンと、
を備える、プッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項2】
前記アンカースリーブのヘッダー部は、
ヘッダー部胴体が複数の切開部により複数に均等に分割されて外力により広げられて変形されるように構成されるが、
前記アンカーピンの挿し込みのためにアンカースリーブの内側に設けられるアンカースリーブ中空部は、前記ヘッダー部の下端側においてアンカーピンよりも狭くなるように形成されて、アンカーピンのピンヘッダーが挿し込まれるときに広げられるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項3】
前記複数の切開部は、
それぞれ長手方向の終端にヘッダー部の拡張範囲を広げる拡張範囲拡大口が形成されることを特徴とする、請求項2に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項4】
前記アンカースリーブ中空部は、
前記ヘッダー部の下側が上広下狭の直径をなすように側部に傾斜面を形成し、
前記ピンヘッダーは、
上広下狭の直径をなすように側部に傾斜面を形成するが、垂直線を基準とする前記アンカースリーブ中空部の傾斜面の傾斜角度よりもさらに小さな傾斜角度を形成する傾斜面を側部に形成して、
前記ピンヘッダーの傾斜面が前記アンカースリーブ中空部の傾斜面に沿って移動しながらヘッダー部を広げることを特徴とする、請求項2に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項5】
前記アンカースリーブ中空部の傾斜面の傾斜角度と前記ピンヘッダーの傾斜面の傾斜角度との差を異ならせて形成して、あるいは、前記アンカーピン又はヘッダー部の長さを調整して、ヘッダー部の拡張範囲が調節可能であることを特徴とする、請求項4に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項6】
前記ヘッダー部は、
アンカースリーブからの取外し自在に・アンカースリーブへの取付け自在に構成されて取り替えて使用可能であることを特徴とする、請求項1に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項7】
前記アンカースリーブの上端に設けられて専用アプリケーターの胴体部に固定されるように配備される第1の器具締結部と、
前記アンカーピンの上端に設けられて前記専用アプリケーターの胴体部の内側において回転するように構成されるハンドル部に固定されるように配備される第2の器具締結部と、
をさらに備え、
前記アンカースリーブとアンカーピンは、互いにねじ山で結合されて、前記第1の器具締結部に胴体部を固定した前記専用アプリケーターのハンドル部の回転によりアンカーピンのプッシュが調節されることを特徴とする、請求項1に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項8】
前記ヘッダー部の外周面の上に、かつ、前記アンカースリーブの下端部に配備されてアンカースリーブと皮質骨との間を緩衝する緩衝部材をさらに備える、請求項1に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項9】
前記ヘッダー部は、
外表面に垂直線-水平線格子パターン状、斜線格子パターン状、点パターン状、波打ち線-直線混合パターン状のうちの1つ以上の摩擦パターン突起を形成することを特徴とする、請求項1に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【請求項10】
前記アンカースリーブとプッシュナットとにそれぞれ跨って円周上に沿って長さを形成するベルト嵌合溝が形成され、
前記ベルト嵌合溝に固定ベルトが嵌合された後に結束されてアンカースリーブとプッシュナットが固定ベルトにより固定されることを特徴とする、請求項7に記載のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片側皮質骨に挿し込まれて固定される片側皮質骨固定アンカーに関し、より詳細には、プッシュ型(Push type)により皮質骨に固定され、身体の損傷を極力抑えるように構成されるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、脊椎施術や骨折治療のような場合、その施術や治療の方法に応じて、骨に挿し込まれて固定される固定装置を用いて施術又は治療を行ったりする。その固定装置の例として、大韓民国登録特許第10-1178488号公報には「骨固定用の装置」が開示されており、大韓民国登録特許第10-1813525号公報には「4本ねじ山付き椎弓根スクリュー」が開示されている。
【0003】
しかしながら、上記のような骨固定装置は、固定のためにその外表面にねじ山が備えられており、このねじ山を介して回転させながら骨に固定するが、このねじ山を用いた回転固定方式は、周りの神経と軟部組織などといったように、患者の身体を損傷させ、骨に挿入/抜去する過程などにおいて周りに熱を生じさせて施術や治療時間を増やす要因として働くという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した問題を解決するために提案されたものであって、その目的は、アンカー固定構造に形成されて皮質骨の固定に際して患者の身体の損傷を防ぎ、熱の発生を防ぐことにより、施術や治療時間を短縮しながらも、移植と除去及び矯正を行いやすい片側皮質骨固定アンカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、皮質骨に挿し込まれ、外力により広げられて皮質骨に固定されるヘッダー部が下端部に設けられるアンカースリーブと、前記アンカースリーブに挿し込まれ、押される場合に前記ヘッダー部を広げる外力を生じさせるように構成されるアンカーピンと、を備えて構成されてもよい。
【0006】
ここで、前記アンカースリーブのヘッダー部は、ヘッダー部胴体が複数の切開部により複数に均等に分割されて外力により広げられて変形されるように構成されるが、前記アンカーピンの挿し込みのためにアンカースリーブの内側に設けられるアンカースリーブ中空部は、前記ヘッダー部の下端側においてアンカーピンよりも狭くなるように形成されて、アンカーピンのピンヘッダーが挿し込まれるときに広げられるように構成されてもよい。
【0007】
また、前記複数の切開部は、それぞれ長手方向の終端にヘッダー部の拡張範囲を広げる拡張範囲拡大口が形成されてもよい。
【0008】
さらに、前記アンカースリーブ中空部は、前記ヘッダー部の下側が上広下狭の直径をなすように側部に傾斜面を形成し、前記ピンヘッダーは、上広下狭の直径をなすように側部に傾斜面を形成するが、垂直線を基準とする前記アンカースリーブ中空部の傾斜面の傾斜角度よりもさらに小さな傾斜角度を形成する傾斜面を側部に形成して、前記ピンヘッダーの傾斜面が前記アンカースリーブ中空部の傾斜面に沿って移動しながらヘッダー部を広げるように構成されてもよい。
【0009】
さらにまた、前記アンカースリーブ中空部の傾斜面の傾斜角度と前記ピンヘッダーの傾斜面の傾斜角度との差を異ならせて形成して、あるいは、前記アンカーピン又はヘッダー部の長さを調整して、ヘッダー部の拡張範囲が調節してもよい。
【0010】
さらにまた、前記ヘッダー部は、アンカースリーブからの取外し自在に・アンカースリーブへの取付け自在に構成されて取り替えて使用可能にしてもよい。
【0011】
さらにまた、前記プッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、前記アンカースリーブの上端に設けられて専用アプリケーターの胴体部に固定されるように配備される第1の器具締結部と、前記アンカーピンの上端に設けられて前記専用アプリケーターの胴体部の内側において回転するように構成されるハンドル部に固定されるように配備される第2の器具締結部と、をさらに備え、前記アンカースリーブとアンカーピンは、互いにねじ山で結合されて、前記第1の器具締結部に胴体部を固定した前記専用アプリケーターのハンドル部の回転によりアンカーピンのプッシュが調節されてもよい。
【0012】
一方、前記プッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、前記ヘッダー部の外周面の上に、かつ、前記アンカースリーブの下端部に配備されてアンカースリーブと皮質骨との間を緩衝する緩衝部材をさらに備えて構成されてもよい。
【0013】
また、前記ヘッダー部は、外表面に垂直線-水平線格子パターン状、斜線格子パターン状、点パターン状、波打ち線-直線混合パターン状のうちの1つ以上の摩擦パターン突起を形成してもよい。
【0014】
さらに、前記プッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、前記アンカースリーブとプッシュナットとにそれぞれ跨って円周上に沿って長さを形成するベルト嵌合溝が形成され、前記ベルト嵌合溝に固定ベルトが嵌合された後に結束されてアンカースリーブとプッシュナットが固定ベルトにより固定されるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、ねじ山の回転を用いて皮質骨に固定していた従来の方式に比べて、ねじ山の回転がないことから、熱の発生が防がれ、身体の損傷を極力抑えて手術のリスクの要素を削減し、患者の修復に役に立つことができる。
【0016】
また、片側皮質骨に固定される構造であることから、骨髄腔内に金属釘を挿し込んだ後でも回転歪みが矯正可能であり、正確に矯正可能である他、さらには、つなげて使用可能な器具の選択の幅が広くなる。
【0017】
一方、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、以上において言及されている本発明の実施形態による効果が記載の内容にのみ何ら限定されることはなく、明細書及び図面から予測可能なあらゆる効果をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの斜視図である。
【
図2】
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの分解斜視図である。
【
図3a】
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーにおけるヘッダー部の様々な形状を拡大して示す例示図である。
【
図3b】
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーにおけるヘッダー部の様々な形状を拡大して示す例示図である。
【
図3c】
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーにおけるヘッダー部の様々な形状を拡大して示す例示図である。
【
図4a】
図3の拡張範囲拡大口の様々な形状の例を示す図である。
【
図4b】
図3の拡張範囲拡大口の様々な形状の例を示す図である。
【
図5a】
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの使用例示図である。
【
図5b】
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの使用例示図である。
【
図6a】
図5の使用例示図における皮質骨の近傍の部分を拡大して示す図である。
【
図6b】
図5の使用例示図における皮質骨の近傍の部分を拡大して示す図である。
【
図7】本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの専用アプリケーターの斜視図である。
【
図9】
図7の専用アプリケーターにプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーが装着された状態を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態により設けられる緩衝部材の構成及び作用を示す図である。
【
図12a】本発明の実施形態により設けられる摩擦パターン突起の様々な例を示す図である。
【
図12b】本発明の実施形態により設けられる摩擦パターン突起の様々な例を示す図である。
【
図12c】本発明の実施形態により設けられる摩擦パターン突起の様々な例を示す図である。
【
図12d】本発明の実施形態により設けられる摩擦パターン突起の様々な例を示す図である。
【
図13a】本発明の実施形態により設けられる摩擦向上ねじ山の例を示す図である。
【
図13b】本発明の実施形態により設けられる摩擦向上ねじ山の例を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態により設けられる固定ベルトの構成及び作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて行われた本発明についての説明は、特定の実施形態に対して何ら限定されるものではなく、様々な変更を加えることができ、種々の実施形態を有することができる。また、以下において説明する内容は、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0020】
以下の説明において用いられる「第1の」、「第2の」などの言い回しは、様々な構成要素を説明するうえで使用可能であるが、前記構成要素は、前記言い回しによって何等限定されない。「第1の」、「第2の」などの言い回しは、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的でしか使えない。
【0021】
本明細書の全般にわたって用いられる同一の参照番号は、同一の構成要素を指し示す。
【0022】
本明細書中において用いられる単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。また、以下において記載される「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであると解釈されるべきであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーについて詳しく説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの斜視図であり、
図2は、
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの分解斜視図であり、
図3a、
図3b及び
図3cは、
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーにおけるヘッダー部の様々な形状を拡大して示す例示図である。
【0025】
また、
図4a及び
図4bは、
図3の拡張範囲拡大口の様々な形状の例を示す図であり、
図5a及び
図5bは、
図1のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの使用例示図であり、
図6a及び
図6bは、
図5の使用例示図における皮質骨の近傍の部分を拡大して示す図である。
【0026】
図1から
図6を参照すると、本発明は、骨折手術、特に、最小侵襲骨折手術に適した片側皮質骨CBに挿し込まれる固定アンカーであって、アンカースリーブ10とアンカーピン20を備えて、アンカーピン20をアンカースリーブ10に挿し込みながら押して骨Bの表層に形成される皮質骨CB内において固定するプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーに関するものである。
【0027】
ここで、アンカースリーブ10は、下端部にヘッダー部11が設けられ、ヘッダー部11は皮質骨CBに挿し込まれ、外力により広げられて皮質骨CBに固定され、アンカーピン20は、アンカースリーブ10に挿し込まれながら押される場合にヘッダー部11を広げる外力を生じさせるように構成されてもよい。
【0028】
上記のような本発明の構造は、手軽に固定/解放可能であり、ねじ山の回転を用いて骨に挿入・固定していた従来の構造に比べて患者の骨の損傷を極力抑えることができるという長所がある。
【0029】
アンカーピン20を用いて皮質骨CBに挿し込まれたアンカースリーブ10のヘッダー部11を広げて固定する構造としては多種多様な構造が挙げられるが、本発明においては、より簡単にかつ手軽に使用可能であり、患者の骨の損傷をさらに極力抑えるために、ヘッダー部11は、ヘッダー部胴体11-1と切開部11-2を備えて構成されてもよく、アンカーピン20は、ピン胴体21とピンヘッダー22を備えて構成されてもよい。
【0030】
具体的には、ヘッダー部胴体11-1は、格別に限定されるものではないが、好ましくは、円筒状のものであって、アンカースリーブ10の下端においてアンカースリーブ10の直径よりもさらに小さな直径に配備されてもよく、切開部11-2は、ヘッダー部胴体11-1の下端面の中心からヘッダー部胴体11-1の上端面の向きに面上に沿って長さを形成してもよい。このとき、切開部11-2は、複数が設けられて互いに対称状になる方向に長さを形成し、ヘッダー部胴体11-1を複数に均等に分割するように構成されてもよい。
【0031】
アンカーピン20のピン胴体21は、格別に限定されるものではないが、好ましくは、円筒状に形成され、アンカースリーブ10を貫通して挿し込まれるように構成されてもよく、このために、アンカースリーブ10は、アンカーピン20が挿し込み可能な直径の中空部12を上端からヘッダー部胴体11-1の下端まで形成してもよい。すなわち、複数の切開部11-2の中心は、中空部12とつながっていてもよい。
【0032】
ピンヘッダー22は、ピン胴体21の下端に設けられてもよい。ここで、ピンヘッダー22は、ヘッダー部胴体11-1の下端側に位置しているアンカースリーブ10の中空部12よりも広い面積を形成してもよい。すなわち、ヘッダー部胴体11-1の下端側に位置しているアンカースリーブ10の中空部12は、ピンヘッダー22よりも狭くなるように形成されて、ピンヘッダー22が通過するときに抵抗して広げられて変形されるように構成されている。
【0033】
このとき、本発明は、切開部11-2の構成要素によりヘッダー部胴体11-1を均等に分割するように構成しながら、剛性を低下させ、外力体としてピンヘッダー22が挿し込まれるときに切開部11-2により低下した剛性によりさらに広げられ変形され易いように構成している。
【0034】
これを通じて、ピンヘッダー22をツール又は人手によりアンカースリーブ10の上側から下側へと挿し込むと、ピンヘッダー22がアンカースリーブ10の中空部12に沿って下方に移動していて、狭いヘッダー部胴体11-1の下端側に位置すれば、ヘッダー部胴体11-1が広げられることができる。ここで、ピンヘッダー22がヘッダー部胴体11-1の下端側に位置しても、ピン胴体21の上端はアンカースリーブ10の上側に突出可能なように、ピン胴体21は、アンカースリーブ10よりもさらに長尺状に形成されることが好ましい。
【0035】
一方、各切開部11-2は、長手方向の終端、すなわち、上端に位置している端部に拡張範囲拡大口11-3を形成してもよい。拡張範囲拡大口11-3は、切開部11-2のみから形成されるヘッダー部11の拡張範囲をさらに広げるように構成されるものであって、
図3a、
図3b及び
図3cに示すように、切開部11-2の幅よりもさらに広い直径を形成する円形口や、
図4aに示すように、比較的に小さめの直径の円形口や、
図4bに示すように、側方に長さを形成する長孔状の口などとして形成されてヘッダー部11の拡張範囲を広げることができる。
【0036】
また、アンカースリーブの中空部(以下、「アンカースリーブ中空部」と称する。)においてヘッダー部11の下側に位置している中空部12は、上広下狭の直径をなすように側部に傾斜面12aを形成し、ピンヘッダー22もまた、上広下狭の直径をなすように側部に傾斜面22aを形成するように構成されて、ピンヘッダー22は、ピン胴体21を押す場合にアンカースリーブ10の上広下狭の直径をなす中空部12に挿し込まれるように構成されてもよい。
【0037】
ここで、垂直線VLを基準とするピンヘッダー22の傾斜面の傾斜角度βは、アンカースリーブ中空部12の傾斜面の傾斜角度αよりもさらに小さな傾斜角度をなすように形成されて、ピンヘッダー22の傾斜面22aがアンカースリーブ中空部12の傾斜面12aに沿って移動しながらヘッダー部11を広げるように構成されてもよい。
【0038】
上記のような原理を用いて、アンカースリーブ中空部12の傾斜面の傾斜角度αとピンヘッダー22の傾斜面の傾斜角度βとの差を異ならせて形成すれば、ヘッダー部11の拡張範囲を調節することもできる。
【0039】
例えば、アンカースリーブ中空部12の傾斜面の傾斜角度αとピンヘッダー22の傾斜面の傾斜角度βとの差を小さくすれば、ヘッダー部11の拡張範囲をさらに広げることができ、アンカースリーブ中空部12の傾斜面の傾斜角度αとピンヘッダー22の傾斜面の傾斜角度βとの差を大きくすれば、ヘッダー部11の拡張範囲をさらに狭めることができるのである。
【0040】
一方、アンカースリーブ中空部12の傾斜面の傾斜角度αとピンヘッダー22の傾斜面の傾斜角度βとの差に加えて、本発明においては、アンカーピン20やヘッダー部11の長さを調整してヘッダー部11の拡張範囲を調節することもできる。ここで、アンカーピン20やヘッダー部11の長さを調整すれば、アンカーピン20やヘッダー部11の長さの調整の他にはいずれも同一の条件に比べてヘッダー部11の長さに対するアンカーピン20の挿し込みの度合いを異ならせることができて、ヘッダー部11の拡張範囲を調節することが可能である。
【0041】
上記のようなヘッダー部11の拡張範囲の調節は、皮質骨CBへの固定力にもつながるため、皮質骨CBへの固定力の設定に有効に働くことができる。
【0042】
一方、ヘッダー部11は、図示はしないが、アンカースリーブ10からの取外し自在に・アンカースリーブへの取付け自在に構成されて取り替えて使用可能なように構成されてもよく、これにより、衛生性を向上させることができる。
【0043】
このとき、ヘッダー部11の取外し・取付けのために、ヘッダー部胴体11-1とアンカースリーブ10はねじ山で結合されてもよく、一方で、特定されていない固定装置などが設けられてもよい。
【0044】
また、アンカーピン20は、ツール又は人手によりアンカースリーブ10に摺動して挿し込まれるように構成されてもよいが、より好ましくは、同図に示すように、アンカースリーブ10とアンカーピン20は、互いにねじ山で結合されて、アンカーピン20がアンカースリーブ10に回転して挿し込まれるように構成されてもよい。アンカーピン20がアンカースリーブ10に回転して挿し込まれるように構成される場合、アンカーピン20の微調整と位置の固定が手軽に行われる。
【0045】
一方、アンカーピン20がアンカースリーブ10に摺動して挿し込まれるように構成される場合には、アンカーピン20の位置を固定するための固定部が別途に設けられてもよい。
【0046】
併せて、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、アンカーピン20の微調整と調整のしやすさのために、第1の器具締結部30及び第2の器具締結部35をさらに備えて構成されてもよい。
【0047】
第1の器具締結部30は、アンカースリーブ10の上端に多角形状に配備されてもよく、第2の器具締結部35は、アンカーピン20の上端、すなわち、アンカーピン20がアンカースリーブ10に挿し込まれた場合にアンカースリーブ10の上側に露出される部分に多角形状に配備されてもよい。ここで、多角形状は、好ましくは、六角形状であってもよいが、これに必ずしも限定されるとは限らない。
【0048】
多角形状に配備される第1の器具締結部30と第2の器具締結部35には、本発明のプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーを機構的に調節する専用アプリケーター100(
図7から
図10に示されている)が固定されてもよく、具体的には、第1の器具締結部30には専用アプリケーター100の胴体部101が固定されてもよく、第2の器具締結部35には専用アプリケーター100のハンドル部102が固定されてもよい。
【0049】
図7は、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーの専用アプリケーターの斜視図であり、
図8は、
図7の専用アプリケーターの断面図であり、
図9は、
図7の専用アプリケーターにプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーが装着された状態を示す図であり、
図10は、
図9の断面図である。
【0050】
図7から
図10を参照すると、専用アプリケーター100は、胴体部101とハンドル部102を備えて構成されてもよく、操作及び把持のしやすさのために、胴体部101から延びる把持部103をさらに備えて構成されてもよい。
【0051】
具体的には、胴体部101は、第1の器具締結部30を固定するために下端部の内側に第1の器具締結部30の表面と対応する形状のスリーブ締結溝101aが形成されてもよく、ハンドル部102は、第2の器具締結部35を固定するために下端部の内側に第2の器具締結部35の表面と対応する形状のピン締結溝102aが形成されてもよい。
【0052】
ここで、ハンドル部102は、ピン締結溝102aが形成された下端部が胴体部101の内側に挿し込まれて胴体部101の内側において回転するように構成されてもよい。このとき、胴体部101とハンドル部102との間には、ねじ山(図示せず)を形成して、ハンドル部102が胴体部101の内側において回転する場合に上昇又は下降するように構成されてもよい。
【0053】
また、アンカースリーブ10とアンカーピン20が互いにねじ山で結合されてアンカーピン20がアンカースリーブ10に回転して挿し込まれるように構成される場合には、ハンドル部102の下端部と胴体部101との間にゴムブッシング(図示せず)を設けて、ハンドル部102はゴムブッシングの上端においてその場で回転しながらアンカーピン20のみが下降するようにしてもよい。
【0054】
すなわち、胴体部101の内側には、ねじ山又はゴムブッシングが設けられて、ハンドル部102がアンカーピン20につれて上昇又は下降するように構成されてもよいし、あるいは、アンカーピン20のみが上昇又は下降するように構成されてもよい。
【0055】
一方、ハンドル部102は、その形状が格別に限定されるものではないが、把持や操作が手軽に行われるように、「T」字状に設けられてもよく、把持部103は、胴体部101に着脱自在に構成されてもよい。
【0056】
これにより、アンカーピン20は、胴体部101がアンカースリーブ10に固定された専用アプリケーター100のハンドル部102を回転させることで、アンカースリーブ10内においてねじ山に沿って回転移動しながら、上側方向又は下側方向に移動することができ、移動する最中にアンカーピン20の下端に位置しているピンヘッダー22がヘッダー部11の下側に位置すれば、ヘッダー部11を広げることができる。これを用いて、施術者は、アンカーピン20をさらに精度よく、かつ手軽に調整することができる。
【0057】
上記のような構成を有する本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、ねじ山の回転を用いて皮質骨に固定していた従来の方式に比べて、皮質骨におけるねじ山の回転がないことから、熱の発生が防がれ、身体の損傷を極力抑えて手術のリスク要素を削減し、患者の修復に役に立つことができる。
【0058】
また、片側皮質骨CBに固定される構造であることから、骨髄腔内に金属釘を挿し込んだ後でも回転歪みが矯正可能であり、正確に矯正可能である他、さらには、つなげて使用可能な器具の選択の幅が広くなる。
【0059】
一方、本発明の実施形態によるプッシュ型の片側皮質骨固定アンカーは、
図11から
図14を参照すると、緩衝部材40、摩擦パターン突起50又は固定ベルト60を備えて構成されてもよい。
【0060】
図11は、本発明の実施形態により設けられる緩衝部材の構成及び作用を示す図である。
【0061】
図11を参照すると、緩衝部材40は、ヘッダー部11の外周面の上に、かつ、アンカースリーブ10の下端部に配備されてもよい。すなわち、緩衝部材40は、ヘッダー部11に嵌め込まれてアンカースリーブ10の下端部に位置してもよい。このとき、緩衝部材40は、ゴムやシリコン材質から形成されて面と面との間の緩衝作用をすることができ、これを通じて、本発明の固定アンカーにより施術を行う際に、緩衝部材40がアンカースリーブ10と皮質骨CBとの間を緩衝してアンカースリーブ10が皮質骨CBを摩損することを防ぐことができる。
【0062】
一方、緩衝部材40は、ヘッダー部11から抜去され難いように、ヘッダー部11に溝(図示せず)を形成して嵌め込んでもよく、アンカースリーブ10の外周面と同一の直径の外周面を形成してアンカースリーブ10の下部面による皮質骨CBの損傷を最大限に防ぐことができる。
【0063】
【0064】
図12を参照すると、ヘッダー部11は、外表面に摩擦パターン突起50を形成してもよい。具体的には、摩擦パターン突起50は、
図12aに示すように、垂直線と水平線とが互いに交差し合って並べてられてパターンを形成する垂直線-水平線格子パターン状であってもよいし、あるいは、
図12bに示すように、互いに異なる方向の斜線が互いに交差し合って並べられてパターンを形成する斜線格子パターン状であってもよい。
【0065】
また、摩擦パターン突起50は、
図12cに示すように、点突起だけの配列を有する点パターン状であってもよいし、あるいは、
図12dに示すように、波打ち線と直線とが混合してパターンを形成する波打ち線-直線混合パターン状であってもよい。
【0066】
ここで、波打ち線と直線の混合は、
図12dにおいては、波打ち線が上側から下側へと長さを形成し、直線がその波打ち線同士の間において水平方向に形成されているが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、波打ち線は側方に長さを形成し、直線は波打ち線同士の間において垂直方向に形成されてもよいなど、種々に形状にバリエーションを与えることができる。
【0067】
上記のような摩擦パターン突起50は互いに併用されてもよいし、あるいは、それぞれ個別的に構成されてもよく、ヘッダー部11がアンカーピン20により広げられる場合に皮質骨CBとの固定力を高めるように構成されてもよい。このとき、パターンにより様々な方向に剪断力を形成して固定力を高めてもよい。
【0068】
一方、ヘッダー部11は、
図13に示されているように、外表面に摩擦向上ねじ山55を形成してもよい。
図13a及び
図13bは、本発明の実施形態により設けられる摩擦向上ねじ山の例を示す図である。
【0069】
図13を参照すると、摩擦向上ねじ山55は、ヘッダー部11を広げるときに固定力を向上させるためのものであって、骨固定装置の固定のために回転して挿し込まれる従来のねじ山とは差別化を図るものである。このような摩擦向上ねじ山55は、同図に示されているように、ヘッダー部11が広げられるヘッダー部11の一部の高さまでのみ形成されることが好ましいが、本発明は必ずしもこれに限定されるとは限らず、図示はしないが、ヘッダー部11の全体にわたって形成されてもよい。
【0070】
図14は、本発明の実施形態により設けられる固定ベルトの構成及び作用を示す図である。
【0071】
図14を参照すると、本発明がプッシュナット30を構成するに当たって、アンカースリーブ10とプッシュナット30とにそれぞれ跨って円周上に沿って長さを形成するベルト嵌合溝65が形成されてもよい。また、ベルト嵌合溝65には固定ベルト60が嵌合された後に両端部が結束されてもよい。ここで、固定ベルト60は、両端部が結束されるときにアンカースリーブ10とプッシュナット30とに跨って形成されるベルト嵌合溝65を締め付けることもでき、アンカースリーブ10とアンカーピン20との間のねじ山締結固定とともに二重結束を行うこともできる。
【0072】
これを通じて、固定ベルト60は、ベルト嵌合溝65内においてプッシュナット30が皮質骨CBや骨Bなどの抵抗によりアンカースリーブ10から離れて上昇することを防ぐことができ、これにより、プッシュナット30の調節がさらに正確にかつ手軽に行われる他、本発明の皮質骨への固定力を向上させることもできる。
【0073】
以上、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態として実施可能であることが理解できる筈である。よって、上述した実施形態は、あらゆる面において例示的なものに過ぎず、限定的ではないものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0074】
10 アンカースリーブ
11 ヘッダー部
11-1 ヘッダー部胴体
11-2 切開部
11-3 拡張範囲拡大口
12 中空部
12a 傾斜面
20 アンカーピン
21 ピン胴体
22 ピンヘッダー
22a 傾斜面
30 第1の器具締結部
35 第2の器具締結部
40 緩衝部材
50 摩擦パターン突起
55 摩擦向上ねじ山
60 固定ベルト
65 ベルト嵌合溝
100 専用アプリケーター
101 胴体部
101a スリーブ締結溝
102 ハンドル部
102a ピン締結溝
103 把持部
VL 垂直線
CB 皮質骨
B 骨
【国際調査報告】