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特表2025-502598エンジニアリングドープされた薄膜構造および素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】エンジニアリングドープされた薄膜構造および素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20250121BHJP
   C30B 29/16 20060101ALI20250121BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20250121BHJP
   G06N 10/40 20220101ALN20250121BHJP
【FI】
G02B6/12 371
C30B29/16
G02B6/122
G06N10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529344
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022050208
(87)【国際公開番号】W WO2023091546
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,194
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399019892
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シン, マニシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】グハ, スプラティク
【テーマコード(参考)】
2H147
4G077
【Fターム(参考)】
2H147AB37
2H147EA02C
2H147EA10A
2H147EA13C
2H147EA15C
2H147EA38A
2H147FA01
2H147FC01
2H147FF08
4G077BB04
4G077ED06
4G077FE11
4G077FH08
(57)【要約】
本開示は、ドープされた薄膜構造および素子を加工するための方法を対象とする。素子は、基質と、基質上に配置される、薄膜構造とを含む。薄膜構造は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有する、第1の領域であって、第1の多形相は、第1の多形相によって修正される、光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらす、第1の領域と、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有する、第2の領域であって、第2の多形相は、第2の多形相によって修正される、光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらし、第1の共振周波数は、第2の共振周波数から偏移される、第2の領域とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子であって、
基質と、
前記基質上に配置される薄膜構造であって、前記薄膜構造は、
第1の領域であって、前記第1の領域は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有し、前記第1の多形相は、前記第1の多形相によって修正される前記光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらす、第1の領域と、
第2の領域であって、前記第2の領域は、前記希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有し、前記第2の多形相は、前記第2の多形相によって修正される前記光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらし、前記第1の共振周波数は、前記第2の共振周波数から偏移される、第2の領域と
を備える、薄膜構造と
を備える、光学素子。
【請求項2】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
成長方向に沿って、同一薄膜層の中にあり、
前記薄膜層の異なる面内部分にある、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1の領域および第2の領域は、
ある成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンでドープされた前記薄膜層を前記基質上に堆積させ、それによって、前記薄膜層を前記第1の多形相内に形成することと、
前記成長温度より高いアニーリング温度における局所的熱アニーリングによって、前記第2の領域を前記薄膜層内に形成し、前記薄膜層の第2の領域を前記第1の多形相から前記第2の多形相に変換することと、
前記第1の領域を前記薄膜層の残りの部分とともに形成することと
によって形成される、請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記局所的熱アニーリングは、局所的レーザアニーリングを使用して実施される、請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第2の領域は、1マイクロメートル(ミクロン)に等しいまたはそれより小さい寸法を有する、請求項4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記局所的レーザアニーリングは、約500ミリワット(mW)の電力を伴って、約1ミクロンのスポットサイズを伴う青色レーザを用いて、実施される、請求項4に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1の領域および前記第2の領域は、シーケンスにおいて、異なる時間で堆積される、請求項2に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
第1のパターンをリソグラフィでパターン化し、前記基質を前記第2の領域において暴露させることと、
前記第1の多形相内で、ある成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンでドープされた第1の薄膜を前記基質上の前記第2の領域に堆積させることと、
前記成長温度より高いアニーリング温度において、前記第2の領域を熱的にアニーリングし、前記第2の領域を前記第1の多形相から前記第2の多形相に変遷させることと、
前記熱アニーリング後、前記暴露された前記基質内の前記第1の領域をリソグラフィで画定し、前記第1の多形相内で、前記成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンを伴う第2の薄膜を前記第1の領域における前記基質にわたって堆積させることと
によって形成される、請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記薄膜構造の異なる層内にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
前記第1の多形相内で、ある成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンでドープされた第1の薄膜を前記基質上に堆積させることと、
前記成長温度より高いアニーリング温度において、前記第2の領域を熱的にアニーリングし、前記第2の領域を前記第1の多形相から前記第2の多形相に変遷させることと、
熱アニーリング後、前記第1の多形相内で、前記成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンを伴う第2の薄膜を前記第1の薄膜にわたって堆積させ、前記第1の領域を前記第2の薄膜内に形成することと
によって形成される、請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1の領域は、前記薄膜構造内に、第1の光学リング共振器を形成し、前記第2の領域は、第2の光学リング共振器を形成する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第1の光学リング共振器および前記第2の光学リング共振器は、前記薄膜構造内で同一光学導波管に結合される、請求項11に記載の光学素子。
【請求項13】
前記第1の領域および前記第2の領域は、加えて前記薄膜構造内に形成される、同一光学Fabry-Perot共振器内に形成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記熱アニーリングプロセスは、以下、すなわち、
ゲート電極を用いた電気加熱、または
光吸収による光学加熱
のうちの少なくとも1つを備える、請求項3、4、8、および10のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項15】
前記アニーリング温度は、摂氏600度を上回り、前記熱アニーリングは、所定の持続時間にわたって実施される、請求項3、4、8、および10のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項16】
前記第1の領域および前記第2の領域は、二酸化チタンを備え、
前記希土類イオンは、エルビウムイオンを備える、
請求項1-13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項17】
前記基質は、
シリコン、
サファイア、または
チタン酸ストロンチウム(STO)
のうちの少なくとも1つを備える、請求項1-13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項18】
前記第1の多形相は、アナターゼ相を備え、前記第1の共振周波数は、約1,532ナノメートルの光学波長に対応し、
前記第2の相は、ルチル相を備え、前記第2の共振周波数は、約1,520ナノメートルの光学波長に対応する、
請求項1-13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項19】
前記第1の領域は、第1の量子ビットを形成し、
前記第2の領域は、第2の量子ビットを形成する、
請求項1-13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項20】
前記第1の量子ビットは、前記第1の共振周波数を有する第1の光学場と相互作用し、
前記第2の量子ビットは、前記第2の共振周波数を有する第2の光学場と相互作用する、
請求項19に記載の光学素子。
【請求項21】
前記薄膜構造は、第1の非ドープ緩衝層と、第2の非ドープ緩衝層とを備え、
前記ドープされた第1の領域は、前記第1の非ドープ緩衝層と第2の非ドープ緩衝層との間に配置される、
請求項1-13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項22】
光学素子を加工するための方法であって、前記方法は、
基質を提供することと、
薄膜構造を前記基質上に配置することであって、前記薄膜構造は、
第1の領域であって、前記第1の領域は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有し、前記第1の多形相は、前記第1の多形相によって修正される前記光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらす、第1の領域と、
第2の領域であって、前記第2の領域は、前記希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有し、前記第2の多形相は、前記第2の多形相によって修正される前記光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらし、前記第1の共振周波数は、前記第2の共振周波数から偏移される、第2の領域と
を備える、ことと
を含む、方法。
【請求項23】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
成長方向に沿って、同一薄膜層の中にあり、
前記薄膜層の異なる面内部分にある、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の領域および第2の領域は、
ある成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンでドープされた前記薄膜層を前記基質上に堆積させ、それによって、前記薄膜層を前記第1の多形相内に形成することと、
前記成長温度より高いアニーリング温度における局所的熱アニーリングによって、前記第2の領域を前記薄膜層内に形成し、前記薄膜層の第2の領域を前記第1の多形相から前記第2の多形相に変換することと、
前記第1の領域を前記薄膜層の残りの部分とともに形成することと
によって形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記局所的熱アニーリングは、局所的レーザアニーリングを使用して実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の領域は、1マイクロメートル(ミクロン)に等しいまたはそれより小さい寸法を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記局所的レーザアニーリングは、約500ミリワット(mW)の電力を伴って、約1ミクロンのスポットサイズを伴う青色レーザを用いて、実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の領域および前記第2の領域は、シーケンスにおいて、異なる時間で堆積される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
第1のパターンをリソグラフィでパターン化し、前記基質を前記第2の領域において暴露させることと、
前記第1の多形相内で、ある成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンでドープされた第1の薄膜を前記基質上の前記第2の領域に堆積させることと、
前記成長温度より高いアニーリング温度において、前記第2の領域を熱的にアニーリングし、前記第2の領域を前記第1の多形相から前記第2の多形相に変遷させることと、
前記熱アニーリング後、前記暴露された前記基質内の前記第1の領域をリソグラフィで画定し、前記第1の多形相内で、前記成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンを伴う第2の薄膜を前記第1の領域における前記基質にわたって堆積させることと
によって形成される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記薄膜構造の異なる層内にある、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
前記第1の多形相内で、ある成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンでドープされた第1の薄膜を前記基質上に堆積させることと、
前記成長温度より高いアニーリング温度において、前記第2の領域を熱的にアニーリングし、前記第2の領域を前記第1の多形相から前記第2の多形相に変遷させることと、
熱アニーリング後、前記第1の多形相内で、前記成長温度において、前記希土類系の光学活性イオンを伴う第2の薄膜を前記第1の薄膜にわたって堆積させ、前記第1の領域を前記第2の薄膜内に形成することと
によって形成される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の領域は、前記薄膜構造内に、第1の光学リング共振器を形成し、前記第2の領域は、第2の光学リング共振器を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の光学リング共振器および前記第2の光学リング共振器は、前記薄膜構造内で同一光学導波管に結合される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の領域および前記第2の領域は、加えて前記薄膜構造内に形成される同一光学Fabry-Perot共振器内に形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記熱アニーリングプロセスは、以下、すなわち、
ゲート電極を用いた電気加熱、または
光吸収による光学加熱
のうちの少なくとも1つを備える、請求項24、25、29、および31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記アニーリング温度は、摂氏600度を上回り、前記熱アニーリングは、所定の持続時間にわたって実施される、請求項24、25、29、および31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の領域および前記第2の領域は、二酸化チタンを備え、
前記希土類イオンは、エルビウムイオンを備える、
請求項22-34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記基質は、
シリコン、
サファイア、または
チタン酸ストロンチウム(STO)
のうちの少なくとも1つを備える、請求項22-34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の多形相は、アナターゼ相を備え、前記第1の共振周波数は、約1,532ナノメートルの光学波長に対応し、
前記第2の相は、ルチル相を備え、前記第2の共振周波数は、約1,520ナノメートルの光学波長に対応する、
請求項22-34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の領域は、第1の量子ビットを形成し、
前記第2の領域は、第2の量子ビットを形成する、
請求項22-34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の量子ビットは、前記第1の共振周波数を有する第1の光学場と相互作用し、
前記第2の量子ビットは、前記第2の共振周波数を有する第2の光学場と相互作用する、
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
第1の非ドープ緩衝層および第2の非ドープ緩衝層を堆積させることによって、前記第1の領域の性質を制御することをさらに含み、前記ドープされた第1の領域は、前記第1の非ドープ緩衝層と第2の非ドープ緩衝層との間に配置される、請求項22-34のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2021年11月19日に出願された、米国仮出願第63/281,194号に基づき、かつその優先権の利益を主張する。
【0002】
政府使用許諾権
本発明は、米国エネルギー省によって付与された、DE-AC02-05CH11231、および米国海軍研究局によって付与された、N00014-18-1-2869の下で、政府支援を受けて行われた。政府は、本発明において、ある権利を有する。
【0003】
異なる多形相を有する、同一材料ホストは、ドープされたイオンの光学性質に影響を及ぼすことが公知である。そのような影響は、限定ではないが、量子情報処理素子を含む、種々のタイプの光学素子を実装するために利用され得る。量子情報処理は、特に、通信およびコンピューティングにおける進歩が有望である。ドープされたイオンの光学性質に及ぼされる多形相の影響は、例えば、量子メモリ素子内で利用され、量子交絡ベースのリンクを長距離にわたって確立することが可能である、量子ネットワークを可能にし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ドープされた薄膜構造および素子を加工するための方法に関する。
【0005】
一実施形態では、本開示は、光学素子を説明する。光学素子は、基質と、基質上に配置される、薄膜構造とを含む。薄膜構造は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有する、第1の領域であって、第1の多形相は、第1の多形相によって修正される、光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらす、第1の領域と、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有する、第2の領域であって、第2の多形相は、第2の多形相によって修正される、光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらし、第1の共振周波数は、第2の共振周波数から偏移される、第2の領域とを含む。
【0006】
別の実施形態では、本開示は、光学素子を加工するための方法を説明する。本方法は、基質を提供するステップと、薄膜構造を基質上に配置するステップとを含む。薄膜構造は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有する、第1の領域であって、第1の多形相は、第1の多形相によって修正される、光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらす、第1の領域と、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有する、第2の領域であって、第2の多形相は、第2の多形相によって修正される、光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらし、第1の共振周波数は、第2の共振周波数から偏移される、第2の領域とを含む。
【0007】
いくつかの他の実施形態では、システムは、上記に説明される光学素子を含んでもよい。
【0008】
いくつかの他の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、上記の方法を行わせる、命令を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
下記に説明されるシステム、素子、製品、および/または方法は、以下の図面および非限定的かつ非包括的実施形態の説明を参照することで、より深く理解され得る。図面における構成要素は、必ずしも、正確な縮尺ではない。強調が、代わりに、本開示の原理を図示することに置かれる。
【0010】
図1図1は、例示的光学素子の概略図である。
【0011】
図2図2は、例示的光学素子を加工するための方法のフロー図である。
【0012】
図3A図3Aは、別の例示的光学素子の概略図である。
【0013】
図3B図3Bは、図3Aにおける光学素子を加工するための概略図である。
【0014】
図3C図3Cは、図3Aにおける光学素子を加工するための別の概略図である。
【0015】
図4A図4Aは、別の例示的光学素子の概略図である。
【0016】
図4B図4Bは、別の例示的光学素子の概略図である。
【0017】
図4C図4Cは、図4Bにおける光学素子を加工するための概略図である。
【0018】
図5A図5Aは、例示的光学共振器素子の概略図である。
【0019】
図5B図5Bは、別の例示的光学共振器素子の概略図である。
【0020】
図6図6は、酸化チタンの種々の多形相の構造的特性(シリコン上の多結晶、チタン酸ストロンチウム(STO)上のエピタキシャル単結晶、およびr-サファイア(Al))を示す。
【0021】
図7A図7Aは、成長温度に応じて種々の例示的多形相を有する、TiO内にドープされた光学活性エルビウムイオンの光学特性を示す。
【0022】
図7B図7Bは、850℃で、30分にわたって、アナターゼ多結晶TiOをシリコン上にアニーリング後に取得される、ルチル相内のエルビウムイオンからのスペクトルを示す。
【0023】
図8A図8Aは、シリコン上のTiOの種々の多形相からの光学応答の不均質線幅の比較を示す。
【0024】
図8B図8Bは、成長時におよび熱アニーリングを介して取得される、(シリコン上の)ルチル相に関する光学応答の不均質線幅を示す。
【0025】
図8C図8Cは、種々の成長条件下で取得される、種々の多形相に関する不均質線幅を示す。
【0026】
図9図9は、活性薄膜の不均質光学線幅を改良する際の光学活性薄膜と基質との間の底部緩衝材の役割を実証する。
【0027】
図10A図10Aは、光学活性のドープされたイオンの濃度の関数としての不均質光学線幅への寄与を示す。
【0028】
図10B図10Bは、温度の関数としての例示的不均質光学線幅を示す。
【0029】
図11図11は、上部および底部緩衝材厚と、光学活性のドープされたイオンの濃度との関数としてのスペクトル拡散を示す。
【0030】
図12A図12Aは、本開示における例示的実施形態の概略図を示す。
【0031】
図12B図12Bは、図12Aに示される例示的実施形態の特性チャートを示す。
【0032】
図12C図12Cは、図12Aに示される例示的実施形態の特性チャートを示す。
【0033】
図12D図12Dは、本開示における別の例示的実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の詳細な説明
開示されるシステム、素子、および方法が、ここで、本願の一部を形成し、例証として、具体的実施形態の実施例を示す、添付の図面を参照して、詳細に以降に説明されるであろう。しかしながら、説明されるシステムおよび方法は、様々な異なる形態で具現化されてもよく、したがって、本開示によって網羅される、請求される主題は、実施形態のいずれかに限定されないものとして解釈されるように意図される。本開示は、方法、素子、構成要素、またはシステムとして具現化されてもよい。故に、開示されるシステムおよび方法の実施形態は、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせの形態をとってもよい。
【0035】
明細書および請求項全体を通して、用語は、明示的に述べられた意味以外の文脈において示唆または含意される、微妙な意味を有してもよい。同様に、本明細書で使用されるような語句「一実施形態では」または「いくつかの実施形態では」は、必ずしも、同一実施形態を指すわけではなく、本明細書で使用されるような語句「別の実施形態では」または「他の実施形態では」は、必ずしも、異なる実施形態を指すわけではない。例えば、請求される主題は、全体的または部分的に、例示的実施形態の組み合わせを含んでもよいことが意図される。さらに、本明細書で使用されるような語句「1つの実装では」、「別の実装では」、または「いくつかの実装では」は、必ずしも、同一実装または異なる実装を指すわけではない。例えば、請求される主題は、全体的または部分的に、実装からの開示される特徴の組み合わせを含んでもよいことが意図される。
【0036】
一般に、専門用語は、少なくとも部分的に、文脈における使用から理解され得る。例えば、本明細書で使用されるような「および」、「または」、または「および/または」等の用語は、少なくとも部分的に、その中でそのような用語が使用される、文脈に依存し得る、様々な意味を含んでもよい。加えて、本明細書で使用されるような用語「1つまたはそれを上回る」または「少なくとも1つ」は、少なくとも部分的に、文脈に応じて、単数形の意味において、任意の特徴、構造、または特性を説明するために使用されてもよい、または複数形の意味において、特徴、構造、または特性の組み合わせを説明するために使用されてもよい。同様に、「a」、「an」、または「the」等の用語は、再び、少なくとも部分的に、文脈に応じて、単数形の使用を伝達する、または複数形の使用を伝達するために理解され得る。加えて、用語「~に基づいて」または「~によって決定された」は、必ずしも、要因の排他的セットを伝達するように意図されるものと理解され得ず、代わりに、再び、少なくとも部分的に、文脈に応じて、必ずしも、明示的に説明されない、付加的要因の存在を可能にし得る。
【0037】
本開示は、ドープされた薄膜構造を加工するための方法およびその加工される素子に関する。素子は、光学場と相互作用してもよく、限定ではないが、スケーラブル量子メモリプラットフォームおよび/または量子情報処理を含む、種々の光学処理および用途およびプラットフォームのための光学共振器を含む、種々の光学構造を含むように構成されてもよい。
【0038】
本開示の例示的文脈では、量子情報処理は、広義には、量子情報を記憶すること、量子情報をトランスポートすること、量子情報をコンピューティングすること、量子情報を読み出すこと、量子情報を初期化すること、量子情報を制御すること、または量子情報を操作することのうちの少なくとも1つを含んでもよい。そのような量子情報処理は、通信およびコンピューティングにおけるパラダイムシフトをもたらす。光学相互作用に基づく、実践的量子情報処理は、フォトニック構造とのチップスケール統合を可能にしながら、同時に、長コヒーレンス時間および狭光学遷移を保有する、量子機械的プラットフォームに依拠し得る。量子メモリ素子は、特に、量子交絡ベースのリンクを長距離にわたって確立することが可能である、量子ネットワークのために、特に、量子情報処理および量子コンピューティングの重要な部分である。量子情報は、原子の小集団または単一原子/欠陥のレベル、例えば、固体内の希土類(RE)イオン欠陥に記憶され得る。本開示は、実践的量子情報処理のために好適なこれらの構造的および物理的特性を提供する、構造を含有する、例示的素子を説明する。本開示は、量子情報処理用途に焦点を当てるが、下記に説明される素子は、そのように限定されない。それらは、量子情報処理以外の他の光学処理および通信用途に適合されてもよい。
【0039】
例示的光学活性材料として、固体内でドープされたエルビウム(Er)等の希土類(RE)イオンは、事実上、閉鎖された外側シェルによってそれらの結晶性周囲から遮蔽され、長スピンコヒーレンス時間(例えば、最大6時間)および狭光学遷移(例えば、1kHz未満)を可能にする、4f-4fシェル内遷移を特徴とする。非限定的実施例として、そのような希土類イオンは、活性光学構成要素として、本開示に説明される種々の例示的素子内に組み込まれる。種々の実施形態では、希土類イオンは、17個の金属元素のセットを指し得る、周期表内の希土類元素のイオンを指し得る。
【0040】
下記に開示される種々の実施形態では、REイオンでドープされた固体は、量子情報を処理するための量子素子/装置としての役割を果たし得、REイオンは、量子ビット(キュービット)としての役割を果たし得る。Erドープされた二酸化チタン(TiO)薄膜が、以下の実践的考慮点のうちの少なくとも1つのために、例示的プラットフォームとして選択されてもよい。1つの考慮点は、Erキュービットからの光学放出が、直接、最小限の損失を伴って、既存の光ファイバを経由して伝送され、それによって、長距離量子交絡分布を可能にし得るように、Erが電気通信C帯域(1,530~1,565nm)内にその第1の放出を有することであり得る。別の考慮点は、4fシェルが、遮局所的環境からの保護を提供し、長コヒーレンス時間をもたらす、完全5sおよび5pレベルによって遮蔽されるため、Erイオンが狭4f-4f遷移を有することであり得る。
【0041】
下記に開示される種々の実施形態は、エルビウムドープされたTiO薄膜の成長を含む。Erドープされた薄膜をドーピングおよび/または成長させる、ある一般的方法論は、2020年3月5日に出願された、PCT出願第PCT/US20/21257号、および2021年8月26日に出願された、米国特許出願第17/434,221号(その両方とも、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる)に説明される。TiO薄膜の堆積は、例えば、以下の方法、すなわち、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)のうちの少なくとも1つを通して、金属有機前駆体を使用し得る。成長温度に応じて、種々の成長条件下のTiO薄膜の成長は、複数の多形相、例えば、アナターゼ相またはルチル相のうちの少なくとも1つをもたらし得る。いくつかの実装では、薄膜は、以下のタイプ、すなわち、エピタキシャル膜、多結晶膜、または非晶質膜の任意のタイプを含んでもよい。いくつかの他の実装では、薄膜は、1つを上回るタイプを含んでもよく、例えば、薄膜の一部は、1つのタイプを含んでもよく、薄膜の別の部分は、別の異なるタイプを含んでもよい。
【0042】
下記に開示される種々の実施形態では、TiOは、成長条件に応じて、2つの主要多形相(アナターゼおよびルチル相)に結晶化し得る。これらの多形相は、簡潔にするために、「相」と称され得る。多形相はそれぞれ、TiOの特定の結晶構造に対応し得る。TiOの2つの相は、TiOの相によって修正される、ドープされたErイオンの2つの異なる共振周波数をもたらし得る。例えば、アナターゼTiO薄膜内にドープされたErイオンは、約1,532ナノメートル(nm)の光学波長に対応する、共振周波数を有し得、ルチルTiO薄膜内にドープされたErイオンは、約1,520ナノメートル(nm)の光学波長に対応する、共振周波数を有し得る。ここでは、「約xnm」は、(x-a)nm~(x+a)nm(それらの値を包含する)の範囲を指し、aは、例えば、数ナノメートル内の任意の数であってもよい。
【0043】
小集団またはさらに大集団である、個々のエルビウム原子は、種々の用途のための、例えば、量子情報処理のためのキュービットとして機能することができる。
【0044】
本開示は、制御されたアニーリング動作によって、単一ナノフォトニック構造内に複数の多形相のうちの少なくともいくつかを達成するための、種々の例示的実施形態を説明する。下記にさらに詳細に示されるように、本制御されたアニーリング動作は、単一素子内に複数の多形相を提供することに加え、光学均質性の観点から、「より良質な」膜をもたらし得る。種々の実施形態は、単一ナノフォトニック構造内に異なる光学共振周波数を有する、エルビウムでドープされた少なくとも2つの領域(両方ともC-帯域適合性)を生成するステップを含んでもよい。異なる光学共振周波数は、(Stark効果を介して、光学共振を修正するために、外部電場を2つの領域のうちの1つに印加すること等による)外部制御を伴わずに、達成される。種々の実施形態は、例えば、空間的に選択的レーザ加熱または局所的電気加熱を使用することによる、および/または熱アニーリングプロセスをリソグラフィで制御することによって、制御された熱アニーリングを介して、例えば、多形相の選択的空間制御によって、異なる光学共振を有する、キュービットの空間分布を制御するステップを含んでもよい。
【0045】
図1を参照すると、本開示は、素子100を含む、種々の実施形態を説明する。素子100は、素子内の情報を操作する、制御する、処理する、および/または読み取るために、光学場と相互作用する、光学素子であってもよい。素子100は、以下の構成要素、すなわち、基質110と、基質上に配置される、薄膜構造130との一部または全てを含んでもよい。いくつかの実装では、薄膜130は、以下のタイプ、すなわち、エピタキシャル膜、多結晶膜、または非晶質膜の任意の1つのタイプを含んでもよい。いくつかの他の実装では、薄膜130は、1つを上回るタイプを含んでもよく、例えば、薄膜の一部は、1つのタイプを含んでもよく、薄膜の別の部分は、別の異なるタイプを含んでもよい。
【0046】
薄膜構造130は、第1の領域131と、第2の領域132とを含んでもよい。第1の領域は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有してもよく、第1の多形相は、第1の多形相によって修正される、光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらしてもよい。第2の領域は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有してもよく、第2の多形相は、第2の多形相によって修正される、光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらしてもよい。いくつかの実装では、第1の共振周波数は、第2の共振周波数から偏移されてもよい。いくつかの他の実装では、第1の領域および第2の領域は、同一多形相を有してもよい。図1では、第1の領域131の周囲の細線ボックスは、アナターゼ相内にあり得る、第1の領域を示し得、および/または第2の領域132の周囲の太線ボックスは、ルチル相内にあり得る、第2の領域を示し得る。第1の領域131および第2の領域132は、空間的に分離していてもよい。図1は、実施例として、領域131および領域132が、素子100の面内方向において分離しており、それらは、代替として、成長方向において、または面内方向および成長方向の両方において、空間的に分離していてもよい(素子100の一般的描写に具体的に図示されないが、下記の図4Aおよび図4Bの具体的実装に示される)ことを示す。
【0047】
種々の実施形態では、図2は、光学素子を加工するための方法200のフロー図を示す。方法200は、以下、すなわち、基質を提供するステップ210および/または薄膜構造を基質上に配置するステップ220の一部または全てを含んでもよい。薄膜構造は、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第1の多形相を有する、第1の領域であって、第1の多形相は、第1の多形相によって修正される、光学活性イオンの第1の共振周波数をもたらす、第1の領域と、希土類系の光学活性イオンでドープされ、第2の多形相を有する、第2の領域であって、第2の多形相は、第2の多形相によって修正される、光学活性イオンの第2の共振周波数をもたらし、第1の共振周波数は、第2の共振周波数から偏移される、第2の領域とを含む。
【0048】
いくつかの実装では、各領域は、情報を記憶する、例えば、量子情報を少なくとも1つの量子ビット(キュービット)として記憶するための少なくとも1つの部位としての役割を果たし得る。いくつかの他の実装では、薄膜構造130は、他のキュービットとしての役割を果たす、他の領域を含んでもよい。
【0049】
一実施例に関して、基質110は、シリコン、サファイア、絶縁体上シリコン(SOI)、SiN、またはチタン酸ストロンチウム(STO)のうちの少なくとも1つを含んでもよく、および/または薄膜構造130は、少なくとも1つのTiO薄膜を含んでもよく、希土類系の光学活性イオンは、Erイオンを含んでもよい。第1の多形相は、アナターゼ相を含んでもよく、第2の多形相は、ルチル相を含んでもよい。アナターゼTiO薄膜内のErイオンは、約1,532ナノメートル(nm)の光学波長に対応する、共振周波数を有してもよく、ルチルTiO薄膜内のErイオンは、約1,520ナノメートル(nm)の光学波長に対応する、共振周波数を有してもよい。ここでは、「約xmm」は、(x-a)nm~(x+a)nm(それらの値を包含する)の範囲を指し、aは、例えば、数ナノメートル以内の任意の数であってもよい。
【0050】
いくつかの実装では、第1の領域は、第1の量子ビットを形成し、第2の領域は、第2の量子ビットを形成する。第1の量子ビットは、第1の共振周波数を有する、第1の光学場と相互作用し、第2の量子ビットは、第2の共振周波数を有する、第2の光学場と相互作用する。第1の光学場および第2の光学場は、2つの異なる光源によって発生されてもよく、または第1の光学場および第2の光学場は、同一光源によって発生されてもよく、これは、同時にまたは順次のいずれかにおいて、第1の共振周波数を有する、第1の光学場と、第2の共振周波数を有する、第2の光学場とを出力する。
【0051】
ルチルTiOおよびアナターゼTiO内にドープされたエルビウムの光学遷移間の偏移を表す、共振周波数間の約12nm波長差は、アナターゼTiO薄膜およびルチルTiO薄膜内にドープされたErイオンによって表される、2つのキュービット間の光学場によるスペクトル選択を可能にし得る。例えば、2つのキュービットが、平面または成長方向のいずれかにおいて、相互に空間的に近い、状況では、光学場は、約1,532nmまたは1,520nmのいずれかに調整され、2つのキュービットのうちの一方のキュービットと選択的に相互作用し、他方のキュービットに対して透過性であってもよい。ここでは、「約xmm」は、(x-a)nm~(x+a)nm(それらの値を包含する)の範囲を指し、aは、例えば、数ナノメートル以内の任意の数であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、TiO薄膜層は、成長温度において堆積され、アナターゼ相を形成してもよい。成長温度は、摂氏600度(℃)を下回る比較的に低温、例えば、摂氏550度または摂氏480度であってもよい。
【0053】
熱アニーリングプロセスは、アナターゼ相における領域をルチル相に変遷させ得る。熱アニーリングは、薄膜アナターゼ相の小部分のみがルチル相に変換されるように、局所的熱アニーリングであってもよい。アニーリング温度は、摂氏600度を上回るより高い温度であってもよく、熱アニーリングは、所定の持続時間にわたって実施されてもよい。熱アニーリングプロセスは、ゲート電極を用いた電気加熱および/または光吸収による光学加熱のうちの1つまたはそれらの組み合わせであってもよい。熱アニーリングは、(例えば、レーザから)集束された光または局所的電気加熱器によって、局所的に印加されてもよい。例えば、ゲート電極は、薄膜構造上に堆積される、具体的に設計される空間パターンを伴う、伝導性層を含んでもよく、電気電圧が、ゲート電極上に印加されると、ゲート電極は、熱を局所的に発生させ、局所的熱アニーリングを特定の領域に提供してもよい。レーザ加熱を通した局所的制御は、集束されたレーザビームによって、または制御されたレーザ空間干渉パターンによって、着目領域を生成するために使用されてもよい。そのような制御されたアニーリングは、ルチルエリアをそうでなければアナターゼ薄膜内に生成し、それによって、薄膜をルチル領域およびアナターゼ領域の中に分岐させる。一方のTiO領域は、本質的に、他方の領域に対して波長共振性を伴って、光学場に対して「透過性」になる。
【0054】
本開示における種々の実施形態の1つの利点/利益は、決定的設置を達成するために、既存の技法を活用することを含み得る。いくつかの実装では、決定的設置および/または熱アニーリングの正確度は、約1マイクロメートル(μm)として、またはそれを下回って達成され得る。
【0055】
レーザ加熱による局所的熱アニーリングの空間分解能は、例えば、さらに、集束されたレーザ強度プロファイルによって制御されてもよい。いくつかの実装では、加熱レーザビームの吸収は、非線形であってもよい。したがって、集束されたビームのより高い強度部分は、より吸収され、向上された局所的熱アニーリング空間分解能につながり得る。
【0056】
いくつかの実装では、熱アニーリングは、摂氏750~850度(それらの値を包含する)の30分アニーリングを含んでもよい。いくつかの他の実装では、摂氏850度より高い熱アニーリング温度では、熱アニーリングにおける所定の持続時間は、30分より短くてもよく、例えば、数分、数秒、および/または数分の1秒程度の短さであってもよい。
【0057】
薄膜構造130は、1つまたはそれを上回る薄膜層を含んでもよく、第1の領域および第2の領域は、同一薄膜層または2つの異なる薄膜層内に配置されてもよい。
【0058】
図3Aは、光学素子300の実施形態を示す。光学素子300は、基質310と、薄膜構造330とを含んでもよい。薄膜構造は、薄膜層を含んでもよく、その中に第1の領域331および第2の領域332が、成長方向398と垂直に配置されてもよい。換言すると、第1の領域331および第2の領域332は、薄膜層内の異なる面内場所(または位置または部分)にある。いくつかの実装では、第1の領域331は、アナターゼ相内にあってもよく、第2の領域332は、ルチル相内にあってもよい。
【0059】
種々の実施形態は、光学素子300を加工するための方法を含み、これは、単一ナノフォトニクス素子上の同一ドーパント-ホスト系内で偏移される波長を伴う、2つの非重複光学遷移を有する、2つの領域を含む。
【0060】
図3Bは、図3Aの光学素子300を加工するための一例示的実施形態を示す。図2の方法200は、以下の一部または全てをさらに含むように適合されてもよい。
【0061】
第1のステップは、ある成長温度において、希土類系の光学活性イオンでドープされた薄膜層を基質上に堆積させるステップを含む。成長温度は、比較的に低温(例えば、550℃)であってもよく、それによって、薄膜層330が、領域332aをアナターゼ相内に含む、アナターゼ相内に形成される。
【0062】
第2のステップは、成長温度より高いアニーリング温度において、局所的熱アニーリング340(上記に説明されるように、局所的レーザ加熱または電気加熱)を薄膜層内の領域332aに印加し、アナターゼ相内の薄膜の領域332aをルチル領域332b(第2の多形相)に変換し、第2の領域332を形成するステップを含む。
【0063】
第3のステップは、薄膜層の残りの部分内にアナターゼ相(第1の多形相)を有する、第1の領域331を形成するステップを含む。いくつかの実装では、第2の領域332以外の部分は、第1の領域331を形成してもよい。いくつかの他の実装では、第1の領域332および第2の領域331は、面内方向において、薄膜330全体を占有しなくてもよく、第1の領域331および第2の領域332以外の部分は、例えば、リソグラフィ手段(例えば、エッチング、溶解、またはリフトオフ)を介して、除去されてもよい。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態では、図3Bに示されるような例示的実施形態における上記の全てのステップを含まなくてもよい。一実施例に関して、実施形態は、パターンが、形成され、次いで、相変換が、実施される、光学素子をもたらす、最初の2つのステップを含んでもよい。
【0065】
図3Cは、光学素子を加工するための別の実施形態を示す。第1の領域および第2の領域は、同一面内薄膜層内に、シーケンスにおいて、異なる時間で堆積されてもよい。図2の方法200は、光学素子を加工するために、以下の一部または全てをさらに含むように適合されてもよい。
【0066】
第1のステップは、リソグラフィ方法(例えば、第1のパターン化された層をリソグラフィでパターン化し、1つまたはそれを上回るある領域において、基質を暴露させる)を使用して、リソグラフィで画定された領域(例えば、領域332d)内で、ある成長温度において、第1の薄膜を希土類系の光学活性イオンでドープされたを基質上に堆積させるステップを含む。リソグラフィ方法は、第1の薄膜の領域332d堆積時に開口部を伴ってパターン化されたフォトレジストまたは犠牲層を使用してもよい。成長温度は、比較的に低温であってもよく、それによって、リソグラフィで画定された領域(領域332d)は、アナターゼ相内に形成される。
【0067】
第2のステップは、332eによって示されるように、成長温度より高いアニーリング温度において、熱アニーリング340を素子に印加し、薄膜の領域332dをアナターゼ相からルチル相に変換し、第2の領域332を形成するステップを含む。しかし、ここでの熱アニーリングは、パターン化された薄膜層が第2の領域332にのみ存在するため、局所的である必要はあり得ない。
【0068】
第3のステップは、第1の領域を暴露された基質内にリソグラフィで画定し、第1の多形相内で、成長温度において、希土類系の光学活性イオンを伴う第2の薄膜を第1の領域331における基質にわたって堆積させるステップを含む。成長温度は、比較的に低温であってもよく、それによって、第1の領域331は、アナターゼ相内に形成される。リソグラフィ画定および第1の多形相を伴う第1の領域331の成長は、上記の第2のステップにおいて取得される、構造にわたって、フォトレジストまたは犠牲層を堆積させ、第2の薄膜を第1の領域331および残りのフォトレジストまたは犠牲層にわたって堆積させる前に、第1の領域331にわたるフォトレジストまたは犠牲層を空間的にパターン化およびエッチング除去し、第1の領域331下の基質を暴露させ、次いで、第1の領域以外の領域を被覆する、フォトレジスト層を上方にリフトオフし、図3Cの第3のステップの構造を形成するステップを含んでもよい。
【0069】
代替として、図3Cの例示的フローでは、第1の薄膜は、成長温度において領域332dをリソグラフィパターン化し、アナターゼ薄膜を形成する前に、堆積されてもよい。第1の薄膜は、次いで、アニーリングされ、ルチル薄膜に変換されてもよい。アニーリングされた第1の薄膜は、次いで、例えば、領域332以外の残りの領域をエッチングすることによって、リソグラフィによって処理され、ルチル相を伴う、領域332を形成してもよい。
【0070】
本開示のいくつかの実施形態では、図3Cに示されるような例示的実施形態における上記の全てのステップを含まなくてもよい。一実施例に関して、実施形態は、パターンが、例えば、エッチングすることによって、形成され、次いで、相変換が、実施される、光学素子をもたらす、最初の2つのステップを含んでもよい。
【0071】
図4Aは、例示的光学素子400の実施形態を示す。光学素子400は、基質410と、薄膜構造430とを含んでもよい。薄膜構造は、1つを上回る薄膜層、すなわち、第1の薄膜層440と、第2の薄膜層450とを含んでもよい。第1の領域431および第2の領域432は、成長方向498に沿って、異なる薄膜層内に配置されてもよい。いくつかの実装では、第1の領域431は、アナターゼ相内の第2の薄膜層内にあってもよく、第2の領域432は、ルチル相内の第1の薄膜層内にあってもよい。
【0072】
図4Aを参照すると、いくつかの実施形態では、光学素子400内の第1の領域および第2の領域は、2つの薄膜層の異なる面内部分にあってもよい。
【0073】
図4Bを参照すると、いくつかの他の実施形態では、光学素子401内の第1の領域および第2の領域は、2つの薄膜層の同一面内部分にあってもよい。
【0074】
種々の実施形態は、光学素子400または401を加工し、それによって、単一ナノフォトニクス素子上の同一ドーパント-ホスト系内に偏移される波長を伴う、2つの非重複遷移を生成するために使用されてもよい。
【0075】
図4Cは、光学素子を加工するための種々の実施形態を示す。図2の方法200は、光学素子401を加工するために、図4Cの以下のステップの一部または全てをさらに含むように適合されてもよい。
【0076】
第1のステップは、ある成長温度において、希土類系の光学活性イオンでドープされた第1の薄膜440を基質410上に堆積させるステップを含む。成長温度は、比較的に低温であってもよく、それによって、第1の薄膜層440は、アナターゼ相内に形成される、領域432aを含む。
【0077】
第2のステップは、成長温度より高いアニーリング温度において、第2の領域450を熱的にアニーリングし、領域432aをアナターゼ相からルチル相領域432bに変遷させ、第2の領域432を形成するステップを含む。熱アニーリングは、局所的に実施されてもよい。
【0078】
第3のステップは、成長温度において、希土類系の光学活性イオンを伴う第2の薄膜450を第1の薄膜にわたって堆積させ、第1の領域431を第2の薄膜内に形成するステップを含む。成長温度は、比較的に低温であってもよく、それによって、第1の領域431を含む、第2の薄膜層450が、アナターゼ相内に形成される。
【0079】
上記の図4Bの素子401の基礎原理は、成長方向における2つを上回る薄膜層に拡大されてもよい。さらに、薄膜層のそれぞれにおいて、第1の領域431および/または第2の領域432は、面内方向における薄膜全体に拡張してもよい。第1および第2の領域431および432の面内場所の画定は、必要とされる場合、上記に説明されるように、種々のリソグラフィ処理を介して、達成されてもよい。
【0080】
限定ではないが、上記の種々の例示的素子内の第1の領域および第2の領域は、異なる希土類酸化物薄膜内にドープされた同一希土類イオンであってもよい。希土類酸化物は、二酸化チタン(TiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、または酸化イットリウム(Y)を含んでもよい。代替として、素子内の第1の領域および第2の領域は、同一希土類酸化物薄膜内にドープされた異なる希土類イオンであってもよい、または素子内の第1の領域および第2の領域は、異なる希土類酸化物薄膜内にドープされた異なる希土類イオンであってもよい。
【0081】
限定ではないが、種々の実施形態では、図4Aおよび4Bにおける第1の領域431は、アナターゼ相およびルチル相の任意の相であってもよく、第2の領域432は、他の相であってもよい。図3Bにおける第2の領域332a、図3Cにおける332c、または図4Cにおける432aは、異なる多形相であってもよく、熱アニーリングに応じて、ルチル相に変換される。
【0082】
本開示は、上記の素子を上記の実施形態のうちの任意の1つまたはそれらの組み合わせに組み込む、用途の種々の実施形態をさらに説明する。
【0083】
一実施形態は、順次堆積およびアニーリング方法を使用することによって、側方構成および/または垂直構成を用いて、キュービット密度を有意に増加させる、例えば、キュービット密度を2倍にするステップを含んでもよい。別の実施形態は、選択されたエリア上への多形相変換によって、決定的キュービット設置を達成するステップを含んでもよい。
【0084】
図5Aを参照すると、別の実施形態は、リング共振器ベースの素子500を含んでもよい。素子は、ナノフォトニックメモリ素子または他の光学処理素子(光学フィルタ等)として実装されてもよい。図5Aは、薄膜構造の面内図を示す。アナターゼ相内の第1の領域511は、薄膜構造内に、第1の光学リング共振器を形成し、第2の領域512は、第2の光学リング共振器を形成してもよい。いくつかの実装では、第1の光学リング共振器511および第2の光学リング共振器512は、薄膜構造内の同一光学導波管510に結合されてもよい。
【0085】
図5Bを参照すると、別の実施形態は、導波管および/またはフォトニック結晶(PhC)ベースの素子520を含んでもよい。素子は、ナノフォトニックメモリ素子として実装されてもよい。素子520は、ミラー領域521と、PhC内の着目領域522とを含んでもよい。PhC内の着目領域522は、第1の領域531のセットと、第2の領域532のセットとを含んでもよい。素子520は、別のミラー領域(図5Bには図示せず)を含んでもよく、これは、ミラー領域521との組み合わせにおいて、着目領域522を包囲し、例えば、Fabre-Perot共振器を形成してもよい。着目領域522内の第1の領域531および第2の領域532は、任意の面内空間様式に配列されてもよい。
【0086】
本開示は、熱アニーリングを使用して、特定の領域を第1の多形相(アナターゼ相)から第2の多形相(ルチル相)に変遷させる、種々の実施形態を説明する。より高い成長温度において、薄膜を堆積させることによって、直接加工される、ルチル相と比較して、熱アニーリングのいくつかの利点/利益が存在し得る。
【0087】
本開示は、ドープされた層を非ドープ層の合間に挟着することによって、1つまたはそれを上回るキュービットの性質を制御する、種々の実施形態を説明する、例えば、限定ではないが、エルビウムドープされた層が、第1の非ドープ層上に堆積され、第2の非ドープ層で冠着される。第1の非ドープ層は、底部緩衝層であってもよく、第2の非ドープ層は、上部緩衝層であってもよい。底部緩衝層(すなわち、第1の非ドープ層)および/または上部緩衝層(すなわち、第2の非ドープ層)の厚さを変動させることによって、エルビウムドープされた層内の1つまたはそれを上回るキュービットの性質が、制御されてもよい。例えば、以下の節にさらに詳細に議論されるように、底部層の厚さを増加させることによって、エルビウムドープされた層内の1つまたはそれを上回るキュービットの光学性質(例えば、不均質光学線幅)は、より狭く(すなわち、より小さく)なる。
【0088】
1つの利点/利益として、アナターゼ相からアニーリングすることによって、ルチル相を取得することは、下記にさらに詳細に説明されるように、直接堆積されるルチル相と比較して、最終ルチル相のためのより良好な品質を達成することに役立ち得る。
【0089】
別の利点/利益は、直接堆積されるルチル相と比較して、変換されるルチル相内のErイオンのための物理的性質の均質性を大幅に改良することを含み得る。例えば、直接成長されるルチル薄膜の不均質線幅は、76±3GHz(端の値を包含する)の範囲内であり得る一方、アナターゼ薄膜を熱アニーリングした後に取得される同一厚を伴う、ルチル薄膜の不均質線幅は、48±2GHz(端の値を包含する)の範囲内であり得る。光学不均質線幅は、ドーパントイオンの局所的環境内の不均質性に関するメトリックである。各Erイオンは、隔離される場合、同一遷移周波数を有するであろう、すなわち、局所的環境における小差異は、これを偏移させ、全体的分布は、本不均質線幅によって測定される。不均質線幅を低減させることが有利である。
【0090】
別の利点/利益は、低温において堆積を実施することが、直接、堆積のために、光リフォグラフィマスクを使用すること、長持続時間にわたる高温における成長と比較して、高温における熱アニーリングを用いる短持続時間のみを伴って、熱予算を低下させること、および/または1つのタイプのみの薄膜成長(低温成長)を用いて、プロセスサイクルを簡略化することを可能にすることを含み得る。
【0091】
下記では、本開示はさらに、詳細な素子加工方法および加工される素子の構造および光学特性の測定に関連する詳細を説明する。
【0092】
量子メモリ素子は、量子交絡ベースのリンクを長距離にわたって確立することが可能である、提案されるネットワークの重要な部分である。情報は、原子の小集団または単一原子/欠陥のレベル、例えば、数ある中でもとりわけ、ダイヤモンド内のNV中心およびYSO内の希土類欠陥に記憶される。これらのキュービットのためのソリッドステートホストが、有望なキュービットプラットフォームとして出現しており、主要な利点は、これらのシステムが本質的にスケーラブルであることに由来する。本システムは、上記に議論されるような1つを上回る実施形態のうちの任意の1つまたはそれらの組み合わせであってもよい。半導体産業適合性薄膜ホストを使用するための潜在性は、確立されたプロセスを利用することができる。本分野における1つの重要な駆動力は、ナノフォトニック構造を使用する単一原子との相互作用の重要な実証となっている一方、これらの実証は、それらが薄膜プラットフォームの潜在性に関する強力な支持を提供する、概念検証である。
【0093】
ErドープされたTiO薄膜の特性評価は、下記の節に説明され得る。Erの選択肢は、Erがその第1の放出を電気通信C帯域(1,530~1,565nm)内に有するという事実によって動機付けられ、これは、Erキュービットからの光が、最小限の損失を伴って、直接、既存の光ファイバを経由して伝送され、したがって、長距離交絡分布を可能にし得ることを意味する。加えて、希土類イオン(REI)としてのErは、4fシェルが完全5sおよび5pレベルによって遮蔽されるため、狭4f-4f遷移を有し、これは、局所的環境からの保護を提供する。
【0094】
ナノ粒子形態におけるTiO内のエルビウムは、太陽電池材料として探求されている。TiOの薄膜成長は、金属有機前駆体をr-面サファイア上で使用してもよい。本方法は、TiO圧力が精密かつはるかに低い温度で制御され得るため、(Tiの)直接蒸発より有利である。
【0095】
加工方法および薄膜特性
例示的TiO膜の成長は、Riber酸化物MBEシステムを使用して実施されてもよい。オルトチタン酸テトライソプロピル(TTIP)が、チタンの源として使用された。前駆体が、Sigma-Aldrichから購買され、99.999%の純度を有していた(微量金属ベース)。チャンバ内に導入される、TTIPの量は、コンピュータ制御された針弁を介した前駆体水蒸気圧力を介して、精密に制御された。膜内のドーピングは、高温Knudsenセル内の金属エルビウム源を使用して実施された。その精製された金属形態におけるエルビウムは、Iowa州にあるAmes Labから購入され、5Nの純度を有していた(希土類ベース)。膜が、高温計によって測定されるように、ある範囲の基質温度(摂氏480度(℃)~850℃)にわたって成長された。成長に関して、温度は、ルチル膜のために、750℃に、アナターゼ膜のために、480℃に設定された。酸素流が、0.55sccmに保たれ、5E-6Torrのチャンバ背景圧力を得た。使用される基質は、r-面サファイア(LATTICE)、STO(100)、およびSi(100)であって、前者2つは、加熱器と基質との間の改良された熱伝達のために、350nm厚のTa層を背面側上で使用した。STOおよびサファイアに関して、基質は、20分のOプラズマを基質上で使用して清浄され、シリコンに関して、RCA清浄が、行われ、その後、HF浸漬(本来の酸化物を除去する)が続き、基質の清浄度が、2x1再構成によって信号伝達された。ドーパント密度は、源温度(800℃~1,200℃)を制御することによって、変動された。成長される膜は、0.55sccm酸素流を用いて、(成長温度から200℃まで)冷却された。
【0096】
成長は、RHEEDを使用して、原位置で監視され、原位置外膜特性評価が、X線回折(XRD)(Bruker D8 discover)を使用して、実施された。表面特性評価が、Bruker Dimension Icon原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、実施された。
【0097】
ブロードバンドオフ共振分光法が、905nm励起レーザ(QPhotonics QFLD-905-200S)を使用して、実施された。エルビウムフォトルミネッセンスが、1.2μm光のためにブレーズドされた300g/mm回折格子を使用して、約0.3nmのスペクトル分解能を達成する、ファイバ結合分光計および液体窒素冷却InGaAsカメラ(Teledyne Princeton Instruments製IsoPlane-320およびPyLoN-IR)を用いて、収集された。
【0098】
光学特性評価設定は、薄膜上に集束された、50倍対物レンズを使用する、ホームビルドされた共焦点顕微鏡である。光が、単一コリメータから分光維持ファイバの中へと自由空間から/の中に収集/放出される。ファイバは、双方向性2x1音響光変調器スイッチ(Brimrose)に接続され、これは、収集経路と励起経路との間で切り替える。励起の間、スイッチは、波長可変C-帯域レーザ(PurePhotonics)からの光をサンプルへの自由空間の中に送光する一方、収集の間、スイッチは、フォトルミネッセンスを超伝導性ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)の中に送光する。励起経路上の2つの付加的音響光変調器(AA-Optoelectronic)は、SNSPD暗雑音を下回る(<100カウント/秒)励起からの任意のクロストークを完全に減衰させることに役立つ。スペクトルは、波長可変レーザの波長を掃引し、0.1~1ミリ秒(ms)の持続時間との間にわたって励起させることによって取得される。フォトルミネッセンスは、1~15msの持続時間にわたって、100μsの遅延後に収集される(過渡のために)。均質線幅測定が、強度電気光変調器(10GHz、Thorlabs)を使用して、実現され、二次点においてバイアスされ、プローブ側帯域を生成する。側帯域周波数は、駆動外部マイクロ波信号発生器によって設定および掃引される。
【0099】
膜の構造的特性
TiOは、2つの主要相、すなわち、アナターゼ(I4/amd、a=3.7845Å、c=9.5143Å、Z=4)と、ルチル(P4/mnm a=4.5937Å、c=2.9587Å、Z=2)とに結晶化する。これらのうち、ルチルは、r-面サファイア(012)//TiO2(101)上にエピタキシャルに成長されており、
【化1】
に沿って3.7%および
【化2】
に沿って6.04%の不整合を伴う。
【0100】
図6の下側半分を参照すると、透過型電子顕微鏡検査(TEM)画像(行1および行2)および選択的エリア回折(SAD)データ(行3)は、r-サファイア上の成長がエピタキシャル関係を有することを示す。しかしながら、シリコン上では、成長は、TEM画像に見られるように、多結晶であるが、SADから裏付けられるように、好ましい成長方向に沿って、テクスチャ加工される(行3)。
【0101】
同様に、アナターゼに関して、STO(100)//TiO(001)は、3.1%の不整合を有するが、本エピタキシャル関係に起因して、成長は、エピタキシャルのままである。しかしながら、シリコン(100)上では、エピタキシャル関係の不在に起因して、相が温度に強依存性を有し、成長表面が熱力学的に駆動された、すなわち、好ましい成長方向がルチルおよびアナターゼの両方に関して識別されたことが見出された。これらの成長では、界面層は、r-サファイアおよびSTO上のTiO成長に関して認められなかったが、明確に異なる量の酸化物が、シリコン基質に関する界面に存在し、これは、より高い温度で成長されたルチルに関して、より厚い。本酸化物中間層は、成長の間のSiの酸化に起因し、より高い成長温度は、より厚い層の酸化物(2対4nm)につながる。
【0102】
光学特性評価
ルチルおよびアナターゼ内のエルビウムは、フォトルミネッセンス(PL)シグネチャに見られるように、2つの明確に異なる放出ピークを有する。これに基づいて、アナターゼ成長にわたる温度範囲が、識別され得る。探求される範囲に関して、明確に異なる相/温度依存性が、認められた。
【0103】
図7Aに示されるように、膜は、主に、750℃およびそれを上回ると、ルチルであって、主に、550℃およびそれを下回ると、アナターゼであって、中間温度は、2つの相間の分布を与え、これは、温度に依存することが予期されるが、ここでは探求されていない。図7Aでは、ErドープされたTiO(ルチル)は、約1,520nmのピークを有する一方、アナターゼ相は、約1,532nmのピークを有する。ルチル相は、成長温度が減少されるにつれて、減少する(赤色:750C、青色:610C、黒色:550C、シアン色:480C)。
【0104】
図7Bは、低温において成長されるが、850℃でアニーリングされる(5x10E-5torrの酸素圧力、850℃)、サンプルに関して、低温ピークが消失することを示す。
【0105】
単結晶成長のためのルチルおよびアナターゼ相を比較すると、光学不均質線幅が、ルチル相に関してより有意に大きい(約6倍)ことが見出される。r-サファイアとルチルとの間のより大きい格子不整合は、少なくとも部分的に、本効果に責任があり得る。しかしながら、これが、唯一の理由であった場合、線幅は、Si(100)上の多結晶薄膜に関して、より近くなるであろうことが予期され得る。代わりに、これはさらに、悪化し、Γinhは、図8A-8Cに示されるように、アナターゼと比較して、ルチルに関して約8倍より大きい。理由は、完全に明白ではなく、結晶構造内のエルビウムの位置が、ある役割を果たし得ることが予期される。このため、シリコン上の多結晶アナターゼは、界面、濃度、およびサンプル温度の効果の研究のために取り上げられ得る。
【0106】
図8Bは、ローレンツ関数を光学フォトルミネッセンスデータに適合させる、均質線幅形態を示す。
【0107】
図8Cでは、単結晶ルチルのΓinhが、単結晶アナターゼより約6倍広い。多結晶サンプルに関して、これは、ルチルがアナターゼより約8倍広い状態になる。
【0108】
膜性質のエンジニアリング
界面は、不均質線幅(Γinh)に関して有意な役割を有し得る。これを利用して、種々の実施形態は、1つまたはそれを上回る非ドープ層の厚さを変化させることにより、エルビウムドープされた層を非ドープ層の合間に挟着することによって、1つまたはそれを上回るキュービットの性質を制御するステップを含んでもよい。例えば、限定ではないが、1つまたはそれを上回るキュービットの性質は、不均質線幅の観点からの光学性質を含んでもよい。
【0109】
強依存性が、10nmの底部緩衝材と、5nmの上部緩衝材とを伴う、「裸」層(10nmEr:TiO膜)を比較するときに認められた。底部緩衝材厚を増加させることは、図9に示されるように、Γinhをさらに改良する。4Kelvin度(K)における約5.2GHzの一連の最良線幅が、60nmの底部緩衝材を伴う膜スタックに関して見出された。図9では、一連の実験は、不均質光学線幅を改良する際の底部緩衝材の役割を実証し得る。最良線幅は、60nm底部緩衝材に関して取得された(差込図)。
【0110】
線幅が濃度または温度によって限定されたかどうかもまた、調査された。パラメータ空間内では、濃度は、限定要因であるとは考えられないことが見出された。しかしながら、改良のためのある程度の余地が、より低いサンプル温度に関して残っている。
【0111】
図10Aおよび10Bは、濃度および温度に由来する、Γinhへの寄与を示す。濃度は、主要な広がりを引き起こさないために十分に低いが、しかしながら、依然として、より低い温度に進むことによって、改良のための余地が存在することが見出された。
【0112】
*は、潜在的キュービットを特性評価した、別の重要なパラメータである。従来的に、これは、光のパルスとインターフェースすることを介して、評価される。前述で説明される間接方法が、T*に関する上限を得るために採用された。これは、上部および底部緩衝材およびドーパント濃度が果たす、役割を評価するために使用された。Γinhと比較して、T*は、図11に示されるように、緩衝材および濃度に対してより敏感である。
【0113】
慎重に設計された実験はさらに、エルビウムドープされた薄膜の性質がエンジニアリングされ得ることを示す。加えて、膜のSi適合性および加工性は、直接、本プラットフォーム上で、素子加工を可能にする。
【0114】
多結晶のより良好な性能は、完全に緩和されたナノ結晶に完全に起因し得ない。しかしながら、本時点で完全に明白ではない、役割を果たす、他の機構も存在し得る。均質線幅を研究するための能力が、さらなる発展を経るにつれて、これは、ひいては、また、これらの相互作用の性質をさらに深く研究することを可能にし得る。
【0115】
サブミクロンスケールにおける局所的レーザ加熱を用いた実施形態
いくつかの実装では、Tは、2つの安定相内、すなわち、アナターゼと、ルチルとに存在し、局所的加熱が、2つの相間の変化に影響を及ぼすために使用されてもよい。集束されたレーザビームを使用して、相変化が、1マイクロメートル(ミクロン)の長さおよび/または幅に等しいまたはそれより小さい、例えば、サブミクロンと見なされる、0.5ミクロンであり得る、エリアにわたって画定されてもよい。
【0116】
いくつかの実装では、Er-ドープされたTの局所的相変化が、ミクロンまたはサブミクロンサイズレベルにおいて局所的環境に影響を及ぼすために使用されてもよく、したがって、マイクロスケール領域は、準決定的方式において、Er(または他のREI)キュービット設置を可能にする。一実施例に関して、図12A-12Dは、集束されたレーザが、局所的レーザ加熱によって、サブミクロン領域にわたって相変化を得るために使用され得ることを実証する。
【0117】
図12Aを参照すると、パネル1210は、薄膜/ウエハの断面の概略図を示し、その基質は、シリコンであって、上層は、Er-ドープされたTiO薄膜である。Er-ドープされたTiO薄膜は、アナターゼの相である。パネル1220は、局所的レーザ加熱/アニーリングが生じる、領域(すなわち、「実験領域」)の概略図を示す。クロムマーカが、X線蛍光を使用してデータ収集を誘導するために使用される。局所的レーザ加熱/アニーリングが、長方形によって示されるエリアにおいて実施された後、領域の後続特性評価が、実施される。
【0118】
図12Bを参照すると、パネル1230は、TiOサンプル(アナターゼ)上のパターン化されたエリアの光学画像を示し、19×19μmの領域が、エリアを識別するために、クロム基点を使用して画定される。約1マイクロメートル(μm)スポットサイズを伴う、500ミリワット(mW)青色レーザが、それぞれ、約1、10、100、および500秒の滞留時間を伴う、約5μm分離される、小領域を加熱するために使用される。パネル1240は、アナターゼでは、約1,533ナノメートル(nm)において、ルチルでは、約1,521nmにおいて、Er放出を示す。フォトルミネッセンス(PL)放出は、長方形(1242)内のエリアに対応する、放出波長における差異を通して、相変化の証拠を示す。PLは、ルチルピークを中心とする帯域通過フィルタを使用して、収集される。
【0119】
本開示では、「約A」は、A±10%*A(端の値を包含する)としてAの周囲の範囲を指し得、Aは、数である。
【0120】
図12Cを参照すると、パネル1250および1260は、先端放射光施設において、集束されたX線ビーム(40nm)を使用して、着目領域(図12Bにおける長方形1442)を走査することによる、さらなる証拠を示す。粒子のサイズが、100nmを下回って測定され、それらの場所は、青色レーザによって修飾されるエリアに合致する。
【0121】
図12Dを参照すると、パネル1270および1280は、本開示における種々の実施形態が、例えば、ナノフォトニクス素子の波腹(領域1282によって示される)において、着目領域を局所的に画定するために使用され得ることを示す。参照のために背景として、典型的フォトニック導波管は、約500nmの幅を有する。パネル1270は、絶縁体上シリコン上のEr:TiOを使用して加工される素子の概略図を示す。パネル1280は、本開示に説明されるような局所的レーザ加熱方法を用いる、別の加工される素子上の相の概略図を示す。
【0122】
特定の開示が、例証的実施形態を参照して説明されているが、本説明は、限定することを意味するものではない。本開示の例証的実施形態および付加的実施形態の種々の修正が、本説明から当業者に明白となるであろう。当業者は、これらおよび種々の他の修正が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に図示および説明される、例示的実施形態に行われ得ることを容易に認識するであろう。したがって、添付の請求項は、任意のそのような修正および代替実施形態を網羅するであろうと想定される。例証のある割合は、誇張され得る一方、他の割合は、最小限にされ得る。故に、本開示および図は、制限的ではなく、例証的と見なされるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
【国際調査報告】