(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】高分子化合物とその応用
(51)【国際特許分類】
C08F 220/26 20060101AFI20250121BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20250121BHJP
【FI】
C08F220/26
B82Y30/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535212
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2022020960
(87)【国際公開番号】W WO2023121292
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185097
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チュンリム
(72)【発明者】
【氏名】リ,ウォンジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チワン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02R
4J100AB07R
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL09Q
4J100AL10Q
4J100AP16S
4J100AP17S
4J100BA02Q
4J100BA04Q
4J100BA05Q
4J100BA06Q
4J100BA08Q
4J100BA11Q
4J100BA15Q
4J100BA15R
4J100BA15S
4J100BA16Q
4J100BA20Q
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4J100BA42Q
4J100BA63P
4J100BA77Q
4J100BA77R
4J100BB03Q
4J100BB12Q
4J100BB18Q
4J100BC04Q
4J100BC07Q
4J100BC12Q
4J100BC28Q
4J100BC43Q
4J100BC53Q
4J100BC54Q
4J100BC54S
4J100BC59Q
4J100BC79Q
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100JA01
4J100JA61
(57)【要約】
本発明は、無機ナノ粉体の表面に化学結合して、その表面を改質することができる高分子化合物及びその応用に関し、より具体的には、高分子化合物が無機ナノ粒子粉体の表面に容易かつ迅速に化学結合して無機ナノ粒子の表面を改質し、高分子コーティング層を形成し、経済的かつ効率的に製造される高分子化合物及びその応用に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、R'は同一又は異なり、それぞれ独立して、水素又はメチル基を表し、
R
1は、ホスホリルコリン様リン脂質構造を含む基であり、
R
2は、独立して、水素;アルコキシ基;アミノ基;エポキシ基;又は1つ以上の官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
3は、独立して、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、又は酸官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
4は、C1~C10の脂肪族炭化水素基であり、
R
5、R
6及びR
7は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素;又はアルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基又は酸官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
8及びR
9は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素;又はヒドロキシ、カルボン酸又はアルコキシ官能基を含む基であり、ただし、R
8及びR
9の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、カルボン酸基又はアルコキシ官能基を含み、
W、X、Y、Zは、対応する繰り返し単位のモル分率であり、それぞれ独立して、0~1であり、ただし、W及びXの少なくとも1つは0超であり、W+X+Y+Z=1である。)で示される構造を有する高分子化合物。
【請求項2】
R
1が、下記式(2)
【化2】
(式中、aは、0~2の整数であり、
bは、2~4の整数であり、
R
10、R
11及びR
12は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素、C1~C6の炭化水素基又は-(CH
2)
n-OH基を表し、ここで、nは1~6の整数である。)で示されるホスホリルコリン様リン脂質構造を含む基である請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
モル分率Wで表される繰り返し単位を提供する不飽和リン脂質単量体が、以下からなる群から選択される1つ以上である請求項1に記載の高分子化合物:
2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(ビニルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(アリルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(スチリルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(p-ビニルベンジル)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(アクリロイルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(ブテロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2-(クロトノイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
エチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、
ブチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、
ヒドロキシエチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、
エチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、
ブチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、及び
ヒドロキシエチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート
【請求項4】
R
2が、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ラウリル、テトラデシル、ヘキサデシル、イソボニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ベンジル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、スクシニル、モノアルキルスクシネート、フマル酸モノアルキル、グリシジル、3,4-エポキシブチル、2,3-エポキシシクロヘキシル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3-メチルオキセタン-3-メチル、3-エチルオキセタン-3-メチル、NH
2、NHCH
3、アリル、2-ヒドロキシエチル、3-オキシプロピルメチルジメトキシシラン、テトラヒドロフルフリル、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテル、2-エチル-2メチル-1,3-ジオキソレニルメチル(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxoreynylmethyl)、2-イソシアナトエチル、4-モルホリン、フェニルグリシジルエーテル、フェノキシジエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、2-[4-(-1メチル-1-フェニルエチル)-フェノキシ]エチル、t-ブチル、2-オキシプロピルヘキサヒドロフタレート、γ-ブチロラクトン、プロポキシエチル、n-イソブトキシメチル、2-オキシエチルフタレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル、オクタフルオロペンチル、テトラフルオロプロピル、ヘプタデカフルオロデシル、及びトリブロモフェニルからなる群から独立して選択される請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項5】
R
3が、フェニル、p-メチルフェニル、及びp-アセトキシフェニルからなる群から独立して選択される請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項6】
R
4が、メチレン基又はエチレン基である請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項7】
R
5、R
6及びR
7が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、フェニル、ナフチル、ビニル、メタアクリルオキシメチル、2-メタアクリルオキシエチル、3-メタアクリルオキシプロピル、3-メタアクリルオキシプロピル、3-メタアクリルオキシプロピル、アクリルオキシメチル、2-アクリルオキシエチル、3-アクリルオキシプロピル、3-アクリルオキシプロピル、3-アクリルオキシプロピル、3-グリシジルオキシプロピル、2-エポキシシクロヘキシルエチル、3-エポキシシクロヘキシルプロピル、及びO-R
12(ここで、R
12は、水素、メチル、エチル又はプロピルである。)からなる群からそれぞれ独立して選択される請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の高分子化合物が化学結合した表面を有する無機ナノ粉体。
【請求項9】
請求項8に記載の無機ナノ粉体を含む粉末製剤。
【請求項10】
紫外線遮断用粉末、化粧料用粉末、又は色調用粉末である請求項9に記載の粉末製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機ナノ粉体の表面に化学結合して、その表面を改質することができる高分子化合物及びその応用に関し、より具体的には、無機ナノ粒子粉体の表面と容易かつ迅速に化学結合反応することにより、無機ナノ粒子表面を改質し、高分子コーティング層を形成することができ、しかも経済的且つ効率的に製造することができる高分子化合物及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品業界で一般的に使用されている無機ナノ粒子粉体は、主に二酸化チタン(TiO2)又は酸化亜鉛(ZnO)である。これらの無機ナノ粒子粉体は、主に皮膚のトーンを明るくするトーンアップクリーム製剤での顔料や、日焼け止め製品の製剤における無機日焼け止めとして使用されている。特に最近では、オゾン層破壊による地球温暖化と、紫外線による皮膚の露出が急増している。このように増加する紫外線から皮膚を守るため、日焼け止め製品の市場は毎年10%以上の急成長を遂げている。日焼け止め製品は、無機ナノ粒子と有機紫外線吸光剤をベースにした分散製剤システムを使用して、紫外線から皮膚を保護する。また、このような日焼け止め製品は、効果的な紫外線遮断機能を備えると同時に、軽い使用感、滑らかな塗り心地、きれいな仕上がりが求められる。しかし、高密度で粒子間の相互作用が強い無機ナノ粒子粉体は、紫外線散乱能を有する重要な材料であるが、他のすべての性能に悪影響を及ぼす。したがって、無機ナノ粒子粉体の表面特性を改質することで、皮膚安定性及び分散性を改善し、製品性能を高める試みがなされている。有機物コーティングやシリカコーティングによって分散不安定性を改善する努力はなされているが、根本的な問題は解決されていない。無機材料の本質的な特性を向上させるためには、有機材料をベースとした新たなコーティング技術が必要であるが、生産性と製品性能の両方を満足させるコーティング技術は未開発である。
【0003】
一般的に使用されている従来の化粧品製剤に使用される無機ナノ粉体(TiO2、ZnO)の表面コーティングには、脂肪酸、シリコーン、アミノ酸、フッ素化合物などの材料を用いたアプローチが試みられているが、これらの材料は、以下のような使用上の問題があった。脂肪酸コーティングの場合、皮脂に対する耐油性が低下し、テカリや変色の原因となり、シリコーンコーティングの場合、乾燥やザラツキを感じる。アミノ酸コーティングの場合は、耐水性・耐油性が低下し、重く感じるようになり、フッ素化合物コーティングの場合、化粧品が蒸れたり、不自然に見えたりして、成形性が低下する。このような皮膚適合性の低さという欠点を改善するために、新規無機ナノ粉末塗装技術の開発が試みられている。
【0004】
特に、皮膚への付着性、保湿性、密着性等の好ましい使用感を高めるために、無機ナノ粉体表面に生体親和性分子の薄層を均一に形成する技術が報告されている(例えば、特許文献1;非特許文献1)。しかし、前記技術で使用されている無機ナノ粉体表面コーティング用分子の重合方法は、表面成長重合法及び表面沈着重合法であるため、無機ナノ粉体の表面薄膜の厚さの強化に限界があり、表面開始剤リンカーが必要で、重合効率が低いだけでなく、皮膚密着性を向上させるための疎水性単量体を高分子構造への導入にも限界がある。また、生産には高価な多段階工程が必要であり、生産性の低下など様々なデメリットあり、開発が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国 特許 第10-1767207号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Polymer, 54 (21), 2013, 5609-5614
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、化粧品製剤に使用される無機ナノ粒子粉体の表面と容易かつ迅速に化学結合反応することにより、無機ナノ粒子の表面を改質し、高分子コーティング層を形成することができ、また、経済的かつ効率的に製造することができる高分子化合物及びその応用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、下記式(1)
【化1】
(式中、R'は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素又はメチル基を表し、
R
1は、ホスホリルコリン様リン脂質構造を含む基であり、
R
2は、独立して、水素;アルコキシ基;アミノ基;エポキシ基;又は1つ以上の官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
3は、独立して、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、又は酸官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
4は、C1~C10の脂肪族炭化水素基であり、
R
5、R
6及びR
7は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素;又はアルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基又は酸官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
8及びR
9は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素;又はヒドロキシ、カルボン酸又はアルコキシ官能基を含む基であり、ただし、R
8及びR
9の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、カルボン酸基又はアルコキシ官能基を含み、
W、X、Y、Zは、対応する繰り返し単位のモル分率であり、それぞれ独立して、0~1であり、ただし、W及びXの少なくとも1つは0超であり、W+X+Y+Z=1である。)で示される構造を有する高分子化合物を提供する。
【0009】
本発明の別の側面によれば、前記本発明の高分子化合物が化学結合した表面を有する無機ナノ粉体が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、前記本発明の無機ナノ粉体を含む粉末製剤が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高分子化合物は、化粧品製剤に使用される無機ナノ粒子粉体の表面と容易かつ迅速に化学結合反応して無機ナノ粒子表面を改質し、高分子コーティング層を形成することができ、高分子製造工程は、高価な工程や複雑な多段階製造工程を必要としないため、非常に経済的であり、生産性の向上の寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のコーティング実施例21で製造した無機ナノ粉体のHR-TEM像であり、高分子化合物1を用いてコーティングしたTiO
2表面に高分子層が形成されていることを示す図である。
【
図2】本発明のコーティング実施例21で製造した無機ナノ粉体のXPS分析結果であり、コーティング前後のTiO
2表面の結合エネルギー(O1S、Ti2p)値の差を示しており、高分子化合物とTiO
2表面との間の化学結合が良好に確立されていることを証明する図である。
【
図3】本発明のコーティング実施例21~28及び比較例1~2において、それぞれ製造した無機ナノ粉体のHR-TEM像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本発明の高分子化合物は、下記式(1)
【化2】
(式中、R'は同一又は異なり、それぞれ独立して、水素又はメチル基を表し、
R
1は、ホスホリルコリン様リン脂質構造を含む基であり、
R
2は、独立して、水素;アルコキシ基;アミノ基;エポキシ基;又は1つ以上の官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
3は、独立して、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、又は酸官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
4は、C1~C10の脂肪族炭化水素基であり、
R
5、R
6及びR
7は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素;又はアルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基又は酸官能基で置換若しくは非置換されたC1~C20の脂肪族炭化水素基若しくはC6~C20の芳香族炭化水素基であり、
R
8及びR
9は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素;又はヒドロキシ、カルボン酸又はアルコキシ官能基を含む基であり、ただし、R
8及びR
9の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、カルボン酸基又はアルコキシ官能基を含み、
W、X、Y、Zは、対応する繰り返し単位のモル分率であり、それぞれ独立して、0~1であり、ただし、W及びXの少なくとも1つは0超であり、W+X+Y+Z=1である。)で示される構造を有する。
【0015】
一実施形態において、前記式(1)において、R
1が、下記式(2)
【化3】
(式中、aは、0~2の整数であり、
bは、2~4の整数であり、
R
10、R
11及びR
12は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素、C1~C6の炭化水素基又は-(CH
2)
n-OH基を表し、ここで、nは1~6の整数である。)で示されるホスホリルコリン様リン脂質構造を含む基であってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記式(1)において、アルキル基は、C1~C20アルキル基又はC3~C20シクロアルキル基であってもよく、アルコキシ基は、C1~C20アルコキシ基又はC3~C20シクロアルコキシ基であってもよく、酸官能基はカルボン酸基であってもよく、脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記式(1)において、C1~C20の脂肪族炭化水素基又はC6~C20の芳香族炭化水素基に置換される官能基は、アルコキシ基、アリールオキシ基、エーテル基、ハロゲン基、イソシアネート基、ラクトン基、ヒドロキシ基又は酸官能基であってもよい。
【0018】
前記式(1)において、Wは0~1であり、より具体的には、0.01以上、0.05以上又は0.1以上であってもよく、また、1以下、0.99以下、0.95以下、0.9以下、0.85以下又は0.8以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
前記式(1)において、Xは0~1であり、より具体的には、0.01以上、0.05以上又は0.1以上であってもよく、また、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下又は0.5以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
前記式(1)において、Yは0~1であり、より具体的には、0.01以上、0.05以上又は0.1以上であってもよく、また、1以下、0.95以下、0.9以下、0.85以下又は0.8以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
前記式(1)において、Zは0~1であり、より具体的には、0.01以上、0.02以上又は0.05以上であってもよく、また、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下又は0.5以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
一実施形態において、前記式(1)において、モル分率Wで表される繰り返し単位を提供する不飽和リン脂質単量体が、例えば、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブテロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、エチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、及びヒドロキシエチル-(2'-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレートからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0023】
一実施形態において、前記式(1)において、R2が、例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ラウリル、テトラデシル、ヘキサデシル、イソボニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ベンジル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、スクシニル、モノアルキルスクシネート、フマル酸モノアルキル、グリシジル、3,4-エポキシブチル、2,3-エポキシシクロヘキシル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3-メチルオキセタン-3-メチル、3-エチルオキセタン-3-メチル、NH2、NHCH3、アリル、2-ヒドロキシエチル、3-オキシプロピルメチルジメトキシシラン、テトラヒドロフルフリル、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテル、2-エチル-2メチル-1,3-ジオキソレニルメチル(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxoreynylmethyl)、2-イソシアナトエチル、4-モルホリン、フェニルグリシジルエーテル、フェノキシジエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、2-[4-(-1メチル-1-フェニルエチル)-フェノキシ]エチル、t-ブチル、2-オキシプロピルヘキサヒドロフタレート、γ-ブチロラクトン、プロポキシエチル、n-イソブトキシメチル、2-オキシエチルフタレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル、オクタフルオロペンチル、テトラフルオロプロピル、ヘプタデカフルオロデシル、及びトリブロモフェニルからなる群から独立して選択され得る。
【0024】
一実施形態において、前記式(1)において、R3が、例えば、フェニル、p-メチルフェニル、及びp-アセトキシフェニルからなる群から独立して選択され得る。
【0025】
一実施形態において、前記式(1)において、R4が、例えば、メチレン基又はエチレン基であってもよい。
【0026】
一実施形態において、前記式(1)において、R5、R6及びR7が、例えば、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、フェニル、ナフチル、ビニル、メタアクリルオキシメチル、2-メタアクリルオキシエチル、3-メタアクリルオキシプロピル、3-メタアクリルオキシプロピル、3-メタアクリルオキシプロピル、アクリルオキシメチル、2-アクリルオキシエチル、3-アクリルオキシプロピル、3-アクリルオキシプロピル、3-アクリルオキシプロピル、3-グリシジルオキシプロピル、2-エポキシシクロヘキシルエチル、3-エポキシシクロヘキシルプロピル、及びO-R12(ここで、R12は、水素、メチル、エチル又はプロピルである。)からなる群からそれぞれ独立して選択され得る。
【0027】
本発明の高分子化合物は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、縮合重合などの公知の重合方法のいずれか1つの方法によっても製造することができるが、高分子化合物の製造の容易さ及び経済的な側面からラジカル重合を用いることが好ましい。また、単量体を重合溶媒と混合し、使用する熱開始剤の半減期温度に応じて適切な温度に加熱した後、窒素の雰囲気下で酸素を除去することによって製造することもできる。
【0028】
高分子化合物の重合条件としては、使用する熱開始剤の種類によって重合時間と温度が異なる場合がある。前記ラジカル重合開始剤としては、一般に知られている熱開始剤を用いることができ、より具体的には、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1'--ビス-(ビス-t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1'--アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリニル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリニル)プロパン、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドラート、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
一実施形態において、前記高分子化合物の製造時に、高分子の重量平均分子量(Mw)を調節するために、一般に知られている連鎖移動剤を用いることができ、より具体的には、1-ドデカンチオール、オクタデカンチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチロエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシシラン、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸などを用いることができる。
【0030】
一実施形態において、本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw、g/mol)は、1,000~200,000g/molであってもよく、分散度(PDI)は1.0~20であってもよく、より具体的には、重量平均分子量(Mw)が、5,000~100,000g/molであってもよく、分散度(PDI)が、1.0~10であってもよく、より具体的には、重量平均分子量(Mw)が10,000~50,000g/molであってもよく、分散度(PDI)が、1.0~5.0であってもよいが、これらに限定されるものではない。また、本発明の高分子化合物は、ホモポリマーであってもよく、各重合単位の配列順序に制限されないランダム共重合体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0031】
高分子化合物重合には、単量体、開始剤、鎖移動制、及びその他の添加剤との使い勝手を考慮して、適切な溶媒を使用することができる。例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロエチルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸メチル、乳酸エチルなどの乳酸エステル類;オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチルなどのオキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどのアルコキシ酢酸アルキルエステル類;3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチルなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチルなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシ-2-プロピオン酸メチルメチル、2-オキシ-2-プロピオン酸メチルエチルなどの2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エステル類、2-メトキシ-2-プロピオン酸メチルメチル、2-エトキシ-2-プロピオン酸メチルエチルなどの2-アルコキシ-2-プロピオン酸メチルアルキル類のモノオキシモノカルボン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-プロピオン酸メチルエチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチルなどのエステル類;ピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類などがあり、また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどから選択される単一の溶媒、又は2種以上の混合溶媒を使用することができる。
【0032】
本発明の高分子化合物は、化粧品製剤に使用される無機ナノ粒子粉体の表面と容易かつ迅速に化学結合反応するため、無機ナノ粒子粉体の表面を改質し、高分子コーティング層を形成することができる。
【0033】
従って、本発明の他の態様によれば、前記本発明の高分子化合物が化学結合された表面を有する無機ナノ粉体が提供される。
一実施形態において、前記無機ナノ粉体は、その表面に本発明の高分子化合物のコーティング層を有する無機ナノ材料(例えば、平均粒径が100nm以下の二酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ、セリサイト、カオリン、無水ケイ酸、窒化ホウ素又はタルク)であってもよい。
【0034】
本発明のまた別の態様によれば、前記本発明の無機ナノ粉体を含む粉末製剤が提供される。
【0035】
一実施形態において、前記粉末製剤は、紫外線遮断用粉末、化粧料用粉末、又は色調用粉末であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
以下、実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明の範囲は、これによっていかなる形でも制限されない。
【0037】
実施例
実施例1~20
<高分子化合物重合>
下記表1に示す種類及び比率の単量体A~E、並びに下記表1に示す種類及び量(単量体の合計100重量部に対する重量部)の熱開始剤及び鎖移動制を用いて重合を行った。重合条件としては、3口丸底フラスコを使用し、重合溶媒として無水エタノールを用い、混合物の固形分が合計35重量部となるように溶解し、温度をかけて重合した。重合が完了した後、さらなる重合を防ぐために、重合禁止制としてt-ブチルヒドロキノン(t-BHQ)100ppmを加えた。重合終了時の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(PDI)を下記表1に示した。このとき、重量平均分子量(Mw)及び分散度(PDI)は連鎖移動剤を用いて管理した。
【0038】
[使用成分]
A:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
B:3-トリメトキシプロピルメタクリレート
C:tert-ブチルメタクリレート
D:メチルメタクリレート
E:アリルトリエトキシシラン
F:2,2'-アゾビスイソブチロニトリル
G:4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)
H:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
I:1-ドデカンチオール
【0039】
【0040】
実施例21~28
<高分子化合物を用いたTiO2コーティングの評価>
前記のように製造された表1の各高分子化合物1、2、6、7、9、12、15及び17を用いて、下記表2に示す条件で二酸化チタン表面にコーティングを行った。二酸化チタンは市販のものを購入して使用した。コーティング後、HR-TEM解像分析を行い、二酸化チタン表面に高分子化合物層が形成されているかを確認し、XPS分析を行い、結合エネルギー値の移動を確認した。その結果を下記表2に示した。
【0041】
比較例1~2
下記式(3)と(4)の各高分子化合物を用いてチタニア表面にコーティングを行い、同様の方法で評価した結果を下記表2に示した。
【化4】
TiO
2表面コーティング及び洗浄試験
TiO
2表面コーティング及び洗浄工程は以下のように行った。まず、コーティング工程では、97gのTiO
2をビーカーに入れ、無水エタノール溶媒100gを加え、室温でホモディスパースで高速撹拌して均質化した後、次に、ホモディスパースで撹拌しながら高分子化合物3gを4回に分けて加えた。室温で10分間撹拌して均質化し、生成物をアルミホイル上で100℃で12時間乾燥した後、ハンマーミルで粉砕し、60メッシュでろ過した。コーティング工程が完了した後、洗浄工程では、200mLのPET試料を瓶に入れたイオン水120gにコーティングした30gのTiO
2を加え、1時間高速で撹拌した後、遠心分離機(3000rpm、10分)して無機粉体を沈殿させた。その後、透明な上層溶液を除去し、下層の固体沈殿物をアルミホイルに移し、100℃で12時間乾燥した後、乾燥TiO
2粉体(powder)をボウルで細かく粉砕して保存した。
【0042】
TiO2表面への高分子化合物コーティング層形成の確認(TEM像確認)
コーティング工程と洗浄工程を経た無機ナノ粉体(TiO2)表面への高分子化合物のコーティングが良好に進んでいるかどうかを確認するために、HR-TEM装置を使用して測定した。一方、強い洗浄処理を施した後でもTEM像で高分子層が形成されて観察された場合は、「○」、高分子層が形成されずに洗い流され高分子層が観察されなかった場合を「X」で示した。
【0043】
TiO2表面の高分子化合物の化学結合の有無の確認(XPS分析による確認)
製造した高分子化合物が化学的反応によってTiO2表面に化学的に良好に結合されているかどうかをXPS分析によって確認した。X線光電子分光法(XPS)は、表面分析で最も広く使用されている分析技術の1つである。XPSを使用して測定される結合エネルギーは、元素固有のエネルギーであるため、分析試料の元素を分析することができ、結合エネルギーは化学結合状態によって変化するため、化学結合状態に関する情報を得ることができる。TiO2のO1S準位の結合エネルギーとTi2p準位の結合エネルギーを確認した。化学結合による表面改質の変化は、各準位の結合エネルギー値の移動として表され、表面コーティングの有無を確認することができる。結合エネルギー値の場合、0.3eV以上であれば意味のある移動と見なされる。結合エネルギー値の移動が観察された場合を「○」、移動が観察されなかった場合を「X」で示した。
【0044】
【国際調査報告】