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特表2025-502689タンパク質発現のためのmRNA及びそのための鋳型
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  • 特表-タンパク質発現のためのmRNA及びそのための鋳型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】タンパク質発現のためのmRNA及びそのための鋳型
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20250121BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P31/00
A61K39/002
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/00 H
A61K48/00
A61K31/7105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537185
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2023001035
(87)【国際公開番号】W WO2023146230
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0012551
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519038714
【氏名又は名称】エスケー バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ウォン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン-イン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、キ-ウォン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA21
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C085AA03
4C085BA02
4C085BA07
4C085BA49
4C085BA51
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA21
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
(57)【要約】
本発明は、タンパク質発現のためのmRNA及びそのための鋳型に関し、一実施例による遺伝子コンストラクトを含むmRNA転写ベクター、前記mRNA転写ベクターを用いて転写を行うステップを含むmRNA分子製造方法、前記方法により製造されたmRNA分子、及び前記mRNA分子を有効成分として含む薬学組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAポリメラーゼ(RNA polymerase)により認識されるプロモーター領域と、前記プロモーター領域に作動可能に連結された遺伝子コンストラクトとを含むmRNA転写ベクターであって、
前記遺伝子コンストラクトは、
(1)5’非翻訳領域(5'-Untranslated region: 5'-UTR)と、
(2)前記5’UTR領域に作動可能に連結された、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレーム(Open reading frame: ORF)領域と、
(3)前記オープンリーディングフレーム領域に作動可能に連結された3’非翻訳領域(3'-Untranslated region: 3'-UTR)とを含み、
前記3’UTR領域は、配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるか、又は前記5’UTR領域は、配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなり、
前記3’UTR領域が配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる場合、5’UTR領域は、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択され、
前記5’UTR領域が配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる場合、3’UTR領域は、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択される、
mRNA転写ベクター。
【請求項2】
前記オープンリーディングフレーム領域は、病原体に由来する抗原をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項3】
前記病原体は、ウイルス(virus)、バクテリア(bacterium)、プリオン(prion)、菌類(fungus)、原生動物(protozoon)、ウイロイド(viroid)及び寄生動物(parasite)からなる群から選択されるものである、請求項2に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項4】
前記遺伝子コンストラクトは、前記5’UTRに作動可能に連結された、5’キャップ(5’ Cap)に転写されるヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項5】
前記遺伝子コンストラクトは、前記3’UTR領域に作動可能に連結された、ポリAテールに転写されるヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項6】
前記ポリAテールは、20~200個のアデニンを含む、請求項5に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項7】
前記mRNA転写ベクターはプラスミドである、請求項1に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項8】
前記mRNA転写ベクターは、線状化したものである、請求項1に記載のmRNA転写ベクター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のmRNA転写ベクターを鋳型として転写(transcription)を行うステップを含む、mRNA分子を製造する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により製造されたmRNA分子。
【請求項11】
請求項10に記載のmRNA分子を有効成分として含む薬学組成物。
【請求項12】
前記mRNA分子は、少なくとも1つの脂質成分と複合体を形成し、リポソーム(liposomes)、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticles)及びリポプレックス(lipoplexes)からなる群から選択されるいずれかを形成するものである、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項13】
前記薬学組成物は、筋肉又は皮下投与されるものである、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項14】
(1)5’非翻訳領域(5'-Untranslated region: 5'-UTR)と、
(2)前記5’UTR領域に作動可能に連結された、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレーム(Open reading frame: ORF)領域と、
(3)前記オープンリーディングフレーム領域に作動可能に連結された3’非翻訳領域(3'-Untranslated region: 3'-UTR)とを含む遺伝子コンストラクトであって、
前記3’UTR領域は、配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるか、又は前記5’UTR領域は、配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなり、
前記3’UTR領域が配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる場合、5’UTR領域は、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択され、
前記5’UTR領域が配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる場合、3’UTR領域は、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択される、
遺伝子コンストラクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質発現のためのmRNA及びそのための鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、mRNAは、医薬品の有効成分(API, Active Pharmaceutical Ingredient)として注目されている。このようなmRNAを用いたワクチンの利点として、大きく3つが挙げられる。第一に、生産面において、過程が比較的簡単であり、短期間で製造することができるので、パンデミックなどの緊急事態や変異に対する迅速かつ柔軟な対応が可能である。第二に、機能面において、細胞内送達が効果的に行われれば、体液性免疫(Systemic immunity)と細胞性免疫(Cellular immunity)の両方を誘導することができ、他の種類のワクチンに比べて、より効果的に疾病予防を期待できる。第三に、安全面において、副作用が少なく、DNAとは異なり、RNAは核に入って人体の遺伝子の改変を行うものではないという大きな利点がある。よって、mRNAを大量生産するための適切な発現系の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Stephen F. Altschul, et al (1997), "Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs", Nucleic Acids Res. 25:3389-3402
【非特許文献2】Smith, T.F. & Waterman, M.S. (1981) "Identification of common molecular subsequences." J. Mol. Biol. 147:195-197
【非特許文献3】Needleman, S.B. & Wunsch, C.D. (1970) "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins." J. Mol. Biol. 48:443-453.
【非特許文献4】Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988
【非特許文献5】Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993
【非特許文献6】Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987
【非特許文献7】Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994
【非特許文献8】Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991
【非特許文献9】CABIOS, 1989, 4:11-17
【非特許文献10】Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48:1073 (1988)
【非特許文献11】Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984)
【非特許文献12】S. F. et al., J. Molec. Biol., 215, 403 (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、タンパク質発現のためのmRNA及びそのための鋳型に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、RNAポリメラーゼ(RNA polymerase)により認識されるプロモーター領域と、前記プロモーター領域に作動可能に連結された遺伝子コンストラクトとを含むmRNA転写ベクターを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記mRNA転写ベクターを鋳型として転写(transcription)を行うステップを含む、mRNA分子を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、前述したように製造したmRNA分子を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、前述したように製造したmRNA分子を有効成分として含む薬学組成物を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記mRNA転写ベクターのmRNA製造用途及び薬学組成物製造用途を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特定のUTRの組み合わせを含むmRNA転写ベクターによりターゲットタンパク質の発現量を増加させることができるので、目的とするタンパク質を大量発現させて得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で作製したmRNA転写ベクターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、mRNA転写ベクターである。
【0013】
前記mRNA転写ベクターは、RNAポリメラーゼ(RNA polymerase)により認識されるプロモーター領域と、前記プロモーター領域に作動可能に連結された遺伝子コンストラクトとを含む。
【0014】
一具体例として、前記遺伝子コンストラクトは、(1)5’非翻訳領域(5'-Untranslated region: 5'-UTR)と、(2)前記5’UTR領域に作動可能に連結された、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレーム(Open reading frame: ORF)領域と、(3)前記オープンリーディングフレーム領域に作動可能に連結された3’非翻訳領域(3'-Untranslated region: 3'-UTR)とを含むことを特徴とする。
【0015】
他の具体例として、前記3’UTR領域は、配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるか、又は前記5’UTR領域は、配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなることを特徴とする。
【0016】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記3’UTR領域は、配列番号1又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなり、5’UTRは、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42又はそれらと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択されることを特徴とする。
【0017】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記5’UTR領域は、配列番号47又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3’UTR領域は、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択されることを特徴とする。
【0018】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記遺伝子コンストラクトは、(1)5’非翻訳領域(5'-Untranslated region: 5'-UTR)と、(2)前記5’UTR領域に作動可能に連結された、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレーム(Open reading frame: ORF)領域と、(3)前記オープンリーディングフレーム領域に作動可能に連結された3’非翻訳領域(3'-Untranslated region: 3'-UTR)とを含み、前記3’UTR領域は、配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるか、又は前記5’UTR領域は、配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなり、前記3’UTR領域が配列番号1もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる場合、5’UTR領域は、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択され、前記5’UTR領域が配列番号47もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる場合、3’UTR領域は、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91もしくはそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択されることを特徴とする。
【0019】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記オープンリーディングフレーム領域は、抗原をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。
【0020】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記オープンリーディングフレーム領域は、病原体に由来する抗原をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。
【0021】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターにおいて、前記病原体は、ウイルス(virus)、バクテリア(bacterium)、プリオン(prion)、菌類(fungus)、原生動物(protozoon)、ウイロイド(viroid)及び寄生動物(parasite)からなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0022】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記遺伝子コンストラクトは、前記5’UTRに作動可能に連結された、5’キャップ(5' Cap)に転写されるヌクレオチド配列をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記遺伝子コンストラクトは、前記3’UTR領域に作動可能に連結された、ポリAテールに転写されるヌクレオチド配列をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターに含まれる前記ポリAテールは、20~200個のアデニンを含むことを特徴とする。
【0025】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターはプラスミドであることを特徴とする。
【0026】
前述した具体例のいずれかによるmRNA発現ベクターは、線状化した(linearized)ものであることを特徴とする。
【0027】
本発明の他の態様は、mRNA分子の製造方法である。
【0028】
一具体例として、前記方法は、前述した態様のmRNA転写ベクターを鋳型として転写(transcription)を行うステップを含むことを特徴とする。
【0029】
他の具体例として、前記mRNAの製造方法は、前述した態様のmRNA転写ベクターを鋳型としてインビトロ転写(in vitro transcription)を行うステップを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明のさらに他の態様は、前述した態様のmRNA分子製造方法により製造されたmRNA分子である。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、前述した態様の製造されたmRNA分子を有効成分として含む薬学組成物である。
【0032】
一具体例として、前記薬学組成物は、疾患の予防又は治療用薬学組成物である。
【0033】
他の具体例として、前記薬学組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする。
【0034】
前述した具体例のいずれかによる具体例において、前記薬学組成物は免疫原性組成物である。
【0035】
前述した具体例のいずれかによる薬学組成物に含まれるmRNA分子は、少なくとも1つの脂質成分と複合体を形成することを特徴とする。
【0036】
前述した具体例のいずれかによる薬学組成物のmRNA分子は、少なくとも1つの脂質成分と複合体を形成し、リピドイド、リポソーム(liposomes)、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticles)及び/又はリポプレックス(lipoplexes)を形成することを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれかによる薬学組成物は、筋肉又は皮下投与されることを特徴とする。
【0038】
本発明のさらに他の態様は、mRNAを有効成分として含む薬学組成物の製造方法である。
【0039】
一具体例として、前記方法は、前述した態様のmRNA転写ベクターを鋳型として転写(transcription)を行ってmRNAを得るステップを含むことを特徴とする。
【0040】
本発明のさらに他の態様は、mRNA転写ベクターのmRNA製造用途である。
【0041】
本発明のさらに他の態様は、mRNA転写ベクターを含む薬学組成物製造用組成物である。
【0042】
本発明のさらに他の態様は、mRNA転写ベクターの薬学組成物製造用途である。
【0043】
本発明のさらに他の態様は、(1)5’非翻訳領域(5'-Untranslated region: 5'-UTR)と、(2)前記5’UTR領域に作動可能に連結された、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレーム(Open reading frame: ORF)領域と、(3)前記オープンリーディングフレーム領域に作動可能に連結された3’非翻訳領域(3'-Untranslated region: 3'-UTR)とを含む遺伝子コンストラクトである。
【0044】
一具体例として、前記遺伝子コンストラクトは、配列番号1又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる3’UTR領域と、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列からなる5’UTR領域とを含むことを特徴とする。
【0045】
他の具体例として、前記遺伝子コンストラクトは、配列番号47又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる5’UTR領域と、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列からなる3’UTR領域とを含むことを特徴とする。
【0046】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0047】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本発明に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本発明に含まれることが意図されている。
【0048】
さらに、本明細書全体にわたって多くの論文及び特許文献が参照されており、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体が本明細書に参照として組み込まれており、それにより本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【0049】
本発明における「ヌクレオチド配列」とは、ヌクレオチド単量体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)を意味し、所定の長さより長いDNA又はRNA鎖である「ポリヌクレオチド」、「塩基配列」ともいう。
【0050】
本発明のポリヌクレオチドには、改変されたヌクレオチドが含まれる。本発明における「改変されたヌクレオチド」とは、任意の非典型的なヌクレオシド、ヌクレオチド又はそれに相当するリン酸化された形態を意味する。改変されたヌクレオチドは、1つ以上のバックボーン又は塩基の改変が行われたものであってもよい。改変されたヌクレオチドの例としては、dI、dU、8-オキソ-dG、dX及びTHFが挙げられ、その他に当該技術分野で公知の天然又は非天然ヌクレオチドが挙げられる。
【0051】
本発明の一実施例において、mRNA中に存在するウリジンは、mRNAをコードする各DNA中ではチミジンとして存在するものであってもよい。また、本発明におけるポリヌクレオチド配列は、代表的なDNA配列において「T」を用いるが、配列がRNAを示す場合は「T」が「U」に置換されることが認められる。
【0052】
本発明における「非天然」とは、自然に存在しないポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質又は組成物を意味する。このようなポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質又は組成物は、天然のポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質又は組成物と1つ以上の面で異なる。例えば、ポリマー(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は炭水化物)は、構成成分となるビルディングブロックの種類及び配列(例えば、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列又は糖分子)の面で異なる。ポリマーは、それを連結する分子の面で天然ポリマーとは異なる。
【0053】
本発明における「作動可能に連結された」ものとは、調節配列がコード配列の転写を制御するように調節配列が適切な位置に配置された構成を意味し、本発明の目的上、mRNA転写が起こるようにヌクレオチド配列が機能的に連結されたものを意味する。
【0054】
本発明における「mRNA転写ベクター」とは、mRNA転写の鋳型鎖を含むベクターを意味する。
【0055】
例えば、本発明のベクターは、転写を開始するプロモーターと、それを調節するためのオペレーター配列と、目的とするmRNAをコードする配列と、転写及び翻訳の終結を調節する配列とを含むものであってもよい。一例として、本発明のベクターは、クローニングが容易な制限酵素結合部位を含むものであってもよい。
【0056】
例えば、本発明のベクターに含まれるプロモーターは、任意のDNA依存性RNAポリメラーゼのための任意のプロモーターである。前記プロモーターは、RNAポリメラーゼに対する結合親和性の高いプロモーター配列を選択して用いるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
前記ベクターは、ポリヌクレオチド、例えばcDNAをクローニングし、転写に適した発現カセット又はベクターに導入することにより得られる。mRNAの逆転写又は遺伝子合成によりDNA鋳型が得られる。
【0058】
本発明のベクターは、RNAポリメラーゼ(RNA polymerase)により認識されるプロモーター領域と、前記プロモーター領域に作動可能に連結された遺伝子コンストラクトとを含み、(1)5’非翻訳領域(5'-Untranslated region: 5'-UTR)と、(2)前記5’UTR領域に作動可能に連結された、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレーム(Open reading frame: ORF)領域と、(3)前記オープンリーディングフレーム領域に作動可能に連結された3’非翻訳領域(3'-Untranslated region: 3'-UTR)とを含む。
【0059】
本発明における「5’UTR」とは、開始コドンの上流(upstream)に存在する非翻訳領域を意味する。前記5’UTRは、RNAの翻訳を調節し、かつ/又はmRNAを安定化するのに関与する。
【0060】
本発明の5’UTR配列は、mRNAの安定性及び/又は翻訳の正確性を向上させるように改変又は最適化されてもよい。例えば、5’UTRにORFの開始部分に類似する遺伝子配列を避ければ、mRNA翻訳の際にframeが誤って開始することを効果的に防止することができる。また、mRNAの安定性と翻訳の正確性を向上させるために、一部の特定配列を5’UTRに付加してもよい。例えば、Kozakシーケンスを挿入し、翻訳プロセスをより正確に開始するように構成してもよい。
【0061】
本発明における「3’UTR」とは、mRNAのコード領域の下流(downstream)に存在する非翻訳領域を意味する。
【0062】
本発明の3’UTR配列は、mRNAの安定性及び/又は翻訳の正確性を向上させるように改変又は最適化されてもよい。例えば、3’UTRに適切な配列を用いてmRNA安定性を向上させることができ、半減期を延長させることができる。
【0063】
本発明のmRNA転写ベクターは、特定の5’UTRと3’UTRの組み合わせを含むことを特徴とする。
【0064】
一実施例において、本発明のmRNA転写ベクターは、配列番号1又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTR配列と、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42又はそれらの配列から選択されるいずれかの配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む5’UTR配列とを含む。
【0065】
一実施例において、本発明のmRNA転写ベクターは、配列番号47又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTR配列と、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91又はそれらの配列から選択されるいずれかの配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む3’UTR配列とを含む。
【0066】
前記UTR配列は、特定配列番号で表されるヌクレオチド配列を含むものであってもよく、前記ヌクレオチド配列から実質的に構成される(consisting essentially of)ものであってもよく、前記ヌクレオチド配列からなる(consist of)ものであってもよい。本発明の一実施例において、5’UTR及び3’UTR配列は、特定配列番号で表されるヌクレオチド配列又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるものである。
【0067】
一実施例において、本発明のmRNA転写ベクターは、配列番号1又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる3’UTR配列と、配列番号5、6、7、8、9、11、12、13、14、16、19、20、21、22、23、42又はそれらの配列から選択されるいずれかの配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる5’UTR配列とを含む。
【0068】
一実施例において、本発明のmRNA転写ベクターは、配列番号47又はそれと90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる5’UTR配列と、配列番号50、51、53、54、55、60、64、65、66、67、75、91又はそれらの配列から選択されるいずれかの配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる3’UTR配列とを含む。
【0069】
また、特定配列番号のヌクレオチド配列と前記相同性、同一性を有し、前記配列番号からなるヌクレオチド配列と同じ活性を示す範囲で一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたヌクレオチド配列も本発明に含まれる。
【0070】
「相同性」又は「同一性」とは、2つの与えられたアミノ酸又は塩基配列における互いに対応する配列の類似の程度を意味し、百分率で表される。相同性及び同一性は、しばしば互換的に用いられる。
【0071】
配列同一性の計算は、例えば最適な比較目的のために2つの配列をアラインメントすることにより行うことができる(例えば、ギャップは最適なアラインメントのために第1核酸配列と第2核酸配列のいずれか一方又は両方に導入し、非同一配列は比較目的のために無視する)。所定の実施形態において、比較目的のためにアラインメントする配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置においてヌクレオチドを比較する。アラインメントのためのこのようなツールには、BLASTスイートのツールが含まれる(非特許文献1)。他の大衆的なローカルアラインメント方法は、スミス・ウォーターマン(Smith-Waterman)アルゴリズムに基づくものである(非特許文献2)。動的プログラミングに基づく一般的なグローバルアラインメント方法はニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズムである(非特許文献3)。より最近の報告によれば、ニードルマン・ウンシュアルゴリズムをはじめとする最適なグローバルアラインメント方法以外にも、ヌクレオチド及びタンパク質配列のグローバルアラインメントを生成する迅速かつ最適なグローバル配列アラインメントアルゴリズム(Fast Optimal Global Sequence Alignment Algorithm: FOGSAA)が開発されている。
【0072】
配列の比較及び2つの配列の同一性の割合の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。例えば、2つの核酸配列の同一性の割合は、文献[非特許文献4、5、6、7及び8]に記載されたものと同様に決定することができる。一例として、2つの核酸配列の同一性の割合は、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を用いてALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、マイヤーズ(Meyers)及びミラー(Miller)のアルゴリズム(非特許文献9)を用いて決定することができる。代案として、2つの核酸配列の同一性の割合は、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて決定するようにしてもよい。配列の同一性の割合を決定するために通常用いられる方法としては、非特許文献10に開示されたものが挙げられるが、これに限定されるものではない。2つの配列の相同性を決定するためのコンピュータソフトウェアの例としては、GCGプログラムパッケージ、非特許文献11、BLASTP、BLASTN及びFASTA Altschul、非特許文献12が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本発明における「オープンリーディングフレーム(Open reading frame)」は、「ORF」と略称されることもあり、目的とするタンパク質又はポリペプチドをコードするmRNA分子のセグメント又は領域を意味する。ORFは、開始コドンで開始し、終止コドンで終結するDNAの連続的伸長が行われ、リボソームにより翻訳される。
【0074】
一実施例として、前記目的とするタンパク質又はポリペプチドは抗原であってもよい。
【0075】
本発明における「抗原」とは、免疫系により認識され、抗原特異的免疫反応を触発する物質を意味する。例えば、前記抗原は、適応免疫系により認識され、適応免疫反応の一部として抗体及び/又は抗原特異的T細胞を形成することにより免疫反応を触発する。一例として、前記抗原は、MHCによりT細胞に提示されるペプチド又はタンパク質を含んでもよい。例えば、前記抗原は、少なくとも1つのエピトープ(抗原決定基)を含むペプチド/タンパク質の断片、その変異体又は誘導体であってもよい。
【0076】
本発明の目的上、前記抗原は、前述したmRNAの翻訳産物であってもよい。
【0077】
例えば、前記抗原は、病原体に由来するものであってもよい。
【0078】
例えば、前記病原体は、ウイルス(virus)、バクテリア(bacterium)、プリオン(prion)、菌類(fungus)、原生動物(protozoon)、ウイロイド(viroid)及び寄生動物(parasite)からなる群から選択されるものである。しかし、これらに限定されるものではない。
【0079】
一例として、前記抗原は、感染性疾患に関連する病原体に由来するペプチド又はタンパク質抗原であってもよい。
【0080】
他の例として、本発明の抗原は、癌関連抗原(tumor associated antigen)であってもよい。癌関連抗原の例として、組織分化抗原、癌精巣抗原(例えば、NY-ESO-1又はMAGE-3)、腫瘍細胞により過剰発現した正常タンパク質(例えば、EGFR、Muc-1、Her2/neu)、オンコウイルスタンパク質(例えば、EBV、HPV)、腫瘍特異的突然変異抗原(例えば、Mum-1、β-Catenin又はCDK4)が挙げられる。このような抗原は、個体(personalized cancer antigen)又は組織特異的なものである。しかし、上記例に限定されるものではない。
【0081】
他の実施例として、前記標的タンパク質は、疾患の予防又は治療に関与するタンパク質であってもよい。一例として、前記タンパク質は、ターゲットとする抗原を認識することのできるキメラ抗原受容体(CAR)、免疫刺激性サイトカインポリペプチド、テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase)から選択されるものであってもよい。他の例として、前記タンパク質は、肥満をはじめとする代謝性疾患の予防又は治療に関連するものであってもよい。このような標的タンパク質の例としては、FGF21(Fibroblast growth factor 21)、レプチン(leptin)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
一実施例において、本発明のmRNA転写ベクターは、5’Capに転写されるヌクレオチド配列をさらに含んでもよい。
【0083】
本発明における「5’Cap」とは、mRNAの末端を覆う(caps)修飾構造を意味する。5’キャップは、一般に修飾、例えばグアニン誘導体により形成される。例えば、5’キャップは、5’→5’三リン酸(triphosphate)結合により5’末端に連結されてもよい。一例として、5’キャップは、メチル化されてもよい。
【0084】
一例として、インビトロ転写の際にキャップアナログ(Cap analogue)を付加し、転写と共にキャッピングが行われてもよい。これを同時転写キャッピング(co-transcriptional capping)という。同時転写方法においては、インビトロ転写過程中に転写と同時にRNA分子にキャップが組み込まれる。他の例として、インビトロ転写後に酵素反応によりキャッピングが行われてもよい。このような酵素反応には、トリホスファターゼ(triphosphatase)、グアニルトランスフェラーゼなどの酵素が関与する。しかし、これらに限定されるものではなく、当該技術分野で公知の方法を用いて、mRNAが5’Capを有するようにすることができる。
【0085】
一実施例において、本発明のmRNA転写ベクターは、ポリAテールを含んでもよい。
【0086】
本発明における「ポリAテール(poly A tail)」とは、典型的にRNA分子の3’末端に位置するアデニル酸残基の連続又は不連続配列を意味する。ポリAテールは、本発明のmRNAの3’UTRの後に続くものであってもよい。このようなポリAテールは、20個以上、25個以上、40個以上、60個以上、80個以上、100個以上、約200個又はそれ以上のアデニル(A)ヌクレオチドから構成されるものであってもよく、それを含むものであってもよい。ポリAテールのヌクレオチドの数を基準に、典型的に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%はAヌクレオチドであるが、残りのヌクレオチドは、Aヌクレオチド以外のヌクレオチド、例えばUヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)又はCヌクレオチド(シチジル酸)であってもよい。例えば、ポリAテールは、mRNAの分解を遅延させる改変を含むものであってもよい。一例として、前記ポリAテールは、20~200個のアデニンを含むものであってもよい。
【0087】
例えば、本発明のベクターは、形質転換されたか否かを確認するための選択マーカー(selection marker)を含んでもよい。薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性などの選択可能表現型を付与するマーカーが用いられる。選択剤(selective agent)で処理した環境においては、選択マーカーを発現する細胞のみ生存するか、異なる表現形質を示すので、形質転換された細胞を選択することができる。しかし、上記例に限定されるものではない。
【0088】
本発明における「インビトロ転写」とは、RNAを無細胞システム(試験管内)で合成する過程を意味する。本発明の方法において、本発明のベクターは、mRNAを生成するための鋳型として用いられる。
【0089】
例えば、インビトロ転写を行う前に、ベクターを線状化してもよい。線状化したベクターは、適切な制限酵素でベクターを処理することにより得られる。
【0090】
例えば、本発明のベクターはプラスミドである。しかし、特にこれに限定されるものではなく、当該技術分野で公知のベクターを用いることができる。
【0091】
本発明における「薬学組成物」とは、疾患の予防又は治療のために用いられる組成物を意味する。
【0092】
本発明における「免疫原性」とは、体内に流入したときに免疫反応を引き起こす性質を意味する。本発明の免疫原性組成物を個体に投与すると、疾患を予防することができる。よって、本発明における「疾患を予防するための薬学組成物」は、「免疫原性組成物」又は「ワクチン組成物」であってもよい。前記薬学組成物は、薬学的に許容される運搬体、賦形剤、結合剤、担体、保存剤、緩衝剤、等張化剤、エマルジョン化剤又は湿潤剤をさらに含むものであってもよい。
【0093】
本発明の薬学組成物に含まれるRNAは、安定性の向上、細胞トランスフェクションの増加、(例えば、デポー剤形からの)持続又は遅延放出の許容、生体分布の変化(例えば、特定組織又は細胞タイプの標的化)、生体内でコードされるタンパク質翻訳の増加、及び/又は生体内でコードされるタンパク質(抗原)の放出プロファイルの変更のために、1つ以上の賦形剤を用いて剤形化してもよい。よって、本発明の薬学組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0094】
前記薬学組成物は、製剤化したものであってもよい。このような製剤は、固形、液状又はその組み合わせであってもよい。
【0095】
例えば、本発明の薬学組成物に含まれるmRNAは、ネイキッド(naked)形態であってもよく、ベクターに含まれる形態であってもよく、送達剤(delivery system)と複合体を形成した形態であってもよい。
【0096】
例えば、本発明の薬学組成物は、mRNAを送達するための送達剤として、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、化合物のポリマー、ペプチド/タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体又はナノチューブを含んでもよい。前記mRNAと送達剤は、複合体を形成するようにしてもよい。
【0097】
ポリマーの一例として、ポリアミドアミン(PAA)、ポリ(βアミノエステル)(poly(beta-amino-ester): PBAE)、ポリエチレンイミン(poly(ethylenimine): PEI)、ポリリジン(poly(l-lysine): PLL)、スペルミン、キトサン及び/又はポリウレタンをmRNAの担体として用いてもよい。ナノ粒子の一例としては、フェリチン(ferritin)、PNP(platelet membrane-coated nanoparticles)などが挙げられる。ペプチド/タンパク質の一例としては、プロタミンが挙げられる。
【0098】
例えば、mRNAを送達するための脂質ナノ粒子としては、リン脂質、構造脂質、PEG脂質、イオン化可能な脂質、及び/又は第4級アミン化合物が挙げられる。
【0099】
一例として、本発明の薬学組成物は、少なくとも1つの脂質成分と複合体を形成したmRNA分子を含んでもよい。例えば、前記mRNA分子は、少なくとも1つの脂質成分とリポソーム(liposomes)、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticles)及び/又はリポプレックス(lipoplexes)複合体を形成したものであってもよい。
【0100】
例えば、本発明の薬学組成物は、対象者に投与されると、mRNAが生体内で翻訳されて抗原性ポリペプチド(抗原)を産生するものであってもよい。
【0101】
一例として、本発明の薬学組成物は、当該技術分野で公知のワクチンの投与と同様に、注入又は注射により投与してもよい。例えば、経皮、経口、非経口経路(例えば、皮内(Intradermal)、皮下(Subcutaneous)、静脈内(Intravenous)、筋肉内(Intramuscular)、結節内(Intranodal)及び/もしくは腹膜内注射)、又は鼻腔内(nasal)投与経路(例えば、気管吸入)が挙げられる。また、組成物は、鼻内、膣、直腸、経口又は経皮で投与してもよい。他の例として、ワクチン組成物は、「無針」送達システムにより投与してもよい。
【0102】
例えば、本発明の薬学組成物は、哺乳類において抗体を産生させるのに用いられてもよい。
【0103】
本発明の薬学組成物は、単回投与用量又は複数回投与(multidose)用量で投与してもよい。「複数回投与量」又は「多重投与量」とは、1人又はそれより多い対象者に投与する、1回より多く(例えば、2回以上)接種可能な用量を含む製剤単位を意味する。
【0104】
本発明の免疫原性組成物は、免疫学的有効量のポリヌクレオチドを含んでもよい。「免疫学的有効量」とは、個体に投与されると、抗原に対する抗体反応を引き起こすのに効果的な量である。免疫学的有効量は、治療される個体の健康及び身体条件、それら個体の年齢、個体の免疫系が抗体を合成する能力、必要な保護レベル、組成物の剤形、医療状況についての治療医師の評価、及び他の関連する因子により異なる。
【0105】
本発明において提供する免疫原性組成物は、アジュバント(adjuvant)を含んでもよい。本発明における「アジュバント」とは、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を増強するために用いられる物質を意味する。前記アジュバントは、しばしば免疫反応を強化するために用いられる。
【0106】
本発明の薬学組成物を製造するための組成物は、RNAを合成するために必要な構成要素を含んでもよい。具体的には、インビトロ(in vitro)の転写(IVT)のための構成要素を含んでもよい。
【0107】
例えば、前記組成物は、RNAポリメラーゼを含んでもよい。例えば、前記組成物は、ATP、GTP、UTP、CTP又はそれらのアナログ(analogue)を含んでもよい。例えば、前記組成物は、緩衝液を含んでもよい。
【0108】
本発明の薬学組成物の製造方法において、mRNA転写がインビトロ(in vitro)で行われてもよい。インビトロ転写については前述した通りである。
【実施例
【0109】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0110】
mRNA転写ベクターとそれにより転写されるmRNA transcriptの作製
本実施例においては、様々な5’/3’非翻訳領域(Untranslated region; UTR)配列の組み合わせで構成されるmRNA転写ベクターと、それから転写されるmRNA転写産物(transcript)を作製した。本実施例において、標的タンパク質の発現レベルの確認を容易にするために、標的タンパク質の一例としてd2EGFPを用いた。
【0111】
1-1.mRNA転写ベクターの作製
図1に示すように、5’末端から3’末端の方向に、プロモーター領域配列、5’UTR領域配列、ORF領域配列、3’UTR領域配列及びポリAテール領域配列が順次作動可能に連結された構造を基本骨格とするmRNA転写ベクターを作製した。
【0112】
より具体的には、pcDNA3.1プラスミドを用いて、T7プロモーター配列の後に(TAATACGACTCACTATA)、5’UTR領域配列、Kozak配列(GCCACC)、d2EGFP遺伝子、3’UTR領域配列、poly A配列及びEsp3I認識部位を挿入し、プラスミドを作製した。
【0113】
ここで、UTR配列のみ様々に変更して様々なmRNA転写ベクターを作製した。3’UTR(Modernaワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で5’UTRのみ変更した配列情報を表1及び表2~表4に示し、5’UTR(Pfizer/BioNTechワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で3’UTRのみ変更した配列情報を表5及び表6~表12に示し、全ての実施例において、変更せずにそのままの状態を維持した配列情報を表13に示す。
【0114】
以下、3’UTR(Modernaワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で5’UTRのみ変更した実施例の配列情報を示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
以下、5’UTR(Pfizer/BioNTechワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で3’UTRのみ変更した実施例の配列情報を示す。
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
以下、全ての実施例において、変更せずにそのまま維持した配列情報を示す。
【0129】
【表13】
【0130】
これらをまとめると、計91個(具体的には、Moderna Ref、A-1~A-11、B-1~B-10、C-1~C-9、D-1~D-7、E-1~E-7、Pfizer/BioNTech Ref、F-1~F-10、G-1~G-10、H-1~H-8、I-1~I-8、J-1~J-9)のmRNA転写ベクターを作製した。
【0131】
1-2.mRNA転写ベクターからのmRNA transcriptの作製
前述したように作製したmRNA転写ベクタープラスミドで形質転換した大腸菌を培養し、CompactPrep Plasmid Midi Kit(Qiagen)を用いてプラスミドを分離し、その後Esp3I制限酵素を用いて前記プラスミドを線状化した。前述したように線状化したプラスミドをMinElute Reaction Cleanup Kit(Qiagen)で回収し、その後それをmRNA製造のためのインビトロ転写(in vitro transcription; IVT)反応に用いた。そのために、表14に示す条件で線状化したプラスミドDNA鋳型などを混合し、その後37℃で2時間反応させた。
【0132】
【表14】
【0133】
その後、前記反応を終了させ、次いでDNase1を各サンプル当たり2 unitずつ添加し、37℃で15分間反応させ、残りの線状化したプラスミドDNA鋳型を除去した。
【0134】
その後、50ulのRNAに25ulのLiClの割合で混合し、-20℃で30分間反応させ、その後遠心分離によりRNAを沈殿させた。RNA沈殿物を70%エタノールで洗浄し、その後残りのエタノールを除去し、次いでNuclease-free HOにより溶出した。残りの沈殿物が生じないように、65℃で5分間処理し、トランスフェクションに適したmRNA転写産物(transcript)を作製した。
【実施例2】
【0135】
UTR配列の組み合わせによるタンパク質発現レベルの評価
本実施例においては、様々な5’/3’非翻訳領域(Untranslated region; UTR)配列の組み合わせによるタンパク質発現レベルの差異を評価した。
【0136】
LipofectamineTM MessengerMAX(Thermo Fisher)を用いて、実施例1で作製した計91個のmRNA転写産物(transcript)をPrimary Skeletal Muscle cell(ATCC, PCS-950-010)に独立してトランスフェクションした。具体的には、Primary Skeletal Muscle cellを24 well plateに2×10cell/wellでseedingし、その後37℃、5%COの環境で5時間以上培養して付着させた。トランスフェクションのために、mRNAサンプル1つ当たり、25ulのOptiMEM(Gibco)に0.75ulのLipofectamineTMMessengerMAXを混合し、常温で10分間培養したMessengerMax mixtureを作製し、OptiMEM 25ulにRNA転写産物50ngが入ったmRNA mixtureを作製した。Messenger Max mixture 25ulとmRNA mixture 25ulを混合し、5分間常温で培養し、その後混合した溶液50ulでPrimary Skeletal Muscle cellを処理した。それを行った時点から24時間及び48時間経過後に、Cytation 7(BioTek)によりd2EGFPタンパク質発現レベルを評価した。具体的には、GFPチャネル(469,525)で発現レベルを測定し、その後wellの中央から半径3200umの円内の面積のfluorescentを分析した。発光量の最小値は5000以上に設定し、分析する細胞の大きさは30um~200umに設定した。その後、分析されたmean fluorescent値とcell countをかけて総発光量を測定した。各mRNA転写産物毎に評価を計4~6回行い、結果値を平均値で示した。
【0137】
2-1.3’UTR(Modernaワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で5’UTRのみ変更した場合のGFPタンパク質発現レベルの評価
3’UTRを固定した状態で5’UTRのみ変更した場合のGFPタンパク質発現レベルを表15及び表16に示す。
【0138】
【表15】
【0139】
【表16】
【0140】
表15及び表16に示すように、3’UTR(Modernaワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で5’UTRのみ変更した群のうち、A-3~A-7(配列番号5~9)、A-9~A-11(配列番号11~13)、B-1(配列番号14)、B-3(配列番号16)、B-6~B-10(配列番号19~23)、及びE-3(配列番号42)において、Moderna Ref.に比べて、及び他の同一組織/異なる組織由来のUTRの組み合わせに比べて、相対的に非常に優れたタンパク質発現効率が得られることが分かる。特に、括弧の中のFold値から、Moderna Ref.に比べてタンパク質発現効率がいかに優れているかが具体的に確認される。
【0141】
2-2.5’UTR(Pfizer/BioNTechワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で3’UTRのみ変更した場合のGFPタンパク質発現レベルの評価
5’UTRを固定した状態で3’UTRのみ変更した場合のGFPタンパク質発現レベルを表17及び表18に示す。
【0142】
【表17】
【0143】
【表18】
【0144】
表17及び表18に示すように、5’UTR(Pfizer/BioNTechワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で3’UTRのみ変更した群のうち、F-2~F-3(配列番号50~51)、F-5~F-7(配列番号53~55)、G-2(配列番号60)、G-6~G-9(配列番号64~67)、H-7(配列番号75)、及びJ-7(配列番号91)において、Pfizer/BioNTech Ref.に比べて、及び他の同一組織/異なる組織由来のUTRの組み合わせに比べて、相対的に非常に優れたタンパク質発現効率が得られることが分かる。特に、括弧の中のFold値から、Pfizer/BioNTech Ref.に比べてタンパク質発現効率がいかに優れているかが具体的に確認される。
【0145】
2-3.小括
前記2-1.の結果から、3’UTR(Modernaワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で5’UTRのみ変更した群のうち、A-3~A-7(配列番号5~9)、A-9~A-11(配列番号11~13)、B-1(配列番号14)、B-3(配列番号16)、B-6~B-10(配列番号19~23)、及びE-3(配列番号42)において、著しく優れたタンパク質発現レベルが得られることが分かり、前記2-2.の結果から、5’UTR(Pfizer/BioNTechワクチンに用いられたα-globin UTR)を固定した状態で3’UTRのみ変更した群のうち、F-2~F-3(配列番号50~51)、F-5~F-7(配列番号53~55)、G-2(配列番号60)、G-6~G-9(配列番号64~67)、H-7(配列番号75)、及びJ-7(配列番号91)において、著しく優れたタンパク質発現レベルが得られることが分かる。
【0146】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれる変更又は変形された形態が全て含まれるものと解釈すべきである。
図1
【配列表】
2025502689000001.xml
【国際調査報告】