(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】プロセスガス廃熱ボイラーにおけるチューブシート保護
(51)【国際特許分類】
F22B 37/22 20060101AFI20250121BHJP
F22B 37/04 20060101ALI20250121BHJP
F22B 1/18 20060101ALI20250121BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20250121BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20250121BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
F22B37/22 B
F22B37/04
F22B1/18 K
F28F21/08 F
F28D7/16 Z
B23K9/04 Q
F22B37/22 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537955
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2022085452
(87)【国際公開番号】W WO2023117551
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ロウォータ・ラセ・ヨール
(72)【発明者】
【氏名】ギューゼ・トムスン・セーアン
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA12
3L103BB05
3L103CC26
3L103CC27
3L103DD03
3L103DD44
3L103DD81
(57)【要約】
本発明は、シングルパスおよびストレートチューブ型の、溶接オーバーレイまたはクラッディングを備える薄い可撓性チューブシートを有するプロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)、特にプロセスガスから熱を回収するためのプロセスガス廃熱ボイラーであって、前記プロセスガスが水蒸気改質ユニットを出る合成ガスであるプロセスガス廃熱ボイラーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(10)であって、
シェル(12)を備え、当該シェル(12)内には、複数のストレートチューブ(14、22)が配置され、当該ストレートチューブの各々(22)は、その一方の端部で入口チューブシート(16)に、およびその反対の端部で出口チューブシート(30)に接続され;前記入口チューブシート(16)および前記出口チューブシート(30)は、前記ストレートチューブの各々(22)と協同して、それぞれプロセスガス、例えば合成ガスを受け取り、そして出すように適合された複数の穴を備え、
入口チューブシート(16)における穴の各々は、入口開口部(18、18’)を画定し、および出口チューブシート(30)における穴の各々は、出口開口部(26)を画定し、
少なくとも、前記入口チューブシートおよび出口チューブシート(16、30)は、少なくとも前記穴の各々の前記の入口開口部および出口開口部(18、18’、26)に、溶接オーバーレイまたはクラッディング(20、20’、20’’、28)を備え、
および、前記入口チューブシートおよび出口チューブシート(16、30)は、低合金鋼でできた、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めて20~70mmの厚さを有する、薄い可撓性チューブシートである、
前記プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(10)。
【請求項2】
前記の薄い可撓性チューブシートが、15~65mm、例えば20、25、30、35、40、45、50、55、60mmの厚さを有する、請求項1に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項3】
溶接オーバーレイまたはクラッディング(20、20’、20’’、28)が、4~10mmの厚さの、alloy601、alloy690、alloy602CA、alloy625、alloy693またはalloy699XAから選択される耐メタルダスティング材料である、請求項1または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項4】
チューブとチューブシートとの溶接(24、24’)も備える、請求項1~3のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項5】
チューブ(22)の入口部分が、入口チューブシート(16)のシェル側に溶接されている、請求項4に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項6】
各ストレートチューブ(22)が、内部ライナー(22’)、例えば内部保護スリーブを備え、内部ライナー(22’)は、各ストレートチューブ(22)の内部表面に沿って配置され、および、内部ライナー(22’)の端部(22’’)がそれぞれストレートチューブ(22)の前記の一方の端部または前記の反対の端部へと延びるように、前記入口開口部または出口開口部(18、18’、26)から隔てたところで前記入口チューブシート(16)または出口チューブシート(30)に向かって延在している、請求項1~5のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項7】
前記内部ライナー(22’)が、例えば、油圧による伸長、および/または圧延によって、各ストレートチューブ(22)の前記内部表面に機械的に接続されている、請求項6に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項8】
前記複数のストレートチューブ(14、22)が、1つまたは複数のコンパートメント(10’、10’’)内に配置され、当該コンパートメントはそれによって、複数の入口チューブシートおよび出口チューブシートを画定する、請求項1~7のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項9】
以下を含む、請求項1~8のいずれか1つに記載のPGWHBの入口チューブシートおよび出口チューブシートへのストレートチューブの溶接を提供するための方法:
i)PGWHBの少なくとも入口チューブシートおよび出口チューブシートに、溶接オーバーレイまたはクラッディング、例えば爆発クラッディングを提供すること;
ii)入口チューブシート及び出口チューブシートに複数の穴を提供すること;
iii)複数のストレートチューブを、ストレートチューブの各々を一方の端部で入口チューブシートに、反対の端部で出口チューブシートに接続するために、前記の穴に導入すること;および
iv)ストレートチューブの前記の一方の端部で入口チューブシートと、当該ストレートチューブの前記の反対の端部で出口チューブシートと、チューブとチューブシートとの溶接を提供すること。
【請求項10】
ステップi)がステップii)の前に、すなわち、例えばチューブシートに穴を削孔する前に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チューブとチューブシートとの溶接が、任意選択的に千鳥ランでの、マルチパス耐荷重溶接部として、好適には、入口チューブシートおよび出口チューブシートのための千鳥ランでの完全自動マルチパス耐荷重溶接部として設けられる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記の薄い可撓性チューブシートが、ASME SectionVIII,Division2に従って、有限要素解析によって確認される、請求項9~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
PGWHB製作ステップにおいて実施される、請求項9~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1つに記載のPGWHB、特にその入口チューブシートおよび出口チューブシートを保護するための方法であって、長期間の運転後、すなわち少なくとも1年の運転後に、前記ストレートチューブのうちの少なくとも1つを、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングへの溶接によって施栓することを含む、前記方法。
【請求項15】
改質ユニットを出るプロセスガスを冷却するための方法であって、前記改質ユニットは、自己熱改質器(ATR)、二次改質器、e-SMRを含めた水蒸気メタン改質器(SMR)、または対流改質器のいずれかであり、前記プロセスガスは、炭素酸化物および水素を含む合成ガスであり、前記方法は、前記合成ガスを、それを請求項1~8のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)を通過させることによって冷却することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱ボイラーの分野に関し、特に、薄い可撓性チューブシートを有する、シングルパスおよびストレートチューブ型のプロセスガス廃熱ボイラー、特にプロセスガスから熱を回収するためのプロセスガス廃熱ボイラーであって、前記プロセスガスが水蒸気改質ユニット、例えば自己熱改質器を出る合成ガスであるプロセスガス廃熱ボイラーにおける、チューブシートの保護に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)は、改質ユニット、例えば、自己熱改質器(ATR)、二次改質器、電気加熱式改質器(e-SMR)を含む水蒸気メタン改質器(SMR)、いわゆるHTCR(Haldor Topsoe Convection Reformer)およびいわゆるHTER (Haldor Topsoe Exchange Reformer)を含む対流改質器、または下流の合成プロセスのための、例えばメタノール合成、アンモニア合成および水素生成のための合成ガスを生成するために通常使用される任意の他のタイプの改質ユニット、を出る高温合成ガスを冷却する装置の重要な部分である。プロセスガス、すなわち、例えばATRを出る合成ガスからの熱は、プロセスのための高圧で高品質の蒸気を生成し、タービンを駆動するために利用される。合成ガスは、当該技術分野において周知であるように、ATRを出るとき、炭素酸化物および水素を含み、典型的には20~70barの範囲の圧力で、例えば1000~1100℃の高温ガスである。
【0003】
プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(以下、簡略化のために廃熱ボイラーとも呼ぶ)は、最も一般的には、低合金鋼で製作された薄いチューブシートを備えたチューブアンドシェル熱交換器として製造される。多くのアプリケーションにおいて、これらのチューブシートはチューブの留まろうとする作用によって支持されており、チューブシートは、それぞれチューブおよびシェルの機械的および熱的膨張の差に適応するために可撓性でなければならず;従って、PGWHBは通常、薄い可撓性チューブシートを有するものとして言及される。
【0004】
漏れ(これは長年の運転後の廃熱ボイラーの一般的な故障メカニズムである)の場合、チューブはチューブシートにおいて施栓されなければならない。この施栓を長期的に確実に行うためには、溶接による施栓が必要である。プロセスガス中には水素が存在するため、その後の溶接後熱処理(PWHT)が必須であり、これは両方とも、装置全体の完全性、すなわちPGWHBの完全性という観点で、困難であり、高価であり、かつ危険である。あるいは溶接後熱処理を必要としないテンパービード溶接を実施することができるが、この技術はマスターするのが複雑であり、結果が必ずしも予測可能で信頼性があるとは限らない。
【0005】
従って、伝統的に、前記アプローチは、以下を伴ってきた:
- 廃熱ボイラー全体のPWHTを提供すること。しかしながら、上述したように、これは、装置全体の完全性の点で困難であり、コストがかかり、危険である;
- 第三者、すなわち外部供給者により、メカニカル施栓、例えばいわゆる「pop-a-plug」を提供すること。しかしながら、このオプションは、漏れがチューブ内にある場合にのみ有効である。この解決策は、故障がチューブとチューブシートとの溶接部に位置する場合には、適用することが困難であるか、または適用することが実際上不可能である;
- プラグの溶接部の高い硬度を受け入れること。これは例えば延性が低くなること、およびそれによってチューブとチューブシートとの溶接部における水素誘発性の亀裂のリスクが高くなることを伴い、従って、前記溶接部における後続の漏れがより生じやすくなる。
【0006】
さらに、PGWHB内の可撓性の薄いチューブシートは、典型的には高温側において耐熱性ライニングされる。この耐熱性ライニングは、長時間の運転後には割れるかまたは分離する可能性があり、そのような分離の後、チューブシートはプロセスガスに直接暴露され、メタルダスティング腐食によるチューブシートの非常に速い劣化を引き起こし得る。メタルダスティングは、本技術分野において周知であるように、高い炭素活性を有するガスに曝露された金属材料上で生じる壊滅的な形態の腐食である。そのような耐熱性物の分離は検出されずに起こり得、従っていかなる警告もなしに、装置完全性の損失を引き起こし得る。
【0007】
US2013199462A1(特許文献1)は、蒸気発生器加熱チューブ補修スリーブ、及び蒸気発生器、特に原子力発電所で使用される蒸気発生器の加熱チューブを補修するための方法を開示している。前記の補修スリーブは、例えば溶接されたプラグの設置またはいわゆる再溶接の代わりに、損傷を受けた溶接シームを補修するために使用される。この引用した文献は、損傷したそれぞれのチューブ端部に補修スリーブを設置することを教示している。従って、補修スリーブの下端が、チューブプレートのクラッディングに溶接される。さらに、原子力発電所における使用のためのこのタイプのWHBは、この引用した文献の
図1に示されるように、厚いチューブプレート、すなわち厚いチューブシートと、当該チューブプレートから出る加熱チューブとを備えることが周知であり、黙示的である。
【0008】
EP3355022A1(特許文献2)は、好ましくはU型の、すなわちU字型チューブを含む合成ガスループ式廃熱ボイラー(WHB)を開示しており、当該WHBは、アンモニア変換器(アンモニア合成反応器)のすぐ下流のアンモニア製造プラントに設置された、典型的には100barを超える運転のための、圧力装置である。前記廃熱ボイラーは、窒化と呼ばれる特定の腐食現象から保護されるチューブシートを備える。チューブシートは厚く(最大500mm)、両端でそれぞれの溶接オーバーレイに溶接された内部保護スリーブで保護されており、溶接後熱処理を行わずに除去および再設置が可能である。U字型チューブを有するWHBが、当該WHBが厚いチューブシートを備えることを暗に意味することは理解されよう。なぜなら、前記チューブシートはそれ自身を支持することができるからである。これは、それら自身を支持することができず、従ってU字型チューブを備える廃熱ボイラーでの使用に適していない薄い可撓性チューブシートとは対照的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US2013199462A1
【特許文献2】EP3355022A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一般的な目的は、シングルパス・ストレートチューブ型の、薄い可撓性チューブシートを有するPGWHBの寿命を延ばすことができることである。
【0011】
より具体的には、本発明の目的は、そのようなPGWHBの製作ステップにおいて既に、後続のPWHTなしに溶接による施栓を容易に行うことを可能にする薄い可撓性チューブシートの保護を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、耐熱性ライニングが故障した場合に、チューブシートのメタルダスティング腐食に対して、シングルパス・ストレートチューブ型の薄い可撓性チューブシートを備えたPGWHBを保護するための簡単な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらおよび他の目的は、本発明によって解決される。
【0014】
従って、第1の態様において、本発明は、プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)であって、
シェルを備え、当該シェル内には、複数のストレートチューブが配置され、当該ストレートチューブの各々は、その一方の端部で入口チューブシートに、およびその反対の端部で出口チューブシートに接続され;前記入口チューブシートおよび前記出口チューブシートは、前記ストレートチューブの各々と協同して、それぞれプロセスガス、例えば合成ガスを受け取り、そして出すように適合された複数の穴を備え、
入口チューブシートにおける穴の各々は、入口開口部を画定し、および出口チューブシートにおける穴の各々は、出口開口部を画定し、
前記入口チューブシートおよび出口チューブシートは、少なくとも前記穴の各々の前記入口開口部および出口開口部に、溶接オーバーレイまたはクラッディングを備え、
および、前記入口チューブシートおよび出口チューブシートは、低合金鋼でできた、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めて20~70mmの厚さを有する、薄い可撓性チューブシートである、
前記プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)である。
【0015】
これにより、溶接後熱処理を必要としない、容易に実行可能な溶接による施栓が可能である。長年の運転後のPGWHBの漏れまたは故障メカニズムの場合に、溶接後熱処理に頼ることなく、ストレートチューブのうちの1つまたは複数(以下、「チューブ」とも呼ぶ)を施栓することが可能となり、従って、装置所有者またはプラントオペレーターに、プラント生産不稼働時間、コストおよびリスクの低減という観点から、著しい利点を提供する。従って、チューブを、複雑でない、すなわち簡単な溶接手順による溶接によって施栓することができる。
【0016】
一実施態様において、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めた前記厚さは、25、30、35、40、45、50、55、60または65mmである。特定の実施態様において、前記厚さは、25~35mm、例えば35mmである。
【0017】
当技術分野で周知のように、「薄い可撓性チューブシート」という用語は、自身を支持することができないチューブシートを意味する。例えば、薄い可撓性チューブシートは、ASME規格のSectionVIII Div.2-Section4.9に記載されるような、ステー付き表面(stayed surface)である。
【0018】
本技術分野でよく知られているように、および本願の趣旨では、「溶接オーバーレイ」という用語は、ベースメタル固有ではない望ましい特性を改善するか、または構成要素の元々の寸法を復元するために、ベースメタル上に特定の特性を有する、金属の1つまたは複数の相を堆積するための溶接プロセスを意味する。典型的には、耐摩耗性材料が、多くの場合に母材とも呼ばれるベースメタル上に施用される。
【0019】
当技術分野でよく知られているように、および本願の趣旨では、「クラッディング」という用語は、異種金属同士の接合を意味する。クラッディングは爆発クラッディングを含み、これも周知のプロセスであり、より具体的には、 精密爆発を使用して2つの異なる金属を、両方の機械的、電気的および腐食特性を保持しながら接合する固体溶接プロセスである。
【0020】
一実施態様において、溶接オーバーレイまたはクラッディングは、厚さが4~10mmである。
【0021】
一実施態様において、薄い可撓性チューブシートは、15~65mm、例えば20、25、30、35、40、45、50、55、60mmの厚さを有する。
【0022】
例えば、薄い可撓性シートは30~45mmであり、オーバーレイまたはクラッディングは4~10mm、例えば5、6、7、8、9mmの厚さを有する。また、例えば、薄い可撓性シートは30mmの厚さを有し、オーバーレイまたはクラッディングは5mmの厚さを有し、従って、35mmの、溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めた前記厚さを提供する。
【0023】
例えばU字チューブ廃熱ボイラーにおいて厚いチューブシート上の溶接オーバーレイが知られているが、薄い可撓性チューブシート上へのオーバーレイの施用は、少なくともPGWHBの剛性および従って構造的完全性に対する直接的なおよび付随的な負の影響のために、全く企図されておらず;厚いチューブシート、例えば100~500mmの厚さ、またはより多くの場合300~700mmの厚さ、例えば400、500、600mmの厚さでは、それに施用される溶接オーバーレイは、チューブシートの厚さのほんの3~4%またはそれら未満に相当するに過ぎない一方で、本発明によるPGWHBの薄い可撓性チューブシートでは、溶接オーバーレイがチューブシートの厚さのかなりの割合に相当する。例えば、厚さ6~10mmの溶接オーバーレイおよび厚さ35mmのチューブシートでは、溶接オーバーレイが厚さの約15~20%(例えば、6/(35+6)×100 約15%)に相当する。厚いチューブシートに関しては、チューブシートの構造的完全性が分析される場合に、チューブシートと比較して薄い厚さの溶接オーバーレイは無視される。しかしながら、薄い可撓性チューブシートに関してはこれは不可能であり、なぜなら、溶接オーバーレイの厚さがチューブシートの全体の厚さの相当の部分を構成するからである。その結果、溶接オーバーレイまたはクラッディングをチューブシート上に導入することは、チューブシートの柔軟性を本質的に低下させ、従って、PGWHBが国際規格に関して認可可能であることを保証するためには、些細でない検討および分析技術が適用されなければならないことを強いるものである。厚いチューブシートの厚さは、チューブシートの全体的な剛性に対する溶接オーバーレイまたはクラッディングからの影響を最小化するが、U型のチューブの構成に関しては、ここではそれは望ましくなく、なぜならチューブシートの温度が上昇し、メタルダスティングに関する金属温度限界に近づくリスクが増加するからである(以下もさらに参照されたい)。さらに、厚いチューブシートは、過度に高いチューブシート応力、および/またはチューブとチューブシートとの継手に過度に高い応力をもたらすことになる。
【0024】
チューブシートの厚さは、チューブシートの穴のあいた部分において、すなわち、チューブシート(入口チューブシートまたは出口チューブシート)の、入口チューブシートおよび出口チューブシートのそれぞれ入口開口部と出口開口部を画定する前記穴を備える部分において測定された厚さであることは理解されよう。例えば、添付の
図2において、厚さは、入口開口部18、18’および対応する溶接オーバーレイ20’、20’’を有する金属シート16の部分において測定される。これは、最も薄い厚さを有するチューブシートの部分に相当する。
【0025】
「前記入口チューブシートおよび出口チューブシートは、少なくとも前記穴の各々の前記入口開口部および出口開口部に、溶接オーバーレイまたはクラッディングを備え」という特徴において、「少なくとも」という用語が、溶接オーバーレイまたはクラッディングが、入口チューブシートまたは出口チューブシートの表面に沿って入口開口部から離れて延在し得ることを意味することも理解されよう。例えば、添付の
図2の溶接オーバーレイ20のように。
【0026】
上述のように、PGWHB内の可撓性の薄いチューブシートは、典型的には高温側において耐熱性ライニングされる。この耐熱性ライニングは、長時間の運転後には割れるかまたは分離する可能性があり、そのような分離の後、チューブシートをプロセスガスに直接暴露させ、メタルダスティング腐食によるチューブシートの非常に速い劣化を引き起こし得る。そのような耐熱性物の分離は検出されずに起こり得、従っていかなる警告もなしに、装置の完全性の損失を引き起こし得る。
【0027】
より具体的には、PGWHBは、ガス組成に応じて、金属温度が400~450℃を超える場合には、壊滅的なメタルタスティングによって攻撃され得る。PGWHBのチューブシートは通常、温度を許容可能なレベルに維持するために耐熱性層によって保護される;しかしながら、耐熱性物が経時的に損傷を受けると、温度が上昇してメタルダスティング腐食を引き起こす可能性があり、最終的には、クライアントに対して費用のかかるPGWHBの交換や著しい不稼働時間をもたらしてしまう。
【0028】
従って、本発明の第1の態様に従う実施態様において、溶接オーバーレイまたはクラッディングは、alloy601、alloy690、alloy602CA、alloy625、alloy693またはalloy699XAから選択されるメタルダスティング耐性材料でできており、4~10mmの厚さである。
【0029】
本明細書で使用される場合に、alloy601は、以下の組成(重量%)を有する材料である:Ni 58~63%、 Cr 21~25%、 Al 1~1.7%、 Mn 最大で1%。
【0030】
本明細書で使用される場合に、alloy690は、以下の組成(重量%)を有する材料である:Ni ≧58、 Cr 27~31、 Fe 7~11、 Cu 0.5 C 0.05、 Si 0.5、 Mn 0.5、 S 0.015。
【0031】
本明細書で使用される場合に、alloy602CAは、以下の組成(重量%)を有する材料である:Cr 26.0、 Ni(残部)、 C 0.25、 Al 2.40、 Ti 0.20、 Y 0.12、 Zr 0.10、 Mn 0.15、 Si 0.50、 Cu 0.10、 Fe 11.00(全ての重量%は最大値)。
【0032】
本明細書で使用される場合に、alloy625は、以下の組成(重量%)を有する材料である:Cr 20.0~23.0、 Ni 最小で58.0、 C 0.10、 Al 0.40、 Ti 0.40、 Mn 0.50、 Si 0.50、 Fe 5.0、 P 0.015、 S 0.015、 Nb+Ta 3.15~4.15、 Mo 8.0~10.0(全ての重量%は最大値)。
【0033】
本明細書で使用される場合に、alloy693は、以下の組成(重量%)を有する材料である:Ni(残部)、 Cr 27.0~31.0、 Fe 2.5~6.0、 Al 2.5~4.0、 Nb 0.5~2.5、 Mn 1.0、 Ti 1.0、 Cu 0.5 Si 0.5、 C 0.15、 S 0.01。
【0034】
本明細書で使用される場合に、alloy699XAは、以下の組成(重量%)を有する材料である:Ni(残部)、 Cr 26.0~30.0、 Fe 2.5、 Al 1.9~3.0、 Nb 0.5、 Mn 0.5、 Ti 0.6、 Cu 0.5 Si 0.5、 C 0.1、 S 0.01 Zr 0.1、 N 0.05、 P 0.02、 B 0.008。
【0035】
それによって、高ニッケルタイプの材料 -例えばalloy601、Alloy690またはalloy602CA(これらはメタルダスティング耐性材料である)- からなる溶接オーバーレイまたはクラッディングが、溶接オーバーレイまたはクラッディングを介して、薄い可撓性チューブシート上に施用され、その結果、後続のPWHTなしに溶接による施栓を行うことを容易にすることに加えて、チューブシートは同時に、割れるかまたは分離した耐熱性物や直接的なプロセスガス曝露による不利な結果に耐える能力を有する。従って、このような激しい形態の腐食、金属ダスティングからのチューブシートの追加的な保護がもたらされ、一方では同時に、PGWHBの必要とされる安全性および構造的完全性を維持し、チューブシート表面に沿った合成ガスの流れを可能にする。
【0036】
本発明の第1の態様に従う別の実施態様では、PGWHBは、チューブとチューブシートとの溶接も備える。これにより、各ストレートチューブの端部が各チューブシートに溶接される。特定の実施態様において、チューブの入口部分が、入口チューブシートのシェル側に溶接され、従って、熱保護要素、例えばチューブシートのセラミックインサート、およびチューブとチューブシートとの溶接部を収容するための空間を提供する。これにより、チューブとチューブシートとの溶接部が、シェル側の沸騰水によって最も冷却される位置に配置される。例えば、チューブ内を流れるプロセスガスは約1000℃であり、沸騰水は約300℃である。これがチューブの入口部分におけるものであることは理解されよう。加えて、この構成は、入口チューブシートにおける望ましくない腐食、例えば隙間腐食をもたらし得るギャップを回避することを可能にする。例えば
図3~5に示すように、チューブの反対の端部は、出口チューブシートの熱的保護が、チューブのこの端部におけるプロセスガスのより低い温度のために必要ない場合には、プロセスガス側により近い出口チューブシートに溶接される。
【0037】
本願の目的に関して、本発明の実施態様のいずれかに関連する、「好適には」という用語は、「任意(選択的)に」、すなわち任意の実施態様を意味する。
【0038】
一実施態様において、各ストレートチューブは、内部ライナー、例えば内部保護スリーブを備え、これは各ストレートチューブの内部表面に沿って配置され、および、内部ライナーの端部がそれぞれ前記ストレートチューブの前記の一方の端部または前記の反対の端部へと延びるように、前記入口開口部または出口開口部から隔てたところで前記入口チューブシートまたは出口チューブシートに向かって延在している。任意選択的に、ライナーはさらに延在して、チューブとチューブシートとの溶接部に接触する。添付の
図3に示されるように、例えば、内部ライナーの1つの端部は、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めた入口チューブシートの厚さに対応する入口開口部から隔ててたところに設けられる。従って、内部ライナーの当該端部は、入口チューブシートおよび出口チューブシートに設けられた前記のそれぞれの溶接オーバーレイまたはクラッディングには溶接されない。特定の実施態様では、前記内部ライナーは、各ストレートチューブの前記内部表面、および従ってチューブの内側に、機械的に接続され、すなわち機械的に確立された接触によって、例えば油圧による伸長、および/または圧延によって、機械的に接続される。これは、溶接を必要としないので、前記内部ライナーのより簡単な交換を可能にする。
【0039】
それによって、例えば上述のEP3355022A1(内部保護スリーブが両方の端部でそれぞれの溶接オーバーレイに溶接される)と比較して内部ライナーをより簡単に提供することができる。従って、本発明では、各ストレートチューブには、各ストレートチューブの内部表面に沿って配置される内部保護スリーブであって、前記スリーブの端部がそれぞれの溶接オーバーレイに溶接される内部保護スリーブは存在しない。さらに、前記EP3355022A1では、保護(保護スリーブ)は、チューブシート、およびチューブとチューブシートとの溶接部の窒化による腐食を防止するために設けられているが、一方で本発明では、内部ライナーは、チューブ自体を保護するために設けられており、チューブシートをメタルダスティングから保護するためではない。EP3355022A1がアンモニア合成ループの廃熱ボイラーであって、厚いチューブシートを備える廃熱ボイラーに関するものであることは理解されよう。このボイラーは、アンモニア合成ループのアンモニア変換器の下流に位置する。本発明では、溶接オーバーレイまたはクラッディングは、フロントエンド型プロセスガス廃熱ボイラーの薄い可撓性チューブシート上に、従って、例えばアンモニア変換器の上流に設けられる。従って、保護スリーブのような内部ライナーは、前記の2つのタイプのボイラーでは全く異なる目的のために使用されている。
【0040】
一実施態様において、PGWHBは、例えば添付の
図1に示されるように、水平に配置される。
【0041】
一実施態様において、前記の複数のストレートチューブは、1つまたは複数のコンパートメント内に配置され、当該コンパートメントはそれによって、例えば添付の
図1にも示されるように、複数の入口チューブシートおよび出口チューブシートを画定する。2つのコンパートメントは、後続のコンパートメントにおいてより小さいチューブを使用することを可能にし、それによって、ボイラーの平均熱伝達率が増加する。これは、全体的に必要な熱伝達面積を減少させる。
【0042】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様のPGWHBの入口チューブシートおよび出口チューブシートへのストレートチューブの溶接を提供するための方法に関し、この方法は以下を、好適には以下の順序で含む:
i)PGWHBの少なくとも入口チューブシートおよび出口チューブシートに、溶接オーバーレイまたはクラッディング、例えば爆発クラッディングを提供すること;
ii)例えば削孔によって、入口チューブシート及び出口チューブシートに複数の穴を提供すること;
iii)複数のストレートチューブを、ストレートチューブの各々を一方の端部で入口チューブシートに、反対の端部で出口チューブシートに接続するために、前記の穴に導入、例えば挿入すること;および
iv)ストレートチューブの前記の一方の端部で入口チューブシートと、当該ストレートチューブの前記の反対の端部で出口チューブシートと、チューブとチューブシートとの溶接を提供すること。
【0043】
本発明の第2の態様に従う一実施態様では、ステップi)がステップii)の前に、すなわち、例えばチューブシートに穴を削孔する前に行われ、それによって、溶接オーバーレイまたはクラッディング施用によるチューブシートの過度の歪みが回避される。
【0044】
本発明の第2の態様に従う一実施態様では、溶接オーバーレイによるクラッディングは、少なくとも2回、例えば3、4、5または6回、好適には所定の順序に従って、施用される。
【0045】
本発明の第2の態様に従う実施態様において、チューブとチューブシートとの溶接は、任意選択的に千鳥ラン(staggered run)での、マルチパス耐荷重溶接部として、好適には、入口チューブシートおよび出口チューブシートのための千鳥ランでの完全自動マルチパス耐荷重溶接部として、設けられる。これにより、前述したようにセラミックスインサート等の断熱材を設置することによって、チューブシートに十分な熱保護を導入するための空間が提供され、さらに、長い運転時間後であっても、チューブとチューブシートとの間にギャップが形成されないこと、従って、例えば隙間腐食のリスクの最小化が保証される。チューブとチューブシートとの溶接は例えば、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)または他の従来技術によって行われる。
【0046】
本発明の第2の態様に従う実施態様において、薄い可撓性チューブシートは、ASME SectionVIII,Division2に従って、有限要素解析によって確認される。
【0047】
設計段階において、薄い可撓性チューブシートを有するPGWHBは、国際的な圧力容器規格、例えばASME圧力容器規格に従って認証を受けるために、有限要素解析(FEA)によって解析される。チューブシートは、過度の応力を受けることなく、かつシェル接合部に隣接する構成要素、例えばチューブおよびチューブシートに許容できない応力を及ぼすことなく、1~5mm程度の変位を受け入れることができなければならない。既に述べたように、本発明におけるように、チューブシートに近いかまたはチューブシートとほぼ同じサイズの厚さを有する溶接オーバーレイまたはクラッディングをチューブシート上に導入することは、チューブシートを本質的に「単一金属」プレートからバイメタルプレートに変換し、その結果、PGWHBが国際規格に関して認証可能であることを保証するためには、些細でない検討および分析技術が後者に適用されなければならない。このような技術は、溶接オーバーレイにおける応力を基材における応力から分割すること、およびこれら2つの層の個々の評価を実行することを含む。そのような評価は有限要素解析のみによって行うことができ、通常、薄い可撓性チューブシート上の溶接オーバーレイまたはクラッディングの使用に対してのかなりの抑止力になる。
【0048】
本発明の第2の態様に従う実施態様において、前記方法は、PGWHB製作ステップにおいて、すなわち、PGWHBが運転のために設置される場所の外側で実施される。
【0049】
従って、本発明の実施は、新しいPGWHBの構築中に行われ、その結果、既に最初において、潜在的な未発見の内部耐熱物の故障に対してロバスト性を有し、ならびにチューブの施栓を、長年の運転後に、複雑でなく時宜にかなった方法で行えることを保証するボイラー(PGWHB)を提供することが可能である。本質的に、これは、PGWHBの典型的な平均余命が著しく増加することを意味する。
【0050】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるPGWHB、特にその入口チューブシートおよび出口チューブシートを保護するための方法であって、長期間の運転後、すなわち少なくとも1年の運転後、例えば5年または10年の運転後に、前記ストレートチューブのうちの少なくとも1つを、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングへの溶接によって施栓することを含む方法である。
【0051】
本発明の第3の態様によれば、前記方法は、後続の溶接後熱処理(PWHT)を含まない。
【0052】
これにより、複雑でない溶接手順での溶接によるチューブの施栓が可能である。「pop-a-plug」等の第三者によって供給される解決策による機械的施栓(これは、漏れがチューブ内における場合だけ有効である)が回避される。この機械的な施栓解決策(pop-a-plug)は、故障が例えばチューブとチューブシートとの溶接部に位置する場合には、実施することが困難であるかまたは不可能である。
【0053】
本明細書で使用される場合に「施栓」(plugging)という用語が、チューブを通る流れを妨げるためにチューブ開口部をプラグで塞ぐことを意味することは理解されよう。プラグは、シェル側からの圧力にだけ耐えられればよい。そのようなプラグは例えば、添付の
図5に示されるように、入口チューブシートに、および出口チューブシートの対応する穴に、設置されなければならない。
【0054】
第4の態様において、本発明は、改質ユニットを出るプロセスガスを冷却するための方法であって、前記改質ユニットは、自己熱改質器(ATR)、二次改質器、e-SMRを含めた水蒸気メタン改質器(SMR)、または対流改質器のいずれかであり、前記プロセスガスは、炭素酸化物および水素を含む合成ガスであり、前記方法は、前記合成ガスを、それを本発明の第1の態様に従うプロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)を通過させることによって冷却することを含む、前記方法である。
【0055】
合成ガスはPGWHBのチューブを通って流れ、一方、ボイラー供給水(BFW)はシェル側を通って流れ、従って、蒸気を生成する一方で、合成ガスは冷却されて下流の処理ユニットに供給される。例えば、合成ガスは、1000~1100℃および20~70barの範囲の圧力でATRを出る。
【0056】
本発明の第1の態様の実施態様および関連する利益のいずれも、本発明の第2もしくは第3もしくは第4の態様に従う実施態様と一緒に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1は、水平に配置され、いくつかのコンパートメントにおいて入口チューブシートおよび出口チューブシートを有する、ストレートチューブ型のプロセスガス廃熱ボイラーを示す。断面A-A’を、図の右側に示す。
【0058】
図2は、
図1のプロセスガス廃熱ボイラーの入口チューブシートに施用された溶接オーバーレイまたはクラッディングの図を示す。
【0059】
図3は、
図2の入口チューブシートにおけるストレートチューブの入口開口部における溶接オーバーレイまたはクラッディングの拡大図を示す。
【0060】
図4は、
図1の出口チューブシートにおけるストレートチューブの出口開口部における溶接オーバーレイまたはクラッディングの拡大図を示す。
【0061】
図5は、
図3および4の入口チューブシートおよび出口チューブシートにおける溶接オーバーレイまたはクラッディングへの施栓の拡大図を示す。
【0062】
詳細な説明
図1は、薄い可撓性のチューブシートを有し、水平に配置された、シングルパスおよびストレートチューブタイプのPGWHB 10を示す。複数のストレートチューブが、1つまたは複数のコンパートメント(10’、10’’)内に配置され、当該コンパートメントはそれによって、例えば図にも示されるように、複数の入口チューブシートおよび出口チューブシートを画定する。シェル12内には、PGWHBの右側にある断面A-A’でも示されているように、複数のストレートチューブ14が配置されており、その中では見えないが、断面A-A’に対応する複数のチューブ14が存在することが理解される。
【0063】
図2は、PGWHB 10の入口チューブシート16の断面を示し、これは、厚さが例えば35mmの薄い可撓性チューブシートであり、各々が入口開口部18、18’を画定する複数の穴を備えている。入口チューブシート16は、少なくとも入口開口部18、18’に、例えば6mmの厚さの、溶接オーバーレイまたはクラッディング20、20’、20’’を備えている。溶接オーバーレイまたはクラッディング20は、入口チューブシート16の表面に沿って入口開口部から離れて延在している。
【0064】
図3は、
図2の入口チューブシート16の入口開口部18’における溶接オーバーレイまたはクラッディングの拡大図を示す。示されるように、複数のストレートチューブ14のうちの1つ(ここではストレートチューブ22として表される)が、一方の端部で入口チューブシート16に、チューブとチューブシートとの溶接24によって接続されており、さらに、溶接オーバーレイまたはクラッディング20’、20’’が、図に示されるように、入口開口部18’で入口チューブシート16上に設けられている。チューブ22は、内部ライナー22’、例えば内部保護スリーブを備えており、内部ライナー22’は、チューブの内部表面に沿って配置され、および、内部ライナー22’の端部22’’がストレートチューブ22の前記の一方の端部へと延びるように、前記入口開口部18’から隔てたところで内部チューブシート16に向かって延在している。例えば、内部ライナー22’の1つの端部は、溶接オーバーレイまたはクラッディング20’、20’’を含めた入口チューブシート16の厚さに対応する入口開口部18’から隔てたところに設けられる。ライナー22’はさらに延びて、チューブとチューブシートとの溶接部24に接触する。従って、内部ライナーの当該端部は、前記のそれぞれの溶接オーバーレイまたはクラッディング20’、20’’には溶接されない。溶接オーバーレイまたはクラッディングに溶接されるのではなく、内部ライナー22’は、例えば油圧による伸長、および/または圧延によって、各ストレートチューブ22の前記内部表面に機械的に接続される。ここで示されるように、チューブの入口部分は、好適には、入口チューブシートのシェル側に接続点で溶接され(24)、それによって、熱保護要素、例えばチューブシートのセラミックインサートおよびチューブとチューブシートとの溶接部を収容するための空間を提供する。これにより、チューブとチューブシートとの溶接部24は、シェル側で約300℃で循環する沸騰水によって最も冷却される位置に配置される(チューブ22内部を流れるプロセスガスは、上流の改質ユニットから高温の合成ガスを受け取るので、例えば約1000℃である)。
【0065】
図4は、PGWHBの出口チューブシート30上の溶接オーバーレイまたはクラッディングの拡大図を示し、当該チューブシートも、厚さが例えば35mmの薄い可撓性チューブシートであり、各々が入口開口部(ここでは単一の入口開口部26として表される)を画定する複数の穴を備えている。ストレートチューブ22が、この反対の端部で出口チューブシート30に、チューブとチューブシートとの溶接24’によって接続されており、さらに、溶接オーバーレイまたはクラッディング28、例えば6mmの厚さの溶接オーバーレイが、図に示されるように、入口開口部26で出口チューブシート30上に設けられている。
【0066】
図5は、
図3および
図4に関連して既に記載したように、入口チューブシート16および出口チューブシート30の両方を備えるストレートチューブ22を示す。長年の運転後のPGWHB 10での漏れの場合、チューブが、チューブシート16、30においてプラグ32、32’によって施栓される。この施栓を長期的に確実に行うためには、溶接による施栓が必要である。施栓は、例えばプラグ32’と溶接オーバーレイまたはクラッディング28との接触点における対応する黒い領域によって示されるように、入口チューブシート16の溶接オーバーレイまたはクラッディング20’、20’’への、および/または出口チューブシート30の溶接オーバーレイまたはクラッディング28への溶接によって行われ、それによって、溶接後熱処理(PWHT)、または機械的施栓、例えばいわゆるpop-a-plugの使用が回避される。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
図5は、
図3および
図4に関連して既に記載したように、入口チューブシート16および出口チューブシート30の両方を備えるストレートチューブ22を示す。長年の運転後のPGWHB 10での漏れの場合、チューブが、チューブシート16、30においてプラグ32、32’によって施栓される。この施栓を長期的に確実に行うためには、溶接による施栓が必要である。施栓は、例えばプラグ32’と溶接オーバーレイまたはクラッディング28との接触点における対応する黒い領域によって示されるように、入口チューブシート16の溶接オーバーレイまたはクラッディング20’、20’’への、および/または出口チューブシート30の溶接オーバーレイまたはクラッディング28への溶接によって行われ、それによって、溶接後熱処理(PWHT)、または機械的施栓、例えばいわゆるpop-a-plugの使用が回避される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(10)であって、
シェル(12)を備え、当該シェル(12)内には、複数のストレートチューブ(14、22)が配置され、当該ストレートチューブの各々(22)は、その一方の端部で入口チューブシート(16)に、およびその反対の端部で出口チューブシート(30)に接続され;前記入口チューブシート(16)および前記出口チューブシート(30)は、前記ストレートチューブの各々(22)と協同して、それぞれプロセスガス、例えば合成ガスを受け取り、そして出すように適合された複数の穴を備え、
入口チューブシート(16)における穴の各々は、入口開口部(18、18’)を画定し、および出口チューブシート(30)における穴の各々は、出口開口部(26)を画定し、
少なくとも、前記入口チューブシートおよび出口チューブシート(16、30)は、少なくとも前記穴の各々の前記の入口開口部および出口開口部(18、18’、26)に、溶接オーバーレイまたはクラッディング(20、20’、20’’、28)を備え、
および、前記入口チューブシートおよび出口チューブシート(16、30)は、低合金鋼でできた、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めて20~70mmの厚さを有する、薄い可撓性チューブシートである、
前記プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(10)。
2.前記の薄い可撓性チューブシートが、15~65mm、例えば20、25、30、35、40、45、50、55、60mmの厚さを有する、上記1に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
3.溶接オーバーレイまたはクラッディング(20、20’、20’’、28)が、4~10mmの厚さの、alloy601、alloy690、alloy602CA、alloy625、alloy693またはalloy699XAから選択される耐メタルダスティング材料である、上記1または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
4.チューブとチューブシートとの溶接(24、24’)も備える、上記1~3のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
5.チューブ(22)の入口部分が、入口チューブシート(16)のシェル側に溶接されている、上記4に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
6.各ストレートチューブ(22)が、内部ライナー(22’)、例えば内部保護スリーブを備え、内部ライナー(22’)は、各ストレートチューブ(22)の内部表面に沿って配置され、および、内部ライナー(22’)の端部(22’’)がそれぞれストレートチューブ(22)の前記の一方の端部または前記の反対の端部へと延びるように、前記入口開口部または出口開口部(18、18’、26)から隔てたところで前記入口チューブシート(16)または出口チューブシート(30)に向かって延在している、上記1~5のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
7.前記内部ライナー(22’)が、例えば、油圧による伸長、および/または圧延によって、各ストレートチューブ(22)の前記内部表面に機械的に接続されている、上記6に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
8.前記複数のストレートチューブ(14、22)が、1つまたは複数のコンパートメント(10’、10’’)内に配置され、当該コンパートメントはそれによって、複数の入口チューブシートおよび出口チューブシートを画定する、上記1~7のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
9.以下を含む、上記1~8のいずれか1つに記載のPGWHBの入口チューブシートおよび出口チューブシートへのストレートチューブの溶接を提供するための方法:
i)PGWHBの少なくとも入口チューブシートおよび出口チューブシートに、溶接オーバーレイまたはクラッディング、例えば爆発クラッディングを提供すること;
ii)入口チューブシート及び出口チューブシートに複数の穴を提供すること;
iii)複数のストレートチューブを、ストレートチューブの各々を一方の端部で入口チューブシートに、反対の端部で出口チューブシートに接続するために、前記の穴に導入すること;および
iv)ストレートチューブの前記の一方の端部で入口チューブシートと、当該ストレートチューブの前記の反対の端部で出口チューブシートと、チューブとチューブシートとの溶接を提供すること。
10.ステップi)がステップii)の前に、すなわち、例えばチューブシートに穴を削孔する前に行われる、上記9に記載の方法。
11.チューブとチューブシートとの溶接が、任意選択的に千鳥ランでの、マルチパス耐荷重溶接部として、好適には、入口チューブシートおよび出口チューブシートのための千鳥ランでの完全自動マルチパス耐荷重溶接部として設けられる、上記9または10に記載の方法。
12.前記の薄い可撓性チューブシートが、ASME SectionVIII,Division2に従って、有限要素解析によって確認される、上記9~11のいずれか1つに記載の方法。
13.PGWHB製作ステップにおいて実施される、上記9~12のいずれか1つに記載の方法。
14.上記1~8のいずれか1つに記載のPGWHB、特にその入口チューブシートおよび出口チューブシートを保護するための方法であって、長期間の運転後、すなわち少なくとも1年の運転後に、前記ストレートチューブのうちの少なくとも1つを、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングへの溶接によって施栓することを含む、前記方法。
15.改質ユニットを出るプロセスガスを冷却するための方法であって、前記改質ユニットは、自己熱改質器(ATR)、二次改質器、e-SMRを含めた水蒸気メタン改質器(SMR)、または対流改質器のいずれかであり、前記プロセスガスは、炭素酸化物および水素を含む合成ガスであり、前記方法は、前記合成ガスを、それを上記1~8のいずれか1つに記載のプロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)を通過させることによって冷却することを含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(10)であって、
シェル(12)を備え、当該シェル(12)内には、複数のストレートチューブ(14、22)が配置され、当該ストレートチューブの各々(22)は、その一方の端部で入口チューブシート(16)に、およびその反対の端部で出口チューブシート(30)に接続され;前記入口チューブシート(16)および前記出口チューブシート(30)は、前記ストレートチューブの各々(22)と協同して、それぞれプロセスガス、例えば合成ガスを受け取り、そして出すように適合された複数の穴を備え、
入口チューブシート(16)における穴の各々は、入口開口部(18、18’)を画定し、および出口チューブシート(30)における穴の各々は、出口開口部(26)を画定し、
少なくとも、前記入口チューブシートおよび出口チューブシート(16、30)は、少なくとも前記穴の各々の前記の入口開口部および出口開口部(18、18’、26)に、溶接オーバーレイまたはクラッディング(20、20’、20’’、28)を備え、
および、前記入口チューブシートおよび出口チューブシート(16、30)は、低合金鋼でできた、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングを含めて20~70mmの厚さを有する、薄い可撓性チューブシートである、
前記プロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)(10)。
【請求項2】
前記の薄い可撓性チューブシートが、15~65mm、例えば20、25、30、35、40、45、50、55、60mmの厚さを有する、請求項1に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項3】
溶接オーバーレイまたはクラッディング(20、20’、20’’、28)が、4~10mmの厚さの、alloy601、alloy690、alloy602CA、alloy625、alloy693またはalloy699XAから選択される耐メタルダスティング材料である、請求項1または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項4】
チューブとチューブシートとの溶接(24、24’)も備える、請求項1
または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項5】
チューブ(22)の入口部分が、入口チューブシート(16)のシェル側に溶接されている、請求項4に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項6】
各ストレートチューブ(22)が、内部ライナー(22’)、例えば内部保護スリーブを備え、内部ライナー(22’)は、各ストレートチューブ(22)の内部表面に沿って配置され、および、内部ライナー(22’)の端部(22’’)がそれぞれストレートチューブ(22)の前記の一方の端部または前記の反対の端部へと延びるように、前記入口開口部または出口開口部(18、18’、26)から隔てたところで前記入口チューブシート(16)または出口チューブシート(30)に向かって延在している、請求項1
または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項7】
前記内部ライナー(22’)が、例えば、油圧による伸長、および/または圧延によって、各ストレートチューブ(22)の前記内部表面に機械的に接続されている、請求項6に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項8】
前記複数のストレートチューブ(14、22)が、1つまたは複数のコンパートメント(10’、10’’)内に配置され、当該コンパートメントはそれによって、複数の入口チューブシートおよび出口チューブシートを画定する、請求項1
または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(10)。
【請求項9】
以下を含む、請求項
1に記載のPGWHBの入口チューブシートおよび出口チューブシートへのストレートチューブの溶接を提供するための方法:
i)PGWHBの少なくとも入口チューブシートおよび出口チューブシートに、溶接オーバーレイまたはクラッディング、例えば爆発クラッディングを提供すること;
ii)入口チューブシート及び出口チューブシートに複数の穴を提供すること;
iii)複数のストレートチューブを、ストレートチューブの各々を一方の端部で入口チューブシートに、反対の端部で出口チューブシートに接続するために、前記の穴に導入すること;および
iv)ストレートチューブの前記の一方の端部で入口チューブシートと、当該ストレートチューブの前記の反対の端部で出口チューブシートと、チューブとチューブシートとの溶接を提供すること。
【請求項10】
ステップi)がステップii)の前に、すなわち、例えばチューブシートに穴を削孔する前に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チューブとチューブシートとの溶接が、任意選択的に千鳥ランでの、マルチパス耐荷重溶接部として、好適には、入口チューブシートおよび出口チューブシートのための千鳥ランでの完全自動マルチパス耐荷重溶接部として設けられる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記の薄い可撓性チューブシートが、ASME SectionVIII,Division2に従って、有限要素解析によって確認される、請求項9
または10に記載の方法。
【請求項13】
PGWHB製作ステップにおいて実施される、請求項9
または10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1
または2に記載のPGWHB、特にその入口チューブシートおよび出口チューブシートを保護するための方法であって、長期間の運転後、すなわち少なくとも1年の運転後に、前記ストレートチューブのうちの少なくとも1つを、前記溶接オーバーレイまたはクラッディングへの溶接によって施栓することを含む、前記方法。
【請求項15】
改質ユニットを出るプロセスガスを冷却するための方法であって、前記改質ユニットは、自己熱改質器(ATR)、二次改質器、e-SMRを含めた水蒸気メタン改質器(SMR)、または対流改質器のいずれかであり、前記プロセスガスは、炭素酸化物および水素を含む合成ガスであり、前記方法は、前記合成ガスを、それを請求項1
または2に記載のプロセスガス廃熱ボイラー(PGWHB)を通過させることによって冷却することを含む、前記方法。
【国際調査報告】