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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】生体吸収性粒子及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20250121BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250121BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250121BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20250121BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20250121BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K31/7088
A61K9/51
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/18
B82Y5/00
B82Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537961
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 US2022053491
(87)【国際公開番号】W WO2023122079
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/265,732
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/268,790
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(71)【出願人】
【識別番号】513197954
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ ナムローゼ フェンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】524234237
【氏名又は名称】ヤンセン リサーチ アンド ディベロップメント,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エル.クリーク
(72)【発明者】
【氏名】メイ リー
(72)【発明者】
【氏名】カイラ スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ドナ クライン
(72)【発明者】
【氏名】ファン トゥン ルー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076DD38
4C076DD51
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE51
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
(57)【要約】
本開示は、核酸を含む生体吸収性粒子を提供する。生体吸収性粒子は、生体吸収性ポリマーマトリックス及び脂質塩をも含み、これら両方を変更することで粒子の特性に影響を与えることができる。生体吸収性粒子は、疾患の治療のために患者に投与することができる。生体吸収性粒子の製造方法及び使用方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子は、
ポリマーマトリックス、
前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、及び、
前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、
を含み、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約1質量パーセントのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む、製剤。
【請求項2】
前記複数の生体吸収性粒子は平均粒子サイズが300nm未満である、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約5質量パーセントのASOを含む、請求項1~2のいずれか1項記載の製剤。
【請求項4】
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約10質量パーセントのASOを含む、請求項1~3のいずれか1項記載の製剤。
【請求項5】
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約15質量パーセントのASOを含む、請求項1~4のいずれか1項記載の製剤。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックスはトリメチレンカーボネート(TMC)を含む、請求項1~5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスはTMCとポリ乳酸(PLA)とのコポリマーを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の製剤。
【請求項8】
TMC/PLAの比は約25/75である、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)コポリマーを含む、請求項1~8のいずれか1項の製剤。
【請求項10】
前記生体吸収性粒子のそれぞれの表面に結合した表面ポリマーをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項記載の製剤。
【請求項11】
前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項10記載の製剤。
【請求項12】
前記生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのPEGを含む、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
前記複数の生体吸収性粒子は、約10質量パーセント~約40質量パーセントのカチオン性脂質を含む、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項14】
前記複数の生体吸収性粒子は、約20質量パーセント~約30質量パーセントのカチオン性脂質を含む、請求項1~13のいずれか1項記載の製剤。
【請求項15】
前記複数の生体吸収性粒子はナノ粒子を含む、請求項1~14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項16】
前記複数の生体吸収性粒子はマイクロ粒子を含む、請求項1~14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項記載の製剤を患者にデリバリーすること、及び、
前記ポリマーマトリックスが患者内で分解し、患者内で核酸が放出されるのに十分な時間を与えること、
の工程を含む、治療を必要とする患者を治療する方法。
【請求項18】
(a)構造ポリマー及びカチオン性脂質を溶媒に溶解すること、
(b)溶解した構造ポリマー及びカチオン性脂質に長さ2~75ヌクレオチドの核酸を添加すること、
(c)前記構造ポリマー、前記カチオン性脂質及び前記核酸の混合物を第一の超音波処理で超音波処理して油中水型エマルジョンを作成すること、
(d)前記油中水型エマルジョンに水溶液を添加すること、
(e)前記油中水型エマルジョンを第二の超音波処理で超音波処理して水中油中水型エマルジョンを生成すること、
(f)前記水中油中水型エマルジョンに水を添加すること、
(g)前記水中油中水型エマルジョンから複数の粒子を収集すること、及び、
(h)前記複数の粒子を洗浄すること,
を含む、生体吸収性粒子の製剤を製造する方法。
【請求項19】
前記カチオン性脂質及び前記構造ポリマーを質量比約1:4~約1:1の比率で溶解する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、約5質量パーセント~約20質量パーセントで複数の粒子に担持される、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
前記第一の超音波処理及び前記第二の超音波処理は氷浴で完了される、請求項18~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記水溶液はポリビニルアルコール溶液である、請求項18~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記エマルジョンから複数の粒子を収集する工程は遠心分離によって完了される、請求項18~22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
油溶液を糖及びバッファーの存在下で凍結乾燥することをさらに含む、請求項18~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記糖はトレハロースである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記バッファーはヒスチジンである、請求項24~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
(a)患者に複数の粒子をデリバリーすること、ここで、各粒子は、
(i)ポリマーマトリックス、
(ii)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化された長さ2~75のヌクレオチドの核酸、及び、
(iii)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、
を含み、各粒子における前記カチオン性脂質の前記ポリマーマトリックスに対する比は質量比で約1:4~約1:1である、及び、
(b)前記ポリマーマトリックスが患者内で生分解し、前記核酸を放出するのに十分な時間を経過させること、
を含む、治療を必要とする患者を治療する方法。
【請求項28】
前記核酸は、前記複数の粒子に約5質量パーセント~約20質量パーセントで装填されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、前記カチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTMA)又は1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTAP)のいずれかである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーマトリックスは患者の結腸内で生分解する、請求項27又は28記載の方法。
【請求項30】
各粒子は、各粒子の表面に表面ポリマーをさらに含み、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項27~29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
各粒子は少なくとも5wt%のPEGを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記複数の粒子はナノ粒子を含む、請求項27~31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
患者は、炎症性腸疾患、心血管疾患、高血圧、慢性心不全、糖尿病、パーキンソン病、前立腺癌又は慢性腎臓病を有する、請求項27~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子は、
(a)ポリマーマトリックス、
(b)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化された核酸、
(c)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、及び,
(d)前記各生体吸収性粒子の表面に結合した表面ポリマー,
を含み、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記各生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのPEGを含む,製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、一般的に生体吸収性粒子に関する。より具体的には、本開示は、治療に使用されるポリマー、脂質塩及び核酸剤を含む粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
医療分野における数多くの開発により、疾患と闘うための新しい技術が生まれている。そのような開発の1つは、炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患を治療するために核酸を含む活性剤を使用することである。しかしながら、IBDの治療のために結腸に活性剤をデリバリーすることは、生理学的課題、生化学的障壁及び粘液及び上皮に関連するものを含む環境的障壁のために困難である可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
要旨
1つの態様(「態様1」)において、製剤は複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子はポリマーマトリックス、前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質を含み、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約1質量パーセントのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む。
【0004】
別の態様(「態様2」)において、態様1に加えて、前記複数の生体吸収性粒子は平均粒子サイズが300nm未満である。
【0005】
別の態様(「態様3」)において、態様1又は2のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約5質量パーセントのASOを含む。
【0006】
別の態様(「態様4」)において、態様1~3のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約10質量パーセントのASOを含む。
【0007】
別の態様(「態様5」)において、態様1~4のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約15質量パーセントのASOを含む。
【0008】
別の態様(「態様6」)において、態様1~5のいずれか1つに加えて、前記ポリマーマトリックスはトリメチレンカーボネート(TMC)を含む。
【0009】
別の態様(「態様7」)において、態様1~6のいずれか1つに加えて、前記ポリマーマトリックスはTMCとポリ乳酸(PLA)とのコポリマーを含む。
【0010】
別の態様(「態様8」)において、態様7に加えて、TMC/PLAの比は約25/75である。
【0011】
別の態様(「態様9」)において、態様1~8のいずれか1つに加えて、前記ポリマーマトリックスはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)コポリマーを含む。
【0012】
別の態様(「態様10」)において、態様1~9のいずれか1つに加えて、前記生体吸収性粒子のそれぞれの表面に結合した表面ポリマーを含む。
【0013】
別の態様(「態様11」)において、態様10に加えて、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0014】
別の態様(「態様12」)において、態様11に加えて、前記生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのPEGを含む。
【0015】
別の態様(「態様13」)において、態様1~12のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子は、約10質量パーセント~約40質量パーセントのカチオン性脂質を含む。
【0016】
別の態様(「態様14」)において、態様1~13のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子は、約20質量パーセント~約30質量パーセントのカチオン性脂質を含む。
【0017】
別の態様(「態様15」)において、態様1~14のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子はナノ粒子を含む。
【0018】
別の態様(「態様16」)において、態様1~14のいずれか1つに加えて、前記複数の生体吸収性粒子はマイクロ粒子を含む。
【0019】
1つの態様(「態様17」)において、治療を必要とする患者を治療する方法は、態様1~16のいずれかに記載の製剤を患者にデリバリーし、前記ポリマーマトリックスが患者内で分解し、患者内で核酸が放出されるのに十分な時間を与えることを含む。
【0020】
1つの態様(「態様18」)において、生体吸収性粒子の製剤を製造する方法は、構造ポリマー及びカチオン性脂質を溶媒に溶解すること、溶解した構造ポリマー及びカチオン性脂質に長さ2~75ヌクレオチドの核酸を添加すること、前記構造ポリマー、前記カチオン性脂質及び前記核酸の混合物を第一の超音波処理で超音波処理して油中水型エマルジョンを作成すること、前記油中水型エマルジョンに水溶液を添加すること、前記油中水型エマルジョンを第二の超音波処理で超音波処理して水中油中水型エマルジョンを生成すること、前記水中油中水型エマルジョンに水を添加すること、前記水中油中水型エマルジョンから複数の粒子を収集すること、及び、前記複数の粒子を洗浄することを含む。
【0021】
別の態様(「態様19」)において、態様18に加えて、前記カチオン性脂質及び前記構造ポリマーを質量比約1:4~約1:1の比率で溶解する。
【0022】
別の態様(「態様20」)において、態様18又は19に加えて、前記核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、約5質量パーセント~約20質量パーセントで前記複数の粒子に担持される。
【0023】
別の態様(「態様21」)において、態様18~20のいずれか1つに加えて、前記第一の超音波処理及び前記第二の超音波処理は氷浴で完了される。
【0024】
別の態様(「態様22」)において、態様18~21のいずれか1つに加えて、前記水溶液はポリビニルアルコール溶液である。
【0025】
別の態様(「態様23」)において、態様18~22のいずれか1つに加えて、前記エマルジョンから前記複数の粒子を収集する工程は遠心分離によって完了される。
【0026】
別の態様(「態様24」)において、態様18~23のいずれか1つに加えて、油溶液を糖及びバッファーの存在下で凍結乾燥することを含む。
【0027】
別の態様(「態様25」)において、態様24に加えて、前記糖はトレハロースである。
【0028】
別の態様(「態様26」)において、態様24又は25に加えて、前記バッファーはヒスチジンである。
【0029】
1つの態様(「態様27」)において、治療を必要とする患者を治療する方法は、(1)患者に複数の粒子をデリバリーすること、ここで、各粒子はポリマーマトリックス、前記ポリマーマトリックス内にカプセル化された長さ2~75のヌクレオチドの核酸及び前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質を含み、各粒子における前記カチオン性脂質の前記ポリマーマトリックスに対する比は質量比で約1:4~約1:1である、及び(2)前記ポリマーマトリックスが患者内で生分解し、前記核酸を放出するのに十分な時間を経過させることを含む。
【0030】
別の態様(「態様28」)において、態様27に加えて、前記核酸は、前記複数の粒子に約5質量パーセント~約20質量パーセントで装填されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、前記カチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTMA)又は1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTAP)のいずれかである。
【0031】
別の態様(「態様29」)において、態様27又は28に加えて、前記ポリマーマトリックスは患者の結腸内で生分解する。
【0032】
別の態様(「態様30」)において、態様27~29のいずれか1つに加えて、各粒子は、各粒子の表面に表面ポリマーをさらに含み、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0033】
別の態様(「態様31」)において、態様30に加えて、各粒子は少なくとも5wt%のPEGを含む。
【0034】
別の態様(「態様32」)において、態様27~31のいずれか1つに加えて、前記複数の粒子はナノ粒子を含む。
【0035】
別の態様(「態様33」)において、態様27~32のいずれか1つに加えて、患者は、炎症性腸疾患、心血管疾患、高血圧、慢性心不全、糖尿病、パーキンソン病、前立腺癌及び慢性腎臓病のうちの少なくとも1つを有する。
【0036】
1つの態様(「態様34」)において、製剤は複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子はポリマーマトリックス、前記ポリマーマトリックス内にカプセル化された核酸、前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、及び前記各生体吸収性粒子の表面に結合した表面ポリマーを含み、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記各生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのPEGを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、実施形態を例示し、記載とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0038】
図1図1は、少なくとも1つの実施形態による生体吸収性ナノ粒子の概略図である。
【0039】
図2図2は、少なくとも1つの実施形態による表面ポリマーを含む生体吸収性ナノ粒子の概略図である。
【0040】
図3図3は、少なくとも1つの実施形態による図1の生体吸収性ナノ粒子の製造方法のフローチャートである。
【0041】
図4図4は、少なくとも1つの実施形態による図2の生体吸収性ナノ粒子を製造するための、図3に類似した部分的なフローチャートである。
【0042】
図5図5は、少なくとも1つの実施形態による図1~2の生体吸収性ナノ粒子で患者を治療する方法のフローチャートである。
【0043】
図6図6は、少なくとも1つの実施形態による、脂質装填レベルとナノ粒子直径との関係を示すグラフ図である。
【0044】
図7図7は、少なくとも1つの実施形態による、脂質レベルとヌクレオチド装填量との関係を示すグラフ図である。
【0045】
図8図8は、少なくとも1つの実施形態による、脂質レベルとゼータ電位との関係を示すグラフ図である。
【0046】
図9図9は、少なくとも1つの実施形態による、複数回の試行のためのインキュベーションとヌクレオチド放出との関係を示すグラフ図である。
図10図10は、少なくとも1つの実施形態による、複数回の試行のためのインキュベーションとヌクレオチド放出との関係を示すグラフ図である。
【0047】
図11図11は、少なくとも1つの実施形態による、TFF洗浄ナノ粒子、脱イオン水(di-water)及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の再構成粒子の粒子分布を示す。
【0048】
図12図12は、少なくとも1つの実施形態による実施例で説明したゲルアッセイである。
【0049】
図13図13は、少なくとも1つの実施形態によって形成された生体吸収性ナノ粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
定義及び用語
本開示は、限定的に解釈されるべきものではない。例えば、本出願で使用される用語は、当該分野の人々がそのような用語に与える意味の関係で広く解釈されるべきである。
【0051】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容誤差範囲内を意味し、これは、値が測定又は決定される方法、例えば測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該分野の慣例に従って、1標準偏差以内又は1標準偏差を超えることを意味することができる。あるいは、「約」は、与えられた値の最大20%、最大10%、最大5%、又は最大1%の範囲を意味することができる。あるいは、この用語は、値の5倍以内、又は2倍以内など、何倍か以内のことを意味することができる。本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合に、特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値に対する許容誤差範囲内を意味するものと想定すべきである。
【0052】
様々な実施形態の説明
当業者であれば、本開示の様々な態様は、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解できる。また、本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点において、図面は限定的なものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0053】
まず、図1を参照すると、例示的な生体吸収性粒子、ナノ粒子100の図が示されている。ナノ粒子100は、表面110、ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150を含む。脂質140と核酸150はナノ粒子100内で互いに分離して示されているが、脂質140はナノ粒子100内で核酸150と複合化していることが好ましいことが理解される。例示的な実施形態において、ナノ粒子100はサイズが約300nm以下である。別の例示的な実施形態において、ナノ粒子100はサイズが約100nm~約300nmである。最も好ましい実施形態において、ナノ粒子100はサイズが約200nm~約300nmである。ナノ粒子100が本明細書で示され、説明されているが、本開示は、約300nmより大きいサイズ、例えば約500nm、750nm、1000nm(1μm)又はそれ以上のマイクロ粒子にも関する。また、ナノ粒子100は、中性又は中性に近い電荷、例えば、約-20mv~約+20mvのゼータ電位を有してよい。あるいは、ナノ粒子100は、約-10mv~約+10mvのゼータ電位を有してよい。好ましくは、中性又は中性に近いナノ粒子100は、約0mvのゼータ電位を有してよい。
【0054】
図1はナノ粒子100の表現にすぎず、ポリマーマトリックス120内の異種特徴としての脂質140及び核酸150の描写は、説明目的のみであることに留意されたい。ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150は、完全に又は部分的に均質であることができる。あるいは、ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150は、完全に又は部分的に不均質であることができる。ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150は、完全に又は部分的にエマルジョンであることができる。ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150は、完全に又は部分的にサスペンションであることができる。ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150は、当業者によって理解され、認識されるような完全に又は部分的に他の任意の混合物の形態であることができる。さらに、ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150は、任意の物質状態であることができる。例えば、核酸150は、ポリマーマトリックス120(例えば、固体ポリマーマトリックス)内にカプセル化された固体又は液体であることができる。ポリマーマトリックス120、脂質140及び核酸150のそれぞれについては、以下でさらに説明する。
【0055】
限定されない実施形態において、ナノ粒子100のポリマーマトリックス120は、生体吸収性又は生分解性ポリマーである。ポリマーマトリックス120は、親水性マトリックスよりも分解が遅いように、本質的に疎水性であることができる。ポリマーマトリックス120は、また、炎症を最小限に抑えるために低い酸分解を示すことができる。1つの実施形態において、ポリマーマトリックス120は、トリメチレンカーボネート(TMC)ベースのポリマー、例えば、TMCとポリ乳酸(PLA)とのコポリマー(以下、「PLA:TMC」)であることができる。PLA:TMCコポリマーは、例えば、TMCモノマーを、乳酸などの適切なコモノマー、例えばL-乳酸コモノマーと組み合わせてポリ(L,乳酸-TMC)(以下、「L-PLA:TMC」)を生成する、D-乳酸コモノマーと組み合わせてポリ(D,乳酸-TMC)(以下、「D-PLA:TMC」)を生成する、L-乳酸及びD-乳酸とTMCのコモノマーと組み合わせてポリ(DL,乳酸-TMC) (以下、「D,L-PLA:TMC」)を生成するなど、当該技術分野で周知の方法を使用して合成することができる。PLA:TMCコポリマーは、D-PLA/TMCの質量比が55%/45%(55:45)又は75%/25%(75:25)、L-PLA/TMCの質量比が55%/45%(55:45)又は75%/25%(75:25)、D,L-PLA/TMCの質量比が50%/50%(50:50)又は75%/25%(75:25)であることができる(すべて質量基準)。幾つかの態様において、PLA:TMCコポリマーは、45~60wt%のPLA及び40~55wt%のTMCを含むことができる。別の実施形態において、ポリマーマトリックス120は、PLA、TMC及びポリエチレングリコール(PEG)などの別のポリマーの三元共重合体(以下、「PLA:TMC:PEG」)を含むことができる。さらに別の実施形態において、ポリマーマトリックス120は、PLA及びポリグリコール酸(PGA)コモノマーを含むポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)コポリマーを含むことができる。
【0056】
使用されるポリマーの種類、使用されるポリマーの比率、及びポリマーマトリックス120の製造方法はすべて、ポリマーマトリックス120の特性を調整するために変更されうる。このような特性としては、ポリマーマトリックス120が分解し又は核酸150を放出する能力、ポリマーマトリックス120に対するpHの影響、ナノ粒子100のサイズ、ナノ粒子100に装填される脂質140及び核酸150の量、ナノ粒子100の物理的特性(例えば、密度、融点、ガラス転移温度、弾性率など)、及びナノ粒子100の化学的特性(例えば、分子量、極性、電荷など)を挙げることができる。1つの実施形態において、ポリマーマトリックス120は、患者の消化管内で分解するように製剤化される。特に、ポリマーマトリックス120は、患者の結腸内で分解するように製剤化されうる。
【0057】
1つの実施形態において、ナノ粒子100の脂質140はカチオン性脂質塩である。特に、脂質140は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩(DOTAP)又は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTMA)であることができる。他の実施形態において、任意の脂質140は使用されうる。ナノ粒子100には、約10wt%~約40wt%の脂質140又は約20wt%~約30wt%の脂質140が装填されうるが、ナノ粒子100に装填される脂質140の量は、サイズ、核酸150の装填及び/又は放出、電荷、ゼータ電位などのナノ粒子100の特性を調整するために変更されうる。脂質140の装填は、ポリマーマトリックス120の量に対する比率として表されることができる。ナノ粒子100には、脂質140/ポリマーマトリックス120の質量比が約1:4となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/ポリマーマトリックス120の質量比が約1:1となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/ポリマーマトリックス120の質量比が約1:2となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/ポリマーマトリックス120の質量比が約3:4となるように脂質140が装填されうる。脂質140の装填量は、核酸150の量に対する比率として表すこともできる。ナノ粒子100には、脂質140/核酸150の質量比が約1:1となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/核酸150の質量比が約2:1となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/核酸150の質量比が約5:4となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/核酸150の質量比が約7:4となるように脂質140が装填されうる。ナノ粒子100には、脂質140/核酸150の質量比が約3:2となるように脂質140が装填されうる。脂質140の装填により、ナノ粒子100の特性をより細かく調整することができる。一般に、ナノ粒子100に装填される脂質140の量の増加は、核酸150の装填量の増加及びゼータ電位の増加に対応する(図7~8)。ナノ粒子100は、典型的に、中性又はわずかに負の電荷を持つことが望ましいが、これはナノ粒子100内の脂質140の装填量及び種類によって変更することができる。
【0058】
ナノ粒子100の核酸150は短鎖ヌクレオチドを含む。幾つかの実施形態において、核酸150はオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、短いDNA及び/又はRNA分子、及び/又はオリゴマーであり、疾患の治療、遺伝子検査及び研究において幅広い用途がある。オリゴヌクレオチドを治療薬として使用することは、遺伝子から転写されたmRNAに結合するか、又は標的遺伝子に直接結合するかのいずれかによって、配列特異的な方法でタンパク質合成の基本機構に干渉する能力に依存している。オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であることができる。ASOは、遺伝子発現を制御し、炎症性疾患及び腫瘍性疾患を治療するために使用することができる。
【0059】
オリゴヌクレオチドは、分子全体を構成するヌクレオチド残基の配列及び数によって特性化される。分子を構成するDNA及び/又はRNAヌクレオチド単位の数は、通常、オリゴヌクレオチドの長さを表す。例えば、10ヌクレオチド又は塩基のオリゴヌクレオチドは、「10マー」オリゴヌクレオチドである。しばしば、バックボーン又は糖環の化学修飾は、例えばヌクレアーゼ耐性又は標的に対する特異性を高めるために行われる。
【0060】
生体吸収性粒子を作成するために使用される超音波処理工程中に核酸が剪断されるのを避けるために、75ヌクレオチド未満の核酸が好ましい。さらに好ましくは、核酸は40ヌクレオチド未満である。
【0061】
ナノ粒子100には、少なくとも5wt%の核酸150、約5wt%、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%又はそれ以上の核酸150が装填されうるが、この量はナノ粒子100の特性を調整するために変更されうる。
【0062】
ナノ粒子100は、患者の消化管内で分解し、医療処置のために核酸150を放出するように構成される。1つの例において、ナノ粒子100は患者の結腸内で吸収/分解されるように構成されており、したがって核酸150は結腸内に直接デリバリーされ、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)を治療することができる。さらに、ナノ粒子100は、患者の任意の臓器内又は消化管(胃、腸など)の任意の地点で分解され、吸収され、又は活性剤を放出するように構成されうる。図示した実施形態において、ナノ粒子100には炎症性腸疾患の治療に適した核酸150が装填されているが、他の実施形態において、ナノ粒子100には、限定するわけではないが、心臓血管疾患、高血圧、慢性心不全、糖尿病、パーキンソン病、前立腺癌及び慢性腎臓病を含む、多種多様な医療問題の治療に適した核酸150又は任意の有効成分又は薬剤が装填されうる。
【0063】
次に図2を参照すると、別の例示的なナノ粒子100’が示されている。図2のナノ粒子100’は、図1のナノ粒子100と類似しており、本明細書で説明されている点を除き、同様の参照番号は同様の要素を示している。図2に示すように、ナノ粒子100’は、表面ポリマー170’も含みうる。1つの実施形態において、表面ポリマー170’は、ナノ粒子100’の少なくとも表面110’に共有結合している。表面ポリマー170’の非限定的な例は、PLAとポリエチレングリコール(PEG)とのコポリマーである。PEGが表面ポリマー170’として使用されるときに(単独で、又はコポリマーとして)、表面110’は「PEG化」されていると説明されうる。表面ポリマー170’は、表面ポリマー170’の物理的ブレンドの存在下でナノ粒子100’を形成することによって、又は表面ポリマー170’とポリマーマトリックス120’を含む三元共重合体を形成することによって、ナノ粒子100’の表面110’に付加することができる。さらに、表面ポリマー170’は、ナノ粒子100’上に位置するカップリング基を介して表面 110’に付加することができる。このようなカップリング基の非限定的な例としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、スクシンイミジル活性エステル、及びNH2-PEGが挙げられる。他の実施形態において、表面ポリマー170’は、ナノ粒子100’が製造された後に表面110’に付加することができる。表面ポリマー170’は、ナノ粒子100’の移動、ナノ粒子100’の生体吸収、ナノ粒子100’の分解、又はナノ粒子100’の物理的特性又は化学的特性の変更を補助することができる。各ナノ粒子100’は、少なくとも約1wt%、少なくとも約5wt%、少なくとも約10wt%、少なくとも約15wt%、又は少なくとも約20wt%の表面ポリマー170’を含むことができる。幾つかの実施形態において、各ナノ粒子は、約1wt%~約20wt%、約1wt%~約15wt%、約1wt%~約10wt%、約5wt%~約20wt%、約5wt%~約15wt%、又は約5wt%~約10wt%で含むことができる。
【0064】
ここで図3を参照すると、図1のナノ粒子100を製造する方法300が示されている。製造方法300には、適切な溶媒中に構造ポリマーマトリックス120及び脂質塩140を溶解すること310、核酸150を添加して混合物を超音波処理して油中水型エマルジョンを生成すること320、ポリビニルアルコールなどの水溶液を添加すること330、得られた混合物を超音波処理して油中水中油中水型エマルジョンを生成すること340、水を添加すること350、乾燥、遠心分離又は別の適切な方法によってナノ粒子100を収集すること360、及び、ナノ粒子100を洗浄すること370を含む。この方法はナノ粒子100を製造する1つの方法を示しているが、方法300に、油中水型エマルジョンを数時間ゆっくり振盪すること、水を添加した350の後、二重エマルジョンを一晩撹拌すること、洗浄370の後にナノ粒子100を水中に分散すること、及び/又は洗浄370の後にナノ粒子100を凍結乾燥するなどを含む追加の工程を加えることができる。溶解工程310は、ポリマーマトリックス120及び脂質140を効果的に溶解できる任意の溶媒、例えば、限定するわけではないが、塩化メチレンを使用して完了することができる。超音波処理工程320、340は、氷浴上で行うことができる。他の実施形態において、超音波処理は、様々な温度で、様々な時間にわたって、様々な振幅で行うことができる。製造方法300の実施形態については、例7を参照されたい。ナノ粒子100が製造されると、当該技術分野で知られているように、そして後の実施例で説明するように、ナノ粒子を分析することができる。
【0065】
ここで図4を参照すると、図2のナノ粒子100’の製造方法300’は部分的に示されている。図4に示される製造方法300’は、図3の製造方法300と類似しており、本明細書で説明されているものを除き、同様の参照番号は同様の要素を特定している。図4に示されるように、表面ポリマー170’は、溶解310’中にポリマーマトリックス120’及び脂質塩140’に付加される。
【0066】
ここで図5を参照すると、治療方法400が示されている。この治療方法400は、図1のナノ粒子100に関して説明されているが、この治療方法400は、図2のナノ粒子100’にも同様に適用可能である。治療方法400は、患者にナノ粒子100を投与すること410、ここで、ポリマーマトリックス120は患者内で分解し420、続いてナノ粒子100から患者に核酸430を放出すること430を含む。ナノ粒子100は、丸薬、錠剤又は溶液を介して経口投与されるか410、又は注射によって投与される410ことができる。経口投与される場合に、ナノ粒子100は、消化管内の点又は特定の領域で分解するカプセル(図示せず)内に最初に配置されうる。1つの実施形態において、カプセルは、pHの変化に応じてカプセルが分解できるように腸溶性コーティングを有する。
【0067】
ナノ粒子100は、ポリマーマトリックス120、脂質140及び/又は核酸150が体内に吸収されるように、生体吸収性となるように構成されている。吸収の1つの可能な方法は、細胞内での飲作用によるものである。飲作用において、細胞膜が伸びて細胞外物質の周囲に折り畳まれ、内部化された小胞を形成するパウチを形成する。小胞は最終的にリソソームと融合し、そこで内容物 (この場合はナノ粒子100)が消化される。このようにして、ポリマーマトリックス120は、細胞の内部消化プロセスを通じて消化管内の細胞内で分解でき、その後、核酸150が細胞にデリバリーされる。このようにして、核酸150を患者の標的領域にデリバリーして、過敏性腸症候群、心血管疾患、高血圧、慢性心不全、糖尿病、パーキンソン病、前立腺癌又は慢性腎臓病などの様々な病気を治療することができる。
【0068】
図1~2に示されるナノ粒子100、100’及び図3~5に示される方法は、デバイス/方法の様々な特徴の例として提供されており、これらの図示された特徴の組み合わせは明らかに本発明の範囲内であるが、その例及びその説明は、本明細書で提供される発明概念が、より少ない特徴、追加の特徴又は代替の特徴から、図1~5に示される特徴の1つ以上に限定されることを示唆するものではない。例えば、様々な実施形態において、図5に示される方法の工程は、図3を参照して説明した工程を含むことができる。逆もまた真であることも理解されたい。さらに、図1に示される1つ以上の構成要素を、図2に示される構成要素に加えて、又は構成要素の代替として使用することができる。
【0069】
試験方法
特定の方法及び装置が以下に記載されているが、当業者によって適切であると判断される他の方法又は装置を代わりに使用してもよいことを理解されたい。
【0070】
固有粘度
固有粘度(IV)は、抽出溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を使用して、Cannon MiniPV-HX自動粘度計を使用して測定された。
【0071】
ナノ粒子サイズ
ナノ粒子サイズは、マルチアングル光散乱モードでUltrasizer (Marlven Panalytical) を使用して測定された。
【0072】
電荷
ナノ粒子分散体のゼータ電位は、マルチアングル光散乱モードでUltrasizer (Marlven Panalytical)を使用して測定された。
【0073】
オリゴヌクレオチドの放出
ナノ粒子から放出されるオリゴヌクレオチドの量及び速度は、例9で詳述されるようにゲル電気泳動によって測定された。
【0074】
PEG密度特性
ナノ粒子表面上のPEG含有量は、例21で詳述したようにUVアッセイによって測定された。
【実施例
【0075】

ポリマー合成
例1~5で特定される生体吸収性ポリマーは、「吸収性DL-ラクチドトリメチレンカーボネートコポリエステルの分析及び特性」、Journal of Material Science: Materials in Medicine 4(1993) pp. 381-88で説明されている方法に従って合成された。
【0076】
例1:L-PLA:TMCコポリマー特性
本例では、L-PLA:TMCの比率が75:25のコポリマーについて説明している。表1は、精製サンプルの形のこの例の組成物の特性データを示している。精製サンプルを得るために、L-PLA:TMCのコポリマーをクロロホルム(CHCl3)に2~5wt%で溶解し、10倍イソプロピルアルコール(IPA)で沈殿させ、次いで、真空乾燥した。この例において、IV (HFIP)=1.349dL/gであり、ポリマーのガラス転移温度は32.95℃と決定された。
【0077】
例2: D,L-PLA:TMC-PEG5Kコポリマーの特性化
本例では、86.4:8.7:4.9の比率のコポリマーD,L-PLA:TMC-PEG5Kについて説明する。表1は、この組成物の特性データを示す。この例では、IV (HFIP)=1.3dL/gであり、ポリマーのガラス転移温度は31.7℃と決定された。
【0078】
例3: D,L-PLA:TMC-PEG5Kコポリマーの特性化
本例では、73.4:21.8:4.8の比率のコポリマーD,L-PLA:TMC-PEG5Kについて説明する。表1は、この組成物の特性データを示す。この例において、IV (HFIP)=1.2dL/gであり、ポリマーのガラス転移温度は20.4℃と決定された。
【0079】
例4: D,L-PLA:TMC-PEG5Kコポリマーの特性化
本例では、82:8:10の比率のコポリマーD,L-PLA:TMC-PEG5Kについて説明する。表1に、この組成物の特性データを示す。この例において、IV (HFIP)=1.0dL/gであり、ポリマーのガラス転移温度は26.2℃と決定された。
【0080】
例5:D,L-PLA:TMC―PEG10Kコポリマーの特性化
本例では、86.5:8.5:5の比率のコポリマーD,L-PLA:TMC-PEG10Kについて説明する。表1は、この組成物の特性データを示す。この例において、IV(HFIP)=1.4dL/gであり、ポリマーのガラス転移温度は34.5℃と決定された。
【表1】
【0081】
例6:オリゴヌクレオチドの説明
本例は、ナノ粒子カプセル化の例で利用されるオリゴヌクレオチドについて説明する。
【0082】
ナノ粒子カプセル化に使用される「オリゴ-1」と呼ばれるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの両端に5ヌクレオチドの2'O-メチル化が施された20マーのオリゴヌクレオチドである。
【0083】
ナノ粒子カプセル化に使用される「オリゴ-2」と呼ばれるオリゴヌクレオチドは、メチル化されていないC*G*A*C*G*C*C*C*C*T*C*T*T*C*C*C*C*G*C*T*Gであり、星印はホスホロチオエート結合を示す。
【0084】
ナノ粒子のカプセル化に使用される「オリゴ-3」と呼ばれるオリゴヌクレオチドは、mC*mG*mA*mC*mG*C*C*C*C*T*C*T*T*C*C*C*mC*mG*mC*T*mGであり、メチル化は「m」で示され、星印はホスホロチオエート結合を示す。
【0085】
例7:低レベルの脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、本明細書に記載のように、低レベルの脂質塩DOTAP、具体的には19wt%の脂質塩DOTAPと1:1の比率の脂質塩DOTAP/オリゴ-1の存在下で、L-PLA:TMCコポリマーナノ粒子中にオリゴ-1をカプセル化することを示している。
【0086】
ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC 75:25(「LT-75」)ポリマー(例1に記載のとおり)及び50mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-1水溶液(DNase/RNaseフリー蒸留水、Invitrogen)0.5mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。混合物を、1/4インチのテーパープローブを備えたBranson SXF150超音波発生装置を使用して、氷水浴上で1分間超音波処理した。超音波処理には、振幅45%の連続モードを使用した。油中水型(W/O)エマルジョンを、100rpm/分の速度で一晩シェーカーに置いた。分離した混合物を氷水上で再度1分間超音波処理し、良好な分散体を生成した。次に、約15mLの5%ポリビニルアルコール (Aldrich、Mowiol 4-88)水溶液を分散体に加えた。得られた混合物を、同じ超音波発生器及びプローブを使用して氷水浴上で2分間超音波処理した。超音波処理には45%の振幅で連続モードを使用し、水中油型エマルジョンを生成した。次に、500rpmで磁気撹拌しながら、230mLの脱イオン水をエマルジョンに加えた。エマルジョンを室温で一晩撹拌し、塩化メチレンを除去した。これにより硬化したナノ粒子が得られ、これを4℃で30分間5000rpmで遠心分離して収集した (Beckman-Coulter Avanti-J15R 遠心分離機)。ナノ粒子を0.2wt%のポリビニルアルコール溶液中に再分散し、再度遠心分離して残留化学物質を除去した。上澄み液は廃棄した。洗浄したナノ粒子を脱イオン水10mLに分散させた。分散させたナノ粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。20,000倍で撮影した凍結乾燥したナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図13に示す。ナノ粒子は球形であり、単一であると決定された。
【0087】
例8:例7のナノ粒子のサイズ及び電荷の特性評価
本例は、例7に従って形成されたナノ粒子のサイズ及びゼータ電位の特性評価を示す。
【0088】
例7で説明したナノ粒子分散体を、試験前に脱イオン水で5~10倍に希釈した。ナノ粒子分散体のサイズ及びゼータ電位の特性評価は、Zetasizer Ultra (Malvern Panalytical、Malvern 英国)を使用した動的光散乱を利用して行った。結果を表2にまとめる。結果は図6にも示されており、ナノ粒子の直径(サイズとも呼ばれる)とナノ粒子に装填された脂質のレベルとの関係を示している。図8は、ゼータ電位とナノ粒子に装填された脂質のレベルとの関係を示している。
【0089】
例9:例7のナノ粒子のオリゴヌクレオチド装填特性評価
本例は、ナノ粒子のオリゴヌクレオチド装填の特性評価アッセイについて説明する。結果を表2及び図7にまとめる。
【0090】
ナノ粒子を計量し、1mLのジメチルスルホキシド(Sigma Aldrich)中に溶解した。ナノ粒子/ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を37℃の水浴で2時間インキュベートし、ナノ粒子を完全に溶解させた。オリゴヌクレオチドを脂質塩から脱複合化するために、200μLのDMSO/ナノ粒子溶液を、ヌクレアーゼフリーの脱イオン水(Invitrogen)中の100mg/mLヘパリン(Sigma Aldrich)及び100mMオクチルB-D-ガラクトシド(Sigma Alrdich)溶液500μLに加えた。溶液を室温で5分間ボルテックスし、室温で30分間シェーカーテーブルに置き、さらに5分間ボルテックスした後に、電気泳動ゲルに流して定量化した。電気泳動用に、2つのオリゴヌクレオチド標準を、ヌクレアーゼフリー水(Invitrogen)でそれぞれ2ng/μL及び1ng/μLの濃度で調製した。オリゴヌクレオチド標準溶液には、試薬に起因する蛍光を考慮に入れるために、ナノ粒子サンプルに同じ濃度のヘパリン及びオクチルB-D-ガラクトシドが含まれている。各サンプル又は標準の10μLをマイクロ遠心管に入れた。2μLの6X DNA オレンジローディングダイ(Invitrogen)を各サンプルに加え、よく混ぜた。各混合物の12μLすべてを、1X TBEバッファー中の10ウェルの4~20%TBEゲル (Invitrogen)のウェルに加えた。ゲルを250Vで25分間試験した。ゲルを取り出し、1X Sybr Gold (1X TBEバッファーで希釈した50,000Xストック、Invitrogen)で20分間、穏やかに揺すりながら染色した。ゲルを、BioRad Gel Doc システムでImage Readyソフトウェア(Biorad)を使用して画像化した。Image Readyソフトウェア(Biorad)の標準を使用して標準曲線を作成し、標準曲線から未知のサンプルの濃度を決定した。結果を表2にまとめ、図7は代表的な試験を示しており、核酸の装填量(wt%)とナノ粒子に装填された脂質のレベルとの関係を示している。
【0091】
例10:中レベルの脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、本明細書に記載のとおりの、中レベルの脂質塩DOTAP、具体的には26wt%の脂質塩DOTAP及び3:2の脂質塩DOTAP/オリゴ-1の比の存在下でのL-PLA:TMCコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1のカプセル化を示す。
【0092】
ナノ粒子は、約220mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を8mLの塩化メチレンに室温で溶解することによって調製した。130mg/mLのオリゴ-1水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)0.5mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。例7で説明したのと同じ手順に従ってナノ粒子を作製し、洗浄した。洗浄したナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散させた。分散したナノ粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0093】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチド装填量を例9で説明したように測定した。結果を表2にまとめる。代表的な試験を図6~8に示す。
【0094】
例11:高レベルの脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、本明細書に記載のとおりの、高レベルの脂質塩DOTAP、具体的には32wt%の脂質塩DOTAP及び2:1の脂質塩DOTAP/オリゴ-1の比の存在下でのL-PLA:TMCコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1のカプセル化を示す。
【0095】
ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を室温で6mLの塩化メチレンに溶解することによって調製した。100mg/mLのオリゴ-1水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)0.5mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。ナノ粒子を、例7で説明したのと同じ手順に従って作成及び洗浄した。洗浄したナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散させた。分散したナノ粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0096】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチド装填量を例9で説明したように測定した。結果を表2にまとめる。代表的な試験を図6~8に示す。
【0097】
例12:低レベルの脂質塩DOTMAを含むL-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、本明細書に記載のとおりの低レベルの脂質塩DOTMAの存在下でのL-PLA:TMCコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1のカプセル化を示す。
【0098】
ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)及び50mgの脂質塩DOTMA(1,2-ジ-O―オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド塩 Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。0.5mLの100mg/mLのオリゴ-1水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)をポリマー/DOTMA油溶液にピペットで入れた。ナノ粒子を例7で説明したのと同じ手順に従って製造及び洗浄した。洗浄されたナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散した。分散されたナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0099】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を、例9で説明したように測定した。結果を表2にまとめている。代表的な試験を図6~8に示す。
【0100】
例13:高レベルの脂質塩DOTMAを含むL-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、本明細書に記載のとおりの高レベルの脂質塩DOTMAの存在下でのL-PLA:TMCコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1のカプセル化を示す。
【0101】
ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTMA(1,2-ジ-O―オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩 Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-1水溶液(DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。ナノ粒子を例7に記載したものと同じ手順に従って作製及び洗浄した。洗浄したナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散させた。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0102】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8に記載のとおり測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を例9に記載のとおり測定した。結果を表2にまとめる。代表的な試験を図6~8に示す。
【0103】
例14:低レベルの脂質塩DOTAPを含むPLGAコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、比較として低レベルの脂質塩DOTAPの存在下でのPLGAコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1のカプセル化を示す。
【0104】
ナノ粒子は、約160mgのPLGAポリマー(Resomer(登録商標) RG 756 S、ポリ (D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、Evonik Industries、ドイツから購入)及び50mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩 Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-1水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)0.5mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。ナノ粒子を例7で説明したのと同じ手順に従って製造及び洗浄した。洗浄されたナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散させた。分散された粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0105】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を例9で説明したように測定した。結果を表2にまとめている。
【0106】
例15:高レベルの脂質塩DOTAPを含むPLGAコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、比較として高レベルの脂質塩DOTAPの存在下でのPLGAコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1のカプセル化を示す。
【0107】
ナノ粒子は、約160mgのPLGAポリマー(Resomer(登録商標) RG 756 S、ポリ (D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、Evonik Industries、ドイツから購入)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100 mg/mLのオリゴ-1水溶液(DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。ナノ粒子を例7で説明したのと同じ手順に従って作製及び洗浄した。洗浄したナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散させた。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0108】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8に記載のとおり測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を例9に記載のとおり測定した。結果を表2にまとめる。代表的な試験を図6~8に示す。
【表2】
【0109】
例16:オリゴヌクレオチドの放出
pH7及びpH4でのカプセル化されたオリゴヌクレオチドの放出、及び結果の概要を図9~10に示し、放出された核酸の量を、本明細書で説明したように、理論的な装填量のパーセンテージ及びインキュベーション時間の関数として示している。
【0110】
pH7でカプセル化されたオリゴヌクレオチドのバースト放出があるかどうかを決定するために、例11に従って作成された1mg/mLのオリゴヌクレオチドナノ粒子分散体1mLを、10%ウシ胎児血清を添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で、37℃で30分間、1時間、4時間又は24時間の時点でインキュベートした。分析用のサンプルを、比較のために2つの方法で収集した。第一の方法では、インキュベートしたサンプルを試験管から直接取り出し、例9で説明したように電気泳動ゲル(実線)で泳動させた。この方法では、ナノ粒子はゲルに入るには大きすぎること、及びゲル中に検出された量はアッセイで放出された「遊離」オリゴヌクレオチドのみであることを考慮に入れている。第二の方法では、インキュベートしたサンプルを4℃で1時間、10,000rpm (Beckman Coulter)で遠心分離し、ナノ粒子を「遊離」オリゴヌクレオチド(破線)から分離した。次に、遠心分離サンプルの上清を電気泳動ゲルで泳動させた。これら2つの方法を使用して、いずれかの方法が力又は電流によってオリゴヌクレオチドをナノ粒子から人工的に分離しているかどうかを決定した。
【0111】
pH4でのカプセル化されたオリゴヌクレオチドの放出を確認するために、例11に従って作製した1mg/mLオリゴヌクレオチドナノ粒子分散体1mLを、pH4のリン酸クエン酸緩衝液中でインキュベートした。インキュベーション及びゲル電気泳動を含む残りの分析は、pH7サンプルと同じである。
【0112】
例17:脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMC及びPLA―PEGコポリマー中のオリゴ-1のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPLA ―TMC及びPLA―PEG、2K~5Kコポリマーナノ粒子へのオリゴ-1オリゴヌクレオチドのカプセル化を示す。
【0113】
ナノ粒子は、約120mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)、40mgのPLA―PEGコポリマー(Sigma、メトキシポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(D,L-ラクチド)、Mw=2K~5K)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解することによって調製した。100mg/mLのオリゴ-1オリゴヌクレオチド水溶液(DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。混合物を、1/4インチのテーパープローブを備えた Branson SXF150 超音波処理器を使用して、氷水浴で1分間超音波処理した。超音波処理には、振幅45%の連続モードを使用した。油中水型(W/O)エマルジョンを100rpm/分の速度でシェーカーに一晩置いた。分離した混合物を氷水で1分間再度超音波処理し、良好な分散体を生成した。
【0114】
次に、0.5wt/v%のコール酸(Sigma)水溶液約15mLを分散体に加えた。得られた混合物を、同じ超音波発生器とプローブを使用して氷水浴で1分間超音波処理した。超音波処理には、振幅45%の連続モードを使用し、水中油型エマルジョンを生成した。さらに、500rpmで磁気撹拌しながら、脱イオン水230mLをエマルジョンに加えた。エマルジョンを室温で一晩撹拌し、塩化メチレンを除去した。その結果、硬化したナノ粒子が得られ、これを4℃で30分間5000rpmの遠心分離(Beckman Coulter 遠心分離機)によって収集した。ナノ粒子を脱イオン水に再分散し、再度遠心分離して残留化学物質を除去した。上澄み液を廃棄した。洗浄したナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散した。分散したナノ粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を凍結乾燥した。
【0115】
ナノ粒子のサイズとゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を例9で説明したように測定した。結果を表4にまとめる。
【0116】
例18:接線流ろ過システムを使用した粒子の洗浄
本例は、粒子の凝固を起こさずにナノ粒子を洗浄するために使用される洗浄プロセスを示している。
【0117】
ここで、ナノ粒子エマルジョンを洗浄し濃縮するために、接線流ろ過技術を使用する。このシステムでは、膜モジュール MIDIKROS 20CM 500K MPES 0.5MM FLL X FLL、Repligen Corporation (マサチューセッツ州ウォルサム)、製品 ID: D02-E500-05-N、mPES 膜、500 kD、20 cmを備えたPall Corporation (ニューヨーク州ポートワシントン) の Minimate EVO システム、製品 ID: OAPMPUNV を使用する。粒子エマルジョンは、最初に400mLから30mLに濃縮される。次に、濃縮されたエマルジョンに70mLの脱イオン水を攪拌下で加える。エマルジョンを、再び30mLに濃縮する。このプロセスを2回繰り返す。3回目には、エマルジョンを100mLから約15mLに濃縮する。次に、洗浄された粒子エマルジョンを、清潔な遠心分離管にポンプで送る。
【0118】
例19:脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMC中のオリゴ-2ナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのオリゴ-2オリゴヌクレオチドのPLA-TMCコポリマーナノ粒子へのカプセル化を示す。
【0119】
ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-2オリゴヌクレオチド水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。混合物を、1/4インチのテーパープローブを装備したBranson SXF150 超音波処理機を使用して、氷水浴上で1分間超音波処理した。超音波処理には、振幅C45%で連続モードを使用した。油中水型(W/O)エマルジョンを100rpm/分の速度で一晩シェーカーに置いた。分離された混合物を再度氷水で1分間超音波処理して、良好な分散体を生成した。次に、約15mLの0.5wt/v%コール酸(Sigma)水溶液を分散体に加えた。得られた混合物を、同じ超音波処理機とプローブを使用して氷水浴上で1分間超音波処理した。超音波処理には振幅45%で連続モードを使用し、水中油型エマルジョンを作成した。さらに、500rpmで磁気撹拌しながらエマルジョンに脱イオン水230mLを加えた。エマルジョンを室温で一晩撹拌し、塩化メチレンを除去した。この結果、硬化したナノ粒子が得られ、例18で説明した方法を使用して洗浄した。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体は、粒子及びトレハロースの質量比が1:10のトレハロース(Sigma)と、5mMヒスチジンバッファーの存在下で粒子分散体中pH4.0で凍結乾燥した。
【0120】
凍結乾燥した粒子を脱イオン水とPBSの両方で再構成した。脱イオン水及びPBSのどちらにおいても、再構成された分散体に凝集は見られなかった。粒子分布を図11に示した。
【0121】
洗浄及び再構成後のナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を例9で説明したように測定した。結果を表4にまとめる。
【0122】
例20:脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMC中のオリゴ-3のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPLA―TMCコポリマーナノ粒子へのオリゴ-3オリゴヌクレオチドのカプセル化を示す。
【0123】
ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC75:25ポリマー(例1に記載のとおり)、100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-3オリゴヌクレオチド水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。混合物を、1/4インチのテーパープローブを備えたBranson SXF150 超音波発生装置を使用して、氷水浴上で1分間超音波処理した。超音波処理には、振幅C45%の連続モードを使用した。油中水型(W/O)エマルジョンをシェーカーに置き、100rpm/分の速度で一晩撹拌した。分離した混合物を再度氷水で1分間超音波処理し、良好な分散体を生成した。次に、0.5wt/v%のコール酸(Sigma)水溶液約15mLを分散体に加えた。得られた混合物を、同じ超音波発生器とプローブを使用して氷水浴で1分間超音波処理した。超音波処理には連続モードを使用し、振幅45%で処理して水中油型エマルジョンを生成した。さらに、脱イオン水230mLを、500rpmで磁気撹拌しながらエマルジョンに加えた。エマルジョンを室温で一晩撹拌して、塩化メチレンを除去した。これにより硬化したナノ粒子が得られ、これを例18で説明したとおりの接線流ろ過システムを使用して洗浄した。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を、例19で説明したように凍結乾燥した。
【0124】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を例9で説明したように測定した。結果を表4にまとめている。
【0125】
例21:PLA-TMC-PEG粒子上のPEG表面密度及び被覆率の特性評価
本例では、例2、3及び5のポリマーから作られたナノ粒子の表面上のPEG含有量の特性評価について説明する。
【0126】
PEG化ナノ粒子は、約160mgのL-PLA:TMC-PEG5K 86.4:8.7:4.9ポリマー(例2で説明したとおり)を室温で6mlの塩化メチレンに溶解することによって調製された。次に、約15mLの0.5 wt/v%のコール酸(Sigma)水溶液をポリマー塩化メチレン溶液に加えた。得られた混合物を、同じ超音波発生器とプローブを使用して氷水浴上で1分間超音波処理した。超音波処理には45%の振幅で連続モードを使用し、水中油型エマルジョンを生成した。さらに、500rpmで磁気撹拌しながら、脱イオン水230mLをエマルジョンに加えた。エマルジョンを室温で一晩撹拌して、塩化メチレンを除去した。これにより、例18で説明したとおりの接線流ろ過システムを使用して洗浄された硬化ナノ粒子が得られた。
【0127】
PEG化ナノ粒子は、L-PLA:TMC-PEG5Kポリマー73.4:21.8:4.8(例3に記載のとおり)及びL-PLA:TMC-PEG10Kポリマー86.5:8.5:5(例5に記載のとおり)からも、上記と同じ方法で調製した。PEOとモリブドリン酸の錯形成反応を利用したUVアッセイを使用して、ナノ粒子上のPEG含有量を検出した。PEG濃度を、検量線を使用してブランクと試験溶液の吸光度の差から求めた。Koopalら(「ポリエチレンオキシド分子量が水溶液中の濃度の測定に及ぼす影響」、Talanta、1982年、第29巻、p.495-501)によると、この方法はPEO分子量に依存しない。したがって、検量線は、異なる濃度(10~500μg/mL)の分子量5KのPEGを使用して確立された。ブランクは脱イオン水から得られた。
【0128】
各バッチのナノ粒子の試験PEG含有量を表3に示す。粒子上のPEG含有量はポリマー中の含有量に近く、これは、ほとんどのPEGが粒子の表面にあることを意味する。
【表3】
【0129】
例22: 脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMC-PEGコポリマー中のオリゴ-2のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPLA-TMC-PEGターポリマーナノ粒子へのモデルオリゴ-2オリゴヌクレオチドのカプセル化を示す。
【0130】
ナノ粒子は、約100mgのL-PLA:TMC:PEG73.4:21.8:4.8ターポリマー(例3に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-2水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。例18で説明したのと同じ手順に従ってナノ粒子を作製し、洗浄した。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を、トレハロース(Sigma)の存在下で、粒子/トレハロースの質量比が1:5になるように凍結乾燥した。また、凍結乾燥した粒子を脱イオン水及びPBSで再構成した。脱イオン水及びPBSのどちらでも、粒子の凝集は観察されなかった。
【0131】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を、少し変更を加えて例9で説明したように測定した。粒子を最初にアセトンに分散させ、室温で少なくとも30分間放置した。次に、粒子を溶解するためにDMSOを加えた。DMSOとアセトンの比率は、体積比で4:1である。ゲル電気泳動用に、透明な粒子DMSO/アセトン溶液を得た。ナノ粒子表面のPEG密度を例21で説明したように測定した。予測例28に従って補正することができる。結果を表4にまとめている。
【0132】
例23:脂質塩DOTAPを含むL-PLA:TMC-PEGコポリマー中のオリゴ-3のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPLA-TMC-PEGターポリマーナノ粒子へのモデルオリゴ-3オリゴヌクレオチドのカプセル化を示す。
【0133】
ナノ粒子は、約100mgのL-PLA:TMC:PEG73.4:21.8:4.8ターポリマー(例3に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を室温で6mLの塩化メチレンに溶解することによって調製した。100mg/mLのオリゴ 2 水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。例18で説明したのと同じ手順に従ってナノ粒子を作製し、洗浄した。分散したナノ粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を例22で説明したように凍結乾燥した。
【0134】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を、少し変更を加えて例9で説明したように測定した。粒子は最初にアセトンに分散し、室温で少なくとも30分間置いた。次に、DMSOを加えて粒子を溶解した。DMSO/アセトンの比率は4:1である。ゲル電気泳動用に透明な粒子DMSO/アセトン溶液を得た。ナノ粒子表面上のPEG密度を例21に記載のとおりに測定した。予測例28に従って補正することができる。結果を表4にまとめる。
【0135】
例24:脂質塩DOTMAを含むPEG:L-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-3のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPLA-TMC-PEGターポリマーナノ粒子へのモデルオリゴ-3オリゴヌクレオチドのカプセル化を示す。
【0136】
ナノ粒子は、約100mgのL-PLA:TMC:PEG73.4:21.8:4.8ターポリマー(例3に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTMA(1,2-ジ-O―オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド塩 Avanti Polar Lipids Inc)を室温で6mLの塩化メチレンに溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-2水溶液(DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。例18で説明したのと同じ手順に従ってナノ粒子を作製し、洗浄した。分散したナノ粒子約1mLをサイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を例22で説明したように凍結乾燥した。
【0137】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を、少し変更を加えて例9で説明したように測定した。粒子を最初にアセトンに分散させ、室温で少なくとも30分間放置した。次にDMSOを加えて粒子を溶解した。DMSO/アセトンの比率は体積比で4:1である。ゲル電気泳動用の透明な粒子DMSO/アセトン溶液を得た。ナノ粒子表面のPEG密度を例21で説明したように測定した。予測例28に従って補正されうる。結果を表4にまとめている。
【0138】
例25:脂質塩DOTAPを含むPEG:L-PLA:TMCコポリマー中のオリゴ-2のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPEG―PLA-TMCターポリマーナノ粒子へのオリゴ-2のカプセル化を示す。
【0139】
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPLA-TMC-PEGターポリマーナノ粒子へのモデルオリゴ-2オリゴヌクレオチドのカプセル化を示す。
【0140】
ナノ粒子は、約100mgのL-PLA:TMC:PEG86.5:8.5:5ターポリマー(例5に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を6mLの塩化メチレンに室温で溶解して調製した。100mg/mLのオリゴ-2水溶液(DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。例18に記載したものと同じ手順に従ってナノ粒子を作製し、洗浄した。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を例22に記載のとおり凍結乾燥させた。
【0141】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例8に記載のとおり測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を、若干の変更を加えて例9に記載のとおりに測定した。粒子を最初にアセトンに分散し、室温で少なくとも30分間放置した。次に、粒子を溶解するためにDMSOを加えた。DMSO/アセトンの比率は、体積比で4:1である。ゲル電気泳動用の透明な粒子 DMSO/アセトン溶液を得た。ナノ粒子表面上のPEG密度を例21で説明したように測定した。予測例28に従って補正することができる。結果を表4にまとめている。
【0142】
例26:脂質塩DOTAPを含むPEG:L-PLA:TMC及びLT75コポリマー中のオリゴ-2のナノ粒子
本例は、脂質塩DOTAPの存在下でのPEG-PLA-TMC及びLT75コポリマーナノ粒子へのオリゴ-2のカプセル化を示す。
【0143】
ナノ粒子は、約80mgのL-PLA:TMC:PEG(5K)82:8:10ポリマー(例4に記載のとおり)及び100mgの脂質塩DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物塩、Avanti Polar Lipids Inc)を室温で6mLの塩化メチレンに溶解することによって調製した。100mg/mLのモデルオリゴ-2オリゴヌクレオチド水溶液 (DNase/RNase フリー蒸留水、Invitrogen)1mLをポリマー/DOTAP油溶液にピペットで入れた。ナノ粒子は、例16で説明したのと同じ手順に従って作成及び洗浄した。洗浄したナノ粒子を10mLの脱イオン水に分散した。分散したナノ粒子約1mLを、サイズ及びゼータ電位の特性評価のために取っておいた。残りの分散体を例22で説明したように凍結乾燥した。
【0144】
ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を例7で説明したように測定し、オリゴヌクレオチドの装填量を、少し変更を加えて例9で説明したように測定した。粒子をまずアセトンに分散し、室温で少なくとも30分間放置した。次にDMSOを加えて粒子を溶解した。DMSO/アセトンの比率は4:1である。ゲル電気泳動用の透明な粒子 DMSO/アセトン溶液を得た。ナノ粒子表面上のPEG含有量を例21で説明したように測定した。試験したPEG含有量が高いことは、試薬がオリゴ及び/又は脂質塩と複合化していることを示しており、予測例28に従って補正できる。結果を表4にまとめた。
【表4】
*例17で説明したように、アッセイ開発のばらつきにより含有量が低い
例22、23、24、25及び26で得られたこれらの測定されたPEGwt%値は、予測例28に従って補正できる。
【0145】
例27:ゲル抽出アッセイ
図12は、上記例で説明したとおりのナノ粒子の標準、抽出及び特定の例のゲルアッセイを示している。
【0146】
予測例28:PEG表面密度及び被覆率アッセイのバックグラウンド読み取り値の決定
本例は、PEG表面密度及び被覆率アッセイのバックグラウンド読み取り値を決定して、バックグラウンド読み取り値で初期PEG読み取り値を調整できるようにする方法を示す。バックグラウンド読み取り値は、アッセイでの非特異的結合から生じる可能性があり、したがって、存在しない場合にはPEGで正の値になる。この補正を行うと、PLA-PEG又はPLA-TMC-PEGを用いて生成された粒子のPEG表面密度及び被覆率のより正確な補正値が得られる。バックグラウンド読み取り値は、LT-75、ASO、脂質塩及びPEGなしの粒子に基づいている。
【0147】
オリゴ-2及びDOTAPを含むナノ粒子の場合に、LT-75、オリゴ-2及びDOTAPのナノ粒子を調製し(例19に記載のとおり)、アッセイ(例21に記載のとおり)によってPEG表面密度及び被覆率を分析して、PEGのバックグラウンド読み取り値を決定する。
【0148】
PEG表面密度及び被覆率の補正値を評価するために、バックグラウンド読み取り値で得られた値をPEGを含むナノ粒子から減算する。
【0149】
本出願の発明は、上記で、一般的に及び特定の実施形態に関して説明されている。開示の範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な修正及び変更を加えることができることは当業者に明らかである。したがって、実施形態は、添付の請求項及びその均等の範囲内であれば、本発明の修正及び変更を網羅するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
本出願の発明は、上記で、一般的に及び特定の実施形態に関して説明されている。開示の範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な修正及び変更を加えることができることは当業者に明らかである。したがって、実施形態は、添付の請求項及びその均等の範囲内であれば、本発明の修正及び変更を網羅するものとする。
(態様)
(態様1)
複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子は、
ポリマーマトリックス、
前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、及び、
前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、
を含み、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約1質量パーセントのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む、製剤。
(態様2)
前記複数の生体吸収性粒子は平均粒子サイズが300nm未満である、態様1記載の製剤。
(態様3)
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約5質量パーセントのASOを含む、態様1~2のいずれか1項記載の製剤。
(態様4)
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約10質量パーセントのASOを含む、態様1~3のいずれか1項記載の製剤。
(態様5)
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも約15質量パーセントのASOを含む、態様1~4のいずれか1項記載の製剤。
(態様6)
前記ポリマーマトリックスはトリメチレンカーボネート(TMC)を含む、態様1~5のいずれか1項記載の製剤。
(態様7)
前記ポリマーマトリックスはTMCとポリ乳酸(PLA)とのコポリマーを含む、態様1~6のいずれか1項記載の製剤。
(態様8)
TMC/PLAの比は約25/75である、態様7記載の製剤。
(態様9)
前記ポリマーマトリックスはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)コポリマーを含む、態様1~8のいずれか1項の製剤。
(態様10)
前記生体吸収性粒子のそれぞれの表面に結合した表面ポリマーをさらに含む、態様1~9のいずれか1項記載の製剤。
(態様11)
前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、態様10記載の製剤。
(態様12)
前記生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのPEGを含む、態様11記載の製剤。
(態様13)
前記複数の生体吸収性粒子は、約10質量パーセント~約40質量パーセントのカチオン性脂質を含む、態様1~12のいずれか1項記載の製剤。
(態様14)
前記複数の生体吸収性粒子は、約20質量パーセント~約30質量パーセントのカチオン性脂質を含む、態様1~13のいずれか1項記載の製剤。
(態様15)
前記複数の生体吸収性粒子はナノ粒子を含む、態様1~14のいずれか1項記載の製剤。
(態様16)
前記複数の生体吸収性粒子はマイクロ粒子を含む、態様1~14のいずれか1項記載の製剤。
(態様17)
態様1~16のいずれか1項記載の製剤を患者にデリバリーすること、及び、
前記ポリマーマトリックスが患者内で分解し、患者内で核酸が放出されるのに十分な時間を与えること、
の工程を含む、治療を必要とする患者を治療する方法。
(態様18)
(a)構造ポリマー及びカチオン性脂質を溶媒に溶解すること、
(b)溶解した構造ポリマー及びカチオン性脂質に長さ2~75ヌクレオチドの核酸を添加すること、
(c)前記構造ポリマー、前記カチオン性脂質及び前記核酸の混合物を第一の超音波処理で超音波処理して油中水型エマルジョンを作成すること、
(d)前記油中水型エマルジョンに水溶液を添加すること、
(e)前記油中水型エマルジョンを第二の超音波処理で超音波処理して水中油中水型エマルジョンを生成すること、
(f)前記水中油中水型エマルジョンに水を添加すること、
(g)前記水中油中水型エマルジョンから複数の粒子を収集すること、及び、
(h)前記複数の粒子を洗浄すること,
を含む、生体吸収性粒子の製剤を製造する方法。
(態様19)
前記カチオン性脂質及び前記構造ポリマーを質量比約1:4~約1:1の比率で溶解する、態様18記載の方法。
(態様20)
前記核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、約5質量パーセント~約20質量パーセントで複数の粒子に担持される、態様18又は19記載の方法。
(態様21)
前記第一の超音波処理及び前記第二の超音波処理は氷浴で完了される、態様18~20のいずれか1項記載の方法。
(態様22)
前記水溶液はポリビニルアルコール溶液である、態様18~21のいずれか1項記載の方法。
(態様23)
前記エマルジョンから複数の粒子を収集する工程は遠心分離によって完了される、態様18~22のいずれか1項記載の方法。
(態様24)
油溶液を糖及びバッファーの存在下で凍結乾燥することをさらに含む、態様18~23のいずれか1項記載の方法。
(態様25)
前記糖はトレハロースである、態様24記載の方法。
(態様26)
前記バッファーはヒスチジンである、態様24~25のいずれか1項記載の方法。
(態様27)
(a)患者に複数の粒子をデリバリーすること、ここで、各粒子は、
(i)ポリマーマトリックス、
(ii)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化された長さ2~75のヌクレオチドの核酸、及び、
(iii)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、
を含み、各粒子における前記カチオン性脂質の前記ポリマーマトリックスに対する比は質量比で約1:4~約1:1である、及び、
(b)前記ポリマーマトリックスが患者内で生分解し、前記核酸を放出するのに十分な時間を経過させること、
を含む、治療を必要とする患者を治療する方法。
(態様28)
前記核酸は、前記複数の粒子に約5質量パーセント~約20質量パーセントで装填されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、前記カチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTMA)又は1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン塩化物塩(DOTAP)のいずれかである、態様27記載の方法。
(態様29)
前記ポリマーマトリックスは患者の結腸内で生分解する、態様27又は28記載の方法。
(態様30)
各粒子は、各粒子の表面に表面ポリマーをさらに含み、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、態様27~29のいずれか1項記載の方法。
(態様31)
各粒子は少なくとも5wt%のPEGを含む、態様30記載の方法。
(態様32)
前記複数の粒子はナノ粒子を含む、態様27~31のいずれか1項記載の方法。
(態様33)
患者は、炎症性腸疾患、心血管疾患、高血圧、慢性心不全、糖尿病、パーキンソン病、前立腺癌又は慢性腎臓病を有する、態様27~32のいずれか1項記載の方法。
(態様34)
複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子は、
(a)ポリマーマトリックス、
(b)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化された核酸、
(c)前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、及び,
(d)前記各生体吸収性粒子の表面に結合した表面ポリマー,
を含み、前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記各生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのPEGを含む,製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生体吸収性粒子を含み、各生体吸収性粒子は、
ポリマーマトリックス、
前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、及び、
前記ポリマーマトリックス内にカプセル化されたカチオン性脂質、
を含み、前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも1質量パーセントのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含み、
前記ポリマーマトリックスは、トリメチレンカーボネート(TMC)、TMCとポリ乳酸(PLA)とのコポリマー、またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)コポリマーおよびTMCを含む、製剤。
【請求項2】
前記複数の生体吸収性粒子は平均粒子サイズが300nm未満である、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記複数の生体吸収性粒子は少なくとも5質量パーセントのASOを含む、請求項1~2のいずれか1項記載の製剤。
【請求項4】
TMC/PLAの比は約25/75である、請求項記載の製剤。
【請求項5】
前記生体吸収性粒子のそれぞれの表面に結合した表面ポリマーをさらに含む、請求項1~のいずれか1項記載の製剤。
【請求項6】
前記表面ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項記載の製剤。
【請求項7】
前記複数の生体吸収性粒子は、10質量パーセント~40質量パーセントのカチオン性脂質を含む、請求項1~のいずれか1項記載の製剤。
【請求項8】
前記複数の生体吸収性粒子はナノ粒子を含む、請求項1~のいずれか1項記載の製剤。
【請求項9】
前記複数の生体吸収性粒子はマイクロ粒子を含む、請求項1~のいずれか1項記載の製剤。
【請求項10】
(a)構造ポリマー及びカチオン性脂質を溶媒に溶解すること、
(b)溶解した構造ポリマー及びカチオン性脂質に長さ2~75ヌクレオチドの核酸を添加すること、
(c)前記構造ポリマー、前記カチオン性脂質及び前記核酸の混合物を第一の超音波処理で超音波処理して油中水型エマルジョンを作成すること、
(d)前記油中水型エマルジョンに水溶液を添加すること、
(e)前記油中水型エマルジョンを第二の超音波処理で超音波処理して水中油中水型エマルジョンを生成すること、
(f)前記水中油中水型エマルジョンに水を添加すること、
(g)前記水中油中水型エマルジョンから複数の粒子を収集すること、及び、
(h)前記複数の粒子を洗浄すること,
を含み、
前記構造ポリマーは、トリメチレンカーボネート(TMC)、TMCとポリ乳酸(PLA)とのコポリマー、またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)コポリマーおよびTMCから選択される、生体吸収性粒子の製剤を製造する方法。
【請求項11】
前記カチオン性脂質及び前記構造ポリマーを質量比1:4~1:1の比率で溶解する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5質量パーセント~20質量パーセントで複数の粒子に担持される、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記第一の超音波処理及び前記第二の超音波処理は氷浴で完了される、請求項1011のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液はポリビニルアルコール溶液である、請求項1011のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記エマルジョンから複数の粒子を収集する工程は遠心分離によって完了される、請求項1011のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
油溶液を糖及びバッファーの存在下で凍結乾燥することをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記糖はトレハロースである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記バッファーはヒスチジンである、請求項1617のいずれか1項記載の方法。
【国際調査報告】