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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】光読取り可能コードの読取り
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20250121BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20250121BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250121BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20250121BHJP
   G06V 20/68 20220101ALI20250121BHJP
   B23K 26/00 20140101ALN20250121BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
G06K7/14 017
G06K7/14 082
G06N20/00 130
G06V10/82
G06V20/68
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538178
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2022086139
(87)【国際公開番号】W WO2023117687
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216812.4
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21216923.9
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22156217.6
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・シェファー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ヘッター
(72)【発明者】
【氏名】グレーゴール・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・リュルベルク
【テーマコード(参考)】
4E168
5L096
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168DA23
5L096BA02
5L096BA03
5L096BA18
5L096DA01
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA03
(57)【要約】
本発明は光読取り可能コードを用いた物品のマーキング、及びコードの読取りの技術分野に関する。
本発明は物品の表面に導入されている光読取り可能コードを検出して解釈するための方法、システム及びコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータで実施される方法であって、
対象の第1の画像記録を受け取るステップであって、前記対象は光読取り可能コードを備え、前記光読取り可能コードは前記対象の表面に導入される、ステップと、
前記第1の画像記録に基づいて前記対象を識別するステップと、
前記識別された対象の変換パラメータをデータベースから読み出すステップと、
前記変換パラメータに基づいて前記対象の前記第1の画像記録及び/又は第2の画像記録を変換するステップであって、変換された画像記録が取得される、ステップと、
前記変換された画像記録中で画像化されている前記光読取り可能コードを復号するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記対象は植物製品又は動物製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象は植物製品であり、前記光読取り可能コードは前記植物製品の表皮に導入される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光読取り可能コードは前記対象の前記表面にレーザによって導入されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光コードはバーコード又はマトリックスコードである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光コードは英数字である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は前記第1の画像記録中で画像化されている特徴に基づいて識別される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は訓練された機械学習モデルを用いて識別され、前記機械学習モデルは画像記録を対象に割り当てるように訓練データに基づいて訓練されており、複数の対象の各対象に用いられる前記訓練データはi)前記対象の少なくとも1つの画像記録と、ii)前記画像記録中でいかなる対象が画像化されているかに関する情報とを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記機械学習モデルの前記訓練は、
対象の前記画像記録を前記機械学習モデルに入力するステップと、
前記機械学習モデルから出力データを受け取るステップと、
前記出力データと、前記画像記録中でいかなる対象が画像化されているかに関する前記情報との偏差を損失関数を用いて計算するステップと、
前記偏差を減少させることに関して前記機械学習モデルのパラメータを修正するステップと、
前記訓練された機械学習モデルをデータ記憶媒体に記憶するステップと
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記変換パラメータは経験的に決定されたものであり、前記経験的決定の際、変換された画像記録中の光読取り可能コードを読み取ると、前記変換されていない画像記録中の前記光読取り可能コードを読み取るよりも復号エラーが少なくなる前記変換パラメータが選択されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の画像記録及び/又は前記第2の画像記録を変換するステップは、
前記第1の画像記録及び/又は前記第2の画像記録中で画像化されている前記光読取り可能コードの歪みを低減するステップと、
前記第1の画像記録及び/又は前記第2の画像記録の反射を低減するステップと、
前記光読取り可能コードの周囲に対する、前記第1の画像記録及び/又は前記第2の画像記録中で画像化されている前記光読取り可能コードのコントラストを高めるステップと
のうちの1つ以上を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのプロセッサを備えるシステムであって、前記プロセッサは、
対象の第1の画像記録を受け取ることであって、前記対象は光読取り可能コードを備え、前記光読取り可能コードは前記対象の表面に導入される、ことと、
第1の画像記録中で画像化されている前記対象を識別することと、
前記識別された対象の変換パラメータをデータベースから読み出すことと、
前記変換パラメータに応じて前記対象の前記第1の画像記録及び/又は第2の画像記録を変換することであって、変換された画像記録が取得される、ことと、
前記変換された画像記録中で画像化されている前記光読取り可能コードを復号することと
を行うように構成される、システム。
【請求項14】
コンピュータプログラムが記憶されているデータキャリアを備えるコンピュータプログラムプロダクトであって、前記コンピュータプログラムをコンピュータシステムのメインメモリにロードすることができ、前記コンピュータプログラムは、
対象の第1の画像記録を受け取るステップであって、前記対象は光読取り可能コードを備え、前記光読取り可能コードは前記対象の表面に導入される、ステップと、
前記第1の画像記録に基づいて前記対象を識別するステップと、
前記識別された対象の変換パラメータをデータベースから読み出すステップと、
前記変換パラメータに基づいて前記対象の前記第1の画像記録及び/又は第2の画像記録を変換するステップであって、変換された画像記録が取得される、ステップと、
前記変換された画像記録中で画像化されている前記光読取り可能コードを復号するステップと
を前記コンピュータシステムに実行させる、コンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象に対する光読取り可能コードのマーキング、及びコードの読取りの技術分野に関する。本発明の保護対象は、対象の表面に導入された光読取り可能コードを撮像して解釈するための方法、システム及びコンピュータプログラムプロダクトである。
【背景技術】
【0002】
商品や製品の追跡は経済の多くの領域で重要な役割を果たす。製品及び商品や、その包装及び/又は容器には、これらをサプライチェーンにわたって追跡し、機械によって入出荷製品を撮像することができるように、固有識別子(たとえばシリアル番号)(シリアライゼーション)が設けられる。
【0003】
多くの場合、識別子は光読取り可能な形態、たとえば、バーコード(たとえばEAN-8バーコード)やマトリックスコード(たとえばQRコード(登録商標))の形態で製品及び商品やその包装及び/又は容器に加えられる(たとえば欧州特許出願公開第3640901号を参照)。バーコードやマトリックスコードには、通常、製品や商品の種類や原産地に関する情報を提供するシリアル番号が隠されていることが多い。
【0004】
いくつかの製薬製品の場合には個々の包装に個別にマーキングをすることさえ必要である。いわゆるEU Falsified Medicines Directive 2011/62/EU(FMD)によって改正されたDirective 2001/83/ECの第54a条第1項にしたがって、少なくとも、処方箋の対象となる医療製品には、特に真正性をチェックし、個々のパックを識別することを可能にする個別の認識特徴物(固有識別子と称する)を用いてマーキングする必要がある。
【0005】
植物製品及び動物製品には通常、シリアルコードのみが設けられる。植物製品及び動物製品の場合、通常、マーキングが包装及び/又は容器にたとえばステッカやインプリントの形態で加えられたり取り付けられたりする。
【0006】
場合によっては、植物製品又は動物製品に識別子を直接加えることも行われる。たとえば、欧州連合では、卵に生産者コードが設けられ、生産者コードから、養鶏業であること、卵の原産国、及び卵の生産者を導き出すことができる。果物及び野菜の表皮にもマーキングが施されつつある(たとえばE.Etxeberriaら著、「Anatomical and Morphological Characteristics of Laser Etching Depressions for Fruit Labeling」2006,HortTechnology.16,10.21273/HORTTECH.16.3.0527を参照)。
【0007】
消費者は植物製品及び動物製品の原産地及びサプライチェーンにますます関心を示している。消費者はたとえば、それぞれの製品がどこから来たのか、処理されたか否か、またどのように処理されたのか(たとえば、作物防疫用合成物を用いる)、輸送にどの程度長くかかったのか、輸送中にいかなる状態が優勢だったのか及び/又はこれらに類するものを知ることを望んでいる。
【0008】
欧州特許出願公開第3896629号には植物製品及び動物製品に固有識別子を光読取り可能コードの形態で設けるものが提案されている。消費者がたとえば自身のスマートフォンのカメラによりコードを読み取ることができる。読み取られたコードに基づいて、植物製品又は動物製品に関する様々な情報を消費者に表示することができる。欧州特許出願公開第3896629号には植物製品又は動物製品の表面に光読取り可能コードをたとえばレーザによって導入するものが提案されている。植物製品又は動物製品の表面に導入された光コードのコントラストは周囲の組織に対して低いので、たとえば、ステッカやタグの場合に通常設けられるような、白地に黒色で加えられる光コードよりも読取りが困難である。さらに、異なる対象上に光コードがあると、対象毎に光コードの外観は異なる。たとえば、多くの果物や多くの野菜品種の場合に存在するような曲面に光読取り可能コードがレーザによって加えられる場合、コードの歪みが生じる場合があり、コードの歪みにより読取りが妨げられる。光読取り可能コードを滑らかな表面に加える場合、読取りの際に表面で反射(たとえば、周囲光により生じる反射)が生じ、読取りが妨げられる場合がある。果物及び野菜の表面は均一でない場合があり、たとえばリンゴにはビターピットや斑点がある場合がある。ジャガイモには凹凸がある場合がある。このような不均一性及び凹凸によりコードの読取りが妨げられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3640901号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3896629号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】E.Etxeberriaら著、「Anatomical and Morphological Characteristics of Laser Etching Depressions for Fruit Labeling」2006,HortTechnology.16,10.21273/HORTTECH.16.3.0527
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、対処される課題は、複数の異なる対象、特に複数の植物製品及び動物製品上の光読取り可能コードを、たとえばスマートフォンなどの単純な手段を用いて消費者が確実に読み取ることができる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は独立請求項の保護対象によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項、本明細書及び図面に見られる。
【0013】
本発明の第1の保護対象は、対象の表面に導入された光読取り可能コードを読み取るための、コンピュータで実施される方法であって、
対象の第1の画像記録を受け取るステップと、
第1の画像記録に基づいて対象を識別するステップと、
識別された対象の変換パラメータをデータベースから読み出すステップと、
変換パラメータに基づいて対象の第1の画像記録及び/又は第2の画像記録を変換するステップであって、変換された画像記録が取得される、ステップと、
変換された画像記録中で画像化されている光読取り可能コードを復号するステップと
を備える方法である。
【0014】
本発明のさらなる保護対象は、少なくとも1つのプロセッサを備えるシステムであって、プロセッサは、
対象の第1の画像記録を受け取ることであって、対象は光読取り可能コードを備え、光読取り可能コードは対象の表面に導入される、ことと、
第1の画像記録中で画像化されている対象を識別することと、
識別された対象の変換パラメータをデータベースから読み出すことと、
変換パラメータに応じて対象の第1の画像記録及び/又は第2の画像記録を変換することであって、変換された画像記録が取得される、ことと、
変換された画像記録中で画像化されている光読取り可能コードを復号することと
を行うように構成される、システムである。
【0015】
本発明のさらなる保護対象は、コンピュータプログラムが記憶されているデータキャリアを備えるコンピュータプログラムプロダクトであって、コンピュータプログラムをコンピュータシステムのメインメモリにロードすることができ、コンピュータプログラムは、
対象の第1の画像記録を受け取るステップであって、対象は光読取り可能コードを備え、光読取り可能コードは対象の表面に導入される、ステップと、
第1の画像記録に基づいて対象を識別するステップと、
識別された対象の変換パラメータをデータベースから読み出すステップと、
変換パラメータに基づいて対象の第1の画像記録及び/又は第2の画像記録を変換するステップであって、変換された画像記録が取得される、ステップと、
変換された画像記録中で画像化されている光読取り可能コードを復号するステップと
をコンピュータシステムに実行させる、コンピュータプログラムプロダクトである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】対象の表面に導入された光読取り可能コードの読取りをフローチャートの形態の例として概略的に示す。
図2】本発明に係るシステムを例として概略的に示す。
図3】コンピュータシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の保護対象(システム、方法、コンピュータプログラムプロダクト)を区別せずに本発明をさらに詳細に説明する。さらに言えば、以下の説明は、説明がなされている文脈(システム、方法、コンピュータプログラムプロダクト)に関係なく、本発明のすべての保護対象に同様に適用されるものとする。
【0018】
本明細書又は請求項でステップが所定の順序で記載されている場合、このことは本発明が、記載された順序に限定されることを必ずしも意味しない。さらに言えば、ステップが異なる順序で実行されるか、あるいは互いに並行して実行されることも考えられる。例外は所定のステップが別のステップに基づく場合であり、これによれば、前のステップに基づくステップが次に実行されることが必須になる(ただし、これは個々の場合に明らかになる)。したがって、記載されている順序は本発明の好ましい実施形態である。
【0019】
本発明では光読取り可能コードを読み取る手段が提供される。本明細書では用語「読取り」及び「復号」は同義的に用いられている。
【0020】
用語「光読取り可能コード」は、たとえば、カメラを用いて撮像して英数字に変換することができるマーキングされたものを意味するように理解される。
【0021】
光読取り可能コードの例はバーコード、スタック式コード、合成コード、マトリックスコード、3Dコードである。自動テキスト認識(光学文字認識と称される略称:OCR)によって取り込んで(解釈、読取り)デジタル化することができる英数字も、用語、光読取り可能コードに含まれる。
【0022】
読取り可能コードは、機械で読取り可能なコード、すなわち、機械によって取り込んで処理することができるコードに属する。光読取り可能コードの場合、このような「機械」は通常カメラを備える。
【0023】
カメラは通常、イメージセンサと光学素子とを備える。イメージセンサは光からの二次元画像を電気的手段によって記録するデバイスである。これは通常、半導体を用いたイメージセンサ、たとえば、CCD(CCD=電荷結合素子)やCMOSセンサ(CMOS=相補型金属酸化膜半導体)を含む。イメージセンサ上でデジタル画像記録が生成される対象の画像のシャープネスを最大にするのに光学素子(レンズ、絞りなど)が用いられる。
【0024】
光読取り可能コードは、多くの消費者が簡単な手段を用いて読み取ることができるという効果を奏する。これに関して、多くの消費者がたとえば、1つ以上のカメラを装備したスマートフォンを所持している。このようなカメラを用いることで、イメージセンサ上に光読取り可能コードの画像表現を生成することが可能である。スマートフォンに記憶されているコンピュータプログラムによって画像表現をデジタル化し、処理及び/又は記憶することができる。このようなコンピュータプログラムを光読取り可能コードを識別して解釈するように構成することができ、すなわち、光読取り可能コードの形態でいかなる情報が存在するかに応じて、たとえば、数字列、文字列及び/又はこれらに類するものなどの様々な形態に変換するように構成することができる。
【0025】
光読取り可能コードは対象の表面に導入される。このような対象は現実の物理的な有形の物である。このような対象は天然の物であることも可能であるし、工業的に製造された物であることも可能である。本発明の意義に含まれる対象の例は工具、機械部品、回路基板、チップ、容器、包装、宝飾品、デザインオブジェ、美術品、薬剤(たとえば、錠剤の形態の薬剤)、薬剤包装並びに植物製品及び動物製品である。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態では、対象は薬剤(たとえば、錠剤やカプセルの形態の薬剤)や薬剤包装である。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態では、対象は機械の部品などの工業的に製造された製品である。
【0028】
本発明のさらに好ましい実施形態では、対象は植物製品又は動物製品である。
【0029】
植物製品は植物の個体、植物の一部(たとえば果実)や、植物の集合や、植物の一部の集合である。動物製品は動物や、動物の一部や、動物の集合や、動物の一部の集合や、動物によって生産された対象(たとえば鶏卵など)である。たとえば、チーズ製品やソーセージ製品などの工業的に加工された製品も用語「植物製品又は動物製品」に含まれることを意図している。
【0030】
植物製品又は動物製品は通常、人間又は動物による消費に適しかつ/又は人間又は動物による消費を意図した植物又は動物の一部である。
【0031】
植物製品は作付け植物の少なくとも一部であることが好ましい。用語「作付け植物」は人間の介入によって有用な植物として特別に栽培される植物を意味するように理解される。好ましい一実施形態では、作付け植物は果物植物や野菜植物である。菌類は生物学的には植物とはみなされないが、菌類、特に菌類の子実体も用語、植物製品に含まれることを意図している。
【0032】
好ましくは、作付け植物はChristopher Cumo著「Encyclopedia of Cultivated Plants:From Acacia to Zinnia」第1巻から第3巻,ABC-CLIO,2013,ISBN 9781598847758なる事典に記載されている植物の1つである。
【0033】
植物製品又は動物製品はたとえば、リンゴ、ナシ、レモン、オレンジ、ミカン、ライム、グレープフルーツ、キウイ、バナナ、桃、プラム、ミラベル、アプリコット、トマト、キャベツ(カリフラワ、白キャベツ、ムラサキキャベツ、ケール、芽キャベツなど)、メロン、カボチャ、キュウリ、ピーマン、ズッキーニ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、セイヨウネギ、セロリ、コールラビ、ラディッシュ、ニンジン、パースニップ、スコルゾネラ、アスパラガス、テンサイ、ショウガの根茎、ルバーブ、ココナッツ、ブラジルナッツ、クルミ、ヘーゼルナッツ、ヨーロッパグリ、卵、魚、肉片、チーズ片、ソーセージ及び/又はこれらに類するものであることが可能である。
【0034】
光読取り可能コードは対象の表面に導入される。このことは、光読取り可能コードがタグの形態で対象に取り付けられることもないし、ステッカの形態で対象に加えられることもないことを意味する。さらに言えば、対象の表面そのものが光読取り可能コードを帯びるように表面を改変した。
【0035】
植物性製品及び卵の場合、表面はたとえば表皮/外殻であることが可能である。
【0036】
対象に光読取り可能コードの彫刻、エッチング、焼印加工及び/又はインプリントを行うことができ、かつ/又は何らかの他の仕方で対象の表面に読取り可能コードを導入することができる。光読取り可能コードが対象の表面(たとえば、果物や野菜の場合には表皮)にレーザによって導入されることが好ましい。この場合、レーザは対象の表面の色素分子を改変(たとえば、漂白や破壊)し、かつ/又は局所的に組織の燃焼及び/若しくは破壊並びに/又は化学的及び/若しくは物理的改変(たとえば、水の蒸発、タンパク質の変性及び/又はこれらに類するもの)の事象を引き起こし、これにより、表面の周囲の部分(レーザによって改変されていない部分)に対するコントラストを生じさせる。
【0037】
光読取り可能コードはウォータジェットや砂の噴流によって対象の表面に導入することもできる。
【0038】
光読取り可能コードはけがき、穿刺、分断(parting)、研磨(rasping)、削り取り(scraping)、打刻及び/又はこれらに類するものによって機械的に対象の表面に導入することもできる。
【0039】
対象、特に植物製品又は動物製品のマーキングに関する詳細は先行技術から収集することができる(たとえば、EP2281468A1、WO2015/117438A1、WO2015/117541A1、WO2016/118962A1、WO2016/118973A1、DE102005019008A、WO2007/130968A2、US5660747、EP1737306A2、US10481589、US20080124433を参照)。
【0040】
光読取り可能コードは二酸化炭素レーザ(CO2レーザ)によって対象の表面に導入されていることが好ましい。
【0041】
通常、光読取り可能コードを対象の表面に導入すると、たとえば、白色のステッカに黒色又はカラーのインプリントを施した形態の光読取り可能コードよりもコントラストの低いマーキングが得られる。ステッカを個別にデザインすることができるので、コントラストを最適化することができ、たとえば、白地に黒色のマーキング(たとえば、黒色のバーコードや黒色のマトリックスコード)を施すと、コントラストがきわめて高くなる。通常、このような高いコントラストは、特に植物製品又は動物製品の場合と、薬剤の場合とにおいて、対象の表面に光読取り可能コードを導入しても実現されない。これにより、コードを読み取る際に困難が生じる場合がある。さらに、レーザによって対象の表面に導入された光読取り可能コードの外観が対象毎に異なる。言い換えると、たとえばリンゴに導入された光読取り可能コードの外観は通常、バナナ、トマト、カボチャやジャガイモに導入された光読取り可能コードとは異なる。果物のそれぞれの品種も光読取り可能コードの外観に影響を与える場合があり、「グラニースミス」品種のリンゴの光読取り可能コードの外観は「ピンクレディー」品種のリンゴの光読取り可能コードとは異なる。植物製品又は動物製品の表面構造も光読取り可能コードの外観に影響を与える場合があり、キウイの比較的粗い表面構造はジャガイモやリンゴの表皮の凹凸及び斑点とまったく同じように光読取り可能コードの読取りを妨げる場合がある。果物及び野菜の表面は通常湾曲している。光コードを曲面に導入する場合、コードの歪みが生じる場合があり、たとえば、コードにピンクッション歪みやバーレル歪みが生じる場合がある。このような歪みはコードの復号を妨げる場合がある。この場合、歪みの程度は通常、湾曲の度合いに依存する。サイズが2cm×2cmである光読取り可能コードがリンゴに導入される場合、同じコードがメロンに導入される場合よりも歪みが大きい。さらに、ほぼ球形の製品(たとえば、リンゴ、トマト、メロン)に生じる歪みはほぼ円筒形の製品(たとえばキュウリ)に生じる歪みとは異なる。滑らかな表面(たとえばリンゴの場合の表面)は粗い表面(たとえばキウイの場合の表面)よりも多くの反射(たとえば、周囲光により生じる反射)を発生する。
【0042】
したがって、本発明に係れば、対象の表面に導入された光読取り可能コードの画像記録に、コードが読み取られる前に1回の変換又は複数回の変換が施される。このような変換により、光読取り可能コードと表面の周囲の部分(コードを帯びていない表面の部分)とのコントラストを高め、かつ/又は歪みを軽減若しくは除去し、かつ/又は反射を軽減若しくは除去し、かつ/又は特色を持つ対象が存在することに起因する人為的要素を軽減若しくは除去することができる。この場合、個々に存在する対象に対して特色に応じて1回以上の変換が選択される。
【0043】
「変換」は、画像を入力として受け取り、画像を出力として生成する関数や演算子である。変換により、光読取り可能コードが入力画像中で画像化される場合に、読取り可能コードの周囲に対するコントラストを入力画像よりも出力画像で高くし、及び/又は、歪みを入力画像よりも出力画像で小さくすることを確実に実現することができる。変換により、対象の表面での光の反射を入力画像と比較して出力画像で確実に低減することができる。変換により、対象の表面の凹凸及び/又は不均一性が現れる場合の鮮明度を入力画像よりも出力画像で下げることを確実に実現することができる。一般的に、変換は、画像化されている光読取り可能コードの復号の際に、生じる復号エラーが入力画像よりも出力画像で少なくなることを確実にする。このような復号エラーはたとえば、QRコードの白色の四角がイメージセンサによって黒色の四角として解釈される場合に生じる。
【0044】
1回以上のどのような変換が実行されるのかが1つ以上の変換パラメータによって決定され、複数回の変換の場合には、これらの変換がいかなる順序で実行されるのかが1つ以上の変換パラメータによって決定される。
【0045】
まず、対象の第1の画像記録が生成される。
【0046】
用語「画像記録」は対象又はその一部の二次元画像表現を意味するように理解されることが好ましい。画像記録は通常、デジタル画像記録である。用語「デジタル」は、画像記録を機械、通常はコンピュータシステムによって処理することができることを意味する。「処理」は、電子データ処理(electronic data processing:EDP)についての既知の方法を意味するように理解される。
【0047】
コンピュータシステムとソフトウェアとを用いることで、デジタル画像記録の処理、編集、再生を行うことができ、また、たとえば、JPEG、Portable Network Graphics(PNG)やScalable Vector Graphics(SVG)などの標準化されたデータ形式に変換することもできる。デジタル画像記録をたとえば、コンピュータモニタ、プロジェクタ及び/又はプリンタなどの適切な表示デバイスを用いて視覚化することができる。
【0048】
デジタル画像記録では、画像の内容は通常、整数で表現されて記憶される。ほとんどの場合、デジタル画像記録は、バイナリ符号化し、適宜圧縮することができる二次元画像を含む。デジタル画像記録には通常、ラスタグラフィックスが含まれ、画像情報は均一なラスタグリッドに記憶される。ラスタグラフィックスは、二次元表現の場合にはいわゆる画素(ピクセル)のラスタ配列(raster arrangement)からなり、三次元表現の場合には体積要素(ボクセル)のラスタ配列からなり、各場合でカラー値又はグレースケール値が割り当てられる。したがって、2Dラスタグラフィックの主な特徴は画像サイズ(ピクセル単位で測定された幅及び高さ、通称:画像解像度)及び色深度である。通常、色がデジタル画像ファイルのピクセルに割り当てられる。ピクセルに用いられる色の符号化は特に色空間及び色深度の表現を用いて定められる。最も単純な例は、ピクセルに白黒の値が格納されるバイナリ画像である。いわゆるRGB色空間(RGBは赤、緑及び青の原色を表す)の表現を用いて色が定められる画像の場合、各ピクセルが3つのカラー値からなり、赤色に1つのカラー値が用いられ、緑色に1つのカラー値が用いられ、青色に1つのカラー値が用いられる。ピクセルの色は3つのカラー値の重ね合せ(加法混色)から生じる。個々のカラー値はたとえば区別可能な256レベルに離散化され、これは色調値(tonal value)と称され、通常は0から255にわたる。各カラーチャネルの色合い「0」は最も暗い。3つのチャネルすべての色調値が0である場合、対応するピクセルは黒く見え、3つのチャネルすべての色調値が255である場合、対応するピクセルは白く見える。本発明を実施すると、デジタル画像記録に特定の操作(変換)が施される。この場合、操作は主に、たとえばエッジ検出器などのいわゆる空間演算子としてピクセルに係わったり、たとえば色空間変換の場合のような個々のピクセルの色調値として係わったりする。複数の可能なデジタル画像形式及び色の符号化が存在する。簡単にするために、本明細書では、本明細書で用いられている画像が、特定の数のピクセルを有するRGBラスタグラフィックスであると仮定する。しかし、この仮定は決して限定を課すものとしては当然理解されない。他の画像形式で存在する画像ファイル、及び/又はカラー値が異なる仕方で符号化されている画像ファイルに本明細書の教示をどのように適用することができるかは画像処理の当業者には明らかである。
【0049】
少なくとも1つの画像記録が、映像シーケンスから抜粋された1つ以上のものであることも可能である。
【0050】
少なくとも1つの画像記録が1つのカメラ又は複数のカメラを用いて生成される。少なくとも1つの画像記録がスマートフォンの、1つ以上のカメラによって生成されることが好ましい。
【0051】
対象を異なる方向から視認し、異なる視認方向からの画像記録を生成する複数のカメラを用いることには、深度情報が取り込まれるという効果がある。例として、このような深度情報から、眼前にある画像化されている対象の湾曲に関する情報の導出及び/又は収集を行うことができる。
【0052】
第1の画像記録は対象の表面に導入された光読取り可能コードを示す。
【0053】
第1の画像記録は変換パラメータを決定するのに用いられる。第1の画像記録に基づいて変換パラメータが決定され、これにより、変換パラメータに応じて第1の画像記録(及び/又は第2の画像記録)を変換する過程で、たとえば、光読取り可能コードの周囲に対する光読取り可能コードのコントラストが第1の画像記録の場合よりも変換された画像記録の場合で高くかつ/又は生じる歪み/反射が小さいことに起因して、画像化されている光コードの復号の際に第1の画像記録よりも少ない復号エラーを生じる変換された画像記録が得られる。
【0054】
変換パラメータを2つのステップで決定することができ、第1のステップでは、第1の画像記録中で(少なくとも均整のとれた状態で)画像化されている対象を識別することができ、第2のステップでは、識別された対象について、光読取り可能コードの周囲に対する光読取り可能コードのコントラストの増加をもたらす変換パラメータをデータ記憶媒体から読み出すことができる。
【0055】
識別をたとえば、第1の画像記録中で画像化されている対象の特性に基づいて実現することができる。このような特徴的な特性はたとえば、色及び/若しくは色の分布、形状、サイズ、質感並びに/又は他の特性/さらに別の特性である。画像化されている特徴に基づいて対象を識別するのに、画像処理で公知であるようなパターン認識方法を用いることができる。
【0056】
対象の識別に訓練された機械学習モデルが用いられることが好ましい。本明細書ではこのようなモデルを認識モデルとも称する。
【0057】
このようなモデルを、第1の画像記録にいかなる対象が存在するのかを示す第1の画像記録情報に基づいて少なくとも均整のとれた状態で出力するように教師あり学習方法で訓練することができる。
【0058】
「機械学習モデル」を、コンピュータで実施されるデータ処理アーキテクチャとして理解することができる。モデルは入力データを受け取り、前記入力データとモデルパラメータとに基づいて出力データを供給することができる。モデルは訓練によって入力データと出力データとの関係を学習することができる。訓練の際、特定の入力に対して所望の出力を供給するようにモデルパラメータを適応させることができる。
【0059】
このようなモデルの訓練の際、モデルの学習に用いることができる訓練データがモデルに提供される。訓練された機械学習モデルは訓練プロセスの結果である。訓練データは、入力データの他に、入力データに基づいてモデルによって生成されるべき正しい出力データ(目標データ)を含む。訓練の際、入力データを目標データに対応づけるパターンが認識される。
【0060】
訓練プロセスでは、訓練データの入力データがモデルに入力され、モデルが出力データを生成する。出力データは目標データ(いわゆるグラウンドトゥルースデータ)と比較される。モデルパラメータは出力データと目標データとの偏差を最小値(既定値)まで減らすように変更される。
【0061】
訓練の際、モデルの予測品質を評価するのに損失関数を用いることができる。出力データと目標データとの望ましい関係に報酬を与え、及び/又は出力データと目標データとの望ましくない関係に罰を与えるように損失関数を選択することができる。このような関係はたとえば類似性、相違性やその他の関係であることが可能である。
【0062】
出力データと目標データとを備える特定のペアの損失を計算するのに損失関数を用いることができる。訓練プロセスの目的は、訓練データセットの、すべてのペアの損失値が最小値(既定値)まで減少するように、機械学習モデルのパラメータを変更する(適応させる)ことにある。
【0063】
損失関数はたとえば、特定の入力データに対するモデルの出力データと目標データとの偏差を定量化することができる。たとえば、出力データ及び目標データが数値の場合、損失関数はこれらの数値間の絶対差になる。この場合、損失関数の絶対値が大きいことは、1つ以上のモデルパラメータを大幅に変更しなければならないことを意味する場合がある。
【0064】
ベクトル形式の出力データの場合、たとえば、平均二乗誤差、コサイン距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離などの差分ベクトルのノルム、差分ベクトルのLpノルム、重み付きノルムや、2つのベクトルのその他一切のタイプの差分メトリックなどのベクトル間の差分メトリックを損失関数として選択することができる。
【0065】
機械学習モデルを、入力データとしての画像記録を出力データとしての特定の対象に割り当てる分類モデルとして実施(構成)することができる。モデルはたとえば、画像記録中で画像化されている特定の対象を表す数値を出力することができる。
【0066】
このような分類モデルは従来技術で説明されている(たとえば、F.Sultanaら:Advancements in Image Classification using Convolutional Neural Network,arXiv:1905.03288v1[cs.CV],2019、A.Khanら:A Survey of the Recent Architectures of Deep Convolutional Neural Networks,Artificial Intelligence Review,DOI:https://doi.org/10.1007/s10462-020-09825-6を参照)。
【0067】
本明細書では、第1の画像記録中で画像化されている対象に第1の画像記録を割り当てることを、「対象を識別する」とも記載している。この場合、第1の画像記録を、当該対象、及び/又は、画像記録中で画像化されている対象、のそれぞれの部分に割り当てることができる。植物製品の場合、第1の画像記録を、成熟度、及び/又は、見た目の外観、にも割り当てることができ、バナナの場合、たとえば緑色や黄色のバナナに割り当てることができ、ピーマンの場合、たとえば緑色、黄色や赤色のピーマンに割り当てることができ、リンゴの場合、個々に存在するリンゴの品種に割り当てることができ、及び/又は、これらに類するものに割り当てることができる。
【0068】
最後に、第1の画像記録中での対象の識別は、たとえば、光読取り可能コードの周囲に対する光読取り可能コードのコントラストを高め、歪みを軽減し、反射を軽減しかつ/又は復号エラーをもたらすおそれがある他の特徴を軽減/除去するように、第1の画像記録(又は第2の画像記録)に適用されることが意図されている変換パラメータを決定するのに用いられる。したがって、識別は、生じ得るエラーを最少にしつつ光読取り可能コードが復号されることを実現する上記の変換パラメータの選択を可能にする、画像化されている対象の特性を識別することを意図している。
【0069】
変換パラメータは通常、データ記憶媒体、たとえばリレーショナルデータベースに記憶される。第1の画像記録に基づいて、データベース中の変換パラメータに関連づけられた識別子を出力するように機械学習モデルを構成及び訓練することができる。言い換えれば、第1の画像記録中で画像化されている対象を表す識別子に基づいて、識別子に割り当てられた変換パラメータを決定してデータベースから読み出すことができる。
【0070】
変換パラメータ自体を供給/出力するように機械学習モデルを訓練することも考えられる。
【0071】
既に説明されているように、変換パラメータにより第1の画像記録(又は第2の画像記録)にいかなる変換が適用されることが意図されるのかが定められ、複数回の変換の場合には、いかなる順序で変換が適用されることが意図されるのかが定められる。
【0072】
特定の対象について、変換された画像記録が変換されていない画像記録よりも少ない復号エラーを発生することを確実に実現する上記の変換を経験的に決定することができる。
【0073】
したがって、複数の対象について、対象の表面に導入されている光読取り可能コードが、少なくとも均整のとれた状態で画像化されている画像記録を生成することが可能である。光読取り可能コードの周囲に対する光読取り可能コードのコントラストの増加をもたらし、並びに/又は歪みの低減/除去をもたらし、並びに/又は反射を低減/除去し及び/若しくは復号エラーをもたらす場合がある他の特徴を低減/除去する変換を個々の記録について画像処理の当業者は規定することができる。
【0074】
復号エラーを経験的に定量することができる。復号エラーはたとえば、復号することができなかったコードの割合(パーセント)であることが可能である。多くの光読取り可能コードはエラー訂正の手段を有する。復号エラーはコード中の訂正されたビットの数を表すこともできる。
【0075】
変換の各々を検証することができ、変換により所望の成果が得られない場合、破棄、改良、変更及び/又はさらなる変換による拡張を行うことができる。
【0076】
変換の例は空間ローパスフィルタリング、空間ハイパスフィルタリング、シャープニング、ぼかし(たとえばガウスぼかし)、アンシャープマスキング、エロージョン、メディアンフィルタ、最大値フィルタ、コントラスト範囲の縮小、エッジ検出、色深度の縮小、グレースケールレベル変換、ネガ作成、色補正(色バランス、ガンマ補正、彩度)、色置換、フーリエ変換、フーリエローパスフィルタ、フーリエハイパスフィルタ、逆フーリエ変換である。
【0077】
1つ以上の畳み込み行列(畳み込みカーネルと称する)を用いてラスタグラフィックスを畳み込むことによっていくつかの変換を行うことができる。畳み込み行列は通常、奇数個の次元を持つ正方行列であり、様々なサイズ(たとえば、3×3、5×5、9×9及び/又はこれらに類するもの)を持つことができる。いくつかの変換を、離散畳み込み(線形演算)が適用される線形システムとして表すことができる。離散二次元関数(デジタル画像)の場合、以下の計算式を設けて離散畳み込みに用いる。
【数1】
ここで、I(x,y)は変換された画像記録の得られたピクセルを表し、Iは変換が適用される元の画像記録である。aは正方畳み込み行列の中心点の座標を示し、k(i,j)は畳み込み行列の要素である。3×3畳み込み行列の場合にはn=3かつa=2であり、5×5行列の場合にはn=5かつa=3である。
【0078】
たとえばリンゴの場合に、変換されていない画像記録よりも変換された画像記録で生じる復号エラーが少ないという効果を奏する変換と変換列とを以下に示す。
・強度すなわち線形RGB信号への色変換
・線形RGB信号を、たとえば、反射チャネル及び/又は照明チャネル、及び符号化された表面部分と符号化されていない表面部分とを差別化するのに用いられる少なくとも2つのカラーチャネルに変換する色変換 これを行うために、符号化された表面部分と符号化されていない表面部分との最良の可能な差別化が実現されるように、強度すなわち線形RGBカラー信号を相互に線形結合する。
・少なくとも2つのカラーチャネルから反射チャネルを差し引くことによる反射補正(加法補正(additive correction))
・少なくとも2つのカラーチャネルを照明チャネルに正規化することによる照明補正(乗法補正(multiplicative correction))
・リンゴの表面の乱れの検出によるリンゴ表面の乱れの補正、及び欠陥の周囲からの空間補間
・範囲に関するフィルタマスクを用いた照明補正及び反射補正された画像セグメントのアンシャープマスキング これにより、リンゴの曲面形状によるたとえば画像輝度の空間的不均一性が適切に補償され、高周波画像部分を増やすことによって、符号化された表面部分と符号化されていない表面部分との画像コントラストが増幅されて最適化される。
【0079】
変換のさらに別の例についてはデジタル画像処理を題材にした多数の刊行物から収集することができる。
【0080】
画像記録から変換パラメータを直接導出するために第1の画像記録を解析することもさらに考えられる。画像記録中で画像化されている対象を識別する場合、識別された対象に基づいて変換パラメータが決定され、変換パラメータを直接導出する場合、対象を画像化する仕方から変換パラメータを導出することができる。例として、平均輝度、コントラスト範囲、色分布及び/又はこれらに類するものを決定することが可能であり、これに基づいて、復号エラーが少なくなる1つ以上の変換パラメータが選択、設定又は決定される。符号化された表面領域と符号化されていない表面領域とのコントラストの最適化を相関解析によって直接実現することもでき、たとえば、この画像領域中の記録された対象の色の主軸変換によって直接実現することもできる。
【0081】
さらに別のステップでは、変換パラメータに応じて第1の画像記録又は第2の画像記録に1回以上の変換が適用される。既に明らかにされているように、第1の画像記録、すなわち、変換パラメータを決定した際に基づいた画像記録に変換を適用する必要がない。さらに言えば、第2の画像記録に変換を適用することも考えられ、第2の画像記録は第1の画像記録と同じ対象を示すが、適宜異なる時点(たとえば、前の時点又は後の時点)の対象を示すことが好ましい。第1の画像記録を生成するのに用いられるカメラを、カメラのイメージセンサに入射する画像表現を既定のレートで連続的にデジタル化し、デジタル画像記録を生成し、これらのデジタル画像記録を、画像化されている対象を認識する認識モデルに供給するように構成することが考えられる。認識モデルは認識(識別)された対象の識別子を制御部に渡すことができ、制御部は識別子に基づいて変換パラメータを決定する。その後、決定された変換パラメータをその後に生成される1つ以上のデジタル画像記録に適用することができる。このようなその後に生成される画像記録を本明細書では「第2の画像記録」と称する。
【0082】
撮像された対象が単一の第1の画像記録に基づいて識別されるのではなく、複数の第1の画像記録、たとえば、時間的に連続する一連の画像記録に基づいて識別されることもまた考えられる。変換パラメータが単一の第1の画像記録に基づいて決定されるのではなく、複数の第1の画像記録、たとえば、時間的に連続する一連の画像記録に基づいて決定されることもまた考えられる。変換が単一の(第1又は第2の)画像記録に適用されるのではなく、複数の画像記録、たとえば、時間的に連続する一連の画像記録のうちの画像記録に適用されることもまた考えられる。
【0083】
対象の表面にある光読取り可能コードの画像記録に1回以上の変換を適用した結果が、変換された画像記録である。
【0084】
変換された画像記録では、元の(変換されていない)画像記録よりも光読取り可能コードを適切に認識して読み取ることができる。
【0085】
次のステップでは、変換された画像記録中のコードが読み取られる(復号される)。本明細書では、用いられているコードに応じて、それぞれのコードを読み取る(復号する)ための既存の方法が存在する。
【0086】
読み取られた(復号された)コードは、コードが導入されている表面を持つ対象に関する情報を含むことができる。
【0087】
好ましい一実施形態では、読み取られたコードは識別子(固有識別子)を備え、これに基づいて消費者はたとえばデータベースから対象に関するさらなる情報を取得することができる。読み取られたコード、及び/又は読み取られたコードに関連づけられた情報を出力、すなわち画面に表示し、プリンタで印刷し、及び/又は、データ記憶媒体に記憶することができる。
【0088】
このような識別子(固有識別子)と、識別子に関連づけられた対象に関するものとして記憶することができかつ消費者に表示することができる情報とに関するさらなる情報が欧州特許出願公開第3896629号の特許出願に記載されており、その内容の全体が参照により本明細書に援用されるものとする。
【0089】
以下、本発明を、図面を参照してより詳細に説明するが、本発明は図面に示されている特徴及び特徴の組合せには限定されない。
【0090】
図1は対象の表面に導入された光読取り可能コードの読取りをフローチャートの形態の例として概略的に示す。
【0091】
第1のステップ(110)では、対象(O)のデジタル画像記録(I)がカメラ(C)を用いて生成される。第2のステップ(120)では、デジタル画像記録(I)が認識モデル(IM)に供給される。認識モデル(IM)は画像記録(I)に基づいて画像記録(I)中の撮影された対象(O)を識別するように構成されている。第3のステップ(130)では、認識モデル(IM)が識別された対象(O)に関する情報(OI1)を供給する。第4のステップ(140)では、識別された対象(O)に関する情報(OI1)に基づいてデータベース(DB)から変換パラメータ(TP)が決定される。第5のステップ(150)では、決定された変換パラメータ(TP)が画像記録(I)を変換するプロセスに供給される。第6のステップ(160)では、変換パラメータ(TP)に応じて画像記録(I)に1回以上の変換が適用される。この結果、変換された画像記録(I)が得られ、対象(O)の表面に導入された光読取り可能コード(この場合はQRコード)のコントラストがその周囲に対して高く、変換されていない画像記録(i)の場合のコードよりも明確に認識され、読み取り易い。第7のステップ(170)では、光読取り可能コードが読み取られ、読み取られたコード(OI2)が提供される。読み取られたコード(OI2)を表示することができ、かつ/又は読み取られたコードOIに基づいて対象Oに関する情報を、たとえば、データベースから読み出して提供(たとえば、通信及び表示)することができる。
【0092】
図2は本発明に係るシステムを例として概略的に示す。
【0093】
システム(1)はコンピュータシステム(10)とカメラ(20)と1つ以上のデータ記憶媒体(30)とを備える。カメラ(20)を用いて対象の画像記録を生成することができる。カメラ(20)は、生成された画像記録をコンピュータシステム(10)に送ることができるようにコンピュータシステム(10)に接続される。カメラ(20)をコンピュータシステム(10)にケーブル接続及び/又は無線接続を介して接続することができる。1つ以上のネットワークを介した接続も考えられる。たとえば今日のスマートフォンやタブレットコンピュータの場合のように、カメラ(20)がコンピュータシステム(10)の一体部分であることもさらに考えられる。
【0094】
コンピュータシステム(10)は、画像記録を(カメラ又はデータ記憶媒体から)受け取り、画像記録中で画像化されている対象を識別し、識別された対象に基づいて変換パラメータを決定し、変換パラメータに応じて画像記録及び/又は対象のさらなる画像記録を変換し、変換された画像記録が取得され、変換された画像記録中の光コードを復号して復号されたコードを出力しかつ/又は復号されたコードに関連づけられた情報を提供するように構成される(たとえばコンピュータプログラムによって構成される)。
【0095】
データ記憶媒体(30)には画像記録、モデル、変換パラメータ、変換演算子及び/若しくは変換関数、認識モデル、コンピュータプログラム並びに/又はその他の情報/さらに別の情報を記憶することができる。データ記憶媒体(30)をコンピュータシステム(10)にケーブル接続及び/又は無線接続を介して接続することができる。1つ以上のネットワークを介した接続も考えられる。データ記憶媒体(30)がコンピュータシステム10の一体部分であることもさらに考えられる。複数のデータ記憶媒体が存在することもさらに考えられる。
【0096】
図3はコンピュータシステム(10)を概略的に示す。このようなコンピュータシステム(10)は1つ以上の据置き型の電子デバイスや携帯型の電子デバイスを備えることができる。コンピュータシステム(10)はたとえば、記憶媒体(15)に接続される処理部(11)などの1つ以上の構成要素を備えることができる。
【0097】
処理部(11)は、1つ以上のプロセッサを単独で、または1つ以上の記憶媒体と組み合わせて備えることができる。処理部(11)はたとえば、デジタル画像記録、コンピュータプログラム及び/又はその他のデジタル情報などの情報を処理することができる一般的なコンピュータハードウェアであることが可能である。処理部(11)は通常、電子回路の配列からなり、このような電子回路のいくつかを集積回路として設計したり、互いに接続された複数の集積回路として設計したりすることができる(集積回路を「チップ」とも称する)。処理部(11)のメインメモリに記憶したり、同じコンピュータシステム又は異なるコンピュータシステムの記憶媒体(15)に記憶したりすることができるコンピュータプログラムを実行するように処理部(11)を構成することができる。
【0098】
記憶媒体(15)はたとえば、デジタル画像記録、データ、コンピュータプログラム及び/又はその他のデジタル情報などの情報を一時的及び/又は永続的に記憶することができる一般的なコンピュータハードウェアであることが可能である。記憶媒体(15)は揮発記憶媒体及び/又は不揮発記憶媒体を備え、組み込まれて固定されたり取り外し可能であったりすることが可能である。適切な記憶媒体の例はRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読取り専用メモリ)、ハードディスク、フラッシュメモリ、交換可能なコンピュータフロッピーディスク、光ディスク、磁気テープやこれらの組合せである。光ディスクには、読取り専用メモリを有するコンパクトディスク(CD-ROM)、読取り/書込み機能を持つコンパクトディスク(CD-R/W)、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクなどが含まれる。
【0099】
処理部(11)を記憶媒体(15)だけでなく、情報を表示し送りかつ/又は受け取るために1つ以上のインタフェイス(12,13,14,17,18)にも接続することができる。インタフェイスは1つ以上の通信インタフェイス(17,18)及び/又は1つ以上のユーザインタフェイス(12,13,14)を備えることができる。1つ以上の通信インタフェイスをたとえば、カメラ、他のコンピュータ、ネットワーク、データ記憶媒体などとの間で情報を送りかつ/又は受け取るように構成することができる。1つ以上の通信インタフェイスを物理的接続(有線接続)及び/又は無線通信接続を介して情報を送りかつ/又は受け取るように構成することができる。1つ以上の通信インタフェイスはたとえば、モバイルフォン、Wi-Fi、衛星、ケーブル、DSL、光ファイバ及び/又はこれらに類するものなどの技術を用いてネットワークに接続するための1つ以上のインタフェイスを備えることができる。いくつかの例では、1つ以上の通信インタフェイスはNFC、RFID、Bluetooth、Bluetooth LE、ZigBee、赤外線(たとえばIrDA)などの近距離通信技術を用いてデバイスを接続するように構成される1つ以上の近距離通信インタフェイスを備えることができる。
【0100】
ユーザインタフェイス(12,13,14)はディスプレイ(14)を備えることができる。ユーザに情報を表示するようにディスプレイ(14)を構成することができる。その好適な例は液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などである。ユーザ入力インタフェイス(12,13)は有線又は無線であることが可能であり、コンピュータシステム(10)でたとえば、処理、記憶及び/又は表示のためにユーザから情報を受け取るようにユーザ入力インタフェイス(12,13)を構成することができる。ユーザ入力インタフェイスの好適な例はマイク、画像や動画の記録デバイス(たとえばカメラ)、キーボードやキーパッド、ジョイスティック、タッチ感応画面(タッチスクリーンから分離されたりタッチスクリーンに組み込まれたりする)などである。いくつかの例では、ユーザインタフェイスは機械可読情報に用いられるautomatic identification and data capture technology(AIDC)を含むことができる。AIDCはバーコード、無線周波数識別(RFID)、磁気ストライプ、光学文字認識(OCR)、集積回路カード(ICC)などを含む。ユーザインタフェイスは、プリンタなどの周辺機器との通信に用いられる1つ以上のインタフェイスをさらに備えることができる。
【0101】
1つ以上のコンピュータプログラム(16)を記憶媒体(15)に記憶し、処理部(11)によって実行することができ、これにより、処理部(11)は本明細書で説明されている機能を果たすようにプログラムされる。コンピュータプログラム(16)の指示がそれぞれ取得され、ロードされ、実行されるように、指示の取得、ロード及び実行を逐次的に行うことができる。ただし、取得、ロード及び/又は実行を並行して行うこともできる。
【0102】
本発明に係るシステムをラップトップ、ノートブック、ネットブック、タブレットPC及び/又は携帯デバイス(たとえばスマートフォン)として実施することができる。本発明に係るシステムはカメラを備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0103】
1 システム
10 コンピュータシステム
11 処理部
12 インタフェイス
13 インタフェイス
14 インタフェイス
15 記憶媒体
16 コンピュータプログラム
17 インタフェイス
18 インタフェイス
20 カメラ
30 データ記憶媒体
110 第1のステップ
120 第2のステップ
130 第3のステップ
140 第4のステップ
150 第5のステップ
160 第6のステップ
170 第7のステップ
C カメラ
DB データベース
I デジタル画像記録
i 変換されていない画像記録
I 変換された画像記録
IM 認識モデル
O 対象
OI1 対象に関する情報
OI2 読み取られたコード
TP 変換パラメータ
図1
図2
図3
【国際調査報告】