(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ゾル-ゲル法により多孔質モノリスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/16 20060101AFI20250121BHJP
C03B 8/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C01B33/16
C03B8/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538201
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2022087504
(87)【国際公開番号】W WO2023118449
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ムゲーリ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・マルヴァル
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ・メイヌ
【テーマコード(参考)】
4G014
4G072
【Fターム(参考)】
4G014AH04
4G014AH06
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB01
4G072CC07
4G072DD01
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ13
4G072JJ23
4G072KK01
4G072LL06
4G072MM01
4G072PP06
4G072QQ02
4G072RR05
4G072RR12
4G072RR20
4G072UU13
4G072UU15
(57)【要約】
本発明は、多孔質モノリス(35)を製造する方法であって、・水溶液中のゾル-ゲル前駆体を含むゾル(5)を形成する工程と、・あらかじめ形成されたゾル(5)を、容器(12)及び容器(12)に収容された少なくとも1つの型(15)に少なくとも部分的に充填する工程であって、型(15)は、充填した後にゾル(5)の中に開口する少なくとも1つの開口部(17)を含む工程と、・ゾル(5)からゾル-ゲルマトリックス(22、25)を容器(12)内に形成する工程と、・型(15)を、型に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)とともに、型の容器から取り出す工程と、・型(15)に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)から多孔質モノリス(35)を形成する工程と、を含み、ゾル、ゾル-ゲルマトリックス及び多孔質モノリスの形成は、ゾル-ゲル法によって行われる、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質モノリス(35)を製造する方法であって、
- 水溶液中のゾル-ゲル前駆体を含むゾル(5)を形成する工程と、
- あらかじめ形成されたゾル(5)を、容器(12)及び容器(12)に収容された少なくとも1つの型(15)に少なくとも部分的に充填する工程であって、型(15)は、ゾルを充填した後にゾル(5)の中に開口する少なくとも1つの開口部(17)を含む工程と、
- ゾル(5)からゾル-ゲルマトリックス(22、25)を容器(12)内に形成する工程と、
- 型(15)を、型に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)とともに、容器から取り出す工程と、
- 型(15)に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)から多孔質モノリス(35)を形成する工程と
を含み、ゾル、ゾル-ゲルマトリックス及び多孔質モノリスの形成は、ゾル-ゲル法によって行われる、方法。
【請求項2】
ゾル(5)が相分離を含み、特に細孔形成剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ゾル(5)が、ゾル-ゲル前駆体を含む、好ましくは細孔形成剤及びゾル-ゲル前駆体を含む溶液を、特に、5分以上、より良くは10分以上、更により良くは15分以上、及び/又は3時間以下、より良くは2時間以下の期間撹拌することによって形成されてもよく、温度は実質的に一定の所定値、特に0℃から90℃の間、より良くは0℃から50℃の間にとりわけ制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
型又は複数の型(15)が少なくとも2つの開口部を有し、型又は各型(15)の開口部の少なくとも1つが、充填後のゾルの中に開口する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
型又は少なくとも1つの型(15)、より良くは各型が、中空円筒、特にその対向する2つの端部で開口しているチューブであってもよく、型又は各型(15)が、好ましくは、その縦軸が容器内で垂直に延びて容器(12)内に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
容器(12)がいくつかの型(15)を収容しており、充填が複数の型(15)に充填することを含み、各型(15)は充填後にゾル(5)の中に開口する少なくとも1つの開口部(17)を含み、容器(12)及び型又は複数の型(15)の充填が、充填後に開口部(17)がゾル(5)のレベルより下になるように、容器(12)に収容された型又は複数の型(15)の中に、又は型又は複数の型(15)を収容している容器(12)の中にゾル(5)を注入することによって実施される、又は容器(12)及び型又は複数の型(15)の充填が、ゾル(5)を容器(12)の中に注入し、次いで型又は複数の型(15)を容器(12)に収容されたゾル(5)に少なくとも部分的に、好ましくは徐々に浸漬し、ゾルのレベルが前記開口部に到達した時、型若しくは各型がその開口部の1つを介してゾルで充填されることによって実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
型若しくは各型(15)を、型が収容するゾル-ゲルマトリックス(25)とともに容器(12)から取り出す工程が、型又は複数の型(15)を収容するゾル-ゲルマトリックスのブロック(22)を容器(12)から取り出すこと、並びに型又は各型(15)及び型が収容するゾル-ゲルマトリックス(25)をあらかじめ取り出されたブロック(22)から取り出すことを含んでもよい、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
特に前記ゾル-ゲルマトリックス(25)への制御された圧力によって、例えば型より小さい大きさの固体を用いた直接圧力によって、又は制御された流量によるガスの圧力によって、又は型若しくは各型(15)を切断することによって、又は型若しくは各型を互いに2つの部位に分離することによって、型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)を対応する型(15)から取り出すことを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
階層的多孔性を備えるゾル-ゲルマトリックスを形成するように、型(15)内のゾル-ゲルマトリックス(25)、又は型(15)から取り出されたゾル-ゲルマトリックス(25)中の、メソ多孔性の制御された生成を含み、メソ多孔性の制御された生成は、容器から型又は各型(15)を取り出した後、型又は各型(15)のゾル-ゲルマトリックス(25)から多孔質モノリス(35)を形成する前に、特に、型又は各型(15)から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックスを溶解させる薬剤及び/又はゾル-ゲルマトリックスを溶解させる薬剤の前駆体を含むメソ多孔性を生成するための水溶液に、ゾル-ゲルマトリックス(25)を浸漬することによって行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
多孔質モノリス(35)を形成する工程が、型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックス(25)を乾燥して、乾燥されたゾル-ゲルマトリックスを形成すること、及び/又は、特に乾燥の後に、型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックスを熱処理することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法が、ゾル-ゲルマトリックス(25)を型又は各型(15)から取り出す工程を除外し、型が5μmから3mmまでの内径dを有するキャピラリーであり、キャピラリーは好ましくは前の活性化工程を介して活性化された内部表面を有し、メソ多孔性の生成は、好ましくは、適用可能な場合、前駆体、特に尿素を含む水溶液中でキャピラリーを加熱することによって行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ゾル-ゲルマトリックス(25)が型又は各型(15)から取り出され、得られた多孔質モノリス(35)が自立性である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
特に請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を使用して得られ、厳密に1mmより小さい最大横寸法dを有する、自立性多孔質モノリス(35)。
【請求項14】
型、特にキャピラリーと、型の少なくとも1つの断面を充填する多孔質モノリス(35)とのアセンブリであって、特に請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を使用して得られ、多孔質モノリス(35)は厳密に200μm超の最大横寸法を有し、多孔質モノリスは多孔質モノリス上の型を収縮させる、特に熱収縮させる工程を伴わずに型内で製造されていた、アセンブリ。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる多孔質モノリス又は請求項13若しくは14に記載の多孔質モノリスに液体を通過させることによる、複雑な液体混合物中の目的の化合物の液相クロマトグラフィー、分離及び/若しくは抽出及び/若しくは吸着、液体のろ過、又は液体の触媒作用のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質モノリスを製造する方法及びその使用に関する。本発明は、特に前記方法により得られる多孔質モノリス、及びそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質モノリス、特に階層的多孔質モノリス(hierarchically porous monolith)は、とりわけ多モード(multimodal)で相互に連結したそれらの多孔性のおかげで、官能化可能な比表面積に関連するユニークな物質輸送特性を示す。骨格及び細孔径は、化学組成、及び材料を調製するために使用する方法のパラメーターを変化させることによって調節することができる。
【0003】
モノリスは、狭い範囲の細孔径分布を有する円筒形の形態で主に製造され、目的の化合物の分離、吸着若しくは検出、又は化学反応の触媒など、様々な用途に使用されうる。
【0004】
多孔質モノリスを製造する従来の方法、特に論文Lu他、JSST 95(2020)MPH par decomposition spinodale [HPM by spinodal decomposition]に記述されているものは、ゾル-ゲル法によって溶液を2つの二連続相に分離する間に、溶液を型に配置し、この分離の正確な瞬間に、溶媒リッチな相が他のシリカリッチな相から分離されて固化したゲルを得、溶媒リッチな相は細孔を形成し、シリカリッチな相は骨格を形成することからなる。次いで型に配置された溶液は型から取り出され、乾燥の後に多孔質モノリスを得る。
【0005】
配合物の組成を拡張し、この方法による多孔質モノリスの構造への配合物の様々な成分の影響を理解することに関して、多くの研究及び進歩がなされてきた。従って、様々なレベルの多孔性の制御が改善され、有機-無機ハイブリッド又はより最近の炭素骨格など、新しい材料につながる新しい配合物の開発を通して界面化学も多様化した。
【0006】
文献に記述されている方法は、それぞれ、所与のモノリスの正確な形状及び大きさに適合しており、モノリスの構造は、配合、調製条件及び使用する型の形状に大きく依存している。最終的なモノリスの大きさ又はアスペクト比とは無関係に、構造を調節することは可能とは思えない。従って、型の形状に配合を適応させる必要がある。
【0007】
多様な大きさ及びアスペクト比のモノリスに特定の配合を適応させるこの技術的問題は、実際に、ある特定の大きさを得るという点で、一見すると円筒のように単純な形状、特に0.2mmから2mmの間の直径を有する円筒形のモノリスに対して問題をもたらし、これは、Khoo他、Talanta 224 (2021), Revue des materiaux pour colonnes chromato [Review of materials for chromatography columns]の論文で強調されている。この問題は、特にモノリスの製造には、網状組織の高密度化に起因する収縮及びシネレシス工程中の付随する溶媒の排除が伴い、これがモノリスのエッジ不均一性を生成するという事実によって説明され、これは、Bruns, S., Muellner, T., Kollmann, M., Schachtner, J., Hoeltzel, A., & Tallarek, U. (2010), Confocal laser scanning microscopy method for quantitative characterization of silica monolith morphology、Analytical chemistry, 82(15), 6569~6575頁の論文に述べられている。モノリスの寸法をミリメートル未満の直径値に低減するこの問題は、モノリス内で少量の液体を循環させたり、小型化装置の中へモノリスを組み込んだりすることを所望する場合、特に限定的であることがわかる。
【0008】
加えて、現行の方法は再現性が不十分である。工業化の後でさえ、ばらつきがモノリスの製造で観察され、特にクロマトグラフィーに使用される場合、予想される保持時間に関してばらつきが観察される。
【0009】
従って、ある構造特性(骨格の大きさ及び多孔性)をもたらす配合を選択し、次いで、構造の観点からは同一であるが異なる大きさを有し、同じ形状か異なる形状かにかかわらず数桁にわたって分布するモノリスを、十分な再現性を有して得ることは、現時点では不可能である。
【0010】
実施される方法固有のばらつきや形状に関連するこうした技術的障害が解消された場合、その高いポテンシャル並びに分離、吸着及び触媒作用の実証された効率を考慮すると、階層的多孔質モノリスのはるかに広い使用への道が開かれるであろう。より具体的には、ミリメートル未満の直径を有する自立性モノリスを習得すれば、例えば健康の分野の用途に対して、分析処理能力及び体積の低減の点で、分析化学で進行中の開発をサポートすることが可能になる。最後にカラム、抽出担体、触媒及びミクロシステムは、モノリスの形式及び/又は大きさの変更によって必要な、実験パラメーターを再調節するための専門知識又は調査を再配備することを必要とせずに、単一の方法によって全て製造されうる。
【0011】
特に分離の分野において、入手可能な自立性モノリスの体積を低減する試みとして、文献Miyazaki他、J Chrom.A 1043 (2004) Disques MPH pour SPE [HPM disks for SPE]は、ディスク形状のモノリスを得るために、直径を数mmに維持し、モノリスの厚さを低減することを提案している。しかしこの解決策では、1ミリメートル未満のディスクは脆弱なため、この値未満の厚さにすることは不可能である。加えて、ディスクの特定の形状は分離分野にはあまり適合せず、モノリスの高さの低減は理論段数の低減をもたらし、最終的に分離効率を低下させる。
【0012】
論文Motokawa他、J. Chrom A 961 (2002) Capillaires contenant un MPH [Capillaries containing an HPM]及び特許出願EP 1 066 513は、多孔質モノリスを取り出すことなく、キャピラリー内でその場で多孔質モノリスを形成することを提案している。これにより分離のための大きな理論段数を有するができ、HPLC分析に非常に有用である。こうした方法では直径がマイクロメートルの自立性モノリスを製造することができず、統合及び使用の可能性が制限される。更に、この技術を使用して実際に入手できるのは、0.025から0.2mmの間の直径でしかない。走査型電子顕微鏡像は、一方では、キャピラリー内のモノリスの取り付けが不完全であることが非常に多く、再現性更には分離の質に有害になりうる間隙空間が開いていること、他方では、同じ配合であっても構造が類似していないことを示している。加えて、キャピラリーの壁におけるエッジ効果を特に制限するために、より大きな自立性モノリスに比べて、初期組成及び方法の工程に大きな変更を加えなければならず、こうしたキャピラリーの調製を長びかせ、構造的ばらつきをもたらす。最後に、この方法によってキャピラリー内に所望のモノリスを形成するのに成功する割合は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Lu他、JSST 95(2020)MPH par decomposition spinodale [HPM by spinodal decomposition]
【非特許文献2】Khoo他、Talanta 224 (2021), Revue des materiaux pour colonnes chromato [Review of materials for chromatography columns]
【非特許文献3】Bruns, S., Muellner, T., Kollmann, M., Schachtner, J., Hoeltzel, A., & Tallarek, U. (2010)、Confocal laser scanning microscopy method for quantitative characterization of silica monolith morphology、Analytical chemistry, 82(15), 6569~6575頁
【非特許文献4】Miyazaki他、J Chrom.A 1043 (2004) Disques MPH pour SPE [HPM disks for SPE]
【非特許文献5】Motokawa他、J. Chrom A 961 (2002) Capillaires contenant un MPH [Capillaries containing an HPM]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、再現性があり、広範囲の大きさ、特に円筒形のモノリスの場合には直径が少なくとも0.025mmから5mmの間にわたって多孔質モノリスの大きさを適合させることができ、明確に定義された内部構造、特に制御された細孔径を有する多孔質モノリスを製造する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、多孔質モノリスを製造する方法であって、
- 水溶液中のゾル-ゲル前駆体を含むゾルを形成する工程と、
- あらかじめ形成されたゾルを、容器及び容器に収容された少なくとも1つの型に少なくとも部分的に充填する工程であって、型は、ゾルを充填した後にゾルの中に開口する少なくとも1つの開口部を含む工程と、
- ゾルからゾル-ゲルマトリックスを容器内に形成する工程と、
- 型を、型に収容されたゾル-ゲルマトリックスとともに、型の容器から取り出す工程と、
- 型に収容されたゾル-ゲルマトリックスから多孔質モノリスを形成する工程と
を含み、ゾル、ゾル-ゲルマトリックス及び多孔質モノリスの形成は、ゾル-ゲル法によって行われる、方法によってこの要求を満たす。
【0017】
「ゾル-ゲル法」は、式M(OR)n、R’-M(OR)n-1のアルコキシド、又はケイ酸ナトリウム又はチタンコロイドを前駆体として使用して実施されるプロセスを意味し、Mは金属、遷移金属又はメタロイド、特にケイ素であり、R又はR’はアルキル基であり、nは金属の酸化度である。水の存在下では、アルコキシ基(OR)の加水分解が起こり、大きさが一般に1ナノメートル未満の小さな粒子を形成する。これらの粒子は凝集してクラスターを形成し、沈殿せずに懸濁液のままであり、ゾルを形成する。クラスターの増加とそれらの凝縮(condensation)により、媒体の粘度が上がり、ゲルと呼ばれるものが形成される。次いで、ゲルは、ゲル内に存在するポリマーネットワークが高密度化する熟成(aging)の段階の間に、進化(evolve)し続けることができる。次いで、ゲルは収縮し、シネレシスとして知られる工程中に、溶媒は形成されたポリマーネットワークから排出される。次いで、乾燥工程と呼ばれる工程中に溶媒は蒸発し、固体の多孔質ガラスタイプの材料になり、多孔質モノリスがもたらされる。シネレシス及び乾燥工程は同時であってもよい。
【0018】
「ゾルからゾル-ゲルマトリックスを容器内に形成する」とは、型を含む容器に収容されたゾルが、ゾル-ゲル法によって進化してゾル-ゲルマトリックスを形成することを意味する。型に収容されたゾル-ゲルマトリックスは、少なくとも充填後にゾルのレベルより下に位置する開口部を通して、1つのブロックを形成するように、型の外のゾル-ゲルマトリックスと物質的に連続的である。
【0019】
充填後のゾルのレベルより下に型の少なくとも1つの開口部が存在することにより、充填工程中に型にゾルが充填され、残りのプロセス中に、型に収容されたゾルと容器に収容されたゾルとの間のゾルの流体循環(fluidic circulation)が可能になる。
【0020】
容器内で大きなゾル-ゲルマトリックスを製造し、マトリックスの形成中に型に含まれるその一部を取り出すことによって、常に同じ大きさの容器内でゾル-ゲルマトリックスを製造することにより上述の方法で起こるエッジ効果を免れることができる。
【0021】
このような方法により、モノリスが自立性であるか否かにかかわらず、初期混合物の配合を再最適化したり、又は修飾したりすることなく、広範囲の直径にわたって類似のテクスチャー特性を有する多孔質モノリスを製造することができる。
【0022】
こうした方法はまた、容器内にいくつかの型を配置することによって、同一のテクスチャー特性を有する複数の多孔質モノリスを同時に形成することも可能にする。
【0023】
また、多様な形状及びアスペクト比、並びに多様で再現性のある制御された内部構造を有するモノリスを得ることも可能にする。
【0024】
ゾル
好ましくは、ゾルは相分離を含む。好ましくは、ゾルは細孔形成剤を含む。これは、細孔の形成を促進し、特にゾル-ゲルマトリックス中にマクロ孔の形成を可能にする。
【0025】
細孔形成剤は、水溶性ポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アクリル酸)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(エチレンイミン)及びそれらの混合物から選択されうる。水溶性ポリマーは、1,000から100,000ダルトンの間、好ましくは5,000から50,000ダルトンの間、更により良くは5,000から30,000ダルトンの間の分子量を有してもよい。
【0026】
細孔形成剤、特にPEGの濃度は、ゾル1mL当たり0.015から0.35gの間、好ましくはゾル1mL当たり0.02から0.2gの間でありうる。これらの値は、ゾル-ゲル前駆体、特にテトラメトキシシラン(TMOS)の濃度に連動し、ゾル-ゲル前駆体、特にテトラメトキシシラン(TMOS)1mL当たり0.03から1gの間の細孔形成剤、特にPEGでありうる比率に基づき、好ましくは、ゾル-ゲル前駆体、特にテトラメトキシシラン(TMOS)1mL当たり0.06から0.6gの間の細孔形成剤、特にPEGでありうる比率に基づく。
【0027】
ゾル-ゲル前駆体は、アルコキシド、特に加水分解性及び凝縮性有機金属、特にジルコニウムアルコキシド、特にジルコニウムブトキシド(TBOZ)、ジルコニウムプロポキシド(TPOZ)、チタン、ニオブ、バナジウム、イットリウム、セリウム、アルミニウム又はシリコンのアルコキシド、特にテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)、トリメトキシシラン、特にメチルトリメトキシシラン(MTMOS)、プロピルトリメトキシシラン(PTMOS)及びエチルトリメトキシシラン(ETMOS)、トリエトキシシラン、特にメチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、プロピルトリエトキシシラン(PTEOS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、ケイ酸ナトリウム、チタンコロイド、並びにそれらの混合物から選択されうる。
【0028】
ゾル中の細孔形成剤の割合及びゾル中のゾル-ゲル前駆体の割合は、ゲル化後の公知のゾル-ゲルマトリックスの試料からの各ゾル-ゲルマトリックスの特性、特に全気孔率及び平均マクロ細孔径に基づいてあらかじめ決定される。
【0029】
「全気孔率」とは、ゾル-ゲルマトリックス中の細孔の容積のゾル-ゲルマトリックスの全容積に対する比を意味する。この値は0から1の間である。
【0030】
本方法は、
- 細孔形成剤及び形成されるモノリスのゾル-ゲル前駆体を、様々な既知の割合でそれぞれ含むゾル-ゲルマトリックスの試料を事前に形成する工程と、
- ゲル化後に、試料の各ゾル-ゲルマトリックスの特性、特に全気孔率及び平均マクロ細孔径を決定する工程と、
- 形成された多孔質モノリスの特性、特に全気孔率及び平均マクロ細孔径を、特に将来の用途に応じて選択する工程と、
- ゾル中の細孔形成剤の割合及びゾル中のゾル-ゲル前駆体の割合を、あらかじめ決定された試料のゾル-ゲルマトリックスの特性及び形成される多孔質モノリスのために選択された特性の関数として決定する工程と
を含んでもよい。
【0031】
本方法は、形成されるモノリスの全気孔率を選択する工程、及び選択された全気孔率の関数として、細孔形成剤の割合とゾル中のゾル-ゲル前駆体の割合の比を事前に決定することを含んでもよい。本方法は、形成されるモノリスの平均マクロ細孔径を選択する工程、及び選択された平均マクロ細孔径の関数として、ゾル中の細孔形成剤の割合を事前に決定することを含んでもよい。本方法は、形成されるモノリスの全気孔率及び平均マクロ細孔径を選択する工程、並びにゾル中の細孔形成剤の割合とゾル-ゲル前駆体の割合の比が、気孔率の関数としての前記比率の所定の曲線上で選択された全気孔率に対応し、かつ、細孔形成剤の割合が、平均マクロ細孔径の関数としての前記比率の所定の曲線上で選択された平均マクロ細孔径に対応するように、細孔形成剤の割合及びゾル-ゲル前駆体の割合を事前に決定することを含んでもよい。
【0032】
ゾルは、添加剤、特に酸、特に酢酸、若しくは硝酸、若しくはコハク酸、及び/又はゾル-ゲルマトリックスを溶解するための薬剤の前駆体、特に尿素、若しくはアミド官能基を有する化合物、特にホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド(NMF)並びにそれらの混合物を含んでもよい。
【0033】
ゾルは、0.001モル/Lから2モル/Lの間の酸、特に酢酸を含んでもよい。
【0034】
ゾルは、0.01から1.3g/mLの間、好ましくは0.01から0.4g/mLの間のゾル-ゲルマトリックス溶解剤前駆体、特に尿素を含んでもよい。
【0035】
好ましくは、ゾルは、スピノーダル分解による相分離を可能にする配合を有する。
【0036】
或いは、ゾルは、エマルジョン又はテンプレート溶液である。
【0037】
ゾルの形成
ゾルは、ゾル-ゲル前駆体、好ましくはゾル-ゲル前駆体及び細孔形成剤を含む溶液を、特に5分以上、より良くは10分以上、更により良くは15分以上の期間撹拌することによって形成されうる。撹拌時間は、3時間以下、より良くは2時間以下でありうる。撹拌中に、温度は実質的に一定の所定値、特に0℃から90℃の間、より良くは0℃から50℃の間で制御されうる。ゾル調製のこの予備工程により、相分離の前にゾル-ゲル法を開始することが可能になり、ゾルがある程度の相分離で固まるようにこれ以上混合する必要がなくなり、容器の中に移す際にゾル溶液の均質性を確保することができる。
【0038】
充填
容器はいくつかの型を収容することができ、充填は型にゾルを充填することを含み、各型は充填後にゾルの中に開口する少なくとも1つの開口部を含む。型は同一であっても、同一でなくともよい。型は異なる寸法を有してもよい。これにより、同じ内部構造、及び同じ又は異なる大きさ又は形状を同時に有する、いくつかの多孔質モノリスを製造することができる。容器及び型の充填は、充填後に開口部がゾルのレベルより下になるように、容器に収容された型の中にゾルを注入する、又は型を収容する容器の中にゾルを注入することによって実施されうる。充填は容器の中にゾルを注入することによって実施されてもよく、容器内のゾルのレベルが型の開口部に到達した時に型は充填される。充填は型の中にゾルを注入することによって実施されてもよく、容器は、型内のゾルのレベルが型の開口部に到達した時に充填される。
【0039】
或いは、容器及び型は、容器の中にゾルを注入し、次いで容器に収容されたゾル中に型を少なくとも部分的に、好ましくは徐々に浸漬することによって充填され、ゾルのレベルが前記開口部に到達した時に、型又は各型は開口部を通してゾルで充填される。
【0040】
好ましくは、充填後に、型はゾルで完全に充填される。
【0041】
充填後に、型は、容器に収容されたゾルに完全に浸漬されうる。
【0042】
或いは、充填中に、型は、ゾルに部分的に浸漬される。
【0043】
型は単一の開口部を有してもよい。この場合、型又は各型の開口部は、好ましくは、ゾルが注入される容器の開口部に向かって容器内で配向され、型は、好ましくは、充填後にゾルに完全に浸漬される。
【0044】
型は、少なくとも2つの開口部を有することができ、そのうちの少なくとも1つは、充填後のゾルのレベルより下にあり、型又は各型の開口部の他方は、充填後のゾル内又はゾル外にある。
【0045】
好ましくは、充填は、容器及び型内のゾルの気泡、並びに/又は化学組成及び/若しくは温度の勾配が存在することなく行われる。
【0046】
ゾル-ゲルマトリックスの形成
ゾル-ゲルマトリックスの形成は、ゲルを形成するための凝縮、及び任意選択でゲルを高密度化するための少なくとも部分的な熟成を含んでもよい。ゾル-ゲルマトリックスは、凝縮後のゲルから、又は少なくとも部分的な熟成後のゲルから形成されうる。
【0047】
好ましくは、容器内でのゾル-ゲルマトリックスの形成は、ゾル-ゲルマトリックスの乾燥を含まない。
【0048】
凝縮中に温度は実質的に一定に、特に15℃から90℃の間、好ましくは25℃から70℃の間の所定の温度に保持されうる。
【0049】
凝縮は、10分超、より良くは20分超継続することができる。凝縮は、4時間未満、より良くは2時間未満継続することができる。
【0050】
少なくとも部分的な熟成は、少なくとも1時間、より良くは少なくとも3時間、好ましくは少なくとも15時間継続することができる。少なくとも部分的な熟成は、2週間未満、特に72時間未満継続することができる。好ましくは、熟成期間は、メソ孔及び/又はミクロ孔の形成を制限するために十分に短い。
【0051】
少なくとも部分的な熟成は、室温で実施されうる。
【0052】
好ましくは、ゾル-ゲルマトリックスの形成は、容器及び型の中で同じ方法で実施される。全気孔率及び細孔径は、好ましくは、容器及び型において実質的に均一である。
【0053】
ゾル-ゲルマトリックス
好ましくは、容器中でのゾル-ゲルマトリックスの形成によって得られるゾル-ゲルマトリックスは、マクロ孔、特に50nm以上の寸法のマクロ孔を有する。マクロ孔は、10μm以下の寸法を有してもよい。
【0054】
好ましくは、孔は、ゾル-ゲルマトリックス中で相互に連結される。
【0055】
好ましくは、細孔形成剤の濃度は、多孔質モノリスのために選択されるマクロ細孔径の関数として選択される。
【0056】
好ましくは、細孔形成剤の濃度とゾル-ゲル前駆体の濃度の間の比は、多孔質モノリスのために選択されるゾル-ゲルマトリックスの骨格の厚さの関数として選択される。
【0057】
型の取り出し
型又は各型を、型が収容するマトリックスとともに容器から取り出すことは、型を含むゾル-ゲルマトリックスのブロックを容器から取り出すこと、並びに型又は各型、及び型が収容するゾル-ゲルマトリックスをあらかじめ取り出されたブロックから取り出すことを含んでもよい。型又は各型をブロックからの取り出すことは、対応する型と同じ高さのゾル-ゲルマトリックスを切断することによって、又は型を取り巻くゾル-ゲルマトリックスを壊すことによって行われうる。
【0058】
或いは、型又は各型を、型が収容するマトリックスとともに取り出すことは、上述のようにブロックを取り出した後に、対応する型を、型を取り巻くゾル-ゲルマトリックスから取り出すことによって、又は、特に対応する型がゾル-ゲルマトリックスに部分的にしか浸漬されていない場合には、ブロックを事前に取り出すことなく容器中で直接実施されうる。
【0059】
型に収容されたマトリックスの取り出し
好ましくは、型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックスは、型から取り出すことができる程度に十分まとまっている。
【0060】
本方法は、型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックスを、対応する型から取り出すことを含んでもよい。
【0061】
型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックスの取り出しは、前記ゾル-ゲルマトリックスに対する制御された圧力によって、例えば型より小さい大きさの固体による直接圧力によって、又は流量が制御されたガスの圧力によって実施されうる。
【0062】
或いは、型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックスの取り出しは、型又は各型を開くことによって、特に型又は各型を切断することによって、又は型又は各型の2つの部分を互いに分離することによって実施される。型は、相互に移動可能な、特にヒンジを介して互いに対して分離可能又は移動可能な2つの部分の形態であってもよい。
【0063】
ゾル-ゲルマトリックスを収容する型は、型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックスを取り出す工程中に、液体に浸漬されうる。これによって、ゾル-ゲルマトリックスの取り出しが促進される。
【0064】
メソ孔の生成
本方法は、階層的多孔性を備えるゾル-ゲルマトリックスを形成するように、ゾル-ゲルマトリックス中のメソ多孔性の制御された生成を含みうる。好ましくは、この工程は型又は各型を容器から取り出した後で、型又は各型のゾル-ゲルマトリックスから多孔質モノリスを形成する前に行われる。複数の型の場合には、この工程は、得られた全てのゾル-ゲルマトリックスに対して同時に、又はメソ多孔性の制御された生成の実質的に同一又は異なる条件下で別に実施されうる。
【0065】
好ましくは、得られる細孔径は50nm以下、より良くは2から50nmの間である。
【0066】
これによって、階層的多孔質モノリス、すなわち少なくとも2桁の細孔径を有する、好ましくはゾル-ゲルマトリックスの形成中に形成されるマクロ孔、及びメソ孔の制御された生成中に形成されるメソ孔を得ることができる。こうした多孔質モノリスは大きな内部表面積を有し、通過する液体とその材料の間の交換表面積を増加させ、拡散によってカバーされる距離を最小限にする。加えて、これはゾル-ゲルマトリックスに柔軟性を与えながら、破損のリスクを低減する。また、ゾル-ゲルマトリックスの乾燥時間も低減する。
【0067】
メソ多孔性の制御された生成は、まだ型にある間にゾル-ゲルマトリックス中で行われうる。階層的多孔性を備えるゾル-ゲルマトリックスを、型から取り出しても、取り出さなくともよい。或いは、メソ多孔性の制御された生成は、ゾル-ゲルマトリックスを型から取り出した後に行われる。
【0068】
メソ多孔性の制御された生成は、型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックスを溶解させる薬剤及び/又はゾル-ゲルマトリックスを溶解させる薬剤の前駆体を含むメソ多孔性を生成するための水溶液に、ゾル-ゲルマトリックスを浸漬することによって行われる。
【0069】
溶解剤は、例えば1Mの濃度の水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、若しくはフッ化水素酸又はそれらの混合物でありうる。
【0070】
ゾル-ゲルマトリックス溶解剤前駆体は、尿素又はアミド官能基を有する化合物、特にホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド(NMF)及びそれらの混合物でありうる。
【0071】
ゾル-ゲルマトリックス溶解剤前駆体の量は、初期ゾル1mL当たり0.01から1.3gの間、好ましくは初期ゾル1mL当たり0.01から0.4gの間である。
【0072】
メソ多孔性を生成するための溶液は、上述のゾル-ゲルマトリックス溶解剤前駆体及び上述の溶解剤を含んでもよい。
【0073】
好ましくは、メソ多孔性を生成するための溶液がゾル-ゲルマトリックス溶解剤前駆体を含む場合、メソ多孔性を生成するための溶液は室温を超える温度に加熱される。
【0074】
好ましくは、溶解剤及び/又は溶解剤前駆体の濃度は、ゾル-ゲルマトリックスを全体として溶解させることなくゾル-ゲルマトリックスにメソ孔を形成するような方法で、ゾル-ゲルマトリックスの局所的な溶解を可能にするような濃度である。溶解剤及び/又は溶解剤前駆体の体積と、ゾル-ゲルマトリックスの体積の間の比は、メソ多孔性の制御された生成の工程の持続時間、この工程が実施される温度、及び溶解剤の濃度の関数として選択されうる。
【0075】
こうした方法によって、完全に制御された大きさのメソ孔を得ることができる。
【0076】
好ましくはメソ多孔性の制御された生成は、50時間未満、より良くは20時間未満続く。メソ多孔性の制御された生成は、0.5時間超、より良くは10時間超、更により良くは20時間超続くことができる。この工程中に、ゾル-ゲルマトリックスの温度は30℃以上、より良くは60℃以上及び/又は150℃以下、より良くは120℃以下であることができる。温度は、この処理中に実質的に一定に保つことができる。この工程はオートクレーブ中で実施されうる。
【0077】
或いは、この方法は、メソ多孔性の生成を伴わない。
【0078】
モノリスの形成
複数の型の場合には、モノリスの形成は、得られた全てのゾル-ゲルマトリックスに対して同時に実施されうる。
【0079】
多孔質モノリスの形成は、特に熟成が前もって完全に行われない場合には、ゾル-ゲルマトリックスを高密度化するための少なくとも部分的な熟成を伴ってもよい。
【0080】
多孔質モノリスの形成は、型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックスを乾燥することを含んで、乾燥されたゾル-ゲルマトリックスを形成することができる。乾燥工程は、空気又は不活性ガス、特に二窒素、アルゴン若しくは二酸化炭素、ヘリウム、又は二酸素若しくは二水素の流れの下で実施されうる。
【0081】
乾燥は、メソ多孔性の制御された生成が行われる場合、好ましくはその後に行われる。
【0082】
乾燥工程は少なくとも5時間及び/又は20時間未満でありうる。
【0083】
乾燥工程は、臨界条件、より良くは超臨界条件において、特にオートクレーブ又は凍結乾燥装置にて実施されうる。
【0084】
多孔質モノリスの形成は型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、特に乾燥の後に、ゾル-ゲルマトリックスの熱処理を含んでもよい。熱処理は、空気又は不活性ガス、特に二窒素、アルゴン若しくは二酸化炭素、ヘリウム、又は二酸素若しくは二水素の流れの下で、密閉容器内で、徐々に加熱し、続いて最終温度を所定時間維持することによって実施されうる。徐々の加熱は、多孔質モノリスを得るように300℃以上の温度まで、より良くは340℃以上、例えば、実質的に350℃に到達するまで0.5℃/分の増加からなることができる。最終温度は、1時間を超えて維持することができる。これにより、モノリスの構造を安定化させ、合成に由来する有機残留物を除去することができる。
【0085】
ゾル-ゲルマトリックスが型又は各型から取り出される場合、これは多孔質モノリスの形成前に行われることが有利である。
【0086】
容器
容器は、容器内の温度を制御するためのシステムを含んでもよい。
【0087】
好ましくは、容器は複数の型を収容するように構成される。
【0088】
容器は、特に多角形、楕円形、卵形又は円形の底部を有する円筒形又は円錐形でありうる。
【0089】
容器はプラスチック製、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はガラス若しくはステンレス鋼製であってもよい。
【0090】
容器の容量は、0.5mL以上でありうる。
【0091】
型
好ましくは、型は、容器に完全に収容される。或いは、型は容器からはみ出ていてもよい。
【0092】
型は、単一の開口部を有してもよい。次いで、好ましくは型は容器に完全に収容され、ゾルの充填は、型に充填することによって好ましくは実施され、容器の充填は、ゾルのレベルが型又は少なくとも1つの型の開口部に到達した時に行われる。この場合、好ましくは、型は、充填後にゾルに完全に浸漬される。
【0093】
型は、少なくとも2つの開口部を有してもよい。次いで容器にゾルを充填することによって、型にゾルを充填することができ、型又は各型の開口部の少なくとも1つが充填後にゾル内に開口している限り、型はゾルに完全に又は部分的に浸漬されうる。
【0094】
好ましくは、容器内で、開口部の1つが型の最下面に位置するように、型は容器に配置される。
【0095】
型は、プラスチック製、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、若しくはポリ乳酸製、又はガラス、特に溶融シリカ若しくはホウケイ酸塩製、又はステンレス鋼製であってもよい。型は、3D印刷又はキャスティングによって形成されうる。
【0096】
型は、多孔質体からなってもよい。
【0097】
型、又は少なくとも1つの型、より良くは各型は、中空円筒、特に回転円筒であってもよい。
【0098】
型又は少なくとも1つの型、より良くは各型は、その対向する2つの端部で開口していてもよい。型又は各型は、その縦軸が容器内で垂直に延びて、容器内に配置されうる。
【0099】
型又は少なくとも1つの型、より良くは各型は、100mm以下、より良くは20mm以下、更により良くは13mm以下、より良くは8mm以下、及び/又は0.025mm以上の最大横寸法、具体的には直径を有する空洞を有してもよい。
【0100】
型又は各型の容量は、10nL以上及び/又は400mL以下、より良くは30nLから100mLの間であることができる。型又は少なくとも1つの型、更に良くは各型は、その最大横寸法、特にその直径を超える高さを有してもよい。
【0101】
型又は少なくとも1つの型、より良くは各型は、対向する壁に延びる2つの開口部を有してもよい。
【0102】
型又は少なくとも1つの型、より良くは各型は、中空であり、球形、円筒形又は円錐形、特に多角形、楕円形、卵形又は円形の底部を有する円筒形又は円錐形であってもよい。型は少なくとも1つの開口端、より良くは2つの対向する開口端を有し、特にその2つ端で開口したチューブの形態で開口部を形成することができる。
【0103】
開口部は、円形の輪郭を有してもよい。
【0104】
本方法は、型又は各型からゾル-ゲルマトリックスを取り出す工程を除外することができ、型は多孔質モノリスのためのケーシングを形成する。この場合、型はキャピラリーである、又は熱収縮性材料で作られる、又はピペットチップであってもよい。
【0105】
キャピラリー
型は、5μmから3mmの間、より良くは25μmから500μmの間の内径を有するキャピラリーでありうる。
【0106】
キャピラリーは溶融シリカ製であってもよい。キャピラリーは、前の活性化工程を介して活性化された内部表面を有してもよい。
【0107】
この場合、本方法は、キャピラリーからゾル-ゲルマトリックスを取り出す工程を除外することができる。
【0108】
多孔質モノリスが形成されたキャピラリー内に多孔質モノリスがある場合、製造方法は、多孔質モノリス上の型、特にキャピラリーの収縮、特に熱収縮の工程を除外する。
【0109】
この場合、メソ多孔性の生成は、適用可能な場合には、特に上述した、溶解剤前駆体、特に尿素を含む水溶液中でキャピラリーを加熱することによって好ましくは行われる。
【0110】
モノリス
好ましくは、ゾル-ゲルマトリックスは、型から又は各型から取り出され、得られた多孔質モノリスは自立性である。
【0111】
好ましくは、多孔質モノリスは階層的多孔質モノリスである。
【0112】
多孔質モノリスは、10mm以下、より良くは6mm以下及び/又は0.02mm以上の直径を有してもよい。
【0113】
好ましくは、多孔質モノリスは自立性であり、1mm以下の直径を有する、又は多孔質モノリスはキャピラリー内にあり、かつ0.2mm以上の直径を有する。
【0114】
多孔質モノリスは、マクロ孔、すなわち50nm以上の寸法を有する細孔、及びメソ孔、すなわち2から50nmの間の寸法を有する細孔を含んでもよい。
【0115】
多孔質モノリスは、その体積全体を通して実質的に均一な構造を有してもよい。
【0116】
多孔質モノリスは、0.2以上、より良くは0.4以上、より良くは1以上、及び/又は1,000以下、より良くは500以下、更により良くは100以下、より良くは50以下、更により良くは20以下の、その最大横寸法に対するその高さとして定義される、アスペクト比を有してもよい。
【0117】
好ましくは、多孔質モノリスは、多角形、楕円形又は円形の底部を有する円筒形、特に回転円筒形である。
【0118】
モノリスは自立性であることができ、本方法は、熱収縮性チューブ、ピペットチップ又は固相取り出しカートリッジ(solid phase extraction cartridge)の中に自立性多孔質モノリスを挿入する工程と、熱収縮性チューブの場合には、熱収縮性チューブを加熱して、多孔質モノリスを前記チューブ内に封入する工程とを含んでもよい。
【0119】
本方法は、製造後の多孔質モノリスの修飾、特に多孔質モノリスの表面の官能化を含んでもよい。多孔質モノリスの表面は、疎水性炭化水素リガンド(例えば、オクタデシルリガンド)、又は2,3-ジヒドロキシプロピル誘導体などの親水性リガンドなどの分子で覆われてもよい。こうした修飾カラムのリガンドは、公知の手順を使用して更に修飾することができる。多孔質触媒又は酵素担体は、酵素、例えばグルコースイソメラーゼ、又は触媒金属元素、例えば白金及びパラジウムを添加することによって調製されうる。
【0120】
本発明はまた、特に上述の方法を使用して得られる、厳密に1mm未満の最大横寸法を有する自立性多孔質モノリスにも関する。
【0121】
自立性多孔質モノリスは、20μm以上の最大横寸法を有してもよい。
【0122】
好ましくは、多孔質モノリスは階層的多孔質モノリスである。
【0123】
多孔質モノリスは、マクロ孔、すなわち50nm以上の寸法を有する細孔、及びメソ孔、すなわち2から50nmの間の寸法を有する細孔を含んでもよい。
【0124】
多孔質モノリスは、その体積全体を通して実質的に均一な多孔性を有してもよい。
【0125】
多孔質モノリスは、0.2以上、より良くは0.4以上、及び/又は1,000以下、より良くは100以下、更により良くは50以下、好ましくは20以下のアスペクト比を有してもよい。
【0126】
好ましくは、多孔質モノリスは、多角形、楕円形、円形の底部を有する円筒形、特に回転円筒形である。
【0127】
本発明はまた、型、特にキャピラリーと、型に収容され、特に上述の方法を使用して得られ、厳密に200μmより大きい最大横寸法を含む多孔質モノリスとのアセンブリにも関する。
【0128】
好ましくは、多孔質モノリスは、型の少なくとも1つの断面を充填し、多孔質モノリス上で型を収縮させる工程、特に熱収縮させる工程がなく型内で製造される。
【0129】
多孔質モノリスが、それが形成された型内にある場合、多孔質モノリスは、多孔質モノリスのない部分を含むその全長にわたって、型、特にキャピラリーの内部断面と実質的に等しい断面を有してもよい。
【0130】
好ましくは、多孔質モノリスは階層的多孔質モノリスである。
【0131】
多孔質モノリスは、マクロ孔、すなわち50nm以上の寸法を有する細孔、及びメソ孔、すなわち2から50nmの間の寸法を有する細孔を含んでもよい。
【0132】
多孔質モノリスは、その体積全体を通して実質的に均一な多孔性を有してもよい。
【0133】
好ましくは、アセンブリは、キャピラリーの壁とキャピラリーの多孔質モノリス接続部分の間に、平均マクロ細孔径より少なくとも20倍の長さ、より良くは平均マクロ細孔径より少なくとも10倍の長さにわたって延びる、連続的な流体経路を有さないことを特徴とする。
【0134】
好ましくは、型、特にキャピラリーは、変形、特にアセンブリの形成中に加熱による変形を受けない。好ましくは、型、特にキャピラリーは、特にアセンブリの形成中の収縮する工程の結果として、多孔質モノリスに圧縮力を及ぼさない。
【0135】
多孔質モノリスが、それが形成されたキャピラリー内にある場合、製造方法は、多孔質モノリス上の型、特にキャピラリーの、収縮の工程、特に熱収縮の工程を除外する。
【0136】
多孔質モノリスは、0.2以上、より良くは0.4以上及び/又は1,000以下、より良くは100以下、更により良くは50以下、好ましくは20以下のアスペクト比を有してもよい。
【0137】
好ましくは、多孔質モノリスは円筒形、特に回転円筒形である。
【0138】
使用
本発明はまた、上述の方法によって得られる多孔質モノリス若しくは上述の多孔質モノリスに液体を通過させることによる、液相クロマトグラフィー、複雑な液体混合物における興味の対象となる化合物の分離及び/若しくは抽出及び/若しくは吸着、液体のろ過、又は液体の触媒作用のための方法にも関する。
【0139】
前記方法は、自立性モノリスを熱収縮性チューブへ組み込む工程、及びチューブを流体フローシステムへ組み込む工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1】本発明による多孔質モノリスを製造する方法の様々な工程を、模式的に示す図である。
【
図2】本発明による製造方法によって製造された、自立性多孔質モノリスの例を示す図である。
【
図3】異なる直径のモノリスについて、走査電子顕微鏡により得られる像を示す図である。
【
図4】多孔質モノリスの細孔直径に対する細孔容積を示すグラフの図である。
【
図5】本発明による方法によって得られた多孔質モノリスにおける、染料の混合物の分離の工程を示す図である。
【
図6】溶媒(水、形成されたアルコール及び触媒を含む)のモル比及びゲル化の最後にゾル-ゲルマトリックス中に形成されたゲル(SiO
2)のモル比の関数としての、PEGのモル比を示す三成分図である。
【
図7】本発明の方法によって形成された、直径800μmのモノリスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0141】
図1は、多孔質モノリスを製造する方法の様々な工程を示す。
【0142】
この方法は、示されていないが、細孔形成剤並びにゾル-ゲル前駆体並びに可能な添加剤、特に酸及び/又はマトリックス溶解剤の水溶液を形成する第1の工程を含む。
【0143】
細孔形成剤は水溶性ポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アクリル酸)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(エチレンイミン)から選択されうる。
【0144】
水溶性ポリマーは、1,000から100,000ダルトンの間、好ましくは5,000から50,000ダルトンの間、更により良くは5,000から30,000ダルトンの間の分子量を有しうる。
【0145】
細孔形成剤、特にPEGの濃度は、ゾル1mL当たり0.015gから0.35gの間、好ましくはゾル1mL当たり0.02から0.2gの間でありうる。これらの値はゾル-ゲル前駆体、特にテトラメトキシシラン(TMOS)の濃度に連動しており、ゾル-ゲル前駆体、特にテトラメトキシシラン(TMOS)1mL当たり0.03~1gの細孔形成剤、特にPEGの値に基づいており、好ましくはゾル-ゲル前駆体、特にテトラメトキシシラン(TMOS)1mL当たり、0.06~0.6gの細孔形成剤、特にPEGの値に基づいている。それは、最終的な多孔質モノリスに所望されるマクロ細孔径によって選択される。
【0146】
ゾル-ゲル前駆体は、アルコキシド、特に加水分解性及び凝縮性有機金属化合物、特にジルコニウムアルコキシド、特にジルコニウムブトキシド(TBOZ)、ジルコニウムプロポキシド(TPOZ)、チタン、ニオブ、バナジウム、イットリウム、セリウム、アルミニウム又はケイ素のアルコキシド、特にテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)、トリメトキシシラン、特にメチルトリメトキシシラン(MTMOS)、プロピルトリメトキシシラン(PTMOS)及びエチルトリメトキシシラン(ETMOS)、トリエトキシシラン、特にメチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、プロピルトリエトキシシラン(PTEOS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)並びにそれらの混合物、例えばTMOSから選択することができる。また、特に純度要件が許容する場合、すなわちあまり高くない場合には、ケイ酸ナトリウム又はチタンコロイドなどの前駆体を使用することも可能である。
【0147】
ゾル中の細孔形成剤の割合及びゾル中のゾル-ゲル前駆体の割合は、ゲル化直後に採取された公知のゾル-ゲルマトリックスの試料の特性、特に全気孔率及び平均マクロ細孔径に基づいてあらかじめ決定される。これは、
図6に特に示されており、細孔形成剤(この場合PEG)の割合、マトリックス中のゲルの割合(TMOSのゲル化によって形成されたSiO
2の割合)及び溶媒(水、生成アルコール及び触媒を含む)の割合をデータとして有する、三成分図である。これら3つのデータの合計は、常に100%である。前述のデータのパーセンテージが異なるゾル-ゲルマトリックスA~Hを、成形した。各ゾル-ゲルマトリックスに形成された全気孔率及び平均マクロ細孔径を決定した。ゾル-ゲルマトリックスA~Fは、マトリックス(SiO
2)中に全て同じ割合のゲルを有するが、細孔形成剤の異なる割合を有し、とりわけAからEにかけて減少している。実質的に全気孔率は一定のままで、平均細孔径はAからEにかけて増加していることがわかる。ゾル-ゲルマトリックスG、C及びHは、実質的に同じ量の溶媒を有するが、ゾル-ゲルマトリックス中のゲル(SiO
2)の量に対する細孔形成剤の量の異なる比を有し、とりわけGからC、Hへと減少する。実質的に細孔径は一定のままで、全気孔率はGからC、Hへと減少することがわかる。従って、細孔形成剤/ゾル-ゲル前駆体ペアについて、特定の全気孔率及び平均マクロ細孔径を有する多孔質モノリスの形成を可能にする、細孔形成剤及びゾル-ゲル前駆体の割合を決定するのは容易である。
【0148】
次いで、0℃から90℃の間、より良くは0℃から50℃の間の制御された実質的に一定の温度で、5分から3時間の間、更により良くは15分から2時間の間の所定の時間、溶液を撹拌する。この撹拌する工程により、相分離前にゾル5を形成するためのゾル-ゲル法を開始することができる。
【0149】
次いで、工程20で、前記容器12、及び容器12に収容される少なくとも1つの型15を少なくとも部分的に充填するように、容器12にゾル5を添加する。
【0150】
気泡又は化学組成勾配が存在することなく型15が徐々に充填されるように、ゾル5が徐々に充填される容器内に型15を配置することができる。型15が完全に浸漬されるまで、充填を実施することができる。部分的な浸漬も可能である。容器12に収容されたゾル5に、型を加えることも可能である。
【0151】
容器12は、同一又は異なる複数の型15を収容するように、構成されうる。容器12は図示のように円筒形であってもよく、他の形状を有してもよい。容器12は、プラスチック、特にPTFE、PP、PE、PC、PET、PVC、又はガラス又はステンレス鋼で製造されうる。
【0152】
型15は、型15の向かい合う表面に2つの開口部17及び18を有し、2つの開口部の少なくとも1つである17は、充填後にゾルのレベルより下に位置する。こうした開口部は、型15を収容している容器12を充填することによって、又は容器12に収容されたゾル5に型15を少なくとも部分的に浸漬し、ゾル全体が凝縮する前にゾル5を型の内部と外部の間で循環させることによって、型15を充填することができる。図示した例では、型15はその両端が開口したチューブの形状をしており、容器12内で垂直に延びているが、全く異なることができ、容器内でチューブは異なる配向をすることができる及び/又は型は別の形状を有してもよい。
【0153】
型15は、図示のように容器12に完全に収容されていてもよく、又は容器12からはみ出ていてもよい。前者の場合、充填後に型15は完全にゾル5に浸漬されていても、浸漬されていなくてもよい。
【0154】
型15は、プラスチック、特にPTFE、PEEK、PE、PP、若しくはポリ乳酸又はガラス又はステンレス鋼、特に溶融シリカ又はホウケイ酸塩で製造されてもよい。
【0155】
型は多孔質体からなってもよい。
【0156】
型は、3D印刷又はキャスティングによって形成されてもよい。
【0157】
型15の空洞の最大横寸法、特にこの空洞の直径dは、13mmから0.025mmの間でありうる。
【0158】
ゾル5が容器12及び型15に入れられると、容器及び型全体を通して凝縮が工程30で起こる。このゾル-ゲル転移には、全体の少なくとも部分的な成熟化(又は熟成)が続くことができる。この工程により、形成されたゾル-ゲルマトリックス22中に、その形状及び大きさに関係なく、類似の性質の均一なマクロ孔の形成が保証される。
【0159】
凝縮中に、温度は実質的に一定に、特に15℃から90℃の間、好ましくは25℃から70℃の間に、10分から4時間の間の期間維持することができる。凝縮の持続時間及び所定の温度は、所望のゾル-ゲルマトリックスの内部構造及びゾル形成工程における初期溶液の撹拌時間で決まる。
【0160】
少なくとも部分的熟成は、室温で30分から2週間の間、とりわけ72時間未満続いてもよい。好ましくは、メソ孔及び/又はミクロ孔の形成を防ぐために、熟成期間は十分に短い。
【0161】
次いで、工程40において、型15を収容するゾル-ゲルマトリックスのブロック22は、容器12から取り出される。型15が部分的にしか浸漬されていない場合、以下に見られるように、この工程は任意選択であってもよい。
【0162】
次いで、工程50において、例えばブロック22のゾル-ゲルマトリックスを型と同じ高さに切断し、次いで型15を型が収容するゾル-ゲルマトリックスとともに取り出すことによって、又はブロック22のゾル-ゲルマトリックスを型15のまわりで壊すことによって、型15は、型が収容するゾル-ゲルマトリックス25とともに多孔質固体から取り出される。浸漬が部分的であった場合、型15を、型が収容するゾル-ゲルマトリックス25とともに、あらかじめ取り出されたブロックから又は容器12から直接取り外すことができる。
【0163】
次いで、工程50において、ゾル-ゲルマトリックス25を型15から取り出すことができる。これは、型15を保持しながらゾル-ゲルマトリックス25にかけられる、制御された圧力によって達成される。圧力は、プラスチック製若しくはガラス製の固体、例えば溶融シリカキャピラリーなど、若しくは型15より大きさの小さい任意の他のかなり強靭な材料により、又は流量が制御されたガスにより得られうる。取り出し操作は、型15とゾル-ゲルマトリックス25のアセンブリを液体に浸漬することによって、促進されうる。ゾル-ゲルマトリックス25を取り出すために、型15とゾル-ゲルマトリックス25のアセンブリを優しくタッピングすることによって、わずかな圧力差を発生させることは任意選択で可能である。或いは、特に型の最大横寸法が、特に0.02mmから0.3mmの間と小さい場合、ゾル-ゲルマトリックス25は型15に保持される。
【0164】
型15が、型が収容するゾル-ゲルマトリックス25とともに、ブロック22又は容器から取り出されると、又はゾル-ゲルマトリックス25が型15から取り出されると、本方法は、メソ多孔性の制御された生成の工程を含んでもよい。この工程は、ゾル-ゲルマトリックス25又は型/ゾル-ゲルマトリックスアセンブリを、塩基性溶液、例えば1M水酸化アンモニウム溶液に浸漬することによって、又は前駆体、例えば尿素の存在下の水中で材料を加熱し、その場でアンモニアを発生させることによって、実施されうる。第2の方法では、水酸化アンモニウムを添加できることに注意されたい。この操作は、30℃から150℃の間である、ゾル-ゲルマトリックスの所定の、実質的に一定の温度で、0.5時間から50時間の間続いてもよい。この工程を、いくつかのゾル-ゲルマトリックスについて、それらが同じブロックからか否かにかかわらず、同時に、すなわち同じ浴で実施してもよい。
【0165】
好ましくは、得られる細孔径は50nm以下、より良くは2から50nmの間である。
【0166】
次いで、得られたゾル-ゲルマトリックス、又は型が収容しているゾル-ゲルマトリックスとともに型は、乾燥される。この目的のために、それらを密閉容器、特にオートクレーブに入れ、臨界又は超臨界条件下で、特に空気又は不活性ガス、特に二窒素(N2)の流れの下で、10から20時間の期間乾燥させる。次いで、不活性ガス(他のガスを使用してもよい)の流れ下で、350℃に到達するまで0.5℃/minの勾配、この最後の温度で数時間のプラトーに供される。これらの工程は、いくつかのゾル-ゲルマトリックスに対して同時に、すなわちそれらが同じブロックからか否かにかかわらず同じ密閉容器内で、実施されうる。
【0167】
すぐに使用できるモノリスが、このように得られる。直径及び高さが異なるモノリスの例を、
図2に示す。これらのモノリスは、以下の実施例に記述されるように、異なる大きさの型を用いてゾルから全て同時に製造される。
【0168】
得られた多孔質モノリスは、マクロ孔、すなわち50nm以上の選択された寸法を有する細孔、及びメソ孔、2から50nmの間の選択された寸法を有する細孔を含みうる。
【0169】
多孔質モノリスは、
図7に見られるように、その体積全体を通して実質的に均一な構造を有してもよい。
【0170】
走査電子顕微鏡(SEM)で観察した、同じ容器内の異なる大きさの異なる型を用いて得られた異なるモノリス直径のマクロ多孔性を、
図3に示す。画像a)は直径5mmの多孔質モノリスに対応し、画像b)は直径0.8mmの多孔質モノリスに対応し、画像c)は、0.3mmの多孔質モノリスに対応する。
【0171】
図4は、メソ多孔性の生成を制御する工程を有する以下の実施例による多孔質モノリスのナノメートルでの細孔直径pの分布を、細孔容積Vの関数として示している。このグラフから、細孔直径pの分布が主として2つの細孔直径p、すなわちメソ孔に対応する約20nm、及びマクロ孔に対応する約2μmを有することがわかる。このグラフは、本方法により多孔質モノリスの細孔直径を正確に制御できることを示している。
【0172】
多孔質モノリスは、0.2から100の間の、最大横寸法に対する高さとして定義されるアスペクト比を有してもよい。
【0173】
モノリスは自立性であってもよく、本方法は、自立性多孔質モノリス又は各自立性多孔質モノリスを熱収縮性チューブ又はピペットチップへ挿入する工程と、熱収縮性チューブの場合には、熱収縮性チューブを加熱して多孔質モノリスを前記チューブに封入する工程とを含んでもよい。
【0174】
本方法は、多孔質モノリスの製造後の修飾、特に多孔質モノリスの内部表面の官能化を含んでもよい。官能化は、液相又は気相プロセスを使用して、オルガノシラン、特にクロロシラン(例えばオクタデシルトリクロロシラン)及びアルコキシシラン(オクタデシルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン)、又はヘキサジメチルシラザンを使用して実施されうる。
【0175】
次いで、得られた多孔質モノリスは、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の例えば熱収縮性チューブを使用して、流体フローシステムへ組み込まれうる。
【0176】
或いは、型は、5μmから3mmまで、より良くは5μmから500μmまでの内径を有する、溶融シリカキャピラリーであってもよい。この場合、本方法は、キャピラリーからゾル-ゲルマトリックスを取り出す工程を除外することができる。キャピラリーは、前の活性化工程を介して活性化された内部表面を有していてもよい。
【0177】
この場合、メソ多孔性及び/又はミクロ多孔性の生成は、前駆体、特に上述の尿素を含む水中でキャピラリーを加熱することによって好ましくは実施される。
【0178】
或いは、型は1つのみの開口部を有してもよい。後者は充填後にゾル内に開口し、型と容器の間のゾルの循環が可能になる。
【0179】
或いは、初期溶液は、ゾル-ゲル前駆体を含むエマルジョン又はテンプレート溶液であってもよい。
【0180】
実施例
塩基性溶液への浸漬によって生成した、およそ2μmのマクロ孔及びおよそ15nmのメソ孔を有する、直径約800μmの自立性モノリスの合成を以下に詳細に記述する。この実施例では、容器にいくつかの型を配置することにより、いくつか(少なくとも10個程度)のモノリスが同時に製造される。
【0181】
0.01Mの酢酸4mL中で、0.33gのPEGを2mLのTMOSと混合することによって溶液を調製する。溶液を0℃で30分間撹拌してゾルを形成し、次いで、直径およそ1mmのPTFEチューブをあらかじめ垂直に配置したポリプロピレン(PP)製容器に移す。充填を、マイクロピペットを使用してゾルを最下部から容器の中に徐々に添加することによって実施する。添加する溶液の量は、型が完全に浸漬される程度である。
【0182】
容器を40℃の温度に配置し、ゲル化は容器へ移された後45から50分までの間に起こる。ゲル化が行われた後、ゲルを40℃で24時間放置して熟成する。次いで、ゲル化及び成熟化から得られたゾル-ゲルマトリックスを容器から取り出し、金属ペンチで壊し、その中に組み込まれた型を回収する。次いで、型に封入されたモノリシックゾル-ゲルマトリックスは、直径1mm未満のチューブによってかけられる手動圧力の助けにより取り出される。この手順では、固体チューブからのこの圧力は、モノリスを取り出すのに十分であり、ゲルを弱めない。
【0183】
得られたゾル-ゲルマトリックスを、1M NH4OH溶液に素早く浸漬し、塩基性溶液の体積とゾル-ゲルマトリックスによって吸収された体積の間の比がおよそ5であることを厳守する。
【0184】
次いで、得られたマトリックスをオートクレーブに入れる。オートクレーブは炉内に配置され、ガスの循環を可能にするチューブによって接続される。次いで、ゲルをN2下で12時間乾燥させる。最後に、350℃まで0.5℃/分の勾配及びこの最後の温度での2時間のプラトーで熱処理を実施する。
【0185】
得られたモノリスは、例えば液相クロマトグラフィーの分野において、2つのフリット間で圧縮された粒子からなる固相に固有のある種の制約を克服するために、又は複雑な混合物に存在する目的の化合物の分離/抽出のために使用される。これらの材料の利点は、触媒作用の分野でも実証されている。
【0186】
図5では、2つの染料の混合物65から2つの染料を分離するために、あらかじめ製造した多孔質モノリス35の1つを使用することを示している。
【0187】
写真a)では、多孔質モノリス35は、加熱される熱収縮性チューブ68に導入される。多孔質モノリス35を組み込んだ熱収縮性チューブ68のアセンブリは、流体フローシステムへ組み込まれており、写真b)では、2つの染料の混合物65は、流体フローシステムによって多孔質モノリスの一方の端部で熱収縮性チューブ68の中へ導入される。混合物は、多孔質モノリス35の中に装填される。混合物が多孔質モノリスに装填されると、写真c)に示すように、2つの染料、すなわち頭部の黄色染料66及び尾部の青色染料67の分離が観察される。多孔質モノリスの出口では、乾燥及び溶出の後に、最初に写真d)に示すように黄色染料66が出て、次いで写真e)に示すように青色染料67出る。2つの染料66及び67は、出口で十分に分離されている。
【0188】
本発明は、今記述した実施例に限定されるものではない。型は、ゾルを充填することができ、容器に収容されたゾルと流体連結できる限り、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0189】
5 ゾル
12 容器
15 型
17 開口部
18 開口部
22 ゾル-ゲルマトリックスのブロック
25 ゾル-ゲルマトリックス
10 工程
20 工程
30 工程
40 工程
50 工程
60 工程
d 空洞の直径
h 空洞の高さ
p 細孔直径
35 多孔質モノリス
65 2つの染料の混合物
66 黄色染料
67 青色染料
68 熱収縮チューブ
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質モノリス(35)を製造する方法であって、
- 水溶液中のゾル-ゲル前駆体を含むゾル(5)を形成する工程と、
- あらかじめ形成されたゾル(5)を、容器(12)及び容器(12)に収容された少なくとも1つの型(15)に少なくとも部分的に充填する工程であって、型(15)は、ゾルを充填した後にゾル(5)の中に開口する少なくとも1つの開口部(17)を含む工程と、
- ゾル(5)からゾル-ゲルマトリックス(22、25)を容器(12)内に形成する工程と、
- 型(15)を、型に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)とともに、容器から取り出す工程と、
- 型(15)に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)から多孔質モノリス(35)を形成する工程と
を含み、ゾル、ゾル-ゲルマトリックス及び多孔質モノリスの形成は、ゾル-ゲル法によって行われる、方法。
【請求項2】
ゾル(5)が相分離を
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ゾル(5)が、ゾル-ゲル前駆体を含
む溶液
を撹拌することによって形成されてもよ
い、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
型又は複数の型(15)が少なくとも2つの開口部を有し、型又は各型(15)の開口部の少なくとも1つが、充填後のゾルの中に開口する、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
型又は少なくとも1つの型(15
)が、中空円筒
である、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
容器(12)がいくつかの型(15)を収容しており、充填が複数の型(15)に充填することを含み、各型(15)は充填後にゾル(5)の中に開口する少なくとも1つの開口部(17)を含み、容器(12)及び型又は複数の型(15)の充填が、充填後に開口部(17)がゾル(5)のレベルより下になるように、容器(12)に収容された型又は複数の型(15)の中に、又は型又は複数の型(15)を収容している容器(12)の中にゾル(5)を注入することによって実施される、又は容器(12)及び型又は複数の型(15)の充填が、ゾル(5)を容器(12)の中に注入し、次いで型又は複数の型(15)を容器(12)に収容されたゾル(5)に少なくとも部分的
に浸漬し、ゾルのレベルが前記開口部に到達した時、型若しくは各型がその開口部の1つを介してゾルで充填されることによって実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
型若しくは各型(15)を、型が収容するゾル-ゲルマトリックス(25)とともに容器(12)から取り出す工程が、型又は複数の型(15)を収容するゾル-ゲルマトリックスのブロック(22)を容器(12)から取り出すこと、並びに型又は各型(15)及び型が収容するゾル-ゲルマトリックス(25)をあらかじめ取り出されたブロック(22)から取り出すことを含んでもよい、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
型又は各型に収容されたゾル-ゲルマトリックス(25)を対応する型(15)から取り出すことを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
階層的多孔性を備えるゾル-ゲルマトリックスを形成するように、型(15)内のゾル-ゲルマトリックス(25)、又は型(15)から取り出されたゾル-ゲルマトリックス(25)中の、メソ多孔性の制御された生成を含み、メソ多孔性の制御された生成は、容器から型又は各型(15)を取り出した後、型又は各型(15)のゾル-ゲルマトリックス(25)から多孔質モノリス(35)を形成する前
に行われる、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
多孔質モノリス(35)を形成する工程が、型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックス(25)を乾燥して、乾燥されたゾル-ゲルマトリックスを形成すること、及び/又は
、型又は各型から取り出されたか否かにかかわらず、ゾル-ゲルマトリックスを熱処理することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法が、ゾル-ゲルマトリックス(25)を型又は各型(15)から取り出す工程を除外し、型が5μmから3mmまでの内径dを有するキャピラリーで
ある、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
ゾル-ゲルマトリックス(25)が型又は各型(15)から取り出され、得られた多孔質モノリス(35)が自立性である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
厳密に1mmより小さい最大横寸法dを有する、自立性多孔質モノリス(35)。
【請求項14】
型と、型の少なくとも1つの断面を充填する多孔質モノリス(35)とのアセンブリであって
、多孔質モノリス(35)は厳密に200μm超の最大横寸法を有し、多孔質モノリスは多孔質モノリス上の型を収縮させ
る工程を伴わずに型内で製造されていた、アセンブリ。
【請求項15】
請求項
1に記載の方法によって得られる多孔質モノリス又は請求項
13に記載の多孔質モノリスに液体を通過させることによる、複雑な液体混合物中の目的の化合物の液相クロマトグラフィー、分離及び/若しくは抽出及び/若しくは吸着、液体のろ過、又は液体の触媒作用のための方法。
【国際調査報告】