(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】基板に部分コーティングを塗布するための溶液前駆体プラズマ噴霧方法
(51)【国際特許分類】
B05D 7/14 20060101AFI20250121BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20250121BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20250121BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20250121BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20250121BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B05D7/14 Z
B32B15/08 Z
C23C26/00 C
H01M50/224
H01M50/227
B05D3/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538657
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022087448
(87)【国際公開番号】W WO2023118420
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021134572.3
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524238268
【氏名又は名称】ユーボ テクノロジーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】JUBO TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Lise-Meitner-Str. 1-13, 42119 Wuppertal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユプトナー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハイヒェ,シュテッフェン
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4K044
5H040
【Fターム(参考)】
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5H040AA03
5H040AA31
5H040AS07
5H040LL01
5H040LL06
(57)【要約】
本発明は、金属基板(2)に部分コーティング(12)を塗布するための方法に関し、当該方法は、コーティングすべき前記金属基板(2)を用意(200)すること、前記金属基板(2)を熱源(4)の反応領域(6)内に導入(300)すること、コーティング添加剤(10)を製造するために前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に前駆体化合物(8)を目的に応じて導入(400)することならびに前記熱源(4)の前記反応領域(6)内で製造された前記コーティング添加剤(10)を用いて前記金属基板(2)をコーティング(500)することの各ステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板(2)に部分コーティング(12)を塗布するための方法であって、以下の各ステップを備える方法:
- コーティングすべき前記金属基板(2)を用意(200)すること、
- 前記金属基板(2)を熱源(4)の反応領域(6)内に導入(300)すること、
- コーティング添加剤(10)を製造するために前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に前駆体化合物(8)を目的に応じて導入(400)すること、
- 前記熱源(4)の前記反応領域(6)内で製造された前記コーティング添加剤(10)を用いて前記金属基板(2)をコーティング(500)すること。
【請求項2】
前記コーティングすべき前記金属基板(2)の前記用意(200)の前に前記金属基板(2)をコーティング(500)するために前記金属基板(2)の準備(100)を実施し、前記準備(100)は、前記金属基板(2)の洗浄および/または前処理を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属基板(2)の前記コーティング(500)は、0℃から800℃の間における金属基板温度、好ましくは50℃から100℃の間における金属基板温度において実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体化合物(8)の前記熱源(4)の前記反応領域(6)内への目的に応じた導入(400)は、分配装置(24)を用いて実施され、前記前駆体化合物(8)は、好ましくは直接外部から前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に導入され、特に噴霧ノズル(28)によって噴霧されることを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体化合物(8)の前記熱源(4)の前記反応領域(6)内への目的に応じた導入(400)は、不活性ガスの添加とともに実施し、前記不活性ガスとして好ましくは窒素および/またはアルゴンを使用することを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆体化合物(8)の前記熱源(4)の前記反応領域(6)内への目的に応じた導入(400)は、酸化化学物質の添加とともに実施し、酸化化学物質として好ましくはオゾンまたは過酸化水素を使用することを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体化合物(8)の前記熱源(4)の前記反応領域(6)内への目的に応じた導入(400)は、さらなる添加剤、特に水または着色剤の付加的な添加とともに実施することを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体化合物(8)は、20μm未満、好ましくは5μmの粒径において前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に導入されることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆体化合物(8)は、1g/s未満の流速、好ましくは0.5g/s未満の流速において前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に導入されることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属基板(2)の前記コーティング(500)は、部分コーティングの形において実施されることを特徴とする、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属基板(2)の前記コーティング(500)は、前記熱源(4)の前記反応領域(6)内において製造された前記コーティング添加剤(10)を用いて前記熱源(4)の前記反応領域(6)内において実施されることを特徴とする、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆体化合物(8)は、液状の形で前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に導入され、前記前駆体化合物(8)は、好ましくは水に溶解した固形物質の形で形成されることを特徴とする、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、少なくとも一部が自動化、特にコーティングロボットを用いて実施されることを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
好ましくは請求項1~13のうちいずれか一項に記載の方法を用いて塗布可能であり、特に請求項1~13のうちいずれか一項に記載の方法を用いて塗布された少なくとも部分コーティング(12)を有する金属基板(2)であって、
- 前記金属基板(2)と、
- 前記金属基板(2)に塗布されたコーティング添加剤(10)からなる前記部分コーティング(12)と、
を含むことを特徴とする金属基板(2)。
【請求項15】
前記金属基板(2)は、以下の材料のうち少なくとも一つを用いて形成されていることを特徴とする、請求項14に記載の金属基板(2):アルミニウム材料、鉄材料、亜鉛材料、マグネシウム材料。
【請求項16】
前記コーティング(12)は、前記金属基板(2)の表面における部分領域においてのみ配置されている部分コーティングの形において形成されることを特徴とする、請求項14または15に記載の金属基板(2)。
【請求項17】
前記金属基板(2)は、少なくとも一つの接着結合および/または少なくとも一つのエラストマーシールを有し、前記接着結合および/または前記エラストマーシールは、好ましくは直接前記部分コーティング(12)に配置されており、前記金属基板(2)は、特に電気自動車において使用するためのバッテリーボックスとして形成されていることを特徴とする、請求項14~16のうちいずれか一項に記載の金属基板(2)。
【請求項18】
特に請求項14~17のうちいずれか一項に記載の金属基板(2)を製造するために金属基板(2)に部分コーティング(12)を塗布するためのコーティングシステム(20)であって、
- コーティングすべき前記金属基板(2)を配置するためのコーティングチャンバ(22)、
- 前駆体化合物(8)からコーティング添加剤(10)を製造するための反応領域(6)を用意するための熱源(4)、
- 前記前駆体化合物(8)を前記熱源(4)の前記反応領域(6)内に導入するための分配装置(24)
を含むことを特徴とするコーティングシステム(20)。
【請求項19】
前記熱源(4)は、レーザまたはバーナー、特に赤外線バーナーまたは近赤外線バーナーの形において形成されることを特徴とする、請求項18に記載のコーティングシステム(20)。
【請求項20】
前記熱源(4)は、バーナー、好ましくはシングルバーナー、表面バーナーまたは容量バーナーの形において形成されることを特徴とする、請求項18に記載のコーティングシステム(20)。
【請求項21】
前記分配装置(24)は、前記反応領域(6)内への前記前駆体化合物(8)の微細に分配可能な導入のための噴霧ノズル(28)を含み、前記噴霧ノズル(28)は、0.5mm未満、特に0.3mm未満の直径を有することを特徴とする、請求項18~20のうちいずれか一項に記載のコーティングシステム(20)。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法における前駆体化合物(8)の使用であって、前記前駆体化合物(8)は、各金属塩または各ナノ粒子の各水性化合物、好ましくは各元素Mg、Ca、Sr、Ba、B、All、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、N、P、Sの各無機化合物または各金属有機化合物の形において形成されることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分コーティングを塗布するための方法、少なくとも部分コーティングを有する金属基板および部分コーティングを塗布するためのコーティングシステムに関する。さらに、本発明は、部分コーティングを塗布するための方法における前駆体化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロモビリティの拡大に関連して、高性能である電気自動車においていわゆるバッテリーボックスに組み込まれるバッテリーシステムの製造が特に注目を浴びている。この種のボックスには、通常接着された冷却プレートが搭載され、縁またはブッシングにはエラストマーシールまたは接着結合が設けられている。バッテリーボックスは、2m2程度の寸法を有し、車両のフロア全体を占める。冷却プレートへの効率的な熱伝達のためには冷却プレートと電池セルとの間にいわゆるギャップフィラーまたは熱伝導ペーストなどのその他の熱伝導材料を設ける必要がある。しかしながら、接着剤または熱伝導ペーストの塗布には高純度の接着可能である表面が不可欠である。加えて、腐食対策が必要であるのは、当該バッテリーボックスが車両のアンダーボディに設置されることが多く、防凍塩などの腐食性媒体にさらされるためである。よって後続の接着または熱伝導ペーストの塗布にとって未処理の金属表面が適さないのは、未処理の表面が耐食性に劣るだけではなく不均一過ぎるからである。
【0003】
接着剤または熱伝導ペーストの金属表面における簡単かつ安定した塗布を可能にし、同時に耐食性を確保するために昨今、表面変性には湿式化学方法が用いられる。例えばアルミニウムの場合、接着剤による接着には続く水化学的パッシベーション処理を介して生成される、いわゆるアルミナ1水和物(ベーマイト)が表面に必要である。腐食安定性の改善のためには最新技術における一般的な方法を用いた水性処理においてアルミニウム部品に対していわゆる変換層を設ける。このような層を塗布するための方法としては例えば陽極処理、クロメート処理、リン酸塩処理およびフッ化ジルコン/フッ化チタンパッシベーションなどの湿式化学方法である。加えて、例えば鉄、マグネシウムまたは亜鉛のようなその他の金属についても、類似の表面機能化のための湿式化学方法が公知である。
【0004】
しかしながら、金属基板の表面機能化のための公知の湿式化学方法における欠点は、当該処理には数時間もかかることが多く、極めてエネルギー集約的であり、多大なるプラント工学上の負担が必要であることにある。加えて、処理を浴処理として通常では部品全体に設ける必要がある。このことは、部分的にしか接着する必要がない大きな部品にとって極めて不経済である。さらに、前述の湿式化学方法が環境面において不利であるのは、すすぎ槽の使用後にすすがれた化学薬品を中和して成分を沈殿または凝集によって水から除去するために廃水処理を施す必要があるからである。
【0005】
金属基板の表面変性のための湿式化学処理に加えて、最新技術からはコーティング材料を有機溶剤に溶解して液体ガスの火炎と混合して基板に表面変性を生成する熱コーティング方法も公知である。しかしながら、火炎形成のために使用される溶剤にコーティング材料を事前に溶解させることによる表面変性の柔軟性は低い。よって、コーティング材料の添加は、局所的に可変ではなく、溶剤の燃焼とともに瞬時に実施される。加えて、公知である熱コーティング方法は、通常プラズマコーティング方法の形で形成されているため、エネルギー的な負担だけではなく、装置的な負担も顕著に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、部分コーティングを塗布するための公知であるコーティング方法における前述の欠点を少なくとも部分的に解消することにある。特に、本発明の課題は、接着結合およびエラストマーシールの接着性を向上させて基板の耐食性を高めるために簡単で、コスト効率がよく、環境に優しくおよび柔軟な方法で目的に応じた金属基板の部分コーティングを可能にする、金属基板のためのコーティング方法を提供することにある。加えて、コーティング方法は、可能であれば少なくとも部分的に自動化して実施可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題は、独立方法クレームの各特徴を有する方法、独立材料クレームの各特徴を有する基板、独立システムクレームの各特徴を有するシステムおよび独立使用クレームの各特徴を有する使用によって解決される。本発明のさらなる各特徴および各詳細は、それぞれの従属クレーム、明細書および各図面から明らかとなる。本発明による方法との関連において記述される各特徴および各詳細は、当然本発明による基板、本発明によるシステムならびに本発明による使用との関連においてもその逆も適用されるものであるため、本開示に関して個々の本発明の態様が常に双方向的に参照されるまたは参照可能である。
【0008】
本発明によれば、金属基板に部分コーティングを塗布するための方法が設けられる。本発明の方法は、コーティングすべき基板を用意すること、基板を熱源の反応領域内に導入すること、コーティング添加剤を製造するために熱源の反応領域内に目的に応じて前駆体化合物を導入することならびに熱源の反応領域内において製造されたコーティング添加剤を用いて基板をコーティングすることの各ステップを含む。
【0009】
本発明によれば、金属基板とは、特に少なくとも部分的に、好ましくは完全に金属材料から形成された基板であると理解される。本発明によれば、部分コーティングとは、特に基板表面の一部のコーティングであると理解される。さらに熱源の反応領域内に基板を導入することは、熱源の反応領域内に基板を能動的に配置することならびに熱源の反応領域内に基板を導入するために基板に対して熱源を能動的に配置することでもあると理解される。さらに熱源の反応領域内に目的に応じて前駆体化合物を導入することは、好ましくは前駆体化合物を目的に応じた形で局所的に限定して導入することであると理解される。したがって前駆体化合物を例えば目的に応じた形で異なる温度および/または異なる酸化電位および還元電位を有する火炎領域に導入してコーティング添加剤の製造を目的に応じて変更することが可能である。
【0010】
本発明の方法によって、特に基板において直接的で空間分解的なコーティングを実施することが可能である。反応領域は、特にバーナーのフレームカーテンまたは火炎の一部であり得る。同様に例えばレーザなどその他の熱源を使用する場合には、レーザのスポットまたはレーザ光線のスポットを反応領域とみなすことも考えられる。熱源は、レーザまたはバーナー、特に赤外線バーナーまたは近赤外線バーナーの形において形成され得る。熱源をバーナーの形において形成する場合、熱源はさらにシングルバーナー、表面バーナー(ラインバーナー)または容量バーナー(多孔質バーナー)として形成され得る。
【0011】
本発明によるコーティング方法を使用することにより、新しい方法で必要な所望される表面特性を生成することが可能であることが判明した。特に、本発明による方法に関連してこの目的のために開発された特別な水性処理溶液を用いた新しい、部分的に適用可能である熱的火炎コーティング処理を開発することが可能である。前述した部分的な熱的(火炎)コーティングの手順により顕著に迅速で省エネルギーである表面機能化が可能となる。加えて前駆体化合物を局所的に柔軟に導入することにより、異なる化学物質を混合することにより機能特性を目的に応じて設定することが可能である。さらに意外にも部分的な熱的(火炎)コーティングにより例えば鉄、亜鉛およびマグネシウムなどの異なる基板に極めて良好な耐食特性を有する強固に付着した層を堆積することが可能であることが判明した。この技術により、特に簡単、迅速およびコスト効率の高い方法によって材料の表面特性を目的に応じて変更することが可能である。例としては、表面エネルギーおよび表面活性化の設定ならびにその他のあらゆる表面に対する化学的および物理的変化である。
【0012】
塗布すべきコーティングの良好で恒久的な付着の観点において、本発明によれば、有利にはコーティングすべき基板の用意の前に基板のコーティングのために基板の準備を実施し、この準備とは基板の洗浄および/または前処理を含む。洗浄または前処理とは、例えば空気圧および/または水圧を用いた高圧洗浄を含む。さらに、例えばプライマーなどの塗布を塗布することが可能である。
【0013】
基板の迅速で、安定したおよび耐久的なコーティングの観点において、本発明によれば、特に基板のコーティングを0℃から800℃の間における基板温度、好ましくは50℃から100℃の間における基板温度において実施することが可能である。アルミニウム材料からなる基板の場合、さらに100℃から200℃の間の温度が有利であることが判明した。基板温度は、熱源に対する基板の配置によって可変であることが好ましく、これにより特に基板温度が熱源の近接性および作動方法に依拠するようにすることが可能である。
【0014】
コーティング挙動の特にきめ細かい調節可能である制御に関連して、主題関連的には熱源の反応領域への前駆体化合物の目的に応じた導入を好ましくは分配装置によって実施することが可能であり、この際に好ましくは前駆体化合物を熱源の反応領域内に外部から直接導入、特に噴霧ノズルによって噴霧する。前駆体化合物を分配して噴霧することにより好ましくは火炎の乱流挙動を防止し、特にこれにより極めて均質なコーティングが保証される。加えてこの種の分配装置は、コーティング処理を可能な限り目的に応じて制御するために好ましくは局所的に柔軟であり、可変的に配置可能であり得る。分配装置は、例えば圧縮空気駆動装置などの噴霧ユニットの形において形成され得る。主題関連的な前駆体化合物は、好ましくは固形状で存在し得て、例えば溶剤内に懸濁され得て当該溶剤とともに目的に応じて熱源の反応領域に供給され得る。これに対して、前駆体化合物が液状または気体の凝集状態で存在して基板に堆積され得ることも基本的に考えられる。
【0015】
可変的に制御可能なコーティング速度の観点において、主題関連的には好ましくは熱源の反応領域への前駆体化合物の目的に応じた導入を不活性ガスの添加とともに実施し、好ましくは不活性ガスとして窒素および/またはアルゴンを使用する。不活性ガスを添加することにより特に所定の容積内の前駆体化合物の数を減少させ、このことによりコーティング速度が若干低下するもののより容易な加工が可能となる。
【0016】
さらに所望するコーティングパラメータの設定に関する範囲をさらに広げるために、熱源の反応領域への前駆体化合物の目的に応じた導入を酸化化学物質の添加とともに実施することが考えられ、好ましくは酸化化学物質としてオゾンまたは過酸化水素を使用する。別法としてあるいは追加的に、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、バナジン酸塩、クロム酸化物、またはヒドラジン、N-オキシド、ニトログアニジンまたは対応する誘導体のような各有機酸化剤を添加することも可能である。
【0017】
所望するコーティングパラメータの範囲の拡大の観点において、熱源の反応領域への前駆体化合物の目的に応じた導入をさらなる添加剤、特に水または着色剤の付加的な添加とともに実施することも考えられる。水を付加的に導入することにより特にコーティング温度を目的に応じて変更することが可能である。さらに着色剤の導入は、例えば基板のコーティングされた部分を表示するために用いられ得る。熱水変質に必要な水分は、追加的に供給され得るだけではなく燃焼自体から生じる場合もある。
【0018】
生成されたコーティング添加剤の高い収率の観点と均質なコーティングとに関連して主題関連的には20μm未満、好ましくは5μmの粒径を有する前駆体化合物を熱源の反応領域内に導入することも考えられる。水を添加する場合には相応する粒径によって火炎の冷却をできるだけ効率的に防止することが可能である。このような粒径を生成するには、例えば極めて微細な噴霧を可能にする標準的な油圧式噴霧ユニットを使用することが可能である。
【0019】
生成されたコーティング添加剤の高い収率の観点および均質なコーティングと主題関連的な火炎の冷却の防止とに関連して、本発明によれば、前駆体化合物を1g/s未満の流速、好ましくは0.5g/s未満の流速において熱源の反応領域内に導入することも可能である。この目的のために、例えば直径0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満の噴霧ノズルを設けることが可能である。
【0020】
金属基板へのコーティングの塗布に関する最大限の柔軟性に関連して、有利にはさらに前記基板のコーティングを部分コーティングの形において実施することが可能である。
【0021】
金属基板へのコーティングの塗布に関する最大限の柔軟性に関連して、基板のコーティングを、熱源の反応領域内において生成されたコーティング添加剤を用いて熱源の反応領域内において実施することも可能である。
【0022】
可能な限り柔軟で目的に応じて設定可能な金属基板のコーティングに関連して本発明によれば、有利には前駆体化合物を液状の形において熱源の反応領域内に導入することも可能であり、前駆体化合物は、好ましくは水(H2O)に溶解した固形物質の形で形成されている。前駆体化合物は、好ましくは各水性化合物または各金属塩または各ナノ粒子の各溶液、好ましくは各元素Mg、Ca、Sr、Ba、B、All、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、N、P、Sの各無機化合物または各金属有機化合物の形において形成され得る。加えて、各金属塩または各ナノ粒子を混合することも可能である。液状の形での塗布は、特に正確で目的に応じて設定可能である前駆体化合物の分配と分布とを保証する。水を溶剤として使用した場合、特に環境に優しく無害である、前駆体化合物を溶解して塗布する方法が保証される。
【0023】
さらに酸素含有量の低い非水性溶液、好ましくはハロゲン化炭化水素、特にフッ化炭化水素、特に好ましくは不飽和炭化水素の形における添加も有利である準化学量論的化合物を金属基板として形成するのに適していることが判明した。さらにこのような準化学量論的化合物(例えばペロブスカイト)は、コロイド状に溶解したナノ粒子を塗布することによって金属基板として生成され得る。さらに前駆体化合物を固体または気体の形において導入することも考えられることが理解される。
【0024】
主題関連的な方法の簡単かつコスト効率のよい実施に関連して、特に方法を少なくとも部分的に、好ましくはコーティングロボットを用いて自動化して実施することが考えられる。本発明の自動化可能な実施に関連して本方法をコンピュータによって実行される方法の形で形成することが可能であり、各方法ステップのうち少なくとも一部が自動化、特にコンピュータによって実施され得ることが理解される。コーティングロボットを用いることにより、例えばコンピュータ制御によって、基板を熱源の反応領域内または熱源の反応流域の近傍に配置し、反応領域内に導入された前駆体化合物を介して熱源の反応領域内で生成されたコーティング添加剤を用いてコーティングすることが可能である。
【0025】
さらに、好ましくは前述の方法を用いて塗布可能であり、特に前述の方法を用いて塗布された、少なくとも部分的なコーティングを有する金属基板もまた本題の主題であり、基板と基板に塗布されたコーティング添加剤からなるコーティングとを含む。よって、本発明による金属基板は、既に本発明の方法に関連して詳述されたのと同様の各利点をもたらす。本発明による方法を用いて金属基板に堆積された、少なくとも部分的なコーティングは、原則としてナノメートルからミリメートルの範囲の層厚、好ましくは少なくとも100nmから2mmまでの層厚、特に1から500μmの層厚を有することが可能である。
【0026】
複数の用途に使用可能である基板に関連して、本発明によれば、特に金属基板は、アルミニウム材料および/または鉄材料および/または亜鉛材料および/またはマグネシウム材料から形成され得る。基板は、例えば銅材料またはチタン材料など、その他の金属構造材料からも形成され得ることが理解される。
【0027】
さらに金属基板へのコーティングの塗布に関する大きな柔軟性に関連して、コーティングは、好ましくは基板の表面の部分的な領域にのみ配置される、部分コーティングの形において形成され得る。
【0028】
加えて本発明による金属基板の特に有利である実施形態に関連して、主題関連的には金属基板は、少なくとも一つの接着結合および/または少なくとも一つのエラストマーシールを有し得て、接着結合および/またはエラストマーシールは、好ましくは直接コーティングにて形成、配置されており、金属基板は、特に電気自動車において使用するためのバッテリーボックスとして形成される。接着結合とは、特に本発明による方法を用いて基板を製造する際に自身の接着力が特に強い接着層であると理解される。
【0029】
さらに、特に前述の金属基板を製造するために金属基板に部分コーティングを塗布するためのコーティングシステムも本発明の主題である。コーティングシステムは、コーティングすべき基板を配置するためのコーティングチャンバ、前駆体化合物からコーティング添加剤を製造するために反応領域を用意するための熱源および反応領域内に前駆体化合物を導入するための分配装置を含む。
【0030】
前駆体化合物の有効かつ目的に応じた制御可能なコーティング添加剤への変化に関連して、本発明によれば、有利には特に熱源がレーザまたはバーナー、特に赤外線バーナーまたは近赤外線バーナーの形において形成され得る。
【0031】
特に有効である実施に関連して、熱源がバーナー、好ましくはシングルバーナー、表面バーナー(ラインバーナー)または容量バーナー(多孔質バーナー)の形において形成され得る。さらに一つのバーナーの配置に加えて、同じ構造または異なる構造を有し得る複数のバーナーを隣接して設けることも可能であることが理解される。特に火炎が金属メッシュまたはセラミックスポンジの内部で燃焼する容積バーナーまたは多孔質バーナーが特に適していることが判明した。前駆体化合物の噴霧は、直接外部から金属メッシュまたはセラミックスポンジ内に対して実施される。金属メッシュまたはセラミックスポンジの熱容量によって前駆体化合物が噴霧された場合であっても、火炎の温度が一定に保たれるため、火炎がどの時点においても冷えることはない。
【0032】
生成されたコーティング添加剤の高い収率の観点および均質なコーティングと主題関連的な火炎の冷却の防止とに関連して、本発明によれば、分配装置は、反応領域への前駆体化合物の微細に分配可能な導入のための噴霧ノズルを有することも可能であり、噴霧ノズルは0.5mm未満、特に0.3mm未満の直径を有する。
【0033】
前述の方法における前駆体化合物の使用もまた本発明の主題であり、前駆体化合物は、各金属塩または各ナノ粒子の各水性化合物、好ましくは各元素Mg、Ca、Sr、Ba、B、All、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、N、P、Sの各無機化合物または各金属有機化合物の形において形成されている。前駆体化合物は、例えばハロゲン化炭化水素、特にフッ化炭化水素の形においても形成され得る。これにより、本発明による使用は、本発明による方法、本発明による少なくとも部分的にコーティングされた基板ならびに本発明によるシステムに関連して既に詳述されたものと同様の各利点を伴う。
【0034】
本発明のさらなる各利点、各特徴および各詳細は、各図面を参照しつつ本発明の各実施形態例が記述される以下の記述から明らかとなる。各クレームおよび本明細書に記載された各特徴は、個々にあるいは任意の組み合わせにおいて本発明に不可欠であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1の実施形態例による金属基板に部分コーティングを塗布するための本発明による方法の個々のステップの概略図である。
【
図2】第1の実施形態例による金属基板に部分コーティングを塗布するための本発明によるコーティングシステムの概略図である。
【
図3】第2および第3の実施形態例による金属基板に部分コーティングを塗布するための本発明によるシステムにおいて使用する、本発明による熱源の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、金属基板2に部分コーティング12を塗布するための本発明による方法の個々のステップの概略図を図示している。
【0037】
本発明の方法によれば、まずは基板2のコーティング500のために基板2の準備100を実施し、この準備100は、好ましくは金属基板2の洗浄および/または前処理を含む。
【0038】
その後、基板2の熱源4の反応領域6内への導入300が実施される前に、コーティングすべき基板2の用意200が実施される。基板2の熱源4の反応領域6内への導入は、基板2の熱源4の反応領域6内への能動的配置と、基板2を熱源の反応領域6内へ導入するための熱源4の基板2に対する能動的配置とのいずれも含むことが可能である。
【0039】
基板2の熱源4の反応領域6内への導入300の後、本発明の方法によれば、コーティング添加剤10を製造するための前駆体化合物8の熱源4の反応領域6内への目的に応じた導入400が実施される。
【0040】
前駆体化合物8の熱源4の反応領域6内への目的に応じた導入400は、好ましくは分配装置24を用いて実施され得、前駆体化合物8は、好ましくは直接外部から熱源4の反応領域6内に導入、特に噴霧ノズル28によって噴霧される。
【0041】
前駆体化合物8は、例えば液状の形で熱源4の反応領域6内に導入され得て、前駆体化合物8は、好ましくは水(H2O)に溶解した固形物質の形で形成され得る。
【0042】
加えて前駆体化合物8の熱源4の反応領域6内への目的に応じた導入400を別法としてまたは追加的に不活性ガスの添加とともに実施することが可能であり、不活性ガスとして窒素および/またはアルゴンを使用する。
【0043】
さらに前駆体化合物8の熱源4の反応領域6内への目的に応じた導入400を酸化化学物質の添加とともに実施することが可能であり、好ましくは酸化化学物質としてオゾンまたは過酸化水素を使用する。
【0044】
同様に前駆体化合物8の熱源4の反応領域6内への目的に応じた導入400をさらなる添加剤、特に水または着色剤の付加的な添加とともに実施することが可能である。
【0045】
前駆体化合物8の熱源4の反応領域6内への目的に応じた導入400の後、本書において熱源4の反応領域6内において製造されたコーティング添加剤10を用いて基板2のコーティング500を実施する。
【0046】
基板2のコーティング500は、本書において有利には0℃から800℃の間における基板温度、好ましくは50℃から100℃の間における基板温度において実施可能であり、特に部分コーティングの形において実施され得る。加えて基板2のコーティング500を熱源4の反応領域6内において製造されたコーティング添加剤10を用いて熱源4の反応領域6内において実施することが可能である。
【0047】
図2は、第1の実施形態例による金属基板2に部分コーティング12を塗布するための本発明によるコーティングシステム20の概略図を図示している。
【0048】
図2において見受けられるように本発明による金属基板2に部分コーティング12を塗布するためのコーティングシステム20は、コーティングすべき基板2を(本書においては保持要素26を用いて)配置するためのコーティングチャンバ22、前駆体化合物8からコーティング添加剤10を製造するための反応領域6を用意するための熱源4ならびに前駆体化合物8を熱源4の反応領域6内に導入するための分配装置24を含む。
【0049】
熱源4は、レーザまたはバーナー、特に赤外線バーナーまたは近赤外線バーナーの形において形成され得る。特に熱源4は、シングルバーナー、表面バーナーまたは容量バーナーの形において形成され得る。
【0050】
図2において見受けられるように、分配装置24は、反応領域6内への前駆体化合物8の微細に分配可能な導入のための噴霧ノズル28を含んでなり、噴霧ノズル28は、0.5mm未満、特に0.3mm未満の直径を有する。
【0051】
図3は、第2の実施形態例(a)および第3の実施形態例(b)による、金属基板2に部分コーティング12を塗布するための本発明によるコーティングシステム20において使用する、本発明による熱源4の概略図を図示している。
【0052】
第2の実施形態例(a)によれば、熱源4は、ピストン形のシングルバーナーの形において形成されており、当該熱源においてはバーナー34を通って案内される火炎が出口孔36を通って導出される。火炎の生成のために必要な燃料ガスは、燃料ガス入口32を介して導入され、加えて燃焼空気入口30を介して燃焼空気を供給することが可能である。
【0053】
第3の実施形態例(b)によれば、熱源4は、隣接して配置された複数のラインバーナーの形において形成されており、当該熱源においてはバーナー34を通って案内される火炎が同様に出口孔36を通って導出される。
【0054】
[実施例]
適切な前駆体化合物の各実施例:
以下において金属基板に部分コーティングを塗布するための本発明による方法において使用される例示的な前駆体化合物の各組成として、いくつかの具体的な実施形態例を挙げている。言及した各pH値から見受けられるように、本書において前駆体化合物は、水性溶液の形において存在している。水の代わりに他の溶剤を溶剤として使用することが可能であることは理解される。
【0055】
[溶剤1(溶剤H2O)]
1.5g/l H2ZrF6
0.4g/l SiO2ナノ粒子
pH4.7
【0056】
[溶剤2(溶剤H2O)]
2g/l H2TiF6
0.5g/l ポリアクリル酸
pH4.2
【0057】
[溶剤3(溶剤H2O)]
40g/l ケイ酸ナトリウム
0.5g/l メタバナジン酸アンモニウム
5g/l ポリイソシアネート
0.1g/l 有機腐食防止剤
pH11.0
【0058】
[溶剤4(溶剤H2O)]
3.5g/l H2ZrF6
10g/l Cr(NO3)3
pH2.8
【0059】
[溶剤5(溶剤H2O)]
5g/l H2ZrF6
10g/l Cr(NO3)3
pH3.6
【0060】
[溶剤6(溶剤H2O)]
1.0g/l H2ZrF6
0.06g/l H3PO4
0.5g/l マレイン酸-アクリル酸共重合体
pH3.8
【符号の説明】
【0061】
2 金属基板
4 熱源
6 反応領域
8 前駆体化合物
10 コーティング添加剤
12 部分コーティング
20 コーティングシステム
22 コーティングチャンバ
24 分配装置
26 保持要素
28 噴霧ノズル
30 燃焼空気入口
32 燃料ガス入口
34 バーナー
36 出口孔
【国際調査報告】