(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】光共振器から取り出した光信号のモニタ方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0687 20060101AFI20250121BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20250121BHJP
H01S 3/13 20060101ALI20250121BHJP
G04F 5/14 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
H01S5/0687
G01J1/42 E
H01S3/13
G04F5/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538676
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2022087250
(87)【国際公開番号】W WO2023118305
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載アドレス https://arxiv.org/abs/2203.04550 掲載年月日 2022年3月9日 掲載アドレス https://arxiv.org/abs/2212.01266v1 掲載年月日 2022年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】524238833
【氏名又は名称】インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー - オーストリア
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディオリコ、フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ホステン、オヌール
【テーマコード(参考)】
2G065
5F172
5F173
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB09
2G065BA03
2G065BA09
2G065BB06
2G065BB14
2G065BB31
2G065BB44
2G065BC05
2G065BC14
2G065BC16
2G065DA05
5F172NN24
5F172NN25
5F172NP02
5F172NR12
5F173SF07
5F173SF33
5F173SF50
5F173SF63
(57)【要約】
レーザー共振器(22)などの光共振器(42)から抽出された光信号(15)をモニタする方法であって、光信号(15)の少なくとも一部を入射信号(1)として受信するステップと、入射信号(1)を検出器(2)に伝搬することとと、検出器(2)への伝搬入射信号(1)の幾何学的ビーム形状、特にビーム形状楕円率に基づき、例えばビーム形状楕円率に比例して、誤差信号(9)を導出することとを含む変換構成の適用によって入射信号(1)を誤差信号(9)に変換するステップと、を含み、誤差信号(9)は、極小値、特に最小値(13)と、極大値、特に最大値(14)とを有し、前記極小値と前記極大値が前記誤差信号(9)の値の区間(59)を区切り、変換構成は、光共振器(42)が目標状態にあるときに誤差信号(9)がゼロクロス(58)するように区間(59)を構成する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー共振器(22)などの光共振器(42)から抽出された光信号(15)をモニタする方法であって、
該光信号(15)の少なくとも一部を入射信号(1)として受信するステップと、
前記入射信号(1)を検出器(2)に伝搬することと、前記検出器(2)上の前記伝搬入射信号(1)の幾何学的ビーム形状、特にビーム形状楕円率に基づき、例えばビーム形状楕円率に比例して、誤差信号(9)を導出することとを含む変換構成の適用によって前記入射信号(1)を誤差信号(9)に変換するステップと、
を含み、
前記誤差信号(9)は、極小値、特に最小値(13)と、極大値、特に最大値(14)とを有し、
前記極小値と前記極大値が前記誤差信号(9)の値の区間(59)を区切り、
前記変換構成は、前記光共振器(42)が目標状態にあるときに前記誤差信号(9)がゼロクロス(58)するように前記区間(59)を構成する、方法。
【請求項2】
前記変換構成は、前記区間(59)が前記検出器(2)上の前記伝搬入射信号(1)の実質的な円形の像に対応する誤差信号(9)の値を含むように構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出器(2)は四分割フォトダイオード(3)であり、前記誤差信号(9)の導出は、四分割フォトダイオード(3)の対角信号を決定することを含み、この対角信号は前記四分割フォトダイオード(3)の対角センサ領域からの信号の和の差で構成される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記入射信号(1)の伝播は、前記検出器(2)上への前記入射信号(1)の入射角(7,8)の調整を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記入射信号の伝播は、特に整形レンズを用いて、好ましくは少なくとも1つのレンズ、特に少なくとも円筒レンズを用いて、前記入射信号(1)を整形することを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記誤差信号(9)の導出は、前記光共振器(42)が目標状態にあるときに、前記誤差信号(9)がゼロに設定されるように前記誤差信号にオフセットを与えることを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記入射信号(1)を伝搬させることは、検出レンズ(33)を用いて、好ましくは凸球面レンズ(34)を用いて、前記入射信号(1)を前記検出器(2)上に合焦させることを含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記入射信号(1)を伝搬させることは、前記入射信号(1)の透過ピークが前記誤差信号(9)のゼロクロスに一致するように、前記検出レンズと前記検出器(2)との間の軸方向距離(57)を調整することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検出レンズ(33)と前記検出器(2)との間の前記軸方向距離を調整することは、任意選択により、前記入射信号(1)の前記透過ピークが前記誤差信号(9)のゼロクロス(58)に一致するように、前記検出レンズ(33)と前記検出器(2)との間の軸方向距離(57)を前記入射信号(1)の前記光軸に沿って調整する前に、前記入射信号(1)の面内入射信号ウェストと面外入射信号ウェストとが、前記光共振器(42)の共振キャビティモードのビームウェストに一致するように前記軸方向距離(57)を調整することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
左右の信号及び上下の信号はそれぞれ前記四分割フォトダイオード(3)の隣接するセンサ領域(4)の和の差で構成され、前記左右の信号及び前記上下の信号は隣接するセンサ領域(4)の異なる半分の和を使用する、前記四分割フォトダイオード(3)の左右の信号及び/又は上下の信号が最小化されるように、前記検出レンズ(33)及び/又は前記四分割フォトダイオード(3)を前記入射信号(1)の前記光軸に垂直な方向に並進させることによって前記入射信号(1)を前記四分割フォトダイオード(3)上にセンタリングするステップをさらに含む、請求項3及び請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記入射信号(1)の前記透過ピークが前記誤差信号(9)の前記ゼロクロスに一致するように、前記検出レンズ(33)と前記四分割フォトダイオード(3)の軸方向距離(57)を前記入射信号(1)の前記光軸に沿って調整するステップと、前記四分割フォトダイオード(3)上で前記入射信号(1)をセンタリングするステップが、反復的に実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の方法により、レーザー(41)を光共振器(42)に周波数ロックする方法であって、
前記レーザー(41)からレーザービームを提供するステップと、
前記レーザービームが楕円率を取得するように前記レーザービームを整形するステップと、
前記レーザービームを前記光共振器(42)に指向させるステップであって、前記光共振器(42)から反射される前記レーザービームは前記検出器(2)に伝搬される前記入射信号(1)であるステップと、
前記誤差信号(9)に基づいて前記レーザー(41)を前記光共振器(42)にロックするステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項13】
前記レーザービームが楕円率を取得するように前記レーザービームを整形することが、合焦軸が相互に非平行に、特に垂直に配向された、一対の円筒レンズ(49)によって行われるか、
前記レーザービームが楕円率を取得するように前記レーザービームを整形することが、楕円ビーム又は非点ビームが生成される、レンズ、楔形プリズム、及び/又はアナモルフィックプリズム対の組み合わせによって行われるか、
の少なくともいずれかである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザービームは前記レーザービームを前記光共振器(42)に向ける前に偏光フィルタをかけられ、かつ前記入射信号(1)は偏光フィルタリングされたものであり、任意選択により光共振器(42)は複屈折性である、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記誤差信号(9)を最小化することにより前記目標状態に達するように前記光共振器(42)を調整するステップを更に含む、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光共振器(42)の調整は、
前記光共振器(42)の温度を調整するステップと、
前記光共振器(42)の光路長を調整するステップ、
の1以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記光共振器(42)は、レーザー(11)の前記レーザー共振器(22)、特に半導体レーザー(17)の前記光共振器(42)である、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記光共振器(42)の調整は、前記半導体レーザー(17)の電流を調整するステップを含む、請求項16及び請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光共振器は現代の科学技術における主要コンポーネントの一つであり、膨大な数の応用を可能とする。 光共振器は例えばレーザーや、顕微鏡、分光器などの広範な測定機器に使用されている。応用範囲は、例えば重力波の検出から、レーザー溶接、顔認識技術などの多岐にわたっている。光共振器、例えばレーザーの光共振器の所望の挙動を保証するためには、光共振器の特性のモニタが必要である。また、レーザーを制御するためには、レーザーの出力を測定して定量化し、公称状態又は基準状態に対するレーザーの実際の状態の偏差の推定量を求めることが必要である。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザー周波数の安定化(これはレーザーの光共振器の安定化及び/又は制御により達成可能である)は、原子時間の保持、重力波の検出、相対論の実験、原子干渉計、及び原子、ナノ粒子、機械的振動しなどの様々なシステムの量子的制御、において不可欠である。一例として、現代の原子時計は、長寿命の光学的原子遷移を検出するためにミリヘルツ線幅のレーザーを必要とし、基準の光共振器に対するレーザー周波数安定化の精度レベルが最先端の性能水準に到達するために決定的な役割を果たす。
【0003】
光共振器の目標状態の基準状態からの偏差の定量化に決定的な別の側面は、レーザーを光共振器にロックすることである。この場合、基準状態からの偏差は、光共振器にロックすべきレーザーの状態に対して相対的であり得る。
【0004】
光共振器の状態の適切な測定法と、基準状態からの偏差の定量化のための適切な推定量を見いだすという課題に向けて、過去数十年にわたり数多くの方法が開発されてきた。例えば、推定量は、光共振器関するレーザーの離調を示唆し得る。これらは、例えば、サイド・オブ・フリンジ強度法、偏光に基づく方法、パウンド・ドレバー・ホール(Pound-Drever-Hall)(PDH)に似た周波数変調技術、そして最後に、チルトロッキングのような空間モード干渉法によって利用される。
【0005】
Dioricoらによる「Laser-cavity locking at the 10^(-7) instability scale utilizing beam ellipticity(ビーム楕円率を利用した10-7の不安定性スケールでのレーザー共振器ロッキング)」(アーカイブプレプリントarXiv:2203.04550(2022)には、レーザーを光共振器にロックする方法が提示されている。レーザービームが光共振器に向けられる。レーザー周波数は共振器と共振(あるいはほぼ共振)している。反射ビームは四分割フォトダイオードに集束される。この方法は光共振器の基本TEM00モードと2時空間モードとの干渉に依存し、検出器上に楕円ビームをもたらす。楕円率に基づいて誤差信号が導出され、これをフィードバックとして使用して、レーザーが安定したレーザー共振器ロックが達成される。この方法は、「スクワッシュロック」と呼ばれる。この論文では、汎用のスクワッシュロック法がレーザー注入ロックの安定化に適用可能であると述べている。但し、この論文には、開示の方法を異なる文脈に適用する仕方についてのヒントは与えられていない。
【0006】
Ottaway,D.J.らによる「Stabilization of injection-locked lasers using spatial mode interference(空間モード干渉を用いた注入ロックの安定化法)」IEEE journal of quantum electronics 37.5(2001)):653-657では、チルトロッキングを用いて誤差信号を生成することによりレーザーの注入ロックを安定化する方法が開示されている。この技術は、TEM00モードとレーザー出力の第1次空間モードとの干渉に依存し、それが四分割フォトダイオードで測定される。四分割フォトダイオードは、上半分の2つの四半分と下半分の2つの四半分を足し合わせたものである。したがって、四分割フォトダイオードはそれぞれが合計されたセンサ領域から成る、実質的に2つの活性領域を有する。周波数差がゼロにおいて(共振の場合)、フォトダイオードの2つの出力は振幅は等しいが、位相が逆である。これらの出力は引き算されて、結果としてゼロの出力が与えられる。周波数差がゼロでない場合、TEM00フィールドはTEM01の一方とより建設的に干渉し、他方とはより破壊的に干渉する。したがって、信号は検出器上のビームのシフト又は強度、並びにビームに対する検出器のアライメントに依存する。ただし、誤差信号には、ビーム形状の情報は何も含まれない。例えば、ビーム形状が円形から楕円形に変わる場合、楕円の中心が検出器上にある限り楕円の回転に関係なく2つの出力は等しいままである。さらに、入射レーザービームは、スレーブレーザーの共振器の光軸に対してずれている必要がある。要約すると、誤差信号は光学部品、特に検出器の位置ずれに敏感である。この信号は圧電トランスデューサにフィードバックされ、マスタ信号の入射を制御して注入ロックを安定化させる。
【0007】
チルトロッキング技術の更なる詳細は、Shaddock,D.A.、M.B.Gray、及びD.E.McClellandによる、「Frequency locking a laser to an optical cavity by use of spatial mode interference(空間モード干渉の使用による光共振器へのレーザーの周波数ロック)」(Optics letters 24.21(1999):1499-1501)に開示されている。
【0008】
光共振器の状態をモニタして定量化するための既知の方法は、複雑な機構に依存しており、ドリフト、特にアライメントのドリフトに敏感である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、光共振器から抽出される光信号を測定及び定量化して、公称状態又は基準状態に対する光共振器の実際の状態の偏差の推定器を導出する方法を提供することである。これが複雑さを低減し、純粋に受動的であり、特にアライメントのドリフトに対して鈍感であって、及び/又はよりロバストな実装を備える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、レーザー共振器などの光共振器から抽出される光信号をモニタする方法により達成され、それは、
-光信号の少なくとも一部を入射信号として受信するステップと、
-入射信号を検出器に伝搬すること、及び検出器への伝搬入射信号の幾何学的ビーム形状、特にビーム形状楕円率に基づき、例えばビーム形状楕円率に比例して、誤差信号を導出すること、を含む変換構成の適用により、入射信号を誤差信号に変換するステップと、を含む。ここで、誤差信号は、極小値、特に最小値と、極大値、特に最大値とを有し、その極小値と極大値が誤差信号の区間を区切り、変換構成は、光共振器が目標状態にあるときに誤差信号のゼロクロスを有する区間を構成する。
【0011】
光共振器は、例えばリニア共振器やリング共振器である。光共振器は、例えば2ミラー共振器や3ミラー共振器である。ただし、任意数のミラー及び任意形状の共振器も使用可能である。光共振器は自由空間共振器であっても、又はマイクロチップベースの光共振器などの非自由空間共振器であってもよい。例えば、光共振器はウィスパリングギャラリ共振器であってもよく、そこでは光が球又は環状体の周囲(材料内部)を循環する。光共振器はファイバリングであってもよく、その中に光をエバネッセント結合させることができる。
【0012】
光共振器から抽出される光信号は、例えば光共振器から漏れる光であってよい。例えば、光共振器は、レーザーのキャビティ、すなわち光学的共振器であってよい。この場合、光信号はレーザーの出力信号であってよい。光共振器から抽出される光信号は、光共振器で反射される光信号であってよい。例えば、レーザーが光共振器にロックされると、レーザーは光共振器の上、又はその内部に光を放出することができる。レーザー光の一部は共振器で反射され得る。任意選択により、光信号は、光共振器から漏出する信号と、光共振器で反射される信号の両方を含み得る。
【0013】
出力信号は、例えばビームスプリッタによって分割して、光共振器から抽出された光信号の一部を入射信号として受け取ることができる。任意選択により全出力信号を入射信号として使用することも可能である。
【0014】
その結果、入射信号に変換構成が適用される。変換構成には、入射信号を検出器に伝播することと、伝搬された入射信号の幾何学的ビーム形状を基に誤差信号を導出することとが含まれる。したがって変換構成には、入射ビームの、例えば光学部品による、操作、入射信号の検出及び定量化、並びに誤差信号の導出が含まれる。誤差信号は、光共振器、例えばレーザーの光共振器の基準状態に対する実状態の偏差の推定器である。変換構成は、入射信号を入力として使用し、その入射信号に基づいて誤差信号を出力する。
【0015】
誤差信号の生成の仕方を理解するために、レーザー共振器などの光共振器がサポートするエルミートガウシアン(HG)空間モードを思い起こすべきである。これらは横方向電磁モード(TEMmn)であり、共振器、例えばレーザー共振器がサポート可能である。添字のmとnは、ビーム伝搬の横方向内の各直交軸を表す正の整数である。和m+nはモード次数と呼ばれ、奇数又は偶数であり得る。光共振器に入る、完全に整列した光モードから開始すると、入力ビームの傾斜又はシフトのいずれかによって入力ビームを整列状態からずらすことにより奇数モードが誘起される。他方で、偶数モードは集束/モード不整合によって誘起され、入力ビームの傾斜又はシフトとは無関係である。
【0016】
チルトロックなどの初期の空間干渉実装は、光共振器に入射する入力ビームを傾斜/ミスアライメントさせることにより1次(TEM01及びTEM10)モードを誘導することに依存する。ここで関心があるのは、「00」と表示される基本HGモードTEM00と、「+」と表示される特定の2次HGモード、2次TEM11様モードであり、これらはいずれも偶数モードである。偶数モードはモードの不整合により誘起され、本提示の方法を、1次の奇数モードを生成するミスアライメントドリフトに対して鈍感とする。例えば、水平/垂直配向を有する僅かに楕円形のビームは、主要な「00」成分と小さな「+」成分とに数学的に分解可能である。そのような(レーザー)ビームでは、これらの2つのモード間の位相差が楕円率に関する情報を符号化する。「00」共振の近くでは、異なる次数のモードは一般的に非縮退であることからそれらのうちの1つだけが共振するために、2つのモードは差動位相シフトを生じる。この機構により、光共振器の出力信号が光共振器の共振の対向する両側において異なる幾何学的ビーム形状、特に逆の楕円率を獲得することができる。この効果を利用するために、光共振器、例えばレーザー光共振器の出力信号の、幾何学的ビーム形状、特にビーム形状楕円率又はビームモード形状楕円率が測定され得る。一般的に、光共振器の出力信号の2次空間モードに感度を有するセンサを使用して、光共振器から抽出される光信号をモニタすることが可能である。原理的には、このことは任意のビーム偏向に対して、また実際のビーム偏向に関係なく機能する。
【0017】
これらのモードは一般的に異なる共振周波数を持つ。キャビティモードに関しては、対角方向を向いたわずかに楕円形のビームの空間分解は、大部分は「TEM00」モードであり、「TEM11」2次モードの寄与は小さい。そのようなビームでは、これらの2つのモードの間の位相差は、真円度からの乖離に関する情報を符号化する。その結果、出力信号の形状が変化する。このメカニズムにより、出力信号は共振の両側で逆の楕円率を得るようにされ、それにより決定可能な誤差信号が生成することができる。この特性を利用するために、出力信号のビーム形状楕円率又はビームモード形状の楕円率に比例する誤差信号を使用可能である。
【0018】
一般に、入射ビームの幾何学的ビーム形状に基づく誤差信号の導出は、誤差信号がある関数であって、その関数の少なくとも1つのパラメータが、入射ビームの幾何学的ビーム形状を特徴づけるパラメータであることを意味する。具体的には、誤差信号が幾何学的なビーム楕円率に正比例することができる。ビーム楕円率はISO11145:2018に従って定義可能である。代替的に偏心率を使用してもよい。
【0019】
方法が使用される前に、方法の始動又は初期較正が行われる。目標状態にある光共振器で開始することにより設定値が設定される。「設定値」、「基準点」及び「目標状態」という用語は、本開示の目的上、同義に使用される。この設定値に対して、その設定値からの偏差を示す誤差信号が導出される。上で説明したように、設定値におけるビーム形状に対するビーム形状の相対変化を使用して、設定値からの偏差を定量化することができる。
【0020】
誤差信号は、極小値、特に最小値と、極大値、特に最大値とを有し、極小値と極大値が誤差信号値の区間を区切る。変換構成は、光共振器が目標状態にあるときに誤差信号のゼロクロスを有する区間を構成する。誤差信号は、光共振器が目標状態にあるときは設定値においてゼロとなる。誤差信号がゼロということは、実際の光共振器の状態が、目標状態から偏差のないことを示す。誤差信号には符号と大きさがあり、符号は目標状態からの実状態の偏差の方向を任意で示す。すなわち目標状態に到達するためには光共振器、特にレーザー共振器の動作パラメータを増加すべきか減少すべきかを示す。誤差信号の大きさは、設定値に到達するために、少なくとも1つの動作パラメータの必要な変更の大きさを示すことができる。
【0021】
例えば、光共振器の少なくとも1つの動作パラメータは、光共振器の温度、 光共振器の経路長の1以上である。一般的に、光共振器の経路長は、光共振器のモード分布にとって極めて重要である。経路長は熱膨張のために温度変化に依存して増減し得るので、温度が経路長に影響する。温度は、ペルチエ素子、又は例えば電気ヒータ素子などの個別の加熱素子、及びファンなどの個別の冷却素子によって任意選択的に変化させることができる。
【0022】
誤差信号のゼロクロスは、誤差信号の極小値と極大値の間の区間内にある。ゼロクロスは、誤差信号がゼロの値を有することを言う。ゼロでない誤差信号は、光共振器が目標状態から離調していることを指し得る。例えば、誤差信号は、光共振器内の光路長が基準状態における光路長より大きい場合に、正の値を持ち得る。その反対に、光共振器内の光路長が基準状態における光路長より小さい場合に、誤差信号は、負の値を持ち得る。
【0023】
任意選択により、極小値は最小値である。任意選択により、極大値は最大値である。任意選択により、極小値と極大値の間にはそれ以上の極値はない。誤差信号は極小値から極大値に至る区間を含む。極小値と極大値はしたがって誤差信号値の区間を区切る。
【0024】
検出器はフォトダイオード、例えばアバランシェフォトダイオードであってよい。検出器は、位相板又はモード変換器であってもよし、位相板又はモード変換器で構成されてもよい。検出器は入射信号を電気信号に変換することが可能である。ただし、検出器は電気信号に限るものではない。例えば検出器は、入射信号に基づいて光信号を生成するように構成されてもよい。一般に、本発明は検出器が入射信号に基づいて生成する物理信号の特定の形態に限定されるものではない。
【0025】
例えば、検出器は少なくとも3つのフォトダイオードからなるフォトダイオードアレイであってよく、誤差信号を導出することが入射信号の幾何学的ビーム形状を決定することを含む。フォトダイオードアレイを使用することで、入射信号の幾何学的ビーム形状を推定可能である。幾何学的ビーム形状を推定するためには、1次及び2次(あるいはそれより高次)の空間モードの差別化のために少なくとも3つのフォトダイオードの使用が必要である。原理的に、多くのフォトダイオードを使用するほど、信号形状をよりよく近似できる。一般に、入射信号の幾何学的ビーム形状を決定することは、幾何学的ビーム形状を特徴づける少なくとも1つのパラメータのパラメータ値を決定することを意味する。好ましくは、フォトダイオードは矩形の構造格子状に配置される。1つずつのフォトダイオード間の距離を最小化することは、ビーム形状の変化に向けて測定を最も高感度にするために有益である。
【0026】
任意選択により、変換構成は、検出器への伝搬入射信号の実質的な円形像に対応する誤差信号値を含む区間を構成する。任意選択により、誤差信号は、円形入射信号及び/又は検出器上の入射信号の円形像に対して実質的にゼロである。実質的に円形の入射信号は、したがって光共振器が基準状態にあることに対応し得る。基準状態からの反対の偏差に対して逆の楕円率を取得する入射信号を利用して誤差信号を決定することができる。決定された誤差信号は、共振する「00」モードと2次の「+」モードとの間の干渉として考えることができ、これらはいずれも光共振器から漏れる可能性がある。任意選択により、誤差信号のゼロクロスは、誤差信号の反転対称点であってよい。誤差信号の符号と大きさは、設定値に対する光共振器の離調の大きさと方向の指標を与え得るので、実質的に円形の入射信号に対する実質的にゼロの誤差信号値は、解釈が容易な誤差信号をもたらすことができる。例えば、光共振器の温度、及び/又は光共振器の経路長は離調する可能性があり、ゼロでない誤差信号をもたらす。誤差信号の符号と大きさは、設定値に到達するために、光共振器の温度などの動作パラメータをどちらの方向に、どれだけ調整すべきかの示唆を与えることができる。
【0027】
任意選択により、検出器は四分割フォトダイオードであってよく、誤差信号の導出には四分割フォトダイオードの対角信号を決定することが含まれる。この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される。こうして、入射信号のビーム形状、特にビーム楕円率が特に容易に評価可能である。具体的には四分割フォトダイオードは4つの分割されたセンサ領域を有するフォトダイオードである。センサ領域間の空隙は、可能な限り小さくなるように最適化可能である。具体的に四分割フォトダイオード(QPD)は、4つのセンサ領域のそれぞれからの入力光に比例した電流を生成する。各センサ領域からの信号はA、B、C、Dと記されて、四分割フォトダイオード上ではセンサ領域は(時計方向に)A、D、B、Cの順に配置される。これにより次の演算が可能となる:SUM=A+B+C+D、LR=(A+C)-(B+D)、UD=(A+D)-(C+B)、DIAG=(A+B)-(C+D)。ビーム楕円率はDIAG演算を使用して測定可能である。DIAG信号がゼロであることは、ビーム楕円率がないことを示し、入射信号が円形のビーム形状であることを意味する。DIAG信号がゼロないことは、四分割フォトダイオード上に楕円ビームがあることを意味する。DIAG信号の符号が逆であれば、逆の楕円率を示す。四分割フォトダイオードは、InGaAsベース、又はシリコンベースの検出器であってよい。信号は(例えばオペアンプを備えた標準的なアナログ電子機器を用いて)電圧に変換可能である。
【0028】
入射信号の伝播は、例えば検出器上への入射信号の入射角の調整を含み得る。入射角は検出器上での入射信号のビーム形状に影響する。例えば、入射信号の伝播軸に対して垂直な円形断面を有する入射信号は、入射角が90°とは異なる時は検出器上で楕円ビーム形状を有するように見える。楕円断面を有する入射信号は、適切な入射角にすると検出器上で円形ビーム形状を持つようにすることができる。検出器がQPDであれば、角度の設定によりDIAG信号をゼロとすることができる。入射角の設定は、較正時に入射信号の光軸に対して検出器の傾斜角を調整することで一度行うと、動作中は一定に維持される。
【0029】
任意選択により、入射信号の伝播は、特に整形レンズを用いて、好ましくは少なくとも1つのレンズ、特に少なくとも円筒レンズを用いて、入射信号を整形することを含む。入射信号を整形することで光共振器の目標状態での初期誤差信号を較正することができる。誤差信号は初期にはゼロに設定可能である。検出器がQPDであれば、入射信号の整形によりDIAG信号をゼロとすることができる。これは例えば、検出器がQPDであって検出器上での入射信号の像が円形となるように入射信号が整形されれば達成可能である。こうすると、DIAG信号がゼロとなる。DIAG信号は任意選択により、それ以上の操作なしで誤差信号として使用可能である。入射ビーム整形用のビーム整形光学系、特に少なくとも1つのレンズ、好ましくは少なくとも1つの整形レンズ、特に少なくとも1つの円筒レンズの位置及びアライメントは、較正時に一度設定され、動作中は一定に維持される。入射信号の整形は、プリズムや他の任意の光ビーム整形デバイスによっても行うことができる。
【0030】
任意選択により、入射信号の伝播は、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスと一致するように、検出レンズと検出器の間の軸方向距離を定めることを含む。透過ピークは、外部光信号と光共振器、例えば外部光シード信号と注入同期レーザーとの共振を指す。共振すると、光共振器での反射信号が最小となる。検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、入射信号の経路に沿ったそれらの距離を表す。本方法に関しては、検出器と検出レンズの位置は較正時に固定され、動作中は一定に維持される。任意選択により軸方向距離は調整区間で調整して誤差信号の曲線を決定し、軸方向距離を設定してもよい。入射信号の幾何学的ビーム形状の相対的な変化は、光共振器と外部信号、例えば光シード信号との共振時に最も顕著である。したがって、本方法は、外部光信号の透過ピークでもある、入射信号の透過ピークにおいて最も感度が高くなる。任意選択により軸方向距離は調整区間で調整して誤差信号の曲線を決定し、軸方向距離を設定してもよい。
【0031】
別の任意の実施形態では、入射信号の伝播には、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、光共振器と検出器の間の軸方向距離を定めることが含まれる。透過ピークは、光共振器における反射信号の反射最小値に対応する。すなわち、四分割フォトダイオードのSUMチャネルが落ち込みを示す(四分割フォトダイオードのSUMチャネルは特に反射曲線を測定するため)検出器と光共振器の位置は較正時に固定され、動作中は一定に維持される。レーザーと検出器との間の距離が、TEM00モードと2次空間モードとの間のGuoy位相に影響する。したがって、検出器上で得られる像は、光共振器に対して検出器の位置を調整することによりを調整可能である。誤差信号が純粋に分散性である軸方向距離と、誤差信号が純粋に吸収性であるか又は吸収性と分散性の間の任意の信号形状となる、別の軸方向距離がある。好ましくは誤差信号は分散性である。
【0032】
任意選択により、誤差信号を導出することは、光共振器が目標状態にあるときに誤差信号をゼロに設定するために誤差信号にオフセットを与えることが含まれる。誤差信号は以下の様にして導出される:検出器上の入射信号が、検出器のフォトダイオードごとに信号を発生させる。これらの信号は、入射信号の形状の推定器に応じて使用される。例えば検出器がQPDであれば、DIAG演算を使用して信号の楕円率が推定され得る。誤差信号は較正中にゼロに初期設定可能である。例えばDIAG演算は、たとえ入射信号が実質的に円形であったとしても残留信号を生じる可能性があるために、追加のオフセットを適用して設定ポイントにおける誤差信号をゼロに初期設定する。
【0033】
別の実施形態では、不均衡検出操作が利用可能である。例えば、DIAG演算に代わって、不均衡操作のIDIAGを使用することができる。IDIAG=ε1(A+B)-ε2(C+D)であり、ここでε1/ε2≠1であり、またε1とε2は、誤差信号をゼロに設定するように初期設定可能である。これにより、所望の状態において(例えば設定点において)誤差信号にゼロクロスを与えるために、対角チャネルのバックグラウンドオフセットを調整することを可能とする。
【0034】
別の実施形態では、入射信号の伝播が、検出レンズ、望ましくは凸球面レンズを用いて入射信号を検出器上に集束させることを含む。任意選択により、入射信号は、少なくとも第1の平面に集束及び/又は発散させ、好ましくは第2の平面(第1の平面に非平行)に、特に入射信号の経路に沿って、第1の平面での集束/発散とは異なる点において、集束及び/又は発散させる。入射信号の集束とは、入射信号を少なくとも1つの平面に集束させることを指す。入射信号を検出器上に集束させるための検出レンズ、好ましくは凸球面レンズ、の位置及びアライメントは、較正中に一度設定されて、動作中は一定に維持される。
【0035】
任意選択により、検出レンズと検出器の軸方向距離を調整することは、任意で、検出レンズと検出器の入射信号の光軸に沿う軸方向距離を、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように調整する前に、入射信号の面内入射信号ウェストと面外入射信号ウェストとが、光共振器の共振キャビティモードのビームウェスト(特に面内及び面外の平均ビームウェストである、キャビティモードの平均ビームウェスト)に一致するように軸方向距離を調整することを含む。任意選択により、これは光共振器から反射する光信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、入射信号の光軸に沿って、検出レンズと検出器の軸方向距離を調整する前に行われる。任意選択により、追加又は代替として、共振器から反射する入射信号の面内ビームウェストと面外ビームウェストが(相互に)一致するように軸方向距離が調整される。誤差信号のベースラインオフセットは、ビームが円形プロファイルをとる位置からの検出器位置の軸方向変位に起因する(点収差を無視して)。軸方向距離はこのベースラインオフセットが排除されるように選択することができる。このビームウェストの一致は、透過ピークとゼロクロスの一致の前の第一近似として使用可能であり、あるいはそれ自体を使用することも可能である。非点収差がなければ、これらの2つは同じ結果となる。この場合、モードに非点収差が残留しないので、ベースラインをゼロにすると透過のプラトーに自動的に入る。レーザーの周波数ロックの本方法及び装置においては、検出器と検出レンズの軸方向距離が、共振器から反射された入射信号の面内ビームウェストと面外ビームウェストが、光共振器の共振キャビティモードのビームウェストに一致するか、あるいは光共振器の共振キャビティモードのビームウェストの±5%以内、又は±2%以内、又は±1%以内となるような距離であれば好ましい。
【0036】
任意選択により本方法は、四分割フォトダイオードの左右の信号及び/又は上下の信号が最小化されるように、検出レンズ及び/又は四分割フォトダイオードを入射信号の光軸に垂直な方向に並進させることによって入射信号を四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップをさらに含む。ここで左右の信号及び上下の信号はそれぞれ四分割フォトダイオードの隣接するセンサ領域の和の差で構成され、左右の信号及び上下の信号は隣接するセンサ領域の異なる半分の和を使用する。任意選択により、これは反復して繰り返し実行される。このように、入射信号を四分割フォトダイオードに完全に整列させることができ、四分割フォトダイオードのアクティブ領域上で最適なビームフィットが達成されて最も正確な誤差信号が生成される。任意選択により、並進は2方向で行われ、それらは相互に垂直であり、入射信号の光軸に対して垂直である。
【0037】
任意選択により、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、検出レンズと四分割フォトダイオードの軸方向距離を入射信号の光軸に沿って調整するステップと、入射信号を四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップが、反復的に実行される。すべての軸方向距離の調整では、左右及び上下の信号を最小化することができる。このプロセスの繰り返しにより、ゼロクロスが最適化されて透過プラトーに正確に一致させることができる。
【0038】
本発明はさらに、本発明の方法でレーザーを光共振器にロックする方法に関する。これには、
-レーザーからレーザービームを提供するステップ、
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するステップ、
-レーザービームを光共振器 に指向させるステップであって、光共振器から反射されるレーザービームは検出器に伝搬される入射信号である、ステップ、及び
-誤差信号に基づいてレーザーを光共振器にロックするステップ、
がさらに含まれる。
【0039】
この方法は広範囲のレーザービーム波長で使用可能である。例えば、波長は、190nm ら400nmの間の紫外域、400nmから800nmの間の可視域、800nmから1800nmの間の近赤外域、及び/又は1800から少なくとも3500nmの間の赤外域であってよい。任意選択により、誤差信号は集束入射信号、この場合は反射レーザービームのビーム楕円率に正比例する。任意選択により、誤差信号は円形レーザービームに対しては実質的にゼロである。任意選択により、誤差信号をレーザー電流にフィードバックすることにより、レーザーが誤差信号に基づいて光共振器にロックされる。ロックは、光共振器から反射するレーザービームの楕円率の変化をモニタすることに基づく。ロックは閉ループ制御によって行うことができる。
【0040】
レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームをアンダー整形するということは、その後でレーザービームの断面が少なくとも1点において円形断面とは異なるように、特に少なくとも1点においてレーザービームが2つの横方向で異なるビームウェストを有するように、レーザービームを操作することであると理解される。任意選択により、レーザービームは、少なくとも第1の平面に集束及び/又は発散し、好ましくは第2の平面(第1の平面に非平行)に、特にレーザービームの経路に沿って、第1の平面での集束/発散とは異なる点において、集束及び/又は発散する。
【0041】
レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することは、任意選択により、集束軸が非平行、特には相互に垂直に配向する1対の円筒レンズにより行うことが可能である。及び/又はレーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することは、楕円ビーム又は非点ビームが生成される、レンズ、楔形プリズム、及び/又はアナモルフィックプリズム対の組み合わせにより行われる。
【0042】
任意選択により、2つの円筒レンズは同じ焦点距離を有し、さらに任意では、1つが水平に配向し他方が垂直に配向する。任意選択により焦点距離は、2つのレンズが(あたかも1つの球面レンズを形成するかのように)同軸配置されると、レーザービームがTEM00キャビティモードに完全にモード一致するように選択される。1対の円筒レンズ間の距離は、「+」モードの光量を決定し、全パワー(例えば400μW)の例えば10%に及ぶ。1つの円筒レンズが、軸を面内に配向し、もう1つが面外に配向することができる。円筒レンズの位置調整により、入力モードを操作して2次モードまでを誘起する様にできる。TEM00、TEM02、TEM20以外のすべてのモードが抑制されて、後者2つの透過レベルが等しくなるように整列することが可能である。TEM02とTEM20のバランスを等しくするために、面内及び面外のビームウェストが収束と発散をするように円筒レンズの位置を設定/調整可能である。平均の共振器ウェストは面内と面外のビームウェストが一致する場所に正確に配置される。ビームがキャビティの外へ発散すると、その平均ウェストもまたキャビティモード平均ウェストに一致し得る。TEM00に対するTEM02とTEM20の量のバランスは、重心位置を保持しながら2つの円筒レンズの間の距離で調整可能である。対を成す各部材は、この基準構成から反対方向に対称的に並進されるので、TEM02モードとTEM20モードは共振器透過スペクトルで観察されるように等振幅となる。物理的には、この動作により水平面と垂直面のビームウェストがキャビティウェスト位置の前後に移動する。あるいは、レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することは、任意選択により楕円ビーム又は非点ビームが生成される、レンズ、楔形プリズム、及び/又はアナモルフィックプリズム対の組み合わせによって行われる。
【0043】
任意選択により、レーザービームはレーザービームを光共振器に向ける前に、偏光フィルタをかけられ、かつ入射信号は偏光フィルタリングされる。任意選択により光共振器は複屈折性である。
【0044】
安定性という観点での本方法の制約は、例えば、位相基準に影響する2次モード成分の変化に起因するレーザービーム形状の残留変動によって依然として存在する可能性がある。この残存する制約の緩和を支援するために、偏光の事前選択及び事後選択手順が利用可能であり、これを弱値概念を用いて説明する。この目的のために、任意選択により、レーザービームを光共振器に向ける前にレーザービームに偏光フィルタをかけ、光共振器から反射されるレーザービームが偏光フィルタリングされる。任意選択により光共振器は複屈折性である。こうして、システム性能を制約する技術的ノイズをコヒーレントに抑制することができる。装置が好ましくは、レーザービームをビーム整形器に向ける前にレーザービームを偏光フィルタリングするための第1の偏光ビームスプリッタ(あるいは第1偏光子)と、光共振器からのレーザービーム放出後に、特に検出レンズと検出器との間で、偏光フィルタリングするための第2の偏光ビームスプリッタ(あるいは第2偏光子)を備える。偏光フィルタリングは、レーザーを周波数ロックする方法、及び/又はレーザーを周波数ロックするための装置の調整方法として使用可能である。
【0045】
偏光自由度が含まれると、キャビティ反射係数は、入力偏光状態|ψ
1>に作用する反射演算子
で置き換えられる。状態|ψ
2>への事後選択を行う場合、得られる実効的反射係数r
wは、反射演算子の弱値によって与えられる。
((式1)
ここでδはレーザーキャビティの周波数離調であり、κはキャビティの全幅線幅であり、γ’=Aγである。γはキャビティ内での往復損失を特徴づける無次元パラメータである。「増幅」パラメータAは特定の事後選択に依存し、直線偏光状態|ψ
1>と|ψ
2>に対しては実数値である。偏光子の角度の関数であるが、操作的には光が共振から外れている場合の、事後選択の後の残留電力比|<ψ
2|ψ
1>|
2≒1/(2A+1)
2に関連付けることが可能である。式1の右辺は、可変損失パラメータメータγ’を除けば、通常の高フィネス共振器からの反射と同じ形である(固定値κにおいて)。γ<1、γ=1、γ>1、γ>2は、それぞれアンダー結合、インピーダンス整合、オーバー結合、キャビティ利得の各領域であると特定されることに留意されたい。γ’の変動性は、共振器からの反射光の事後選択依存性を観察することで実験的に実証可能である。誤差信号は、式1の反射係数の虚数部によって与えることができる。事後選択をインピーダンス整合構成に調整することで、周波数安定化のためにノイズが低減される。この構成では、信号生成部分の減衰が小さい一方で、検出器に入射する非信号生成ビーム成分が強く減衰されるので、誤差信号の傾きが効果的に増加し、ビーム形状や強度変動に対する感度が低下する。
【0046】
任意選択により、本方法は、誤差信号を最小化することにより目標状態に達するように光共振器を調整するステップを更に含む。
【0047】
例えば、光共振器の調整は、
-光共振器の温度を調整するステップと、
-光共振器の光路長を調整するステップ、
の1以上を含む。
【0048】
例えば温度及び/又は光路長の調整により光共振器を調整することにより、光共振器の光学特性に影響を与え、結果的に入射信号の幾何学的ビーム形状に影響を及ぼすことができる。誤差信号は入射ビームの幾何学的ビーム形状に基づいている。
【0049】
任意選択の実施形態では、光共振器はレーザーの光共振器、特には半導体レーザーの光共振器である。レーザーは例えば、半導体レーザーであって、レーザーのポンピングはレーザー共振器を通る電流によって行われる。半導体レーザーには、例えばFP(ファブリペロ)レーザー、DFB(分布帰還型)レーザー、DBR(分布ブラッグ反射型)レーザー、又はVCSEL(垂直共振面発光)レーザーがある。本方法と互換性のあるその他のクラスのレーザーには、ECDL(外部共振器ダイオードレーザー)又はECL(外部共振器レーザー)がある。半導体レーザーのポンピングは、レーザー共振器内の活性物質を通る電流によって行うことができる。
【0050】
一般に、レーザー共振器、すなわちレーザーの光共振器の経路長は、レーザーのモード分布に対して極めて重要である。任意選択により光共振器のポンピングは、光共振器の動作パラメータである。レーザーのポンピングはレーザー技術に依存し、例えば更なる光源、例えば更なるレーザーを介した光学ポンピングによって行うことが可能である。ポンピングの調整には、例えば電流の調整、光ポンプ光の強度及び/又は周波数の変更が含まれる。
【0051】
任意選択により、光共振器の調整には、半導体レーザーの電流を調整するステップが含まれる。半導体レーザーのポンピングは、レーザー共振器を通る電流によって行うことができる。ポンピングの調整は、電流の調整で行うことができる。
【0052】
本発明の具体的な実施形態は、注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御方法及び注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムに関する。以下にそれを概説する。
【0053】
レーザーの線幅は主に、レーザーの誘導放出に寄与しない不要な効果によって決定される。レーザーは、別の入射された、はるかに狭い線幅を有する、「シード」レーザービームの位相相関をコピーするようにできる。これが理想的には、シードレーザーと同一線幅を有する「スレーブ」レーザーをもたらす。したがって、注入同期レーザーは、注入同期が狭い線幅のレーザー出力を可能とするので、現代の科学技術の重要な部分を担っている。さらに、注入シード周波数は変更可能である。「スレーブ」レーザーは注入されたシードの周波数に従う。こうしてレーザーの出力周波数のシフトが可能である。
【0054】
安定した注入同期と安定したレーザー出力をえるために、注入同期レーザーを制御することが有益である。レーザーを制御するために、レーザー出力を測定して定量化し、公称又は基準状態に対するレーザーの実状態のずれの推定器を導出することが必要である。適切な測定及び推定器を見いだすという課題に取り組むために、数十年にわたり多くの方法が開発されてきた。これらには、例えば、サイド・オブ・フリンジ強度法、偏光に基づく方法、パウンド・ドレバー・ホール(Pound-Drever-Hall)(PDH)に似た周波数変調技術、そして最後に、チルトロッキングのような空間モード干渉法が含まれる。
【0055】
Diorico,F.らによる「Laser-cavity locking at the 10^(-7) instability scale utilizing beam elipticity(ビーム楕円率を利用した10-7の不安定性スケールでのレーザー共振器ロッキング)」(アーカイブプレプリントarXiv:2203.04550(2022)には、レーザーを光共振器にロックする方法が提示されている。レーザービームが光共振器に向けられる。レーザー周波数は共振器と共振(あるいはほぼ共振)している。反射ビームはレンズで四分割フォトダイオードに集束される。この方法は光共振器の基本TEM00モードと2時空間モードとの干渉に依存し、検出器上に楕円ビームをもたらす。楕円率に基づいて誤差信号が導出され、これをフィードバックとして使用して、レーザーが安定したレーザー共振器ロックが達成される。この方法は、「スクワッシュロック」と呼ばれる。この論文では、汎用のスクワッシュロック法がレーザー注入ロックの安定化に適用可能であると述べている。ただし、この論文は、開示の方法を一般化するヒントを提供しておらず、また開示の方法をレーザーの注入ロックに転用する方法も示していない。
【0056】
本発明の実施形態(実施形態1を参照)では、注入同期レーザーを閉ループで制御する方法と装置、これはアライメントのドリフトと振動に対して強い、が提供されている。
【0057】
これは、注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御によって達成される。この方法は、
-光シード信号を有するレーザーを注入するステップ、
-レーザーからの光出力信号の少なくとも一部を入射信号として検出器上に伝搬するステップ、
-検出器上での入射信号の幾何学的ビーム形状に基づいて誤差信号を導出するステップ、
-誤差信号に敏感なレーザーの少なくとも1つの動作パラメータを制御するステップ、
を含む。
【0058】
さらに、これは、注入同期レーザー(実施形態13を参照)を制御するための閉ループ制御システムによって達成される。これは、
-動作中に光シード信号と共に注入されるレーザー、
-検出器、
-レーザーからの光出力信号の少なくとも一部を検出器への入射信号として伝搬するための光学部品、
-検出器への入射信号の幾何学的ビーム形状に基づいて誤差信号を導出するためのコントローラ、
を含む。ここで、コントローラは、誤差信号に敏感な少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成される。
【0059】
レーザー自身の発光を利用してそれ自体を強化することが可能である。この方法は一般に自己注入又は自己帰還ロッキングと呼ばれる。レーザー光の小部分を取り出して、それを周波数フィルタリングしたものをそれ自身に供給して戻すことにより、より狭い周波数帯域へのレーザー放出がさらに強化される。この結果、レーザー線幅の狭小化が得られる。注入同期レーザーを制御する閉ループ制御方法及び注入同期レーザーを制御する閉ループ制御システムが、外部光源のシード信号を用いる注入ロックと自己注入ロックレーザーの両方に使用可能である。
【0060】
この方法及びシステムは、方法を使用する前に始動または初期較正される。制御ループ(例えばPIDコントローラを含む)の設定値又は基準点が、ロックされたレーザー及び光シード信号で開始することで設定される。「ロックされる」という用語は、レーザーへの光シード信号の結合が所望のものであるという様に理解されたい。例えば、光シード信号がTEM00レーザーモードに完全にモード整合することができ、及び/又は光シード信号の中心周波数がレーザーと共振している。一般に、設定値において、レーザーに対する光シード信号の関係が定義される。レーザーは設定値においてシステムが安定化し、レーザーと光シード信号の関係が可能な限り一定となるように制御されるべきである。これは、設定値からの偏差を示す誤差信号の導出により達成される。上で説明したように、設定値におけるビーム形状に対するビーム形状の相対変化を使用して、設定値からの偏差を定量化することができる。一般に、本閉ループ制御方法は、いかなる特定の種類の制御伝達関数にも限定されない。したがって、レーザーの少なくとも1つの動作パラメータを制御するために特定の設定値を定義する必要はない。それに代わって、誤差信号がそのような範囲が残っており、どちらの方向であるかを示すときに、可能な動作状態の許容範囲内にレーザーを駆動して戻せば十分であり得る。
【0061】
一般に、入射ビームの幾何学的ビーム形状に基づく誤差信号を導出することは、誤差信号がある関数であって、その関数の少なくとも1つのパラメータが、入射ビームの幾何学的ビーム形状を特徴づけるパラメータであることを意味する。具体的には、誤差信号が幾何学的なビーム楕円率に正比例することができる。ビーム楕円率はISO11145:2018に従って定義可能である。代替的に偏心率を使用してもよい。誤差信号は任意選択により設定値においてゼロであってよい。誤差信号には符号と大きさがあり、符号は任意選択により制御の方向、すなわちレーザーの動作パラメータが増加されるべきか減少されるべきかを示す。誤差信号の大きさは、設定値に到達するための、少なくとも1つの動作パラメータの必要な変更の大きさを示すことができる。
【0062】
任意選択により、誤差信号のゼロクロスは、誤差信号の最小値と最大値の間のある区間にあり、その区間には実質的に円形のビームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値が含まれ、共振の反対側で逆の楕円率を取得する入射信号が誤差信号の決定に利用可能であり、それがレーザービームをロックして安定化させるために使用可能である。決定された誤差信号は、レーザーから漏れる共振「00」モードと、レーザーから直接反射して位相基準を形成する2次「+」モードとの間の干渉と考えることができる。この検出方式は、アライメントのドリフトや変動に対して鈍感である。それは小さなミスアライメントはモード分解において単に一次モードを生成するだけだからである。ゼロクロスは、誤差信号がゼロの値を有することを言う。
【0063】
任意選択により、誤差信号は極小値を含み、これは任意選択により最小値である。任意選択により、誤差信号は極大値を含み、これは任意選択により最大値である。任意選択により、最小値と最大値の間には更なる極値はない。任意選択により、誤差信号は最小値から最大値に至る区間を含む。その区間には、レーザーがシード信号にロックされているレーザーに対応する値があり、それは最小値と最大値の間である。誤差信号の傾きにより誤差信号がレーザー制御に使用され、光シード信号へのレーザーのロックが達成される。
【0064】
検出器はフォトダイオード、例えばアバランシェフォトダイオードであってよい。検出器は、位相板又はモード変換器であってよいし、位相板又はモード変換器で構成されてもよい。検出器は入射信号を電気信号に変換することができる。ただし、検出器は電気信号に限るものではない。例えば検出器は、入射信号に基づいて光信号を生成するように構成されてもよいし、コントローラは、検出器からの光信号に基づいて誤差信号を導出してもよい。一般に、本発明は検出器が入射信号に基づいて生成する物理信号の特定の形態に限定されるものではない。
【0065】
例えば、レーザー共振器の少なくとも1つの動作パラメータは、
-レーザー共振器の温度、
-レーザー共振器の経路長、
-レーザー共振器のポンピング、
-光シード信号の位相、
の1以上である。一般に、レーザー共振器の経路長は、レーザーのモード分布にとって極めて重要である。熱膨張のために経路長は温度変化に依存して増減し得るので、特に半導体レーザーの場合には温度が経路長に影響する。ポンピングは温度に影響する。したがってこの場合にも経路長はポンピングに影響され得る。温度は、ペルチエ素子、又は例えば電気ヒータ素子などの個別の加熱素子、及びファンなどの個別の冷却素子によって任意選択的に変化させることができる。レーザーのポンピングはレーザー技術に依存し、例えば更なる光源、例えば更なるレーザーを介した光ポンピングによって行うことが可能である。ポンピングの調整には、例えば電流の調整、光ポンプ光の強度及び/又は周波数の変更が含まれる。光シード信号の位相は、例えば光シード信号の光源の調整によって、又は光シード信号の光路長の調整によって調整可能である。
【0066】
任意の実施形態において、レーザーは半導体レーザーであって、レーザーのポンピングはレーザー共振器を通る電流によって行われる。半導体レーザーには、例えばFP(ファブリペロ)レーザー、DFB(分布帰還型)レーザー、DBR(分布ブラッグ反射型)レーザー、又はVCSEL(垂直共振面発光)レーザーがある。本方法と互換性のあるその他のクラスのレーザーには、ECDL(外部共振器ダイオードレーザー)又はECL(外部共振器レーザー)がある。半導体レーザーのポンピングは、レーザー共振器内の活性物質を通る電流によって行うことができる。ポンピングの調整は、電流の調整で行うことができる。
【0067】
例えば、検出器は少なくとも3つのフォトダイオードからなるフォトダイオードアレイであってよく、誤差信号を導出することが入射信号の幾何学的ビーム形状を決定することを含む。フォトダイオードアレイを使用することで、入射信号の幾何学的ビーム形状を推定可能である。幾何学的ビーム形状を推定するためには、1次及び2次(あるいはそれより高次)の空間モードの差別化のために少なくとも3つのフォトダイオードの使用が必要である。原理的に、多くのフォトダイオードを使用するほど、信号形状をよりよく近似できる。一般に、入射信号の幾何学的ビーム形状を決定することは、幾何学的ビーム形状を特徴づける少なくとも1つのパラメータのパラメータ値を決定することを意味する。好ましくは、フォトダイオードは矩形の構造格子状に配置される。1つずつのフォトダイオード間の距離を最小化することは、ビーム形状の変化に向けて測定を最も高感度にするために有益である。
【0068】
検出器は四分割フォトダイオードであってよく、誤差信号の導出には四分割フォトダイオードの対角信号を決定することが含まれ得る。この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される。こうして、入射信号のビーム形状、特にビーム楕円率が特に容易に評価可能である。具体的には四分割フォトダイオードは4つの分割されたセンサ領域を有するフォトダイオードである。センサ領域間の空隙は、可能な限り小さくなるように最適化可能である。具体的に四分割フォトダイオードは、4つのセンサ領域のそれぞれからの入力光に比例した電流を生成する。各センサ領域からの信号はA、B、C、Dと表記されて、四分割フォトダイオード上ではセンサ領域は(時計方向に)A、D、B、Cと配置される。これにより次の演算が可能となる:SUM=A+B+C+D、LR=(A+C)-(B+D)、UD=(A+D)-(C+B)、DIAG=(A+B)-(C+D)。ビーム楕円率はDIAG演算を使用して測定可能である。DIAG信号がゼロであることは、ビーム楕円率がないことを示し、これはレーザービームが円であることを意味する。DIAG信号がゼロないことは、四分割フォトダイオード上に楕円ビームがあることを意味する。DIAG信号の符号が逆であれば、逆の楕円率を示す。四分割フォトダイオードは、InGaAsベース、又はシリコンベースの検出器であってよい。信号は(例えばオペアンプを備えた標準的なアナログ電子機器を用いて)電圧に変換可能である。
【0069】
既述したように、方法が使用される前に、方法及びシステムの始動又は初期較正が行われる。注入同期レーザーの制御中は、初期化された、あるいは較正された特性は一定である。誤差信号は、以下のパラメータによって初期設定することができる。
【0070】
例えば、入射信号の伝播は、検出器への入射信号の入射角を付与することを含む。入射角は検出器上での入射ビームのビーム形状に影響する。例えば、入射角が90°とは異なる場合には、円形ビームは検出器上では楕円ビーム形状を持つように見えるであろう。楕円断面を有する入射ビームは、適切な入射角にすると検出器上で円形ビーム形状を持つようにすることができる。検出器がQPDであれば、付与された角度によりDIAG信号をゼロに設定することができる。付与された角度は較正時に一度設定されて、動作中は一定に維持される。
【0071】
任意選択の実施形態において、入射信号の伝播は、入射信号の整形、特に少なくともレンズ、好ましくは少なくとも整形レンズ、特には少なくとも円筒レンズを用いた入射信号の整形を含む。入射信号の整形により、レーザーが光シード信号にロックされたときの初期誤差信号を較正することができる。誤差信号は初期にはゼロに設定可能である。検出器がQPDであれば、入射信号の整形によりDIAG信号をゼロとすることができる。これは例えば、検出器がQPDであって検出器上での入射信号の像が円形となるように入射信号が整形されれば達成可能である。こうすると、DIAG信号がゼロとなる。DIAG信号は任意選択により、それ以上の操作なしで誤差信号として使用可能である。入射ビーム整形用のビーム整形光学系、特に少なくとも1つのレンズ、好ましくは少なくとも1つの整形レンズ、特に少なくとも1つの円筒レンズの位置及びアライメントは、較正時に一度設定され、動作中は一定に維持される。
【0072】
別の実施形態では、入射信号の伝播が、検出レンズ、望ましくは凸球面レンズを用いて入射信号を検出器上に集束させることを含む。任意選択により、レーザービームは、少なくとも第1の平面に集束及び/又は発散され、好ましくは第2の平面(第1の平面に非平行)に、特にレーザービームの経路に沿って、第1の平面での集束/発散とは異なる点において、集束及び/又は発散される。レーザービームの集束とは、入射信号を少なくとも1つの平面に集束させることを指す。入射信号を検出器上に集束させるための検出レンズ、好ましくは凸球面レンズ、の位置及びアライメントは、較正中に一度設定されて、動作中は一定に維持される。
【0073】
任意選択により、入射信号の伝播は、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスと一致するように、検出レンズと検出器の間の軸方向距離を定めることを含む。透過ピークは光シード信号とレーザーの共振を表す。検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、入射信号の経路に沿ったそれらの距離を表す。本方法と装置に関しては、検出器と検出レンズの位置は較正時に固定され、動作中は一定に維持される。入射信号の幾何学的ビーム形状の相対変化は、レーザーが光シード信号と共振するときに最も顕著である。したがって、本方法は、光シード信号の透過ピークでもある、入射信号の透過ピークにおいて最も感度が高くなる。任意選択により軸方向距離は調整区間で調整して誤差信号の曲線を決定し、軸方向距離を設定してもよい。
【0074】
別の任意の実施形態では、入射信号の伝播には、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、レーザーと検出器の間の軸方向距離を定めることが含まれる。検出器とレーザーの位置は較正時に固定され、動作中は一定に維持される。入射信号の幾何学的ビーム形状の相対変化は、レーザーが光シード信号と共振するときに最も顕著である。したがって、本方法は、光シード信号の透過ピークでもある、入射信号の透過ピークにおいて最も感度が高くなる。レーザーと検出器との間の距離が、TEM00モードと2次空間モードとの間のGuoy位相に影響する。したがって、検出器上で得られる像は、レーザーに対して検出器の位置を調整することによりを調整可能である。誤差信号が純粋に分散性である軸方向距離と、誤差信号が純粋に吸収性であるか又は吸収性と分散性の間の任意の信号形状となる、別の軸方向距離がある。好ましくは誤差信号は分散性である。
【0075】
任意選択により、誤差信号を導出することは、誤差信号にオフセットを適用することを含む。誤差信号は以下の様にして導出される:検出器上の入射信号が、検出器のフォトダイオードごとに信号を発生させる。これらの信号は、入射信号形状の推定器に応じて使用される。例えば検出器がQPDであれば、DIAG演算を使用して信号の楕円率の推定が可能である。誤差信号は較正中にゼロに初期設定可能である。こうして、誤差信号の符号が制御の方向、例えばレーザーの動作パラメータが増加されるべきか減少されるべきかを示す。例えばDIAG演算は、たとえ入射信号が実質的に円形であったとしても残留信号を生じる可能性があるために、追加のオフセットを適用して設定ポイントにおける誤差信号をゼロに初期設定する。
【0076】
別の実施形態では、不均衡検出操作が利用可能である。例えば、DIAG演算に代わって、不均衡操作のIDIAGを使用することができる。IDIAG=ε1(A+B)-ε2(C+D)であり、ここでε1/ε2≠1であり、またε1とε2は、誤差信号をゼロに設定するように初期設定可能である。これにより、所望の状態において(例えば設定点において)誤差信号にゼロクロスを与えるように、対角チャネルのバックグラウンドオフセットの調整を可能とする。
【0077】
注入同期レーザーの閉ループ制御法、及び注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムが、光シード信号の波長をシフトさせるという更なるステップによって、注入同期レーザーの出力信号の波長を連続的にシフトさせるために利用可能である。ここで、光シード信号の波長を調整することが誤差信号の変化をもたらす。光信号の波長のシフトは光シード信号とレーザーのロックを乱し、それにより誤差信号が変化する。誤差信号の変化が、本方法の制御ステップにおいて、応答としてレーザーへのフィードバックをもたらす。それにより、レーザーと光シード信号の関係が、光シード信号のシフトした波長において復元される。こうして、レーザー出力が光シード信号の波長に追従する。誤差信号は、注入されたレーザー周波数に対してレーザーがその最適動作パラメータで動作しているか否かを示す。この情報があれば、注入レーザーの動作パラメータを動的に調整するためのフィードバックの追加レイヤを付加することが可能である。これにより、全動作範囲を通じてレーザーが注入周波数に追従可能となる。この最適範囲により、中断なしでレーザー周波数の連続的な調整が可能となる。この中断されることのない周波数調整範囲は、しばしば「モードホップフリー」領域と呼ばれる。これは、数GHzから数十GHzの範囲に及ぶ半導体レーザーの独特な性質である。この最適ロック範囲は通常、パッケージされていない半導体レーザーの設定動作電流と温度によって決定される。初期動作パラメータは通常システムの初期化又は較正時の前かその途中で設定されるので、範囲は中心周波数で既に事前決定されている。この中心周波数は、レーザーの最適ロック範囲情報がある場合にはモードホップフリー領域を超えて動的に調整可能である。半導体レーザーの本来の出力モードは高度に楕円状であり、注入されるモードは一般に円形(あるいは異なるレベルの楕円)であるので、レーザーパラメータがなお最適注入範囲にあるか又は最適設定値であるかを連続的にモニタする誤差信号が存在する。これがあれば、電流又は温度、あるいはその両者が動的に調整されて、注入信号周波数に追従させることが可能である。これにより、その全動作範囲にわたって、幅広く調整可能なレーザー周波数を生成可能となる。
【0078】
任意選択により、少なくともレーザー、光学部品、及び好ましくは検出器は、マイクロ光学機器又はシリコンフォトニクスプラットフォーム、好ましくはシリコンチップ上に集積される。これは例えば、単一のシステムオンチップ(SoC)上に、個別の微小化素子を異種集積化することで実現可能である。例えば、最先端の光学パッケージング技術と高精度組立てを利用してシステムの構築が可能である。
【0079】
任意の実施形態では、システムはTO-Canパッケージ又はバタフライマウント(BTF)に集積されて、一般的な技術との容易な互換性を有する。
【0080】
任意選択により、本方法は、四分割フォトダイオードの左右の信号及び/又は上下の信号が最小化されるように、検出レンズ及び/又は四分割フォトダイオードを入射信号の光軸に垂直な方向に並進させることによって出力信号を四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップをさらに含む。ここで左右の信号及び上下の信号はそれぞれ四分割フォトダイオードの隣接するセンサ領域の和の差で構成され、左右の信号及び上下の信号は隣接するセンサ領域の異なる半分の和を使用する。任意選択により、これは反復して繰り返し実行される。このように、入射信号を四分割フォトダイオードに完全に整列させることができ、四分割フォトダイオードのアクティブ領域上で最適なビームフィットが達成されて最も正確な誤差信号が生成される。任意選択により、並進は2方向で行われ、それらは相互に垂直であり、レーザービームの光軸に対して垂直である。
【0081】
安定性への制約は、例えば、位相基準に影響する2次モード成分の変化に起因し得る入射信号の残留変動によって依然として存在する。この残存する制約の緩和を支援するために、偏光の事前選択及び事後選択手順が利用可能であり、これを弱値概念を用いて説明する。この目的のために、任意選択により、光シード信号をレーザーに向ける前に光シード信号に偏光フィルタをかけ、光出力信号が偏光フィルタリングされる。任意選択により、レーザーは複屈折共振器を備える。こうして、システム性能を制約する技術的ノイズをコヒーレントに抑制することができる。装置は好ましくは、光シード信号をレーザーに向ける前に光シード信号を偏光フィルタリングするための第1の偏光ビームスプリッタ(あるいは第1偏光子)を備える。第2の偏光ビームスプリッタ(または第2の偏光子)は、特に検出器の前で、入射信号を偏光フィルタリングするために使用される。偏光フィルタリングは、注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御方法、及び注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムにおいて使用することができる。
【0082】
偏光自由度が含まれると、キャビティ反射係数は、入力偏光状態|ψ
1>に作用する反射演算子
で置き換えられる。状態|ψ
2>への事後選択を行う場合、得られる実効的反射係数r
wは、反射演算子の弱値によって与えられる。
((式1)
ここでδはレーザーへの光シード信号の周波数離調であり、κはレーザーの全幅線幅であり、γ’=Aγである。γはレーザーでの往復損失を特徴づける無次元パラメータである。「増幅」パラメータAは特定の事後選択に依存し、直線偏光状態|ψ
1>と|ψ
2>に対しては実数値である。偏光子の角度の関数であるが、操作的には光シード信号が共振から外れている場合の、事後選択の後の残留電力比|<ψ
2|ψ
1>|
2≒1/(2A+1)
2に関連付けることができる。式1の右辺は、可変損失パラメータメータγ’を除けば、通常の高フィネス共振器からの反射と同じ形である(固定値κにおいて)。γ<1、γ=1、γ>1、γ>2は、それぞれレーザーのアンダー結合、インピーダンス整合、オーバー結合、キャビティ利得の各領域であると特定されることに留意されたい。γ’の変動性は、レーザーからの反射パワーの事後選択依存性を観察することで実験的に実証可能である。誤差信号は、式1の反射係数の虚数部によって与えることができる。事後選択をインピーダンス整合構成に調整することで、周波数安定化のためにノイズが低減される。この構成では、信号生成部分の減衰が小さい一方で、検出器に入射する非信号生成ビーム成分が強く減衰されるので、誤差信号の傾きが効果的に増加し、ビーム形状や強度変動に対する感度が低下する。
【0083】
任意選択の検出レンズは凸球面レンズであってよい。
【0084】
光シード信号はレーザーに注入される前に、例えば光シード信号が楕円形の幾何学的ビーム形状、又は円形のビーム形状となるように、整形されてもよい。
【0085】
この方法及び装置は、広範囲のレーザー波長で使用可能である。例えば、波長は、190nmから400nmの間の紫外域、400nmから800nmの間の可視域、800nmから1800nmの間の近赤外域、及び/又は1800から少なくとも3500nmの間の赤外域であってよい。
【0086】
任意選択により、誤差信号は入射信号の幾何学的ビーム楕円率に正比例する。
【0087】
任意選択により、誤差信号は、円形入射信号及び/又は検出器上の入射信号の円形像に対して実質的にゼロである。
【0088】
本発明の具体的な実施形態は、レーザーを光共振器に周波数ロックする方法、レーザーを光共振器に周波数ロックするための装置の調整方法、レーザーを光共振器に周波数ロックするための装置に関し、以下でそれらの概要を説明する。
【0089】
レーザーを共振器にロックするという課題に対処するために、数十年にわたり多くの方法が開発されてきた。これらには、サイド・オブ・フリンジ強度法、偏光に基づく方法、透過変調及びパウンド・ドレバー・ホール(Pound-Drever-Hall)(PDH)反射法を含む周波数変調技術、そして最後に、空間モード干渉法が含まれる。
【0090】
用途によって、特定の方法が望ましい場合もあるが、その安定性及び汎用性から、PDH法-光搬送波の高周波変調/復調を利用する-が一般的な標準となっている。キャビティ線幅の105-106分の1という最も要求の厳しいロック安定性を達成するために、PDH方式のロック点の安定性を一般的に制限する残留振幅(RAM)変調を低減する目的で、追加的な複数層の能動フィードバック機構を更に必要とした。これらの高度な設計の構成に対抗し得る、純粋に受動的で複雑さの小さい方法は、特に、変調に使用される電子装置及び音響光学的装置が電力消費及び故障リスクのために望ましくない宇宙ベースのものを含めて、すべてのアプリケーションにとって有益であろう。
【0091】
本発明の一実施形態において、レーザーを光共振器に周波数ロックするための方法及び装置と、そのような装置を調整するための方法が提供される。これは、複雑さを低減し、純粋に受動的であり、及び/又は良好なレーザー安定性を達成し、特にアライメントのドリフトの影響を受けにくく、及び/又はより堅牢な実装を備える。特に、そのような装置における検出レンズと検出器の配置、及びより優れた安定化を達成する方法が開示される(実施形態15を参照)。
【0092】
このことは、以下のステップでレーザーを光共振器に周波数ロックする方法によって達成される(実施形態15参照)。
-レーザーからレーザービームを提供するステップ;
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するステップ;
-レーザービームを光共振器に向けるステップ;
-光共振器から反射するレーザービームを検出レンズを用いて集束させるステップ;
-集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を検出器を用いて決定するステップ;
-誤差信号に基づいてレーザーを光共振器にロックするステップ。
ここで、検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、レーザーが光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するとき、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあり得るようになっており、その区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む。
【0093】
さらに、このことは、レーザーを光共振器に周波数ロックする方ための装置を調整する方法によって達成される(実施形態17参照)。ここでこの装置は、
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するためのビーム整形器、
-ビーム整形の後でレーザービームを受信するための光共振器、
-光共振器から反射するレーザービームを集束するための検出レンズ、
-検出レンズに集束されたレーザービームの、ビーム楕円率に比例する誤差信号を決定するための検出器、
を含み、この方法は、
-光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するステップ、
-レーザービームが楕円率を取得するようにビーム整形器でレーザービームを整形するステップ、
-レーザービームを光共振器に向けるステップ、
-光共振器から反射するレーザービームを検出レンズを用いて集束させるステップ、
-集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を検出器を用いて決定するステップ、
-レーザービームの光軸に沿う、検出レンズと検出器の間の軸方向距離を、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるように調整するステップであり、この区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む、ステップ、
を含む。
【0094】
さらに、このことは、レーザーを光共振器に周波数ロックする装置によって達成され(実施形態27参照)、この装置は、
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するためのビーム整形器、
-ビーム整形の後でレーザービームを受信するための光共振器、
-光共振器から反射するレーザービームを集束するための検出レンズ、
-検出レンズで集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を決定するための検出器、
を含む。ここで、検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、この装置、特にビーム整形器に、光共振器の共振周波数でレーザービームを提供すると、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるようになっており、この区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む。
【0095】
さらに本開示は、レーザーを光共振器に周波数ロックするための装置の製造方法に関し、この方法は、以下のステップを含む。
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するためのビーム整形器を提供するステップ、
-ビーム整形の後でレーザービームを受信するための光共振器を提供するステップ、
-光共振器から反射するレーザービームを集束させるための検出レンズを提供するステップ、
-検出レンズで集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を決定するための検出器を提供するステップ、
-光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するステップ、
-レーザービームが楕円率を取得するようにビーム整形器でレーザービームを整形するステップ、
-レーザービームを光共振器に向けるステップ、
-光共振器から反射するレーザービームを検出レンズを用いて集束させるステップ、
-集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を検出器を用いて決定するステップ、
-レーザービームの光軸に沿う、検出レンズと検出器の間の軸方向距離を、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるように調整するステップであり、この区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む、ステップ。
【0096】
主要な安定化方法を理解するために光共振器がサポートするエルミートガウシアン(HG)空間モードを思い起こすべきである。これらキャビティがサポートできる一連の横方向電磁モード(TEMmn)である。添字のmとnは、ビーム伝搬の横方向内の各直交軸を表す正の整数である。和m+nはモード次数と呼ばれ、偶数又は奇数であり得る。光共振器に入る、完全に整列した光モードから開始すると、入力ビームの傾斜又はシフトのいずれかで入力ビームを整列状態からずらすことにより奇数モードが誘起される。他方で、偶数モードは集束/モード不整合によって誘起され、ビームの傾斜又はシフトとは無関係である。
【0097】
以前の空間モード干渉の実装は、入力ビームを傾斜/ずらすことにより1次(TEM01及びTEM10)のモードを誘起することに依存していた。ここで関心があるのは、「00」と表示される基本HGモードTEM00と、「+」と表示される特定の2次HGモード、2次TEM11様モードであり、これらはいずれも偶数モードである。偶数モードはモードの不整合により誘起され、本方法を、1次の奇数モードを生成するミスアライメントのドリフトの影響を受けないようにする。水平/垂直配向を有する僅かに楕円形のビームは、主要な「00」成分と小さな「+」成分とに数学的に分解可能である。そのようなレーザービームでは、これらの2つのモード間の位相差が楕円率に関する情報を符号化する。「00」共振の近くで光共振器に入射すると、2つのモードは反射により差動位相シフトを生じる。それは異なる次数のモードは一般的に非縮退であることからそれらのうちの1つだけが共振するからである。このメカニズムにより、反射信号は光共振器の共振の反対側で逆の楕円率を得るようにされる。この効果を利用するために、光共振器から反射するレーザービームの楕円率は、集束後に測定される。
【0098】
これらのモードは一般的に異なる共振周波数を持つ。キャビティモードに関しては、対角方向を向いたわずかに楕円形のビームの空間分解は、大部分は「TEM00」モードであり、「TEM11」2次モードの寄与は小さい。そのようなビームでは、これらの2つのモードの間の位相差は、真円度からの乖離に関する情報を符号化する。共振器にその基本周波数の1つに近い周波数で入射すると、2つのモードは、そのうちの1つしか共振しないために、2つのモードは自然に差動位相シフトを生じる。その結果、反射ビームの形状変化が起きる。このメカニズムにより、反射信号は共振の反対側で逆の楕円率を得るようにされ、それにより決定可能な誤差信号を生成することができる。この特性を利用するためには、反射レーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号が使用され、検出器と検出レンズの軸方向距離が適切に調整されなければならない。軸方向距離を設定して、ビーム整形器にレーザービームを光共振器の共振周波数で与えると、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間のある区間にあり、その区間には実質的に円形のビームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値が含まれるようにすることで、共振の反対側で逆の楕円率を取得する反射信号を利用して、レーザービームの偏差及び/又はドリフトを決定可能であり、それを利用してレーザービームをロックし、それにより安定化させることが可能である。決定された誤差信号は、共振器から漏れる共振「00」モードと、光共振器から直接反射して位相基準を形成する2次「+」モードとの間の干渉と考えることができる。この検出方式は、アライメントのドリフトや変動に対して鈍感である。それは小さなミスアライメントはモード分解において単に一次モードを生成するだけだからである。
【0099】
光共振器は、リニア共振器又はリング共振器であってよい。例えば、入射ビームと反射ビームが別々の経路を通るリング共振器が利用可能である。光共振器は、例えば2ミラー共振器又は3ミラー共振器であってよい。ただし、任意数のミラー及び任意形状の共振器も使用可能である。共振器として2ミラー(定在波)共振器を光共振器として使用する場合、例えばファラデーサーキュレータや1/4波長板と偏光ビームスプリッタの使用により、反射ビームを入射経路から分離することができる。光共振器は自由空間共振器であっても、又はマイクロチップベースの光共振器などの非自由空間共振器であってもよい。例えば、光共振器はウィスパリングギャラリモード共振器であってもよく、そこでは光が球又は環状体の周囲(材料内部)を循環する。光共振器はファイバリングであってもよく、その中に光をエバネッセント結合させることができる。この結合は例えばプリズムを使って行うことができ、この場合、プリズムからの全内部反射中のエバネッセントテイルが光共振器の内外で光と結合する。こうして、プリズムが自由空間光学系の中に導波路のような構造を効果的にインタフェース接続する。プリズムは自由空間共振器の入力ミラーのように見えるかもしれないが、非常に楕円形のモード構造を有している。この場合、入力モード整形は、マイクロ共振器ープリズムアセンブリの固有モードに対して更に押しつぶされたビームプロファイルを準備する必要がある。
【0100】
本方法及び装置は広範囲のレーザービーム波長で使用可能である。例えば、波長は、190nmから400nmの間の紫外域、400nmから800nmの間の可視域、800nmから1800nmの間の近赤外域、及び/又は1800から少なくとも3500nmの間の赤外域であってよい。任意選択により、誤差信号は、集束レーザービームのビーム楕円率に正比例する。任意選択により、誤差信号は円形レーザービームに対しては実質的にゼロである。任意選択により、誤差信号をレーザー電流にフィードバックすることにより、レーザーが誤差信号に基づいて光共振器にロックされる。任意選択により、装置はレーザーを含む。ロックは、光共振器から反射するレーザービームの楕円率の変化をモニタすることに基づく。
【0101】
レーザービームの集束とは、レーザービームを少なくとも1つの平面に集束させることを指す。レーザービームを光共振器の共振周波数で提供することは、好ましくはレーザーの調整(特に共振周波数を見つける)ステップを含む。任意選択により、装置を調整する方法は(ビーム整形なしで、すなわちビーム整形器を装置に挿入する前に)、
-(完全に)レーザービームを共振器中に結合させ、反射ビームの特性を、特にCCDカメラで測定するステップ、
-ビーム整形器を装置内に挿入するステップ、
を含む。任意選択により、装置の調整方法は、光共振器から反射するレーザービームの面内ビームウェストと面外ビームウェストを2以上の距離で測定することを含む。
【0102】
検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、レーザービームの経路に沿ったそれらの距離を指す。レーザーを光共振器に周波数ロックするための方法及び装置に関しては、検出器と検出レンズの位置が固定可能である。装置を調整及び製造する方法に関しては、検出器及び/又は検出レンズは移動可能である。ゼロクロスは、誤差信号がゼロの値を有することを言う。任意選択により、最小値は全域的最小値であり、及び/又は最大値は全域的最大値である。任意選択により、最小値と最大値の間には更なる極値はない。任意選択により、区間は最小値から最大値に跨る。円形レーザービームに対応する誤差信号を含む区間(レーザービームに共振周波数で周波数を提供して)と、誤差信号の傾きによる最小値と最大値の間において、誤差信号はレーザーのロックに使用可能である。任意選択により、光共振器の共振周波数は、TEM00共振の周波数、またはTEM02又はTEM20又はTEM11共振の共振周波数である。任意選択により、軸方向距離は調整区間で調整して誤差信号の曲線を決定し、軸方向距離を設定してもよい。
【0103】
検出器が四分割フォトダイオードであり、誤差信号が四分割フォトダイオードの対角信号で決定されることが好ましい。この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される。こうして、ビーム楕円率に対応する誤差信号が特に容易に達成可能である。具体的には四分割フォトダイオードは4つの分割されたセンサ領域を有するフォトダイオードである。センサ領域間の空隙は、可能な限り小さくなるように最適化可能である。具体的に四分割フォトダイオードは、4つのセンサ領域のそれぞれからの入力光に比例した電流を生成する。各センサ領域からの信号はA、B、C、Dと表記されて、四分割フォトダイオード上ではセンサ領域は(時計方向に)A、D、B、Cの順に配置される。これにより次の演算が可能となる:SUM=A+B+C+D、LR=(A+C)-(B+D)、UD=(A+D)-(C+B)、DIAG=(A+B)-(C+D)。ビーム楕円率はDIAG演算を使用して測定可能である。DIAG信号がゼロであることは、ビーム楕円率がないことを示し、これはレーザービームが円であることを意味する。DIAG信号がゼロでないことは、四分割フォトダイオード上に楕円ビームがあることを意味する。四分割フォトダイオードは、InGaAsベース、又はシリコンベースの検出器であってよい。信号は(例えばオペアンプを備えた標準的なアナログ電子機器を用いて)電圧に変換可能である。
【0104】
安定性への制約は、例えば位相基準に影響する2次モード成分の変化に起因する入射ビーム形状の残留変動により、依然として存在する。この残存する制約の緩和を支援するために、偏光の事前選択及び事後選択手順が利用可能であり、これを弱値概念を用いて説明する。この目的のために、任意選択により、レーザービームを光共振器に向ける前にレーザービームに偏光フィルタをかけ、光共振器から反射されるレーザービームが偏光フィルタリングされる。任意選択により光共振器は複屈折性である。こうして、システム性能を制約する技術的ノイズをコヒーレントに抑制することができる。装置が好ましくは、レーザービームをビーム整形器に向ける前にレーザービームを偏光フィルタリングするための第1の偏光ビームスプリッタ(あるいは第1偏光子)と、光共振器からのレーザービーム放出後に、特に検出レンズと検出器との間で、偏光フィルタリングするための第2の偏光ビームスプリッタ(あるいは第2偏光子)を備える。偏光フィルタリングは、レーザーを周波数ロックする方法、及び/又はレーザーを周波数ロックするための装置の調整方法として使用可能である。
【0105】
偏光自由度が含まれると、キャビティ反射係数は、入力偏光状態|ψ
1>に作用する反射演算子
で置き換えられる。状態への事後選択を行う場合、得られる実効的反射係数r
wは、反射演算子の弱値によって与えられる。
((式1)
ここでδはレーザーキャビティの周波数離調であり、κはキャビティの全幅線幅であり、γ’=Aγである。γはキャビティ内での往復損失を特徴づける無次元パラメータである。「増幅」パラメータAは特定の事後選択に依存し、直線偏光状態|ψ
1>と|ψ
2>に対しては実数値である。偏光子の角度の関数であるが、操作的には光が共振から外れている場合の、事後選択の後の残留電力比|<ψ
2|ψ
1>|
2≒1/(2A+1)
2に関連付けることが可能である。式1の右辺は、可変損失パラメータメータγ’を除けば、通常の高フィネス共振器からの反射と同じ形である(固定値κにおいて)。γ<1、γ=1、γ>1、γ>2は、それぞれアンダー結合、インピーダンス整合、オーバー結合、キャビティ利得の各領域であると特定されることに留意されたい。γ’の変動性は、共振器からの反射光の事後選択依存性を観察することで実験的に実証可能である。誤差信号は、式1の反射係数の虚数部によって与えることができる。事後選択をインピーダンス整合構成に調整することで、周波数安定化のためにノイズが低減される。この構成では、信号生成部分の減衰が小さい一方で、検出器に入射する非信号生成ビーム成分が強く減衰されるので、誤差信号の傾きが効果的に増加し、ビーム形状や強度変動に対する感度が低下する。
【0106】
次に装置の調整方法について参照すると、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値との間の区間(ここで、この区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む)に位置するように、レーザービームの光軸に沿って検出レンズと検出器との軸方向距離を調整することが、共振器から反射するレーザービームの透過ピークが、誤差信号のゼロクロスに一致するように、レーザービームの光軸に沿って検出レンズと検出器との軸方向距離を調整することを含むことが好ましい。透過ピークは反射最小値に対応する。すなわち、四分割フォトダイオードのSUMチャネルが落ち込みを示す(四分割フォトダイオードのSUMチャネルは特に反射曲線を測定するため)。このようにして、光共振器の自然な非点収差による誤差信号のベースラインオフセットが補正可能である。ベースラインオフセットもまた、誤差信号のゼロクロスから透過ピークのシフトを生じさせる。したがって、QPDの軸方向位置を、透過ピークと誤差信号ゼロクロスが一致するまで調整することが可能である。この一致がない場合、強度ノイズの周波数ノイズへのクロスカップリングが発生する。ゼロクロス又は誤差信号は、検出器を検出レンズに近づけたり遠ざけたり、またその逆を行うことによって透過プラトーに一致するようさせることが可能である。この位置は例えば、反復的に、すなわち検出器、及び/又は検出レンズの位置の微調により実験的に求めることができる。レーザーが光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するときに、レーザービームの光軸に沿う検出レンズと検出器の軸方向距離が、共振器から反射するレーザービームの透過ピークが誤差信号のゼロクロスに実質的に一致するか、±5%以内、又は±2%以内、又は±1%以内であれば、これもまたレーザーを周波数ロックするための方法及び装置の文脈において好ましい。これは、「検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、レーザーが光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するとき、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるようになっており、その区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む」という特徴を置き替えることも可能である。誤差信号のベースラインオフセットもあり得る。経験がなくかつ非点収差の知識がなければ、これでは最良の結果が得られないように思われるであろう。しかしながら、この評価基準はPound-Drever-Hall法を凌ぐ、可能な限り最良の結果を生み出すことに役立つ。
【0107】
任意選択により、レーザービームの光軸に沿う検出レンズと検出器の間の軸方向距離を、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間(この区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む)にあるように調整することが、共振器から反射されるレーザービームの面内信号ウェストと面外信号ウェストとが、光共振器の共振キャビティモードのビームウェスト(特に面内及び面外ビームウェストの平均ビームウェストである、キャビティモードの平均ビームウェスト)に一致するように軸方向距離を調整することを含む。任意選択により、これは、共振器から反射するレーザービームの透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、検出レンズと検出器のレーザービームの光軸に沿う軸方向距離を調整する前に行われる。任意選択により追加又は代替として、軸方向距離は、共振器から反射するレーザービームの面内ビームウェストと面外ビームウェストが(相互に)一致するように調整される。誤差信号のベースラインオフセットは、ビームが円形プロファイルをとる位置からの検出器位置の変位に起因し得る(非点収差を無視して)。軸方向距離はこのベースラインオフセットが排除されるように選択することができる。このビームウェストの一致は、透過ピークとゼロクロスの一致の前の第一近似として使用可能であり、あるいはそれ自体を使用することも可能である。非点収差がなければ、これらの2つは同じ結果となる。この場合、モードに非点収差が残留しないので、ベースラインをゼロにすると透過のプラトーに自動的に入る。レーザーの周波数ロックの本方法及び装置において、検出器及び検出レンズの軸方向距離が、共振器から反射するレーザービームの面内ビームウェストと面外ビームウェストが、光共振器の共振キャビティモードのビームウェストに一致するか、あるいは光共振器の共振キャビティモードのビームウェスト±5%以内、又は±2%以内、又は±1%以内であることもまた好ましい。このことは、「検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、レーザーが光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するとき、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるようになっており、その区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む」という特徴を置き替え得る。
【0108】
任意選択により、検出器が四分割フォトダイオードであり、誤差信号が四分割フォトダイオードの対角信号で決定される。この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される
【0109】
任意選択により本方法は、四分割フォトダイオードの左右の信号及び/又は上下の信号が最小化されるように、検出レンズ及び/又は四分割フォトダイオードをレーザービームの光軸に垂直な方向に並進させることによってレーザービームを四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップをさらに含む。ここで左右(LR)の信号及び上下(UD)の信号はそれぞれ四分割フォトダイオードの隣接するセンサ領域の和の差で構成され、左右の信号及び上下の信号は隣接するセンサ領域の異なる半分の和を使用する。任意選択により、これは反復して繰り返し実行される。このように、レーザービームを四分割フォトダイオードに完全に整列させることができ、四分割フォトダイオードのアクティブ領域上で最適なビームフィットが達成されて最も正確な誤差信号が生成される。任意選択により、並進は2方向で行われ、それらは相互に、また、レーザービームの光軸に対して垂直である。
【0110】
任意選択により、共振器から反射するレーザービームの透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、検出レンズと四分割フォトダイオードの軸方向距離をレーザービームの光軸に沿って調整するステップと、レーザービームを四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップが、反復的に(すなわち、交互に繰り返して、すなわち順番に繰り返して)実行される。すべての軸方向距離の調整では、左右及び上下の信号を最小化することができる。このプロセスの繰り返しにより、ゼロクロスが最適化されて透過プラトーに正確に一致させることができる。
【0111】
本明細書に開示のすべての方法及び装置に関して、検出レンズが凸球面レンズであれば好ましい。
【0112】
さらに、レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形する前に、レーザービームが偏光ファイバで伝搬されて、任意選択によりファイバコリメータから放出されることが好ましい。ファイバコリメータは調節可能焦点を持つことができる。
【0113】
レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することが、少なくとも1対の円筒レンズ(これは任意選択により、相互に非平行、特に垂直に配向した集束軸を有する)で行われることが好ましい。任意選択により、2つの円筒レンズは同じ焦点距離を有し、さらに任意では、1つが水平に配向し他方が垂直に配向する。焦点距離は任意選択により、2つのレンズは(あたかも1つの球面レンズを形成するかのように)同軸配置されると、入射ビームがTEM00キャビティモードに完全にモード一致するように選択される。1対の円筒レンズ間の距離は、「+」モードの光量を決定し、全出力(例えば400 μW)の例えば10%に及ぶことができる。1つの円筒レンズが、軸を面内に配向し、もう1つが面外に配向することができる。円筒レンズ、及び任意選択によりファイバコリメータの位置調整により、入力モードを操作して2次モードまでを誘起する様にできる。TEM00、TEM02、TEM20モード以外のすべてのモードが抑制されて、後者2つの透過レベルが等しくなるように整列することが可能である。TEM02とTEM20のバランスを等しくするために、面内及び面外のビームウェストが収束と発散をするように円筒レンズの位置を設定/調整可能である。平均の共振器ウェストは面内と面外のビームウェストが一致する場所に正確に配置される。ビームがキャビティの外へ発散すると、その平均ウェストもまたキャビティモード平均ウェストに一致し得る。TEM00に対するTEM02とTEM20の量のバランスは、重心位置を保持しながら2つの円筒レンズの間の距離で調整可能である。対を成す各部材は、この基準構成から反対方向に対称的に並進されるので、TEM02モードとTEM20モードは共振器透過スペクトルで観察されるように等振幅となる。物理的には、この動作により水平面と垂直面のビームウェストがキャビティウェスト位置の前後に移動する。あるいは、レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することは、任意選択により楕円ビーム又は非点ビームが生成される、レンズ、楔形プリズム、及び/又はアナモルフィックプリズム対の組み合わせによって行われる。次に、レーザーを光共振器に周波数ロックするための装置に関しては、検出器が四分割フォトダイオードであることが好ましい。任意選択により、検出器が四分割フォトダイオードの対角信号によって誤差信号を決定するように構成され、この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される。
【0114】
任意選択により、ビーム整形器は1対の円筒レンズを備え、これは、非平行な方向に、特に相互に垂直に配向した集束軸を有する。
【0115】
例として、本開示を選択された実施形態1~29に関して以下で更に説明し、図面にも示す。ただし、これらの実施形態は本開示を限定するものと見做してはならない。
【0116】
1.注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御方法であって、
-光シード信号を有するレーザーを注入するステップ、
-レーザーからの光出力信号の少なくとも一部を入射信号として検出器上に伝搬するステップ、
-検出器への入射信号の幾何学的ビーム形状に基づいて誤差信号を導出するステップ、
-誤差信号に敏感なレーザーの少なくとも1つの動作パラメータを制御するステップ、
を含む方法。
【0117】
2.実施形態1による方法であって、レーザーの少なくとも1つの動作パラメータが
-レーザー共振器の温度、
-レーザー共振器の経路長、
-レーザー共振器のポンピング、
-光シード信号の位相、
のうちの1以上である方法。
【0118】
3.実施形態1又は実施形態2による方法であって、レーザーは半導体レーザーであり、レーザーのポンピングはレーザー共振器を通る電流によって行われる方法。
【0119】
4.実施形態1~実施形態3のいずれか1つによる方法であって、検出器は少なくとも3つのフォトダイオードからなるフォトダイオードアレイであり、誤差信号を導出することが入射信号の幾何学的ビーム形状を決定することを含む、方法。
【0120】
5.実施形態1~実施形態3のいずれか1つによる方法であって、検出器は四分割フォトダイオードであり、誤差信号の導出には四分割フォトダイオードの対角信号のを決定が含まれ、この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される、方法。
【0121】
6.実施形態1~実施形態5のいずれか1つによる方法であって、入射信号の伝播は、検出器への入射信号の入射角の付与を含む。
【0122】
7.実施形態1~実施形態6のいずれか1つによる方法であって、入射信号の伝播は、特に少なくとも1つのレンズ、好ましくは少なくとも1つの整形レンズ、特に少なくとも1つの円筒レンズを用いて、入射信号を整形することを含む、方法。
【0123】
8.実施形態1~実施形態7のいずれか1つによる方法であって、入射信号の伝搬は、検出レンズ(33)を用いて、好ましくは凸球面レンズを用いて、入射信号を検出器上に集束させることを含む、方法。
【0124】
9.実施形態8による方法であって、入射信号の伝播は、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスと一致するように、検出レンズと検出器の間の軸方向距離を定めることを含む、方法。
【0125】
10.実施形態1~実施形態9のいずれか1つによる方法であって、入射信号の伝播は、入射信号の透過ピークが誤差信号のゼロクロスと一致するように、レーザーと検出器の間の軸方向距離を定めることを含む、方法。
【0126】
11.実施形態1~実施形態10のいずれか1つによる方法であって、誤差信号を導出することは、誤差信号にオフセットを適用することを含む、方法。
【0127】
12.実施形態1~実施形態12のいずれか1つによる方法を用いて注入同期レーザーの出力信号の波長を連続的にシフトさせるための方法であって、
-光シード信号の波長をシフトさせるステップ
を更に含み、光シード信号(10の波長を調整することが、誤差信号を変化させる、方法。
【0128】
13.注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムであって、
-動作中に光シード信号と共に注入されるレーザー、
-検出器、
-レーザーからの光出力信号の少なくとも一部を検出器への入射信号として伝搬するための光学部品、
-検出器への入射信号の幾何学的ビーム形状に基づいて誤差信号を導出するためのコントローラ、
を含み、コントローラは、誤差信号に敏感な少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成される、閉ループ制御システム。
【0129】
14.実施形態13による制御システムであって、少なくともレーザー、光学部品、及び好ましくは検出器は、マイクロ光学機器又はシリコンフォトニクスプラットフォーム、好ましくはシリコンチップ上に集積される、制御システム。
【0130】
15.レーザーを光共振器に周波数ロックする方法であって、
-レーザーからレーザービームを提供するステップ、
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するステップ、
-レーザービームを光共振器に向けるステップ、
-光共振器から反射するレーザービームを検出レンズを用いて集束させるステップ、
-集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を検出器を用いて決定するステップ、
-誤差信号に基づいてレーザーを光共振器にロックするステップ、
を含み、検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、レーザーが光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するとき、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるようになっており、その区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む、周波数ロック方法。
【0131】
16.実施形態15による方法であって、検出器が四分割フォトダイオードであり、誤差信号が四分割フォトダイオードの対角信号で決定され、この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される、方法。
【0132】
17.レーザーを光共振器に周波数ロックするための装置を調整する方法であって、この装置は、
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するためのビーム整形器、
-ビーム整形の後でレーザービームを受信するための光共振器、
-光共振器から反射するレーザービームを集束するための検出レンズ、
-検出レンズで集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を決定するための検出器、
を含み、この方法は、
-光共振器の共振周波数でレーザービームを提供するステップ、
-レーザービームが楕円率を取得するようにビーム整形器でレーザービームを整形するステップ、
-レーザービームを光共振器に向けるステップ、
-光共振器から反射するレーザービームを検出レンズを用いて集束させるステップ、
-集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を検出器を用いて決定するステップ、
-レーザービームの光軸に沿う、検出レンズと検出器の間の軸方向距離を、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるように調整するステップ、
を含み、この区間が、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む、方法。
【0133】
18.実施形態17による方法であって、検出レンズと検出器の軸方向距離を調整することが、光共振器から反射するレーザービームの透過ピークが、誤差信号のゼロクロスに一致するように、レーザービームの光軸に沿う検出レンズと検出器との軸方向距離を調整することを含む、方法。
【0134】
19.実施形態17又は実施形態18による方法であって、検出レンズと検出器の軸方向距離を調整することが、任意選択により、光共振器から反射するレーザービームの透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、検出レンズと検出器のレーザービームの光軸に沿う軸方向距離を調整する前に、光共振器から反射されるレーザービームの面内ビームウェストと面外ビームウェストが、光共振器の共振キャビティモードのビームウェストに一致するように軸方向距離を調整することを含む、方法。
【0135】
20.実施形態17~実施形態19のいずれか1つによる方法であって、検出器が四分割フォトダイオードであり、誤差信号が四分割フォトダイオードの対角信号で決定され、この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される、方法。
【0136】
21.実施形態20による方法であって、
-四分割フォトダイオードの左右の信号及び/又は上下の信号が最小化されるように、検出レンズ及び/又は四分割フォトダイオードをレーザービームの光軸に垂直な方向に並進させることによってレーザービームを四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップ
をさらに含み、この左右の信号及び上下の信号はそれぞれ四分割フォトダイオードの隣接するセンサ領域の和の差で構成され、左右の信号及び上下の信号は隣接するセンサ領域の異なる半分の和を使用する、方法。
【0137】
22.実施形態7による方法であって、光共振器から反射されるレーザービームの透過ピークが誤差信号のゼロクロスに一致するように、検出レンズと四分割フォトダイオードのレーザービームの光軸に沿う軸方向距離を調整するステップと、レーザービームを四分割フォトダイオード上にセンタリングするステップが、反復的に実行される、方法。
【0138】
23.実施形態15~実施形態22のいずれか1つによる方法であって、検出レンズは凸球面レンズである、方法。
【0139】
24.実施形態15~実施形態23のいずれか1つによる方法であって、レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形する前に、レーザービームが偏光ファイバで伝搬されて、任意選択によりファイバコリメータから放出される、方法。
【0140】
25.実施形態15~実施形態24のいずれか1つによる方法であって、レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することは、集束軸が非平行、特には相互に垂直に配向する1対の円筒レンズにより行われ、及び/又はレーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形することは、楕円ビーム又は非点ビームが生成される、レンズ、楔形プリズム、及び/又はアナモルフィックプリズム対の組み合わせにより行われる、方法。
【0141】
26.実施形態15~実施形態25のいずれか1つによる方法であって、レーザービームはレーザービームを光共振器に向ける前に、偏光フィルタをかけられ、かつ光共振器から反射するレーザービームは偏光フィルタリングされ、任意選択により光共振器は複屈折性である、方法。
【0142】
27.光共振器にレーザーを周波数ロックするための装置であって、
-レーザービームが楕円率を取得するようにレーザービームを整形するためのビーム整形器、
-ビーム整形の後でレーザービームを受信するための光共振器、
-光共振器から反射するレーザービームを集束するための検出レンズ、
-検出レンズで集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を決定するための検出器、
を備え、検出レンズと検出器の間の軸方向距離は、光共振器の共振周波数でビーム整形器にレーザービームを提供すると、誤差信号のゼロクロスが誤差信号の最小値と最大値の間の区間にあるようになっており、この区間は、実質的に円形のレーザービームの決定されたビーム楕円率に対応する誤差信号値を含む、装置。
【0143】
28.実施形態27による装置であって、検出器は四分割フォトダイオードであり、任意選択により、検出器が四分割フォトダイオードの対角信号によって誤差信号を決定するように構成され、この対角信号は、四分割フォトダイオードの対角センサ領域からの信号の和の差で構成される、装置。
【0144】
29.実施形態27~実施形態28のいずれか1つによる装置であって、ビーム整形器は1対の円筒レンズを備え、これが相互に非平行に、特に垂直に配向する集束軸を有する、装置。
【0145】
例示として、本開示を説明の目的で図面に示すいくつかの選択された実施形態に関して更に説明する。ただし、これらの実施形態は本開示を限定するものと見做してはならいない。
図1~
図6は実施形態1~実施形態14に関し、
図7~
図15cは実施形態15~実施形態29に関する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1】四分割フォトダイオードを使用するビーム楕円率検出の概略図である。
【
図2】光シード信号に対するレーザーの離調度の関数としての誤差信号を示す。
【
図3】外部光シード信号で注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムの例の概略図である。
【
図4】レーザーの出力信号の一部を光シード信号として使用する、自己注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムの例の概略図である。
【
図5】自己注入のための反射信号を提供する外部共振器を備えた自己注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システムの例を示す図である。
【
図6】レーザーと外部共振器の間に第2検出器を有する、自己注入のための反射信号を提供する外部共振器を備えた自己注入同期を制御するための閉ループ制御システムの例を示す図である。
【
図7】レーザーを光共振器に周波数ロックする装置の一実施形態の概略図である。
【
図8a】三角形リング共振器の幾何配置とそれに関連するエルミート・ガウス・モード共振の概略図である。
【
図8b】四分割フォトダイオードを使用するビーム楕円率検出を示す図である。
【
図9】
図7の実施形態におけるビーム経路内の関連要素の位置と、得られるビーム特性を示す図である。
【
図10】
図7の実施形態における誤差信号と共振器透過を示す図である。
【
図12】検出レンズと検出器の間の軸方向距離の概略図である。
【
図13a】
図7及び
図14の実施形態における、第1偏光子及び第2偏光子の使用を示す図である。
【
図13b】異なる事後選択構成に対して測定された正規化反射パワーを示す図である。
【
図13c】得られた弱値の実数部及び虚数部を示す図である。
【
図14】安定化方式の性能を実証するために使用されたロックアップ構成の2つのコピーを示す図である。
【
図15a】
図14に示す実験構成の平均化時間にわたるロック不安定性を、他の安定化方式と比較して示す図である。
【
図15b】事後選択の有無による達成された不安定性と、下部に対応するビートノートの時間トレースとを示す図である。
【
図15c】安定性に対する推定限界を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
図1は検出器2を用いた入射信号1のビーム楕円率検出と、僅かに楕円形のビームのモード分解を示す。検出器2は、4つのセンサ領域を有する四分割フォトダイオード(QPD)3である。四分割フォトダイオード3は、4つのセンサ領域4のそれぞれからの、入射光に比例した電流を生成する。誤差信号9(
図1には示さず。
図2参照)の導出には、四分割フォトダイオード3の対角信号の決定が含まれる。この対角信号は、四分割フォトダイオード3の対角センサ領域4からの信号の和同士の差で構成される。各センサ領域4からの信号はA、B、C、Dとラベル付けされ、四分割フォトダイオード3上ではセンサ領域4は(時計方向に)A、D、B、Cの順に配置される。これにより以下の演算が可能となる:SUM=A+B+C+D、LR=(A+C)-(B+D),UD=(A+D)-(C+B)、及びDIAG=(A+B)-(C+D)。ビーム楕円率(あるいはビーム楕円率に正比例するパラメータ;これは検出器と関連モードを決定する共振器との回転位置合わせに依存する)は、
図2からわかるようにDIAG演算を用いて測定可能である。DIAG信号がゼロであることは、ビーム楕円率がないことを示し、これは入射信号1の幾何学的ビーム形状が円であることを意味する。DIAG信号がゼロでないことは、四分割フォトダイオード3上での楕円入射信号1の存在を示す。DIAG信号の符号が逆であれば、逆の楕円率を示す。四分割フォトダイオード3は、InGaAsベース又はシリコンベースの検出器であってよい。信号は更に電圧に変換される。さらに、エラー信号9が、例えばオペアンプを備えた標準的なアナログ電子機器を使用したトランスインピーダンスフィルタ(AMP)5と、コントローラ6(
図1には示さず)を用いて生成される。入射角、すなわち検出器2への入射光信号1の入射角P7及びY8は、検出器2を入射信号1の光軸に関して傾斜させるか、入射信号1の光軸を検出器2の主展開面に関して傾斜させることにより(例えば四分割フォトダイオード3の上流のミラーを傾斜させることにより)変化させることが可能である。入射信号1の幾何学的ビーム形状の相対変化は、レーザー光が光シード信号10(
図1には示さず、
図3参照)と共振するときの最も強調される。したがって、光シード信号10の透過ピークでもある入射信号1の透過ピークにおいて本方法は、最も感度が高くなる。レーザー11と検出器2との間の距離が、TEM
00モードと2次空間モードとの間のGuoy位相に影響する。したがって、レーザー11に対して検出器2の位置を調整することにより検出器2上で得られる像を調整可能である。検出器2とレーザー11位置は較正時に固定され、動作中は一定に維持される。誤差信号9が純粋に分散性である軸方向距離があり、誤差信号9が純粋に吸収性であるか、又は吸収性と発散性の間の任意の信号形状である、他の軸方向距離がある。
【0148】
図2は、レーザー11の‘00’モード共振近傍における光シード信号10(
図2には示さず)に対する誤差信号9の周波数依存性を示す。ここで、DIAG信号が誤差信号9として使用されている。この誤差信号9は発散性である。この場合、レーザー11のネイティブ出力は円形の幾何学的ビーム形状を有し、光シード信号10もまた円形のビーム形状を有することに留意されたい。誤差信号9は、光シード信号10に対するレーザー11の離調がゼロにおいてゼロクロスを持つ。これはまた、検出器2上での実質的に円形の入射信号1に対応する。離調に応じて、入射信号1の幾何学的形状が円形から楕円形に変化して非ゼロの誤差信号9となる。誤差信号9の符号は、楕円入射信号1の方向を示す。ゼロ離調において、レーザー11の共振器を通る入射信号1の透過12はピークを持つ。誤差信号9のゼロクロスは、誤差信号9の最小値13と最大値14の間の区間にある。区間は、入射信号1の決定された楕円率に対応する誤差信号9の値を持つ。入射信号1は透過12のピークの反対側では逆の楕円率となる。このことを利用して誤差信号9が決定され、さらにはそれを使用してレーザー11を制御してレーザー出力信号15を安定化させる。入射信号1は、レーザー11から漏れ出す共振「00」モードと、レーザー11から直接反射して位相基準を形成する2次「+」モードとの干渉と考えることができる。この検出モダリティにより、誤差信号9はアライメントのドリフトと変動に対して鈍感である。それは小さなアライメントずれは入射信号1のモード分解で1次のモードを(実質的にそれのみを)生成するからである。誤差信号9の傾きにより、誤差信号9を使用してレーザー11を制御し、光シード信号10へのレーザーのロックが達成される。
【0149】
図3は、外部光シード信号10で注入同期レーザーを制御するための閉ループ制御システム16の例を概略的に示す。レーザー11は半導体レーザー17であり、光出力信号15を生成する。シード注入ポート19を有する光アイソレータ18が使用され、そこを通って外部光シード信号10がレーザー11に注入される。注入される光シード信号10の周波数は、レーザー11の共振又はその近傍である。光アイソレータ18はレーザー11からの光出力信号15がレーザー11へ再入射することを防止する。システムには、レーザー11からの出力信号15の少なくとも一部を検出器2への入射信号1として伝搬させるための光学部品20が含まれる。光学部品20はビームスプリッタ21であり、出力信号15の分割に使用される。ビームスプリッタ21で反射された部分は更に検出器2に向かい、検出器2上に伝播される入射信号1として使用される。レーザー11と検出器2の間の軸方向距離は、入射信号1の透過ピーク12が誤差信号9のゼロクロスに一致するようにされる。
【0150】
ビームスプリッタ21は、例えば入射強度の1%未満しか反射しない。検出器2は、入射信号1の光軸に対して傾斜している。検出器2は、
図1に関連して説明したようにQPD3である。コントローラ6は、QPD3のセンサ領域4からの信号を受信して、その幾何学的ビーム形状、この場合には楕円率、に基づいて誤差信号を導出するように構成される。誤差信号9の導出には、設定値における誤差信号9がゼロとなるように誤差信号9にオフセットを適用することが含まれる。設定値は、レーザー11のレーザー共振器22の目標状態によって決定される。例えば目標状態は、光シード信号10がTEM
00レーザーモードに完全にモード整合する場合、及び/又は光シード信号10の中心周波数がレーザーと共振している場合に達成される。コントローラ6は、誤差信号9に基づいてレーザー11の1以上の動作パラメータを制御して、レーザー11を設定値に安定化させるように構成される。レーザー共振器22付きのレーザー11の動作パラメータには、次のものが含まれる。
-レーザー共振器22の温度、
-レーザー共振器22の経路長、
-レーザー共振器22のポンピング、
-光シード信号10の位相。
【0151】
システム16は、光シード信号10の波長をシフトさせることにより注入同期レーザー11の出力信号15の波長を連続的にシフトさせるように使用することも可能である。光シード信号10の波長を調整して、誤差信号9を変化させる。誤差信号9の変化により、コントローラ6にレーザー11の少なくとも1つの動作パラメータを制御させて、レーザー11と光シード信号10の間の関係を回復させる、言い換えれば設定値に到達させることができる。このように、光シード信号10の波長をシフトさせることにより、レーザー11の光出力の波長を閉制御ループによるトレースによってシフト可能である。レーザー11、ビームスプリッタ21及び検出器2は、一般的なマイクロオプティクス又はシリコンフォトニクスのプラットフォーム(図示せず)に集積可能である。
【0152】
閉ループ制御システム16は、光共振器42(例えば
図7参照)、本実施形態ではレーザー共振器22、から抽出された光信号15をモニタするための方法を実行する。この方法は、
-光信号(15)の少なくとも一部を入射信号1として受信するステップ、
-入射信号1を検出器(2)に伝搬することと、検出器2への伝搬入射信号1の幾何学的ビーム形状(
図1及び
図2参照)、特にビーム形状楕円率に基づき、例えばビーム形状楕円率に比例して、誤差信号9を導出することとを含む変換構成の適用によって、入射信号1を誤差信号9に変換するステップ(
図2参照)、
を含む。ここで、誤差信号9は、極小値、特に最小値13(
図2参照)と、極大値、特に最大値14(
図2参照)とを有し、極小値と極大値が誤差信号値の区間59を区切り(例えば
図2又は
図10を参照)、変換構成は、光共振器42が目標状態にあるときに誤差信号9がゼロクロス58(
図10参照)を含むように区間59を構成する。
【0153】
図4は、レーザー11の出力信号15の一部をレーザー11に戻して注入するように使用する、自己注入同期レーザー11を制御するための別の閉ループ制御システム16を示す。
図3の構成に比べると、レーザー11の出力信号15の一部を周波数選択性のある後方反射器24に伝搬させるための第2ビームスプリッタ23が使用されている。光アイソレータ18は省略されている。第2のビームスプリッタ23は任意の分割比を持つことが可能であり、図示した構成では特に50/50の分割比が有益である。周波数選択性の後方反射器24は、レーザー出力の少なくとも一部をレーザー11に後方反射して自己注入を行う任意の光学素子であってよい。これは例えば、ミラー(この場合周波数選択性がない場合もある)、光格子、共振光学キャビティ、又は入力光学パワーの少なくとも一部を後方反射する任意の光学素子であってよい。後方反射器24は、光シード信号10を狭い線幅とし、それによりレーザー11の出力信号15の線幅を狭めることを達成するために、特定の波長の光を後方反射することが好ましい。この実施形態では、検出器2の入射信号1の光軸が検出器2の有効領域の主延長面の法線ベクトルに対して、0°とは異なる検出器の付与角度7,8を有することが有益である。これにより、検出器の反射がレーザー11内に回り込んで戻ることを最小化する。加えて、付与された角度7,8は、システム16の較正時に、誤差信号9の調整に使用することが可能である。これに替わり、検出器表面を自己注入のための後方反射器24として使用して、付与角以外のパラメータを誤差信号9の較正に使用することも可能である。
【0154】
図5は、自己注入同期レーザー11を制御するための閉ループ制御システム16の別の実施形態を示す。レーザー11の出力信号15の一部を、後方反射器24として作用する光共振器25を介して伝搬させることにより光シード信号10が生成される。光共振器25の分光透過率は、光共振器25の光路長に依存する。したがって光共振器25の光路長を制御することにより、光シード信号10が制御可能であり、それによりレーザー11の出力信号15をシフトさせることが可能である。
【0155】
レーザー11が出力信号15を有し、それがビームスプリッタ21で分割される。本実施形態では、透過部分はレンズ39によってさらに整形されて、光アイソレータ26を通って伝搬される。ビームスプリッタ21は、出力信号15の一部を反射させる。ミラー27及びピエゾマウントミラー28により、出力信号15の一部が光共振器25へ伝搬される。光共振器25の前に、レンズ29を使用して光出力信号15が光共振器25にモード整合される。光共振器25は、第2のビームスプリッタ30、第2のミラー31及び第2のピエゾマウントミラー32で構成される。第2のピエゾマウントミラー32を使用して光共振器25を通る分光透過率が決定される。光共振器25は、第2のビームスプリッタ30での反射強度が、検出レンズ33及びQPD3である検出器2上に伝播されるように構成される。検出レンズ33は凸球面レンズ34である。第2のビームスプリッタ30及び光共振器25を通った透過強度は、レーザー11に向かって反射して戻される。それによりレーザー11を自己注入させるための光シード信号10を提供する。
【0156】
コントローラ6(
図5には示さず。
図3を参照)が誤差信号9を導出し、誤差信号9に敏感なレーザー11の1以上の動作パラメータを制御する。これらのパラメータには以下のものが含まれる:
-レーザー共振器22の温度、
-レーザー共振器22の経路長、
-レーザー共振器22のポンピング、
-光シード信号10の位相。
光シード信号10の位相と注入は、ピエゾ制御ミラー28によって操作可能である。
【0157】
この例では、レーザー11は標準的なEagleyard DFB 780nm 100mWレーザーである。外部光共振器25アセンブリは、凸面[r=10cm]、平面、凹面の3つのミラーで形成されている。共振器は線幅10MHzである。光共振器25のL型形状により、モード整合が容易となり、また反射ビームを検出器2への入射信号1としてアクセスすることを可能とする。ただし、共焦点2ミラー共振器を含む多くの異なる共振器形状を使用可能であり、直接反射するビームがレーザーに直接反射されない限り、共振器内で循環する光のみがレーザーに自己注入可能である。
【0158】
図6は、自己注入同期レーザー11を制御するための閉ループ制御システム16の別の実施形態を示す。
図5の実施形態と比べると、第3のビームスプリッタ35が使用され、第2の検出器36は第3のビームスプリッタ35を透過した第2の注入信号37を受信するように構成されている。第2の検出器36はQPDである。
図6の実施形態は、
図4の実施形態と
図5の実施形態の組み合わせである。第2の検出器36の追加により、(
図4の実施形態のように)レーザー11の入射状態のモニタに使用される第2の誤差信号38(図示されていないが、誤差信号9に類似しており、詳細は
図1及び
図2を参照)を導く。得られる誤差信号38は特にコントローラ6(
図6には示さず。
図3参照)で使用されて、レーザー11の下記の動作パラメータの1以上を制御する:
-レーザー共振器22の温度、
-レーザー共振器22の経路長、
-レーザー共振器22のポンピング。
【0159】
この実施形態では、検出器2の誤差信号9をコントローラ6で使用して光シード信号10の位相を安定化する。検出器2及び検出器36への入射信号は、レーザー共振器などの光共振器の共振TEM00モードと、光共振器から直接反射して位相基準を生成する2次「+」モードとの干渉として理解可能である。検出器2の場合、信号は、光共振器25のTEM00モードとレーザー11の出力信号15との干渉に基づく。ただし、第2の検出器36における信号は、レーザー共振器22のTEM00モードと光共振器25を通る透過信号との干渉に基づく。これはレーザー11へ後方反射されて光シード信号10として作用し、またレーザー共振器22から反射されて位相基準を形成する。したがって、(第1の)検出器2の信号に基づく誤差信号9を使用してレーザー共振器22と光共振器25の間の位相(これは光シード信号の位相でもある)をピエゾマウントミラー28により調整し、また第2の検出器36での信号に基づく第2の誤差信号38を使用してレーザー11の残りの1以上の動作パラメータを制御することが有益である。本実施形態において2つの検出器2と36を使用することで、注入ロックに関するより多くの情報が得られ、動作パラメータの制御に使用されるので、より安定した構成が得られる。
【0160】
図7は、レーザー41を光共振器42に周波数ロックする装置40の一実施形態を概略的に示す。この実施形態では、装置40はレーザー41を含み、光共振器42は3つのミラーの光共振器として形成される。レーザー42からのレーザービームは入力コリメータ44で偏光ファイバ43に結合される。光ファイバ43は、50:50の偏波保持ファイバスプリッタ45で構成され、ファイバスプリッタ45の出力の1つが「有用な」光として使用される。さらに、偏光ファイバ43からレーザービームを放出するための偏光ファイバ(PZF)46とファイバコリメータ47が提供される。放出されるレーザービームは、レーザービームが楕円率を得るようにレーザービームを整形するためのビーム整形器48に向けられる。本実施形態では、ビーム整形器48は一対の円筒レンズ(CLP)49を備え、その集束軸が相互に垂直に配向する。その後、レーザービームは、回転可能な第1の偏光ビームスプリッタ(PBS)50に照射される。
【0161】
レーザービームはその後、光共振器42の共振器入力ミラー51に向けられる。光共振器42から反射されたレーザービームは検出レンズ(DL)52に向けられる。これは(例えば100mmの)凸球面レンズであってよい。検出レンズ52は光共振器42から反射されたレーザービームを集束させる役割をする。その後、レーザービームは第2の偏光ビームスプリッタ53を通過する。装置40は、検出レンズ52で集束されたレーザービームのビーム楕円率に比例する誤差信号を決定するための検出器54を更に備える。この実施形態では、検出器54は四分割フォトダイオード55であり、検出器54は四分割フォトダイオード 55の対角信号に基づいて誤差信号を決定するように構成されている。対角信号は、四分割フォトダイオード55の対角センサ領域からの信号の合計同士の差からなっている。
【0162】
図7に示す実施形態による装置40は、光共振器42から取り出された光信号15をモニタする方法を実行する。この場合、光信号15は光共振器42から反射されたレーザービームである。この方法は以下のステップを含む。
-光信号15の少なくとも一部を入射信号1(この場合四分割フォトダイオード 55に入射する信号)として受信するステップ;
-入射信号1を検出器2(この場合は四分割フォトダイオード55)に伝搬することと、検出器2への伝搬入射信号1の幾何学的ビーム形状(
図8C参照)、特にビーム形状楕円率に基づき、例えばビーム形状楕円率に比例して、誤差信号9を導出することと、を含む変換構成の適用によって、入射信号1を誤差信号9(
図10参照)に変換するステップ。
ここで、誤差信号9は、極小値、特に最小値13(
図2又は
図10を参照)と、極大値、特に最大値14(
図2又は
図10を参照)とを有し、極小値と極大値が誤差信号値の区間59を区切り(例えば
図10を参照)、変換構成は、光共振器42が目標状態にあるときに誤差信号9がゼロクロス58(
図10参照)するように区間59を構成する。この場合、目標状態とは、光共振器42へのレーザー41の最適周波数ロックを指す。
【0163】
図8a、
図8b、
図8cは、レーザーのロックのベースとなる誤差信号の生成を概念的に示す(
図7の点線で、例えばレーザー電流の調整などによってレーザーをロックするためのフィードバックとして誤差信号を使用することを示す)。
【0164】
図8aは、三角形リング共振器の幾何配置とそれに関連するエルミート・ガウス・モード共振を概略的に示す。この実施形態では、光共振器42は2つ平面ミラーと1つの(例えば曲率半径5cmの)凸面ミラーで構成される。さらに、挿入図に「00」と「+」モードの空間振幅構造を示す。固有のキャビティモードでは、「+」モードは「02」モードと「20」モードの重ね合わせにより現れる。アライメントのドリフトは「01」モードと「10」モードに所属する。ここでν
FSRは自由スペクトル範囲を表し、nは整数を表す。この例では、共振器パラメータは以下の通りである:往復長7.01cm、ν
FSR=4.28GHz、’00’モードのフィネス195。
【0165】
図8bは、四分割フォトダイオードを使用するビーム楕円率検出と、わずかに楕円形のビームのモード分解を示す。ここでεは小さな複素数である。
図8bからわかるように、四分割フォトダイオード55のDIAG=(A+B)-(C+D)関数がビーム楕円率を与える。さらに、誤差信号がトランスインピーダンスフィルタ(AMP)により生成される。
【0166】
図8cは、「00」モード共振付近の共振器から反射された光の誤差信号の周波数依存性を示し、κは共振器全線幅である。
【0167】
検出レンズ52と検出器54の配置を後で
図9及び
図11に関連して説明する。
【0168】
図9は、
図7の実施形態における、ビーム経路内の関連要素の位置と、得られるビーム特性、特に面内及び面外のビームウェストとキャビティモードのビームウェストとを示す。特に、TEM
00モードのピーク出力に対して約5%の割合でTEM
02およびTEM
20モードを励起する光学要素の構成を示す。一対の円筒レンズ49を有するビーム整形器48に到達する前に、レーザービームの面内及び面外のビームウェストが一致する。図からわかるように、ビーム整形器48はレーザービームに楕円率を与える。検出レンズ52においてレーザービームが集束される。検出器54は、面内及び面外のビームウェストが共振モードのビームウェストと一致する位置に示されている。平均キャビティモードウェストは74μm、面内ビームウェストは84μm、面外ビームウェストは65μmであってよい。さらに、レーザーの周波数ロックのための誤差信号を使用するために、検出器レンズ52と検出器54の軸方向距離57の調整が能な調整区間56が示されている。図中の寸法(例えば、
図9のcm単位での位置)は、説明のために選択されたものであり、異なる値を取ってもよい。
【0169】
図10は、
図7の実施形態における誤差信号と共振器透過を示す図である。誤差信号のゼロクロス58が誤差信号の最小値60と最大値61の間の区間59内にあるように、また、レーザーが共振器の共振周波数のレーザービームを提供するときに、実質的に円形のレーザービームの既定のビーム楕円率に対応する誤差信号値が区間59内にあるように、軸方向距離57が調整される。周波数での区間59が軸方向距離57の調整区間56に変換される。
図10に示す誤差信号を使用して、光共振器42へのレーザー41のロックを行うことができる。
【0170】
第2のレーザーシステムもまた、光共振器42の反対側に、左側をミラーリングしてロックされ得る。原理的に、この3つのミラーの共振器では最大3つのレーザーを同時にロック可能である。このことはミラー数を増やすことによってスケールアップ可能である。これに替わり、レーザー波長が十分に異なっていれば、後でフィルタによって各波長を分離するのであれは、複数のレーザーを同一の入力ミラーを使用してロックすることができる。
【0171】
図11は誤差信号と透過を示す。面内と面外のビームウェストがキャビティモードのビームウェストと正確に一致するときにバックグラウンドのオフセットがゼロであるか又は最小化されているとしても、エラー信号のゼロクロス58は、
図11からわかるように、光共振器42の透過ピークのプラトーに正確に対応はしない。したがって、検出レンズ52と検出器54の軸方向距離57を、光共振器42から反射されたレーザービームの透過ピークが誤差信号のゼロクロス58に一致するように調整することがさらに望ましい。
図11は、ビームウェストが一致した場合(「初期」)と、透過ピークとゼロクロス58が一致した場合(「最適化」)での、誤差信号を示す。
【0172】
図12は、検出レンズ52と検出器57の間の軸方向距離57を概略的に示す。レーザービームを検出器57にセンタリングをすることも可能である。これは検出レンズ52(及び/又は検出器54)を光軸63に対して垂直な方向62(「LR」すなわち左右方向、及び「UD」すなわち上下方向)に、四分割フォトダイオード55の左右の信号及び上下の信号が最小化するように並進させることにより達成される。左右の信号LR=(A+C)-(B+D)及び上下の信号UD=(A+D)-(C+B)はそれぞれ四分割フォトダイオード55の隣接するセンサ領域の和の差から成り、左右の信号及び上下の信号は隣接するセンサ領域の異なる半分の和を使用する。軸方向距離57が調整されたときは、レーザービームは再センタリングされることが望ましい。したがって、これらのステップが再現可能かつ反復的に行われることが望ましい。すなわち、軸方向距離57の調整のたびに、LR信号及びUD信号が再度最小化されるべきである。このプロセスを繰り返すことにより、
図11の「最適化」誤差信号に示すように、ゼロクロッシング58が最適化されて透過プラトーに正確に一致する。
【0173】
図13a~
図13cは、弱値強調、すなわち偏光の事前選択及び事後選択の下での有効共振器を示す。特に
図13aは、
図7及び以下で説明する
図14の実施形態における第1及び第2の偏光子の使用を示す。入力偏光子11及び出力偏光子53を使用して反射演算子
の弱値r
w得て、その結果調整可能な反射率を持つ有効共振器が得られる。偏光子50、偏光子53はいずれも直線偏光子である。したがって、レーザービームは光共振器42に向かう前に偏光フィルタがかけられ、光共振器から反射されるレーザービームもまた偏光フィルタがかけられる。
図13bは、異なる事後選択構成に対して測定された正規化反射パワーを示す。曲線はそのオフ共振残存パワー分率|<ψ
2|ψ
1>|
2によってラベル付けされている。1/2曲線は元の共振器反射曲線と同一であり、1/60曲線はインピーダンス整合(γ’=1)構成である。破線-点線は、非「00」モード成分からの強度寄与レベルを表す。
図13cは、「00」モードに一致している場合の(理論上の)r
wの実部と虚部とを示し、事後選択の利点:誤差信号の傾きの効果的な増加と、ロックポイント近傍での検出器54への光パワーの最小化が達成される、を示している。
【0174】
図14は、安定化方式の性能を実証するために使用されたロックアップ構成の2つのコピーを示す。この2つのコピーは、同じ光共振器42を共有し、それ以外は、
図7の文脈で説明した装置40と同じ要素をそれぞれが(独自に)備えている。したがって、
図7の説明を参照し、同一要素は同一参照番号で示す。2つの個別のレーザー41は、三角形リング共振器42の2つの縮退対向伝播「00」モードに安定化された。一対の円筒レンズ49間の距離が「+」モードの光量を決定し、それは実験に使用された総出力(約400μW)の約10%に相当する。
【0175】
異なる光周波数安定化システム間の比較は、キャビティ線幅に対する分数不安定性として性能を評価することで達成可能である。通常、絶対不安定性はキャビティ線幅に比例して拡大する。これは問題となる不安定性の典型的な原因が誤差信号形状の変動に由来するからである。この実験では、22-MHzの全線幅共振器と、500kHzの固有線幅を有する780nmの2つの外部共振器ダイオードレーザーを使用した。
【0176】
図15aは、
図14に示す実験構成の平均化時間にわたるロック不安定性を、他の安定化方式と比較して示す。「00」モード共振にロックされた間における実装方式の性能を示す。平均化時間が0.25秒から100秒の間で10
-7のロック不安定性領域に達して、以前の最先端技術を凌駕し、10秒の平均化時間では5×10
-7の不安定性に達した。10時間記録されたビートノートのアラン偏差が取られ、2つのロック間で不安定性が等しいと仮定される。比較は以下の方法に関して行われる。
-Salomon(Salomon,C.,Hils,D.&Hall,J.L.Laser stabilization at the millihertz level.(ミリヘルツレベルでのレーザー安定化)J.Opt.Soc.Am.B5,1576(1988).):透過変調方法;
-Slagmolen(Slagmolen,B.J.J.,Shaddock,D.A.,Gray,M.B.&McClelland,D.E.Frequency stability of spatial mode interference (tilt) locking(空間モード干渉(チルト)ロックの周波数安定性).IEEE J.Quantum Electron.38,1521-1528(2002).):ダブルパス「チルトロック」法;
-Matei(Matei,D.G.et al.1.5μm Lasers with Sub-10mHz Linewidth(サブ10mHz線幅の1.5μmレーザー).Phys.Rev.Lett.118,263202(2017).):PDH法;
-Kessler(Kessler,T.et al.A sub-40-mHz-linewidth laser based on a silicon single-crystal optical cavity(シリコン単結晶光共振器によるサブ40mHz線幅レーザー).Nat.Photonics 6,687-692(2012).):RAM安定化の有無によるPDH法アウトオブループノイズフロア特性。(arXiv:1112.3854).
データを抽出して、各研究で使用されたキャビティ線幅の相対値で表した。
【0177】
図15bは、上側に事後選択の有無による達成された不安定性の比較を示し、下側に対応するビートノートのトレースを示す。
【0178】
図15cは、事後選択あり動作、事後選択なし動作での、安定性に対する推定される制限を示す。ビーム形状ノイズによる主要な寄与を実線で、副次的な寄与を破線で示す。副次的な寄与の内訳は以下の様である:測定されるインループ誤差信号ノイズ(X)、検出器54ダークノイズ(◇)、レーザー41強度ドリフトノイズ(〇)。
【0179】
図14に示す構成で行われた実験のより詳細を次に述べる。ただし、異なるパラメータも使用され得るが、それが発明を限定するものと考えるべきではないことに留意されたい。
【0180】
光共振器42は、1つの高反射率湾曲ミラー(曲率半径5cm)と、2つの低反射率(入射角30°でp偏光に対して-98.93)平面ミラーとから成る。反射率は、簡単とするために共振器の線幅がレーザー41(500kHz)よりも大きくなるように選ばれている。ミラーは、ほぼ正三角形を成す3つの穿孔を有するアルミニウムブロックにエポキシ樹脂で取り付けられている。ビーム整形器48 を形成するファイバコリメータ47と一対の円筒レンズ49が、5軸の先端傾斜並進ステージ上に位置するケージアセンブリに取り付けられている。このアセンブリは、ファイバコリメータレンズの軸方向並進機能と共に、光共振器42へのモード整合を容易にする。光共振器42は、他の光学系と共に、すべてが光学テーブルに直置きされ、温度と空気の変動に対する安定性のために金属ボックスで囲われている。アルミニウムのキャビティスペーサは、キャビティ長を制御するために1mK以内に安定化されている。
【0181】
キャビティモード基準プロファイルを実験的に特定するために(
図9も参照)、ミラーの1つから「00」モードに光を後方結合させ、共振器42から(四分割フォトダイオード(QPD)55への経路に沿って)放出されるモードプロファイルをCMOSカメラで解析する。光学素子の位置調整によって入射ビームプロファイルが調整されて、共振器からの反射時に基準モードに整合される。アライメントが行われると、「00」モード及び「02」-「20」モード以外のすべてのモードが抑制されて、後者2つの透過レベルが等しくなる。
【0182】
入力光のアライメントに続いて、QPD55の位置がアライメントされる。ビームをQPD55にセンタリングするために、QPD55からの左右及び上下の信号をモニタしつつ検出レンズ(DL)52を並進させる。ビームがセンタリングされると、誤差信号上のベースラインのオフセットが、ビームが円形プロファイルとなる位置からのQPD55の位置の軸方向変位が原因である。QPD55の位置は、原理的にこのオフセットを排除するように調整可能である。ただし、キャビティ42の自然な非点収差もまたベースラインのオフセットに寄与する。このこともまた、透過ピークの誤差信号ゼロクロス58からのシフトをもたらす。したがって、透過ピークと誤差信号ゼロクロス58が一致するまでQPD55の軸方向位置を調整することが可能である。この一致がない場合には、周波数ノイズへの強度ノイズの相互結合が現れる。
電子バックエンド:
【0183】
QPD55とフィードバック回路は自家製である。QPD55のすべての象限は、380kΩのトランスインピーダンスゲインで独立して増幅される。そうして次に演算増幅回路で演算が行われて対角、左右、上下及び和の各信号に同時にアクセスされる。これらのそれぞれにより共振器ロック誤差信号、ビームセンタリング信号、及び共振器から反射する全体の光強度が得られる。
【0184】
対角チャネルからの信号はアナログフィードバック回路に行き、ロック時にレーザー41の共振器との共振を維持するためにレーザー電流に供給される。フィードバックループには、DCから20kHzまでの2つの積分器(1/f2応答)、及び20kHzからロック帯域幅100kHzまでの1つの積分器(1/f応答)が含まれ、安定性に大きな制限を与えないロックタイトネスを提供する(
図15cの×印)。性能にとって重要である、グラウンドループ排除のために、フィードバック回路へのすべての入出力信号は、差動である。
【0185】
QPD55と実装された増幅回路は、300Hzを超える周波数ではショットノイズで制限される。この周波数よりも下では増幅ノイズが支配的となる。しかし、10msを超える時間スケールで観測されるロック安定性はショットノイズにも増幅ノイズにも関係しない。これはこのような時間スケールで動作する他の実験でも一般的である。システム性能、比較、及びノイズ特性評価:
【0186】
レーザー共振器ロック構成の2つのコピーが同じ性能であると仮定すると、独立したノイズが直交して加算されるので、1つのコピーに関する実際の不安定性は、測定されたレーザービートノートの不安定性の1/√2で与えられる。この補正は
図15の説明で既に取り込まれており、標準的な手順である。このことは達成され得る不安定性を一般的に控えめに評価する。2つの構成の内の1つの性能がより高いと仮定すると、その構成の性能の抽出にはさらに大きな数で割ることを必要とするであろうからである。本ケースでは、性能を制限する、解析されたビーム形状ノイズが2つのコピーに対して等しいことが判明したので、2つのコピーのいずれの性能もほぼ等しい。
【0187】
以前の最先端技術のものと比較するために、
図15に引用した研究(下記を参照)からウェブプロットデジタイザを使用して不安定性データを抽出し、各研究に利用されているキャビティ線幅に対する割合を表すデータを測った。比較のための特定の刊行物の選択に当たり、レーザービートノートを介する実際の測定された安定性を得るために、2以上の類似の構成を含む研究に特に配慮した。インループ誤差信号を記録し、適切な変換因子を利用することにより、単一コピーのシステムからロック安定性を推測可能であることに留意されたい。この方法は、フィードバックループが物理的な起因に関係なく誤差信号を抑制することから、必ずしも信頼性があるわけではない。例えば、本研究におけるインループ誤差信号は継続的に10
-8の不安定性スケールに平均化されるが、実際の安定性の限界は、ビーム形状ノイズにより誤差信号が実際の周波数値からずれることによりもたらされる。
比較データの中で、「Slagmolen」と「Salomon」の曲線は、本研究で提示された結果と共に、同一共振器への2つのレーザーのロックにより取得されているが、「Matei」の曲線は別々の共振器にロックされた2つのレーザーの比較により得られており、利用された共振器の熱ノイズにより制限されている。
【0188】
図15c(下図参照)に示す安定性への推定限界は、その場を離れて実行された。ビーム形状ノイズは、キャビティモードを物理的にブロックして測定した。したがって、共振器内には光の蓄積はない。この構成では、入力ミラーは入射光を直接QPDに向かわせ、入射ビーム内のビーム楕円率の変動を特定可能とする。モードがブロックされていない間に共振器が実行するであろう形状ノイズフィルタリング効果を考慮するための更なるモデリングは行わなかった。QPDダークノイズは、入射光をブロックして、誤差信号をモニタすることにより測定した。強度ドリフトノイズは、レーザー41が共振器42にロックされている間に、レーザーのビートノート周波数とQPD55の合計チャンネルを同時にモニタすることにより測定した。強度ノイズを除き、共振時の誤差信号の傾きを使用して測定値を周波数に変換した。強度ドリフトノイズに関しては、ロック動作時のビートノートの測定されたレーザー強度依存性を使用した。本研究においては、積極的な強度安定化は行われなかったことを注記する。
【0189】
安定性の限界は、実際にはビーム楕円率の変動から来るものであり、QPD検出システムの非理想性と組み合わされたビーム指向変動から間接的に来るものではないことが検証された。QPD位置をビーム軸に対して垂直に並進させることにより、200倍を超える、ビーム位置とビーム楕円率との間のクロストーク分離が観測された。他方、動作中のビーム位置信号内の電圧ノイズは、楕円率信号内の電圧ノイズよりも1桁大きいだけであり、ビームの指向性クロストークが主要なノイズ源であることは否定された。レーザー線幅がより狭ければ、システム内にそれ以外の支配的な欠陥源がないと仮定して、短時間スケールでの安定性を原理的に向上させる。本研究の場合、レーザー線幅を500kHzから1MHzに(電流ノイズを注入することによって)人為的に広げても性能の劣化はなかった。これは線幅が制限要因ではないことを示唆している。また、本パラメータ領域において、ロック帯域(100kHz)が初期レーザー線幅より小さいので、レーザー線幅の縮小は生じていないことを注記する。本研究で検討したロック方法を次善の「透過変調」法(
図15a)と比較したときの利点は、PDH法にも共通する性質である、反射ビームの利用である。この動作モードでは、ロック帯域はキャビティ線幅によって直接制限されることはない。これは、中心周波数の安定化に加えて、レーザーの線幅を狭めようとする場合、狭線幅の高フィネス共振器の文脈において重要である。
【0190】
更なる補足として、光ショットノイズによる多くの周波数ロック技術の基本的限界は、1桁以内の数値範囲内で同じであることが示されており、本方法も例外ではない。
【0191】
事後選択の利点:既に議論した強度ノイズ及び入射ビーム形状変動に対する感度の抑制に加えて、事後選択がビームの指向変動への感度を低減する。これらの変動は、対角QPDチャネルの信号に2次的にしか影響せず、本研究では制限を生じさせていないように思われるが、それにも拘らずさらに低減される。後選択により抑制される別の非理想な点は、三角キャビティモードの非点収差の悪影響である。非点収差は、誤差信号のゼロクロスを透過強度の最大値からずらす原因となる。この結果、強度-周波数ノイズ変換を通して性能が低減する。アライメント手順において議論したように、アライメントの微調整によりこの効果を低減可能であるが、それでもなお、事後選択によりこれらの問題が顕著に抑制されてアライメントを容易にする。
【0192】
定性的には、事後選択によりもたらされる改善は、共振器に入る1つと、共振器から直接反射される1つとの、直交偏光した2つのビームに行われる差分測定に由来するものと考え得る。事後選択を通して、この差動測定は、QPDに入射する一定量の光に対する誤差信号の傾きを改善する(より小さな周波数シフトに対してより敏感にさせる)コヒーレントプロセスとして現れる。事後選択プロセスは、得られるQPD上の強度が、等価な電子ノイズフロアを下回らない限り性能を向上させる。
【0193】
すべての改善と共に、事後選択はキャビティ長の変化に対する周波数ロックポイントの小さな感度を導入することも観察される。予備的な特性評価によれば、この感度の上昇は、光周波数の変化に伴って共振器から反射する光の偏光が変化し、実効的に事後選択角を変化させることに起因する可能性があることが示される。キャビティ長は周波数安定化アプリケーションにおいては必然的に十分に制御されるパラメータではあるが、本実装においては支配的な制限とはならない。
異なるキャビティ形状への適用:
【0194】
図7と
図14において、入射ビームと反射ビームが別々の経路を通るリング共振器が利用されている。用途が異なれば違う共振器設計が必要となり得る。例えば、超低振動感度は一般に2つのミラーの定在波共振器の使用を必要とする。この構成では、主たる方法に関しては何も変わらない。反射するビームは入射ビームと同じ経路を通るが、例えば(PDH法で通常行われるように)偏光ビームスプリッタと共に1/4波長板を使用することで容易に分離可能である。また、共振器の特定のモードスペクトルは実装には関係ないことに留意されたい。適切な動作のための唯一の要件は、TEM
00モードが2次モードとスペクトル的に縮退してないことであり、したがって、2次モードは任意の一般的な共振周波数を有することができる。この主要な方法は、エバネッセント結合を必要とする導波路のような共振器、例えば誘電体ウィスパリングギャラリモード共振器又はファイバリングにも使用可能である。十分に確立された1つの結合戦略は、プリズムを使用することであり、全内部反射中のプリズムからのエバネッセントテールが光を共振器の内外に結合させる。このようにプリズムは、導波路上の構造を自由空間光学系に効果的に接続し、本研究で開発した方法を適用する上で、自由空間共振器の入力ミラーのように見える。
事後選択されたビームの展開と反射係数の弱値
【0195】
ここで、上記で使用した有効反射係数と関連する式の導出を概説する。まず、弱値の記述に使用される量子力学的言語で、偏光の自由度なしでキャビティ反射をモデル化し、次いで、偏光を考慮に入れる。
【0196】
最初のケースでは、問題には2つの自由度:「モード形状」と「チャネル」、がある。第1の自由度で広がる状態は様々なTEMモードであり、第2の自由度で広がる状態は、「入射」
、「反射」
、「透過」
と表示される。初期状態を、2つの自由度の直積状態:
とする。ここで、状態「Φ」は任意の入力モード形状を表す。キャビティからの「00」共振に近い反射を現象論的に記述するためにユニタリ演算子
を定義する。これは「モード形状」が状態|0>であれば「チャネル」の状態を別のユニタリ演算子
で展開し、そうでなければ、入射状態
を反射状態
へ直接展開する。ここで、
は「モード形状」自由度に関する恒等演算子であり、|0><0|は「00」モードに関する射影演算子である。ビームの反射部分にのみを考える場合、入力の「モード形状」状態|Φ>にのみ作用する有効展開演算子R^を、状態展開:
の後の反射部分への射影を用いて定義することができる。この手順により、有効展開演算子
が得られる。ここで
は振幅反射係数であり、これは実験で定量化される。
【0197】
次に、偏光の自由度を含めると、初期状態
を展開するより一般的なユニタリ演算子が導入される。ここで、|ψ
1>は偏光自由度の初期状態である。上記の手順を用いて、初期の「モード形状」と「偏光」状態
にのみ作用する有効展開演算子R^=R^
H+R^
Vが導かれ、
と
が得られる。これらの表式において、r
Hとr
Vは、キャビティの主軸に対する水平偏光状態|H>と垂直偏光状態|V>に関する振幅反射係数である。ここで、傾斜したキャビティ入力ミラーからの直接反射に対して、潜在的な相対複屈折位相シフトΦが明示的に含まれる。定義R^
post|Φ>=<ψ‘
2|R^|Φ>|ψ
1>を用いて偏光状態|ψ‘
2>にさらに射影すると、最終的な事後選択展開演算子R^
post=<ψ
2|ψ
1>[r
w|0><0|+(I-|0><0|)]が得られる。これは純粋に入力モード状態|Φ>に作用する。ここで、r
w=<ψ
2|r^|ψ
1>/<ψ
2|ψ
1>は反射演算子r^=r
H|H><H|+r
V|V><V|の弱値であり、R^
postのオーバラップ係数<ψ
2|ψ
1>がさらに事後選択演算の損失性を表す。分かり易くするために、複屈折位相シフトの効果を事後選択状態:|ψ
2>=(|H><H|+|V><V|e
-iΦ)|ψ‘
2>の定義に含めたことに留意されたい。上では、小さな複屈折位相は無視したが、
図15bの曲線に残る非対称性はこれに起因する可能性がある。
【0198】
次に本実験構成に関するr
wを評価する。直線偏光子の使用により事前選択状態及び事後選択状態は|ψ
1>=cosθ
1|H>+sinθ
1|V>及び|ψ
2>=cosθ
2|H>+e
-iΦsinθ
2|V>と表示することができる。これにより、弱値はr
w=r
H((1/2)+B)+r
V((1/2)-B)となり、オーバラップ係数は<ψ
2|ψ
1>=cos(θ
2+θ
1)/(B+(1/2)+e
-iΦ(B-(1/2)))となる。ここで、複素数B=(1+e
-iΦtanθ
2tanθ
1)
-1-(1/2)を定義する。本研究では、キャビティは偏光分解型であり、垂直偏光成分は大きく外れた共振と見なして、r
H=1-γ/(1-i
δ/(κ/2))、及びをr
v=1使用することができる。ここでγ、δ、及びκは本文中で定義した通りである。これにより、弱値はr
w=1-γ(B+(1/2))/(1-i
δ/(κ/2))となる。最後に、小複屈折位相近似Φ<<1を行い、Φの冪級数展開を行うと、本文で使用の式に到達する。その結果、
(2)
(3)
となる。ここでγ’=Aγe
-iΦ(A-1)であり、A=(1/2)+B|
Φ=0である。成功した事後選択確率は以下の様に表示できる。
ここで、関連する事後選択角度をcos(θ
2+θ
1)
2~1と仮定した。上記で使用した表示はさらにΦ=0としている。
【国際調査報告】