(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】燃料電池装置の動作方法および燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04303 20160101AFI20250121BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20250121BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20250121BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20250121BHJP
B60L 50/70 20190101ALN20250121BHJP
【FI】
H01M8/04303
H01M8/0444
H01M8/04746
H01M8/0438
B60L50/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539261
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2023050420
(87)【国際公開番号】W WO2023135121
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】102022200368.3
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケマー,ヘラーソン
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD12
5H125EE25
5H125EE41
5H125EE51
5H127AB04
5H127AC09
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127DA02
5H127DA11
5H127DB03
5H127DB04
5H127DB48
5H127DB93
5H127DC02
5H127DC03
5H127DC22
(57)【要約】
本発明は、燃料電池装置(10)の動作方法であって、燃料電池スタック(BS)のアノード回路において所定の水素濃度を確保する(S1)ことと、アノード回路における水素再循環をスイッチオフする(S4)か、またはアノード回路における水素再循環を所定の再循環体積流量または所定の再循環体積流量未満に低減する(S4a)ことと、燃料電池スタック(BS)のカソードを乾燥させる(S5)こととを包含する方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置(10)の動作方法であって、次の各ステップ、すなわち、
-燃料電池スタック(BS)のアノード回路において所定の水素濃度を確保する(S1)ステップと、
-前記アノード回路における水素再循環をスイッチオフする(S4)か、または前記アノード回路における前記水素再循環を所定の再循環体積流量または所定の再循環体積流量未満に低減する(S4a)ステップと、
-前記燃料電池スタック(BS)のカソードを乾燥させる(S5)ステップと
を包含する方法。
【請求項2】
前記確保する(S1)ために前記水素濃度を前記水素濃度(WK)の規定値(VW)または規定インターバルと比較する(S2)、ならびに/あるいは前記アノード回路における前記水素濃度を少なくとも前記規定値(VW)または前記規定インターバルに同化させる(S3)ことが行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料電池プロセスのスイッチオフまたはオンの前に、周囲環境チェック装置を介して、前記燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきかどうか、および/または前記燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきとする命令がユーザから受信されるかどうかが検知される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥する前記燃料電池スタック(BS)の動作の停止後に、前記燃料電池スタックの低温始動が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素再循環の前記スイッチオフまたは低減の後、あるいは水素再循環を低減するために、前記アノード回路への水素供給のスイッチオフ、あるいは前記アノード回路への水素供給の所定供給体積流量または所定供給体積流量未満への低減が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水素供給の前記スイッチオフまたは低減の後、前記アノードでの前記アノード回路における水素のアノード圧が、前記アノード圧の下規定値に達するか、または下規定値を下回るまで監視され、次に前記乾燥が完了したかどうかが検知され、前記乾燥が完了したことが検知される場合、次に前記乾燥が終了される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥がまだ完了していないことが検知される場合、前記水素供給が再びスイッチオンされるか、または増加され、その後、前記アノード圧が、前記アノード圧の上規定値を上回るか、または上規定値に達するまで監視され、次に前記水素循環が再び低減されるか、またはスイッチオフされ、前記水素供給が低減されるか、またはスイッチオフされ、前記アノード圧が、前記アノード圧の下規定値を下回るか、または前記下規定値に達するまで監視され、次に再び、前記乾燥が完了したかどうかが検知され、前記乾燥が完了したことが検知される場合、次に乾燥が中止され、前記乾燥がまだ完了していないことが検知される場合、前記水素供給が再び増加されるか、またはスイッチオンされ、前記上規定値と下規定値との間の前記アノード圧の制御が、前記乾燥が完了するまで繰り返される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記水素供給の増加またはスイッチオン直後に水素再循環も増加またはスイッチオンされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素供給および/または前記水素循環の低減および/または増加は、鋸歯パターンで行われる、請求項5から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
燃料電池装置(10)であって、
-アノード(A)およびカソード(K)を有する燃料電池スタック(BS)と、
-前記アノード(A)に水素再循環回路(WZK)と、
-前記アノードおよび/または前記水素再循環回路(WZK)に接続された水素供給部(WZ)と、
-前記カソード(K)に水排出部(WA)と、
-前記水素供給部(WZ)および/または前記水素再循環回路(WZK)および/または前記水排出部(WA)に接続され、かつ請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法を実行するように設定された制御装置(SE)と、を備える燃料電池装置。
【請求項11】
前記アノード(A)に圧力センサを備え、制御装置によって前記圧力センサを用いてアノード圧を検知可能であり、前記アノード圧を前記アノード圧の上規定値および/または下規定値と比較可能である、請求項10に記載の燃料電池装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置の動作方法および燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の燃料電池は水素ベースで動作することができ、その際、排ガスとして水のみを放出し、迅速な補給時間を可能にすることから、将来のモビリティコンセプトと見なされる。
【0003】
既知の燃料電池システムは化学反応のために空気と水素を必要とし、燃料電池スタックの排熱を、通常、冷却回路を用いて排出することができ、主車両冷却器で周囲環境へ放出することができる。その場合、特に0℃未満での燃料電池システムの始動時に、スタックを可能な限り迅速に加熱できることが有利であり得る。これに関して、迅速な加熱は、始動の継続を困難にしたり阻止したりする水または氷の蓄積を生じさせない、またはほぼ生じさせないようにすることができる。しかし冷却液が0℃を超えて熱せられ、その冷却液がポンプでスタック内に送られ、それによって凍結条件が低減または回避できて初めて氷結の危険を低減または回避することができる。
【0004】
通例の手法によるそのような0℃未満の低温始動(Gefrierstart)では、冷却液はスタックの外側で、またはスタックにおける電気化学反応によって加熱することができる。そのためにどちらの場合も始動プロセスが長引く可能性がある(例えば-30℃の場合、30s後に負荷の50%に到達)。さらに、その場合、0℃未満に冷え続けるため、セル(およびシステム)の許容氷結を高くすることが必要になる可能性がある。これは例えばセルにアイスバッファ(Eispuffer)、システムに加熱器を組み込むことによって達成できる。
【0005】
特許文献1には継手と弁とを有するタンクが記載され、弁は継手に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第112006003013号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の燃料電池装置の動作方法および請求項10に記載の燃料電池装置を提供する。
【0008】
好ましい発展形態は、従属請求項の対象である。
【0009】
本発明の基礎をなす思想は、燃料電池装置の動作方法および燃料電池装置を提供することであり、車両を作動停止するための動作ストラテジと、その際に、燃料電池スタックの乾燥過程における燃料電池スタック内部の湿気の低減とを達成することができる。
【0010】
本発明による方法およびそのために設計された燃料電池装置によって、燃料電池スタックのより迅速な乾燥過程を達成することができ、そのことが燃料電池のエネルギー効率の向上をもたらすことができる。その場合、車両の作動停止後に騒音レベルを伴うコンポーネントの無人動作の継続時間を短縮することによって、制御装置のアフターランにおける快適挙動も達成することができる(燃料電池のコントロールユニット(FCCU)は、車両の作動停止後に、燃料電池動作を乾燥させるためにアフターラン動作をすることができる)。
【0011】
さらに、セルの乾燥の信頼性を高めることができ、そのことが、特に極端な外部条件(低温)でもより確実かつロバストな低温始動をもたらすことができる。
【0012】
さらに、例えばスタックおよびシステムにおけるアイスバッファ措置を省略できるか、またはその手間を大幅に削減できるため、燃料電池装置のコストの低減を達成することができる。
【0013】
さらに、低温始動中、膜の局所的な乾きの低減を伴う乾燥過程の継続時間の短縮と、不可逆的な破損につながる可能性のあるセル氷結の阻止または軽減とによってスタックの有効寿命を延ばすことができる。
【0014】
本発明によれば、方法において、燃料電池スタックのアノード回路において所定の水素濃度を確保することと、アノード回路における水素再循環をスイッチオフするか、またはアノード回路における水素再循環を所定の再循環体積流量または所定の再循環体積流量未満に低減することと、燃料電池スタックのカソードを乾燥させることとが行われる。
【0015】
本方法によれば、燃料電池装置を動作させるために、例えば比較的長いパージプロセスによって水素濃度の増加を行うことができる。その場合、パージプロセスを用いて確保を行うことができ、アノード回路における水素の交換を行うことができ、その場合、導出または導入される水素の量を考慮することができ、それによってパージプロセス後のアノード回路における圧力状況および/または水素濃度を推測することができる。水素濃度が測定可能である場合、この増加/確保中に、検知された水素濃度と水素濃度の規定値または規定インターバルとの比較と、アノード回路における水素濃度の少なくとも規定値または規定インターバルへの同化とが行われ、アノード回路における水素再循環のスイッチオフまたはアノード回路における水素再循環の所定の再循環体積流量または再循環体積流量未満への低減が行われ、燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われる。
【0016】
規定値または規定インターバルは、燃料電池スタックの製造業者または利用者によって予め設定でき、制御装置に記憶することができるか、または制御装置によって受信可能にすることができ、かつこの規定値または規定インターバルを遵守しながら燃料電池スタックの動作の予想される機能形式と所望される機能範囲を達成できるように設定することができる。水素濃度の同化は、弁によって、例えば水素供給部(Wasserstoffzufuhr)から、または水素放出部(Wasserstoffablass)へ、アノード回路に水素を放出または注入する弁によって達成できる。
【0017】
カソードの乾燥は、空気流を化学量論比よりかなり過剰にスタック(積層体)に通すことによって行われる。
【0018】
所定の再循環体積流量は、これが燃料電池スタックの通常の、または平均的な、または望ましい動作形式/性能のために必要な、かつ製造業者または利用者によって選択され、そのように制御装置に記憶できるか、または制御装置によって受信できるアノード回路におけるそのような再循環体積流量に相当し得る。
【0019】
車両の作動停止フェーズにおける相応に効果的な乾燥過程は決め手となり得る。作動停止フェーズは、車両動作の中止と、それに続く車両および駆動装置の停止時間、ならびに例えば外部温度が低い場合に比較的長い時間の後に続く始動フェーズに該当する。
【0020】
方法の好ましい実施形態によれば、確保のために、水素濃度と水素濃度の規定値または規定インターバルとの比較と、アノード回路における水素濃度の少なくとも規定値または規定インターバルへの同化とが行われる。
【0021】
方法の好ましい実施形態によれば、燃料電池装置の燃料電池スタックのカソードの乾燥の必要性の認識と、それに続く乾燥する燃料電池スタックの動作モードの開始が行われる。例えば、周囲温度が0℃未満であるか、または未満になることが予想されることによってこれを引き起こすことができる。
【0022】
乾燥のための燃料電池スタックの動作モードは、アノード回路における水素の再循環および/または供給のための監視法(ループ法(Schleifenverfahren))を用いた本発明によるカソードの乾燥に該当し得る。
【0023】
方法の好ましい実施形態によれば、燃料電池プロセスのスイッチオフの前に、周囲環境チェック装置(Umgebungskontrolleinrichtung)を介して、燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきかどうか、および/または燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきとする命令がユーザから受信されるかどうかが検知される。
【0024】
方法の好ましい実施形態によれば、乾燥する燃料電池スタックの動作の停止後に、燃料電池スタックの低温始動が行われる。
【0025】
その場合、低温始動は、車両の周囲環境が0℃以下での燃料電池スタックの動作(反応ガスの必要な供給、およびそのために必要なコンポーネント/部品の動作)の開始に相当する。
【0026】
方法の好ましい実施形態によれば、水素再循環のスイッチオフまたは低減の後、あるいは水素再循環を低減するために、アノード回路への水素供給のスイッチオフ、あるいはアノード回路への水素供給の所定供給体積流量または所定供給体積流量未満への低減が行われる。
【0027】
方法の好ましい実施形態によれば、水素供給のスイッチオフまたは低減の後、アノードでのアノード回路における水素のアノード圧が、アノード圧の下規定値に達するか、または下規定値を下回るまで監視され、次に乾燥が完了したかどうかが検知され、乾燥が完了したことが検知される場合、続いて乾燥が終了される。
【0028】
方法の好ましい実施形態によれば、乾燥がまだ完了していないことが検知される場合、水素供給が再びスイッチオンされるか、または増加され、その後、アノード圧が、アノード圧の上規定値を上回るか、または上規定値に達するまで監視され、次に水素循環が再び低減されるか、またはスイッチオフされ、水素供給が低減されるか、またはスイッチオフされ、アノード圧が、アノード圧の下規定値を下回るか、または下規定値に達するまで監視され、次に再び、乾燥が完了したかどうかが検知され、乾燥が完了したことが検知される場合、次に乾燥が中止され、乾燥がまだ完了していないことが検知される場合、水素供給が再び増加されるか、またはスイッチオンされ、上規定値と下規定値との間のアノード圧の制御が、乾燥が完了するまで繰り返される。
【0029】
方法は、乾燥がまだ完了していない限り、換言すると、乾燥の対応するパラメータがまだその目標値に達していないか、または目標値を上回る/下回る限りループプロセスにあることができる。アノード圧の上規定値と下規定値との間での調整は、本発明によれば、水素の再循環および/または供給の制御中に行うことができる。乾燥がまだ完了していないのかどうかを認識するために、例えば動作を時間制御して行うことができ、特定の乾燥時間後に中断することができ、かつ次の低温始動が成功するかどうかを検査することができる。その一方で、カソードもしくはアノードの出口湿度の測定、排気装置の水、膜のインピーダンスの視覚的観測などを行うことができ、乾燥度を推測することができる。
【0030】
方法の好ましい実施形態によれば、水素供給の増加またはスイッチオンの直後に水素再循環も増加またはスイッチオンされる。
【0031】
ループプロセスにおいて、水素供給の各増加またはスイッチオンの後に水素再循環も増加またはスイッチオンすることができる。これは、水素供給がスイッチオンされたままであり得る限り再循環を維持できるため、特に水素再循環が受動的、または部分的に受動的なシステムにとって有意義であり得る。
【0032】
方法の好ましい実施形態によれば、水素供給および/または水素循環の低減および/または増加は鋸歯パターン(Saegezahnmuster)で行われる。それによって、例えば水素循環が低い場合の方法の利点を、水素循環が大きいフェーズにおいてアノード回路から水を運び出す可能性と組み合わせることができる。
【0033】
本発明によれば、燃料電池装置は、アノードおよびカソードを有する燃料電池スタックと、アノードに水素再循環回路と、アノードおよび/または水素再循環回路に接続された水素供給部と、カソードに水排出部と、水素供給部および/または水素再循環回路および/または水排出部に接続され、かつ本発明による方法を実行するように設定された制御装置と、を備える。
【0034】
燃料電池装置の好ましい実施形態によれば、これはアノードに圧力センサを備え、制御装置によって圧力センサを用いてアノード圧を検知可能であり、アノード圧をアノード圧の上規定値および/または下規定値と比較可能である。
【0035】
燃料電池装置は、方法に関連する上記の特徴と利点をも特徴とし、またその逆のことが当てはまり得る。
【0036】
本発明の実施形態の他の特徴および利点は、添付の図面に関連付けた以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の例示的実施形態による燃料電池装置の模式図である。
【
図2】本発明の例示的実施形態による方法の手順の模式図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態による燃料電池装置の動作方法の方法ステップのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を図面の模式図に示される例示的実施形態をもとにして詳しく説明する。
【0039】
図において、同じもしくは機能が同じ要素には同じ参照符号が付されている。
【0040】
図1は、本発明の例示的実施形態による燃料電池装置の模式図を示す。
【0041】
燃料電池装置10は、アノードAおよびカソードKを有する燃料電池スタックBSと、アノードAに水素再循環回路WZKと、アノードおよび/または水素再循環回路WZKに接続された水素供給部WZと、カソードKに水排出部WAと、制御装置SEとを備え、制御装置は、水素供給部WZ(例えば水素供給のための弁)および/または水素再循環回路WZKおよび/または水を排出し、それによりカソードを乾燥させるための水排出部WAとに接続され、かつ本発明による方法を実行するように、およびそのように当該コンポーネントを制御するように設定されている。燃料電池装置10は、アノードAに圧力センサDSを備えることができ、制御装置によってこの圧力センサを用いてアノード圧を検知可能であり、アノード圧は、アノード圧の上規定値および/または下規定値で検知可能である。制御装置SEを燃料電池装置におけるさらなる弁およびセンサおよびポンプに接続することもできる。
【0042】
水排出部WAのコンポーネントは、アノード側の水素再循環回路WZKに位置することもでき、そのために、アノード側の水分離器が水素のための第1の弁V1と、水のための(それぞれ排出用の)第2の弁V2または複数の弁を含むことができる。水素供給部は循環ポンプZPに連結することができる。
【0043】
図2は、本発明の例示的実施形態による方法の手順の模式図を示す。
図2において、ループ法が示され、本発明による方法をそのような、または類似のループ形式で実行することができる。
【0044】
図2の方法によれば、一般に車両の作動停止前および燃料電池の動作の中止前の燃料電池の乾燥プロセスを、乾燥のスイッチオン(開始)STと乾燥の終了ENとの間で複数の動作ステップおよび方法ステップに分割することができる。その場合、セルからおよび/またはカソード側の排ガスから所定の湿度が放出されたか、あるいはカソード側で所定の許容可能な残留水分値または残留水含有量を下回った場合に乾燥の終了ENに達することができる。
【0045】
燃料電池プロセスのスイッチオフまたはスイッチオンの前に周囲環境チェック装置(センサ、ユーザとのインターフェース、あるいは光学的または電子的監視装置)を介して、燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきかどうか、および/または燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきとする命令がユーザから受信されるかどうかを検知することができる。これは有利にも、間近に迫った燃料電池装置のスイッチオフ状態での車両の比較的長い停止時間の認知と関連付けて行うことができる。燃料電池スタックの動作の停止後、このような乾燥過程の後に燃料電池スタックの低温始動を行うことができる。
【0046】
まず、燃料電池スタックのアノード回路(例えばアノードへの流入流および再循環流)における水素濃度の確保(S1)を行うことができ、続いて、またはその際に、検知された水素濃度と水素濃度の規定値または規定インターバルとの比較(S2)と、アノード回路における水素濃度の少なくとも規定値または規定インターバルへの同化(S3)が行われ、水素濃度をこの規定値または規定インターバルに上げるか、下げるか、または維持することができる。このステップは、有利にも、アノード回路に必要な水素濃度の提供SL1を行うことができ、この水素濃度は、乾燥過程および/または燃料電池の動作のために必要であり得る。
【0047】
次のステップSL2において、アノード回路における水素再循環のスイッチオフ、あるいは所定の再循環体積流量または所定の再循環体積流量未満への低減(S4,S4a)を行うことができる。
【0048】
さらに次の任意的なステップSL2aにおいて、ここではアノード回路への水素供給のスイッチオフ、あるいはアノード回路への水素供給の所定の供給体積流量または所定の供給体積流量未満への低減を行うことができる。
【0049】
さらに次のステップSL3において、水素供給のスイッチオフまたは低減の後に、あるいは水素供給のスイッチオフのステップSL2aが行われず、再循環の低減またはスイッチオフのみが行われた場合、アノードでのアノード回路における水素のアノード圧が、アノード圧の下規定値に達するか、またはこれを下回るまで監視され、アノード圧がこの値範囲である場合、続いて次のステップSL4において、乾燥が完了したかどうかが検知され、乾燥が完了したことが検知された場合(条件j)、続いてステップENにおいて乾燥が終了され、乾燥がまだ完了していないことが検知された場合(条件n)、次のステップSL5において水素供給が再びスイッチオンされるか、または増加され、その後、任意的に、次のステップSL5aにおいて、水素再循環のスイッチオンまたは増加を行うことができる。
【0050】
水素供給の増加またはスイッチオン、あるいはステップSL5aにおける再循環の任意的なスイッチオンまたは増加の後にも、次のステップSL6において、アノード圧は、アノード圧がアノード圧の上規定値を上回るかまたは上規定値に達するまで監視され、続いて、ステップSL2が新たに実行され、水素循環が再び低減されるか、またはスイッチオフされ、すでに言及したステップSL2~SL4を繰り返すことができ、乾燥過程が完了した場合、ステップSL4の後にENにおいて乾燥が終了されるか、そうでない場合にはループがステップSL5~SL6で新たに行われ、再び再循環のスイッチオフまたは低減のためにステップSL2および次のループに移り、実行される。
【0051】
したがって、乾燥過程が開始された後に、まず、アノード回路の水素濃度が十分に高いことを確保でき、これは水素の十分な導入および/またはいわゆる十分な(ausfuehrlich)「パージ」、ならびに水素濃度の相応の測定によって行うことができる。続いて、例えば再循環ファンのスイッチオフによって再循環をスイッチオフするか、もしくは大幅に低減することができる。それにより、セルの内部の湿気をスイッチオフ、もしくは大幅に低減することができ、カソードの乾燥によって、セルから水を効率的に除去することができる。追加の任意的な措置は、水素供給のスイッチオフもしくは低減であり得る。これは特に水素供給がスイッチオンのままである限り再循環を維持できるため、水素再循環が受動的または部分的に受動的なシステムにとって有意義である。
【0052】
水素供給が完全にスイッチオフされ、アノード圧が特定の閾値を下回るか、または特定の閾値、例えば1.1barの下規定値に例えば達し、かつ乾燥過程がまだ完了していない場合、水素供給が再びスイッチオンされるか、もしくは増加されるか、あるいは任意的に水素再循環が再び増加される。これらの措置は水素欠乏、しがってセルの劣化が起こらないか、またはその危険が少なくとも低減されることを確保するために必要であり得る。アノード圧が閾値、すなわち例えば1.4barの上規定値を超えるか、またはこれに達する場合、水素再循環もしくは水素供給を再びスイッチオフすることができる。この制御によって、カソードとの圧力差が高すぎ(例えば0.5barを超え)ないようにすることができるか、またはその危険が少なくとも低減されることを確保することもできる。
【0053】
言及されたこの動作ストラテジに代えて、水素再循環もしくは水素供給のスイッチオフおよびオンを、ループ中に、またはループとは関係なく時間ベースで行うこともできる。さらに、これをアノード回路における水素濃度の間接的または直接的検出を用いて制御することができる。さらに、水素再循環もしくは水素供給の低減もしくは増加を鋸歯状に行うことができる。
【0054】
図3は、本発明の例示的実施形態による燃料電池装置の動作方法の方法ステップのブロック図を示す。
【0055】
燃料電池装置の動作方法では、燃料電池スタックのアノード回路における所定の水素濃度の確保S1、アノード回路における水素再循環のスイッチオフS4、あるいはアノード回路における水素再循環の所定の再循環体積流量または所定の再循環体積流量未満への低減S4a、ならびに燃料電池スタックのカソードの乾燥S5が行われる。確保S1のために、水素濃度と水素濃度の規定値または規定インターバルの比較S2、アノード回路における水素濃度の少なくとも規定値または規定インターバルへの同化S3を行うことができる。
【0056】
以上において、本発明は好ましい例示的実施形態をもとにして完全に説明されたが、本発明はこれらに限定されず、様々に変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 燃料電池装置
A アノード
K カソード
DS 圧力センサ
BS 燃料電池スタック
SE 制御装置
ST 乾燥のスイッチオン
EN 乾燥の終了
V1、V2 弁
WA 水排出部
WZ 水素供給部
WZK 水素再循環回路
ZP 循環ポンプ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置(10)の動作方法であって、次の各ステップ、すなわち、
-燃料電池スタック(BS)のアノード回路において所定の水素濃度を確保する(S1)ステップと、
-前記アノード回路における水素再循環をスイッチオフする(S4)か、または前記アノード回路における前記水素再循環を所定の再循環体積流量または所定の再循環体積流量未満に低減する(S4a)ステップと、
-前記燃料電池スタック(BS)のカソードを乾燥させる(S5)ステップと
を包含する方法。
【請求項2】
前記確保する(S1)ために前記水素濃度を前記水素濃度(WK)の規定値(VW)または規定インターバルと比較する(S2)、ならびに/あるいは前記アノード回路における前記水素濃度を少なくとも前記規定値(VW)または前記規定インターバルに同化させる(S3)ことが行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料電池プロセスのスイッチオフまたはオンの前に、周囲環境チェック装置を介して、前記燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきかどうか、および/または前記燃料電池スタックのカソードの乾燥が行われるべきとする命令がユーザから受信されるかどうかが検知される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥する前記燃料電池スタック(BS)の動作の停止後に、前記燃料電池スタックの低温始動が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素再循環の前記スイッチオフまたは低減の後、あるいは水素再循環を低減するために、前記アノード回路への水素供給のスイッチオフ、あるいは前記アノード回路への水素供給の所定供給体積流量または所定供給体積流量未満への低減が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水素供給の前記スイッチオフまたは低減の後、前記アノードでの前記アノード回路における水素のアノード圧が、前記アノード圧の下規定値に達するか、または下規定値を下回るまで監視され、次に前記乾燥が完了したかどうかが検知され、前記乾燥が完了したことが検知される場合、次に前記乾燥が終了される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥がまだ完了していないことが検知される場合、前記水素供給が再びスイッチオンされるか、または増加され、その後、前記アノード圧が、前記アノード圧の上規定値を上回るか、または上規定値に達するまで監視され、次に前記水素循環が再び低減されるか、またはスイッチオフされ、前記水素供給が低減されるか、またはスイッチオフされ、前記アノード圧が、前記アノード圧の下規定値を下回るか、または前記下規定値に達するまで監視され、次に再び、前記乾燥が完了したかどうかが検知され、前記乾燥が完了したことが検知される場合、次に乾燥が中止され、前記乾燥がまだ完了していないことが検知される場合、前記水素供給が再び増加されるか、またはスイッチオンされ、前記上規定値と下規定値との間の前記アノード圧の制御が、前記乾燥が完了するまで繰り返される、請求
項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水素供給の増加またはスイッチオン直後に水素再循環も増加またはスイッチオンされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素供給および/または前記水素循環の低減および/または増加は、鋸歯パターンで行われる、請求項5から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
燃料電池装置(10)であって、
-アノード(A)およびカソード(K)を有する燃料電池スタック(BS)と、
-前記アノード(A)に水素再循環回路(WZK)と、
-前記アノードおよび/または前記水素再循環回路(WZK)に接続された水素供給部(WZ)と、
-前記カソード(K)に水排出部(WA)と、
-前記水素供給部(WZ)および/または前記水素再循環回路(WZK)および/または前記水排出部(WA)に接続され、かつ請求項1
または2に記載の方法を実行するように設定された制御装置(SE)と、を備える燃料電池装置。
【請求項11】
前記アノード(A)に圧力センサを備え、制御装置によって前記圧力センサを用いてアノード圧を検知可能であり、前記アノード圧を前記アノード圧の上規定値および/または下規定値と比較可能である、請求項10に記載の燃料電池装置(10)。
【国際調査報告】