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▶ ブレスイージー カンパニー ディー/ビー/エー ミスト セラピューティクスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ニコチン送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/06 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
A61M15/06 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539437
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 US2022082580
(87)【国際公開番号】W WO2023130041
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/294,498
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/332,112
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/388,509
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/418,442
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524242726
【氏名又は名称】ブレスイージー カンパニー ディー/ビー/エー ミスト セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】エゼリンス エリック エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュースター ジェフェリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】シグナー ダルトン ヴイ.
(57)【要約】
ニコチン送達装置およびシステム、具体的には禁煙システムが、本開示により提供される。そのような装置およびシステムは、喫煙を模倣する吸入のための、ニコチン含有エアロゾルを生成する。装置は、送達されるニコチンの量を制御して、使用者へ送達されるニコチンの量を経時的に漸減させるように、適応可能である。患者が禁煙するための治療方法もまた、開示される。装置、システム、および方法はまた、オピオイド(例えば、フェンタニル)など本明細書において開示される他の薬物を送達するためにも、使用されうる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
禁煙吸入器であって:
a.コントローラ
b.前記吸入器へ分離可能に取り付けられるように構成される、カートリッジ
を備え、
前記カートリッジは:
(i)エアロゾル化器
(ii)医薬品有効成分を含む製剤を収容する、製剤チャンバ;
(iii)気泡除去器;
および
(iv)フィルタ;
を備える、
禁煙吸入器。
【請求項2】
請求項1に記載された吸入器であって、
ポンプモーターアセンブリをさらに備え、
および
前記カートリッジは、ポンプヘッドアセンブリを備える、
吸入器。
【請求項3】
請求項2に記載された吸入器であって、
前記ポンプモーターアセンブリは、以下のうちの1または複数から選択される要素:
a.モーター;
b.ギヤヘッド;
c.偏心カム;
d.少なくとも1のローラーを円運動させる、ローター;
および
e.位置合わせ(alignment)カム;
を備える、
吸入器。
【請求項4】
請求項2または3のいずれか一項に記載された吸入器であって、
前記ポンプヘッドアセンブリは、以下のうちの1または複数から選択される要素:
a.支持面;
b.リング;
および
c.チューブの一部;
を備える、
吸入器。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器であって、
再循環システムをさらに備える、
吸入器。
【請求項6】
請求項5に記載された吸入器であって、
前記再循環システムは、以下のうちの1または複数を備えるループ:
a.気泡除去器;
b.気泡除去器チャンバ;
c.ポケット;
d.エアロゾル化器;
e.フィルタ;
および
f.ポンプヘッド;
を備える、
吸入器。
【請求項7】
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器であって、
前記カートリッジは、前記製剤から細菌を除去できるフィルタを備える、
吸入器。
【請求項8】
請求項7に記載された吸入器であって、
前記フィルタは、5μm以下の孔径を有する、
吸入器。
【請求項9】
請求項8に記載された吸入器であって、
前記孔径は、2μm以下である、
吸入器。
【請求項10】
請求項9に記載された吸入器であって、
前記孔径は、1μm以下である、
吸入器。
【請求項11】
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器であって、
前記医薬品有効成分が、習慣性物質である;および/または慢性使用者が耐性を獲得する物質である、
吸入器。
【請求項12】
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器であって、
送達される前記医薬品有効成分の量は、前記コントローラによって繰り返し調整される、
吸入器。
【請求項13】
請求項12に記載された吸入器であって、
前記調整には、以下のうちの1または複数:
a.送達される医薬品有効成分の量の増加;
b.送達される医薬品有効成分の量の減少;
および
c.送達される医薬品有効成分の増加の期間に続く、送達される医薬品有効成分の減少の期間;
を含む、
吸入器。
【請求項14】
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器であって、
ここで医薬品有効成分は:
a.ニコチン;
b.フェンタニル;
c.トリプタン;
d.リスペリドン;
e.インスリン;
f.エピネフリン;
g.アトロピン
h.シプロフロキサシン;
i.メトカルバモール;
j.ベンゾジアゼピン
k.オピオイド;
l.PDE5阻害剤;
m.グルカゴン様ペプチド;
n.けいれんの治療薬;
o.不眠症の治療薬;
p.血管拡張剤;
q.喘息の治療薬;
r.COPDの治療薬;
s.不安症の治療薬;
t.PTSDの治療薬;
u.うつ病の治療薬;
v.狭心症の治療薬;
w.低血糖症の治療薬;
x.骨粗鬆症の治療薬;
y.片頭痛の治療薬;
z.吐き気の治療薬;
aa.アナフィラキシーの治療薬;
bb.中毒の治療薬;
または
cc.性的機能不全の治療薬;
から選択される、
吸入器。
【請求項15】
依存症の治療方法であって、
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器の使用を含む、
方法。
【請求項16】
離脱症状の治療方法であって、
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器の使用を含む、
方法。
【請求項17】
以下のうちの1つの使用をやめる人を支援する方法であって:
a.紙巻きタバコ(cigarettes)を吸うこと;
b.ニコチンを電子喫煙すること(vaping);
および
c.タバコ(tobacco)を噛むこと;
先行する請求項のいずれかに記載された吸入器の使用による、
方法。
【請求項18】
禁煙システムであって:
a.有効成分を含む、第1の製剤;
b.第2の製剤;
c.エアロゾル化器;
d.前記エアロゾル化器へ送達される前記第1の製剤および前記第2の製剤の量を、制御するための機構;
を含み、
ここで機構は、少なくとも1のポンプ、コントローラと回路基板とエネルギー貯蔵要素とを備える耐久性システム、を備える;
禁煙システム。
【請求項19】
請求項18に記載されたシステムであって、
前記耐久性システムへ取り外し可能に取り付けられるカートリッジを、さらに含み、
前記カートリッジは:
a.前記第1の製剤を収容する、第1の製剤容器;
b.前記第2の製剤を収容する、第2の製剤容器;
c.エアロゾル化器;
および
d.前記第1の製剤および第2の製剤、またはそれらのいくつかの組合せの、前記エアロゾル化器への送達を促進するための、再循環システム;
を備え、
前記耐久性システムは、前記エアロゾル化器へ送達される第1の製剤および第2の製剤の量を制御するための機構を、さらに備える、
システム。
【請求項20】
請求項18~19のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記エアロゾル化器へ送達される前記第1の製剤および前記第2の製剤の量を制御するための前記機構は、前記禁煙システムの前記耐久性システム内に完全に収容され;
および
前記第1の製剤および前記第2の製剤は、前記カートリッジ内に完全に収容され、前記耐久性システムの構成要素に接触しない、
システム。
【請求項21】
請求項18~20のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記エアロゾル化器へ送達される前記第1の製剤および前記第2の製剤の量を制御するための前記機構は、ポンプである、
システム。
【請求項22】
請求項21に記載されたシステムであって、
前記ポンプは、容積式ポンプである、
システム。
【請求項23】
請求項18~22のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記第1の製剤および前記第2の製剤の前記エアロゾル化器への輸送を促進し、前記カートリッジ内に完全に収容される、再循環システムをさらに備える、
システム。
【請求項24】
請求項23に記載されたシステムであって、
前記再循環システムは:
a.前記第1の製剤を収容する、第1の製剤容器;
b.前記第2の製剤を収容する、第2の製剤容器;
c.前記第1の製剤と前記第2の製剤とを混合製剤に配合する方法;
d.気泡除去器要素;
e.エアロゾル化器;
および
f.前記再循環システムの要素へ、要素を通って、要素間に、流体が流れることを可能にするための手段;
を含む、
システム。
【請求項25】
請求項24に記載されたシステムであって、
前記第1の製剤と前記第2の製剤とを配合する前記方法は、前記製剤を前記エアロゾル化器へ輸送する、結合型中央チューブである、
システム。
【請求項26】
請求項24に記載されたシステムであって、
前記気泡除去器要素は:
a.前記気泡除去器要素を通って液体が流れることを可能にする小さな流路を有する、筺体;
b.疎水性多孔質材料;
および
c.および前記液体を前記疎水性多孔質材料へ曝露する、前記筐体を通る経路;
を備える、
システム。
【請求項27】
請求項26に記載されたシステムであって、
前記疎水性多孔質材料は、焼結PTFEである、
システム。
【請求項28】
請求項18に記載されたシステムであって、
前記エアロゾル化器は、孔の配列を有する基板であって、ピエゾが前記基板の片面または両面に接着されている、
システム。
【請求項29】
請求項24に記載されたシステムであって、
前記再循環システムの要素へ、要素を通って、要素間に、流体が流れることを可能にするための前記手段は、生体適合性チューブである、
システム。
【請求項30】
請求項24に記載されたシステムであって、
前記再循環システムの要素として、除菌フィルタをさらに含む、
システム。
【請求項31】
請求項30に記載されたシステムであって、
前記除菌フィルタは、前記エアロゾル化器の上流に配置され、
前記エアロゾル化器へ曝露される全ての製剤は、混合されたものもそうでないものも、前記エアロゾル化器に到達する前に前記除菌フィルタを通って流れる、
システム。
【請求項32】
請求項18~31のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記第1の製剤は、ニコチン遊離塩基またはその薬学的に許容される塩を含む、水性製剤であり;および前記第2の製剤は、有効成分を含まない、
システム。
【請求項33】
請求項18~31のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記第1の製剤は、ニコチン遊離塩基またはその薬学的に許容される塩を含む、エタノール製剤であり;および前記第2の製剤は、有効成分を含まない、
システム。
【請求項34】
請求項32~33のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここでニコチンの形態が、酒石酸水素ニコチン(nicotine bitartrate)である、
システム。
【請求項35】
請求項18に記載されたシステムであって、
ここで:
a.前記第1の製剤は、少なくとも1の柔軟な壁を有する第1の製剤容器内に収容され;
b.前記第2の製剤は、少なくとも1の柔軟な壁を有する第2の製剤チャンバ内に収容され;
c.前記柔軟な壁は、以下のうちの少なくとも1つ:
i.ポリエチレン層;
ii.ナイロン層;
iii.アルミニウム層;
および
iv.マイラーまたはアルミ蒸着マイラー(aluminized mylar)層;
を含む;
システム。
【請求項36】
請求項35に記載されたシステムであって、
第1の製剤チャンバおよび前記第2の製剤チャンバの構造は、完全に柔軟である、
システム。
【請求項37】
請求項24に記載されたシステムであって、
前記再循環システムの一部として、少なくとも1のバルブをさらに含む、
システム。
【請求項38】
請求項37に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1のバルブは、前記混合製剤中の有効成分の適正濃度を達成するために、製剤チャンバの片方または両方からの流れを完全にまたは部分的に制限するように配置されてもよい、
システム。
【請求項39】
請求項18~38のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、送達される前記第1の製剤および前記第2の製剤の量の制御には、以下のうちの少なくとも1つ:
a.送達される第1の製剤の量を減少させること;
b.送達される第2の製剤の量を増加させること;
および
c.本質的に同時に、送達される前記第1の製剤の量を減少させること、および送達される前記第2の製剤の量を増加させること;
を含み、
ここで、送達される混合製剤の総体積は、本質的に一定のままである、
システム。
【請求項40】
請求項18~39のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、送達される前記第1の製剤および前記第2の製剤の量の制御は、少なくとも部分的には、以下のうちの1または複数:
a.パフ(puff)の回数;
b.投与事象の回数;
c.前記システムを使用する日数;
d.パフの持続時間;
e.喫煙歴;
および
f.予め決められた減少率;
に基づく、
システム。
【請求項41】
請求項24に記載されたシステムであって、
エアロゾルとして送達されるニコチンの濃度を調節するための手段を、さらに含み;
前記手段は、製剤チャンバ、ポンプ、バルブ、計算システム、およびモバイルアプリケーションを含む;
システム。
【請求項42】
請求項24に記載されたシステムであって、
ここで、混合製剤のニコチン濃度は、前記バルブ(複数可)を調整することによって調節される、
システム。
【請求項43】
請求項41~42のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、ニコチン初濃度は、使用者のニコチン依存症のレベルの尺度を確認するための使用者による前記モバイルアプリケーションへの能動入力と、前記使用者の装置使用法を監視する装置から学習される受動入力との、一連によって決定され、それによって前記依存症を管理するために必要な開始濃度を決定する、
システム。
【請求項44】
請求項41~43のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記使用者へ送達される前記混合製剤中のニコチンの濃度は、ニコチン含有製剤の流速を比例的に減少させることにより段階的に減少される一方、非ニコチン含有製剤の流速を増加させて、送達される製剤の総体積が一定のままであるようにする、
システム。
【請求項45】
請求項44に記載されたシステムであって、
ここで、ニコチン製剤濃度の調節は、前記計算システムの手段によって自動的に起こる、
システム。
【請求項46】
請求項44~45のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記計算システムは、前記ニコチン初濃度と禁煙試行時間の長さとを入力として利用するアルゴリズムを実行し、およびその期間にわたるニコチン製剤濃度の段階的な減少を決定しかつ実行し;
ここで、その期間の終わりに対応する前記ニコチン製剤濃度は、ゼロであり、
および
前記アルゴリズムは、前記ニコチン濃度または期間の両方を、前記使用者の装置使用法の監視に応じて調整することができる;
システム。
【請求項47】
請求項44~46のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記計算システムは、毎日適切なニコチン濃度を予め決定しかつ割り当て;
さらにここで、実際のニコチン濃度は、ニコチン含有製剤と非ニコチン含有製剤との過去のパルスの比から計算され、
および
これらの濃度は、ポンピングシステムの次の動作を決定するために比較される;
システム。
【請求項48】
請求項47に記載されたシステムであって、
前記ポンピングシステムの次の動作は、ニコチンまたは非ニコチン含有製剤のいずれかをポンプして、実際のニコチン濃度と予め決められたニコチン濃度とを平衡化することである、
システム。
【請求項49】
請求項44~48のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記アルゴリズムは、毎回の投与事象の完了時に実行する、
システム。
【請求項50】
請求項44~49のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記アルゴリズムは、毎回のパフの完了時に実行する、
システム。
【請求項51】
先行する請求項のいずれかに記載されたシステムの使用を含む、禁煙方法。
【請求項52】
先行する請求項のいずれかに記載されたシステムの吸入装置を備える、吸入装置。
【請求項53】
先行する請求項のいずれかに記載された混合された第1および第2の製剤を含む、製剤。
【請求項54】
先行する請求項のいずれかに記載されたエアロゾル化システムを含む、エアロゾルを作成する方法。
【請求項55】
先行する請求項のいずれか一項に記載された方法またはエアロゾル化システムであって、
前記カートリッジは、前記使用者がそれを通して吸入する気道を備え、
および
前記気道を通る気流は、複数のノズル孔のエアロゾル発生の平均方向に対して実質的に垂直な方向に流れる、
方法またはエアロゾル化システム。
【請求項56】
禁煙システムであって:
a.有効成分を含む、第1の製剤;
b.第2の製剤;
c.エアロゾル化器;
d.前記エアロゾル化器へ送達される前記第1の製剤および前記第2の製剤の量を、制御するための機構;
ここで前記機構は、少なくとも1のマイクロ流体ポンプを備える;
および
e.コントローラ、回路基板、およびエネルギー貯蔵要素を備える筐体;
を含む、
禁煙システム。
【請求項57】
請求項56に記載されたシステムであって、
前記筐体へ取り外し可能に取り付けられるカートリッジを、さらに含み、
前記カートリッジは、前記第1の製剤を収容する第1の製剤チャンバと、前記第2の製剤を収容する第2の製剤チャンバとを備える、密閉容器を有する、
システム。
【請求項58】
請求項57に記載されたシステムであって、
前記有効成分は、ニコチン遊離塩基またはその薬学的に許容される塩を含む、
システム。
【請求項59】
先行する請求項のいずれかに記載されたシステムであって、
前記第1の製剤は水性製剤であって、その有効成分はニコチンの塩形態であり、および前記第2の製剤は水からなる、
システム。
【請求項60】
請求項58~59のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記ニコチンは酒石酸水素ニコチンである、
システム。
【請求項61】
請求項56~60のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記第1の製剤はUSPニコチンを含むエタノール製剤であり、および前記第2の製剤はエタノールを含む、
システム。
【請求項62】
請求項56~61のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記第2の製剤は有効成分を含まない、
システム。
【請求項63】
請求項56~62のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、制御には、以下のうちの1または複数:
送達される前記第1の製剤の量を減少させること;
送達される前記第2の製剤の量を増加させること;
および
本質的に同時に、送達される前記第1の製剤の量を減少させること、および送達される前記第2の製剤の量を増加させること;
を含む、
システム。
【請求項64】
請求項56~63のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記密閉容器は、少なくとも1の容器を取り囲み、
および
前記少なくとも1の容器は、柔軟な壁を備える、
システム。
【請求項65】
請求項57~64のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記容器は、突き刺し可能な隔壁をさらに備え、
ノンコアリングニードル(non-coring needle)が、前記耐久性システムの外へ延び、
および
前記ニードルは、前記カートリッジが前記耐久性システムへ取り付けられるときに、前記隔壁を突き刺すように構成される、
システム。
【請求項66】
請求項64~65のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記柔軟な壁は多層ラミネートであり、
および
前記層の少なくとも1つは、以下のうちの少なくとも1つ:
a.ポリエチレン;
b.ナイロン;
c.マイラーまたはアルミ蒸着マイラー;
および
d.アルミニウム;
を含む、
システム。
【請求項67】
請求項56~66のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記容器の構造全体が柔軟である、
システム。
【請求項68】
請求項56~67のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、制御は、少なくとも部分的には、以下のうちの1または複数:
a.パフの回数;
b.投与事象の回数;
c.喫煙歴;
d.パフの持続時間;
および
e.予め決められた減少率;
に基づく、
システム。
【請求項69】
請求項56~68のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記機構は、前記第1の製剤を、以下から選択される要素内へポンプする、第1のポンプを備え:
a.チャンバ;
b.流路;
c.ウィッキング(wicking)要素;
および/または
d.チャンバまたは流路内のウィッキング要素;
ここで、第2のポンプは、前記第2の製剤を同じ要素内へポンプし、
および
前記第1の製剤および前記第2の製剤は、前記要素内で混合される、
システム。
【請求項70】
請求項56~69のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記システムは、エアロゾル化器具をさらに備え、
前記エアロゾル化器具は:
a.孔の配列を有する基板;
b.その片面が前記基板へ強固に取り付けられ、そのもう片面が前記筺体に取り付けられる、ピエゾ;
および
c.前記孔の配列の第1の面と接触する、ウィッキング要素;
を備える、
システム。
【請求項71】
請求項56~70のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジの前記密閉容器内の各容器は、前記カートリッジから前記耐久性システム内へ液体が流れるようにする接続点によって特徴付けられる、
システム。
【請求項72】
請求項71に記載されたシステムであって、
前記接続点は、対応する容器上の隔壁を突き刺す、前記装置の前記耐久性システム上の中空針によって特徴付けられ、
前記中空針は:
a.前記針の周りにらせん状に巻かれる、バネ;
および
b.前記バネの上部へ接着され、前記針に沿って動くことができる、シリコーン栓;
によってさらに特徴付けられる、
システム。
【請求項73】
請求項72に記載されたシステムであって、
前記シリコーン栓は、空気の侵入または汚染を防ぐために、その圧縮されていない静止位置において前記中空針の上部を覆って配置される、
システム。
【請求項74】
請求項72~73のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジが前記耐久性システムへ取り付けられる際に、前記シリコーン栓が前記容器上の前記隔壁に接触し、前記バネが圧縮され、前記シリコーン栓が前記中空針の長さを滑り落ち、前記中空針が前記シリコーン栓を通って突出して前記隔壁を貫通する、
システム。
【請求項75】
請求項72~74のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジが前記装置の前記耐久性システムから取り外される際に、前記バネは圧縮が解け、前記シリコーン栓が前記中空針の上部を覆うその自然な静止位置へ戻る、
システム。
【請求項76】
請求項56~75のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、第1のマイクロ流体ポンプは、ニコチン含有製剤を混合チャンバへ移送し、および第2のマイクロ流体ポンプは、非ニコチン含有製剤を前記混合チャンバへ移送する、
システム。
【請求項77】
請求項76に記載されたシステムであって、
前記2つのマイクロ流体ポンプは、コントローラシステムによって制御され、
ここで、各マイクロ流体ポンプは、もう一方とは異なる独立した流速を有しうる、
システム。
【請求項78】
請求項59~77のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、1つのマイクロ流体ポンプは、2つの流路へ接続され、
前記流路は、2つの製剤チャンバへ接続され、
前記マイクロ流体ポンプは、有効ニコチン含有製剤と非ニコチン含有製剤の両方を前記混合チャンバへポンプする、
システム。
【請求項79】
請求項76~78のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記混合チャンバは、前記エアロゾル化器と直接流体接触する製剤チャンバである、
システム。
【請求項80】
請求項79に記載されたシステムであって、
ここで、1つのバルブは、前記マイクロ流体ポンプがどの製剤チャンバからポンプするかを決定するために使用される、
システム。
【請求項81】
請求項79に記載されたシステムであって、
ここで、2つのバルブは、各製剤のために1つずつ、前記マイクロ流体ポンプがどの製剤からポンプするかを決定するために使用される、
システム。
【請求項82】
請求項80~81のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記バルブ(複数可)は、前記製剤チャンバへ至る前記流路を部分的にまたは完全に妨害して、製剤の適切な混合を決定しうる、
システム。
【請求項83】
請求項80~82のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記バルブは、前記装置筐体内に配置される前記装置の回路によって制御される、
システム。
【請求項84】
請求項69~83のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記混合チャンバは、混合要素として圧電アクチュエータを備える、
システム。
【請求項85】
請求項69~84のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記混合チャンバは、圧電アクチュエータとして特徴付けられない混合要素を備える、
システム。
【請求項86】
請求項56~85のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記エアロゾル化器は、前記圧電アクチュエータの振動毎に、流体ジェットを生成および中断して、エアロゾル液滴を生成する、
システム。
【請求項87】
請求項69~86のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記混合チャンバからの液体製剤は、前記混合チャンバまたは前記混合チャンバから延びる流体経路と、前記エアロゾル化器の第1の面との両方と、流体接触するウィッキング材料によって、前記エアロゾル化器へ供給される、
システム。
【請求項88】
請求項69~87のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記混合チャンバからの前記液体製剤は、第3のマイクロ流体ポンプによって、前記エアロゾル化器または前記ウィッキング材料へ供給される、
システム。
【請求項89】
請求項69~88に記載されたシステムであって、
前記混合チャンバからの前記液体製剤は、マイクロ流体ポンプとウィッキング材料との組合せによって、前記エアロゾル化器へ供給され、
前記マイクロ流体ポンプは、前記混合チャンバから前記ウィッキング材料へ液体を移送し、
および
前記ウィッキング材料は、前記エアロゾル化器の前記第1の面と常に接触する、
システム。
【請求項90】
エアロゾルとして送達されるニコチン遊離塩基またはその薬学的に許容される塩の濃度を調節するためのシステムであって:
2つのマイクロ流体ポンプ、混合チャンバ、計算システム、およびモバイルアプリケーション
を備える、
システム。
【請求項91】
請求項90に記載されたシステムであって、
ここで、混合製剤のニコチン濃度は、各マイクロ流体ポンプの流速を調整することによって調節される、
システム。
【請求項92】
エアロゾルとして送達されるニコチン遊離塩基またはその薬学的に許容される塩の濃度を調節するためのシステムであって:
1つのマイクロ流体ポンプ、混合チャンバ、少なくとも1つのバルブ、計算システム、およびモバイルアプリケーション
を備える、
システム。
【請求項93】
請求項92に記載されたシステムであって、
ここで、混合製剤のニコチン濃度は、前記バルブ(複数可)を調整することによって調節される、
システム。
【請求項94】
請求項90~94のいずれか一項に記載されたシステムであって、
ここで、ニコチン初濃度は、使用者のニコチン依存症のレベルの尺度を確認するための前記モバイルアプリケーションへの能動入力、および、前記使用者の装置使用法を監視する装置から学習される受動入力の、一連によって決定されて、その依存症を管理するために必要な開始濃度を決定する、
システム。
【請求項95】
請求項90~95のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記使用者へ送達される前記混合製剤中のニコチンの濃度は、ニコチン含有製剤の流速を比例的に減少させることにより段階的に減少される一方、非ニコチン含有製剤の流速を増加させて、送達される製剤の総体積が一定のままであるようにする、
システム。
【請求項96】
請求項95に記載されたシステムであって、
ここで、ニコチン製剤濃度の調節は、前記計算システムの手段によって自動的に起こる、
システム。
【請求項97】
請求項95~96のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記計算システムは、前記ニコチン初濃度と禁煙試行時間の長さとを入力として利用するアルゴリズムを実行し、およびその期間にわたるニコチン製剤濃度の段階的な減少を決定しかつ実行し;
ここで、その期間の終わりに対応する前記ニコチン製剤濃度は、ゼロであり、
さらに、前記アルゴリズムは、前記ニコチン製剤濃度または期間の両方を、前記使用者の装置使用法の監視に応じて調整することができる;
システム。
【請求項98】
請求項95~97のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記計算システムは、毎日適切なニコチン濃度を予め決定しかつ割り当て;
さらにここで、実際のニコチン濃度は、ニコチン含有製剤と非ニコチン含有製剤との過去のパルスの比から計算され、
および
これらの濃度は、ポンピングシステムの次の動作を決定するために比較される;
システム。
【請求項99】
請求項98に記載されたシステムであって、
前記ポンピングシステムの次の動作は、ニコチンまたは非ニコチン含有製剤のいずれかをポンプして、実際のニコチン濃度と予め決められたニコチン濃度とを平衡化することである、
システム。
【請求項100】
請求項97~98のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記アルゴリズムは、毎回の投与事象の完了時に実行する、
システム。
【請求項101】
請求項97~99のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記アルゴリズムは、毎回のパフの完了時に実行する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2021年12月29日に出願された米国仮出願通し番号63/294498;2022年4月18日に出願された63/332112;2022年7月12日に出願された63/388509;および2022年10月21日に出願された63/418442の優先権を主張し、これらの出願は、法律で認められる最大限の範囲まで、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、吸入薬送達のための方法および装置に関連する。好ましい装置は、喫煙と同様の体験を創り出す吸入システムであり、ニコチン含有エアロゾルを形成するためのノズルの配列を有する装置を含むが、これらに限定されない。好ましくは、吸入システムは、予め決められた時間にわたって量を実質的にゼロにまで減少させることによって、送達されるニコチンの量を制御する。
【背景技術】
【0003】
本開示は一般に、禁煙を、および、タバコ(tobacco)および電子タバコ(e-cigarette)依存症の治療および管理を、促進するための装置、システム、および方法に関連する。紙巻きタバコ(cigarettes)を介したタバコ依存症は、米国内の34.2百万人に直接影響を及ぼし、480000人を超える予防可能な死亡につながり、米国経済に毎年8910億ドルを超える損害を与えている。タバコ依存症は慢性疾患であり、様々な薬剤および方法が、この疾患を治療するために試みられてきた。現在、タバコ依存症の治療のためにFDAが承認している薬品は7タイプあり:ニコチン置換療法(NRT)ガム、トローチ、パッチ、口腔吸入器(buccal inhaler)、および鼻腔スプレー、そして処方薬のバレニクリンおよびブプロピオンである。
【0004】
喫煙者のタバコ依存症を管理するために最も一般的に使用される方法はNRTであり、その製品クラスの中で最も一般的に使用される薬品はNRTガムである。しかしながら、この製品は禁断の開始から1年での失敗率が91%を超えており、より高い有効性を持つ新たな薬物療法の必要性を明確に強調している
(https://health.gov/healthypeople/objectives-and-data/browse-objectives/tobacco-use/increase-successful-quit-attempts-adults-who-smoke-tu-14参照)。
【0005】
FDAが承認していない製品、例えば、熱を利用して蒸気を形成しそれがエアロゾルに凝縮する、電子タバコおよび電子喫煙(vaping)装置などは、喫煙置換装置として入手可能であるが、禁煙製品としての使用は承認されていない。入手可能なデータによれば、電子タバコ使用者の50%超は紙巻きタバコも吸うことが示唆されており、彼らのタバコ依存症からの脱却を助けるよりむしろ、有害なタバコ燃焼製品への彼らの曝露を増やしている。電子タバコは、米国においてタバコ依存症の治療としてのそれらの使用を促進するための、十分に良好な安全性プロファイルを有さないが、これはエアロゾルの形成における熱の使用が、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを含む発癌性化合物を生成することが、知られているためである。従って、当該技術分野において、経口薬および電子タバコの欠点を回避する、禁煙治療として使用するための安全かつ効果的な吸入剤が、必要とされる。
【0006】
水性吸入溶液は、多くの望ましい特性を有する。既存の水性吸入システムのほとんどは単回投与であり、使用者は製剤をバイアルから容器内へ注ぎ、その後装置を通して数分間呼吸して服用し、続いて広範な洗浄手順が行われる。これらの製品は、必要なときにすぐに利用できることが求められる用途、例えば痛みまたは渇望には、有用ではない。唯一のシステムであるレスピマット吸入器(Boehringer Ingelheim)は、充填または洗浄なしで、複数回用量を送達する。しかしながら、レスピマットは全機械式吸入器であるため、用量制御、使用法監視などのような機能を行うことはできない。従って、送達用量を制御する能力を有する、使いやすい複数回投与の水性吸入システムが、必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、禁煙療法に向けられ、より具体的には、以下のうちの少なくとも1を備える、禁煙システムに向けられる:(a)携帯型禁煙装置;(b)装置を制御するために装置内に収容される、ファームウェア;(c)製剤容器;および(d)コンパニオンアプリケーション。一実施形態において、システムは、喫煙と同様の患者体験を創り出し、投与されるニコチンの量を制御して、予め決められた時間にわたって、例えば約10~16週間、約13週間、約20~32週間、または約26週間、または約2か月~4か月、約3か月、約5~7か月、約6か月にわたって、実質的にゼロにまで減少させる。
【0008】
本開示は、ある実施形態において、以下を備える禁煙吸入器を提供し:コントローラを備える、吸入器の耐久性部分(またはシステムまたは要素)、および吸入器の耐久性部分へ分離可能に取り付けられるように構成される、複数回投与カートリッジ;ここで、カートリッジは以下を備える:(a)エアロゾル化器;(b)医薬品有効成分を含む製剤を収容する、製剤チャンバ;(c)気泡除去器;および(d)フィルタ。ある態様において、吸入器の耐久性部分は、ポンプモーターアセンブリをさらに備え、およびカートリッジは、ポンプヘッドアセンブリを備える。
【0009】
一実施形態において、ポンプモーターアセンブリは、以下のうちの1または複数から選択される要素を備える:モーター;ギヤヘッド;偏心要素;少なくとも1のローラーを円運動させる、ローター;および位置合わせ(alignment)カム。ポンプヘッドアセンブリは、以下のうちの1または複数から選択される要素を備えうる:支持面;リング;およびチューブの一部。吸入器は、以下から選択される1または複数の要素を備える再循環システムを、さらに備えうる:気泡除去器;気泡除去器チャンバ;ポケット;エアロゾル化器;フィルタ;およびポンプヘッド。
【0010】
別の実施形態において、カートリッジは、製剤から細菌を除去できるフィルタを備える。そのようなフィルタは、約5μm以下、または約2μm以下、または約1μm以下の孔径を有しうる。
【0011】
本開示は、ある態様において、複数回用量の水性製剤、例えば1または複数の医薬品有効成分の溶液または懸濁液を収容する、吸入器を提供する。
【0012】
本開示はまた、ある態様において、医薬品有効成分が、習慣性物質である;および/または慢性使用者が耐性を獲得する物質であることを提供する。一実施形態において、送達される医薬品有効成分(API)の量は、コントローラによって繰り返し調整され、その調整には、以下のうちの1または複数を含む:(a)送達される医薬品有効成分の量の増加;(b)送達される医薬品有効成分の量の減少;および(c)送達される医薬品有効成分の増加の期間に続く、送達される医薬品有効成分の減少の期間。
【0013】
本開示の重要な態様は、禁煙装置、システム、製剤、および方法に関連し、ニコチンを含有する製剤を記載するが、他の医薬品有効成分も、開示されたシステムを使用して送達されうる。そのような非ニコチンAPIには、禁煙を促進するために、または喫煙または電子喫煙置換における使用のために、ニコチンを含んでも含まなくてもよい。システムは、禁煙以外の適応症において使用されることができ、ニコチン以外の有効化合物または喫煙のための他の薬物が使用されうることも、理解されよう。全身効果のための、10kDaを超える高分子量の化合物が送達されうる一方、好ましい適用には、局所または標的肺治療のための、任意の分子量の化合物を含み、および、全身効果のための、好ましくは、皮下、経皮、皮内、経口、頬、眼、または鼻を含むがこれらに限定されない他の送達経路と比較してより迅速な全身効果のための、10kDa程度以下(less than or about)、好ましくは5kDa程度以下、より好ましくは1kDa程度以下の、低分子量の化合物を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるエアロゾル装置を使用する治療適用は、経時的な用量の変化または個々の患者のための用量のパーソナライズを必要とするものである。変化には、合法または非合法の、医療用または娯楽用の、化合物の離脱症状を避けるための漸減も含みうる。変化には、オピオイド、例えばフェンタニルまたはモルヒネ、およびそれらの薬学的に許容される塩を含むがこれらに限定されない化合物の、例えば経時的な耐性の増加による、強化を含みうる。変化にはまた、患者(すなわち、自己滴定)または介護者により選択された用量も含んでもよく、例えば、知覚された痛みに基づく鎮痛薬の強さの滴定、または、測定された血糖値および/または予想される食事摂取量に基づく、インスリンまたはグルカゴン様ペプチドを含むがこれらに限定されない経口血糖降下薬の滴定である。
【0015】
非限定的な例として、フェンタニルまたはその塩は、本明細書において開示されるエアロゾル装置と共に使用されうる。一実施形態において、フェンタニルは装置から随意に吸入されるが、過剰投与を防ぐために投与間にロックアウト期間を有する。開始最大許容用量である約10~40μg/時、または約20~30μg/時、または約25μg/時は、最大で約25~100mcg/時、または約35~65mcg/時、または約50mcg/時まで、強化されうる。用量の段階的拡大は、約1週間~10週間、または2週間~5週間、または約3週間の範囲の期間にわたって、行いうる。治療の終了が望まれる場合、用量は、週あたり約2%~約25%の割合で、または週あたり約3.5%~約20%の割合で、または週あたり約5%~約15%の割合で、約ゼロまで漸減されうる。この用量の漸減は、フェンタニルなどのオピオイドの依存症および乱用を避けるために使用されうる。
【0016】
本開示はさらに、以下のうちの1または複数が可能なコンパニオンアプリケーションを提供する:禁煙装置との通信を制御すること、ここで通信は好ましくは無線であり、より好ましくはBluetoothである;禁煙装置を制御すること;禁煙装置のファームウェアを更新すること;禁煙装置により生成されたデータを表示すること;および、データおよび他の情報を、例えば使用者、介護者、または医療専門家が入力できるようにすること。
【0017】
一実施形態において、コンパニオンアプリケーションは、使用者を訓練すること、指導すること、強化すること、および報酬を与えることから選択される機能を、さらに備える。好ましくは、コンパニオンアプリケーションは、計算装置上に常駐する。計算装置は、デスクトップコンピュータなどの本質的に携帯不可能なシステムであってもよいが、しかし好ましい計算装置は携帯可能であり、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、ラップトップコンピュータ、スマートグラス、およびバーチャルリアリティシステムを含むリストから、選択される。別の実施形態において、アプリケーションはクラウドに常駐し、ユーザーインターフェースおよび禁煙装置と通信するためのシステムなどの機能は、計算装置上に常駐する。
【0018】
ある実施形態において、製剤容器は第1の製剤を収容し、好ましくは第1の製剤は、ニコチンなどの医薬品有効成分を含む。この実施形態において、製剤容器はまた第2の製剤をも収容し、好ましくは第2の製剤は、ニコチンなどの医薬品有効成分を含まない。別の実施形態において、製剤容器は単一の製剤のみを収容する。
【0019】
別の実施形態において、禁煙システムは、1または複数の製剤キャビティを備える。製剤キャビティは、全て同じ製剤を収容してもよく、または、異なる製剤を、例えば、異なる量および/または濃度のニコチンまたは他の医薬品有効成分を、収容してもよい。
【0020】
製剤容器は、少なくとも1の製剤チャンバを収容することができ、ここで製剤チャンバは、全体が容器内に収容される柔軟なバッグである。好ましくは製剤チャンバは、水密、気密であり、水蒸気バリアを包含して密封された剤形を保証する。製剤チャンバは、一実施形態において、1または複数の点で製剤容器の内面へ接着されてもよく、例えば、チャンバの側面が製剤容器の壁の内側の側面へ接着されるか、または製剤チャンバの上部が製剤容器の上部の内壁へ接着されるが、これらに限定されない。
【0021】
本開示は、マウスピースを備える構成要素の一部である製剤容器(以下、カートリッジと称する)を提供し、ここでこの構成要素は使い捨てであり、さらにこの構成要素は、使用者によって吸入される空気およびエアロゾルの流れを可能にする通路(以下、気道と称する)を有する。一実施形態において、気道は、製剤容器によってまたは1または複数の製剤容器によって、部分的にまたは本質的に完全に取り囲まれうる。別の実施形態において、気道は製剤容器に隣接して配置され、および第3の実施形態において、気道は製剤容器から部分的にまたは完全に分離される。上述した実施形態はいずれも、製剤容器(複数可)およびカートリッジの他の構成要素が1回の操作で交換されるという利点を有する。このタイプのマウスピース/製剤容器の組合せは、特許出願PCT/US2021/064426に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。任意選択で、気道入口は、吸入器を制御する耐久性部分に存在してもよく、および、同じく耐久性部分に存在し、エアロゾルの呼吸作動を可能にする機構である、気道部分に配置されてもよい。この機構は、好ましくは、耐久性部分内のコントローラによって読み取られる圧力変換器につながる、圧力タップである。
【0022】
別の実施形態において、カートリッジはさらに噴霧器を備える。噴霧器は、振動メッシュ、凝縮エアロゾル発生器、超音波ネブライザ、乾燥粉末分散器、ジェットネブライザ、渦巻型ネブライザ(swirl nebulizer)、フローブラーリング(flow blurring)噴霧器、およびフローフォーカシング(flow focusing)噴霧器から、選択されうる。好ましくは、噴霧器は、振動メッシュ噴霧器である。好ましくは、噴霧器は、気道と少なくとも1の製剤容器との間に位置する。
【0023】
本開示はまた、保管および/または使用中に製剤(複数可)と接触する全ての構成要素が、使い捨てカートリッジ内に収容され、およびエアロゾル化システムの耐久性システムの構成要素のいずれも、製剤と直接接触しないことを提供する。カートリッジは、製剤の誤用または乱用、および付随する過剰投与または中毒の可能性を制限するように、設計されることが好ましい。この理由のため、ニコチンと直接接触する構成要素、例えば混合チャンバ、チューブ、気泡除去器、フィルタ、およびエアロゾル化器などは、カートリッジ内に本質的に完全に収容されることが好ましい。
【0024】
ある実施形態において、ニコチン製剤は、ニコチンまたはニコチンの塩を含む。そのような製剤には、本質的にそのままの(neat)ニコチン、またはニコチン懸濁液、またはニコチン溶液を含むが、これらに限定されない。製剤の一実施形態は、ニコチンおよび親油性溶媒を含む。親油性溶媒は、好ましくは、エタノールなどのアルコールを含む。他の実施形態には、プロピレングリコールなどのグリコールを含むが、これらに限定されない。製剤の別の実施形態は、水を含む溶媒中の、ニコチンの塩、好ましくは酒石酸ニコチン、より好ましくは酒石酸水素ニコチン二水和物(nicotine bitartrate dihydrate)である。あるいは、製剤は、水または水とエタノールとの組合せの製剤中に溶解された、USPニコチンである。製剤はまた、様々な賦形剤、例えば界面活性剤(好ましくはTween 20またはTween 80)、安定剤、吸収促進剤、抗菌剤などを、含みうる。ある実施形態において、製剤は、ニコチンの溶解塩および水を含む。他の場合、製剤は本質的に、水などの担体とニコチンの溶解塩(例えば、酒石酸水素ニコチン二水和物)とからなる。
【0025】
一実施形態において、コンパニオンアプリケーションまたはファームウェアは、ニコチンなどの有効成分の開始用量を計算し、それは使用者のニコチン曝露および喫煙歴から選択された要因に基づいて使用者に対してパーソナライズされ、それらには1日あたりのニコチンの量、1日あたりの紙巻きタバコ数、1日あたりの箱数、喫煙される紙巻きタバコの銘柄、電子喫煙システムの1日あたりのパフ(puff)数、使用される電子喫煙システム、使用される電子喫煙流体、使用される電子喫煙流体中のニコチンの濃度、パイプ、噛みタバコ、および嗅ぎタバコ(snuff)を含むがこれらに限定されない他のタバコ製品の使用法;例えば喫煙のpack-yearsによって測定される、紙巻きタバコの生涯使用量;および、現在の渇望レベルを含む。例えば、渇望レベルは、以下によって測定されうる:Fagerstromのニコチン依存度テスト(the Fagerstrom Test for Nicotine Dependence);使用者の健康、年齢、性別、身長、体重、民族性、および遺伝的体質を含む、使用者の身体的特性;ガム、パッチ、口腔システム(buccal systems)、吸入剤、行動療法、およびソフトウェアアプリケーションを含む、他の禁煙方法の過去の使用歴;および、本明細書において開示される禁煙システムの使用者の使用法。
【0026】
別の実施形態において、有効成分の開始用量は、患者特性、例えば体重、喫煙歴、有効成分に対する耐性、年齢などに基づいて、医師により選択される。一実施形態において、有効成分の開始用量は、全ての使用者に対して同じであり、例えば、パフあたりのニコチンの開始用量は、約0.05mg以上、0.075mg以上、0.1mg以上、0.15mg以上、0.2mg以上、0.25mg以上、0.3mg以上、0.4mg以上、または0.5mg以上である。一実施形態において、システムは、送達中の吸入速度を監視し、エアロゾルを効果的に乗せることができるレベル以下に流れが低下した場合、エアロゾル化器をオフにする。使用者がより低用量を望む場合は、使用者はマウスピースを口から外して吸入を続けることができ、これは紙巻きタバコと同じである。
【0027】
ある実施形態において、システム、例えば装置のファームウェアまたはコンパニオンアプリケーションは、禁煙療法が進むにつれて、パフあたりの送達される有効成分(好ましくはニコチン)の量を調整し、および送達されるニコチンの量を減少させる。有効成分の量の調節は、使用者の喫煙歴を含む要因に基づいて、対象に対してパーソナライズされてもよく、それらには1日あたりのニコチンの量、1日あたりの紙巻きタバコ数、1日あたりの箱数、喫煙される紙巻きタバコの銘柄、喫煙される紙巻きタバコのニコチン含有量、電子喫煙システムの1日あたりのパフ数、使用される電子喫煙システム、使用される電子喫煙流体、パイプ、噛みタバコ、および嗅ぎタバコを含むがこれらに限定されない他のタバコ製品の使用法;例えば喫煙のpack-yearsによって測定される、紙巻きタバコの生涯使用量、および現在の渇望レベルを含むが、これらに限定されない。例えば、渇望レベルは、以下によって測定されうる:Fagerstromのニコチン依存度テスト;健康、年齢、性別、身長、体重、民族性、および遺伝的体質を含む、使用者の身体的特性;ガム、パッチ、口腔システム、および吸入剤を含むがこれらに限定されない、他の禁煙方法の過去の使用歴、および、本明細書において開示される禁煙システムの過去の使用歴、これには1日あたりのパフの回数、1日あたりの投与事象の回数、パフおよび投与事象の総数、現在の渇望、紙巻きタバコを使用しなかった成功報告、電子タバコを使用しなかった成功報告、過去および新たな健康問題、および前述の要因のいずれかの変化率を含むが、これらに限定されない。好ましくは、パフあたりの有効成分の量の調整は、全ての使用者に対して同じである。一実施形態において、パフあたりのニコチンの量は、使用者が予め決められた流速以上で深く吸入する場合は、制御されるが、しかしシステムの使用はそれ以外随意であり、使用者は投与事象あたり何パフでも、また1日あたり何回でも望むだけの投与事象を行いうる。
【0028】
別の実施形態において、パフあたりの用量は、送達されるニコチン濃度の制御によって調整され、この濃度は、アルゴリズムに従って調整されてもよく、ここでこのアルゴリズムは、禁煙システムを介して送達されるニコチンの用量を減少させるために、治療過程にわたって使用され、使用者へ送達されるニコチンの用量は、治療の終了時に1ミリリットルあたり0ミリグラムであるか、または本質的に0ミリグラムである。アルゴリズムの一実施形態は、各治療のための適切な用量レベルを予め決定し、ここで実際の濃度は、過去の有効パルス数と偽パルス(sham pulses)数との比によって計算され、実際の濃度は、予め決められた濃度と比較され、次いでパルスシステムは、実際の濃度と予め決められた濃度とを平衡化するために、対応するパルス数のニコチン含有または非ニコチン含有製剤をポンプする。上記の実施形態において、ファームウェアまたはコンパニオンアプリケーションは、アルゴリズムによって決定される通りに、マイクロ流体バルブ、ポンプなどを含む構成要素を制御し、ここでこの構成要素は、アルゴリズムに従ってニコチンの適切な濃度を達成するために、複数の(好ましくは2つの)製剤チャンバからの流れを可能にするように配置されうる。
【0029】
治療を通じて適切なニコチン濃度を達成するために、各用量またはパフには、実施形態に応じて、複数の(好ましくは2つの)製剤の流れを調節するためのバルブ位置が、所与の日の実際のニコチン濃度レベルと予め決められたニコチン濃度レベルとの比較に基づいて、与えられる。一実施形態において、複数の製剤の各々の流れを部分的に制限するバルブが、適切なニコチン濃度を達成するために、使用される。別の実施形態において、少なくとも1の製剤の流れを完全に遮断する一方、別の製剤の流れを可能にする、バルブが使用され、ここで本質的に2つのバルブ位置が存在し、本明細書において0および1と称され、各用量またはパフは、実施形態に応じて、所与の日の実際のニコチン濃度レベルと予め決められたニコチン濃度レベルとの比較に基づいて、0または1と関連付けられ、この流れは、治療過程を通じて、禁煙システム内のニコチンの適切な濃度を維持する。一実施形態において、2つのマイクロ流体ポンプが存在し、各ポンプはニコチン含有製剤または非ニコチン含有製剤からポンプし、ポンプの作動は前述のアルゴリズムによって支配される。例えば、ニコチンの実際の濃度が所与の日のニコチンの予め決められた濃度と比較され、実際の濃度が予め決められた濃度よりも高い場合、非ニコチンポンプが、次のポンピングサイクルのために製剤をポンプする。好ましくは、この比較は、投与事象ごとに、より好ましくはパフごとに、起こる。
【0030】
本発明のこれらのおよび他の目的、利点、および特徴は、以下にさらに詳細に記載される製剤および方法論の詳細を読めば、当業者に明らかになるであろう。本装置、製剤、過程、治療方法などの追加の実施形態は、以下の明細書、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。前述および以下の記載から理解できるように、本明細書に記載されるあらゆる特徴、および、そのような特徴の2以上のあらゆる組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本開示の範囲内に含まれる。加えて、任意の特徴または特徴の組合せは、任意の実施形態または態様から、特に除外される場合がある。追加の態様および実施形態は、特に添付の実施例および図面と合わせて考慮される場合、以下の明細書および特許請求の範囲に記載される。
【0031】
[図面の簡単な説明]
本発明は、添付の図面と合わせて読む場合に、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣例に従い、図面の様々な特徴は実寸大ではないことを強調しておく。逆に、様々な特徴の寸法は、明確さのために任意に拡大または縮小される。特許または出願書類には、カラーで描かれた図面を少なくとも1枚含む。本特許または特許出願公開のカラー図面(複数可)付き写しは、請求および必要な手数料の支払いがあれば、USPTOによって提供される。図面には以下の図が含まれる:
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示の吸入装置の、一実施形態の断面図である。
図2】本開示の一体型製剤キャビティを有するマウスピースの、一実施形態の断面図である。
図3】本開示のマウスピース、エアロゾル化システム、および流体システムの、一実施形態の断面図である。
図4】本開示のエアロゾル化システムおよび流体システムの、一実施形態の断面図である。
図5】本開示の流体システムの、一実施形態の断面図である。
図6】本開示の流体システムの、別の実施形態の断面図である。
図7】本開示の装置の、一実施形態の全体的な断面図である。
図8】本開示の耐久性システムの、一実施形態の断面図である。
図9】本開示のカートリッジの、一実施形態の断面図である。
図10a-10b】本開示のカートリッジと耐久性システム本体との間の流体接続点の、一実施形態の断面図である。
図11a-11b】本開示のカートリッジと耐久性システム本体との間の流体接続点の、代替実施形態の断面図である。
図12】本開示のカートリッジの、一実施形態の断面図である。
図13】本開示のカートリッジの、再循環システムと気泡除去器とを有する代替実施形態の断面図である。
図14】毎日調整される減量滴定投与レジメンに対する所与のアルゴリズムの、計算結果を示すグラフである。
図15図14の減量滴定投与レジメンの、誤差を示すグラフである。
図16】投与事象ごとに調整される、減量滴定投与レジメンを示すグラフである。
図17図16の減量滴定投与レジメンの、誤差を示すグラフである。
図18】本発明のカートリッジの、一体型フィルタを有する一実施形態の断面図である。
図19a】本開示の分離可能なポンプモーターおよびポンプヘッドの、カートリッジを耐久性部分へ取り付ける前の、一実施形態の断面図である。
図19b】カートリッジを耐久性部分へ取り付ける最中の、図19aの実施形態の断面図である。
図19c】カートリッジを耐久性部分へ取り付けた後の、図19aの実施形態の断面図である。
図20a】本開示の気泡除去器の、一実施形態の断面図である。
図20b図20aの気泡除去器の、等角図である。
図21図12の実施形態を使用して生成されたエアロゾルの、放出用量均一性の測定値を示すグラフである。
図22図13の実施形態を使用した、2週間にわたる平均エアロゾル化体積のグラフプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
様々な態様および実施形態が、これから本明細書において十分に説明される。しかしながら、これらの態様および実施形態は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、限定的に解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本主題の範囲を当業者へ十分に伝えるように提供される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上述か下述かを問わず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
値の範囲が提供される場合、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その範囲の上限と下限の間に、下限の単位の10分の1までの各中間値もまた、具体的に開示されていると理解される。記載された範囲内の任意の記載値または中間値と、その記載された範囲内の任意の他の記載値または中間値との間の各小範囲は、本発明に包含される。これらの小範囲の上限および下限は、独立して範囲内に含まれまたは除外されてもよく、および、小範囲内にどちらの限界値も含まれないまたは両方の限界値が含まれる各範囲もまた、記載された範囲内の特に除外される限界値を除き、本発明に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界値の一方または両方を除いた範囲もまた、本発明に含まれる。
【0035】
本明細書において考察される刊行物は、本出願の出願日以前の開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなる部分も、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利を有しないことを認めるものとして、解釈されるべきではない。さらに、提供された出版日は、実際の出版日と異なるかもしれず、独立に確認される必要がありうる。
【0036】
[A.定義]
別段に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと、同じ意味を有する。本明細書において記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実践または試験において使用されうるが、好ましい方法および材料がこれから記載される。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、「製剤(a formulation)」への言及は、1または複数のそのような製剤を含み、「方法(the method)」への言及は、1または複数の方法および当業者に公知のその等価物への言及を含み、以下同様である。さらに、穴のような領域の大きさが、ある直径を有すると言及される場合、これは円形ではないが特定の直径の円に相当する面積を有する、他の断面形状を包含することが、理解されるであろう。
【0038】
約(about)またはおよそ(approximately): 一般に、記載された範囲の上下の変動は、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するために、使用されうる。本明細書において使用される、数値に言及する場合の「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、開示される主題が最も密接に関連する技術分野、または問題となる範囲または要素に関連する技術分野における当業者にとって、その平易かつ通常の意味を有するものとする。厳密な数値境界からの広がりの量は、多くの要因に依存する。例えば、考慮されうる要因の一部には、要素の重要度、および/または所与の変動量が特許請求の対象の性能に及ぼす影響、および当業者に公知の他の考慮事項を含む。本明細書において使用される、異なる数値に対する異なる有効桁数の使用は、「約」または「およそ」という語の使用が、特定の数値または範囲を広げる役割をどのように果たすかを、制限することを意味しない。また、範囲の開示は、最小値と最大値の間の全ての値に加えて、「約」または「およそ」という用語の使用によって与えられる範囲の広がりを含む、連続的な範囲として意図される。その結果、本明細書における値の範囲の詳述は、範囲内に入る各個別の値に個別に言及する略記法としての役割を果たすことが単に意図され、各個別の値は、本明細書において個別に詳述されるかのように、本明細書に組み込まれる。
【0039】
随意に(ad libitum): 使用者の好みに従って投与される。
【0040】
エアロゾルヘッドキャビティ(aerosol head cavity): 空気、製剤、吸収材、または気泡除去器のうちの1または複数を収容する、カートリッジ内の空洞。
【0041】
無菌フィルタ(aseptic filter): 製剤から微生物を除去するために使用される、フィルタ。好ましいフィルタは、約0.22μm、0.2μm、または0.1μmから選択される孔径を有する。
【0042】
噴霧器(atomizer): エアロゾルを発生させる、本発明の装置、好ましくはカートリッジの構成要素。好ましくは、噴霧器は、振動メッシュ噴霧器である。
【0043】
担体(carrier): その中に医薬品有効成分が懸濁され、または好ましくは溶解される、液体、好ましくは水。
【0044】
カートリッジ(cartridge)、使い捨て(disposable)など: 製剤、および、製剤チャンバ、製剤キャビティ、およびエアロゾルヘッドキャビティのうちの1または複数、気泡除去器、ポンプヘッドの構成要素、チューブ、気道、マウスピース、およびエアロゾル化器を収容する、本発明の装置の構成要素。カートリッジは、耐久性システムへ分離可能に取り付けられ、好ましくは、耐久性システムが使用される期間よりも短い期間、通常は使用される。
【0045】
紙巻きタバコ(cigarette): タバコの燃焼を利用してニコチンを送達する、吸入システム。
【0046】
凝縮エアロゾル(condensation aerosol): 最初に飽和蒸気を形成し、その蒸気が凝縮してエアロゾルを形成することによって形成される、エアロゾル。
【0047】
デッドボリューム(dead volume): 往復ポンプの最大内部体積からポンプの行程体積を引いたもの。
【0048】
気泡除去器(debubbler): 製剤から空気を除去するためのユニットであって、好ましくは疎水性多孔質材料を使用する。
【0049】
投与事象(dosing event): 禁煙システムの単回使用中に使用者によって行われる、一連のパフ。
【0050】
乾燥粉末分散機構(dry powder dispersing mechanism): エアロゾルを形成するために、充填された医薬品粉末へエネルギーを加えるための、システム。
【0051】
耐久性システム(durable system): 以下のうちの1または複数を収容する構成要素:電子装置、マイクロコントローラ、電池、充電回路、ライト、ボタン、電気コネクタ、およびポンプモーター、ギヤヘッド、偏心カム、および位置合わせカム。
【0052】
偏心要素またはカム(eccentric element or cam): 回転し、かつ回転軸を中心に対称でない、要素。
【0053】
電子タバコ(e-cigarette): 電力、好ましくは電池電源を利用してニコチンを送達する、吸入システム。
【0054】
電子ニコチン送達システム(electronic nicotine delivery systems): 禁煙療法または喫煙置換のための、電子システム。
【0055】
電子スプレー(electrospray): エアロゾルを形成するためのシステムであって、液体が毛細管の端からプレート内の孔を通って流出する。毛細管とプレートとの間に電圧が印加されるとき、液体は円錐を形成し、円錐の先端からジェットが噴出する。ジェットは孔を通って流れ、レイリー分裂(Raleigh breakup)を受けてエアロゾルを形成する。
【0056】
放出用量(emitted dose): 例えば1パフまたは1回の投与事象の間に、吸入装置から放出される、製剤の体積、または医薬品有効成分の量。
【0057】
延伸(expanded): 伸展して多孔質にした材料、好ましくは疎水性材料。
【0058】
Fagerstromのニコチン依存度テスト(Fagerstrom Test for Nicotine Dependence): ニコチン依存症の重症度テスト。
【0059】
ファームウェア(firmware): マイクロコントローラ上にロードされる、計算機コード。
【0060】
フローブラーリング(flow blurring): エアロゾルを形成する方法であって、液体が毛細管から流れ、液体および高圧気体が、プレート内の孔を通って急速に(例えば、フローフォーカシングにおいて使用されるよりも急速に)共流する。毛細管の出口での液体は、いくぶん激しく液滴へ変化し、これが孔を通って運ばれてエアロゾルを形成する。
【0061】
フローフォーカシング(flow focusing): エアロゾルを形成する方法であって、液体が毛細管から流れ、液体および加圧気体が、プレート内の孔を通って共流する。液体は共流気体の影響下で円錐を形成し、円錐の先端でジェットが形成され、そのジェットはレイリー分裂を受けてエアロゾルを形成する。
【0062】
製剤キャビティ(formulation cavity): 製剤チャンバ(複数可)を収容する、本発明のカートリッジ内のすき間。
【0063】
製剤チャンバ(formulation chamber):本発明において使用する製剤の容器。好ましい製剤チャンバは、柔軟であり、製剤がそこから引き出される際につぶれる。
【0064】
製剤ポケット(formulation pocket): 製剤を収容し、ウィッキング要素を収容してもよい、エアロゾル化器の真後ろの領域。
【0065】
ゲージ圧(gauge pressure): 周囲大気との圧力差。
【0066】
ジェットネブライザ(jet nebulizer): 液体からエアロゾルを生成するためのシステムであって、圧縮気体のジェットが、液体を通って押し出され、液滴を形成し、乗せ、および分散させて、エアロゾルを形成する。
【0067】
MEMS: マイクロチップの製造のために開発された技術を使用して、ミクロンサイズの構造、例えばノズル配列を、製造する方法。
【0068】
マイクロ流体技術(microfluidics): 手持ち式携帯型装置における使用に適した、小型ポンプ、バルブなど。
【0069】
ネブライザ(nebulizer): 1または複数の液体製剤からエアロゾルを作成するための、装置。
【0070】
NRT: ニコチン置換療法。
【0071】
方向にとらわれない(orientation agnostic): 任意の向きで使用されることができる。
【0072】
pack years: 喫煙年数×1日あたりの箱数で計算される、紙巻きタバコへの生涯曝露量の指標。
【0073】
PE: ポリエチレン
【0074】
蠕動ポンプ(peristaltic pump): チューブの長さの一部を順次圧縮することにより、柔軟なチューブの長さを通って製剤をポンプする装置。
【0075】
PET: ポリエチレンテレフタレート
【0076】
薬理学的に等価(pharmacologically equivalent): 本質的に同じ薬物動態学的および薬力学的プロファイルを有すること。薬理学的に等価な用量は、分子量の比によって、すなわち同じ分子数を有することで、決定されうる場合が多い。
【0077】
圧電(Piezoelectric)またはピエゾ(Piezo):電圧がそれに印加される際に膨張する、構成要素。
【0078】
PP: ポリプロピレン
【0079】
PS: ポリスチレン
【0080】
PTFE: ポリテトラフルオロエチレン
【0081】
パフ(puff): ニコチンを含有する1回の吸入。
【0082】
レイリー分裂(Raleigh breakup): エアロゾルの形成であって、液体が1または複数のノズル孔を通って押し出されて液体ジェットを形成し、このジェットが、表面張力の影響下で、ジェットの直径のおよそ2倍の直径を有する液滴に、自発的に分裂する。
【0083】
喫煙置換(smoking replacement)、ニコチン置換(nicotine replacement)、ニコチン置換療法(nicotine replacement therapy)、NRTなど: 紙巻きタバコをより良性のニコチンの形態で置換することによって、紙巻きタバコを喫煙するリスクを減少させる方法であって、好ましくは、良性のニコチンの形態が吸入される。
【0084】
禁煙療法(smoking cessation therapy)、ニコチン中止療法(nicotine cessation therapy)など: タバコ使用者が禁煙するのを支援する方法であって、好ましくは、ニコチンを含有するエアロゾルを生成するシステムを供給することにより、ニコチンは実質的にゼロにまで徐々に漸減され、それによって喫煙者に切望しているニコチンを与え、喫煙に非常に似た経験をさせ、血漿中ニコチンの薬物動態プロファイルは、喫煙者が紙巻きタバコを一服した後に経験するものと本質的に同じになる。
【0085】
焼結(sintered): 加熱によって液化せずに、粉末材料を多孔質塊に合体させる工程によって作成される、多孔質材料。
【0086】
行程体積(stroke volume): 往復ポンプの各サイクルにより排出される液体の量。
【0087】
対象(subject)または患者(patient): 本明細書において互換的に使用され、ヒトまたは他の哺乳類を指す。
【0088】
基板(substrate): 配列ノズル孔を包含する、シート状の材料、好ましくはステンレス鋼。
【0089】
渦巻型噴霧器(swirl atomizer): 回転気流を利用してエアロゾルを形成および拡散する、ネブライザ。
【0090】
超音波ネブライザ(ultrasonic nebulizer): 超音波エネルギーを製剤へ直接加える、エアロゾルを作成するためのシステム。振動メッシュネブライザと比較される。
【0091】
振動メッシュネブライザ(vibrating mesh nebulizer): ノズル孔の配列を包含する基板を超音波振動させる、エアロゾルを作成するためのシステム。
【0092】
ウィッキング要素(wicking element): 液体と接触するように配置された場合に液体を吸い上げる、柔軟な素材を意味する。
【0093】
[B.概観]
本開示は、吸入薬物送達のための装置、製剤、および方法に関連する。ある実施形態において、装置は、ニコチン含有エアロゾルを形成するためのノズルの配列を有する装置を使用して、患者に喫煙と同様の体験を創り出す、吸入システムである。そのような吸入システムは、予め決められた時間にわたって実質的にゼロにまで減少させることによって、患者へ送達されるニコチンの量を制御する。より具体的には、本開示の禁煙システムは、以下のうちの少なくとも1を備える:(a)携帯型禁煙装置;(b)装置を制御するために装置内に収容される、ファームウェア;(c)製剤容器;および(d)コンパニオンアプリケーション。
【0094】
ある実施形態において、装置は、禁煙吸入器として構成され:耐久性部分(またはシステムまたは要素)のコントローラと、吸入器へ分離可能に取り付けられるように構成されるカートリッジとを備え、ここでカートリッジは、(a)エアロゾル化器;(b)医薬品有効成分を含む製剤を収容する、製剤チャンバ;(c)気泡除去器;および(d)フィルタを備える。禁煙システムは、従来の紙巻きタバコで経験されるものに近いニコチン吸収動態で、電子タバコおよび他の装置において使用されるような外来性の賦形剤/物質を使用せずに、ニコチン含有組成物を送達することによって、紙巻きタバコを吸うことを模倣するように設計される。従って、本システムの薬物動態(PK)、安全性プロファイル、および使用者の受容性は、喫煙および電子タバコの許容できる代替品であり、特に禁煙に効果的である。紙巻きタバコと同様に、本エアロゾル装置は、数回の服用(またはパフ)後に渇望を緩和できる。しかし、喫煙および電子タバコとは異なり、本装置は、ニコチンを気化するために熱に頼らない。また、噴射剤または他の潜在的に有害な補助物質または賦形剤にも頼らない。従って、本発明の小型で手持ち式の装置は使いやすく、安全で、喫煙者が期待するものと同様のニコチンを送達するのに有効である。
【0095】
一実施形態において、システムは、最初は喫煙と同様の患者体験を創り出し、投与されるニコチンの量を制御して、予め決められた時間にわたって、例えば約10~16週間、約13週間、約20~32週間、または約26週間、または約2か月~4か月、約3か月、約5~7か月、約6か月にわたって、実質的にゼロにまで減少させる。
【0096】
より具体的には、本エアロゾル装置は、ニコチンを送達するように構成され、その結果薬物動態値は、紙巻きタバコ喫煙者で報告された値の約5%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%以内となり、ここで値は、以下のうちの1または複数である:(a)5分、10分、および15分での濃度;(b)Cmax;(c)Tmax;および(d)AUC。紙巻きタバコのPK値の報告は、文献に記載されている。例えば、Benowitz NL, Clinical Pharmacology of Nicotine: Implications for Understanding, Preventing and Treating Tobacco Addiction. Clin. Pharmacol. Ther. 83(4) (2008); Le Nouez, Intl. J. Tuberculosis and Lung Dis. 7(9) (Sept. 2003) 参照。
【0097】
別の態様において、本発明のシステムは、ビジュアルアナログスケール(VAS)-渇望評価によって測定されるニコチン渇望を有意に減少させるように、構成されおよび患者に投与される。いくつかの実施形態において、本システムは、渇望を約30%、または40%、または50%、または60%、または70%、ベースラインと比較して減少させる。
【0098】
ある実施形態において、有効成分の開始用量は、患者特性、例えば体重、喫煙歴、有効成分に対する耐性、年齢などに基づいて、医師により選択される。一実施形態において、有効成分の開始用量は、全ての使用者に対して同じである。
【0099】
例えば、装置の最初の使用時に、ニコチン遊離塩基の、または薬理学的に等価な量の別の形態、例えばニコチンの塩の、平均吸入あたりの最初の総放出用量が、約0.05~約2mg、約0.1~約1mg、約0.2~約0.5mg、約0.25~約0.3mgの範囲となるように、装置は制御されうる。その後、ニコチンの量は減少し、例えばニコチン含有製剤の流速は減少し、非ニコチン含有製剤の流速は増加し、その結果、約1週間~約1年、約1か月~約6か月、約2か月~約4か月、好ましくは約3か月から選択される期間の後、平均吸入あたりのニコチンの総放出用量は、およそ0mgとなってもよく、例えばここで、製剤の総エアロゾル化体積は、実質的に一定である。これは明確化のためだけの一例にすぎない。パフあたりのニコチンの好ましい開始量は、好ましくは2mg/パフ程度以上(greater than or about)、1.5mg/パフ程度以上、1.2mg/パフ程度以上、1mg/パフ程度以上、0.8mg/パフ程度以上、0.6mg/パフ程度以上、0.5mg/パフ程度以上、0.4mg/パフ程度以上、または0.3mg/パフ程度以上である。ニコチンの終了量は、好ましくは1mg/パフ程度以下、0.8mg/パフ程度以下、0.7mg/パフ程度以下、0.6mg/パフ程度以下、0.5mg/パフ程度以下、0.4mg/パフ程度以下、0.3mg/パフ程度以下、0.2mg/パフ程度以下、0.1mg/パフ程度以下、または約0mg/パフである。
【0100】
[C.エアロゾル装置およびその操作]
上述のように、本開示は、ある実施形態において、以下を備える禁煙吸入器に関連し:コントローラを備える、吸入器の耐久性部分(またはシステムまたは要素)、および吸入器の耐久性部分へ分離可能に取り付けられるように構成される、複数回投与カートリッジ;ここでカートリッジは以下を備える:(a)エアロゾル化器;(b)医薬品有効成分を含む製剤を収容する、製剤チャンバ;(c)気泡除去器;および(d)フィルタ。
【0101】
一実施形態において、カートリッジは1つの薬剤チャンバを備え、用量は、以下から選択されるがこれらに限定されない、1または複数の機構によって制御される:ポンプ、ポンプする時間、バルブ、バルブ開時間、エアロゾル化器に印加される直流電圧の値、エアロゾル化器に印加される交流電圧の振幅、および電圧(例えばエアロゾル化器に印加される電圧)印加の持続時間。
【0102】
一実施形態において、アルゴリズムは、システムによって送達される有効成分(好ましくはニコチン)の量の調整を、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される頻度で求める:1日あたり約1回以上、投与事象あたり約1回以上、またはパフあたり約1回。好ましくは、アルゴリズムは、1日あたり約1回、好ましくはその日の最初のパフの前に、有効成分の量の調整を求める。好ましいアルゴリズムは、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択されるパラメータに基づいて、用量を変更する:最初のパフからのパフの回数、最初の投与事象からの投与事象の回数、最初のパフからの時間、最初の投与からの時間、最初の日からの日数、それらの組合せ。好ましいアルゴリズムは、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される:パラメータによる線形増加または減少、パラメータによる二次関数的増加、パラメータによる高次多項式、パラメータによる指数関数的増加または減少。好ましくは、アルゴリズムは、有効成分の量を初期値から最終値まで、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される期間にわたって、変化させることを求める:約1日~約1年、約1週間~約9か月、約1か月~約6か月、約2か月~約4か月、または約3か月。好ましくは、アルゴリズムは、送達される有効量の増加、送達される有効量の減少、またはその両方を求める。好ましい一実施形態において、アルゴリズムは、ある用量(好ましくは開始用量)から、最終用量(好ましくは約ゼロ)までの、減少を求める。別の好ましい実施形態において、アルゴリズムは、第1の事象(好ましくは開始日)での最初の用量から、第2の事象(好ましくは後の日)での第2の用量までの増加、第2の事象から第3の事象(好ましくはさらに後の日)までの一定用量、および第2の用量から第4の事象での最終用量までの減少を求め、ここで最終用量は好ましくはゼロである。好ましい事象は、日数、投与事象、およびパフを含むがこれらに限定されないリストから選択される。
【0103】
禁煙システム(好ましくは禁煙装置、ファームウェア、およびまたはコンパニオンアプリケーションのうちの1または複数)は、好ましくは禁煙システムの使用法に関連する様々な要因を監視、記録、表示、および/または報告する手段を含み、その要因は、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される:時間、日付、頻度、および/またはパフの総回数、および/または投与事象の回数、および/または前記のいずれかの変化率。システムはまた、システムの使用技術に関連するパラメータを、監視、記録、報告、および/または表示してもよく、そのパラメータは、以下を含むがこれらに限定されない:吸入の深さ、吸入速度、および吸入操作と押しボタンの連携。報告は、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される:使用者、医師、看護師、医師グループ、HMO、保険会社、臨床研究機関などの研究機関、研究者、疫学者、製造業者、相談電話(help line)、介護者、家族、および/または友人への報告。報告は、使用者によるオプトインを必要とすることもあり、報告、データ保存、およびデータ伝送は、好ましくはHIPAA準拠である。
【0104】
一実施形態において、禁煙装置からコンパニオンアプリケーションへの、一方向データフローが存在しうる。この実施形態において、コンパニオンアプリケーションは、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される機能を行いうる:情報を表示すること、情報を報告すること、例えば医療提供者、介護者、家族、および/または禁煙システムの供給者に対して。コンパニオンアプリケーションへ送信される情報には、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される情報を含みうる:時間、日付、およびパフおよび/または投与事象の回数、パフあたりの有効成分(好ましくはニコチン)の現在の量、電池状態、残りの製剤、エラーコード、ファームウェア改訂など。
【0105】
別の実施形態において、コンパニオンアプリケーションが、禁煙装置と通信する、および/または制御することを可能にする、双方向データフローが存在しうる。好ましい実施形態において、コンパニオンアプリケーションは、製剤の流速(好ましくは第1のおよび第2の製剤の流速)について、計算しかつ禁煙装置に指示して、それによって、前述のように、送達される有効成分の量(例えばパフあたりのニコチンの量)を制御する。コンパニオンアプリケーションはまた、禁煙装置に指示して、電源を入れ、製剤容器の交換を準備し、インジケータ(例えば準備完了インジケータ)を表示し、製剤(好ましくは2以上の製剤)の所与の流速を利用してもよい。
【0106】
一実施形態において、ファームウェアまたはコンパニオンアプリケーションは、タイミングシステムを組み込んでもよく、次のパフおよび/または投与事象の前の、ロックアウト間隔をプログラムされるか、または計算してもよい。ロックアウト間隔は、例えば禁煙療法などの療法期間中は一定であってもよいが、好ましい実施形態において、ロックアウト間隔は、経時的に増加する。最初のロックアウト間隔、および/またはロックアウト間隔の増加率は、コンパニオンアプリケーションまたはファームウェアのプログラムによって固定されてもよいが、好ましくは、上述のように、コンパニオンアプリケーションまたはファームウェアによって、例えば、使用者、使用者の喫煙歴、および禁煙システムの過去の使用法に関連する、以前入力された情報に基づいて、計算される。好ましくは、禁煙システムは、ロックアウト間隔が経過したことを示す、1または複数の表示を組み込む。好ましい表示には、ライト、ディスプレイ上のメッセージ、通知、音、および/または振動を含むが、これらに限定されない。いくつかの用途(例えばオピオイドの送達)では、ロックアウト間隔は、処方医によって指示されうる。
【0107】
好ましくは、禁煙装置は、1または複数の製剤からエアロゾルを形成するための機構(以下、エアロゾル化器と称する)を組み込む。エアロゾル化器は、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択されうる:振動オリフィスまたはオリフィスの配列(すなわち、振動メッシュ)、凝縮エアロゾル、超音波ネブライザ、乾燥粉末分散機構、ジェットネブライザ、渦巻型噴霧器、レイリー分裂、電子スプレー、フローフォーカシング、またはフローブラーリング。好ましい実施形態において、微細エアロゾルは、1つの(好ましくは複数の)小孔から発生する。特に好ましい実施形態において、エアロゾル化器は、本質的に剛性の基板(好ましくはステンレス鋼基板)内に形成されるノズル孔の配列を含み、基板は、少なくとも片側で基板の外周へ剛性接着されたリング状ピエゾ素子によって振動され、ここで孔の配列は、リング状ピエゾ素子の開口部の実質的に中央にある。基板は、出口側から突出する球の断面の形状でありうる突出部を含んでもよく、この突出部はリング状ピエゾ素子の実質的に中央にあり、配列を突出部上の実質的に中央に有する。突出部は、使用者が吸入する気道に向かって延び、好ましくは、突出部は、気道を通る気流内に延びる。
【0108】
ピエゾは、基板の出口面へ取り付けられてもよく、または2つのピエゾがあり、1つずつ基板の各面へ取り付けられてもよい。好ましい実施形態は、基板の入口面へ取り付けられる単一のピエゾリングを有し、これがピエゾからリングの中心までの段差を、そのような段差がエアロゾル沈着を引き起こしうる気道から取り除く。好ましい実施形態において、基板は円盤であり、ピエゾは環形である。液体が配列の入口側に供給され、基板がピエゾによって振動させられると、エアロゾルが配列の出口側で形成される。一実施形態において、振動の振幅は、単一の液滴が各ノズル孔からピエゾの各振動サイクルで押し出されるようなものである。あるいは、ある長さの液体ジェットが、各孔の出口ノズルから押し出されてもよく、その長さの液体ジェットが、レイリー分裂の過程を介して液滴に分裂する。好ましくは、1または複数の孔が存在し、その出口直径は、10μm程度以下であり、好ましくは7.5μm程度以下、6μm程度以下、5μm程度以下、4μm程度以下、3μm程度以下、2.5μm程度以下、2μm程度以下、1.5μm程度以下、1μm程度以下、好ましくは約2.0~3.0μm、約2.2~2.8μm、最も好ましくは約2.5μmである。好ましくは、孔の数は、約100000個未満、約1~約10000個、約100~約5000個、約500~約3000個、または約750~約2500個、より好ましくは約2000~2400個である。オリフィス(複数可)の出口につながる流路は、円柱、好ましくは直円柱を含む、任意の形状でありうる。好ましい流路はテーパー状であり、オリフィスの入口から出口まで直径が減少するが、これはオリフィスを通る流れおよびエアロゾル化を達成するのに必要な、圧力または他の形態のエネルギー入力(例えば超音波エネルギー入力)を減少させるためである。好ましくは、テーパーは、円錐形、角錐形、および漏斗形から選択される。好ましくは、オリフィスの入口側は、5μm程度以上、10μm程度以上、15μm程度以上、20μm程度以上、または25μm程度以上である。孔の配列は、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される方法を使用して、作製されうる:UVレーザー、エキシマレーザー、固体レーザー、ダイオード励起レーザー、周波数二倍化レーザー、周波数三倍化レーザーを含むがこれらに限定されない、レーザー穿孔;MEMS製造、成形、機械加工、3Dプリンティング、ステレオリソグラフィ、ウォータージェット、ワイヤーEDMなど。エアロゾル化性能を改善するために、表面処理が配列の出口側に適用されうる。例として、製剤が水性製剤である場合、疎水化処理はエアロゾル性能を改善しうる。別の実施形態において、配列の開口からの液体流出を防止するために、疎水化処理が配列の入口側に適用されうる。この疎水化処理は、一実施形態において、大気圧で、ある圧力範囲内で、または特定の圧力まで、開口からの液体流出を防止するように適応されうる。好ましい処理には、プラズマ処理、シリコーン、フッ素系液体またはポリマー、およびワックスを含む。
【0109】
好ましい実施形態において、エアロゾル化器は、エアロゾル化ヘッド内に収容され、ここでエアロゾル化ヘッドは、エアロゾル化器、製剤または製剤の混合物を保持するエアロゾル化器の真後ろのポケット、および製剤をポケット内に導入するための入口ポートを備える。好ましくは、エアロゾル化ヘッド、1または複数の製剤を収容する1または複数の製剤チャンバ、および製剤チャンバ(複数可)を取り囲むキャビティは、カートリッジ内に一体化される。好ましい実施形態において、エアロゾル化ヘッド内には、ノズル配列の真後ろに製剤ポケットがある。好ましくは、このポケットは、製剤または製剤の混合物で実質的に充填され、および製剤は、基板の裏面とノズル配列の領域で接触する。好ましい実施形態において、オリフィス入口側のエアロゾル化器は、ポケット内の製剤または製剤の混合物と直接流体接触する。製剤ポケットはまた、エアロゾル化工程の副産物としてポケット内に導入される空気を含む、空気を収容しうる。ポケット内の空気を除去し、基板と接触する製剤を移動させないようにすることが重要である。別の実施形態において、製剤は、配列の入口側へ、ポケット内に位置するウィッキング要素を介して供給され、ここでこのウィッキング要素は、スポンジ;オープンセル発泡体またはクローズドセル発泡体、好ましくは組合せでありうる、発泡体;布、糸、織り糸、繊維など;吸収性紙製品;などでありうるが、これらに限定されない。好ましくは、ウィッキング要素は、基板の入口側と接触するか、または基板の入口側と部分的に接触する。一実施形態において、ウィッキング要素は、ノズル孔の配列の入口側に対して同一平面でありうる。別の実施形態において、ウィッキング要素は、ノズル孔の配列の一部のみと接触するように、またはノズル孔の配列のいずれにも接触しないように、斜めに配置されてもよく、ここでウィッキング要素とノズル孔の配列との間の小空間は、ノズル孔のポンプ作用によって液体で満たされ、製剤をノズル孔へ供給する役割を果たす。さらに別の実施形態において、小さな隆起、または複数の隆起が、ウィッキング要素内に生成されてもよく、この隆起はノズル孔の配列の真後ろに配置され、その際ノズル孔の配列は、ウィッキング要素内の隆起と近接または接触し、ウィッキング要素とエアロゾル化器の入口側との間に不均一な表面接触を生成する。別の実施形態において、ウィッキング要素は、製剤の流れおよび妨げのない空気の流れを可能にする多孔質スペーシング要素によって、ノズル配列の入口側との直接接触から分離され、空気の除去を促進する。スペーシング要素は、メッシュ、貫通孔の配列を有するプレート、配列と実質的に同じ大きさの単一の孔を有するスペーサー、またはウィッキング要素よりも大きな多孔率(porosity)および/または大きな孔を有する発泡体であってもよく、ここでこの要素は、製剤がウィッキング要素からノズルの配列の入口側へ流れ、同時に、発生しエアロゾル化器からエアロゾル化ヘッド内へ導入される空気の排除を可能にする。一実施形態において、ウィッキング要素およびスペーシング要素は、円形または実質的に円形でありピエゾ環の中心にある孔と同じ直径を有する、平坦な表面を有する。別の実施形態において、ウィッキング要素は、互いよりも直径が大きくても小さくてもよく、ピエゾ環の中心の直径よりも直径が大きくても小さくてもよい。別の実施形態において、ウィッキング要素は、実質的に同じ直径であり、くぼみと接触してもよい。
【0110】
一実施形態において、ポケット、および同様に製剤キャビティまたは容器は、相対的に硬い材料、例えばPE、PS、PP、PET、ステンレス鋼、アルミニウムなどを含むがこれらに限定されない、プラスチックまたは金属材料で構成され、製剤の進入経路(および任意選択で排出経路)以外は、完全に囲まれうる。別の実施形態において、製剤ポケットは、製剤ポケット内で発生する空気を製剤ポケットからエアロゾルヘッドキャビティ内へ流すことを可能にする、少なくとも1の空気放出口を包含しうる。空気放出口を通して放出された空気が、エアロゾルヘッドキャビティ内に蓄積すると、空気放出口の領域における製剤の圧力に近づくか超えることがあり、空気放出口を通る空気の流れを減少または停止させる。従って、エアロゾルヘッドキャビティから空気を放出するための、通気口が必要である。一実施形態において、空気は、エアロゾルヘッドキャビティから通気穴を通って装置外の空気へ排出される。別の実施形態において、空気は、製剤キャビティ内に通じる通気穴を通って排出され、これを通る流れは、製剤キャビティ内の1または複数の製剤チャンバから製剤がポンプされる際に生じる、製剤キャビティ内の圧力の低下によって補助される。空気の発生速度と製剤のエアロゾル化速度は、一般に等しくないため、外気と接触させるために、小孔が使用されうる。好ましくは、小孔は、外気との平衡化が、エアロゾル化および製剤ポケットから空気を除去するための時間よりも、多くの時間を必要とするような大きさである。好ましくは、小孔もまた十分に小さく、そのため空気放出口を通る水蒸気の拡散が十分に小さく、その結果エアロゾルヘッドキャビティ内への水の蒸発速度が、エアロゾルヘッドキャビティ内の空気を飽和させ、製剤担体の蒸発速度を減少させる。
【0111】
好ましくは、空気放出口は、小さな(テーパー状であってもよい)開口部であり、エアロゾル放出口の内側表面は疎水性であり、そのため空気はポケットから空気放出口を通って流れることができるが、水の表面張力は、開口部を通る液体製剤の流れを阻止するか、または実質的に阻止する。一実施形態において、開口部は1つだけであってもよく、好ましくは上部の上部に位置し、または代替実施形態において製剤ポケットの側面に位置し、ここで空気は、浮力により製剤から分離されており、重力を受けてチャンバから出ることができるまで、製剤ポケット内に存在しうる。別の実施形態において、製剤ポケットは、1または複数の開口部を包含してもよく、ここで空気は、その浮力下で1または複数の開口部を通ってポケットから直ちに出ることができ、どの向きでもポケット内の空気の蓄積を防止し、禁煙システムを方向にとらわれないものとする。
【0112】
好ましい実施形態において、空気放出口は、多孔質材料で、好ましくは疎水性または超疎水性の多孔質材料で覆われてもよく、ここで多孔質疎水性材料は、空気が開口部を通って出ることを可能にし、製剤が開口部を通って出ることを防止するか、または実質的に防止する。この多孔質材料は、金属メッシュ、プラスチックメッシュ、または好ましい実施形態においてPFTEまたはPE材料、好ましくは延伸または焼結PTFEまたはPE材料でありうるが、これらに限定されない。疎水性塗装または加工が、その疎水性を高めるために、これらの材料に適用されうる。開口部は、例えば、エアロゾル化器によって閉じられていない製剤ポケットの壁または本質的に表面全体を含む、大きな領域でありうる。この実施形態において、製剤ポケットを備える多孔質材料は、空気が製剤ポケットから多孔質材料に沿った任意の地点で出るようにして、製剤ポケット内の空気で満たされたヘッドスペースの生成を防ぐことができる。
【0113】
好ましい実施形態において、カートリッジは、製剤または製剤の混合物を再循環させるためのシステム(以下、再循環システムと称する)を収容しうる。好ましい実施形態において、第1の流体通路が、製剤チャンバからポンプ要素または1または複数のポンプ要素へ延び、第2の流体通路が、ポンプ要素からポケットへ延び、および第3の流体通路が、ポケットから第1の流体通路へ延び、再循環を可能にする流れループを生成する。これらの通路は、チューブ、流路、またはそれらの混合でありうるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、1または複数の通路の中または端に位置するのは気泡除去器であり、ここで1または複数の通路を通る流れは、1または複数の気泡除去器を通って流れる。好ましい実施形態において、気泡除去器は、気泡除去器を通る流れを可能にするように構成される少なくとも1の気泡除去器流路、好ましくは複数の流路を備え、好ましくは流路は狭い流路であり、各流路の少なくとも1の表面が多孔質材料によって形成され、気泡除去器を通る流れが再循環システム内の製剤を多孔質材料と接触させ、その際に空気が多孔質材料から排出される。好ましくは、多孔質材料は上述の通りであり、最も好ましくは、延伸または焼結PTFEまたはPE材料である。好ましい実施形態において、気泡除去器から下流の通路に制限があり、この制限により、気泡除去器内の圧力が上昇し、多孔質材料を通る空気排除の量または速度が増加する。
【0114】
好ましい実施形態において、多孔質材料は、圧縮の手段によって多孔質材料と反対側の表面に対してぴんと張られた状態に保持される。別の実施形態において、多孔質材料は、接着、テープ、化学的結合、または機械的クランプを含むがこれらに限定されない手段によって、反対側の表面に対してぴんと張られた状態に保持されうる。クランプの過程で、多孔質材料は、その自然な状態を超えて引き伸ばされうる。この実施形態において、製剤が大気圧を超える圧力で多孔質材料の下を流れる場合、多孔質材料を反対側の表面から離すように変形する。これにより、多孔質材料の後ろに液体が流れるための小キャビティが生成される。製剤が気泡除去器を通って流れるのを止めると、多孔質材料はその開始位置まで跳ね返り、小キャビティの体積を減少させまたは除去し、製剤を気泡除去器の出口および/または入口から押し出し、多孔質材料と接触した状態のままでありうる製剤の量を最小限にして、それにより多孔質材料を通して蒸発しうる担体の量を制限する。一実施形態において、多孔質材料を通って排出される空気は、カートリッジから排出され、これは多孔質材料をカートリッジの外側表面に配置することによって達成されうる。別の実施形態において、空気は、気泡除去器をエアロゾル化ヘッドの表面へ接続する通路を介して、カートリッジから出る。別の実施形態において、気泡除去器から排出される空気は、製剤キャビティ内へ流れ、製剤が製剤チャンバ(複数可)からポンプされることによって製剤キャビティ内に生じる減圧が、気泡除去器から空気を抜き、それにより製剤キャビティ内の圧力が、実質的に大気圧まで回復する。特に好ましい実施形態において、気泡除去器の後ろにチャンバが取り付けられており、気泡除去器の多孔質材料から出た空気は、チャンバに入る。チャンバは、複数の(または好ましくは1つの)孔を有する、プラスチック成形チャンバであってもよく、ここでこの孔は、好ましくは直径約5mm未満、より好ましくは約4mm未満、より好ましくは約3mm未満、より好ましくは約2mm未満、より好ましくは約1mm未満、より好ましくは約0.5mm未満、最も好ましくは直径約0.1mm未満である(または穴が円でない場合は、それに相当する面積)。これにより、気泡除去器から出る空気から生じる圧力上昇は孔から放出されるようになるが、投与事象間の気泡除去器の多孔質材料を通る製剤担体の蒸発を制限する。好ましくは、システムからの全ての源(気泡除去器およびノズル配列を含む)からの蒸発速度は、20μl/日程度以下、10μl/日程度以下、5μl/日程度以下、2.5μl/日程度以下、または1μl/日程度以下である。一実施形態において、再循環システムは、無菌フィルタを、好ましくは約0.1~約0.5μm、約0.15~約0.3μm、好ましくは約0.2μmの孔径を有するフィルタを、微粒子および細菌を製剤から除去するために、加えて包含しうる。好ましい実施形態において、無菌フィルタは、ポンプと製剤ポケットとの間の第2の流路に配置されるが、これは無菌フィルタを通して製剤を押し出すのに必要な高圧がポケット内に存在しないため、製剤がノズル孔から押し出されないようにするためである。この設計により、エアロゾル化され使用者により吸入される製剤は、使用者に危険を及ぼす可能性がありまたノズル孔を塞ぐ可能性のある、バクテリアおよび粒子を含まなくなることが保証される。無菌フィルタは、好ましくは医療産業において水性製剤の無菌充填のために使用するように設計された、フィルタである。無菌フィルタは、疎水性でも親水性でもよいが、好ましい実施形態は、親水性膜を使用する。
【0115】
関連する実施形態において、気泡除去器は、小さな気泡除去器キャビティを備え、このキャビティは、エアロゾルヘッドキャビティまたは製剤キャビティにつながる、上述のような小孔を有し、それにより気泡除去器を通る製剤担体の蒸発速度を制限する。好ましくは、上記実施形態の小孔は、直径2mm程度以下、直径1.5mm程度以下、直径1mm程度以下、直径0.75mm程度以下、直径0.6mm程度以下、直径0.5mm程度以下、直径0.4mm程度以下、直径0.3mm程度以下、または直径0.2mm程度以下である。
【0116】
一実施形態において、少なくとも1の製剤チャンバは柔軟であり、再循環システムと液体接触状態に維持される。例えば天候または高所からの降下により周囲気圧が低下する場合、再循環システム内のいかなる気泡の膨張も、ノズルから液体を押し出すのではなく、製剤チャンバを膨張させる。膨張可能な製剤チャンバは、再循環システムの圧力を適切に調整するために、再循環システムに対して常時開放しておいてもよいし、または電子的に使用可能なバルブの制御下で開閉してもよいが、これは再循環システムの圧力を適切に統御するためであり、製剤チャンバへの流入と流出を可能にすることによって、外部環境、高度、または方向の変化における圧力変化を経験したときに、システムを大気圧またはほぼ大気圧に保つ。
【0117】
カートリッジ内の製剤キャビティは、一実施形態において、部分的に空気充填される密閉された体積でありうる。好ましい実施形態において、ポケットと製剤キャビティとの間に少なくとも1の接続点があってもよく、空気は接続点を通過しうる。一実施形態において、ポケットと製剤キャビティとが隣接しており、開口部は、この空気通過を容易にするために除去される共有壁の一部でありうる。この開口部は、一実施形態において、多孔質材料で、好ましくは上述のような多孔質材料で覆われてもよく、材料を通る空気の流れを可能にするが、製剤の流れを遮断する。別の実施形態において、キャビティと製剤容器(複数可)とが共通壁を共有しておらず、開口部は、空気の流れを可能にする通路、好ましくはチューブ、より好ましくは機械加工された流路でありうる。一実施形態において、この通路は、上述のような多孔質媒体で覆われる製剤キャビティの壁内の、より大きな開口部につながりうる。上記の実施形態において、製剤キャビティは、空気充填キャビティでありうる。
【0118】
別の実施形態において、エアロゾルヘッドは、エアロゾルヘッドキャビティを収容し、製剤ポケットに隣接し、任意選択で部分的に取り囲んでもよい。一実施形態において、エアロゾルヘッドキャビティはまた、スポンジ、発泡体、布、紙、または他の吸収性材料でありうるが、これらに限定されない、吸収性材料を収容しうる。この実施形態において、製剤ポケットから出る製剤は全て、吸収性材料内へ吸収される。禁煙システムが使用され、エアロゾルが生成されると、製剤は製剤チャンバ(複数可)からポンプされ、製剤キャビティ内の圧力を低下させる。この低下した圧力は、エアロゾルヘッドキャビティから2つの構成要素を接続する流路を通じて空気を引っ張り、エアロゾルヘッドキャビティ内の空気を減少させる。これにより、エアロゾルポケットからエアロゾルヘッドキャビティ内への、好ましくは多孔質疎水性材料を通じた、例えばエアロゾル化工程により発生する空気の流れが促進される。エアロゾル化工程中に製剤ポケット内に発生する空気の量は、製剤チャンバ(複数可)からポンプされる製剤の量と同等または未満であってもよく、これによって、全てまたは実質的に全ての製剤ポケット内の空気が、製剤ポケットからエアロゾルヘッドキャビティ内へ出ることが可能になり、キャビティは大気圧まで戻るか、またはわずかに低下した圧力を保持する。
【0119】
エアロゾル化器は、エアロゾルが装置気道内に発生するように配置される。例えば、エアロゾル化器が振動メッシュエアロゾル化器である実施形態において、出口オリフィス(複数可)を包含する基板の側(本明細書において、出口側と称する)は、気道の壁と同一平面であるか、または実質的に同一平面である。作動されると、エアロゾル化器は、エアロゾルプルームを生成し、それは使用者により発生する空気流(本明細書において、希釈空気と称する)の方向に対して垂直に気道内へ移動し、希釈空気は、エアロゾルを90゜の角度で乗せ、使用者の呼吸道内へ運ぶ。使用者は、この気道を通じて気道の末端から延びるマウスピースを介して吸入するが、このマウスピースは、様々な長さ、形状、および大きさの、中空または部分的に中空の空洞でありうる。好ましくは、気道の少なくとも一部およびマウスピースも、カートリッジの一部である。
【0120】
カートリッジ内の気道は、エアロゾル発生点より上流に端を発し、エアロゾル発生点より下流にある、使用者の口内に挿入されるマウスピースの先端で終わる。気道は、エアロゾル発生点より上流で曲線状でもよく、エアロゾル発生点およびより下流で直線状でもよく、より好ましくは気道の長さ全体にわたって直線状または実質的に直線状である。別の実施形態において、気道の中心線は、エアロゾル発生点より下流で実質的に直線状でもよく、および壁はわずかな発散角を有してもよく、好ましくは、壁は中心線から7°程度以下の角度で発散し、エアロゾル発生点の下流の点で始まり、使用者の口内へ挿入されるマウスピースの先端まで続く。気道の内壁は、一実施形態において、垂直方向、水平方向、または両方の組合せのいずれかに走る、押し出しおよび溝の配置を包含してもよく、これらは、エアロゾル粒子をそれらが凝集する前に分離することを意図する、意図的な乱流を生成する。好ましい実施形態において、気道の内壁は、均一な流れを可能にするために、滑らかであるか、または実質的に滑らかである。
【0121】
エアロゾル化ヘッドからの製剤の蒸発を防止するために、製剤ポケットは、好ましくは、エアロゾル化ヘッド内で実質的に完全に密封され、唯一の開口部は、1または複数の製剤供給ラインであり、それは製剤チャンバ(複数可)、ノズル孔の配列、および様々な実施形態において、製剤ポケットからの流れを可能にする開口部(複数可)、および/または製剤ポケットから空気が出るのを可能にするために使用される多孔質材料中の微細孔につながる。一実施形態において、ノズル孔を通じた製剤担体の蒸発を制限するために、また製剤の乾燥およびノズルの出口側で沈着した製剤からの固形物の生成を制限するために、配列の出口側は、密封システムによって投与の合間は密封され、密封システムは、投与またはパフの合間にノズルを装置外部の空気から隔離するために、第1の位置に取り外し可能に位置することができ、使用者が気道を通して吸入しているときに、第2の位置へ移動することができる。密封システムが装置の使用の合間に第1の位置にある場合、ノズル配列の出口の周りの領域を実質的に密封し、その領域を実質的に100%の相対湿度に維持し(ノズルの外側に沈着した製剤からの担体の蒸発による)、それにより、ウィッキング要素または製剤ポケットが担体を失い、ノズル孔を通じた製剤担体の拡散により濃度が上昇するのを防ぐ。加えて、エアロゾル発生後に基板の出口側を覆ういかなる製剤も、高相対湿度環境において蒸発することができず、従って、続くエアロゾル発生を乱しうる乾燥製剤成分の層を残すことができない。第1の位置における密閉システムの閉鎖は、気道の全部または一部への空気の出入りを遮断する要素によって達成されうる。関連する実施形態において、密封は、投与後に使用者によって交換されるマウスピースカバーと組み合わせて、気道への入り口を遮断する可動要素によって達成される。この実施形態において、周囲空気から密閉される気道の領域は、気密、または実質的に気密な、空気充填空間であり、ここで先行する投与事象により沈着したエアロゾル液滴は、乱流堆積、慣性衝突、インターセプション、および重力沈降を含むメカニズムによって、気道壁上にある。好ましい実施形態において、エアロゾル密封システムは、壁上に沈着する製剤の量が、気道の密封された部分内に収容される空気を蒸発した担体で飽和させるのに十分以上または本質的に十分であり、さらなる担体の蒸発、またはノズルの中、上、または周辺にある、またはノズルの配列の出口側にある製剤の乾燥を阻害するように、最適化される。別の実施形態において、密封システムは、一端上に適合性材料を有するレバーアームなどを備え、この適合性材料は、シリコーン、ゴム、PTFE、クローズドセル発泡体、または他の柔軟な材料でありうるが、これらに限定されず、その際、材料は基板と接触し、製剤の漏れ、蒸発、および乾燥を防ぐために、第1の位置にあるときに、全てのまたは実質的に全ての配列のノズルを遮断する。別の実施形態において、適合性材料へ取り付けられ、ノズルと接触し、吸収性があり、および基板上に沈着した全ての製剤を吸収する、追加材料がある。一実施形態において、密封システムの第1の位置から第2の位置への動きは、気道を通して吸入する患者の圧力によって達成される。別の実施形態において、密封システムの動きは、システム電池によって動力供給されマイクロコントローラによって制御される、電気機械的アクチュエータの手段によって、達成される。好ましくは、密封システムの開閉は、使用者がボタンを押す力によって作動され、好ましくはまた、送達のために装置を準備し、および/またはエアロゾル発生の開始をトリガーする。一実施形態において、これは機械的システムであってもよく、密封機構の第2の位置への動きは、使用者がボタンを押す物理的力によって動力供給される。別の実施形態において、動きは、使用者がボタンを押すことによってトリガーされる、電気機械的システムによって達成される。一実施形態において、密封システムは、電気機械的アクチュエータによって第1の位置まで戻される。別の実施形態において、システムは、リターンスプリングなどによって第1の位置まで戻される。一実施形態において、エアロゾル発生は、使用者がボタンを離すとき、または予め決められた量の製剤がエアロゾル化されたときの、いずれか先に来たときに停止され、密封システムは、使用者が肺の奥深くまでエアロゾルを吸入することを可能にするために、予め決められた遅延の後に、ノズル配列を密封するその位置まで戻される。
【0122】
一実施形態において、製剤ポケットのウィッキング要素は、エアロゾル化が終了した後に、ノズルの上、中、または周辺に残る全ての液体を吸収する。これによって、ノズルの中および周辺で液体が乾燥するのを防ぎ、そうでなければ製剤成分が乾燥し、今後のエアロゾル化を乱す可能性がある。ウィッキング要素は、エアロゾル化器上のノズルの配列の入口側に対して、全体的または部分的に同一平面に配置されるか、または角度をつけて配置されることを含む、任意の方向でこれを達成しうる。別の実施形態において、エアロゾル化の終了時に、製剤ポケット内の圧力が大気圧以下となるように、エアロゾル化ヘッドまたはエアロゾル化ヘッドの構成要素内に減圧が生じてもよく、その際、空気は、エアロゾル化ヘッドの製剤ポケット内へノズル(複数可)を通して流れ、エアロゾル化が終了した後に、ノズルの中、上、または周辺にある全ての製剤を吸い込みうる。これは例えば、ポンプ要素を逆に走らせることによって、または空気が製剤キャビティ内へ流れうる速度を制限することによって、エアロゾル化後にエアロゾルキャビティの圧力低下および膨張をもたらし、達成されうる。
【0123】
好ましい実施形態において、エアロゾルは、気道を通る希釈空気流の方向に対して本質的に90゜の角度で、気道内に発生する。この実施形態において、使用者が吸入することによって発生する希釈空気流は、エアロゾルを90゜の角度で乗せ、それを気道から使用者の口および肺の中へマウスピースを介して運ぶ。好ましい実施形態において、気道を通る気流は、層流、または実質的に層流である。気道壁上に沈着するエアロゾルの量を減少させるために、好ましい実施形態は、使用者が吸入しているときに気道における圧力降下を検出する圧力センサを包含し、その際、コントローラは、予め決められた圧力降下を超えたと決定すると、エアロゾル化器を作動させ、エアロゾルを発生させる。これにより、エアロゾルを乗せてそれを使用者の口および肺の中へ運ぶのに十分な量の希釈空気が、気道を通って流れているときにのみ、エアロゾルが発生することが保証される。好ましい実施形態において、エアロゾルが発生している間に使用者の吸入速度が閾値を下回らない限り、エアロゾルは一定時間発生し、この場合、コントローラは、十分な吸入空気流速の不足を感知し、エアロゾル化を停止する。一実施形態において、コントローラは、測定された圧力降下の過去の較正に基づいて吸入流速を計算し、例えば吸入流速を経時的に積分することによって、吸入体積を計算する。この実施形態において、一定時間に達しておらず、かつ、使用者がエアロゾルを肺の奥深くまで吸入するのに十分な残りの肺体積を有すると、予め決められたアルゴリズムによってコントローラが推定する、両方の場合、コントローラはエアロゾル化器を作動させる。一実施形態において、測定された圧力が予め決められた閾値を下回ったため、一定時間に達する前に発生したエアロゾルが停止された場合は、コントローラは、使用者が吸入速度を増加させ、まだ十分な肺体積が残っている間に再び圧力閾値を超えた場合に、エアロゾル発生を再び開始する。目標とする一定のエアロゾル化時間が達成されない場合、ポンピングシステムを介してエアロゾル化ヘッドへ送達される製剤の量は、空気充填ヘッドスペースの存在なしに製剤ポケット内の理想的な圧力を維持するために、それに応じて減少する。使用者が適切な流速で吸入するよう案内するために、装置は、適切な流速が達成されるときに、音、振動、または好ましくは光などの信号を提示しうる。一実施形態において、使用者には、使用者が予め決められた最適範囲の流速内で吸入しているときには点灯ライト、例えば緑色または青色のライトが示され、使用者が最適範囲未満の流速で吸入しているときにはライトが示されず、吸入流速が最適範囲を超えるときには異なるライト、例えば赤色および/または点滅するライトが示される。
【0124】
製剤ポケット内の圧力は、圧力変換器を介して監視されてもよく、ポンピングシステムは、製剤を製剤ポケットへ送達し、それを理想的な圧力でまたはその直下で維持する。一実施形態において、理想的な圧力は、100mmHg程度以下、50mmHg程度以下、25mmHg程度以下、10mmHg程度以下、7.5mmHg程度以下、5mmHg程度以下、2.5mmHg程度以下である。好ましくは、圧力は実質的にゼロである。ノズル配列を通して液体が押し出されるのをなくすためには、ゼロ圧力が好ましい。一実施形態において、バルブは製剤チャンバの出口の近くに配置される。圧力変換器が、ゼロを超えるゲージ圧(ポケット内の圧力が周囲空気の圧力より高い)を感知すると、バルブが開き、液体が柔軟な製剤チャンバ内へ流れることにより圧力が緩和されるようにする。圧力変換器が、ゲージ圧がゼロ未満であること(周囲空気の圧力がポケット内の圧力より高い)を感知すると、バルブが閉じ、柔軟な製剤チャンバが膨張して空気がノズル孔内へ押し出されるのを防ぐ。
【0125】
好ましくは、マウスピースは、カートリッジ筐体へ堅固に取り付けられ、より好ましくは、カートリッジ筐体の一部として機械加工される、好ましくは成形される特徴である。好ましくは、噴霧要素は、ピエゾ環が気道から離れた基板の側で基板へ取り付けられ、基板の周囲が気道壁と同一平面になるように構成され、非層流および気道でのエアロゾル沈着をもたらしうる段差を防止する。好ましくは、エアロゾル化ヘッドは、エアロゾル化器が外れることまたは気道内へ落ちることを防ぐ構造を包含する。好ましくは、エアロゾル化器は、エアロゾル化ヘッドへ堅固に接着されず、むしろエアロゾル化器は、シリコーン粘着を含むがこれに限定されない工程または材料によってエアロゾル化ヘッドへ接着され、この接着は、エアロゾル化速度および品質への有害な影響を回避するために、圧電変換器の振動の減衰を防止するか、または実質的に減少させる。好ましい実施形態において、粘着剤、好ましくはシリコーンはまた、ピエゾを密封し、製剤からピエゾ内への担体の侵入を防ぐ役割をも果たす。
【0126】
上記の構成要素であるマウスピース、気道、エアロゾル化ヘッド、ポケット、製剤キャビティ、流路、チューブ、および製剤チャンバ(複数可)は、カートリッジと称される1つの構成要素内に収容されうる。カートリッジは、4つの主要構成要素を備える;すなわち、マウスピース、気道、エアロゾル化ヘッドとその下位構成要素、および製剤収容および送達システムとその下位構成要素である。電池、圧力変換器、ポンプモーター、マイクロコントローラ、ボタン(複数可)、インジケータライト、ディスプレイ、および他の電子構成要素を含む、他の構成要素は、システムの耐久性システム要素部分内に収容され、およびカートリッジは、耐久性システム要素へ取り外し可能に取り付けられる。
【0127】
好ましい実施形態において、耐久性システムは、液体製剤をカートリッジ内の製剤チャンバ(複数可)からエアロゾル化ヘッドの製剤ポケットへ動かすためのシステムを、好ましくは製剤を制御された流速でポンプするためのシステムを包含し、ここでこのシステムは、液体製剤を動かすための、1または複数のポンピング機構または他の適切なシステム(以下、それぞれポンピングシステムおよびポンプ(複数可)と称する)を備えうる。好ましくは、各製剤の流速(その流れはエアロゾル発生と同時および/または順次に起こりうる)は、計算システムによって決定され、ここで計算システムは、装置内に配置されるか、または例えば適切な流速を決定するために必要な計算を行うモバイルアプリケーション内に遠隔配置されるかの、いずれでもよい。さらに、ポンピングシステムは、1または複数の製剤を1つの製剤内へ混合することを意図してもよく、この混合製剤は、エアロゾル化ヘッド内の製剤ポケットへ送達される。一実施形態において、製剤の流れは、2つの別個のマイクロ流体ポンプの使用を含むがこれに限定されない方法によって達成され、ここで1つのマイクロ流体ポンプが有効成分(好ましくはニコチン)含有製剤を動かし、1つのマイクロ流体ポンプが第2の、好ましくは非有効成分含有製剤を動かす。好ましい実施形態において、このポンピングシステムは、マイクロ流体ポンプおよびチューブを使用して、製剤容器とエアロゾル化ヘッドの製剤チャンバへの入口ポートとの間に流体接続を作成する。
【0128】
一実施形態において、ポンピングシステムは、複数の(好ましくは2つの)製剤をエアロゾル化の前に混合するための、混合システムを備える。一実施形態において、混合システム内へ導入される第1および第2の製剤の体積の合計は、常に同じ量になる。この量は、エアロゾル化システムによって、各パフあたりに、または一定数のパフ、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、8以上、10以上、15以上、または20以上のパフあたりに、エアロゾル化される製剤の体積でありうる。好ましい実施形態において、2つの体積の合計は可変であり、体積は以下を含むがこれらに限定されないリストから選択されうる:エアロゾル化されると予想される量、投与事象あたりにエアロゾル化されると予想される量、パフあたりにエアロゾル化されると予想される量、過去にエアロゾル化された量、投与事象において過去にエアロゾル化された量、およびパフにおいて過去にエアロゾル化された量。
【0129】
好ましい一実施形態において、ポンピングシステムは混合システムを包含し、ここで2以上のマイクロ流体ポンプ、または製剤を動かすための同等の機構の出力は、均質な、実質的に均質な、または部分的に均質な製剤に組み合わされる。混合システムは、一実施形態において、混合チャンバを備え、1または複数の製剤がチャンバ内で混合される。混合チャンバは、2つのマイクロ流体ポンプが流体を供給するための入口を有する、および混合製剤をエアロゾル化器へ供給するための1つの出口を有する、密閉された空洞であり、その出口は、第3のマイクロ流体ポンプ、ウィッキング要素、好ましくは発泡材料、またはマイクロ流体ポンプとウィッキング要素との組合せ、を含むがこれらに限定されない要素へ、接続されうる。混合チャンバは、一実施形態において、混合要素を包含してもよく、この混合要素は、混合を促進するために液体内に乱れを引き起こす圧電アクチュエータでありうるが、これに限定されない。好ましい実施形態において、この混合チャンバは、エアロゾル化ヘッド内の製剤チャンバであり、混合チャンバは、エアロゾル化器と直接流体接触する。
【0130】
別の好ましい実施形態において、混合システムは、複数の混合チャンバ、好ましくは2つの混合チャンバを備える。これがどのように機能しうるかの一例は、以下の通りである:第1の製剤が第1の混合チャンバ内へ導入され、これには先に混合された製剤が既に収容されている。この導入により、既に混合された製剤の一部が、第2の混合チャンバ内へ押し出され、第2の混合チャンバ内の混合製剤の一部が、混合システムからエアロゾル化機構に向かって押し出される。続いて第2の製剤が、その後第2のチャンバ内へ導入され、先に混合された製剤の一部が、第2のチャンバから前と同様に押し出される。好ましくは、第1および第2の混合チャンバの体積および形状、および第1および第2の製剤が入るための通路、および混合製剤が出るための通路は、混合されていない第1および第2の製剤が、この導入段階中に混合システムから出ないように構成される。続いて、入口ポートおよび第2の混合チャンバからの出口ポートが閉鎖され、内容物が完全に混合されるまで、液体が2つのチャンバ間を往復させられる。この強制は、2つの混合チャンバ間に1または複数のポンプを用いて、達成されうる。好ましくは、2つの混合チャンバ自体がポンプ機能を有する。例えばそれらは、作動機構によってチャンバの内側へ押し出されうる、各々柔軟な壁を有しうる。往復ポンプをするために、チャンバへの入口および第2のチャンバからの出口が閉鎖され、一方とそれから他方の作動機構を交互に作動させて、2つのチャンバ間で往復ポンプをさせる。
【0131】
別の実施形態において、混合チャンバは存在せず、1または複数の製剤は、ポンピングシステム自体内で、好ましくはポンピングシステムを構成するチューブ、流路、または他の通路内で混合され、ここで通路は、混合を促進するための、長く相対的に狭い通路、曲がりくねった経路、羽根、パドルなどの特徴(可動および非可動の両方)によって特徴付けられうるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、1または複数の製剤チャンバからポンプされる1または複数の製剤は、1つのチューブ、流路、または他の通路内へポンプされ、ここで製剤はこの通路内で混合され、その後混合されまたは実質的に混合された製剤は、エアロゾル化ヘッドの製剤チャンバ内へ送達される。
【0132】
関連する実施形態において、2つの製剤を製剤チャンバ(複数可)から送達するポンプは、各々がn個のチャンバを有するチャンバ型マイクロポンプとして構成され、ここで1/nが投与制御の望ましい再配合(reformulation)である。用量を滴定するために、第1の製剤の最遠位のm個のチャンバと第2の製剤の最遠位のn-m個のチャンバとを接続する流路が開かれ、マイクロポンプを使用して、製剤を2つのライン間で往復ポンプさせ、混合を効果的にする。例として、n=10の場合、m=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10が、元の有効成分含有製剤濃度の100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、および0%の製剤濃度をもたらす。
【0133】
一実施形態において、ポンピングシステムは、2つの別個のマイクロ流体ポンプを備え、1つのマイクロ流体ポンプが有効成分(好ましくはニコチン)含有第1の製剤を動かし、1つのマイクロ流体ポンプが第2の(好ましくは非有効成分含有)製剤を動かす。マイクロ流体ポンプからの出力は、エアロゾル化ヘッドの製剤ポケットへ直接送達され、このチャンバは、空のチャンバでもよく、またはウィッキング要素を備えてもよい。一実施形態は、吸収性ウィッキング要素を備えてもよく、ここで各マイクロ流体ポンプ、または流体を動かすための同等の機構の出力は、ウィッキング要素へ供給される。別の実施形態において、2つの製剤は、エアロゾル化ヘッドの製剤ポケット内で本質的に完全に混合し、エアロゾル化器によって形成されるエアロゾルは、本質的に同じ濃度の少なくとも1つの有効成分を含有する、液滴で構成される。別の実施形態において、製剤ポケット内で混合が起こらないか、あるいは不完全な混合が起こり、形成されたエアロゾルは、異なる濃度の少なくとも1つの有効成分を有する、粒子を有する。
【0134】
別の実施形態において、ポンピングシステムは、1つのマイクロ流体ポンプを包含し、このポンプは、少なくとも1つの製剤を、好ましくは2つ以上の製剤を、別個の製剤チャンバからポンプするために使用され、および、1または複数の製剤チャンバからの製剤の流れを制御するためのバルブを包含する。好ましい実施形態において、ポンプより上流に位置する1または複数の通路は、1または複数の製剤チャンバを、中央通路へ、好ましくはチューブへ接続し、その後中央通路は、マイクロ流体ポンプの入力へ直接接続し、マイクロ流体ポンプの出口へ進み、混合要素へ送達され、これは好ましくはエアロゾル化ヘッドの製剤ポケットである。一実施形態において、バルブは、1または複数の通路がポンプの上流で中央通路へ合流する収束点に配置され、バルブの位置は、電子信号を介して制御されることができ、バルブは、1または複数の製剤チャンバのうちの1つを除く全てからの流れを遮断するように配置され、従って1または複数の製剤のうちのどれがポンピングシステム内へポンプされるかを制御する。別の実施形態において、1または複数の製剤チャンバへ接続する1または複数の通路の各々は、電子的に制御されるバルブを包含し、このバルブは、製剤がポンピングシステムを通って流れることができる開位置に、または製剤がポンピングシステムを通って流れることができない閉位置に、配置されうる。別の実施形態において、1または複数の製剤チャンバに接続する1または複数の通路は、各々バルブを包含し、このバルブは、通路を通る製剤の流れを部分的に制限するように配置されうる。この実施形態において、1または複数のバルブの位置は、1または複数の製剤の各々の流れを決定して、製剤の適切な混合物を達成するために、独立して制御される。上記の実施形態において、バルブ(複数可)の位置は、1または複数の製剤の特定の混合物を達成するように制御され、この混合物は、時間の長さ、システムの使用期間、吸入の回数、および投与事象の回数を含むがこれらに限定されない、1または複数の要因によって決定されうる。
【0135】
好ましい実施形態において、システムは単一の製剤および単一のポンプのみを包含する。
【0136】
耐久性システム内の微小流体ポンプが使用される一実施形態において、カートリッジと耐久性システムとの間に少なくとも2つの流体接続点があり、1つは各製剤チャンバのために、製剤が製剤チャンバ(複数可)から耐久性システム内のポンプ(複数可)へ流れることを可能にするためであり、1つはカートリッジが耐久性システムへ接続される際に、ポンプからエアロゾル化ヘッドへの製剤の流れを可能にするためである。適切な使用を可能にするのに十分な量の製剤を収容しなくなったカートリッジ(以降、「使用済みカートリッジ」と称する)が、装置の耐久性システムから取り外され、新しいカートリッジと交換される場合、汚染物質がシステム内へ導入されないことが重要である。空気の侵入を避けることもまた重要であるが、これにより適切なエアロゾル化が妨げられ、ポンプの再始動が必要となりうるためである。流体接続点は、耐久性システムへ接続する際に貫通される、金属箔、ポリマー、またはメッシュ材料を含むがこれらに限定されない材料の、フィルムでありうる。フィルムの好ましい材料には、PTFE、ポリプロピレン、および/またはシリコーンを含むが、これらに限定されない。別の実施形態において、接続点は、カートリッジを耐久性システムへ接続する際に開く、バルブでありうる。好ましい実施形態において、接続点(複数可)は、少なくとも1つの突き刺し可能なシリコン隔壁、好ましくは2つの突き刺し可能な隔壁を備えてもよく、ここで1つは耐久性システムの表面上に位置し、第1の隔壁と称され、1つはカートリッジの合わせ面上に位置し、第2の隔壁と称され、および、カートリッジまたは耐久性システムのうちの一方へ取り付けられる針、好ましくはノンコアリングニードル(non-coring needle)を備えてもよい。カートリッジを耐久性システムへ取り付ける際に、針が隔壁を突き刺して、水密および気密密封を作る。好ましくは、針は、カートリッジと耐久性システムとの接続および解放の際に、好ましくはバネ(ただし、これに限定されない)の手段によって、隔壁を通って引き出され、隔壁から引き込まれうる。針が耐久性システムへ取り付けられる実施形態において、隔壁を通る針の引き出しおよび引き込みは、以下によって達成されうる:1)第2の隔壁をカートリッジへ堅固に接続すること、2)バネが圧縮され、第1の隔壁をストップに押し付けるように、第1の隔壁を耐久性システムへスライド可能に接続すること。カートリッジを耐久性システムへ接続する際に、第1の隔壁は、バネを圧縮し針が第1の隔壁を突き刺すように移動し、その際に針は第1の隔壁から伸び、第2の隔壁を貫通し、および第2の隔壁の反対側から出て製剤チャンバへ通じる流路またはチューブの中へ伸びる。好ましい実施形態において、突き刺し可能なシリコーン隔壁の少なくとも1つ、好ましくは第1の隔壁は、カートリッジが耐久性システムから取り外される際に針の先端を覆い、ここでこの隔壁は自己修復性であるため、針の先端を覆って気密密封を作り、そのような空気および汚染物質の侵入を防止する。この接続点はさらに、カートリッジを耐久性システムへ接続する際には、カートリッジと耐久性システムとの間に液体を通すが、カートリッジが接続されていないときには、液体の流れ、蒸発、空気の侵入、または製剤の汚染を許さない、任意の他の実施形態でありうる。
【0137】
一実施形態において、ポンプは、モーター、ギヤヘッド、ローターまたは偏心カム、位置合わせカム、リング、柔軟なチューブの一部、およびチューブの支持面から選択されるがこれらに限定されない構成要素を備える、蠕動ポンプである。蠕動ポンプの一実施形態において、モーターがローターを回転させ、このローターが少なくとも1のローラーを円運動させ、その際にローラーは柔軟なチューブの一部に沿って回転し、チューブを通る流れを作るために、それを支持面に対して圧縮する。蠕動ポンプの別の実施形態において、モーターは偏心カムを回転させ、この偏心カムはリング(偏心カムがリング内に完全に収まるのに十分な直径であることを特徴とする)によって取り囲まれており、その後モーターを作動させると、偏心カムが回転し、それによってリングを移動させ、リングがチューブの一部を支持面に対して円形パターンで順次圧縮し、それによってチューブを通る流れを作る。システムが耐久性システム装置と分離可能な複数回投与カートリッジとを備える実施形態において、モーター、ギヤヘッド、および偏心カムまたはローターは、耐久性システムの一部であり、チューブ、リング、および支持面は、使い捨ての一部であることが好ましい。
【0138】
一実施形態において、ポンピングシステムは、1つのポンプ、好ましくは蠕動ポンプを包含し、このポンプは、少なくとも1つの製剤、好ましくは2つ以上の製剤を、別個の製剤チャンバからポンプするために使用され、および、製剤チャンバからの製剤の流れを制御するためのバルブを包含する。一実施形態において、ポンプより上流に位置する1または複数の通路が、1または複数の製剤チャンバを、中央通路へ、好ましくはチューブへ接続し、その後中央通路は蠕動ポンプの入力へ直接接続し、蠕動ポンプの出口へ進み、製剤ポケットへ送達される。一実施形態において、バルブは、1または複数の通路がポンプの上流で中央通路へ合流する収束点にまたはその近傍に配置され、ここでバルブの状態(流れが許容される、流れが遮断される、任意選択で流速が制御される)は、機械的におよび/または電子信号を介して制御されることができ、バルブは、1または複数の製剤チャンバのうちの、全て、1つを除く全て、サブセットを除く全てからの流れを遮断するように、またはいずれからの流れも遮断しないように、配置され、従って1または複数の製剤のうちのどれがポンピングシステム内へポンプされるかを制御する。別の実施形態において、1または複数の製剤チャンバへ接続する1または複数の通路の各々の通路は、電子的に制御されるバルブを包含し、このバルブは、製剤がポンピングシステムを通って流れることができる開位置に、または製剤がポンピングシステムを通って流れることができない閉位置に、配置されうる。別の実施形態において、1または複数の製剤チャンバに接続する1または複数の通路は、各々バルブを包含し、このバルブは、通路を通る製剤の流れを部分的に制限するように配置されうる。この実施形態において、1または複数のバルブの各々の位置は、1または複数の製剤の各々の流れを決定して、製剤の適切な混合物を達成するために、独立して制御される。上記の実施形態において、バルブ(複数可)の状態は、1または複数の製剤の特定の混合物を達成するように制御され、この混合物は、時間の長さ、システムの使用期間、吸入の回数、および投与事象の回数を含むがこれらに限定されない、1または複数の要因によって決定されうる。
【0139】
好ましくは、カートリッジが最初に使用される前に、1または複数の製剤チャンバの出口が閉じられて、1または複数の含有製剤が、保管および輸送中は製剤チャンバとのみ接触し、最初の使用中および使用後はいずれかのチューブ、流路、ポケット、またはエアロゾル化器とのみ接触することを保証する。これにより、水(または他の担体)の蒸気透過率、溶出可能性、抽出可能性、および/または薬物安定性を含むがこれらに限定されない長期保管特性のために、チャンバ材料を選択することができ、および流路の他の部分の材料は、機械的柔軟性、製造の容易さ、エアロゾル化性能などを含むがこれらに限定されない他の特性のために、選択することができる。
【0140】
好ましくは、上述の実施形態において、モーター、ギヤヘッド、電子装置、電池、ボタン、ライト、ディスプレイ、エアロゾル化器、偏心器、リング、または蠕動ポンプのローターから選択されるがこれらに限定されない要素が、耐久性システムの構成要素であり、ここで、エアロゾル化器;支持面、柔軟なチューブ、ローター、偏心器、およびリングから選択されるがこれらに限定されない要素を備える、ポンプヘッド;1または複数の製剤、製剤チャンバ、通路、チューブ、フィルタ、および気泡除去器から選択されるがこれらに限定されない要素が、全てカートリッジの構成要素である。これにより、1または複数の製剤が、装置のいかなる耐久性システム構成要素とも直接流体接触することは決してなく、薬物接触面は、カートリッジ内に完全に収容されることが保証される。これを達成するために、蠕動ポンプモーターは、耐久性システム内に配置され、カートリッジが耐久性システムへ取り付けられる際に、チューブがリングの外径によって圧縮されるように配置され(これらは両方ともカートリッジの一部である)、耐久性システムの一部であるポンプモーターが作動すると、モーターはポンプのローターまたは偏心カムを回転させ、流れを作り出すためにチューブの一部を順次圧縮する。蠕動ポンプとチューブという、ポンピングシステムの2つの重要な構成要素のこの接続は、カートリッジを装置の耐久性システムへ取り付けることによってのみ達成される。
【0141】
ポンピングシステムは、製剤を、好ましくは製剤の混合物を、エアロゾル化器へ輸送するための、供給機構を組み込む。この供給機構は、液体を混合要素からエアロゾル化器へポンプするために、マイクロポンプ、蠕動ポンプ、または他の能動ポンプ構成要素を組み込みうる。好ましくは、前述のポンピング機構はまた、製剤をエアロゾル化器へ供給するためにも使用され、供給機構は、本質的に1または複数の通路のみである。ポンピング機構は、製剤をエアロゾル化器へ、エアロゾル化の間、エアロゾル化器が製剤を消費する速度と実質的に同じ流速で、供給してもよく、一実施形態において、このことはウィッキング要素へ製剤を送達する流路によって達成され、ここで製剤は、ウィッキング要素の中央部へ、端部へ、または任意の他の部分へ送達されてもよく、別の実施形態において、このことはウィッキング要素を有しない製剤ポケット内へ製剤を送達する流路によって達成される。ポンピング機構はまた、製剤をエアロゾル化器へ、エアロゾル化の間、前、および後に、エアロゾル化速度よりも大きい、等しい、または小さい流速で、供給しうる。好ましくは、製剤ポケットおよび他の製剤含有体積には、いかなる空気充填ヘッドスペースもない。この実施形態において、製剤は、エアロゾル化の間に製剤チャンバから引き出され、続いてエアロゾル化器の後ろに空気充填ヘッドスペースが生じるのを防ぐために、必要に応じて補充されうる。
【0142】
耐久性システムは、以下から選択されるが、これらに限定されない要素を包含する:電源、これは電池またはセル、好ましくは充電式電池またはセル(好ましくはリチウムを含む)でありうるが、これらに限定されない;プリント回路基板;充電ポート、これは好ましくはプリント回路基板へ機械的に取り付けられ、装置の外部からアクセス可能である;液体ポンピングシステムを駆動するための回路、エアロゾル化器を駆動するための回路、ライト、ディスプレイ、ボタン、および少なくとも1の圧力センサ。これらの回路は、回路基板上の分離したサブシステムでもよく、または特定用途向け集積回路内に組み込まれてもよい。好ましくは、回路基板は、装置の機能に電力供給し、エアロゾル化器およびポンピングシステムを制御し、および、一実施形態において、ポンピングシステムの各マイクロ流体ポンプのために適切な流速および分配体積を決定および制御する、計算システムを備える。計算システムは、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される要素を制御し:1または複数のポンプの流速、1または複数の製剤チャンバからの流れを制御する1または複数のバルブの状態、エアロゾル化器へ供給される電圧、エアロゾル化器の構成要素の振動の振幅、1または複数のポンプのポンプする持続時間、エアロゾル化器のエアロゾル化の持続時間;その結果、使用者へ送達されるニコチン(または他の有効成分)の量が、経時的に一貫して低下する。例えば、装置の最初の使用時に、装置は、平均吸入あたりのニコチンの最初の総放出用量が、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される範囲になるように、制御されうる:約0.05~約2mg、約0.1~約1mg、約0.2~約0.5mg、約0.25~約0.3mg。その後、ニコチンの量は減少し、例えばニコチン含有製剤の流速は減少し、非ニコチン含有製剤の流速は増加し、その結果、約1週間~約1年、約1か月~約6か月、約2か月~約4か月、好ましくは約3か月から選択される期間の後、平均吸入あたりのニコチンの総放出用量は、およそ0mgとなってもよく、例えばここで、製剤の総エアロゾル化体積は、実質的に一定である。これは明確化のためだけの一例にすぎない。パフあたりのニコチンの好ましい開始量は、好ましくは2mg/パフ程度以上、1.5mg/パフ程度以上、1.2mg/パフ程度以上、1mg/パフ程度以上、0.8mg/パフ程度以上、0.6mg/パフ程度以上、0.5mg/パフ程度以上、0.4mg/パフ程度以上、または0.3mg/パフ程度以上である。ニコチンの終了量は、好ましくは1mg/パフ程度以下、0.8mg/パフ程度以下、0.7mg/パフ程度以下、0.6mg/パフ程度以下、0.5mg/パフ程度以下、0.4mg/パフ程度以下、0.3mg/パフ程度以下、0.2mg/パフ程度以下、0.1mg/パフ程度以下、または約0mg/パフである。
【0143】
以下に詳述されるように、エアロゾル装置の構成要素が添付図において詳述される。図1は、本発明のエアロゾル装置101の、一実施形態を示す。エアロゾル装置101は、マウスピース部102、マイクロ流体およびエアロゾル部103、および電子装置部104を備える。マウスピース部102は、吸入流路105、第1の製剤107を収容する第1の製剤容器106、および第2の製剤109を収容する第2の製剤容器108を備える。筐体110は、マイクロ流体およびエアロゾル部103および電子装置部104を収容する。マウスピース102は、吸入流路105が基板111に形成されるノズル配列112と位置合わせされる(aligned)ように、筐体110へ取り付けられる。
【0144】
第1の供給流路113は第1の製剤容器106へ接続し、第1の製剤107はマイクロ流体板115へ送達され、第2の製剤109もマイクロ流体板115へ同様に送達される。第1の製剤107と第2の製剤109は、混合チャンバ116内で混合され、その後ウィッキング要素117を介してノズル配列112へ送達される。
【0145】
マイクロ流体板115上のマイクロ流体構成要素は、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)118上の電子装置によって制御され、これは電池119によって電力供給される。電池119は充電可能であり、充電ケーブル(図示せず)を充電ソケット(charging receptacle)120へ接続することにより、充電される。
【0146】
図2は、マウスピース102の、より詳細な図である。この実施形態において、マウスピース102はキー201を備える。マウスピース102が筺体110へ取り付けられる際に、キー201はマウスピース102が正しい向きでしか取り付けられないように保証する。マウスピース102はまた、マウスピース102が明確に、しかし取り外し可能に筐体110へ取り付けられるように保証する、ラッチ機構202を備える。好ましいラッチ202は、マウスピース102が筐体110へ正しく取り付けられていることを、使用者へフィードバックする。好ましいフィードバックには、可聴クリックおよび/または触覚クリックを含むが、これらに限定されない。品目203は、突き刺し可能な要素、好ましくは膜である。マウスピース102が耐久性部分121へ取り付けられる際に、供給チューブ113および114が突き刺し可能な膜203を突き刺し、マイクロ流体板115への製剤の流れを可能にする。
【0147】
第1の製剤容器106は、第1の製剤107を収容する。一実施形態において、第1の製剤107は、第1の容器106の壁と直接接触し、第1の容器106の壁は、許容可能な抽出可能性、許容可能な溶出可能性、第1の製剤107に対する安定性と一致する材料、製剤107の主要成分への許容可能な低結合性、および製剤107の担体に対する本質的な不透過性を備える、必要な容器閉鎖特性を有する。一実施形態において、担体は水および/またはエタノールを含む。第2の製剤容器108は、第2の製剤109に関して本質的に同じ特性を有する。
【0148】
一実施形態において、製剤107は容器106の壁と直接接触せず、むしろ容器106の壁が、第1の製剤107のための主要な容器閉鎖システムを、囲みかつ保護する。容器閉鎖システムは、許容可能な抽出可能性、許容可能な溶出可能性、第1の製剤107に対する安定性と一致する材料、製剤107の主要成分への許容可能な低結合性、および製剤107の担体に対する本質的な不透過性を備える、必要な特性を有する。一実施形態において、担体は水および/またはエタノールを含む。
【0149】
容器閉鎖体106および108は、本質的に硬質であってよく、ガラス、好ましくはホウケイ酸ガラス、金属、好ましくはステンレス鋼、またはポリマーを含むがこれらに限定されない材料を含みうる。容器閉鎖システムは、柔軟でありポリマーを含む、少なくとも1の壁を備えうる。柔軟な容器は、ポンプに背圧を生じさせることも、製剤容器106内への空気の侵入を必要とすることもなく、および方向と重力に依存しないように製剤容器106から製剤をポンプできることを保証する、という利点を有する。好ましい実施形態において、少なくとも1の柔軟な壁は、多層ラミネートであり、以下を含むがこれらに限定されない1または複数の層を含みうる:ポリエチレン、またはフルオロポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でありうるがこれらに限定されない、相対的に不活性なポリマーを好ましくは含む、薬物接触層;金属、好ましくはアルミニウムを、好ましくは含む、蒸気透過層;および、好ましくはナイロンなどのポリアミドである、構造層。第2の製剤容器108は、好ましくは、第2の製剤109に関して本質的に同じ特性を有する、容器閉鎖システムを有する。
【0150】
図3は、本発明の一実施形態のマイクロ流体およびエアロゾル部103へ取り付けられる、マウスピース102の詳細を示す。第1の供給流路113は、製剤容器106内の第1の製剤107と流体接触しており、そのため第1の製剤107の一部を必要に応じて引き出しうる。図3に示される実施形態において、尖った端301は、第1の突き刺し可能な隔壁302を通って延びる。好ましくは、尖った端301はノンコアリングである。製剤107への流体接続を作る他の方法、例えば、第1の供給流路113が供給される穴またはコネクタが、使用されうる。一実施形態において、マウスピース102は、隔壁302の穴またはコネクタからの漏れ、および穴またはコネクタ内への汚染物質の侵入を防ぐ、キャップ付きで供給される。好ましくは、穴またはコネクタは、第1の供給流路113を製剤容器106内へ挿入する前は閉鎖または密封されているような、穴またはコネクタである。同様の議論が、第2の製剤容器108、第2の製剤109、第2の流路114、および第2の隔壁303にも適用される。
【0151】
図4は、マイクロ流体およびエアロゾル部103を、より詳細に示す。製剤107は、供給路113を通ってマイクロポンプ405によって引き出され、ミキサー116内へポンプされる。一実施形態において、第1のマイクロポンプ405は、ピストン型マイクロポンプである。第1のマイクロポンプ405は、PCBA118上のコントローラの制御下で、m回循環し、m*V1(ここでV1は、第1のマイクロポンプ405の行程体積である)に等しい体積の第1の製剤107を、混合チャンバ116内へ分配する。同様に、第2のマイクロポンプ406は、体積(n-m)*V2(ここでV2は、第2のマイクロポンプ406の行程体積である)の第2の製剤109を、ミキサー116内へ分配する。好ましくは、V1=V2=Vである。一実施形態において、第1のポンプ405はmサイクルをポンプし、続いて第2のポンプ406はn-mサイクルをポンプする。別の実施形態において、第2のポンプ406はn-mサイクルをポンプし、続いて第1のポンプ405はmサイクルをポンプする。好ましいポンプの実施形態において、ポンプ405および406は、混合を最適化するために、実質的に同時にミキサー116内へポンプする。混合後、ポンプ404は、混合製剤をチューブ403を介してエアロゾル化器へ送達する。図示された実施形態において、エアロゾル化器は、ピエゾ401、基板111、および孔の配列112を備える、振動メッシュエアロゾル化器である。ピエゾ401は、筐体402へ据え付けられる。
【0152】
一実施形態において、nは、装置101の寿命にわたって本質的に固定されかつ不変であり、およびmは、送達されるエアロゾル中の1または複数の有効成分の量を変化させるために、変化する。別の実施形態において、nとmは可変であり、ポンプは各投与事象後に作動される。nとmは一般に、異なる投与事象の間で、以下を含みうるがこれらに限定されない1または複数の要因に起因して、変化する:1または複数の有効成分の所望の送達用量、1または複数の有効成分の所望の送達濃度;1または複数の過去の投与事象において摂取されたパフの回数、好ましくは前回の投与事象において摂取されたパフの回数;1または複数の過去の投与事象において摂取されたパフの合計持続期間、好ましくは前回の投与事象において摂取されたパフの合計持続期間;1または複数の将来の投与事象において摂取されると予想されるパフの回数、好ましくは次の投与事象において摂取されると予想されるパフの回数;1または複数の将来の投与事象において摂取されると予想されるパフの予想合計持続期間、好ましくは次の投与事象において摂取されると予想されるパフの合計持続期間;ノズル配列112からの現在のエアロゾル化速度;および/またはウィック(wick)117の飽和のレベル。
【0153】
好ましい実施形態において、nとmは可変であり、ポンプは各パフ後に開始される。nとmの値は一般に、異なるパフの間で、以下を含みうるがこれらに限定されない要因に起因して、変化する:1または複数の有効成分の所望の送達用量、1または複数の有効成分の所望の送達濃度;1または複数の過去の投与事象において摂取されたパフの回数、好ましくは前回の投与事象において摂取されたパフの回数;1または複数の過去の投与事象において摂取されたパフの合計持続期間、好ましくは前回の投与事象において摂取されたパフの合計持続期間;1または複数の将来の投与事象において摂取されると予想されるパフの回数、好ましくは次の投与事象において摂取されると予想されるパフの回数;1または複数の将来の投与事象において摂取されると予想されるパフの予想合計持続期間、好ましくは次の投与事象において摂取されると予想されるパフの合計持続期間;ノズル配列112からの現在のエアロゾル化速度;ウィック117の飽和のレベル:前回のパフの持続時間;および/または、次のパフの予想持続時間。
【0154】
特に好ましい実施形態において、V1=V2=Vであり、各パフの後、第1の製剤107は、第1のポンプ405によってm*Vに等しい量でポンプされ、第2の製剤は、(n-m)*Vに等しい量でポンプされ、n*Vは、前回のパフの間にウィック117から除去された混合製剤の体積に等しい。
【0155】
混合チャンバ116は、本質的に円形のチャンバとして示される。しかしながら、混合チャンバ116は、円形、楕円形、矩形、円盤形、球形、半球形、またはそれらの組合せまたは断面を含むがこれらに限定されない、任意の形状でありうる。好ましい形状は、混合を促進するものであり、長く細い流路およびまたは曲がりくねった形状を含むが、これらに限定されない。第1の製剤107および第2の製剤109は、基本的にどのような形で混合チャンバ内へ導入されてもよいが、好ましくは、製剤107および109の混合を最適化するように、導入される。混合チャンバ116内への導入は、本質的に混合チャンバ116の中心に向かう方向から、本質的に混合チャンバ116の壁の接線方向までの、範囲でありうる。好ましい実施形態において、混合は、第1の製剤107および第2の製剤109の流れの方向が混合チャンバ116内で交差し、互いに向かう実質的な成分を有するように、製剤を混合チャンバ116内へ導入することによって最適化され、好ましくは、混合チャンバ116に入るときの流れの線(すなわち、第1の製剤107および第2の製剤109の流れの中心線であるベクトル)は、45°程度以上の角度で、好ましくは60°程度以上の角度で、90°程度以上の角度で、120°程度以上の角度で、または160°程度以上の角度で、交差する。好ましい実施形態において、混合チャンバ116に入るときの第1の製剤107および第2の製剤109の流れの線は、実質的に互いに直接向けられる。
【0156】
この実施形態および続く実施形態における流体システムは、板として示され、流体板またはマイクロ流体板と称されうるが、流体システムには以下を含むがこれらに限定されない異なる実施形態がありうることが、理解されることに留意されたい:マイクロ流体を使用しない実施形態、複数の板を含む実施形態、および/または板上に据付けられない分離した構成要素を含む実施形態。
【0157】
図5は、流体板515を備える、別の実施形態を示す。流体板515は、第1の大型ポンプ501および第2の大型ポンプ502を備える。一実施形態において、大型ポンプ501および502の各々の行程体積は、好ましくは、m*V1+(n-m)*V2より大きいか、またはほぼ等しい。別の実施形態において、大型ポンプ501および502の各々の行程体積+デッドボリュームは、好ましくは、m*V1+(n-m)*V2より大きいか、またはほぼ等しい。流体板515の機能は、以下の通りである:第1の製剤107は、mサイクルの第1のポンプ405を利用して、第1の流路503を通って第1の大型ポンプ501内へポンプされる。第2の製剤109は、n-mサイクルの第2のポンプ406を利用して、第2の流路504を通って第2の大型ポンプ502内へポンプされる。バルブ505が閉じられ、その後ポンプ501および502が順次作動して、製剤を大型ポンプ501から大型ポンプ502へ動かし、その後ポンプ501へ戻る。このサイクルは、製剤が十分に混合されるまで繰り返される。最後にバルブ505が開かれ、大型ポンプ501および502が同時に作動し、混合製剤をウィック供給流路403内へ押し出す。
【0158】
図6は、混合チャンバを有さない、本発明の実施形態を示す。この実施形態は、流路605内で十分な混合が起こること、流路403内で十分な混合が起こること、ウィック117内で十分な混合が起こること、および/または混合が必要でないことを含むがこれらに限定されない理由のため、使用されうる。例えば、1または複数の有効成分の量の十分な制御が達成されうる場合、混合は必要ないかもしれず、ここでエアロゾル粒子中の1または複数の有効成分の量および/または濃度が、エアロゾルプルーム全体で変化することが許容される。図6の実施形態の操作は、上記の実施形態と同様である。任意選択のバルブ505が開かれ、その後mサイクルの第1のポンプ405が、量m*V1の第1の製剤107を、流路603を通してポンプする。続いて、または好ましくは同時に、n-mサイクルの第2のポンプ406が、量n*V2の第2の製剤109を、流路604を通してポンプする。最後に、任意選択のバルブ505が閉じられる。
【0159】
図7は、本発明の耐久性システム部分701と複数回投与カートリッジ702とを備える、本発明の別の実施形態を示す。図示された実施形態において、耐久性システム部分701は、電子装置基板710、1または好ましくは2以上のマイクロ流体ポンプ709、および筐体708内に収容される電池703を備える。カートリッジ702は、筐体707内に収容される、少なくとも1の製剤キャビティ706、エアロゾル化ヘッド704、およびマウスピース705を備える。
【0160】
図8は、耐久性システム部分701の、より詳細な図である。図示された実施形態において、電子装置基板710は、電池充電回路804、ポンプコントローラ805、およびメッシュピエゾコントローラ814を制御するマイクロコントローラ803を備え、圧力変換器806を使用して気道圧力を測定する。電子装置基板710は、実際には、2以上の別個の板および/または電子装置基板上にない分離した構成要素を、備えうることが理解されよう。マイクロコントローラ803のプログラミングは、コネクタ801、好ましくはUSBコネクタ801を通じて達成され、筐体開口部802を通じてケーブルによりアクセスされる。好ましくは、ケーブルはまた、電池703を充電するための電流も供給する。ポンプコントローラ805は、少なくとも1のマイクロ流体ポンプ709を制御する。ポンプ709は、製剤キャビティ706から液体接続807およびチューブ710を介して、製剤を受け取る。液体製剤は、エアロゾル化ヘッド704へポンプ709によってチューブ808および液体接続815を介して、送達される。筐体708は、吸入気道809への入口部を備える。気道809への入口は、メッシュ811によって覆われる。メッシュ811は、筺体708内に機械加工されまたは成形される一連のスロットであってもよく、または筺体809へ取り付けられる別個の構成要素であってもよい。メッシュ811は2つの目的を果たす:一つは、吸い込むと危険なほど大きい物体を、気道に入れないようにすること。もう一つの目的は、使用者が吸入の比較的初期に最適な流速で吸入している場合にのみエアロゾルを発生させるために、測定可能な圧力降下を作り出すことである。図8に示される実施形態において、気道809内の圧力は、圧力チューブ810を介して圧力変換器806によって測定される。圧力変換器806から受信した信号、およびメッシュ811の気流/圧力関係の以前に行われた測定に基づいて、マイクロコントローラ803は、使用者が最適な吸入流速で吸入しているかどうかを決定することができ、この流速を経時的に積分することによって、コントローラは、使用者の吸入した体積を決定することができる。マイクロコントローラ803は、使用者が吸引の初期に正しい流速を達成したと決定する場合、コントローラは、メッシュピエゾコントローラ814を介してエアロゾル発生をオンにし、以下のうちの1または複数を含むがこれらに限定されないリストから選択される時間の間、エアロゾル発生をオンに維持する:治療中に一定である予め決められた時間、例えば治療過程にわたってニコチンの用量を減少させるために、治療過程中に変化する予め決められた時間、および、使用者が吸入を止める、使用者が最適な流速よりも低い流速で吸入を始める、使用者がボタンを押し続けるのを止めることを含むが、これらに限定されないリストから選択される理由によって、予め決められた時間よりも短い時間。
【0161】
吸入の間、または好ましくは吸入に続いて、マイクロコントローラ803は、発生したエアロゾルの量を決定することができ、および指示された療法および投与アルゴリズムに基づいて、マイクロコントローラ803は、決定された量の時間および/またはポンピングサイクルの間、ポンプ709をオンにすることができる。好ましい実施形態において、マイクロコントローラ804は、第2のポンプ709をオンにし、固定された、好ましくは異なる時間の間、第2の製剤をポンプする。
【0162】
耐久性システム701はまた、1または複数のボタン812を含む。ボタン812は、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される仕事を達成するために、押されうる:システムの電源を入れる、システムの電源を切る、システムの状態を表示する、カートリッジ702の交換が完了したことをシステムに通知するなど。好ましい実施形態において、スイッチ812は、装置の電源を入れるか、または装置を「起こす(wake up)」ためにのみ使用され、電子装置基板710は、無線通信機能を備え、コントローラ803との他の全ての使用者の通信は、表示装置、例えば電話、コンピュータ、タブレットなどを用いて行われる。別の実施形態において、ボタン812は、装置を起こすため、または装置がパフを送達する準備をするために押され、使用者はボタンを押し続けなければならない。ボタンが、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される所定の方法で装置を保持しなければならないような位置にある場合に、これは有用でありうる:所定の向き、使用者の手指の所定の位置、例えば使用者が空気入口811を塞がないように保証するため。耐久性システム701はまた、ライト(好ましくはLED)813を備える。LED813は、1色であってもよいが、好ましくは、多色であり、および/または点滅可能であり、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される、複数の異なるタイプの情報を伝達する:装置の電源が入っている、吸入流速が正しい、吸入流速が正しくない(低すぎるまたは高すぎる)、電池の充電が必要である、電池の充電が完了した、使用者は追加情報についてコンパニオンアプリを参照すべきである、および/またはカートリッジ702を交換する必要がある。
【0163】
図9は、図7の実施形態の、複数回投与カートリッジの例を示す。製剤、好ましくは2以上の製剤は、製剤キャビティ706内に位置する製剤チャンバ901内に収容される。好ましくは、製剤チャンバ901は、例えば真空充填により、気体ヘッドスペースなしで充填され、装置の使用が方向に依存しないことを保証し、およびヘッドスペースからの気体がシステム内へ引き込まれず、その結果の送達用量の低下および/またはプライムの損失がないことを保証する。好ましくは、柔軟な製剤チャンバ901は、薬学的に適合する薬物接触面(好ましくはポリエチレン)、ポリエステルまたはマイラーなどの機械層、および蒸気透過層(好ましくはアルミニウム)を備える、柔軟なバッグである。耐久性システムユニットへの流体接続は、液体接続906を介してなされる。
【0164】
エアロゾル化ヘッドは、ピエゾ駆動メッシュ904および任意選択のウィッキング要素902を備える。ウィッキング要素902の使用により、装置の向きに関係なく製剤がメッシュ904へ送達されることが保証される。液体製剤、好ましくは2以上の液体製剤は、液体接続905を介してメッシュ904へ送達される。
【0165】
エアロゾル性能は、ウィッキング要素902とメッシュ904との間に小さな隙間を有することによって最適化されることが見出された。隙間は空気でありうるが、好ましくは非振動メッシュ903を含むことによって作られる。非振動メッシュ903は、金属またはプラスチックのワイヤー、または他の多孔質メッシュでありうる。好ましい実施形態において、メッシュ903は、非常に多孔質のスポンジ材料の非常に薄い部分を備え、例えばウィッキング要素902よりも、より多孔質および/またはより大きな孔を含む。振動メッシュ904は、メッシュ903に対して小さな角度で、例えば約5度以下、約2.5度以下、約1度以下、または約0.5度以下で、保持されうる。別の実施形態において、振動メッシュ904およびメッシュ903は両方とも、ウィッキング要素902に対して小さな角度で、例えば約5度以下、約2.5度以下、約1度以下、または約0.5度以下で、保持される。
【0166】
図10は、液体コネクタ905、906、および相手側コネクタ815および807の、一実施形態を示す。耐久性システム701の流体システム内へのおよび製剤チャンバ901内への、空気および他の汚染物質の侵入を最小化すること、好ましくは排除することが重要である。システム内の空気は、プライムの損失および用量の減少を引き起こしうる。汚染物質は、毒物、細菌、またはウイルスに使用者を曝しうる。ほこりまたは他の微粒子は、ノズル孔を塞ぎうる。
【0167】
図10aは、耐久性システム701とカートリッジ702が分離された状態における、液体接続の実施形態を示し、カートリッジの取り付け直前または取り外し直後のいずれかである。製剤チャンバ901(または流体コネクタ815および906の場合は、ウィッキング要素902)は、自己密封性の突き刺し可能な隔壁1001によって、空気および他の汚染物質が入らないように保たれる。耐久性システム701のチューブ1005および他の流体構成要素内の流体も同様に、隔壁1002によって、空気および他の汚染物質が入らないように保たれる。ノンコアリングニードル1004の先端は、自己密封性の突き刺し可能な隔壁1002内に埋め込まれることによって、密封される。
【0168】
図10bは、カートリッジ702が耐久性システム701へ取り付けられた状態における、図10aの実施形態を示す。カートリッジ702と耐久性システム701が一緒に押されると、隔壁1001が隔壁ポケット1006に入り、隔壁1002に接触する。さらに押すことにより、隔壁1002がポケット1006内へさらに押し込まれ、バネ1003を圧縮する。耐久性システム101とカートリッジ102が完全に押し付けられると(好ましくは、カートリッジ702が耐久性システム701へ適切に取り付けられていることをフィードバックするために、触覚および/または可聴クリックを伴う)、隔壁1001および1002は、針1004の先端が露出するのに十分な距離までポケット1006内へ押し込まれ、マイクロ流体ポンプ709がチャンバ901から液体を引き出すか、またはウィッキング要素902内へ液体をポンプすることを可能にする。
【0169】
カートリッジ702が消費されると、ライト813によって、および/またはディスプレイ装置、好ましくはスマートフォン上のメッセージ(好ましくは、音調および/または振動を伴う)によって、使用者へ表示が送られる。使用者はカートリッジ702と耐久性システム701とを引き離し、隔壁1002を解放し、バネ1003の付勢下で隔壁1002を図10aに示される位置まで戻す。
【0170】
図11は、流体コネクタの代替実施形態を示す。この実施形態において、バネ1003は取り除かれ、その機能はより長い隔壁1102の伸展性によって置き換えられている。図11aは、耐久性システム701とカートリッジ702が分離されたときの流体コネクタの状態を示し、図11bは、それらが接続された状態を示す。隙間1107は、隔壁1102の、それが圧縮されるときのポアソン比による膨張を考慮するために、含まれる。隔壁1102の伸展性は、隔壁1102の長さ(ポケット1006の深さもそれに伴って変化する)、隔壁1102の幅、隔壁1102の材料、および隙間1107の幅を変えることによって、調整されうる。
【0171】
図12は、カートリッジの一実施形態を示す。1または複数の柔軟な製剤チャンバ1213は、1または複数のポンプ1207へチューブ1210を介して接続される。ポンプ1207は、製剤をチューブ1211内へポンプし、これが製剤を製剤ポケット1202内へ運ぶ。エアロゾル化の工程の間、エアロゾル化器1201は、製剤ポケット1202内へ入る空気を発生させる。ポンプ1207が製剤を製剤ポケット1202内へポンプすると、空気は開口部1226を介して製剤ポケット1202から出る。開口部1226は、疎水性多孔質要素1227によって覆われており、これは空気を逃がすが、圧力がある閾値を超えない限り、製剤を逃がすことはない。圧力変換器1225は、製剤ポケット1202の内部に供給される。好ましくは、圧力変換器1225によって測定される圧力が、水をエアロゾル化器1201と接触させ続け、疎水性多孔質要素1227を通して水を排出するのに十分高いが、製剤が疎水性多孔質要素1227またはエアロゾル化器1201を通して排出されるほど高くない、予め決められた範囲になるまで、ポンプ1207はポンプする。任意選択で、エアロゾル化器1201を疎水性塗装で処理して、製剤ポケット1202内の圧力がノズル孔から液体を押し出す確率をさらに低くすることができる。エアロゾル化器1201は、好ましくはノズル孔を、好ましくは複数のノズル孔を備え、好ましくは約100~約10000のノズル孔、または約500~約5000のノズル孔、または約1000~約4000のノズル孔、または約1000~約3000のノズル孔、好ましくは約1600のノズル孔、または2000のノズル孔を備える。好ましくは、ノズル孔は実質的に円形であり、直径は10μm程度以下、または7.5μm程度以下、または6μm程度以下、または5μm程度以下、または4μm程度以下、または3μm程度以下、または2μm程度以下、好ましくは約2μm~約3μmの範囲である。一実施形態において、製剤ポケット1202内の最大圧力は、100mbar程度以下、50mbar程度以下、25mbar程度以下、10mbar程度以下、5mbar程度以下、2.5mbar程度以下である。
【0172】
カートリッジの保管中および最初の使用前、バルブ1209は閉じたままであり、製剤チャンバ1213内の製剤の安定性および無菌性を保証する。バルブ1209は、チューブ1210を挟むことによって操作しうる。好ましい実施形態において、バルブ1209は、出口製剤チャンバ1213を挟むことによって操作し、製剤が保管中に製剤チャンバとのみ接触するようにする。バルブ1209は、マイクロコントローラの制御下で電気的に開かれうる。別の実施形態において、バルブ1209は、例えば、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される方法によって、最初の使用の前に使用者によって開かれうる:プルタブを引く、ボタンを押す、ノブを回すなど。好ましくは、バルブは、カートリッジ702を耐久性システム701へ取り付ける行為によって、開かれる。バルブ1209が電気的に作動される実施形態において、製剤の流れを防ぐために、使用の合間に閉じられうる。好ましくは、バルブ1209は、カートリッジ702が耐久性システム701へ取り付けられている間ずっと開いたままであり、これは小孔1321が製剤キャビティ1224を保持しているため、柔軟な製剤チャンバ1213がシステムを周囲空気と圧力平衡に維持できるという事実を利用するためであり、バルブ1209が開いている場合、カートリッジ内の全ての製剤は、周囲空気と同じ圧力になり、例えばエアロゾル化器1201または疎水性多孔質膜1227を通る漏れの可能性を最小限にする。
【0173】
本発明の最初の使用の前に、バルブ1209が開かれ、ポンプ1207は、自己プライミングし、その後、製剤ポケット、チューブ1210、1211、1315、および1305、気泡除去器1304、およびポンプ1207内の本質的に全ての空気が、エアロゾル化器1201および/または気泡除去器1304を介して、カートリッジから押し出されるのに十分な時間、再循環システムを通して製剤をポンプする。ポンプ1207は、自己プライミングし、その後、圧力変換器1225が製剤ポケット内の圧力が予め決められた圧力であると決定するまで、製剤を製剤ポケット1202内へポンプし、製剤ポケット1222、チューブ1210、1211、およびポンプ1207内の本質的に全ての空気が、エアロゾル化器1201および/または疎水性多孔質膜1227を介して、カートリッジから押し出されることを保証する。
【0174】
小孔1221は、製剤ポケット1222および製剤キャビティ1224内の圧力を外気と平衡させることを可能にする一方で、エアロゾルヘッドキャビティ1222および製剤キャビティ1224内の高い相対湿度を維持するのに十分小さく、それにより疎水性多孔質膜1227を通る製剤担体の蒸発を減少させる。柔軟な製剤チャンバ1213は外気と平衡化されるため、装置内の製剤は、実質的に外気と同じ圧力に維持され、例えば天候または高度の変化によるエアロゾル化器1201のノズル孔を渡る圧力差(それは製剤の漏れまたは空気の侵入を引き起こしうる)を、実質的に減少させまたは排除する。関連する実施形態において、疎水性多孔質膜1227は、空気を製剤から小さなキャビティ内へ除去し、このキャビティは、直接外気へ、またはエアロゾルヘッドチャンバ1222へ、または直接製剤キャビティ1224へ通気し、好ましくは、上述のように小孔を通して、気泡除去器キャビティ内の高い相対湿度を維持し、それにより多孔質疎水性要素1227を通る製剤担体の蒸発を減少させる。製剤が疎水性多孔質膜1227から出る場合には、任意選択の吸収性材料1223が、漏れた製剤を収容するために、使用されうる。好ましくは、吸収性材料1223は必要ない。
【0175】
製剤ポケット1202の壁は、複数の開口部1226および疎水性多孔質膜1227を、好ましくは製剤ポケット1202の異なる面上に、包含してもよく、または製剤ポケット1202の壁自体が、疎水性多孔質膜1227の材料で構築されてもよく、装置がどのような向きで保持されても、空気がポケット1202から抜けることを保証する。
【0176】
任意選択で、ウィッキング要素1208を使用することを選択しうる。この実施形態において、ポンプ1207は、製剤をチューブ1211内へポンプし、これが製剤を製剤ポケット1202内へ運び、製剤は、エアロゾル化器1201の真後ろの製剤ポケット1202内に配置される、ウィッキング材料1208によって吸収される。ウィッキング要素1208を使用することで、装置の方向依存性をより低くしうる。任意選択で、ウィッキング要素1208は、エアロゾル化器1201と直接接触して配置されるスペーシング要素1206によって、エアロゾル化器1201から分離されうる。スペーシング要素1206の使用は、以下の通りである:製剤は、ウィッキング要素1208からスペーシング要素1206を通ってエアロゾル化器1201へ流れる。エアロゾル化器1201が作動すると、エアロゾル化器1201は、空気を製剤ポケット1202内へポンプする。空気はスペーシング要素1206を通って製剤ポケット1202内へ移動し、空気は開口部1226および疎水性多孔質膜1227を介して、製剤ポケット1202から出る。
【0177】
図13は、再循環システムを使用するカートリッジの、一実施形態を示す。1または複数の柔軟な製剤チャンバ1213は、1または複数のポンプ1207へチューブ1210を介して接続される。ポンプ1207は、製剤をチューブ1211内へポンプし、これが製剤を製剤ポケット1202内へ運ぶ。エアロゾル化の工程の間、エアロゾル化器1201は、製剤ポケット1202内へ入る空気を発生させる。ポンプ1207が製剤を製剤ポケット1202内へポンプすると、空気は液体の流れに乗せられ、チューブ1315を介して製剤ポケット1202から出て、製剤と空気は、入口開口部1316を介して気泡除去器1304内へ流れる。製剤は気泡除去器1304を通過し、出口開口部1317から出る。製剤および空気の流れが気泡除去器1304を通過すると、多孔質疎水性材料1303と直接接触するようになり、空気は多孔質疎水性材料1303から抜け、その後開口部1214を通って(製剤チャンバ(複数可)1213からポンプされる製剤によって)減圧された製剤キャビティ1224の環境内へ、引き込まれる。出口1317は、好ましくは幾分制限的であり、気泡除去器1304内の圧力が、多孔質疎水性材料1303を通して空気を押し出すのに十分高いが、製剤が多孔質疎水性材料1303を通過するほど高くないようにする。製剤はその後、チューブ1210へ接続するチューブ1305内へ流れ、製剤はその後、ポンプ1207を通って再びポンプされ、こうして再循環フローシステムを作り出す。一般に、製剤ポケット1202内の圧力は、かなり低く保たれることができ、気泡除去器1304内の圧力と実質的に等しく、製剤がエアロゾル化器1201のノズル孔の配列を通って流れる可能性を減少させる。任意選択で、エアロゾル化器1201を疎水性塗装で処理して、製剤ポケット1202内の圧力がノズル孔から液体を押し出す可能性をさらに低くすることができる。好ましくは、製剤ポケット1202内の圧力は、100mbar程度以下、50mbar程度以下、25mbar程度以下、10mbar程度以下、5mbar程度以下、2.5mbar程度以下である。
【0178】
製剤が再循環し、製剤がエアロゾル化器1201のノズル孔から漏れる懸念がないため、システムはポンプ1207のポンプする速度およびポンプ1207のポンプする時間に対して敏感でなくなり、ポンプすることは、エアロゾル化器1201によるエアロゾル化の速度および時間から切り離される。このため、ポンプ1207は、製剤からほとんどまたは全ての空気を排除する本質的に任意の流速で、必要な限り(エアロゾル化の開始前またはエアロゾル化が終了した後を含む)ポンプすることができる。製剤がエアロゾル化されるとき、および空気が多孔質疎水性要素1303を通って出るとき、ループ内の製剤の体積は下がり、従ってループ内の圧力は下がる。チューブ1305内の減圧により、製剤チャンバ1213からチューブ1210を介して製剤が引き出される。空気は、エアロゾル化工程の間に製剤内へ導入され、その後気泡除去器1304によって本質的に完全に除去されるため、製剤チャンバ1213から引き出される製剤の量は、エアロゾル化される製剤の量に本質的に等しい。
【0179】
小孔1221は、エアロゾルヘッドキャビティ1222および製剤キャビティ1224内の圧力を外気と平衡させることを可能にする一方で、エアロゾルヘッドキャビティ1222および製剤キャビティ1224内の高い相対湿度を維持するのに十分小さく、それにより疎水性多孔質膜1303を通る製剤担体の蒸発を減少させる。柔軟な製剤チャンバ1213は外気と平衡化されるため、装置内の製剤は、実質的に外気と同じ圧力に維持され、例えば天候または高度の変化によるエアロゾル化器1201のノズル孔を渡る圧力差(それは製剤の漏れまたは空気の侵入を引き起こしうる)を、実質的に減少させまたは排除する。関連する実施形態において、気泡除去器1304は、空気を製剤から小さな気泡除去器キャビティ内へ除去し、この気泡除去器キャビティは、直接外気へ、またはエアロゾルヘッドキャビティ1222へ、または直接製剤キャビティ1224へ通気し、好ましくは、上述のように小孔を通して、気泡除去器キャビティ内の高い相対湿度を維持し、それにより多孔質疎水性要素1303を通る製剤担体の蒸発を減少させる。製剤が気泡除去器から出る場合には、任意選択の吸収性材料1223が、漏れた製剤を収容するために、使用されうる。好ましくは、吸収性材料1223は必要ない。
【0180】
図13は、製剤チャンバ1313の出口でのバルブ1209を示す。バルブ1209は、ニードルバルブなどの制御バルブでありうる。好ましくは、バルブ1209は開と閉の2つの状態のみを有する。一実施形態において、出荷および保管の間、製剤チャンバ1213はカートリッジ内の全ての製剤を収容し、製剤チャンバ1213の出口はバルブ1209によって閉じられる。好ましくは、バルブ1209は、製剤チャンバ1213の一部分を挟むことによって製剤チャンバ1213の出口を閉じ、この部分は、製剤チャンバ1213の残りの部分と同じ材料(複数可)で作られ、この材料は、製剤の長期保管のために最適化されている。このように、輸送および保管の間、製剤は製剤チャンバ1213の表面のみに接触し、バルブ1209またはカートリッジ内の他の流れ構成要素のいずれにも接触しない。このように、製剤チャンバ1213の材料は、薬物接触のために最適化されることができ、他の構成要素の材料は、性能のために最適化されることができる。本発明の最初の使用の前に、バルブ1209が開かれ、ポンプ1207は、自己プライミングし、その後、製剤ポケット、チューブ1210、1211、1315、および1305、気泡除去器1304、およびポンプ1207内の本質的に全ての空気が、エアロゾル化器1201および/または気泡除去器1304を介して、カートリッジから押し出されるのに十分な時間、再循環システムを通して製剤をポンプする。ポンプ1207のプライミングを促進するために、プライミングの間にポンプ1207が単に空気を再循環ループの周囲にポンプしないよう保証するために、同様のバルブが1305上に配置されうる。
【0181】
2以上の製剤チャンバ1213がある実施形態において、2以上のバルブ1209は、2以上の製剤の比を制御する役割を果たすことができ、例えばニコチンの濃度を減少させる。これは、複数のバルブ1209を通る流れの制限量を変えることによって、行われうる。しかしながら、好ましい方法は、例えば投与事象の間、いつでもバルブ1209のうちの1つだけが開いているようにすることである。このように、製剤の混合比が制御されうる。図14~17は、この方法を2つの製剤チャンバに適用した数値シミュレーションを示し、1つは偽製剤を有し、もう1つは濃度30mg/mlのニコチンを有する。図14~17において、以下のように仮定する:1)使用者が装置を毎日10回(10回の「投与事象」)使用し、2)各投与事象において7パフを摂取し、および3)アルゴリズムの目標は、ニコチン濃度を実質的に直線的に実質的にゼロまで、90日間かけて降下させることである。使用されるアルゴリズムは、過去の投与事象に基づいて現在の濃度を計算するものである。濃度が目標濃度を上回ると計算される場合、「偽(sham)」(ゼロ濃度)製剤チャンバ1213から製剤を引き出して、投与(投与事象またはパフのいずれか)が行われる。計算された濃度が目標濃度を下回る場合、医薬品有効成分(好ましくはニコチン)を収容する製剤チャンバ1213から製剤を引き出して、投与が行われる。図14は、上記のように送達されるニコチンの計算濃度を示し、製剤が引き出される製剤チャンバは、各投与事象の開始時に選択された。図15は、送達される各用量の誤差(目標ニコチン濃度からの差)を示す。このアルゴリズムを用いれば、ニコチンが±2mg/ml以内に、すなわちニコチンの最初の目標濃度の±6.7%以内に、制御されうることがわかる。アルゴリズムで直線的な傾向を取り除くことにより、濃度は約±1.5mg/mlに制御されうることがわかる。図16および17は、どの製剤チャンバ1213から製剤を引き出すかの選択が各パフの前に行われることを除いて、図14および15と同様である。図17からわかるように、このアルゴリズムを使用する場合、濃度は約±0.45mg/ml、すなわち±1.5%に保持されうる。
【0182】
好ましくは、エアロゾル化器1301は、使用者が装置を通して吸入する際に、使用者の吸入気流内にエアロゾルを生成する。振動メッシュネブライザを使用する先行技術の装置において、エアロゾルは、装置の出口に向かう方向および使用者に向かう方向に発生する。一実施形態において、気道を通る気流は、孔の配列からのエアロゾル発生の平均方向に対して実質的に垂直であり、およびエアロゾル化器1301に対して実質的に平行である方向に流れる。この構成は、より効率的に用量を乗せ、エアロゾルを分散させ、エアロゾル粒子の凝集を減少させ、それにより放出用量を増加させ、および粒子サイズを減少させることが見出された。
【0183】
図18は、フィルタ1801を有する再循環システムの、一実施形態を示す。エアロゾル化器が1または複数のノズル孔を備える本発明の実施形態において、細菌がノズル孔を通って侵入し、再循環ループ内の製剤にコロニー形成しうるという懸念がある。細菌が多孔質疎水性要素1303を通して侵入する可能性もあるが、小孔1221介してしか曝露されないため、これは可能性が低い。ウイルスは、宿主細胞内でしか繁殖できず、水性製剤内では繁殖できないので、懸念ははるかに少ない。ノズル孔に曝されるウイルスは、気道を通して吸入される空気からである可能性が高く、そのため単に空気を吸うことから使用者に曝される方が、製剤内に混入して吸入されるウイルスに曝されるよりも、はるかに大きい。一実施形態において、製剤は細菌の繁殖を阻止するための静菌剤を有する。しかしながら、使用者の肺を静菌剤に曝さないために、製剤内に静菌剤はない方が好ましい。図18の実施形態において、システムにはフィルタ1801が供給される。フィルタ1801は好ましくは、製剤内に混入しうる細菌を本質的に全て捕捉する孔径を有する。好ましくは、フィルタ1801の孔径は、1μm程度以下、0.75μm程度以下、0.5μm程度以下、0.4μm程度以下、0.2μm程度以下、0.1μm程度以下である。好ましいフィルタ1801は、約0.1μm、0.2μm、および0.22μmから選択される孔径を有する。一実施形態において、使用されるフィルタ1801は、Omicron部品番号170047Rの、0.2um孔径ナイロン膜フィルタである。フィルタは、例えばチューブ1215、1210、1205、または1211など、再循環ループ内のどこに配置されてもよい。しかしながら、フィルタ1801は、1202の出口とポンプ1207の入口の前との間に配置されないことが好ましく、なぜなら、フィルタ1801に利用可能な小さな孔径および限られた面積のために、フィルタ1801を通してポンプするのに必要とされる相対的に高い圧力が、エアロゾル化器1201のノズル孔(複数可)から、または多孔質疎水性構成要素1303から、製剤を漏出させうるからである。好ましくは、フィルタは、ポンプ1207と製剤ポケット1202の入口との間に、チューブ1211内か、または好ましくは製剤ポケット1202の入口のいずれかに、配置される。フィルタ1801が適所にあれば、ポンプ1207が製剤をポンプする時はいつでも、製剤ポケット1202には細菌を含まない製剤が供給され、ポケット1202内の全ての細菌はチューブ1215内へ掃き出され、最終的に再循環ループの周囲にポンプされ、フィルタ1801によって捕捉される。一実施形態において、システムはあるモードを有し、ここでポンプ1207は十分な体積をポンプし、最初に製剤ポケット1202内にある本質的に全ての製剤が、ポケット1302から流出し、細菌を含まない製剤により置換され、その結果ポケット1202が無菌充填されるようにする。好ましくは、十分な体積は、ポケット1202の体積より大きいかほぼ等しい、ポケット1202の体積の1.5倍程度以上、ポケット1202の体積の2倍程度以上、ポケット1202の体積の2.5倍程度以上、ポケット1202の体積の3倍程度以上、ポケット1202の体積の4倍程度以上、ポケット1202の体積の5倍程度以上、ポケット1202の体積の7.5倍程度以上、またはポケット1202の体積の10倍程度以上である。好ましくは、十分な体積は、ポンプ1207によって、以下を含むがこれらに限定されないリストのうちの1または複数から選択される時間に、ポンプされる:1日を通して、その日の最初の投与前、各投与事象の前、各投与事象の後、各パフの前、各パフの後。フィルタ1801が無傷であること、例えば裂け目または漏れがないこと、および正しい孔径を有することを、確認することが重要である。このことは、例えば、ポンプ1207とフィルタ1801との間のチューブ1211内に圧力変換器を有し、予め決められた流速を達成するのに必要な圧力を測定することによって、決定されうる。フィルタ1801の故障による圧力の低下は、より速いポンプ速度につながるかもしれず、その場合、故障は流量計で検出されうる。流量計は、ポンプ1207の出口とフィルタ1801の入口との間に配置されるべきであり、なぜなら、流れループ内の他の位置では、フィルタ1801に関連する小さな漏れを、検出できないかもしれないからである。ポンプ1207がモーターによって駆動される、例えばポンプ1207が蠕動ポンプである実施形態において、ポンプ速度の変化は、モーター速度の変化として検出されうる。定電圧で運転されるポンプモーターでは、ポンプ速度の増加は、モーターの逆起電力の増加による電流の減少として検出されうる。定電流で運転されるポンプモーターでは、流速が増加すると、電流を維持するために必要な電圧が増加することになる。エンコーダを使用するパルス幅変調方式で制御され、一定のポンプモーター速度で運転されるポンプでは、圧力が低下すると、同じ速度を維持するために必要なパルス幅がより短くなることになる。
【0184】
ポンプ1207は、例えばフィルタ1801を通して、十分な流速を達成するのに十分な出力圧力を生成することができる、任意のタイプのポンプでありうる。好ましいポンプは、1801を通してポンプすること可能にするために、高い出力圧力を発生させうる。特に好ましいポンプは、以下から選択されるがこれらに限定されない構成要素を備える、蠕動ポンプである:12Vで148RPMのモーター、ギヤヘッド、ローターまたは偏心器、リング、柔軟なチューブの一部、およびチューブの支持面。好ましいモーターおよびギヤヘッドにより、出力シャフトの回転速度は、約50~約1000RPM、約75~約750RPM、約100~約500RPM、約125~約250RPM、約125~約200RPM、または約125~約175RPMとなる。好ましくは、モーター、ギヤヘッド、およびローターまたは偏心リングは、耐久性システム701の一部であり、チューブ、必要な場合のリング、および支持面は、カートリッジ702の一部である。蠕動ポンプの一実施形態において、モーターがローターを回転させ、このローターが少なくとも1のローラー、好ましくは2以上または3以上のローラーを円運動させ、その際にローラーは柔軟なチューブの一部に沿って回転し、チューブを通る流れを作るために、それを支持面に対して圧縮する。ローラーが圧縮されるためにはチューブが圧縮される必要があるため、好ましくは、各ローラーはチューブを圧縮する角度のついたカム面が与えられる。
【0185】
図19は、ポンプ1307の好ましい実施形態を示し、ここで蠕動ポンプは、モーター1901、ギヤヘッド1902、軸1903;および偏心カム1904および位置合わせカム1910を備え;これらの両方は、軸1903に据え付けられ、これら全てが耐久性システム701の一部である。リング1905、チューブ1907(図19aにおいて、圧縮されたチューブ1906および圧縮されていないチューブ1907として示される)、リング捕捉細部1908、および支持面1909は、全てカートリッジ702の一部である。カートリッジ構成要素は断面で示されるが、上から見ると、リング1905は円対称であり、チューブ1906がリング1905によって圧縮されるところ、およびチューブ1907の入力部と出力部が入る場所に支持面1909に隙間があるところを除いて、支持面1909およびチューブ1907も同様であることが、理解されよう。好ましくは、偏心カム1904、位置合わせカム1910、およびリング1905のうちの少なくとも1つは、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される特性を有する、ポリマーで作られる:潤滑性ポリマー、フッ素化ポリマー、PTFE製、デルリン製、またはナイロン製。代替実施形態において、偏心カム1904、位置合わせカム1910、およびリング1905のうちの1つは、金属、好ましくはステンレス鋼で作られ、リング1905はラジアルボールベアリングである。
【0186】
図19aは、新しいカートリッジ702が装着される準備ができたときの、ポンプ構成を示す。偏心カム1904は右側にあるが、リング1905は左側にあることが、19aからわかる。一般に、偏心カム1904とリング1905の相対的な位置は任意であるが、これらが位置合わせされることはまずない。位置合わせカム1910がなければ、カートリッジ702が装着されている時にリング1905と偏心カム1904が干渉し、リング1905および/または偏心カム1904の破損につながる可能性があることがわかる。これを避けるために、位置合わせカム1910が、偏心カム1904より上の軸1903に装着される。図19bに示されるように、カートリッジ702が耐久性システム701上に押し付けられていると、位置合わせカム1910がリング1905に接触し、リング1905を左に動かし始める。図19cに見られるように、カートリッジ702が完全に装着されると、リング1905が右へ移動し、今度はチューブが右に圧縮される。モーター1901が通電されると、偏心カム1904が回転させられ、チューブ1907の一部が順次圧縮され、チューブ1907内に包含される製剤の流れを引き起こす。
【0187】
カートリッジ702が耐久性システム701へ取り付けられると、偏心器がリング(偏心器がリング内に完全に収まるのに十分な直径であることを特徴とする)内へスライドし、その後モーターを作動させると、偏心器が回転し、それによってリングを移動させ、リングがチューブの一部を支持面に対して円形パターンで順次圧縮し、それによってチューブを通る流れを作る。システムが耐久性システム要素と分離可能な複数回投与カートリッジとを備える実施形態において、モーター、ギヤヘッド、および偏心器またはローターは、耐久性システム要素の一部であり、チューブ、リング、および支持面は、使い捨ての一部であることが好ましい。
【0188】
図20aは、気泡除去器1304の実施形態を断面で示し、図20bは、同じ実施形態の透視図を示す。製剤と空気は、入口流路1316を介して気泡除去器1304内へ流れ、その際に製剤は、多孔質疎水性材料1303と接触するようになり、持ち上がってから多孔質疎水性材料1303の下を移動し、製剤内の少なくとも一部の空気は、多孔質疎水性材料1303の孔を通って気泡除去器キャビティ2001内へ出る。製剤はその後、出口流路1317を通って気泡除去器1304から出る。任意選択の中仕切(divider)(複数可)2003は、気泡除去器キャビティ2001を2以上の流路に分離し、多孔質疎水性材料1303の拘束されていない範囲を減少させ、その結果疎水性材料1303の持ち上がりが少なくなり、それにより気泡が多孔質疎水性材料1303と接触するようになる可能性が増加する。出口流路1317は幾分制限的であり、多孔質疎水性材料1304の下に、多孔質疎水性材料1303の孔を通して空気を送るのに十分な圧力を作り出す。多孔質疎水性材料1303下の製剤および空気の好ましいゲージ圧は、約10~約1000mBar、約20~約500mBar、約30~約250mBar、約40~約100mBar、約50~約80mBar、または約10、20、40、80、160、320、または640mBarである。多孔質疎水性材料1303を通って気泡除去器チャンバ2001内へ出た空気は、小孔2002を通って出る。小孔2002は、前述のように小さな孔であり、水蒸気がほとんど逃げず、従って気泡除去器チャンバ2001内の相対湿度が100%に近く保たれ、多孔質疎水性材料1303の孔を通る担体の蒸発を制限するように、その直径は選択される。好ましくは、疎水性材料1303を通る蒸発は、約10μl/時未満、約5μl/時未満、約2.5μl/時未満、約1μl/時未満、または約0.5μl/時未満である。1303に使用される望ましい疎水性多孔質材料は、POREX MD10延伸PTFEであり、70mbarで125(最小70)l/時/cm2の孔を通る典型的な気流、および270(最小175)mbarの水浸入圧(WEP)を有する。POREX延伸PTFEの気流は、70mbarで2~125l/時/cm2の範囲であり、WEPは175~1050mbarの範囲であるため、このシステムの様々な実施形態では、システムの内部圧力に基づいて所望の気流を出力する気流とWEPとを有する、延伸PTFEを使用することができる。使用されうる追加の疎水性多孔質材料として、以下を含むがこれらに限定されないVersapor RC膜がある:Versapor 200RC 部品番号VRC02S7X10、Versapor 800RC 部品番号VRC08S7X10、Versapor 1200RC 部品番号VRC12S7X10、Versapor 3000RC 部品番号VRC30S7X10、Versapor 5000RC 部品番号VRC50S7X10。
【0189】
[D.エアロゾル装置において使用される医薬品]
本開示に包含される医薬品有効成分(API)は、遊離塩基としてのニコチンおよびその薬学的に許容される塩を含む。一実施形態において、エアロゾル装置において使用される医薬品は、酒石酸水素ニコチン二水和物である。遊離塩基と混合されうる他の酸には、酒石酸、乳酸、安息香酸、レブリン酸、サリチル酸、およびリンゴ酸を含むが、これらに限定されない。本発明のニコチン含有組成物のニコチン源は、遊離塩基形態、塩形態、錯体として、溶媒和物として、または他の適切な形態のニコチンを含みうる。ニコチンは典型的には、そのまま(neat)(液体)の形態で単離される(例えば、上述のように)。本発明によれば、ニコチンは修飾されて、塩、共結晶、または塩共結晶の成分として、例えば油、固体、半固体などの形態で、ニコチンを組み込むことにより、他の形態で提供される。いくつかの実施形態において、ある塩、共結晶、および塩共結晶は、望ましくは固体形態、例えば固体、結晶形態で提供される。有利なことに(必ずしもそうではないが)、ニコチンと結合してそのようなニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を形成するコフォーマー(coformers)(酸を含む)は、米国食品医薬品局によれば「GRAS」(一般に安全と認められる)である。さらに、それにより生成されるニコチン塩、共結晶、および/または塩共結晶もまた、GRASであることが有利である(これも必要ではないが)。本発明のニコチン性化合物が、例えばニコチンにおけるように、相対的に塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を、十分な量の所望の酸と、そのままでまたは適切な不活性溶媒中で、接触させることによって得られうる。例示的な薬学的に許容されるニコチン塩には、酒石酸塩(例えば、酒石酸ニコチンおよび酒石酸水素ニコチン)、塩化物(例えば、ニコチン塩酸塩およびニコチン二塩酸塩)、硫酸塩、過塩素酸塩、アスコルビン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、アスパラギン酸塩、サリチル酸塩、トシル酸塩、コハク酸塩、ピルビン酸塩など;ニコチン塩水和物(例えば、塩化ニコチン亜鉛一水和物)などを含む。当業者であれば、相対的に塩基性の官能基を含むアゴニスト化合物に対して、類似の塩が形成されうることを、理解するであろう。塩を形成しうる追加の酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、α-メチル酪酸、イソ吉草酸、レブリン酸、β-メチル吉草酸、カプロン酸、2-フロ酸、安息香酸、フェニル酢酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、シュウ酸、マロン酸、グリコール酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸(camphosulfonic)、エタンスルホン酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucoronic)、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、硫酸など、および炭素原子数約20までの炭素鎖を有する他の脂肪酸を含む。吸入可能物質媒体は、例えば、グリセリン、水、および着香料(flavorant)のうちの1または複数を、さらに含みうる。組み込まれるニコチン塩または多形形態の量は様々であり、いくつかの実施形態において、装置でのパフあたり約0.01mg~約0.5mg、約0.05mg~約0.3mg、または約0.1mg~約0.2mgの量のニコチンを提供するのに十分な量でありうる。
【0190】
禁煙のための非ニコチン含有製剤もまた、本開示の対象となる。そのような一例には、以下を含む製剤があり:アスコルビン酸(3mg)、スペアミント(mentha crispa)(1.5mg)、ペパーミント(mentha piperita)(1mg)、chocamine(1mg)、damiana leaf 10:1 P.E.(1mg)、パルミトイルエタノールアミド(600mcg)、ニコチン酸(500mcg)、5-ヒドロキシトリプトファン(500mcg)、ニコチンアデニンモノヌクレオチド(100mcg)、ゼアキサンチン(100mcg)、ルテイン(50mcg)、リコピン5%(50mcg)、水(1mL)、レシチン(0.04mL)、ここで製剤は、0.1ml、0.5ml、1ml、2.5ml、5ml、10ml、15ml、または20ml程度以上の総体積を有する。
【0191】
本開示によって意図される他の医薬品有効成分には、オピオイド(例えば、フェンタニル、モルヒネ、ヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルフォン、コデイン、ヒドロモルフォン、タペンタドール)、トリプタン、リスペリドン、インスリン、エピネフリン、アトロピン、シプロフロキサシン、メトカルバモール、ベンゾジアゼピン、PDE5阻害剤、グルカゴン様ペプチド、けいれん用API、および不眠症用API、血管拡張剤、喘息用API、COPD用API、うつ病用API、PTSD用API、うつ病用API、狭心症用API、低血糖症用API、骨粗鬆症用API、片頭痛用API、吐き気用API、アナフィラキシー用API、中毒用API、および性機能障害用APIを含む。
【0192】
[E.製剤]
本明細書の装置において使用され、患者へ送達される製剤は、様々な異なる形態をとりうる。一般に、そのような形態は、非発熱性であり、経口吸入に適するように製剤化される、無菌溶液または懸濁液である。吸入される粒子は、大きさが小さくなければならない(例えば、0.5~10、好ましくは0.5~5マイクロメートル)。
【0193】
本開示において使用される有効成分の濃度は、溶解度限界に近くなるように選択されうるため、エアロゾル化される必要のあるパフあたりの製剤の体積を減少させ、カートリッジの寿命および電池の充電間の時間を増加させる。しかしながら、濃度、温度などのわずかな変化で医薬品有効成分が溶液から出てしまうほど、濃度は高くすべきではない。例えば、酒石酸水素ニコチン二水和物では、溶解度限界は約50mg/mlである。本開示の装置において使用するためのニコチン遊離基の好ましい濃度には、以下を含むが、これらに限定されない:約5mg/ml以上、約10mg/ml以上、約15mg/ml以上、約20mg/ml以上、約25mg/ml以上、約30mg/ml以上、約35mg/ml以上、約40mg/ml以上、または約45mg/ml以上。使用されるニコチンの塩に応じて、そのような塩の量は、所望の用量のニコチン遊離塩基を提供するように調整することができ、すなわち、遊離塩基の量は、製剤内に存在するニコチン塩の質量から計算されうる。
【0194】
一実施形態において、製剤は、約20mg/ml~50mg/ml、または約25mg/ml~35mg/mlの量のニコチン遊離塩基、および0.9%塩化ナトリウム溶液を含み、および任意選択で他の賦形剤を含んでもよい。別の実施形態において、製剤は、約20mg/ml~50mg/ml、または約25mg/ml~35mg/mlの量のニコチン遊離塩基と0.9%塩化ナトリウム溶液とから本質的になる。本開示の装置の作動1回あたりに送達されるニコチン含有溶液の体積は、約1~50マイクロリットル、または約1~30マイクロリットル、または約1~25マイクロリットル、または約1~20マイクロリットル、または約1~15マイクロリットル、または約5~20マイクロリットル、または約10~20マイクロリットルでありうる。そのような体積は、本開示の装置によって、約0.1~2.5秒、または約0.25~2秒、または約0.5~1.5秒、または約0.75~1.25秒、または約1秒で、送達される。
【0195】
非常に強力な有効成分、例えばフェンタニルでは、非常に小さい体積をエアロゾル化する必要はないように、安全のために濃度を減少させることが望ましい場合がある。例えば、フェンタニルの濃度は、約10mg/ml、5mg/ml、2.5mg/ml、1mg/ml、0.5mg/ml、0.25mg/ml、0.1mg/ml、0.05mg/ml、または0.025mg/ml程度以下でありうる。一実施形態において、濃度は、約0.5~約1mg/ml、または0.05~約0.5mg/ml、または約0.1~約0.3mg/mlである。
【0196】
製剤は、剤形の安定性を改善するか、または投与中に快適さを提供することができる、医薬品賦形剤を含有しうる。そのような賦形剤には、担体(例えば、水)および医薬品溶媒、等張化剤、pH調整剤または緩衝剤、安定化剤、抗菌防腐剤、分散剤および/または湿潤剤を含む。
【0197】
医薬品溶媒は、薬学的に活性な医薬品および賦形剤を、溶解または分散させるために使用される。溶媒は、水性でも非水性でもよい。本発明の製剤は、1または複数の薬学的に許容される溶媒の混合物と共に製剤化されてもよく、以下から選択されるが、これらに限定されない:グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水、鉱物油、ピーナッツ油、およびコーン油。医薬品溶媒は、製剤濃縮物を調製するために使用され、および本発明の剤形を再構成するために使用されうる。薬学的に許容される溶媒、例えば水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどは、蒸発性であり、製剤濃縮物中の医薬品および賦形剤を溶解または分散させるために通常使用される。グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールは、共溶媒であり、製剤濃縮物中の水不溶性または難水溶性医薬品の可溶化を補助するために使用される。薬学的に許容される再構成溶媒、例えば注射用滅菌水、滅菌生理食塩水、滅菌リン酸緩衝液、および滅菌5%ブドウ糖溶液などは、ネブライザまたはエアロゾル装置を介した経口吸入の前に、医薬品有効成分の溶液または微粒子懸濁液を形成するために、本発明の剤形の再構成のために使用される。再構成溶媒は、使用単位ごとに個別のアンプルまたは単位用量プラスチック容器に包装されてもよく、または溶媒を汚染することなく特定体積の再構成溶媒が引き出されうる、大容量の無菌容器に包装されてもよい。
【0198】
等張化剤は、再構成された剤形を投与する際に、患者の全体的な快適性を高めるために使用される。再構成吸入溶液の重量オスモル濃度を、約275~305(範囲254~325)mOsm/Kgに調整することが好ましい。吸入用の等張化剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、乳糖、リン酸ナトリウム、ソルビトール、マンニトール、およびスクロース、またはそれらの組合せであり、剤形を噴霧化のために1~10mlの滅菌水で再構成した後に、等張溶液を生成する濃度である。糖類、例えばブドウ糖、乳糖、およびショ糖などを加えることにより、製剤に粘着性および付着性を加え、製剤濃縮物が乾燥した後、乾燥医薬品および製剤賦形剤が支持材料上により良く保持されうるようにする。等張化剤はまた、粒子分割剤として機能することができ、製剤が支持材料に含浸または堆積された後に医薬品有効成分の粒径を小さくし、医薬品溶媒で再構成される際に医薬品有効成分粒子の溶解または分散を補助することができる。あるいは、主要な等張化剤を加えることなく、剤形は製剤化されうる。剤形の所望の張性は、滅菌等張食塩水で再構成することにより、達成される。
【0199】
製剤はまた、以下の理由から、医薬剤形のpHを所望の範囲に調整または維持するために、pH調整剤または緩衝剤を含みうる:(1)医薬品有効成分が、あるpH範囲内でより良い化学的安定性を発現しうる、より良い製品安定性のための環境を提供すること;(2)投与時に患者のためにより良い快適さを提供すること;および(3)より良い抗菌防腐活性のためのpH範囲を提供すること。本発明の製剤および剤形は、1または複数の薬学的に許容されるpH調整剤または緩衝剤と共に製剤化されてもよく、その結果再構成後に、所望のpHは約3~約8の間になる。
【0200】
薬学的に許容されるpH調整剤および緩衝剤は、以下から選択されるが、これらに限定されない:塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、トロラミン、および水酸化ナトリウム。安定化剤とは、医薬品有効成分および賦形剤の安定性を改善するために、それぞれ酸化反応を抑制できる抗酸化剤および金属をキレート化できるキレート剤である。
【0201】
本発明の製剤および剤形は、1または複数の薬学的に許容される安定化剤と共に、意図される医薬用途に適した濃度で、製剤化されてもよく、以下から選択されうるが、これらに限定されない:キレート剤、例えばEDTAおよびそのナトリウム塩、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムなど、酸化防止剤、例えばビタミンE、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、およびチオ尿素など。本発明の剤形に安定化剤を加えることにより、医薬品有効物質の安定性を改善し、貯蔵寿命を延長することができる。
【0202】
抗菌防腐剤は、微生物の増殖を抑制するために医薬品に使用される。本発明の剤形は、1または複数の薬学的に許容される抗菌防腐剤と共に、微生物の増殖を防止するために適切な濃度で、製剤化されうる。経口または経鼻吸入に適した薬学的に許容される防腐剤の例には、以下を含むが、これらに限定されない:パラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、およびチメロサール。
【0203】
湿潤剤または分散剤は、湿潤性を高め、水不溶性または難水溶性粒子の分散を補助するために、使用される。経口または経鼻吸入剤に適した薬学的に許容される湿潤剤および分散剤の例は、ポロキサマー、オレイン酸およびその塩、レシチンおよび水添レシチン、ソルビタン脂肪酸エステルオレイルアルコール、ホスファチジルグリセロールやホスファチジルコリンなどを含むがこれらに限定されないリン脂質、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシプロピレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、スフィンゴ脂質およびスフィンゴミエリンなどの糖脂質、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、エトキシ化ラノリン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、アルギン酸プロピレングリコール、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、D-α-トコフェリル-PEG1000コハク酸、ステアリン酸ポリオキシル40(Polyoxy 40 stearate)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン植物油、アミノ酸の脂肪酸誘導体、アミノ酸のグリセリド誘導体、塩化ベンザルコニウム、胆汁酸である。
【0204】
[F.追加の番号付き実施形態のリスト]
以下の追加の番号付き実施形態は、本出願における開示および特許請求の範囲のいずれにも適用されると理解され、および、これらの実施形態に包含される主題を決定する際に、「上記実施形態のいずれかのシステムまたは装置」への言及は、以下の実施形態および特許請求の範囲のいずれかへの言及でもあると理解される。さらに、以下の実施形態のリストは、先行する説明、およびリストに続く実施例および特許請求の範囲を補足することを意図している。
【0205】
1.禁煙システムであって:
a.電子装置と蠕動ポンプモーターアセンブリとを備える、耐久性システム;
b.エアロゾル化器、気泡除去器、フィルタ、ポンプヘッド、および1または複数の製剤チャンバを備える、カートリッジ;
および
c.壁掛け充電器およびケーブル;
を備える、
禁煙システム。
【0206】
2.番号1に記載されたシステムであって、
前記システムと通信する携帯型装置のためのアプリをさらに備える、
システム。
【0207】
3.番号1~2のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、前記耐久性システムへ取り外し可能に接続される、
システム。
【0208】
4.番号1~3のいずれか一項に記載されたシステムであって、
コントローラおよびマウスピースをさらに備える、
システム。
【0209】
5.禁煙療法を必要とする患者を治療する方法であって:
a.番号1~4のいずれか一項に記載されたシステムを提供するステップ;
ここで前記カートリッジは、1または複数の製剤チャンバ内にニコチン製剤を含む;
および
b.前記患者が前記マウスピースの周りに自身の唇を密閉し、および前記ニコチン製剤の用量を吸入することにより、前記ニコチン製剤を投与するステップ;
を含み、
ここで前記患者は、前記ニコチン製剤の用量を経時的に徐々に減少させながら、自分自身に複数回投与する、
方法。
【0210】
6.番号5に記載された方法であって、
ここで期間は、約2~6週間、または約3~5週間、または約4~5週間、または約4週間である、
方法。
【0211】
7.番号5~6に記載された方法であって、
前記用量は、予め決められた期間中、1日あたり約1%~10%ずつ徐々に減少する、
方法。
【0212】
8.番号5~7に記載された方法であって、
前記ニコチン製剤は、その薬学的に許容される塩のニコチン遊離塩基を含む、
方法。
【0213】
9.番号5~8に記載された方法であって、
前記ニコチン製剤は、約5mg/ml~約50mg/mlのニコチン遊離塩基を含む、
方法。
【0214】
10.番号5~9に記載された方法であって、
前記ニコチン製剤は、約20mg/ml~約50mg/mlのニコチン遊離塩基と0.9%塩化ナトリウム溶液とを含む、
方法。
【0215】
11.番号5~10に記載された方法であって、
前記システムは、作動1回あたり約1~50マイクロリットル、または約1~30マイクロリットル、または約1~25マイクロリットル、または約1~20マイクロリットル、または約1~15マイクロリットル、または約5~20マイクロリットル、または約10~20マイクロリットルの体積の、前記ニコチン製剤を送達するための手段を有する、
方法。
【0216】
12.番号5~11に記載された方法であって、
前記システムは、作動1回あたり約1~50マイクロリットル、または約1~30マイクロリットル、または約1~25マイクロリットル、または約1~20マイクロリットル、または約1~15マイクロリットル、または約5~20マイクロリットル、または約10~20マイクロリットルの体積の、前記ニコチン製剤を送達するための手段を有し、
および
そのような体積は、前記システムによって、約0.1~2.5秒、または約0.25~2秒、または約0.5~1.5秒、または約0.75~1.25秒、または約1秒で送達される、
方法。
【0217】
13.禁煙吸入器であって:
コントローラを備える、前記吸入器の耐久性部分(またはシステムまたは要素)、
および
前記吸入器の前記耐久性部分へ分離可能に取り付けられるように構成される、複数回投与カートリッジを備え;
ここで前記カートリッジは、(a)エアロゾル化器;(b)医薬品有効成分を含む製剤を収容する、製剤チャンバ;(c)気泡除去器;および(d)フィルタを備える;
禁煙吸入器。
【0218】
14.番号13に記載された吸入器であって、
ポンプモーターアセンブリをさらに備える、
吸入器。
【0219】
15.番号13~14に記載された吸入器であって、
気泡除去器;気泡除去器チャンバ;ポケット;エアロゾル化器;フィルタ;およびポンプヘッドを、さらに備える、
吸入器。
【0220】
16.番号13~15に記載された吸入器であって、
前記製剤は、約5mg/ml~約50mg/mlのニコチン遊離塩基を含む、
吸入器。
【0221】
17.番号13~16に記載された吸入器であって、
ここでニコチン製剤は、約20mg/ml~約50mg/mlのニコチン遊離塩基と0.9%塩化ナトリウム溶液とを含む、
吸入器。
【0222】
18.番号13~17に記載された吸入器であって、
作動1回あたり約1~50マイクロリットル、または約1~30マイクロリットル、または約1~25マイクロリットル、または約1~20マイクロリットル、または約1~15マイクロリットル、または約5~20マイクロリットル、または約10~20マイクロリットルの体積の、ニコチン製剤を送達するための手段をさらに備える、
吸入器。
【0223】
19.番号13~17に記載された吸入器であって、
作動1回あたり約1~50マイクロリットル、または約1~30マイクロリットル、または約1~25マイクロリットル、または約1~20マイクロリットル、または約1~15マイクロリットル、または約5~20マイクロリットル、または約10~20マイクロリットルの体積の、ニコチン製剤を送達するための手段をさらに備え、
および
そのような体積は、前記吸入器によって、約0.1~2.5秒、または約0.25~2秒、または約0.5~1.5秒、または約0.75~1.25秒、または約1秒で送達される、
吸入器。
【0224】
20.番号13~19に記載された吸入器であって、
前記吸入器はニコチン遊離塩基を送達し、その結果薬物動態値は、紙巻きタバコ喫煙者で報告された値の約5%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%以内となり;
ここで前記値は、(a)5分、10分、および15分での濃度;(b)Cmax;(c)Tmax;および(d)AUC、のうちの1または複数である;
吸入器。
【0225】
21.番号13~20に記載された吸入器であって、
ここで、前記吸入器を使用する患者の統計的に有意な数が、ビジュアルアナログスケール(VAS)-渇望評価によって測定されるニコチン渇望の減少を報告する、
吸入器。
【0226】
22.番号21に記載された吸入器であって、
前記吸入器は、渇望を約30%、または40%、または50%、または60%、または70%、ベースラインと比較して減少させる、
吸入器。
【0227】
23.番号13~22に記載された吸入器であって、
前記吸入器は、単一の製剤および単一のポンプのみを備える、
吸入器。
【実施例
【0228】
[G.実施例]
以下の実施例は、本開示のある実施形態を示すために含まれる。しかしながら、当業者であれば、開示されている特定の実施形態に変更がなされても、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果をなお得ることができることを、本開示に照らして、理解すべきである。従って、記載された事項は全て例示として、限定的な意味ではなく、解釈されるべきである。
【0229】
[実施例1]
禁煙のためのシステムの使用の一実施形態は、以下の通りである。システムは、以下を備える箱入りで供給される:オーバーラップされた電子装置と蠕動ポンプモーターアセンブリとを備える、耐久性システム部分;エアロゾル化器、気泡除去器、フィルタ、ポンプヘッド、および1または複数の製剤チャンバを備える、1または複数の個別包装されたカートリッジ;壁掛け充電器およびケーブル;および使用説明書。システムにはまた、スマートフォンまたはタブレットなどの携帯型装置上にダウンロードされる、アプリを含む。本発明のシステムの使用の一実施形態は、以下の通りである。使用者は自身の電話機上にアプリをインストールし、システムの使用方法について説明を受ける(または任意選択で、紙の使用説明書に従う)。説明に従い、使用者は箱から取り出し、耐久性システムカートリッジの包装を解き、オーバーラップを捨てる。付属の充電器がUSB-C充電コネクタを介して取り付けられ、電池が満充電になるまで(ライトが赤色から緑色に切り替わることにより示される)プラグに差し込まれる。最初の使い捨てカートリッジがオーバーラップから取り出され、戻り止め機能が感じられかつクリック音がするまで、耐久性システム部分に押し付けられる。カートリッジが装着されると、使用者はアプリ上のボタン(または任意選択で、装置上のボタン)を押し、コントローラは、流路、製剤ポケット、および気泡除去器から空気を除去するために、ポンプを十分に長い時間オンにすることを伴う、パージ手順を開始する。コントローラはモーター電流を監視し、カートリッジが正しく装着され、製剤をポンプしているかを決定する。プライミングが完了すると、使用者は装置上のボタンを押す。約1秒後に、装置上の緑色の点滅ライトが点灯し、装置を使用する準備が整ったことを示す。
【0230】
使用者はその後、マウスピースの周りに自身の唇を密閉し、吸入を開始する。マイクロコントローラはセンサから吸入流速を読み取り、流速が適切な範囲内にある間、コントローラはピエゾを振動させ、ノズル配列を通して使用者の吸入流内へエアロゾルを発生させる。吸入が所望の流速範囲内にある場合、緑色のライトが安定して点灯し、使用者の吸入を案内する。エアロゾルは最大0.5秒間発生し、使用者が吸入を止めた場合はより少ない。エアロゾルが最初に始まるときにポンプがオンとなり、エアロゾル発生終了後1秒間オン状態を維持し、エアロゾル化器により発生した空気を気泡除去器内へ押し出し、エアロゾル化された製剤を補充する。上記のステップは、点滅する緑色のライトが点灯している限り、使用者が装置を通して吸入するたびに、使用者の希望に基づいて繰り返される。吸入が5分間感知されない場合、点滅する緑色のライトが消え、システムはスリープモードに入る。使用者はその後、ボタンを押し、希望に応じて次のステップを繰り返す。製剤チャンバ内の製剤がおよそ4週間後(使用頻度および量に基づく)に枯渇すると、使用者はテキストメッセージを受け取り、ボタンを押すことで、カートリッジ交換が必要であることを示す緑色と赤色が交互に点滅するライトが装置上に示される。使用者はその後、カートリッジを耐久性システム部分から引き離すことにより取り外し、それを廃棄し、次のカートリッジからオーバーラップを取り外し、前と同じように、任意選択で説明書を見ながら、カートリッジを取り付ける。この工程全体を通して、コントローラは有効成分の濃度を調整し、3か月の過程にわたってゆっくりと濃度を実質的にゼロまで漸減する。治療過程中、電池が消耗すると、使用者はテキストメッセージを受け取り、ライトは点滅する赤色を示す。使用者は充電器を装置へ取り付け、充電完了を示す緑色点灯のライトを装置が表示するまで充電する。
【0231】
[実施例2]
図12に示される実施形態は、USP 601:送達用量均一性の方法を使用して、放出用量効率について23回試験された。10倍希釈生理食塩水の製剤が使用された。フィルタは予め決められた量の脱イオン水を用いて洗浄され、放出用量は電気コンダクタンス法を使用して定量された。図20はその結果を示す。放出用量は、エアロゾル化された製剤量の平均82.01%であった。USP601の許容基準の±25%および±35%が、参考のために含まれる。
【0232】
[実施例3]
図13の実施形態は、エアロゾル化体積について2週間にわたって試験された。90分間隔で10回の投与事象が毎日行われ、各投与事象は30秒間隔で7回のパフを含んだ。3倍希釈生理食塩水の製剤が使用された。実験中、時折メスシリンダーに製剤を満す以外は、システムは乱されなかった。メスシリンダー内の製剤の体積の変化を使用して、毎日の総エアロゾル化体積を決定した。エアロゾル化器は、実験開始前に10μl/パフをエアロゾル化するように設定された。図22は、6日目から14日目までの各日の、パフあたりの平均エアロゾル化体積を示す。図13の実施形態は、少なくとも2週間、反復可能なエアロゾル化体積を送達できることが、図22からわかる。
【0233】
本発明はその特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされうること、等価物が代用されうることが、当業者には理解されるべきである。加えて、具体的な状況、材料、物質の組成、工程、工程ステップ、またはステップを、本発明の目的、精神、および範囲へ適合させるために、多くの変更がなされうる。そのような変更は全て、添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19a
図19b
図19c
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器であって:
再循環システムを備え、
前記再循環システムは、
製剤チャンバからポンプ要素へ延びる、第1の流体経路;
前記ポンプ要素からエアロゾル化器の真後ろのポケットへ延びる、第2の流体経路;
および
前記ポケットから前記第1の流体経路へ戻り延びる、第3の流体経路;
を備える、
吸入器。
【請求項2】
吸入器であって:
エアロゾル化器;
前記エアロゾル化器の真後ろの、製剤ポケット;
前記エアロゾル化器は、基板に形成されるノズル配列を備える;
および
一端に適合性材料を有する、密封システム;
を備え;
前記材料は、第1の位置にあるとき、前記基板と接触し、および全てまたは実質的に全ての前記配列の前記ノズルを遮断し;
さらに前記密封システムは、使用者が気道を通して吸入しているとき、第2の位置へ動かされうる、
吸入器
【請求項3】
請求項2に記載された吸入器であって、
さらに、前記吸入器は、ノズル孔の前記配列を包含する前記基板を振動させる、
吸入器。
【請求項4】
請求項3に記載された吸入器であって、
前記吸入器は、前記使用者の吸入気流内へエアロゾルを生成し;
および
さらに、前記気流は、孔の前記配列からのエアロゾル発生の平均方向に対して実質的に垂直な方向に流れる、
吸入器。
【請求項5】
吸入器であって:
エアロゾル化器;
前記エアロゾル化器の真後ろの、製剤ポケット;
医薬品有効成分を含む製剤を収容する、製剤チャンバ;
前記製剤チャンバは柔軟であり、製剤がそこから引き出される際につぶれる;
および
前記製剤チャンバの出口の近くに配置される、バルブ;
前記バルブは、カートリッジを耐久性システムへ接続する際に開かれる;
を備える、
吸入器。
【請求項6】
吸入器であって:
エアロゾル化器の真後ろの、製剤ポケット;
および
前記エアロゾル化器のエアロゾル化の持続時間を制御する、計算システム;
を備え、
ここでポンプは、発生したエアロゾルの量に基づいて決定された時間の間、オンにされる、
吸入器。
【請求項7】
請求項6に記載された吸入器であって、
前記ポンプは、エアロゾルが最初に始まるときにオンにされる、
吸入器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載された吸入器であって、
前記製剤ポケットの入口に配置されるフィルタをさらに備える、
吸入器。
【請求項9】
請求項8に記載された吸入器であって、
前記フィルタは、約0.1μm~約0.5μmの孔径を有する、
吸入器。
【請求項10】
請求項9に記載された吸入器であって、
前記フィルタの前記孔径は、約0.1μm、約0.2μm、および約0.22μmから選択される、
吸入器。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載された吸入器であって、
モーターによって駆動されるポンプをさらに備え、
前記フィルタが無傷であるかどうかは、以下のうちの1または複数によって決定されうる:モーター速度の増加、電流の減少、電圧の増加、より短い必要なパルス;
吸入器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載された吸入器であって、
さらに気泡除去器を備える、
吸入器。
【請求項13】
請求項12に記載された吸入器であって、
前記気泡除去器は、疎水性多孔質要素である、
吸入器。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載された吸入器であって、
前記吸入器は、耐久性システム装置と、前記耐久性システム装置へ分離可能に取り付けられるように構成される複数回投与カートリッジとを備える、
吸入器。
【請求項15】
請求項14に記載された吸入器であって、
ポンプをさらに備え、
前記カートリッジは、ポンプヘッドの構成要素を収容し、および前記耐久性システムは、ポンプモーターおよびギヤヘッドを収容する、
吸入器。
【請求項16】
請求項15に記載された吸入器であって、
前記ポンプは蠕動ポンプである、
吸入器。
【請求項17】
請求項14~16のいずれかに記載された吸入器であって、
前記カートリッジは:
製剤チャンバおよびエアロゾル化器;
および
フィルタ、気泡除去器、柔軟なチューブ、ローター、および偏心器、リング、支持面、柔軟なチューブのうちの1または複数;
をさらに備え、
ここで薬物接触面は、前記カートリッジ内に完全に収容される、
吸入器。
【請求項18】
請求項1~4のいずれかに記載された吸入器であって、
製剤チャンバをさらに備える、
禁煙システム。
【請求項19】
請求項5~18のいずれかに記載された吸入器であって、
前記製剤チャンバの出口の近くに配置されるバルブをさらに備え、
前記バルブは、前記カートリッジを前記耐久性システムへ接続する際に開かれる、
吸入器。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載された吸入器であって、
ここで計算システムは、以下を含むがこれらに限定されないリストから選択される、要素を制御する:1または複数のポンプの流速、1または複数のバルブの状態、前記エアロゾル化器へ供給される電圧、前記エアロゾル化器の構成要素の振動の振幅、1または複数のポンプのポンプする持続時間、前記エアロゾル化器のエアロゾル化の持続時間;その結果、前記使用者へ送達されるニコチンまたは他の有効成分の量が、経時的に一貫して低下する;
吸入器。
【請求項21】
請求項20に記載された吸入器であって、
前記要素は、エアロゾル化器のエアロゾル化の持続時間である、
吸入器。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載された吸入器であって、
前記使用者が吸入しているときに、気道における圧力降下を検出する圧力センサをさらに備え、
その際、前記コントローラは、予め決められた圧力降下を超えたと決定すると、前記エアロゾル化器を作動させ、その後エアロゾルを発生させる、
吸入器。
【請求項23】
請求項22に記載された吸入器であって、
ここでコントローラは、十分な吸入空気流速の不足を感知し、およびエアロゾル化を停止する、
吸入器。
【請求項24】
請求項23に記載された吸入器であって、
前記使用者が吸入速度を増加させ、再び圧力閾値を超えた場合に、前記コントローラはエアロゾル発生を再び開始する、
吸入器。
【国際調査報告】